特許拒絶査定不服審判
2020-015922
光電変換素子および光電変換素子の製造方法
- 審判番号
- 2020-015922
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-017355外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年11月18日
- 審決日
- 2022年12月20日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2015- 17355「光電変換素子および光電変換素子の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月 8日出願公開、特開2016-143721〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成27年1月30日の出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
平成30年 9月 3日付け:拒絶理由通知書
平成30年11月 9日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年 4月 8日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 8月 8日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 1月23日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和 2年 3月30日 :意見書の提出
令和 2年 8月12日付け:拒絶査定
令和 2年11月18日 :審判請求書の提出
令和 4年 3月24日付け:拒絶理由通知書(当審)
令和 4年 5月30日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~6に係る発明は、令和4年5月30日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)後の請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。ここで、「前記第1電極が、前記第1導電型非晶質半導体膜の前記前記第2導電型非晶質半導体膜よりも上層に位置する部分まで広がって位置することにより、」の「前記前記」は、「前記」の明らかな誤記であるので、誤記を正した上で、本願発明を認定した。
<本願発明>
「第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板上の第1導電型非晶質半導体膜と第2導電型非晶質半導体膜とを備え、
前記第2導電型非晶質半導体膜に互いに間隔を空けて設けられた複数の開口部において、前記第1導電型非晶質半導体膜が前記半導体基板と電気的に接続されており、
前記第2導電型非晶質半導体膜が前記半導体基板と電気的に接続された面積が前記第1導電型非晶質半導体膜が前記半導体基板と電気的に接続された面積よりも広く、
前記第1導電型非晶質半導体膜上の第1電極と、
前記第2導電型非晶質半導体膜上の第2電極と、をさらに備え、
前記第2導電型非晶質半導体膜の部分である周縁部上に前記第1導電型非晶質半導体膜の一部が積層することにより、断面視において、前記第1導電型非晶質半導体膜の一部が前記第2導電型非晶質半導体膜よりも上層に位置し、
前記第1電極が、前記第1導電型非晶質半導体膜の前記第2導電型非晶質半導体膜よりも上層に位置する部分まで広がって位置することにより、平面視において、前記第1電極の幅が前記開口部の幅よりも大きくなるように形成されている、
光電変換素子。」
第3 令和4年3月24日付け拒絶理由通知書の拒絶の理由
上記拒絶の理由は、以下の内容を含むものである。
本件補正前の本願の請求項1及び4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である引用文献に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.特開2014-183312号公報
2.国際公開第2009/096539号(周知技術を示す文献)
3.国際公開第2014/157525号(周知技術を示す文献)
4.特表2009-545158号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2014-220291号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2010-283406号公報(周知技術を示す文献)
7.特開2011-258996号公報(周知技術を示す文献)
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献
(1)引用文献に記載された事項
