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特許拒絶査定不服審判

2022-016047

発電建材及びその製造方法

審判番号
2022-016047
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-564305
請求日
2022年10月07日
審決日
2023年10月06日
公報発行日
2024年03月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】フォトン テクノロジー (クンシャン) カンパニー リミテッド
  • 【請求人代理人】江部 武史
審判長/審判官
  • 審判長 波多江 進
  • 審判官 野村 伸雄
  • 審判官 山村 浩
分類
P18 .121-Z (H01L) / P18 .537-Z (H01L) / P18 .55 -Z (H01L) / P18 .575-Z (H01L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法17条の2第3項特許法29条2項特許法36条6項2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第6項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-564305「発電建材及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 8月15日国際公開、WO2019/154277、令和 3年 5月13日国内公表、特表2021-512508〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2019年(平成31年)1月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2018年2月8日、中国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。 令和 2年 8月 5日 :上申書、手続補正書の提出 令和 3年 9月13日付け:拒絶理由通知書 令和 4年 2月21日 :意見書、手続補正書の提出 同年 5月26日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同年 6月 7日 :原査定の謄本の送達) 同年10月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出 同年10月11日 :手続補足書の提出 第2 令和4年10月7日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和4年10月7日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「発電建材であって、 基板、発電層及び保護層を含み、 前記発電層は前記基板上に設けられ、前記保護層は前記発電層を覆い、 前記保護層は、300nm~1300nmの波長範囲で、加重平均透過率0%~79%を有し、 前記保護層は、0.01~0.6mmの厚さを有し、 前記発電建材の光電変換効率は、14%以上であることを特徴とする発電建材。」 (2) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載 本件補正前の、令和4年2月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「発電建材であって、 基板、発電層及び保護層を含み、 前記発電層は前記基板上に設けられ、前記保護層は前記発電層を覆い、 前記保護層は、300nm~1300nmの波長範囲で、加重平均透過率10%~79%を有することを特徴とする発電建材。」 2 本件補正の適否 本件補正のうち請求項1についての補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「保護層」について「0.01~0.6mmの厚さを有し」との限定及び「発電建材」について「光電変換効率は、14%以上である」との限定を含むものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち請求項1についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。 (1) 明確性要件について ア 当審の判断の概要 本件補正後の請求項1は、「保護層は、300nm~1300nmの波長範囲で、加重平均透過率0%~79%を有し」との発明特定事項を含むものであるところ、「加重平均透過率」により保護層を特定しているが、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面には、「加重平均透過率」の算出に用いる係数の開示がないため、当該係数が不明であり、保護層としてどのようなものが含まれているのか不明確となっている。 