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特許訂正審判

2020-390032

マウント装置およびアクセサリ

審判番号
2020-390032
法域
特許
審判種別
訂正審判(訂正の審決)
出願番号
特願2018-103888外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年04月30日
審決日
2020年08月20日
公報発行日
2020年11月27日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P141 .852-Y (G03B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法126条1項特許法126条5項特許法126条6項特許法126条7項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6611863号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】
特許第6611863号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項15~28について訂正することを認める。

理由

目次 ▾ 7項目
【理 由】

第1 手続の経緯

特願2018-103888号は、平成30年5月30日の特許出願であるところ、請求項1から28までに係る発明について、令和元年11月8日に特許権の設定の登録(特許第6611863号、以下「本件特許」という。)がされ、その後、令和2年4月30日に、本件訂正審判が請求されたものである。

第2 請求の趣旨及び訂正の内容

本件訂正審判の請求の趣旨は、「特許第6611863号の特許請求の範囲を本審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項15~28について訂正することを認める、との審決を求める。」である。

そして、本件訂正審判における訂正事項(以下、当該訂正事項による訂正を「本件訂正」という。)は、以下のとおりである。なお、下線は当請求人が付したものであり、訂正箇所を表す。

(訂正事項1)

特許請求の範囲の【請求項15】に、

「前記端子保持部は、少なくとも第1の段と、前記アクセサリが前記マウント装置に装着された状態で当該第1の段よりも前記マウント装置側に突出した第2の段を有し」とあるのを、

「前記端子保持部は、少なくとも第1の段と、前記第1の段とは異なる第2の段を有し、前記アクセサリが前記マウント装置に装着された状態で前記第2の段よりも前記第1の段は前記マウント装置側に突出しており」に訂正する。

なお、本件訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項15~28について請求されたものである。

第3 当合議体の判断

以下、訂正事項1に係る請求項15について、本件訂正前及び本件訂正後のものを、それぞれ、「訂正前請求項15」及び「訂正後請求項15」といい、訂正前請求項15に係る発明及び訂正後請求項15に係る発明を、それぞれ、「訂正前発明15」及び「訂正後発明」という。

