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特許無効審判

2019-800030

特定加熱食肉製品、特定加熱食肉製品の製造方法及び特定加熱食肉製品の保存方法

審判番号
2019-800030
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2012-113587外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
5192595
請求日
2019年04月08日
審決日
2021年02月08日
公報発行日
2023年12月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P1123.121-ZDA(A23B) / P1123.851-ZDA(A23B) / P1123.857-ZDA(A23B) / P1123.841-ZDA(A23B) / P1123.854-ZDA(A23B) / P1123.855-ZDA(A23B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法123条1項2号特許法169条2項民事訴訟法64条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第134条の2第9項、特許法第29条第2項、特許法第134条の2第1項、特許法第126条第7項、特許法第36条、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第5192595号発明「特定加熱食肉製品、特定加熱食肉製品の製造方法及び特定加熱食肉製品の保存方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 特許第5192595号の特許請求の範囲を令和2年7月6日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2、5について訂正することを認める。 特許第5192595号の請求項1、2に係る発明についての特許を無効とする。 特許第5192595号の請求項3、4、5に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その5分の3を請求人の負担とし、5分の2を被請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第5192595号(以下「本件特許」)という。)に係る出願は、平成24年5月17日に出願されたものであり、その特許権について、平成25年2月8日に設定登録を受けた(請求項の数5)。現在の特許権者は、株式会社シンコウフーズ(以下「被請求人」という。)である。 その後、本件の特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明についての特許を無効とすることについて、平成31年4月8日に滝沢ハム株式会社(以下「請求人」という。)から、本件審判の請求がされた。 本件審判の手続の経緯の概要は次のとおりである。 平成31年 4月 8日 審判請求書 甲第1号証~甲第18号証提出 令和 1年 7月19日 審判事件答弁書 乙第1号証~乙第10号証提出 同年 9月 4日付け 審理事項通知 同年10月18日 口頭審理陳述要領書(請求人) 甲第19号証~甲第26号証提出 同日 口頭審理陳述要領書(被請求人) 乙第11号証~乙第21号証提出 同年11月 1日 第1回口頭審理 同日 上申書(請求人)提出(口頭審理陳述要領 書で提出した証拠の出典を示すURLを追 加し、甲第22号証の表紙が抜けていたた め、表紙のついたものを提出するもの。) 同日 上申書1(被請求人)提出(乙第18号証 ~乙第21号証を差し替えるもの。) 同日 上申書2(被請求人)提出(裁判に関する 情報提供で、同時に乙第22号証~乙第2 8号証を提出するもの。) 同日 上申書3(被請求人)提出(追加の証拠で ある乙第29号証を提出するもの。) 同年11月15日 上申書(請求人)提出(被請求人の口頭審 理陳述要領書について反論し、その際に、 追加の証拠である甲第27号証及び甲第2 8号証を提出するもの。) 同日 上申書(被請求人)提出(請求人の口頭審 理陳述要領書について反論し、その際に、 追加の証拠である乙第30号証~乙第34 号証を提出するもの。) 令和 2年 1月17日 上申書(被請求人)提出(裁判に関する情 報提供で、構成要件充足・特許有効の心証 が開示されたことを上申するもの。) 同年 3月31日付け 審決の予告 同年 7月 6日 訂正請求書及び上申書(被請求人)提出( 令和2年3月31日付け審決の予告に対す る意見及び訂正請求書の訂正事項と特許性 に関する説明を上申し、その際に、追加の 証拠である乙第35号証~乙第48号証を 提出するもの。) 同年 8月24日 上申書(被請求人)提出(実験成績証明書 (乙第49号証)を提出すると同時に、本 件特許製造品の持つ効果に対する食品業界 の評価と商業的成功に関する説明を上申し 、その際に、追加の証拠である乙第50号 証~乙第59号証を提出するもの。) 同年 9月 1日 上申書(被請求人)提出(乙第51号証の 刊行日が把握できる乙第51の1号証を提 出するもの。) 同年 9月28日 上申書(被請求人)提出(裁判に関する情 報提供で、訴訟対象製品の追加に伴い新た な訴えが提起され、審理されていること、 限界利益の計算を鑑定人に依頼することを 両当事者が合意したことを上申するもの。 ) 同年 9月29日 弁駁書(請求人) 甲第29号証~甲第30号証提出 同年12月 8日 上申書(被請求人)提出(裁判に関する情 報提供で、侵害訴訟の無効論の中で議論さ れた事項とそれに対する被請求人の意見を 上申し、その際に、追加の証拠である乙第 60号証~乙第74の2号証を提出するも の。) 以下、書証は、その証拠番号により、甲第1号証を「甲1」、乙第1号証を「乙1」などともいう。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 被請求人は、令和2年7月6日に訂正請求書を提出して、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2、5について請求項ごとに訂正(以下「本件訂正」という。)することを求めた。 その訂正の内容は、以下のとおりである。 [訂正事項1] 特許請求の範囲の請求項2に「非鉄系脱酸素材と鉄系脱酸素材の合計量を100%」と記載されているのを、「非鉄系脱酸素材と鉄系脱酸素材の合計量を100%とし、鉄系脱酸素材0%の場合を除く」に訂正する。 [訂正事項2] 特許請求の範囲の請求項5に「特定加熱食肉製品がローストビーフであることを特徴とする請求項1記載の特定加熱食肉製品の製造方法。」と記載されているのを、「特定加熱食肉製品をスライスする工程と、スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程と、当該酸素化する工程の後、炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく、スライスされた特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程とを含み、上記スライスされた上記特定加熱食肉製品は、ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが50%未満、還元型ミオグロビンが34%以上となる割合となっていることを特徴とする特定加熱食肉製品の製造方法であって、特定加熱食肉製品がローストビーフであることを特徴とする特定加熱食肉製品の製造方法。」に訂正する。 2 訂正の適否についての検討 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正前の請求項2には「上記非鉄系脱酸素材とともに鉄系脱酸素材を37.5%以下(非鉄系脱酸素材と鉄系酸素材の合計量を100%)の割合で使用する」と記載されていた。 ここで、鉄系脱酸素材の割合が37.5%以下であるとは、0%の場合も含んでいることは明らかであったところ、訂正事項1は、鉄系脱酸素材の割合が0%である場合を除くことを特定し、請求項2に係る発明を限定するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるかについて 上記アにおいて検討したとおり、訂正事項1は、鉄系脱酸素材の割合が0%である場合を除くことを特定し、請求項2に係る発明を限定するものであるから、発明のカテゴリー、対象又は目的を変更するものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。 したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。 ウ 新規事項の追加の有無について 願書に添付した明細書【0032】~【0034】には非鉄系脱酸素材を用いることが記載され、【0035】には鉄系脱酸素材のみを用いると問題が生じること、【0036】には非鉄系脱酸素材に加えて、鉄系脱酸素材を補助的に使用する場合に、鉄系脱酸素材は、非鉄系脱酸素材と鉄系脱酸素材の合計量を100%としたときに37.5%以下とすることが記載されているから、鉄系脱酸素材において37.5%以下であって必ず鉄系脱酸素材が含まれる場合、すなわち、鉄系脱酸素材の割合が0%でない場合が記載されているといえる。 そして、上記アにおいて検討したとおり、訂正事項1は、鉄系脱酸素材の割合が0%である場合を除くことを特定し、請求項2に係る発明を限定するものであるから、新たな技術的事項を導入するものでなく、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。 したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。 エ 独立特許要件について 本件特許無効審判事件においては、本件訂正前の請求項2について、無効審判の請求の対象とされているので、本件訂正前の請求項2に係る訂正に関して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的について 訂正事項2は、訂正前の請求項5が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して請求項1を引用しないものとし、独立請求項へ改めると同時に、訂正前の請求項5が引用していた訂正前の請求項1に係る発明では、「スライスされた特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程とを含み」と特定され、当該工程については何ら特定されていなかったものを、「炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく」行うことを特定し、請求項5に係る発明を限定するものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び同項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるかについて 訂正事項2において、請求項5の引用関係を解消して独立請求項へ改める部分については、実質的に請求項5に係る発明を変更するものでない。 また、訂正事項2において「スライスされた特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程とを含み」において、当該工程を「炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく」行うことを特定したことは、上記アにおいて検討したとおり、請求項5に係る発明を減縮するものであって、発明のカテゴリー、対象又は目的を変更するものでない。 したがって、訂正事項2は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。 ウ 新規事項の追加の有無について 願書に添付した明細書【0048】にはローストビーフをトレイに並べ、これを三方フイルム内に非鉄系脱酸素材、又は非鉄系脱酸素材及び鉄系脱酸素材とともに入れ、密封したことが記載されており、ここで、ガス置換を行ったことは何ら記載されておらず、炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく密封した態様も把握できるから、炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく包材に密封することが記載されているといえる。 そして、上記アにおいて検討したとおり、訂正事項2は、請求項5の引用関係を解消して独立請求項へ改めると同時に、「スライスされた特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程とを含み」について、「炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく」行うことを特定し、請求項5に係る発明を限定するものであるから、新たな技術的事項を導入するものでなく、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。 したがって、訂正事項2は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。 エ 独立特許要件について 本件特許無効審判事件においては、本件訂正前の請求項5について、無効審判の請求の対象とされているので、本件訂正前の請求項5に係る訂正に関して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 3 まとめ 以上のとおりであるから、請求項2、5についての本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び/又は同項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。 よって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2、5について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2で示したとおり、請求項2及び5についての本件訂正は認められたので、本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される、それぞれ以下のとおりのもの(以下「本件発明1」などということがある。)である。 「【請求項1】 特定加熱食肉製品をスライスする工程と、スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程と、当該酸素化する工程の後、スライスされた特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程とを含み、上記スライスされた上記特定加熱食肉製品は、ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが50%未満、還元型ミオグロビンが34%以上となる割合となっていることを特徴とする特定加熱食肉製品の製造方法。 【請求項2】 上記非鉄系脱酸素材とともに鉄系脱酸素材を37.5%以下(非鉄系脱酸素材と鉄系脱酸素材の合計量を100%とし、鉄系脱酸素材0%の場合を除く)の割合で使用することを特徴とする請求項1記載の特定加熱食肉製品の製造方法。 【請求項3】 上記包材内の酸素濃度が検出限界以下となった後、当該包材内を真空引きする工程を更に含むことを特徴とする請求項1記載の特定加熱食肉製品の製造方法。 【請求項4】 上記包材内から上記非鉄系脱酸素材を取り除いた後に真空引きすることを特徴とする請求項3記載の特定加熱食肉製品の製造方法。 