特許拒絶査定不服審判
2023-021137
カメラ装置
- 審判番号
- 2023-021137
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-118030
- 請求日
- 2023年12月12日
- 審決日
- 2025年03月06日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】信泰光學(深セン)有限公司
- 【請求人代理人】弁理士法人白坂
- 【請求人】亞洲光學股▲ふん▼有限公司
- 【請求人代理人】弁理士法人白坂
- 審判長/審判官
- 審判長 山村 浩
- 審判官 芝沼 隆太
- 審判官 松川 直樹
- 分類
- P18 .121-Z (G03B) / P18 .575-Z (G03B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-118030号「カメラ装置」拒絶査定不服審判事件〔令和4年9月8日出願公開、特開2022-132654号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年5月31日(パリ条約第4条の規定の例による優先権主張 2017年8月2日 台湾)を出願日とする特願2018-104411号の一部を2019年12月13日に新たな特許出願とした特願2019-225627号の一部をさらに2022年(令和4年)7月25日に新たな特許出願としたものであって、その手続の概要は、以下のとおりである。
令和4年 7月25日 :上申書の提出
令和5年 3月13日付け:拒絶理由通知書
同年 6月27日 :意見書、手続補正書の提出
同年 8月 3日付け:拒絶査定
同年12月12日 :審判請求書、手続補正書(以下、この手続補正書によりされた補正を「本件補正」という。)の提出
第2 令和5年12月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年12月12日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正後の請求項1の記載は次のとおりである(下線部は、補正箇所である。)。なお、「前記外環状部分、その形状が、オーク樽形状、あるいは、前記外環状部分の形状は八角形、あるいは、前記外環状部分の形状は六角形であり、」における「前記外環状部分、その形状が、」の記載は、「前記外環状部分の形状が、」の明らかな誤記であるから、誤記を正している。
「【請求項1】
カメラ装置であって、
複数のレンズ、および、
環状体、を有し、
前記カメラ装置は、その焦点距離が固定であり、
前記複数のレンズ、および、前記環状体は、光軸に沿って、オブジェクト側からイメージ側に配置され、
前記環状体は、前記オブジェクト側と前記複数のレンズの間、前記複数のレンズの間、あるいは、前記複数のレンズと前記イメージ側の間に設置され、
前記環状体は、環状本体、外環状部分、および、内環状部分を有し、前記環状本体と前記外環状部分、および、前記内環状部分は連結し、前記環状本体は、前記外環状部分と前記内環状部分の間に設置され、前記内環状部分は非円形であり、且つ、前記光軸を囲繞して、ホールを形成し、
前記外環状部分の形状が、オーク樽形状、あるいは、前記外環状部分の形状は八角形、あるいは、前記外環状部分の形状は六角形であり、
前記内環状部分より形成され、前記光軸が通過するホールの最大尺寸はDx、前記内環状部分より形成され、前記光軸が通過するホールの最小尺寸はDyであり、
前記カメラ装置は以下の条件を満たし:
Dx>Dy;
0mm<ΔS/(Dx/2)<8mm;
前記外環状部分と前記内環状部分の間に形成される横方向の水平距離(Dh)と、前記外環状部分と前記内環状部分の間に形成される縦方向の垂直距離(Dv)を有し、前記水平距離と前記垂直距離の比率は、1.1から27.6の間で、前記ΔSは、前記Dxを直径とする円の面積と前記ホール断面積の差であることを特徴とするカメラ装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の請求項1の記載は次のとおりである。なお、前記(1)と同箇所については、同様に誤記を正している。
「【請求項1】
カメラ装置であって、
複数のレンズ、および、
環状体、を有し、
前記カメラ装置は、その焦点距離が固定であり、
前記複数のレンズ、および、前記環状体は、光軸に沿って、オブジェクト側からイメージ側に配置され、
前記環状体は、前記オブジェクト側と前記複数のレンズの間、前記複数のレンズの間、あるいは、前記複数のレンズと前記イメージ側の間に設置され、