令和4年3月24日付け拒絶理由通知書で引用された上記引用文献1(特開2014-183312号公報、以下、単に「引用文献」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0001】
開示された技術は、ヘテロ接合相互嵌合型バックコンタクト光起電力電池を製造する方法に関する。さらにとりわけ、開示された技術は、シリコンヘテロ接合の相互嵌合型バックコンタクト光起電力電池の組み合わされたエミッタ領域及び裏面電界領域を形成する方法に関する。」
「【0002】
相互嵌合型バックコンタクト(IBC)電池は、電池の裏側に全ての電気コンタクトを有し、それにより前側シェーディングロス(shading losses)を排除している。IBC電池では、互いに組み合わされた(interdigitated)n+領域(例えば裏面電界領域を形成して)及びp+領域(例えばエミッタ領域を形成して)、及び対応する互いに組み合わされたn型コンタクト及びp型コンタクトは、一般的に電池の裏側で使用される。」
「【0024】
本開示の文脈において、相互嵌合型(interdigitated)は、混じり合った、組み合わされた、を意味し、よって一つのグループからの要素と別のグループからの要素とが交互に存在することを意味する。特に、相互嵌合(interdigitation)は、光起電力電池の裏側コンタクト、及びIBC光起電力電池のエミッタ領域及びBSF領域に関する。相互嵌合型電極、並びに相互嵌合型エミッタ領域及びBSF領域は、例えば櫛状あるいは指状であることができ、例えば複数の指状要素を備えることができる。」
「【0026】
図1は、ヘテロ接合相互嵌合型バックコンタクト光起電力電池の断面を概略的に示す。この電池は、電池の裏側で全ての電気コンタクト、即ちBSF領域14へのベースコンタクト24及びエミッタ領域12へのエミッタコンタクト22を有する。基板10は、例えば単結晶、多結晶あるいは多結晶性シリコン基板のような結晶性シリコン基板である。BSF領域14及びエミッタ領域12は、水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)で作製されている。例えば、基板10がn型基板である場合、BSF領域14は、n型a-Si:H層を含んでおり、例えば5nmと50nmとの間の厚さを有し、エミッタ領域12は、p型のa-Si:H層を含んでおり、例えば5nmと50nmとの間の厚さを有している。BSF領域14とシリコン基板10との間の界面に、第1の薄い内側a-Si:H層13が存在可能であり、及び/又はエミッタ領域12とシリコン基板10との間の界面に、第2の薄い内側a-Si:H層11が存在可能である。第1の薄い内側a-Si:H層13及び第2の薄い内側a-Si:H層11の厚さは、好ましくは1nmと10nmとの間である。内側層は、ドープされていない、あるいは意図的にドープされない層である。それは、好ましくは1012cm-3未満のドーピングレベルを有する。」
「【0029】
最初に、図2に図示するように、第2の内側a-Si:H層11が結晶性シリコン基板10の裏面に堆積され、その後、第2の内側a-Si:H層11にp型にドープされたa-Si:H層12が堆積される。p型にドープされたa-Si:H層12のドーピングレベルは、好ましくは1020cm-3と1022cm-3との間にある。この層の厚さは、好ましくは5nmと50nmとの間にある。別の記述では、結晶性シリコン基板10はn型ドーピングを有してもよい。そのような実施形態では、p型にドープされたa-Si:H層12は、光起電力電池のエミッタ領域を形成するために使用される。しかしながら、本開示はそれに限定されず、シリコン基板10はまたp型にドープされてもよく、p型にドープされたa-Si:H層12は光起電力電池のBSF領域を形成するために使用されてもよい。
【0030】
次に、図3に図示するように、p+a-Si:H層12及び第2の内側a-Si:H層11はパターン化され、それにより、BSF領域が設けられることになっている場所(第2領域102)でこれらの層を除去し、エミッタ領域が形成されることになっている場所(第1領域101)にのみそれらの層を残す。パターニングは、例えばリソグラフィーあるいはレーザアブレーション、又は当業者に知られている他の適切な方法によるような既知の技術を使用して行うことができる。
【0031】
層11、12をパターニングした後、第1の内側a-Si:H層13及びn型にドープされたa-Si:H層14(例えば、1020cm-3と1022cm-3との間のドーピングレベル及び5nmと50nmとの間の厚さを有する)が基板の裏側に堆積される(図4)。第1の内側a-Si:H層13は、p型にドープされたa-Si:H層12とn型にドープされたa-Si:H層14との間の良好な分離及び電気的分離を提供する。本開示の方法により製作された電池の測定された暗電流電圧特性に基づいて、3800オームcm2のシャント抵抗が算出された。このことは、異なるドープ領域間で良好な分離及び電気的分離が得られることを例証している。
【0032】
