特許拒絶査定不服審判
2024-010757
無溶剤型アクリル系粘着剤組成物及び粘着シート
- 審判番号
- 2024-010757
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2024-015006
- 請求日
- 2024年06月28日
- 審決日
- 2024年12月10日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】サイデン化学株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人大塚国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 門前 浩一
- 審判官 光本 美奈子
- 審判官 天野 宏樹
- 分類
- P18 .537-WY (C09J) / P18 .561-WY (C09J) / P18 .121-WY (C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2024- 15006「無溶剤型アクリル系粘着剤組成物及び粘着シート」拒絶査定不服審判事件〔請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、特願2023-147865号(令和5年9月12日出願)の一部を新たな出願として令和6年2月2日にされた出願であって、令和6年2月2日に手続補正がなされた後、令和6年3月1日付けで、新規事項(特許法第17条の2第3項)と明確性要件(同法第36条第6項第2号)違反を理由とする拒絶理由通知が通知され、令和6年3月15日に手続補正がされた後、令和6年6月3日付けで新規事項(特許法第17条の2第3項)を理由として拒絶査定がされ、これに対し、令和6年6月28日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、令和6年8月22日付けで拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由」という。)がされ、令和6年9月10日に手続補正がされたものである。
第2 拒絶査定及び当審拒絶理由の概要
1 拒絶査定
(1)拒絶査定の理由
令和6年3月15日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
無溶剤型アクリル系粘着剤組成物であって、
アルキル基の炭素数が8以上の(メタ)アクリル酸エステル60~93質量部と、アルキル基の炭素数が8未満の(メタ)アクリル酸エステル0~30質量部と、カルボキシ基を有する単量体7~20質量部とを含有する第1アクリル系部分共重合体、及び、アルキル基の炭素数が8以上の(メタ)アクリル酸エステル0~63質量部と、アルキル基の炭素数が8未満の(メタ)アクリル酸エステル30~93質量部と、カルボキシ基を有する単量体7~20質量部とを含有する第2アクリル系部分共重合体のいずれかと、
多官能モノマーと、
粘着付与樹脂と、を含み、
前記無溶剤型アクリル系粘着剤組成物の構成成分として、前記第1アクリル系部分共重合体及び前記第2アクリル系部分共重合体よりも重量平均分子量が小さく、かつ、前記第1アクリル系部分共重合体及び前記第2アクリル系部分共重合体には含まれない他のアクリル系重合体/共重合体、イソブチレン系ポリマー、平均粒子径5~150μmの微粒子を除き、前記平均粒子径はレーザー回折・散乱法によって測定される体積基準の粒度分布における累積50%となる粒子径(D50;メディアン径)であり、
前記粘着付与樹脂は、水添脂環族系石油樹脂であり、
前記第1アクリル系部分共重合体100質量部に対して、前記粘着付与樹脂0.5~15質量部を含有するか、又は、
前記第2アクリル系部分共重合体100質量部に対して、前記粘着付与樹脂0.5~4.5質量部を含有する、無溶剤型アクリル系粘着剤組成物。」
拒絶査定は、令和6年3月15日提出の手続補正書により補正された請求項1及び【0010】の「前記無溶剤型アクリル系粘着剤組成物の構成成分として、前記第1アクリル系部分共重合体及び前記第2アクリル系部分共重合体よりも重量平均分子量が小さく、かつ、前記第1アクリル系部分共重合体及び前記第2アクリル系部分共重合体には含まれない他のアクリル系重合体/共重合体、イソブチレン系ポリマー、平均粒子径5~150μmの微粒子を除き、前記平均粒子径はレーザー回折・散乱法によって測定される体積基準の粒度分布における累積50%となる粒子径(D50;メディアン径)であり」との記載は、本願出願時の明細書及び図面(以下「当初明細書等」という。)の記載から自明な事項ではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないというものである。
(2)拒絶査定のなお書き
拒絶査定には、進歩性について、なお書きとして以下の記載がなされている。
「A.進歩性違反:請求項1~13:引用文献5
引用文献5の例1(IOA、BA、AA、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、炭化水素樹脂を所定量配合)、例6(IOA、アクリル酸、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、炭化水素樹脂を所定量配合)の配合量を多少変動させ、本願請求項1~13に係る発明に想到することは、当業者であれば容易に想到できる。
B.進歩性違反:請求項1~3:引用文献2又は3
引用文献2の実施例9~11、引用文献3の実施例9~12において、2EHAとAAの配合比率を多少変動させ、本願2、3、14に係る発明に相当することは、当業者であれば容易に想到できる。