前記環状体は、環状本体、外環状部分、および、内環状部分を有し、前記環状本体と前記外環状部分、および、前記内環状部分は連結し、前記環状本体は、前記外環状部分と前記内環状部分の間に設置され、前記内環状部分は非円形であり、且つ、前記光軸を囲繞して、ホールを形成し、
前記外環状部分の形状が、オーク樽形状、あるいは、前記外環状部分の形状は八角形、あるいは、前記外環状部分の形状は六角形であり、
前記内環状部分より形成され、前記光軸が通過するホールの最大尺寸はDx、前記内環状部分より形成され、前記光軸が通過するホールの最小尺寸はDyであり、
前記カメラ装置は以下の条件を満たし:
Dx>Dy;
前記外環状部分と前記内環状部分の間に形成される横方向の水平距離(Dh)と、前記外環状部分と前記内環状部分の間に形成される縦方向の垂直距離(Dv)を有し、前記水平距離と前記垂直距離の比率は、1.1から27.6の間であることを特徴とするカメラ装置。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「光軸が通過するホールの最大尺寸」である「Dx」に関して、「Dxを直径とする円の面積と前記ホール断面積の差」を「ΔS」とした場合に、「0mm<ΔS/(Dx/2)<8mm」であると限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明の認定
本件補正発明は、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるものであって、その請求項1の記載は、前記1(1)のとおりである。
(2)引用文献の記載事項及び引用発明の認定
ア 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2007-148051号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は当審が付した。以下同じ。)。
(ア)特許請求の範囲
「【請求項1】
物体の光学像を形成する撮影レンズ系と、前記光学像を電気的な信号に変換する撮像素子と、を備え、前記撮影レンズ系が、複数のレンズと、レンズ間に位置する開口絞りと、その開口絞りより物体側で光軸を略90°折り曲げる反射部材と、を有する撮影レンズユニットであって、
前記反射部材よりも像側に位置する光軸を像側光軸とすると、前記開口絞りが像側光軸に関して非対称な開口形状を有することを特徴とする撮影レンズユニット。」
「【請求項4】
前記開口絞りの開口形状が小判形状であることを特徴とする請求項1記載の撮影レンズユニット。」
「【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の撮影レンズユニットを備えたことを特徴とする撮像装置。」
(イ)発明の詳細な説明
「【技術分野】
【0001】
本発明は撮影レンズユニットに関するものであり、例えば、被写体の映像を撮像素子で取り込むデジタルカメラ,画像入力機能付きデジタル機器等の撮像装置と、その薄型化に適した撮影レンズユニットに関するものである。」
「【0018】
図9に、デジタルカメラCUの概略光学構成例を模式的断面で示す。デジタルカメラCUに搭載されている撮影レンズユニットLUは、物体(すなわち被写体)側から順に、物体の光学像を変倍可能に形成するズームレンズ系ZL(撮影レンズ系に相当する。PR:プリズム,RL:反射面,ST:開口絞り)と、平行平面板PT(必要に応じて配置される光学的ローパスフィルター,赤外カットフィルター等の光学フィルター;撮像素子SRのカバーガラス等に相当する。)と、ズームレンズ系ZLにより受光面上に形成された光学像を電気的な信号に変換する撮像素子SRと、を備えている。なお、筐体1内の正面側上部には撮影レンズ窓2(図8(A))を開閉するレンズバリアLBが配置されており、矢印で示すようにレンズバリアLBが上下して撮影レンズ窓2が開閉する構成になっている。」
「【0022】
ズームレンズ系ZLは複数のレンズ群から成っており、複数のレンズ群が光軸に沿って移動し、レンズ群間隔を変化させることにより変倍(すなわちズーミング)を行う構成になっている。ズームレンズ系ZLに含まれている開口絞りSTは、後で詳しく説明するように、開口形状の非対称な特徴的構成要素となっている。また、この撮影レンズユニットLUでは開口絞りSTがシャッター兼用になっているが、開口絞りとシャッターとを独立に配置してもよく、シャッターをズーム位置固定とし開口絞りをズーム移動させる構成としてもよい。なお、撮影レンズユニットLUに使用する撮影レンズ系はズームレンズ系ZLに限らない。ズームレンズ系ZLの代わりに、他のタイプの変倍光学系(例えば、複数焦点距離切り替え型レンズ等の焦点距離可変の結像光学系)や単焦点光学系を撮影レンズ系として用いてもよい。」
