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特許異議申立

2023-701208

筆記具

審判番号
2023-701208
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-172667
登録番号
7277660
請求日
2023年11月15日
審決日
2024年12月18日
公報発行日
2025年05月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】三菱鉛筆株式会社
  • 【権利者代理人】藤本 英介
  • 【権利者代理人】神田 正義
  • 【権利者代理人】宮尾 明茂
  • 【権利者代理人】馬場 信幸
  • 【異議申立人】▲高▼畑 明久
  • 【異議申立人】齊藤 恵美子
審判長/審判官
  • 審判長 川俣 洋史
  • 審判官 殿川 雅也
  • 審判官 門 良成
分類
P1651.113-YAA(B43K) / P1651.121-YAA(B43K) / P1651.537-YAA(B43K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第7項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第126条第6項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の6第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第5項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7277660号発明「筆記具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7277660号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。 特許第7277660号の請求項2ないし4に係る特許を維持する。 特許第7277660号の請求項1に係る特許についての特許異議申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7277660号の請求項1ないし4に係る特許についての出願(以下「本願」という。)は、令和4年10月27日(優先権主張令和3年12月17日)に出願され、令和5年5月10日にその特許権の設定登録がされ、同年同月19日に特許掲載公報が発行された。 その後、その特許について、同年11月15日に特許異議申立人 高畑 明久(以下「特許異議申立人1」という。)により請求項1ないし4に対して特許異議の申立てがされ、特許異議申立人 齋藤 恵美子(以下「特許異議申立人2」という。)により請求項1ないし3に対して特許異議の申立てがされ、令和6年2月28日付けで取消理由が通知され、同年5月2日に特許権者より訂正請求がされるとともに意見書が提出され、同年5月24日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年7月29日に特許権者より訂正請求されるとともに意見書が提出され、同年8月20日付けで当審合議体が特許異議申立人1及び特許異議申立人2に対し特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、同年9月19日に特許異議申立人1から意見書が提出され、特許異議申立人2からは、指定した期間内に何ら応答がなかったものである。 なお、令和6年5月2日に提出された訂正請求書は、特許法第120条の6第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 第2 本件訂正請求による訂正の適否 1 訂正請求の趣旨 令和6年7月29日にされた訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)は、同日に提出された訂正請求書の記載からみて、その請求の趣旨を「特許第7277660号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める。」とするものである。 また、本件特許の願書に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(特許掲載公報に記載されたものであって、本件訂正請求による訂正前のもの)について言及する際には、以下において、それぞれ、「本件特許明細書」、「本件特許請求の範囲」、「本件特許図面」といい、これらをまとめて「本件特許明細書等」という。 2 訂正の内容(以下「訂正事項」という。) 本件訂正の内容は以下のとおりである(下線は当審で付した。以下同様。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2-1 特許請求の範囲の請求項2に「前記水性インクには、更に、水溶性ベタイン類を含有することを特徴とする請求項1記載の筆記具」とあるうち、引用する訂正前の請求項1を訂正前の請求項2に組入れ、請求項間の引用関係を解消して独立請求項に訂正する。 (3)訂正事項2-2 訂正事項2-1により訂正された特許請求の範囲の請求項2に「少なくとも、水性インクが内蔵される軸筒と、該軸筒の先端側に設けた水性インクが吐出可能なペン先と、該軸筒のペン先側に着脱自在に装着されるキャップと、を備えた筆記具であって、 前記水性インクは、50℃での蒸気圧が、10.3~12.3kPaであることを特徴とする筆記具。」(訂正前請求項1) 及び 「前記水性インクには、更に、水溶性ベタイン類を含有することを特徴とする」「筆記具。」(訂正前請求項2)とあるのを、 「少なくとも、水性インクが内蔵される軸筒と、該軸筒の先端側に設けた水性インクが吐出可能なペン先と、該軸筒のペン先側に着脱自在に装着される透明性を有する材料にて形成されると共に、外部からペン先が視認することができるキャップと、を備えた筆記具であって、前記水性インクは、少なくとも、色材として油溶性染料を内包した着色樹脂微粒子分散液と、グリセリン15~40質量%と、トリメチルグリシンと、水とを含有し、50℃での蒸気圧が、10.4~11.9kPaであることを特徴とする筆記具。」に訂正する。 請求項2の記載を引用する訂正後の請求項3及び4も同様に訂正する。 (4)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「前記ペン先は、筆記方向を視認することができる窓部を有することを特徴とする請求項1又は2記載の筆記具。」と記載されているのを、「前記ペン先は、筆記方向を視認することができる窓部を有することを特徴とする請求項2記載の筆記具。」に訂正する。 (5)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「キャップの内面に親水化処理を施したことを特徴とする請求項1記載の筆記具。」と記載されているのを、「キャップの内面に親水化処理を施したことを特徴とする請求項2記載の筆記具。」に訂正する。 3 一群の請求項について 訂正前の請求項1ないし4について、請求項2ないし4は請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項1ないし4に対応する訂正後の請求項1ないし4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 4 訂正の適否について (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正事項1は、請求項1を削除するというものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1は、請求項1を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1は、請求項1を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、訂正前の全ての請求項1ないし4について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。 (2)訂正事項2-1 ア 訂正の目的について 訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する記載であるところ、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改める訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改める訂正は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、訂正事項2-1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改める訂正は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、訂正事項2-1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、訂正前の全ての請求項1ないし4について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項2に係る訂正事項2-1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。 (3)訂正事項2-2 ア 訂正の目的について 訂正事項2-2のうち、訂正前の請求項1の「少なくとも、水性インクが内蔵される軸筒と、該軸筒の先端側に設けた水性インクが吐出可能なペン先と、該軸筒のペン先側に着脱自在に装着されるキャップと、を備えた筆記具であって、前記水性インクは、50℃での蒸気圧が、10.3~12.39kPaであることを特徴とする筆記具。」において、「キャップ」を、材料及び機能を特定して「透明性を有する材料にて形成されると共に、外部からペン先が視認することができるキャップ」に、「水性インク」を、その含有成分を特定して「前記水性インクは、少なくとも、色材として油溶性染料を内包した着色樹脂微粒子分散液と、グリセリン15~40質量%と、水とを含有し、」に、「50℃での蒸気圧が、10.3~12.3kPa」を、蒸気圧の範囲を減縮して「50℃での蒸気圧が、10.4~11.9kPa」に各々限定する各訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 訂正事項2-2のうち、訂正前の請求項2に「水溶性ベタイン類」とあるのをその下位概念である「トリメチルグリシン」へと限定する訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項2-2における、訂正前の請求項1、2の発明特定事項を概念的により下位の内容とする訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 したがって、訂正事項2-2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2-2の「透明性を有する材料にて形成されると共に、外部からペン先が視認することができるキャップ」は、明細書に記載の段落〔0002〕の「このタイプの筆記具は、温度変化や温度勾配のある環境下では、キャップ内に結露が溜まり、見栄えがあるという課題が生じることがあった。この課題は、大きな筆記部を有するペン先を有し、かつ透明なキャップなどを用いる筆記具では、固有の課題であった。」との記載、段落〔0042〕第10行目~第16行目の「透明性(視認性)を有する材料としては、例えば、ガラス、‥‥‥ABS等の可視光線透過率が50%以上の材料から成形により構成することにより、外部からそれぞれのキャップ60、キャップ70を介してペン先20、50を見る(視認する)ことができるものとなっている。」との記載、段落〔0046〕第8行目以降の「また、ペン先20を見せるために、透明性を有する材料でかつ内容積の大きいキャップ60(キッャップ70を含む)が使用され、温度変化や温度勾配のある環境下、例えば、直射日光が当たる場所や、暖房の噴出し口近くに置かれる場所、PCなどの熱源のそばに置かれる場所、電気カーペット等に誤った置いた場合などでも、用いる水性インクは、50℃での蒸気圧が、10.3~12.3kPaを用いることにより、キャップ60内での結露の発生もなく、見栄えを損なうことがなく、また、ペン先20、50の形状や水性インクの色調(例えば、インク色が黄色、ピンク等)をキャップ60、70を通して視認することができるため筆記具品質、商品価値の高い筆記具が得られることとなる(この点については、更に後述する実施例等で詳述する)。」との記載、また、実施例1~10で導き出される構成となる、段落〔0071〕の「キャップ60:ポリプロピレン(PP)製、透過度:70%、キャップ70:ポリプロピレン(PP)製、透過度:60%」の記載、段落〔0072〕の「得られた各筆記具を用いて、ホットカーペット上において9時間放置して、下記評価基準でキャップ60、70内の結露の有無を評価した。」との記載、段落〔0075〕の「上記表1の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1~10の各筆記具用水性インク組成物を搭載した筆記具は、本発明の範囲外となる比較例1~2に較べ、透明性を有する材料にて形成されたキャップが装着される筆記具であっても、筆記性能を損なうことなく、キャップ内での結露の発生もなく、見栄えを損なうことがなく、更に、ペン先の形状や水性インクの色調を透過性のあるキャップを通して視認することができるため、筆記具品質、商品価値の高い筆記具が得られることが確認された。」との記載に基づく。 また、訂正事項2-2の「前記水性インクは、少なくとも、色材として油溶性染料を内包した着色樹脂微粒子分散液と、水とを含有し、」とする訂正は、明細書に記載の段落〔0015〕の「この蒸気圧の範囲であれば、水性インクの配合組成は特に限定されず、例えば、少なくとも、色材と、水とを含有することが好ましい。」との記載、並びに、段落〔0016〕に「色材として・・・着色樹脂微粒子又はその分散液〔顔料を含有した樹脂粒子顔料、樹脂エマルションを染料で着色した疑似顔料、白色系プラスチック顔料、中空樹脂顔料(粒子)などを含む〕」の記載、段落〔0021〕に「着色樹脂微粒子又はその分散液としては、例えば、少なくとも、酸性官能基として水への溶解度が10質量%以下のカルボキシル基含有ビニルモノマー(A)と、アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数2~18の直鎖若しくは環状アルコールとのエステルモノマー(B)と、塩基性染料又は油溶性染料とで構成される着色樹脂微粒子が水に分散されている着色樹脂微粒子の分散液や、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーと、塩基性染料又は油溶性染料とで構成される着色樹脂微粒子であって、前記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーの含有量が着色樹脂微粒子を構成する全ポリマー成分に対して、30質量%以上であると共に、前記塩基性染料又は油溶性染料の含有量が全ポリマー成分に対して、15質量%以上である着色樹脂微粒子が水に分散されている着色樹脂微粒子の分散液などが挙げられる。」の記載、及び実施例1~6(表1)で使用した色材が「油溶性染料を内包した着色樹脂微粒子分散液」である点などに基づく。 また、「トリメチルグリシン」とする訂正は、旧請求項2で「水溶性ベタイン類を含有する」ことを記載しており、段落〔0029〕に「水溶性ベタイン類(両性化合物)であるトリメチルグリシンなど・・・を好適に組み合わせることにより」との記載、実施例1~6で使用した「水溶性ベタイン類がトリメチルグリシン」である点などに基づく。 更に、「グリセリン15~40質量%」とする訂正は、実施例1~6で導き出される構成となる、実施例1のグリセリンが40質量%(以下)、実施例6のグリセリン15質量%(以上)、並びに、比較例1のグリセリン45質量%で筆記性能「E」評価との記載に基づく。 また、訂正事項2の「50℃での蒸気圧が、10.4~11.9kPa」は、実施例1~6で導き出される構成となる、実施例1の50℃での蒸気圧10.4kPa、実施例6の50℃での蒸気圧11.9kPaの記載に基づく。 したがって、訂正事項2-2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、訂正前の全ての請求項1ないし4について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項2に係る訂正事項2-2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。 (4)訂正事項3 ア 訂正の目的について 訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用する記載であるところ、訂正事項1で請求項1が削除されたことに伴い、引用する請求項の数を減少させるものなので、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項3は、引用する請求項の数を減少するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項3は、引用する請求項の数を減少するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、訂正前の全ての請求項1ないし4について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項3に係る訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。 (5)訂正事項4 ア 訂正の目的について 訂正事項4は、訂正前の請求項4が請求項1を引用する記載であったところ、訂正事項1で請求項1が削除されたことに伴い、上記(3)アより訂正前の請求項1を減縮したとみることができる訂正後の請求項2を引用させるものなので、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項4は、訂正前の請求項4が請求項1を引用する記載であったところ、上記(3)イより、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない訂正後の請求項2を引用させるものなので、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項4は、訂正前の請求項4が請求項1を引用する記載であったところ、上記(3)ウより、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正がされた訂正後の請求項2を引用させるものなので、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、訂正前の全ての請求項1ないし4について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項4に係る訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。 5 別の訂正単位とする求め 特許権者は、訂正後の請求項2と、訂正後の請求項2を引用する訂正後の請求項3及び4については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。 6 まとめ 以上のとおり、令和6年7月29日に特許権者が行った本件訂正は、訂正事項1、訂正事項2-2、訂正事項3及び4に関して特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、訂正事項2-1に関して同条同項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであって、かつ、訂正事項1ないし4は、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、請求項1ないし4について訂正を認める。 第3 訂正後の本件訂正特許発明 上記第2で検討したとおり、請求項1ないし4に係る訂正を認めることができるから、請求項1ないし4に係る特許についての発明は本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(以下、それぞれ「本件訂正特許発明1」ないし「本件訂正特許発明4」といい、総称して「本件訂正特許発明」という。) 「【請求項1】(削除) 【請求項2】 少なくとも、水性インクが内蔵される軸筒と、該軸筒の先端側に設けた水性インクが吐出可能なペン先と、該軸筒のペン先側に着脱自在に装着される透明性を有する材料にて形成されると共に、外部からペン先が視認することができるキャップと、を備えた筆記具であって、 前記水性インクは、少なくとも、色材として油溶性染料を内包した着色樹脂微粒子分散液と、グリセリン15~40質量%と、トリメチルグリシンと、水とを含有し、50℃での蒸気圧が、10.4~11.9kPaであることを特徴とする筆記具。 【請求項3】 前記ペン先は、筆記方向を視認することができる窓部を有することを特徴とする請求項2記載の筆記具。 【請求項4】 キャップの内面に親水化処理を施したことを特徴とする請求項2記載の筆記具。」 第4 取消理由の概要 令和6年5月24日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)のうち、「取消理由2(進歩性欠如)」及び「取消理由3(サポート要件違反)」の概要は以下のとおりである。 取消理由2(進歩性欠如)請求項1ないし4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1ないし19に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 取消理由3(サポート要件違反)本件特許は、明細書又は特許請求の範囲の記載が下記第7の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 第5 引用文献 引用文献1:特開2016-151003号公報(特許異議申立人1が提出した甲第1号証) 引用文献2:特開2015-10125号公報(特許異議申立人1が提出した甲第4号証) 引用文献3:特開2003-105244号公報(特許異議申立人2が提出した甲第1号証) 引用文献4:『蛍光顔料の種類』、『LumikolNKW-4800Eシリーズ・NKW-4700Eシリーズ』「TECHNICA LBULLETIN」、NIPPON KEIKO KAGAKU CO, LTD.(特許異議申立人1が提出した甲第2号証) 引用文献5:特開2006-265519号公報(特許異議申立人1が提出した甲第3号証) 引用文献6:「化学物質等安全データシート(MSDS)」、日本蛍光化学株式会社、2003年12月10日作成・改訂(特許異議申立人2が提出した甲第2号証) 引用文献7:特開2021-48280号公報(特許異議申立人2が提出した甲4第号証) 引用文献8:特開2001-220530号公報(特許異議申立人2が提出した甲第5号証) 引用文献9:「製品安全データシート」(特許異議申立人2が提出した甲第6号証) 引用文献10:森真啓、池田紀和、加藤敬香、南野美紀、渡部一仁、「市販精油の品質評価」YAKUGAKU ZASSHI 122(3)、P253-P261、2002(特許異議申立人2が提出した甲第7号証) 引用文献11:実願昭61-59092号(実開昭62-170286号)のマイクロフィルム(特許異議申立人1が提出した甲第5号証) 引用文献12:特開2016-151003号公報(特許異議申立人2が提出した甲第16号証) 引用文献13:特開2017-88772号公報(特許異議申立人2が提出した甲第17号証) 引用文献14:特開2000-52682号公報(特許異議申立人2が提出した甲第18号証) 引用文献15:特開2019-135093号公報(特許異議申立人2が提出した甲第19号証) 引用文献16:国際公開第2020/032104号 引用文献17:特開2017-124544号公報 引用文献18:特開2020-49672号公報 引用文献19:特開2021-187036号公報 引用文献20:特開2012-96418号公報(特許異議申立人1が提出した甲第6号証) 引用文献21:特開2017-218503号公報(特許異議申立人1が提出した甲第7号証) 引用文献22:特開平7-157691号公報(特許異議申立人1が提出した甲第8号証) なお、引用文献20ないし22は、本件訂正により追加することが必要となった証拠であると認め、当審において新たな証拠として採用する。 1 引用文献1の記載事項及び引用発明 本件特許に係る出願の優先日である令和3年12月17日(以下「優先日」という。)前の平成28年8月22日に出願公開がされた引用文献1(特開2016-151003号公報)には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。 (1)「【0004】 一方、ペン先などのインキ吐出部の耐乾燥性に優れたインキとして、着色剤と、トリメチルグリシン(グリシンベタイン)と、水とを少なくとも含む水性インキ(例えば、特許文献2参照)が知られている。 しかしながら、上記特許文献2の技術では、温度や湿度が高い条件において未だ耐乾燥性が不十分なものであり、描線の乾燥についても充分な効果が得られていない点に課題がある。 特に、近年では、教科書に代表される学習用書籍に上質紙が用いられることが増えてきている。一般に、上質紙は水分を吸収しにくい性質を有しているので、紙面への筆記後に描線の乾燥が不十分となり汚染を引き起こすことがあった。上記特許1及び2の技術等でも、上質紙に筆記した場合に、未だ描線の乾燥性が不十分なものとなったり、ペン先の耐乾燥性、インクの低温安定性が不十分なものとなったりするなどの課題がある。」 (2)「【0021】 本発明の筆記具用水性インク組成物は、ボールペン、マーキングペン、サインペンなど各種筆記具に搭載して使用に供することができる。 なお、マーキングペンなどの構造は、特に限定されず、例えば、軸筒自体をインク収容体として該軸筒内に直接上記組成の筆記具用水性インク組成物を充填又は軸筒内に収容した吸蔵体に上記組成の筆記具用水性インク組成物を吸蔵せしめた直液式又は中綿式のマーキングペンなどが挙げられる。」 (3)「【0026】 (筆記具:マーキングペンの作製) マーキングペン〔三菱鉛筆株式会社製、商品名:プロパス・ウインドPUS-102T、ペン先、太:PE樹脂、細:PET繊維〕に上記実施例1~7及び比較例1~8で製造した各インク組成物を装填してマーキングペンを作製した。 【0027】 (ペン先の耐乾燥性の評価方法) 上記で得た実施例1~7及び比較例1~8で製造した各インク組成物を装填してマーキングペン(試験試料、n=5本、以下同様)を用いて、25℃/湿度65%、50℃/湿度80%の条件下で、キャップを外し横置きで放置し、一定時間ごとにISO規格(14145-1)に準拠した筆記用紙(以下同様)に手書きで筆記し、著しいかすれのない筆記状態が得られる最大の時間を「筆記可能な時間」とし、下記評価基準で評価した。 評価基準: ◎:120分以上 ○:60分以上120分未満 △:45分以上60分未満 ×:45分未満」 (4)「【0031】 【表1】 [図:0001422399000001.jpg] 」 (5)上記(4)より、実施例3の筆記具用水性インク組成物の配合処方は、「トリメチルグリシン(グリシンベタイン)11.0重量%、ペンタエリスリトール4.5重量%、着色剤としてのNKW-4805黄(日本蛍光社製)40.0重量%、防腐剤としてのバイオエース(ケイアイ化成社製)0.3重量%、pH調整剤としてのトリエタノールアミン1.0重量%、界面活性剤としてのサーフロンS111N(AGCセイミケミカル社製)0.2重量%、水溶性有機溶剤としてのエチレングリコール3.0重量%、水(溶媒)としてのイオン交換水40.0重量%)」からなる。 (6)上記(1)より、ペン先はインキを吐出可能であるといえる。 上記(3)より、キャップは着脱可能であるといえる。 上記記載事項(1)ないし(4)、及び認定事項(5)ないし(6)より、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認める。 「軸筒自体をインク収容体として該軸筒内に直接下記組成の筆記具用水性インク組成物を充填又は軸筒内に収容した吸蔵体に下記組成の筆記具用水性インク組成物を吸蔵せしめた直液式又は中綿式のマーキングペンであって、 インキを吐出可能なペン先と、 着脱可能なキャップと、を備え、 筆記具用水性インク組成物の配合処方は、トリメチルグリシン(グリシンベタイン)11.0重量%、ペンタエリスリトール4.5重量%、着色剤としてのNKW-4805黄(日本蛍光社製)40.0重量%、防腐剤としてのバイオエース(ケイアイ化成社製)0.3重量%、pH調整剤としてのトリエタノールアミン1.0重量%、界面活性剤としてのサーフロンS111N(AGCセイミケミカル社製)0.2重量%、水溶性有機溶剤としてのエチレングリコール3.0重量%、水(溶媒)としてのイオン交換水40.0重量%であり、 〔三菱鉛筆株式会社製、商品名:プロパス・ウインドPUS-102T〕のマーキングペン。」 2 引用文献2の記載事項及び引用発明 本件特許に係る出願の優先日前の平成27年1月19日に出願公開がされた引用文献2(特開2015-10125号公報)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 水と、水溶性有機溶剤と、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤と、水溶性樹脂と、炭素数3以上の糖アルコールと、カチオン性を有する防腐剤とからなる可逆熱変色性水性インキ組成物。 【請求項2】 前記櫛型高分子分散剤とカチオン性を有する防腐剤の質量比が1:1~1:10である請求項1記載の可逆熱変色性水性インキ組成物。 【請求項3】 前記カチオン性を有する防腐剤がピリジニウム系化合物、ビグアナイド系化合物、塩素系四級アンモニウム塩化合物、非塩素系四級アンモニウム塩化合物、ノニオン性三級アンモニウム塩化合物から選ばれる一種又は二種以上の化合物である請求項1又は2記載の可逆熱変色性水性インキ組成物。 【請求項4】 非変色性着色剤を含有してなる請求項1乃至3のいずれか一項に記載の可逆熱変色性水性インキ組成物。 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の可逆熱変色性水性インキ組成物を軸筒内に収容し、前記軸筒内のインキ組成物を導出するペン体を備えた筆記具。 【請求項6】 ペン体の後端が、軸筒内に収容された繊維集束体からなるインキ吸蔵体に接触してなり、前記インキ吸蔵体にインキ組成物を含浸させてなる請求項5記載の筆記具。」 (2)「【0040】 ペン体としては、マーキングペン体が好適であり、繊維、フェルト、プラスチック等のペン体が挙げられる。 なお、マーキングペン体の先端形状は、砲弾型、チゼル型のいずれであってもよい。 また、筆ペン体やボールペン体を用いることもでき、筆ペン体としては、繊維相互を長手方向に密接状に束ねた繊維集束体、連続気孔を有するプラスチックポーラス体、合成樹脂繊維の熱融着乃至樹脂加工体、軟質性樹脂乃至エラストマーの押出成形加工体が挙げられる。 ボールペン体としては、金属を切削加工して内部にボール受け座とインキ導出部を形成したもの、金属製パイプの先端近傍の内面に複数の内方突出部を外面からの押圧変形により設け、前記内方突出部の相互間に、中心部から径方向外方に放射状に延びるインキ流出間隙を形成したものが挙げられる。 前記ボールペン体に抱持されるボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック等の外径0.3~2.0mm、好ましくは0.4~1.5mm、より好ましくは0.5~1.0mmのボールが有効である。 なお、前記ボールペン体には、ボールの後端を前方に弾発する弾発部材を配して、非筆記時にはペン体先端の内縁にボールを押圧させて密接状態とし、筆記時には筆圧によりボールを後退させてインキを流出可能に構成することもできる。 前記軸筒は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる成形体が好適に用いられる。 また、前記インキ組成物を収容する筆記具の構造としては、軸筒内に弁機構を配して開弁により軸筒内のインキをペン体に導出する構造の直液式筆記具や、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させる構造の直液式筆記具が挙げられるが、軸筒内に収容する繊維束からなるインキ吸蔵体に含浸させ、ペン体を筆記先端部に装着し、ペン体の後端が直接又は接続部材を介してインキ吸蔵体と接触した構造の中詰式筆記具が好適である。 前記インキ吸蔵体は、捲縮状繊維を長手方向に集束させたものであり、プラスチック筒体やフィルム等の被覆体に内在させて、気孔率を概ね40~90%の範囲に調整して構成される。尚、前記繊維集束体は樹脂加工或いは熱融着加工、可塑剤等により溶着加工されたものであってもよい。」 (3)「【0043】 実施例1 可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製 (イ)成分として2-(ジブチルアミノ)-8-(ジペンチルアミノ)-4-メチル-スピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-g]ピリミジン-5,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3-オン1.0部、(ロ)成分として4,4′-(2-エチルヘキサン-1、1-ジイル)ジフェノール3.0部、2,2-ビス(4′-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4-ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。 前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。 