イ 当審の判断の詳細な説明 (ア) 明細書及び図面の記載について 上記アで説示したように本件補正後の請求項1における300nm~1300nmの波長範囲の加重平均透過率に算出に用いる係数は不明であるから、本願の明細書及び図面を参酌する(以下、「加重平均透過率」、「光透過率」等に下線を付した。)。 「【0008】 1)前記太陽電池は、CVD法、好ましくはプラズマ強化CVD法(PECVD)によってセラミック基体に堆積する必要があり、性能に優れた太陽電池は、厳格な成膜条件が必要とされる。明らかなように、セラミック基体材料に対しては、真空条件下で直接成膜することが難しく、その含水量が0.5wt%以下であるにもかかわらず、高性能太陽電池の製造にとって主な障害となっている。 2)前記保護層がガラス状エナメルとされる場合、ガラス状エナメルの焼成温度が500~900℃であるので、比較的低い温度で表面に透明エナメル層を形成しても、発電層に不可逆的なダメージを与えてしまう。 3)形成された保護層が薄いと、電極層の色も視認可能になり、その結果、太陽電池と周辺環境の調和が取れなくなり、さらに、その使用環境が制限される。その他の有機高分子材料は長時間屋外環境に晒されると劣化しやすく、光透過率や防水性能が低下し、発電効率に大きな影響を与えたり、建物の表面から脱落して電極層の本来の色が視認可能になったりするおそれがある。」 「【0013】 まず、本発明は、 基板、発電層及び保護層を含み、 前記発電層は基板上に設けられ、前記保護層は発電層上に覆われ、 前記基板は、ガラス、金属板、セメント系板材、プラスチックフィルム、タイル又は瓦であり、 前記保護層は、300nm~1300nmの波長で、加重平均透過率が0%~79%である発電建材を提供する。」 「【0023】 前記保護層は、300~1300nmでの加重平均透過率が0%~79%である。当業者は、必要に応じて、それについてさらに改良することができる。たとえば、保護層を製造する原料に特定の成分を添加又はドープすることにより、特定の波長で保護層に吸収を持たせるか、又は高透過率を維持させ、それにより、可視波長範囲で保護層が透明又は半透明になり、又は所定の透過率(たとえば50%)の特徴を有するようにする。より具体的な波長範囲については、300~360、360~400、400~500、500~600、600~700、700~760、760~860、860~1300nmを選択でき、また、原料組成を変更することで、保護層がさまざまな色を示せるようにする。」 「【0035】 前記表面層は、発電層の表面に液体を直接塗装して硬化させることにより得られるものであり、300nm~1300nmの波長範囲で加重平均透過率が10%~85%である。」 「【0037】 好ましくは、表面層の厚さ、原料の配合及び製造プロセスを調整することによって、前記表面層は、300nm~1300nmの波長範囲で加重平均透過率が45%~75%であり、ヘイズが10%~99%である」 「【0079】 ・・・略・・・ 【図16】図16は、本発明の実施例6の表面層の300nm~1300nmの波長範囲での透過率曲線であり、加重平均透過率が85%である。 【図17】図17は、本発明の実施例7の表面層の300nm~1300nmの波長範囲での透過率曲線であり、加重平均透過率が35%である。 【図18】図18は、本発明の実施例8の表面層の300nm~1300nmの波長範囲での透過率曲線であり、加重平均透過率が52%である。 【図19】図19は、本発明の実施例9の表面層の300nm~1300nmの波長範囲での透過率曲線であり、加重平均透過率が10%である。」 「【0102】 ・・・略・・・ 図16に示す太陽光発電建材の表面層の300~1300nmでの可視光透過率曲線から、加重平均透過率は85%であった。」 「【0103】 ・・・略・・・ 図17に示す太陽光発電建材の表面層の300~1300nmでの可視光透過率曲線から、加重平均透過率は35%であった。」 「【0104】 ・・・略・・・ 表面層を構成する液体原料をフロー法により電池層の表面に塗布し、硬化温度を100℃、硬化時間を0.2sとした。図18に示す表面層の300~1300nmでの可視光透過率曲線から、加重平均透過率は52%であった。」 「【0105】 ・・・略・・・ 太陽光発電建材の表面層の300~1300nmでの可視光透過率曲線は図19に示され、その加重平均透過率は45%であった。」 「【0106】 ・・・略・・・ 表面層を構成する液体原料をプリントの方式により電池層の表面に塗布し、表面層の厚さは0.3mm、硬化温度は50℃、硬化時間は1sであった。表面層の300~1300nmでの可視光の加重平均透過率は45%であった。」 「【0107】 ・・・略・・・ 300~1300nmでの光に対する本実施例で得られた電池の加重平均透過率は55%であった。」 「 [図:0001407270000001.jpg] [図:0001407270000002.jpg] [図:0001407270000003.jpg] 」 以上のとおり、本願の明細書及び図面には「加重平均透過率」との用語は記載されているものの、300nm~1300nmの波長範囲の加重平均透過率の算出に用いる係数が具体的にどのようなものであるかについては記載されていない。 (イ) 本願出願日時点の技術常識について 本願出願日時点の技術常識を考慮すると、「可視光透過率」の算出に用いる係数としては、令和4年10月11日に提出された手続補足書で提出された甲第1号証であるJIS R 3106で用いられている「可視光透過率」を計算するための重価係数(後記表3参照)がよく知られているが、本件補正後の請求項1に記載の「加重平均透過率」における300nm~1300nmの波長範囲は、JIS R 3106で用いられている「可視光透過率」を計算するための重価係数における波長範囲380~780nmとは大きく異なるから、当該重価係数が、本件補正後の請求項1に記載の「加重平均透過率」の算出に用いる係数であるとは直ちに解することはできない。よって、「加重平均透過率」の算出に用いる係数は、本願出願日時点の技術常識を考慮してもなお不明である。 (ウ) 審判請求人の主張について a 審判請求人の主張内容 審判請求人は、「加重平均透過率」はJIS R 3106「板ガラスの透過率・反射率・放射率の試験方法及び建築用板ガラスの日射熱取得率の算定方法」に記載されるとおりに算出されるものであり、また、加重平均透過率は日立社の紫外線可視近赤外分光光度計UH5700などの当技術分野の従来の装置によって容易に決定することができるから、「加重平均透過率」は、明確である旨主張する。 b 審判請求人の主張についての検討 まず、令和4年10月11日に審判請求人が提出した手続補足書で提出した甲第1号証であるJIS R 3106には、「可視光透過率及び可視光反射率の測定方法」における加重平均について記載され、表3に可視光透過率及び可視光反射率を計算するための以下の重価係数が記載されている。 [図:0001407270000004.jpg] [図:0001407270000005.jpg] しかしながら、上記(イ)でも検討したとおり、上記表3の重価係数は380nm~780nmの可視光の範囲において定義されるものであるところ、本件補正後の請求項1の「加重平均透過率」は、「300nm~1300nmの波長範囲」で定義されるものであり、その波長範囲が大きく異なっているから、請求項1の「加重平均透過率」の加重平均が、上記表3の重価係数を用いて算出されるものであると解することはできない。 また、【0008】には「光透過率や防水性能が低下し、発電効率に大きな影響を与えたり」との記載があるところ、発電効率には可視光のみではなく赤外光等の透過率が影響することは技術常識であるから、本願の透過率が可視光線透過率を意味するとは解されない。この点からみても請求項1の「加重平均透過率」の加重平均が、上記表3の重価係数を用いて算出されるものであると解することはできない。 さらに、本願の図18の実施例では、加重平均透過率が52%とされているところ、上記表3で重価係数が103.52ともっとも高い波長550nmの透過率は0.35程度であり、透過率が52%を超えている波長600nm以上の重価係数は56.80以下と比較的低いことからしても、上記表3の重価係数を用いて算出しても加重平均透過率が52%とはならないことは明らかであるから、この点からみても、請求項1の「加重平均透過率」の加重平均が、上記表3の重価係数を用いて算出されるものであると解することはできない。 以上から、審判請求人の上記主張は、採用することができない。 ウ 小括 したがって、本件補正後の請求項1に記載される発明は、明確であるとはいえないから、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないため、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (2) 進歩性について 本件補正後の請求項1に記載される発明については、上記(1)で指摘した記載不備があるものの、仮に、当該請求項1に特定された「加重平均透過率」に用いる係数が上記表3の重価係数を用いて算出されるものであるとしても、本件補正発明は以下に示すとおり、当業者が容易になし得たものである。 ア 本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載した事項により特定され、「加重平均透過率」に用いる係数は上記表3の重価係数を用いて算出されるものであると認定する。 イ 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定 (ア) 引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特表2013-515382号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は、当審で付した。以下同じ。)。 「【0005】 現在常用化されている建築用光起電力モジュールは、暗い黒色であるか、大部分さび色またはかば色を帯びている。