「【0025】
上述した撮影レンズユニットLUのように、物体の光学像を形成する撮影レンズ系と、光学像を電気的な信号に変換する撮像素子と、を備えた撮影レンズユニットでは、反射面で光軸を折り曲げる屈曲光学系を撮影レンズ系として用いることにより、その効果的な薄型化を達成することが可能である。しかし、その薄型化には、屈曲光学系を有する撮影レンズユニットに特有の限界がある。つまり、軸外光で決まる有効光路径を小さくするためにレンズ群のパワーを強くすると、傾向として軸上光の有効光路径が大きくなってしまうのである。
【0026】
軸上光で決まる有効光路径を小さくするという観点から、撮影レンズ系が、複数のレンズと、レンズ間に位置する開口絞りと、その開口絞りより物体側で光軸を略90°折り曲げる反射部材と、を有する撮影レンズユニットにおいて、開口絞りが像側光軸(すなわち、反射部材よりも像側に位置する光軸)に関して非対称な開口形状を有する構成とすることが好ましい。この構成によれば、軸上光束で決まる有効光路径を低減する自由度が生じるため、撮影レンズ系において高い光学性能を保持しつつ薄型化を達成することが可能となる。したがって、薄型で高性能の撮影レンズユニットを実現することができ、それをデジタルカメラ,携帯情報機器等の撮像装置に用いることにより、その薄型・軽量・コンパクト化,低コスト化,高性能化,高機能化等に寄与することができる。上記開口絞りの開口形状としては、例えば、楕円形状,矩形形状,小判形状が挙げられる。その中でも小判形状は、光束の有効利用等の観点から好ましい。
【0027】
開口絞りの開口面において、物体側光軸(すなわち、反射部材よりも物体側に位置する光軸)に対して垂直方向の開口長さよりも、物体側光軸に対して平行方向の開口長さの方が短いことが好ましい。つまり、開口絞りにおける像側光軸に対して垂直方向の開口長さが、物体側光軸に対して垂直方向よりも物体側光軸に対して平行方向に短いことが好ましい。このような構成にすることにより、軸上光束で決まる有効光路径を低減することが可能となる。この際、開口形状の非対称な開口絞りの開口面積を、本来円となるべき開口形状の開口面積と同じ面積にすることが望ましい。これにより、Fナンバーが同一の撮影レンズユニットと比較して、相対的に薄型化を達成することができる。つまり、撮影レンズユニットの薄型化と明るいFナンバーの達成とを両立させることが可能となる。また、撮影レンズユニットの薄型化の点から言えば、開口絞りの開口面において物体側光軸に対して平行方向の開口長さが最短であることが更に好ましい。つまり、物体側光軸に対して平行方向が撮影レンズ系への光入射方向であるため、この方向に開口長さを最短にすれば、撮影レンズユニットを最も効果的に薄くすることが可能となる。
【0028】
開口絞りが以下の条件式(1)を満足することが望ましい。
0.5<LA/LB<0.9 …(1)
ただし、
LA:開口面における像側光軸から絞り開口の縁までの最短距離、
LB:開口面における像側光軸から絞り開口の縁までの最長距離、
である。
【0029】
条件式(1)の上限を越えると、厚み短縮の効果が得られなくなる。逆に、条件式(1)の下限を越えると、ボケ像の非対称性が目立つことになり、軸上性能の劣化を招くおそれもあるので好ましくない。また、開口絞りの開口形状が、像側光軸を含むとともに物体側光軸に対し垂直な平面に関して面対称であることが好ましく、それとともに条件式(1)を満足することが更に好ましい。上記面対称な開口形状の開口絞りを用いることにより、ボケ像の非対称性をより効果的に改善することができ、更に条件式(1)を満たすことにより、薄型化と光学性能とのバランスがより一層良好になる。
【0030】
撮影レンズ系を構成する複数のレンズのうち、反射部材よりも像側に位置する少なくとも1枚のレンズが、像側光軸に関して非対称なレンズ形状を有するとともに、そのレンズにおける像側光軸に対して垂直方向のレンズ長さが、物体側光軸に対して垂直方向よりも物体側光軸に対して平行方向に短いことが好ましい。開口絞りの開口長さを前述したように設定すれば、軸上光束で決まる有効光路径を低減することが可能になるので、反射部材よりも像側のレンズ外径の小型化も可能になる。また、撮影レンズユニットの厚さは光路折り曲げ後のレンズの外径に影響されるので、撮像に使用される光束が通過しない領域を積極的に削ってレンズ外径を特定方向に小さくすれば、撮影レンズユニットの更なる薄型化が可能となる。したがって、反射部材よりも像側に位置する少なくとも1枚のレンズを像側光軸に関して非対称なレンズ形状にするとともに、そのレンズにおける像側光軸に対して垂直方向のレンズ長さを、物体側光軸に対して垂直方向よりも物体側光軸に対して平行方向に短くすれば、撮影レンズユニットの薄型化が可能となる。」