1 本件特許について

(1)発明の詳細な説明の記載

本件特許の発明の詳細な説明には、図面とともに、概略、以下の記載がある。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、他の機器との電気的な接続が可能な端子をマウントに備えた、マウント装置およびアクセサリに関する。」
「【背景技術】
【0002】
従来、撮像装置に着脱可能なアクセサリ(カメラアクセサリ)は、撮像装置に装着された状態で、該撮像装置から電源の供給を受ける、または、該撮像装置との間で種々の命令やデータ等の通信を行うことが知られている。一般的に、上述したような電源供給や通信を行うために、撮像装置とアクセサリとのマウントと称する装着部には、互いに接触することで電気的に接続される複数の端子が設けられる。そして、これらの複数の端子のそれぞれが、異なる通信系統で独立した通信を行う場合もある。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、撮像装置およびアクセサリの高機能化によって、両者の間で送受信するデータ量は増加するため、この場合、撮像装置およびアクセサリにおける端子の数を増やすのが望ましい。
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の技術のように、バヨネット結合方式などを採用した撮像装置およびアクセサリでは、端子数の増加に起因して、撮像装置に対するアクセサリの着脱による端子同士の摩耗が増加してしまう。この場合、摩耗によって各端子の絶縁抵抗の減少や、端子間のショート(短絡)、または、各端子の接触抵抗の増加など、端子同士の電気的な接続に係る信頼性が低下してしまう。
【0007】
また、上述した特許文献1に記載の技術のように、バヨネット結合方式などを採用し、装着検知用の端子を設ける場合は、対応する端子同士の電気的な接続が確立していない状態で、アクセサリの装着が誤検知されることを防止するのが好ましい。
【0008】
本発明の目的は、電気的な接続に係る信頼性の低下を抑制しつつ、マウント装置に対するアクセサリの装着に関する誤検知を防止することである。」
「【0029】
以下、カメラマウントAおよびレンズマウントBの双方に共通する各端子の機能について説明する。VDD端子1001、2001は、主に通信制御に用いられる通信電力としての通信制御用電源(VDD)をカメラ本体100からカメラアクセサリ(例えば第1の交換レンズ200)に電源供給する端子である。なお、第1の交換レンズ200に対して供給する電源の電圧は5.0Vとする。」
「【0033】
MIF端子1005、2005は、カメラ本体100にカメラアクセサリ(例えば第1の交換レンズ200)が装着されたことを検出する端子である。カメラ制御部101は、MIF端子が示す電圧のレベルを検出することで、カメラ本体100にカメラアクセサリが装着されたことや離脱されたことを検出する。そして、カメラ制御部101は、当該検出により、例えばカメラアクセサリの装着を検出した後に、電源系端子への電源供給を開始し、カメラ本体100とカメラアクセサリ間での通信を開始するように制御する。」
「【0043】
(マウント部1の構造)
次に、図4、5を参照して、カメラマウントAおよびレンズマウントBを含めた、マウント部1の構造について説明する。図4は、本発明の実施形態に係るカメラマウントAおよびレンズマウントBの構成を例示的に説明する図である。図4(a)は、カメラ本体100に設けられたカメラマウントAの正面図、図4(b)は、第1の交換レンズ200に設けられたレンズマウントBの正面図を示す。図5は、本発明の実施形態に係るカメラマウントAとレンズマウントBとの相対的な回転による各端子同士の接続状態を例示的に説明する図である。図5(a)は、カメラマウントAとレンズマウントBとの装着開始状態、図5(b)はカメラマウントAとレンズマウントBとの装着遷移状態、図5(c)はカメラマウントAとレンズマウントBとの装着完了状態を示す。なお、図5の各図は、カメラマウントAおよびレンズマウントBの光軸と直交する方向から各マウントに設けられた端子を見た状態を示している。ここで、上述した光軸は、カメラマウントAおよびレンズマウントBの開口部分の中心を通る中心軸と平行である。」
「【0049】
本実施形態のマウント部1は、図4、図5の各図に図示するように、光軸方向に段差が付いた2段構成のマウントとなっている。図5(a)に図示するように、カメラ本体100のカメラマウントAにおいては、被写体側に突出した段をカメラマウント上段(第2の段)、撮像素子側の段をカメラマウント下段(第1の段)と称する。すなわち、カメラマウント上段の方がカメラマウント下段よりも、光軸方向にいて被写体側(またはカメラアクセサリ側)に突出している。
【0050】