次に、図5及び図6に図示するように、第1の内側a-Si:H層13及びn+a-Si:H層14がパターン化される。図5は、マスキング層15の堆積を示し、このマスキング層はBSF領域が形成されることになっている場所(第2領域102)を少なくともカバーする。マスキング層15は、好ましくは第2領域102を超えて延在し(即ち、マスキング層15は第2領域よりも好ましくは広い)、それによりアラインメント用のマージンを提供し、さらに先のステップにおけるアンダーエッチングにより生じるかもしれない問題を回避する。マスキング層15は、例えばリソグラフィーによって、あるいは例えば重合体ペーストのスクリーン印刷によって形成されパターン化される。
【0033】
本開示の創造性のある態様によって、n+a-Si:H層14及び第1の内側a-Si:H層13が、その後、下層のp+a-Si:H層12の方への良好な選択性により局所的にエッチングされる。n+a-Si:H層14及び第1の内側a-Si:H層13を局所的にエッチングする前に、存在するかもしれない在来の酸化物を除去するため、好ましくは希釈したHFの浸漬が行われる。在来の酸化物を除去するための他の適切な方法が使用されてもよい。局所エッチングは、好ましくは、例えば15℃と30℃との間の温度のような周囲温度で、希釈したTMAH(Tetramethylammonium Hydroide 水酸化テトラメチルアンモニウム)溶液におけるウェットエッチングによって行われ、この希釈したTMAH溶液は、水に例えば約1%から約10%のTMAHを含む。このような希釈したTMAH溶液は、p+a-Si:Hよりもはるかに速く(少なくとも100倍速く)内側a-Si:H及びn+a-Si:Hをエッチングすることが驚くことに分かった。非常に良好な選択性を得ることができることが分かった。これにより、n+a-Si:H層14及び第1の内側a-Si:H層13を局所的にエッチングし、かつp+a-Si:H層12の露出面でエッチングを実質的に止める自己制限プロセスを可能にする。」
「【0036】
層14及び層13の選択的なエッチングの後、マスキング層15が除去され、図6に示す構造になる。次に、メタルコンタクトが裏側に設けられ、より具体的には、BSF領域14と電気的に接触するベースコンタクト24、及びエミッタ領域12と電気的に接触するエミッタコンタクト22が設けられる。」
「図2
[図:0001394316000001.jpg]
」
「図3
[図:0001394316000002.jpg]
」
「図4
[図:0001394316000003.jpg]
」
「図5
[図:0001394316000004.jpg]
」
「図6
[図:0001394316000005.jpg]
」
(2)引用発明
上記(1)によれば、引用文献には、図2~図6を経由する製造方法で製造されたヘテロ接合相互嵌合型バックコンタクト光起電力電池について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。なお、参考までに、引用発明の認定に用いた引用文献の記載に係る段落番号等を括弧内に付してある。
<引用発明>
「ヘテロ接合相互嵌合型バックコンタクト光起電力電池であって、(【0001】)
第2の薄い内側a-Si:H層11が結晶性シリコン基板10の裏面に堆積され、その後、第2の薄い内側a-Si:H層11にp型にドープされたa-Si:H層12が堆積され、
結晶性シリコン基板はn型ドーピングを有しており、(【0029】・図2)
p+a-Si:H層12及び第2の内側a-薄いSi:H層11はパターン化され、それにより、BSF領域が設けられることになっている場所(第2領域102)でこれらの層を除去し、エミッタ領域が形成されることになっている場所(第1領域101)にのみそれらの層は残され、(【0027】・【0030】・図3)
層11、12をパターニングした後、第1の薄い内側a-Si:H層13及びn型にドープされたa-Si:H層14が基板の裏側に堆積され、(【0027】・【0031】・図4)
IBC光起電力電池のエミッタ領域及びBSF領域は、櫛状であり、(【0024】)
マスキング層15を堆積し、このマスキング層はBSF領域が形成されることになっている場所(第2領域102)を少なくともカバーし、第2領域102を超えて延在し、(【0032】・図5)
n+a-Si:H層14及び第1の薄い内側a-Si:H層13が、その後、下層のp+a-Si:H層12の方への良好な選択性により局所的にエッチングされ、(【0033】)
層14及び層13の選択的なエッチングの後、マスキング層15が除去され、
BSF領域14と電気的に接触するベースコンタクト24、及びエミッタ領域12と電気的に接触するエミッタコンタクト22が設けられる、(【0036】)
ことによって製造されるヘテロ接合相互嵌合型バックコンタクト光起電力電池。(【0001】)」
以下、「第2の薄いa-Si:H層11」を(薄い)「第11層」ということにし、同様に、
「p型にドープされたa-Si:H層12」又は「p+a-Si:H層12」を「第12p層」といい、
「第1の薄い内側a-Si:H層13」を(薄い)「第13層」といい、