「【0034】
図2~図4に、撮影レンズユニットLUの実施の形態(図1)に用いられる3つのタイプの開口絞りSTをそれぞれ示し、図7に、撮影レンズユニットLUの比較例(図6)に用いられる開口絞りSTを示す。いずれも像側光軸AX2方向(図1(A),図6(A)中の矢印Z方向)に沿って見たときの外観を示しており、各開口面SAの形状(すなわち開口形状)は、像側光軸AX2を含むとともに物体側光軸AX1に対し垂直な平面に関して面対称になっている。つまり、図2に示す開口絞りSTの開口形状は楕円形状であり、図3に示す開口絞りSTの開口形状は矩形形状であり、図4に示す開口絞りSTの開口形状は小判形状であり、図7に示す開口絞りSTの開口形状は円形状である。
【0035】
実施の形態(図1)と比較例(図6)とでFナンバーが同一になるようにするには、開口形状の非対称な開口絞りSTの開口面積を、本来円となるべき開口形状の開口面積と同じ面積にすればよい。図7に示す開口絞りSTは開口形状が円形状になっているため、開口面の直径をDとすると、その開口面積はπ×(D/2)×(D/2)である。図2に示す開口絞りSTは開口形状が楕円形状になっているため、短軸,長軸の長さをそれぞれa,bとすると、その開口面積はπ×(a/2)×(b/2)である。したがって、D×D=a×bの関係が成り立つようにすればよい。図3に示す開口絞りSTは開口形状が矩形形状になっているため、短辺,長辺の長さをそれぞれa’,b’とすると、その開口面積はa’×b’である。したがって、π×(D/2)×(D/2)=a’×b’の関係が成り立つようにすればよい。
【0036】
図4に示す開口絞りSTは、開口形状が小判形状になっている。直径Dの円の面積をS1とし、小判形状の短軸,長軸の長さをそれぞれa”,b”とし、小判形状の面積をS2とすると、面積S1,S2は以下の式(I),(II)でそれぞれ表される。ここで、θ=sin-1(a/b)[deg]とすると、S1=S2となるためには、a”とb”が以下の式(III)を満たせばよい。そして、設計のFナンバーは直径Dで決めて、その場合と同じFナンバーになるように、薄型化のための開口形状のa”を決めて、絞り径b”まで収差補正を行えばよい。例えば、D=5.608、a”=4.486、b”=6.111とすると、(I):S1=24.701、(II):S2=24.700、(III)の左辺=1.090、(III)の右辺=1.090である。このとき、a”/b”=0.734(=LA/LB)は条件式(1)を満たしている。
S1=π×(D/2)2 …(I)
S2=π×b”2×θ/360+a”×b”×cosθ/2 …(II)
b”/D=1.95×(a”/D)2-3.96×(a”/D)+3.01 …(III)」
(ウ)図面
図1、4及び9は次のとおりである。
[図:0001425212000001.jpg]
[図:0001425212000002.jpg]
[図:0001425212000003.jpg]
(エ)当業者が把握できる技術的事項
引用文献1には、請求項1の記載を引用する請求項4の記載を引用する請求項9に記載された撮像装置が記載されているところ、当該撮像装置は、開口絞りの開口形状が「小判形状」とされている。ここで、引用文献1には、このような開口形状をもつ開口絞りとして、図4に係る開口絞りSTのみが記載されていることから、当業者であれば、当該撮像装置の開口絞りとして、当該図4に係る開口絞りSTを採用した態様を典型的に想定できると認められる。
そして、当該図4及び【0036】からは、開口絞りSTが、小判形状の開口形状をもち、最外輪郭線が円周状の形状であって、小判形状の短軸及び長軸の長さは、それぞれ、a”及びb”であることが当業者にとって把握できる。
イ 引用発明の認定
前記アによれば、引用文献1には、請求項1の記載を引用する請求項4の記載を引用する請求項9に記載された撮像装置に関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(以下、引用発明の認定に用いた箇所の段落番号等を参考までに括弧内に付した。)。
「撮影レンズユニットを備える撮像装置において、(【請求項9】)
前記撮影レンズユニットは、物体の光学像を形成する撮影レンズ系と、前記光学像を電気的な信号に変換する撮像素子と、を備え、前記撮影レンズ系が、複数のレンズと、レンズ間に位置する開口絞りと、その開口絞りより物体側で光軸を略90°折り曲げる反射部材と、を有する撮影レンズユニットであって、