【請求項5】 特定加熱食肉製品をスライスする工程と、スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程と、当該酸素化する工程の後、炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく、スライスされた特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程とを含み、上記スライスされた上記特定加熱食肉製品は、ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが50%未満、還元型ミオグロビンが34%以上となる割合となっていることを特徴とする特定加熱食肉製品の製造方法であって、特定加熱食肉製品がローストビーフであることを特徴とする特定加熱食肉製品の製造方法。」 第4 請求人の請求の趣旨、無効理由の概要及び証拠方法等 1 請求人の請求の趣旨、主張する無効理由の概要 請求人の請求の趣旨は、「特許第5192595号の特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」であり、審判請求書において、以下の無効理由1~4を主張している(口頭審理調書も参照)。 (1)無効理由1 本件発明1は、甲1発明(主引用発明)、甲第2号証ないし甲第16号証及び甲第18号証に記載された技術及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができないものであり、本件発明1についての特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 (2)無効理由2 本件発明2は、甲1発明(主引用発明)、甲第2号証ないし甲第16号証及び甲第18号証に記載された技術及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるか、甲1発明、甲第2号証ないし甲第18号証に記載された技術及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって 特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができないものであり、本件発明2についての特許は、同法123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 (3)無効理由3 本件発明3及び4は、甲1発明(主引用発明)、甲第2号証ないし甲第16号証及び甲第18号証に記載された技術及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって 特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができないものであり、本件発明3及び4についての特許は、同法123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 (4)無効理由4 本件発明5は、甲1発明(主引用発明)、甲第2号証ないし甲第16号証及び甲第18号証に記載された技術及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって 特許法第29条第2項に該当し、特許受けることができないものであり、本件発明5についての特許は、同法123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 2 請求人が提出した証拠方法等 請求人は、証拠方法として以下の書証を提出している。 甲1 特開平10-327807号公報 甲2 特開2012-37202号公報 甲3 特開昭60-221031号公報 甲4 特開2006-64630号公報 甲5 特開2009-159825号公報 甲6 特開2010-41982号公報 甲7 特開昭58-158129号公報 甲8 特開2007-151461号公報 甲9 特開昭61-21077号公報 甲10 特開2005-137215号公報 甲11 特開2003-38143号公報 甲12 脱酸素剤、ウェブページ、2019年2月1日印刷(ウィキ ペディア) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%84%B1%E9%85%B8%E7%B4 %A0%E5%89%A4 甲13 エージレスR(Rは、○にRを示す。)(脱酸素剤)、ウェ ブページ、2019年3月27日印刷(佐藤化成株式会社) https://www.satokasei.co.jp/products/a/ageless.html 甲14の1 本件特許出願の平成24年10月24日付け拒絶理由通知書 甲14の2 本件特許出願の平成24年12月26日付け意見書 甲15 泉本 勝利、「食肉の品質特性の解析と応用」、岡山大学農 学部学術報告、2010年、第99巻、第85頁~第95頁 http://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/1/19886/ 甲15の1 岡山大学学術成果リポジトリ、ウェブページ、2019年2 月21日印刷 http://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/ja/list/nii_types/Dep artmental%20Bulletin%20Paper/p/341?sort=title 甲16 米国特許出願公開第2004/071840号明細書 甲17 特公平3-52938号公報 甲18 特開平10-45177号公報 甲19 平成30年(ワ)第36232号 特許権侵害差止等請求事 件の平成30年12月19日付け「原告ら第1準備書面【「 酸素化する工程」の意義について】」 甲20 「ローストビーフ」と生食用食肉(牛タタキ風、ローストビ ーフ)の違い! と題するパンフレット、平成24年3月作 成 甲21 平成17年度東京都食品衛生自主管理制度認証基準設定専門 委員会(後期第二回)の議事録、平成18年度(合議体注: 「平成18年」の誤記であると認められる。)1月26日開 催 甲22 食安基発0202第2号、平成24年2月2日付け「生食用 食肉牛肉)の規格基準設定に関するQ&Aの改訂について」 と題する書面) 甲23 東京高等裁判所 平成16年9月30日判決(平成16年( 行ケ)第66号) 甲24 知的財産高等裁判所 平成25年1月30日判決(平成24 年(行ケ)第10147号) 甲25 知的財産高等裁判所 平成19年5月31日判決(平成18 年(行ケ)第10394号) 甲26 知的財産高等裁判所 平成30年5月22日判決(平成29 年(行ケ)第10146号) 甲27 特開2008-221065号公報 甲28 特開昭51-104061号公報 甲29 特開平6-217736号公報 甲30 特許第3115288号公報 第5 被請求人の答弁の趣旨、及び証拠方法等 1 被請求人の主張の概要 被請求人の答弁の趣旨は、「本件無効審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」であり、審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書、令和1年11月15日、令和2年7月6日、令和2年8月24日、令和2年12月8日の上申書において、請求人が主張する無効理由のいずれにも理由がない旨の反論をしている(口頭審理調書も参照)。 2 被請求人が提出した証拠方法等 被請求人は、証拠方法として以下の書証を提出している。 乙1の1 「特定加熱食肉製品」と「ローストビーフ」の法的な関係に ついて、ウェブページ、平成30年6月15日(公益財団法 人食の安全・安心財団) http://www.anan-zaidan.or.jp/news/kanetu.pdf 乙1の2 「ミートデコレ ローストビーフ」の写真、2019年7月 17日作成、被請求人代理人特許業務法人平木国際特許事務 所河部秀男作成 乙1の3 ミートデコレ ローストビーフ-その他(ハム・ソーセージ )、ウェブページ、2019年7月17日印刷(日本ハム) https://www.nipponham.co.jp/products/ham_sausages/othe r_ham_sausages/20885/ 乙2 知的財産高等裁判所 平成21年1月28日判決(平成20 年(行ケ)第10096号) 乙3 四釜 慶治ら、生物物理、2001年、第41巻、第2号、 第74頁~第79頁 乙4 食肉の色調現象の特徴とそのバックグラウンド、ウェブペー ジ(岡山大学 泉本 勝利)、1997年9月6日 http://www.agr.okayama-u.ac.jp/amqs/iz/mj9707/mj9707.h tml 乙5 Louis Hagler et al. The Journal of Biological Chemistr y, 1979, vol.254, no.14, pp.6505-6514 乙6 食品別の規格基準について、食肉製品、ウェブページ、20 19年7月17日印刷(厚生労働省) http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-S hokuhinanzenbu/0000071198.pdf 乙7 実験結果報告書、平成30年10月25日作成、被請求人代 理人特許業務法人平木国際特許事務所岡村一徳作成 乙8 知的財産高等裁判所 平成25年10月3日判決(平成24 年(行ケ)第10415号) 乙9 吉藤 幸朔著、「特許法概説」、第12版第1刷、株式会社 有斐閣発行、1997年、第131頁 乙10 舘 秀典、パテント、2008年、第61巻、第6号、第9 5頁~第96頁 乙11 松石昌典、西邑隆徳、山本克博編、「肉の機能と科学」、初 版第1刷、2015年、第134頁~第137頁 乙12 AMSA, Meat Color Measurement Guidelines, Revised Decem ber 2012, American Meat Science Association(肉色の測 定ガイドライン、2012年改訂版、アメリカ食肉科学協会 ), pp.1-7,19,109 乙13 特開2012-196174号公報 乙14 特公昭64-4746号公報 乙15 安井勉、星和美、日本畜産学会報、1958年、第29巻、 第3号、第168頁~第173頁 乙16 吉留大雅ら、日本色彩学会誌、2017年、第41巻、第6 号、第53頁~第56頁 乙17 #12 加熱食品の赤色現象はなぜ生じるか?(2016年 4月号)、ウェブページ(一般社団法人食肉科学技術研究所 ) http://www.shokunikukaken.jp/topics/438 乙18 「ローストビーフ」とされている加熱食肉製品、2019年 8月22日作成、スターゼン販売株式会社八重樫徹作成 乙19 エージレス・脱酸素剤・通販販売ショップ(エイジレスとは )酸素吸収剤AGELESS、ウェブページ、2019年1 0月9日印刷(橘屋商事株式会社) http://kokorowo.com/ageless/ 乙20 エージレスの「サイズと種類」決め方マニュアル、ウェブペ ージ、2019年10月9日印刷(橘屋商事株式会社) http://kokorowo.com/ageless/ageless_manual.html 乙21 ローストビーフスライス色調経時変化、2019年9月25 日作成、株式会社シンコウフーズ奥村哲雄作成 乙22 平成30年(ワ)第36232号特許権侵害差止請求事件の 平成31年4月26日付け「原告ら第4準備書面【無効論】 」 乙22の2 原告ら第4準備書面と同日に提出した証拠説明書 乙23 平成30年(ワ)第36232号特許権侵害差止等請求事件 の令和元年8月22日付け「原告ら第7準備書面【無効論】 」 乙23の2 原告ら第7準備書面と同日に提出した証拠説明書 乙24 食肉の成分(2.嗜好成分とその特性)(必要箇所を抜粋) 、ウェブページ、2018年9月28日印刷(熊本県畜産協 会) http://kumamoto.lin.gr.jp/shokuniku/eiyochisiki/tokuse i_hataraki/seibun2.html 乙25 3タイプと用途[エージレス]、ウェブページ、2019年 8月18日印刷(三菱ガス化学株式会社) https://www.mgc.co.jp/products/sc/ageless/type.html 乙26 SATO-エージレス、ウェブページ、2019年8月18 日印刷(佐藤化成株式会社) https://www.satokasei.co.jp/products/a/ageless.html 乙27 知的財産高等裁判所 平成30年5月22日判決(平成29 年(行ケ)第10146号)の一部(第1~5、19、31 ~36頁) 乙28 不服2016-6672号、拒絶査定に対する不服審判審決 (平成29年3月6日付け) 乙29 R. A. Lawrie and D. A. Ledward, Lawrie's meat science, Woodhead Publishing Limited and CRC press LLC, Seventh English edition, 2006, p.285(R.A.ローリー及びD. A.レドワード著、ローリーの肉科学、ウッドヘッド出版及 びCRCプレス、英語第7版、2006年、第285頁) 乙30 「グランミールローストビーフ」の表面及び裏側の写真、2 019年11月14日作成、被請求人代理人特許業務法人平 木国際特許事務所河部秀男作成 乙31 グランミールローストビーフ-タキザワハム、ウェブページ 、2019年11月15日印刷(滝沢ハム株式会社) http://takizawaham.co.jp/products/roastbeef4 乙32 ローストビーフ-タキザワハム、ウェブページ、2019年 11月15日印刷(滝沢ハム株式会社) http://takizawaham.co.jp/products-info/roast-beef 乙33 常温(じょうおん)とは-コトバンク、ウェブページ、20 19年11月15日印刷 https://kotobank.jp/word/%E5%B8%B8%E6%B8%A9-78856 乙34 冷蔵庫の庫内の温度はどのくらいですか?、ウェブページ、 2019年11月15日印刷 https://kadenfan.hitachi.co.jp/support/rei/q_a/a86.htm l 乙35 特公昭60-49472号公報 乙36 特開昭61-242563号公報 乙37 特開平1-304863号公報 乙38 食品衛生法施行規則及び食品、添加物等の規格基準の一部改 正について(厚生労働省:平成5年3月17日) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta5649&dataT ype=1 乙39 特開平6-209747号公報 乙40 特許第2643752号公報 乙41 国立科学博物館、産業技術資料データベース「スービッド製 法」、2020年4月28日印刷 http://sts.kahaku.go.jp/sts/detail.php?no=101610251018 乙42 伊藤ハムウエブページ、伊藤ハムの沿革、2020年7月1 日印刷、 https://www.itoham.co.jp/corporate/company/history.htm l 乙43 知的財産高等裁判所 平成23年10月24日判決(平成2 3年(行ケ)第10021号) 乙44 知的財産高等裁判所 平成29年3月21日判決(平成28 年(行ケ)第10186号) 乙45 平成30年(ワ)第36232号特許権侵害差止等請求事件 の令和元年10月4日付け「被告第11準備書面」 乙46 平成30年(ワ)第36232号特許権侵害差止等請求事件 の令和元年11月11日付け「原告ら第9準備書面」 乙47 平成30年(ワ)第36232号特許権侵害差止等請求事件 の令和元年11月19日付け「原告ら第11準備書面」 乙48 特開昭54-41355号公報 乙49 実験成績証明書、令和2年8月13日作成、株式会社シンコ ウフーズ奥村哲雄作成 乙50 日本食糧新聞 朝刊、「"全体最適"を強化 スターゼンG・ 総合展示会 特許技術ローストビーフを前面に」、株式会社 日本食糧新聞社、2014年1月27日(必要箇所を抜粋) 乙51 食肉通信、「スターゼン」、株式会社食肉通信社、2014 年2月4日(必要箇所を抜粋) 乙51の1 食肉通信、「スターゼン」、株式会社食肉通信社、2014 年2月4日第4面 乙52 ローストビーフは“薄切り”から“厚切り”へ。ご家庭で手 軽に本格的なメインディッシュを!「トップバリュ セレク ト 五島塩ローストビーフ/ローストポーク」新発売 ステ ーキにぴったり!