また、引用文献2のアクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量、引用文献3のアクリル系ポリマー(B)の分子量をどの程度とするのかは、当業者が適宜設定することのできる技術事項にすぎない。
C.進歩性違反:請求項1~13:引用文献7又は8
引用文献7の特許請求の範囲、実施例2、[0020]、引用文献8の請求の範囲、実施例(表1のLPS2、4、6等)、[0047]を特に参照のこと。
引用文献7には、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸ブチル、アクリル酸、多官能アクリレート、アルコンP-100を配合した感圧接着性組成物が記載されている(実施例2)。
かかる実施例において、[0020]等の記載に基づいて、アクリル酸の配合量を多少変動させ、本願請求項1~13に係る発明に想到することは、当業者であれば容易に想到できる。
引用文献7に記載の微粒子の平均粒径は、その定義等について明示されていないから、本願請求項1に係る発明で特定される定義以外の平均粒子径を有する微粒子を用いることは、当業者であれば容易に想到し得たものである。
引用文献8には、2-PHA、IBOA、AA、HDDA、Regalite S-7125(技術常識からみて水添脂環系石油樹脂であると認められる)を所定量配合したPSA組成物が記載されている(表1のLPS2、4、6等)。
かかる実施例において、[0047]の記載等に基づいて、2-PHA、IBOA、AAの配合量を多少変動させ、本願請求項1~13に係る発明に想到することは、当業者であれば容易に想到できる。
<引用文献等一覧>
2.特開2012-67279号公報(原出願の引用文献2)
3.特開2012-67280号公報(同上引用文献3)
5.特表平11-504054号公報(同上引用文献5)
7.特開2004-11386号公報(同上引用文献7)
8.特表2016-503451号公報(同上引用文献8)」
2 当審拒絶理由の概要
令和6年6月28日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
無溶剤型アクリル系粘着剤組成物であって、
アルキル基の炭素数が8以上の(メタ)アクリル酸エステル60~93質量部と、アルキル基の炭素数が8未満の(メタ)アクリル酸エステル0~25質量部と、カルボキシ基を有する単量体7~20質量部とを含有する第1アクリル系部分共重合体、及び、アルキル基の炭素数が8以上の(メタ)アクリル酸エステル0~55質量部と、アルキル基の炭素数が8未満の(メタ)アクリル酸エステル35~93質量部と、カルボキシ基を有する単量体7~20質量部とを含有する第2アクリル系部分共重合体のいずれかと、
多官能モノマーと、
粘着付与樹脂(ただし、(ii)65乃至120℃の軟化点を有する粘着付与剤を除く)と、を含み、
前記粘着付与樹脂は、水添脂環族系石油樹脂であり、
前記第1アクリル系部分共重合体100質量部に対して、前記粘着付与樹脂0.5~15質量部を含有するか、又は、
前記第2アクリル系部分共重合体100質量部に対して、前記粘着付与樹脂0.5~4.5質量部を含有する、
無溶剤型アクリル系粘着剤組成物(ただし、重量平均分子量が1000以上30000未満の(メタ)アクリル系重合体を含む無溶剤型アクリル系粘着剤組成物、イソブチレン系ポリマーを含む無溶剤型アクリル系粘着剤組成物、アクリル系共重合体中に容積比率0.5%以上15%未満の割合で分散された微粒子を含む無溶剤型アクリル系粘着剤組成物、及び2-プロピルヘプチルアクリレートを含む無溶剤型アクリル系粘着剤組成物を除く)。」
当審拒絶理由の概要は以下のとおりである。
(1)明確性要件違反について(対象請求項は請求項6~9)
請求項6~9は、第1アクリル系部分共重合体と第2アクリル部分共重合体の両方が含まれる組成物について含有量を特定する記載であるところ、請求項6~9が直接的または間接的に引用する請求項1は、第1アクリル系部分共重合体と第2アクリル部分共重合体のいずれかを含むものであって、両方を含むものではないため、請求項6~9の記載は不明りょうである。
(2)サポート要件違反について(対象請求項は請求項1~13、文献1~3参照)
「水添脂環族系石油樹脂である粘着付与剤(但し、65~120℃の軟化点を有する粘着付与剤を除く)」を含むことを発明特定事項とする「無溶剤型アクリル系粘着剤組成物」又は当該粘着剤組成物からなる粘着剤層を備える粘着シートに係る発明である審判請求時補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~13に係る発明は、低極性の被着体に対する十分な粘着特性を有する粘着シートを実現する無溶剤型アクリル系粘着剤組成物の提供との本願発明の課題(【0009】)を解決できると認識できる範囲のものとはいえないから、本願発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
文献等一覧
1 中沢,日本接着学会誌,2000,vol.36,no.12,p.28-33
2 櫻井,日本接着学会誌,2014,vol.50,no.2,p.21-26
3 浦濱,日本ゴム協会誌,2003,vol.76,no.9,p.334-340
第3 当審拒絶理由に対する審判請求人の対応及び本願発明
1 令和6年9月10日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)について
(1) 本件補正
本件補正は、特許請求の範囲及び明細書の段落【0010】の記載を補正するものであり、本件補正後の請求項1の記載は以下のとおりのものであり、請求項2~11は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものである。