前記反射部材よりも像側に位置する光軸を像側光軸とすると、前記開口絞りが像側光軸に関して非対称な開口形状を有するものであり、(【請求項1】)
前記開口絞りの開口形状が小判形状であり、(【請求項4】)
前記開口絞りは、小判形状の開口形状をもち、最外輪郭線が円周状の形状であって、小判形状の短軸及び長軸の長さは、それぞれ、a”及びb”であり、(前記ア(エ))
前記撮像装置は、デジタルカメラであり、(【0001】)
前記開口絞りの開口面において物体側光軸に対して平行方向の開口長さが最短である、(【0027】)
撮像装置。」
(3)本件補正発明と引用発明との対比、一致点及び相違点の認定
ア 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)本件補正発明の「カメラ装置であって、複数のレンズ、および、環状体、を有し、」「カメラ装置。」との発明特定事項について
引用発明の「撮像装置」は、「デジタルカメラ」であるから、本件補正発明の「カメラ装置」に相当する。
引用発明の「撮像装置」は、「撮影レンズ系」を備えており、当該「撮影レンズ系」が、「複数のレンズと、レンズ間に位置する開口絞りと、その開口絞りより物体側で光軸を略90°折り曲げる反射部材と、を有」している。そして、当該「複数のレンズ」は、本件補正発明の「複数のレンズ」に相当する。また、引用発明の「開口絞り」は、「小判形状の開口形状をもち、最外輪郭線が円周状の形状」であることから、本件補正発明でいう「環状体」に相当するといえる。
したがって、引用発明は、前記発明特定事項を備える。
(イ)本件補正発明の「前記カメラ装置は、その焦点距離が固定であり、」との発明特定事項について
引用発明の「撮像装置」は、「撮影レンズユニット」に備えられる「撮影レンズ系」を備えるものであるが、当該「撮影レンズ系」の焦点距離が固定か否かは不明である。
(ウ)本件補正発明の「前記複数のレンズ、および、前記環状体は、光軸に沿って、オブジェクト側からイメージ側に配置され、前記環状体は、前記オブジェクト側と前記複数のレンズの間、前記複数のレンズの間、あるいは、前記複数のレンズと前記イメージ側の間に設置され、」との発明特定事項について
引用発明の「撮影レンズユニット」は、「物体の光学像を形成する撮影レンズ系と、前記光学像を電気的な信号に変換する撮像素子と、を備え」ており、当該「撮影レンズ系」は、「複数のレンズと、レンズ間に位置する開口絞りと、その開口絞りより物体側で光軸を略90°折り曲げる反射部材と、を有する」ものであるから、引用発明が本件補正発明の前記発明特定事項を備えることは、明らかである。
(エ)本件補正発明の「前記環状体は、環状本体、外環状部分、および、内環状部分を有し、前記環状本体と前記外環状部分、および、前記内環状部分は連結し、前記環状本体は、前記外環状部分と前記内環状部分の間に設置され、前記内環状部分は非円形であり、且つ、前記光軸を囲繞して、ホールを形成し、」との発明特定事項について
引用発明の「開口絞り」(本件補正発明の「環状体」に相当。)は、「小判形状の開口形状をもち、最外輪郭線が円周状の形状」であることから、本件補正発明でいう「外環状部分」(「開口絞り」の最外輪郭線に係る部分であって、形状が円周状となる。)、「内環状部分」(「開口絞り」の「小判形状の開口形状」の輪郭線に係る部分であって、形状が小判形状の輪郭となる。)及び「環状本体」(その余の領域からなる構造となる。)を当然に備えているし、また、本件補正発明でいう「前記環状本体と前記外環状部分、および、前記内環状部分は連結し、前記環状本体は、前記外環状部分と前記内環状部分の間に設置され、前記内環状部分は非円形であ」り、「ホールを形成」しているものといえる。
さらに、当該「開口絞り」は、開口絞りである以上、当然、本件補正発明でいう「前記光軸を囲繞」しているものといえる。
したがって、引用発明は、前記発明特定事項を備える。
(オ)本件補正発明の「前記外環状部分の形状が、オーク樽形状、あるいは、前記外環状部分の形状は八角形、あるいは、前記外環状部分の形状は六角形であり、」との特定事項について
引用発明の「開口絞り」(本件補正発明の「環状体」に相当。)には、前記(エ)のとおり、「開口絞り」の最外輪郭線に係る部分(本件補正発明の「外環状部分」に相当。)を観念できるところ、その部分の形状は、円周状である。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記外環状部分の形状が、」所定の形状である点で共通するが、所定の形状が、本件補正発明は、オーク樽形状、八角形あるいは六角形であるのに対し、引用発明は、円周状である。