前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は2.3μm、完全消色温度は58℃であり、完全発色温度は-20℃であり、温度変化によりピンク色から無色に変色する。 【0044】 可逆熱変色性水性インキ組成物の調製 前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料(予め-20℃以下に冷却してピンク色に発色させたもの)20.0部、櫛型高分子分散剤〔日本ルーブリゾール(株)製、商品名:ソルスパース43000〕0.4部、1,4-ビス(3,3′-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ)ブタンジブロマイド〔タイショーテクノス(株)製、商品名:ビオサイドNEO〕0.5部、ポリビニルアルコール1.0部、グリセリン20.0部、ソルビトール15.0部、消泡剤0.2部、水42.9部を混合して可逆熱変色性水性インキ組成物を得た。 前記インキ組成物のpHは6.85、表面張力は41.2mN/mであった。 【0045】 中詰式筆記具の作製(図4参照) ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆したインキ吸蔵体2内に前記インキ組成物を含浸させ、ポリプロピレン樹脂からなる軸筒4内に収容し、ホルダー5を介して軸筒先端部にポリエステル繊維の樹脂加工ペン体3(チゼル型)と接続状態に組み立て、キャップ6を装着して中詰式筆記具(マーキングペン)を得た。 前記軸筒後端部には摩擦部材7としてSEBS樹脂を装着してなる。」 (4)上記(2)、(3)より、軸筒の筆記先端部に装着したペン体から可逆熱変色性水性インキ組成物が吐出可能であるといえる。 (5)上記(3)より、筆記具にはキャップ6が着脱可能に装着されているといえる。 上記記載事項(1)ないし(3)、並びに認定事項(4)及び(5)より、引用文献2には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認める。 「可逆熱変色性水性インキ組成物を軸筒内に収容し、前記軸筒内のインキ組成物を導出するペン体を備えた筆記具であって、 ペン体の後端が、軸筒内に収容された繊維集束体からなるインキ吸蔵体に接触してなり、前記インキ吸蔵体にインキ組成物を含浸させてなり、 軸筒の筆記先端部に装着したペン体から可逆熱変色性水性インキ組成物が吐出可能であり、 キャップが着脱可能に装着され、 可逆熱変色性水性インキ組成物は、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料(予め-20℃以下に冷却してピンク色に発色させたもの)20.0部、櫛型高分子分散剤〔日本ルーブリゾール(株)製、商品名:ソルスパース43000〕0.4部、1,4-ビス(3,3′-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ)ブタンジブロマイド〔タイショーテクノス(株)製、商品名:ビオサイドNEO〕0.5部、ポリビニルアルコール1.0部、グリセリン20.0部、ソルビトール15.0部、消泡剤0.2部、水42.9部を混合してなるものである、 筆記具。」 3 引用文献3の記載事項及び引用発明 本件特許に係る出願の優先日前の平成15年4月9日に出願公開がされた引用文献3(特開2003-105244号公報)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 アロマセラピー作用を有する精油と界面活性剤とが添加された水性インクを備えるマーキングペンであって、該水性インク中に含まれる前記精油の割合を0.5~3%の範囲内にしたことを特徴とするマーキングペン。 【請求項2】 上記水性インク中に含まれる精油と界面活性剤との比率を1:1~1:3にしたことを特徴とする請求項1記載のマーキングペン。 【請求項3】 上記精油は、集中力増強又は/及び記憶力増強のアロマセラピー作用を有する精油が用いられていることを特徴とする請求項1又は2記載のマーキングペン。 【請求項4】 上記精油が、ペパーミント、ローズマリー、レモンの内の何れか一つから精製されたものであることを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載のマーキングペン。 【請求項5】 上記水性インクの色を、上記精油の原料である植物の色に近似する色にしたことを特徴とする請求項1乃至4何れか1項記載のマーキングペン。」 (2)「【0011】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係わるマーキングペンの一例を示す。このマーキングペンAは、ポリプロピレン製の軸筒10内に水性インクMを直接充填し、該軸筒10の先端に、弁機構20が内在された先口40を嵌合し、更に、先口40内にペン体30を摺動可能に嵌合してなる。」 (3)「【0014】ペン体30は、合成繊維に接着剤を含浸させて略軸状に集束してなり、被筆記面に当接される筆記先端部30aとともに筆記先端部側の外周面30bを露出させることで、その外周面30bから水性インクMが揮発されて、筆記者に水性インクMの香りが認識され易いように構成してある。尚、ペン体30の材質は、毛細管力によって水性インクMを筆記先端部へ導くものであれば上記構成に限定されるものでなく、例えば、焼結体や、連通多孔質の合成樹脂体等であっても構わない。」 (4)「【0016】上記組成物中の水は、水性インクMを構成する主溶剤であり、水性インクMの保存安定性の面から蒸留水やイオン交換水を使用するのが好ましい。上記水溶性有機溶剤は、水性インクの蒸発を抑制し、筆記先端部の乾燥に伴う不書きを遅延させる作用を有し、具体的にはグリセリンやエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の水溶性多価アルコール等が使用できる。上記防腐剤は、水性インクの腐敗やカビの発生を抑制する作用を有する水溶性防腐剤であれば特に限定されず、具体的には武田薬品工業(株)製のデルトップ等を用いることができる。上記界面活性剤は、精油を水性インクに可溶化させるためのもので、水溶性有機溶剤の添加量によっても異なるが、一般的にHLBの値が6~18、好ましくは10~15程度の界面活性剤を使用することができる。具体的には、日本エマルジョン(株)製のエマレックスCG-4(HLB=13)や、日本エマルジョン(株)製のエマレックスTS-8(HLB=15)、日本乳化剤(株)製のニューコール1208(HLB=11.4)、日本乳化剤(株)製のニューコール1020(HLB17.4)等を使用することができる。 (5)「【0026】 【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。 【表1】 [図:0001422399000002.jpg] 【0027】実施例1~5及び比較例1~10は、それぞれ成分割合(質量%)が異なる水性インクを用いて、マーキングペンを構成したものである。表1は、実施例1~5及び比較例1~10の各水性インクついて、水性インク中の成分割合(質量%)と、粘度測定結果とを示している。この表中、比較例10は、インク中に含まれるペパーミントオイル(精油)の割合が5%で、粘度180mPa・sとなり、増粘によりインクの流動が著しく悪く、マーキングペンとして用いることができなかった。」 (6)「【図1】 [図:0001422399000003.jpg] 」 (7)上記(2)及び(3)より、マーキングペンは、水性インクMを吐出可能であるといえる。 (8)上記(6)より、マーキングペンには、キャップが装着されることが看取でき、筆記具の技術常識からすると、装着可能なキャップは着脱自在であるといえる。 (9)上記(5)より、実施例4の水性インクMの成分は、黄色蛍光樹脂顔料水分散液(日本蛍光化学(株)製、ルミコール NKW-3905)50重量%、水溶性有機溶剤(グリセリン)20重量%、防腐剤(武田薬品工業(株)製、デルトップ)0.2重量%、界面活性剤(日本エマルジョン(株)製、エマレックスCG-4)0.5重量%、ペパーミントオイル((株)美健製、精油)0.5重量%、水(イオン交換水)28.8重量%からなる。 上記記載事項(1)ないし(6)、及び認定事項(7)ないし(9)より、引用文献3には、以下の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認める。 「ポリプロピレン製の軸筒内に水性インクを直接充填し、該軸筒の先端に、弁機構が内在された先口を嵌合し、更に、先口内にペン体を摺動可能に嵌合してなるマーキングペンであって、 着脱可能なキャップが装着され、 水性インクが吐出可能であり、 水性インクの成分は、黄色蛍光樹脂顔料水分散液(日本蛍光化学(株)製、ルミコール NKW-3905)50重量%、水溶性有機溶剤(グリセリン)20重量%、防腐剤(武田薬品工業(株)製、デルトップ)0.2重量%、界面活性剤(日本エマルジョン(株)製、エマレックスCG-4)0.5重量%、ペパーミントオイル((株)美健製、精油)0.5重量%、水(イオン交換水)28.8重量%である、 マーキングペン。」 4 引用文献4の記載事項 引用文献4には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001422399000004.jpg] 」 「 [図:0001422399000005.jpg] 」 5 引用文献5の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前の平成18年10月5日に出願公開がされた引用文献5(特開2006-265519号公報)には、以下の事項が記載されている 「【0019】 液媒体が水であるインキ組成物に顔料を用いる場合、市販の水分散タイプを用いると取り扱い性や生産性が高まるので好ましく用いられる。水分散タイプの具体例としては、Ryudye-Wシリーズ(大日本インキ化学工業(株)製)、NKWシリーズ(日本蛍光化学(株)製)、Sandye Superシリーズ(山陽色素(株)製)、EM CoIorシリーズ、LIOFAST CoIorシリーズ(以上、東洋インキ製造(株)製)等が挙げられる。」 6 引用文献6の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前の2003年(平成15年)12月10日に発行された引用文献6には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001422399000006.jpg] 」 7 引用文献7の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前の令和3年3月25日に出願公開がされた引用文献7(特開2021-48280号公報)には、以下の事項が記載されている。 「【0025】 (荷電特性を制御可能な化合物) 荷電特性を制御可能な化合物として、好ましくは、界面活性剤が用いられる。 用いられる界面活性剤はイオン系のものであれば特に限定されないが、例えば、陰イオン系界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBS)等の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、ラウリル硫酸ナトリウム、コール酸ナトリウム等が挙げられ、また、陽イオン系界面活性剤としては、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(CTAB)等のアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩等が挙げられる。」 8 引用文献8の記載事項及び技術事項 本件特許に係る出願の優先日前の平成13年8月14日に出願公開がされた引用文献8(特開2001-220530号公報)には、以下の事項が記載されている。 「【0019】この顔料をジェットミルで粉砕し、分級により分けられた5~10μmの微粉体顔料を用いて、以下の組織で撹拌器を用いて撹拌混合し黒色インキを得た。 (質量%) 黒色微粉体 10.0 デルトップ(武田製薬(株)製、商品名、2-ベンズイソチアゾリン-3-オン 10%、ジエチレングリコール 7 0 %) 0.3 ユーコート UWS-145(三洋化成工業(株)製、商品名、自己乳化型ウレタン樹脂エマルション) 35.0 0.35質量%アンモニア水 3.2 アエロジル200(日本アエロジル(株)製、商品名、無水変性シリカ) 0.5 イオン交換水 51.0」 上記記載事項より、2-ベンズイソチアゾリン-3-オンの化学式が不明であるが、ジエチレングリコール(分子式:C4H10O3、分子量106)の重量割合が70%であることからすると、引用文献8には、以下の技術事項が記載されているものと認める。 「デルトップの分子量は74.2(=106×0.7)以上であること。」 9 引用文献9の記載事項及び技術事項 本件特許に係る出願の優先日前の平成13年1月10日に刊行された引用文献9には、以下の事項が記載されている。「 [図:0001422399000007.jpg] 」 上記記載事項より、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(10E.0)の分子式は(C2H4O)10C15H24Oであるため、分子量は660である。イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル (20E.0)の分子式は (C2H4O)20(C2H4O)20C21H42O4であるため、分子量は2118であることからすると、引用文献9には、以下の技術事項が記載されているものと認める。 「エマレックスCG-4の分子量は、1389(=660×0.5+2118×0.5)であること。」 10 引用文献10の記載事項及び技術事項 本件特許に係る出願の優先日前の2002年(平成14年)に刊行された引用文献10には、以下の事項が記載されている。 「また,ペパーミント精油は独特の強いmentholの芳香を放ち,この含量の多いことから高い冷感効果を有している.この精油の主成分はmentholとmenthonであり2つの成分で60%以上となる.」(254ページ左欄5行~同欄9行) 上記記載事項より、メントールの分子式はC10H20Oであり分子量が156である。メントンの分子式はC10H18Oであり分子量が154である。両者の総和が60%以上であるため、ペパーミント製油の分子量は、メントールより分子量の小さいメントンが重量割合の60%を占めるとした場合の分子量以上であることからすると、引用文献10には、以下の技術事項が記載されているものと認める。 「ペパーミント製油の分子量が92.4(=154×0.6)以上であること。」 11 引用文献11の記載事項及び技術事項 本件特許に係る出願の優先日前の昭和62年10月28日に出願公開がされた引用文献11(実願昭61-59092号(実開昭62-170286号)のマイクロフィルム)には、以下の事項が記載されている。 「(産業上の利用分野) 本考案はインクを用いた筆記具に装着するキャップに関する。 (従来の技術及び考案が解決しようとする問題点) 水性インクを用いた旗記具等ではキャップを装着したままの状態で高温下に放置するとキャップ内部に於けるインク揮発成分即ち溶剤の蒸気圧が上昇し、その後冷却されるとその蒸気がキャップ内面に結露して液滴となりこれがペン芯に滴下してペン芯のインクの色素濃度を低下させて筆記描線を不鮮明化する問題があったが、斯る問題の有効な解決を図つた筆記具のキャップは未だ出現していない。本考案の目的は斯る問題点を解決した新たな筆記具のキャップの提供を目的とする。 (問題点を解決するための手段) 上記目的達成のために案出された本願の筆記具のキャップは内面に水濡れ塗料の塗布、浸漬付着等の処理を施して成るものである。ここで水濡れ塗料とはポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂又は金属等の疎水性の材料の表面に塗布するとその塗布面に親水性を与えて、水との接触角を大きく下げる作用を有し、塗布面に付着する水滴を溜らせることなく流し去る流滴性のある塗料をいい、即ち水に濡れやすい塗料のことである。 (実施例) 図示せる実施例は、ペン芯(1)を突出させた筆記具本体の先軸(2)に嵌着して密封状態となるキャップ(3)の内面全体に水濡れ塗料(例えばアクランSS:斎藤株式会社製)を塗布して成るものである。図中(4)が水濡れ塗料の塗布膜である。」(1ページ7行~3ページ10行) 上記記載事項より、引用文献11には、以下の技術事項(以下「引用文献11記載の技術事項」という。)が記載されているものと認める。 「内面全体に水濡れ塗料を塗布して成るキャップ。」 12 引用文献12の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前の平成28年8月22日に出願公開がされた引用文献12(特開2016-151003号公報)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【0006】 本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、これを解消しようとするものであり、ペン先の乾燥を抑えながらも、描線の乾燥性、インクの低温安定性に優れ、描線に滲みや裏抜けのない筆記具用水性インク組成物を提供することを目的とする。」 (2)「【0013】 これらの着色剤の含有量は、インク組成物全量に対して、0.1~60質量%(以下、「質量%」を単に「%」という)で適宜調整することが可能である。 【0014】 本発明に用いるトリメチルグリシン〔別名:グリシンベタイン、(CH3)2N+(CH3)CH2COO-〕は、保湿剤等として作用せしめるために用いるものであり、筆記具用水性インク組成中に配合してもインキ性能の低下等を招くことがなく、ペン先の耐乾燥性、描線の乾燥性、インクの低温安定性を発揮せしめるものである。 【0015】 このトリメチルグリシンの含有量は、インク組成物全量に対して、0.5~50%、好ましくは、1~15%、より好ましくは、2~10%とすることが望ましい。 この含有量が0.5%未満であると、ペン先の乾燥抑制効果が充分でなく、一方、50%超過であると、効果はそれほど変わらず、むしろ粘度増加による筆記性能、保存安定性の低下をもたらすこととなる。」 13 引用文献13の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前の平成29年5月25日に出願公開がされた引用文献13(特開2017-88772号公報)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【0006】 本発明は、上記従来技術の課題及び現状に鑑み、これを解消しようとするものであり、酸化セルロースを用いた場合の筆記具用水性インク組成物の課題等であるキャップオフによるペン先でのドライアップを抑制し、低温安定性に優れ、更なるインク品質の向上を発現できる筆記具用水性インク組成物を提供することを目的とする。」 (2)「【0021】 本発明に用いるグリシン〔H3N+CH2COO-〕、トリメチルグリシン〔(CH3)2N+(CH3)CH2COO-〕は、酸化セルロースを用いることによる課題であるキャップオフによるペン先でのドライアップを抑制し、低温安定性に優れた機能を発揮せしめ安定化を図るために用いるものであり、酸化セルロースと併用することにより、筆記具用水性インク組成中に配合してもインク性能の低下等を招くことがなく、本発明の効果を効果的に発揮せしめるものである。 用いるグリシン、トリメチルグリシンはそれぞれ単独、または、併用することができ、より好ましくは、トリメチルグリシンの使用が望ましい。【0022】 グリシン及び/又はトリメチルグリシンの含有量は、インク組成物全量に対して、好ましくは、0.5~10%、更に好ましくは、1~5%とすることが望ましい。 この含有量が0.5%未満であると、本発明の効果を発揮することができず、一方、10%超過であると、本発明の効果はそれほど変わらず、むしろ粘度増加による筆記性能の低下、描線のかすれなどをもたらすこととなる。」 14 引用文献14の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前の平成12年2月22日に出願公開がされた引用文献14(特開2000-52682号公報)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【請求項1】 筆記具本体から供給されるインキを誘導し、かつ保留できるペン体を有する筆記具において、上記ペン体は、インキ誘導部と、該インキ誘導部からのインキを導出する筆記部とを備えると共に、該筆記部の軸方向直上に筆記方向を視認できる可視部を備えたことを特徴とする筆記具。」 (2)「【請求項6】 支持部材の可視部が透明な支持部材又は素通しの窓部からなる請求項5に記載の筆記具。」 (3)「【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、筆記具本体から供給されるインキを誘導し、かつ保留できるペン体を有する筆記具において、ペン先となるペン体の反対側が簡単に視認でき、線引きの終点位置を容易に認識できる筆記具を提供することを目的とする。」 (4)「【図1】 [図:0001422399000008.jpg] 」 15 引用文献15の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前の令和元年8月15日に出願公開がされた引用文献15(特開2019-135093号公報)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【0004】 本出願人は、筆記具本体となる軸体から供給されるインクを誘導し、かつ保留できる筆記芯を有する筆記具において、ペン先に、筆記方向を視認できる可視部(窓部)を備えた筆記具を開示している(例えば、特許文献1参照)。 このタイプの筆記具は、ペン先の可視部(窓部)から筆記した文字が見えるから、チェックしたいところだけ、ピタッとはみ出さずにラインが引けるものである。」 (2)「【0014】 以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳しく説明する。 図1(a)及び(b)は、本発明のペン先を筆記具の先軸に取り付けた実施形態の一例を示す各斜視図であり、図2(a)~(j)は本発明のペン先の実施形態の一例を示す各図面であり、図3(a)~(j)は、保持体の一例を示す各図面であり、図4は図2のペン先を用いた筆記具の一例を示す部分縦断面図である。 本実施形態のペン先Aは、図1及び図2に示すように、筆記方向を視認することができる可視部を有する保持体10と、該保持体10に装着されたペン芯20とを備えたものである。 【0015】 保持体10は、図1、図2(a)~(j)及び図3(a)~(j)に示すように、筆記芯となるペン芯20を固定して、軸体30の先軸35先端開口部に固着されるものであり、膨出状の本体部11と、該本体部11の前方側に、フランジ部12と、筆記方向を視認することができる可視部13とを有すると共に、可視部13の先端側にペン芯20の先端側(端面)を保持する前方保持部14a,14bとを有するものである。本実施形態では、前方保持部14a,14bの長手方向長さを異ならしめているもの、すなわち、ペン芯20の先端側(端面)を保持する長さが長い前方保持部14aと短い前方保持部14bとし、前方保持部14aの先端側の端部はペン芯20の先端側の端部と同じ位置(端部)にあり、前方保持部14bは後述するように突出量(突出長さ分)だけ短い寸法となっている。なお、上記保持体10において、ペン芯20の先端側(端面)を保持する長い前方保持部14aと短い前方保持部14bとしたが、前方保持部14aと前方保持部14bとの保持長さを同じくしてもよいものである。 また、上記本体部11の後方側に、上記本体部11に連設される保持片15を有する後方保持部16を備えたものである。これらの部材から構成される保持体10の長手方向外周面全体には、後述するコ字型状のペン芯20を嵌入保持する保持溝16が形成されている。更に、本体部11の幅方向外周面には、凹状の嵌合部11aが形成され、長手方向外周面となる両面空気流通溝には、それぞれ直線状の空気流通溝11bと屈曲状の空気流通溝11cが形成されている。」 (3)「【図1】 [図:0001422399000009.jpg] 」 16 引用文献16の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前の2020年2月13日に国際公開がされた引用文献16(国際公開第2020/032104号)には、以下の事項が記載されている。 「[0032] この筆記具Bは、図4に示すように、筆記具本体となる軸体30内のインク吸蔵体40にインクを吸蔵させ、図4右側となる一端に細字タイプのペン体31と他端(図4左側)に上記構成のペン先Aを有し、インク吸蔵体40のインクを毛管作用により、それぞれペン体31及びペン先Aのペン芯20に供給する構成となっている。図示符号50、51は後述する軸体30の両端部側に着脱自在に嵌合するペン先A及びペン体31を保護する透明又は半島姪からなるキャップである。」 17 引用文献17の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前の平成29年7月20日に出願公開がされた引用文献17(特開2017-124544号公報)には、以下の事項が記載されている。 「【0020】 このペン芯35を固定した保持体40(図5)から構成される筆記部50は、図5等に示すように、非対称形状の筆記部となるものであり、この筆記部50における保持体40を、先軸20の開口部20内に圧入すると、先軸20の嵌合部23に保持体40の嵌合部41aが嵌合することにより、ペン芯35は保持体40を介して筆記具軸筒10に固着され筆記部50と軸筒10とは相対回転不能となると共に、ペン芯35のインク誘導部36,36の後方側端部36a、36aはインク吸蔵体30の先端側内部に入り込む構成となっている。なお、インク吸蔵体30の先端側内部にインク誘導部35,35の後方側端部36a、36aを挿入する凹部を形成してもよい。また、軸筒10内の圧力等が増大にした際に、インク垂れ等がペン先から生じることがあるが、本実施形態の筆記具Aでは、空気流通溝41bを介して軸筒10内と外気とを調整している。 キャップ60は、先軸20の先端側外周面に嵌合等により着脱自在に取り付けられるものである。キャップ60は、不透明の材料にて成形されるが、キャップ60の外から筆記部50を視認できるよう透明(又は半透明)な材料で成形してもよい。」 18 引用文献18の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前の令和2年4月2日に出願公開がされた引用文献18(特開2020-49672号公報)には、以下の事項が記載されている。 「【0020】 ・キャップ 非筆記時に前軸5を覆うキャップ2は、後端が開口され且つ前端が閉塞された、底壁と周壁とからなる円筒状の有底筒体であり、透明性を有する合成樹脂(例えば、ポリプロピレン等)の射出成形により得られる。前記キャップ2は、後述する紫外線吸収剤若しくは透明性紫外線遮蔽剤を含有、又は前記キャップ2表面に紫外線吸収剤若しくは透明性紫外線遮蔽剤を含む光安定層を設けられる。これにより、透明性を有する材料により形成した部材(キャップ2)を用いた筆記具1でありながら、前記筆記具1により形成される筆跡が初期から退色や褐変を生じて見栄えを損なうことがなく、ペン先形状や筆記具1内のインキの色調や残量を視認できる。」 19 引用文献19の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前の令和3年12月13日に出願公開がされた引用文献19(特開2021-187036号公報)には、以下の事項が記載されている。 「【0024】 図2は、キャップを軸体の前方に装着した状態を示す縦断面図で、一部を側面図で示した図である。図3は、軸体の一部拡大図である。 図に示すように、前軸3には、キャップ8を装着して、ボールペンチップ5bの保護ができるようにしてある。キャップ8は、開口端8a側の内周面に円環状の凸部8bを設けてあり、円環状の凸部8bが、前軸3の外周面に形成した突起部3eを乗り越えることでキャップ8が軸体2に係止され、同時に、ボールペンチップ5bが、キャップ8に設けたエラストマー製の内キャップ8cに当接して、ボールペンチップ5bの乾燥が防止される。 本実施形態では、後軸4が軟質樹脂であるポリプロピレンで成形され、キャップ8が硬質樹脂であるポリカーボネートで成形されている。また、後軸4及びキャップ8は共に、透明な樹脂で成形されており内部が視認できる。 また、本実施形態では、キャップ8の開口端8a側の内周面に突起8dを有しており、軸体2(後軸4)の外周面に、前記突起8dが摺動する螺旋状の溝2aを有している。螺旋状の溝2aにおける後壁部には、後方へ向かって窪む複数の凹部21a,22a,23aを有しており、螺旋状の溝2aにおける前壁部には、凹部21a,22a,23aと一対の後方へ向かって隆起する複数の凸部24a,25a,26aを有し、突起8dが螺旋状の溝2aを摺動する際に、突起8dが、複数の凸部24a,25a,26aに促されて、螺旋状の溝2aにおける複数の凹部24a,25a,26aに係止される。」 20 引用文献20の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前の平成24年5月24日に出願公開がされた引用文献20(特開2012-96418号公報)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【技術分野】 【0001】 本発明は水性マーキングペンに関する。更には、印字面のなぞり書きに適した水性マーキングペンに関する。」 (2)「【0017】 特に、ハイライト効果が高いことから着色樹脂顔料が好適に用いられる。前記着色樹脂顔料は、各種染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状のものが適用でき、印字上をなぞった際に印字の視認性を妨げることなくハイライト効果を付与できる。 特に、蛍光性染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料が有用であり、具体的には、ルミコールシリーズ(日本蛍光株式会社製)、SFシリーズ(シンロイヒ株式会社製)、LM21シリーズ(富士色素株式会社製)等が例示できる。」 21 引用文献21の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前の平成29年12月14日に出願公開がされた引用文献21(特開2017-218503号公報)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【技術分野】 【0001】 本発明は油性インキ組成物に関する。詳細には、非浸透面に形成した筆跡を確実に消去できる油性インキ組成物とそれを内蔵したマーキングペンに関する。」 (2)「【0017】 蛍光染料としては、汎用の油溶性蛍光染料を用いることができ、例えば、ベーシックイエロー1、ベーシックイエロー40、ベーシックレッド1、ベーシックバイオレット10、ベーシックバイオレット11:1、アシドイエロー7、アシドレッド92、アシドブルー9、ディスパーズイエロー121、ディスパーズブルー7、ダイレクトイエロー85、フルオロセントブライティングホワイテックスWS52、ソルベントイエロー44、ソルベントブルー5、ソルベントグリーン7等が挙げられる。 前記蛍光染料は一種又は二種以上を併用してもよく、インキ組成物中0.01~30重量%の範囲で用いられる。」 22 引用文献22の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前の平成7年6月20日に出願公開がされた引用文献22(特開平7-157691号公報)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、塗料、印刷インク、絵の具、筆記具、蛍光マ-カ-、蛍光トナ-、合成樹脂、繊維、防火標識、消化器具、火災報知器、危険標識、注意標識等の用いられる蛍光顔料に関し、さらに詳しくは、水に不溶ないしは難溶性でかつ有機溶剤に可溶である蛍光染料と合成樹脂との固溶体を粉末化してなる蛍光顔料に関する。」 (2)「【0003】現在広く用いられているいわゆる蛍光顔料は有機溶剤に可溶な-すなわち分散染料タイプまたは油溶性染料タイプの-蛍光染料と合成樹脂との固溶体を粉末化してなるものであり、昼光下にて美しい蛍光を発するものである。代表的な蛍光染料としては、「C.I.Disperse Yellow 82」、「C.I.Disperse Yellow 124」、「C.I.Solvent Yellow 94」、「C.I.Disperse Red 60」、「C.I.Solvent Red43」、「C.I.Solvent Red44」、「C.I.Solvent Red45」、「C.I.Solvent Red49」、等が例示される。これら染料と固溶体を形成する合成樹脂としては例えば、ポリメタクリル酸エステル、ユリア・ホルマリン樹脂、メラミン・ホルマリン樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、アルキッド樹脂、およびそれらの変成物等が用いられている。蛍光染料と合成樹脂は、合成樹脂の軟化温度以上にてニ-ダ-、エクストル-ダ、ロ-ルミル等により練り合わされ、冷却後に、チョ-パ-ミル等にて粗粉砕された後に、ファインミル、ジェットミル、超音速ジェットミル等により微粉砕、必要に応じて分級され、蛍光顔料として供される。」 第6 取消理由2(進歩性欠如)について 1 引用発明3を主引例とした判断 (1)本件訂正特許発明2について ア 対比 本件訂正特許発明2と引用発明3とを対比する。 (ア)引用発明3の「水性インク」、「軸筒」、「ペン体」、「キャップ」、「水溶性有機溶剤(グリセリン)」、「水(イオン交換水)」及び「マーキングペン」は、それぞれ、本件訂正特許発明2の「水性インク」、「軸筒」、「ペン先」、「キャップ」、「グリセリン」、「水」及び「筆記具」に相当する。 (イ)引用発明3の「軸筒」は、水性インクが充填されているから、本件訂正特許発明2の「軸筒」と引用発明1の「軸筒」とは、「水性インクが内蔵される」ものとの概念で一致する。 (ウ)引用発明3の「ペン体」は、軸筒の先端に摺動可能に嵌合され、水性インキを吐出可能であるから、本件訂正特許発明2の「ペン先」と引用発明2の「ペン体」とは、「軸筒の先端側に設けた水性インクが吐出可能な」ものとの概念で一致する。 (エ)引用発明3の「キャップ」は、マーキングペンに対し着脱可能に装着され、当該キャップが、軸筒の先端に嵌合したペン体に装着されることは技術常識であるから、本件訂正特許発明2の「キャップ」と引用発明3の「キャップ」とは、「軸筒のペン先側に着脱自在に装着される」ものとの概念で一致する。 (オ)引用発明3の水性インクの成分である「黄色蛍光樹脂顔料水分散液」は、「日本蛍光化学(株)製、ルミコール NKW-3905」を含んでおり、「日本蛍光化学(株)製、ルミコール NKW-3905」は、上記第2 6における引用文献6の記載事項によれば、スチレン・アクリロニトリル共重合体とともにC.I.basic Yellow 40を「色材(染料)」として含んでいることが看取できるから、「黄色蛍光樹脂顔料水分散液」は「色材」を内包した「黄色蛍光樹脂顔料」を含む水分散液といえる。そして、水性インクに含まれる「黄色蛍光樹脂顔料水分散液」は、黄色蛍光色の樹脂顔料である微粒子が水に分散されている形態であることは技術常識であるから、引用発明3の「黄色蛍光樹脂顔料水分散液」は、本件訂正特許発明2の「着色樹脂微粒子分散液」の下位概念である。したがって、本件訂正特許発明2の「水性インク」と引用発明3の「水性インク」は、「色材を内包した着色樹脂微粒子分散液」を含む点で共通する。 (カ)引用発明3の「水性インク」は、水溶性有機溶剤(グリセリン)を20重量%含有しているから、本件訂正特許発明2の「水性インク」と引用発明3の「水性インク」とは、グリセリンを、20重量%含有している点で一致する。 そうすると、本件訂正特許発明1と引用発明3とは、下記一致点で一致し、下記相違点3-1ないし相違点3-3で相違する。 [一致点] 「少なくとも、水性インクが内蔵される軸筒と、該軸筒の先端側に設けた水性インクが吐出可能なペン先と、該軸筒のペン先側に着脱自在に装着されるキャップと、を備えた筆記具であって、前記水性インクは、少なくとも、色材を内包した着色樹脂微粒子分散液と、グリセリン20質量%と、水とを含有する筆記具。」 [相違点3-1] 「キャップ」が、本件訂正特許発明2は、「透明性を有する材料にて形成されると共に、外部からペン先が視認することができる」ものであるのに対し、引用発明3は「透明性を有する材料にて形成され」たものかが不明であり、したがって「外部からペン先が視認することができる」ものであるかも不明である点。 [相違点3-2] 本件訂正特許発明2の「着色樹脂微粒子分散液」は、「色材として油溶性染料を内包」しているのに対し、引用発明3の「黄色蛍光樹脂顔料水分散液」は、「色材」が「油溶性染料」であるか明らかでない点。 [相違点3-3] 本件訂正特許発明2の「水性インク」は、「トリメチルグリシン」を含有して「50℃での蒸気圧が、10.4~11.9kPaである」のに対し、引用発明3の「水性インク」は「トリメチルグリシン」を含有しておらず、50℃での蒸気圧も不明である点。 イ 判断 (ア)上記相違点3-1について 上記引用文献16ないし19に示されているように、筆記部を視認するためにキャップを、透明性を有する材料にて形成することは周知技術(以下「周知技術1」という。)である。 そして、筆記具において、筆記部を視認可能とし、以て筆記部の状態を確認することは自明の課題であることからすると、引用発明3も同様に、筆記部の状態を確認するという課題を備えているといえる。 そうすると、引用発明3のキャップに、前記周知技術1を適用し、上記相違点1に係る構成である「透明性を有する材料にて形成されると共に、外部からペン先が視認することができるキャップ」とすることは、当業者が容易になし得るものである。 (イ)上記相違点3-2について a 引用発明3の水性インクに含まれる「黄色蛍光樹脂顔料水分散液」は、「ルミコール NKW-3905」を含んでいる。 b 上記第2 20のとおり、引用文献20に、「蛍光性染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料」が有用であることが記載されており、具体的には蛍光顔料として「ルミコールシリーズ(日本蛍光株式会社製)」が例示されている。 c 上記第2 6のとおり、「ルミコール NKW-3905」は、「C.I.Basic Yellow 40」を成分に含んでいる。 d 上記第2 21のとおり、「ベーシックイエロー40」は「汎用の油溶性蛍光染料」であるから、引用発明3の「ルミコール NKW-3905」に含まれる「C.I.Basic Yellow 40」は、「油溶性染料」であるといえる。 e 仮に、「ルミコール NKW-3905」に含まれる「C.I.Basic Yellow 40」が「油溶性染料」とはいえないとしても、上記dから「蛍光染料」として「汎用の油溶性蛍光材料」が用いられていること、及び、上記第2 22のとおり、引用文献22に記載されているように「筆記具」や「蛍光マーカー」に用いられる「蛍光顔料は有機溶剤に可溶な-すなわち分散染料タイプまたは油溶性染料タイプの-蛍光染料と合成樹脂との固溶体を粉末化してなる」ことは周知の技術(以下「周知技術2」という。)である。 f したがって、相違点2は、上記dのとおり実質的な相違点ではないか、又は、上記eから当業者が周知技術2に基づいて当業者が容易に想到し得る程度のものにすぎない。 (ウ)相違点3-3について a 相違点3-3について検討するにあたり、引用発明3の「水性インク」の「50℃での蒸気圧」を算出して推定した後に、「トリメチルグリシン」を含有させることについて検討する。 b インキ組成物の50℃での蒸気圧の算出方法 本件特許明細書の段落【0029】には、「本実施形態(後述する実施例等も含む)において、「50℃での蒸気圧」とは、静止法で測定した値をいう。」と記載されている。 ここで、純粋な液体Aの蒸気圧をPA*、純粋な液体Bの蒸気圧をPB*とした場合に、それぞれの成分の蒸気圧、つまり、分圧(PAとPB)は、それぞれの成分のモル分率(xAとxB) に比例し、その比例定数は純粋な液体の蒸気圧であることが知られている(以下式(1)、ラウールの法則)。 PA=PA*xAおよびPB=PB*xB (1) したがって、水蒸気圧は、飽和水蒸気圧と水のモル分率との積で表される(以下式(2))。このことは、本件特許発明の出願当時において技術常識であったといえる。 Px=Pmax×N (2) (上記式中、Pxは、x℃における水蒸気圧、Pmaxは、x℃における飽和水蒸気圧、Nは水のモル分率を表す。) c 引用発明3の実施例1に記載されたインキ組成物の50℃での蒸気圧の算出 上記式(2)に基づき、引用発明3の実施例1に記載されたインキ組成物の50℃での蒸気圧は、以下のように算出することができる。 Pmaxについて、水の50℃における飽和水蒸気圧が、約12.3kPaであることは技術常識である(日本機械学会「蒸気表」等参照。)。 そこで、この技術常識に基づいて、引用発明3の水性インクの50℃での蒸気圧P1[kPa]を算出する。 50℃での蒸気圧の算出に必要とされる各成分のモル分率は、下記(a)~(c)のとおり算出でき、(a)~(c)の結果を用いることで引用発明3の水性インクの50℃での蒸気圧P1が下記(d)のとおり算出できる。 (a)引用発明3の水性インク中の各成分の重量割合の整理 (a-1)黄色蛍光樹脂顔料水分散液中の各成分の重量割合 まず、黄色蛍光樹脂顔料水分散液中の各成分の重量割合(重量%)について検討する。 上記第5 6を参照すると、引用発明3の水性インクに含まれる黄色蛍光樹脂顔料水分散液(ルミコールNKW-3905)における、スチレン・アクリロニトリル共重合体及びC.I. Basic Yellow 40からなる顔料固形分の重量割合と、水の重量割合とが不明であるところ、仮に、顔料固形分の重量割合が0重量%であるとすると、黄色蛍光樹脂顔料水分散液中の水の重量割合は、エチレングリコール5重量%、ポリ(オキシンエチレン)=ノニルフェニルエーテル1重量%、並びに、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩1重量%の総和を、100重量%から差し引いた93重量%である。 一方、仮に、黄色蛍光樹脂顔料水分散液中の水の重量割合が0重量%であるとすると、黄色蛍光樹脂顔料水分散液中の顔料固形分の重量割合は、エチレングリコール5重量%、ポリ(オキシンエチレン)=ノ二ルフェニルエーテル1重量%、並びに、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩1重量%の総和を、100重量%から差し引いた93重量%である。 よって、黄色蛍光樹脂顔料水分散液中の水の重量割合は、0重量%(顔料固形分の重量割合が93重量%の場合)~93重量%(顔料固形分の重量割合が0重量%の場合)の範囲内であり、黄色蛍光樹脂顔料水分散液中の顔料固形の重量割合は、0重量%(水の重量割合が93重量%の場合)~93重量%(水の重量割合が0重量%の場合)の範囲内であるといえる。 上記第5 6の記載を参酌すると、ルミコールNKW-3905中の各成分は、以下の<ルミコールNKW-3905の重量割合>に記載のとおりの重量割合である。 ここで、以下に示される重量割合において、顔料固形分の重量割合が0重量%の場合、水の重量割合は93重量%であり、顔料固形分の重量割合が93重量%の場合、水の重量割合は0重量%である。 (a-2)ルミコールNKW-3905の重量割合 0重量%~93重量% 顔料固形分 1重量% ポリ(オキシンエチレン)=ノニルフェニルエーテル 1重量% 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩 5重量% エチレングリコール 0重量%~93重量% 水 (a-3)引用発明3の水性インク中の各成分の重量割合 次に、引用発明3の水性インク中の各成分の重量割合について検討する。 引用発明3の水性インクに含まれる黄色蛍光樹脂顔料水分散液(ルミコールNKW-3905)の重量割合が50重量%であるため、上記(a-1)より、ルミコールNKW-3905中の顔料固形分の重量割合が0重量%である場合、引用発明3の水性インク中の水の重量割合は、28.8重量%+50重量%×93重量%(ルミコールNKW-3905中の水の含有率)/100=75.3重量%である。 このとき、引用発明3の水性インク中の顔料固形分の重量割合は、0重量%である。 一方、ルミコールNKW-3905中の顔料固形分の重量割合が93重量%である場合、引用発明3の水性インク中の水の重量割合は28.8重量%である。 このとき、引用発明3の水性インク中の顔料固形分の重量割合は、50重量%×93重量%/100=46.5重量%である。 また、引用発明3の水性インク中のエチレングリコールの重量割合は、50重量%×5重量%/100=2.5重量%であり、引用発明3の水性インク中のポリ(オキシンエチレン)=ノニルフェニルエーテルの重量割合は、50重量%×1重量%/100=0.5重量%であり、引用発明3の水性インク中の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩の重量割合は、50重量%×1重量%/100=0.5重量%である。 以上より、引用発明3の水性インク中の各成分は、以下の重量割合を有するといえる。 ここで、以下に示される重量割合において、水の重量割合は、100-(顔料固形分の重量割合+エチレングリコールの重量割合+ポリ(オキシンエチレン)=ノニルフェニルエーテルの重量割合+直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩の重量割合+水溶性有機溶剤(グリセリン)の重量割合+防腐剤(デルトップ)の重量割合+界面活性剤(エマレックス)の重量割合+ペパーミントオイルの重量割合)から以下のように計算できる。 顔料固形分の重量割合が0重量%の場合、水の重量割合は、100-(0+2.5+0.5+0.5+20+0.2+0.5+0.5)=75.3重量%であり、顔料固形分の重量割合が46.5重量%の場合、水の重量割合は、100-(46.5+2.5+0.5+0.5+20+0.2+0.5+0.5)=28.8重量%である。 (a-4)引用発明3の水性インク中の各成分の重量割合 0~46.5重量% 顔料固形分 2.5重量% エチレングリコール 0.5重量% ポリ(オキシンエチレン)=ノニルフェニルエーテル 0.5重量% 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩 20重量% 水溶性有機溶剤(グリセリン) 0.2重量% 防腐剤(デルトップ) 0.5重量% 界面活性剤(エマレックスCG-4) 0.5重量% ペパーミントオイル(精油) 28.8~75.3重量% 水 (b)引用発明3の水性インク中の各成分の物質量の算出 次に、引用発明3の水性インク中の各成分の物質量(mol)を算出する。 成分のモル分率が大きいほど(物質量が大きいほど)、その成分が50℃での蒸気圧に寄与する割合は大きくなる。 そして、成分の物質量は、その成分の重量が同じ場合、その成分の分子量が小さいほど大きくなる。 なお、引用発明3の水性インク中の成分のうち分子量の上限が不明であることから、ポリ(オキシンエチレン)=ノニルフェニルエーテル、デルトップ及びペパーミントオイルの分子量として、各分子量の下限値を用いることにより、各成分の実際の分子量を使った場合に比べ、各成分のモル分率は大きくなる。(これら各成分のモル分率が非常に小さければ、これら各成分の実際の分子量を使った場合でもこれら各成分のモル分率が非常に小さい(=これら各成分が50℃での蒸気圧に寄与する割合が非常に小さい)といえる。) ここで、引用発明3の水性インクの重量をAとする。 なお、顔料固形分(スチレン・アクリロニトリル共重合体染色物)は水性インク中で固体の状態であり、蒸気圧の算出に寄与しないため、顔料固形分の物質量の算出は省略する。 エチレングリコールの分子量は62であるから、エチレングリコールの物質量は(2.5重量%/100)×A/62=0.0004Amolと算出される。 ポリ(オキシンエチレン)=ノニルフェニルエーテルの分子量は、分子式が(C2H40)nC15H24Oであるため、264(n=1の場合の分子量)以上である。 このため、ポリ(オキシンエチレン)=ノニルフェニルエーテルの分子量として264を用いる。 これより、ポリ(オキシンエチレン)=ノニルフェニルエーテルの物質量は、(0.5重量%/100)×A/264=0.000019Amo1と算出される。 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩の分子量は、その一例であるドデシルベンゼンスルホン酸(第5 7参照)の分子式がC18H29S03であるため、326とする。 これより、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩の物質量は、(0.5重量%/100)×A/326=0.000015Amolと算出される。 グリセリンの分子量は92であるから、グリセリンの物質量は、(20重量%/100)×A/92=0.0022Amolと算出される。 上記第5 8より、デルトップの分子量が74.2以上であることは、本件特許の出願時の技術常識であったといえる。 このため、デルトップの分子量として74.2を用いる。 これより、デルトップの物質量は、(0.2重量%/100)×A/74.2=0.000027Amo1と算出される。 上記第5 9より、エマレックスCG-4の分子量が1389であることは、本件特許の出願時の技術常識であったといえる。これより、エマレックスCG-4の物質量は、(0.5重量%/100)×A/1389=0.000004Anolと算出される。 上記第5 10より、ペパーミントオイルの分子量が92.4以上であることは、本件特許の出願時の技術常識であったといえる。このため、ペパーミントオイルの分子量として92.4を用いる。 これより、ペパーミントオイルの物質量は、(0.5重量%/100)×A/92.4=0.000054Amolと算出される。 水の分子量を18とすると、水の物質量の下限値は、(28.8重量%/100)×A/18=0.016molと算出され、水の物質量の上限値は、(75.3重量%/100)×A/18=0.042molと算出される。 以上より、引用発明3の水性インクの各成分は、以下の物質量を有するといえる。 なお、顔料固形分の物質量は算出していないためその記載を省略している。 (b-1)引用発明3の水性インク中の各成分の物質量 顔料固形分 0.0004Amol エチレングリコール 0.000019Amol ポリ(オキシンエチレン)=ノニルフェニルエーテル 0.000015Amol 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩 0.0022Amol 水溶性有機溶剤(グリセリン) 0.000027Amol 防腐剤(デルトップ) 0.000004Amol 界面活性剤(エマレックスCG-4) 0.000054Amol ペパーミントオイル(精油) 0.016A~0.042Amol 水 (c)引用発明3の水性インク中の各成分のモル分率の算出 次に、引用発明3の水性インク中の各成分のモル分率を算出する。