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特許異議申立

2020-700317

直流電源装置及びこれを搭載した空気調和機

審判番号
2020-700317
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-175308
登録番号
特許第6605887号(P6605887)
請求日
2020年04月30日
審決日
2020年09月25日
公報発行日
2020年11月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
  • 【異議申立人】角田 朗
  • 【異議申立人】井澤 幹
審判長/審判官
  • 審判長 田中 秀人
  • 審判官 小林 秀和
  • 審判官 山澤 宏
分類
P1651.121-Y (H02M) / P1651.537-Y (H02M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6605887号発明「直流電源装置及びこれを搭載した空気調和機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6605887号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 1 手続の経緯 特許第6605887号の請求項1~5に係る特許についての出願は,平成27年9月7日に出願され,令和1年10月25日にその特許権の設定登録がされ,同年11月13日に特許掲載公報が発行された。その後,その特許に対し,令和2年4月30日に特許異議申立人角田朗が,同年5月1日に特許異議申立人井澤幹が,それぞれ特許異議の申立てを行った。 2 本件発明 特許第6605887号の請求項1~5の特許に係る発明(以下,それぞれ「本件発明1」~「本件発明5」という。)は,それぞれ,その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 直流出力電源の正極端子と負極端子との間に直列接続された第1、第2のMOSFETおよび前記正極端子と負極端子の間に直列接続された第1、第2のダイオードを有するブリッジ整流回路と、 交流電源の一端と前記第1、第2のMOSFETの直列接続点との間に接続されたリアクトルと、 前記直流出力電源の正極端子と負極端子の間に接続された平滑コンデンサと、 前記交流電源の半周期内に、前記リアクトルに流れる電流を前記第1、第2のMOSFETのどちらか一方に通電する動作を複数回繰り返すように前記第1、第2のMOSFETをオン/オフさせる制御回路と、 を備え、 前記交流電源の他端が前記第1、第2のダイオードの直列接続点に接続され、 各前記第1、第2のMOSFETは、半導体のドリフト領域においてp型半導体層とn型半導体層とを交互に配置したスーパージャンクション構造を有し、かつ、前記p型半導体層に重金属を拡散させるか、または、重粒子の粒子線を照射されており、 前記制御回路は、前記第1、第2のMOSFETのうち、前記リアクトルとダイオードとを通して前記交流電源を短絡する側のMOSFETをオフし、さらに所定時間経過後に、前記平滑コンデンサに通流する側のMOSFETをオンし、前記リアクトルがダイオードを通して交流電源を短絡する側のMOSFETをオンする所定時間前に前記平滑コンデンサに通流する側のMOSFETをオフする動作を、前記交流電源の半周期内に複数回繰返す、 ことを特徴とする直流電源装置。 【請求項2】 請求項1において、 前記リアクトルとダイオードを通して前記交流電源を短絡する側のMOSFETの駆動信号のパルス幅は、前記リアクトルに流れる電流と電圧との力率が85%以上となるように変調される、 ことを特徴とする直流電源装置。 【請求項3】 請求項1において、 前記リアクトルとダイオードを通して前記交流電源を短絡する側のMOSFETの駆動信号は、3ショット以上である、 ことを特徴とする直流電源装置。 【請求項4】 請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、 前記第1、第2のダイオードの逆回復時間が、前記第1、第2のMOSFETのゲート信号をオン信号からオフ信号に切替えたときの逆回復時間よりも長い、 ことを特徴とする直流電源装置。 【請求項5】 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の直流電源装置を備えることを特徴とする 空気調和機。」 3 申立理由の概要 特許異議申立人角田朗は,主たる証拠として特開2011-24285号公報(以下「文献1」という。),並びに従たる証拠として特開2011-151984号公報(以下「文献2」という。),国際公開第2010/024433号(以下「文献3」という。),特開2013-102111号公報(以下「文献4」という。),特開2014-165306号公報(以下「文献5」という。),及び特開2015-61322号公報(以下「文献6」という。)を提出し,請求項1~5に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから,請求項1~5に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。さらに,特許異議申立人角田朗は,請求項4に係る特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから,請求項4に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。 また,特許異議申立人井澤幹は,主たる証拠として文献6,並びに従たる証拠として特開2009-4668号公報(以下「文献7」という。),特開2011-166052号公報(以下「文献8」という。),特開2015-135987号公報(以下「文献9」という。),特開2012-70490号公報(以下「文献10」という。),特許第4935251号公報(以下「文献11」という。),及び国際公開第2008/090917号(以下「文献12」という。)を提出し,請求項1~5に係る特許は同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから,請求項1~5に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。 4 文献の記載,引用発明等 (1)文献1について ア 文献1(特開2011-24285号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) A1「【0001】 この発明は、スイッチ素子のオンオフ動作によって交流入力から直流出力を得る電力変換装置に関する。」 A2「【0007】 なお、MOSFETのボディダイオードは、MOSFETチップの製造工程において電子線等の照射処理をすることによってそのキャリアライフタイムを短縮することが可能であり、このキャリアライフタイムの短縮はMOSFETの逆回復時間の短縮をもたらす。そこで、このような手法によって逆回復時間を短縮したMOSFETが製品化されているが、逆回復時間の短縮と相反してオン抵抗が増加するため、このようなMOSFETを図10に示す電力変換装置のMOSFET3,4として使用しても、結果的に高効率化が困難になる。」 A3「【0016】 この実施形態に係る電力変換装置は、MOSFET3,4とダイオード5,6で構成されるブリッジ回路17と、平滑キャパシタ8と、これらの間に介在させたダイオード9とを備えている。すなわち、ダイオード9を設けた点において図10に示す従来の電力変換装置と構成が異なる。ダイオード9は、ブリッジ回路17の正側出力にアノードが接続され、出力端2a側に位置する平滑キャパシタ8の一端にカソードが接続されている。 なお、インダクタ7は、交流入力端1aとMOSFET3,4の共通接続点との間に介在させてあるが、これに代えて、交流入力端1bとダイオード5,6の共通接続点との間に介在させてもよい。 また、交流入力端1aとMOSFET3,4の共通接続点との間にインダクタ7を介在させることに加えて、交流入力端1bとダイオード5,6の共通接続点との間に別の同等のインダクタ介在させることも可能である。そして、この場合、双方のインダクタを磁気結合させてもよい。」 A4「【0019】 (b)時刻T1から時刻T2まで 時刻T1でMOSFET4のゲート電圧VGS4がL(ロー)レベルとなるので、MOSFET3,4の双方がオフするデッドタイム期間となる。すなわち、時刻T1から時刻T2に至る時間Tdが、MOSFET4がオフしてからMOSFET3をオンさせるゲート電圧VGS3が印加されるまでのオンディレイ時間として設定される。MOSFET3は、上記デッドタイム期間を規定するこのオンディレイ時間Tdが経過する間においてオフ状態を継続し、その結果、MOSFET3とMOSFET4が同時にオンして短絡電流(貫通電流)が流れるという不都合が回避される。MOSFET3のゲート電圧VGS3は、上記デッドタイム期間の終了時点T2においてH(ハイ)レベルになる。 