(カ)本件補正発明の「前記内環状部分より形成され、前記光軸が通過するホールの最大尺寸はDx、前記内環状部分より形成され、前記光軸が通過するホールの最小尺寸はDyであり、
前記カメラ装置は以下の条件を満たし:
Dx>Dy;
0mm<ΔS/(Dx/2)<8mm;」、「前記ΔSは、前記Dxを直径とする円の面積と前記ホール断面積の差である」との発明特定事項について
引用発明の「開口絞り」(本件補正発明の「環状体」に相当。)には、前記(エ)のとおり、「小判形状の開口形状」の輪郭線に係る部分(本件補正発明の「内環状部分」に相当。)を観念できるところ、その部分の「短軸及び長軸の長さは、それぞれ、a”及びb”であ」ることになる。そうすると、当該「開口絞り」において、「b”」(「長軸」の長さ)及び「a”」(「短軸」の長さ)は、それぞれ、本件補正発明の「Dx」(「前記内環状部分より形成され、前記光軸が通過するホールの最大尺寸」)及び「Dy」(「前記内環状部分より形成され、前記光軸が通過するホールの最小尺寸」)に相当する。
そして、引用発明において、「b”」(「長軸」の長さ)は「a”」(「短軸」の長さ)よりも当然に大きいから、引用発明の「撮像装置」は、本件補正発明でいう「Dx>Dy」の条件を満たすことになる。
他方、引用発明が、本件補正発明の「0mm<ΔS/(Dx/2)<8mm」という特定事項を満たしているのかは不明である。
(キ)本件補正発明の「前記外環状部分と前記内環状部分の間に形成される横方向の水平距離(Dh)と、前記外環状部分と前記内環状部分の間に形成される縦方向の垂直距離(Dv)を有し、前記水平距離と前記垂直距離の比率は、1.1から27.6の間で」あるとの特定事項について
引用発明の「開口絞り」(本件補正発明の「環状体」に相当。)は、「小判形状の開口形状をもち、最外輪郭線が円周状の形状であって、小判形状の短軸及び長軸の長さは、それぞれ、a”及びb”であ」るが、本件補正発明の前記特定事項を満たしているのかは不明である。
イ 一致点及び相違点の認定
以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「カメラ装置であって、
複数のレンズ、および、
環状体、を有し、
前記複数のレンズ、および、前記環状体は、光軸に沿って、オブジェクト側からイメージ側に配置され、
前記環状体は、前記オブジェクト側と前記複数のレンズの間、前記複数のレンズの間、あるいは、前記複数のレンズと前記イメージ側の間に設置され、
前記環状体は、環状本体、外環状部分、および、内環状部分を有し、前記環状本体と前記外環状部分、および、前記内環状部分は連結し、前記環状本体は、前記外環状部分と前記内環状部分の間に設置され、前記内環状部分は非円形であり、且つ、前記光軸を囲繞して、ホールを形成し、
前記外環状部分の形状が、所定の形状であり、
前記内環状部分より形成され、前記光軸が通過するホールの最大尺寸はDx、前記内環状部分より形成され、前記光軸が通過するホールの最小尺寸はDyであり、
前記カメラ装置は以下の条件を満たす:
Dx>Dy;
カメラ装置。」
【相違点1】
本件補正発明は、「その焦点距離が固定」であるのに対し、引用発明は、「撮影レンズユニット」に備えられる「撮影レンズ系」の焦点距離が固定か否かは不明である点。
【相違点2】
「外環状部分」の形状である所定の形状が、本件補正発明は、「オーク樽形状」、「八角形」、あるいは、「六角形」であるのに対して、引用発明は、円周状である点。
【相違点3】
本件補正発明は、「0mm<ΔS/(Dx/2)<8mm」(ΔSは、前記Dxを直径とする円の面積と前記ホール断面積の差)を満たすのに対して、引用発明は、「開口絞りは、小判形状の開口形状をもち、最外輪郭線が円周状の形状であって、小判形状の短軸及び長軸の長さは、それぞれ、a”及びb”であ」る点。
【相違点4】
本件補正発明は、「前記外環状部分と前記内環状部分の間に形成される横方向の水平距離(Dh)と、前記外環状部分と前記内環状部分の間に形成される縦方向の垂直距離(Dv)を有し、前記水平距離と前記垂直距離の比率は、1.1から27.6の間で」あるのに対して、引用発明は、「前記開口絞りは、小判形状の開口形状をもち、最外輪郭線が円周状の形状であって、小判形状の短軸及び長軸の長さは、それぞれ、a”及びb”であ」り、「前記開口絞りの開口面において物体側光軸に対して平行方向の開口長さが最短であ」る点。
(4)判断
以下、相違点について判断する。
ア 相違点1について
引用発明の「撮影レンズユニット」に備えられる「撮影レンズ系」について、引用文献1の【0022】には、撮影レンズユニットに用いられる撮影レンズ系として単焦点光学系を用いてもよい旨記載されていることから、引用発明から出発した当業者は、当該「撮影レンズ系」として単焦点光学系を適宜選択できるといえるのであり、そのようにして、当業者は相違点1に係る本件補正発明の構成に至る。