このような光起電力モジュールが建物の窓などに装着される時には視覚的疲労感を与え易い。また、美的な側面でも好ましくないだけでなく、全体的な建物との調和度も下がる問題があった。 したがって、太陽光を受光して電気エネルギーを出すことができながらも建物に装着される時に疲労感を少しか与えず、美的に建築物との調和も向上することができる光起電力モジュールに対する開発が至急な実情である。 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は、使用者にとって視覚的疲労感が減るように感じさせると共に建築物に装着する時建築物と調和することができる光起電力モジュールを提供するためのものである。 本発明が達成しようとする技術的課題らは、以上で言及した技術的課題らに制限されず、言及されなかったさらに他の技術的課題については、下の記載から本発明が属する技術分野で通常の知識を有した者に明確に理解されることができるであろう。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明の実施例によると、基板上に形成される第1電極、該第1電極上に形成される光電変換層、該光電変換層上に形成される第2電極、該第2電極上部に配置される透光性裏面基板を含み、CIE(国際照明委員会)LAB色座標上でa*:-25~0、b*:10~50、L*:20~50に該当する範囲の色相を有することを特徴とする光起電力モジュールが提供される。 【0008】 一方、本発明の実施例によると、基板上に形成される第1電極、該第1電極上に形成される光電変換層、該光電変換層上に形成される第2電極、該第2電極上に形成される絶縁性保護層、該絶縁性保護層上に配置される透光性裏面基板、前記基板の下面、前記基板と前記第1電極との間、前記第2電極と前記絶縁性保護層との間、前記絶縁性保護層と前記裏面基板との間、前記裏面基板上部のうちで少なくとも一つの位置に形成されて色相を示す光学層を含むことを特徴とする光起電力モジュールが提供される。 【発明の効果】 【0009】 本発明によると、使用者にとって視覚的疲労感を減らすことができる色相を有する光起電力モジュールを得ることができる。 また、本発明によると、建物の窓などに適用される場合、違和感または視覚的疲労感が減り、建築物との高い調和度及び美麗さも向上することができる光起電力モジュールを得ることができる。」 「【0012】 光起電力モジュールの構成 図1乃至図5は、本発明の実施例による光起電力モジュールの構成を示す図面である。 【0013】 図1乃至図5を参照すると、本発明の光起電力モジュールは基板100上に順次に形成される第1電極110、光電変換層120、第2電極130を含むことができる。一方、第2電極130上には絶縁性保護層140及び裏面基板150がさらに含まれることができる。本発明の一実施例による光起電力モジュールは、少なくとも一部に光学層160を含む。光学層160は光起電力モジュールの任意の位置に含まれることができる。例えば、光学層160は図1に示されるように、基板100下部に形成されることもでき、図2に示されるように基板100と第1電極110との間に形成されることもできる。また、図3に示されるように第2電極130と絶縁性保護層140との間に形成されることもできる。一方、図4に示されるように絶縁性保護層140と裏面基板150との間に形成されることもでき、図5に示されるように裏面基板150上に形成されることもできる。また、光学層160は図1乃至図5に示される位置のうちで2箇所以上に形成されることもできる。 【0014】 本発明の一実施例による光学層160は、全体光起電力モジュールが色相を有するようにできる構成要素である。このような光学層160は通常的な溶媒に着色用顔料または染料を溶解することで形成される。光学層160は、例えば、コーティング層であることができる。光学層160が裏面基板150上に形成される場合には、裏面基板150上に一定の割合の着色用顔料または染料を含む溶液を塗布することで形成することができる。顔料または染料は、例えば、溶媒に対しておよそ5%乃至40%の重量で含まれることができる。 【0015】 図6及び図7は、それぞれ本発明の一実施例による光学層160の透過率及び吸収率を各波長に対して示したグラフである。 一方、表1は本発明の一実施例による光学層160の透過率、反射率、吸収率を各波長帯別に示す。 両面のうちで一面に光学層160が形成された裏面基板150を対象として透過率、反射率、吸収率についての測定を行い、比較のために光学層160が形成されない裏面基板150も対象として透過率、反射率、吸収率を測定した。 【0016】 【表1】 [図:0001407270000006.jpg] 【0017】 表1中の15%とは、光学層160の色濃度を示したものであり、光学層160形成の材料になる溶液において、溶媒に対する顔料または染料の重量比が15%であることを意味する。 表1及び図6を参照すると、光学層160の透過率は近紫外線領域(300nm~400nm)でおよそ5%乃至40%であり、近赤外線領域(780nm~3000nm)でおよそ50%乃至80%であることを分かる。