「【請求項1】
無溶剤型アクリル系粘着剤組成物であって、
アルキル基の炭素数が8以上の(メタ)アクリル酸エステル0~55質量部と、アルキル基の炭素数が8未満の(メタ)アクリル酸エステル35~93質量部と、カルボキシ基を有する単量体7~20質量部とを含有する第2アクリル系部分共重合体と、
多官能モノマーと、
粘着付与樹脂と、を含み、
前記粘着付与樹脂は、水添脂環族系石油樹脂であり、
前記第2アクリル系部分共重合体100質量部に対して、前記粘着付与樹脂0.5~4.5質量部を含有し、
前記粘着付与樹脂の軟化点は100℃である、
無溶剤型アクリル系粘着剤組成物(ただし、重量平均分子量が1000以上30000未満の(メタ)アクリル系重合体を含む無溶剤型アクリル系粘着剤組成物、イソブチレン系ポリマーを含む無溶剤型アクリル系粘着剤組成物、アクリル系共重合体中に容積比率0.5%以上15%未満の割合で分散された微粒子を含む無溶剤型アクリル系粘着剤組成物、及び2-プロピルヘプチルアクリレートを含む無溶剤型アクリル系粘着剤組成物を除く)。」
(2) 検討
ア 前記(1)のとおり、請求項1に係る本件補正は、請求項1の「粘着付与剤樹脂」の軟化点を「100℃である」と記載する(以下「本件補正1」という。)と共に、請求項1から「第1アクリル系部分共重合体」とこれに関連する発明特定事項を削除する(以下「本件補正2」という。)ものである。
請求人は同日提出の意見書において、本件補正1は実施例12-13に基づくものであると説明するところ、実施例12-13の記載は下記第5のとおりのものであるから、本件補正1が当初明細書等の記載から新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
また、本件補正前の請求項1は、前記第2 2のとおり「第1アクリル系部分共重合体」と「第2アクリル系部分共重合体」のいずれかを含む態様を包含するものであり、本件補正2についても新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
イ 本件補正は、さらに請求項9を
「 前記アルキル基の炭素数が8以上の(メタ)アクリル酸エステルは、2-エチルヘキシルアクリレートであり、
前記アルキル基の炭素数が8未満の(メタ)アクリル酸エステルは、ブチルアクリレートである、
請求項1に記載の無溶剤型アクリル系粘着剤組成物。」
と特定し、明細書の段落【0010】を本件補正1及び2に整合させるものであるところ、これらの補正についても、補正前の請求項11及び実施例12-13の記載等から新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
ウ したがって、本件補正は、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
2 本願の請求項1~11に係る発明
前記1のとおり本件補正は認められるため、本願の請求項1-11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は、令和6年9月10日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は前記(1)のとおりのものである。
第4 当審拒絶理由及び拒絶査定の理由について
1 当審拒絶理由について
本件補正1により、請求項1及び請求項1を直接または間接的に引用する請求項2~11に係る発明、並びに、明細書の段落【0010】において、水添脂環族系石油樹脂である粘着付与樹脂が、審判請求時の補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~13に係る発明において除外されていた「65~120℃の軟化点を有する粘着付与剤」の一態様である「軟化点は100℃である」粘着付与樹脂に補正された。
請求人は審判請求書において「引用文献5は、(B)(ii)65乃至120℃の軟化点を有する粘着付与剤とは異なる粘着付与剤を含有する場合、剥離接着強さが劣ることを開示しています(比較例C2、C3、表3)。」と主張しているところ、下記第6 2の引用文献7(実施例2、比較例3)及び文献等4の記載を踏まえると、軟化点が100℃の水添脂環族系石油樹脂である粘着付与樹脂は、ステンレス板等に対する粘着剤の剥離接着強さを向上させるものと認められる。
また、前記第5の本願明細書の実施例12及び13の記載から、軟化点が100℃の水添脂環族系石油樹脂である粘着付与樹脂を含むことを発明特定事項とする本願発明1~11は、透明性に優れ、低極性の被着体に対する十分な粘着特性を有する粘着シートを実現する無溶剤型アクリル系粘着剤組成物の提供(【0009】)との本願発明の課題を解決するものと認められる。
したがって、本願発明1~11は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであると認められ、前記第2 2(2)で通知した理由によりサポート要件を満たさないということはできない。
また、本件補正2により、前記第2 2(1)の明確性要件違反の拒絶理由は解消された。
以上のとおりであるから、前記第2 2(1)または(2)の当審拒絶理由により、本願は特許法第36条第6項第1号または同第2項に規定する要件を満たすものではないとして拒絶することはできない。
2 拒絶査定の理由について
