2020-002587
ファイルパスを記憶し、ローカルファイルにアクセスする方法及び装置
- 審判番号
- 2020-002587
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-535339外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年02月26日
- 審決日
- 2020年11月25日
- 公報発行日
- 2021年06月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アリババ・グループ・ホールディング・リミテッド
- 【請求人代理人】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (G06F) / P18 .575-Z (G06F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
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本願は,2015年12月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年1月6日(以下,「優先日」という。),中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 令和2年2月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年2月26日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により,特許請求の範囲の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)
「 【請求項1】異なる記憶領域であって、異なるアプリケーションAPPに対応する各記憶領域を含む前記異なる記憶領域の指定されたタイプのローカルファイルを監視することと、前記監視されたローカルファイルのファイルパスを獲得することと、前記ファイルパスを、前記異なるアプリケーションAPPに対応する各記憶領域とは別の予め設定された記憶領域に記憶することと、続きを表示(全27行)を含む、ファイルパス記憶方法。【請求項2】前記異なる記憶領域の前記ローカルファイルを監視することは、前記異なる記憶領域の前記ローカルファイルの各操作時間を監視することと、前記監視された操作時間の予め設定された期間に該当する操作時間を決定することと、前記予め設定された期間内に該当する前記操作時間に対応するローカルファイルを、前記異なる記憶領域の前記監視されたローカルファイルとして決定することと、を含む、請求項1に記載の方法。【請求項3】前記各操作時間は、前記ローカルファイルの各閲覧時間、各更新時間、各ダウンロード時間、及び、各作成時間の少なくとも1つを含む、請求項2に記載の方法。【請求項4】前記異なる記憶領域の前記ローカルファイルの監視は、前記異なる記憶領域の指定されたタイプのローカルファイルを監視することを含み、前記指定されたタイプの前記ローカルファイルは、媒体ファイル及び/またはテキストファイルを含む、請求項1に記載の方法。【請求項5】異なる記憶領域であって、異なるアプリケーションAPPに対応する各記憶領域を含む前記異なる記憶領域の指定されたタイプのローカルファイルを監視するように構成された監視モジュールと、前記監視されたローカルファイルのファイルパスを獲得するように構成された獲得モジュールと、前記異なるアプリケーションAPPに対応する各記憶領域とは別の予め設定された記憶領域に前記ファイルパスを記憶するように構成された記憶モジュールと、を含む、ファイルパス記憶装置。【請求項6】前記監視モジュールは、前記異なる記憶領域の前記ローカルファイルの操作時間を監視し、前記監視された操作時間のうち、予め設定された期間内に該当する操作時間を決定し、且つ、前記予め設定された期間内に該当する前記操作時間に対応するローカルファイルを、前記異なる記憶領域の前記監視されたローカルファイルとして決定するように構成された、請求項5に記載の装置。【請求項7】前記各操作時間は、前記ローカルファイルの各閲覧時間、各更新時間、各ダウンロード時間、及び、各作成時間の少なくとも1つを含む、請求項6に記載の装置。【請求項8】前記監視モジュールは、前記異なる記憶領域で指定されたタイプのローカルファイルを監視するように構成され、前記指定されたタイプの前記ローカルファイルは、媒体ファイル及び/またはテキストファイルを含む、請求項5に記載の装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,令和1年6月26日にされた手続補正により補正された特許請求の記載は次のとおりである。(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)
