特許異議申立
2019-700342
直流電源装置および空気調和機
- 審判番号
- 2019-700342
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-097890
- 登録番号
- 特許第6416690号(P6416690)
- 請求日
- 2019年04月25日
- 審決日
- 2020年02月12日
- 公報発行日
- 2020年05月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
- 【異議申立人】角田 朗
- 【異議申立人】井澤 幹
- 審判長/審判官
- 審判長 國分 直樹
- 審判官 井上 信一
- 審判官 山澤 宏
- 分類
- P1652.113-YAA(H02M) / P1652.121-YAA(H02M) / P1652.537-YAA(H02M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項、特許法第120条の8第1項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6416690号発明「直流電源装置および空気調和機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6416690号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12〕について訂正することを認める。
特許第6416690号の請求項2ないし4、10ないし12に係る特許を維持する。
特許第6416690号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6416690号の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、平成27年5月13日に出願され、平成30年10月12日にその特許権の設定登録がなされ、同年10月31日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対して2件の特許異議の申立てがなされたものであり、以後の本件に係る手続の概要は以下のとおりである。
平成31年 4月25日 特許異議申立人 角田 朗による請求項1に
係る特許に対する特許異議の申立て
平成31年 4月26日 特許異議申立人 井澤 幹による請求項1な
いし4、10ないし12に係る特許に対する
特許異議の申立て
令和 1年 7月 3日付け 取消理由通知
令和 1年 8月28日 特許権者による訂正請求書の提出
令和 1年 9月 3日 令和1年8月28日付け訂正請求に対する請
求取下書の提出
令和 1年 9月 3日 特許権者による訂正請求書の提出
令和 1年10月 3日 特許異議申立人 角田 朗による意見書の提
出
令和 1年11月18日付け 取消理由通知(決定の予告)
令和 1年12月27日 特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
なお、先にした令和1年9月3日付けの訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1.訂正の内容
令和1年12月27日付けの訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、特許第6416690号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし12について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、以下の訂正事項のとおりである(なお、下線は訂正部分を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記制御部は、
交流全周期に亘って前記同期整流制御を実施する全波整流動作と、
前記同期整流制御を実施すると共に、前記交流電源の所定位相にて部分的に前記回路短絡制御を実施する部分スイッチング動作と、
交流全周期に亘って前記同期整流制御と前記回路短絡制御とを交互に実施する高速スイッチング動作、のうちいずれかの動作に切り替える、
ことを特徴とする、請求項1に記載の直流電源装置。」と記載されているのを、独立形式に改める。
更に、訂正前の請求項1に記載の「前記交流電源の電圧の極性に同期して」との記載を、「前記交流電源の電圧の極性が切り替わるゼロクロスのタイミングで」に訂正する。
請求項2を直接的または間接的に引用する請求項3ないし9、12についても同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項10に「・・ことを特徴とする請求項1に記載の直流電源装置。」と記載されているのを、「・・ことを特徴とする請求項2に記載の直流電源装置。」に訂正する。
請求項10を引用する請求項12についても同様に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項11に「・・ことを特徴とする請求項1に記載の直流電源装置。」と記載されているのを、「・・ことを特徴とする請求項2に記載の直流電源装置。」に訂正する。
請求項11を引用する請求項12についても同様に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項12に「請求項1ないし請求項11のうち何れか1項に記載の直流電源装置を備えた、・・」と記載されているのを、「請求項2ないし請求項11のうち何れか1項に記載の直流電源装置を備えた、・・」に訂正する。
(6)訂正事項6
明細書の段落【0007】の「前記した課題を解決するため、第1の発明では、第1のダイオードのカソードと第1のスイッチング素子の一端とが出力側の正極に接続され、前記第1のダイオードのアノードと第2のダイオードのカソードとが交流電源の一端側に接続され、前記第1のスイッチング素子の他端と第2のスイッチング素子の一端とが前記交流電源の他端側に接続され、前記第2のダイオードのアノードと前記第2のスイッチング素子の他端とが出力側の負極に接続されることによりブリッジ接続される整流回路と、交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、前記整流回路の出力側に接続され、前記整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子を双方向にスイッチングして負荷に電流を流す同期整流制御を実施すると共に、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを前記交流電源に短絡する回路短絡制御を繰り返し複数回実施する制御部と、を備えることを特徴とする直流電源装置とした。」との記載を、「前記した課題を解決するため、第1の発明では、第1のダイオードのカソードと第1のスイッチング素子の一端とが出力側の正極に接続され、前記第1のダイオードのアノードと第2のダイオードのカソードとが交流電源の一端側に接続され、前記第1のスイッチング素子の他端と第2のスイッチング素子の一端とが前記交流電源の他端側に接続され、前記第2のダイオードのアノードと前記第2のスイッチング素子の他端とが出力側の負極に接続されることによりブリッジ接続される整流回路と、交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、前記整流回路の出力側に接続され、前記整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、前記交流電源の電圧の極性が切り替わるゼロクロスのタイミングで前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子を双方向にスイッチングして負荷に電流を流す同期整流制御を実施すると共に、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを前記交流電源に短絡する回路短絡制御を繰り返し複数回実施する制御部と、を備え、前記制御部は、交流全周期に亘って前記同期整流制御を実施する全波整流動作と、前記同期整流制御を実施すると共に、前記交流電源の所定位相にて部分的に前記回路短絡制御を実施する部分スイッチング動作と、交流全周期に亘って前記同期整流制御と前記回路短絡制御とを交互に実施する高速スイッチング動作、のうちいずれかの動作に切り替えることを特徴とする直流電源装置とした。」に訂正する。
(7)訂正事項7
明細書の段落【0008】の「第2の発明では、請求項1に記載の直流電源装置を備えたことを特徴とする空気調和機とした。・・」との記載を、「第2の発明では、請求項2に記載の直流電源装置を備えたことを特徴とする空気調和機とした。・・」に訂正する。
2.訂正の適否についての判断
(1)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし12について、請求項2ないし12は、請求項1を直接または間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1ないし12に対応する訂正後の請求項1ないし12は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否等
ア.訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であリ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