また、図5(b)に図示するように、第1の交換レンズ200のレンズマウントBにおいては、被写体側に窪んだ段をレンズマウント下段(第2の段)、カメラマウントに装着された際に撮像素子側に突出した段をレンズマウント上段(第1の段)と称する。すなわち、カメラマウントにレンズマウントが装着された状態で、レンズマウント上段の方がレンズマウント下段よりも、光軸方向にいて撮像装置側に突出している。なお、カメラマウント上段の端子はレンズマウント下段の端子のみと接触可能であって、カメラマウント下段の端子はレンズマウント上段の端子とのみ接触するような構造となっている。また、カメラマウントAにおいては、レンズマウントBとの相対的な回転方向(アクセサリの装着方向)の手前側にカメラマウント下段が位置し、奥側にカメラマウント上段が位置する。また、レンズマウントBにおいては、カメラマウントAとの相対的な回転方向の手前側にレンズマウント上段が位置し、奥側にレンズマウント下段が位置する。」
「【0058】
バヨネット結合方式のように、カメラマウントとレンズマウントとを相対的に回転させて、撮像装置とカメラアクセサリとの着脱を行う場合、着脱の際に各マウントに設けられている端子同士が摺動する。一般的に、光軸方向における同一面では、カメラマウント側では、レンズ装着方向の最も奥側に存在する接点ピンについては、撮像装置へのカメラアクセサリの着脱の際に、対応しないアクセサリ側の接点面と摺動することはない。また、光軸方向の同一面において、レンズマウント側では、レンズ装着方向の最も手前側に存在する接点面については、撮像装置へのカメラアクセサリの着脱の際に、対応しないカメラ側の接点ピンと摺動することはない。すなわち、カメラマウントにおいて、他の接点ピン(端子)よりも奥に存在する接点ピン(端子)は、レンズマウントに設けられた接点面(端子)のうち、撮像装置へのカメラアクセサリの装着した状態で互いに接触する接点面以外の接点面とは慴動(接触)しない。また、レンズマウントにおいて、他の接点面(端子)よりも手前に存在する接点面(端子)は、カメラマウントに設けられた接点ピン(端子)のうち、撮像装置へのカメラアクセサリの装着した状態で互いに接触する接点ピン以外の接点ピンとは慴動(接触)しない。
【0059】
しかしながら、これらの端子以外の他の端子については、カメラマウントに対するレンズマウントの着脱回数が増えるほど、端子が摩耗してしまう。特に、カメラマウントの端子(接点ピン)は、光軸と平行な方向に進退(突出および引き込み)が可能な可動式のピンであって、レンズマウントの端子(接点面)に対して先端の1点で摺動するので、摺動に対する接点ピンの耐久性を向上させる必要がある。
【0060】
上述した問題は、光軸と直交する同一面において一列に配された端子の数が増えるほど顕著であり、接点ピンと接点面の摺動回数は増加する。そして、接点ピンおよび接点面の摩耗により、端子の接触インピーダンスが上昇するため電圧降下が大きくなり、電気回路の動作許容電圧範囲を下回ることで、例えば交換レンズの誤動作が発生する虞がある。
【0061】
そこで、本実施形態では、端子同士の摺動回数を低減するために、光軸方向において端子が保持される位置を上段および下段の2段に異ならせ、上段および下段側でカメラ側の接点ピンと交換レンズ側の接点面との接触高さを異ならせる。この構成により、端子を保持する段ごとに、端子同士の摩耗を低減することができる。
【0062】
さらに、本実施形態では、マウントの上段と下段とで保持する端子数をそれぞれ異ならせているため、例えば、複数の端子の中で重要度が高い端子を、端子数が少ない側に配することで、重要な端子の摩耗を低減することができる。具体的に、端子数の少ないカメラマウント上段およびレンズマウント下段に、接触インピーダンスの上昇を極力抑えたい信号の端子である電源系端子(VDD端子、VBAT端子、PGND端子)を配置する。一方、カメラマウント下段、及び、レンズマウント上段には、インピーダンス上昇による影響を受けにくい(電源系端子と比較して)、主に通信を行うための端子が配置される。この構成により、アクセサリに対して安定した電源供給が可能であって、カメラアクセサリの各動作(例えばフォーカス制御など)を安定化させることに寄与する。」
「【0085】
次に、図5の各図に図示するように、本実施形態のマウント部1において、カメラマウント下段におけるレンズ装着方向の最も奥側にMIF端子1005が配され、レンズマウント上段におけるレンズ装着方向の最も奥側にMIF端子2005を配する。この構成により、カメラマウントA側に対するレンズマウントBの装着状態を検出する端子であって、カメラ、カメラアクセサリ間の通信を開始および終了する上でのトリガーとなる重要な端子であるMIF端子の摩耗を低減することができる。」
「【0258】
以上説明した問題に対して本実施形態では、カメラマウントAおよびレンズマウントBにおいて、MIF端子1005、2005は、それぞれカメラマウント下段およびレンズマウント上段におけるレンズ装着方向の奥側に配されている。すなわち、本実施形態では、マウント同士の着脱に際して、カメラマウントA側のMIF端子1005がレンズマウントB側のMIF端子2005を除く他の端子の何れとも摺動しない位置に各端子が配される。この構成により、カメラ本体100側において、カメラアクセサリの装着が誤検出されることを防止できる。また、この構成により、電源系端子同士、およびグランド端子同士が確実に接続された状態で、カメラ本体100側からカメラアクセサリ側に対して電源の供給が行われる。したがって、本実施形態のカメラ本体100および各カメラアクセサリは、カメラ本体100およびカメラアクセサリの誤動作や不具合を低減することができる。」