「 【請求項1】異なる記憶領域であって、異なるアプリケーションAPPに対応する各記憶領域を含む前記異なる記憶領域のローカルファイルを監視することと、前記監視されたローカルファイルのファイルパスを獲得することと、前記ファイルパスを、前記異なるアプリケーションAPPに対応する各記憶領域とは別の予め設定された記憶領域に記憶することと、続きを表示(全48行)を含む、ファイルパス記憶方法。【請求項2】前記異なる記憶領域の前記ローカルファイルを監視することは、前記異なる記憶領域の前記ローカルファイルの各操作時間を監視することと、前記監視された操作時間の予め設定された期間に該当する操作時間を決定することと、前記予め設定された期間内に該当する前記操作時間に対応するローカルファイルを、前記異なる記憶領域の前記監視されたローカルファイルとして決定することと、を含む、請求項1に記載の方法。【請求項3】前記各操作時間は、前記ローカルファイルの各閲覧時間、各更新時間、各ダウンロード時間、及び、各作成時間の少なくとも1つを含む、請求項2に記載の方法。【請求項4】前記異なる記憶領域の前記ローカルファイルの監視は、前記異なる記憶領域の指定されたタイプのローカルファイルを監視することを含み、前記指定されたタイプの前記ローカルファイルは、媒体ファイル及び/またはテキストファイルを含む、請求項1に記載の方法。【請求項5】ユーザによって入力されたローカルファイルの獲得命令を受信することに応答して、請求項1に記載の予め設定された記憶領域から予め記憶されたファイルパスを獲得することと、前記ファイルパスに従って前記ファイルパスに対応する前記ローカルファイルにアクセスすることと、を含む、ローカルファイルアクセス方法。【請求項6】前記方法は、前記アクセスされたローカルファイルのファイル識別子を提示することをさらに含む、請求項5に記載の方法。【請求項7】前記アクセスされたローカルファイルの前記ファイル識別子を提示することは、前記アクセスされたローカルファイルの操作時間を決定することと、前記決定された操作時間に関して、前記操作時間と現在の時間との各時差を決定することと、前記ローカルファイルの前記ファイル識別子を前記時差の少ない順に配置することと、前記順に配置されたファイル識別子を提示することと、を含む、請求項6に記載の方法。【請求項8】異なる記憶領域であって、異なるアプリケーションAPPに対応する各記憶領域を含む前記異なる記憶領域のローカルファイルを監視するように構成された監視モジュールと、前記監視されたローカルファイルのファイルパスを獲得するように構成された獲得モジュールと、前記異なるアプリケーションAPPに対応する各記憶領域とは別の予め設定された記憶領域に前記ファイルパスを記憶するように構成された記憶モジュールと、を含む、ファイルパス記憶装置。【請求項9】前記監視モジュールは、前記異なる記憶領域の前記ローカルファイルの操作時間を監視し、前記監視された操作時間のうち、予め設定された期間内に該当する操作時間を決定し、且つ、前記予め設定された期間内に該当する前記操作時間に対応するローカルファイルを、前記異なる記憶領域の前記監視されたローカルファイルとして決定するように構成された、請求項8に記載の装置。【請求項10】前記各操作時間は、前記ローカルファイルの各閲覧時間、各更新時間、各ダウンロード時間、及び、各作成時間の少なくとも1つを含む、請求項9に記載の装置。【請求項11】前記監視モジュールは、前記異なる記憶領域で指定されたタイプのローカルファイルを監視するように構成され、前記指定されたタイプの前記ローカルファイルは、媒体ファイル及び/またはテキストファイルを含む、請求項8に記載の装置。【請求項12】ユーザによって入力されたローカルファイルの獲得命令を受信することに応じて、請求項8に記載の予め設定された記憶領域から予め記憶されたファイルパスを獲得するように構成された獲得モジュールと、前記ファイルパスに従って、前記ファイルパスに対応する前記ローカルファイルにアクセスするように構成されたアクセスモジュールと、を含む、ローカルファイルアクセス装置。【請求項13】前記装置は、前記アクセスされたローカルファイルのファイル識別子を提示するように構成された提示モジュールをさらに含む、請求項12に記載の装置。【請求項14】提示モジュールは、前記アクセスされたローカルファイルの操作時間を決定し、前記決定された操作時間に関して、前記操作時間と現在の時間との各時差を決定し、前記ローカルファイルの前記ファイル識別子を前記時差の少ない順に配置し、且つ、前記順に配置されたファイル識別子を提示するように構成される、請求項13に記載の装置。」
2 補正の適否