イ.訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2が請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して請求項1の記載を引用しないものとして独立形式の請求項へ改めるとともに、令和1年7月3日付けで通知した取消理由(特許法第36条第6項第2号)で指摘した記載不備を解消するために、「極性に同期して」との記載を「極性が切り替わるゼロクロスのタイミングで」と訂正することにより不明瞭さを正し、訂正後の請求項2に係る発明を明確なものとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」、及び第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
そして、訂正事項2は上述のとおり、独立形式の請求項へ改めるだけでなく、明瞭でない記載の釈明を目的として含むものであるところ、本件特許明細書の段落【0027】に「・・なお、MOSFET(Q2)のオン動作開始のタイミングとしては、交流電源電圧Vsの極性が負から正に切り替わるゼロクロスのタイミングから行う。MOSFET(Q2)のオフさせるタイミングとしては、交流電源電圧Vsの極性が正から負に切り替わるタイミングである。」と記載され、段落【0028】に「・・なお、MOSFET(Q2)のオン動作開始のタイミングとしては、交流電源電圧Vsの極性が正から負に切り替わるゼロクロスのタイミングから行う。MOSFET(Q2)のオフさせるタイミングとしては、交流電源電圧Vsの極性が負から正に切り替わるタイミングである。」と記載(なお、下線を付した「Q2」なる記載(2箇所)は、「Q1」の誤記であると認められる。)されていることから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項2は上述のとおり、独立形式の請求項へ改めるとともに、明瞭でない記載の釈明を目的として訂正前の不明瞭さを正すものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第第6項の規定に適合する。
ウ.訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項10が請求項1を引用するものであったのを、請求項2を引用するようにしたものであり、かかる引用先の変更によって実質的に、訂正前の請求項10に係る発明における「制御部」について、訂正前の請求項2に記載されていた事項である「交流全周期に亘って前記同期整流制御を実施する全波整流動作と、前記同期整流制御を実施すると共に、前記交流電源の所定位相にて部分的に前記回路短絡制御を実施する部分スイッチング動作と、交流全周期に亘って前記同期整流制御と前記回路短絡制御とを交互に実施する高速スイッチング動作、のうちいずれかの動作に切り替える」ものであることの限定を付加するとともに、上記訂正事項2による訂正に伴い、「極性に同期して」との記載を「極性が切り替わるゼロクロスのタイミングで」と訂正して不明瞭さを正すものとなっていることから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、及び第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
そして、訂正事項3は上述のとおり、訂正前の請求項2に記載されていた事項の限定を付加することによって特許請求の範囲を減縮するとともに、明瞭でない記載の釈明を目的として本件特許明細書中の記載に基づいて訂正前の不明瞭さを正すものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
エ.訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項11が請求項1を引用するものであったのを、請求項2を引用するようにしたものであり、かかる引用先の変更によって実質的に、訂正前の請求項11に係る発明における「制御部」について、訂正前の請求項2に記載されていた事項である「交流全周期に亘って前記同期整流制御を実施する全波整流動作と、前記同期整流制御を実施すると共に、前記交流電源の所定位相にて部分的に前記回路短絡制御を実施する部分スイッチング動作と、交流全周期に亘って前記同期整流制御と前記回路短絡制御とを交互に実施する高速スイッチング動作、のうちいずれかの動作に切り替える」ものであることの限定を付加するとともに、上記訂正事項2による訂正に伴い、「極性に同期して」との記載を「極性が切り替わるゼロクロスのタイミングで」と訂正して不明瞭さを正すものとなっていることから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、及び第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
そして、訂正事項4は上述のとおり、訂正前の請求項2に記載されていた事項の限定を付加することによって特許請求の範囲を減縮するとともに、明瞭でない記載の釈明を目的として本件特許明細書中の記載に基づいて訂正前の不明瞭さを正すものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
オ.訂正事項5について
訂正事項5は、上記訂正事項1による訂正に伴い、訂正前の請求項12が請求項1ないし11を引用する記載であったものを、請求項1の引用を削除し、請求項2ないし11を引用する記載として引用請求項を減少させたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
カ.訂正事項6について
訂正事項6は、上記訂正事項1、2による訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であリ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
また、明細書の訂正である訂正事項6に関係する一群の請求項の全て(請求項1ないし12)が訂正請求の対象とされているから、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
キ.訂正事項7について
訂正事項7は、上記訂正事項1、2、5による訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であリ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
また、明細書の訂正である訂正事項7に関係する一群の請求項の全て(請求項1ないし12)が訂正請求の対象とされているから、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
(3)特許出願の際に独立して特許を受けることができること
上記訂正事項1、3ないし5については、「特許請求の範囲の減縮」を目的として含むものであるが、本件においては、訂正前の請求項1ないし4、10ないし12について特許異議の申立てがなされているので、訂正前の請求項1、10ないし12に係る訂正事項1、3ないし5に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
なお、特許異議の申立てがなされていない訂正前の請求項5ないし9については、実質的に上記訂正事項2による訂正に伴い、「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正がなされているだけであるから、これらについても、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3.訂正の適否についてのむすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。
よって、訂正後の請求項〔1-12〕について訂正することを認める。
第3 当審の判断
1.本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし12に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明12」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定される次のとおりのものである(なお、下線は訂正された箇所を示す。)。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
第1のダイオードのカソードと第1のスイッチング素子の一端とが出力側の正極に接続され、前記第1のダイオードのアノードと第2のダイオードのカソードとが交流電源の一端側に接続され、前記第1のスイッチング素子の他端と第2のスイッチング素子の一端とが前記交流電源の他端側に接続され、前記第2のダイオードのアノードと前記第2のスイッチング素子の他端とが出力側の負極に接続されることによりブリッジ接続される整流回路と、
交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、
前記整流回路の出力側に接続され、前記整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記交流電源の電圧の極性が切り替わるゼロクロスのタイミングで前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子を双方向にスイッチングして負荷に電流を流す同期整流制御を実施すると共に、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを前記交流電源に短絡する回路短絡制御を繰り返し複数回実施する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
交流全周期に亘って前記同期整流制御を実施する全波整流動作と、
前記同期整流制御を実施すると共に、前記交流電源の所定位相にて部分的に前記回路短絡制御を実施する部分スイッチング動作と、
