特許異議申立
2024-700243
ボールペンリフィル及びボールペン
- 審判番号
- 2024-700243
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-075097
- 登録番号
- 7357461
- 請求日
- 2024年03月14日
- 審決日
- 2025年05月14日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】三菱鉛筆株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
- 【異議申立人】矢部 まどか
- 審判長/審判官
- 審判長 川俣 洋史
- 審判官 山本 一
- 審判官 殿川 雅也
- 分類
- P1651.121-ZDA(B43K) / P1651.537-ZDA(B43K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法113条2号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7357461号発明「ボールペンリフィル及びボールペン」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7357461号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。
特許第7357461号の請求項5及び6に係る特許を維持する。
特許第7357461号の請求項3ないし4に係る特許を取り消す。
特許第7357461号の請求項1及び2に係る特許についての特許異議申立てを却下する。
理由
理 由
第1 本件特許発明について
特許第7357461号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成31年4月10日(優先権主張 平成30年8月23日)の出願であって、令和5年9月28日付けでその特許権の設定登録がされ、同年10月6日付けで特許掲載公報が発行された。
その後、令和6年3月14日に特許異議申立人 矢部 まどか(以下「異議申立人」という。)より請求項1ないし5に対して特許異議の申立がされ、同年7月23日付けで取消理由が通知され、同年9月19日に特許権者より訂正請求されるとともに意見書が提出され、同年10月2日付けで当審合議体が特許異議申立人に対し特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、特許異議申立人から指定した期間内に何ら応答がなかった。
さらに、その後、令和7年1月17日付けで取消理由通知(決定の予告)が通知され、同年3月21日に特許権者より訂正請求されるとともに意見書が提出されたものである。
なお、令和6年9月19日に提出された訂正請求書は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正請求による訂正の適否
1 訂正請求の趣旨
令和7年3月21日にされた訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)は、同日に提出された訂正請求書の記載からみて、その請求の趣旨を「特許第7357461号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求める。」とするものである。
また、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(特許掲載公報に記載されたものであって、本件訂正請求による訂正前のもの)について言及する際には、以下において、それぞれ、「本件特許明細書」、「本件特許請求の範囲」、「本件特許図面」といい、これらをまとめて「本件特許明細書等」という。
2 訂正の内容
本件訂正の内容(以下「訂正事項」という。)は、以下のとおりである(下線は当審において付した。以下同じ。)。
(1)訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項3を、引用する訂正前の請求項1及び2を訂正前の請求項3に組入れ、請求項間の引用関係を解消して独立請求項に訂正する。
(2)訂正事項1-2
訂正事項1-1により訂正された特許請求の範囲の請求項3に
「直径0.45mm以下の筆記ボール」
とあるのを、
「直径0.38mmの筆記ボール」
に訂正する。
(3)訂正事項2-1
特許請求の範囲の請求項4を、引用する訂正前の請求項1ないし3を訂正前の請求項4に組入れ、請求項間の引用関係を解消して独立請求項に訂正する。
(4)訂正事項2-2
訂正事項2-1により訂正された特許請求の範囲の請求項4に
「直径0.45mm以下の筆記ボール」
とあるのを、
「直径0.38mmの筆記ボール」
に訂正する。
(5)訂正事項3-1
特許請求の範囲の請求項5を、引用する訂正前の請求項1ないし3を訂正前の請求項5に組入れ、請求項間の引用関係を解消して独立請求項に訂正する。
(6)訂正事項3-2
訂正事項3-1により訂正された特許請求の範囲の請求項5に
「直径0.45mm以下の筆記ボール」
とあるのを、
「直径0.38mmの筆記ボール」
に訂正する。
(7)訂正事項4-1
引用する訂正前の請求項1ないし4を訂正前の請求項5に組入れ、請求項間の引用関係を解消して独立請求項にして新たな特許請求の範囲の請求項6に訂正する。
(8)訂正事項4-2
訂正事項4-1により訂正された特許請求の範囲の請求項6に
「直径0.45mm以下の筆記ボール」
とあるのを、
「直径0.38mmの筆記ボール」
に訂正する。
(9)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(10)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
3 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1ないし5について、請求項2ないし5は、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正前の請求項1ないし5に対応する本件訂正後の請求項1ないし6は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
4 訂正の適否について
(1)訂正事項1-1
ア 訂正の目的について
本件訂正前の請求項3が請求項1を引用する請求項2の記載を引用する記載であるところ、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改める訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改める訂正は、実質的な内容の変更を伴うものでないから、訂正事項1-1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項に改める訂正は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、訂正事項1-1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、本件訂正前の全ての請求項1ないし5について特許異議申立てがされているので、本件訂正前の請求項3に係る訂正事項1-1について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。
(2)訂正事項1-2
ア 訂正の目的について
訂正事項1-2における、本件訂正前の請求項1の「直径0.45mm以下の筆記ボール」とあるのを、「直径0.38mmの筆記ボール」とする訂正は、筆記ボールの直径を「0.45mm以下」から「0.38mm」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1-2は、本件訂正前の請求項3の発明特定事項である筆記ボールの直径の数値範囲を限定する訂正であって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1-2により訂正された本件訂正後の「直径0.38mmの筆記ボール」は、本件特許明細書【0052】に「実施例及び比較例として、上記の実施形態に示すようなボールペンを製作し、下記の実験を行った。また、全ての実施例及び比較例において、ボールペンチップに装着した筆記ボール径は0.38mmであり、ボールペンの重量は40gであった。」として記載された事項であるので、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、本件訂正前の全ての請求項1ないし5について特許異議申立てがされているので、本件訂正前の請求項3に係る訂正事項1-2について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。
(3)訂正事項2-1
ア 訂正の目的について
本件訂正前の請求項4が請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用する記載を含むものであるところ、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改める訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改める訂正は、実質的な内容の変更を伴うものでないから、訂正事項2-1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項に改める訂正は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、訂正事項2-1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、本件訂正前の全ての請求項1ないし5について特許異議申立てがされているので、本件訂正前の請求項4に係る訂正事項2-1について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。
(4)訂正事項2-2
ア 訂正の目的について
訂正事項2-2における、本件訂正前の請求項1の「直径0.45mm以下の筆記ボール」とあるのを、「直径0.38mmの筆記ボール」とする訂正は、筆記ボールの直径を「0.45mm以下」から「0.38mm」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2-2は、本件訂正前の請求項4の発明特定事項である筆記ボールの直径の数値範囲を限定する訂正であって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2-2により訂正された本件訂正後の「直径0.38mmの筆記ボール」は、上記(2)ウのとおり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、本件訂正前の全ての請求項1ないし5について特許異議申立てがされているので、本件訂正前の請求項4に係る訂正事項2-2について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。
(5)訂正事項3-1
ア 訂正の目的について
本件訂正前の請求項5が請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用する記載を含むものであるところ、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改める訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改める訂正は、実質的な内容の変更を伴うものでないから、訂正事項3-1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項に改める訂正は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、訂正事項3-1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、本件訂正前の全ての請求項1ないし5について特許異議申立てがされているので、本件訂正前の請求項5に係る訂正事項3-1について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。
(6)訂正事項3-2
ア 訂正の目的について
訂正事項3-2における、本件訂正前の請求項1の「直径0.45mm以下の筆記ボール」とあるのを、「直径0.38mmの筆記ボール」とする訂正は、筆記ボールの直径を「0.45mm以下」から「0.38mm」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3-2は、本件訂正前の請求項5の発明特定事項である筆記ボールの直径の数値範囲を限定する訂正であって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3-2により訂正された本件訂正後の「直径0.38mmの筆記ボール」は、上記(2)ウのとおり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、本件訂正前の全ての請求項1ないし5について特許異議申立てがされているので、本件訂正前の請求項5に係る訂正事項3-2について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。
(7)訂正事項4-1
ア 訂正の目的について
本件訂正前の請求項5が請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4を引用する記載を含むものであるところ、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改める訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改める訂正は、実質的な内容の変更を伴うものでないから、訂正事項4-1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項に改める訂正は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、訂正事項4-1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、本件訂正前の全ての請求項1ないし5について特許異議申立てがされているので、本件訂正前の請求項5に係る訂正事項4-1について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。