一方、時刻T1では、MOSFET4のボディダイオード4aが導通して、それまでMOSFET4が流していた電流を肩代わりして流す。従って、このときのMOSFET4のドレイン-ソース間電圧VDS4は、ボディダイオード4aの順方向降下電圧である0.7~1V程度となる。なお、このボディダイオード4aの順方向降下電圧は回路動作上ほぼ零と見做せるので、図2には明示していない。 MOSFET4のボディダイオード4aが導通すると、後でその逆回復に要する時間が問題となる。上記デッドタイムがなければボディダイオード4aの逆回復時間を短縮するという本発明の課題は生じないことになるが、短絡電流防止のためにデッドタイムは絶対に必要である。」 A5「【0024】 以上においては、交流入力端1aの電圧が交流入力端1bの電圧よりも高い第1の状態下での動作を説明した。交流入力端1bの電圧が交流入力端1aの電圧よりも高い第2の状態下では、MOSFET3とMOSFET4の動作が第1の状態下におけるそれらの動作と逆になる。したがって、第2の状態下では、第1の状態下でMOSFET4の逆回復損失の発生が防止されるのと同様に、MOSFET3の逆回復損失の発生が防止されることになる。なお、図5は、上記第2の状態下でMOSFET3がオンかつMOSFET4がオフの場合の電流経路を示し、また図6は、同状態下でMOSFET3がオフかつMOSFET4がオンの場合の電流経路を示している。 【0025】 以上の説明から明らかなように、この実施形態に係る電力変換装置は、直流出力端2a,2bからの逆流を、MOSFET3,4のボディダイオード3a,4aではなくてダイオード9で防止するようにしている。この構成によれば、前述したように、MOSFET3,4のボディダイオード3a,4aの逆回復時間が長くても、先にダイオード9が逆回復する。従って、ボディダイオード3a,4aに逆回復損失がほとんど発生せず、またMOSFETのターンオン損失も低減される。」 A6「【0029】 図8は、図7の回路におけるMOSFET3,4を制御するための制御回路の構成例を示す。なお、この制御回路は、力率改善を行うものであり、図1の回路におけるMOSFET3,4の制御にも当然適用することができる。 この制御回路100は、電圧誤差増幅器101、乗算器102、電流誤差増幅器103、PWMコンパレータ104、PWMキャリア信号発生回路105、パルス分配回路106、過電流基準信号107、過電流検出コンパレータ108、絶対値回路109を備えている。」 A7「【0033】 パルス分配回路106は、MOSFET3,4にゲート信号G1,G2を出力する。ゲート信号G1,G2はそれぞれオンディレイ(デッドタイム)を設けてMOSFET3,4を交互にオンオフさせる。なお、ゲート信号G1,G2は図2に示すゲート電圧VGS3,VGS4と同じものである。また、パルス分配回路106は、過電流検出コンパレータ108から過電流検出信号が入力された場合に、ゲート信号G1,G2のいずれか一方または両方をL(ロー)レベルとして、MOSFET3,4をオフさせる。これにより、過電流検出に伴ってインダクタ7の電流を制限することができる。 この制御回路100によれば、交流入力電圧(交流入力端1a,2b間の電圧)および入力電流を加味しながら、この入力電流が正弦波状になるように、かつ、出力電圧(平滑キャパシタ8の両端電圧)が目標電圧Vref(に相当する電圧)を維持するようにMOSFET3,4をオンオフ制御することができる。」 A8「図1 」 図1から,“MOSFET3,4は,直流出力端2aと直流出力端2bとの間に直列接続される”態様,“ダイオード5,6は,直流出力端2aと直流出力端2bとの間に直列接続される”態様,“平滑キャパシタ8は,直流出力端2aと直流出力端2bとの間に接続される”態様,“ダイオード5,6の共通接続点が交流入力端1bに接続される”態様が読み取れる。 A9「図5 」 図5及び上記A5の段落【0024】における「交流入力端1bの電圧が交流入力端1aの電圧よりも高い第2の状態・・・(中略)・・・図5は、上記第2の状態下でMOSFET3がオンかつMOSFET4がオフの場合の電流経路を示し」との記載から,“交流入力端1bの電圧が交流入力端1aの電圧よりも高い第2の状態下でMOSFET3がオンかつMOSFET4がオフの場合の電流経路は,交流入力端1bからダイオード6,ダイオード9,平滑キャパシタ8,MOSFET3,インダクタ7を通流して交流入力端1aに至るものである”態様が読み取れる。 A10「図6 」 図6及び上記A5の段落【0024】における「交流入力端1bの電圧が交流入力端1aの電圧よりも高い第2の状態・・・(中略)・・・図6は、同状態下でMOSFET3がオフかつMOSFET4がオンの場合の電流経路を示し」との記載から,“交流入力端1bの電圧が交流入力端1aの電圧よりも高い第2の状態下でMOSFET3がオフかつMOSFET4がオンの場合の電流経路は,交流入力端1bからダイオード6,MOSFET4,インダクタ7を通流して交流入力端1aに至るものである”態様が読み取れる。 イ 上記A1,A3~A10の記載内容からすると,文献1には,次のとおりの発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「交流入力から直流出力を得る電力変換装置であって, 電力変換装置は,MOSFET3,4とダイオード5,6で構成されるブリッジ回路を備え,ダイオード9は,ブリッジ回路の正側出力にアノードが接続され,出力端2a側に位置する平滑キャパシタの一端にカソードが接続され,インダクタは,交流入力端1aとMOSFET3,4の共通接続点との間に介在させてあるものであり, 時刻T1でMOSFET4のゲート電圧がL(ロー)レベルとなるので,MOSFET3,4の双方がオフするデッドタイム期間となり,MOSFET3のゲート電圧は,上記デッドタイム期間の終了時点T2においてH(ハイ)レベルになるものであり, 交流入力端1bの電圧が交流入力端1aの電圧よりも高い第2の状態下では,MOSFET3とMOSFET4の動作が逆になるものであり, 直流出力端2a,2bからの逆流を,MOSFET3,4のボディダイオードではなくてダイオード9で防止するようにしており,MOSFET3,4のボディダイオード3a,4aの逆回復時間が長くても,先にダイオード9が逆回復し,ボディダイオード3a,4aに逆回復損失がほとんど発生せず,MOSFETのターンオン損失も低減されるものであり, 制御回路は,パルス分配回路を備えているものであり, パルス分配回路は,MOSFET3,4にゲート信号を出力し,ゲート信号はそれぞれオンディレイ(デッドタイム)を設けてMOSFET3,4を交互にオンオフさせるものであり, MOSFET3,4は,直流出力端2aと直流出力端2bとの間に直列接続されるものであり,ダイオード5,6は,直流出力端2aと直流出力端2bとの間に直列接続されるものであり,平滑キャパシタ8は,直流出力端2aと直流出力端2bとの間に接続されるものであり,ダイオード5,6の共通接続点が交流入力端1bに接続されており, 交流入力端1bの電圧が交流入力端1aの電圧よりも高い第2の状態下でMOSFET3がオンかつMOSFET4がオフの場合の電流経路は,交流入力端1bからダイオード6,ダイオード9,平滑キャパシタ8,MOSFET3,インダクタ7を通流して交流入力端1aに至るものであり, 交流入力端1bの電圧が交流入力端1aの電圧よりも高い第2の状態下でMOSFET3がオフかつMOSFET4がオンの場合の電流経路は,交流入力端1bからダイオード6,MOSFET4,インダクタ7を通流して交流入力端1aに至るものである, 電力変換装置。」 (2)文献2について ア 文献2(特開2011-151984号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) B1「【0015】 実施の形態1. (直流電源装置の構成) 図1は、本発明の実施の形態1に係る直流電源装置の回路ブロック図である。 図1で示されるように、本実施の形態に係る直流電源装置は、少なくとも、交流電源1、後述する整流器21の一方の入力端と交流電源1との間に挿入されたリアクター2、MOSFET3及びMOSFET4並びにダイオード5及びダイオード6によって構成された整流器21、この整流器21の出力端間に接続された平滑コンデンサー7、MOSFET3及びMOSFET4のON/OFF動作をさせる制御手段11、平滑コンデンサー7の両端電圧を検出する直流電圧検出手段12、並びに、交流電源1の電源電圧を検出する電源電圧検出手段13を備えている。また、平滑コンデンサー7の両端には負荷8が接続されている。」 B2「【0050】 また、上記のMOSFET3及びMOSFET4は、スーパージャンクション構造のMOSFETを用いるものとしてもよい。これによって、さらに低損失化を実現することができ、高効率な直流電源装置を得ることができる。ここで、スーパージャンクション構造とは、通常のMOSFETよりも深いP層を持つ構造であり、深いP層がN層と広く接することによって低オン抵抗でありながら高い耐電圧を有することが知られている。」 (3)文献3について ア 文献3(国際公開第2010/024433号)には,図面とともに次の事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) C1「[0022] 第1の実施の形態に係る半導体装置は、図1~図2に示すように、高抵抗でn型不純物をドープされた第1ベース層12と、第1ベース層12の裏面に設けられ、n型不純物をドープされたドレイン層10と、第1ベース層12の表面に形成され、p型不純物をドープされた第2ベース層16と、第2ベース層16の表面に形成され、n型不純物をドープされたソース層18と、ソース層18および第2ベース層16の表面上に配置されたゲート絶縁膜20と、ゲート絶縁膜20上に配置されたゲート電極22と、第2ベース層16およびソース層18の下部の第1ベース層12内にドレイン層10に対向して形成され、p型不純物をドープされたコラム層14と、ドレイン層10に設けられたドレイン電極28と、ソース層18および第2ベース層16に設けられたソース電極26とを備える。ゲート電極22上には、層間絶縁膜24が配置されている。図1に示される破線は、ドレイン・ソース間に導通する電流を表す。」 C2「[0042](製造方法) 第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、図1~図2に示すように、高抵抗で第1導電型の第1ベース層12を形成する工程と、第1ベース層12の裏面に第1導電型のドレイン層10を形成する工程と、第1ベース層12の表面に第2導電型の第2ベース層16を形成する工程と、第2ベース層16の表面に第1導電型のソース層18を形成する工程と、ソース層18および第2ベース層16の表面上にゲート絶縁膜20を形成する工程と、ゲート絶縁膜20上にゲート電極22を形成する工程と、第2ベース層16およびソース層18の下部の第1ベース層12内にドレイン層10に対向して第2導電型のコラム層14を形成する工程と、ドレイン層10にドレイン電極28を形成する工程と、 前記ソース層および前記第2ベース層にソース電極を形成する工程と、コラム層14に対して重粒子照射を行い、トラップレベルを局所的に形成する工程とを有する。」 C3「[0045] 第1の実施の形態によれば、ドレイン・ソース間のリーク電流を増大させずに逆回復時間trrを短縮するスーパージャンクションMOS構造を備える半導体装置およびその製造方法を提供することができる。」 (4)文献4について ア 文献4(特開2013-102111号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) D1「【0001】 本発明は、スーパージャンクション構造を有する半導体装置およびその製造方法に関する。」 D2「【0052】 トラップレベル領域32は、逆回復時間の短縮に寄与する。また、空乏層緩和領域30は、ハードリカバリの緩和に寄与する。 トラップレベル領域32は、n-型ベース層2の裏面2a側から重粒子を照射することによって形成された領域である。トラップレベル領域32には、キャリヤをトラップして再結合させることにより消失させる再結合中心が多く存在している。これにより、寄生ダイオード14がターンオフするときにキャリヤを速やかに消失させることができるから、逆回復時間および逆回復電流を低減できる。」 D3「【0054】 トラップレベル領域32の形成には、プロトン、3He++、4He++などの重粒子の照射を適用することができる。なかでも、質量の大きなヘリウム原子核(3He++、または4He++)は、再結合中心の厚さ方向の分布域を狭くすることができ、厚さ方向に関して狭い範囲に再結合中心を局所的に分布させることができるので、好ましい。 空乏層緩和領域30は、n-型ベース層2の裏面2a側から重粒子を照射し、さらに熱処理によってその重粒子をドナー化して形成された領域である。ドナー化した重粒子は、寄生ダイオード14がターンオフするときにそのpn接合部から広がる空乏層の広がりを抑制する。これにより、空乏層が広がる速さが緩和されるので、逆回復電流の変化速度を抑制でき、それによって、ハードリカバリを緩和できる。 【0055】 空乏層緩和領域30は、n-型ベース層2内において、n-型ベース層2の裏面2aから設定された深さ位置に厚く(トラップレベル領域32よりも厚く。たとえば5μm~10μm程度の厚さで)広がるように形成されている。空乏層緩和領域30は、p型コラム層3に接していてもよいし、p型コラム層3に接していなくてもよい。また、空乏層緩和領域30は、p型コラム層3との重複領域を有していてもよいし、p型コラム層3との重複領域を有しておらず、p型コラム層3の底面3aとp+型コレクタ層10との間に全体が位置していてもよい。空乏層緩和領域30はドナーを含む領域であるので、p型コラム層3の機能を損なわないように、p型コラム層3と重複する領域は、可能な限り少ないことが好ましい。また、空乏層緩和領域30は、空乏層の広がりを緩和する目的からは、p型コラム層3に近いことが好ましい。そこで、図1に示すように、空乏層緩和領域30の上側縁がp型コラム層3の底面3aとほぼ一致するように、空乏層緩和領域30の配置を選択するのが最も好ましい。 【0056】 空乏層緩和領域30の形成には、プロトン、3He++、4He++などの重粒子照射を適用することができる。なかでも、質量の小さなプロトンは、厚さ方向に広く分布するように導入できるので、厚い空乏層緩和領域30の形成に適している。また、プロトンは、比較的低温(たとえば、350℃~450℃)の熱処理でドナー化を行える。そのため、たとえば、ドレイン電極11等の形成前でも形成後でも、プロトンの照射およびそのドナー化(熱処理)を行うことができる。したがって、プロトンを用いることにすれば、プロセスの自由度が増す。」 (5)文献5について ア 文献5(特開2014-165306号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) E1「【0001】 この発明は、MOSFETなどのパワー半導体装置に関し、特に、ドリフト層として半導体基板の主面と垂直方向に伸び、主面に平行な方向にn型カラムおよびp型カラムを交互に隣接配置させる超接合構造(並列pnカラム構造:スーパージャンクションとも言う)を有する超接合半導体装置の製造方法に関する。」 E2「【0039】 この素子表面構造29はプレーナゲート構造であるが図15に示すようなトレンチゲート構造の素子表面構造29aであっても構わない。 この素子表面構造29aは、並列pn層の表面層に形成されたpベース領域11aと、pベース領域11aの表面層に形成されたp+コンタクト領域12aおよびn+ソース領域13aを備える。また、pベース領域11aの表面からn型カラムに達するトレンチ14bと、そのトレンチ14b内にゲート酸化膜14aを介して形成されたゲート電極15aを備えている。さらに、ゲート電極を覆うように形成された層間絶縁膜16aと、層間絶縁膜16aの開口部にp+コンタクト領域12aおよびn+ソース領域13aに接するソース電極17aを備える。並列pn層30aのうちトレンチ14b(素子表面構造29a)より下に位置する個所が並列pn層30となる。 (7)図7に示すように、n型半導体基板1の裏面を研削・研磨により減らし全体を60μm~80μm程度にする(この厚さは半導体装置の耐圧によって変わる)。研削・研磨後の裏面1a側からプロトン照射18を行いpベース領域11下(素子表面構造29下)に位置する並列pn層30に、例えば、0.5MeV程度の照射エネルギーでプロトン19を打ち込み、プロトン照射層20を形成する。照射されたプロトン19が分布する箇所の前面には結晶欠陥21による欠陥層22が広がっている。」 (6)文献6について ア 文献6(特開2015-61322号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) F1「【0001】 本発明は、電力変換装置に関する。」 F2「【0012】 <構成> 図1を参照すると、本発明の一実施形態としての電力変換装置10は、インバータ回路であって、交流電源11から入力された交流電力を直流電力に変換して、変換後の電力を直流負荷12に出力するように構成されている。この電力変換装置10は、電力変換回路13と制御部14とを備えている。」 F3「【0016】 電力変換回路13における出力側、すなわち一対の直流出力端子30c,30d側には、平滑コンデンサ32、及びスイッチング素子33~36が設けられている。平滑コンデンサ32は、一対の直流出力端子30c,30dの間に設けられている。すなわち、平滑コンデンサ32は、直流出力端子30cに接続された電力ラインと、直流出力端子30dに接続された電力ラインと、を接続(短絡)するように設けられた電力ラインに介装されている。 【0017】 スイッチング素子33~36は、MOSゲート構造を有する半導体スイッチング素子であって、フィルタ回路31と平滑コンデンサ32との間に設けられている。本実施形態においては、スイッチング素子33~36は、いわゆる「パワーMOSFET」であって、その内部に寄生ダイオード成分を有している。