特許拒絶査定不服審判
2019-002550
電気自動車
- 審判番号
- 2019-002550
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-211855
- 請求日
- 2019年02月26日
- 審決日
- 2020年08月28日
- 公報発行日
- 2020年12月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】渡邉 雅弘
- 審判長/審判官
- 審判長 柿崎 拓
- 審判官 堀川 一郎
- 審判官 長馬 望
- 分類
- P18 .536-WZ (B60L) / P18 .537-WZ (B60L) / P18 .121-WZ (B60L) / P18 .55 -WZ (B60L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法17条の2第3項特許法29条2項特許法36条4項1号特許法36条6項1号特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2018-211855「電気自動車」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 4月 4日出願公開、特開2019- 54726〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本願は、平成30年11月10日の出願であって、平成31年1月31日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成31年2月7日)、これに対し、平成31年2月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ、当審により令和元年11月29日付で拒絶の理由が通知され(発送日:令和元年12月2日)、これに対し、令和元年12月11日に意見書及び手続補正書が提出され、当審により令和2年2月10日付で最後の拒絶の理由が通知され(発送日:令和2年2月12日)、これに対し、令和2年2月18日に意見書が提出されたものである。
2.特許請求の範囲
令和元年12月11日にされた手続補正で特許請求の範囲は以下のように補正された。
「【請求項1】
一日の平均走行距離を省エネルギー走行するに必要十分な電力蓄積容量を有する大容量二次電池を搭載し、前記大容量二次電池への充電は、EV所有者の自宅等日常的に長時間駐車可能な場所における駐車期間中の普通充電でおこなうことが可能であって、走行中は周期的に残電力での省エネルギー走行による走行可能距離を算出・特定して残電力によるその日の目的地までの残走行距離走行可否判定、および残電力による残距離走行不可の場合は充電すべき残距離走行に必要な電力量の特定を行う、ことを特徴とする小型自家用電気自動車。
ここで省エネルギー走行とは、走行中の車両の有する運動エネルギーを走行に有効に活用する走行として、従来の回生制動を主体とする減速走行に代えて、惰性走行主体による減速走行による走行、即ち定速電費走行、を云う。」
3.令和2年2月10日付で通知した拒絶理由(以下、「最後の拒絶の理由」という。)の内容
令和2年2月10日付の当審で通知した最後の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
「I 令和元年12月11日付でした手続補正(以下、「本件補正」という。)は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
II この出願は、明細書、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。
理由I
記
(1)請求項1に「走行中は周期的に残電力での省エネルギー走行による走行可能距離を算出・特定して」とあるから、走行可能距離Laの算出・特定は、周期的に行われることとなる。
そこで、当該補正が、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。
当初明細書等には、
a「【請求項1】
一日の平均走行距離を(定速走行燃費での走行に相当する)省エネルギー走行で走行するに必要十分な電力蓄積容量を有する大容量二次電池を搭載し、前記大容量二次電池への充電は、EV所有者の自宅等長時間駐車可能な場所における駐車期間中の普通充電でおこなうことを原則とし、走行中は前記大容量二次電池残電力量による省エネルギー走行による走行可能距離Laと当該電気自動車現地点-走行目的地点までの残距離Lo を周期的に比較し、大容量二次電池残電力量が省エネルギー走行による残距離走行に不足が生じると判明した時点以降の適当な時点で目的地までの経路途中にある充電ステーションにアクセスして必要最小限の電力量を充電することを特徴とする電気自動車。」