(8)訂正事項4-2
ア 訂正の目的について
訂正事項4-2における、本件訂正前の請求項1の「直径0.45mm以下の筆記ボール」とあるのを、「直径0.38mmの筆記ボール」とする訂正は、筆記ボールの直径を「0.45mm以下」から「0.38mm」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4-2は、本件訂正前の請求項5の発明特定事項である筆記ボールの直径の数値範囲を限定する訂正であって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4-2により訂正された本件訂正後の「直径0.38mmの筆記ボール」は、上記(2)ウのとおり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、本件訂正前の全ての請求項1ないし5について特許異議申立てがされているので、本件訂正前の請求項5に係る訂正事項4-2について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。
(9)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、請求項1を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5は、請求項1を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、本件訂正前の全ての請求項1ないし5について特許異議申立てがされているので、本件訂正前の請求項1に係る訂正事項5について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。
(10)訂正事項6
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項6は、請求項2を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項6は、請求項2を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、本件訂正前の全ての請求項1ないし5について特許異議申立てがされているので、本件訂正前の請求項2に係る訂正事項6について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。
5 別の訂正単位とする求め
特許権者は、訂正後の請求項4、5及び6については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項のほかの請求項とは別途訂正することを求めている。
6 まとめ
以上のとおり、令和7年3月21日に特許権者が行った本件訂正は、訂正事項1-2、訂正事項2-2、訂正事項3-2、訂正事項4-2、訂正事項5、及び訂正事項6に関して特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、訂正事項1-1、訂正事項2-1、訂正事項3-1、訂正事項4-1に関して、同条同項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであって、かつ、訂正事項1-1ないし訂正事項6は、同条第9項で準用する同法第5項及び第6項の規定に適合するので、請求項1ないし6について訂正を認める。
第3 訂正後の本件訂正特許発明
上記第2で検討したとおり、請求項1ないし6に係る訂正を認めることができるから、請求項1ないし6に係る特許についての発明は本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(以下、それぞれ「本件訂正特許発明1」ないし「本件訂正特許発明6」といい、総称して「本件訂正特許発明」という。)。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
直径0.38mmの筆記ボールと、
前記筆記ボールを抱持するものであって、円柱状の胴部と、前記胴部の先端側で先細に形成されたテーパー部と、を有するホルダーと、
前記テーパー部の先端から前記テーパー部の後端に向かって形成され、前記筆記ボールを収容するボールハウスと、
前記ボールハウスの底面であって、前記筆記ボールの曲面が転写されたボール受座と、
前記ホルダーの後端から前記ホルダーの先端に向かって形成され、前記ボールハウスの近傍まで達する内部空間であるバック孔と、
前記ボールハウスと前記バック孔との間を連絡するよう形成された内部空間であるインク孔と、
前記インク孔の周囲に等配されるとともに、前記インク孔と前記ボールハウスとを連絡するよう形成された複数の溝であるチャンネル溝と、
前記テーパー部の先端部分が内側にかしめられたカシメ部と、
前記筆記ボールを先端側へ押圧する押圧スプリングと、
を備えるボールペンチップと、
油性インクを収容し、前記ボールペンチップが装着されるインク収容管と、
を含み、
前記カシメ部の先端面における外径であるカシメ外径が、前記筆記ボール径の112%未満であり、
前記ボールハウスの底面の最外縁から、前記テーパー部までの前記ホルダーの径方向の厚みが、前記筆記ボール径の23%以上、かつ、36.8%以下であるとともに、前記押圧スプリングの先端側へ押圧する荷重は、0.01N~0.09Nであり、
前記インク収容管は、前記油性インクと触れる内面の面粗度が、JIS B0601に準拠する算術平均粗さがRa0.5μm以上の金属製であり、その内面には、10~10,000mPa・sのシリコーンオイルが焼き付け処理で付着物として固化され、
前記インク収容管は、前記油性インクを収容する略円筒状の太径の収容部と、前記収容部の先端から延びる細径の延出部とを備えることで、少なくとも1500m以上の距離が筆記可能であり、
前記収容部の後端の開口部には尾栓が装着されているボールペンリフィル。
【請求項4】
直径0.38mmの筆記ボールと、
前記筆記ボールを抱持するものであって、円柱状の胴部と、前記胴部の先端側で先細に形成されたテーパー部と、を有するホルダーと、
前記テーパー部の先端から前記テーパー部の後端に向かって形成され、前記筆記ボールを収容するボールハウスと、
前記ボールハウスの底面であって、前記筆記ボールの曲面が転写されたボール受座と、
前記ホルダーの後端から前記ホルダーの先端に向かって形成され、前記ボールハウスの近傍まで達する内部空間であるバック孔と、
前記ボールハウスと前記バック孔との間を連絡するよう形成された内部空間であるインク孔と、
前記インク孔の周囲に等配されるとともに、前記インク孔と前記ボールハウスとを連絡するよう形成された複数の溝であるチャンネル溝と、
前記テーパー部の先端部分が内側にかしめられたカシメ部と、
前記筆記ボールを先端側へ押圧する押圧スプリングと、
を備えるボールペンチップと、
油性インクを収容し、前記ボールペンチップが装着されるインク収容管と、
を含み、
前記カシメ部の先端面における外径であるカシメ外径が、前記筆記ボール径の112%未満であり、
前記ボールハウスの底面の最外縁から、前記テーパー部までの前記ホルダーの径方向の厚みが、前記筆記ボール径の23%以上、かつ、36.8%以下であるとともに、前記押圧スプリングの先端側へ押圧する荷重は、0.01N~0.09Nであり、
前記インク収容管は、前記油性インクと触れる内面の面粗度が、JIS B0601に準拠する算術平均粗さがRa0.5μm以上の金属製であり、その内面には、10~10,000mPa・sのシリコーンオイルが焼き付け処理で付着物として固化され、
前記インク収容管は、前記油性インクを収容する略円筒状の太径の収容部と、前記収容部の先端から延びる細径の延出部とを備えることで、少なくとも1500m以上の距離が筆記可能であり、
前記収容部の後端の開口部には尾栓が装着され、
前記油性インクは剪断速度38.3s-1においてインク粘度が10~3000mPa・sであるとともに主溶媒が水以外であり、
前記油性インクの後端側に、グリース状の物質であるインク追従体が充填され、
前記インク追従体は、25℃における粘度が1000~40,000mPa・sであり、剪断速度1~10s-1における剪断減粘指数が0.95以上であるボールペンリフィル。
【請求項5】
軸筒を備えた総重量が30g以上であるとともに、前記軸筒後端にボールペンリフィルを出没させるための球状の飾り部材を備え、
前記飾り部材の表面に軸方向に沿った縦溝が形成され、
直径0.38mmの筆記ボールと、
前記筆記ボールを抱持するものであって、円柱状の胴部と、前記胴部の先端側で先細に形成されたテーパー部と、を有するホルダーと、
前記テーパー部の先端から前記テーパー部の後端に向かって形成され、前記筆記ボールを収容するボールハウスと、
前記ボールハウスの底面であって、前記筆記ボールの曲面が転写されたボール受座と、
前記ホルダーの後端から前記ホルダーの先端に向かって形成され、前記ボールハウスの近傍まで達する内部空間であるバック孔と、
前記ボールハウスと前記バック孔との間を連絡するよう形成された内部空間であるインク孔と、
前記インク孔の周囲に等配されるとともに、前記インク孔と前記ボールハウスとを連絡するよう形成された複数の溝であるチャンネル溝と、
前記テーパー部の先端部分が内側にかしめられたカシメ部と、
前記筆記ボールを先端側へ押圧する押圧スプリングと、
を備えるボールペンチップと、
油性インクを収容し、前記ボールペンチップが装着されるインク収容管と、
を含み、
前記カシメ部の先端面における外径であるカシメ外径が、前記筆記ボール径の112%未満であり、
前記ボールハウスの底面の最外縁から、前記テーパー部までの前記ホルダーの径方向の厚みが、前記筆記ボール径の23%以上、かつ、36.8%以下であるとともに、前記押圧スプリングの先端側へ押圧する荷重は、0.01N~0.09Nであり、
前記インク収容管は、前記油性インクと触れる内面の面粗度が、JIS B0601に準拠する算術平均粗さがRa0.5μm以上の金属製であり、その内面には、10~10,000mPa・sのシリコーンオイルが焼き付け処理で付着物として固化され、
前記インク収容管は、前記油性インクを収容する略円筒状の太径の収容部と、前記収容部の先端から延びる細径の延出部とを備えることで、少なくとも1500m以上の距離が筆記可能であり、
前記収容部の後端の開口部には尾栓が装着されているボールペンリフィルが前記軸筒に収容されたボールペン。
【請求項6】
軸筒を備えた総重量が30g以上であるとともに、前記軸筒後端にボールペンリフィルを出没させるための球状の飾り部材を備え、
前記飾り部材の表面に軸方向に沿った縦溝が形成され、
直径0.38mmの筆記ボールと、
前記筆記ボールを抱持するものであって、円柱状の胴部と、前記胴部の先端側で先細に形成されたテーパー部と、を有するホルダーと、
前記テーパー部の先端から前記テーパー部の後端に向かって形成され、前記筆記ボールを収容するボールハウスと、
前記ボールハウスの底面であって、前記筆記ボールの曲面が転写されたボール受座と、
前記ホルダーの後端から前記ホルダーの先端に向かって形成され、前記ボールハウスの近傍まで達する内部空間であるバック孔と、
前記ボールハウスと前記バック孔との間を連絡するよう形成された内部空間であるインク孔と、
前記インク孔の周囲に等配されるとともに、前記インク孔と前記ボールハウスとを連絡するよう形成された複数の溝であるチャンネル溝と、
前記テーパー部の先端部分が内側にかしめられたカシメ部と、
前記筆記ボールを先端側へ押圧する押圧スプリングと、
を備えるボールペンチップと、
油性インクを収容し、前記ボールペンチップが装着されるインク収容管と、
を含み、
前記カシメ部の先端面における外径であるカシメ外径が、前記筆記ボール径の112%未満であり、
前記ボールハウスの底面の最外縁から、前記テーパー部までの前記ホルダーの径方向の厚みが、前記筆記ボール径の23%以上、かつ、36.8%以下であるとともに、前記押圧スプリングの先端側へ押圧する荷重は、0.01N~0.09Nであり、
前記インク収容管は、前記油性インクと触れる内面の面粗度が、JIS B0601に準拠する算術平均粗さがRa0.5μm以上の金属製であり、その内面には、10~10,000mPa・sのシリコーンオイルが焼き付け処理で付着物として固化され、
前記インク収容管は、前記油性インクを収容する略円筒状の太径の収容部と、前記収容部の先端から延びる細径の延出部とを備えることで、少なくとも1500m以上の距離が筆記可能であり、
前記収容部の後端の開口部には尾栓が装着され、
前記油性インクは剪断速度38.3s-1においてインク粘度が10~3000mPa・sであるとともに主溶媒が水以外であり、
前記油性インクの後端側に、グリース状の物質であるインク追従体が充填され、
前記インク追従体は、25℃における粘度が1000~40,000mPa・sであり、剪断速度1~10s-1における剪断減粘指数が0.95以上であるボールペンリフィルが前記軸筒に収容されたボールペン。」
第4 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1ないし4に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
1.(進歩性)請求項1ないし4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証ないし甲第12号証、及び引用文献1ないし引用文献3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2.(サポート要件)請求項1ないし5に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
本件特許の請求項1~5に、ボール径の下限値が何ら特定されておらず、本件特許明細書等の【実施例】に記載された、筆記ポール径が0.38mmであることを前提とした課題解決手段を、請求項1~5の範囲である筆記ボール径が直径「0.45mm以下」の範囲にまで拡張ないし一般化できるとはいえないから、本件特許発明1ないし5は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていない。