ここで、上記(b-1)より、ポリ(オキシンエチレン)=ノニルフェニルエーテル、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、デルトップ、エマレックスCG-4及びペパーミントオイルの物質量はいずれも、水の物質量の下限値(0.016Amol)より非常に小さいため、これら成分のモル分率も非常に小さくなる。 例えば、水の物質量が下限値(0.016Amo1)である場合、デルトップのモル分率は0.000027Amol/0.016A=0.0017未満であり、この値は後述する水のモル分率(0.86~0.94)より非常に小さい。 よって、これら成分の物質量はモル分率の算出において無視できるため、エチレングリコール、グリセリン及び水のモル分率を算出する。 上記(b)より水の物質量が0.016A~0.042Amolであるため、水の物質量が0.016Amo1(下限値)である場合の各成分のモル分率、及び、水の物質量が0.042Amol(上限値)である場合の各成分のモル分率を算出することで、各成分のモル分率の範囲を算出する。 (c-1)水の物質量が0.016Amolである場合 エチレングリコールのモル分率は、0.0004A/(0.0004A+0.0022A+O.016A)=0.02と算出される。 グリセリンのモル分率は、0.0022A/(0.0004A+0.0022A+0.016A)=0.12と算出される。 水のモル分率は、0.016A/(0.0004A+0.0022A+0.016A)=0.86と算出される。 (c-2)水の物質量が0.042Amolである場合 エチレングリコールのモル分率は、0.0004A/(0.0004A+0.0022A+0.042A)=0.009と算出される。 グリセリンのモル分率は、0.0022A/(0.0004A+0.0022+0.042A)=0.05と算出される。 水のモル分率は、0.042A/(0.0004A+0.0022A+0.042A)=0.94と算出される。 (c-3)以上より、引用発明3の水性インク中の各成分は、以下のモル分率を有するといえる。 以下に示されるモル分率において、水のモル分率が0.86の場合、エチレングリコールのモル分率が0.02であり、水溶性有機溶剤(グリセリン)のモル分率が0.12である。また、水のモル分率が0.94の場合、エチレングリコールのモル分率が0.009であり、水溶性有機溶剤(グリセリン)のモル分率が0.05である。 なお、エチレングリコール、グリセリン及び水以外のモル分率は算出していないためその記載を省略している。 (c-4)引用発明3の水性インク中の各成分のモル分率 顔料固形分 0.009~0.02 エチレングリコール ポリ(オキシンエチレン)=ノニルフェニルエーテル 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩 0.05~0.12 水溶性有機溶剤(グリセリン) 防腐剤(デルトップ) 界面活性剤(エマレックスCG-4) ペパーミントオイル(精油) 0.86~0.94 水 (d)引用発明3の水性インクの50℃での蒸気圧 次に、引用発明3の水性インクの50℃での蒸気圧P1[kPa]を算出する。 上記(c-4)より、引用発明3の水性インクにおいて、水のモル分率が0.86~0.94であるため、まず、水のモル分率の下限値(0.86)及び上限値(0.94)のそれぞれにおける蒸気圧P1[kPa]を算出する。 ここで、上記bの通り、水の50℃の蒸気圧は12.3kPaである。また、エチレングリコールの50℃の蒸気圧は0.093kPaであり、グリセリンの50℃の蒸気圧は0.00033kPaであることも技術常識である。 引用発明3において、水のモル分率が0.86である場合、エチレングリコールのモル分率が0.02であり、グリセリンのモル分率が0.12であるから、水性インクの蒸気圧P1[kPa]は以下のように算出される。 (d-1) P1[kPa] =0.86×l2.34+0.02×0.093+0.12×0.00033 =10.6+0.00019+0.00004 =10.6[kPa] 引用発明3において、水のモル分率が0.94である場合、エチレングリコールのモル分率が0.009であり、グリセリンのモル分率が0.05であるから、水性インクの蒸気圧P1[kPa]は以下のように算出される。 (d-2) P1[kPa] =0.94×l2.34+0.009×0.093+0.05×0.00033 =11.6+0.0008+0.00002 =11.6[kPa] d したがって、上記(d-1)及び(d-2)によれば、引用発明3の「水性インク」は、本件訂正特許発明2の「水性インク」と、「50℃での蒸気圧が、10.6~11.6kPa」の範囲のいずれかで一致することが推認できる。 e しかしながら、本件訂正特許発明2の「水性インク」は、さらに「トリメチルグリシン」を含有して、かつ「50℃での蒸気圧が、10.4~11.9kPa」とされたものであるから、上記第5 12の引用文献12の記載事項及び上記第5 13の引用文献13の記載事項のように、「ペン先の耐乾燥性の向上、又は、ペン先のドライアップを防止するために、水性インクにトリメチルグリシンを含有させること」が周知の技術(以下「周知技術3」という。)であったとしても、水性インクの50℃での蒸気圧をキャップの結露を防止できる範囲に収めることまで、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 より詳細に検討すると、引用文献12の記載事項では、「トリメチルグリシンの含有量」を「インク組成物全量に対して、0.5~50%、好ましくは、1~15%、より好ましくは、2~10%とすること」とされており、引用文献13の記載事項では、「トリメチルグリシンの含有量」を「インク組成物全量に対して、好ましくは、0.5~10%、更に好ましくは、1~5%とすることが望ましい」とされていることからすると、トリメチルグリシンの含有量は広い範囲で調整でき、トリメチルグリシンの含有量に応じて水の蒸気圧が変化することは明らかである。そして、キャップ内の結露を防ぐために水性インクの蒸気圧を調整する認識がない引用発明3及び周知技術3に基づいて、キャップ内の結露を防止するために、本件訂正特許発明2の「水性インク」の「50℃での蒸気圧が、10.4~11.9kPa」となるように「トリメチルグリシン」及びその他の組成物の含有量を決めることを、当業者が容易になし得たとはいえない。 また、特許異議申立人が提出した、又は、当審で提示したいずれの証拠をみても、上記相違点3-3は記載されていないし、設計事項といえる理由もない。 f そして、本件訂正特許発明2は、上記相違点3-1及び相違点3-3の構成を備えることにより、「保管時のドライアップを更に効果的に防止することができる筆記具を提供すること、及び、キャップ内での結露の発生もなく、見栄えを損なうことがなく、更に、ペン先の形状や水性インクの色調を透過性のあるキャップを通して視認することができるため、筆記具品質、商品価値の高い筆記具が得られること」(本件訂正特許明細書【0011】、【0075】参照。)との効果を奏する。 (エ)そうすると、本件訂正特許発明2は、引用発明3及び周知技術1ないし周知技術3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということはできない。 (2)本件訂正特許発明3について 本件訂正特許発明3は、本件訂正特許発明2の発明特定事項を引用するものであるから、本件訂正特許発明3と引用発明3は、少なくとも上記相違点3-3において相違するものである。 そして、上記(1)イ(ウ)e及びfの検討のとおり、当業者が引用発明3及び周知技術1ないし周知技術3から相違点3-3に係る事項を容易に想到できたとすることはできない。 (3)本件訂正特許発明4について 本件訂正特許発明4は、本件訂正特許発明2の発明特定事項を引用するものであるから、本件訂正特許発明4と引用発明3は、少なくとも上記相違点3-3において相違するものである。 そして、上記(1)イ(ウ)e及びfの検討のとおり、当業者が引用発明3及び周知技術1ないし周知技術3から相違点3-3に係る事項を容易に想到できたとすることはできない。 2 引用発明2を主引例とした判断 (1)本件訂正特許発明2について ア 対比 本件訂正特許発明2と引用発明2とを対比する。 (ア)引用発明2の「可逆熱変色性水性インキ組成物」、「軸筒」、「ペン体」、「キャップ」、「グリセリン」、「水」及び「筆記具」は、それぞれ、本件訂正特許発明2の「水性インク」、「軸筒」、「ペン先」、「キャップ」、「グリセリン」、「水」及び「筆記具」に相当する。 (イ)引用発明2の「軸筒」は、可逆熱変色性水性インキ組成物を収容しているから、本件訂正特許発明2の「軸筒」と引用発明2の「軸筒」とは、「水性インクが内蔵される」ものとの概念で一致する。 (ウ)引用発明2の「ペン体」は、軸筒の筆記先端部に装着し、可逆熱変色性水性インキ組成物を吐出可能であるから、本件訂正特許発明1の「ペン先」と引用発明2の「ペン体」とは、「軸筒の先端側に設けた水性インクが吐出可能な」ものとの概念で一致する。 (エ)引用発明2の「キャップ」は、筆記具に対し着脱可能に装着され、当該キャップが、軸筒の先端側に設けたペン体に装着されることは技術常識であるから、本件訂正特許発明2の「キャップ」と引用発明2の「キャップ」とは、「軸筒のペン先側に着脱自在に装着される」ものとの概念で一致する。 (オ)引用発明2の「可逆熱変色性マイクロカプセル顔料」は、顔料であるから「色材」といえるものである。したがって、引用発明2の「可逆熱変色性水性インキ組成物」と本件訂正特許発明2の「水性インク」とは、「色材」を含むものとの概念で一致する。 (カ)引用発明2の可逆熱変色性水性インキ組成物は、グリセリンを、20.0部含有しているから、本件訂正特許発明2の「水性インク」と引用発明2の「可逆熱変色性水性インキ組成物」とは、グリセリンを、20質量%含有している点で一致する。 (キ)そうすると、本件訂正特許発明2と引用発明2とは、下記一致点で一致し、少なくとも下記相違点2-1で相違する。 [一致点] 「少なくとも、水性インクが内蔵される軸筒と、該軸筒の先端側に設けた水性インクが吐出可能なペン先と、該軸筒のペン先側に着脱自在に装着されるキャップと、を備えた筆記具であって、 前記水性インクは、少なくとも、色材と、グリセリン20質量%と、水とを含有する筆記具。」 [相違点2-1] 本件訂正特許発明2の「水性インク」は、「トリメチルグリシン」を含有して「50℃での蒸気圧が、10.4~11.9kPaである」のに対し、引用発明2の「水性インク」は「トリメチルグリシン」を含有しておらず、50℃での蒸気圧も不明である点。 イ 相違点2-1についての判断 上記1(1)イ(ウ)e及びfで検討したとおり、周知技術3を考慮したとしても、キャップ内の結露を防ぐために水性インクの蒸気圧を調整する認識がない引用発明2及び周知技術3に基づいて、キャップ内の結露を防止するために、本件訂正特許発明2の「水性インク」の「50℃での蒸気圧が、10.4~11.9kPa」となるように「トリメチルグリシン」及びその他の組成物の含有量を決めることを、当業者が容易になし得たとはいえない。 また、特許異議申立人が提出した、又は、当審で提示したいずれの証拠をみても、上記相違点2-1は記載されていないし、設計事項といえる理由もない。 (2)本件訂正特許発明3について 本件訂正特許発明3は、本件訂正特許発明2の発明特定事項を引用するものであるから、本件訂正特許発明3と引用発明2は、少なくとも上記相違点2-1において相違するものである。 そして、上記(1)イの検討のとおり、当業者が相違点2-1に係る事項を容易に想到できたとすることはできない。 (3)本件訂正特許発明4について 本件訂正特許発明4は、本件訂正特許発明2の発明特定事項を引用するものであるから、本件訂正特許発明4と引用発明2は、少なくとも上記相違点2-1において相違するものである。 そして、上記(1)イの検討のとおり、当業者が相違点2-1に係る事項を容易に想到できたとすることはできない。 3 取消理由2(進歩性欠如)についてのまとめ 以上のとおり、本件訂正特許発明2ないし4は、引用発明2、引用発明3及び周知技術1ないし3によ基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項に該当しない。 第7 取消理由3(サポート要件違反)について 1 発明の詳細な説明の記載 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下のとおり記載されている。 「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 ところで、上記特許文献1の筆記具の水分蒸発防止兼結露防止装置は、軸筒内に連続気孔を有する特定物性の吸液体を装着して水分蒸発防止兼結露防止を行うものであり、本発明の近接技術を開示するものであるが、本発明はインキ組成・物性等の点から、結露等の抑制や防止、並びに、保管時のドライアップを更に効果的に防止するものであり、本発明と上記特許文献1とは技術思想が相違するものである。 また、上記特許文献2の筆記具は、ペン先形状や筆記具内のインキの色調や残量を視認するために、透明性を有する材料にてキャップや保持体を形成する場合に、該キャップや保持体に紫外線吸収剤若しくは透明性紫外線遮蔽剤を含有、又はキャップや保持体の表面に光安定層を形成したりするものであり、本発明とは、発明の課題及び技術思想が相違するものである。 【0008】 本発明は、上記従来技術の課題及び現状などに鑑み、これを解消しようとするものであり、キャップが装着される筆記具であっても、キャップ内での結露の発生もなく、筆記具品質、商品価値の高い筆記具を提供すること、また、保管時のドライアップを更に効果的に防止することができる筆記具を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0009】 本発明者らは、上記従来の課題等に鑑み、鋭意研究を行った結果、少なくとも、水性インクが内蔵される軸筒と、該軸筒の先端側に設けた水性インクが吐出可能なペン先と、該軸筒のペン先側に着脱自在に装着されるキャップと、を備えた筆記具であって、前記水性インクを特定物性・特定の配合組成等とすることにより、上記目的の各筆記具が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。 【0010】 すなわち、本発明の筆記具は、少なくとも、水性インクが内蔵される軸筒と、該軸筒の先端側に設けた水性インクが吐出可能なペン先と、該軸筒のペン先側に着脱自在に装着されるキャップと、を備えた筆記具であって、前記水性インクは、50℃での蒸気圧が、10.3~12.3kPaであることを特徴とする。 前記水性インクには、更に、水溶性ベタイン類を含有することが好ましい。 前記ペン先は、筆記方向を視認することができる窓部を有することが好ましい。 前記キャップの内面に親水化処理を施すことが好ましい。 【発明の効果】 【0011】 本発明によれば、キャップが装着される筆記具であっても、キャップ内での結露の発生もない筆記具品質、商品価値の高い筆記具が提供される。 また、キャップ内面を親水化処理し、その接触角を低下させ、その濡れ性を向上させることで、キャップ内面に結露液が広がり表面積が増え、結露液の揮発が促進されることにより、保管時(キャップをしている状態)での、ペン先のドライアップを更に抑制できる筆記具が提供される。 本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるものである。上述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。」 「【実施例】 【0068】 〔実施例1~10及び比較例1~2〕 下記表1に示す、配合処方にしたがって、常法により各筆記具用水性インク組成物を調製した。 また、得られた各筆記具用水性インク組成物について、下記構成の筆記具に搭載させた。得られた各筆記具を用いて、下記各評価方法により、結露の有無、筆記性能について、評価した。これらの結果を下記表1に表す。 【0069】 (筆記具の構成) 下記構成及び図1~図2に準拠するペン先、筆記具を使用した。ペン先、保持体等の寸法、物性等は下記に示すものを使用した。 【0070】 (ペン先20の構成) アクリル樹脂製、可視光線透過率85%〔スガ試験機社製、多光源分光測色計(MSC-5N)にて反射率を測定し、可視光線透過率とした。〕 視認部(窓部)43(四角形)の大きさ:10mm×8mm×5mm×5mm 視認部の幅:3mm 筆記芯30:薄板体31,31の構成:ポリエチレン製焼結芯、幅方向長さ:2mm、長手方向長さ:20mm、厚さ:0.5mm、筆記部25:ポリエチレン製焼結芯、気孔率:50%、4×3×6mm、厚さ=3mm、長手方向長さ=5mm 【0071】 インク吸蔵体15:PET繊維束、気孔率85%、φ6×80mm 筆記具本体10、キャップ60、70:ポリプロピレン(PP)製 ペン先50:ポリエステル製繊維束芯、気孔率60% 、φ2×40mm キャップ60:ポリプロピレン(PP)製、透過度:70% キャップ70:ポリプロピレン(PP)製、透過度:60% 【0072】 (結露の有無の評価方法) 得られた各筆記具を用いて、ホットカーペット上において9時間放置して、下記評価基準でキャップ60、70内の結露の有無を評価した。 