「n型にドープされたa-Si:H層14」又は「n+a-Si:H層14」を「第14n層」ということにする。
第5 本願発明と引用発明との対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりである。
(1)本願発明の「第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板上の第1導電型非晶質半導体膜と第2導電型非晶質半導体膜とを備え、」との特定事項について
引用発明の「結晶性シリコン基板10」は、「n型ドーピングを有して」いるから、本願発明の「第1導電型の半導体基板」に相当する。
引用発明の「エミッタ領域12」は第12p層から形成されていると解され、「BSF領域14」は第14n層から形成されていると解されるところ、当該「エミッタ領域12」及び「BSF領域14」は、それぞれ、本願発明の「第2導電型非晶質半導体膜」及び「第1導電型非晶質半導体膜」に相当する。そして、第12p層及び第14n層が、「結晶性シリコン基板10の裏面に堆積され」ていることに照らせば、当該「エミッタ領域12」及び「BSF領域14」は、いずれも、本願発明でいう「前記半導体基板上」にあるといえる。
よって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を満たしている。
(2)本願発明の「前記第2導電型非晶質半導体膜に互いに間隔を空けて設けられた複数の開口部において、前記第1導電型非晶質半導体膜が前記半導体基板と電気的に接続されており、」との特定事項について
引用発明の薄い第11層及び第12p層の両層は、「BSF領域が設けられることになっている場所(第2領域102)」において除去されている(図3も参照。)。そして、当該「BSF領域が設けられることになっている場所(第2領域102)」には、第14n層が、薄い第13層を介して堆積されている(図4及び6も参照。)。そうすると、引用発明の第14n層及びそれから形成された「BSF領域14」(本願発明の「第1導電型非晶質半導体膜」に相当。)は、第11層及び第12p層の両層において除去された「BSF領域が設けられることになっている場所」において、「結晶性シリコン基板10」と電気的に接続されているといえる。
また、引用発明の(第12p層において除去されている)「BSF領域が設けられることになっている場所」は、「エミッタ領域12」(本願発明の「第2導電型非晶質半導体膜」に相当。)を構成する膜の観点からみると、当該膜が存在しない部分であるといえる。そして、本願発明の「前記第2導電型非晶質半導体膜に互いに間隔を空けて設けられた複数の開口部」と引用発明の「エミッタ領域12」を構成する膜が存在しない部分とは、「前記第2導電型非晶質半導体膜に」「設けられた」膜が存在しない部分(以下「膜不存在部」という。)である点で一致するといえる。
そうすると、本願発明と引用発明とは、「前記第2導電型非晶質半導体膜に」「設けられた」膜不存在部「において、前記第1導電型非晶質半導体膜が前記半導体基板と電気的に接続されて」いる点で一致するといえる。
(3)本願発明の「前記第2導電型非晶質半導体膜が前記半導体基板と電気的に接続された面積が前記第1導電型非晶質半導体膜が前記半導体基板と電気的に接続された面積よりも広く、」との特定事項について
引用発明は、そのように特定されてはいないから、本願発明の上記特定事項を満たしているかは不明である。
(4)本願発明の「前記第1導電型非晶質半導体膜上の第1電極と、前記第2導電型非晶質半導体膜上の第2電極と、をさらに備え、」との特定事項について
引用発明の「ベースコンタクト24」は、「BSF領域14」(本願発明の「第1導電型非晶質半導体膜」に相当。)と「電気的に接触」しているから、本願発明の「前記第1導電型非晶質半導体膜上の第1電極」に相当する。
引用発明の「エミッタコンタクト22」は、「エミッタ領域12」(本願発明の「第2導電型非晶質半導体膜」に相当。)と「電気的に接触」しているから、本願発明の「前記第2導電型非晶質半導体膜上の第2電極」に相当する。
よって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を満たしている。
(5)本願発明の「前記第2導電型非晶質半導体膜の部分である周縁部上に前記第1導電型非晶質半導体膜の一部が積層することにより、断面視において、前記第1導電型非晶質半導体膜の一部が前記第2導電型非晶質半導体膜よりも上層に位置し、」との特定事項について
引用発明の「BSF領域14」(本願発明の「第1導電型非晶質半導体膜」に相当。)は、以下のとおり、「エミッタ領域12」(本願発明の「第2導電型非晶質半導体膜」に相当。)の「部分である周縁部上に」その「一部が積層」しているといえる(図6も参照。)。