本願発明1~11は、「前記無溶剤型アクリル系粘着剤組成物の構成成分として、前記第1アクリル系部分共重合体及び前記第2アクリル系部分共重合体よりも重量平均分子量が小さく、かつ、前記第1アクリル系部分共重合体及び前記第2アクリル系部分共重合体には含まれない他のアクリル系重合体/共重合体、イソブチレン系ポリマー、平均粒子径5~150μmの微粒子を除き、前記平均粒子径はレーザー回折・散乱法によって測定される体積基準の粒度分布における累積50%となる粒子径(D50;メディアン径)であり」との発明特定事項を含むものではないから、前記第2 1(1)の拒絶査定の理由は解消された。
したがって、原査定を維持することはできない。
一方、前記第2 1(2)のとおり、拒絶査定には引用文献5、2、3、7又は8に基づく進歩性欠如とのなお書きが追記されている。このうち、引用文献5に記載される組成物は、本願発明1~11の「第2アクリル系部分共重合体」の発明特定事項を満たすアクリル系部分共重合体を含むことから、以下、引用文献5に基づく進歩性欠如について検討する。
第5 本願明細書の記載
本願明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がなされている。
「【0009】
そこで、本発明は、透明性に優れ、低極性の被着体に対する十分な粘着特性を有する粘着シートを実現する無溶剤型アクリル系粘着剤組成物を提供することを目的とする。」
「【0063】
<アクリルシロップA~Fの製造方法>
表1は、アクリルシロップの原料配合と物性を示す。表1のアクリルシロップAの原料配合に基づいて、攪拌機、温度計、還流冷却器、及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを封入後、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)90部、アクリル酸(AAC)10部、熱重合開始剤(2,2'-アゾビスイソブチロニトリル)0.005部を仕込む。これらを攪拌させながら、窒素ガス気流中において、63℃で1時間反応させた。反応終了後、同組成比のモノマーで希釈し、蒸発残分8.4質量%のアクリルシロップAを得た。アクリルシロップAの粘度は、粘度計(東機産業社製、装置名:B型粘度計)を用いて測定された。
【0064】
アクリルシロップB~Fは、表1の原料配合に基づき、アクリルシロップAと同様の工程で得られるため、詳細な説明を省略する。
【0065】
<溶剤型粘着剤Aの製造方法>
表1の溶剤型粘着剤Aの原料配合に基づいて、攪拌機、温度計、逐次滴下装置、還流冷却器、及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを封入後、酢酸エチル45部、熱重合開始剤(2,2'-アゾビスイソブチロニトリル)0.1部を仕込む。一方、別の容器に、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)90部、アクリル酸(AAC)10部からなるモノマー混合物を用意した。上記反応装置を、窒素ガス気流中において90℃に昇温し、別の容器に計量したモノマー混合物を60分間かけて滴下させ、90℃で7時間重合反応を行った。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、蒸発残分50.0質量%のアクリルポリマーの溶剤型粘着剤Aを得た。
【0066】
【表1】
[図:0001418160000001.jpg]
(備考)
・アクリルシロップA~D:第1アクリル系部分共重合体に相当
・アクリルシロップE~F:第2アクリル系部分共重合体に相当
・C8以上のモノマー:アルキル基の炭素数が8以上の(メタ)アクリル酸エステル
・C8未満のモノマー:アルキル基の炭素数が8未満の(メタ)アクリル酸エステル
・2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
・BA:ブチルアクリレート
・NOAA:ノルマルオクチルアクリレート
・AAC:アクリル酸
【0067】
<無溶剤型アクリル系粘着剤組成物の製造方法>
表2は、実施例1~13の無溶剤型アクリル系粘着剤組成物の原料配合を示す。表2の実施例1の原料配合に基づき、アクリルシロップA100部に対して、多官能モノマーAとしてアロニックスM-208(商品名、東亞合成社製)を0.4部、粘着付与樹脂AとしてアルコンP-100(商品名、荒川化学工業社製)を2.5部、光重合開始剤AとしてOmnirad184(商品名、IGM Resins社製)を0.5部添加して、充分に混合して実施例1の無溶剤型アクリル系粘着剤組成物を得た。
【0068】
実施例2~13の無溶剤型アクリル系粘着剤組成物等は、表2の原料配合に基づき、実施例1と同様の工程で得られた。
【0069】
表3は、比較例1~9の無溶剤型/溶剤型アクリル系粘着剤組成物の原料配合を示す。
表3の原料配合と実施例1と同様の工程に基づき、比較例1~9の無溶剤型/溶剤型アクリル系粘着剤組成物が得られた。なお、比較例9の溶剤型アクリル系粘着剤組成物は、粘着付与樹脂Aが溶剤型粘着剤Aに対して十分に溶解せず、粘着付与樹脂A(水添石油樹脂)の析出が多く見られた。そのため、比較例9の溶剤型アクリル系粘着剤組成物を用いて、後述の評価用サンプルを作製できなかった。
【0070】
【表2】
[図:0001418160000002.jpg]
(備考)
・多官能モノマーA:ビスフェノールF型EO変性(n≒2)ジアクリレート(アロニックスM-208/東亞合成社製)
・多官能モノマーB:トリメチロールプロパントリアクリレート(アロニックスM-309/東亞合成社製)
・多官能モノマーC:ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(アロニックスM-400/東亞合成社製)
・単官能モノマー:フェノールEO変性アクリレート(アロニックスM-101A/東亞合成社製)
・粘着付与樹脂A:水添石油樹脂(アルコンP-100/荒川化学社製)