第5 取消理由1(特許法第29条第2項)について
1 請求項3
(1)各甲号証
ア 甲第1号証
(ア)甲第1号証記載事項
本件特許の優先権主張日前である平成25年8月8日に頒布された刊行物である特開2013-151153公報(以下「甲1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同じ。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記部材としてのボールと、このボールを貫通孔の先端開口部から一部突出して抱持するボールホルダーとから少なくともなり、ボールホルダーの貫通孔内に形成したボールの後方移動規制をなす内方突出部に放射状のインキ通溝を形成してなるボールペンチップに関する。」
「【0009】
ボールペンチップの基本的な構造は、紙面などの被筆記面と接触してインキを転写する筆記部材となるボールと、これを回転自在に抱持するボールホルダーとからなるものであり、インキの通り道であるボールホルダーの貫通孔を通じて被筆記面にインキを付与するものである。
ボールホルダーの貫通孔であるインキ通路は、該ボールホルダーがインキタンクとなる部材と直接又は接続部材を介して接続されることによってインキタンクの内孔と連通している。また、ボールホルダーは、インキ通路の途中に、内方突出部を形成し、ボールの後退規制部とすると共に、先端開口部をボールの直径よりも小径に加工したカシメ部として、先端からのボールの抜け止めをなして、ボールを抱持している。
内方突出部には、中心孔に連通した放射状溝が略均等に分割され、周状に配置されている。
この放射状溝は、中心孔に連通し後孔まで貫通していない放射状溝(以降、非貫通放射状溝と呼ぶ)と中心孔に連通し後孔まで貫通した放射状溝(以降、貫通放射状溝と呼ぶ)とに大別されるが、放射状に配置された切削刃を有する切削冶具により内方突出部を剪断加工により形成するので、内方突出部の途中で切削冶具を止めて形成する非貫通放射状溝では、加工面は全て剪断面となり、その加工量、つまり放射状溝の容積に比例して加工抵抗が増加し、歪み量が増大する。
これに対し、切削冶具を後孔に貫通させて形成する貫通放射状溝は、切削冶具が後孔に貫通する際、内方突出部の肉が破断し剪断面と破断面を有することとなる。…
【0010】
非使用時に、ボールをボールホルダーの先端開口部に周状に当接させ、特に、低粘度インキを使用した場合のインキの漏れ出しを抑制することを目的にボールホルダーのインキ通路に、コイルスプリングを挿入し、その先端で直接又は部材を介してボールを前方付勢することができる。コイルスプリングの後方移動規制は、ボールホルダーの後端をカシメたり、インキタンクや、インキタンクとの接続部材に形成した段部にコイルスプリングの後端を当て、後方移動規制をすることもできる。
…
【0012】
放射状溝1を後孔13に貫通とした貫通放射状溝の場合には、放射状溝1の前側開口部1aの最前端位置1apにおける横断面径をd1、後側開口部1bの最後端位置1bpにおける横断面径をd2、この放射状溝1の前後の開口部それぞれの最前端及び最後端開口部を含む横断面の距離をL1、放射状溝1の最大外径をd3、放射状溝1の幅をW、放射状溝1の本数をN、中心孔2の径をd4、放射状溝1の前側開口部1aの最前端部1apから中心孔2の前開口部2aまでの高さをL2、放射状溝1の後側開口部1bの最後端部1bpから中心孔2の後開口部2bまでの高さをL3、中心孔2の高さをL4としたとき、以下のように計算される。
…
【0017】
…
内方突出部の体積を大きくするには、材料の該当部分の横断面積を大きくすれば良く、その一つの要素として、該当部分におけるボールホルダーの前方外径、後方外径を大きくすれば良く、ボールホルダーの先端に向かい縮径するテーパーの角度を調整することなどでなすことができる。しかし、先端に向かい縮径するテーパーの角度を軸心に対し鋭角にし過ぎるとボールホルダーの先端肉厚が厚くなり過ぎて筆記時、紙面にボールホルダーの先端部が当たり、筆記感の悪化や筆跡カスレが起こる恐れがある。また、ボールホルダーの先端肉厚を一定にし、テーパーの角度を軸心に対し鈍角にするとテーパー部が短くなり視認性が低下する。
…
【0019】
ボールホルダーの貫通孔はインキ流通路であり、ドリルなどで形成される。
先ず、比較的小径のドリルにて中心孔となる部分を柱状部材に形成し、次いで大径のドリルにて中心孔側からボール抱持室となる前方の大径部を、所定寸法まで掘り進める。中心孔の長さは、ボールホルダーのボール抱持室のボールと反対側の端部側から大径のドリルにて大径の後孔を形成する際の切削深さを調節することで決まる。中心孔の径は、ボール径の50%程度が好ましく、ボール抱持室の径は、ボール径に0.01mm~0.04mmを加えた内径であり、インキの粘度等により適宜設定する。…
放射状溝を後孔に貫通する貫通放射状溝を形成するためには、放射状に配置された切削刃を有する切削冶具が内方突出部の後孔傾斜面を貫く必要があり、切削刃の外形以下の後孔径では切削刃がボールホルダーの肉部分に衝突し貫通できないので、後孔の最前端部の外径は、放射状溝を形成する切削刃の外径、つまり放射状溝外径より大径とする必要がある。
…
【0021】
次に、筆記部材となるボールを、ボール抱持室に配置し、ボールホルダーの先端開口部の縁部分を圧接工具によるカシメと呼ばれる塑性変形加工を行うことで、ボールの直径よりも小径に縮径され、ボールの抜け止めがなされる。
続いて、ハンマー工具によってボールに衝撃力を付与する所謂ハンマー工程を施して、ボールをボール抱持室と中心孔との間の段部に撃ち付け、ボールの形状に塑性変形させて凹状のボール転写部を形成すると同時にボールが前後に移動可能な空間を形成する。これによって、筆記時にボールが紙面と当接して後退し、インキが吐出される隙間が形成される。従って、この凹状ボール転写部の大きさを調整することで、ボールの前後移動可能な空間が調整され、インキ吐出を適量にできる。
…
【0022】
本発明で得られたボールペンチップを使用するボールペンに適用するインキとしては、水を主媒体とした水性インキ、アルコールなどの有機溶剤を主媒体とした油性インキのいずれも使用可能であり、これに着色成分である顔料及びまたは染料、凍結防止などのための高沸点有機溶剤、被筆記面への定着性を付与する樹脂成分、表面張力や粘弾性、潤滑性などを調整する界面活性剤や多糖類、防錆・防黴剤などが配合されたものであり、誤字修正などを目的とした酸化チタンなどの白色隠蔽成分を配合したものであってもよい。
また、インキの粘度や残量確認などの必要に応じて、インキ界面に接触させて、インキと相溶しない、α-オレフィンやポリブテンなどのゲル化物、シリコーンオイルなどの高粘度流体などをインキ界面に追従して移動するように層状に充填配置することもできる。この高粘度流体は、インキの逆流を抑制する働きをも担いうる。
【実施例】
【0023】
以下、図面に基づいて一例を説明する。
図4に示したものは、筆記部材としてのボール7を、ボールホルダー6先端開口部6aより一部突出した状態で回転自在に抱持してなるボールホルダー6とインキ収容部8が接合されたボールペン本体である。外装体に収容されて使用される所謂リフィルと称されるものとして示してあるが、外装についての図示及び説明は省略する。
後端の小径部は、ポリプロピレン樹脂などの押し出し成形パイプであるインキ収容部8の先端に圧入して固定されている。
インキ収容部8内には、インキ9が収容されており、インキ9の後端界面に接して、インキと相溶しない高粘度流体である逆流防止体組成物10が配置されている。
【0024】
図4のボールペンチップの拡大図である図5に示すように、ボールホルダー6の内部には、ボール7を背面より押して前方付勢するコイルスプリング11が配設されている。このコイルスプリング11は、ボールホルダー6に挿入された後に、押し込まれて全長を圧縮された状態で、ボールホルダー6の後端開口部6bを縮径するカシメ加工を施すことによって、ボール7の後端を付勢した状態で固定されている。
…
【0025】
図6は、ボールペンチップのみのII部拡大図であり、説明の都合上、ボール7の外形を破線にて表示し、透過視した状態を示している。
ボールホルダー6は、円柱状金属部材に貫通したインキの通路として、先端側よりボール抱持室12、中心孔2、後孔13を有している。ボール抱持室12と後孔13との間には、内方突出部14が形成されている。
ボール抱持室12の先端開口部6aは、カシメ加工にて縮径化されており、この縮径化された先端開口部6aと、内方突出部14にて前記ボール7の前後方向への移動し得る範囲を規定していると共に、放射状溝の形成時、加工抵抗を受ける部分となる。
また、内方突出部14に、環状に等間隔で放射状溝1が形成されている。この放射状溝1は、中心孔2に連通し、後孔13に貫通している貫通放射状溝を図示しているが、中心孔2に連通し、後孔13に非貫通状態とした非貫通放射状溝でもよい。
【0026】
内方突出部14には、ボール7を押し付けることによって凹状のボール転写部15が形成されており、凹状のボール転写部15は、筆記時に紙面などに当接してボール7が後退した状態の時にボールの位置を安定させ、不要な振動等の少ない円滑な回転を保障せんとするものであり、ボール7と凹状のボール転写部15とが略面状に接触するような形状となし、膜状に介在するインキ9をボール7の回転に対する潤滑剤として生かすこともできるものである。
また、前述の放射状溝1は、内方突出部14の凹状のボール転写部15の外側に開口部1aを有しており、ボール抱持室12へのインキ供給を確保している。
【0027】
各部の寸法を異ならせた試験用のボールペンチップサンプルを作成し(表1参照)、下記に示す試験を行った。尚、各部寸法は、ボールペンチップを縦に半割り状態とし、オリンパス社製デジタルマイクロスコープVHX-900により200倍で直接測定した。縦に半割りの状態とは、図3または、図7のような状態を指すが、不飽和ポリエステル樹脂などの透明性の合成樹脂、具体的には、丸本ストルアス株式会社製冷間埋込樹脂No.105に冷間埋込樹脂No.105用硬化剤を2%程度添加しよく混練したものを隙間に浸透させて固化させた後にサンドペーパなどで徐々に削って測定サンプルを作成するものである。
【0028】
【表1】
[図:0001427924000001.jpg]
【0029】
表1に示した各ボールペンチップを、ぺんてる株式会社製の0.7mmボールペン「ドット・イーボール0.7」(製品符号:BK127-A)のインキ収容パイプに取り付け、後述の水性インキを充填して、ペン先の方向に遠心力が働くようにして、遠心分離機(国産遠心器(株)製:卓上遠心機H-103N)で遠心処理を施し、筆記具内に存在する気体を除去して試験用ボールペンサンプルとした。
…
【0032】
(筆記試験2)
各試験用ボールペンサンプルを筆記荷重100g、筆記角度70°、筆記速度7cm/sの条件で、ボールペンを自転させ、100m螺旋筆記し、0m~50mの吐出量と50m~100mの吐出量を測定し、下記項目を評価する。
(1)吐出増減率
50m~100mの吐出量を0m~50mの吐出量で除した割合を算出する。
(2)筆記幅の差
1m付近の筆跡幅から100m付近の筆跡幅を差し引いた差を算出する。
試験の結果を(表2)に記載する。」
「【0033】
【表2】
[図:0001427924000002.jpg]
」(表2から抜粋。)
「【図1】
[図:0001427924000003.jpg]
」
「【図4】
[図:0001427924000004.jpg]
」
「【図5】
[図:0001427924000005.jpg]
」
「【図6】
[図:0001427924000006.jpg]
」
上記摘記事項を次のとおり整理する。
a 上記【0027】、【表1】及び【表2】の実施例2及び実施例3に各々「ボール径が0.4mm又は0.3mmであるボール7」が用いられた「ボールペンチップ」が記載されている。
b 上記【0023】に、「筆記部材としてのボール7を、ボールホルダー6の先端開口部6aより一部突出した状態で回転自在に抱持してなるボールホルダー6とインキ収容部8が接合されたボールペンに用いられるリフィル」が記載されている。
c 上記【0025】に、「円柱状金属部材に貫通したインキの通路として、先端側よりボール抱持室12、中心孔2、後孔13を有し、ボール抱持室12と後孔13との間には、内方突出部14が形成」された「ボールホルダー6」が記載されている。
d 上記【0017】に、「ボールホルダー6は、その先端に向かい縮径するテーパー部を有する」ことが記載されている。
e 上記【0026】に、「内方突出部14に、ボール7を押し付けることによって凹状のボール転写部15が形成され」ていることが記載されており、上記【0025】に、「内方突出部14に、環状に等間隔で放射状溝1が形成されており、放射状溝1は中心孔2に連通し、後孔13に貫通」していることが記載されている。
f 上記【0025】に、「ボール抱持室12の先端開口部6aは、カシメ加工にて縮径化されて」いることが記載されている。
g 上記【0024】に、「ボールホルダー6は、内部にボール7を背面より押して前方付勢するコイルスプリング11」が配置されていることが記載されている。
h 上記【0022】に、水を主媒体とした「水性インキ」、及び、アルコールなどの有機溶剤を主媒体とした「油性インキのいずれも利用可能」とされていることが記載されている。
i 上記【0023】に、「インキ収容部8内には、インキ9が収容されており、インキ9の後端界面に接して、インキと相溶しない高粘度流体である逆流防止体組成物10が配置され」ていることが記載されている。
(イ)甲1記載事項から認定できる事項
さらに、上記摘記事項から次の事項が認められる。
a 上記(ア)図5のボールペンチップの拡大図から、ボールホルダー6が先端に向けて先細になっており、当該先端付近から形成されたテーパー部の後端側に位置する円筒部を看取できる。
「【図5】
[図:0001427924000007.jpg]
」
b 上記(ア)【0012】の「放射状溝1の前側開口部1aの最前端位置1apにおける横断面径をd1」との記載、上記(ア)表2の実施例2におけるボール径が0.4mmであり、前側開口部の最前端位置における横断面径が0.66mmである。また、上記(ア)【0019】の「ボール抱持室の径は、ボール径に0.01mm~0.04mmを加えた内径であり」との記載を踏まえると、ボール抱持室の内径は、0.4mm+(0.01mm~0.04mm)となるので、放射状溝1の前側開口部1aの最前端位置1apにおけるボールホルダーの厚みは、下図のとおり(0.66-(0.41~0.44))/2=ボール径D×(0.275~0.3125)である。