本件補正は,補正前の請求項5~7,及び12~14を削除するとともに,補正前の請求項1,及び8に記載された発明を特定するために必要な事項である,ローカルファイルを監視することについて,「指定されたタイプの」ローカルファイルを監視するとの限定を付加するものである。
そして,補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,本件補正は,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記「1(1)」の請求項1に記載された下記のとおりのものである(再掲)。
「 異なる記憶領域であって、異なるアプリケーションAPPに対応する各記憶領域を含む前記異なる記憶領域の指定されたタイプのローカルファイルを監視することと、前記監視されたローカルファイルのファイルパスを獲得することと、前記ファイルパスを、前記異なるアプリケーションAPPに対応する各記憶領域とは別の予め設定された記憶領域に記憶することと、を含む、ファイルパス記憶方法。」
(2)引用文献等の記載事項
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(2-1)引用文献1に記載されている技術的事項及び引用発明
ア 原査定の拒絶の理由で引用された,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特表2014-514666号公報(平成26年6月19日出願公表。以下,「引用文献1」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同様。)
A 「【0010】[0012]起動中などに、コンピューター内の要素間で情報を転送するのを助ける基本ルーチンを含む基本入/出力システムが、ROM10の中に格納される。コンピューター100は、オペレーティングシステム16と、メッセージングアプリケーション24と、アプリケーション25と、後段でより詳細に説明される添付ファイルマネージャー26とを格納するための大容量ストレージデバイス14をさらに含む。」
B 「【0017】[0019]添付ファイルマネージャー26は、1つまたは複数のファイルが電子メッセージに添付されるように選択され得る、最も最近使用された(MRU)ファイルリストを表示するように構成される。MRUは、MUR(当審注:「MUR」は「MRU」の誤記であると認められる。)を表示するコンピューティングデバイスがアクセス可能なファイルから作成され得る。例えば、MUR(当審注:「MUR」は「MRU」の誤記であると認められる。)がユーザーのラップトップ上に表示される場合、ラップトップからアクセス可能なユーザーによって最近使用された任意のファイル(すなわち、ネットワークアクセス可能であるファイル)が、表示され得る。選択されたファイルが、メッセージに添付可能であり、かつ/またはそのファイルに対するリンクが、メッセージに含められ得る。「リンク」という用語は、コンテンツのロケーションを表すアドレスを指す。例えば、リンクは、添付ファイル/コンテンツが格納されたネットワークロケーションを指定するユニフォームリソースロケーター(URL)の形態であり得る。そのリンクをクリックすることにより、概して、そのリンクによってポイントされるコンテンツが取得される。添付ファイルマネージャー26は、図示されるように、アプリケーションの、例えば、メッセージングアプリケーション24の外部に配置されても、アプリケーションの一部分であってもよい。さらに、添付ファイルマネージャー26によって提供される機能のすべて/一部が、メッセージングアプリケーションの内部/外部に配置され得る。【0018】[0020]或る実施形態によれば、添付ファイルマネージャー26は、リンクされたコンテンツおよび/または添付ファイルを電子メッセージの添付ファイル領域内で提示するように構成される。添付ファイルマネージャー26は、MRUリストを獲得し、さらに表示するように構成される。ユーザーは、ユーザーインターフェース15を使用して、表示された最も最近使用された(MRU)ファイルリストから電子メッセージに関する添付ファイルを選択することができる。例えば、ユーザーが、電子メッセージを作成している際、MRUリストからメッセージに添付すべきファイルを選択することが可能である。MRUリスト内に含められる最近使用されたファイルは、1つまたは複数のアプリケーション/ロケーション、および/あるいは1つまたは複数のコンピューティングデバイスと関係することが可能である。例えば、MRUリストは、1つまたは複数の異なる作成アプリケーションによってアクセスされたファイル、および/あるいはユーザーに関連する、最近アクセスされた/作成されたファイルを含み得る。添付ファイルマネージャーに関するさらなる詳細は、後段で説明される。」
