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特許拒絶査定不服審判

2020-016410

貯蔵庫用カメラ装置及びこれを備えた貯蔵庫

審判番号
2020-016410
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-243677外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年11月30日
審決日
2021年07月12日
公報発行日
2021年10月29日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (G03B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2017-243677号「貯蔵庫用カメラ装置及びこれを備えた貯蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成30年4月19日出願公開、特開2018-63111号〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 13項目
【理 由】

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、平成25年8月28日に出願した特願2013-176759号(以下「原出願」という。)の一部を平成29年12月20日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

平成29年12月20日  :上申書の提出
平成30年 4月 2日  :上申書、手続補正書の提出
平成31年 1月18日付け:拒絶理由通知
平成31年 2月20日  :意見書、手続補正書の提出
令和元年 6月27日付け:拒絶理由(最後)通知
令和元年 8月26日  :意見書、手続補正書の提出
令和2年 1月14日付け:拒絶理由(最後)通知
令和2年 3月16日  :意見書、手続補正書の提出
令和2年 9月 2日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和2年11月30日  :審判請求書の提出

第2 本願発明

令和2年3月16日になされた手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
貯蔵庫の扉の開放端側にも載置可能な貯蔵庫用カメラ装置であって、
ケースと、
前記ケースの内部に収容され貯蔵庫内を撮像する撮像手段と、
前記ケースの内部に収容される電池と、を具備し、
前記電池は、ケースにおける下部に配置され、
前記ケースの中心に対して装置全体の重心が異なる貯蔵庫用カメラ装置。」

第3 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶理由は、次のとおりのものである。

本願発明は、本願の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて、その原出願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2003-207258号公報
引用文献2:特開2001-294308号公報
引用文献3:特開2004-179850号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1の記載

(1)引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、冷蔵庫に関し、詳しくは、冷蔵室内にカメラを設置した冷蔵庫に関する。」
イ 「【0034】(第1の実施の形態)図1は、本発明を適用した第1の実施の形態における冷蔵庫の概略構成を示す上面図であり、図2は、冷蔵庫に設けられているカメラの概略図であり、図3は、制御部の構成を示すブロック図である。
【0035】ここで冷蔵庫1そのものは、通常のものであり、冷蔵庫のキャビネット11と、キャビネット11内部の冷蔵室13と、キャビネット11にヒンジ(不図示)によって開閉自在に取り付けられた冷蔵室扉15とからなる。
・・・
【0037】ここで、第1カメラ31および第2カメラ33は、いずれもCCDカメラと称されるものであり、図2に示すように、CCD撮像素子からなるカメラ本体301と、このカメラ本体301に取り付けられているレンズ303と、カメラ本体301およびレンズ303を収納するカメラケース305と、レンズ303の前面取り付けられたヒータ309とからなる。カメラケース305は、レンズ303の前面がアクリル板などの透明板307となっており、撮影はこの透明板307を通して行われる。なお、本実施の形態においては、この透明板307を含めてレンズ部とする。
【0038】第1カメラ31は、冷蔵室13内に外側を向いて設けられており、冷蔵室扉15が所定の開き角度となったときに、冷蔵室扉15内側のドアポケット16の撮影を行う。
【0039】第2カメラ33は、冷蔵室扉15に冷蔵室13の方向を向いて設けられており、冷蔵室扉15が所定の開き角度となったときに、冷蔵室13内の撮影を行う。」

ウ 図1、2は次のとおりである。

(2)引用発明

したがって、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「キャビネットと、キャビネット内部の冷蔵室と、キャビネットにヒンジによって開閉自在に取り付けられた冷蔵室扉とからなる冷蔵庫(【0035】)の冷蔵室内に設置するカメラ(【0001】)であって、
前記カメラは、CCD撮像素子からなるカメラ本体と、レンズと、カメラ本体及びレンズを収納するカメラケースと、ヒータとからなり(【0037】)、
前記冷蔵室扉に前記冷蔵室の方向を向いて設置されるカメラ(【0039】)。」