交流全周期に亘って前記同期整流制御と前記回路短絡制御とを交互に実施する高速スイッチング動作、のうちいずれかの動作に切り替える、
ことを特徴とする直流電源装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記整流回路の出力側の負荷の大きさに応じて、前記全波整流動作と前記部分スイッチング動作と前記高速スイッチング動作のうちいずれかの動作に切り替える、
ことを特徴とする請求項2に記載の直流電源装置。
【請求項4】
前記制御部は、上位装置の運転領域に応じて、前記全波整流動作と前記部分スイッチング動作と前記高速スイッチング動作のうちいずれかの動作に切り替える、
ことを特徴とする請求項2に記載の直流電源装置。
【請求項5】
前記交流電源の一端側の電圧が正極性の場合は、同一のスイッチング周期の中で前記第1のスイッチング素子に設けたデッドタイムに対して、前記第2のスイッチング素子に設けたデッドタイムを相対的に大きくし、前記交流電源の一端側の電圧が負極性の場合は、前記第1のスイッチング素子に設けたデッドタイムに対して、前記第2のスイッチング素子に設けたデッドタイムを相対的に小さくする、
ことを特徴とする請求項2に記載の直流電源装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1,第2のスイッチング素子の制御のデッドタイムを前記交流電源の電圧の大きさに応じて変化させる、
ことを特徴とする請求項5に記載の直流電源装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1,第2のスイッチング素子の制御のデッドタイムを前記交流電源の電圧位相に応じて変化させる、
ことを特徴とする請求項5に記載の直流電源装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1,第2のスイッチング素子の制御のデッドタイムを、電源電圧ゼロクロス付近に対して電源電圧ピーク付近の方が小さくなるように変化させる、
ことを特徴とする請求項5に記載の直流電源装置。
【請求項9】
前記交流電源の一端側の電圧が正極性の場合は、同一のスイッチング周期の中で、前記第2のスイッチング素子の制御にデッドタイムを設けて、前記第1のスイッチング素子の制御には設けず、前記交流電源の一端側の電圧が負極性の場合は、同一のスイッチング周期の中で、前記第1のスイッチング素子側の制御にデッドタイムを設け、前記第2のスイッチング素子側の制御には設けない、
ことを特徴とする請求項2に記載の直流電源装置。
【請求項10】
前記第1,第2のダイオードは、SiC(Silicon Carbide)-ショットキーバリアダイオードまたは整流ダイオードである、
ことを特徴とする請求項2に記載の直流電源装置。
【請求項11】
前記第1,第2のスイッチング素子は、スーパージャンクションMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)またはSiC-MOSFETである、
ことを特徴とする請求項2に記載の直流電源装置。
【請求項12】
請求項2ないし請求項11のうち何れか1項に記載の直流電源装置を備えた、
ことを特徴とする空気調和機。」
2.取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
令和1年7月3日付け取消理由通知に記載した取消理由、及び同年11月18日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1-1)令和1年7月3日付け取消理由通知
請求項1ないし4、10ないし12に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
記
請求項1において、「前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子を双方向にスイッチングして負荷に電流を流す同期整流制御を実施する・・」とあるが、ここでいう電圧の「極性に同期して」の意味するところが不明確である。
よって、請求項1に係る発明及び請求項1に従属する請求項2ないし4、10ないし12に係る発明は明確なものでない。
(1-2)令和1年11月18日付け取消理由通知(決定の予告)
ア.特許法第29条第1項第3号
請求項1、請求項11、請求項12(ただし、請求項1または11を引用するもの)に係る発明は、下記の引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1、11、12に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
イ.特許法第29条第2項
請求項10、請求項12(ただし、請求項10を引用するもの)に係る発明は、下記の引用例に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項10、12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
引用例:特許第4935251号公報(特許異議申立人 角田 朗が提出した甲第3号証)
(2)引用例の記載事項
引用例(特許第4935251号公報、特許議申立人 角田 朗が提出した甲第3号証)には、「電力変換装置」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「【0022】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。図1に示すように、本実施形態の電力変換装置(1)は、整流回路(2)と、コンデンサ回路(3)と、インバータ回路(5)と、制御回路(8)とを備えている。
【0023】
上記整流回路(2)は、リアクトル(L)とスイッチングレグ(leg4)を各1つ備えている。
【0024】
上記スイッチングレグ(leg4)は、2つのスイッチング素子(2a,2b)が直列に設けられている。そして、スイッチングレグ(leg4)は、後述するコンデンサ回路(3)とでブリッジ結線されている。つまり、スイッチングレグ(leg4)がコンデンサ回路(3)と並列に接続され、交流電源である商用電源(10)がスイッチングレグ(leg4)の中間点とコンデンサ回路(3)の中間点との間に接続されている。リアクトル(L)は、商用電源(10)とスイッチングレグ(leg4)の中間点との間に接続されている。整流回路(2)では、商用電源(10)の交流電圧が直流電圧に変換される。
【0025】
上記コンデンサ回路(3)は、2つのコンデンサ(3a,3b)が直列に設けられている。そして、コンデンサ回路(3)は、整流回路(2)で変換された直流電圧を充放電するものである。」
イ.「【0035】
また、制御回路(8)は、商用電源(10)の電源電圧の極性に応じて同期整流するように、整流回路(2)のスイッチング素子(2a,2b)をスイッチングする。例えば、電源電圧の極性が正に切り換わると同時に、スイッチングレグ(leg4)の上アーム側のスイッチング素子(2a)をオンし、電源電圧の極性が負に切り換わると同時に、下アーム側のスイッチング素子(2b)をオンする。ここで、MOS-FETは、スイッチング速度がIGBT等よりも速いため、確実に同期整流の制御を行うことができる。したがって、整流回路(2)における損失低下、且つ、電力変換効率の向上を図ることができる。その結果、電動機(11)の運転効率を一層向上させることができる。
【0036】
また、制御回路(8)は、次の制御を行うように構成してもよい。
【0037】
制御回路(8)は、商用電源(10)の電源半周期の間に、整流回路(2)を
一回または複数回短絡させ(以下、短絡制御という。)、それ以外の期間は上述した同期整流の制御を行うようにする。ここでは、電源極性が正の半周期における制御について説明する。
【0038】
この場合、電源極性が正に切り換わると同時に、上アーム側のスイッチング素子(2a)をオンし、同期整流の制御を行う。そして、オンしてから所定時間が経過すると、オン状態のスイッチング素子(2a)をオフすると共に、下アーム側のスイッチング素子(2b)をオンし、短絡制御を行う。この短絡制御では、正の交流電流がリアクトル(L)、スイッチング素子(2b)、コンデンサ回路(3)の下側のコンデンサ(3b)へ順に流れる。そうすると、電源電圧が短絡し、リアクトル(L)を流れる電流の通電幅が大きくなる。これにより、電源力率が向上する。スイッチング素子(2b)がオンされてから所定時間が経過すると、オン状態のスイッチング素子(2b)をオフすると共に、上アーム側のスイッチング素子(2a)をオンし、再び同期整流の制御を行う。つまり、この制御では、電源極性が正の半周期の間に、同期整流の制御と短絡制御とが交互に行われる。なお、電源極性が負の半周期についても同様の制御が行われる。したがって、このような制御を行うことにより、整流回路(2)の低損失化を図りつつ、電源力率をも向上させることができる。」
ウ.「【0045】
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2について説明する。本実施形態は、図5に示すように、上記実施形態1における整流回路(2)にダイオードレグ(leg5)を追加すると共に、その整流回路(2)とコンデンサ回路(3)との間に新たなスイッチ(7)を設けたものである。ここでは、上記実施形態1と異なる点について説明する。
【0046】
本実施形態の整流回路(2)は、リアクトル(L)とスイッチングレグ(leg4)とダイオードレグ(leg5)を各1つ備えている。ダイオードレグ(leg5)は、2つのダイオード(2c,2d)が直列に設けられている。この整流回路(2)では、スイッチングレグ(leg4)とダイオードレグ(leg5)とがブリッジ結線されている。つまり、商用電源(10)がスイッチングレグ(leg4)の中間点とダイオードレグ(leg5)の中間点との間に接続されている。上記スイッチ(7)は、ダイオードレグ(leg5)の中間点とコンデンサ回路(3)の中間点との間に接続されている。つまり、本実施形態の整流回路(2)は、スイッチ(7)がオン状態になると、倍電圧整流回路に切り換わり、スイッチ(7)がオフ状態になると、全波整流回路に切り換わるように構成されている。