b「・あらかじめ走行開始地点-走行終了地点(目的地点、通常は走行終了後の駐車地点)間の走行経路を特定しておく。
・走行中は、現地点-目的地間走行距離Lo、およびバッテリー残電力量での走行可能距離Laを継続的に特定し、Lo>Laが判明した時点で走行経路中の適当な充電ステーションの選択・予約を行う。」(【0009】)
c「・前記バッテリーの充電量(残充電量)検知機能、および残充電量による走行可能距離算出機能を有していること、」(【0012】)
d「本願発明は、EV普及の最大の問題である大容量二次電池の価格、重量、寿命および充電時間・充電場所に関する問題を、大容量二次電池容量を最小限化すること、減速は原則として惰性走行主体で行うこと、EVは自車現位置から目的地までの距離およびバッテリー残電力量での走行可能距離特定が継続的に可能であること、および大容量二次電池充電は、原則としてEV所有者の自宅等のEV停車時に最大8時間程度の普通充電で可能であること、また走行中の残電力量不足は、充電を行うべき充電ステーション特定に関する情報を充電ステーションネットワークセンターからリアルタイムにEVに提供することによって、EVの必要とする最小限の充電量を最短の時間で充電することを可能にするものであって、有効な地球温暖化対策としてのEVの普及に大きく資するものであると言える。」(【0014】)
と記載されるにすぎず、走行可能距離Laの算出・特定を継続的に行うこと、走行中は大容量二次電池残電力量による省エネルギー走行による走行可能距離Laと当該電気自動車現地点-走行目的地点までの残距離Lo を周期的に比較することは記載はあるが、走行可能距離Laの算出・特定を周期的に行うことは記載も示唆も無い。
(2)請求項1に「残電力によるその日の目的地までの残走行距離走行可否判定」とあるから、残走行距離走行可否判定の対象となるのは、その日の目的地となる。
そこで、当該補正が、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。
当初明細書等には、a、b、dに加え、
e「上記バッテリー残電力量での走行可能距離特定は、車両が省エネルギー走行を行う(例えば定常走行から減速・停止点への走行・停止を、制動走行あるいは回生制動走行で行うのではなく、惰性走行主体で行う)とした場合の走行距離、即ち車両が現地点から目的地点に向けて定速燃費(電費)走行するとした場合の走行距離をもって走行可能距離とする。
この結果必要最小限の小容量バッテリーを搭載したEVにおいても、出発地から目的地までの間走行に必要な電力量のうち、自宅等での普通充電による満充電での電力量で不足する場合があっても、不足電力量の充電を(充電開始までの待ち時間を含めて)最短時間で行うことが可能な充電ステーションにアクセスして効率的に必要十分な電力量充電することによって、航続距離不足・充電時間長大化の問題をも最小限に抑えることが可能となる。即ち、本願発明はEVの普及促進に大きな効果をもたらすことができる。」(【0010】-【0011】)
f「・出発地点から目的地点までの経路探索・誘導が可能な、充電ステーション位置情報を含む地図データーべースを有する、カーナビゲーション装置を有していること」(【0012】)
と記載されるにすぎず、目的地が走行終了地点であることは記載はあるが、目的地がその日の目的地であることは記載も示唆も無い。
(3)請求項1に「小型自家用電気自動車」とあるから、発明の保護の対象は小型自家用電気自動車となる。
そこで、当該補正が、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。
当初明細書等には、
g「本願発明は、電気自動車(以後EVと記す)の、主として大容量二次電池(以後バッテリーと記す)にかかわる、上記問題を、バッテリーの小容量化およびEVの省エネルギー走行を主体とした方策で解決しようとするものである。」(【0004】)
h「小型自家用ガソリン車の一日平均走行距離は約60kmと言われている。従って、EVに搭載するバッテリー容量は、車両がEVとして機能・性能を発揮できる最小限の容量として一日平均走行距離を走行するに必要十分な電力量を蓄積可能な容量(航続距離100km程度、バッテリー容量10kwh程度)とする。
また、上記小容量バッテリーに蓄積される電力量を有効に利用するため、車両は最大限の省エネルギー走行を行うものとする。」(【0005】)