イ 相違点2~4について
(ア)判断に先立ち、相違点4に係る本件補正発明の構成の「前記外環状部分と前記内環状部分の間に形成される横方向の水平距離(Dh)」、「前記外環状部分と前記内環状部分の間に形成される縦方向の垂直距離(Dv)」及び「前記水平距離と前記垂直距離の比率」の意味を検討する。
本件補正後の明細書及び図面(以下「本件補正後明細書等」という。)の図4において、ホールの最大尺寸であるD2xの方向と水平距離(Dh)の方向が一致し、ホールの最小尺寸であるD2yの方向と垂直距離(Dv)の方向が一致すること、また、「縦方向」と「横方向」は、その文言に照らして直交関係にあると解されることに照らせば、「横方向の水平距離(Dh)」及び「縦方向の垂直距離(Dv)」は、少なくとも、当該図4のようにホールの最大尺寸の方向とホールの最小尺寸の方向が直交する場合にあっては、それぞれ、ホールの最大尺寸及び最小尺寸の方向を意味すると解される。また、本件補正後明細書等の【0038】には、垂直距離を調整した後に水平距離を上記の比率で調整する旨の記載があることから、「水平距離」(Dh)と「垂直距離」(Dv)の比率とは、「垂直距離」(Dv)を基準とした「水平距離」(Dh)の比率、つまり、Dh/Dvを意味するものと解される。
(本件補正後明細書等の図4)
[図:0001425212000004.jpg]
これを踏まえて検討すると、引用発明から出発した当業者は、(i)「開口絞り」の開口形状である小判形状のa”(短軸の長さ)及びb”(長軸の長さ)の差を相当程度小さくし(相違点3関係)、その上で、(ii)当該「開口絞り」の最外輪郭線の形状(円周状となっている。)を、小判形状となるように、開口形状に係る小判形状の短軸方向(当該小判形状の短軸方向を以下「引例短軸方向」といい、引用発明では、短軸方向が物体側光軸に対する平行方向と一致している。また、短軸方向に垂直な方向、つまり、当該小判形状の長軸方向を以下「引例長軸方向」という。)にある程度縮めるように構成すれば(相違点2及び4関係)、相違点2~4に係る本件補正発明の構成に至ることになるといえる。
(引用文献1の図4の再掲)
[図:0001425212000005.jpg]
すなわち、(i)のとおり、引用発明における「開口絞り」の開口形状である小判形状において、引例短軸方向の幅が引例長軸方向の幅に近づいてくる(換言すれば、上記開口形状が円形状に近づいてくる)と、ΔS、つまり、小判形状の外接円の面積と小判形状の面積の差が小さくなってくることから、相違点3に係る本件補正発明の構成を満たすようになってくる。また、その上で、(ii)のとおり、当該「開口絞り」の最外輪郭線の形状である円周状を、小判形状となるように、引例短軸方向(本件補正発明の「縦方向の垂直距離(Dv)」に係る方向ということになる。)にある程度縮めれば、本件補正発明でいう「オーク樽形状」の「外環状部分」となる(相違点2関係)といえるし、本件補正発明でいう「前記水平距離と前記垂直距離の比率」、つまり、Dh/Dvの値は、1よりも大きくなってくる(相違点4関係)ことになる。
(イ)そこで、(i)についてみると、引用発明を開示する引用文献1の【0028】及び【0029】には、LA(開口面における像側光軸から絞り開口の縁までの最短距離であり、引例短軸方向における開口形状の幅の1/2となる。)とLB(開口面における像側光軸から絞り開口の縁までの最長距離であり、引例長軸方向における開口形状の幅の1/2となる。)について、LAがLBに対して大きくなりすぎると、厚み短縮の効果が得られなくなり、逆に、LAがLBに対して小さくなりすぎると、ボケ像の非対称性が目立ち、軸上性能の劣化を招くおそれがある旨記載されている。そうすると、当業者であれば、引用発明の「開口絞り」の開口形状における引例短軸方向の幅と引例長軸方向の幅を決定するに当たっては、厚み短縮の効果と軸上性能の劣化との間にトレードオフがあることを認識できるといえる。
そして、これらトレードオフのある両者のどちらをより優先するかは当業者が仕様に応じて適宜選択できるというべきであるから、当業者であれば、軸上性能の劣化が少ないことをより優先することも選択できるのであり、その結果、引用発明における「開口絞り」の開口形状である小判形状において、引例短軸方向の幅が引例長軸方向の幅に近づいてくることから、(i)を満たすことになってくる。
(ウ)次に、(ii)についてみると、引用発明の「開口絞り」の開口形状は「小判形状」であって、「前記開口絞りの開口面において物体側光軸に対して平行方向の開口長さが最短」とされる、つまり、引例短軸方向が物体側光軸に対して平行方向とされることから、当該「開口絞り」を装着するに当たっては、引例短軸方向が所望の方向となるように配置する必要があるのが明らかである。