・・・・・(中 略)・・・・・
【0048】
本実施形態の制御回路(8)は、スイッチ(7)がオン状態およびオフ状態の何れの場合も、上記実施形態2と同様に、商用電源(10)の電源電圧の極性に応じて同期整流するように整流回路(2)のスイッチング素子(2a,2b)をスイッチングする。つまり、倍電圧整流回路および全波整流回路の双方において、同期整流が行われる。したがって、上記実施形態と同様に、損失低下と電力変換効率の向上とを図ることができる。特に、全波整流回路においては、倍電圧整流回路の場合よりも電源電圧を低くできるため、スイッチング損失や電動機(11)の渦電流損失を低減することができる。その結果、電動機(11)の運転効率を一層向上させることができる。
【0049】
なお、本実施形態では、スイッチ(7)をオフにして全波整流回路に切り換えた場合において、上記実施形態2と同様に、電源半周期の間に同期整流の制御と短絡制御とを交互に行うようにしてもよい。その場合も、整流回路(2)の低損失化を図りつつ、電源力率を向上させることができる。」
(なお、段落【0048】及び【0049】中、「上記実施形態2と同様に」なる記載は、「上記実施形態1と同様に」の誤記であると認められる。)
・上記引用例に記載の「電力変換装置」は、上記「ア.」、「ウ.」の記載事項、及び図5によれば、整流回路(2)と、コンデンサ回路(3)と、制御回路(8)とを備え、整流回路(2)は、リアクトル(L)とスイッチングレグ(leg4)とダイオードレグ(leg5)を各1つ備えてなるものである。
そして、スイッチングレグ(leg4)は2つのスイッチング素子(2a,2b)が直列に設けられ、ダイオードレグ(leg5)は2つのダイオード(2c,2d)が直列に設けられてなり、商用電源(10)がスイッチングレグ(leg4)の中間点とダイオードレグ(leg5)の中間点との間に接続されることで、スイッチングレグ(leg4)とダイオードレグ(leg5)とがブリッジ結線されてなるものである。
また、リアクトル(L)は、商用電源(10)とスイッチングレグ(leg4)の中間点との間に接続されている。
・上記「ア.」の段落【0025】の記載事項、及び図5によれば、コンデンサ回路(3)は、整流回路(2)の出力側に設けられ、直列に設けられた2つのコンデンサ(3a,3b)からなり、整流回路(2)で変換された直流電圧を充放電するものである。
・上記「ウ.」の段落【0046】の記載事項によれば、ダイオードレグ(leg5)の中間点とコンデンサ回路(3)の中間点との間に接続されているスイッチ(7)がオフ状態になると、整流回路(2)は全波整流回路に切り換わる構成となっている。
・上記「イ.」、「ウ.」の記載事項によれば、制御回路(8)は、スイッチ(7)をオフにして全波整流回路に切り換えた場合において、商用電源(10)の電源半周期の間に、整流回路(2)を複数回短絡させ、それ以外の期間は同期整流の制御を行って、同期整流の制御と短絡制御とを交互に行うようにしてなるものである。ここで、同期整流の制御は、商用電源(10)の電源電圧の極性が正に切り換わると同時にスイッチングレグ(leg4)の上アーム側のスイッチング素子(2a)をオンし、電源電圧の極性が負に切り換わると同時に下アーム側のスイッチング素子(2b)をオンすることにより行われる。
したがって、特に図5に示される実施形態2に係るものであって、整流回路(2)を全波整流回路に切り換えた場合(スイッチ(7)がオフ状態の場合)に着目し、上記記載事項および図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「全波整流回路を構成する整流回路と、コンデンサ回路と、制御回路とを備えた電力変換装置であって、
前記整流回路は、リアクトルと、2つのスイッチング素子が直列に設けられたスイッチングレグと、2つのダイオードが直列に設けられダイオードレグとを各1つ備え、商用電源が前記スイッチングレグの中間点と前記ダイオードレグの中間点との間に接続されることで、前記スイッチングレグと前記ダイオードレグとがブリッジ結線されてなり、また、前記リアクトルは、前記商用電源と前記スイッチングレグの中間点との間に接続され、
前記コンデンサ回路は、前記整流回路の出力側に設けられ、直列に設けられた2つのコンデンサからなり、前記整流回路で変換された直流電圧を充放電するものであり、
前記制御回路は、商用電源の電源電圧の極性が正に切り換わると同時に前記スイッチングレグの上アーム側のスイッチング素子をオンし、電源電圧の極性が負に切り換わると同時に下アーム側のスイッチング素子をオンすることにより同期整流の制御を行うとともに、前記商用電源の電源半周期の間に、前記整流回路を複数回短絡させ、それ以外の期間は前記同期整流の制御を行って、前記同期整流の制御と短絡制御とを交互に行うようにした、電力変換装置。」
(3)取消理由についての当審の判断
(3-1)令和1年7月3日付け取消理由通知に記載した取消理由(特許法第36条第6項第2号)について
上記(1-1)のとおりの記載不備の指摘に対して、本件訂正請求による訂正により、独立形式の記載とされた請求項2において、「前記交流電源の電圧の極性に同期して・・」との記載が、「前記交流電源の電圧の極性が切り替わるゼロクロスのタイミングで・・」と訂正され、訂正前の不明瞭さは正された。
したがって、当審による取消理由で指摘した不備な点は解消され、請求項2及び請求項2に従属する請求項3、4、10ないし12に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものではない。
(3-2)令和1年11月18日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由(特許法第29条第1項第3号及び特許法第29条第2項)について
本件訂正請求による訂正により、当該取消理由の対象とされた請求項1は削除された。そこで、当該取消理由の対象としなかった請求項2に係る発明について、当該請求項2に従属する請求項に係る発明も含めて検討しておく。
ア.本件発明2について
本件発明2と引用発明を対比する。
(ア)引用発明における「全波整流回路を構成する整流回路と、コンデンサ回路と、制御回路とを備えた電力変換装置であって、前記整流回路は、リアクトルと、2つのスイッチング素子が直列に設けられたスイッチングレグと、2つのダイオードが直列に設けられダイオードレグとを各1つ備え、商用電源が前記スイッチングレグの中間点と前記ダイオードレグの中間点との間に接続されることで、前記スイッチングレグと前記ダイオードレグとがブリッジ結線されてなり、・・」によれば、
引用発明における、直列に設けられてスイッチングレグを構成する「2つのスイッチング素子」が、本件発明2でいう「第1のスイッチング素子」及び「第2のスイッチング素子」に相当し、直列に設けられてダイオードレグを構成する「2つのダイオード」が、本件発明2でいう「第1のダイオード」及び「第2のダイオード」に相当し、また、引用発明における「商用電源」は、本件発明2でいう「交流電源」に相当する。
そして、引用発明のスイッチングレグとダイオードレグとは、商用電源が当該スイッチングレグの中間点と当該ダイオードレグの中間点との間に接続されることでブリッジ結線されてなるものであることから、引用発明における「整流回路」のうちリアクトルを除いた部分、つまりブリッジ結線されてなる「スイッチングレグ」と「ダイオードレグ」からなる部分が、本件発明2でいう「整流回路」に相当するといえる。
したがって、本件発明2と引用発明とは、「第1のダイオードのカソードと第1のスイッチング素子の一端とが出力側の正極に接続され、前記第1のダイオードのアノードと第2のダイオードのカソードとが交流電源の一端側に接続され、前記第1のスイッチング素子の他端と第2のスイッチング素子の一端とが前記交流電源の他端側に接続され、前記第2のダイオードのアノードと前記第2のスイッチング素子の他端とが出力側の負極に接続されることによりブリッジ接続される整流回路と」を備えるものである点で一致する。
(イ)引用発明における「前記整流回路は、リアクトルと、2つのスイッチング素子が直列に設けられたスイッチングレグと、2つのダイオードが直列に設けられダイオードレグとを各1つ備え、・・・・また、前記リアクトルは、前記商用電源と前記スイッチングレグの中間点との間に接続され」によれば、
引用発明における「リアクトル」は、商用電源とスイッチングレグの中間点との間に接続されてなるものであることから、本件発明2でいう「リアクトル」に相当する。
したがって、本件発明2と引用発明とは、「交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと」を備えるものである点で一致する。
(ウ)引用発明における「前記コンデンサ回路は、前記整流回路の出力側に設けられ、直列に設けられた2つのコンデンサからなり、前記整流回路で変換された直流電圧を充放電するものであり」によれば、
引用発明における、コンデンサ回路を構成する直列に設けられた「2つのコンデンサ」は、整流回路で変換、より具体的には全波整流された直流電圧を充放電することによって平滑化するものであるといえることから、本件発明2でいう「平滑コンデンサ」に相当する。
したがって、本件発明2と引用発明とは、「前記整流回路の出力側に接続され、前記整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと」を備えるものである点で一致する。