(2)図面の記載

図5は以下のものである。

2 訂正事項1に係る訂正前請求項15、及び訂正後請求項15の記載

(1)訂正前請求項15の記載は、本件特許の特許請求の範囲の請求項15に記載されたとおりのものであって、以下のとおりである。

「【請求項15】
第1のマウントを備えるマウント装置に着脱できるアクセサリであって、
前記マウント装置の前記第1のマウントと結合が可能な第2のマウントは、
当該第2のマウントの周方向に沿って配され、前記マウント装置に設けられた対応する端子との電気的な接続に用いる複数の端子と、
続きを表示(全11行)
前記複数の端子を保持する端子保持部と、
を有し、
前記複数の端子のそれぞれは、前記マウント装置において前記第1のマウントの周方向に沿って配された複数の端子と電気的に接続でき、
前記端子保持部は、前記第2のマウントの中心軸と平行な方向に段差を備え、
前記複数の端子は、前記アクセサリが前記マウント装置に装着されたことを検出するのに用いる第1の端子と、前記マウント装置に前記アクセサリが装着された状態で、前記マウント装置から通信用の電源を受けるための第2の端子と、を備え、
前記端子保持部は、少なくとも第1の段と、前記アクセサリが前記マウント装置に装着された状態で当該第1の段よりも前記マウント装置側に突出した第2の段を有し、前記第1の端子は、前記端子保持部の前記第1の段において、前記複数の端子のうちの他の端子よりも前記第2の段の近くに配されており、
前記第2の端子は、前記端子保持部の前記第2の段に配されていることを特徴とするアクセサリ。」

(2)訂正後請求項15の記載は、次のとおりである。

「第1のマウントを備えるマウント装置に着脱できるアクセサリであって、
前記マウント装置の前記第1のマウントと結合が可能な第2のマウントは、
当該第2のマウントの周方向に沿って配され、前記マウント装置に設けられた対応する端子との電気的な接続に用いる複数の端子と、
前記複数の端子を保持する端子保持部と、を有し、
前記複数の端子のそれぞれは、前記マウント装置において前記第1のマウントの周方向に沿って配された複数の端子と電気的に接続でき、
前記端子保持部は、前記第2のマウントの中心軸と平行な方向に段差を備え、
前記複数の端子は、前記アクセサリが前記マウント装置に装着されたことを検出するのに用いる第1の端子と、前記マウント装置に前記アクセサリが装着された状態で、前記マウント装置から通信用の電源を受けるための第2の端子と、を備え、
前記端子保持部は、少なくとも第1の段と、前記第1の段とは異なる第2の段を有し、前記アクセサリが前記マウント装置に装着された状態で前記第2の段よりも前記第1の段は前記マウント装置側に突出しており、前記第1の端子は、前記端子保持部の前記第1の段において、前記複数の端子のうちの他の端子よりも前記第2の段の近くに配されており、
前記第2の端子は、前記端子保持部の前記第2の段に配されていることを特徴とするアクセサリ。」

3 訂正事項1に対する訂正要件の判断

(1)特許法第126条第1項ただし書について

請求人は、審判請求書において、訂正の目的が「誤記又は誤訳の訂正」である旨主張しているから、まずは、訂正事項1が誤記の訂正を目的とするものといえるかどうか検討する。

ここで「誤記」というためには、訂正前の記載が誤りで訂正後の記載が正しいことが、本件特許の明細書、特許請求の範囲若しくは図面の記載又は当業者の技術常識などから明らかで、当業者であればそのことに気付いて訂正後の趣旨に理解するのが当然であるという場合でなければならないものと解される。

そこで、当審は、(i)本件特許の明細書(以下「本件明細書」という。)、特許請求の範囲(以下「本件特許請求の範囲」という。)及び図面(以下「本件図面」という。)に接した当業者が、訂正前請求項15の記載になんらかの誤りがあることに気付くか、(ii)仮に(i)で気付くならば、当業者は、その誤りが、訂正前請求項15のうち「前記アクセサリが前記マウント装置に装着された状態で当該第1の段よりも前記マウント装置側に突出した第2の段を有し」にあることを認識するか、(iii)仮に(ii)で認識するならば、当業者は、その誤りを正したものの意味合いがどのようなものであると認識するか、(iv)仮に(iii)で認識するならば、その認識された意味合いが訂正後請求項15の意味合いと一致するか、の順で検討を行うこととする。