C 「【0035】[0037]図4は、最近使用されたファイルを表示する様々なMRUリストの例を示す。[0038]図示されるように、MRUリスト400は、ファイルの名前と、ファイルが使用された時刻と、ファイルが配置されているロケーションとを含む最近使用されたファイルのリストを示す。見て取ることができるように、MRUリスト400は、ファイルがコンピューティングデバイスにローカルで配置され得ること(例えば、File2、Picture2)、および/またはファイルがネットワークロケーションに配置され得ること(例えば、File4)を示す。このファイルは、使用される任意のタイプのファイル(例えば、文書、メッセージ、ピクチャ、閲覧したウェブページなど)であり得る。MRUリスト内に示されるファイルのリストは、選好に基づくことが可能である。例えば、ユーザーが、最近アクセスが行われたすべてのファイル、複数のファイルの一部(例えば、選択されたアプリケーションのリストから使用されたファイル、所定の期間内に編集されたファイル)などを表示することを指定することが可能である。【0036】[0039]MRUリスト410は、所定の期間内に使用された、最近使用されたファイルのリストを示す。或る実施形態によれば、ファイルのリストは、所定の期間(例えば、過去5分間、過去10分間、過去15分間、過去1時間、過去1日、過去1週間など)内にアクセスされた/使用されたファイルに基づくことが可能である。図示される例において、MRU410は、過去1時間内にアクセスされた/使用されたファイルのリストを示す。」
D 「図1」
E 「図3」
F 「図4」
イ 上記A~Fの記載から,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「コンピューターは,メッセージングアプリケーションと,アプリケーションと,添付ファイルマネージャーとを格納するためのストレージデバイスを含むものであり,前記添付ファイルマネージャーは,複数のファイルが電子メッセージに添付されるように選択され得る,最も最近使用された(MRU)ファイルリストを表示するように構成されるものであり,前記MRUがユーザーのラップトップ上に表示される場合,ラップトップからアクセス可能なユーザーによって最近使用された任意のファイル(すなわち,ネットワークアクセス可能であるファイル)が,表示され得るものであり,選択されたファイルが,メッセージに添付可能であり,かつ/またはそのファイルに対するリンクが,メッセージに含められ得るものであり,前記「リンク」という用語は,コンテンツのロケーションを表すアドレスを指すものであり,前記MRUリストは,複数の異なるアプリケーションによってアクセスされたファイルを含み得るものであり,前記MRUリストは,ファイルがコンピューティングデバイスにローカルで配置され得ることを示すものであり,前記MRUリスト内に示されるファイルのリストは,選好に基づくことが可能であり,複数のファイルの一部(選択されたアプリケーションのリストから使用されたファイル)を表示することを指定することが可能である,コンピューター。」
(2-2)参考文献1に記載されている技術的事項
本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である,特開2013-109594号公報(平成25年6月6日出願公開。以下,「参考文献1」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
G 「【0042】記憶部(データ記憶部)12は、アプリケーションA用データ記憶領域13、アプリケーションB用データ記憶領域14、アプリケーションC用データ記憶領域15、および秘密データ記憶領域16を備えている。【0043】アプリケーションA用データ記憶領域13にはウェブアプリケーションAおよびウェブアプリケーションAで用いられるデータが格納され、アプリケーションB用データ記憶領域14にはウェブアプリケーションBおよびウェブアプリケーションBで用いられるデータが格納され、アプリケーションC用データ記憶領域15にはウェブアプリケーションCおよびウェブアプリケーションCで用いられるデータが格納される。」
H 「図1」
(2-3)参考文献2に記載されている技術的事項
ア 本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である,特開2009-211514号公報(平成21年9月17日出願公開。以下,「参考文献2」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
I 「【0026】クライアント部100には、ユーザが操作するアプリケーション101と、アプリケーションに対するユーザの操作を監視するアプリケーション監視手段102とが存在する。」