以下、スイッチング素子33,34,35及び36における、トランジスタ動作部分をそれぞれスイッチング部分Q1,Q2,Q3及びQ4と称し、寄生ダイオード成分をそれぞれダイオード部分D1,D2,D3及びD4と称することがある。 【0018】 本発明の「第一スイッチング素子」に相当するスイッチング素子33は、Nチャンネル型のMOSFETであって、ドレインが直流出力端子30cに接続されている。本発明の「第二スイッチング素子」に相当するスイッチング素子34は、Nチャンネル型のMOSFETであって、ソースが直流出力端子30dに接続されている。スイッチング素子33のソースは、スイッチング素子34のドレインに接続されている。このようにして、スイッチング素子33及び34は、一対の直流出力端子30c,30d間にて直列接続されている。 【0019】 本発明の「第三スイッチング素子」に相当するスイッチング素子35は、Nチャンネル型のMOSFETであって、ドレインが直流出力端子30cに接続されている。本発明の「第四スイッチング素子」に相当するスイッチング素子36は、Nチャンネル型のMOSFETであって、ソースが直流出力端子30dに接続されている。スイッチング素子35のソースは、スイッチング素子36のドレインに接続されている。このようにして、スイッチング素子35及び36は、一対の直流出力端子30c,30d間にて直列接続されている。また、スイッチング素子33及び34の直列接続体と、スイッチング素子35及び36の直列接続体とが、並列に設けられている。 【0020】 スイッチング素子33とスイッチング素子34との接続部は、フィルタ回路31におけるリアクトル31aを介して、交流入力端子30aに接続されている。同様に、スイッチング素子35とスイッチング素子36との接続部は、フィルタ回路31におけるリアクトル31bを介して、交流入力端子30bに接続されている。 【0021】 本実施形態においては、「メインスイッチング素子」に相当する、下アーム側のスイッチング素子34及び36は、スーパージャンクション構造を有するMOSFETである。これらスイッチング素子34及び36は、一対の直流出力端子30c,30d間の出力電圧である直流電圧が所望値となるようなオンデューティ比でPWM制御されるように設けられている。一方、「サブスイッチング素子」に相当する、上アーム側のスイッチング素子33及び35は、スーパージャンクション構造を有さない通常型(シリコン型あるいはシリコンカーバイド型)のMOSFETである。これらスイッチング素子33及び35は、スイッチング素子34及び36と相補的にオンオフされることで、電力変換回路13にて同期整流動作を実現可能に設けられている。」 F4「【0026】 制御部14は、入出力電力に対応する特性値が所定値を超える(あるいは所定値以上である)場合にスイッチング素子33及び35とスイッチング素子34及び36とを相補的にオンオフさせることで、電力変換回路13にて同期整流動作を実現するようになっている。また、本実施形態においては、制御部14は、上述の特性値が所定値以下(あるいは未満)である場合に、スイッチング素子33及び35をオフに保持することで、同期整流動作を停止させるようになっている。」 F5「【0039】 <動作> 本実施形態の構成は、上述のように、スーパージャンクション構造を有するMOSFET(スイッチング素子34,36)と通常型(シリコン型あるいはシリコンカーバイド型)のMOSFET(スイッチング素子33,35)とによる「ハイブリッド構成」を有している。スーパージャンクション構造を有するMOSFETは、シリコンカーバイド型よりも安価であるとともに、シリコン型(D-MOSFET)よりもオン抵抗が低い等のために低損失化に有効である。したがって、本実施形態のような「ハイブリッド構成」によれば、高効率化と低損失化とが良好に達成可能である。」 F6「【0047】 次に、スイッチング素子33(スイッチング部分Q1)及びスイッチング素子35(スイッチング部分Q3)のゲート信号について説明する。入力電圧Vac(交流入力電圧センサ47による検出値)の絶対値が所定値Vrefを超える場合には、同期整流停止判定部417から、同期整流動作を許可する信号「1」(同期整流許可信号)が出力される。一方、入力電圧Vacの絶対値が所定値Vref以下である場合には、同期整流停止判定部417から、同期整流動作を停止する信号「0」(同期整流停止信号)が出力される。」 F7「【0049】 同期整流許可信号すなわち「1」が入力された場合、アンドゲート426は、オアゲート421の出力がノットゲート424によって反転されたものに対応する信号を、スイッチング素子33(スイッチング部分Q1)のゲート信号として出力する。この場合、上アーム側のスイッチング素子33は、これと直列に接続された下アーム側のスイッチング素子34と相補的にオンオフされる。これにより、同期整流動作が実現される。」 F8「【0063】 また、本発明は、図11に示されているような回路構成にも良好に適用され得る。この図11の構成においては、フィルタ回路31と、スイッチング素子33~36からなるブリッジ回路と、の間に、スイッチング素子37,38が設けられている。」 F9「図5 」 図5から,“Q1がOFFかつQ2がONのmode1の場合にリアクトル31aから流入する電流の経路は,リアクトル31a,MOSFET34(Q2),MOSFET36,を通流してリアクトル31bに至るものである”態様,“Q1がONかつQ2がOFFのmode3の場合にリアクトル31aから流入する電流の経路は,リアクトル31a,MOSFET33(Q1),平滑コンデンサ32,MOSFET36,を通流してリアクトル31bに至るものである”態様,“Q2をOFFし,所定時間経過後に,Q1をONし,Q2をONする所定時間前にQ1をOFFする”態様が読み取れる。 イ 上記F1~F4,F6~F7,F9の記載内容からすると,文献6には,次のとおりの発明(以下,「引用発明6」という。)が記載されているものと認められる。 「電力変換装置であって, 電力変換装置は,交流電源から入力された交流電力を直流電力に変換して,変換後の電力を直流負荷に出力するように構成され, 平滑コンデンサは,一対の直流出力端子30c,30dの間に設けられており, スイッチング素子は,その内部に寄生ダイオード成分を有し,スイッチング素子35及び36における寄生ダイオード成分をそれぞれダイオード部分D3及びD4と称し, スイッチング素子33及び34は,一対の直流出力端子30c,30d間にて直列接続され, スイッチング素子35及び36は,一対の直流出力端子30c,30d間にて直列接続され, スイッチング素子33とスイッチング素子34との接続部は,リアクトル31aを介して,交流入力端子30aに接続され,スイッチング素子35とスイッチング素子36との接続部は,交流入力端子30bに接続され, スイッチング素子34は,スーパージャンクション構造を有するMOSFETであり,スイッチング素子33は,スーパージャンクション構造を有さないMOSFETであり, 制御部は,スイッチング素子33とスイッチング素子34とを相補的にオンオフさせ, 入力電圧Vacの絶対値が所定値Vrefを超える場合には,同期整流許可信号が出力され, 同期整流許可信号が入力された場合,スイッチング素子33は,スイッチング素子34と相補的にオンオフされるものであり, Q1がOFFかつQ2がONのmode1の場合にリアクトル31aから流入する電流の経路は,リアクトル31a,MOSFET34(Q2),MOSFET36,を通流してリアクトル31bに至るものであり,Q1がONかつQ2がOFFのmode3の場合にリアクトル31aから流入する電流の経路は,リアクトル31a,MOSFET33(Q1),平滑コンデンサ32,MOSFET36,を通流してリアクトル31bに至るものであり,Q2をOFFし,所定時間経過後に,Q1をONし,Q2をONする所定時間前にQ1をOFFするものである, 電力変換装置。」 (7)文献7について ア 文献7(特開2009-4668号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) G1「【0014】 素子領域1において形成されるトランジスタは、N型ドリフト層11と、このN型ドリフト層11中に形成される複数のP型ピラー層12から構成されるスーパージャンクション構造を有している。N型ドリフト層11の一方の表面(図1において、下側の表面)に、N型ドリフト層11よりも不純物濃度の高いN+型ドレイン層13が形成され、N+型ドレイン層13の表面には、不図示のドレイン電極が形成されている。尚、本実施の形態では、ドリフト層14は、N型ドリフト層11とP型ピラー層12からなり、また、ドリフト層14は、素子領域1に形成されるドリフト層14Aと、終端領域2に形成されるドリフト層14Bからなる。また、N型ドリフト層11とN+型ドレイン層13の形成方法は、N型ドリフト層11の片面に不純物を拡散する方法や、N+型ドレイン層13を基板としてN型ドリフト層11を結晶成長させる方法により形成される。」 G2「【0024】 具体的には、本実施の形態における半導体装置を製造するプロセスの途中において、終端領域2のドリフト層14Bに、電子線照射、プロトン照射、ヘリウム照射或いはPt等の重金属を表面に付着させた後、熱拡散を行なう。