特許拒絶査定不服審判
2023-008371
光学画像安定化サスペンションにおけるセンサシフト構造
- 審判番号
- 2023-008371
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-532062
- 請求日
- 2023年05月23日
- 審決日
- 2026年01月08日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ハッチンソン テクノロジー インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】井関 勝守
- 【請求人代理人】金子 修平
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 野村 伸雄
- 審判官 小澤 尚由
- 分類
- P18 .121-WZ (G03B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-532062「光学画像安定化サスペンションにおけるセンサシフト構造」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月21日国際公開、WO2018/112436、令和 2年 5月28日国内公表、特表2020-515881〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)12月15日を国際出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年12月16日、2017年12月15日、いずれも米国)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和元年 8月 8日 :翻訳文の提出
令和2年12月11日 :手続補正書の提出
令和3年11月 5日付け:拒絶理由通知書
令和4年 5月13日 :意見書、手続補正書の提出
同年 9月 8日付け:拒絶理由通知書(最後)
同年12月14日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 1月11日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月24日 :原査定の謄本の送達)
同年 5月23日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和6年 7月18日付け:拒絶理由通知書
同年10月22日 :意見書、手続補正書の提出
令和7年 2月28日付け:拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由通知書」という。)
同年 7月 1日 :意見書、手続補正書の提出
以下、2016年12月16日を最先の優先日という。
2 本願発明について
(1) 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和7年7月1日に提出された手続補正書により補正された請求項1に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
静止プレートと、
前記静止プレートに対してx軸及びy軸に関して移動可能な可動プレートと、
前記可動プレートと一体である前記可動プレートにおけるセンサ取付領域と、
前記可動プレートを前記静止プレートに連結する1つ以上のばねであって、前記可動プレートから延びる1つ以上のばねアームを含み、前記1つ以上のばねアームは前記可動プレートのセンタリングを支援するように構成される、1つ以上のばねと、
前記静止プレートと前記可動プレートに連結される1つ以上の形状記憶合金(SMA)素子とを含み、
前記可動プレートは、1つ以上のレンズに対して前記センサ取付領域を変位させ、
前記1つ以上のSMA素子はSMA材料を含み、1つ以上のSMA素子の各々は、SMA材料の端部において各ばねアームに電気的かつ構造的に取り付けられ、各SMA素子の中心領域においてばねアームから開放されるサスペンション組立体。」
(2) 本願発明の分説
検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Cまでに分説する。また、参考図として、本願の【図17】を元に部材名を記入したものを掲載する。
<本願発明の分説>
A 静止プレートと、
B 前記静止プレートに対してx軸及びy軸に関して移動可能な可動プレートと、
C 前記可動プレートと一体である前記可動プレートにおけるセンサ取付領域と、
D 前記可動プレートを前記静止プレートに連結する1つ以上のばねであって、前記可動プレートから延びる1つ以上のばねアームを含み、前記1つ以上のばねアームは前記可動プレートのセンタリングを支援するように構成される、1つ以上のばねと、
E 前記静止プレートと前記可動プレートに連結される1つ以上の形状記憶合金(SMA)素子とを含み、
F 前記可動プレートは、1つ以上のレンズに対して前記センサ取付領域を変位させ、
G 前記1つ以上のSMA素子はSMA材料を含み、1つ以上のSMA素子の各々は、SMA材料の端部において各ばねアームに電気的かつ構造的に取り付けられ、各SMA素子の中心領域においてばねアームから開放される
X サスペンション組立体。
<参考図(【図17】)>
[図:0001435447000001.jpg]
(3) 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。なお、図を明細書の対応する記載箇所に挿入して示した。
「【技術分野】
…(中略)…
【0002】
[技術分野]
本発明は、一般に、電話やタブレットなどの携帯デバイスに組み込まれるものを含む、カメラに関して使用される光学画像安定化(optical image stabilization、OIS)サスペンションに関する。
【背景技術】
【0003】
形状記憶合金(shape memoryalloy、「SMA」)カメラレンズ光学画像安定化(「OIS」)サスペンションは、一般に既知であり、例えば、Howarthの特許文献1、Millerの特許文献2、及びBrownの特許文献3、Ladwigの特許文献4、Eddingtonの特許文献5、Howarthの特許文献6、並びに特許文献7及び特許文献8にて公開されており、そのすべての全体が言及によってあらゆる目的で本明細書に援用されている。実施形態は、支持部材に取り付けた可動部材を含むものである。支持部材の可動部材とは反対側には、ベース部を取り付けることができる。これらのタイプのOIS組立体は、ベース部又は支持部材に取り付けたイメージセンサと可動部材に取り付けたオートフォーカス(auto focus、「AF」)組立体又はメカニズムを備えたレンズホルダとを有するものである。SMAワイヤは、可動部材を支持部材に連結するとともに、制御部によって制御される。SMAワイヤは、ユーザの手の動きによって起こり得るものなどの振動に対して、センサ上のレンズによって生成される画像の位置を安定化するために、可動部材を支持部材に対してx-y軸に関して移動させるように駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第9,175,671号明細書
【特許文献2】米国特許第9,366,879号明細書
【特許文献3】米国特許第9,479,699号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2016/0154251号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2015/0135703号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2015/0346507号明細書
【特許文献7】国際公開第2014/083318号
【特許文献8】国際公開第2013/175197号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、改良されたOISサスペンションが引き続き必要とされている。高機能、堅牢であり、製造効率のよいこれらのタイプのOISサスペンションは特に望ましいものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
サスペンション組立体が記載される。サスペンション組立体は、静止部材又は静止プレートと、静止プレートに対してx軸及びy軸に関して移動可能な可動部材又は可動プレートと、可動プレートにおけるセンサ取付領域と、静止プレートと可動プレートとの間に延びてそれらに連結される1つ以上の形状記憶合金(SMA)素子とを含む。SMA素子は、制御部によって駆動されると、可動プレート及びその上のセンサ取付領域を静止プレートに対してx軸及びy軸に関して移動させる。」
「【0039】
図17は、実施形態にかかるバイメタルアクチュエータとしてなされた光学画像安定化サスペンション組立体を示す。光学画像安定化サスペンション組立体は、可動部材1722に配置されて取り付けられるイメージセンサを有するように構成される。可動部材1722は、可動部材1722の外側に配置される、ばねアーム1704a~1704dを含む。ばねアーム1704a~1704dは、種々の実施形態において、各ストラット1706a~1706dを介して可動部材1722に連結される。SMA材料1708a~1708dなどのSMA素子は、ばねアーム1704a~1704dのそれぞれに付加される。SMA材料1708a~1708dは、接着剤、はんだ、レーザ溶接、抵抗溶接、及び当該技術分野で既知のものを含む他の技術を使用してばねアーム1704a~1704dに取り付けられる。ステンレス鋼などの伝導材料から形成されるばねアーム1704a~1704dを含む一部の実施形態では、SMA材料1708a~1708dは、当該技術分野において既知のものを含む技術を使用して、ばねアーム1704a~1704dに形成された絶縁層に配置される。他の実施形態では、SMA材料は、SMA材料の端部のみでばねアームに電気的及び構造的に取り付けることができ、SMA材料の中心領域ではばねアームから開放されている。中心領域で開放されていることにより、SMA材料は作動時に真っ直ぐに引っ張る一方で、ばねアームが円弧状に湾曲する。ばねアームは、起動とも呼称される作動のためにSMA材料を介して電力を与える電気回路を含むことができる。
【図17】
[図:0001435447000002.jpg]
【0040】
SMA材料1708a~1708dは、ばねアーム1704a~1704dのいずれかの側部、すなわち、可動部材1722の方に向かうばねアーム1704a~1704dの側部、又は可動部材1722から離れる方に向かうばねアーム1704a~1704dの表面に付加することができる。一部の実施形態では、SMA材料1708a~1708dは、ばねアーム1704a~1704dの両方の側部に付加される。
【0041】
SMA材料1708a~1708dは加熱されるとばねアーム1704a~1704dを湾曲させて、x軸及びy軸の方向における可動部材1722の動きをもたらす。制御部は、可動部材1722のx軸及びy軸の方向における十分な動きをもたらすために、SMA材料、1つ以上のばねアーム1704a~1704dに連携した力を与えるように使用することが可能である。図18は、当該技術分野で既知の技術を使用して、SMA材料が加熱されて、冷間状態から熱間状態に変化し、そして冷間状態に戻るときのSMA材料の例の動きを示す。例として、SMA材料1708a~1708dは、電流で加熱可能である。
【図18】
[図:0001435447000003.jpg]
【0042】