実施例2:「
[図:0001427924000008.jpg]
」
c 上記bと同様に、上記(ア)表2の実施例3における、ボール径が0.3mm、前側開口部の最前端位置における横断面径が0.49mmとなり、ボール抱持室の内径は、0.3mm+(0.01mm~0.04mm)となるから、放射状溝1の前側開口部1aの最前端位置1apにおけるボールホルダーの厚みは、下図のとおり(0.49-(0.31~0.34))/2=ボール径D×(0.25~0.3)である。
実施例3:「
[図:0001427924000009.jpg]
」
d 実施例2及び実施例3のボールペンは、上記(ア)【0029】「表1に示した各ボールペンチップを、ぺんてる株式会社製の0.7mmボールペン「ドット・イーボール0.7」(製品符号:BK127-A)のインキ収容パイプに取り付け、後述の水性インキを充填」との記載によれば、水性インキが用いられているが、上記(ア)hのとおり、実施例2及び実施例3のボールペンチップに油性インキを使用してよいことが開示されている。
(ウ)甲1発明
上記(ア)及び上記(イ)から、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
[甲1発明]
ボール径が0.4mm又は0.3mmであるボール7と((ア)a)、
筆記部材としてのボール7を、ボールホルダー6の先端開口部6aより一部突出した状態で回転自在に抱持してなるボールホルダー6とを備え((ア)b)、
ボールペンホルダー6が先端に向けて先細になっており、当該先端付近から形成されたテーパー部の後端側に円筒部を有しており((イ)a)、
ボールホルダー6は、円柱状金属部材に貫通したインキの通路として、先端側よりボール抱持室12、中心孔2、後孔13を有し、ボール抱持室12と後孔13との間には、内方突出部14が形成されており((ア)c)、
内方突出部14に、ボール7を押し付けることによって凹状のボール転写部15が形成され、環状に等間隔で放射状溝1が形成されており、放射状溝1は中心孔2に連通し、後孔13に貫通しており((ア)e)、
ボール抱持室12の先端開口部6aは、カシメ加工にて縮径化されており((ア)f)、
さらに、ボールホルダー6は、内部にボール7を背面より押して前方付勢するコイルスプリング11を備えた((ア)g)、
ボールペンチップと((ア)a)、
ボールホルダー6にインキ収容部8が接合されており、インキ収容部8内には、油性インキであるインキ9が収容されており、インキ9の後端界面に接して、インキと相溶しない高粘度流体である逆流防止体組成物10が配置されており((ア)b、(ア)i、(イ)d)、
ボール7のボール径が0.4mmであって、放射状溝1の前側開口部1aの最前端位置1apにおけるボールホルダーの厚みは、(0.66-(0.41~0.44))/2=ボール径D×(0.275~0.3125)であり((イ)b)、
ボール7のボール径が0.3mmであって、放射状溝1の前側開口部1aの最前端位置1apにおけるボールホルダーの厚みは、(0.49-(0.31~0.34))/2=ボール径D×(0.25~0.3)である((イ)c)、
ボールペンに用いられるリフィル((ア)b)。
イ 甲第2号証
本件特許の優先権主張日前である平成28年1月20日に頒布された刊行物である特開2014-8629公報(以下「甲2」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
インキ収容筒の先端に、チップ先端部のかしめ部によって、φ0.4mm以下のボールを回転自在に抱持してなるボールペンチップを直接、またはチップホルダーを介して装着し、前記インキ収容筒内に、熱変色性インキを直に収容してなるボールペンレフィルを、軸筒内に、コイルスプリングにより軸筒後端側に付勢して収納し、前記軸筒に設けた操作体の操作部を操作することで、前記ボールペンチップの先端部を、軸筒の先端開口部より出没可能とした出没機構を具備してなる出没式ボールペンであって、前記軸筒の後端部に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能なゴム状弾性を有する摩擦体を具備し、前記ボールの後方に、前記ボールをチップ先端部の内壁に、前記出没式ボールペンの総重量よりも高い押圧力で押圧するコイルスプリングを配設するとともに、前記ボールの縦方向のクリアランスが30~40μm、前記かしめ部外径をボール径の1.0倍~1.2倍とし、前記ボールペンチップが突出した状態での重心位置を筆記具全長の中間部又はその後方に位置したことを特徴とする出没式ボールペン。」
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールペンチップの先端部を、軸筒の先端開口部より出没可能とした出没機構を具備してなる出没式ボールペンに関する。」
「【0015】
また、φ0.4mm以下の小径なボールを用いて、前記ボールの縦方向のクリアランスを前記した30から50μmとすると、チップ先端部の出没時や摩擦体の使用時に、衝撃を受け、ボールが移動し易く、空気の呑み込みが発生する恐れがある。そのため、本願発明では、前記した構成に加え、ボールをチップ先端部の内壁に、出没式ボールペンの総重量よりも高い押圧力で押圧し、容易にボールが移動することを抑制すること、前記かしめ部の外径をボール径の1.0倍~1.2倍、好ましくは、1.05~1.1倍とし、紙当たり性やボール落ちを防止することも重要な構成となる。尚、前記かしめ部の外径をボール径の1.0倍より小さいとボール保持力が低下する傾向となり、1.2倍を超えると、所望するクリアランスを得られにくく、紙当たり現象が発生しやすい傾向となる。」
「【0031】
ボールペンレフィルは、ステンレス鋼線材からなるチップ本体13に、ボール抱持室14と、ボール抱持室14の中央にインキ流通孔17と、このインキ流通孔17に連通する放射状に延び、チップ後部孔18に達しないインキ流通溝16を有するとともに、ボール抱持室14の底壁15に、φ0.38mmのタングステンカーバイド製のボール19を載置し、チップ先端部のかしめ部13Aを内側にかしめることにより、ボール19の一部がチップ先端縁より突出するように回転自在に抱持したボールペンチップ12を、インキ収容筒10の先端部に、チップホルダー11を介して装着してある。
…
【0033】
また、ボール19が、底壁15に載置している状態のチップ先端より臨出するボール出Hは、ボール径の30%、かしめ角度αは110度、ボール19の縦方向(図3におけるボール19の左右方向)のクリアランスが35μm、かしめ部外径Gをボール径の1.05倍としてある。また、ボール19の後方には、コイルスプリング20を配設してあり、この押圧力によって、ボール19をかしめ部13Aの内壁シール面側に押圧してある。尚、ボール19を押圧するコイルスプリング20の押圧力は20gfとしてある。」
「【図3】
[図:0001427924000010.jpg]
」
上記摘記事項を整理すると、甲2に次の技術事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されている。
[甲2記載事項]
ボール径が0.38mmであり、かしめ部外径がボール径の1.0倍~1.2倍であるボールペンチップ。
ウ 甲第3号証
本件特許の優先権主張日前である平成16年9月30日に頒布された刊行物である特開2004-268368公報(以下「甲3」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボールをボール受け座に当接し回転自在にボール抱持室内に抱持したボールペン用のチップに関する。」
「【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、第1の実施の形態を示す縦断面図であり、ボール2の周辺を拡大して示している。図2は、第1の実施の形態を示す上面図である。尚、図2においては、見やすくするためチップ先端縁部1Bは濃色として示してある。
本ボールペンチップは、先端に向かい外径がテーパー状に縮径されたチップ本体1Aとバック孔(図示せず)と連通しかつバック孔の前方に形成されたインク孔1Dと、インク孔1Dの前方に形成されインク孔1Dと連通して形成されたボール抱持室1Fと、該ボール抱持室1Fに抱持されたボール2とからなる。バック孔は後方に設けられたインク収納室(図示せず)と連通し、インク収納室内のインクを前方に誘導する。インク孔1Dの周囲には、4方向に放射状のチャネル1Hが形成されている。このチャネル1Hは、バック孔からボール抱持室1Fに流れるインクの流路となる。そして、ボール抱持室1F内にはボール2が収納され、チップの先端縁部1Bが内方にかしめられることで、ボール2の一部を露出させつつボールの前方への飛び出しを防止している。尚、ボールとしては、例えば、タングステンカーバイト系超硬材ボール、シリカ、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素等のセラミックボール等を用いることができる。
【0015】
そして、チップ先端縁部1Bからのボール2の突出量Hをボール外径Dの26%~33%、チップ先端縁部1Bの外縁部1Iの外径Jをボール外径Dの112%以下としてある。これらの寸法は従来から一般に用いられているものである。そして、ボール外径Dを0.29mm以下の小径ボールとしてある。
…
【0017】
【実施例】
実施例を説明し、その後比較例を説明する。
まず、実施例として図1に図示した態様のフェライト系ステンレス材料を用いたボールペンチップ1を用意した。ボール外径Dを0.28mm、チップ先端縁部1Bの外縁部1Iの外径Jを0.31mm、チップ先端縁部からのボールの突出量Hを0.08mmとした。この結果、チップ先端縁部1Bからのボールの突出量Hはボール外径の28%、チップ先端縁部1Bの外縁部1Iの外径Jはボール外径の111%となる。更に、かしめ角は85度としてある。尚、かしめ角は60度~100度が一般的であり、より好ましくは70度~90度である。」
「【図1】
[図:0001427924000011.jpg]
」
上記摘記事項を整理すると、甲3に次の技術事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されている。
[甲3記載事項]
ボール外径Dが0.28mmであり、内方にかしめられたチップ先端縁部1Bの外縁部1Iの外径Jがボール外径Dの112%以下であるボールペンチップ1。
エ 甲第4号証
本件特許の優先権主張日前である平成29年6月29日に頒布された刊行物である特開2017-113894公報(以下「甲4」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記部材としてのボールを回転自在に抱持するボールペンチップを、油性インキを収容するインキタンクの先端に接続した、油性インキ用ボールペンに関する。」
「【0084】
尚、放射状溝の本数は3、コイルスプリングの線径は0.10mm、ボールホルダー内にコイルスプリングを配設した状態におけるボールの押圧荷重は0.014Nとし、ボールホルダー3の後端開口部3aを縮径するかしめ加工を施すことによって、ボール2の後端を付勢した状態で固定されている。」
「【0105】
尚、放射状溝の本数は3、コイルスプリングの線径は0.10mm、ボールホルダー内にコイルスプリングを配設した状態におけるボールの押圧荷重は0.014Nとし、ボールホルダー3の後端開口部3aを縮径するかしめ加工を施すことによって、ボール2の後端を付勢した状態で固定されている。」
「【0132】
尚、放射状溝の本数は3、コイルスプリングの線径は0.10mm、ボールホルダー内にコイルスプリングを配設した状態におけるボールの押圧荷重は0.014Nとし、ボールホルダー3の後端開口部3aを縮径するかしめ加工を施すことによって、ボール2の後端を付勢した状態で固定されている。」
上記摘記事項を整理すると、甲4に次の技術事項(以下「甲4記載事項」という。)が記載されている。
[甲4記載事項]
コイルスプリングによるボールの押付荷重を0.014Nとした、ボールホルダーを含む油性インキ用ボールペンのためのボールペンチップ。
オ 甲第5号証
本件特許の出願前である平成22年8月26日に頒布された刊行物である特開2010-184495公報(以下「甲5」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、インクボテ並びに筆記先端の乾燥及び紙巻き込みによるインク流量低下の防止を図った油性ボールペンリフィルに関する。」
「【0009】
「スプリング40」には筆記ボール30を先端方向へ押しつけてカシメ部22との間を密着させ、非筆記時におけるインク溜まりの乾燥を防止するという役割がある。よって、その「押し荷重」は筆記ボール30とカシメ部22との密着度合いに影響することとなる。
このスプリング40の押し荷重が、0.010N未満であると、非筆記時における筆記ボール30とカシメ部22との密着が弱いので、インク溜まりが乾燥しやすくなる。そのため、書き始めの描線がかすれやすくなる。一方、0.090Nを上回ると、筆記圧をかけても筆記ボール30が押し戻されにくくなる。したがって、書き味を損ねることになる。よって、スプリング40の押し荷重は0.010N以上かつ0.090N以下の範囲内が適当である。
…
【0038】
(2-3)スプリング押し荷重
ボール受座径を0.430mm(筆記ボール径比86.0%)、ボールハウス内径を0.530mm(筆記ボール径比106.0%)及びカシメ部の角度を85°に固定した条件下で、スプリング押し荷重の適正な範囲を検討した。すなわち、スプリング押し荷重を下記表3の通り0.005~0.100Nの範囲内で変化させた場合において、各試験項目の評価は下記表3の通りであった。
【0039】
【表3】
[図:0001427924000012.jpg]
【0040】
上記の結果、スプリング押し荷重が0.010Nを下回る比較例5では試験5(初筆性能)の結果が劣ることとなった。また、スプリング押し荷重が0.090Nを上回る比較例6では試験6(書き味)の結果が劣ることとなった。それに対し、スプリング押し荷重が0.010N~0.090Nの範囲内である実施例8~実施例11では悪くとも評価Cが見られたのみで、いずれの試験項目でも好評価が得られた。以上の検討より、スプリング押し荷重は、初筆性能の観点より0.010N以上、及び書き味の観点より0.090N以下が好適である。特に、実施例8~実施例10ではいずれの試験項目でも評価Aか評価Bが得られた。このことから、スプリング押し荷重は、0.010N以上0.070N以下がより望ましいことが判明した。」