評価基準: A:結露なし。 B:少し曇っている。 C:大部分曇っている。 D:液滴が発生している。 E:液が溜まっている。 【0073】 (筆記性能の評価方法) 得られた各筆記具を用いて、PPC用紙に対し、25cmの直線筆記して、下記評価基準で筆記性能を評価した。 評価基準: A:筆記描線に異常なし。 B:一部薄くなる箇所があるが、殆どの筆記描線には異常なし。 E:ほぼ掠れている。 【0074】 【表1】 [図:0001422399000010.jpg] 【0075】 上記表1の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1~10の各筆記具用水性インク組成物を搭載した筆記具は、本発明の範囲外となる比較例1~2に較べ、透明性を有する材料にて形成されたキャップが装着される筆記具であっても、筆記性能を損なうことなく、キャップ内での結露の発生もなく、見栄えを損なうことがなく、更に、ペン先の形状や水性インクの色調を透過性のあるキャップを通して視認することができるため、筆記具品質、商品価値の高い筆記具が得られることが確認された。 【0076】 また、実施例1~10の各筆記具は、図1~図2に準拠するものであり、インク吸蔵体15からのインクの誘導を筆記部25の厚さよりも薄く、流出性のある薄板体31,31で筆記部25まで誘導するものであり、また、この筆記部25、薄板体31,31を含む外形がU字状の筆記芯30は上記構成のポリエチレン製焼結芯から構成されているので、気孔率に対する毛管力の強さが大きく、しかも、その厚さは極めて薄くでき、インク流出性が良好であり、インク誘導部を太く設計する必要がなく、視認部43が阻害されず、また、上記筆記芯30の保持体40の側面と当接する部分を断面矩形形状とすることにより、断面積に対する視認部43の幅を広げることができると共に、保持体40の視認部43の外周縁を傾斜状の屈折面43a、43aとすることにより、矩形断面を細く見せることができるので、右利きで左から右方向に筆記する際に、視認部43で筆記方向を視認しながら筆記部25で描線を引くことなどができ、また、ペン先全体に対する視認部の有効面積の最大化と共に、上記特性の薄板体31、31により一体構成の筆記部25へ効率よくインクが供給されるので、そのインク流出性も良好で有り、インクの流出性を損なうことなく、視認部43の有効面積の最大化を達成することができる筆記具が得られることが確認された。また、1mの高さから落下させた後でも、掠れることなく筆記できることが確認できた。 【0077】 実施例11~12の筆記具は、キャップの内面に親水化処理を施した。 上記で用いた筆記具のキャップ60、70において、下記方法でキャップ60、70の各内面に親水化処理を施した。 (親水化処理方法) ポリシリケート系親水性コーティング剤「NP-235(大光テクニカル社製)」により、塗布後、室温(25℃)にて乾燥させたことで、キャップ60、70の内面に親水化処理を施した。 この筆記具を用いて、実施例8のインク組成で結露の有無について、評価したところ、結露の有無では「A」となり、比較例2のインク組成での結露の有無では「B」となり、親水化処理があることが確認できた。また、筆記性能も実施例11では「A」、実施例12では「B」となった。」 2 本件訂正特許発明が解決しようとする課題について 上記1より、本件訂正特許発明が解決しようとする課題は、「キャップが装着される筆記具であっても、キャップ内での結露の発生もなく、筆記具品質、商品価値の高い筆記具を提供すること、また、保管時のドライアップを更に効果的に防止することができる筆記具を提供すること」であると認める。 3 課題を解決するための手段について 上記2の課題に対し、本件特許明細書に記載された実施例1ないし8のうち、実施例1ないし6は、「結露の有無」の評価が「A」もしくは「B」であり、上記課題を解決するものと認める。 そうすると、本件訂正特許発明が解決しようとする課題を解決するための手段は、「グリセリン」の配合が、15~40質量%であると認められる。 本件訂正により、請求項2ないし4は、実施例1ないし6に対応した「グリセリン」の配合が「15~40重量%」とされ、併せて「水性インク」の50℃での蒸気圧も実施例1ないし6に対応する「10.4~11.9kPa」に訂正された。 そうすると、本件訂正特許発明2ないし4は、上記課題を解決するための手段が反映されたものになった。 4 取消理由3のまとめ 本件特許の請求項2ないし4の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないとはいえない。 第8 特許異議申立人1が令和6年9月19日に提出した意見書における主張について 特許異議申立人1が令和6年9月19日に提出した意見書(2-2)における「『色材として油溶性染料を内包した着色樹脂微粒子分散液』の範囲に如何なる対象が含まれ、如何なる対象が含まれないのかが不明確である(当審註:以下「主張1」という。)。また、意見書で本件発明2と引用文献3との相違点として主張された効果が、『色材として油溶性染料を内包した着色樹脂微粒子分散液』の範囲内の全てで奏され、範囲外では奏されない効果であるかについて、何らの根拠も示されていない。」と主張している(当審註:以下「主張2」という。)。これは、前者が特許法第36条第6項第2号のいわゆる明確性違反、及び、後者が特許法第36条第6項第1号のいわゆるサポート要件違反を主張する趣旨と認められる。 上記主張1について検討する。色材としての「油溶性染料」、「油溶性染料を内包した着色樹脂微粒子」、「着色樹脂微粒子分散液」のいずれも技術用語として明確であり、本件訂正特許明細書の【0018】、【0021】に例示もあるから、特許法第36条第6項第2号違反すなわち明確性違反ということはできない。 次に、上記主張2について検討する。本件訂正特許発明は、その主たる課題解決手段が「水性インク」の「50℃での蒸気圧」にあるから、「水性インク」の「50℃での蒸気圧」が課題を解決するための手段として特定されていれば、「色材として油溶性染料を内包した着色樹脂微粒子分散液」を構成する固形物質が「水性インク」の「50℃での蒸気圧」に寄与しないことは技術常識であるので、特許法第36条第6項第1号すなわちサポート要件違反ということはできない。 第9 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許異議申立理由の概要 取消理由4(新規性欠如)請求項1ないし3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1ないし3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能になった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1ないし3に係る発明は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 取消理由5(進歩性欠如)請求項1ないし4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし4に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 記 取消理由4: 引用文献1 引用文献2 引用文献3 取消理由5: 引用文献1~引用文献22 引用文献23:特開平6-346013号公報(特許異議申立人2が提出した甲第21号証) 引用文献24:特開平5-117568号公報(特許異議申立人2が提出した甲第28号証) 引用文献25:特開2020-49672号公報(特許異議申立人2が提出した甲第22号証) 引用文献26:特開2016-107521号公報(特許異議申立人2が提出した甲第23号証) 取消理由5-1: 引用発明1を主引例とする。 取消理由5-2: 引用文献23に記載された発明を主引例とする。 取消理由5-3: 引用発明24に記載された発明を主引例とする。 2 当審の判断 (1)引用文献 ア 引用文献23の記載事項及び引用発明 本件特許に係る出願の優先日前の平成6年12月20日に出願公開がされた引用文献23(特開平6-346013号公報)には、以下の事項が記載されている。 (ア)「【0004】【課題を解決するための手段】本発明の水性蛍光顔料インキはラクチトールを含む水性ビヒクル中に蛍光顔料が分散されてなる。用いられる蛍光顔料はこの種のインキに用いられるルミコールNKW-3000シリーズ(日本蛍光(株)商品名)、同3600シリーズ、フジLMイエロー31シリーズ(富士色素(株)商品名)及びビクトリアイエローG-20(御国色素(株)商品名)等であり、インキ組成中 乃至 重量%の範囲で用いられる。」 (イ)「【0007】【実施例】ラクチトールの量を変化させた9種の水性ビヒクルに蛍光顔料を分散させて、試料インキを調製した。各試料インキを繊維束樹脂加工体からなるペン体及び繊維束インキ吸蔵体を備えたマーキングペンに所定量充填して試料ペンとした。試料ペンを用いて一面に印字された感熱記録紙(UG-0002B4,松下電送(株))の印字上に塗布し、塗布された筆跡の外観を1日、1週間及び1ケ月後に、普通紙上の標準筆跡と比較観察した。」 (ウ)「【0008】試料インキの組成及び試験結果を表1に示す。 【表1】 [図:0001422399000011.jpg] 表中の原料の内容及び試験結果の記号の内容は以下のとおり。尚、組成の数値はすべて重量部であり、( )内は顔料固形分を表す。 原料の内容の説明 ルミコールNKW-3005:42%黄色蛍光顔料水性分散体」 (エ)上記(ア)及び(イ)によると、繊維束インキ吸蔵体には試料インキが吸蔵されることから、試料インキである水性蛍光顔料インキがインキ吸蔵体に充填されているといえる。 (オ)上記(ウ)から、ルミコールNKW-3005を50重量部含む実施例の試料インク中に顔料固形分が21重量部含まれることが読み取れるから、ルミコールNKW-3005 中の顔料固形分の重量割合は42重量%であると認められる。 上記記載事項(ア)ないし(ウ)、並びに認定事項(エ)ないし(オ)から、実施例1に着目すると、引用文献23には、以下の発明(以下「引用発明23」という。)が記載されているものと認める。 「以下の組成を有する水性蛍光顔料インキが充填されたインキ吸蔵体、及び、該水性蛍光顔料インキを吐出可能なペン体を備えたマーキングペンであって、ルミコールNKW-3005における顔料固形分の重量割合が42重量%である、マーキングペン。 50重量%黄色蛍光顔料水性分散体(ルミコールNKW-3005) 8重量%ラクチトール 10重量%グリセリン 32重量%水」 イ 引用文献24の記載事項及び引用発明 本件特許に係る出願の優先日前の平成5年5月14日に出願公開がされた引用文献24(特開平5-117568号公報)には、以下の事項が記載されている。 (ア)「【請求項1】 水性媒体中に平均粒子径0.2μm乃至3.0μmの蛍光顔料が分散されてなるマーキングペン用蛍光インキ。」 (イ)「【0004】 【課題を解決するための手段】 本発明の蛍光インキは水、湿潤剤及び必要に応じて各種添加剤からなる水性媒体中に平均粒子径0.2乃至3.0μmの範囲の蛍光顔料が分散されてなる組成である。前記水性媒体は水分が50重量%以上であり、湿潤剤はグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等から選ばれ、全インキ組成中1乃至40重量%の範囲で添加される。・・・」 (ウ)「【0006】【実施例】下記組成の実施例インキ及び比較例インキを調製し、繊維束樹脂加工体からなる4mmφの棒状ペン体及び繊維束インキ吸蔵体を備えたペンに各試料インキを所定量づつ充填して試料ペンとした。・・・ 【表1】 [図:0001422399000012.jpg] 表中の組成の数値は全て重量部であり、原料の蛍光顔料分散液の内容はいずれも蛍光顔料が界面活性剤により水中に分散されてなる水性分散液である。各蛍光顔料液の詳細は以下のとおり。 A:商品名SW-15(シンロィヒ株式会社)黄色蛍光顔料42重量%,・・・ C:商品名ルミコールNKW-3005(日本蛍光株式会社) 黄色蛍光顔料42重量%,・・・」 (エ)上記(ウ)より、繊維束インキ吸蔵体には試料インキが吸蔵されており、上記(イ)を踏まえれば、試料インキである蛍光インキがインキ吸蔵体に充填されているといえる。また、上記(イ)及び(ウ)より、蛍光インキは水を含む蛍光インキである。 (オ)上記(ウ)より、SW-15中の黄色蛍光顔料が42重量%であるから、SW-15中の顔料固形分の重量割合は42重量%であると認められる。 (カ)上記(ア)及び(ウ)より、実施例の試料インキはマーキングペン用蛍光インキであることから、実施例の試料ペンはマーキングペンであると認められる。 上記記載事項(ア)ないし(ウ)、並びに認定事項(エ)ないし(カ)から、実施例1に着目すると、引用文献24には、以下の発明(以下「引用発明24」という。)が記載されているものと認める。 「以下の組成を有する蛍光インキが充填されたインキ吸蔵体、及び、該蛍光インキを吐出可能なペン体を備えたマーキングペンであって、SW-15における顔料固形分の重量割合が42重量%である、マーキングペン。 40重量%黄色蛍光顔料分散液(SW-15) 20重量%グリセリン 40重量%水」 ウ 引用文献25の記載事項及び技術事項 本件特許に係る出願の優先日前の令和2年4月2日に出願公開がされた引用文献25(特開2020-49672号公報)には、以下の事項が記載されている。 (ア)「【請求項1】 (イ)電子供与性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性材料、フォトクロミック有機材料、染料、蛍光顔料から選ばれる着色剤を含むインキと、前記インキを収容したインキ吸蔵体と、内部に前記インキ吸蔵体を収容した軸筒と、前記インキが吐出可能なペン先と、前記ペン先を保持する保持体と、前記軸筒のペン先側に着脱自在に取り付けられ透明性を有する材料にて形成されたキャップと、を備えた筆記具であって、前記キャップに紫外線吸収剤若しくは透明性紫外線遮蔽剤を含有、又は前記キャップ表面に紫外線吸収剤若しくは透明性紫外線遮蔽剤を含む光安定層を設けてなる筆記具。」 (イ)「【0011】 以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。 筆記具1は、主に、キャップ2と、ペン先3、ペン先3を保持した保持体4と、インキ吸蔵体7と、インキ吸蔵体7を内部に収容した前軸5及び後軸6とからなる。そして、保持体4が、前軸5の保持体嵌合部58に圧入嵌合される。また、筆記具1は、内部にインキ吸蔵体7を収容した後軸6の開口部に、前軸5を着脱自在に設け、前軸5を後軸6の開口部から取り外してインキ吸蔵体7を交換、又はインキ吸蔵体7にインキを補充する筆記具である。 なお、筆記具1の構造としては、特に限定されるものではなく、例えば、前記ペン先を筆記先端部に装着し、軸筒内部に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、筆記先端部にインキを供給する構造・・・のマーキングペンが挙げられる。」 (ウ)「【0012】 ・ペン先 ペン先3は、その一端部が、筆記部31として保持体4の前方開口部の前端縁部44から前方に突出されるとともに、その他端部(後部35)が、インキ吸蔵体7の一端部と突き刺し状に接続される。・・・」 (エ)「【0020】 ・キャップ 非筆記時に前軸5を覆うキャップ2は、後端が開口され且つ前端が閉塞された、底壁と周壁とからなる円筒状の有底筒体であり、」 (オ)「【0024】 ・軸筒 軸筒8は、少なくとも前軸5又は後軸6のいずれか一方からなる。・・・」 (カ)「【0084】 実施例2 マーキングペン用水性インキ組成物の調製 桃色蛍光顔料分散体〔日本蛍光化学(株)製、商品名:ルミコールNKW-3907.E40、顔料分33.5%〕40.0部、グリセリン10.0部、トリエタノールアミン0.5部、フェノール0.3部、防腐剤〔北興化学(株)製、商品名:ホクサイドR-150〕0.5部、水48.7部を混合、攪拌してマーキングペン用水性インキ組成物を得た。 【0085】 筆記具の作製 ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆したインキ吸蔵体内に前記インキを含浸させ、前記インキ吸蔵体は不透明のポリプロピレン樹脂からなる軸筒内に収容される。」 (キ)「【図1】 [図:0001422399000013.jpg] 」 (ク)上記(イ)、(オ)、(カ)及び(キ)から、実施例2のマーキングペンのインキ吸蔵体には、マーキングペン用水性インキ組成物が充填されて、該インキ吸蔵体が軸筒に内蔵されていることが看取できる。 (ケ)上記(エ)及び(キ)から、実施例2のマーキングペンのキャップが軸筒のペン先側に着脱自在に装着可能であることが看取できる。 上記記載事項(ア)ないし(キ)、並びに認定事項(ク)及び(ケ)から、引用文献25には、以下の技術事項(以下「引用文献25の技術事項」というが記載されているものと認める。 「マーキング用水性インキ組成物が充填されたインキ吸蔵体、及び、該水性インキを吐出可能なペン先を備えたマーキングペンであって、インキ吸蔵体が内蔵される軸筒と、該軸筒のペン先側に着脱自在に装着されるキャップと、を備え、ペン先が該軸筒の先端側に設けられる、マーキングベン。」 