J 「【0029】監視ルール記憶部120には、あらかじめアプリケーションへのユーザ操作を監視するための監視ルールが格納されている。ユーザ操作監視制御手段110は、監視ルール記憶部120から監視ルールを取得し、アプリケーション監視手段102に伝達する。すなわち、監視ルール記憶部120から監視ルールを読み出して通信ネットワーク300を介してクライアント部100に送信する。また、クライアント部100において、アプリケーション監視手段102は、監視ルールにもとづいてユーザ操作を監視し、監視結果をユーザ操作監視制御手段110に通知する。ユーザ操作監視制御手段110は、監視結果を操作履歴記憶部121に記録する。」
K 「【0035】図4は、あらかじめ監視ルール記憶部120に格納されている監視ルールの一例を示す説明図である。図4に示すように、監視ルールには、アプリケーション種別と、当該アプリケーションの監視対象情報と、監視イベントと、監視の結果としてログに記録しておく代表エンティティとの4項目が含まれている。【0036】アプリケーション種別として設定される情報(データ)は、ファイル管理、ブラウザ(Webブラウザ)、メールクライアント、検索サービスなど、アプリケーションやサービスの種別を示す情報である。【0037】監視対象情報は、当該アプリケーションの操作について監視対象となる情報を示す。図4に示す例では、ファイル管理を行うアプリケーションに対応するアプリケーション監視手段は、「ファイルID」と「ファイル名」とを監視対象にする。ブラウザアプリケーションに対応するアプリケーション監視手段は、「URL」を監視対象にする。メールクライアントアプリケーションに対応するアプリケーション監視手段は、「件名(Subject )」、「宛先(To)」、「Cc. 」および「添付ファイル」を監視対象にする。検索サービスのアプリケーションに対応するアプリケーション監視手段は、「検索キーワード」を監視対象にする。乗り換え案内のアプリケーションに対応するアプリケーション監視手段は、「駅名」を監視対象にする。」
L 「図4」
イ 上記I~Lの記載から,参考文献2には次の技術が記載されているといえる。
「アプリケーションに対するユーザの操作を監視するアプリケーション監視手段であって,監視ルール記憶部には,あらかじめアプリケーションへのユーザ操作を監視するための監視ルールが格納されており,前記アプリケーション監視手段は,前記監視ルールにもとづいてユーザ操作を監視し,監視結果を操作履歴記憶部に記録するものであり,前記監視ルールには,アプリケーション種別と,当該アプリケーションの監視対象情報が含まれており,前記アプリケーション種別として設定される情報(データ)は,アプリケーションやサービスの種別を示す情報であり,前記監視対象情報は,当該アプリケーションの操作について監視対象となる情報を示すものであって,ファイル管理を行うアプリケーションに対応するアプリケーション監視手段は,「ファイルID」と「ファイル名」とを監視対象にする,アプリケーション監視手段。」
(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明は,「コンピューターは,メッセージングアプリケーションと,アプリケーションと,添付ファイルマネージャーとを格納するためのストレージデバイスを含むものであり,前記添付ファイルマネージャーは,複数のファイルが電子メッセージに添付されるように選択され得る,最も最近使用された(MRU)ファイルリストを表示するように構成されるもの」であり,「前記MRUリストは,複数の異なるアプリケーションによってアクセスされたファイルを含み得るもの」である。
ここで,「添付ファイルマネージャーは,」「最も最近使用された(MRU)ファイルリストを表示する」ことから,添付ファイルマネージャはファイルの時系列的な使用状況を把握していることは明らかであり,引用発明は,ファイルの使用状況を時系列的に把握するための監視機能を実質的に備えているといえ,さらに,「前記MRUリストは,複数の異なるアプリケーションによってアクセスされたファイルを含み得るもの」であることから,引用発明は,異なるアプリケーションによるファイルの使用状況を監視していることも明らかである。
そして,引用発明は,「前記MRUリストは,ファイルがコンピューティングデバイスにローカルで配置され得ることを示す」ものであるから,監視されるファイルがローカルファイルの記憶領域に記憶されていることも明らかであり,前述の検討も踏まえると,引用発明は,異なるアプリケーションの記憶領域を含むローカルファイルを監視しているといえる。
よって,本件補正発明と引用発明とは,後記の点で相違するものの,“異なるアプリケーションAPPの記憶領域を含むローカルファイルを監視する”点で一致している。
(イ)引用発明は,「前記MRUがユーザーのラップトップ上に表示される場合,ラップトップからアクセス可能なユーザーによって最近使用された任意のファイル(すなわち,ネットワークアクセス可能であるファイル)が,表示され得るものであり,選択されたファイルが,メッセージに添付可能であり,かつ/またはそのファイルに対するリンクが,メッセージに含められ得るもの」である。