こだわりの「トップバリュ セレクト マ ッシュポテト」も新発売!、イオン株式会社、2015年6 月2日 乙53 平成30年(ワ)第36232号特許権侵害差止等請求事件 の令和2年3月13日付け「被告第17準備書面」 乙54 製品に対する要望書、7P炭火焼ローストビーフスライス、 滝沢ハム株式会社、2017年3月2日 乙55 要望したサンプルの導入決定報告、7PUSモモRB 4T P 70G、滝沢ハム株式会社、平成29年5月22日 乙56 要望したサンプルの導入決定報告、7PUSモモRB 4T P 94G、滝沢ハム株式会社、平成29年5月22日 乙57 要望したサンプルの導入決定報告、IYアメリカスミビRB スライス 74G、滝沢ハム株式会社、平成30年6月20 日 乙58 要望したサンプルの導入決定報告、IYアメリカスミビRB SP 112G、滝沢ハム株式会社、平成30年6月20日 乙59 要望したサンプルの導入決定報告、YコクサンモモRB 4 TP 77g×4、滝沢ハム株式会社、平成30年7月21 日 乙60 平成30年(ワ)第36232号特許権侵害差止等請求事件 の令和元年12月20日付け「被告第15準備書面」 乙61 平成30年(ワ)第36232号特許権侵害差止等請求事件 の令和2年8月31日付け「被告第19準備書面」 乙62 平成30年(ワ)第36232号特許権侵害差止等請求事件 の令和2年7月9日付け「原告ら第13準備書面」及び同日 付けで提出した証拠説明書 乙63 平成30年(ワ)第36232号特許権侵害差止等請求事件 の令和2年10月9日付け「原告ら第15準備書面」及び同 日付けで提出した証拠説明書 乙64 令和2年(ワ)第14630号損害賠償請求事件の令和2年 8月31日付け「被告準備書面(1)」 乙65 令和2年(ワ)第14630号損害賠償請求事件の令和2年 10月9日付け「原告第2準備書面」及び同日付で提出した 証拠説明書 乙66 特開平6-217736号公報 乙67 ヤマト運輸ウェブページ、クール宅急便、2020年11月 24日印刷 https://www.kuronekoyamato.co.jp/ytc/customer/send/ser vices/cool/ 乙68 佐川急便株式会社ウェブページ、飛脚クール便、2020年 11月24日印刷 https://www.sagawa-exp.co.jp/service/h-cool/ 乙69 疑問スッキリ.com ウェブページ、必ず役に立つ!「冷凍」 と「冷蔵」と「チルド」の違い、2020年12月4日印刷 https://gimon-sukkiri.jp/frozen-refrigerati-chilled/ 乙70 日本郵政ウェブページ、2020年11月24日印刷 https://www.japanpost.jp/corporate/milestone/history/i ndex08.html 乙71 西濃運輸ウェブページ、カンガルーチルド便、2020年1 1月24日印刷 https://www.seino.co.jp/seino/service/domestic/chilled / 乙72 特開2001-29006号公報 乙73 木村進ら編著、「食品の変色の化学」、株式会社光琳、平成 7年10月30日、第392~395頁 乙74 特開昭59-149468号公報 乙74の1 特願平9-138689の平成17年4月27日付け拒絶理 由通知書 乙74の2 特開昭59-169468号公報 なお、乙22~乙28は、裁判に関する情報提供の資料である(口頭審理調書参照)。 第6 各証拠に記載された事項 1 各甲号証の記載事項 (1)甲1には、以下の記載がある。 (甲1-1)「【請求項1】スライスされたローストビーフを、脱酸素剤と共に、酸素ガスバリア性材料からなる容器内に配置し、前記容器内を窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス雰囲気に置換した後、該容器を密封して、該容器内の残存酸素濃度が0.01%以下に維持されるようにすることを特徴とする、スライスされたローストビーフの包装方法。」 (甲1-2)「【0003】スライスされたローストビーフを流通させる上での主な問題点は、スライスすることによって外気との接触面積が大きくなるため、ローストビーフの酸化が激しくなるという点である。その結果、消費者の手に渡るまで、色、臭い、味などを維持することが困難になる。 【0004】酸化を防止するために、スライス面が外気に触れないようにスライスしたローストビーフをブロック状態に維持したまま真空包装する方法などが知られている(特開昭59-149468)。」 (甲1-3)「【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記スライスされたローストビーフをブロック状態を維持したまま真空包装する方法においては、以下のような問題があった。 【0006】まず第一に、上記方法においては、切断面が外気に触れない状態で切断しなくてはならないため、特別の装置を用いなくてはならず、多大なコストがかかる。 【0007】第二に、上記方法においては、ブロック状態を維持しているため、スライスされたローストビーフのスライス面が外部から見えず、ローストビーフの品質、特に色調を消費者にアピールできない。 【0008】第三に、上記真空包装においては、ローストビーフからのドリップが激しくなり、商品価値が著しく低下する。 【0009】本発明は、上記問題点を解決し、製造業者によってスライスされたローストビーフを、消費者の手に渡るまで、具体的には流通温度が0~5℃において1週間程度、簡易かつ効率よく保存可能とすると共に、スライス面が外部から見えるようにすることによって、消費者への有効な視覚的アピールをすることが可能な、スライスされたローストビーフの包装方法及び包装体を提供することを目的とする。」 (甲1-4)「【0021】次に、本発明の実施形態に係るスライスされたローストビーフの包装方法について説明する。本実施形態に係るスライスされたローストビーフの包装方法の第1の工程では、トレイ11上にスライスされたローストビーフ2を並べる。第2の工程では、第1の工程にてスライスされたローストビーフ2を並べられたトレイ11と、脱酸素剤13とを袋状の容器12に挿入する。第3の工程では、ガス置換兼用真空包装機を用いて、容器12内を窒素ガスで置換し、容器12を密封して完了する。 【0022】本実施形態において、容器12内の残存酸素濃度を必要レベル、つまり0.01%以下まで確実に下げるためには、脱酸素剤13の封入のみでは十分ではなく、脱酸素剤13の封入と窒素ガス置換との併用が必要である。容器12内の残存酸素濃度を低減するために、脱酸素剤13と窒素ガス置換とを併用するため、窒素ガス置換直後の容器12内の残存酸素濃度は0.08%以下であれば良く、残りは、脱酸素剤13によって残存酸素濃度が必要レベルまで低減される。」 (甲1-5)「【0026】さらに、容器12内を置換するガスは窒素ガスに限らず、二酸化炭素ガスでも良いし、また窒素ガスと二酸化炭素ガスとの混合ガスでも良い。窒素ガスと二酸化炭素ガスとの混合ガスの場合は、混合比を任意に設定できる。容器12内を置換するガスとして窒素ガスを用いた場合は、スライスされたローストビーフ2の色、味が特に高水準な状態で保存できる傾向にある。一方、窒素ガスと二酸化炭素ガスとの混合ガス、または二酸化炭素ガスを用いた場合は、容器12内の静菌効果を向上させることができる。」 (甲1-6)「【0030】上記実施例及び比較例における包装体1は、図1に示すものを用いた。トレイ11はポリプロピレンで形成されており、内容積420cm3の大きさのものを用いている。袋状の容器12は、温度が30℃かつ相対湿度が80%の条件下において酸素ガス透過度が60ml/m2・day・atmの酸素ガスバリア性材料である、エチレンビニルアルコール共重合体/ポリオレフィン/ポリオレフィンの積層フィルムから構成されているものを選択した。脱酸素剤13としては、三菱ガス化学(株)製、商品名:エージレスSS-200を使用し、酸素吸収能力が容器容積の0.5倍となるようにした。」 (甲1-7)「【0032】上記それぞれの状態で、外気温5℃の暗所に7日間保存後、スライスされたローストビーフ2の色、臭い、味、ドリップ発生量及びスライスされたローストビーフ2を含む包装体1の外観の評価と総合評価を以下のように実施した。評価結果を表1に示す。 【0033】(色の評価)包装体を開封して30分後に、日本電色工業(株)製SE2000型分光式測色色差計を用いて、スライスされた2枚のローストビーフ2の中心部のそれぞれ3カ所、計6カ所のa値を測定し、平均値を求めた。a値とは、色差表示方法(JISZ8730)の「ハンターの色差式による色差」の項に示されているように、JISZ8722に規定される色の三刺激値から計算された値であり、この数値が大きいほどスライスされたローストビーフ2の赤みが強く、変色度合いが小さいことを意味する。なお、評価としては、上記のように測定したa値の平均値に基づき、下記の評価基準: 5:7.0<a値の平均値 4:6.0<a値の平均値≦7.0 3:5.0<a値の平均値≦6.0 2:3.0<a値の平均値≦5.0 1:a値の平均値≦3.0 に従って5段階に評価した。」 (甲1-8)「【表1】 [図:0001403918000001.jpg] 」 (甲1-9)「【図1】 [図:0001403918000002.jpg] 」 (2)甲2には、以下の記載がある。 (甲2-1)「【請求項1】 冷気を用いてミオグロビンを含む食品を貯蔵する方法において、 箱体の内部に収容した前記食品に対して冷気を供給し前記食品を冷却するとともに前記食品の酸化を維持する期間を設け、その後、前記箱体内の酸素を減少させることを特徴とする食品の貯蔵方法。」 (甲2-2)「【0004】 肉や赤身の魚などのミオグロビンを含む赤色の食品では、一般的に、鮮やかな赤色であるほど新鮮であるとされ人々に好まれるが、上記のような冷蔵庫でミオグロビンを含む食品を保存する場合、貯蔵空間に投入された食品が冷却される前に貯蔵空間の酸素を減少させると、食品自身の鮮度は維持できるものの、食品が青みを帯びた赤色(紫赤色)に変色することを本発明者は見出した。 【0005】 そこで、本発明は、ミオグロビンを含む赤色の食品の鮮やかな赤色を維持しつつ、貯蔵空間の酸素を減少させ食品の鮮度を維持することができる食品の貯蔵方法を提供することを目的とする。」 (甲2-3)「【0038】 以上のように、本実施形態の食品の貯蔵方法では、収納容器60内に食品Mが投入されてから所定条件を満たすまで、収納容器60内の食品Mを冷却するとともに、酸素減少手段72を停止させ収納容器60内に貯蔵された食品Mの酸化を維持する期間を設けている。 【0039】 これにより、食品Mに含まれるミオグロビンのうち、青みを帯びた赤色(紫赤色)を呈する還元状態にあるミオグロビン(MbFe(II))が酸化され鮮やかな赤色を呈するオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)に変化し、食品Mの色彩がより鮮やかな赤色となり、食品Mの赤みが向上する。また、食品Mに含まれるミオグロビンのうち、収納容器60に投入される前から既に酸化状態にあるオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)は、還元状態のミオグロビン(MbFe(II))との間で可逆的に酸化還元反応が起こりえるが、上記のように酸素減少手段72を停止させ収納容器60内の酸素分圧がほぼ一定に維持されているため、オキシミオグロビン(MbFe(II)O2)の還元反応を抑えて収納容器60内に貯蔵された食品Mの鮮やかな赤色を維持することができる。 【数1】 [図:0001403918000003.jpg] 」 (甲2-4)「【実施例】 【0048】 上述した「赤みモード」によって冷凍貯蔵された牛肉の色度を測定し、貯蔵性能評価試験を行った。 【0049】 試験では、実施例として、第1冷凍室44に配設した収納容器60内に牛肉を貯蔵してからT1(=1時間)経過するまで、つまり、時刻0から時刻T1まで酸素減少手段72を停止(OFF)させ、その後、時刻T1から時刻T2(=1週間)まで酸素減少手段72を動作(ON)させて、収納容器60内の酸素濃度を低下させた雰囲気下で牛肉を冷凍貯蔵した。 【0050】 また、比較例1として、収納容器60内に食品Mを貯蔵した直後からT2(=1週間)経過するまで、つまり、時刻0から時刻T2まで酸素減少手段72を停止(OFF)させて、収納容器60内の酸素濃度を低下させずに牛肉を冷凍貯蔵した。 【0051】 比較例2として、収納容器60内に牛肉を貯蔵した直後からT2(=1週間)経過するまで、つまり、時刻0から時刻T2まで酸素減少手段72を動作(ON)させて、収納容器60内の酸素濃度を低下させた雰囲気下で牛肉を冷凍貯蔵した。 【0052】 比較例3として、収納容器60内に牛肉を貯蔵してからT1=1時間)経過するまでつまり、時刻0から時刻T1まで酸素減少手段72を動作(ON)し、その後、時刻T1から時刻T2(=1週間)まで酸素減少手段72を停止(OFF)させて、収納容器60内の酸素濃度を低下させずに雰囲気下で牛肉を冷凍貯蔵した。 【0053】 なお、実施例、比較例1~3では、いずれも、第1冷凍室44内の温度を-20度に設定した。 【0054】 上記のような実施例及び比較例1~3の各方法により貯蔵された牛肉について、収納容器60内に貯蔵してから1時間(T1)経過したもの、及び収納容器60内に貯蔵してから1週間(T2)経過したもののそれぞれについて、分光測色方法(JISZ8722)により色を測定した。結果を下記表1に示す。 【表1】 [図:0001403918000004.jpg] 」 (3)甲3には、以下の記載がある。 (甲3-1)「2.特許請求の範囲 生肉を酸素を吸収すると同時に炭酸ガスを発生する脱酸素剤とともに本質的に非通気性の容器に密封し、冷蔵あるいは氷温に保存することを特徴とする生肉の保存方法。 3.発明の詳細な説明 本発明は生肉の保存方法に関するものである。特に生肉の鮮度の指標となる赤味の保持効果を高めた発明に関するものである。 更に詳しくは、脱酸素剤効果によつて生肉の変質を防止するとともに従来、脱酸素剤による保存方法の欠点であつた、無酸素状態に置くことでひき起こされていた生肉が赤紫色あるいは赤黒く変色することを防止し、無酸素状態下においてもあざやかな赤味を保持する生肉の保存方法に関する発明である。」(第1頁左欄第4行~最終行) (甲3-2)「本発明者等は肉類を脱酸素剤と共に密封し、肉類の退色を防止する方法について研究を行なつた結果、炭酸ガスを発生させながら、容器中の酸素濃度を低下させることによつて、密封した場合でも肉の赤味を保持出来ることを発見して本発明を完成するに至った。 本発明において、肉類は特に限定されるものではなく、例えばとり、豚、牛肉等の畜肉、またはマグロ、カツオなどの魚肉等の食肉を意味するものである。 従来の脱酸素剤による生肉の保存方法は特開昭51-104061、特公昭54-34822、特開昭58-158129、特開昭58-183033、特開昭54-41355、などに記載されているが、いずれも脱酸素効果によつて、生肉の赤味成分であるミオグロビンを還元型に保持し、開封して空気中の酸素に曝すことで還元型ミオグロビンの赤紫色から酸素型ミオグロビンの鮮紅色に発色させる方法である。 炭酸ガスを発生しない型の脱酸素剤を使用した場合あるいはN2ガス、CO2ガス置換によつて容器内の酸素濃度が数%~10数%程度に達すると生肉中のミオグロビンはメト化して急速に赤味が失われて褐変する。 そして脱酸素した後、生肉中のメトミオグロビンはメトミオグロビン還元酵素の働きで還元され、還元型ミオグロビンに変化する。還元型ミオグロビンに変化した生肉はメトミオグロビンの褐色から還元型ミオグロビンの色調である赤紫色へと変色し、脱酸素包装中において、赤紫色の色調を保持することになる。 しかし、本発明の特徴である炭酸ガス発生をともなう脱酸素剤を使用した場合、従来と全く異なる色調の変化が生じることが見い出された。 すなわち、脱酸素剤によつて酸素が吸収され、容器内の酸素濃度が低下しても、同時に炭酸ガス濃度が高まつてゆく中では生肉の褐変現象が生じにくく、脱酸素後においても酸素型ミオグロビンの色調であるあざやかに赤い色調に近い赤味を保持することが出来ることである。 この生肉の赤味は脱酸素後においてもほとんど変化せず、長期保存中においても、還元型ミオグロビンの赤紫色に変化することがなく赤味の強い色調を保持した。 