・粘着付与樹脂B:水添石油樹脂(アルコンP-125/荒川化学社製)
・粘着付与樹脂C:水添石油樹脂(T-REZ HA105/ENEOS社製)
・粘着付与樹脂D:水添ロジンエステル系樹脂(パインクリスタルKE-311/荒川化学社製)
・粘着付与樹脂E:水添ロジンエステル系樹脂(パインクリスタルKE-359/荒川化学社製)
・粘着付与樹脂F:芳香族水添テルペン樹脂(クリアロンK-100/ヤスハラケミカル社製)
・粘着付与樹脂G:芳香族系炭化水素樹脂(FTR-6100/三井化学社製)
・光重合開始剤A:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Omnirad184/IGM Resins社製)
・光重合開始剤B:ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(OmniradTPO H/IGM Resins社製)
・硬化剤:トリレンジイソシアネート(タケネートD-101E(45EA)/三井化学社製)」
「【0072】
<評価用サンプルの作成>
実施例1~13及び比較例1~8のそれぞれの無溶剤型アクリル系粘着剤組成物を用いて、以下の評価用サンプルを作製した。
【0073】
実施例1~13及び比較例1~8のそれぞれの無溶剤型アクリル系粘着剤組成物を用いて、以下の方法でPETフィルムに厚さ35μmの粘着剤層を形成し、粘着シートを作製した。各無溶剤型アクリル系粘着剤組成物を、シリコーン樹脂コートされたPETフィルム(離型性基材)上に塗布後、PETフィルムを貼り合わせ、下記の紫外線硬化条件で紫外線を照射し硬化させた。紫外線硬化条件は、メタルハライドランプを使用して照度300mW/cm2、積算光量1550mJ/cm2での照射条件を含む。照度・光量計として、EIT社製「UV POWER PUCK」を使用した。
【0074】
<粘着特性及び透明性の評価>
作製された各評価用サンプル(粘着シート)を用いて、試験1~4を行い、粘着特性及び透明性を評価した。
【0075】
(試験1 粘着力の測定)
各粘着シートについて、JIS Z0237に準じて、23℃、50%RHの環境下、試験板(ポリプロピレン(PP)板)に対する180°引きはがし粘着力を測定した。具体的には、粘着シートを幅25mmに切断し、ポリプロピレン(PP)板に貼り付け、2kg荷重にて圧着ロールで1往復圧着して、PP板に対する粘着力測定用の試験片を作製した。圧着させてから23℃で20分間放置した後の試験片を、引きはがし速度300mm/分の条件で粘着シートを引きはがし、PP板に対する粘着力を測定した。以下の評価基準に基づいて、粘着シートの粘着力を評価した。
(評価基準)
合格:粘着力が5.0N/25mm以上である
不合格:粘着力が5.0N/25mm未満である
【0076】
(試験2 保持力の測定)
各粘着シートを幅25mm、長さ50mmのサイズに切断し、保持力測定用の試験片を作製した。この試験片を、JIS Z0237に準じて、接着面積が25mm×25mmになるようにポリプロピレン(PP)板に貼り付け、2kg荷重にて圧着ロールで1往復圧着させた。その後、23℃、50%RHの環境下に60分間放置してから、80℃の環境下で、おもり取り付け用のフックを含めて0.5kgのおもりを取り付け、60分後の試験片のずれた距離(ずれ長さ;mm)、又は、試験片が完全に剥がれ落ちた時間(落下時間;分)を測定した。以下の評価基準に基づいて、粘着シートの保持力を評価した。
(評価基準)
合格:ずれ長さが1.0mm以下である
不合格:ずれ長さが1.0mmを超える、又は、保持時間60分以内に試験片が落下する
【0077】
(試験3 定荷重剥離力の測定)
各粘着シートを幅25mm、長さ70mmのサイズに切断し、定荷重剥離力測定用の試験片を作製した。この試験片を、接着面積が25mm×50mmになるようにポリプロピレン(PP)板に貼り付け、2kg荷重にて圧着ロールで1往復圧着させた。その後、23℃、50%RHの環境下に60分間放置してから、40℃の環境下で、圧着したテープ試料を専用ジグにセットし、かつ、評価対象であるテープ試料の端部に、粘着面に対して90°方向に引きはがす荷重がかかるように、おもり取り付け用のフックを含めて0.0 5kgのおもりを取り付けた。60分後の試験片のハガレ距離(ハガレ長さ;mm)、又は、試験片が完全に剥がれ落ちた時間(落下時間;分)を測定した。以下の評価基準に基づいて、粘着シートの定荷重剥離力を評価した。
(評価基準)
合格:ハガレ長さが20.0mm以下である
不合格:ハガレ長さが20.0mmを超える、又は、保持時間60分以内に試験片が落下する
【0078】
(試験4 透明性)
可視光下で、粘着シートの粘着剤層の透明性を目視で確認した。以下の評価基準に基づいて、粘着シートの透明性を評価した。
(評価基準)
合格:粘着剤層が透明である(表2~3で〇と記載)
不合格:粘着剤層が白化している(表2~3で×と記載)
【0079】
<試験結果>
表2は、実施例1~13の試験結果を示す。表3は、比較例1~9の試験結果を示す。
実施例1~13は、低極性の被着体(ポリプロピレン(PP))に対する良好な粘着特性(粘着力、保持力、定荷重剥離力)をバランス良く有し、良好な透明性を有していた。一方で、比較例1~8は、低極性の被着体(ポリプロピレン(PP))に対する良好な粘着特性をバランス良く有さなかった。特に、比較例8は、粘着特性に優れることを示す一方で、粘着剤層の白化を示した。なお、比較例9は、粘着付与樹脂A(水添石油樹脂)が溶剤型粘着剤Aに溶解せず、評価用サンプル(粘着シート)を作製できなかったため、試験1~4を行っていない。
【0080】