ア (i)訂正前請求項15における誤記の存在の認識について

まず、本件明細書、本件特許請求の範囲及び本件図面に接した当業者が、訂正前請求項15の記載に、なんらかの誤記があることに気付くかどうか検討する。

(ア)

本件明細書には、「撮像装置およびアクセサリでは、端子数の増加に起因して、撮像装置に対するアクセサリの着脱による端子同士の摩耗が増加」し、その結果「端子同士の電気的な接続に係る信頼性が低下」(【0006】)することを課題とし、その課題を解決する手段に関して、「端子同士の摺動回数を低減するために、光軸方向において端子が保持される位置を上段および下段の2段に異ならせ、上段および下段側でカメラ側の接点ピンと交換レンズ側の接点面との接触高さを異ならせる。この構成により、端子を保持する段ごとに、端子同士の摩耗を低減する」(【0061】)と共に、「カメラマウントAおよびレンズマウントBにおいて、MIF端子1005、2005は、それぞれカメラマウント下段およびレンズマウント上段におけるレンズ装着方向の奥側に配されている。すなわち、本実施形態では、マウント同士の着脱に際して、カメラマウントA側のMIF端子1005がレンズマウントB側のMIF端子2005を除く他の端子の何れとも摺動しない位置に各端子が配される。この構成により、カメラ本体100側において、カメラアクセサリの装着が誤検出されることを防止できる。」(【0258】)との技術的事項が記載されている。

このように、本件明細書には、「カメラマウントA側のMIF端子1005がレンズマウントB側のMIF端子2005を除く他の端子の何れとも摺動しない位置に各端子が配される。」ことが記載されているところ、この記載は、上記の課題を解決するという観点から首肯できるものであるし、加えて、図5における各端子の配置関係(特に、カメラマウントA側のMIF端子が、カメラマウント下段にあり、かつ、他の端子よりもカメラマウント上段の近くに配されており、レンズマウントB側の端子は、そのようなカメラマウントA側の端子と整合する、すなわち、レンズマウントB側のMIF端子は、レンズマウント上段にあり、かつ、他の端子よりもレンズマウント下段の近くに配されていること。)とも整合している。そして、図5における各端子の配置関係と本件明細書の記載から理解される各端子の配置関係との間に、不整合があるとは解されない。

(イ)

しかし、当業者であれば、以下のとおり、訂正前請求項15に記載された各端子の配置関係が、図5における各端子の配置関係と整合していないことを認識するとともに、その結果、訂正前請求項15は、「カメラマウントA側のMIF端子1005がレンズマウントB側のMIF端子2005を除く他の端子の何れとも摺動しない位置に各端子が配される。」ものではないことも認識する。

a

まず、訂正前請求項15に記載される各端子の配置関係と本件明細書及び図5との対応関係についてみると、訂正前請求項15の「アクセサリ」に備えられると解される「第2のマウント」については、「アクセサリ」の意味に照らせば、本件明細書及び図5の(「カメラマウントA」ではなく)「レンズマウントB」に対応することが明らかであり、そうである以上、訂正前請求項15の「マウント装置」に備えられる「第1のマウント」は、本件明細書及び図5の「カメラマウントA」に対応する。

そして、訂正前請求項15に記載される「前記アクセサリが前記マウント装置に装着されたことを検出するのに用いる第1の端子」は、本件明細書の【0033】の記載によれば、「MIF端子」であり、これが「アクセサリ」に備わっているから、本件明細書及び図5の「レンズマウントBのMIF端子」に対応する。

また、訂正前請求項15に記載される「前記マウント装置に前記アクセサリが装着された状態で、前記マウント装置から通信用の電源を受けるための第2の端子」は、本件明細書の【0029】の記載によれば、「VDD端子」であり、これが「アクセサリ」に備わっているから、本件明細書及び図5の「レンズマウントBのMIF端子」に対応する。