(エ)引用発明における「前記制御回路は、商用電源の電源電圧の極性が正に切り換わると同時に前記スイッチングレグの上アーム側のスイッチング素子をオンし、電源電圧の極性が負に切り換わると同時に下アーム側のスイッチング素子をオンすることにより同期整流の制御を行うとともに、前記商用電源の電源半周期の間に、前記整流回路を複数回短絡させ、それ以外の期間は前記同期整流の制御を行って、前記同期整流の制御と短絡制御とを交互に行うようにした・・」によれば、
(a)引用発明における「同期整流の制御」は、商用電源の電源電圧の極性が正に切り換わると同時に一方のスイッチング素子をオンし、電源電圧の極性が負に切り換わると同時に他方のスイッチング素子をオンするものであるから、本件発明2と同様、電源電圧の極性が切り替わるゼロクロスのタイミングで2つのスイッチング素子を双方向にスイッチングしてなるものであるといえ、本件発明2でいう「同期整流制御」に相当する。
(b)また、引用発明における「短絡制御」は、商用電源の電源半周期の間に、整流回路を複数回短絡させることにより行われるものであることから、本件発明2でいう「回路短絡制御」に相当する。
(c)そして、引用発明における「制御回路」は、同期整流の制御を実施するとともに、電源半周期の間に短絡制御を繰り返し複数回実施するものであるといえることから、本件発明2でいう「制御部」に相当する。
したがって、本件発明2と引用発明とは、「前記交流電源の電圧の極性が切り替わるゼロクロスのタイミングで前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子を双方向にスイッチングして負荷に電流を流す同期整流制御を実施すると共に、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを前記交流電源に短絡する回路短絡制御を繰り返し複数回実施する制御部と」を備えるものである点で一致する。
(オ)そして、引用発明における「電力変換装置」は、本件発明2と同様、整流回路によって商用電源の交流電圧を直流電圧に変換し、さらにコンデンサ回路によって変換された直流電圧を平滑化して出力するものであることから、本件発明2でいう「直流電源装置」に相当するということができるものである。
よって、本件発明2と引用発明とは、
「第1のダイオードのカソードと第1のスイッチング素子の一端とが出力側の正極に接続され、前記第1のダイオードのアノードと第2のダイオードのカソードとが交流電源の一端側に接続され、前記第1のスイッチング素子の他端と第2のスイッチング素子の一端とが前記交流電源の他端側に接続され、前記第2のダイオードのアノードと前記第2のスイッチング素子の他端とが出力側の負極に接続されることによりブリッジ接続される整流回路と、
交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、
前記整流回路の出力側に接続され、前記整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記交流電源の電圧の極性が切り替わるゼロクロスのタイミングで前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子を双方向にスイッチングして負荷に電流を流す同期整流制御を実施すると共に、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを前記交流電源に短絡する回路短絡制御を繰り返し複数回実施する制御部と、
を備える、
ことを特徴とする直流電源装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点]
制御部について、本件発明2では「交流全周期に亘って前記同期整流制御を実施する全波整流動作と、前記同期整流制御を実施すると共に、前記交流電源の所定位相にて部分的に前記回路短絡制御を実施する部分スイッチング動作と、交流全周期に亘って前記同期整流制御と前記回路短絡制御とを交互に実施する高速スイッチング動作、のうちいずれかの動作に切り替える」ものである旨特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点。
上記のとおり相違点があるから、本件発明2は、引用例に記載された発明ではない。
次に、上記相違点について検討する。
本件発明2の制御部は、交流全周期に亘って同期整流制御を実施する全波整流動作(以下、「全波整流モード」という。)と、同期整流制御を実施すると共に、交流電源の所定位相にて部分的に回路短絡制御を実施する部分スイッチング動作(以下、「部分スイッチングモード」という。)と、交流全周期に亘って同期整流制御と回路短絡制御とを交互に実施する高速スイッチング動作(以下、「高速スイッチングモード」という。)のいずれも同期整流制御の実施を伴うようにした3つのモードを有し、そのうちのいずれかに切り替えることができるものであると解される。
これに対して、引用発明は、制御回路が「・・同期整流の制御を行うとともに、前記商用電源の電源半周期の間に、前記整流回路を複数回短絡させ、それ以外の期間は前記同期整流の制御を行って、前記同期整流の制御と短絡制御とを交互に行う」ようにしているが、かかる制御は、特に「商用電源の電源半周期の間に、整流回路を複数回短絡させ、それ以外の期間は同期整流の制御を行」う旨の記載からみて、本件発明2の「部分スイッチングモード」に相当するといえるものである。そして、引用例の段落【0035】や【0048】には、同期整流の制御のみを行うこと、すなわち本件発明2の「全波整流モード」を実施してもよいことは記載されているものの、「部分スイッチングモード」だけでなく本件発明2の「高速スイッチングモード」に相当するモードも有し、これらを切り替えることができるようにすることまでは記載も示唆もされていない。
なお、特許議申立人 角田 朗は令和1年10月3日付け意見書において、全波整流動作と部分スイッチング動作と高速スイッチング動作のうちのいずれかの動作に切り替えることは、当該意見書とともに提出した甲第4号証(韓国特許出願公開第10-2007-0101476号明細書)に記載されているように本件出願前に周知技術である旨主張している。
確かに上記甲第4号証には、電源電圧を整流するダイオードブリッジ回路(311)、及びスイッチング制御部(320)の信号に応じて直流リンク電流を調節するスイッチング手段(Q1、Q2)を含んで構成されるアクティブフィルタ(310)を有する直流電源供給装置において、運転負荷の大きさに応じて、前記スイッチング手段(Q1、Q2)を停止させる動作モード、所定の運転区間継続して前記スイッチング手段(Q1、Q2)を制御する動作モード、及び所定の運転区間の一部の間、前記前記スイッチング手段(Q1、Q2)を制御する動作モードのうちいずれかに切り替えることが記載(特に段落<31>、<32>、<41>を参照)されているといえる。しかしながら、そもそもいずれの動作モードも同期整流制御の実施を伴うものではなく、本件発明2の「全波整流モード」、「部分スイッチングモード」及び「高速スイッチングモード」に相当するモードを有し、これらを切り替えるようにしているわけではないことから、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
したがって、本件発明2は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ.本件発明3、4、10ないし12について
本件訂正請求による訂正により、訂正後の請求項3、4、10ないし12はいずれも請求項2を直接または間接的に引用するものとなった。したがって、本件発明3、4、10ないし12は、本件発明2の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明2についての判断と同様の理由により、本件発明3、4、10ないし12は、引用例に記載された発明ではなく、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
よって、請求項3、4、10ないし12に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではなく、また、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでもない。
(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明2ないし4、10ないし12に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由によっては取り消すことはできない。
3.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由等について
3-1.特許異議申立人 角田 朗による申立理由について
(1)申立理由の概要
ア.特許法第29条第2項
請求項1に係る発明は、下記の甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載の技術事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
甲第1号証:特許第5349636号公報
甲第2号証:特許第4784207号公報
イ.特許法第36条第6項第1号
請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、請求項1に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)判断
上記申立理由「ア.」及び「イ.」はいずれも請求項1のみに対して申立てられてなるものであるところ、本件訂正請求による訂正により、請求項1は削除され、請求項1に係るこれらの申立てはその対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
3-2.特許異議申立人 井澤 幹による申立理由について