これにより、終端領域2のドリフト層14Bにおけるキャリアライフタイムの値を素子領域1のドリフト層14Aにおけるキャリアライフタイムの値よりも低くしているのである。このように、終端領域2のドリフト層14Bにおけるキャリアライフタイムの値を低くすることにより、逆バイアス時における漏れ電流を増大させることなく、この終端領域2におけるアバランシェ耐量を高めるとともに、トランジスタの内蔵ダイオードの逆回復時における逆回復特性を改善することができ、半導体装置における全体の耐圧を高めることができる。 【0025】 なお、本実施の形態では、終端領域2におけるキャリアライフタイムは、1〔μs〕以下であることが好ましい。 【0026】 また、本実施の形態を別の側面から捉えるならば、本実施の形態における半導体装置を製造するプロセスの途中において、終端領域2のドリフト層14Bに、電子線照射、プロトン照射、ヘリウム照射或いはPt等の重金属を表面に付着させた後、熱拡散を行なうことにより、終端領域2のドリフト層14Bにおける抵抗の値を素子領域1における抵抗の値よりも高くなるように構成されている。このように、終端領域2のドリフト層14Bにおける抵抗値を高くすることにより、半導体装置における全体の耐圧を高めることができる。」 (8)文献8について ア 文献8(特開2011-166052号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) H1「【0026】 図2に、インバータ回路に用いられている半導体素子14aの素子部と終端部の境界近傍の断面図を模式的に示す。なお、他の半導体素子14b,16a,16bも、半導体素子14aと共通の形態を備えている。図2に示されるように、半導体素子14aは、縦型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であり、半導体基板50と、半導体基板50の裏面のうちの素子部と終端部の双方に亘って設けられているドレイン電極30と、半導体基板50の表面のうちの素子部に設けられているソース電極37と、半導体基板50の表層部に設けられている複数の絶縁トレンチゲート36を備えている。」 H2「【0030】 半導体素子14aはさらに、ライフタイムが短縮化された欠陥領域43を備えていることを特徴としている。欠陥領域43は、終端部のみに選択的に形成されており、素子部に形成されていないことを特徴としている。欠陥領域43は、意図的に欠陥42が形成された領域である。このライフタイム用の欠陥領域43は、従来既知の様々な技術を用いて形成することができる。一例では、プロトン(H)又はヘリウム(He)等を終端部に選択的にイオン照射し、欠陥領域43を形成してもよい。なお、ソース電極37を形成した後にイオン照射を実施すれば、そのイオン照射に対してソース電極37をマスクとして機能させることができる。このため、欠陥領域43を形成するための専用のマスクを用意しなくても、終端部に欠陥領域43を選択的に形成することができる。なお、半導体素子14aは、ドリフト領域32がp型コラムとn型コラムで構成されるスーパージャンクション構造であってもよい。また、半導体素子14aは、ドレイン領域31がp+型の部分領域とn+型の部分領域で構成されていてもよい。この半導体素子14aは、いわゆる縦型のコレクタショート型IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。」 (9)文献9について ア 文献9(特開2015-135987号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) J「【0044】 (製造方法) 第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、図1~図2に示すように、高抵抗で第1導電型の第1ベース層12を形成する工程と、第1ベース層12の裏面に第1導電型のドレイン層10を形成する工程と、第1ベース層12の表面に第2導電型の第2ベース層16を形成する工程と、第2ベース層16の表面に第1導電型のソース層18を形成する工程と、ソース層18および第2ベース層16の表面上にゲート絶縁膜20を形成する工程と、ゲート絶縁膜20上にゲート電極22を形成する工程と、第2ベース層16およびソース層18の下部の第1ベース層12内にドレイン層10に対向して第2導電型のコラム層14を形成する工程と、ドレイン層10にドレイン電極28を形成する工程と、 前記ソース層および前記第2ベース層にソース電極を形成する工程と、コラム層14に対して重粒子照射を行い、トラップレベルを局所的に形成する工程とを有する。 【0045】 トラップレベルを局所的に形成する工程は、図9に示すように、コラム層14の底面を基準とし、コラム層14の底面からの距離と逆回復時間trrとの関係より第1の位置PBを決定する工程と、コラム層14の底面からの距離とドレイン・ソース間飽和電流IDSSとの関係より求めた第2の位置PAを決定する工程と、第1の位置PBと第2の位置PAとの間に減衰ピーク位置が含まれるように重粒子照射を実施する工程とを有する。 【0046】 第1の実施の形態によれば、ドレイン・ソース間飽和電流IDSSおよびゲート・ソース間しきい値電圧の劣化を抑制しつつ、内蔵ダイオードの逆回復特性の向上を実現することができる。これによって、スイッチングロスの低減と、ダイオード逆回復損失の低減が可能となった。」 (10)文献10について ア 文献10(特開2012-70490号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) K1「【0067】 図6に示したように、ソフトスタート制御部11bは、デューティサイクルのスタート段階において、オン時比率(D)が0から徐々に増加するように制御する(同図の61aおよび62a参照)。これにより、駆動信号生成部11cによって生成されるPWM信号の各パルス幅は、デューティサイクルのスタート段階において、徐々に広くなるように調整される(同図の61bおよび62b参照)。」 K2「【0095】 図11の(A)には、ソフトスタート制御を行った場合における、入力電圧(Vin)、インダクタL電流(iL)および入力電流(iin)の波形を示している。図11の(A)に示すように、ソフトスタート制御を行った場合には、入力電圧(Vin)の極性が負から正へ切り替わるゼロクロスポイント直後において、入力電圧(Vin)、インダクタL電流(iL)および入力電流(iin)に大きな乱れはみられない(図11の111a、111bおよび111c参照)。」 (11)文献11について ア 文献11(特許第4935251号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) L「【0016】 第5の発明は、上記第1乃至第3の何れか1の発明において、上記インバータ回路(5)で変換した交流電力によって圧縮機を駆動するものである。 【0017】 上記の発明では、例えば、空調機や冷蔵庫等に設けられる圧縮機の電動機が駆動され、この圧縮機の高効率化および低ノイズ化が図られる。 【0018】 第6の発明は、第5の発明において、上記圧縮機は、空調機の冷媒回路に設けられるものである。」 (12)文献12について ア 文献12(国際公開第2008/090917号)には,図面とともに次の事項が記載されている。 M「[0097] 本発明は、直流電源装置とそれを備えた空気調和機に利用できる。」 5 当審の判断 5-1 特許法第29条第2項について (1) 本件発明1について ア 本件発明1と引用発明1とを対比すると,次のことがいえる。 (ア) 引用発明1の「電力変換装置」は,「交流入力から直流出力を得る」ものであり,直流出力のための電源装置であるといえるから,本件発明1の「直流電源装置」に相当する。 (イ) 引用発明1の「直流出力端2a,2b」は,一方の出力端が正側のものであり,他方の出力端が負側のものであるといえ,引用発明1は,「ブリッジ回路の正側出力に」「ダイオード9」を介して「出力端2a」が設けられていることから,引用発明1の「直流出力端2a」と「直流出力端2b」は,それぞれ,本件発明1の「直流出力電源の正極端子」と「直流出力電源の」「負極端子」に相当する。また,引用発明1は,「MOSFET3,4は,直流出力端2aと直流出力端2bとの間に直列接続されるものであり」,「ダイオード5,6は,直流出力端2aと直流出力端2bとの間に直列接続されるものであ」るから,引用発明1の「MOSFET3,4」と「ダイオード5,6」は,それぞれ,本件発明1の「正極端子と負極端子との間に直列接続された第1、第2のMOSFET」と「正極端子と負極端子の間に直列接続された第1、第2のダイオード」に相当する。さらに,引用発明1は,「電力変換装置は,MOSFET3,4とダイオード5,6で構成されるブリッジ回路を備え」ており,引用発明1の「ブリッジ回路」は,交流入力を直流出力に整流するための回路であるといえるから,引用発明1の「MOSFET3,4とダイオード5,6で構成されるブリッジ回路」は,本件発明1の「第1、第2のMOSFETおよび」「第1、第2のダイオードを有するブリッジ整流回路」に相当する。 