さらに、訂正前請求項15に記載される「前記アクセサリが前記マウント装置に装着された状態で当該第1の段よりも前記マウント装置側に突出した第2の段を有し、」の「前記マウント装置側」とは、図5でいう「撮像素子側」に対応する。

b

ここで、以下の説明のために、訂正前請求項15に記載される「第1の端子」(レンズマウントBのMIF端子)が配される段である「第1の段」を「通信系端子段」といい、「第2の端子」(レンズマウントBのVDD端子)が配される段である「第2の段」を「電源系端子段」ということとする。

c

以上を踏まえ、訂正前請求項15の「前記端子保持部(審決注:「第2のマウント」(レンズマウントB)に備わっている。)は、少なくとも第1の段と、前記アクセサリが前記マウント装置に装着された状態で当該第1の段よりも前記マウント装置側に突出した第2の段を有し、前記第1の端子は、前記端子保持部の前記第1の段において、前記複数の端子のうちの他の端子よりも前記第2の段の近くに配されており」という記載をみると、訂正前請求項15の記載では、レンズマウントB(第2のマウント)は、少なくとも、通信系端子段(第1の段)と、電源系端子段(第2の段)を有し、電源系端子段(第2の段)は、通信系端子段(第1の段)よりも、撮像素子側に突出した段ということになる。さらに、訂正前請求項15の記載では、レンズマウントBのMIF端子(第1の端子)は、通信系端子段(第1の段)において、他の端子よりも電源系端子段(第2の段)の近くに配されていることになる。

d

このように、訂正前請求項15の記載によれば、レンズマウントBでは、VDD端子が配される電源系端子段(第2の段)が、MIF端子が配される通信系端子段(第1の段)よりも、撮像素子側に突出した段となっており、MIF端子が、他の端子よりも電源系端子段(第2の段)の近くに配置されているところ、この配置関係と図5の配置関係とを対比すると、両者は、MIF端子が、他の端子よりも電源系端子段の近くに配置されているという点では一致するが、通信系端子段と電源系端子段の突出の有無につき、訂正前請求項15では、電源系端子段が突出しているのに対し、図5では、通信系端子段が突出している点で異なる。

そして、図5においては、上記(ア)で説示したとおり、カメラマウントA側のMIF端子が、カメラマウント下段にあり、かつ、他の端子よりもカメラマウント上段の近くに配されており、レンズマウントB側の端子は、そのようなカメラマウントA側の端子と整合する、すなわち、レンズマウントB側のMIF端子は、レンズマウント上段にあり、かつ、他の端子よりもレンズマウント下段の近くに配されていることにより、「撮像装置およびアクセサリでは、端子数の増加に起因して、撮像装置に対するアクセサリの着脱による端子同士の摩耗が増加」し、その結果、「カメラマウントA側のMIF端子」の「端子同士の電気的な接続に係る信頼性が低下」するという課題を解決していると解されるところ、訂正前請求項15に記載された発明では、そのような配置となっていないのであるから、かかる課題を解決できるとは言い難いことになる。

以上によれば、当業者は、訂正前請求項15に記載された各端子の配置関係が、図5における各端子の配置関係と整合していないことを認識するとともに、その結果、訂正前請求項15は、「カメラマウントA側のMIF端子1005がレンズマウントB側のMIF端子2005を除く他の端子の何れとも摺動しない位置に各端子が配される。」ものではないことも認識する。

(ウ)

そして、上記(ア)で説示したとおり、図5における各端子の配置関係と本件明細書の記載から理解される各端子の配置関係との間に不整合があるとは解されないのであるから、本件明細書、本件特許請求の範囲及び本件図面の記載を通じて、訂正前請求項15の記載のみが、他の記載と整合がとれていないことになる。

したがって、本件明細書に接した当業者であれば、訂正前請求項15の記載には、なんらかの誤記があることに気付くものである。

イ (ii)訂正前請求項15における誤記の部分の認識について

次に上記アのとおり、訂正前請求項15における誤記の存在を認識した当業者が、その誤記が訂正前請求項15の「前記アクセサリが前記マウント装置に装着された状態で当該第1の段よりも前記マウント装置側に突出した第2の段を有し」の記載中に存在することが分かるかどうかについて、検討する。

上記ア(イ)dで示したとおり、レンズマウントBのMIF端子の配置関係について、訂正前請求項15の記載と、図5の記載とは、通信系端子段と電源系端子段の突出の有無につき、訂正前請求項15では、電源系端子段(第2の段)が突出しているのに対し、図5では、通信系端子段(第1の段)が突出している点で異なるから、この点に誤記があることが分かる。