そして、光学部材の回転方向の正確な位置決めが必要となる場合に、当該光学部材に非円形部分を含む外形を設け、その外形部分により回転位置決めを行うことは、周知技術である(例えば、特開2000-266979号公報の【0004】・【0008】・【0012】・図2の「非円形部4a」・図4の「非円形部1a」及び「非円形部4a」、特開2006-288779号公報の【0022】~【0024】・図4の「平行突起21」・図5の「平行平面部20」を参照。)と認められる。
そうすると、引用発明から出発した当業者であれば、上記「開口絞り」を引例短軸方向が所望の方向(物体側光軸に対して平行方向)となるように配置するために、上記周知技術を採用することは、容易に想到し得たことである。そして、その結果、当該「開口絞り」の外形に、非円形部分を含む外形を設けることになるところ、その非円形部分の形状としては、その外形部分により回転位置決めを行うという観点に照らして、(ii)のように、当該「開口絞り」の最外輪郭線の形状(円周状となっている。)を、小判形状となるように、引例短軸方向にある程度縮めるように構成するのが、単純かつ自然であるといえるのであり、そのようにして、上記の縮める程度を大きくしていくと、(ii)を満たすことになってくる。
(エ)以上のとおり、引用発明における「開口絞り」の開口形状である小判形状において、引例短軸方向の幅を引例長軸方向の幅に近づけること(前記(イ))、当該「開口絞り」の最外輪郭線の形状を、小判形状となるように、引例短軸方向にある程度縮めること(前記(ウ))は、当業者が容易になし得たことであるところ、それらの程度は、適宜設計すべき事項であるのであり、その結果として、相違点3及び4に係る本件補正発明の構成の数値限定を満たすようにすることに困難性はない。そして、上記数値限定に、いわゆる臨界的意義があるともいえない。
したがって、引用発明から出発した当業者は、引用文献1に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、相違点2~4に係る本件補正発明の構成に容易に至るといえる。
ウ 本件補正発明の効果について
本件補正発明の奏する作用効果は、本件補正発明の構成が奏するものとして、引用発明、引用文献1に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて当業者が予測することができなかった顕著なものということはできない。
(5)請求人の主張
請求人は、引用文献1には、相違点3に係る本件補正発明の構成が開示されておらず、また、これを直接算出するデータも有していないことから、引用発明から出発した当業者が当該構成に至る動機付けが存在していないとか、引用文献1には、長さの単位が明示されていないことから、当該構成に係る数式を計算しても「mm」という単位が特定されない旨主張する。
しかしながら、前記(4)イ(イ)で説示したとおりであって、引用発明において、厚み短縮の効果と軸上性能の劣化のうち、軸上性能の劣化が少ないことをより優先することを選択すれば、結果として、上記数式を満たすことになってくるといえる。単位を考慮したとしても、上記の判断が左右されることはない。
(6)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献1に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和5年6月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1の記載は、前記第2[理由]1(2)のとおりである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である引用文献1に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「ΔSは、前記Dxを直径とする円の面積と前記ホール断面積の差であ」り、「0mm<ΔS/(Dx/2)<8mm;」であるとの限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)及び(4)で説示したとおり、引用発明、引用文献1に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、引用文献1に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-021137