と記載されるにすぎず、電気自動車(EV)及び小型自家用ガソリン車との記載はあるが、小型自家用電気自動車であることは記載も示唆も無い。
したがって、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
理由II
記
(1)請求項1に「走行中は周期的に残電力での省エネルギー走行による走行可能距離を算出・特定」とあり、「算出」とは「計算して求める数値を出すこと」であるから、走行可能距離を求めるために何らかの演算を行うこととなるが、どの様な演算を行って求めるのか明細書に何等開示が無く不明(先の拒絶理由に示した様に積載量、道路状態をどの様に考慮した関数であるのか。)である。
更に、請求項1に係る小型自家用電気自動車は、「走行中は周期的に残電力での省エネルギー走行による走行可能距離を算出・特定して残電力によるその日の目的地までの残走行距離走行可否判定、および残電力による残距離走行不可の場合は充電すべき残距離走行に必要な電力量の特定を行う」だけであるから、【0004】記載の課題を何等解決しておらず、どの様にして課題解決を図るのか不明(省エネルギー走行を前提とした特定・判定は行ってはいるが、省エネルギーとなる走行は行っていない。)である。
更に、請求項1に「惰性走行主体による減速走行による走行、即ち定速電費走行」とあるが、惰性走行とは走行中にアクセルから足をはずした状態で走行することであり、実際に道路で運転すれば、当該電気自動車が走行する道路の状態(直線かカーブか、上り坂か平坦な道か下り坂か、舗装されているか砂利道か等)、車両の状態(定員一杯で走行するか運転者のみが乗車するか、荷物積載量がゼロか100%か、エアコン等の車載品を使用するか否か)、交通の状態(赤信号・渋滞等)が様々に絡み合うことが原因で、平坦で信号が無く他に自動車が走っていない直線舗装道路を走行した際の惰性走行(以下、「A惰性走行」という。)よりは短い距離しか惰性で走行できないから、A惰性走行を前提として走行可能距離求めれば、上述の様々な原因により実際の走行可能距離が短くなり、A惰性走行に基づいて目的地又は充電ステーションまで移動できると判断しても実際は移動できないこととなり、移動のための電気自動車として機能せず、どの様な前提条件(道路・車両・交通の状態)で【0004】記載の課題を解決した電気自動車を得るのか明細書を参照しても全く不明である。」
4.最後の拒絶の理由に対する当審の判断
理由Iについて
令和元年12月11日提出の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項は、「3.理由I」に示したとおり、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。
なお、請求人は、令和2年2月18日付意見書で「願書に最初に添付した明細書段落0009に、「走行中は、現地点-目的地間走行距離走行距離Loおよびバッテリー残電力量での走行可能距離Laを継続的に特定し」および「走行可能距離Laの特定に際しては省エネルギー走行(交差点等への減速走行を、制動走行あるいは回生制動走行で行わず、惰性走行主体で行う走行方法(特許文献4))を原則とする」なる記載、および、願書に最初に添付した明細書段落0010に「上記バッテリー残電力量での走行可能距離特定は、車両が省エネルギー走行を行う(例えば定常走行から減速・停止点への走行・停止を、制動走行あるいは回生制動走行で行うのではなく、惰性走行主体で行う)とした場合の走行距離、即ち車両が現地点から目的地点に向けて定速燃費(電費)走行するとした場合の走行距離をもって走行可能距離とする」なる記載があり、これらより「走行可能距離Laの算出・特定を周期的に行う」ことの具体的方法およびその周期性は明確であると言える。」と主張するが、当該箇所に走行可能距離Laの算出・特定を周期的に行うことは記載も示唆も無いから、請求人の上記主張は採用できず、また、「走行の目的地はその日の走行終了地点であることは願書に最初に添付した明細書段落0012に「バッテリーへの充電は、電気自動車所有者の自宅等長時間駐車可能な場所における夜間の普通充電でおこなうことを原則とする」なる記載があり、これより、その日の目的地は原則として「夜間の普通充電が可能な場所」即ち「電気自動車所有者の自宅等長時間駐車可能な場所」より明確である。」と主張するが、当該箇所に目的地がその日の目的地であることは記載も示唆も無いから、請求人の上記主張は採用できず、また、「願書に最初に添付した明細書段落0001に記載の如く、「本願発明は、電気自動車普及の最大の課題である大容量二次電池にかかわる諸問題(特に、価格、重量、充電時間、寿命)を解決・軽減し、電気自動車の広範な普及促進を図ろうとするものである。」