また容器を開封し、空気中の酸素に曝しても通常の脱酸素剤の時と同様、生肉は酸素型ミオグロビンの鮮紅色を保持し、炭酸ガス発生型と通常型脱酸素剤との差はなかつた。」(第2頁左上欄第7行~左下欄第14行) (甲3-3)「実施例 1 生の牛ひき肉100gをプラスチツクトレイに入れ、エージレスG-200(三菱瓦斯化学製CO2発生型脱酸素剤)と共に非通気性のKON/PEの包材で密封包装し、5℃で冷蔵保存した。スタートの包装内のO2量は150ccであつた。 比較例 1 エージレスG-200のかわりにエージレスS-200(三菱瓦斯化学製CO2を発生しない脱酸素剤)を用いた以外は実施例1と同様にして実施した。 比較例 2 脱酸素剤を使用しない以外は実施例1と同様にして実施した。それぞれの結果を表-1、表-2に示した。 [図:0001403918000005.jpg] [図:0001403918000006.jpg] 表-1より本発明方法の実施例1が色、風味ともに良好に保存出来ることがわかる。CO2を発生しない脱酸素剤区の比較例1も風味の保持は出来るが色の保持が出来ないことがわかる。又、包装内のガス分析結果を見ると比較例2はO2がどんどん低下し7日で0.1%になつているが、これは肉が腐敗しO2を消費したためである。」(第3頁左下欄第5行~第4頁右上欄第8行) (4)甲4には、以下の記載がある。 「【0002】 牛肉において肉の色が小売段階でいかに重要であるかを調べた報告がある。それによると、日本の消費者の約6割が牛肉の購入に際して肉の色を最も重視すると答えている。 牛肉の色を決定する因子はいくつかあるが、ほとんどミオグロビンによって決定されると考えてよい。ミオグロビンは、筋肉内で酸素を貯蔵する役割をもつ色素タンパクである。枝肉の新鮮な切り口や肉塊の中は暗赤色の還元型ミオグロビンであり、この還元型ミオグロビンは、空気中の酸素と容易に結びついて、15~30分ほどで鮮紅色のオキシミオグロビンになる。 この色が店頭で見られる、消費者に最も好まれる肉の色であるが、オキシミオグロビンは自動酸化によって褐色のメトミオグロビンに変わる。ミオグロビンのうち30~40%以上がメトミオグロビンに酸化されると、肉の変色が目に見えて分かり、消費者の購買意欲がなくなると言われている。」 (5)甲5には、以下の記載がある。 (甲5-1)「【請求項1】 食肉と、2価又は3価の金属を含有する金属塩と、アスコルビン酸又はその塩とを含有し、pHを6.2~8に調整した食肉組成物を調製する食肉調製工程を備えることを特徴とする発色性に優れた食肉製品の製造方法。」 (甲5-2)「【請求項9】 ハム類、ベーコン類、ソーセージ類、ローストビーフ、ハンバーグ、又は焼豚のいずれかの形態である請求項8に記載の食肉製品。」 (甲5-3)「【0003】 食肉本来の鮮やかな赤色は、食肉に含まれるミオグロビンのヘム鉄の6位に酸素が結合したときの、2価の状態のヘム鉄によるものである。このような鮮やかな赤色の食肉を空気中に放置すると、褐色を示すようになる。これは、ミオグロビンの2価のヘム鉄が、6位に結合した酸素が水分子に置き換わることにより生成する、3価の状態のヘム鉄によると考えられている。」 (6)甲6には、以下の記載がある。 (甲6-1)「【請求項1】 赤色色素蛋白質を含む食肉又は魚肉、あるいはそれらの加工品に、ラクトバチルス コリニフォーミス(Lactobacillus coryniformis)に属する乳酸菌を添加することを特徴とする食品の製造方法。」 (甲6-2)「【0002】 牛肉、豚肉、羊肉、山羊肉、馬肉等の食肉や鯨、マグロ、カツオ等の魚肉といった、いわゆる赤身には、赤色色素蛋白質であるミオグロビンが多く含まれている。ミログロビンには、鮮赤色の酸素(オキシ)型、紫赤色の還元型、茶褐色のメト型の誘導体が存在しており、上記食肉や魚肉、これらの加工品であるハムやソーセージ等の食肉・魚肉加工品の色調に重要な役割を果している。 【0003】 例えば、新鮮な生肉が鮮やかな赤色を呈しているのは、ミオグロビンが酸素と結合して酸素型となっているからであるが、空気中に曝されたりすることで更に酸化されてメト型となるため、褐色化や退色等の色調変化が経時的に進行し、商品価値を低下させる要因になっている。」 (甲6-3)「【0009】 したがって、本発明の目的は、発色剤や肉色保持助剤等の添加物を使用することなく、又はその使用を減らしても赤色色素蛋白質を含む食肉又は魚肉、あるいはそれらの加工品に対する色調改善効果が得られ、且つ、微生物と食肉等との接触を空気に曝された含気雰囲気下でおこなっても色調改善の効が良好に発揮され、その効果の持続性にも優れた、食品の製造方法を提供することにある。また、該製造方法によって得られた食品を提供することにある。」 (甲6-4)「【0017】 本発明において赤色色素蛋白質とは、ミオグロビン及び/又はヘモグロビンを意味し、本発明で用いられる食肉や魚肉は、上記赤色色素蛋白質を含むものであれば特に限定されないが、具体的には、牛肉、豚肉、馬肉、羊肉、山羊肉、鶏肉、兎肉、猪肉、鹿肉等の食肉や、鯨肉、マグロ、カツオ、ハマチ等の魚肉が例示できる。中でも、牛肉、豚肉、馬肉、羊肉、山羊肉、鯨肉、マグロ、ハマチ等が好ましく例示できる。 【0018】 また、上記食肉や魚肉の加工品としては、例えば、ハム類(骨付きハム、ボンレスハム、ロースハム、ショルダーハム、ベリーハム、ラックスハム、プレスハム、混合プレスハム、チョップドハム等)、ソーセージ類(ソーセージ、クックドソーセージ、加熱加圧ソーセージ、セミドライソーセージ、ドライソーセージ、無塩漬ソーセージ、ボロニアソーセージ、フランクフルトソーセージ、ウィンナーソーセージ、リオナソーセージ、レバーソーセージ、混合ソーセージ、加圧加熱混合ソーセージ、フレッシュソーセージ等)、ベーコン類(ベーコン、ロースベーコン、ショルダーベーコン、ミドルベーコン、サイドベーコン、無塩漬ベーコン)、ローストビーフ等の食肉加工品や、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、鯨ベーコン、カツオ、マグロ等の赤身魚肉のたたきなどの魚肉加工品が例示できる。」 (7)甲7には、以下の記載がある。 (甲7-1)「本発明方法においては特定の時間、即ち肉類を脱酸素剤と共に密封後、24時間以内に容器内の酸素の濃度を5%以下好ましくは12時間以内に0.1%以下にすることが必要である。 なお、場合によつては窒素ガス置換法と脱酸素剤の使用とを併用することも可能である。」(第2頁左下欄第5行~第10行) (甲7-2)「実施例1. 牛ひき肉の50gをプラスチックストレイに入れ、エージレスS100(三菱瓦斯化学製脱酸素剤の商品名)および酸素検知剤とともに非通気性のKON/PE(15μ/70μ)15cm×20cmの包材で密封包装した。その結果、密封後10時間で容器内の酸素の濃度が0.1%以下に減少した。 包装品を5℃に冷蔵し、経時毎の系内の酸素濃度、炭酸ガス濃度の測定、メトミオグロビンの分析および肉の赤色値をL.a.bのうちa値で分析測定を行なつた。 実施結果を第1表に示した。 比較例1. エージレスZ-100(三菱瓦斯化学製脱酸素剤の商品名)を用いた以外は実施例1と同じ様にして比較した。酸素濃度は25時間後に0.1%以下になつた。 結果を第1表に示した。 比較例2. 牛ひき肉、50gをプラスチックトレイに入れ、非通気性のKON/PE(15μ/70μ)15cm×20cmの包材で包装し、脱酸素剤、酸素検知剤を使用しない以外は実施例と同様にして行なつた。 結果を第1表に示した。 第1表 [図:0001403918000007.jpg] 」(第2頁右下欄下から第7行~第3頁右上欄の第1表) (8)甲8には、以下の記載がある。 (甲8-1)「【請求項1】 水蒸気透過性が3g/m2・day未満、酸素透過性が6ml/m2・day・atm未満、全光線透過率が80%以上であるフィルムで包装し、かつ窒素を充填し、および/または脱酸素剤を同封したことを特徴とする包装食品。」 (甲8-2)「【0001】 本発明は、包装食品および食品の退色防止方法に関し、より詳細には、ガスバリア性に優れる酸化アルミニウム蒸着フィルムまたは珪素化合物蒸着フィルムで食品を包装した包装食品および前記ガスバリア性フィルムで食品を包装する、食品の退色防止方法に関する。」 (甲8-3)「【0038】 脱酸素剤としては、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、第一鉄塩、ヒドロキノン、カテコール、没食子酸、レゾルシン、ピロガロール、ロンガリット、アルコルビン酸(塩)、イソアルコルビン酸(塩)、ソルボース、グルコース、リグニン、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどを含有する脱酸素剤、鉄粉などの金属粉を含有する脱酸素剤、炭酸ガス発生型脱酸素剤などのいずれであってもよい。更にガス置換と脱酸素剤との併用、真空包装と脱酸素剤との併用など、各種ガス調整方法と組合せてもよい。」 (9)甲9には、以下の記載がある。 (甲9-1)「本発明において、脱酸素剤を使用して保存容器内の雰囲気の酸素濃度を100ppm以下に保持する方法としては、 (1)食品類を脱酸素剤または脱酸素剤と炭酸ガス吸収剤、あるいは脱酸素剤とアルコール発生剤と共にガスバリヤー性が高い容器(a)内に密封し、容器(a)を脱酸素剤とともにガスバリヤー性が高い容器(b)内に密封する方法。 (2)炭酸ガスまたは不活性ガスで置換したガスバリヤー性の高い容器(a)に脱酸素剤とともに食品を密封し、この容器(a)を脱酸素剤とともにガスバリヤー性が高い容器(b)内に密封する方法。 (3)食品類を脱酸素剤または脱酸素剤と炭酸ガス吸収剤、あるいは脱酸素剤とアルコール発生剤とともに酸素透気度が1cc/m2日(20℃)以下、好ましくは0cc/m2日(20℃)の超高ガスバリヤー性の容器に密封する方法。 (4)食品類を、公称使用量の5倍以上の大過剰の脱酸素剤とともにガスバリヤー性が高い容器に密封する方法、例えば食品を包装した際の包装容器内の空気量が500ccの場合に、三菱瓦斯化学株式会社製の脱酸素剤エージレスS-100(公称使用量100)を使用する時は5ケ以上使用する。 等の方法が採られる。」(第2頁右上欄第10行~左下欄第15行) (甲9-2)「実施例1. 練りあん100gを脱酸素剤(エージレスS-100.三菱瓦斯化学株式会社製)とともにKOP/PE袋(1)に密封した。更にこの袋を脱酸素剤とともに、KOP/PE袋(2)に密封し、25℃、50~60%RHの室内に放置し、経日毎に袋(1)内のガス組成(CO2%、O2%)と、外観、風味を調べた。」(第3頁左下欄第6行~第13行) (甲9-3)「実施例4. 練りあん100gと脱酸素剤(エージレスS-50)をKOP/PE袋(1)にいれ、窒素ガスで置換した後密封した。この袋を更に脱酸素剤(エージレスS-100)とともに、KOP/PE袋(2)に密封し、実施例1.と同一条件に保存した。」(第3頁右下欄下から第2行~第4頁左上欄第5行) (10)甲10には、以下の記載がある。 (甲10-1)「【0003】 内容物の腐敗を防止する目的で、包装体内を無酸素状態に保つ方法として、包装体内を真空状態で包装する真空包装したり、包装体内を所望のガスにて密封するガス置換包装する方法が挙げられる。」 (甲10-2)「【0005】 このように、包装体内を真空包装する方法や包装体内を所望のガスにて密封するガス置換包装する方法では、少なくとも内容物から溶出してくる酸素を包装時に完全に除去することは困難であり、時間経過によって少なからず、酸素が存在してしまうのである。」 (甲10-3)「【0006】 従来技術である酸素吸収剤として大きく分けて2種類ある。1つは鉄等の金属を用いた金属酸化を利用した酸素吸収剤であり、もう1つは有機化合物である低分子フェノール等の低分子化合物を用いた酸素吸収剤である。鉄等の金属を用いた金属酸化を利用した酸素吸収剤とは、鉄等の金属が酸素と結合して酸化鉄となる時に酸化鉄を合成する際に包装体内の酸素を使用することによって除去する酸素吸収剤であり、安価、かつ、有効な酸素吸収能力を有するが、食品工業において、近年、内容物の異物混入の観点より、多くの場合、食品包装後に金属探知機によって、食品作成機械および包装機械の金属片等を異物として食品への混入試験を行っており、鉄等の金属を使用した酸素吸収剤は使用できなくなっている他、該方法では酸素吸収時に水分を必要とするため、低湿度の環境における使用が困難である。そのため、鉄等の金属を使用しない酸素吸収剤の検討が盛んに行われ、検討されている。」 (甲10-4)「【0037】 本発明の酸素吸収剤はあらかじめ酸素が少ない環境を包装体内で作成したから、残存した酸素を本発明の酸素吸収剤にて除去する方が効率的で好ましく、その酸素が少ない環境を作成する方法として真空包装およびガス置換法が挙げられる。」 (11)甲11には、以下の記載がある。 「【0002】 【従来の技術】食品、医薬品等の保存技術の一つとして脱酸素剤による技術があり、カビ防止、酸化防止、変色防止等に使用されている。脱酸素剤は通常、これを通気性包装材料で包装した脱酸素剤包装体として使用され、食品、医薬品等の被保存物とともに酸素を透過しにくい袋、容器等、いわゆるガスバリア性材料で包装することにより機能を発揮する。脱酸素剤としては鉄を主剤とするものの他、アスコルビン酸化合物、多価フェノール化合物、不飽和炭化水素化合物等の有機物を主剤とするもの等が知られており、国内外で広く実用に供されている。 【0003】有機物を主剤とする脱酸素剤が使用される背景の一つに、包装食品に対し、中に針金や機械部品等の金属異物が混入していないことを確認するために金属探知器を使用することが一般化している事があげられる。鉄を主剤とする脱酸素剤では金属探知器に検知されてしまうが、有機物を主剤とした脱酸素剤では金属探知器に検知されないものを作ることが可能だからである。 【0004】また別の背景には、有機物を主剤とする脱酸素剤では炭酸ガスを発生する機能を付与できる場合があることが挙げられる。有機物を主剤とする酸素吸収剤は有機物の酸化分解により酸素を吸収するとともに、反応に伴って炭酸ガスを生成することができるため、酸素吸収食品包装内に含まれる酸素を吸収することによる包装容器内部の圧力減少を防止できるからである。また炭酸ガスには条件により微生物繁殖抑制効果があることが知られており、この目的で使用される場合もある。また別の目的としては一部の微生物を増殖させるため、又は、特定の医薬の効力を保持するために炭酸ガス発生機能を有する脱酸素剤が用いられる。」 (12)甲12には、以下の記載がある。 「脱酸素剤(だつさんそざい)は、密閉容器の中を脱酸素状態にする薬剤である。鉄の酸化を利用して酸素を吸収するタイプが主流であるが、糖やレダクトンなどの酸化反応を利用した有機系のものも一部で使用されている。酸化を防ぐことにより、カビ、害虫、油脂の変質などを防止することができ、食品包装で広く利用されている。化学反応により若干発熱をする。酸素を取り除く速度は鉄系の方が早く、有機系の方が遅い。また、有機系は二酸化炭素を発生する物がある。」 (13)甲13には、以下の記載がある。 「食品の種類・包装形態にあわせて選べるエージレスR(Rは、○にRを示す。)(脱酸素剤) エージレスのご使用にあたっては、対象商品にもっとも適したタイプを選定する必要があります。商品の種類・用途に合わせ、さまざまな種類のエージレスがラインナップされています。 [図:0001403918000008.jpg] 」 (14)甲14の1には、以下の記載がある。 「(A) ・理由:1 ・請求項:1-3 ・引用文献等:1-3、7-9 ・備考: 文献7-9には、スライスされ、ガスバリア性を有する包材に真空パック又は炭酸ガス包装されたローストビーフが記載されている(文献7のABSTRACT, 第2350頁右欄CPC treatment and sample strageの項、文献8のABSTRACT, 第189頁Packing Methodsの項、文献9のSummary, 第182頁Packing and strageの項)。 これらの文献に記載のローストビーフの全ミオグロビン量に対するオキシミオグロビン、メトミオグロビン及び還元型ミオグロビンの割合は明らかではない。 