以下、比較例1~9の特徴を説明する。比較例1は、粘着付与樹脂を含有しない無溶剤型アクリル系粘着剤組成物を示す。比較例2は、多官能モノマーの代替として単官能モノマーを含有する無溶剤型アクリル系粘着剤組成物を示す。比較例3~4は、水添ロジンエステル系樹脂を含有する無溶剤型アクリル系粘着剤組成物を示す。比較例5~6は、芳香族水添テルペン樹脂を含有する無溶剤型アクリル系粘着剤組成物を示す。比較例7は、芳香族系炭化水素樹脂を含有する無溶剤型アクリル系粘着剤組成物を示す。比較例8は、第2アクリル系部分共重合体に対して本発明の規定量よりも多い水添石油樹脂を含有する無溶剤型アクリル系粘着剤組成物を示す。比較例9は、溶剤型アクリル系粘着剤組成物を示す。
【0081】
表2~3の試験結果によれば、粘着付与樹脂として水添石油樹脂と、多官能モノマーとを少なくとも含有する無溶剤型アクリル系粘着剤組成物を用いることで、透明性に優れ、低極性の被着体に対する十分な粘着特性を有する粘着シートを実現できるものと推察される。
【0082】
以上の通り、本発明の無溶剤型アクリル系粘着剤組成物は、透明性に優れ、低極性の被着体に対する十分な粘着特性を有する粘着シートを実現できるといった顕著な効果を有する。」
第6 引用文献等の記載
1 引用文献5
(1)引用文献5の記載
引用文献5には、以下の記載がなされている。
ア 「(A)(a)アルキル基が4乃至20個の炭素原子を含む非第三アルキルアルコールの少なくとも1つのアクリルエステルまたはメタクリルエステルを含む25乃至100重量部の重合性成分、および、
(b)少なくとも1種の補強単量体を含み、成分(a)と相溶性があり、(a)および(b)の合計が100重量部として0乃至75重量部の重合性成分を含む出発材料の重合反応生成物、並びに、
(B)成分(a)および(b)の合計の100重量部あたり1乃至75重量部の、炭化水素供給原料から生成される無色透明で65乃至120℃の軟化点を有する水素化樹脂である粘着付与剤を含む接着剤」(7頁下から6行~8頁2行)
イ 「本発明の実践的に有用なアクリレートモノマーは、・・・最も好ましくは4乃至14個の炭素原子をアルキル部分に有する非第三アルキルアルコールの一官能価のアクリル酸(メタクリル酸)であり、n-ブチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、n-デシルアクリレート、n-ドデシルアクリレートおよびそれらの混合物が挙げられる。」(12頁下から13行~5行)
ウ 「有用な架橋剤には、・・・多官能価のアクリレートがあり、あくまでも一例として1,6-ヘキサンジオールジアクリレート・・・が挙げられる。」(18頁1~10行)
エ 「本発明の接着剤は、熱可塑性オレフィン、熱可塑性ウレタン、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム、ウェザーストリップ、自動車本体側面成形、自動車用塗面、その他のプラスチック面および金属などの低エネルギー面を含む各種の異なる面に十分に付着するために有用である。」(20頁1~4行)
オ 「炭化水素樹脂
これらの例に使用される芳香族炭化水素粘着付与樹脂は、上述の開示内容に従って調製し、表2に示す特性に特徴づけた。
[図:0001418160000003.jpg]
[図:0001418160000004.jpg]
例1
感圧接着剤組成物を54部のイソオクチルアクリレート(IOA)、36部のブチルアクリレート(BA)、10部のアクリル酸(AA)および0.4部のベンジルジメチルケタール(Sartomer Co.から市販のEsacureTMKB-1)を閉鎖容器ないで混合し、窒素でパージすることによって調製した。窒素のパージを続行しながら、組成物にも一部黒色テープでテーピングして約0.15ミリワット/平方センチメートルの強度を提供する紫外線不可視光線(General Electric Co.から市販のGE F15T8 BL)で照射し、工業標準規格の分類Gで測定し、約3000センチポワズと概算される塗布可能な粘度を有するシロップを生成した。このシロップに別の0.16部のベンジルジメチルケタール、0.15部の2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-s-トリアジン、20部の炭化水素樹脂(上述)および0.06部の1,6-ヘキサンジオールジアクリレートを添加した。混合後、混合物をシリコン剥離コーティングで被覆させた透明ポリエステルフィルム上に約0.076ミリメートルの厚さにナイフ塗布してから、300乃至400nmの発光スペクトルの90%を有し窒素不活性化室(50ppmの酸素)で約350nmの最大値を有する傾向不可視光線に暴露した。この工程の結果、感圧接着転写テープが得られた。ランプを被覆ウェブの上方および下方で使用したが、光度は2.2分間に対しては1.2mW/cm2(G単位)であり、4.4分間に対しては2.2mW/cm2であった。
・・・
比較例C1-C7
比較例C1-C3は、例1と同様に調製し・・・た。
C1-粘着付与樹脂を含まず。
C2-20部のRegalrezTM6108(Hercules,Inc.から市販)。
C3-20部のRegalrezTM3102(Hercules,Inc.から市販)。
・・・
[図:0001418160000005.jpg]
・・・
表3に示すデータは、本発明の紫外線硬化感圧接着剤は、透明であり、揮発物の量を増加せずに塗装支持体に対する剥離接着強さが改善されたことを示す。」(22頁11行~26頁2行)
カ 「ベンジルジメチルケタール光開始剤」(27頁2行)
キ 「例11および比較例C12-19