(1)申立理由の概要
ア.特許法第29条第1項第3号
請求項1、11に係る発明は、下記の甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1、11に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
イ.特許法第29条第2項
請求項1、11、12に係る発明は、下記の甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載の技術事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、
請求項2ないし4に係る発明は、下記の甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証にそれぞれ記載の技術事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、
請求項10に係る発明は、下記の甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第4号証にそれぞれ記載の技術事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項1ないし4、10ないし12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
甲第1号証:特開2015-61322号公報
甲第2号証:特許第5349636号公報
甲第3号証:特許第3695382号公報
甲第4号証:特許第5743995号公報
(2)甲第1号証の記載事項
特許異議申立人 井澤 幹が提示した甲第1号証(特開2015-61322号公報)には、「電力変換装置」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「【請求項1】
ダイオード部分を有する半導体スイッチング素子であるメインスイッチング素子(34,36)と、前記メインスイッチング素子と相補的にオンオフされることで同期整流動作を実現するように設けられた半導体スイッチング素子であるサブスイッチング素子(33,35)と、を備えた、電力変換回路(13)と、
前記メインスイッチング素子及び前記サブスイッチング素子のオンオフ動作を制御するように設けられた、制御部(14)と、
を備えた、電力変換装置(10)であって、
前記制御部は、
入出力電力に対応する特性値が所定値を超える場合に前記メインスイッチング素子と前記サブスイッチング素子とを相補的にオンオフさせることで前記同期整流動作を実行させ、前記特性値が前記所定値以下である場合に前記メインスイッチング素子又は前記サブスイッチング素子をオフに保持することで前記同期整流動作を停止させるようになっていることを特徴とする、電力変換装置。」
イ.「【0012】
<構成>
図1を参照すると、本発明の一実施形態としての電力変換装置10は、インバータ回路であって、交流電源11から入力された交流電力を直流電力に変換して、変換後の電力を直流負荷12に出力するように構成されている。この電力変換装置10は、電力変換回路13と制御部14とを備えている。【0013】
電力変換回路13には、一対の交流入力端子30a,30b(本発明の「一対の交流入出力端子」に相当する)と、一対の直流出力端子30c,30d(本発明の「一対の直流入出力端子」に相当する)と、が設けられている。そして、電力変換回路13は、一対の交流入力端子30a,30bを介して交流電源11に接続されるとともに、一対の直流出力端子30c,30dを介して直流負荷12に接続されている。
【0014】
電力変換回路13における入力側、すなわち一対の交流入力端子30a,30b側には、フィルタ回路31が設けられている。フィルタ回路31は、リアクトル31a,31bと、コンデンサ31cと、によって構成されている。リアクトル31aは、交流入力端子30aに接続されている。リアクトル31bは、交流入力端子30bに接続されている。
・・・・・(中 略)・・・・・
【0016】
電力変換回路13における出力側、すなわち一対の直流出力端子30c,30d側には、平滑コンデンサ32、及びスイッチング素子33~36が設けられている。平滑コンデンサ32は、一対の直流出力端子30c,30dの間に設けられている。すなわち、平滑コンデンサ32は、直流出力端子30cに接続された電力ラインと、直流出力端子30dに接続された電力ラインと、を接続(短絡)するように設けられた電力ラインに介装されている。
【0017】
スイッチング素子33~36は、MOSゲート構造を有する半導体スイッチング素子であって、フィルタ回路31と平滑コンデンサ32との間に設けられている。本実施形態においては、スイッチング素子33~36は、いわゆる「パワーMOSFET」であって、その内部に寄生ダイオード成分を有している。以下、スイッチング素子33,34,35及び36における、トランジスタ動作部分をそれぞれスイッチング部分Q1,Q2,Q3及びQ4と称し、寄生ダイオード成分をそれぞれダイオード部分D1,D2,D3及びD4と称することがある。
【0018】
本発明の「第一スイッチング素子」に相当するスイッチング素子33は、Nチャンネル型のMOSFETであって、ドレインが直流出力端子30cに接続されている。本発明の「第二スイッチング素子」に相当するスイッチング素子34は、Nチャンネル型のMOSFETであって、ソースが直流出力端子30dに接続されている。スイッチング素子33のソースは、スイッチング素子34のドレインに接続されている。このようにして、スイッチング素子33及び34は、一対の直流出力端子30c,30d間にて直列接続されている。
【0019】
本発明の「第三スイッチング素子」に相当するスイッチング素子35は、Nチャンネル型のMOSFETであって、ドレインが直流出力端子30cに接続されている。本発明の「第四スイッチング素子」に相当するスイッチング素子36は、Nチャンネル型のMOSFETであって、ソースが直流出力端子30dに接続されている。スイッチング素子35のソースは、スイッチング素子36のドレインに接続されている。このようにして、スイッチング素子35及び36は、一対の直流出力端子30c,30d間にて直列接続されている。また、スイッチング素子33及び34の直列接続体と、スイッチング素子35及び36の直列接続体とが、並列に設けられている。
【0020】
スイッチング素子33とスイッチング素子34との接続部は、フィルタ回路31におけるリアクトル31aを介して、交流入力端子30aに接続されている。同様に、スイッチング素子35とスイッチング素子36との接続部は、フィルタ回路31におけるリアクトル31bを介して、交流入力端子30bに接続されている。
【0021】
本実施形態においては、「メインスイッチング素子」に相当する、下アーム側のスイッチング素子34及び36は、スーパージャンクション構造を有するMOSFETである。これらスイッチング素子34及び36は、一対の直流出力端子30c,30d間の出力電圧である直流電圧が所望値となるようなオンデューティ比でPWM制御されるように設けられている。一方、「サブスイッチング素子」に相当する、上アーム側のスイッチング素子33及び35は、スーパージャンクション構造を有さない通常型(シリコン型あるいはシリコンカーバイド型)のMOSFETである。これらスイッチング素子33及び35は、スイッチング素子34及び36と相補的にオンオフされることで、電力変換回路13にて同期整流動作を実現可能に設けられている。
【0022】
制御部14は、スイッチング素子33~36のオンオフ動作を制御するように設けられている。具体的には、制御部14は、メインコントローラ40と、交流入力電圧センサ47と、直流出力電圧センサ48と、リアクトル電流センサ49と、を備えている。リアクトル電流センサはスイッチング素子Q2の電流センサとスイッチング素子Q4の電流センサで代用されることもある。」
ウ.「【0044】
一方、極性判定部416は、入力電圧Vacの極性に応じて、「0」又は「1」の信号(極性信号)を出力する。この極性信号は、オアゲート421における他方の入力端子に入力される。また、この極性信号がノットゲート423で反転されたものが、オアゲート422における他方の入力端子に入力される。
・・・・・(中 略)・・・・・
【0046】
オアゲート422の出力及びスイッチング素子36(スイッチング部分Q4)のゲート信号についても、上述と同様であるが、オアゲート421の出力及びスイッチング素子34(スイッチング部分Q2)のゲート信号と半周期ずれたものとなる(図3における「Q4」のタイムチャート参照)。このようにして、下アーム側のスイッチング素子34とスイッチング素子36とが、上述の極性信号に応じて、交互にPWM駆動される。
・・・・・(中 略)・・・・・
【0049】
同期整流許可信号すなわち「1」が入力された場合、アンドゲート426は、オアゲート421の出力がノットゲート424によって反転されたものに対応する信号を、スイッチング素子33(スイッチング部分Q1)のゲート信号として出力する。この場合、上アーム側のスイッチング素子33は、これと直列に接続された下アーム側のスイッチング素子34と相補的にオンオフされる。これにより、同期整流動作が実現される。
・・・・・(中 略)・・・・・
【0051】
このように、本実施形態においては、入力電圧Vacの絶対値が所定値Vref以下である場合に、上アーム側のスイッチング素子33(スイッチング部分Q1)及びスイッチング素子35(スイッチング部分Q3)をオフに保持することで、同期整流動作が停止される(図3における1点鎖線の領域参照)。これに対し、比較例としての従来の制御動作においては、入力電圧Vacの大きさにかかわらず常時、同期整流動作が行われる。」