ウ 引用文献26の記載事項及び技術事項 本件特許に係る出願の優先日前の平成28年6月20日に出願公開がされた引用文献26(特開2016-107521号公報)には、以下の事項が記載されている。 (ア)「【0052】 実施例5 可逆熱変色性インキ組成物の調製 実施例1で得た前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料(予め6℃以下に冷却して青色に発色させたもの)25.0部、ヒドロキシエチルセルロース0.5部、櫛型高分子分散剤〔日本ルーブリゾール(株)製、商品名:ソルスパース43000〕0.2部、有機窒素硫黄化合物〔北興化学工業(株)製、商品名:ホクサイドR-150、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンと5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンの混合物〕1.0部、ポリビニルアルコール0.5部、グリセリン25.0部、消泡剤0.02部、水47.78部を混合して可逆熱変色性水性インキ組成物を得た。 【0053】 熱変色性筆記具の作製 ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆したインキ吸蔵体内に前記インキ組成物を含浸させ、ポリプロピレン樹脂からなる軸筒内に収容し、接続部材を介して軸筒先端部にポリエステル繊維の樹脂加工ペン体(砲弾型、直径3mm)を接続状態に組み立て、キャップを装着して熱変色性筆記具(マーキングペン)を得た。」 (イ)上記(ア)から、実施例5のマーキングペンのインキ吸蔵体には、可逆熱変色性水性インキ組成物が充填されており、該インキ吸蔵体が軸筒に内蔵されていることが認められる。 上記記載事項(ア)及び認定事項(イ)から、引用文献26には、以下の技術事項(以下「引用文献26の技術事項」という。)が記載されているものと認める。 「可逆熱変色性水性インキ組成物が充填されたインキ吸蔵体、及び、該可逆熱変色性水性インキ組成物を吐出可能なペン体を備えたマーキングペンであって、インキ吸蔵体が内蔵される軸筒と、該軸筒のペン先側に着脱自在に装着されるキャップと、を備え、ペン体が該軸筒の先端部に設けられる、マーキングペン。」 (2)取消理由4(新規性欠如)について ア 引用発明1を主引例とした判断 (ア)本件訂正特許発明2について a 対比 本件訂正特許発明2と引用発明1とを対比する。 (a)引用発明1の「筆記具用水性インク組成物」、「軸筒」、「ペン先」、「キャップ」、「水(イオン交換水)」及び「マーキングペン」は、それぞれ、本件訂正特許発明2の「水性インク」、「軸筒」、「ペン先」、「キャップ」、「水」及び「筆記具」に相当する。 (b)引用発明1の「軸筒」は、筆記具用水性インク組成物を収容しているから、本件訂正特許発明2の「軸筒」と引用発明1の「軸筒」とは、「水性インクが内蔵される」ものとの概念で一致する。 (c)引用発明1の「ペン先」は、軸筒の筆記先端部に装着し、筆記具用水性インク組成物を吐出可能であることは技術常識であるから、本件訂正特許発明1の「ペン先」と引用発明1の「ペン先」とは、「軸筒の先端側に設けた水性インクが吐出可能な」ものとの概念で一致する。 (d)引用発明1の「キャップ」は、マーキングペンに対し着脱可能であり、当該キャップが、軸筒の先端側に設けたペン先に装着されることは技術常識であるから、本件訂正特許発明2の「キャップ」と引用発明1の「キャップ」とは、「軸筒のペン先側に着脱自在に装着される」ものとの概念で一致する。 (e)引用発明1の「着色剤としてのNKW-4805黄(日本蛍光社製)」は、染料又は顔料等の「色材」を含むことは技術常識である。したがって、引用発明1の「筆記具用水性インク組成物」と本件訂正特許発明2の「水性インク」とは、「色材」を含むものとの概念で一致する。 (f)引用発明1の「可筆記具用水性インク組成物」は、トリメチルグリシンを11.0重量%含有しているから、本件訂正特許発明2の「水性インク」と引用発明1の「可筆記具用水性インク組成物」とは、「トリメチルグリシン」を含有している点で一致する。 (g)そうすると、本件訂正特許発明2と引用発明1とは、下記一致点で一致し、少なくとも下記相違点1-1で相違する 。 [一致点] 「少なくとも、水性インクが内蔵される軸筒と、該軸筒の先端側に設けた水性インクが吐出可能なペン先と、該軸筒のペン先側に着脱自在に装着されるキャップと、を備えた筆記具であって、前記水性インクは、少なくとも、色材と、トリメチルグリシンと、水とを含有する筆記具。」 [相違点1-1] 本件訂正特許発明2の「水性インク」は、「グリセリン15~40質量%」を含有して「50℃での蒸気圧が、10.4~11.9kPaである」のに対し、引用発明1の「水性インク」は「グリセリン15~40質量%」を含有しておらず、50℃での蒸気圧も不明である点。 b 相違点1-1についての判断 本件訂正特許発明2と引用発明1は、少なくとも相違点1-1で相違するから、本件訂正特許発明2は引用発明1ではない。 (イ)本件訂正特許発明3について 本件訂正特許発明3は、本件訂正特許発明2の発明特定事項を引用するものであるから、本件訂正特許発明3と引用発明1は、少なくとも上記相違点1-1において相違するものである。 そして、本件訂正特許発明3と引用発明1は、少なくとも相違点1-1で相違するから、本件訂正特許発明2は引用発明1ではない。 (ウ)本件訂正特許発明4について 本件訂正特許発明4は、本件訂正特許発明2の発明特定事項を引用するものであるから、本件訂正特許発明4と引用発明1は、少なくとも上記相違点1-1において相違するものである。 そして、本件訂正特許発明3と引用発明1は、少なくとも相違点1-1で相違するから、本件訂正特許発明2は引用発明1ではない。 イ 引用発明2を主引例とした判断 上記第6 2(1)ないし(3)のとおり、本件訂正特許発明2ないし4と引用発明2は、少なくとも相違点2-1で相違する。 したがって、本件訂正特許発明2ないし4は、引用発明2ではない。 ウ 引用発明3を主引例とした判断 上記第6 1(1)ないし(3)のとおり、本件訂正特許発明2ないし4と引用発明3は、相違点3-1ないし相違点3-3で相違する。 したがって、本件訂正特許発明2ないし4は、引用発明3ではない。 エ 取消理由4(新規性欠如)についてのまとめ 以上のとおり、本件訂正特許発明2ないし本件訂正特許発明4は、引用発明1、引用発明2、又は、引用発明3のいずれでもないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。 (3)取消理由5(進歩性欠如)について ア 引用発明1を主引例とした判断 (ア)本件訂正特許発明2について 上記(2)ア(ア)aのとおり、本件訂正特許発明2と引用発明1は相違点1-1で相違する。 そして、引用発明1は「グリセリン15~40質量%」を含有しない。仮に引用発明1の筆記具用水性インク組成物に「グリセリン」を含有することが容易に想到できたとしても、引用発明1の「可筆記具用水性インク組成物」の蒸気圧を本件訂正特許発明2の数値範囲に収めるようにグリセリンの含有量及びその他の組成物の含有量を調整する必要があるが、キャップ内の結露を防ぐために水性インクの蒸気圧を調整する認識がない引用発明1に基づいて、キャップ内の結露を防止するために、本件訂正特許発明2の「水性インク」の「50℃での蒸気圧が、10.4~11.9kPa」となるように「グリセリン」及びその他の組成物の含有量を決めることを、当業者が容易になし得たとはいえない。 また、特許異議申立人が提出した、又は、当審で提示したいずれの証拠をみても、上記相違点1-1は記載されていないし、設計事項といえる理由もない。 そして、本件訂正特許発明2は、相違点1-1を含む構成を備えることにより、「保管時のドライアップを更に効果的に防止することができる筆記具を提供すること、及び、キャップ内での結露の発生もなく、見栄えを損なうことがなく、更に、ペン先の形状や水性インクの色調を透過性のあるキャップを通して視認することができるため、筆記具品質、商品価値の高い筆記具が得られること」(本件訂正特許明細書【0011】、【0075】参照。)との効果を奏する。 (イ)本件訂正特許発明3について 本件訂正特許発明3は、本件訂正特許発明2の発明特定事項を引用するものであるから、本件訂正特許発明3と引用発明1は、少なくとも上記相違点1-1において相違するものである。 そして、上記(ア)の検討のとおり、当業者が相違点1-1に係る事項を容易に想到できたとすることはできない。 (ウ)本件訂正特許発明4について 本件訂正特許発明4は、本件訂正特許発明2の発明特定事項を引用するものであるから、本件訂正特許発明4と引用発明1は、少なくとも上記相違点1-1において相違するものである。 そして、上記(ア)の検討のとおり、当業者が相違点1-1に係る事項を容易に想到できたとすることはできない。 イ 引用発明23を主引例とした判断 (ア)本件訂正特許発明2について a 対比 本件訂正特許発明2と引用発明23とを対比する。 (a)引用発明23の「水」、「水性蛍光顔料インキを吐出可能なペン体」及び「マーキングペン」は、各々本件訂正特許発明2の「水」、「水性インクが吐出可能なペン先」及び「筆記具」に相当する。 (b)引用発明23の「水性蛍光顔料インキ」は水を含むインキなので、本件訂正特許発明2の「水性インク」に相当する。 (c)引用発明23の「水性蛍光顔料インキ」と本件訂正特許発明2の「水性インク」は、「グリセリン」を含む点で共通する。 (d)そうすると、本件訂正特許発明2と引用発明23とは、少なくとも下記一致点で一致し、少なくとも下記相違点23-1で相違する 。 [一致点] 「少なくとも、水性インクが吐出可能なペン先と、を備えた筆記具であって、前記水性インクは、少なくとも、グリセリンと水とを含有する筆記具。」 [相違点23-1] 本件訂正特許発明2の「水性インク」は、「グリセリン15~40質量%と、トリメチルグリシン」を含有して「50℃での蒸気圧が、10.4~11.9kPaである」のに対し、引用発明23の「水性蛍光顔料インキ」はグリセリンの含有量が10重量%であり、トリメチルグリシンを含有しておらず、50℃での蒸気圧も不明である点。 b 相違点23-1についての判断 本件訂正特許発明2「水性インク」と引用発明23「水性蛍光顔料インキ」は、「グリセリン」の含有量が異なる。さらに、引用発明23「水性蛍光顔料インキ」は、「トリメチルグリシン」を含有しない。仮に周知技術3のように「トリメチルグリシン」を含有することが容易に想到できるとしても、引用発明23の「水性蛍光顔料インキ」の蒸気圧を本件訂正特許発明2の数値範囲に収めるように「グリセリン」及び「トリメチルグリシン」の含有量及びその他の組成物の含有量を調整する必要があるが、キャップ内の結露を防ぐために水性インクの蒸気圧を調整する認識がない引用発明23に基づいて、キャップ内の結露を防止するために、本件訂正特許発明2の「水性インク」の「50℃での蒸気圧が、10.4~11.9kPa」となるように「グリセリン」を「15~40質量%」とすることに加えて「トリメチルグリシン」及びその他の組成物の含有量を決めることを、当業者が容易になし得たとはいえない。 また、特許異議申立人が提出した、又は、当審で提示したいずれの証拠をみても、上記相違点23-1は記載されていないし、設計事項といえる理由もない。 そして、本件訂正特許発明2は、相違点23-1を含む構成を備えることにより、「保管時のドライアップを更に効果的に防止することができる筆記具を提供すること、及び、キャップ内での結露の発生もなく、見栄えを損なうことがなく、更に、ペン先の形状や水性インクの色調を透過性のあるキャップを通して視認することができるため、筆記具品質、商品価値の高い筆記具が得られること」(本件訂正特許明細書【0011】、【0075】参照。)との効果を奏する。 (イ)本件訂正特許発明3について 本件訂正特許発明3は、本件訂正特許発明2の発明特定事項を引用するものであるから、本件訂正特許発明3と引用発明23は、少なくとも上記相違点23-1において相違するものである。 そして、上記(ア)bの検討のとおり、当業者が相違点23-1に係る事項を容易に想到できたとすることはできない。 (ウ)本件訂正特許発明4について 本件訂正特許発明4は、本件訂正特許発明3の発明特定事項を引用するものであるから、本件訂正特許発明4と引用発明23は、少なくとも上記相違点23-1において相違するものである。 そして、上記(ア)bの検討のとおり、当業者が相違点23-1に係る事項を容易に想到できたとすることはできない。 ウ 引用発明24を主引例とした判断 (ア)本件訂正特許発明2について a 対比 本件訂正特許発明2と引用発明24とを対比する。 (a)引用発明24の「水」、「蛍光インキを吐出可能なペン体」及び「マーキングペン」は、各々本件訂正特許発明2の「水」、「水性インクが吐出可能なペン先」及び「筆記具」に相当する。 (b)引用発明24の「蛍光インク」は水を含むインキなので、本件訂正特許発明2の「水性インク」に相当する。 (c)引用発明24の「水性蛍光顔料インキ」と本件訂正特許発明2の「水性インク」は、「グリセリン20質量%」を含む点で一致する。 (d)そうすると、本件訂正特許発明2と引用発明24とは、少なくとも下記一致点で一致し、少なくとも下記相違点24-1で相違する 。 [一致点] 「少なくとも、水性インクが吐出可能なペン先と、を備えた筆記具であって、前記水性インクは、少なくとも、グリセリン20質量%と水とを含有する筆記具。」 [相違点24-1] 本件訂正特許発明2の「水性インク」は、「トリメチルグリシン」を含有して「50℃での蒸気圧が、10.4~11.9kPaである」のに対し、引用発明24の「蛍光インキ」は、トリメチルグリシンを含有しておらず、50℃での蒸気圧も不明である点。 b 相違点24-1についての判断 引用発明24「蛍光インキ」は、「トリメチルグリシン」を含有しない点で本件訂正特許発明2と異なる。仮に周知技術3のように「トリメチルグリシン」を含有することが容易に想到できるとしても、引用発明24の「蛍光インキ」の蒸気圧を本件訂正特許発明2の数値範囲に収めるように「トリメチルグリシン」の含有量及びその他の組成物の含有量を調整する必要があるが、キャップ内の結露を防ぐために水性インクの蒸気圧を調整する認識がない引用発明24に基づいて、キャップ内の結露を防止するために、本件訂正特許発明2の「水性インク」の「50℃での蒸気圧が、10.4~11.9kPa」となるように「トリメチルグリシン」及びその他の組成物の含有量を決めることを、当業者が容易になし得たとはいえない。 また、特許異議申立人が提出した、又は、当審で提示したいずれの証拠をみても、上記相違点24-1は記載されていないし、設計事項といえる理由もない。 そして、本件訂正特許発明2は、相違点24-1を含む構成を備えることにより、「保管時のドライアップを更に効果的に防止することができる筆記具を提供すること、及び、キャップ内での結露の発生もなく、見栄えを損なうことがなく、更に、ペン先の形状や水性インクの色調を透過性のあるキャップを通して視認することができるため、筆記具品質、商品価値の高い筆記具が得られること」(本件訂正特許明細書【0011】、【0075】参照。)との効果を奏する。 (イ)本件訂正特許発明3について 本件訂正特許発明3は、本件訂正特許発明2の発明特定事項を引用するものであるから、本件訂正特許発明3と引用発明24は、少なくとも上記相違点24-1において相違するものである。 そして、上記(ア)bの検討のとおり、当業者が相違点24-1に係る事項を容易に想到できたとすることはできない。 (ウ)本件訂正特許発明4について 本件訂正特許発明4は、本件訂正特許発明3の発明特定事項を引用するものであるから、本件訂正特許発明4と引用発明24は、少なくとも上記相違点24-1において相違するものである。 そして、上記(ア)bの検討のとおり、当業者が相違点24-1に係る事項を容易に想到できたとすることはできない。 エ 取消理由5(進歩性欠如)についてのまとめ 以上のとおり、本件訂正特許発明2ないし本件訂正特許発明4は、引用文献1ないし26に記載された発明に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項に該当しない。 第10 むすび 上記第2のとおり、本件訂正請求は認められるから、特許第7277660号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲〔1-4〕のとおり訂正することを認める。 上記第6ないし第9のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した異議申立理由によっては、本件特許の請求項2ないし4に係る特許を取り消すことはできない。 そして、他に本件特許の請求項2ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項1は、本件訂正請求により削除された。これにより、特許異議申立てについて、請求項1に係る申立ては、申立ての対象が存在しなくなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701208

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