ここで,「ファイルに対するリンクが,メッセージに含められ得る」とは,ファイルのリンクを獲得していることに他ならないから,上記(ア)の検討も踏まえると,引用発明は,監視されたローカルファイルのリンクを獲得するものであるといえ,「前記「リンク」という用語は,コンテンツのロケーションを表すアドレスを指すもの」であることから,ファイルのリンクはファイルパスに相当するといえる。
よって,本件補正発明と引用発明とは,後記の点で相違するものの,“監視されたローカルファイルのファイルパスを獲得する”点で一致している。
(ウ)上記(ア)及び(イ)の検討を踏まえると,引用発明は,“異なるアプリケーションAPPの記憶領域を含むローカルファイルを監視”し,“監視されたローカルファイルのファイルパスを獲得”するものであるところ,「最も最近使用された(MRU)ファイルリストを表示する」ものである。
してみると,引用発明は,獲得したファイルパスをMRUファイルリストとして表示するものである以上,獲得したファイルパスを何らかの記憶領域に記憶していることは明らかであり,引用発明は,“獲得したファイルパスを記憶する”というプロセスを実質的に開示しているといえる。
よって,上記(ア)及び(イ)の検討を踏まえると,引用発明は,“異なるアプリケーションAPPの記憶領域を含むローカルファイルを監視”し,“監視されたローカルファイルのファイルパスを獲得”し,“獲得したファイルパスを記憶する”コンピューターであるから,コンピューターがこれらのローカルファイルを監視し,ファイルパスを獲得し,ファイルパスを記憶するという“ファイルパス記憶方法”を実質的に開示しているといえる。
イ 上記(ア)~(ウ)の検討から,本件補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。
<一致点>
「異なるアプリケーションAPPの記憶領域を含むローカルファイルを監視することと,前記監視されたローカルファイルのファイルパスを獲得することと,前記ファイルパスを,記憶領域に記憶することと,を含む,ファイルパス記憶方法。」
<相違点1>
本件補正発明は,「異なる記憶領域であって」,異なるアプリケーションAPP「に対応する各」記憶領域を備えているのに対して,引用発明は,そのような特定がなされていない点。
<相違点2>
本件補正発明は,「異なる記憶領域の指定されたタイプ」のローカルファイルを監視するものであるのに対して,引用発明は,そのような特定がなされていない点。
<相違点3>
本件補正発明は,ファイルパスを「異なるアプリケーションAPPに対応する各記憶領域とは別の予め設定された」記憶領域に記憶するものであるのに対して,引用発明は,そのような特定がなされていない点。
(4)当審の判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点1について
複数の異なるアプリケーションを実行するコンピューターにおいて,記憶領域を各アプリケーションに対応した異なる記憶領域として設けることは,上記「(2)(2-2)」の上記参考文献1にも示されるように,当該技術分野において,極めて一般的に行われている周知技術である。
してみると,引用発明は,「複数の異なるアプリケーション」を実行するものであるところ,引用発明において,「異なる記憶領域であって」,異なるアプリケーションAPP「に対応する各」記憶領域を備えるとすることは,前記周知技術を参酌すれば,当業者であれば任意になし得る程度の事項にすぎない。
イ 相違点2について
上記「(2)(2-3)イ」に示したとおり,上記参考文献2には,次の技術が記載されている(再掲)。
「アプリケーションに対するユーザの操作を監視するアプリケーション監視手段であって,監視ルール記憶部には,あらかじめアプリケーションへのユーザ操作を監視するための監視ルールが格納されており,前記アプリケーション監視手段は,前記監視ルールにもとづいてユーザ操作を監視し,監視結果を操作履歴記憶部に記録するものであり,前記監視ルールには,アプリケーション種別と,当該アプリケーションの監視対象情報が含まれており,前記アプリケーション種別として設定される情報(データ)は,アプリケーションやサービスの種別を示す情報であり,前記監視対象情報は,当該アプリケーションの操作について監視対象となる情報を示すものであって,ファイル管理を行うアプリケーションに対応するアプリケーション監視手段は,「ファイルID」と「ファイル名」とを監視対象にする,アプリケーション監視手段。」