してみると,引用発明1の「電力変換装置」と本件発明1の「直流電源装置」とは,“直流出力電源の正極端子と負極端子との間に直列接続された第1,第2のMOSFETおよび前記正極端子と負極端子の間に直列接続された第1,第2のダイオードを有するブリッジ整流回路を備える”ものである点で一致する。 (ウ) 引用発明1は,「インダクタは,交流入力端1aとMOSFET3,4の共通接続点との間に介在させてある」ことから,引用発明1の「インダクタ」は,交流電源の一端とMOSFET3,4の直列接続点との間に接続されているといえる。また,「インダクタ」とはインダクタンスを実現するための素子であって,パワーエレクトロニクスの技術分野においては「リアクトル」とも呼ばれるものであるから,引用発明1の「インダクタ」は,本件発明1の「リアクトル」に相当する。 してみると,上記(イ)の検討内容も踏まえると,引用発明1の「電力変換装置」と本件発明1の「直流電源装置」とは,“交流電源の一端と前記第1,第2のMOSFETの直列接続点との間に接続されたリアクトルを備える”ものである点で一致する。 (エ) 引用発明1の「平滑キャパシタ」は,「直流出力端2aと直流出力端2bとの間に接続されるもの」である。また,「キャパシタ」とは電荷を蓄積するための素子であって,コンデンサとも呼ばれるものであるから,引用発明1の「平滑キャパシタ」は,本件発明1の「平滑コンデンサ」に相当する。 してみると,引用発明1の「電力変換装置」と本件発明1の「直流電源装置」とは,“直流出力電源の正極端子と負極端子の間に接続された平滑コンデンサを備える”ものである点で一致する。 (オ) 引用発明1の「制御回路」は,「パルス分配回路を備えている」ものであり,引用発明1の「パルス分配回路」は,「MOSFET3,4にゲート信号を出力し,ゲート信号はそれぞれオンディレイ(デッドタイム)を設けてMOSFET3,4を交互にオンオフさせる」ものであり,「MOSFET3,4を交互にオンオフさせる」とは,MOSFET3,4,3,4・・・との順序で,そのオン/オフを繰り返すことを意味しているといえるから,引用発明1の「制御回路」は,MOSFET3,4をオン/オフさせる動作を,複数回繰り返すものであるといえる。また,引用発明1は,「交流入力端1bの電圧が交流入力端1aの電圧よりも高い第2の状態下でMOSFET3がオンかつMOSFET4がオフの場合の電流経路は」「MOSFET3,インダクタ7を通流し」,「交流入力端1bの電圧が交流入力端1aの電圧よりも高い第2の状態下でMOSFET3がオフかつMOSFET4がオンの場合の電流経路は」「MOSFET4,インダクタ7を通流」するのであるから,引用発明1の「制御回路」は,MOSFET3,4を交互にオンオフさせることで,インダクタに流れる電流をMOSFET3,4のどちらか一方に通電するものであるといえる。 してみると,上記(イ)及び(ウ)の検討内容も踏まえると,引用発明1の「電力変換装置」と本件発明1の「直流電源装置」とは,“前記リアクトルに流れる電流を前記第1,第2のMOSFETのどちらか一方に通電する動作を複数回繰り返すように前記第1,第2のMOSFETをオン/オフさせる制御回路を備える”ものである点で一致する。 (カ) 引用発明1は,「ダイオード5,6の共通接続点が交流入力端1bに接続されている」ことから,引用発明1の「電力変換装置」と本件発明1の「直流電源装置」とは,“交流電源の他端が第1,第2のダイオードの直列接続点に接続され”るものである点で一致する。 (キ) 引用発明1は,「時刻T1でMOSFET4のゲート電圧がL(ロー)レベルとなるので,MOSFET3,4の双方がオフするデッドタイム期間となり,MOSFET3のゲート電圧は,上記デッドタイム期間の終了時点T2においてH(ハイ)レベルにな」り,「交流入力端1bの電圧が交流入力端1aの電圧よりも高い第2の状態下では,MOSFET3とMOSFET4の動作が逆になる」のであるから,MOSFET4をオンする所定時間前にMOSFET3をオフする動作を,交流入力端1bの電圧が交流入力端1aの電圧よりも高い第2の状態下で行うものであるといえる。また,引用発明1は,「第2の状態下で」「MOSFET4がオンの場合の電流経路は,交流入力端1bからダイオード6,MOSFET4,インダクタ7を通流して交流入力端1aに至るものである」から,引用発明1の「MOSFET4」は,第2の状態下でオンとなることで,インダクタがダイオード6を介して交流電源を短絡する側のものであるといえる。さらに,引用発明1は,「第2の状態下で」「MOSFET3がオン」「の場合の電流経路は,交流入力端1bからダイオード6,ダイオード9,平滑キャパシタ8,MOSFET3,インダクタ7を通流して交流入力端1aに至るものである」から,引用発明1の「MOSFET3」は,第2の状態下でオンとなることで,平滑キャパシタに通流する側のものであるといえる。 してみると,上記(イ),(ウ),及び(オ)の検討も踏まえると,引用発明1の「制御回路」と本件発明1の「制御回路」とは,“第1,第2のMOSFETのうち,リアクトルがダイオードを通して交流電源を短絡する側のMOSFETをオンする所定時間前に平滑コンデンサに通流する側のMOSFETをオフする動作を,前記交流電源の半周期内に行う”ものである点で一致する。 したがって,本件発明1と引用発明1との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「直流出力電源の正極端子と負極端子との間に直列接続された第1,第2のMOSFETおよび前記正極端子と負極端子の間に直列接続された第1,第2のダイオードを有するブリッジ整流回路と, 交流電源の一端と前記第1,第2のMOSFETの直列接続点との間に接続されたリアクトルと, 前記直流出力電源の正極端子と負極端子の間に接続された平滑コンデンサと, 前記リアクトルに流れる電流を前記第1,第2のMOSFETのどちらか一方に通電する動作を複数回繰り返すように前記第1,第2のMOSFETをオン/オフさせる制御回路と, を備え, 前記交流電源の他端が前記第1,第2のダイオードの直列接続点に接続され, 前記制御回路は,前記第1,第2のMOSFETのうち,前記リアクトルがダイオードを通して交流電源を短絡する側のMOSFETをオンする所定時間前に前記平滑コンデンサに通流する側のMOSFETをオフする動作を,前記交流電源の半周期内に行う, ことを特徴とする直流電源装置。」 (相違点) (相違点1) 本件発明1は,「制御回路」が,「交流電源の半周期内に、前記リアクトルに流れる電流を前記第1、第2のMOSFETのどちらか一方に通電する動作を複数回繰り返すように前記第1、第2のMOSFETをオン/オフさせる」のに対し,引用発明1の「制御回路」は,通電する動作を複数回繰り返すことを,「交流電源の半周期内に」行うことについて特定されていない点。 (相違点2) 本件発明1は,「各前記第1、第2のMOSFETは、半導体のドリフト領域においてp型半導体層とn型半導体層とを交互に配置したスーパージャンクション構造を有し、かつ、前記p型半導体層に重金属を拡散させるか、または、重粒子の粒子線を照射されて」いるのに対し,引用発明1のMOSFET3,4は,このような構成を有することについて特定されていない点。 (相違点3) 本件発明1は,「制御回路は、前記第1、第2のMOSFETのうち、前記リアクトルとダイオードとを通して前記交流電源を短絡する側のMOSFETをオフし、さらに所定時間経過後に、前記平滑コンデンサに通流する側のMOSFETをオンし、前記リアクトルがダイオードを通して交流電源を短絡する側のMOSFETをオンする所定時間前に前記平滑コンデンサに通流する側のMOSFETをオフする動作を、前記交流電源の半周期内に複数回繰返す」のに対し,引用発明1の制御回路は,「交流電源の半周期内に」「前記リアクトルとダイオードとを通して前記交流電源を短絡する側のMOSFETをオフし、さらに所定時間経過後に、前記平滑コンデンサに通流する側のMOSFETをオン」することについて特定されておらず,交流電源を短絡する側のMOSFETをオフし,平滑コンデンサに通流する側のMOSFETをオンし,交流電源を短絡する側のMOSFETをオンする所定時間前に平滑コンデンサに通流する側のMOSFETをオフする動作を,「交流電源の半周期内に複数回繰返す」ことについても特定されていない点。 (相違点についての判断) 事案に鑑みて,上記相違点2について先に検討する。引用発明1は,「MOSFET3,4のボディダイオード3a,4aの逆回復時間が長くても、先にダイオード9が逆回復し,ボディダイオード3a,4aに逆回復損失がほとんど発生せず,MOSFETのターンオン損失も低減される」ものであり,また,上記文献1の上記A2の段落【0007】に,発明が解決しようとする課題として,「MOSFETのボディダイオードは、MOSFETチップの製造工程において電子線等の照射処理をすることによってそのキャリアライフタイムを短縮することが可能であり」,「このような手法によって逆回復時間を短縮したMOSFETが製品化されているが、逆回復時間の短縮と相反してオン抵抗が増加するため、このようなMOSFETを」「使用しても、結果的に高効率化が困難になる」ことが記載されていることを踏まえると,電子線等の照射処理をすることによってそのキャリアライフタイムを短縮したMOSFETは,引用発明1がその適用を排斥しているものであるといえる。 