上記摘記事項を整理すると、甲5に次の技術事項(以下「甲5記載事項」という。)が記載されている。
[甲5記載事項]
筆記ボールとカシメ部との密着性の維持及び書き味の向上を両立する観点から、スプリングの押し荷重を0.010N以上0.09N以下の範囲内に設定した、油性ボールペンリフィル。
カ 甲第6号証
本件特許の優先権主張日前である平成26年9月18日に頒布された刊行物である特開2014-169395公報(以下「甲6」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は油性ボールペン用インク組成物および油性ボールペンに関する。
【背景技術】
【0002】
ボールペン用インクには従来から、有機溶媒、染料、顔料等の着色剤、樹脂等を含有する油性インク、そして水を主体とする溶媒、染料、顔料等の着色剤を含有する水性インクの2種類が存在する。最近では、水を主体とする溶媒、染料、顔料等の着色剤、ゲル化剤を含有するゲルインクが開発されている。ゲルインクは、水性インクにゲル化剤を添加して、リフィル内部では、高粘度のゲル状で存在し、筆記時にインクがボールにより剪断力が加えられると、粘性が低下し、これによりなめらかな書き味が得られる効果を提供する。また、紙面上では、インクは元のゲル状に戻りインクが滲みにくいという効果も有する。このように、高粘度のゲルが、剪断力により粘性が低下して流動し、その後再度ゲル化する性質をチキソトロピック性と呼ばれる。ゲルインクの上記効果を油性ボールペンにも付与しようとする試みが近年行われている。」
「【0039】
インク組成物の調製インク組成物に関しては、着色剤が顔料である場合は、溶剤および樹脂と共に、ビーズミル、3本ロール等で溶解させた後、実施例のポリウレタン樹脂(A2)溶液や比較例のBYK-410を添加して、さらに撹拌して最終的なインク組成物を得た。
以下の表Iに各インク組成物(実施例、比較例)の成分を表す。」
「【表1】
[図:0001427924000013.jpg]
」
「【0042】
評価方法
粘度:E型回転粘度計を用いて25°C、せん断速度:3.83/s-1と38.3/s-1の条件で測定した。
ボテ性:得られたインクをボールペンに充填した後、機械筆記試験機にて速度4.5m/分、角度60°、荷重200gの条件で筆記した後にチップホルダーに付着したインクの量を観察した。インクのボテがほとんどないものを「○」、多いものを「×」として評価した。」
上記摘記事項を整理すると、甲6に次の技術事項(以下「甲6記載事項」という。)が記載されている。
なお、【0042】の「せん断速度:3.83/s-1と38.3/s-1」は、「せん断速度:3.83/sと38.3/s」の誤記と認める。
[甲6記載事項]
実施例1~5及び比較例1として記載された、温度25℃、せん断速度38.3/secの条件で測定した粘度が、各々、934mPa/sec、426mPa/sec、449mPa/sec、1577mPa/sec、516mPa/sec、768mPa/secである、油性ボールペン用インク組成物。
キ 甲第7号証
本件特許の優先権主張日前である平成23年4月21日に頒布された刊行物である特開2011-79976公報(以下「甲7」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、油性ボールペン用インク組成物に関し、特に、書き出し時のカスレを極力抑制した滑らかに書ける油性ボールペン用インク組成物に関するものである。」
「【0010】
本発明は、以下の油性インク組成物を提供する。
(1)少なくとも、着色剤、樹脂、および25°Cでの蒸気圧が0.001mmHg以上であり、そしてアルコール、多価アルコール、グリコールエーテルから選ばれる有機溶剤を全溶剤の50%以上占める主溶剤として含んでなる油性ボールペン用インク組成物であって、前記インク組成物が、添加物として、少なくともポリエステルを主鎖とするポリマーであって、化学構造内に塩基性官能基を持ち、かつ酸価3~40(mgKOH/g)である化学物質を、一種以上を含むことを特徴とする油性ボールペン用インク組成物。」
「【0039】
本発明のインキ組成物は、25±0.5°Cにおいて、38.30(1/S)の剪断速度で100~3000mPa・sの範囲の粘度を有する。」
上記摘記事項を整理すると、甲7に次の技術事項(以下「甲7記載事項」という。)が記載されている。
[甲7記載事項]
25±0.5℃において、38.30(1/S)の剪断速度で粘度が100~3000mPa・sの範囲である、油性ボールペン用インク組成物。
ク 甲第8号証
本件特許の優先権主張日前である平成18年12月21日に頒布された刊行物である特開2006-342321公報(以下「甲8」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールペン用油性インキとして好適に用いられ、書き出し時の筆記面に対するインキ量の不足による筆記カスレを抑制し、筆跡の柔らかく滑らかな筆感にすることに優れたボールペン用油性インキ組成物に関するものである。」
「【0028】
本発明のインキ組成物に用いられる主溶剤(全溶剤の50質量%以上)としては、アルコール、多価アルコール、グリコールエーテルから選ばれる溶剤を用いる。25°Cでの蒸気圧が0.001mmHg以上である高揮発性の溶剤を用いる場合に、上述の初筆性能向上剤を一緒に用いることが特に好ましい。本発明に係る初筆性向上剤を用いると、この様に蒸気圧の高い特定の溶剤を使用した場合の特有の問題を解決することができる。」
「【0044】
…
本発明のインキ組成物は、25±0.5°Cにおいて、38.30(1/S)の剪断速度で100~3000mPa・sの範囲の粘度を有する。」
上記摘記事項を整理すると、甲8に次の技術事項(以下「甲8記載事項」という。)が記載されている。
[甲8記載事項]
25±0.5℃において、38.30(1/S)の剪断速度で粘度が100~3000mPa・sの範囲である、油性ボールペン用インク組成物。
ケ 甲第9号証
本件特許の優先権主張日前である平成18年9月21日に頒布された刊行物である特開2006-249293公報(以下「甲9」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールペン用油性インキとして好適に用いられ、書き出し時の筆記カスレを抑制し、筆跡の柔らかく滑らかな筆感にすることに優れたボールペン用油性インキ組成物に関するものである。」
「【0025】
本発明のインキ組成物に用いられる主溶剤(全溶剤の50質量%以上)としては、アルコール、多価アルコール、グリコールエーテルから選ばれる溶剤を用いる。25°Cでの蒸気圧が0.001mmHg以上である高揮発性の溶剤を用いる場合に、上述の脂肪酸エステルあるいは脂肪酸アミド化合物を一緒に用いることが特に好ましい。本発明はこの様に蒸気圧の高い特定の溶剤を使用した場合に生じる、ペン先のチップ先端に付着したインキが揮発してできた、強固な凝着の問題を解決することができる。」
「【0042】
…
本発明のインキ組成物の粘度範囲は、25±0.5°Cにおいて、38.30(1/S)の剪断速度で100~3000mPa・sである。」
上記摘記事項を整理すると、甲9に次の技術事項(以下「甲9記載事項」という。)が記載されている。
[甲9記載事項]
25±0.5℃において、38.30(1/S)の剪断速度で粘度が100~3000mPa・sの範囲である、ボールペン用油性インキ組成物。
コ 甲第10号証
本件特許の優先権主張日前である平成18年6月22日に頒布された刊行物である特開2006-160911公報(以下「甲10」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、油性ボールペンとして好適に用いられ、柔らかく滑らかな筆感及び筆記面に対する素早いインキの浸透、筆記によるインキのペン先への拡張濡れ(いわゆる、付着ボテ)やそれを伴い紙面に対するインキのボタ落ち(いわゆる、描線ボテ)を極力抑制し、ペン先の詰まり無しにペン先からのインキの漏れ出しも抑制するボールペン用油性インキ組成物に関するものである。」
「【0039】
化学構造式(1)で表される溶剤化合物は、具体的には例えば、3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ヘキシレングリコール等となることができる。本発明のインキ組成物では構造式(1)で表されるこれらの溶剤化合物を単独で用いても混合して用いてもよいが、混合して用いると、乾燥性、溶解性、臭気などの性能のバランスをとることが容易であるのでより好ましい。
【0040】
式(1)で表される溶剤は、溶剤質量全体の10%以上を占めることができ、好ましくは、30%以上、最も好ましくは40%~100%を占めることができる。」
「【0067】
本発明の油性ボールペン用インキ組成物は、上記の様に低粘度の溶剤を用いると共に、インキ組成物としての粘度を剪断速度38.30(1/秒)の時、100~3000mPa・sとなる範囲内に調整する。インキ粘度を当該範囲に調製することにより、柔らかく滑らかな筆感及び筆記面に対する素早いインキの浸透、筆記によるインキのペン先への拡張濡れ(付着ボテ)やそれを伴い紙面に対するインキのボタ落ち(描線ボテ)を極力抑制するものである。」
上記摘記事項を整理すると、甲10に次の技術事項(以下「甲10記載事項」という。)が記載されている。
[甲10記載事項]
剪断速度38.30(1/秒)の時、インキ組成物としての粘度が100~3000mPa・sの範囲である、ボールペン用油性インキ組成物。
サ 甲第11号証
本件特許の優先権主張日前である平成17年3月31日に頒布された刊行物である特開2005-81624公報(以下「甲11」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、インキ収容管内に直接収容するボールペンインキの後端部に使用するフォロワーに剪断減粘指数が0.95以上という流動性のよいフォロワーを使用したボールペンに関する。」
「【0054】
25°Cにおける粘度が1000~40000mPa・s、剪断速度1~10/sにおける剪断減粘指数が0.95以上のような流動性のあるフォロワーをインキ収容管の内径が2.0~2.8mmのボールペンリフィールに使用した場合、重力もしくは落下衝撃の影響でフォロワーがインキ収容管後端部から流れ出すことはない。」
「【0089】
得られた25°Cにおけるフォロワーの粘度は16000mPa・s(剪断速度3.8/s)、剪断速度1~10/sにおける剪断減粘指数は0.98であった。また、得られたフォロワーの表面張力は31.5mN/mであった。」
「【0092】
得られた25°Cにおけるフォロワーの粘度は7500mPa・s(剪断速度3.8/s)、剪断速度1~10/sにおける剪断減粘指数は1.00であった。」
「【0095】
得られた25°Cにおけるフォロワーの粘度は16000mPa・s(剪断速度3.8/s)、剪断速度1~10/sにおける剪断減粘指数は0.99であった。また、得られたフォロワーの表面張力は33.2mN/mであった。」
「【0098】
得られた25°Cにおけるフォロワーの粘度は16000mPa・s(剪断速度3.8/s)、剪断速度1~10/sにおける剪断減粘指数は0.99であった。また、得られたフォロワーの表面張力は33.2mN/mであった。」
上記摘記事項を整理すると、甲11に次の技術事項(以下「甲11記載事項」という。)が記載されている。
[甲11記載事項]
インキ収容管内に直接収容するボールペンインキの後端部に使用され、25℃における粘度が100~40000mPa・s、剪断速度1~10/sにおける剪断減粘指数が0.95以上のフォロワー。
シ 甲第12号証
本件特許の優先権主張日前である平成17年3月31日に頒布された刊行物である特開2005-81616公報(以下「甲12」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、インキ収容管内に直接収容するボールペンインキの後端部に使用するフォロワーに剪断減粘指数が0.95以上という流動性のよいフォロワーを使用したボールペンに関する。」
「【0029】
25°Cにおける粘度が1000~40000mPa・s、剪断速度1~10/sにおける剪断減粘指数が0.95以上ような流動性のあるフォロワーをインキ収容管の内径が2.0~2.8mmのボールペンリフィールに使用した場合、重力もしくは落下衝撃の影響でフォロワーがインキ収容管後端部から流れ出すことはない。
しかし、静電気を帯びた外軸に当該リフィールを挿入する際、または、外軸とリフィールからなるペン体の外軸を布等で擦り外軸に静電気を帯びさせた場合は、フォロワーが後端部から流れ出す現象が発生する場合がある。尚、この現象は、剪断減粘指数が0.8以下の流動性の乏しい一般的なフォロワーを充填した場合には、発生しない現象であった。」
「【実施例】
【0047】
次に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。
(i)スピロンバイオレットC-RH:トリフェニルメタン系の造塩染料
(ii)ポリビニルブチラールBM-1:フチラール樹脂
(iii)SKレジン:アルコール可溶性の樹脂
(iv)活性剤:HLBが3未満のソルビタン系の非イオン性界面活性剤
(v)バーレルプロセス油P2200:
ポリ-α-オレフィン。25°C粘度5300mPa・s(剪断速度3.8/s)、
25°C表面張力33.2mN/m 。
(vi)バーレルプロセス油P10000:
ポリ-α-オレフィン。25°C粘度24600mPa・s(剪断速度3.8/s)、
25°C表面張力34.1mN/m。
(vii)バーレルプロセス油P1500:
ポリ-α-オレフィン。25°C粘度2800mPa・s(剪断速度3.8/s)
(viii)バーレルプロセス油P37500:
ポリ-α-オレフィン。25°C粘度97800mPa・s(剪断速度3.8/s)、
25°C表面張力測定不能。
(ix)ダイアナプロセスオイルPW-8:
鉱物油。25°C粘度12mPa・s(剪断速度3.8/s)
(x)出光ポリブテン2000H:ポリブテン
(xi)アエロジルR-972:微粒子シリカ
(xii)クリアロンP-105:テルペン樹脂