以下のサンプルは、アクリレート感圧接着配合物に使用される市販の合成炭化水素の他のクラスに対して本発明の粘着付与剤の化学的に不活性であることを示す。これらのすべての例では、90/10IOA/aa単量体混合物は、例1の紫外線重合方法を用いてバルク重合したが、全く架橋剤(すなわち、トリアジンまたは1.6-ヘキサンジオールジアクリレート)を使用しなかった点では異なっていた。比較例12、粘着付与樹脂を一切使用しなかったが、表7に指定される20部の粘着付与剤を例11および比較例C13-19の単量体混合物に重合前に添加した。架橋剤は、例が分子量の違いに関するポリエスチレン標準に対してテトラヒドロフラン中でゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって分析することができるように、使用しなかった。サンプルは、重合後に透明性についても検査した。結果については以下の表7に示す。すべてのサンプルは、重合前に透明であった。
[図:0001418160000006.jpg]
1 16乃至20℃の軟化点(リングおよびボール)を有する非常に無色透明の炭化水素粘着付与樹脂、Hercules,Inc.から市販。
2 90乃至98℃の軟化点(リングおよびボール)を有する非常に無色透明の炭化水素粘着付与樹脂、Hercules,Inc.から市販。
3 98乃至106℃の軟化点(リングおよびボール)を有する非常に無色透明の炭化水素粘着付与樹脂、Hercules,Inc.から市販。
・・・
これらの結果は、その他の合成粘着付与剤(比較例14-19)がこのより高い極性アクリル接着剤では乏しい相溶性を有し、重合後には不混和になったことを示す。」(30頁下から2行~32頁11行)
(2)引用文献5に記載された発明
前記(1)イ、エ、オ及びキの特に例1の記載から、引用文献5には以下の発明(以下「引用発明5」という。)が記載されていると認められる。
「54部のイソオクチルアクリレート(IOA)、36部のブチルアクリレート(BA)、10部のアクリル酸(AA)および0.4部のベンジルジメチルケタール(Sartomer Co.から市販のEsacureTMKB-1)を閉鎖容器ないで混合し、窒素でパージして得られた組成物を、一部黒色テープでテーピングして約0.15ミリワット/平方センチメートルの強度を提供する紫外線不可視光線(General Electric Co.から市販のGE F15T8 BL)で照射して得られた、工業標準規格の分類Gで測定し、約3000センチポワズと概算される塗布可能な粘度を有するシロップに、0.16部のベンジルジメチルケタール、0.15部の2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-s-トリアジン、20部の表2に示す特性を有する炭化水素樹脂および0.06部の1,6-ヘキサンジオールジアクリレートを添加した混合物であって、フィルム上に塗布してから、300乃至400nmの発光スペクトルの90%を有し窒素不活性化室(50ppmの酸素)で約350nmの最大値を有する傾向不可視光線(合議体注:原文のとおり)に暴露することにより感圧接着転写テープが得られる混合物。」
2 引用文献7及び文献等4
(1) 前記第2 1(2)で提示された引用文献7には、以下の記載がなされている。
「【0054】
・・・粘着付与樹脂として脂環族飽和炭化水素樹脂(商品名:アルコンP-100、荒川化学社)10重量部を用いた・・・」
「【0058】
【表1】
[図:0001418160000007.jpg]
」
(2) 引用文献7に記載される脂環族飽和炭化水素樹脂(商品名:アルコンP-100、荒川化学社)は、当該技術分野において汎用される樹脂であるところ、アルコンPのカタログ(https://www.arakawachem.co.jp/jp/technology/catalog/14.html、https://www.arakawachem.co.jp/jp/products/adhesive/08.html、(Copyright 2019, Arakawa Chemical Industries Ltd.)、以下「文献等4」という。)には、以下の事項が開示されている。
「
[図:0001418160000008.jpg]
」
「
[図:0001418160000009.jpg]
」
3 文献1の記載
当審拒絶理由において通知された前記第2 2(2)の文献1には、以下の記載がなされている。
「
[図:0001418160000010.jpg]
[図:0001418160000011.jpg]
」(31頁右欄17~33頁左欄最終行)
「
[図:0001418160000012.jpg]
」(図6)
5 文献3の記載
当審拒絶理由で通知された前記第2 2(2)の文献3には、以下の記載がなされている。
「
[図:0001418160000013.jpg]
」(338頁左欄表2-8)
第7 検討
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明5を対比する。
引用発明5の「イソオクチルアクリレート(IOA)」、「ブチルアクリレート(BA)」及び「アクリル酸(AA)」は、それぞれ、本願発明1の「アルキル基の炭素数が8以上の(メタ)アクリル酸エステル」、「アルキル基の炭素数が8未満の(メタ)アクリル酸エステル」及び「カルボキシ基を有する単量体」に相当する。
引用発明5の「表2に示す特性を有する炭化水素樹脂」及び「1,6-ヘキサンジオールジアクリレート」は、本願発明1の「粘着付与樹脂」及び「多官能モノマー」に相当する。
また、引用発明5の混合物は「フィルム上に塗布してから、300乃至400nmの発光スペクトルの90%を有し窒素不活性化室(50ppmの酸素)で約350nmの最大値を有する傾向不可視光線に暴露することにより感圧接着転写テープが得られる組成物。」であるから、本願発明1の「無溶剤型アクリル系粘着剤組成物(ただし、重量平均分子量が1000以上30000未満の(メタ)アクリル系重合体を含む無溶剤型アクリル系粘着剤組成物、イソブチレン系ポリマーを含む無溶剤型アクリル系粘着剤組成物、アクリル系共重合体中に容積比率0.5%以上15%未満の割合で分散された微粒子を含む無溶剤型アクリル系粘着剤組成物、及び2-プロピルヘプチルアクリレートを含む無溶剤型アクリル系粘着剤組成物を除く)」に相当する。