また、ばねアーム1704a~1704dは静止脚部1710a~1710dを含む。静止脚部1710a~1710dは静止部材に取り付けられるように構成されて、SMA材料1708a~1708dが作動されると可動部材1722が静止部材に対して移動するようにする。」
3 当審拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由の要旨
当審拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由のうち理由4(進歩性の欠如)の要旨は、次のとおりである。
理由4(進歩性の欠如) 本願発明は、最先の優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、最先の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
<主たる引用文献>
引用文献1.特開2008-203402号公報
<周知技術等を示す文献>
周知文献1.特表2015-518977号公報
周知文献2.国際公開第2016/009200号
(日本語ファミリ:特表2017-522615号公報)
周知文献3.国際公開第2013/118601号
周知文献4.特開平11-337996号公報
4 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定等
(1) 引用文献1に記載された事項
当審拒絶理由通知書の拒絶の理由において引用された、最先の優先日前に発行された文献である引用文献1(特開2008-203402号公報)には、次の記載がある(なお、図面は、対応する説明がされているところに適宜挿入して示した。また、当合議体により、後記(2)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。
ア 特許請求の範囲
「【請求項1】
センサ装置であって、
固定部と、
センサを設けた移動部と、
前記固定部に固設され、前記移動部を支持する梁部と、
前記梁部の少なくとも一部を変形させることで前記移動部を前記固定部に対して相対的に移動させる駆動力付与部と、
前記梁部の前記センサ側から前記固定部側に至るまで配設され、前記センサと所定の外部回路との間を電気的に接続する配線部と、
を備えたことを特徴とするセンサ装置。
…(中略)…
【請求項7】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のセンサ装置であって、
前記駆動力付与部が、
形状記憶合金を含むことを特徴とするセンサ装置。
…(中略)…
【請求項14】
請求項1から請求項12のいずれかに記載のセンサ装置であって、
前記駆動力付与部が、
前記梁部を変形させることで少なくとも前記センサの所定面に対して水平な一方向に沿って前記移動部を前記固定部に対して相対的に移動させることを特徴とするセンサ装置。
【請求項15】
請求項14に記載のセンサ装置であって、
前記駆動力付与部が、
前記梁部を変形させることで前記センサの所定面に対して水平であって前記一方向と直交する他方向に沿って前記移動部を前記固定部に対して相対的に移動させることを特徴とするセンサ装置。
…(後略)」
イ 段落【0001】~【0007】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、センサを備えた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラを保持する手の振れなどに起因して撮影画像において生じる像振れを補正する機能(所謂手振れ補正機能)を有するカメラが広く普及してきている。小型のデジタルカメラや撮影機能付きの携帯電話機などといった軽量の撮像装置においては、特に手振れが発生し易いため、この手振れ補正機能の搭載が望まれる。
【0003】
ところが、この手振れ補正機能を実現するためには、撮像素子などの各種部材を駆動させる駆動機構が必要であるため、撮像装置の小型・軽量化を図る上で障害となっている。
【0004】
このような問題に対して、固定性基板と、固定性基板上に流動可能に配置される流動性基板と、固定性基板上に固定され、流動性基板上に配置される固定性櫛構造と、流動性基板上に配置され、流動性基板とともに固定性基板上で流動可能に構成される流動性櫛構造と、を含み、固定性櫛構造と流動性櫛構造に起電力が印加されることによって、固定性櫛構造と流動性櫛構造の間に作用する引力により流動性基板が流動するカメラレンズアセンブリーの手振れ補正装置が提案されている(例えば特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2006-133730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1で提案された技術では、流動性基板上に設けられたイメージセンサからの各種信号が、所謂フレキシブル基板(FPC:Flexible printed circuits)を介して外部装置に出力される。このため、流動性基板を駆動させる際に、フレキシブル基板の変形に要する力に応じた反力が流動性基板に対して働き、流動性基板の微小駆動の阻害要因となる。すなわち、移動対象物の移動精度が低くなってしまう。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、移動対象物の移動精度が高い小型のセンサ装置ならびに撮像装置を提供することを目的とする。」
ウ 段落【0030】~【0105】、【図1】~【図3】
「【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
<撮像装置>
図1は、本発明の実施形態に係る撮像装置1の概略構成を模式的に示す断面図である。図1および図1以降の図では、方位関係を明確化するために相互に直交するXYZの3軸を付している。
【図1】
[図:0001435447000004.jpg]
【0032】
撮像装置1は、主に撮像装置の本体部(カメラ本体部)2と、レンズ群4を含む光学系である鏡胴3とを備え、いわゆる手振れ補正機能を有するデジタルカメラである。
【0033】
レンズ群4は、複数のレンズ4a~4cを備え、各レンズ間の距離が適宜変更されることで、撮影倍率および焦点の調整が可能となっている。
【0034】
カメラ本体部2は、駆動機構10および撮像素子16を有して構成されるセンサ装置部50を搭載するとともに、撮像装置1の全体を統括制御する制御部5を備えている。
【0035】
撮像素子16は、いわゆる撮像センサーチップによって構成され、鏡胴3の光軸Lに沿って入射される被写体に係る光像(被写体像)を+Z側に向いた前面(受光面)で受光し、各画素毎に画素信号に光電変換して、制御部5に対して出力する。
【0036】
制御部5は、CPUやメモリやROMなどを含む回路によって構成され、例えばROM内に格納されるプログラムをCPUで実行することで、各種制御や機能を実現する。
【0037】
駆動機構10は、カメラ本体部2に対して固設され、制御部5からの制御信号に基づいて駆動することで、カメラ本体部2に対する撮像素子16の姿勢を適宜変更させる。
【0038】
駆動機構10を駆動させる制御信号は、撮像装置1を保持するユーザーの手振れによる撮像装置1の振れの方向および量をジャイロ等のセンサ(不図示)を用いて検知し、当該振れの方向および量に基づく演算によって得られた制御量に対応する信号である。
【0039】
撮影時に撮像装置1の姿勢がぶれると、撮影範囲がずれて主要な被写体と撮像装置1との相対的な角度関係がぶれる。このとき、何もしなければ、1フレーム分の記憶用の撮影画像を取得するための露光時間中において撮像素子16で受光する被写体像がずれるため、撮影画像上で被写体がぶれてしまう。
【0040】
そこで、撮像装置1では、手振れ補正機能により、撮像装置1の姿勢のぶれに対応して駆動機構10が撮像素子16の姿勢を変更することで、撮影時において撮像素子16で受光される被写体像が極力一定となるように制御する。この手振れ補正により、撮影画像のぶれ補正、すなわち像振れ補正が実現される。
【0041】
<センサ装置部の構成>
図2は、本発明の実施形態に係るセンサ装置部50の主要な構成を模式的に示す図である。図2(a)は、センサ装置部50の主要な構成を撮像素子16の正面側(+Z方向)から見た正面図であり、図2(b)は、図2(a)のA-A断面を模式的に示した図である。
【図2】
[図:0001435447000005.jpg]
【0042】
センサ装置部50の主要な構成にあたるアクチュエート機構(駆動機構10)は、複雑なパターンで構成される。このパターンは、微細装置の集積化のために使用される手法であるマイクロマシニング(micromachining)技法により製作される。この技法は、半導体加工技術の一種として、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)と称される。
【0043】
ここで、MEMSとは、半導体工程、特に集積回路技術を応用したマイクロマシニング技術を利用して、μm単位のマイクロセンサーやアクチュエータや電気機械的構造物を製作する技術を意味する。なお、マイクロマシニング技術により製作された微細な機械的構造は、mm以下のサイズおよびμm以下の精度で具現化される。
【0044】
マイクロマシニング技術は、超精密微細加工を通じて、製作物の小型化、高性能化、多機能化、および集積化を可能とし、安全性および信頼性を向上させる長所がある。また、一体化された集積システムの具体化が可能であるため、別部材を組み合わせる組み立て工程の必要性が低減される。よって、一括工程による製作が可能となることにより、安価な大量生産が可能となる。
【0045】
なお、MEMSは、本発明の実施形態に係るセンサ装置部50を製作するための一工法として用いられるが、センサ装置部50の構造と直接的に関連する構成ではないため、ここでは、MEMSを用いたセンサ装置部50の製作工程についての詳細説明は省略する。
【0046】
以下、図2を参照しつつセンサ装置部50の構成について説明する。
【0047】
センサ装置部50は、主に、固定部20、移動部140、静電アクチュエータ部145、梁構造部103、および支持部TMを備えている。
【0048】
図示を省略しているが、固定部20は、カメラ本体部2に対して固設されている。
【0049】
移動部140は、略矩形状の盤面を有する移動基板107と、当該移動基板107上に設けられた撮像素子16および位置センサ17とを備えて構成されている。また、移動部140は、移動基板107の各辺の両端部近傍にそれぞれ設けられた合計8つの梁構造部103により固定部20から+Z方向にある程度離隔された状態で支持されている。
【0050】
梁構造部103は、例えばシリコン(Si)を主材料とする厚みが薄い帯状でかつ蛇行状の構造を有し、一端が移動基板107に対して固設されているとともに、他端が固定部20上の支持部TMに固設されている。
【0051】
静電アクチュエータ部145は、固定部20に対して固設されている櫛構造を有する部分(固定櫛構造部)104、および連結部CNによって移動部140と連結されている櫛構造を有する部分(移動櫛構造部)105を備えて構成されている。より詳細には、移動基板107の各辺の中央付近に連結部CNの一端がそれぞれ固設され、各連結部CNの他端に移動櫛構造部105が固設されている。
【0052】
固定櫛構造部104および移動櫛構造部105の櫛構造を構成する各突起部は、例えば、厚みおよび幅ともに数μm程度の寸法を有し、各突起部間の間隔も数μm程度の寸法を有している。そして、固定櫛構造部104の櫛構造を構成する突起部の各間隙に、移動櫛構造部105の櫛構造を構成する各突起部が入り込むように配置され、且つ固定櫛構造部104の各突起部と、移動櫛構造部105の各突起部とが所定距離だけ離隔された状態が初期状態として設定される。