こと、願書に最初に添付した明細書段落0005に記載の如く「EVに搭載するバッテリー容量は、車両がEVとして機能・性能を発揮できる最小限の容量として一日平均走行距離を走行するに必要十分な電力量を蓄積可能な容量(航続距離100km程度、バッテリー容量10kwh程度)とする」こと、および願書に最初に添付した明細書段落0007記載の「バッテリーへの充電は、電気自動車所有者の自宅等長時間駐車可能な場所における8時間程度の夜間の普通充電でおこなうこと」から、本願発明対象車両は小型自家用電気自動車であることは自明である。」と主張するが、当該箇所に小型自家用電気自動車であることは記載も示唆も無いから、請求人の上記主張は採用できない。
したがって、令和元年12月11日提出の手続補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない
理由IIについて
令和元年12月11日提出の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1の記載は、明細書を参照しても、「3.理由II」に示したとおり、請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
なお、請求人は、令和2年2月18日付意見書で「願書に最初に添付した明細書段落0010において、「車両が現地点から目的地点に向けて定速燃費(電費)走行するとした場合の走行距離をもって走行可能距離とする」より明らかである。」と主張するが、どの様な演算を行って求めるのか何ら開示が無いため、請求人の上記主張は採用できず、また、「願書に最初に添付した明細書段落0009において、「走行可能距離の特定に際しては省エネルギー走行(交差点等への減速走行を、制動走行あるいは回生制動走行で行わず、惰性走行主体で行う走行方法(特許文献4)を原則とする)」より明らかである。」と主張するが、請求項には「省エネルギー走行による走行可能距離を算出・特定」することは記載されているとしても、小型自家用電気自動車が省エネルギー走行を行うことは示されておらず、よって、何ら課題解決が図られていないため、請求人の上記主張は採用できず、また、「本願発明の省エネルギー走行は、上記の如く目標減速・停止点に向けての惰性走行主体の減速走行であり、この結果として、停止状態から加速終了までの間の加速によって車両に蓄えられる運動エネルギーは、惰性走行によって有効に車両減速走行に活用され(現状運動エネルギーの最も有効な利用方法とされている回生制動よりも運動エネルギーの活用効率は高くなる)この結果としてEVとしての電費は回生制動走行を行う場合よりも高く定速走行電費相当とすることができる。従って、走行可能距離は、定速走行電費から算出すること、但し勿論全走行距離を定速走行電費で走行することは不可能であることから、それを想定した定速走行燃費から走行可能距離設定を行う必要があることは言うまでもない。」と主張するが、どの様な前提条件(道路・車両・交通の状態)で【0004】記載の課題を解決した電気自動車を得るのか何ら開示が無いため、請求人の上記主張は採用できない。
したがって、令和元年12月11日にされた手続補正は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、請求項1の記載は、明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
5.令和元年11月29日付の拒絶の理由
上述のように、最後の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきであるが、更に、令和元年11月29日付で通知した拒絶の理由に関して検討する。
令和元年11月29日付の当審で通知した拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
「I この出願は、明細書、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1、2号に規定する要件を満たしていない。
・・・・・略・・・・・
(3)請求項1に「前記大容量二次電池への充電は、EV所有者の自宅等日常的に長時間駐車可能な場所における駐車期間中の普通充電でおこなうことを原則とし」とあるが、当該記載は電気自動車の充電方法に係るものであって電気自動車の構成とは認められず(当該充電方法は電気自動車が有する機能ではなく人である使用者が決定するものである)、発明の構成は明確でない。