・上記甲第1号証に記載の「電力変換装置」は、上記「ア.」、「イ.」の記載事項、及び図1によれば、交流電源11から入力された交流電力を直流電力に変換して、変換後の電力を直流負荷12に出力するように構成されたものであって、電力変換回路13と、当該電力変換回路13中のスイッチング素子33~36のオンオフ動作を制御する制御部14とを備えてなるものである。
・上記「ア.」、「イ.」の記載事項、及び図1によれば、電力変換回路13におけるスイッチング素子33~36は、寄生ダイオード成分であるダイオード部分を有する半導体スイッチング素子であり、下アーム側のスイッチング素子34とスイッチング素子36からなるメインスイッチング素子と、上アーム側のスイッチング素子33とスイッチング素子35とからなるサブスイッチング素子とで構成されてなるものである。そして、スイッチング素子33及びスイッチング素子34が一対の直流出力端子30c,30d間にて直列接続されるとともに、スイッチング素子35及びスイッチング素子36が一対の直流出力端子30c,30d間にて直列接続されて、2つの直列接続体が並列に設けられ、スイッチング素子33とスイッチング素子34との接続部がリアクトル31aを介して交流入力端子30aに接続され、同様に、スイッチング素子35とスイッチング素子36との接続部がリアクトル31bを介して交流入力端子30bに接続されてなるものである。
・上記「イ.」の段落【0016】、及び図1によれば、電力変換回路13における一対の直流出力端子30c,30d間には平滑コンデンサ32が設けられてなるものである。
・上記「ア.」、「イ.」の段落【0021】、「ウ.」の記載事項、及び図4によれば、上アーム側のサブスイッチング素子は、下アーム側のメインスイッチング素子と交流の入力電圧の極性に応じて相補的にオンオフされることで同期整流動作が行われ、さらに、交流の入力電圧Vacの極性が正の半周期においては、メインスイッチング素子のうちのスイッチング素子36をオン状態とし、スイッチング素子34をPWM駆動してオン・オフのスイッチングを行い、また、極性が負の半周期においては、メインスイッチング素子のうちのスイッチング素子34をオン状態とし、スイッチング素子36をPWM駆動してオン・オフのスイッチングを行うようにしてなるものである。
したがって、特に図4に示される比較例に係るものに着目し、上記記載事項および図面を総合勘案すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「電力変換回路と、当該電力変換回路中のスイッチング素子33~36のオンオフ動作を制御する制御部とを備え、交流電源から入力された交流電力を直流電力に変換して、変換後の電力を直流負荷に出力するように構成された電力変換装置であって、
前記電力変換回路におけるスイッチング素子33~36は、寄生ダイオード成分であるダイオード部分を有する半導体スイッチング素子であり、下アーム側のスイッチング素子34とスイッチング素子36からなるメインスイッチング素子と、上アーム側のスイッチング素子33とスイッチング素子35とからなるサブスイッチング素子とで構成され、前記スイッチング素子33及び前記スイッチング素子34が一対の直流出力端子間に直列接続されるとともに、前記スイッチング素子35及び前記スイッチング素子36が前記一対の直流出力端子間に直列接続されて、2つの直列接続体が並列に設けられ、
前記スイッチング素子33と前記スイッチング素子34との接続部がリアクトル31aを介して交流入力端子30aに接続され、同様に、前記スイッチング素子35と前記スイッチング素子36との接続部がリアクトル31bを介して交流入力端子30bに接続され、
前記一対の直流出力端子間には平滑コンデンサが設けられてなり、
上アーム側の前記サブスイッチング素子は、下アーム側の前記メインスイッチング素子と交流の入力電圧の極性に応じて相補的にオンオフされることで同期整流動作が行われ、さらに、交流の入力電圧の極性が正の半周期においては、メインスイッチング素子のうちのスイッチング素子36をオン状態とし、スイッチング素子34をPWM駆動してオン・オフのスイッチングを行い、また、極性が負の半周期においては、メインスイッチング素子のうちのスイッチング素子34をオン状態とし、スイッチング素子36をPWM駆動してオン・オフのスイッチングを行うようにしてなる、電力変換装置。」
(3)対比・判断
ア.本件発明1について
本件訂正請求による訂正により、請求項1は削除され、請求項1に係る申立てはその対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
イ.本件発明2について
本件発明2と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明における「電力変換回路と・・・を備え、交流電源から入力された交流電力を直流電力に変換して、変換後の電力を直流負荷に出力するように構成された電力変換装置であって、前記電力変換回路におけるスイッチング素子33~36は、寄生ダイオード成分であるダイオード部分を有する半導体スイッチング素子であり、下アーム側のスイッチング素子34とスイッチング素子36からなるメインスイッチング素子と、上アーム側のスイッチング素子33とスイッチング素子35とからなるサブスイッチング素子とで構成され、前記スイッチング素子33及び前記スイッチング素子34が一対の直流出力端子間に直列接続されるとともに、前記スイッチング素子35及び前記スイッチング素子36が前記一対の直流出力端子間に直列接続されて、2つの直列接続体が並列に設けられ、前記スイッチング素子33と前記スイッチング素子34との接続部がリアクトル31aを介して交流入力端子30aに接続され、同様に、前記スイッチング素子35と前記スイッチング素子36との接続部がリアクトル31bを介して交流入力端子30bに接続され」によれば、
甲1発明の「電力変換回路」にあっても、4つのスイッチング素子33~36がブリッジ接続されて「整流回路」を構成しているといえるものであり、「スイッチング素子35」及び「スイッチング素子36」が、それぞれ本件発明2でいう「第1のスイッチング素子」及び「第2のスイッチング素子」に相当するととに、「スイッチング素子33」及び「スイッチング素子34」が、それぞれ本件発明2でいう「第1のダイオード」及び「第2のダイオード」に対応するものであるといえる。
したがって、本件発明2と甲1発明とは、「第1の素子と第1のスイッチング素子の一端とが出力側の正極に接続され、前記第1の素子と第2の素子とが交流電源の一端側に接続され、前記第1のスイッチング素子の他端と第2のスイッチング素子の一端とが前記交流電源の他端側に接続され、前記第2の素子と前記第2のスイッチング素子の他端とが出力側の負極に接続されることによりブリッジ接続される整流回路と」を備えるものである点で共通する。
ただし「第1の素子」及び「第2の素子」が、本件発明2ではそれぞれ「第1のダイオード」及び「第2のダイオード」であって、いずれも「ダイオード」であり、「第1のダイオードのカソード」が出力側の正極に接続され、「第1のダイオードのアノード」と「第2のダイオードのカソード」とが交流電源の一端側に接続され、「第2のダイオードのアノード」が出力側の負極に接続される旨特定するのに対し、甲1発明ではいずれもスイッチング素子である点で相違している。
(イ)甲1発明における「前記スイッチング素子33と前記スイッチング素子34との接続部がリアクトル31aを介して交流入力端子30aに接続され、同様に、前記スイッチング素子35と前記スイッチング素子36との接続部がリアクトル31bを介して交流入力端子30bに接続され」によれば、
甲1発明における「リアクトル31a」は、交流入力端子30aと、スイッチング素子33とスイッチング素子34との接続部の間に設けられ、また、「リアクトル31b」は、交流入力端子30bと、スイッチング素子35とスイッチング素子36との接続部の間に設けられており、これら「リアクトル31a」及び「リアクトル31b」は、交流電源とスイッチング素子33~36により構成される整流回路との間に設けられているといえることから、本件発明2でいう「リアクトル」に相当する。
したがって、本件発明2と甲1発明とは、「交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと」を備えるものである点で一致する。
(ウ)甲1発明における「前記一対の直流出力端子間には平滑コンデンサが設けられてなり」によれば、
甲1発明における「平滑コンデンサ」にあっても、スイッチング素子33~36により構成される整流回路から印加(出力)される電圧を平滑化するためのものであることは自明なことであるから、
本件発明2と甲1発明とは、「前記整流回路の出力側に接続され、前記整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと」を備えるものである点で一致する。
(エ)甲1発明における「・・当該電力変換回路中のスイッチング素子33~36のオンオフ動作を制御する制御部とを備え、・・・上アーム側の前記サブスイッチング素子は、下アーム側の前記メインスイッチング素子と交流の入力電圧の極性に応じて相補的にオンオフされることで同期整流動作が行われ、さらに、交流の入力電圧Vacの極性が正の半周期においては、メインスイッチング素子のうちのスイッチング素子36をオン状態とし、スイッチング素子34をPWM駆動してオン・オフのスイッチングを行い、また、極性が負の半周期においては、メインスイッチング素子のうちのスイッチング素子34をオン状態とし、スイッチング素子36をPWM駆動してオン・オフのスイッチングを行うようにしてなる・・」によれば、
(a)甲1発明における「制御部」は、整流回路を構成するスイッチング素子のスイッチング動作を制御するものである点で、本件発明2の「制御部」と共通する。