【0053】
なお、静電アクチュエータ部145では、固定櫛構造部104と移動櫛構造部105との間に互いに反発し合う静電気力が発生するため、移動部140は、梁構造部103だけでなく、当該静電気力によっても支持される。
【0054】
また、初期状態では、固定櫛構造部104の櫛構造に対して移動櫛構造部105の櫛構造が若干+Z方向にずらされて配置されている。
【0055】
ここで、梁構造部103は、比較的柔らかい素材(Si)によって構成されるとともに厚みが薄い帯状の構造を有するため、可撓性を有している。
【0056】
したがって、静電アクチュエータ部145における固定櫛構造部104と移動櫛構造部105との間で相互に及ぼし合う斥力の変更により、移動部140に対して駆動力が付与され、梁構造部103が適宜弾性変形する。このとき、移動櫛構造部105が固定櫛構造部104に対してZ軸方向に沿って相対的に移動する。
【0057】
具体的には、例えば、移動基板107の対辺に固設された2つの静電アクチュエータ部145において、固定櫛構造部104と移動櫛構造部105との間における斥力が強まると、移動部140が押し出されるように、+Z方向に沿って固定部20に対して相対的に移動する。そして、固定櫛構造部104と移動櫛構造部105との間における斥力が弱まると、梁構造部103の弾性力により、移動部140が、-Z方向に沿って初期位置に向けて固定部20に対して相対的に移動する。
【0058】
また、移動基板107の対辺に固設された2つの静電アクチュエータ部145によって移動部140に対して付与される力が偏った場合には、移動部140と固定部20との角度関係が変更される。このような動きにより撮像素子16と光軸Lとの角度関係が変更される。
【0059】
このような固定櫛構造部104に対する移動櫛構造部105の相対的な移動の結果、固定部20に対して移動部140が相対的に移動され、撮像素子16の姿勢が適宜変更される。なお、静電アクチュエータ部145の駆動は、制御部5からの制御信号に基づいて適宜制御される。
【0060】
移動基板107、梁構造部103、固定櫛構造部104、および移動櫛構造部105は、上記MEMSと称される技法(MEMS技法)によって同時期に形成される。
【0061】
具体的には固定部20を構成する固定基板上に積層された積層物に対してMEMS技法によるエッチング処理を施して移動基板107、梁構造部103、固定櫛構造部104、および移動櫛構造部105が同一工程で同時期に生成される。
【0062】
ここで、MEMS技法を適用するために固定部20を構成する固定基板がガラス基板を用いて製作される。そして、移動基板107、梁構造部103、固定櫛構造部104、および移動櫛構造部105を形成するための積層物は、例えば珪素(Si)などの所定材料の層によって生成される。
【0063】
また、撮像素子16や位置センサ17などは、Siなどの半導体材料を主材料として形成されることが多く、その場合には、梁構造部103の少なくとも一部が、撮像素子16や位置センサ17の主材料と同じ素材で構成される。
【0064】
このような場合には、撮像素子16や位置センサ17などの各種センサも、MEMS技法によって梁構造部103と同一工程で同時期に生成することができ、効率的な生産が可能となる。換言すれば、撮像素子16や位置センサ17などの各種センサと同一の加工およびプロセスの中で、梁構造部103を形成できるため、梁構造部103の形成が容易となる。
【0065】
移動基板107上に配設される撮像素子16は、移動基板107に対して直接接合されている。直接接合とは、接着剤を用いない接合方法であり、例えば同種の材料間で生じる表面間の引力を利用した接合方法である。この直接接合は、接合後の強度確保や歪の低減、接合の簡便性、および省スペース化の実現などの面で非常に優れている。
【0066】
本実施形態では、移動基板107および撮像素子16の主材料が共に珪素(Si)であるため、直接接合を利用することで、上記利点が得られる。
【0067】
なお、本実施形態では、移動基板107と撮像素子16とを直接接合を用いて接合しているが、これに限られず、例えば、移動基板107を設けることなく、撮像素子16の背面(受光面の反対側の面)側に移動櫛構造部105を直接形成するようにしても良い。ここで、撮像素子16上に光電変換機能を有する多数の画素を形成するプロセス、および移動櫛構造部105を形成するプロセスは、ともに基本的には同じ半導体製造プロセスである。このため、撮像素子16の両面にSiの積層などの加工を施すことに特段の困難性はない。
【0068】
このように、撮像素子16の両面に、受光面および移動櫛構造部105の2つの機能を併せて持たせるような構成を採用すると、移動基板107と撮像素子16との接合自体が不必要となるため、直接接合の場合よりも強度確保や歪の低減や省スペース化の実現などの各種メリットが得られる。
【0069】
また、撮像素子16上あるいは固定部20の固定基板上には移動櫛構造部105などといったアクチュエート機構に係る各部のみならず、固定部20の固定基板に対する移動基板107の位置を検出する位置センサ17や撮像装置1の振れを検出するジャイロセンサなどの各種センサ類など、半導体製造プロセスで形成可能な機能も一体的に構成できる。
【0070】
また、図2では図示を省略しているが、撮像素子16や位置センサ17と制御部5との間で各種信号などの送受信を行うための配線が梁構造部103上において当該梁構造部103の延設方向に沿って配設されている。この梁構造部103上に配設される配線は、上記の半導体製造プロセスを用いて、静電アクチュエータ部145と同時期に形成できる。なお、配線の配設経路については後述する。
【0071】
梁構造部103上に配線を形成する工程としては、例えば、珪素(Si)層表面に導電層(Al,Cu,Poly-Siなど)を積層させ、この導電層に対して選択的なエッチング処理を施すことで、配線が形成される工程が挙げられる。
【0072】
移動基板107、梁構造部103、配線部110、および固定部20を構成する固定基板は、上述したように同様なプロセスで形成できるため、一体的に製造され、各部を機械的に接続する必要性がない。
【0073】
このように、移動基板107、梁構造部103、配線部110、および固定部20を構成する固定基板が一体的に構成されると、移動部140を固定部20に対して相対的に移動させる際に、梁構造部103と移動基板107とが接続する部分や梁構造部103と支持部TMとが接続する部分などにおいて、梁構造部103の変形に伴う応力集中が生じ難くなるため好ましい。
【0074】
なお、図2では図示を省略しているが、センサ装置部50では、撮像素子16の前面側(+Z方向の側)に保護ガラスが設けられて密封状態が保持されている。この保護ガラスの代わりに、レンズ群4に含まれる最も撮像素子16に近いレンズによって密封状態を保持するような構成を採用しても良い。
【0075】
<梁構造部の形態と配線経路>
図3は、梁構造部103の形態と配線の配設経路を模式的に例示する図である。図3では、合計で8つ存在している梁構造部103のうち、1つの梁構造部103に着目し、梁構造部103の形状および当該梁構造部103上に配設される配線経路を例示している。図3(a)は、撮像素子16の正面側(+Z方向)から見た正面図であり、図3(b)は、図3(a)で示されたものを、-Y方向から+Y方向に向いて見た側面図である。
【図3】
[図:0001435447000006.jpg]
【0076】
まず、梁構造部103の形態について説明する。
【0077】
図3(a)に示すように、梁構造部103は、正面側(図中の+Z方向)から見ると、移動基板107の一辺の端部付近から移動基板107の側方(図中の-Y方向)に突設された部分(突設部)103aと当該突設部103aから支持部TMまで至るコの字型の部分(コの字部)103bとを備えて構成されている。
【0078】
コの字部103bは、両端の第1および第2長辺部103ba,103bcと第1および第2長辺部103ba,103bcを連結する連結部103bbとを有する。すなわち、梁構造部103は、突設部103a、第1長辺部103ba、連結部103bb、および第2長辺部103bcの順に一体的に構成されている。
【0079】
また、図3(b)に示すように、梁構造部103は、側方(図中の-Y方向)から見ると、第1長辺部103baが図中左上方から右下方に向けて延設され、第2長辺部103bcが図中右上方から左下方に向けて延設されて構成されている。そして、梁構造部103は、Siなどといった比較的軟質の素材で構成され、かつ厚み(図中Z軸方向に沿った厚み)が比較的薄く構成されているため、可撓性を有したバネ構造を形成している。
【0080】
すなわち、移動部140が、4方の角部付近を各々2つの梁構造部103、合計8つの梁構造部103によって周囲から支持されることで、固定部20に対して浮いた状態で支持されている。
【0081】
そして、上述したように、移動部140の四方に配置された静電アクチュエータ部145によって、移動部140に対して負荷が掛けられると、梁構造部103が適宜変形して、移動部140が撮像素子16や位置センサ17などの所定面(ここでは前面)に対して垂直な方向に沿って相対的に移動する。
【0082】
また、図3で示すように、梁構造部103は、Siなどの軟質な素材で形成されているとともに、帯状で且つ蛇行状に延設されているため延設距離が移動部140と固定部20との離隔距離よりも例えば数倍以上と相対的に長く、図3では、相対的に3倍以上長い例が示されている。
【0083】
このため、移動部140が固定部20に対して相対的な移動を行う際における梁構造部103の変形は、局所的に集中することもなく、激しいねじれなども生じないため、梁構造部103は非常に耐久性に優れている。また、梁構造部103が微細であるため、複数(ここでは、8つ)形成することが可能であるため、この面でも、各梁構造部103に掛かる負荷が分散され、高耐久性が実現される。
【0084】
なお、梁構造部103は、移動部140を支えるためにある程度の幅を有しておく必要性があるが、長い延設距離で変形応力を分散させつつ、弾性変形することが可能であるため、特に問題ない。
…(中略)…
【0104】
◎また、上記実施形態では、静電アクチュエータ部145によって移動部140に対して外部から駆動力を付与したが、これに限られず、例えば、圧電素子を用いたアクチュエータ(圧電アクチュエータ)や、形状記憶合金(SMA)を用いたアクチュエータ(SMAアクチュエータ)などといったその他のアクチュエータを採用しても、上記実施形態と同様な効果が得られる。
【0105】
なお、圧電アクチュエータやSMAアクチュエータは小型のものが比較的容易に製作可能であるため、静電アクチュエータ部145と同様に、センサ装置の小型化を確保する上で好適である。」
エ 段落【0106】~【0135】、【図5】~【図7】
「【0106】
図5は、図2で示したセンサ装置部50の静電アクチュエータ部145を、固体が伸縮するタイプのアクチュエータ(例えば、圧電アクチュエータやSMAアクチュエータ)160に置換したセンサ装置部50Bの主要な構成を示す模式図である。図5(a)は、図2(a)と同様に、センサ装置部50Bの主要な構成を撮像素子16の正面側(+Z方向)から見た正面図であり、図5(b)は、図2(b)と同様に、図5(a)のC-C断面を示す模式図である。なお、上記実施形態と同様に、撮像素子16や位置センサ17などの各部と制御部5とを電気的に接続する配線が、梁構造部103上において延設方向に沿って配設されているが、図5では図の複雑化を防ぐため、図示が省略されている。
【図5】
[図:0001435447000007.jpg]
【0107】