すなわち、当該「BSF領域14」は、次の工程、つまり、まず第11層及び第12p層の両層が「エミッタ領域が形成されることになっている場所(第1領域101)にのみ」「残され」(図3も参照。)、次に、第13層及び第14n層が堆積され(図4も参照。)、さらに、第14n層に「マスキング層15」が「堆積」され(図5も参照。)、第13層及び第14n層の両層の「選択的なエッチング」の後に、「マスキング層15が除去され」るという工程を経て形成されている(図6も参照。)といえるところ、当該「マスキング層15」は、「BSF領域が形成されることになっている場所(第2領域102)を少なくともカバーし、第2領域102を超えて延在し」ている(図5も参照。)。
そうすると、当該「BSF領域14」は、「第2領域102を超えて延在し」ており、その延在した部分は「エミッタ領域12」上に堆積されている(図6も参照。)と解されるから、「BSF領域14」は、「エミッタ領域12」の(本願発明でいう)「部分である周縁部上に」その「一部が積層」しているといえる。そして、そうである以上、引用発明は、本願発明でいう「断面視において、前記第1導電型非晶質半導体膜の一部が前記第2導電型非晶質半導体膜よりも上層に位置し」ている。
よって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を満たしている。
(6)本願発明の「前記第1電極が、前記第1導電型非晶質半導体膜の前記前記第2導電型非晶質半導体膜よりも上層に位置する部分まで広がって位置することにより、平面視において、前記第1電極の幅が前記開口部の幅よりも大きくなるように形成されている、」との特定事項について
引用発明は、「ベースコンタクト24」(本願発明の「第1電極」に相当。)の形状及びサイズを特定するものではないから、本願発明の上記特定事項を満たしているかは不明である。
(7)本願発明の「光電変換素子」について
引用発明の「ヘテロ接合相互嵌合型バックコンタクト光起電力電池」は、本願発明の「光電変換素子」に相当する。
(8)以上によれば、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板上の第1導電型非晶質半導体膜と第2導電型非晶質半導体膜とを備え、
前記第2導電型非晶質半導体膜に設けられた膜不存在部において、前記第1導電型非晶質半導体膜が前記半導体基板と電気的に接続されており、
前記第1導電型非晶質半導体膜上の第1電極と、
前記第2導電型非晶質半導体膜上の第2電極と、をさらに備え、
前記第2導電型非晶質半導体膜の部分である周縁部上に前記第1導電型非晶質半導体膜の一部が積層することにより、断面視において、前記第1導電型非晶質半導体膜の一部が前記第2導電型非晶質半導体膜よりも上層に位置している、
光電変換素子」
<相違点1>
「膜不存在部」が、本願発明では、「前記第2導電型非晶質半導体膜に互いに間隔を空けて設けられた複数の開口部」であるのに対し、引用発明では、「エミッタ領域12」における膜が存在しない部分(つまり、「BSF領域が設けられることになっている場所」)であって、この部分は、「BSF領域」が「櫛状」である以上、同様に「櫛状」である点。
<相違点2>
本願発明は、「前記第2導電型非晶質半導体膜が前記半導体基板と電気的に接続された面積が前記第1導電型非晶質半導体膜が前記半導体基板と電気的に接続された面積よりも広」いのに対し、引用発明は、「エミッタ領域12」及び「BSF領域14」がいずれも「櫛状」(相互嵌合型)である点。
<相違点3>
本願発明は、「前記第1電極が、前記第1導電型非晶質半導体膜の前記前記第2導電型非晶質半導体膜よりも上層に位置する部分まで広がって位置することにより、平面視において、前記第1電極の幅が前記開口部の幅よりも大きくなるように形成されている」のに対し、引用発明の「ベースコンタクト24」は、「BSF領域14と電気的に接触する」点。
2 判断
(1)事案にかんがみ、相違点1及び相違点2を合わせて検討する。
ア 引用発明において相違点1及び相違点2に係る構成に至るには、(i)引用発明の「エミッタ領域12」(本願発明の「第2導電型非晶質半導体膜」に相当。)を構成する膜が存在しない部分(膜不存在部)の形状、つまり、第12p層において除去されている「BSF領域が設けられることになっている場所」の形状を、「櫛状」から、「互いに間隔を空けて設けられた複数の開口部」へと変更した上で、その結果として、「BSF領域14」が「結晶性シリコン基板」と電気的に接続された領域(以下「BSF電気接続領域」という。)の形状を、「櫛状」から、互いに間隔を空けて設けられた複数のドット状・島状の領域へと変更する(同時に、「エミッタ領域12」の形状が、その変更に応じて変更されたことになる。)とともに、(ii)BSF電気接続領域の面積を当該「エミッタ領域12」の面積(引用発明に特定された各層の形成工程に照らすと、「エミッタ領域12」が「結晶性シリコン基板10」と電気的に接続された領域の面積といえる。)よりも狭くし、(iii)当該「BSF領域14」が、BSF領域が形成されることになっている場所(第2領域102)を超えて延在しており、その延在した部分がエミッタ領域12上に堆積されているという構成(図6も参照。)を維持するようにすれば足りると解される。
そこで、引用発明において、上記(i)~(iii)の構成に当業者が容易に至るかについて検討する。