II この出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された特開2012-160022号公報(以下、「引用例1」という。)に記載された発明及び特開2018-19580号公報(以下、「引用例2」という。)に記載の事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
6.令和元年11月29日付の拒絶の理由に対する当審の判断
理由I
請求項1に「前記大容量二次電池への充電は、EV所有者の自宅等日常的に長時間駐車可能な場所における駐車期間中の普通充電でおこなうことが可能であって」とあるが、当該記載は電気自動車が充電可能な場所を示すだけであって電気自動車が有する構成とは認められず、発明の構成は明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
なお、請求人は、この点について、令和元年12月11日付意見書において何ら主張を行っていない。
したがって、請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
理由II
(1)引用例
令和元年11月29日付の拒絶の理由に引用された引用例1には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
a「【請求項1】自動車を運転するドライバーの最終目的地までの移動経路を含むスケジュール情報を取得し提供するスケジュール情報取得・提供部と、
アンテナを介して通知される前記自動車の自動車情報、蓄電量情報と、前記アンテナの位置から前記自動車の走行可能距離を算出する走行距離算出部と、
前記走行可能距離と前記移動経路を比較して前記最終目的地まで到達できない場合は、前記移動経路および前記走行可能距離から前記自動車が充電することができる充電スタンドを検索し、充電時間を算出し、前記充電スタンドおよび前記充電時間に関する情報を前記自動車へ提供する充電スタンド検索部と、
を備える充電管理サーバ。」
b「電気自動車は、蓄電池から供給される電力を動力源とする自動車である。これら蓄電池から供給される電力、つまり蓄電池の残容量がなくなった時点で、電気自動車は停止してしまう。よって、蓄電池の容量がなくなる前に車載器の機能を利用して充電スタンドを検索し充電を促すシステムなどが考案されている。」(【0002】)
c「スケジュール取得・提供部104は、スケジュール情報DB115に記憶された移動経路や最終目的地を含むドライバーのスケジュールを取得する。スケジュールとは、ドライバーが自己の自動車情報と関連付けてあらかじめ登録したスケジュール情報をいい、「AA時BB分にCC地点に到着」等の情報である。ドライバーのスケジュールには予め蓄電池に充電する予定充電時間、予定充電量、最終目的地までの移動経路も含まれていてもよい。例えば、1時間の間、充電スタンドがある設備に滞在する予定である場合、この時間に蓄電池に充電するといったスケジュールである。スケジュールはいわゆる一日のスケジュールではなく二日以上分のスケジュールを加味したものであってもよい。最終目的地とは、例えばスケジュール登録された最後の目的地、または1日の最後の目的地をいう。
走行距離算出部102は、予定充電時間を組み入れた自動車の走行可能距離を算出する。本実施形態では、アンテナ部20を介して送られてきた自動車30の自動車情報と電池の残容量である蓄電量情報から、情報を受け取った地点(各アンテナ部20が自動車30と無線通信できる領域の所定地点の位置)からの走行可能距離を算出する。予定充電量情報が有る場合は、自動車情報と電池の残容量である蓄電量情報から、情報を受け取った地点および予定される充電量である予定充電量から走行可能距離を算出してもよい。本実施形態では、各アンテナ部20の位置情報を、自動車30の位置として利用していることから、GPS(Global Positioning System)を利用する場合と比べて、位置検出精度を高くすることができる。さらに、自動車が高速道路で走行している際のGPSによる位置測定と異なり、高速道路に側道があった場合の混同が生じにくいという利点もある。
充電スタンド検索部103は、上記走行距離算出部102から送られてきた走行可能距離に関する情報を受け取り、スケジュールの最終目的地まで到達可能な走行可能距離であるか否かの判断を行う。最終目的地まで到達可能な場合つまり予定される移動経路で充電のための寄り道が必要ないと判断した場合は、処理を終了する。最終目的地まで到達ができない場合は、スケジュールの空き時間と移動経路と蓄電量(または走行可能距離)から、到達可能な充電スタンドを抽出し、併せて充電時間を算出する。この充電スタンドおよび充電時間に関する情報を自動車30へ提供する。充電スタンドの抽出の際には滞在場所に充電スタンドが有る場合に、滞在時間を空き時間としてとらえ当該滞在場所の充電スタンドを優先して案内する。」(【0015】-【0017】)