図5に示すように、固体が伸縮するタイプのアクチュエータ(固体伸縮アクチュエータ)160は、直方体状の形状を有し、1つの面が固定部20に対して直接または間接的に固設されるとともに、固定部20に対して固設されている面とは反対側の面が、連結部CNを介して移動部140に対して固設されている。そして、固体伸縮アクチュエータ160の伸縮により、移動部140に対して駆動力が付与され、このとき、梁構造部103が変形することで、移動部140が固定部20に対して相対的に移動する。
【0108】
◎また、上記実施形態では、梁構造部103が変形することで、少なくともセンサ(例えば、撮像素子16や位置センサ17)の前面に対して略垂直な方向に沿って移動部140が固定部20に対して相対的に移動したが、これに限られず、固定部20に対する移動部140の相対的な移動の形態として、その他の形態を採用しても良い。その他の移動形態としては、例えば、センサ(例えば、撮像素子16や位置センサ17)の前面(一般的には所定面)に対して略平行な方向に沿って移動部が固定部に対して相対的に移動するような形態が挙げられる。
【0109】
図6および図7は、撮像素子16が設けられた移動部140C,140Dが撮像素子16の前面に対して略平行な方向に沿って移動するセンサ装置部50C,50Dの構成をそれぞれ例示した図である。図6では、一方向に沿って移動部140Cが移動する形態が示され、図7では、略直交する2方向に沿って移動部140Dが移動する形態が示されている。
【0110】
まず、図6で示すセンサ装置部50Cについて説明する。
【0111】
図6(a)は、図2(a)と同様に、センサ装置部50Cの主要な構成を撮像素子16の正面側(+Z方向)から見た正面模式図であり、図6(b)は、図2(b)と同様に、図6(a)のD-D断面を示す模式図である。なお、上記実施形態と同様に、撮像素子16などの各部と制御部5とを電気的に接続する配線が、梁構造部103C上において延設方向に沿って配設されているが、図6では図の複雑化を防ぐため、図示が省略されている。
【0112】
図6に示すように、センサ装置部50Cは、底面が略正方形の器状の固定部20Cと、撮像素子16の前面側(+Z方向側)に設けられた前面ガラス板UGとによって密封された内部空間SPCを有している。センサ装置部50Cの主要な部分は、この内部空間SPCの内部に配置されており、以下主要な部分について説明する。
【図6】
[図:0001435447000008.jpg]
【0113】
内部空間SPCの底面には、まず、略長方形状の盤面を有する部分と固定部20Cを貫通する多数の配線とによって構成されるリードフレーム部RFが配置されている。このリードフレーム部RF上には、略長方形状の盤面を有するガラス基板(底面ガラス基板)101が固設されている。そして、底面ガラス基板101から所定距離だけ+Z方向に離隔した位置に移動部140Cが配置されている。この移動部140Cは、盤面が略長方形状の移動基板107Cと当該移動基板107Cの+Z方向の面に形成された撮像素子16を備えて構成されている。
【0114】
底面ガラス基板101の盤面上(+Z方向の面上)の+X方向ならびに-X方向の中央部の縁部近傍に支持部TMCがそれぞれ設けられ、各支持部TMCから移動基板107Cの4つの角部のうち比較的近距離に位置している2つの角部近傍に至るまで2本の帯状の梁構造部103Cが設けられている。つまり、4本の梁構造部103Cが配置されている。この梁構造部103Cは、上記実施形態に係る梁構造部103とは蛇行する態様は異なるが、素材ならびに厚みや幅については、同様な構成を有しており、可撓性を有する移動部140Cを支持する部材として機能している。
【0115】
また、移動基板107Cの+X方向ならびに-X方向には、それぞれ静電アクチュエータ部145Cが設けられている。各静電アクチュエータ部145Cは、主に、固定櫛構造部104Cと移動櫛構造部105Cとを有している。
【0116】
移動櫛構造部105Cは、移動基板107Cの+X方向ならびに-X方向の縁部にX軸方向に沿って延設される多数の突起部によって構成されている。固定櫛構造部104Cは、移動部140Cを+X方向ならびに-X方向から挟むように配置されて底面ガラス基板101上に固設された直方体状の部位115Cのうち、移動部140Cに向いた面にX軸方向に沿って延設される多数の突起部を備えて構成されている。そして、固定櫛構造部104Cの多数の突起部の各突起部間に、移動櫛構造部105Cの各突起部が若干だけ入り込むように配置されている。但し、初期状態では、固定櫛構造部104Cと移動櫛構造部105Cとが所定距離だけ離隔した状態で配置されている。
【0117】
なお、移動櫛構造部105Cの電極部は梁構造部103C上に配置された配線を介してグランド電極部(GND)に接続されている。
【0118】
ここで、+X側の固定櫛構造部104Cに正の電位を印加すると、+X側の固定櫛構造部104Cと+X側の移動櫛構造部105Cとの間に静電気力による引力が発生する。このとき、+X側の移動櫛構造部105Cが+X方向に引き寄せられて、移動櫛構造部105Cが固設されている移動基板107Cが+X方向に移動する。このとき、4本の梁構造部103Cが適宜変形することで移動部140Cが固定部20Cに対して+X方向に沿って相対的に移動する。そして、+X側の固定櫛構造部104Cへの電位の印加を停止すると、梁構造部103Cの復元力(弾性力)により移動基板107Cごと移動部140Cが元の初期位置に戻る。
【0119】
一方、-X側の固定櫛構造部104Cに正の電位を印加すると、-X側の固定櫛構造部104Cと-X側の移動櫛構造部105Cとの間に静電気力による引力が発生する。このとき、-X側の移動櫛構造部105Cが-X方向に引き寄せられて、移動櫛構造部105Cが固設されている移動基板107Cが-X方向に移動する。このとき、4本の梁構造部103Cが適宜変形することで移動部140Cが固定部20Cに対して-X方向に沿って相対的に移動する。そして、-X側の固定櫛構造部104Cへの電位の印加を停止すると、梁構造部103Cの復元力(弾性力)により移動基板107Cごと移動部140Cが元の初期位置に戻る。
【0120】
したがって、センサ装置部50Cを備えた手振れ補正装置では、移動基板107Cを移動させるべき方向に電位(すなわち電圧)を印加することで、手振れなどによる像振れ(撮影画像の劣化)を補正できる。そして、電圧の印加が停止されると、梁構造部103Cの弾性力に起因した復元力により、移動基板107Cが初期位置に復帰する。
【0121】
次に、図7で示すセンサ装置部50Dについて説明する。
【図7】
[図:0001435447000009.jpg]
【0122】
図7(a)は、図2(a)と同様に、センサ装置部50Cの主要な構成を撮像素子16の正面側(+Z方向)から見た正面模式図であり、図7(b)は、図2(b)と同様に、図7(a)のE-E断面を示す模式図である。なお、上記実施形態と同様に、撮像素子16などの各部と制御部5とを電気的に接続する配線が、梁構造部103D,103E上に配設されているが、図6では図の複雑化を防ぐため、図示が省略されている。
【0123】
図7で示すセンサ装置部50Dでは、一方向に沿って移動部を移動させるための構成が、2階建てのような形式で2つ重ねられて設けられている。より詳細には、撮像素子16が+Z方向の面に設けられた移動部140Dを一方向(X軸方向)に沿って固定部20Dに対して相対的に移動させる構成と、移動部140Dを上記一方向と略直交する方向(Y軸方向)に沿って固定部20Dに対して相対的に移動させる構成とが設けられている。以下、具体的構成について説明する。
【0124】
図7に示すように、センサ装置部50Dは、底面が略正方形の器状の固定部20Dと、撮像素子16の前面側(+Z方向側)に設けられた前面ガラス板UGとによって密封された内部空間SPDを有している。センサ装置部50Dの主要な部分は、この内部空間SPDに配置されており、以下主要な部分について説明する。
【0125】
内部空間SPDの底面には、まず、略長方形状の盤面を有する部分と固定部20Dを貫通する多数の配線とによって構成されるリードフレーム部RFdが配置されている。このリードフレーム部RFd上には、略長方形状の盤面を有するガラス基板(底面ガラス基板)101Dが固設されている。そして、底面ガラス基板101Dから第1の所定距離だけ+Z方向に離隔した位置にX軸方向に沿った長辺を有する盤面が長方形状の第1移動基板108Dが配置されている。更に、当該第1移動基板108Dから第2の所定距離だけ+Z方向に離隔した位置に盤面が略正方形状の第2移動基板107Dが配置されている。
【0126】
第2移動基板107Dの+Z方向の面には撮像素子16が形成されて移動部140Dが形成されている。
【0127】
まず、底面ガラス基板101Dの盤面上(+Z方向の面上)において+Y方向ならびに-Y方向の略中央部の縁部近傍に支持部TMdがそれぞれ設けられ、各支持部TMdから第1移動基板108Dの最も近い辺に至るまで2本の帯状の梁構造部103Eが設けられている。
【0128】
なお、+Y方向および-Y方向にそれぞれ設けられている2本の梁構造部103Eは、第1移動基板108Dの一辺に対して、ある程度の距離だけ離隔された位置にそれぞれ固設されている。この梁構造部103Eは、L字状の形状を有し、上記実施形態に係る梁構造部103と同様な素材で構成され、可撓性を有する移動基板108Dを支持する部材として機能している。
【0129】
また、移動基板108Dの+Y方向ならびに-Y方向には、それぞれ静電アクチュエータ部149が設けられている。各静電アクチュエータ部149は、移動基板108Dに固設された移動櫛構造部と、底面ガラス基板101Dの+Z方向の面上に固設された直方体状の構造体に固設された固定櫛構造部とを有している。そして、固定櫛構造部の多数の突起部の各突起部間に、移動櫛構造部の各突起部が若干だけ入り込むように配置されている。但し、初期状態では、固定櫛構造部と移動櫛構造部とは所定距離だけ離隔した状態で配置される。
【0130】
更に、移動基板108Dの盤面上(+Z方向の面上)において+X方向ならびに-X方向の略中央部の縁部近傍に支持部TMdがそれぞれ設けられ、各支持部TMdから第2移動基板107Dの最も近い辺に至るまで2本の帯状の梁構造部103Dが設けられている。
【0131】
なお、+X方向および-X方向にそれぞれ設けられている2本の梁構造部103Dは、第2移動基板107Dの一辺に対して、ある程度の距離だけ離隔された位置にそれぞれ固設されている。この梁構造部103Dは、L字状の形状を有し、上記実施形態に係る梁構造部103と同様な素材で構成され、可撓性を有する移動基板107Dすなわち移動部140Dを支持する部材として機能している。
【0132】
また、移動基板107Dの+X方向ならびに-X方向には、それぞれ静電アクチュエータ部148が設けられている。各静電アクチュエータ部148は、移動基板107Dに固設された移動櫛構造部と、第1移動基板108Dの+Z方向の面上に固設された直方体状の構造体に固設された固定櫛構造部とを有している。そして、固定櫛構造部の多数の突起部の各突起部間に、移動櫛構造部の各突起部が若干だけ入り込むように配置されている。但し、初期状態では、固定櫛構造部と移動櫛構造部とは所定距離だけ離隔した状態で配置される。
【0133】
静電アクチュエータ148,149では、固定櫛構造部に対してグランド電位を印加し、移動櫛構造部に正の電位を印加すると、固定櫛構造部と移動櫛構造部との間に静電気力による力が発生する。この力を駆動力として適宜第1および第2移動基板107D,108Dに付与すると、梁構造部103D,103Eが適宜変形して、第1移動基板108Dが移動部140Dと一体的にY軸方向に沿って固定部20Dに対して相対的に移動するとともに、第2移動基板107Dすなわち移動部140DがX軸方向に沿って固定部20Dに対して相対的に移動する。
【0134】