また、表1及び図7を参照すると、光学層160の吸収率は近紫外線領域(300nm~400nm)でおよそ50%乃至80%であり、近赤外線領域(780nm~3000nm)でおよそ10%乃至25%であることを分かる。本発明の一実施例による光学層160としては上で説明した特性を満足させる物質ならどのような物質でも利用されることができる。」 図5、平成23年11月11日手続補正書で補正された図6及び図7(引用文献1である公表公報に掲載されたものである。)は以下のとおりである。 「 [図:0001407270000007.jpg] 【図6】 [図:0001407270000008.jpg] 【図7】 [図:0001407270000009.jpg] 」 (イ) 図面から読み取れる事項の認定 【0015】~【0017】を参照しつつ上記図6を見ると、光学層160の透過率は、近紫外線領域(300nm~400nm)でおよそ5~40%であり、可視光領域(400nm~780nm)でおよそ10%~83%であり、近赤外領域(780nm~1300nm)でおよそ50%~80%であること、が把握できる。 (ウ) 引用発明の認定 前記(ア)で摘記した引用文献1の記載事項及び前記(イ)で認定した図面から読み取れる事項から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(以下、引用発明の認定に用いた箇所の段落番号等を参考までに括弧内に付した。)。 「建築物に装着する時建築物と調和することができる光起電力モジュールであって、(【0006】) 基板100上に順次に形成される第1電極110、光電変換層120、第2電極130を含み、第2電極130上には絶縁性保護層140及び裏面基板150がさらに含まれ、裏面基板150上に形成される光学層160を含み、(【0013】) 光学層160が裏面基板150上に形成される場合には、裏面基板150上に一定の割合の着色用顔料または染料を含む溶液を塗布することで形成することができ、(【0014】) 光学層160の透過率は、近紫外線領域(300nm~400nm)でおよそ5~40%であり、可視光領域(400nm~780nm)でおよそ10%~83%であり、近赤外領域(780nm~1300nm)でおよそ50%~80%である、(上記(イ)) 光起電力モジュール。」 ウ 対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア) 対比分析 a 引用発明の「基板100」は、本件補正発明の「基板」に、 引用発明の「第1電極110、光電変換層120、第2電極130」は、本件補正発明の「発電層」に、 それぞれ相当する。 b 本件補正発明の「発電建材」の発明特定事項について 引用発明の「光起電力モジュール」は、「建築物に装着する時建築物と調和することができる」ものであることから、建材といえる。 したがって、引用発明は上記発明特定事項を満たす。 c 本件補正発明の「保護層」の発明特定事項について 引用発明の「光学層160」は、「近紫外線領域(300nm~400nm)で」「透過率」が「5%~40%であ」ることから、紫外線を遮蔽する部材といえる。 そして、太陽電池は、紫外線により劣化することから、紫外線をカットする保護層を設けることは、一般的に知られている(必要ならば、特開2013―168672号公報(【0100】)等を参照されたい。) そうすると、引用発明の「光起電力モジュール」に含まれる「光学層160」は、紫外線を遮蔽する部材であるという意味で、本件補正発明の「保護層」に相当するといえる。 d 本件補正発明の「前記保護層は前記発電層を覆い」の発明特定事項について 本願の明細書【0019】には、「上記発電建材のより好ましい形態として、前記発電建材は、発電層と保護層の間に位置する封止層をさらに含み」と記載されていることからしても、本件補正発明の「前記保護層は前記発電層を覆い」との発明特定事項は、発電層と保護層の間に封止層などの別途の層を含む形態を包含しているといえる。 そして、引用発明の「光学層160」は、「第1電極110、光電変換層120、第2電極130」上の「裏面基板150上に形成される」ものであることから、「第1電極110、光電変換層120、第2電極130」を覆っているといえる。 したがって、引用発明は上記発明特定事項を満たす。 (イ) 一致点及び相違点 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 a 一致点 【一致点】 「発電建材であって、 基板、発電層及び保護層を含み、 前記発電層は前記基板上に設けられ、前記保護層は前記発電層を覆う、 発電建材。」 b 相違点 【相違点1】 保護層につき、本件補正発明では、「300nm~1300nmの波長範囲で、加重平均透過率0%~79%を有し」ており、「0.01~0.6mmの厚さを有し」ているのに対し、引用発明では、光学層160の透過率は、近紫外線領域(300nm~400nm)でおよそ5~40%であり、可視光領域(400nm~780nm)でおよそ10%~83%であり、近赤外領域(780nm~1300nm)でおよそ50%~80%である点。 