d「このように、本実施形態によれば、車両に搭載されている蓄電池(バッテリー)の残量情報等をアンテナ部20を介して管理サーバ10に送信し、さらに、移動経路途中の充電量も加味して算出された走行可能距離から、自動車30に対して最適な充電スタンドまたは充電時間の案内を行うことができる。」(【0050】)
上記記載及び図面を参照すると、充電スタンド検索部は、充電スタンドの抽出の際には滞在場所に充電スタンドが有る場合に、滞在時間を空き時間としてとらえ当該滞在場所の充電スタンドを優先して案内しているから、蓄電池への充電は、長時間駐車可能な場所における駐車期間中の普通充電でおこなうことが可能である。
上記記載及び図面を参照すると、走行距離算出部は、アンテナ部を介して送られてきた自動車の自動車情報と電池の残容量である蓄電量情報から、情報を受け取った地点からの走行可能距離を算出しているから、走行中は情報を受け取った地点からの電池の残容量での走行可能距離を算出・特定している。
上記記載及び図面を参照すると、スケジュール取得・提供部は、最終目的地とはスケジュール登録された最後の目的地、または1日の最後の目的地としており、充電スタンド検索部は、走行距離算出部から送られてきた走行可能距離に関する情報を受け取り、スケジュールの最終目的地まで到達可能な走行可能距離であるか否かの判断を行っているから、電池の残容量による1日の最後の目的地までの残走行距離走行可否判定を行っている。
上記記載及び図面を参照すると、充電スタンド検索部は、最終目的地まで到達ができない場合は、スケジュールの空き時間と移動経路と蓄電量(または走行可能距離)から、到達可能な充電スタンドを抽出し、併せて充電時間を算出しており、この抽出されたスタンドでの充電によって最終目的地に到着するのであるから、残容量即ち残電力による残距離走行不可の場合は充電すべき残距離走行に必要な電力量の特定を行っている。
上記記載事項からみて、引用例1には、
「蓄電池を搭載し、前記蓄電池への充電は、長時間駐車可能な場所における駐車期間中の普通充電でおこなうことが可能であって、走行中は情報を受け取った地点からの電池の残容量での走行可能距離を算出・特定して電池の残容量による1日の最後の目的地までの残走行距離走行可否判定、および残電力による残距離走行不可の場合は充電すべき残距離走行に必要な電力量の特定を行う、電気自動車。」
との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
令和元年11月29日付の拒絶の理由に引用された引用例2には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
e「【請求項1】
加速走行によって車両が獲得した運動エネルギーを最大限に減速走行に活用した目標減速・停止点への惰性走行による省エネルギー効果分を、車両の回生制動機能の除去および大容量二次電池容量の削減に活かして車両価格・重量の削減および航続距離拡張を図ったことを特徴とする電気自動車。」
f「本願発明は従来の電気自動車における回生制動を中心とした省エネルギー方法に対し、減速方法を制動走行(回生制動を含む)から惰性走行に移行することによって、現状電気自動車における回生制動機能を除去するとともに、制動走行の惰性走行移行によって得られる省エネルギー効果を、(航続距離の延長に活かさずに、)大容量二次電池容量の削減に活かすことによって、前記大容量二次電池削減の直接的効果(大容量二次電池価格の低減、大容量二次電池重量の低減等)を得ることに加えて、前記大容量二次電池重量、従って車両重量、の低減の結果としての走行抵抗の低減による航続距離の延長をも可能にするものである。」(【0015】)
g「さらに、車両現在地はGPS受信機による特定が一般的であるが、それで精度に不足のある場合は車両が直前に減速・停止した地点位置情報とその地点からの(次の目標減速・停止点に向けての)車両の移動距離情報から知ることも可能である。
また、惰性走行可能距離は、車両速度に対応してデータベースにあらかじめ記憶・保持させた(惰性走行可能距離Di(v)、あるいは惰性走行減速度αi(v))データ中から車両の惰性走行開始直前の現在速度vに対応して選択・抽出・算出することで特定可能である。」(【0016】)
(2)対比
引用発明の「蓄電池」は、電気自動車用であって、充電無しでも所定の航続距離が当然に必要であり、本願発明の大容量二次電池は電気自動車が航続可能な100km程度の航続距離を想定しており(【0005】)、電気自動車は通常当該距離を走行できるような蓄電池を有しているから、引用発明の「蓄電池」は、本願発明の「一日の平均走行距離を省エネルギー走行するに必要十分な電力蓄積容量を有する大容量二次電池」に相当する。