2 引用文献2の記載

(1)引用文献2には、以下の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ドアや蓋の付いた収納庫または引出状の物品収納庫およびそれを利用した物品収納情報取得装置に関するものである。」
イ 「【0035】(実施の形態1)図1は本発明による物品収納庫を冷蔵庫に適用した場合の第1の実施の形態における全体構成を示す斜視図で、図1(A)は冷蔵庫のドアを閉じた状態、図1(B)はドアを開いた状態を示す。図1(A)、(B)において、冷蔵庫10は食品を収納する冷蔵庫本体11とドア12および引出し13、14から構成されている。冷蔵庫の構成としては種々の構成があるが、例えば、ドア12内に冷蔵室15およびチルド室16が形成され、引出し13は野菜室17、引出し14は冷凍室18を構成している。ドア12の内側にはドアポケット19が設けられている。
【0036】冷蔵庫本体11の冷蔵室15およびチルド室16、野菜室17および冷凍室18のそれぞれの入り口付近には小型カメラ23、24、25、26が取り付けられており、冷蔵庫本体11の冷蔵室15およびチルド室16、野菜室17および冷凍室18に収納されている食品などの物品の収納状況を撮影可能に配されている。同様に、ドア12のドアポケット19には小型カメラ27が取り付けられ、ドアポケット19の食品在庫状況を撮影可能に配されている。
【0037】小型カメラ23~26および27が撮影した庫内のイメージ情報は、冷蔵庫本体11またはドア12の外壁に設けられた情報蓄積装置31に供給される。情報蓄積装置31はアンテナ32、イメージメモリ33およびイメージ送信部34を有しており、小型カメラ23~27から受けた庫内のイメージ情報をイメージメモリ33に蓄積し、イメージ送信部34で信号処理してアンテナ32を介して無線データとして外部に送信する。なお、アンテナ32の代わりにLAN回線や公衆電話回線など有線で送信しても良い。」

ウ 図1は次のとおりである。

エ 上記イの記載を踏まえて、上記ウの図1を見ると、小型カメラ27は、冷蔵庫のドア12の開放端側に配されていることが見てとれる。

(2)引用文献2に記載された技術的事項

したがって、引用文献2には、以下の事項(以下「引用文献2に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。

「冷蔵庫のドアのドアポケットであって(【0035】、【0036】)、前記ドアの開放端側に小型カメラが配されること(上記「(1)」「エ」)。」

3 引用文献3の記載

(1)引用文献3には、以下の事項が記載されている。

ア 「【0001】【発明の属する技術分野】本発明はカメラに関するものである。」

イ 「【0013】本実施の形態では、前記ケース12はその細長形状の長さ方向をほぼ上下方向に延在させてデスクや棚などの平面上に載置できるように載置面3606を有している。詳細には、前記幅方向中心線L1を鉛直方向に延在させるのではなく、前記ケース12の長さ方向と交叉する前記画面垂直方向を鉛直方向に延在させた状態でデスクや棚などの平面上に載置できるように載置面3606が形成されている。この載置面3606は前記画面垂直線L2が通るように前記開閉蓋36の外面に形成されている。撮影動作を行なわせるためのシャッターボタン24は、ケース12の右側面の上端でケース12の円筒面状の上面との境の部分に配設されている。なお、このシャッターボタン24は防水機能を備えており、このシャッターボタン24部分からケース12の内部に水が浸入しないように構成されている。前記シャターボタン24の出没方向の延長線L3は、前記幅方向中心線L1に対して所定の角度θ2で傾斜して延在している。本実施の形態では、前記角度θ2は、30度に設定されているが、この角度θ2は25度以上35度以下が好ましい。」