【相違点2】 発電建材の光電変換効率につき、本件補正発明では、「14%以上である」のに対し、引用発明では、そのようなものか明らかでない点。 エ 判断 以下、上記相違点について検討する。 (ア) 相違点1について 引用発明では、光学層160の透過率は、近紫外線領域(300nm~400nm)でおよそ5~40%であり、可視光領域(400nm~780nm)でおよそ10%~83%であり、近赤外領域(780nm~1300nm)でおよそ50%~80%である。 ここで、引用発明の光学層の加重平均透過率を上記JIS R 3106の表3の重価係数をもとに見積もると、引用発明の光学層の透過率は可視光領域(400nm~780nm)でおよそ10%~83%であり、80%を超えているのは470nm~510nmとごく狭い波長領域であること、上記表3の重価係数が最も高い波長は、重価係数103.52の550nmであり、引用文献1の図6では、550nmの透過率は45%程度であることが見て取れること、上記表3の470nm~510nmの重価係数は10.45~54.22と550nmの重価係数103.52に比べて十分小さいことからして、引用発明の加重平均透過率は0%~79%の範囲内のものであることは明らかである。 次に、保護層が「0.01~0.6mmの厚さを有し」ていることの技術上の意義について本願の明細書の記載を参酌すると、本願明細書の【0085】には「前記保護層の膜は、最も好ましくは厚さ0.01~5mmの膜であり、膜が厚すぎると、優れた保護効果を奏する一方、保護層の透過率を大幅に低下させる。」と記載され、厚さの下限は保護効果を考慮し、厚さの上限は透過率を考慮しているものといえる。そして、引用発明の光学層160は、光起電力モジュールに用いるものであることや、下限については本件補正発明では保護層がいかなる保護を行う層であるのか特定されていないこと、上限については本件補正発明は加重平均透過率が0%を含むこととの関係からみてその技術上の意義が不明であることを総合的に勘案すると、保護効果と透過率の観点で厚さを決定することは設計事項というほかない。 そうすると、引用発明において、相違点1に係る本件補正発明の構成にすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。 (イ) 相違点2について 引用発明は光起電力モジュールであることからできるかぎり高い光電変換効率が好ましいことは技術常識であるところ、本件補正発明の相違点2に係る発明特定事項は、周知の達成すべき課題をそのまま発明特定事項としただけのものであり、本件補正発明は当該課題を実現する具体的手段を特定するものではない。そして、このような課題を実現する具体的手段に想到することは困難であり得ても、このような課題に想到することには何らの困難もない。 そして、光起電力モジュールの光電変換効率の値として14%という値自体について検討しても、引用発明の光学層160は、近紫外線領域、可視光領域及び近赤外領域で所定の透過率を有していることから、本願優先日時点のセルの光電変換効率に関する技術常識(例えば、NRELのBest Research-Cell Efficiency Chart 「https://www.nrel.gov/pv/cell-effic iency.html」参照)に照らして、引用発明の光起電力モジュールの光電変換効率を、14%以上とすることは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。 よって、引用発明において、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。 (ウ) そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 (エ) 審判請求人の主張について a 審判請求人の主張内容 審判請求人は、本件補正発明は保護層の厚さを0.01~0.6mmに設定することで、発電建材の光電変換効率が14%以上になるものであり、上記引用文献1には、14%以上の光電変換効率について開示も示唆もされていない旨主張する。 b 審判請求人の主張についての検討 上記主張について検討すると、発電変換効率については、上記(イ)で説示したとおり単に周知の達成すべき課題を発明特定事項にしたにすぎず、そのような課題に想到することには何らの困難もない。なお、同様の保護層であれば、一般に保護層が厚くなれば光電変換効率が低くなることは自明であり、このような自明な技術的事項を考慮すると、引用発明において、光電変換効率をも考慮して光学層160の厚さを決定することは設計的事項にすぎない。 よって、審判請求人の上記主張は、採用することができない。 