なお、静電アクチュエータ148,149において電荷の印加を停止すると、梁構造部103D,103Eの弾性力に起因した復元力(弾性力)により、第1および第2移動基板107D,108Dが初期位置に復帰する。
【0135】
このような構成により、X軸方向およびY軸方向に沿って移動部140Dを固定部20Dに対して相対的に移動させることができる。そして、2軸に沿った移動を適宜組み合わせることで、撮像素子16の所定面(ここでは、前面)に平行な面に沿って、移動部140Dを固定部20Dに対して2次元的に移動させることができる。」
オ 段落【0147】
「【0147】
◎なお、上記実施形態の構成および変形例で挙げた各種構成を、矛盾の生じない範囲で適宜組み合わせることで、各々の構成による作用効果を併せ持たせても良いのは言うまでもない。」
(2) 引用発明の認定
前記(1)に摘記した引用文献1に記載された事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(【0057】及び【0060】の「梁構造部103」は、【請求項1】の「梁部」の具体例であるので、「梁部」に記載を統一して引用発明を認定した。)。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「センサ装置であって、
固定部と、
センサを設けた移動部と、
前記固定部に固設され、前記移動部を支持する梁部と、
前記梁部の少なくとも一部を変形させることで前記移動部を前記固定部に対して相対的に移動させる駆動力付与部と、
前記梁部の前記センサ側から前記固定部側に至るまで配設され、前記センサと所定の外部回路との間を電気的に接続する配線部と、
を備え、(【請求項1】)
前記駆動力付与部が、形状記憶合金を含み、(【請求項7】)
前記梁部を変形させることで少なくとも前記センサの所定面に対して水平な一方向に沿って前記移動部を前記固定部に対して相対的に移動させるとともに、(【請求項14】)
前記梁部を変形させることで前記センサの所定面に対して水平であって前記一方向と直交する他方向に沿って前記移動部を前記固定部に対して相対的に移動させるものであって、(【請求項15】)
撮像装置の姿勢のぶれに対応して駆動機構が撮像素子の姿勢を変更することで、撮影時において撮像素子で受光される被写体像が極力一定となるように制御して、手振れ補正するためのものであり、(【0040】)
移動部は、略矩形状の盤面を有する移動基板と、当該移動基板上に設けられた撮像素子を備えて構成されており、(【0049】)
固定基板が固定部を構成し、(【0061】)
梁部は、弾性力により、移動部初期位置に向けて固定部に対して相対的に移動するためのものであり、(【0057】・【請求項1】)
移動基板及び梁部は、MEMSと称される技法(MEMS技法)によって同時期に形成されたものである、(【0060】・【請求項1】)
センサ装置」
5 周知文献3に記載された事項と技術事項Aの認定
(1) 周知文献3に記載された事項
当審拒絶理由通知書において周知文献3として引用された最先の優先日前に発行された文献である国際公開第2013/118601号には、次の記載がある。なお、当該文献の図を適宜挿入した。また、下線は当合議体が付したものであり、後記(2)及び(3)において参照する重要な箇所を示す。
ア [0001]~[0034]
「発明の名称:駆動装置およびレンズユニット
技術分野
[0001]
この発明は、駆動装置およびレンズユニットに関する。
背景技術
[0002]
被駆動プレートの平面を、移動の前後において平行を維持して移動させる装置および方法として、特開2007-114585号公報(特許文献1)、「2次元光走査のためのサスペンションワイヤ駆動機構」、精密光学学会誌Vol.74、No.1、2008、p102-106」(非特許文献1)、および、特表2011-501245号公報(特許文献2)が挙げられる。
[0003]
特許文献1に開示される「像ぶれ補正装置及び撮像装置」においては、光学式手振れ補正装置の小型化を実現するために、2組の平行リンク機構とアクチュエータとを用いた像振れ補正装置が開示されている。
[0004]
非特許文献1に開示される「2次元光走査のためのサスペンションワイヤ駆動機構」においては、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)スキャナの等速走査およびランダムアクセス走査を可能にするために、電磁アクチュエータを用いたサスペンションワイヤ機構が開示されている。
[0005]
特許文献2に開示される「形状記憶合金駆動装置」においては、オートフォーカス付きカメラユニットの小型化を実現するために、板バネを用いた平行リンク機構と形状記憶合金アクチュエータとを備える1次元駆動装置が提案されている。
先行技術文献
特許文献
[0006]
特許文献1:特開2007-114585号公報
特許文献2:特表2011-501245号公報
非特許文献
[0007]
非特許文献1:2次元光走査のためのサスペンションワイヤ駆動機構、精密光学学会誌Vol.74、No.1、2008、p102-106
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0008]
特許文献1に開示される「像ぶれ補正装置及び撮像装置」においては、機構が複雑であり、装置の小型化が困難である。
[0009]
非特許文献1に開示される「2次元光走査のためのサスペンションワイヤ駆動機構」においては、レンズを駆動するアクチュエータがレンズの外側に配置されているためスペースをとり、装置全体として大きくなり、重量も増加するため、装置の小型化が困難である。
[0010]
特許文献2に開示される「形状記憶合金駆動装置」においては、1次元でしか駆動できない。
[0011]
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、被駆動プレートをX方向およびY方向の2次元方向に移動させることができるとともに、装置の小型化を実現可能とする機構を備える、駆動装置およびレンズユニットを提供することにある。
…(中略)…
発明の効果
[0034]
本発明によれば、被駆動部材をX方向およびY方向の2次元方向に移動させることができるとともに、装置の小型化を実現可能とする機構を備える、駆動装置およびレンズユニットを提供することを可能とする。」
イ [0037]~[0053]、[図1]~[図4]
「[0037]
(駆動装置の構成および移動原理)
図1を参照して、本発明に基づいた駆動装置の構成および移動原理について説明する。図1は、実施の形態における駆動装置の構成および駆動原理を示す第1模式図であり、(A)は初期状態(移動前)を示す図、(B)は移動後を示す図である。
[図1]
[図:0001435447000010.jpg]
[0038]
駆動装置1は、ベースプレート(ベース部材)110と、ベースプレート110に対して所定の間隔を隔てて配置され、平面120pを有する被駆動プレート(被駆動部材)120とを有する。ベースプレート110と被駆動プレート120との間には、ベースプレート110と被駆動プレート120とを連結し、平面120pが移動の前後において平行移動するように、被駆動プレート120を支持する支持部材130が設けられている。なお、ベースプレート110が平面を有していてもよく、支持部材130によって、ベースプレート110と被駆動プレート120とが平面に対して平行移動するように構成されている。
[0039]
この駆動装置1には、上記平面120pが移動の前後において平行移動するように、被駆動プレート120を駆動する駆動部材140が設けられている。具体的には、駆動部材140は、被駆動プレート120の一端側からベースプレート110の反対側に向けて傾斜する(図1の側面視において対角線方向)ように、ベースプレート110と被駆動プレート120との間に架設されている。
[0040]
図1において、ベースプレート110と被駆動プレート120との間に駆動部材140が架設されている場合を示しているが、この構成に限定されない。他の構成については、後述の各実施の形態において説明する。
[0041]
ベースプレート110および被駆動プレート120は、たとえば主として樹脂成形品で構成され、その形状は、一例として、平面視において約10mm×10mm程度、厚さ約0.3mm~0.5mmの四角形形状を有している。図示において、ベースプレート110の上面と被駆動プレート120の下面との距離は、約7mm~8mm程度である。
[0042]
ベースプレート110と被駆動プレート120とは、相互に平行となるように、支持部材130に保持されている。しかし、移動の前後において被駆動プレート120の平面120pが平行移動可能であれば、ベースプレート110と被駆動プレート120とが、相互に平行となるように配置される必要はない。
[0043]
支持部材130には、線太さが約80μm~100μm程度の線材である、サスペンションワイヤが用いられている。
[0044]
駆動部材140には、線状の形状記憶合金線が用いられている。形状記憶合金線には、たとえば、Ni-Ti-Pd系形状記憶合金素子が用いられる。駆動部材140に用いられる形状記憶合金線に所定の電流を流して形状記憶合金線を加熱することで形状記憶合金線は縮む。また、加熱を停止することで、形状記憶合金線は元の長さに復元する。
[0045]
本実施の形態においては、図1(B)を参照して、駆動部材140の形状記憶合金線を軸方向(線状の長手方向)に伸縮させることで、被駆動プレート120を、図中X方向に駆動させる。ベースプレート110と被駆動プレート120との間には、平行リンク機構となるように支持部材130を配置することで、平面120pが移動の前後において平行移動する。すなわち、図1(B)では、被駆動プレート120は、ベースプレート110に対して、その間隔がほほ維持された状態でX方向に移動する。
[0046]
平行リンク機構を構成するためには、平面視において、すべての支持部材130が直線状に配置されない状態で、3以上の支持部材130を用いるとよい。
[0047]
(支持部材130とベースプレート110との接合)
支持部材130とベースプレート110との接合について、図2から図4を参照して説明する。図2は、支持部材130のベースプレート110への接合部の構造を示す模式図であり、(A)は、ベースプレート110に支持部材130を直接接合させた構造を示す図、(B)は、ベースプレート110と支持部材130との間に低弾性部材を設けた場合の構造を示す図である。
[図2]
[図:0001435447000011.jpg]
[0048]
図3は、駆動装置の移動原理を示す第2模式図であり、(A)は初期状態(移動前)を示す図、(B)は移動後を示す図である。図4は、支持部材130のベースプレート110への接合部の構造を示す模式図であり、支持部材130とベースプレート110との間に、回転軸受130Pが設けられる構造を示す図である。
[図3]
[図:0001435447000012.jpg]
[図4]
[図:0001435447000013.jpg]
[0049]
支持部材130が弾性変形に富む場合には、図1(B)を参照して支持部材130は湾曲状に弾性変形する。この場合には、支持部材130とベースプレート110との接合部においては、図2(A)を参照して、支持部材130の端部をベースプレート110に設けられた固定穴110hに直接固定することができる。
…(中略)…
[0052]
上記図2および図4においては、支持部材130とベースプレート110との接合部について説明したが、支持部材130と被駆動プレート120との接合部においても同様である。
[0053]
以下に説明する各実施の形態における支持部材130とベースプレート110との接合部、および、支持部材130と被駆動プレート120との接合部には、上記構成が適用される。」