しかしながら、文献1、2記載のとおり、スライスされたローストビーフの退色による商品価値の低下の防止は知られた課題であるし、ローストビーフの退色はメトミオグロビンの生成によるものであること(文献2)、牛肉等の赤身肉の退色が、還元型ミオグロビンが酸素と結合して生成されたオキシミオグロビンのヘム鉄がさらに酸化されてメトミオグロビンが生成すること(メト化)によるものであること(文献3の段落0002)、は周知のことである。 してみると、文献7-9に記載されたような、スライスされ、ガスバリア性を有する包材に真空パック又は炭酸ガス包装されたローストビーフの製造にあたり、商品価値の低下を防止するために、メト化が起こる前、つまり、還元型ミオグロビンがオキシミオグロビンになり、さらに酸化してメトミオグロビンになる前にパッキングを行うことは当業者が容易に想到し得たことである。そして、文献2には、包装なし、かつ、白色蛍光灯スタンド下という過酷な条件下に2日静置しても、メトミオグロビンの生成率は38%であったことが記載されているから(3.1の項、Fig.1)、メトミオグロビンが50%未満のうちにパッキングを行うことに困難性があったものとは認められない。また、還元型ミオグロビンは暗赤色を、オキシミオグロビンは鮮赤色を呈することも周知であるから(文献3の段落0002)、パッキングの際、オキシミオグロビンが適度に生成した状態でパッキングを行うことは当業者が容易になし得たことである。 請求項1-3に係る発明の特定加熱食肉製品は、そのようにして容易に製造し得たものと認められる。 そして、明細書の記載をみても、請求項1に特定される各ミオグロビンの割合(%)に臨界的な意義があるものとは認められないから、請求項1-3に係る発明は進歩性を有しない。」 (15)甲14の2には、以下の記載がある。 「以下、補正後の特許請求の範囲に基づいて意見を申し述べます。先ず、理由1(A)については、補正前の請求項1~3を削除したため、解消しております。 次に、理由1(B)については、上述した補正により解消されたものと確信します。すなわち、本願発明は、酸素化する工程(還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンとする工程)の後に包材に密封する工程を行うといった順序を明確に特定したため、引用文献3に記載されるようなガスバリア性の容器に密封して脱酸素を行った後で、酸素化を行うといった製造方法を包含しないものとなりました。なお、上述した補正は、拒絶理由通知書において審査官殿が提案された内容に沿った補正です。」 (16)甲15には、食肉の反射率スペクトルによって還元型Mb、酸素型Mb及びメト型Mbの割合を算出し,同時にL*、a*、b*値による色調品質を評価する技術が記載されている。 甲15の1には、甲15が平成22年2月1日に公開されたことが示されている。 (17)甲16には、牛肉及び豚肉に対しAないしH1の12種類の異なる処理を行なった後、処理ごとに、平均色、表面変色及び小売外観に関する評価と、反射率スペクトルによって、メトミオグロビン、デオキシミオグロビン及びオキシミオグロビンの量を測定する技術が記載されている。 (18)甲17には、以下の記載がある。 (甲17-1)「特許請求の範囲 1 食品を酸素透過性がゼロか又は小さい容器にいれて密閉すると共に、炭酸ガスを生成する有機系脱酸素剤と生成しない鉄系脱酸素剤を併用同封して、密閉容器内の気体の組成を酸素7%以下、炭酸ガス10~0.5%、チツソ99~82%にして保存し、しかも%は体積%であることを特徴とする食品の保存法。」 (甲17-2)「食品を酸素透過性がゼロか又は小さい容器にいれて密閉し、有機系の脱酸素剤と鉄系の脱酸素剤を併用して保存すると、密閉容器内で鉄系の脱酸素剤は酸素を減少させ、チツソの組成比を大にし、有機系の脱酸素剤は酸素を炭酸ガスに置換するため、両者を併用することにより、密閉容器内の気体の組成を任意に調節することが可能になつた。」(第1頁右欄下から第4行~第2頁左欄第4行) (甲17-3)「実施例 2 プラスチツクトレイにいれた、生うにを酸素透過性の極めて小さいプラスチツクフイルムで密閉し、エージレスG-301袋とエージレスFX-20 1袋を同封し、0℃で2ヶ月間冷却保存する。密閉容器内の気体組成は、チツソ約95%酸素約0.3%炭酸ガス約3%であつた。これを取り出したところ、全く新鮮であり、風味にもすぐれていた。」(第2頁右欄第17行~第25行) (19)甲18には、炭酸ガス置換と脱酸素材の併用と脱酸素材単独の使用とを任意に選択して採用できることが記載されている。(請求項1、請求項3、請求項4、実施例1及び実施例4参照) (20)甲19には、以下の記載がある。 「ローストビーフをスライスすれば,必然的にスライスされたローストビーフの断面は酸素含有気体である空気に触れ,還元型ミオグロビンは酸素と結合してオキシミオグロビンになる。したがって、被告方法においてローストビーフをスライスして空気に触れさせてさえいれば,逆に言えば被告方法において無酸素状態の場所でローストビーフをスライスするなど空気に触れさせない特別な方法を採用していない限りは,「酸素化する工程」が存在することになる。」 (21)甲20(「ローストビーフ」と生食用食肉(牛タタキ風、ローストビーフ)の違い! と題するパンフレット)には、以下の記載がある。 (甲20-1)「「ローストビーフ」は食品衛生法の中で「特定加熱食肉製品」に分類されており、下記のように、とても詳しく衛生基準が定められています。」(表題の下 第1行~第2行) (甲20-2)「もし、この基準に満たない場合、その食品は「生食用食肉」に該当することになります。」(下部の囲み中の記載、第1行) (22)甲21には、以下の記載がある。 (甲21-1)「ローストビーフ類は、市販の流通食品におきましては、特定加熱食肉製品の規格基準が適用されています。ただし、ホテル等で調理提供される飲食店営業では、調理品ということでこの規格基準は適用されません。・・・つまり、特定加熱といわれる温度と時間で管理をしていくという方法が市販で流通しているローストビーフに適応されている基準になります。実態を調べますと、調理品であってもほぼこの特定加熱食肉製品の製造基準が守られています。」(第5頁第6行~第5頁第15行) (甲21-2)「ローストビーフ類につきましては、必ずしも75℃、1分の加熱条件でない場合もございますので、十分な加熱条件を必要な加熱条件にと表現を変えさせていただき、食中毒起因菌を死滅させる条件を各施設で設定していただきたいと思います。」(第5頁第24行~第5頁第27行) (23)甲22には、以下の記載がある。 (甲22-1)「生食用食肉(牛肉)の規格基準設定に関するQ&A」(表題) (甲22-2)「Q3-1 ローストビーフは、本規格基準の対象になりますか。 (A) 1 一般に、特定加熱食肉製品に分類されるローストビーフは、製造過程において中心部分まで加熱殺菌されるものであり、本規格基準の対象ではありません。 2 なお、ローストビーフと称しているものであっても、中心部まで加熱していないものを生食用として販売する場合にあっては、本規格基準に適合する必要があります。」(第4頁Q3-1の欄) (24)甲23には、進歩性の判断に際し、一致点の認定において、両技術に共通する部分を抽象化して一致点と認定することは許される旨の記載がある。 (25)甲24及び甲25には、一致点が少なく、相違点が多いことは、本件発明の進歩性の判断に何ら影響のない事項にすぎない旨の記載がある。 (26)甲26には、数値限定発明について、数値限定に臨界的意義がなければ進歩性はないとされる旨の記載がある。 (27)甲27には、以下の記載がある。 (甲27-1)「【0002】 食品、医薬品、金属製品、精密部品などでは、酸素による品質の低下や劣化、変質、腐敗などを防止する目的で、酸素吸収剤(脱酸素剤)を一緒に封入して包装することが広く行われている。 酸素吸収剤としては、鉄粉を主体とする無機系の酸素吸収剤が従来から汎用されているが、鉄系酸素吸収剤は、包装体内の酸素を吸収するだけで、吸収した酸素量に見合うガスを発生しないため、包装体の気体量が減少するいわゆる“バキューム現象”を起こす。包装体内の製品(被包装物)が、圧縮によって変形したり、壊れ易いものである場合には、バキューム現象によって被包装物の変形、破損が生じ易くなる。 また、食品加工の分野などでは、食品包装物内への金属系異物の混入の有無を金属探知機で調査することが行われるようになってきているが、鉄系酸素吸収剤は、主体をなす鉄粉が金属探知機に反応して異物として検出されてしまうため、金属探知機を用いる包装分野には使用できないという欠点がある。」 (甲27-2)「【0007】 また、本発明の目的は、吸収した酸素量に見合う量の炭酸ガスを発生して、酸素吸収剤を封入した包装体内での “バキューム現象”を生じない有機系の酸素吸収剤およびその製造方法を提供することである。 そして、本発明の目的は、金属探知機を通したときに金属系異物として検知されることのない、金属を含まない有機系の酸素吸収剤およびその製造方法を提供することである。 また、本発明の目的は、酸素吸収剤全体での水の含有状態が均一で、酸素吸収能にバラツキのない有機系の酸素吸収剤およびその製造方法を提供することである。 さらに、本発明の目的は、酸素吸収剤を構成する原料成分の保存や管理が容易な有機系の酸素吸収剤およびその製造方法を提供することである。」 (28)甲28には、以下の記載がある。 (甲28-1)「(1)赤身肉の変色を防止するにあたり、該赤身肉を酸素吸収材とともに密閉容器内に置き、この密閉容器内で該酸素吸収材と酸素を反応させて容器内の空気中酸素を反応除去し、容器内を酸欠状態にして該赤身肉を所要時間保存し、次いそこの密閉容器内から該赤身肉を取り出し、湿気雰囲気中で酸素に接触させることを特徴とする赤身肉の変色防止方法。」(特許請求の範囲) (甲28-2)「赤身肉を酸欠雰囲気中に置くと、オキシミオグロビンは還元されてミオグロビンになる。」(第2頁左上欄第14行~第15行) (29)甲29には、以下の記載がある。 (甲29-1)「【請求項1】 筋、筋膜、余剰脂肪等を除去し整形して得た牛肉肉塊を調味料、香辛料により調味する工程と、 調味した肉塊を熟成する工程と、 調味した肉塊を、200~250℃にて10~15分間焼成し、表面全体に焼き色をつけ肉塊表面をかためる工程と、 焼成して得た肉塊を、温度60~70℃、湿度70~90%に設定した加熱室に搬入し、肉塊の中心温度が54.4℃に達するまで加熱処理する工程と、 肉塊の中心温度が54.4℃に達した後、加熱室の室温を55~60℃に下げ、肉塊の中心温度の上昇をおさえて121分間維持する工程を含んで成るローストビーフの製造方法。 【請求項2】 筋、筋膜、余剰脂肪等を除去し整形して得た牛肉肉塊を調味料、香辛料により調味する工程と、 調味した肉塊を熟成する工程と、 調味した肉塊を、温度60~70℃、湿度70~90%に設定した加熱室に搬入し、肉塊の中心温度が54.4℃に達するまで加熱処理する工程と、 肉塊の中心温度が54.4℃に達した後、加熱室の室温を55~60℃に下げ、肉塊の中心温度の上昇をおさえて121分間維持する工程と、 加熱処理した肉塊を、200~250℃にて10~15分間焼成し、表面全体に焼き色をつけ肉塊表面をかためる工程を含んで成るローストビーフの製造方法。 【請求項3】 筋、筋膜、余剰脂肪等を除去し整形して得た牛肉肉塊を調味料、香辛料により調味する工程と、 調味した肉塊を熟成する工程と、 調味した肉塊を油ちょうして表面全体に色つけをし、肉塊表面をかためる工程と、 焼成して得た肉塊を、温度60~70℃、湿度70~90%に設定した加熱室に搬入し、肉塊の中心温度が54.4℃に達するまで加熱処理する工程と、 肉塊の中心温度が54.4℃に達した後、加熱室の室温を55~60℃に下げ、肉塊の中心温度の上昇をおさえて121分間維持する工程を含んで成るローストビーフの製造方法。 【請求項4】 筋、筋膜、余剰脂肪等を除去し整形して得た牛肉肉塊を調味料、香辛料により調味する工程と、 調味した肉塊を真空マッサージする工程と、 真空マッサージした肉塊をケーシングに充填する工程と、 ケーシングに充填した肉塊を、温度60~70℃、湿度70~90%に設定した加熱室に搬入し、熱風を対流させた状態で肉塊の中心温度が54.4℃に達するまで加熱処理する工程と、 肉塊の中心温度が54.4℃に達した後、処理室の室温を55~60℃に下げ、肉塊の中心温度の上昇をおさえて121分間維持する工程と、 加熱処理した肉塊を、200~250℃にて10~15分間焼成し、表面全体に焼き色をつけ肉塊表面をかためる工程を含んで成るローストビーフの製造方法。 【請求項5】 筋、筋膜、余剰脂肪等を除去し整形して得た牛肉肉塊を調味料、香辛料により調味する工程と、 調味した肉塊を熟成する工程と、 調味熟成した肉塊を焼成し、表面全体に焼き色をつけ肉塊表面をかためる工程と、 焼き色をつけた肉塊を冷却する工程と、 焼成冷却した肉塊をケーシングに詰め所定の大きさに真空パックする工程と、 ケーシングに詰めた肉塊を58~68℃のクッカー又は湯中に入れ肉塊の中心温度が54.4℃に達するまで加熱処理する工程と、 肉塊の中心温度が54.4℃に達した後、クッカー又は湯中の温度を55~58℃に下げ、肉塊の中心温度の上昇をおさえて121分間維持する工程を含んで成るローストビーフの製造方法。」 (甲29-2)「【従来の技術】 (発明の背景)米国では牛肉の「うちもも」のかなりの分量がローストビーフとして食されている。我国でも食生活の欧米化に伴い、食肉製品の規格基準が見直され、加熱殺菌の方法及び製品の水分活性により、食肉製品を非加熱食肉製品、特定加熱食肉製品、加熱食肉製品、乾燥食肉製品の4種類に区分し、ローストビーフを「特定過熱食肉製品」として、ロースハム、フランクフルトソーセージ等の加熱食肉製品より加熱程度が緩やかな状態で製造流通することが認められることとなった。」 (甲29-3)「【0003】(従来技術)ローストビーフを製造する場合に、牛肉肉塊の中心温度を、ロースハム等と同様の加熱条件(63℃で30分以上;結核菌が死ぬ殺菌条件)で加熱した場合には、肉塊の中心部まで熱によるタンパク変性が起こり肉のうま味・風味がなくなる虞がある。ローストビーフを製造する際、加熱する牛肉肉塊内部の中心温度が低い程、タンパク変性が少なく、うま味・風味を保持したローストビーフが得られる。」 (30)甲30には、以下の記載がある。 (甲30-1)「【0002】 【従来の技術】従来、ローストビーフやたたきを販売のためスーパーマーケット等に置いた場合、店頭に置いている間の3-5 時間程度でその色が変わってしまって商品価値がなくなり店舗ではロスを生じる原因になっていた。ローストビーフの製法としては、食品衛生法により食肉原料の中心温度を56℃、30分以上加熱する( 流通は10℃以下、またこの場合製造過程で原料肉に調味液等の注射をすることが認められている) 製造法と中心温度を56℃、64分以上もしくは同等以上の加熱を行う特定加熱法(流通は4℃以下、原料肉に調味液等の注射は認められていない。)による製造法の2つの方法がある。ローストビーフにおいてその本来の色を出そうとすると後者の特定加熱の製法で行う方が有利であり一般的に用いる製法である。このローストビーフをスライスしてから店頭に置くと退色が著しく商品価値を落とすこととなり問題となっていた。そこで、この点を解決する方法の開発が強く望まれている。」 2 各乙号証の記載事項 (1)乙1の1には、以下の記載がある。 「市販されているローストビーフには、特定加熱食肉製品と加熱食肉製品の両方があります。」(最終段落) (2)乙1の2には、以下の記載がある。 「 [図:0001403918000009.jpg] (賞味期限の欄の下に「加熱食肉製品(加熱後包装)」と記載されていることが確認できる。)」 (3)乙1の3は、上記乙1-2で写真撮影した加熱食肉製品ローストビーフに関する商品説明のウェブページである。 (4)乙2には、以下の記載がある。 「容易想到性の判断の過程においては、事後分析的かつ非論理的思考は排除されなければならない」こと(第24頁)。 (5)乙3には、以下の記載がある。 「in situには、自動酸化によって生成したメトミオグロビンやメトミオグロビンのヘム鉄(III)を、再び酸素分子が結合可能な2価鉄に戻してやる還元酵素が存在している。」(第74頁右欄下から第10行~下から第7行) (6)乙4には、以下の記載がある。 「と殺後も筋肉は、酸素を消費するので、塊肉の内部はRMbになっています。また、食肉を真空包装や脱酸素包装すると、酸素が供給されないので、筋肉の呼吸系による酸素の消費と筋肉のMMbに対する還元活性(MRA)が持続するかぎり、表面も内部と同じくRMbで占められるので濃くなります。