また、引用発明5の「54部のイソオクチルアクリレート(IOA)、36部のブチルアクリレート(BA)、10部のアクリル酸(AA)および0.4部のベンジルジメチルケタール(Sartomer Co.から市販のEsacureTMKB-1)」を含む「シロップ」は、前記第6(1)カの記載から、本願発明1の「アルキル基の炭素数が8以上の(メタ)アクリル酸エステル0~55質量部と、アルキル基の炭素数が8未満の(メタ)アクリル酸エステル35~93質量部と、カルボキシ基を有する単量体7~20質量部とを含有する第2アクリル系部分共重合体」に相当する。
そうすると、両者は、
「無溶剤型アクリル系粘着剤組成物であって、
アルキル基の炭素数が8以上の(メタ)アクリル酸エステル0~55質量部と、アルキル基の炭素数が8未満の(メタ)アクリル酸エステル35~93質量部と、カルボキシ基を有する単量体7~20質量部とを含有する第2アクリル系部分共重合体と、
多官能モノマーと、
粘着付与樹脂と、を含」む
「無溶剤型アクリル系粘着剤組成物(ただし、重量平均分子量が1000以上30000未満の(メタ)アクリル系重合体を含む無溶剤型アクリル系粘着剤組成物、イソブチレン系ポリマーを含む無溶剤型アクリル系粘着剤組成物、アクリル系共重合体中に容積比率0.5%以上15%未満の割合で分散された微粒子を含む無溶剤型アクリル系粘着剤組成物、及び2-プロピルヘプチルアクリレートを含む無溶剤型アクリル系粘着剤組成物を除く)」の点で一致し、
本願発明1は、粘着付与樹脂として、「前記第2アクリル系部分共重合体100質量部に対して、軟化点が100℃である水添加脂環族系石油樹脂粘着付与樹脂を0.5~4.5質量部を含有」するのに対し、引用発明5は、「軟化点が98℃の芳香族炭化水素粘着樹脂」を含むものである点(以下「相違点」という。)で相違するものである。
(2)検討
上記相違点について検討する。
ア 前記1(1)のとおり、引用文献5には粘着付与剤が「炭化水素供給原料から生成される無色透明で65乃至120℃の軟化点を有する水素化樹脂」であることが記載されているところ、脂環族(水添)石油樹脂は、水添ロジンエステルや芳香族系石油樹脂等よりも粘着力の高い粘着付与剤であり(要すれば、前記第6 4の文献3の338頁左欄表2-8等参照)、低エネルギー表面への接着能力の向上等を目的として、アクリル成分のみでは十分な粘着性能が得られない場合にタッキファイヤーを配合することも当該分野における技術常識であり、アクリルシロップにUV重合時に脂環族(水添)石油樹脂を配合することも、当該分野において既に行われていたものである(要すれば、前記第6 3の文献1の31頁右欄17~33頁左欄最終行、図6等参照)。そして、引用発明5の粘着付与樹脂の軟化点と近い100℃という軟化点を有するアルコンP-100は、脂環族水添石油樹脂として汎用される周知の無色透明の樹脂である(要すれば、前記第6 2の引用文献7、文献等4等参照)。
イ しかしながら、引用文献5には、前記1(1)のとおり「98乃至106℃の軟化点(リングおよびボール)を有する非常に無色透明の炭化水素粘着付与樹脂」である「RegalrezTM6108(Hercules,Inc.から市販)」を粘着付与樹脂として用いた場合には、「不透明/白」であったこと(表3)が記載され、粘着付与剤が20部かつ架橋剤を使用しない組成物ではあるものの、粘着剤としてRegalrezTM6108(Hercules,Inc.から市販)を含む比較例C16(表7)を含む例11および比較例C12-19について、「これらの結果は、その他の合成粘着付与剤(比較例14-19)がこのより高い極性アクリル接着剤では乏しい相溶性を有し、重合後には不混和になったことを示す」と記載されている。
ウ 引用発明5は「10部のアクリル酸(AA)」を含むことから極性アクリル接着剤であると認められるところ、前記イの引用文献5の記載に接した当業者は、引用発明5において、「表2に示す特性を有する炭化水素樹脂」にかえて、脂環族(水添)石油樹脂として汎用される周知の無色透明の樹脂であり、ポリオレフィン等の各種ポリマーとの相溶性に優れることが本願出願時の技術常識であるアルコンP-100等(要すれば、前記第6 2の引用文献7、文献等4等参照)を一定の質量部で添加して透明な粘着剤組成物が得られることを想起したとはいえない。そして、本願明細書には、前記第5のとおり、実施例12及び13の無溶剤型アクリル系粘着剤組成物について、【0078】に記載される目視試験において、透明であると評価されたことが記載されており、本願発明1の構成によりこのような効果が奏されることを当業者が予測し得たということもできない。
エ 以上のとおりであるから、本願発明1は、当業者が引用文献5に記載された発明、引用文献5に記載された技術的事項並びに周知技術(要すれば、引用文献7、文献1、文献3及び文献等4等参照)に基づいて容易に発明できたものではない。
2 本願発明2~11について
本願発明2~11は、本願発明1に発明特定事項を付加すること等により、本願発明1を減縮するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献5に記載された発明、引用文献5に記載された技術的事項並びに周知技術(要すれば、引用文献7、文献1、文献3及び文献等4等参照)に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-010757