引用発明の「前記蓄電池への充電は、長時間駐車可能な場所における駐車期間中の普通充電でおこなうことが可能であって」と、本願発明の「前記大容量二次電池への充電は、EV所有者の自宅等日常的に長時間駐車可能な場所における駐車期間中の普通充電でおこなうことが可能であって」は、「前記大容量二次電池への充電は、長時間駐車可能な場所における駐車期間中の普通充電でおこなうことが可能であって」の点で一致する。
引用発明の「走行中は情報を受け取った地点からの電池の残容量での走行可能距離を算出・特定して」と、本願発明の「走行中は周期的に残電力での省エネルギー走行による走行可能距離を算出・特定して」は、「走行中は所定タイミングで残電力での所定走行による走行可能距離を算出・特定して」の点で一致する。
引用発明の「電池の残容量による1日の最後の目的地までの残走行距離走行可否判定」は、本願発明の「残電力によるその日の目的地までの残走行距離走行可否判定」に相当する。
引用発明の「電気自動車」と、本願発明の「小型自家用電気自動車」は、「電気自動車」で一致する。
したがって、両者は、
「一日の平均走行距離を省エネルギー走行するに必要十分な電力蓄積容量を有する大容量二次電池を搭載し、前記大容量二次電池への充電は、長時間駐車可能な場所における駐車期間中の普通充電でおこなうことが可能であって、走行中は所定タイミングで残電力での所定走行による走行可能距離を算出・特定して残電力によるその日の目的地までの残走行距離走行可否判定、および残電力による残距離走行不可の場合は充電すべき残距離走行に必要な電力量の特定を行う、電気自動車。」
の点で一致し、以下の点で一応相違している。
〔相違点1〕
大容量二次電池への充電を行う長時間駐車可能な場所に関し、本願発明はEV所有者の自宅等日常的に長時間駐車可能な場所であるのに対し、引用発明は、長時間駐車可能な場所である点。
〔相違点2〕
走行中の走行可能距離の算出・特定に関し、本願発明は、周期的に残電力での省エネルギー走行による走行可能距離を算出・特定し、ここで省エネルギー走行とは、走行中の車両の有する運動エネルギーを走行に有効に活用する走行として、従来の回生制動を主体とする減速走行に代えて、惰性走行主体による減速走行による走行、即ち定速電費走行を云うのに対し、引用発明は、情報を受け取った地点からの電池の残容量での走行可能距離を算出・特定する点。
〔相違点3〕
本願発明は、小型自家用電気自動車であるのに対し、引用発明は、電気自動車である点。
(3)判断
相違点1について
電気自動車の充電を自宅で行うことは周知の事項(必要があれば特開2018-7559号公報【0006】参照)であり、又、引用発明のものは、充電を長時間駐車可能な場所で行っており、長時間充電可能な場所の一つとしてEV所有者の自宅等日常的に長時間駐車可能な場所とすることは当業者が適宜選択し得ることと認められる。
相違点2について
引用例2には、省エネルギー走行とは、走行中の車両の有する運動エネルギーを走行に有効に活用する走行として、従来の回生制動を主体とする減速走行に代えて、惰性走行主体による減速走行による走行であることが記載されており、また、電気自動車の走行には省エネが求められるから、引用発明において、情報を受け取った地点からの電池の残容量での走行可能距離を算出・特定する際、省エネを考慮して、引用例2記載の省エネルギー走行を前提に走行可能距離を算出・特定することは当業者が容易に考えられることと認められ、その際、電気自動車において残電力に対して走行可能距離を周期的に算出することは慣用手段であるから、当業者が適宜選択し得ることと認められる。
相違点3について
電気自動車は小型自家用として慣用されているから、引用発明において電気自動車を小型自家用とすることは当業者が適宜なし得ることと認められる。
そして、本願発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(4)むすび
したがって、請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
7.むすび
したがって、令和2年2月10日付の最後の拒絶の理由に関し、令和元年12月11日にされた手続補正は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
更に、令和元年11月29日付の拒絶の理由に関し、請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2019-002550