実施例1~3には下記配合のインキ及びフォロワーを使用した。
<インキ>
スピロンバイオレットC-RH(保土谷化学社製)18.0質量%
ポリピニルブチラール BM-1(積水化学社製)1.0質量%
SKレジン(ヒュルス社製)1.0質量%
活性剤9.0質量%
3-メトキシ、3-メチル、1-ブタノール64.0質量%
<フォロワー>
バーレルプロセス油P-2200(松村石油社製)80.0質量%
バーレルプロセス油P-10000(松村石油社製)20.0質量%
フォロワーの粘度は7500mPa・s(剪断速度3.8/s)、剪断速度1~10/sにおける剪断減粘指数は1.00であった。」
上記摘記事項を整理すると、甲12に次の技術事項(以下「甲12記載事項」という。)が記載されている。
[甲12記載事項]
インキ収容管内に直接収容するボールペンインキの後端部に使用され、25℃における粘度が100~40000mPa・s、剪断速度1~10/sにおける剪断減粘指数が0.95以上のフォロワー。
ス 引用文献1
本件特許の優先権主張日前である平成25年8月8日に頒布された刊行物である特開2013-151157公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は筆記具に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の実情に鑑み、インクへの悪影響がなく、経時的なインク漏れ出しやフ
ォロワーの漏れ出しがなく、インクとフォロワーの逆転の問題も発生しにくい表面処理を
金属チューブのインク収容部に施し、安価で製造が容易な筆記具の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、インク収容部が金属チューブからなり、その金属チューブの内面に付着物が固化されたことを特徴とする筆記具である。
【0013】
また、本発明において付着物が固化されたものとは、シリコーンオイルを焼き付け処理したことが好ましい。
【0014】
本発明において、インクは、油性インク、水性インク、剪断減粘性を有するインクやそれらを混合したインクでも特にインク種を問わないが、特に主溶媒が水以外である油性系インクであって、かつ、インク粘度が10~3000mPa・s以下のものであり、インク収容部では、インクの後方側にフォロワーが設けられた場合には問題となることが多く、特に本発明の効果を享受することができる。
【0015】
また、本発明において、シリコーンオイルは主に水を溶媒とし、分散されたエマルジョンタイプのものであって、該シリコーンオイルがインク収容部内に塗布されて、それが焼き付けられているものであることが好適である。シリコーンオイルは各種市販の変性タイプが使用可能であるが、作業性、付着性を考慮すると粘度が10~10000mPa・sのものが好適である。
【0016】
また、本発明において、インク収容管は、内面が光輝処理されていないものであり、その内面の面粗度が、JIS B0601に準拠する算術平均粗さがRa0.5μm以上であって、溶接部を有する溶接管であるものでも、本発明によって安価に使用することが可能となる」
「【0025】
筆記チップ14先端の筆記体には、ボールペンチップの他、繊維束芯や樹脂成形芯からなるサインペン等の各種筆記ペン先を用いることができる。
【0026】
前記インク収容部12に収容されるインク16は、主溶媒が水以外である油性系インクであって、かつ、剪断速度38.3(1/s)での測定においてインク粘度が10~3000mPa・s以下のものである。また、インク収容部12では、インクの後方側にフォロワー18が設けられている。
【0027】
前記インク収容部12の内面には、該インク収容部12の壁厚に比較してごく薄い固化層20が形成されシリコーンオイルがインク収容部内面に塗布されて、それが焼き付けられている。該シリコーンオイルは、例えばジメチルシリコーンオイル、変性シリコーンオイル、エマルジョンタイプのシリコーンのオイル、焼き付けタイプのシリコーンオイルが挙げられる。一般的にエマルジョンタイプのシリコーンオイルについて、焼き付けることを行われていないが、本発明で実施したところ、効果がある知見を得ることができた。なお、シリコーンオイルの加温処理は200℃~400℃で、0.1h~3hの条件設定にてそれぞれ処理可能である。
【0028】
また、インク収容部12は、例えば板状の金属板を連続溶接しながら造管する溶接管であり、内面が光輝処理されていないものであり、その内面の面粗度が、JIS B0601に準拠する算術平均粗さがRa0.5μm以上のものである。非常に高価となる内面を平滑にした光輝タイプの金属パイプを使用しなくてもよいが、算術平均粗さRaが0.5μm未満であるとシリコーンオイルのインク収容部内面への固着が不十分となる。」
上記摘記事項を整理すると、引用文献1に次の技術事項(以下「引用文献1記載事項」という。)が記載されている。
[引用文献1記載事項]
インクへの悪影響がなく、経時的なインク漏れ出しやフォロワーの漏れ出しがなく、インクとフォロワーの逆転の問題も発生しにくい表面処理を金属チューブのインク収容部に施した筆記具を提供するために、インク収容部が金属チューブからなり、その金属チューブの内面にシリコーンオイルを付着物として固化させるために焼き付け処理しており、インク収容管は、内面の面粗度が、JIS B0601に準拠する算術平均粗さがRa0.5μm以上であり、付着物として焼き付け処理されるシリコーンオイルの粘度が10~10000mPa・sであって、インク収容部に収容されるインクが、主溶媒が水以外である油性系インクである、ボールペン等の筆記具。
セ 引用文献2
本件特許の優先権主張日前である平成28年12月28日に頒布された刊行物である特開2016-221906公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子径の大きいインクを用いた場合であっても十分な筆記距離の得られるノック式ボールペンに関する。」
「【0016】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態におけるボールペン1は、図1に示すように、ノック式のボールペンであって、軸本体2と、軸本体2に軸方向に進退可能に収容されたリフィル3と、内蔵されたリフィル3のペン先を軸本体2の先端から突没させるノック機構4と、からなる。
(軸本体2)
軸本体2は、リフィル3を内部に収納する円筒状の軸筒20と、軸筒20の先端部分に螺合している略円錐状の口先部材21と、からなる。
【0017】
軸筒20の後端部分には使用者の衣服に設けられたポケットに差し込まれた際に、ポケットの布地を挟持するためのクリップ部材22が設けられている。
口先部材21は、底面が開口され、その内周面にネジ溝が形成されたものとなっている。これにより、口先部材21は、軸筒20に取り付けられている。
(リフィル3)
リフィル3は、インクを収容したインク収容管30と、インク収容管30の先端に継手31を介して装着されたボールペンチップ32と、からなる。また、継手31内にボールペンチップ32との圧入部より細径のインク流通孔を形成されている。
【0018】
ここで、インク収容管30に収容されるインクの最大容量は0.5ml以上である。また、収容されているインクは後述する消去部材41aによって消去可能な消しゴム消去性インクであって、インクの平均粒子径は0.3μm以上、後述するクリアランス(図3参照)未満である。また、リフィル3の後端には加圧機構(図示せず)が設けられている。具体的には、リフィル3内の空間に加圧ガスが封入されており、これにより、リフィル3の後端から、リフィル3内のインクに対して圧力がかかっている。
ボールペンチップ32は、図2に示すように、筆記ボール33と、この筆記ボール33を先端に抱持するホルダー34と、からなる。
【0019】
筆記ボール33の直径は0.4mm以下であって、筆記ボール33の真球度は0.5μm以下である。」
「【0034】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態におけるボールペン1は、図7に示すように、軸本体2と、軸本体2に軸方向に進退可能に収容されたリフィル3と、内蔵されたリフィル3のペン先を軸本体2の先端から突没させるノック機構4と、から構成される。
ここで、軸本体2及びリフィル3は第1の実施の形態と同様に構成されている。また、加圧機構についても、第1の実施の形態と同様にボールペン1に設けられている。」
「【図7】
[図:0001427924000014.jpg]
」
上記【0017】の記載を踏まえれば、図7から、インクを収容したインク収容管30と、インク収容管30の先端に継手31を介して装着されたボールペンチップ32を備え、インク収容管30より継手31が小径になっている、リフィル3が看取できる。
上記摘記事項及び認定事項を整理すると、引用文献2に次の技術事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。
[引用文献2記載事項]
収容されるインクの最大容量が0.5ml以上であるインク収容管30と、インク収容管30の先端に継手31を介して装着されたボールペンチップ32を備え、インク収容管30より継手31が小径であって、十分な筆記距離の得られるノック式ボールペン用リフィル3。
ソ 引用文献3
本件特許の優先権主張日前である平成12年5月16日に頒布された刊行物である特開2000-135893公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、低粘度の油性インク又は基本的には低粘度である剪断減粘性を有した水性インクを使用したボールペンのノック式筆記具の改良に関する。」
「【0010】図4は実施例であるボールペンのリフィールを示している。リフィール20はチップ22、継ぎ手25、インク収容管27、尾栓21で外観上構成される。継ぎ手25は合成樹脂により一体成形で形成されており、その前半に大径部25c、中径部25b、小径部25aが形成され、後半にインク収容管27に圧着する軸部25dが形成されている。又、軸心には孔が貫通しており、上記小径部25aの先端孔にはボールペンのチップ22の後方の軸部23cが圧着される。又、軸部23cの後端に対接して弁室25eが設けられ、弁室25eの後端にはテーパー状又は球面状のボール受け座25iが形成されている。又、中径部25bから大径部25cの外周部に懸けて所要箇所で通気溝25hが形成されている。(これは、当該リフィールをキャップ式の筆記具に装着する時に通気上必要となるものである)」
「【0013】又、継ぎ手25の前記軸部25dの外周には筒状のインク収容管27がその先端を大径部25cの後端に当接して圧着され、インク収容管27の内径部が継ぎ手25の導孔25fに連通している。インク収容管27内には低粘度の油性インク又は基本的には低粘度であるが、静的には高い粘性を有し、筆記時のボールの回転で粘性が低下してインクが流出可能となる剪断減粘性を有した水性インク28が充填され、インク28の後端にインクの消耗と共にインク面に接触して追随して移動可能なグリース状のフォロア29が充填される。又、フォロア29内に該フォロア29と略同等の比重を有する樹脂製のフォロア棒30が浸漬される。尚、フォロア棒30は必要により(インク収容管が太く、インクのヘッドが大きくなる。又、インクの粘性が低く、インクのヘッドが支えきれない等)に設けられ、形状は無垢の棒状、パイプ状、カップ状など条件に応じて設計される。又、インク収容管27の後端には衝撃吸収性のある弾性体より形成された尾栓21が止着され、又、インク収容管27の内部と外部を通気する中心孔21a、横孔21b、通気溝21cが設けられている。」
「【図4】
[図:0001427924000015.jpg]
」
上記摘記事項及び認定事項を整理すると、引用文献3に次の技術事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。
[引用文献3記載事項]
チップ22、継ぎ手25、インク収容管27、尾栓21で構成されており、継ぎ手25は合成樹脂により一体成形で形成されており、その前半に大径部25c、中径部25b、小径部25aが形成され、後半にインク収容管27に圧着する軸部25dが形成されており、インク28の後端にインクの消耗と共にインク面に接触して追随して移動可能なグリース状のフォロア29が充填され、低粘度の油性インクが使用される、リフィール20。
(2)対比
本件訂正特許発明3と甲1発明を対比する。
ア 後者の「ボール7」、「ボールホルダー6」、「円筒部」、「テーパー部」、「ボール抱持室12」、「凹状のボール転写部15」、「後孔13」、「中心孔2」、「放射状溝1」、「コイルスプリング11」、「インキ収容部8」、「ボールペンチップ」は、各々前者の「筆記ボール」、「ホルダー」、「円筒状の胴部」、「テーパー部」、「ボールハウス」、「前記ボールハウスの底面であって、前記筆記ボールの曲面が転写されたボール受座」、「バック孔」、「インク孔」、「チャンネル溝」、「押圧スプリング」、「インク収容管」、「ボールペンチップ」に相当する。
イ 後者の「ボールペンに用いられるリフィル」は、後述する相違点を除き、前者の「ボールペンリフィル」に相当する。
ウ 後者の「ボールホルダー6」は、「ボール7を」「回転自在に抱持して」おり、「先端に向けて先細になっており」「テーパー部の後端側に円筒部を有して」いるので、後者の「ボールホルダー6」と前者の「ホルダー」は、「前記筆記ボールを抱持するものであって、円柱状の胴部と、前記胴部の先端側で先細に形成されたテーパー部」を有するものである点で一致する。
エ 後者の「ボール抱持室12」は、ボール7を抱持し、テーパー部の内部に位置しているので、前者の「ボールハウス」と「前記テーパー部の先端から前記テーパー部の後端に向かって形成され、前記筆記ボールを収容する」ものである点で一致する。
オ 後者の「後孔13」は、ボールホルダー6の後端から内方突出部14まで位置しており、内方突出部14はボール抱持室12の近傍にあるといえるので、前者の「バック孔」と「前記ホルダーの後端から前記ホルダーの先端に向かって形成され、前記ボールハウスの近傍まで達する内部空間である」点で一致する。
カ 後者の「中心孔2」は、ボール抱持室12と後孔13の間の通路となっているから、前者の「インク孔」と「前記ボールハウスと前記バック孔との間を連絡するよう形成された内部空間である」点で一致する。
キ 後者の「放射状溝1」は、内方突出部14に、環状に等間隔で形成されているから、前者の「チャンネル溝」と「前記インク孔の周囲に等配されるとともに、前記インク孔と前記ボールハウスとを連絡するよう形成された複数の溝である」点で一致する。