イ 引用発明は、「ヘテロ接合相互嵌合型バックコンタクト光起電力電池」に係るものであるところ、この種の太陽電池においては、少数キャリアの再結合を抑制して太陽電池の効率を高めるために、半導体基板上に形成された当該基板の導電型とは異なる導電型の半導体層(以下「逆導電型層」という。)について、複数のドット状・島状となる逆導電型層の存在しない部分を形成することを通して、当該存在しない部分の面積を逆導電型層の(存在する部分の)面積よりも狭くするとともに、当該存在しない部分に、半導体基板と同じ導電型の半導体層を形成し(当該半導体層は複数のドット状・島状となる。)、当該同じ導電型の半導体層の面積を逆導電型層の面積より狭くすることは、周知技術であると認められる(例えば、特表2009-545158号公報の【0017】~【0020】・【0026】及び図5、特開2015-15472号公報の【0076】及び図6、特開2014-86708号公報の【0070】~【0072】及び図8、特開2013-219355号公報の【0049】~【0051】及び図2、特開2013-183004号公報の【0032】~【0034】及び図1-2を参照。)。そして、引用発明においても、太陽電池の効率を高めることは、当業者にとって自明な課題である。
そうすると、引用発明において上記課題を解決するために上記周知技術を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであり、そのような採用により、当業者は、引用発明において、第12p層に「BSF領域が設けられることになっている場所(第2領域102)」でこの「層を除去」する際に、「櫛状」ではなく、「互いに間隔を空けて設けられた複数の開口部」を設けるように除去し、「BSF電気接続領域」の形状を複数のドット状・島状とすることにより、その面積を「エミッタ領域」の面積より狭くする、という上記(i)及び(ii)に係る構成に至る。
そして、上記(iii)については、上記1(5)に説示のとおり、引用発明の「BSF領域14」は、「エミッタ領域12」の「部分である周縁部上に」その「一部が積層」している構成であるところ、その技術的意義はアラインメント用のマージンを提供することにある(引用文献の【0032】参照)から、上記周知技術を採用した場合であっても、当業者は、引用発明の上記構成を維持するのが自然である。
したがって、相違点1及び相違点2に係る本願発明の構成は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たものである。
(2)相違点3について
引用発明は、上記(1)イで説示したとおり、バックコンタクト型太陽電池であるところ、この種の太陽電池の電極は、半導体層に生成されたキャリアを効率よく収集するために低抵抗であることが技術常識である。そして、電極の面積を大きくすることは、低抵抗化を実現するのための常套手段である。
他方、引用発明の「ベースコンタクト24」(本願発明の「第1電極」に相当。)は、「BSF領域14」と電気的に接触するものであるところ、当該「ベースコンタクト24」が「エミッタ領域12」と接触することに不都合があることは明らかであるから、当該「ベースコンタクト24」の形成され得る最大の幅は、第14n層の幅であるといえる。
そうすると、当業者であれば、上記技術常識に照らし、引用発明の「ベースコンタクト24」の幅を、不都合がない範囲で可能な限り大きくすることを適宜なし得たということができ、そのように構成することによって、当業者は相違点3に係る本願発明の構成に至る。
(3)本願発明の効果について
上記相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果に基づいて予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
3 小括
以上によれば、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 請求人の主張について
請求人は、引用文献には、相違点3に係る本願発明の構成(「前記第1電極が、前記第1導電型非晶質半導体膜の前記前記第2導電型非晶質半導体膜よりも上層に位置する部分まで広がって位置することにより、平面視において、前記第1電極の幅が前記開口部の幅よりも大きくなるように形成されている」)が記載されておらず、示唆もない旨主張し、その根拠として、図1では、ベースコンタクト24が、第12p層よりも上層に位置する部分まで広がって位置していないし、当該ベースコンタクト24の幅も、第14n層の幅よりも小さくなっている旨主張している。
しかしながら、引用発明は、図2~図6の工程により形成される光起電力電池に係るものであり、上記主張する相違点については、上記2(2)に説示のとおりである。
よって、請求人の上記主張は、上記判断を左右するものではない。
第6 むすび
上記のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-015922