したがって、訂正前請求項15における「前記アクセサリが前記マウント装置に装着された状態で当該第1の段よりも前記マウント装置側に突出した第2の段を有し」に誤記があることが分かる。

ウ (iii)訂正前請求項15における正しい意味合いの認識について

本件図面の図5に示されている「レンズマウントB」と「カメラマウントA」の構成であれば、「レンズマウントB」の着脱に際し、「カメラマウントA」の「MIF端子」は、「レンズマウントB」の「通信系端子段」(第1の段)の「MIF端子以外の端子」を除く他の端子の何れとも摺動しないものであるから、訂正前請求項15において、「第1の端子(MIF端子)」を備える「第1の段(通信系端子段)」は、「第2の段(電源系端子段)よりも、マウント装置側(撮像素子側)に突出しているという記載が正しいものと理解されるものである。

エ (iv)訂正前請求項15における正しい記載と訂正後請求項15の記載との比較

そして、訂正後請求項15の「第1の段」及び「第2の段」の記載は、「前記端子保持部は、少なくとも第1の段と、前記第1の段とは異なる第2の段を有し、前記アクセサリが前記マウント装置に装着された状態で前記第2の段よりも前記第1の段は前記マウント装置側に突出しており」となっており、この記載は、上記ウで示した訂正前請求項15における正しい意味合いである「第1の段(通信系端子段)」は、「第2の段(電源系端子段)よりも、マウント装置側(撮像素子側)に突出しているという意味合いに整合するものとなっている。

オ 小活

以上によれば、訂正前の「前記端子保持部は、少なくとも第1の段と、前記アクセサリが前記マウント装置に装着された状態で当該第1の段よりも前記マウント装置側に突出した第2の段を有し」の記載が誤りで訂正後の「前記端子保持部は、少なくとも第1の段と、前記第1の段とは異なる第2の段を有し、前記アクセサリが前記マウント装置に装着された状態で前記第2の段よりも前記第1の段は前記マウント装置側に突出しており」の記載が正しいことが、本件特許の明細書、特許請求の範囲若しくは図面の記載又は当業者の技術常識などから明らかで、当業者であればそのことに気付いて訂正後の趣旨に理解するのが当然であるといえる。

よって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。

(2)特許法第126条第5項について

請求項15の訂正について、上記(1)で検討したように、訂正事項1は、少なくとも本件図面の図5及び本件明細書の図5に関する説明に基づいたものであるところ、本件明細書及び本件図面の請求項15に係る説明は願書に最初に添付された明細書及び図面より補正されていないから、訂正事項1は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものといえる。

また、請求項16から28は、請求項15の記載を引用して記載されており、前記請求項15についての訂正により、請求項16から28についても訂正されることとなるところ、これら請求項についての訂正も、同様である。

したがって、訂正事項1は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、訂正事項1は、特許法第126条第5項の規定に適合する。

(3)特許法第126条第6項について

上記(1)のとおり、訂正事項1は、誤記の訂正を目的とする訂正であって、本件特許の明細書及び図面の記載に接した当業者ならば、訂正前発明15の意味合いを訂正後発明15の意味合いのとおり理解したものである。

したがって、請求項15についての訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張するものではなく、かつ、実質上特許請求の範囲を変更するものでもない。

また、請求項16から28は、請求項15の記載を引用して記載されており、前記請求項15についての訂正により、請求項16から28についても訂正されることとなるところ、請求項16から28についての訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張するものではなく、かつ、実質上特許請求の範囲を変更するものでもないことは、明らかである。

したがって、訂正事項1は、特許法第126条第6項の規定に適合する。

(4)特許法第126条第7項について

上記(3)のとおり、本件特許の明細書及び図面の記載に接した当業者ならば、訂正前発明15の意味合いを訂正後発明15の意味合いのとおり理解したものであり、そのような訂正前発明15が特許されている以上、それと同じ意味合いをもつ訂正後発明15が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しないから、訂正事項1は、特許法第126条第7項の規定に適合する。

第4 むすび

以上のとおりであるから、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第5項、第6項及び第7項の規定に適合する。

よって、結論のとおり審決する。

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2020-390032

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