ウ [0054]~[0064]、[図5]、[図6]
「[0054]
(実施の形態1)
図5および図6を参照して、実施の形態1における駆動装置100Aについて説明する。図5は、本実施の形態における駆動装置100Aを示す斜視図、図6は、本実施の形態における駆動装置100Aを示す平面図である。この駆動装置100Aには、上記で説明した移動原理が適用される。
[図5]
[図:0001435447000014.jpg]
[図6]
[図:0001435447000015.jpg]
[0055]
駆動装置100Aは、正四角形のベースプレート110と、ベースプレート110に対して所定の間隔を隔てて配置され、正四角形の平面120pを有する被駆動プレート120とを有する。
[0056]
ベースプレート110は、第1辺110a、第2辺110b、第3辺110c、および第4辺110dを有する。また、第1辺110aと第2辺110bとが交わる第1角部c11、第2辺110bと第3辺110cとが交わる第2角部c12、第3辺110cと第4辺110dとが交わる第3角部c13、および、第4辺110dと第1辺110aとが交わる第4角部c14を有する。
[0057]
被駆動プレート120は、第1辺120a、第2辺120b、第3辺120c、および第4辺120dを有する。また、第1辺120aと第2辺120bとが交わる第1角部c21、第2辺120bと第3辺120cとが交わる第2角部c22、第3辺120cと第4辺120dとが交わる第3角部c23、および、第4辺120dと第1辺120aとが交わる第4角部c24を有する。
[0058]
図5および図6において、ベースプレート110の第1辺110aおよび第3辺110cに沿う方向をX方向とし、ベースプレート110の第2辺110bおよび第4辺110dに沿うX方向の直交する方向をY方向とする。以下の各実施の形態においても同様である。
[0059]
ベースプレート110の第1角部c11の近傍と被駆動プレート120の第1角部c21の近傍との間には、第1支持部材130aおよび第1駆動部材140aが設けられている。ベースプレート110の第2角部c12の近傍と被駆動プレート120の第2角部c22の近傍との間には、第2支持部材130bおよび第2駆動部材140bが設けられている。
[0060]
ベースプレート110の第3角部c13の近傍と被駆動プレート120の第3角部c23の近傍との間には、第3支持部材130cおよび第3駆動部材140cが設けられている。ベースプレート110の第4角部c14の近傍と被駆動プレート120の第4角部c24の近傍との間には、第4支持部材130dおよび第4駆動部材140dが設けられている。
[0061]
図6を参照して、ベースプレート110および被駆動プレート120が正方形の場合において、第1駆動部材140a、第2駆動部材140b、第3駆動部材140c、および第4駆動部材140dは、中心(重心)位置Pから見て、第1駆動部材140aと第3駆動部材140cとが点対称となる位置に配置され、第2駆動部材140bと第4駆動部材140dとが点対称となる位置に配置されている。
[0062]
また、中心位置Pを通過するX軸に対して、第1駆動部材140aと第2駆動部材140bとが線対称となる位置に配置され、第3駆動部材140cと第4駆動部材140dとが線対称となる位置に配置されている。
[0063]
上記構成からなる駆動装置100Aにおいて、たとえば、第1駆動部材140aと第2駆動部材140bとに同時に所定の電流を流した場合には、第1駆動部材140aと第2駆動部材140bとは縮み、第3駆動部材140cと第4駆動部材140dとは引き伸ばされる状態となる。その結果、被駆動プレート120の平面120pは、X方向に平行移動する。
[0064]
また、第2駆動部材140bと第3駆動部材140cとに同時に所定の電流を流した場合には、第2駆動部材140bと第3駆動部材140cとは縮み、第1駆動部材140aと第4駆動部材140dとは引き伸ばされる状態となる。その結果、被駆動プレート120の平面120pは、Y方向に平行移動する。」
エ [0085]~[0088]、[図16]
「[0085]
(実施の形態2)
次に、図16を参照して、実施の形態2における駆動装置100Bについて説明する。図16は、本実施の形態における駆動装置100Bを示す斜視図である。なお、上記実施の形態1における駆動装置100Aと同一または相当箇所については、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない。
[図16]
[図:0001435447000016.jpg]
[0086]
実施の形態1における駆動装置100Aにおいては、ベースプレート110と被駆動プレート120との間に、第1駆動部材140aから第4駆動部材140dを架設する構成を採用していた。本実施の形態における駆動装置100Bにおいては、被駆動プレート120と第1支持部材130a~第4支持部材130bとの間に、第1駆動部材140aから第4駆動部材140dをそれぞれ架設する構成を採用している。
[0087]
この構成を採用した場合でも、実施の形態1における駆動装置100Aと同様に、第1駆動部材140aと第2駆動部材140bとに同時に所定の電流を流した場合には、第1駆動部材140aと第2駆動部材140bとは縮み、第3駆動部材140cと第4駆動部材140dとが引き伸ばされる状態となる。その結果、被駆動プレート120の平面120pは、X方向に平行移動する。
[0088]
また、第2駆動部材140bと第3駆動部材140cとに同時に所定の電流を流した場合には、第2駆動部材140bと第3駆動部材140cとは縮み、第1駆動部材140aと第4駆動部材140dとは引き伸ばされる状態となる。その結果、被駆動プレート120の平面120pは、Y方向に平行移動する。」
オ [0089]~[0105]、[図17]~[図20]
「[0089]
(実施の形態3)
次に、図17を参照して、実施の形態3における駆動装置100Cについて説明する。図17は、本実施の形態における駆動装置100Cを示す平面図である。なお、上記実施の形態1における駆動装置100Aと同一または相当箇所については、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない。
[図17]
[図:0001435447000017.jpg]
[0090]
実施の形態3における駆動装置100Cにおいては、ベースプレート110と被駆動プレート120との間に、第1駆動部材140a1から第8駆動部材140d2の8本の駆動部材を架設する構成を採用している。
[0091]
(第1駆動部材140a1)
具体的には、被駆動プレート120の第1辺120a側において、第1駆動部材140a1の一端が被駆動プレート120の第1角部c21(第1の箇所)の近傍に固定され、第1駆動部材140a1の他端がベースプレート110の第4角部c14(第8の箇所)の近傍に固定されている。したがって、第1駆動部材140a1は、被駆動プレート120の一端側からベースプレート110の反対側に向けて傾斜するように、ベースプレート110と被駆動プレート120との間に架設されている。
[0092]
(第2駆動部材140a2)
また、被駆動プレート120の第1辺120a側において、第2駆動部材140a2の一端が被駆動プレート120の第4角部c24(第4の箇所)の近傍に固定され、第2駆動部材140a2の他端がベースプレート110の第1角部c11(第5の箇所)の近傍に固定されている。したがって、第2駆動部材140a2は、被駆動プレート120の一端側からベースプレート110の反対側に向けて傾斜する(第1駆動部材140a1とは交差する)ように、ベースプレート110と被駆動プレート120との間に架設されている。
[0093]
(第3駆動部材140b1)
同様に、被駆動プレート120の第2辺120b側において、第3駆動部材140b1の一端が被駆動プレート120の第2角部c22(第2の箇所)の近傍に固定され、第3駆動部材140b1の他端がベースプレート110の第1角部c11(第5の箇所)の近傍に固定されている。したがって、第3駆動部材140b1は、被駆動プレート120の一端側からベースプレート110の反対側に向けて傾斜するように、ベースプレート110と被駆動プレート120との間に架設されている。
[0094]
(第4駆動部材140b2)
また、被駆動プレート120の第2辺120b側において、第4駆動部材140b2の一端が被駆動プレート120の第1角部c21(第1の箇所)の近傍に固定され、第4駆動部材140b2の他端がベースプレート110の第2角部c12(第6の箇所)の近傍に固定されている。したがって、第4駆動部材140b2は、被駆動プレート120の一端側からベースプレート110の反対側に向けて傾斜する(第3駆動部材140b1とは交差する)ように、ベースプレート110と被駆動プレート120との間に架設されている。
[0095]
(第5駆動部材140c1)
同様に、被駆動プレート120の第3辺120c側において、第5駆動部材140c1の一端が被駆動プレート120の第3角部c23(第3の箇所)の近傍に固定され、第5駆動部材140c1の他端がベースプレート110の第2角部c12(第6の箇所)の近傍に固定されている。したがって、第5駆動部材140c1は、被駆動プレート120の一端側からベースプレート110の反対側に向けて傾斜するように、ベースプレート110と被駆動プレート120との間に架設されている。
[0096]
(第6駆動部材140c2)
また、被駆動プレート120の第3辺120c側において、第6駆動部材140c2の一端が被駆動プレート120の第2角部c22(第2の箇所)の近傍に固定され、第6駆動部材140c2の他端がベースプレート110の第3角部c13(第7の箇所)の近傍に固定されている。したがって、第6駆動部材140c2は、被駆動プレート120の一端側からベースプレート110の反対側に向けて傾斜する(第5駆動部材140c1とは交差する)ように、ベースプレート110と被駆動プレート120との間に架設されている。
[0097]
(第7駆動部材140d1)
同様に、被駆動プレート120の第4辺120d側において、第7駆動部材140d1の一端が被駆動プレート120の第4角部c24(第4の箇所)の近傍に固定され、第7駆動部材140d1の他端がベースプレート110の第3角部c13(第7の箇所)の近傍に固定されている。したがって、第7駆動部材140d1は、被駆動プレート120の一端側からベースプレート110の反対側に向けて傾斜するように、ベースプレート110と被駆動プレート120との間に架設されている。
[0098]
(第8駆動部材140d2)
また、被駆動プレート120の第4辺120d側において、第8駆動部材140d2の一端が被駆動プレート120の第3角部c23(第3の箇所)の近傍に固定され、第8駆動部材140d2の他端がベースプレート110の第4角部c14(第8の箇所)の近傍に固定されている。したがって、第8駆動部材140d2は、被駆動プレート120の一端側からベースプレート110の反対側に向けて傾斜する(第7駆動部材140d1とは交差する)ように、ベースプレート110と被駆動プレート120との間に架設されている。
…(中略)…
[0101]
(駆動装置の位置決め方法)
上記構成からなる駆動装置100Cを用いた場合の駆動装置の位置決め方法について、図18から図20を参照して説明する。図18から図20は、駆動装置100Cの位置決め方法を示す第1から第3模式図である。
[0102]
図18を参照して、第1駆動部材140a1と第4駆動部材140b2とに同時に所定の電流を流した場合には、第1駆動部材140a1と第4駆動部材140b2とは縮み、被駆動プレート120には、図18中に示す矢印XY1方向に向かう力が作用する。
[図18]
[図:0001435447000018.jpg]