参考文献2に記載の上記技術は,アプリケーション監視手段が,監視ルールに含まれるアプリケーション種別と監視対象情報とに基づいてアプリケーションの操作を監視する技術を示すものである。そして,監視対象情報は,ファイル管理を行うアプリケーションの場合,「ファイルID」と「ファイル名」であることから,結局,参考文献2は,監視ルールが指定したアプリケーション種別とファイルをアプリケーション操作の監視対象とする技術を開示している。
一方,引用発明は,「前記MRUリスト内に示されるファイルのリストは,選好に基づくことが可能であり,複数のファイルの一部(選択されたアプリケーションのリストから使用されたファイル)を表示することを指定することが可能である」ことから,複数の異なるアプリケーションのうち,指定したアプリケーションのファイルリストを表示することが可能であって,指定したアプリケーションのファイルパスを獲得している点は,本件補正発明と共通するものである。
してみると,上記「ア 相違点1について」で検討したとおり,引用発明において,複数の異なるアプリケーションに対応して異なる記憶領域を設けることは,当業者であれば任意になし得る事項に過ぎないところ,指定したアプリケーションのファイルパスを獲得する際に,当該アプリケーションに対応した「異なる記憶領域の指定されたタイプ」のローカルファイルを監視するとすることは,指定したアプリケーション種別とファイルを監視対象とするという上記参考文献2に開示された技術も参酌すれば,当業者であれば容易になし得る事項である。
ウ 相違点3について
上記参考文献2に「監視結果を操作履歴記憶部に記録する」ことが開示されているように,コンピューターの操作履歴を記憶する際に,当該操作履歴を記憶するための記憶領域を別途設けることは,当該技術分野において極めて一般的に行われているものである。
してみると,上記「ア 相違点1について」で検討したとおり,引用発明において,複数の異なるアプリケーションに対応して異なる記憶領域を設けることは,当業者であれば任意になし得る事項に過ぎないところ,獲得したファイルパスは操作の履歴情報であることから,かかるファイルパスを「異なるアプリケーションAPPに対応する各記憶領域とは別の予め設定された」記憶領域に記憶することは,当業者であれば適宜なし得る事項に過ぎない。
エ 小括
上記ア~ウで検討したとおり,相違点1~相違点3に係る構成は,引用発明に記載された技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものであり,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
したがって,本件補正発明は,引用発明に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。
3 本件補正についてのむすび
よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
令和2年2月26日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,令和1年6月26日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,上記「第2[理由]1(2)」の請求項1に記載された下記のとおりのものである(再掲)。
「 異なる記憶領域であって、異なるアプリケーションAPPに対応する各記憶領域を含む前記異なる記憶領域のローカルファイルを監視することと、前記監視されたローカルファイルのファイルパスを獲得することと、前記ファイルパスを、前記異なるアプリケーションAPPに対応する各記憶領域とは別の予め設定された記憶領域に記憶することと、を含む、ファイルパス記憶方法。」
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1に係る発明は,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に記載された技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
1.特表2014-514666号公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された,引用文献1,及びその記載事項は,上記「第2[理由]2(2)(2-1)」に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は,上記「第2[理由]2(1)」で検討した本件補正発明における,ローカルファイルを監視することについて,「指定されたタイプの」ローカルファイルを監視するとの限定を削除するものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,上記「第2[理由]2(3),(4)」に記載したとおり,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-002587