ウ 「【0024】また、前記カメラ10は、全体の重心Gが前記画面垂直線L2上で、かつ、前記ケース12の長さ方向の長さの1/2よりも下方の箇所に位置するように構成されているため、カメラ10の載置面3606をデスクや棚などの平面上におくと、カメラ10に作用する重力は重心Gから画面垂直線L2に沿って鉛直方向の下向きに作用する。したがって、カメラ10を、前記画面垂直線L2が前記平面に直交した状態で安定して起立させておく上で有利である。また、図13に示すように、ストラップ42を連結する取付部1218をケース12の上部の画面垂直線L2上の箇所に設けると、カメラ10に作用する重力は重心Gから画面垂直線L2に沿って鉛直方向の下向きに作用する。これにより、前記カメラ10を前記ストラップ42を用いて首から吊り下げると、ケース12は、前記画面垂直方向が鉛直方向に沿った姿勢に維持され、ケース12の長さ方向は鉛直方向に対して角度θ1傾斜して延在することになる。したがって、右手でカメラ10をケース12の後面から掴む場合、ケース12の長さ方向が鉛直方向に対して傾斜しているのでカメラ10を保持することが極めて容易にでき、これにより、カメラ10を持ち直すことなく即座に撮影を行なうことができ、操作性を向上させる上で有利となる。また、本実施の形態では、前記カメラ10の電池収容室28がケース12の長さ方向の1/2よりも下方の箇所に設けられているため、該電池収容室28に比較的重量が重い電池を収容することによって重心を下方に設定することを容易に実現できる。」

(2)引用文献3に記載された技術的事項

したがって、引用文献3には、以下の事項(以下「引用文献3に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。

「カメラの電池収容室をケースの長さ方向の1/2よりも下方の箇所に設けることで、該電池収容室に比較的重量が重い電池を収容することによって重心を下方に設定して、前記カメラの載置面をデスクや棚などの平面上においた場合に、前記カメラに作用する重力が重心Gから画面垂直線に沿って鉛直方向の下向きに作用し、前記カメラを、前記画面垂直線が前記平面に直交した状態で安定して起立させる点。」

第5 対比

本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。

1 引用発明の「カメラ」は「冷蔵室扉に前記冷蔵室の方向を向いて設置される」から、本願発明の「貯蔵庫の扉の開放端側にも載置可能な貯蔵庫用カメラ装置」と、「貯蔵庫の扉に設置可能な貯蔵庫用カメラ装置」である点で一致する。

2 引用発明の「カメラ」は、「CCD撮像素子からなるカメラ本体と、レンズと、カメラ本体及びレンズを収納するカメラケースと、ヒータとからな」り「冷蔵室扉に前記冷蔵室の方向を向いて設置されるものであるところ、引用発明の「CCD撮像素子」は本願発明の「撮像手段」に相当し、引用発明の「カメラ本体」は本願発明の「貯蔵庫用カメラ装置」に相当する。

また、カメラ本体が外枠を備えていることは明らかであるから(上記第4、1(1)ウの図2のカメラ本体301参照)、当該「カメラ本体の外枠」が本願発明の「ケース」に相当するといえる。

そうすると、引用発明の「カメラ」が「CCD撮像素子からなるカメラ本体と、レンズと、カメラ本体及びレンズを収納するカメラケースと、ヒータとからな」ることは、本願発明の「貯蔵庫用カメラ装置」が「ケースと、前記ケースの内部に収容され貯蔵庫内を撮像する撮像手段と」「を具備」することに相当する。

3 一般に、カメラは内部に様々な部材を含むが、これらの部材の比重は様々であり、また、これらの部材のカメラ内での位置については、「カメラ」の重心と「カメラケース」の中心とを合わせるような特段の配慮はなされないのが通常であると認められる。そして、引用文献1には、カメラの重心に関する記載は一切ないから、引用発明の「カメラ」の重心と「カメラケース」の中心とは、一致しないことが一般的である。

したがって、格別上記のような配慮がなされない引用発明は、実質的に、「カメラケース」の中心に対してカメラの重心が異なるものであると認められる。

4 したがって、本願発明と引用発明とは、

「貯蔵庫の扉にも設置可能な貯蔵庫用カメラ装置であって、
ケースと、
前記ケースの内部に収容され貯蔵庫内を撮像する撮像手段と、
を具備し、
前記ケースの中心に対して装置全体の重心が異なる貯蔵庫用カメラ装置。」

の点で一致し、以下の点で相違する。

【相違点1】

貯蔵庫用カメラ装置が、本願発明は、貯蔵庫の扉の「開放端側にも載置可能」であるのに対して、引用発明は、扉に設置可能であるにとどまる点。

【相違点2】

本願発明は、「ケースの内部に収容される電池」「を具備し、前記電池は、ケースにおける下部に配置され」るのに対して、引用発明は、電池を具備した上でこのように配置されると特定されない点。