(b)そして、甲1発明における「同期整流動作」は、本件発明2でいう「同期整流制御」に相当し、甲1発明にあっても、「上アーム側の前記サブスイッチング素子は、下アーム側の前記メインスイッチング素子と交流の入力電圧の極性に応じて相補的にオンオフされる」ものであり、入力電圧の極性が切り替わるタイミングで相補的な、すなわち双方向にオンオフのスイッチングが行われるものであるといえる(甲第1号証の図4も参照)。
(c)さらに、甲1発明においても「交流の入力電圧Vacの極性が正の半周期においては、メインスイッチング素子のうちのスイッチング素子36をオン状態とし、スイッチング素子34をPWM駆動してオン・オフのスイッチングを行い、また、極性が負の半周期においては、メインスイッチング素子のうちのスイッチング素子34をオン状態とし、スイッチング素子36をPWM駆動してオン・オフのスイッチングを行う」ものであるところ、極性が正の半周期においてPWM駆動されるスイッチング素子34がオンとなった際に、リアクトル31a-スイッチング素子34-スイッチング素子36-リアクトル31bの経路で短絡電流が流れ、本件発明2でいう「回路短絡制御」が行われ、同様に、極性が負の半周期においてPWM駆動されるスイッチング素子36がオンになった際に、リアクトル31b-スイッチング素子36-スイッチング素子34-リアクトル31aの経路で短絡電流が流れ、本件発明2でいう「回路短絡制御」が行われるものと認められる。
以上のことから、本件発明2と甲1発明とは、「前記交流電源の電圧の極性が切り替わるゼロクロスのタイミングで所定の複数のスイッチング素子を双方向にスイッチングして負荷に電流を流す同期整流制御を実施すると共に、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを前記交流電源に短絡する回路短絡制御を繰り返し複数回実施する制御部と」を備えるものである点で共通するといえる。
ただし、同期整流制御を実施するために双方向にスイッチングされる「所定の複数のスイッチング素子」が、本件発明2では「第1のスイッチング素子」と「第2のスイッチング素子」の2つのスイッチング素子であるのに対し、甲1発明では、上アーム側のサブスイッチング素子と下アーム側のメインスイッチング素子の計4つのスイッチング素子である点で相違している。
(オ)そして、甲1発明における「電力変換装置」は、本件発明2と同様、交流電源から入力された交流電力を直流電力に変換し、さらに平滑コンデンサによって変換された直流電力を平滑化して出力するものであることから、本件発明2でいう「直流電源装置」に相当するということができるものである。
よって、本件発明2と甲1発明とは、
「第1の素子と第1のスイッチング素子の一端とが出力側の正極に接続され、前記第1の素子と第2の素子とが交流電源の一端側に接続され、前記第1のスイッチング素子の他端と第2のスイッチング素子の一端とが前記交流電源の他端側に接続され、前記第2の素子と前記第2のスイッチング素子の他端とが出力側の負極に接続されることによりブリッジ接続される整流回路と、
交流電源と前記整流回路との間に設けられるリアクトルと、
前記整流回路の出力側に接続され、前記整流回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記交流電源の電圧の極性が切り替わるゼロクロスのタイミングで所定の複数のスイッチング素子を双方向にスイッチングして負荷に電流を流す同期整流制御を実施すると共に、前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを前記交流電源に短絡する回路短絡制御を繰り返し複数回実施する制御部と、
を備える、
ことを特徴とする直流電源装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
ブリッジ接続される整流回路を構成する「第1の素子」及び「第2の素子」が、本件発明2ではそれぞれ「第1のダイオード」及び「第2のダイオード」であって、いずれも「ダイオード」であり、「第1のダイオードのカソード」が出力側の正極に接続され、「第1のダイオードのアノード」と「第2のダイオードのカソード」とが交流電源の一端側に接続され、「第2のダイオードのアノード」が出力側の負極に接続される旨特定するのに対し、甲1発明ではいずれもスイッチング素子である点。
[相違点2]
上記相違点1にも関連して、同期整流制御を実施するために双方向にスイッチングされる「所定の複数のスイッチング素子」が、本件発明2では「第1のスイッチング素子」と「第2のスイッチング素子」の2つのスイッチング素子であるのに対し、甲1発明では、上アーム側のサブスイッチング素子と下アーム側のメインスイッチング素子の計4つのスイッチング素子である点。
[相違点3]
制御部について、本件発明2では「交流全周期に亘って前記同期整流制御を実施する全波整流動作と、前記同期整流制御を実施すると共に、前記交流電源の所定位相にて部分的に前記回路短絡制御を実施する部分スイッチング動作と、交流全周期に亘って前記同期整流制御と前記回路短絡制御とを交互に実施する高速スイッチング動作、のうちいずれかの動作に切り替える」ものである旨特定するのに対し、甲1発明ではそのような特定を有していない点。
上記のとおり相違点があるから、本件発明2は、甲1号証に記載された発明ではない。
次に、まず上記相違点1について検討する。
特許異議申立人 井澤 幹が提示した甲第2号証(特許第5349636号公報)には、ダイオード5、ダイオード6、MOSFET3、及びMOSFET4がブリッジ接続された整流器21が記載(段落【0016】、図1を参照)され、また甲第3号証(特許第3695382号公報)にも同様のことが記載(段落【0080】、図12を参照)されている。
しかしながら、甲1発明は、甲第1号証の【請求項1】にも記載のように、ブリッジ接続される整流回路のうちの下アーム側の「スイッチング素子34」と「スイッチング素子36」とを「メインスイッチング素子」とし、上アーム側の「スイッチング素子33」と「スイッチング素子35」とを「サブスイッチング素子」として構成し、これを相補的にオンオフすることを前提とする発明、すなわち、ブリッジ接続される整流回路を構成する4つの素子がすべてスイッチング素子であることを前提とする発明であり、甲1発明に対して上記甲第2号証や甲第3号証に記載の技術事項を適用し、あえて「スイッチング素子33」及び「スイッチング素子34」に代えてそれぞれ「ダイオード」を用いるようにすべき積極的な動機付けがなく、むしろ阻害要因があるともいえる。
そして、甲1発明において、相違点1に係る構成とすることを導き出すことができない以上、相違点2に係る構成とすることも導き出すことはできない。
よって、上記相違点3について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明、甲第2号証及び甲第3号証にそれぞれ記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ.本件発明3、4、12について
本件訂正請求による訂正により、訂正後の請求項3、4、12はいずれも請求項2を直接または間接的に引用するものとなった。したがって、本件発明3、4、12は、本件発明2の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明2についての判断と同様の理由により、本件発明3、4、12は、甲1発明、甲第2号証及び甲第3号証にそれぞれ記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ.本件発明10について
特許異議申立人 井澤 幹が提示した甲第4号証(特許第5743995号公報)には、段落【0045】に「・・半導体スイッチ3、4、5、6、22は、GaN(窒化ガリウム)、SiC(シリコンカーバイト)、ダイヤモンド等のワイドバンドギャップ半導体で構成されたものとしてもよい。」と記載(なお、かかる記載中、下線を付した「5、6」は、「16、17」の誤記であると解される。)され、ブリッジ接続された整流回路を構成する半導体スイッチ、つまりスイッチング素子をSiCなどのワイドバンドギャップ半導体で構成することが記載されているにすぎない。
そして、本件訂正請求による訂正により、訂正後の請求項10は請求項2を引用するものとなり、本件発明10は、本件発明2の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものとなったことから、上記本件発明2についての判断と同様の理由により、本件発明10は、甲1発明、甲第2号証ないし甲第4号証にそれぞれ記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ.本件発明11について
本件訂正請求による訂正により、訂正後の請求項11は請求項2を引用するものとなった。したがって、少なくとも上記[相違点1]ないし[相違点3]があるから、本件発明11は、甲第1号証に記載された発明ではない。また、本件発明2は、本件発明2の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明2についての判断と同様の理由により、本件発明11は、甲1発明、甲第2号証及び甲第3号証にそれぞれ記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
第4 むすび
以上のとおり、本件発明2ないし4、10ないし12に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に本件発明2ないし4、10ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件の請求項1に係る特許については訂正により削除され、本件特許の請求項1に対して、特許異議申立人 角田 朗と井澤 幹がした特許異議申立てについてはその対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2019-700342