オ 小括 以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正の却下の決定についてのむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~13に係る発明は、令和4年2月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定されるとおおりのものであり、当該請求項1の記載は前記第2の[理由]1(2)に示したとおりである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の本願発明に対する拒絶の理由の概略は、以下の理由を含むものである。 理由1(新規事項):令和4年2月21日付け手続補正書でした補正は、下記の点で国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合にあっては、当該翻訳文)又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下、翻訳文等という。)(誤訳訂正書を提出して明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあっては、翻訳文等又は当該補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面)に記載した事項の範 囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(同法第184条の12第2項参照)。 理由2(明確性):請求項1には、「加重平均透過率」と記載されているが、どのように「加重平均」をとるのか不明である。よって、本願発明は、明確でない。 理由4(進歩性):本願発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2に記載された発明に基いて、本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献2:特表2013-515382号公報(上記第2の2(2)イで引用した引用文献1) 3 当審の判断 (1) 理由1(新規事項)について 令和4年2月21日付け手続補正書でした請求項1についての補正は、「前記保護層は、300nm~1300nmの波長範囲で、加重平均透過率10%~79%を有する」という事項を追加するものである。 これに対して、翻訳文等の【0013】には、「前記保護層は、300nm~1300nmの波長で、加重平均透過率が0%~79%である」という記載があるものの、加重平均透過率の下限が「10%」であることについては、翻訳文等の【0035】等において、「表面層」について記載されているのみであり、「保護層」についての記載はない。 そして、翻訳文等の【0104】の「保護層上に表面層を製造し」等の記載から分かるように、翻訳文等において、「保護層」と「表面層」は異なる用語として使い分けられており、「表面層」についてなされた「加重平均透過率」についての特定を、「保護層」について特定することは、翻訳文等の記載から自明なものではなく、翻訳文等に記載した事項との関係で、新たな技術的事項を導入するものである。 (2) 理由2(明確性)について 前記第2の[理由]2(1)に記載したとおり、「加重平均透過率」の算出に用いる係数が不明であるから、保護層としてどのようなものが含まれているのか不明確となっている。 よって、本願発明は明確でない。 (3) 理由4(進歩性)について ア 引用文献の記載事項及び引用発明の認定 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2(上記2(2)イの引用文献1)の記載事項及び引用発明は、前記第2の[理由]2(2)イで記載したとおりである。 イ 対比・判断 本願発明は、実質的に、前記第2の[理由]2(2)で検討した本件補正発明から、保護層の厚さ及び発電建材の光電変換効率に係る限定事項を削除し、「加重平均透過率0%~79%」を「加重平均透過率10%~79%」との記載にしたものである。 そして、引用発明において、光学層160の透過率が10%未満の波長領域は、近紫外線領域(300nm~400nm)の一部しかなく、ここで、上記JIS R 3106の表3では、可視光領域から近紫外線領域に行くにしたがい重価係数は減少し、また、400nmの重価係数は0.03、390nmの重価係数は0.01、380nmの重価係数は0となっており、近紫外線領域(300nm~400nm)の重価係数はきわめて小さいことからみて、引用発明の光学層160の加重平均透過率が10%以上であることは明らかである。 そうすると、本件補正発明が、前記第2の[理由]2(2)エに記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、令和4年2月21日付け手続補正書でした補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、また、本願発明は、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-016047

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