ク 後者のボールホルダー6の先端付近には、テーパー部が形成されているところ、同ボールホルダー6には先端側よりボール抱持室12が形成され、ボール抱持室12の先端開口部6aは、カシメ加工にて縮径化されているから、後者は、前者の「前記テーパー部の先端部分が内側にかしめられたカシメ部」に相当する箇所を備えている。
ケ 後者の「コイルスプリング11」は、ボールホルダー6の内部にボール7を背面より押して前方付勢するので、前者の「押圧スプリング」と「前記筆記ボールを先端側へ押圧する」ものである点で一致する。
コ 後者の「インキ収容部8」は、油性インキであるインキ9が収容されてボールホルダー6に接合されたものであるから、前者の「インク収容管」と「油性インクを収容し、前記ボールペンチップが装着される」点で一致する。
サ 後者はボール7のボール径が0.3mmと0.4mmのときに、各々放射状溝1の前側開口部1aの最前端位置1apにおけるボールホルダーの厚みが、各々ボール径の27.5~31.25%又は25%~30%である。
放射状溝1の前側開口部1aの最前端位置1apとボール抱持室12の底面の最外縁の位置はわずかにずれているものの、下図に示す両者の位置におけるボールホルダーの厚みはほぼ等しいと認められる。また、前者は「直径0.38mmの筆記ボール」との限定がされたところ、後者の0.3mmと0.4mmの間の数値なので、上記ボールホルダーの厚みの範囲が大きく変動しないとみてよいと認められる。すると、前者と後者は、ともに「前記ボールハウスの底面の最外縁から、前記テーパー部までの前記ホルダーの径方向の厚みが、前記筆記ボール径の略25%以上31.25%以下」の範囲で一致している。
「説明図:
[図:0001427924000016.jpg]
」
すると、本件訂正特許発明3と甲1発明を対比すると、両者は、
[一致点]
「筆記ボールと、
前記筆記ボールを抱持するものであって、円柱状の胴部と、前記胴部の先端側で先細に形成されたテーパー部と、を有するホルダーと、
前記テーパー部の先端から前記テーパー部の後端に向かって形成され、前記筆記ボールを収容するボールハウスと、
前記ボールハウスの底面であって、前記筆記ボールの曲面が転写されたボール受座と、
前記ホルダーの後端から前記ホルダーの先端に向かって形成され、前記ボールハウスの近傍まで達する内部空間であるバック孔と、
前記ボールハウスと前記バック孔との間を連絡するよう形成された内部空間であるインク孔と、
前記インク孔の周囲に等配されるとともに、前記インク孔と前記ボールハウスとを連絡するよう形成された複数の溝であるチャンネル溝と、
前記テーパー部の先端部分が内側にかしめられたカシメ部と、
前記筆記ボールを先端側へ押圧する押圧スプリングと、
を備えるボールペンチップと、
油性インクを収容し、前記ボールペンチップが装着されるインク収容管と、
を含み、
前記ボールハウスの底面の最外縁から、前記テーパー部までの前記ホルダーの径方向の厚みが、前記筆記ボール径の略25%以上、かつ、31.25%以下である、
ボールペンリフィル。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
前者は、「前記カシメ部の先端面における外径であるカシメ外径が、前記筆記ボール径の112%未満」であるが、後者は、カシメ加工された先端開口部6aの外径とボール7の径の比が規定されていない点。
[相違点2]
前者は、「前記押圧スプリングの先端側へ押圧する荷重は、0.01N~0.09N」と規定されているが、後者は、「コイルスプリング11」の押圧荷重が規定されていない点。
[相違点3]
前者の「筆記ボール」の直径が「0.38mm」であるのに対し、後者の「ボール7」の直径が「0.3mm」又は「0.4mm」である点。
[相違点4]
前者は、「前記インク収容管は、前記油性インクと触れる内面の面粗度が、JIS B0601に準拠する算術平均粗さがRa0.5μm以上の金属製であり、その内面には、10~10,000mPa・sのシリコーンオイルが焼き付け処理で付着物として固化されている」のに対し、後者は、インキ収容部8内部の状態が不明である点。
[相違点5]
前者は、「前記インク収容管は、前記油性インクを収容する略円筒状の太径の収容部と、前記収容部の先端から延びる細径の延出部とを備えることで、少なくとも1500m以上の距離が筆記可能であり、 前記収容部の後端の開口部には尾栓が装着されている」(スペースは改行を示す。)のに対し、後者はインク収容部8に延出部及び尾栓が設けられておらず、筆記距離の規定もない点。
(3)判断
ア 相違点1及び相違点3について
事案に鑑みて、相違点1及び相違点3を同時に検討する。
本件優先権主張日前に、「ボール径が0.38mmであり、かしめ部外径がボール径の1.0倍~1.2倍であるボールペンチップ。」(甲2記載事項)及び「ボール外径Dが0.28mmであり、内方にかしめられたチップ先端縁部1Bの外縁部1Iの外径Jがボール外径Dの112%以下であるボールペンチップ1。」(甲3記載事項)が公知であったことからすると、「カシメ部の外径をボール径の112%未満に設定」することは周知の技術事項(以下「周知技術1」という。)であったと認められる。
すると、周知技術1を考慮すれば、甲1発明の「カシメ加工にて縮径化」された「先端開口部6a」の外径を「ボール7」のボール径の「112%未満」に設定して、相違点1の構成を採ることは、当業者が容易に想到し得たものである。
また、甲2記載事項を考慮すれば、相違点3に係る「筆記ボール」を「直径0.38mm」とすることも格別のことではなく、当業者が適宜なし得る程度のことである。
そして、その効果も、上記(1)イ 甲2【0015】の「ボールをチップ先端部の内壁に、出没式ボールペンの総重量よりも高い押圧力で押圧し、容易にボールが移動することを抑制すること、前記かしめ部の外径をボール径の1.0倍~1.2倍、好ましくは、1.05~1.1倍とし、紙当たり性やボール落ちを防止することも重要な構成となる。尚、前記かしめ部の外径をボール径の1.0倍より小さいとボール保持力が低下する傾向となり、1.2倍を超えると、所望するクリアランスを得られにくく、紙当たり現象が発生しやすい傾向となる」との記載から当業者が予測し得る程度のものにすぎない。
イ 相違点2について
本件優先権主張日前に、「コイルスプリングによるボールの押付荷重を0.014Nとした、ボールホルダーを含む油性インキ用ボールペンのためのボールペンチップ。」(甲4記載事項)及び「筆記ボールとカシメ部との密着性の維持及び書き味の向上を両立する観点から、スプリングの押し荷重を0.010N以上0.09N以下の範囲内に設定した、油性ボールペンリフィル。」(甲5記載事項)が公知であったことからすると、「押圧スプリングの先端側へ押圧する荷重」を「0.01N~0.09N」の範囲のいずれかに設定することは周知の技術事項(以下「周知技術2」という。)であったと認められる。
すると、周知技術2を考慮すれば、甲1発明の「ボール7を背面より押して前方付勢するコイルスプリング11」による付勢荷重を0.010N以上0.09N以下のいずれかの値に設定して、相違点2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、その効果も、上記(1)オ 甲5【0009】の「0.010N未満であると、非筆記時における筆記ボール30とカシメ部22との密着が弱いので、インク溜まりが乾燥しやすくなる。そのため、書き始めの描線がかすれやすくなる。一方、0.090Nを上回ると、筆記圧をかけても筆記ボール30が押し戻されにくくなる。したがって、書き味を損ねることになる。よって、スプリング40の押し荷重は0.010N以上かつ0.090N以下の範囲内が適当であると」との記載から当業者が予測し得る程度のものにすぎない。
ウ 相違点4について
引用文献1記載事項によれば、インク収容部を金属チューブからなる金属製として、その金属チューブの内面にシリコーンオイルを付着物として固化させるために焼き付け処理しており、インク収容管は、内面の面粗度が、JIS B0601に準拠する算術平均粗さがRa0.5μm以上であり、付着物として焼き付け処理されるシリコーンオイルの粘度が10~10000mPa・sであって、インク収容部に収容されるインクが、主溶媒が水以外である油性系インクであるボールペンは、本件優先権主張日前に公知であった。
そして、引用文献1記載事項に挙げられているところの、インクへの悪影響がなく、経時的なインク漏れ出しやフォロワーの漏れ出しがなく、インクとフォロワーの逆転の問題も発生しにくくするとの課題は、甲1発明のボールペンリフィルも当然に有している課題であるから、甲1発明に引用文献1記載事項を適用して相違点3に係る構成を採ることは、当業者が容易に想到し得たものである。
エ 相違点5について
引用文献2記載事項における、「収容されるインクの最大容量が0.5ml以上であるインク収容管30と、インク収容管30の先端に継手31を介して装着されたボールペンチップ32」であって、「インク収容管30より継手31が小径」である事項において、「インク収容管30」、「『インク収容管30』より小径である『継手31』」は、各々本件訂正特許発明3の「略円筒状の太径の収容部」、「前記収容部の先端から延びる細径の延出部」に相当する。
引用文献3記載事項における、「チップ22、継ぎ手25、インク収容管27、尾栓21で構成されており、継ぎ手25は合成樹脂により一体成形で形成されており、その前半に大径部25c、中径部25b、小径部25aが形成され、後半にインク収容管27に圧着する軸部25dが形成され」た「リフィール20」における、「インク収容管27」、「大径部25c」、「『中継部25b』及び『小径部25a』」、「尾栓」は、各々本件訂正特許発明3の「インク収容管」、「略円筒状の太径の収容部」、「前記収容部の先端から延びる細径の延出部」、「尾栓」に相当する。
よって、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項を総合すれば、本件訂正特許発明3の「少なくとも1500m以上の距離が筆記可能」である点を除き、相違点5を充足する。
また、引用文献2記載事項は、「収容されるインクの最大容量」を「0.5ml以上」として「十分な筆記距離の得られるノック式ボールペン用リフィル3」に関するものであり、太径のインク収容管を用いることでインクの最大容量を多くして、筆記距離を確保するものと理解できる。すると、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項の太径のインク収容管を用いれば、筆記距離を延ばせることが当業者に自明であるところ、本件訂正特許発明3のように具体的な筆記距離を「少なくとも1500m以上」とすることは、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項を踏まえれば、当業者が容易に想到し得た設計的事項である。
(4)小括
本件訂正特許発明3は、周知技術1、周知技術2及び甲2記載事項を考慮すれば、甲1発明及び引用文献1記載事項ないし引用文献3記載事項に基づいて、本件特許の優先権主張日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許を受けたものである。
2 請求項4
(1)対比
本件訂正特許発明4と甲1発明を対比すると、両者は、相違点1ないし相違点5に加えて、以下の点で相違する。
[相違点6]
前者は、「前記油性インクは剪断速度38.3s-1においてインク粘度が10~3000mPa・sであるとともに主溶媒が水以外」であるが、後者は油性インクを用いるものではあるものの、その粘度について規定されていない点。
[相違点7]
前者は、「前記油性インクの後端側に、グリース状の物質であるインク追従体が充填され、前記インク追従体は、25℃における粘度が1000~40,000mPa・sであり、 剪断速度1~10s-1における剪断減粘指数が0.95以上である」(スペースは改行を示す。)ものであるが、後者にインク追従体の粘度及び剪断減粘指数について特定されていない点。
(2)判断
ア 相違点6について
「温度25℃、せん断速度38.3/secの条件で測定した粘度が、各々、934mPa/sec、426mPa/sec、449mPa/sec、1577mPa/sec、516mPa/sec、768mPa/secである、油性ボールペン用インク組成物」(甲6記載事項)、「25±0.5℃において、38.30(1/S)の剪断速度で粘度が100~3000mPa・sの範囲である、油性ボールペン用インク組成物」(甲7記載事項)、「25±0.5℃において、38.30(1/S)の剪断速度で粘度が100~3000mPa・sの範囲である、油性ボールペン用インク組成物」(甲8記載事項)、「25±0.5℃において、38.30(1/S)の剪断速度で粘度が100~3000mPa・sの範囲である、ボールペン用油性インキ組成物」(甲9記載事項)、「剪断速度38.30(1/秒)の時、インキ組成物としての粘度が100~3000mPa・sの範囲である、ボールペン用油性インキ組成物」(甲10記載事項)からすると、本件特許発明4に規定されている「剪断速度38.3s-1においてインク粘度が10~3000mPa・s」の数値範囲に含まれる粘度を有する「主溶媒が水以外」の「油性インク」は、本件特許の優先権主張日前において周知の技術(以下「周知技術3」という。)であったと認められる。
すると、周知技術3を考慮すれば、甲1発明において、その油性インクの粘度を、本件特許発明4に規定されているように「剪断速度38.3s-1においてインク粘度が10~3000mPa・s」の範囲に含まれる数値とすることは、当業者が容易に想到し得たものにすぎない。
また、甲6記載事項ないし甲10記載事項に含まれない、「剪断速度38.3s-1においてインク粘度が10~100mPa・s」の数値範囲についても、必要とされるインクの性質に基づいて、当業者が適宜なし得る程度の事項にすぎない。
イ 相違点7について
「インキ収容管内に直接収容するボールペンインキの後端部に使用され、25℃における粘度が100~40000mPa・s、剪断速度1~10/sにおける剪断減粘指数が0.95以上のフォロワー。」(甲11記載事項)及び「インキ収容管内に直接収容するボールペンインキの後端部に使用され、25℃における粘度が100~40000mPa・s、剪断速度1~10/sにおける剪断減粘指数が0.95以上のフォロワー。」(甲12記載事項)との記載からみて、「25℃における粘度が1000~40,000mPa・sであり、剪断速度1~10s-1における剪断減粘指数が0.95以上のフォロワー」は、本件特許の優先権主張日前に周知の技術(以下「周知技術4」という。)であったと認められる。