さらに,上記文献7の「トランジスタは、N型ドリフト層」「と、このN型ドリフト層」「中に形成される複数のP型ピラー層」「から構成されるスーパージャンクション構造を有している。」「ドリフト層」「は、N型ドリフト層」「とP型ピラー層」「からなり、」「ドリフト層」「に、」「ヘリウム照射或いは」「重金属を表面に付着させた後、熱拡散を行なう。」「ドリフト層」「におけるキャリアライフタイムの値を低くすることにより」「内蔵ダイオードの逆回復時における逆回復特性を改善することができ」「ドリフト層」「における抵抗値を高くする」との記載から,ドリフト領域においてp型半導体層とn型半導体層とを交互に配置したスーパージャンクション構造を有し,かつ,前記p型半導体層に重金属を拡散させるか,または,重粒子の粒子線を照射されている半導体が,キャリアライフタイムを短縮するものであることは,技術常識であり,引用発明1のMOSFET3,4として,ドリフト領域においてp型半導体層とn型半導体層とを交互に配置したスーパージャンクション構造を有し,かつ,前記p型半導体層に重金属を拡散させるか,または,重粒子の粒子線を照射されている構成を適用することには,阻害要因が存在する。 してみると,引用発明1に基づいて,相違点2に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得ることであるとはいえない。 したがって,本件発明1は,他の相違点を検討するまでもなく,当業者であっても引用発明1,文献2~6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 イ 次に,本件発明1と引用発明6とを対比すると,次のことがいえる。 (ア) 引用発明6の「電力変換装置」は,「交流電源から入力された交流電力を直流電力に変換して,変換後の電力を直流負荷に出力するように構成されている」ものであり,直流出力のための電源装置であるといえるから,本件発明1の「直流電源装置」に相当する。 (イ) 引用発明6の「一対の直流出力端子30c,30d」は,直流出力のための一対の端子であり,直流出力のための一対の端子が,正極端子と負極端子とからなるものであることは技術常識であるから,引用発明6の「直流出力端子30c,30d」は,本件発明1の「直流出力電源の正極端子」と「直流出力電源の」「負極端子」に相当する。また,引用発明6は,「スイッチング素子33及び34は,一対の直流出力端子30c,30d間にて直列接続されている」ものであり,「スイッチング素子33は」「MOSFETであり」,「スイッチング素子34は」「MOSFETであ」ることから,引用発明6の「スイッチング素子33及び34」は,本件発明1の「正極端子と負極端子との間に直列接続された第1、第2のMOSFET」に相当する。さらに,引用発明6は,「スイッチング素子35及び36は,一対の直流出力端子30c,30d間にて直列接続されている」ものであり,「スイッチング素子は,その内部に寄生ダイオード成分を有し」ており,「スイッチング素子35及び36における寄生ダイオード成分をそれぞれダイオード部分D3及びD4と称する」ものであることから,引用発明6の「ダイオード部分D3及びD4」と本件発明1の「第1、第2のダイオード」とは,正極端子と負極端子との間に直列接続された2つの素子のそれぞれにおける第1及び第2のダイオード部分である点で一致する。加えて,上記文献6の上記F8の段落【0063】における「スイッチング素子33~36からなるブリッジ回路」との記載から,引用発明6の「スイッチング素子33及び34」並びに「スイッチング素子35及び36」が,「ブリッジ回路」を構成するものであるのは明らかであり,ブリッジ回路を構成するこれらのスイッチング素子は,全体として交流電力を直流電力に整流するためのものであるといえるから,引用発明6の「スイッチング素子33及び34」並びに「スイッチング素子35及び36」からなる回路は,本件発明1の「ブリッジ整流回路」に相当する。 してみると,引用発明6の「電力変換装置」と本件発明1の「直流電源装置」とは,“直流出力電源の正極端子と負極端子との間に直列接続された第1,第2のMOSFETおよび前記正極端子と負極端子の間に直列接続された内部に第1のダイオード部分を有する素子と内部に第2のダイオード部分を有する素子,を有するブリッジ整流回路を備える”ものである点で一致する。 (ウ) 引用発明6は,「スイッチング素子33とスイッチング素子34との接続部は,リアクトル31aを介して,交流入力端子30aに接続され」ているものであるから,引用発明6の「リアクトル31a」は,交流電源の一端とスイッチング素子33及びスイッチング素子34の直列接続点との間に接続されているといえる。 してみると,上記(イ)の検討内容も踏まえると,引用発明6の「電力変換装置」と本件発明1の「直流電源装置」とは,“交流電源の一端と前記第1,第2のMOSFETの直列接続点との間に接続されたリアクトルを備える”ものである点で一致する。 (エ) 引用発明6は,「平滑コンデンサは,一対の直流出力端子30c,30dの間に設けられている」ものであるから,引用発明6の「電力変換装置」と本件発明1の「直流電源装置」とは,“直流出力電源の正極端子と負極端子の間に接続された平滑コンデンサを備える”ものである点で一致する。 (オ) 引用発明6は,「制御部は,スイッチング素子33とスイッチング素子34とを相補的にオンオフさせ」,「入力電圧Vacの絶対値が所定値Vrefを超える場合には,同期整流許可信号が出力され」,「同期整流許可信号が入力された場合,スイッチング素子33は,スイッチング素子34と相補的にオンオフされる」ものであり,「スイッチング素子33とスイッチング素子34とを相補的にオンオフさせ」るとは,スイッチング素子33,スイッチング素子34,スイッチング素子33,スイッチング素子34・・・との順序で,そのオン/オフを繰り返すことを意味しているといえるから,引用発明6の「制御部」は,交流電源の半周期内のうち入力電圧の絶対値が所定値を超える期間において,スイッチング素子33,34をオン/オフさせる動作を複数回繰り返すものであるといえる。また,引用発明6は,「Q1がOFFかつQ2がONのmode1の場合にリアクトル31aから流入する電流の経路は,リアクトル31a,MOSFET34(Q2)を通流し」,「Q1がONかつQ2がOFFのmode3の場合にリアクトル31aから流入する電流の経路は,リアクトル31a,MOSFET33(Q1)を通流」するのであるから,引用発明6の「制御部」は,スイッチング素子33,34をオンオフさせることで,リアクトル31aに流れる電流をスイッチング素子33,34のどちらか一方に通電するものであるといえる。 してみると,上記(イ)及び(ウ)の検討内容も踏まえると,引用発明6の「電力変換装置」と本件発明1の「直流電源装置」とは,“前記交流電源の半周期内に,前記リアクトルに流れる電流を前記第1,第2のMOSFETのどちらか一方に通電する動作を複数回繰り返すように前記第1,第2のMOSFETをオン/オフさせる制御回路を備える”ものである点で一致する。 (カ) 引用発明6は,「スイッチング素子35とスイッチング素子36との接続部は,交流入力端子30bに接続されている」ことから,引用発明6の「電力変換装置」と本件発明1の「直流電源装置」とは,“交流電源の他端が内部に第1のダイオード部分を有する素子と前記内部に第2のダイオード部分を有する素子との直列接続点に接続され”るものである点で一致する。 (キ) 引用発明6は,「スイッチング素子34は,スーパージャンクション構造を有するMOSFETであり,スイッチング素子33は,スーパージャンクション構造を有さないMOSFETであ」ることから,上記(イ)の検討内容も踏まえると,引用発明6の「電力変換装置」と本件発明1の「直流電源装置」とは,“前記第2のMOSFETは,スーパージャンクション構造を有する”ものである点で一致する。 (ク) 引用発明6は,「Q2がONのmode1の場合にリアクトル31aから流入する電流の経路は,リアクトル31a,MOSFET34(Q2),MOSFET36,を通流してリアクトル31bに至るものである」から,引用発明6の「MOSFET34」は,リアクトル31aがダイオード部分D4を有するMOSFET36とともに交流電源を短絡する側のものであるといえる。また,引用発明6は,「Q1がON」「のmode3の場合にリアクトル31aから流入する電流の経路は,リアクトル31a,MOSFET33(Q1),平滑コンデンサ32,MOSFET36,を通流してリアクトル31bに至るものである」から,引用発明6の「MOSFET33」は,平滑コンデンサ32に通流する側のものであるといえる。