第6 判断

1 相違点1について

本願発明は、「貯蔵庫用カメラ装置」という物の発明であると認められるところ、「貯蔵庫の扉の開放端側にも載置可能」との発明特定事項は、「貯蔵庫用カメラ装置」が、「貯蔵庫の扉の開放端側にも載置」できる程度の大きさ・形状であること等、「貯蔵庫用カメラ装置」という物自体を特定するものと解釈すべきである。

このことを踏まえて検討するに、引用発明の「貯蔵庫用カメラ装置」は、「前記冷蔵室扉の開放端側に設置できる」程度の大きさ・形状等であるといえる。

したがって、相違点1は実質的な相違ではない。

なお、貯蔵庫の扉の開放端側にも載置できることは、引用文献2に記載されている。(上記第4、 2(2))

2 相違点2について

引用発明の「CCD撮像素子からなるカメラ本体と、レンズと、カメラ本体及びレンズを収納するカメラケースと、ヒータとからな」り「冷蔵室扉に前記冷蔵室の方向を向いて設置される「カメラ」が「CCD撮像素子からなる」以上、電力を要するものであることは明らかであるところ、当該カメラ本体に電力を供給する手段として電池を具備することは当業者が容易に想到し得たことである。

ここで、電池を具備するに際して、上記(2)で述べたカメラ本体自体の容器に電池を収納する構成とすることは当業者が適宜なし得ることにすぎない。

また、当該電池をカメラ本体自体の容器のどこに配置するかは、単なる設計的事項にすぎず(引用文献3)、カメラ本体自体の容器の下部に配置することに格別の困難性は認められない。

3 請求人の主張

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請求人は、審判請求書の「3.本願が特許されるべき理由」、において、概略「引用文献1、2を組み合わせた場合、扉にカメラを固定的に設ける構成が導出されることになります。そして、その場合には、上記したようにカメラの視野が変わる可能性のある構成つまりは載置する構成にはしないと考えるのが妥当です。そして、カメラを固定的に設けるのであれば、カメラの重心位置が問題になるおそれは極めて低いと考えられます。少なくとも、一般的には静止状態で設置されており、扉の開閉時に振動が生じることがあるといった冷蔵庫の技術分野においては、固定的に設けたカメラの重心位置が問題になることはほぼ無いと考えられます。このため、引用文献1に対して引用文献2に記載された技術を適用することは、所望の撮像場所を撮像するために行われる可能性はありますが、その場合にはカメラの位置が固定されますので、カメラを固定的に設けているものに対して引用文献3に記載された技術を適用する技術的意義が存在しません。また、引用文献1~3を組み合わせたとしても、固定されているカメラの重心位置が低くなるだけであり、転倒抑制等の効果が得られる訳でもありません。すなわち、引用文献1、2に対して引用文献3の技術を適用する技術的メリットが存在しません。」と主張する。

請求人の上記主張は、「本願発明は、貯蔵庫用カメラ装置を貯蔵庫の扉の開放端側に(固定することなく)載置した場合であっても、貯蔵庫用カメラ装置の重心位置が低くなっているので、設置箇所からの位置ずれ等が起こりにくいという格別の効果を奏する。」というものであると解することができる。

しかしながら、まず、本願発明は、重心が「ケースの中心に対して装置全体の重心が異なる」と特定するにすぎず、上側が重い構成を含むものであって、上記主張は、特許請求の範囲の記載に基づく主張ではない。

次に、上記1で検討したとおり、本願発明は、「貯蔵庫用カメラ装置」という物の発明であるから、「貯蔵庫の扉の開放端側にも載置可能」との発明特定事項は、あくまで「貯蔵庫用カメラ装置」という物自体を特定するものと解すべきであって、「貯蔵庫の扉の開放端側に載置すること」自体は、本願発明の構成であるとは認められない。

したがって、上記請求人の主張は採用できない。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明は、その原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて、その原出願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

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2020-016410

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