すると、周知技術4を考慮すれば、甲1発明において、その「逆流防止体組成物10」の粘度を本件特許発明4に記載された「25℃における粘度が1000~40,000mPa・sであり、剪断速度1~10s-1における剪断減粘指数が0.95以上」として、相違点6に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得えた程度のものにすぎない。
(3)小括
上記1(3)の判断を踏まえると、本件訂正特許発明4は、周知技術1ないし周知技術3並びに甲2記載事項を考慮すれば、甲1発明並びに引用文献1記載事項ないし引用文献3記載事項に基づいて、本件特許の優先権主張日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許を受けたものである。
3 請求項5
本件訂正特許発明5と甲1発明を対比すると、両者は、相違点1ないし5に加えて、以下の点で相違する。
[相違点8]
本件訂正特許発明5は、「軸筒を備えた総重量が30g以上であるとともに、前記軸筒後端にボールペンリフィルを出没させるための球状の飾り部材を備え」て、「前記飾り部材の表面に軸方向に沿った縦溝が形成されている」が、甲1発明は、軸頭を備えた総重量が不明であって、かつ、ボールペンリフィルを出没させるための、表面の軸方向に沿った縦溝が形成された球状の飾り部材を軸頭後端に備えていない点。
相違点8について検討すると、甲1発明の軸頭を備えた総重量が不明であるが、仮にこの総重量を30g以上にすることが単なる設計的事項であったとしても、甲1発明の軸頭の後端の構造及び形状が不明であることに加えて、軸頭後端に、ボールペンリフィルを出没させるための、表面の軸方向に沿った縦溝が形成された球状の飾り部材を備える動機もない。
そして、相違点8は、特許異議申立人が提出した、又は、当審において提示したいずれの証拠に記載された発明、記載事項、及び周知技術に基づいても、当業者が容易に想到し得たものではないし、設計的事項といえる理由もない。
したがって、本件訂正特許発明5は、特許法第29条第2項に該当しない。
4 請求項6
本件訂正特許発明6と甲1発明を対比すると、両者は、相違点1ないし7に加えて、相違点8で相違する。
しかし、上記3で検討したとおり、相違点8は、特許異議申立人が提出した、又は、当審において提示したいずれの証拠に記載された発明、記載事項、及び周知技術に基づいても、当業者が容易に想到し得たものではないし、設計的事項といえる理由もない。
したがって、本件訂正特許発明6は、特許法第29条第2項に該当しない。
5 特許権者の意見について
特許権者は、令和7年3月21日に意見書を提出して、概略以下のとおり主張している。
「…引用文献2で使用されているインクは水性インクである。すなわち、引用文献2の【0040】以降に開示されている実施例には、「インクとして、市販の水性ボールペン(UM-101ER、三菱鉛筆製)に使用される黒のインクを用いて」と記載されている。また、引用文献2で課題とされている「十分な筆記距離」(【0005】)とは、具体的には「200m以上」(【0014】)である。なお、引用文献2には油性インクに関する言及はない。また引用文献2で実際に達成されている筆記距離は「少なくとも200m」(【0041】参照)であって、1500mには到底及ばないものである。
また、引用文献3の【0004】には「一般に低粘度のインク又は基本的には粘度の低い、剪断減粘性を有したインクを使用したボールペンは、インクの流出量が多く(筆記濃度を上げるため)インク収容管の径を太くしてインクの搭載量を多くしている。又、インクの粘度は油性ボールペンのインクに比べて小さいのでインク収容管に対する流動抵抗は小さい。」との記載があり、また「インク収容管27内には低粘度の油性インク又は基本的には低粘度であるが、静的には高い粘性を有し、筆記時のボールの回転で粘性が低下してインクが流出可能となる剪断減粘性を有した水性インク28が充填され、インク28の後端にインクの消耗と共にインク面に接触して追随して移動可能なグリース状のフォロア29が充填される。」とも記載されている(【0013】参照)。
以上より、引用文献2及び引用文献3で使用されているインクはいずれも水性インクである。
また、甲1発明の実施例においても、使用されているのは水性インクである(【0029】及び【0030】参照)。また、甲1発明のボールペンの一例の縦断面図を示す図4には、「インキ収容部8」の後端からインクが流出するのを防止する「逆流防止体組成物10」、及び、「ボールホルダー6」の「先端開口部6a」からのインクの直流を防止すべく「ボール7」を先端方向に押圧する「コイルスプリング11」という、低粘度の水性インクを使用することに伴う構成が記載されている。
以上より、甲1発明、引用文献2記載の発明、及び引用文献3記載の発明で使用されているのはいずれも水性インクである。
ここで、いわゆる水性ボールペンは、油性インクに比べ、筆記距離が短いのは技術常識である。たとえば、JIS S 6054:2020の「水性ボールペン及びレフィル」の「5.2 水性ボールペン及びレフィルの品質」には、「筆記性能 10cm以内で円滑な筆記が始まり,明らかなかすれ及び濃度のばらつきのない筆記距離が400m以上とする。」と定められている。このJIS規格の記述と、上記した引用文献2の水性インクの筆記距離「200m以上」とを考え合わせれば、「200m以上」との筆記距離が、このJIS規格の下限値である「400m」の約4倍である、相違点5の「1500m」にまで及ぶとは考えがたい。
以上より、甲1発明並びに引用文献2記載の発明及び引用文献3記載の発明からは、少なくとも相違点5の「少なくとも1500m以上の距離が筆記可能」との構成を想到することは容易ではない。よって、甲1発明、引用文献2及び引用文献3からは、本件訂正発明3の進歩性を否定することはできない。」(第4ページ第22行ないし第6ページ第11行)
(2)しかしながら、筆記距離を延ばすという課題は、筆記具であれば明示はなくとも当然に有している課題である。そして、油性インクを収容することが明示されている甲1発明に対して、油性インクに対しても適用できることが明らかであって「略円筒状の太径の収容部」、「前記収容部の先端から延びる細径の延出部」に関する引用文献2記載事項、及び、インク粘度を問わず同様に油性インクを大径部25cに収容する引用文献3記載事項の技術を適用して、太径で大容量のリフィルを用いて、収容されるインクの最大容量を多くして筆記距離を確保することは当業者が容易になし得る程度のことにすぎない。その際に筆記距離を所望の値として「1500m以上」とすることも、当業者が適宜設定可能な事項にすぎない。
また、特許権者は、水性インクを利用するボールペンの先行技術に基づいて、筆記距離を「1500m」にすることができないとの趣旨の主張をしているが、甲1発明が油性インクを採用できることを開示しており、また、引用文献3記載事項も油性インクを使用することを開示しており、インクの最大容量を増やすことが引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項に開示されているのであるから、油性インクの最大容量を多くして筆記距離を確保することに特段の困難性は認められない。
したがって、特許権者の上記主張は採用できない。
第6 取消理由2(特許法第36条第6項第1号)について
1 請求項1
(1)発明の詳細な説明の記載事項
本件訂正後の請求項1の「直径0.38mmの筆記ボール」及び「前記ボールハウスの底面の最外縁から、前記テーパー部までの前記ホルダーの径方向の厚みが、前記筆記ボール径の23%以上、かつ、36.8%以下」に関連して、本件特許明細書等に発明の詳細な説明として以下の記載がある。
「【0010】
そこで、本発明は、筆記ボール径が0.35~0.45mmのボールペンチップを用いた場合に、筆感の低下を抑制しつつ、ボールペンチップの落下耐性を高めることを目的とする。」
「【0040】
ここで、厚みXが筆記ボール42径の23%より小さいと、机上から床面に落下した時の衝撃による影響が大きくなり、テーパー部51の凹みによりインクの供給量が減少し、筆記時の描線が掠れてしまう。一方、厚みXが筆記ボール42径の40%以上だと、ボールハウス55内に油性インク35を溜めることが困難となり、筆記不能になるため、ボールペン5として機能しなくなる。仮に、筆記できたとしても、厚みXが筆記ボール42径の40%以上だと、必要以上にテーパー部51の肉厚が厚くなり、筆記時にカシメ部54が筆記面に引っ掛かりやすくなり、筆感の低下という不具合が生じる。そのため、筆記ボール42径が0.45mm以下のボールペンチップ40を用いた場合に、筆感の低下を抑制しつつ、ボールペンチップ40の落下耐性を高めるためには、厚みXを筆記ボール42径の23%以上、かつ、40%未満とすることが好適である。」
「【実施例】
【0052】
実施例及び比較例として、上記の実施形態に示すようなボールペンを製作し、下記の実験を行った。また、全ての実施例及び比較例において、ボールペンチップに装着した筆記ボール径は0.38mmであり、ボールペンの重量は40gであった。
【0053】
下記表1に示す実施例及び比較例のボールペンリフィルにおいて、5つのサンプルを各々製作した。そして、それらのボールペンリフィルが軸筒に収容されたボールペンを用いて、ボールペンリフィルの落下耐性を測定する実験を行った。具体的には、ボールペンの先端を下に向けた状態で1mの高さからコンクリート板の上に垂直落下させ、コンクリート板への垂直落下から24時間経過後に、そのボールペンを用いて筆記を行った。
【0054】
そして、この実験における描線の濃度差の評価として、筆記方向に関わらず描線状態が良好なものを「A」評価とし、筆記方向によって描線濃度に差が見られるものを「B」評価とし、描線に掠れや線飛びが見られるものを「C」評価とし、「C」評価よりも描線に掠れや線飛びが多く見られるものを「D」評価とし、ボールペンとして機能せず、筆記不能となったものを「E」評価とした。
【0055】
また、この実験におけるインク漏れの評価として、インク漏れが生じなかったものを「A」評価とし、インク漏れが生じたものを「B」評価とし、「B」評価よりも多量のインク漏れが生じたものを「C」評価とし、「C」評価よりも多量のインク漏れが生じたものを「D」評価とし、ボールペンとして機能せず、筆記不能となったものを「E」評価とした。
【0056】
また、別の5つのサンプルを製作し、長距離筆記による描線の掠れの実験を行った。JIS S6039に準拠した筆記試験機を用い、筆記角度55°、筆記速度1m/min、筆記荷重4.9Nで筆記し、1,500m筆記した後の描線の状態を確認し、掠れが見られなかったものを「A」評価とし、僅かながら掠れが確認されたものを「B」評価とし、掠れがはっきり確認できたものを「C」評価とした。
上記実験結果を下記表1に示す。
【0057】
【表1】
[図:0001427924000017.jpg]
【0058】
上記表1の結果から、厚みXが筆記ボール径の23%以上、かつ、40%未満のものは、描線の濃度差、インク漏れ及び長距離筆記の評価において、全てのサンプルで「A」評価となった。そして、これらの「A」評価のボールペンにおいては、筆跡に影響無く、1500m以上の筆記が可能であった。
一方、厚みXが筆記ボール径の23%より小さくなるにつれ、描線の濃度差の評価及びインク漏れの評価において、高評価のサンプルが少なくなっていった。また、厚みXが筆記ボール径の40%以上の場合には、そもそもボールペンとして機能せず、筆記不能であった。」
(2)検討
ア 本件訂正請求の結果、本件訂正特許発明3ないし6は、「直径0.38mmの筆記ボール」を備えて、「前記ボールハウスの底面の最外縁から、前記テーパー部までの前記ホルダーの径方向の厚みが、前記筆記ボール径の23%以上、かつ、36.8%以下」のものとなった。
イ そして、上記(1)【0052】~【0058】記載の実施例を参照すると、筆記ボール径が0.38mmの条件における、ボールハウスの底面の最外縁から、テーパー部までのホルダーの径方向の厚みと、その対筆記ボール径比が開示されており、「直径0.38mmの筆記ボール」を備えて「前記ボールハウスの底面の最外縁から、前記テーパー部までの前記ホルダーの径方向の厚みが、前記筆記ボール径の23%以上、かつ、36.8%以下」とした発明が、本件特許明細書等に開示されているといえる。
ウ したがって、本件訂正特許発明3ないし6は、発明の詳細な説明に記載された発明である。
2 小括
以上のとおり、本件訂正特許発明3ないし6に係る発明は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たさないとはいえないから、上記取消理由2により、本件訂正特許請求の範囲の請求項3ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
第7 むすび
上記第2のとおり、本件訂正請求は認められるから、特許第7357461号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲〔1-6〕のとおり訂正することを認める。
上記第5の3及び第6のとおり、取消理通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した取消理由によっては、請求項5及び請求項6に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他に本件特許の請求項5及び請求項6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
上記第5の1及び2のとおり、本件訂正特許発明3及び4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項3及び4に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
また、請求項1及び2は、本件訂正請求により削除された。これにより、特許異議申立てについて、請求項1及び2に係る申立ては、申立ての対象が存在しなくなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700243