[0103]
図19を参照して、第7駆動部材140d1と第2駆動部材140a2とに同時に所定の電流を流した場合には、第7駆動部材140d1と第2駆動部材140a2とは縮み、被駆動プレート120には、図19中に示す矢印XY2方向に向かう力が作用する。
[図19]
[図:0001435447000019.jpg]
[0104]
図20を参照して、上記図18および図19に示す移動原理から、第1駆動部材140a1、第4駆動部材140b2、第7駆動部材140d1、および第2駆動部材140a2に同時に所定の電流を流した場合には、第1駆動部材140a1、第4駆動部材140b2、第7駆動部材140d1、および第2駆動部材140a2は縮み、被駆動プレート120には、図20中に示すように矢印Y方向に向かう力が作用する。また、被駆動プレート120を矢印Y方向に移動させるためには、第4駆動部材140b2、第7駆動部材140d1に、同時に所定の電流を流してもよい。
[図20]
[図:0001435447000020.jpg]
[0105]
このようにして、第1駆動部材140a1、第2駆動部材140a2、第3駆動部材140b1、第4駆動部材140b2、第5駆動部材140c1、第6駆動部材140c2、第7駆動部材140d1、および第8駆動部材140d2の伸縮を制御することで、被駆動プレート120を任意の移動方向に向けて平行移動させることができる。」
カ [0117]~[0121]、[図25]、[図26]
「[0117]
(実施の形態4)
次に、図25および図26を参照して、実施の形態4における駆動装置100Dについて説明する。図25は、本実施の形態における駆動装置100Dを示す斜視図、図26は、図25中のXXVIで囲まれた領域の部分拡大斜視図であり、駆動部材である形状記憶合金線の被駆動プレートへの固定構造を示す図である。なお、上記実施の形態3における駆動装置100Cと同一または相当箇所については、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない。
[図25]
[図:0001435447000021.jpg]
[図26]
[図:0001435447000022.jpg]
[0118]
上記実施の形態3における駆動装置100Cにおいては、8本の駆動部材を採用した場合について説明したが、本実施の形態は、実施の形態3における第1駆動部材140a1と第4駆動部材140b2とに一本化された形状記憶合金線を用いて第1駆動部材140aとし、第3駆動部材140b1と第6駆動部材140c2とに一本化された形状記憶合金線を用いて第2駆動部材140bとし、第5駆動部材140c1と第8駆動部材140d2とに一本化された形状記憶合金線を用いて第3駆動部材140cとし、第2駆動部材140a2と第7駆動部材140d1とに一本化された形状記憶合金線を用いて第4駆動部材140dとした構成を採用している。
[0119]
また、第1駆動部材140a、第2駆動部材140b、第3駆動部材140c、および第4駆動部材140dにおいて、各駆動部材の両端部は、ベースプレート110に固定され、各駆動部材140の中間領域は、被駆動プレート120に固定されている。
[0120]
図26を参照して、第1駆動部材140aの中間領域の被駆動プレート120への固定は、被駆動プレート120の第1角部c21の近傍に設けられた切欠領域120rに第1駆動部材140aを係合する。他の駆動部材の中間領域の被駆動プレート120への固定も同様である。
[0121]
本実施の形態4における駆動装置100Dにおいても、実施の形態3の駆動装置100Eと同様の作用効果を得ることができる。」
キ [0122]~[0126]、[図27]
「[0122]
(実施の形態5)
次に、図27を参照して、実施の形態5における駆動装置100Eについて説明する。図27は、本実施の形態における駆動装置100Eを示す斜視図である。なお、上記実施の形態3における駆動装置100Cと同一または相当箇所については、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない。
[図27]
[図:0001435447000023.jpg]
[0123]
上記実施の形態3における駆動装置100Cにおいては、8本の駆動部材を採用した場合について説明したが、本実施の形態は、実施の形態3における第1駆動部材140a1と第8駆動部材140d2とに一本化された形状記憶合金線を用いて第1駆動部材140aとし、第2駆動部材140a2と第3駆動部材140b1とに一本化された形状記憶合金線を用いて第2駆動部材140bとし、第4駆動部材140b2と第5駆動部材140c1とに一本化された形状記憶合金線を用いて第3駆動部材140cとし、第6駆動部材140c2と第7駆動部材140d1とに一本化された形状記憶合金線を用いて第4駆動部材140dとした構成を採用している。
[0124]
また、第1駆動部材140a、第2駆動部材140b、第3駆動部材140c、および第4駆動部材140dにおいて、各駆動部材の両端部は、被駆動プレート120に固定され、各駆動部材140の中間領域は、ベースプレート110に固定されている。
[0125]
第1駆動部材140a1の中間領域のベースプレート110への固定は、図26に示した構成を適用することができる。
[0126]
本実施の形態5における駆動装置100Eにおいても、実施の形態3の駆動装置100Eと同様の作用効果を得ることができる。」
ク [0137]~[0139]、[図32]
「[0137]
(実施の形態9)
次に、図32を参照して、実施の形態9における駆動装置100Iについて説明する。図32は、本実施の形態における駆動装置100Iを示す斜視図である。なお、上記実施の形態5における駆動装置100Eと同一または相当箇所については、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない。
[図32]
[図:0001435447000024.jpg]
[0138]
本実施の形態における駆動装置100Iは、上記実施の形態5における駆動装置100Eの変形例を示したものである。実施の形態5における駆動装置100Eにおいては、各駆動部材140a~140dを被駆動プレート120に固定した場合を示しているが、本実施の形態における駆動装置100Iは、各駆動部材140a~140dの端部領域を各支持部材130a~130dに固定している。
[0139]
本実施の形態における駆動装置100Iにおいても、実施の形態5の駆動装置100Eと同様の作用効果を得ることができる。」
ケ [0144]~[0146]、[図34]
「[0144]
(実施の形態11)
次に、図34を参照して、実施の形態11における駆動装置100Kについて説明する。図34は、本実施の形態における駆動装置100Kを示す斜視図である。なお、上記実施の形態7における駆動装置100Gと同一または相当箇所については、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない。
[図34]
[図:0001435447000025.jpg]
[0145]
本実施の形態における駆動装置100Kは、上記実施の形態7における駆動装置100Gの変形例を示したものである。実施の形態7における駆動装置100Gにおいては、各駆動部材140の端部領域を被駆動プレート120に固定した場合を示しているが、本実施の形態における駆動装置100Kは、各駆動部材140の端部領域を第3支持部材130cおよび第4支持部材130dに固定している。
[0146]
本実施の形態における駆動装置100Kにおいても、実施の形態7の駆動装置100Gと同様の作用効果を得ることができる。」
コ 請求の範囲
「[請求項1]
ベース部材と、
前記ベース部材に対して所定の間隔を隔てて配置される被駆動部材と、
前記ベース部材と前記被駆動部材とを連結し、前記被駆動部材の移動の前後において、前記ベース部材と前記被駆動部材とが前記所定の間隔をほぼ維持するように、前記被駆動部材を支持する支持部材と、
前記被駆動部材が移動の前後において平行移動するように、前記被駆動部材を駆動する駆動部材とを備え、
前記駆動部材は、線状の形状記憶合金線を伸縮させることで、前記被駆動部材を移動させる、駆動装置。
[請求項2] (省略)
[請求項3] (省略)
[請求項4] (省略)
[請求項5]
前記駆動部材は、前記ベース部材と前記支持部材との間に架設されている、請求項1に記載の駆動装置。
[請求項6] (省略)
[請求項7]
前記駆動部材の両端部が、前記支持部材に固定され、
前記駆動部材の中間領域が、前記ベース部材に固定されている、請求項5に記載の駆動装置。
…(後略)」
(2) 周知文献3の[図16]からの認定事項
周知文献3の請求項1及び[0086]の記載を参酌しつつ[図16]を観察すると、当業者は次の事項(以下「認定事項1」という。)を認識することができる。
<認定事項1>
「駆動部材の一方の端部が支持部材に固定され、他方の端部がベース部材に固定されていること。」
(3) 技術事項Aの認定
前記(2)において認定した認定事項1及び前記アに摘記した周知文献3に記載された事項([請求項1]、[0049]、[請求項7]、[図32]、[図34]、[0086]、[図16])を総合すると、周知文献3には、次の技術事項(以下「技術事項A」という。)が記載されていると認められる。
<技術事項A>
「ベース部材と、
前記ベース部材に対して所定の間隔を隔てて配置される被駆動部材と、
前記ベース部材と前記被駆動部材とを連結し、前記被駆動部材の移動の前後において、前記ベース部材と前記被駆動部材とが前記所定の間隔をほぼ維持するように、前記被駆動部材を支持する弾性変形に富む支持部材と、
前記被駆動部材が移動の前後において平行移動するように、前記被駆動部材を駆動する駆動部材とを備え、
前記駆動部材は、線状の形状記憶合金線を伸縮させることで、前記被駆動部材を移動させる駆動装置において、([請求項1]、[0049])
前記駆動部材の両端部が、前記支持部材に固定され、前記駆動部材の中間領域が、前記ベース部材に固定されている、([請求項7]、[図32]、[図34])
又は、
前記駆動部材の一方の端部が前記支持部材に固定され、他方の端部が前記ベース部材に固定されている、(認定事項1、[0086]、[図16])
駆動装置」
6 本願発明と引用発明の対比
(1) 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
ア 構成Aの観点(静止プレート)
(ア) 構成Aは、「静止プレート」を含むことである。
(イ) 引用発明における「固定部を構成[する]」「固定基板」は、本願発明における「静止プレート」に相当する。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「静止プレート」を含む点。
イ 構成Bの観点(可動プレート)
(ア) 構成Bは、「前記静止プレートに対してx軸及びy軸に関して移動可能な可動プレート」を含むことである。
(イ) 本願の明細書の【0015】や【図17】を参酌すると、本願発明における「x軸及びy軸の方向」は、センサシフトカメラ組立体100のz軸110に対して垂直な面内の方向である。
(ウ)a 引用発明における「移動部」の構成要素である「略矩形状の盤面を有する移動基板」は、本願発明における「可動プレート」に相当する。
b そして、引用発明は次の構成を備える。
「前記梁部を変形させることで少なくとも前記センサの所定面に対して水平な一方向に沿って前記移動部を前記固定部に対して相対的に移動させるとともに、
前記梁部を変形させることで前記センサの所定面に対して水平であって前記一方向と直交する他方向に沿って前記移動部を前記固定部に対して相対的に移動させるもの[こと]」
