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特許拒絶査定不服審判

2020-006030

タッチパネル用粘着剤組成物、及び、粘着フィルムおよびタッチパネル

審判番号
2020-006030
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-165112外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年05月01日
審決日
2020年12月22日
公報発行日
2021年07月30日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .57 -Z (C09J) / P18 .561-Z (C09J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法17条の2第3項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第3項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2018-165112「タッチパネル用粘着剤組成物、及び、粘着フィルムおよびタッチパネル」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月29日出願公開、特開2018-188672〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 9項目
【理 由】

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、平成26年2月27日(優先権主張外国庁受理 平成25年4月5日 韓国)を国際出願日とする特願2016-506224号(以下、「親出願」という。)の一部を平成30年9月4日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。

平成30年 9月 6日  :手続補正書の提出
令和 元年 8月 2日付け:拒絶理由通知書
令和 元年11月 1日  :意見書、手続補正書の提出
令和 元年12月 2日付け:拒絶査定
令和 2年 5月 1日  :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年 6月 1日付け:前置報告書
令和 2年 9月28日  :上申書の提出

第2 令和2年5月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和2年5月1日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について(補正の内容)

(1) 本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線は、補正箇所である。)。

「【請求項1】
親水性官能基含有モノマーと、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、粘着増進剤と、を含み、
前記粘着増進剤を(メタ)アクリル酸エステル系モノマー100重量部に対して1重量部~20重量部で含み、
硬化して100kHz~2MHz領域の周波数で3.5以下の誘電率を有し、25℃~80℃で7.0×105Pa未満の貯蔵モジュラスを有する硬化物を形成する、タッチパネル用粘着剤組成物。」

(2) 本件補正前の特許請求の範囲の記載

本件補正前の、令和元年11月1日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
親水性官能基含有モノマーと、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、粘着増進剤と、を含み、
前記粘着増進剤を(メタ)アクリル酸エステル系モノマー100重量部に対して1重量部~20重量部で含み、
硬化して100kHz~2MHz領域の周波数で3.5以下の誘電率を有し、25℃~85℃で1.0×105Pa未満の貯蔵モジュラスを有する硬化物を形成する、タッチパネル用粘着剤組成物。」

2 補正の適否

(1) 本件補正後の請求項1の「25℃~80℃で7.0×105Pa未満の貯蔵モジュラスを有する硬化物を形成する」は、本件補正前の請求項1の発明を特定するために必要とされる事項の「25℃~85℃で1.0×105Pa未満の貯蔵モジュラス」における貯蔵モジュラスを、1.0×105Pa未満から7.0×105Pa未満に拡張するものであるから、本件補正前の特許請求の範囲の発明を特定するために必要とされる事項の減縮を目的とするものではない。

また、前記1の(2)に摘記した本件補正の請求項1に係る補正の目的を明りょうでない記載の釈明と解することはできない。

そして、本件補正の請求項1に係る補正が請求項削除や誤記の訂正を目的とするものでないことも明らかである。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでもない。

(2) 審判請求人の主張について

本件審判請求人は、令和2年5月1日付けで提出された審判請求書において

「…新請求項1は、旧請求項1の貯蔵モジュラスの温度範囲を、「25℃~85℃」から「25℃~80℃」に改め、また、貯蔵モジュラスの範囲の上限を「1.0×105Pa未満」から「7.0×105Pa未満」に改めて構成したものです。
「80℃」の補正の根拠は、本願の図4に記載の「80℃」に基づきます。
また、貯蔵モジュラスの上限の「7.0×105Pa」の補正の根拠は、出願当初の請求項1に基づきます。…以上の補正は、新たな技術的事項を導入するものではなく、また、特許請求の範囲の限定的減縮を目的にするものであり、適法な補正に該当すると思料します。また、審査の遅延を引き起こすものではないと思料します。」と、主張しているが、(1)に記載のとおり、上記補正は特許請求の範囲の限定的減縮を目的にするものとは認められない。

してみれば、審判請求人の上記主張は、採用することができない。

(3) 本件補正についてのむすび

上記(1)で検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

令和2年5月1日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和元年11月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由とされた、令和元年8月2日付け拒絶理由通知書に記載した理由1の概要は、以下のとおりである。

「1.(新規事項)平成30年9月6日付け手続補正書でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。」

3 当審の判断(令和元年11月1日付け手続補正書でした補正について)

(1) 令和元年11月1日付け手続補正書で補正された請求項1に記載されたタッチパネル用粘着剤組成物は「25℃~85℃で1.0×105Pa未満の貯蔵モジュラスを有する硬化物を形成する」ものである。

(2) しかしながら、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、当初明細書等という。)には、硬化物の25℃~85℃での貯蔵モジュラスの上限の境界値が1.0×105Pa未満であることは記載されていないし、本願明細書の図4の実施例5、6等グラフについても、実際に測定された点のデータが開示されていないため、上記グラフから貯蔵モジュラスの上限の境界値が1.0×105Paであることが自明な事項であるとは認められない。

(3) また、段落【0032】(以下、単に【0032】という。その他の段落についても同様。)には、「また、前記タッチパネル用粘着剤組成物は、高温で向上した貯蔵モジュラスを有することから、高温信頼性が向上する。」と記載されており、また【0079】には、「図1は実施例5および6、比較例1および2の温度に応じた貯蔵モジュラスを図示したグラフを示すものであり、比較例1および2に比べて実施例5および6の貯蔵モジュラスがより高く測定されることを確認することができた。貯蔵モジュラスの測定値と比例して、実施例5および6の場合、段差吸収能も比較例1および2に比べて25%、30%と高く測定されたことから、タッチパネル用粘着剤組成物が高温で高くなった貯蔵モジュラスを有することで段差吸収能に優れた粘着フィルムを提供できることが分かった。」と記載されているところ、両記載を参酌すれば、当初明細書等に記載されていた粘着剤組成物は、高温域において、貯蔵モジュラスが(一定程度以上に)高いもののみである。

したがって、貯蔵モジュラスの下限値が規定されていない発明は、出願当初明細書等に記載されているとはいえず、また、自明な事項であるとも認められない。

(4) なお、審判請求人は、令和元年11月 1日付けの意見書において「(1)新請求項1は、旧請求項1に、本願明細書の図4の実施例5等に基づいて、タッチパネル用粘着剤組成物が、硬化して25℃~85℃で1.0×105Pa未満の貯蔵モジュラスを有する硬化物を形成することを限定して構成したものです。

なお、当業者にとって、明細書の一般記載に記載されている「貯蔵モジュラスは約25℃~約85℃で約1.0×105Pa~約7.0×105Paである」という記載は、実施例の結果である図4から明らかな誤記であることは自明の事項です。すなわち、当業者であれば、明細書の一般記載ではなく、明細書の具体的な実施例を参照して、明細書に記載された発明を判断しますので、当業者にとって「貯蔵モジュラスは約25℃~約85℃で約1.0×105Pa~約7.0×105Paである」という貯蔵モジュラスの範囲は明らかな誤記であることは自明であると思料します。」と主張しているが、当初明細書等において、請求項1、13、【0009】、【0021】、【0030】、【0032】、【0051】、【0055】、【0059】の全てにおいて、約1.0×105Pa~約7.0×105Paと記載されており、これらが全て誤記であるとする方が不自然であるから、審判請求人の主張は採用することができない。

第4 むすび

以上のとおり、令和元年11月1日付け手続補正書でした補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

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