さらに,引用発明6は,「Q2をOFFし,所定時間経過後に,Q1をONし,Q2をONする所定時間前にQ1をOFFする」ものであるから,引用発明6は,リアクトル31aとダイオード部分D4を有するMOSFET36とを通して交流電源を短絡する側のMOSFET34をオフし,さらに所定時間経過後に,前記平滑コンデンサ32に通流する側のMOSFET33をオンし,前記リアクトル31aがダイオード部分D4を有するMOSFET36を通して交流電源を短絡する側のMOSFET34をオンする所定時間前に前記平滑コンデンサ32に通流する側のMOSFET33をオフするものであるといえる。 してみると,上記(イ),(ウ),及び(オ)の検討も踏まえると,引用発明6の「制御回路」と本件発明1の「制御回路」とは,“前記制御回路は,前記第1,第2のMOSFETのうち,前記リアクトルと内部にダイオード部分を有する素子とを通して前記交流電源を短絡する側のMOSFETをオフし,さらに所定時間経過後に,前記平滑コンデンサに通流する側のMOSFETをオンし,前記リアクトルが内部にダイオード部分を有する素子を通して交流電源を短絡する側のMOSFETをオンする所定時間前に前記平滑コンデンサに通流する側のMOSFETをオフする動作を,前記交流電源の半周期内に複数回繰返す”ものである点で一致する。 したがって,本件発明1と引用発明6との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「直流出力電源の正極端子と負極端子との間に直列接続された第1,第2のMOSFETおよび前記正極端子と負極端子の間に直列接続された内部に第1のダイオード部分を有する素子と内部に第2のダイオード部分を有する素子,を有するブリッジ整流回路と, 交流電源の一端と前記第1,第2のMOSFETの直列接続点との間に接続されたリアクトルと, 前記直流出力電源の正極端子と負極端子の間に接続された平滑コンデンサと, 前記交流電源の半周期内に,前記リアクトルに流れる電流を前記第1,第2のMOSFETのどちらか一方に通電する動作を複数回繰り返すように前記第1,第2のMOSFETをオン/オフさせる制御回路と, を備え, 前記交流電源の他端が前記内部に第1のダイオード部分を有する素子と前記内部に第2のダイオード部分を有する素子との直列接続点に接続され, 前記第2のMOSFETは,スーパージャンクション構造を有し, 前記制御回路は,前記第1,第2のMOSFETのうち,前記リアクトルと内部にダイオード部分を有する素子とを通して前記交流電源を短絡する側のMOSFETをオフし、さらに所定時間経過後に,前記平滑コンデンサに通流する側のMOSFETをオンし,前記リアクトルが内部にダイオード部分を有する素子を通して交流電源を短絡する側のMOSFETをオンする所定時間前に前記平滑コンデンサに通流する側のMOSFETをオフする動作を,前記交流電源の半周期内に複数回繰返す, ことを特徴とする直流電源装置。」 (相違点) (相違点4) 本件発明1は,「正極端子と負極端子の間に」「第1、第2のダイオード」が「直列接続された」ものであるのに対し,引用発明6は,正極端子と負極端子の間に直列接続されるものが,「第1、第2のダイオード」であることについて特定されていない点。 (相違点5) 本件発明1は,「第1」「のMOSFETは」「スーパージャンクション構造を有し」ているのに対し,引用発明6は,「スイッチング素子33は,スーパージャンクション構造を有さない」ことが特定されている点。 (相違点6) 本件発明1は,「各前記第1、第2のMOSFETは、半導体のドリフト領域においてp型半導体層とn型半導体層とを交互に配置し」,「かつ、前記p型半導体層に重金属を拡散させるか、または、重粒子の粒子線を照射されて」いるのに対し,引用発明6のスイッチング素子33及び34は,このような構成を有することについて特定されていない点。 (相違点7) 本件発明1は,「ダイオード」「を通して」「交流電源を短絡する」ものであるのに対し,引用発明6は,ダイオード部分D4を有するMOSFET36を通して交流電源を短絡するものではあるものの,「ダイオードを通して」交流電源を短絡することについては特定されていない点。 (相違点についての判断) 事案に鑑みて,上記相違点5について先に検討する。上記文献6の上記F5の段落【0039】に,「スーパージャンクション構造を有する」「MOSFET」「と通常型のMOSFETとによる」「ハイブリッド構成」「によれば,高効率化と低損失化とが良好に達成可能である」ことが記載されていることを踏まえると,引用発明6は,「スイッチング素子33は,スーパージャンクション構造を有さないMOSFETであ」ることを前提とするものであって,このようなハイブリッド構成に反して,スイッチング素子33をスーパージャンクション構造を有するものとするべきであるとする課題について何ら言及されておらず,この点において引用発明6に対して上記相違点5に係る構成を採用する動機付けを認めることはできない。 してみると,引用発明6に基づいて,相違点5に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得ることであるとはいえない。 したがって,本件発明1は,他の相違点を検討するまでもなく,当業者であっても引用発明6,文献7~12に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 (2) 本件発明2~5について 本件発明2~5は,直接・間接に本件発明1を引用するものであり,本件発明1を減縮したものである。よって,上記(1)に示した理由と同様の理由により,本件発明2~5は,引用発明1及び文献2~6に記載された技術的事項,又は引用発明6及び文献7~12に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 (3) 小括 以上のとおり,請求項1~5に係る発明は,文献1に記載された発明及び文献2~6に記載された技術的事項,又は文献6に記載された発明及び文献7~12に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 5-2 特許法第36条第6項第2号について 特許異議申立人角田朗は,特許異議申立書において,請求項4に,「前記第1、第2のダイオードの逆回復時間が、前記第1、第2のMOSFETのゲート信号をオン信号からオフ信号に切替えたときの逆回復時間よりも長い」と記載されているが,「印加電圧が逆方向電圧から順方向電圧に切替わる際に」ゲート信号をオン信号からオフ信号に切替えたときの逆回復時間と第1,第2のダイオードの逆回復時間を比較しているのかどうか不明であるから,特許を受けようとする発明が不明確である旨を主張している。 しかしながら,特許第6605887号の発明の詳細な説明(以下,「本件特許明細書」という。)の段落【0016】に「MOSFET(Q1,Q2)には」「ソース・ドレイン間に寄生ダイオードDpが」「必然的に構成され」「この寄生ダイオードDpのpn接合面に形成される空乏層に蓄積される電荷によって」「逆回復電流が生じることになる」と記載されているように,MOSFETの逆回復は寄生ダイオードによって生じるものである。また,ダイオードの逆回復が,pn接合のp側を高電位とする電圧を印加して電流が通流している状態でpn接合のp側を低電位とする電圧を印加することにより生じる現象であることは,技術常識である。さらに,本件特許明細書の段落【0030】に 「MOSFETにおいて、ソース電位を基準にドレイン電位が高い場合を順方向電圧と呼称し、逆にソース電位がドレイン電位より高い場合を逆方向電圧と呼称する。」「MOSFETは」「ソースからドレイン方向にpn接合(寄生ダイオードDp)を備えており」との記載を踏まえると,MOSFETの「順方向電圧」は寄生ダイオードのpn接合におけるp側を低電位とする電圧を意味し,MOSFETの「逆方向電圧」は寄生ダイオードのpn接合におけるp側を高電位とする電圧を意味しているといえる。以上のことから,請求項4の「第1、第2のMOSFETの」「逆回復時間」が,寄生ダイオードのpn接合のp側を高電位とする電圧からp側を低電位とする電圧に切替わる際,すなわち,印加電圧が逆方向電圧から順方向電圧に切替わる際の逆回復時間であることは明らかであり,請求項4に係る発明において,「印加電圧が逆方向電圧から順方向電圧に切替わる際に」ゲート信号をオン信号からオフ信号に切替えたときの逆回復時間と第1,第2のダイオードの逆回復時間を比較していることも明らかであるから,特許を受けようとする発明は明確であり,特許請求の範囲の記載は,特許法第36条第6項第2号の要件を満たすものである。 したがって,特許異議申立人角田朗のかかる主張は,採用することができない。 6 むすび したがって,特許異議の申立ての理由及び証拠によっては,請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。 また,他に請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり決定する。

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2020-700317

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