c そうすると、引用発明における「略矩形状の盤面を有する移動基板」は、本願発明における「前記静止プレートに対してx軸及びy軸に関して移動可能な可動プレート」に相当するといえる。
(エ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記静止プレートに対してx軸及びy軸に関して移動可能な可動プレート」を含む点。
ウ 構成Cの観点(センサ取付領域)
(ア) 構成Cは、「前記可動プレートと一体である前記可動プレートにおけるセンサ取付領域」を含むことである。
(イ) 引用発明における「撮像素子」は、本願発明における「センサ」に相当する。そして、引用発明においては、「移動部は、略矩形状の盤面を有する移動基板と、当該移動基板上に設けられた撮像素子を備えて構成されて[いる]」のであるから、引用発明における移動基板(「可動プレート」に相当する。)が本願発明における「可動プレートと一体である可動プレートにおけるセンサ取付領域」を備えていることは明らかである。
(ウ) そうすると、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記可動プレートと一体である前記可動プレートにおけるセンサ取付領域」を含む点。
エ 構成Dの観点(ばね)
(ア) 構成Dは、「前記可動プレートを前記静止プレートに連結する1つ以上のばねであって、前記可動プレートから延びる1つ以上のばねアームを含み、前記1つ以上のばねアームは前記可動プレートのセンタリングを支援するように構成される、1つ以上のばね」を含むことである。
(イ) 引用発明における「梁部」は、「少なくとも一部を変形させること」ができるものであって、「弾性力」を有するものであるから、本願発明にいうところの「ばね」であるといえる。
(ウ) 引用発明における「梁部」は、「前記固定部に固設され、前記移動部を支持する」ことから、前記ア及びイを踏まえると、本願発明における「前記可動プレートを前記静止プレートに連結する」ことに相当する構成を備えるといえる。
(エ) 引用発明においては、「移動基板及び梁部は、MEMSと称される技法(MEMS技法)によって同時期に形成されたものである」ことから、引用発明は、本願発明における「前記可動プレートから延びる1つ以上のばねアームを含[む]」ことに相当する構成を備えるといえる。
(オ) 引用発明においては、「梁部は、弾性力により、移動部初期位置に向けて固定部に対して相対的に移動するためのものであ[る]」ことから、引用発明は、本願発明における「前記1つ以上のばねアームは前記可動プレートのセンタリングを支援するように構成される」ことに相当する構成を備えるといえる。
(カ) 以上の検討結果をまとめると、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記可動プレートを前記静止プレートに連結する1つ以上のばねであって、前記可動プレートから延びる1つ以上のばねアームを含み、前記1つ以上のばねアームは前記可動プレートのセンタリングを支援するように構成される、1つ以上のばね」を含む点。
オ 構成Eの観点(形状記憶合金(SMA)素子)
(ア) 構成Eは、「前記静止プレートと前記可動プレートに連結される1つ以上の形状記憶合金(SMA)素子とを含[む]」ことである。
(イ)a 引用発明は、次の構成を備える。
「前記梁部の少なくとも一部を変形させることで前記移動部を前記固定部に対して相対的に移動させる駆動力付与部」
「前記駆動力付与部が、形状記憶合金を含[む]」こと。
b そうすると、引用発明は、本願発明における「前記静止プレートと前記可動プレートに連結される1つ以上の形状記憶合金(SMA)素子とを含[む]」ことに相当する構成を備えることは明らかである。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記静止プレートと前記可動プレートに連結される1つ以上の形状記憶合金(SMA)素子とを含[む]」点。
カ 構成Fの観点(レンズに対してセンサ取付領域を変位させる)
(ア) 構成Fは、「前記可動プレートは、1つ以上のレンズに対して前記センサ取付領域を変位させ[る]」ことである。
(イ) 引用発明は、「撮像装置の姿勢のぶれに対応して駆動機構が撮像素子の姿勢を変更することで、撮影時において撮像素子で受光される被写体像が極力一定となるように制御して、手振れ補正するためのものであ[る]」から、前記イ及びウも踏まえると、本願発明における「前記可動プレートは、1つ以上のレンズに対して前記センサ取付領域を変位させ[る]」ことに相当する構成を備えることは明らかである。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記可動プレートは、1つ以上のレンズに対して前記センサ取付領域を変位させ[る]」点。
キ 構成Gの観点(SMA素子の取り付け)
(ア) 構成Gは、「前記1つ以上のSMA素子はSMA材料を含み、1つ以上のSMA素子の各々は、SMA材料の端部において各ばねアームに電気的かつ構造的に取り付けられ、各SMA素子の中心領域においてばねアームから開放される」ことである。
(イ) 引用発明においては「前記駆動力付与部が、形状記憶合金を含[む]」ことから、引用発明が「前記1つ以上のSMA素子はSMA材料を含[む]」ことに相当する構成を備えることは明らかである。
(ウ) 一方で、本願発明が「SMA材料の端部において各ばねアームに電気的かつ構造的に取り付けられ、各SMA素子の中心領域においてばねアームから開放される」のに対し、引用発明においては、この点が特定されていない点において相違する。
(エ) 以上の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明の構成Gの観点にける一致点及び相違点は、次のa及びbのとおりである。
a 構成Gの観点における一致点
「前記1つ以上のSMA素子はSMA材料を含[む]」点。
b 構成Gの観点における相違点
本願発明においては、
「SMA材料の端部において各ばねアームに電気的かつ構造的に取り付けられ、各SMA素子の中心領域においてばねアームから開放される」のに対して、
引用発明においては、この点が特定されていない点。
ク 構成Xの観点(サスペンション組立体)
引用発明の「センサ装置」は、本願発明の構成A~Fまでを備えることから、本願発明にいうところの「サスペンション組立体」であるといえる。
したがって、「サスペンション組立体」の発明である本願発明と「センサ装置」の発明である引用発明は、「サスペンション組立体」の発明である点において一致する。
(2) 一致点及び相違点
前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のア及びイに示すとおりである。
ア 一致点
「静止プレートと、
前記静止プレートに対してx軸及びy軸に関して移動可能な可動プレートと、
前記可動プレートと一体である前記可動プレートにおけるセンサ取付領域と、
前記可動プレートを前記静止プレートに連結する1つ以上のばねであって、前記可動プレートから延びる1つ以上のばねアームを含み、前記1つ以上のばねアームは前記可動プレートのセンタリングを支援するように構成される、1つ以上のばねと、
前記静止プレートと前記可動プレートに連結される1つ以上の形状記憶合金(SMA)素子とを含み、
前記可動プレートは、1つ以上のレンズに対して前記センサ取付領域を変位させ、
前記1つ以上のSMA素子はSMA材料を含む
サスペンション組立体」の発明である点。
イ 相違点
本願発明においては、
「SMA材料の端部において各ばねアームに電気的かつ構造的に取り付けられ、各SMA素子の中心領域においてばねアームから開放される」のに対して、
引用発明においては、この点が特定されていない点。
(※当審注 本願の請求項1の記載においては、「SMA材料の端部」が「両端部」であることの特定はないから、前記相違点においては、SMA材料の片方の端部のみが各ばねアームに電気的かつ構造的に取り付けられていることも包摂すると解釈する。)
7 判断
(1) 引用発明において、「固定基板」(「固定部」を構成する。)、「移動基板」(「移動部」を構成する。)、「梁部」(「移動部」を支持する。)及び「形状記憶合金」(駆動力付与部(梁部の少なくとも一部を変形させることで移動部を固定部に対して相対的に移動させる。))の機械的な機構として具体的にどのようなものとするかは、当業者が適宜選択できる設計事項である。
(2)ア ここで、前記5(3)において、技術事項Aとして認定したとおり、次の技術事項は最先の優先日前に発行された文献に記載されている。
<技術事項A>
「ベース部材(引用発明の「固定基板」に相当する。)と、
前記ベース部材に対して所定の間隔を隔てて配置される被駆動部材(引用発明の「移動基板」に相当する。)と、
前記ベース部材と前記被駆動部材とを連結し、前記被駆動部材の移動の前後において、前記ベース部材と前記被駆動部材とが前記所定の間隔をほぼ維持するように、前記被駆動部材を支持する弾性変形に富む支持部材(引用発明の「梁部」に対応する。)と、
前記被駆動部材が移動の前後において平行移動するように、前記被駆動部材を駆動する駆動部材(引用発明の「駆動力付与部」に相当する。)とを備え、
前記駆動部材は、線状の形状記憶合金線を伸縮させることで、前記被駆動部材を移動させる駆動装置において、
前記駆動部材の両端部が、前記支持部材に固定され、前記駆動部材の中間領域が、前記ベース部材に固定されている、
又は、
前記駆動部材の一方の端部が、前記支持部材に固定され、他方の端部が前記ベース部材に固定されている、
駆動装置」
イ 技術事項Aは、引用発明と、次の点において共通する。
「固定基板、移動基板、移動基板を固定基板に対して移動可能に支持する「ばねアーム」に相当する弾性の支持部材及び線状の形状記憶合金線を伸縮させる駆動力付与部より構成される駆動装置」
(3) そうすると、引用発明における「固定基板」、「移動基板」、「梁部」(「ばねアーム」に相当する。)及び「線状の形状記憶合金」の機構として、「線状の形状記憶合金の両端部がばねアームに固定され、さらに線状の形状記憶合金の中間領域が固定基板に固定されていること」又は「線状の形状記憶合金の一方の端部がばねアームに固定され、他方の端部が固定基板に固定されていること」のいずれかを選択することは、当業者には自明の設計変更にすぎず、その際、線状の形状記憶合金に通電する必要があることから、形状記憶合金とばねアームを固定する点で電気的に接続することも自明である。
(4) その結果、SMA材料の端部において各ばねアームに電気的かつ構造的に取り付けられ、各SMA素子の中心領域においてばねアームから開放されることとなり、相違点に係る構成を備えることとなる。したがって、引用発明において前記相違点に係る構成を備えるようにすることは、当業者にとっては、適宜なし得る設計変更にすぎない。
(5) そして、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
(6) したがって、本願発明は、引用発明及び技術事項Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
8 請求人の主張について
請求人は、本願発明が有する「1つ以上のSMA素子の各々は、SMA材料の端部において各ばねアームに電気的かつ構造的に取り付けられ、各SMA素子の中心領域においてばねアームから開放される」という特徴は、引用文献1および周知文献1-4のいずれにも記載されておらず、示唆すらないと主張している。
しかしながら、当該技術事項が引用発明及び技術事項Aから当業者が容易に想到し得たことは前記7において説示したとおりであるから、上記請求人の主張は採用できない。
9 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-008371