・・・・MMbが40~50%以上になると明瞭に色調の劣化が認められるようになります。」(第4頁下から第3行~第5頁18行) (7)乙5には、牛由来のミオグロビン還元酵素活性は50℃で失活することが記載されている(図7等)。 (8)乙6には、以下の記載がある。 (乙6-1)「製品は、肉塊のままで、その中心部を次の表の第1欄に掲げる温度の区分に応じ、同表の第2欄に掲げる時間加熱し、又はこれと同等以上の効力を有する方法により殺菌しなければならない。この場合において、製品の中心部の温度が35°以上52°未満の状態の時間を170分以上としなければならない。 [図:0001403918000010.jpg] 」(第6頁「3.特定加熱食肉製品」の「g」) (乙6-2)「製品は、その中心部の温度を63°で30分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法(魚肉を含む製品であって気密性のある容器包装に充てんした後殺菌するものにあっては、その中心部の温度を80°で20分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法)により殺菌しなければならない。」(第7頁「4.加熱食肉製品」の欄「a」) (9)乙7は、請求人の製品が金属探知機による異物混入試験に支障がある鉄系脱酸素材が含まれていることを示した実験成績証明書である。 (10)乙8には、「相違点に係る構成自体の容易想到性が認められる場合であっても、当該発明が奏する作用効果が当該発明の構成そのものから当業者が予測し難い顕著なものであるときは、・・・当該発明が引用発明から容易想到であったとはいえないものと解するのが相当である。」と記載されている。(第43頁~第44頁) (11)乙9には、公知発明と異なる新たな構成要件を付加した点で新規性及び進歩性を有しながら、その新規構成に数的限定を付する発明は、臨界的意義は必ずしも必要でないことが記載されている。 (12)乙10には、臨界的意義について、請求項にかかる発明と引用発明との相違点が数値限定の有無のみで課題が共通する場合は、有利な効果について、その数値の内と外とで量的に顕著な差があることが要求されることが記載されている。(特に第95頁右欄下から6行~最終行) (13)乙11には、色彩の変化を伴うミオグロビンの酸素化は、当業者ブルーミングとも呼ばれることが記載されている。(特に第136頁の第2段落) (14)乙12には、新鮮な肉の表面は酸素がないため紫色であるが、空気中に数分置いたのち肉の表面は真っ赤になること(特に、第5頁第30行~第33行)、酸素にさらされオキシミオグロビンを形成する肉を表現する用語として、ブルーミングまたはミオグロビンの酸素化があること(特に109頁第6行~第7行)が記載されている。 (15)乙13には、本件特許出願年前の背景技術として、「ローストビーフをスライス包装すると、空気中の酸素の影響によりスライス面の退色が著しく商品価値を落とすため、ローストビーフはブロックの状態で販売されているのがほとんどである」ことが記載されている。 (16)乙14には、「予めスライスされたローストビーフ製品の製造及び輸送に伴う諸問題のひとつはビーフのスライス(薄片)が不可避的に酸素に曝露されてその結果消費者が要望するデリケートなローストビーフの色沢において消費者が製品を見るより以前にブルーミングを起し、該早期に過ぎるブルーミングに次いで望ましからぬ褐変と乾燥とを起すこと」、当該課題を解決するために、スライスされた肉塊を気密包装物中に真空包装する諸工程を含む製造方法において、スライスの面と面とを接触させることにより実質上空気を排除するようにしながらスライスすることが記載されている。(特に、特許請求の範囲、第2頁右欄第6行~第13行)。 (17)乙15には、以下の記載がある。 (乙15-1)「実験方法 1.ミオグロビン ミオグロビンは,既知の方法でウマ心臓から調整し,本報においては,全てメトミオグロビン(metMb)の形で使用した。」(第163頁左欄最終行~第163頁右欄第3行) (乙15-2)「要約 ・・・(略)・・・ 2.metMbの加熱変性は,蛋白質濃度,温度,加熱時間,pHおよびNaCl濃度によって影響をうける。 ・・・(略)・・・ 5.未変性のmetMbは,70℃まではそのN-末端アミノ酸残基に変化を示さないが,100℃近くで30分加熱した場合,新しいアミノ酸残基の出現を示した。 ・・・(略)・・・」(第172頁右欄~左欄「要約」の欄) (18)乙16には、食肉を230℃のホットプレートで加熱すると、600秒から肉表面の変性が始まり、メトミオグロビンが増加することが記載されている(特に第54頁~第55頁「3.1.実験方法」の欄及び「3.2.ミオグロビン各形態の割合推定と肉色の分光反射率近似」の欄) (19)乙17には、加熱した食肉あるいは無塩漬の食肉製品が赤色を呈するのは、試料中に存在する耐熱性の未変性ミオグロビンにおける鉄が還元状態にあること、さらに鉄が未知の要因によって酸化されにくい状態にあることに起因するものと推定されることが記載されている。 (20)乙18には、複数のメーカーが、特定加熱食肉製品ではなく、加熱食肉製品として「ローストビーフ」を販売していることが示されている。 (21)乙19には、鉄系脱酸素材、非鉄系脱酸素材の種類、それぞれについて特徴があることが示されている。 (22)乙20には、非鉄系脱酸素材を使用する目的や効果が記載されている。 (23)乙21には、特定加熱食肉製品ローストビーフを鉄系脱酸素材とともにガスバリア性のある容器に封入すると、褐変し、褐変が回復する食肉と異なり、褐変が7日経過しても変化がないことが示されている。 (24)乙22、乙22の2、乙23、乙23の2は、原告ら準備書面等であり、訴訟審理の情報提供のために提出された。 (25)乙24は、熊本県畜産協会のウェブページであり、訴訟審理の情報提供のために提出された。 (26)乙25は、三菱ガス化学株式会社のウェブページであり、訴訟審理の情報提供のために提出された。 (27)乙26は、脱酸素材のウェブページであり、訴訟審理の情報提供のために提出された。 (28)乙27は、実験的に数値範囲を最適化又は好適化することを怠ったが故に進歩性がないと判断された裁判例として提出された。 (29)乙28は、乙27の判決に係る審決である。 (30)乙29(訳文で示す)には、以下の記載がある。 (乙29-1)「調理の温度は、天然の状態で、色素の変換率に影響を与える。このため、内部温度60℃で調理した牛肉は内部が鮮やかな赤色を示し、内部温度60℃~70℃で調理した場合は内部がピンク色であり、内部温度70℃~80℃以上で調理した場合は、灰色がかった茶色である(Jensen, 1949)。肉におけるミオグロビンの変性は、溶液中における色素の変性を引き起こす温度と考えられる(図10.1;Bernofsky et al., 1959)」(第285頁第10行~第16行) (乙29-2)「 [図:0001403918000011.jpg] (図10.1 水抽出性の減少により測定した、牛由来のミオグロビンの変性率に対する温度の影響)」 (31)乙30には、グランミールローストビーフが加熱食肉製品であること、要冷蔵の商品であることが記載されている。 (32)乙31には、グランミールローストビーフが加熱食肉製品であることが記載されている。 (33)乙32には、「ローストビーフ」を紹介するページに「グランミールローストビーフ」が他のローストビーフと並べて掲載されていることが示されている。 (34)乙33には、「常温」について、「大気の標準的な温度として、15℃~25℃を意味する」ことが記載されている。 (35)乙34には、冷蔵庫内温度が約2℃~6℃であることが記載されている。 (36)乙35には、所定の製造方法で製造された霜降り状肉と、無処理の肉をそれぞれローストビーフ用の原料肉として味付けをし、「次に加熱工程では200℃-20分、150℃-30分で2段加熱(中心温度65℃)し、終了後+2℃の冷蔵庫中で1晩冷却した。」例が記載されている。 (37)乙36には、以下の記載がある。 (乙36-1)「2.特許請求の範囲 (1) 80乃至150℃の温度に調整した加熱装置中に牛肉塊を入れ、前記牛肉塊の中心温度が30乃至35℃に到達した後1乃至3時間で前記中心温度の最高到達温度を57乃至63℃にすると共に、前記中心温度が52乃至59℃のときに前記牛肉塊を加熱装置から取り出し、前記中心温度が60℃から40℃の温度域を2時間以内、40℃から20℃の温度域を2.5時間以内、及び20℃から10℃の温度域を3時間以内に通過させて冷却を行うローストビーフの調製方法。」(第1頁左欄第4~13行) (乙36-2)「〔従来の技術・発明が解決しようとする問題点〕 我が国の食品衛生法は、乾燥食肉製品及び非加熱食肉製品以外の食肉製品の製造に当たっては、その中心部の温度を63℃で30分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法で殺菌することを要求している。 しかしながら、この殺菌方法によると、良好な品質特性を有するローストビーフ、特に食欲を喚起する特有の鮮紅色を呈する製品の製造は不可能である。かかる事情により、食品衛生法に定める食肉製品の製造基準に適合したローストビーフの大量生産方式による調製方法は従来確立されていなかった。そのため、食肉製品製造業者によるローストビーフの商業的生産が許可されておらず、ホテル、レストラン等の飲食店営業者により店内で調製されているにすぎなかった。」(第1頁左欄最終行~右欄第15行) (乙36-3)「 ところで、ローストビーフのスライス面は、食欲を喚起する特有の鮮紅色部分(未変性オキシミオグロビン)とそれを取り囲む茶褐色部分(変性Fe3+ヘモグロモーゲン)から成る。ローストビーフは、前者の占める面積が全スライス面積の55~70%、好ましくは60~65%であり、且つ鮮紅色部分のハンターa値が16以上であるとき、良好な品質を保持していると判断できる。しかしながら、牛肉塊の中心部分を63℃以上、特に65℃以上に加熱すると、上記条件を充足するローストビーフを得ることが不可能となる。」(第2頁左上欄第6~16行) (乙36-4)「牛肉塊の中心温度を63℃以上に加熱すると、食欲を喚起する特有の鮮紅色を呈する良好な品質特性を有するローストビーフが得られなくなる。」(第2頁右下欄第6~9行) (38)乙37には、以下の記載がある。 (乙37-1)「(従来の技術) 一般にロースト肉(特にローストビーフ)と呼ばれるものは、その製法としてはオーブンなどで約180~200℃に加熱して、その中央部分の温度が約40~50℃になるまで、約20分程度加熱調理したもので、外側部分の血色素を変性せしめ赤色を失なわせたものであり、その肉塊の中央部分は肉の変色温度(通常約55℃)以下であるので、赤色のままであるいわゆる半焼の状態のものである。 このようなロースト肉は、家庭で調理して食する場合、或いは通常レストランなどで調理して短時間に消費者の口に入る場合などに供せられるのが一般的である。 (発明が解決しようとする問題点) 上記のようにロースト肉は、家庭での調理或いはレストランなどで用いられるのみで、一般に食肉製品として製造、販売するのは法律上(食品衛生法)禁止されている。 なぜならば、上記したように一般のロースト肉は、その中央部分がいわゆる半焼(半生)の状態であるので、予め付着しているサルモネラ菌などの食中毒菌が完全には死滅せず、長期間保存すれば増殖する虞れがあるためである。 それ故、食肉製品として製造、販売するには、前記菌を完全に死滅させるため、食品衛生法上、肉塊の中央部分を63℃で、30分間加熱する方法、又はこれと同等以上の効力を有する方法により加熱殺菌することが義務づけられている。 しかしながら、このように食品衛生法に基づき加熱調理したロースト肉製品の場合には、肉の変色温度以上に肉塊の中央部分を加熱するために、その中央部分までが黄褐色に変色してしまい、ロースト肉特有の外側部分が黄褐色でその中央部分が赤色を呈したままの状態で、且つ通常のロースト肉と同じような食感、旨味を保持することは困難であった。」 (39)乙38には、以下の記載がある。 (乙38-1)「食品衛生法施行規則(昭和二三年厚生省令第二三号。以下「省令」という。)及び食品、添加物等の規格基準(昭和三四年一二月厚生省告示第三七〇号。以下「告示」という。)の一部が、それぞれ平成五年三月一七日厚生省令第六号及び厚生省告示第七三号をもって改正された」(第1頁第5~7行) (乙38-2)「第一 改正の要旨 近時、食肉製品に対する嗜好の多様化、その製造技術の進歩、諸外国における生産及び流通の実態等を勘案し、従来我が国で製造、販売等が認められていなかった食肉製品について新たに規格基準を設けるとともに、従前の規格基準について一部改正を行い、併せて、食肉製品に係る表示事項の改正を行ったこと。」(第1頁第9~12行) (乙38-3)「第二 改正の内容 1 省令関係 ・・・ (2)特定加熱食肉製品(その中心部の温度を六三度で三〇分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法以外の方法による加熱殺菌を行った食肉製品をいう。ただし、乾燥食肉製品及び非加熱食肉製品を除く。以下同じ。)にあっては、特定加熱食肉製品である旨及び水分活性を表示することとしたこと。 ・・・ 2 告示関係 (1)食肉製品及び鯨肉製品の規格基準を「食肉製品」と「鯨肉製品」に分け、食肉製品について次のように改正したこと。 ア 成分規格 (ア) 微生物規格の全面的見直しを行い、乾燥食肉製品、非加熱食肉製品、特定加熱食肉製品及び加熱食肉製品のうち容器包装に入れた後加熱殺菌したもの並びに加熱食肉製品のうち加熱殺菌したのち容器包装に入れたものそれぞれについて、食肉製品の特性に応じ、大腸菌群、E.coli、クロストリジウム属菌、黄色ブドウ球菌及びサルモネラ属菌による成分規格を設けたこと。 ・・・ イ 製造基準 ・・・ (ク) 特定加熱食肉製品について、新たに基準を設けたこと。 ・・・ ウ 保存基準 ・・・ (イ) 特定加熱食肉製品について、新たに保存基準を設け、水分活性が○・九五以上のものについては四度以下、水分活性が〇・九五未満のものについては一〇度以下で保存することとしたこと。」(第1頁第13行~第2頁第9行) (乙38-4)「第四 施行期日 1 省令関係 公布の日から施行することとしたこと。ただし、平成六年三月三一日までに製造され、又は輸入される特定加熱食肉製品以外の食肉製品の表示については、改正後の省令の規定にかかわらず、なお従前の例によることができるものであること。 2 告示関係 公布の日から施行することとしたこと。ただし、平成六年三月三一日までに製造され、又は輸入される食肉製品の成分規格、製造基準及び保存基準については、改正後の告示の規定にかかわらず、なお従前の例によることができるものであること。」(第2頁下から6行~第3頁3行) (40)乙39、乙40にはそれぞれローストビーフを「湯温65℃・肉の中心63℃の状態で30分間加熱」して製造した例が記載されている。 (41)乙41には伊藤ハム株式会社が素材を真空パックしてから加熱調理するスービッド製法に関して、平成9年5月にローストビーフの製法特許を取得した旨が記載されている。 (42)乙42は、伊藤ハム株式会社のウェブページであり、1993年に真空調理法による「神戸六甲ローストビーフ」を新発売した旨が記載されている。 (43)乙43は、主引例と技術分野が異なる副引例を組み合わせる動機付けを否定した裁判例として提出された。 (44)乙44は、主引例と副引例の構成・機能が異なり、副引例の記載事項のみでは相違点を充足しないため、動機付けが認められなかった裁判例として提出された。 (45)乙45は、侵害訴訟における「酸素化工程」の議論に関する事実関係を示すための証拠として提出されたものであり、以下の記載がある。 (乙45-1)「(2)被告方法においてスライスから包装までの時間は約2分半である。 ・・・実際に被告製品を被告方法に従って製造し、原木のスライスの開始(すなわち、スライサーに原木をセットしてその投入口のカバーを閉じた時点)から当該スライスされたローストビーフの密封包装が完了する(包装機からトレイが密封された状態で出てくる)までの時間を測定したところ、被告製品1及び2のいずれの場合も概ね2分30秒程度であった(乙98の1の1及び2、乙98の2の1及び2)。 (3)被告方法において酸素化する工程は存在しない ・・・ 上記1のとおり、構成要件Bの「酸素化する工程」は、特定加熱食肉製品のスライス面が紫赤色から鮮赤色に変化するのに必要十分な時間、少なくとも15乃至30分以上、スライス面を空気にさらすための工程と解釈すべきであるところ、被告方法には、ローストビーフのスライス面を空気にさらす「工程」はそもそも存在せず、スライスされたローストビーフがスライサーから包装機によって密封包装されるまでの間に、ローストビーフのスライス面が物理的に空気に晒されることはあるが、その間、わずか2分半程度であり、包装前にスライス面が紫赤色から鮮赤色に変化したかを確認する作業も存在しない。」(第23頁第10行~第24頁第18行) (46)乙46は、侵害訴訟における「酸素化工程」の議論に関する事実関係を示すための証拠として提出されたものであり、以下の記載がある。 (乙46-1)「以上のとおり,当業者は肉の厚さによってブルーミングに要する時間が全く異なることを理解しており,被告が主張する被告方法の2分半程度でも十分に酸素化する。」(第5頁第8~10行) (乙46-2)「 被告は,「酸素化する工程」について,原告の「ローストビーフをスライスすれば,必然的にスライスされたローストビーフの断面は酸素含有気体である空気に触れ,還元型ミオグロビンは酸素と結合してオキしミオグロビンになる。したがって,被告方法においてローストビーフをスライスして空気に触れさせてさえいれば,逆に言えば被告方法において無酸素状態の場所でローストビーフをスライスするなど空気に触れさせない特別な方法を採用していない限りは,『酸素化する工程』が存在することになる。」との主張に対し,弁論準備手続期日において,「原告らの主張の解釈が正しいのであれば,『酸素化する工程』は存在する。」旨を述べて,・・・ ・・・にもかかわらず,被告は,ごく一般的な作業工程であって重要な営業秘密であるとは到底思われない乙96から乙98の2の1の作業工程を開示し始めた。 原告らは,被告開示の被告方法であっても,「酸素化する工程」は存在するとの立場である。」(第7頁第3行~第8頁第1行) (47)乙47は、侵害訴訟における「酸素化工程」の議論に関する事実関係を示すための証拠として提出されたものであり、以下の記載がある。 (乙47-1)「原告らは,被告による「被告方法においてスライスから包装までの時間は約2分半である」との主張(被告第11準備書面23頁10行目)を受け,被告製品と同様に1mm程度の厚さにスライスしたローストビーフが2分30秒で酸素化するのかどうかを実験した。 ・・・ その結果,以下のとおり,スライス30秒後と2分30秒経過後のローストビーフスライスでは,明らかに色が異なり,また,赤味を表すa*値も13.37から15.68に増加していた・・・ わずか2分という時間でも赤味が増す以上,2分30秒という時間でも十分に酸素化がなされることは明らかである。」(第2頁第2~14行) (48)乙48は、甲3に先行技術として挙げられているものであり、鉄族の第一塩化合物とアルカリ性化合物、亜硫酸塩及び必要な添加剤からなる脱酸素剤と生肉を同時に酸素非透過性材料で包装、密封し、冷蔵状態で保存する生肉の鮮度保持方法が記載され、さらに脱酸素剤に炭酸アルカリを加えると炭酸ガスを発生しより効果的であること、その例が記載されている。 (49)乙49は、被請求人が提出した実験成績証明書であり、非鉄系脱酸素材であれば、炭酸ガス発生型、炭酸ガス非発生型のどちらであっても、ローストビーフ・スライスの色調を鮮赤色に維持できることを示した旨が記載されている。 (50)乙50にはスターゼングループが特許取得済みの新技術を導入したロングライフの「ローストビーフスライス」の特徴について記載されている。 (51)乙51にはスターゼンが新しく誕生させた発色と鮮度を維持したロングライフのローストビーフの特徴について記載されている。 (52)乙51の1には乙51が2014年2月4日に発行されたものであることが示されている。 (53)乙52には全国のイオングループの店舗で2015年6月3日に「トップバリュ セレクト 五島塩ローストビーフ」が新発売される旨、当該商品が脱酸素剤を使用して包装されている旨が記載されている。 (54)乙53には2018年7月~2020年2月11日に様々なメーカーが様々なローストビーフスライス製品を販売していた旨、被告(すなわち、本件審判の請求人)が「セブンプレミアム」のプライベートブランド商品やイトーヨーカ堂オリジナル商品として、脱酸素材を含まず、窒素ガス置換によって脱酸素を行って製造したローストビーフを納入していた旨、2018年5月末にイトーヨーカ堂の精肉部MDの収集・分析した消費者情報の基づく要望を取り入れてこれらの製品をリニューアルした旨が記載されている。 (55)乙54~56には、乙53において、被告(すなわち、本件審判の請求人)が「セブンプレミアム」のプライベートブランド商品やイトーヨーカ堂オリジナル商品として、脱酸素材を含まず、窒素ガス置換によって脱酸素を行って製造し納入した各ローストビーフの、内容又は商品概要が記載されている。 (56)乙57~59には、乙53において、被告(すなわち、本件審判の請求人)が2018年5月末にイトーヨーカ堂の精肉部MDの収集・分析した消費者情報の基づく要望を取り入れてリニューアルした各製品の、商品概要が記載されている。 (57)乙60~65は、侵害訴訟における議論に関する事実関係を示すための証拠として提出されたものであり、乙65には以下の記載がある。 (乙65-1)「第3 明確性要件(特許法36条6項2号) 1 「酸素化する工程」は十分に明確である (1)被告の主張 被告は,「以上のとおり,本件発明の構成要件Bの『酸素化する工程』は,本件明細書の【発明の詳細な説明】に記載されているとおり,1時間程度空気中にさらすものであるか,原告らが主張するように,空気と短時間接触するものを含むのか不明であり,本件明細書の記載を考慮し,また,当業者の出願当時における技術常識を基礎としても,特許諧求の範囲の記載は第三者の不利益が不当に害されるほどに不明確である。」と主張する(71頁2行目以降)。 (2)「空気と短時間接触するものを含む」から損害論に進んでいる 別件訴訟において,空気と短時間接触させる被告製品の製造方法が特許権侵害であるとして損害論に進んでいるのは,「酸素化する工程」には,空気と短時間接触するものが含まれ,そのことが本件明細書から十分に理解できるからである。 ・・・・このような技術常識に照らせば,当業者であれば,ローストビーフの厚さを被告製品のように薄くする場合には,「酸素化する工程」は短時間で構わないことが分かるから,「酸素化する工程」は十分に明確である。」(第3頁下から8行~第5頁第12行) (58)乙66は、甲29と同じ公開特許公報である。 (59)乙67~乙69には、それぞれヤマト運輸株式会社のクール宅急便(冷蔵、冷凍)、佐川急便株式会社の飛脚クール便(冷蔵、冷凍)、日本郵政株式会社のチルドゆうパック及び冷凍ゆうパックの輸送温度が記載されている。 (60)乙70には、日本郵政株式会社が1996年に保冷郵便(チルドゆうパック)の取り扱いを開始したことが記載されている。 (61)乙71には、西濃運輸株式会社のカンガルーチルド便は、荷物を冷蔵温度帯(0℃~5℃)又は冷凍温度帯(-18℃以下)で温度管理して荷受人まで届けること、日本郵便各営業所にて温度・保管管理も行うこと、日本郵便のネットワークを利用して輸送を行なっていることが記載されている。 (62)乙72は甲30の出願公開公報であり、甲30と同じ記載がある。 (63)乙73には、以下の記載がある。 (乙73-1)「 [図:0001403918000012.jpg] ・・・O2Mbは酸素を離し還元されてRMbを生じるが,RMbは存在する酸素の影響で急速にMMbヘ酸化される。・・・pO2がさらに低下し酸化に関与する酸素がなくなると,MMbの生成は起こらずRMbは安定に保持されるようになる。肉塊内部がRMbで占められているのはそのためである。 低いpO2においてMMbを生ずる現象は,液体窒素を用いてコンテナー内を冷却したり酸素透過性の低いフィルムで真空包装した場合,その中の食肉が褐変を起こすことになるので留意しなければならない。MMbを生じ褐変した食肉は,新鮮でなく還元力が十分には残存しない湯合,再び空気にさらしても還元と酸素化が起こらず赤色のO2Mbに戻らないため,著しく商品価値を損なうことになる。これを防止するには,食肉の包装に酸素透過度が高いフィルム(6,000~13,000ml/m3/24 hrs/atm)を用いる必要がある。また,ガス置換によるCA(Control atmosphere)貯蔵法も効果的と考えられ,これに関する多くの研究があり実用化されつつある。酸素透過性のないフィルムを用いて真空包装すると,食肉中のMbは表面まですべて紫赤色のRMbに還元される。この包装ではチルドの状態で数週問は保存可能で.販売前にフィルムから出せば食肉の表面はブルーミングを起こし鮮赤色を呈するようになる。 食肉で一般にみられる色調の変化と生ずるMb誘導体との関係をまとめると,図5-8のとおりである。」(第392頁第1行~第393頁第2行) (乙73-2)「温度の上昇はO2Mbの自動酸化速度を著しく早める。O2Mb溶液を用いた実験によると,MMbへの酸化は0℃に比較し10℃では約5倍の速度で進行することが認められている。」(第393頁第14~17行) (乙73-3)「食肉を調理するとき観察されるように,加熱することによって食肉の色調は急速に赤色から褐色に変化する。この現象は,Mbのグロビン部の熱変性によってヘム鉄が2価から3価に容易に酸化され,その結果褐色の変性グロビンヘミクロム(denatured globin hemichrome)を生ずるためである。牛肉を加熱したときの中心部の温度と内部の色調変化の関係を観察した結果,60℃まで色調は変わらず,60~70℃で桃赤色,70~80℃で灰褐色に変化する。」(第393頁第24~29行) (64)乙74は、甲1の【0004】に記載された公開特許公報である。 (65)乙74の1には、甲1の審査において、乙74の2が引用されたことが記載されている。 (66)乙74の2は、乙74の1で引用された公開特許公報である。 第7 当審の判断 当審は、無効理由1、2については理由があり、無効理由3、4については理由がないと判断する。 その理由は以下のとおりである。 1 無効理由1について (1)甲1に記載された発明 甲1には、「スライスされたローストビーフを流通させる上での主な問題点は、スライスすることによって外気との接触面積が大きくなるため、ローストビーフの酸化が激しくなる」(摘記(甲1-2))という課題があり、これを解決するため「製造業者によってスライスされたローストビーフを、消費者の手に渡るまで・・・(略)・・・スライス面が外部から見えるようにすることによって、消費者への有効な視覚的アピールをすることが可能な、スライスされたローストビーフの包装方法及び包装体を提供することを目的」(摘記(甲1-3))としてされた発明が記載され、その請求項1には、「スライスされたローストビーフを、脱酸素剤と共に、酸素ガスバリア性材料からなる容器内に配置し、前記容器内を窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス雰囲気に置換した後、該容器を密封して、該容器内の残存酸素濃度が0.01%以下に維持されるようにすることを特徴とする、スライスされたローストビーフの包装方法」(摘記(甲1-1))の発明が記載されている。 また、発明を実施する際には、「本実施形態に係るスライスされたローストビーフの包装方法の第1の工程では、トレイ11上にスライスされたローストビーフ2を並べる。第2の工程では、第1の工程にてスライスされたローストビーフ2を並べられたトレイ11と、脱酸素剤13とを袋状の容器12に挿入する。第3の工程では、ガス置換兼用真空包装機を用いて、容器12内を窒素ガスで置換し、容器12を密封して完了する」(摘記(甲1-4))、との記載から、スライスされたローストビーフはトレイに並べられる工程も有していることが把握できる。 さらに、摘記(甲1-1)には、ローストビーフをスライスする工程は明記されていないが、上記課題の記載(摘記(甲1-2)及び(甲1-3))から、甲1に記載された発明には、トレイに並べる前に、ローストビーフをスライスする工程も含まれるといえる。 そうすると、甲1には、 「ローストビーフをスライスする工程と、 トレイ上にスライスされたローストビーフを並べる工程と、 ローストビーフを並べられたトレイと脱酸素剤とを酸素ガスバリア性材料からなる容器内に配置し、前記容器内を窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス雰囲気に置換した後、該容器を密封して、該容器内の残存酸素濃度が0.01%以下に維持されるようにする工程を含む、 スライスされたローストビーフの包装方法。」(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。 (2)対比・判断 ア 甲1発明の「ローストビーフ」について (ア)本件発明1と甲1発明を対比するにあたり、甲1には、甲1発明のローストビーフについての定義に関する記載がないことから、食肉製品の技術分野において「ローストビーフ」がどのようなものであるか検討し、その上で、甲1発明の「ローストビーフ」が特定加熱食肉製品に該当するか否かについて検討する。 (ア-1)特定加熱食肉製品に関する規制と一般的な製造方法について 甲29の摘記(甲29-2)には日本において食肉製品の規格基準が見直され、ローストビーフを「特定加熱食肉製品」として製造流通することが認められることとなった旨が記載されている。ここで、甲29は平成5年1月29日に出願され、平成6年8月9日に出願公開された出願公開公報であるから、上記の事項は大体平成5年より前のことであると理解できる。 そして、摘記(乙38-1)~(乙38-3)には、平成5年3月17日に食品衛生法施行規則及び食品、添加物等の規格基準が改正され、「特定加熱食肉製品(その中心部の温度を六三度で三〇分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法以外の方法による加熱殺菌を行った食肉製品をいう。ただし、乾燥食肉製品及び非加熱食肉製品を除く。以下同じ。)」が記載され、この頃に特定加熱食肉製品の製造基準や保存基準が新たに設けられたことが理解できる。 なお、特定加熱食肉製品の製造基準については、摘記(乙6-1)に、「表の第1欄に掲げる温度の区分に応じ、同表の第2欄に掲げる時間加熱し、又はこれと同等以上の効力を有する方法により殺菌しなければならない」とされており、当該表に記載された温度、時間で加熱をするか又はこれと同等以上の効力を有する方法により殺菌しなければならないと定められている。 以上のことから、少なくとも日本では平成5年3月17日からローストビーフを特定加熱食肉製品として製造流通することが制度上可能になったといえる。 また、平成11年7月19日に出願された甲30の摘記(甲30-1)の記載からは、平成11年7月時点ではローストビーフの本来の色を出すには食品衛生法の食肉原料の中心温度を56℃、64分以上もしくは同等以上の加熱を行う特定加熱法(流通は4℃以下、原料肉に調味液等の注射は認められていない。)、すなわち、摘記(乙-6)の記載からみて、特定加熱食肉製品の製法が一般的に用いられていたことが理解でき、摘記(甲20-1)、摘記(甲21-1)、摘記(甲22-2)の記載からは、平成18年~平成24年においても、ローストビーフは、市販の流通食品として食品衛生法でいう特定加熱食肉製品の規格基準に適応するように製造されていたことが理解できる。 (ア-2)ローストビーフに関する特許出願の状況について 日本ハム株式会社によって昭和60年4月22日に出願され、昭和61年10月28日に出願公開された乙36の摘記(乙36-1)~(乙36-4)及び株式会社ゼンチクによって平成5年1月29日に出願され、平成6年8月9日に出願公開された甲29の摘記(甲29-1)~(甲29-3)の記載からは、上記(ア-1)において検討したように平成5年3月17日にローストビーフを特定加熱食肉製品として製造流通することが制度上認められる前であっても、牛肉塊の中心温度を63℃よりも低い温度で加熱調理して得られる、特定加熱食肉製品の製造基準や保存基準に該当するローストビーフの製造方法に関する発明が、食肉製品メーカーから実際に特許出願されていたことが理解できる。 (ア-3)ローストビーフの色調について 摘記(乙36-2)(乙36-4)から中心部の温度を63℃で30分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法で殺菌した食肉製品、すなわち加熱食肉製品に該当するローストビーフは、食欲を喚起する特有の鮮紅色を呈する製品とはならないことが理解できる。 また、摘記(乙37-1)から、肉塊の中央部分を63℃で、30分間加熱する方法、又はこれと同等以上の効力を有する方法により加熱殺菌された加熱食肉製品に該当するロースト肉は、肉の変色温度である約55℃以上に肉塊の中央部分を加熱するため、中央部分までが黄褐色に変色してしまい、赤色を呈したものとならないことが理解できる。 さらに、摘記(乙29-1)及び摘記(乙73-3)の記載からは、牛肉を内部温度60℃となるように調理すると鮮やかな赤色であるが、内部温度60℃~70℃となるように調理するとピンク色であり、内部温度70℃~80℃以上となるように調理すると灰色がかった茶色となることが理解できる。 そして、これらのローストビーフの色調に関する記載事項は、甲30に従来技術として記載された、摘記(甲30-1)のローストビーフの本来の色を出すためには食品衛生法での食肉原料の中心温度を56℃、64分以上もしくは同等以上の加熱を行う特定加熱法(流通は4℃以下、原料肉に調味液等の注射は認められていない。)、すなわち、摘記(乙-6)の記載からみて、特定加熱食肉製品の製法で行う方が有利であり一般的に用いる製法である旨の理解とも合致する。 (ア-4)甲1発明の「ローストビーフ」についての検討 平成9年5月28日に出願され、平成10年12月15日に出願公開された甲1の摘記(甲1-3)から、甲1発明の「ローストビーフ」は、スライスされた状態で包装され、流通温度が0~5℃において1週間程度保存可能であり、スライス面が外部から見えるようにすることで消費者に有効な視覚的アピールをすること可能なものであって、その視覚的アピールとは、特に摘記(甲1-3)の【0007】及び【0009】の記載からみて、製造業者によってスライスされたローストビーフが消費者の手に渡るまでの流通段階におけるローストビーフの色調が含まれているものと理解され、その色調としては、摘記(甲1-2)(甲1-4)~(甲1-8)から、所定の脱酸素方法によって酸化を防止して包装することにより、外気温5℃の暗所に7日間保存後、包装体の開封30分後にa値が7.0より大きい強い赤みを呈する程度の色調を示すものであると理解できる。 上記(ア-3)で乙36、乙37、乙29、乙73、甲30の記載事項に基づいて検討した事項をふまえると、摘記(乙36-2)、(乙36-4)、(乙37-1)、(甲30-1)から加熱食肉製品に該当するローストビーフはローストビーフの本来の色である鮮やかな赤色を示さないことが知られており、摘記(乙6-2)から、加熱食肉製品は、63℃以上で加熱されるので、摘記(乙29-1)や摘記(乙73-3)の記載でいうところの、60℃~70℃又は70℃~80℃以上で調理される条件に該当し、加熱食肉製品であれば内部がピンク色又は灰色がかった茶色になると理解されるのに対し、甲1発明では、上記のとおり、製造業者によってスライスされたローストビーフが消費者の手に渡るまでの流通段階におけるローストビーフの色調が消費者に有効な視覚的アピールをすることが可能な、赤みの強いローストビーフが得られているのであるから、甲1発明のローストビーフは、加熱食肉製品というよりは、特定加熱食肉製品であると理解するのが相当である。 そして、上記(ア-2)で検討した事項をふまえると、日本においてローストビーフを特定加熱食肉製品として製造流通することが制度上可能となる前であっても、肉塊の中心温度を63℃よりも低い温度で加熱調理する特定加熱食肉製品の製造基準や保存基準に該当する特定加熱の方法によってローストビーフを製造する方法は、食肉製品メーカーによる研究開発が行われ、特許出願されていたのであるし、上記(ア-1)で検討した事項をふまえると、甲1は、日本においてローストビーフを特定加熱食肉製品として製造流通することが制度上可能となった平成5年3月17日から約4年経過した後の出願であり、ローストビーフの本来の色を出すために特定加熱食肉製品の製法が一般的に用いられていたことが少なくとも把握される平成11年7月の2年程度前の出願でもあるから、甲1発明のローストビーフは、特定加熱食肉製品に該当するものでないとまではいえず、上記(ア-1)及び(ア-2)で述べた日本における特定加熱食肉製品に関する規制、ローストビーフとして流通している製品の状況、ローストビーフに関する特許出願の状況は、上記甲1発明のローストビーフについての認定を妨げるものではない。 以上のことから、当業者であれば、本件特許出願日前に公開された甲1に記載された甲1発明におけるローストビーフは、特定加熱食肉製品に該当するものと認められる。 (イ)被請求人の主張について (イ-1)「ローストビーフ」には特定加熱食肉製品と加熱食肉製品があること 被請求人は、乙1の1、乙1の2、乙1の3、乙18、乙30、乙31、乙32を提出して「ローストビーフ」としては、特定加熱食肉製品と加熱食肉製品が販売されており、「ローストビーフ」という記載のみから、特定加熱食肉製品か加熱食肉製品であるかは判断できないと主張している。 しかしながら、上記(ア-4)において検討したとおり、「ローストビーフ」という記載のみから、甲1発明のローストビーフを特定加熱食肉製品と認定したのではない。 そして、甲1発明の「ローストビーフ」は、上記(ア-4)において検討したとおり、特定加熱食肉製品に該当するものと理解することが自然である。 よって、被請求人のこの主張は採用することができない。 (イ-2)ミオグロビンの耐熱性とローストビーフの色調について 被請求人は、乙15~乙17及び乙29を提出して、ミオグロビンは耐熱性を有し加熱後も酸化・還元反応が可能であること、加熱食肉製品はその中心部の温度を63℃で30分間加熱する程度の加熱しか行われないことから、加熱食肉製品も加熱後においてスライス片中のミオグロビンが空気に触れると酸化され赤くなることを主張している。 乙15には、調整されて得られたメトミオグロビンは、70℃までは、N末端アミノ酸の構造変化は起きないことが記載されているが(摘記(乙15-1)及び(乙15-2))、この際に行った実験は、ローストビーフの発色で重要な、オキシミオグロビンが、何度でどのように変化するかを確認した実験ではない。 また、メトミオグロビンになった後は、特定加熱食肉製品であっても酵素が働かないことは、乙5を掲げて被請求人が主張しており(答弁書第25頁~第27頁)、このことから考えても、そもそも鮮やかな赤色であるオキシミオグロビンとなることはないメトミオグロビンの耐熱性が高いという実験結果が存在したからといって、この結果を、加熱食肉製品の製造条件で得られたものが鮮やかな赤色を示すか否か、又は加熱食肉製品が空気に触れると赤くなるかの判断には用いることができない。 乙16には、肉を230℃のホットプレートで加熱し、その場合、肉の表面の色の変化を測定したことについて記載されている。これは、肉の表面の色の変化のみを表しているから、乙16の記載からは、肉の内部の温度が何度であるか、内部がどのような色であるかは把握できない。 特定加熱食肉製品であるローストビーフの製造時の温度は、摘記(乙6-1)の記載から、肉の表面の処理された温度ではなく、肉の中心部の温度を考慮すべきである。また肉の色調にしても、ローストビーフの色をみるときには、肉の表面部というより内部の色について、鮮やかな赤色であるのか否かをみているのであって、肉の外部の色の変化についてみていないことは明らかである。 乙17は、十分に加熱した食肉でも赤色を呈することがあるという現象が、耐熱性の未変性ミオグロビンにあることが推定されると記載されている。 しかしながら、これらの記載は、加熱後は、変性されるので酸化状態となり、褐色を呈するとの前提があり、その中に耐熱性のミオグロビンの存在を推定し、示しているにすぎない。 乙29には内部温度60℃で調理した牛肉は内部が鮮やかな赤色を示すが、内部温度60~70℃で調理した場合は内部がピンク色を示すことが記載されている(摘記(乙29-1))。 そうすると、肉塊の中心部の温度を63℃で30分加熱する加熱食肉製品では鮮やかな赤色ではなく、ピンク色を示すことが理解できるから、被請求人の主張とは整合しない。 したがって、被請求人の主張を採用することはできない。 (イ-3)甲1が呉羽工業株式会社により出願されていることについて 被請求人は、甲1は包装材料を研究する呉羽工業株式会社によってなされた発明であり、実施例で使用されたローストビーフは呉羽化学工業株式会社によって作られたとは考えられず、既成のスライス製品を購入したと考えられ、当時スライス済みの特定加熱食肉製品であるローストビーフは市販されておらず(乙18を参照)、発明者が入手したのは加熱食肉製品ローストビーフと考えるのが妥当であることから考えても、甲1発明のローストビーフは、特定加熱食肉製品ではない旨の主張をしている。 しかしながら、甲1には実施例で使用されたローストビーフの出自については何ら記載がなく、市場に流通していた既成のスライス製品を購入したものであるとまではいえないから、当該被請求人の主張は、何ら証拠に基づかないものであって、この主張を採用することはできない。 (イ-4)甲1出願前のローストビーフの技術について 被請求人は、乙35~乙42を提出して、甲1が平成9年5月28日に出願されたものであるのに対し、甲20~甲22は甲1出願後9~15年後の技術常識を示すものであること、平成5年に特定加熱食肉製品の製造販売が許された後に、食品企業が少なくとも安全性に問題のない特定加熱食品ローストビーフを工業的に製造販売するには、その製品化工程の検討に数年の歳月を要することもあり得ること、甲1の研究開発に着手されたと推測される平成8年頃の時点で入手可能な特定加熱食品ローストビーフ製品が製造販売されていたとは認められない旨主張している(令和2年7月6日提出の上申書:第1~7頁)。 しかしながら、甲1発明のローストビーフが市販のものであるとは限らない上、上記(ア-2)において検討したように、平成5年に特定加熱食肉製品の製造販売が認められる前であっても、食肉製品メーカーにおいては特定加熱食肉製品に相当するローストビーフ製品の製造方法について研究開発が行われ、特許出願されていたし、上記(ア-4)において検討したように甲1は特定加熱食肉製品の製造販売が認められた約4年後の出願であり、少なくとも、ローストビーフの本来の色を出すために特定加熱食肉製品の製法が一般的に用いられていたことが把握される2年程度前の出願であるから、甲1のローストビーフが特定加熱食肉製品に該当しないものということはできない。また、製品化工程の検討に要する歳月や甲1の研究開発に着手した時期については、証拠に基づく主張でもない。 したがって、被請求人の主張を採用することはできない。 (イ-5)甲1には包装態様における外観の色相評価は無いことについて 被請求人は、甲1ではスライス化したローストビーフの包装体を開封し、酸素に触れさせて30分後の色彩を測定していること、摘記(甲1-7)ではそのa値が7以上のものを5段階評価の5と評価していることから、甲1には赤みの強いローストビーフは記載されているとはいえず、甲1のローストビーフが加熱食肉製品である旨主張している(令和2年7月6日提出の上申書:第7~8頁)。 しかしながら、上記(ア-3)で検討したように、摘記(乙36-2)(乙36-4)(乙37-1)から、加熱食肉製品に該当するローストビーフは鮮紅色を呈する製品にならず、特に(乙37-1)や(乙29-1)から、黄褐色やピンク色~灰色がかった茶色と表現されるような色になることが知られており、加熱変性によってこれらの色に変性したローストビーフは、少なくとも包装体を開封し、酸素に触れさせた後になって赤くなるようなものでないことは明らかであるから、甲1発明のローストビーフは加熱食肉製品とはいえない。 また、被請求人は、令和1年10月18日の口頭審理陳述要領書の第5の2の2-2において、a*値は赤方向と青方向の色度、b*値は黄方向と緑方向の色度であるが、a*値が低くても、b*値も低ければ褐変した肉色ではない旨、同2-4において本件特許明細書の表1の鉄系比率50%、42.9%の状態においてもb*値が低い色彩であり、褐変はせず赤色を示している旨説明している。 ここで、本件特許明細書の表1をみると、鉄系比率50%や42.9%の場合のa*値は、4.63~7.49であるが、いずれも本件発明の実施例であって、優れた肉色、すなわち鮮赤色を呈する例として記載され、被請求人は、口頭審理陳述要領書においても、これらの例は赤色を示している旨説明しているのであるから、甲1のローストビーフのa値が7より大きいものを5段階評価の5と評価していることをもって、赤みの強いローストビーフが記載されていないということはできない。 むしろ、摘記(甲1-7)に記載されているように、甲1の実施例では、a値が大きいほどスライスされたローストビーフの赤みが強く、変色度合いが小さいことを意味するとしているのであるから、そのa値について、7より大きいものを5段階評価の5と評価していることからみて、評価が5のものは、赤みの強いローストビーフであると理解することが自然である。 したがって、被請求人の主張は採用できない。 (イ-6)請求人の加熱食肉製品ローストビーフの流通に関する主張が無効審判及び侵害訴訟の過程で変化したこと、乙74の2を引用技術として認定したと思われる甲1の発明者が認識するローストビーフ製品は加熱食肉製品であるとの主張について 被請求人は、請求人の加熱食肉製品ローストビーフの流通に関する主張が無効審判や侵害訴訟の過程で変化した旨、甲1の【0004】において記載された先行技術文献である出願公開公報の表記は誤記であり、正しいものと思われる乙74の2には加熱食肉製品に相当する方法でローストビーフを製造したことが記載されているから、甲1発明のローストビーフも加熱食肉製品である旨、請求人の主張は、甲1の誤記を前提とするものであり、誤記が無ければ甲1記載のローストビーフは加熱食肉製品である可能性が高いという被請求人の主張を理論的には認めるものである旨主張している(令和2年12月8日提出の上申書:第4~7頁)。 しかしながら、甲1発明のローストビーフに関する判断は上記(ア)において各証拠に基づいて判断したとおりである。 また、甲1に記載された先行技術文献については、摘記(甲1-2)に記載されているように、当該先行技術文献は、「酸化を防止するために、スライス面が外気に触れないようにスライスしたローストビーフをブロック状態に維持したまま真空包装する方法」が先行技術であることを示すための文献として提示されたに過ぎない上に、当該先行技術文献と甲1は別の文献であるから、当該先行技術文献に開示されたローストビーフが加熱食肉製品であるからといって、甲1発明のローストビーフも加熱食肉製品であるとはいえない。 したがって、被請求人の主張は採用できない。 (イ-7)甲1の出願前、物流面で特定加熱食品ローストビーフを宅配することができずその製品化が遅れていたことについて 被請求人は、特定加熱食肉製品であって水分活性が0.95以上のものは4℃以下で保存しなければならないと定められているところ、この規格を順守できる消費者への配送方法が無かった旨、特定加熱食肉製品の宅配便利用に見込みがついたのは、輸送温度が0~5℃のチルドゆうパックの制度が1996年に設けられてからである旨、ただ1996年にロジスティックの条件が改善され、特定加熱食肉製品の商品化に見込みがついたとしても、開発実務を勘案すると、甲1の研究着手時期に、商品を入手できる可能性は極めて低い旨、したがって、甲1発明のローストビーフは加熱食肉製品である旨主張している(令和2年12月8日提出の上申書:第7~8頁)。 しかしながら、甲1には実施例で使用されたローストビーフの出自については何ら記載がなく、宅配便で輸送されたものであるとはいえない。 また、甲1は平成9年5月28日の出願であって、1996年よりも後の出願であるから、上記チルドゆうパックが既に利用できる時期のものである。 そして、開発実務に要する歳月や甲1の研究開発に着手した時期については、証拠に基づく主張でもない。 したがって、上記被請求人の主張は、何ら証拠に基づかないものであって、この主張を採用することはできない。 (イ-8)乙72は甲1の2年後の出願であることについて 被請求人は、乙72(甲30)は甲1の2年後の出願であるから、乙72に記載された従来技術は、甲1の内容検討の対象にならない旨、また乙72は加熱食肉製品を指向したものである旨主張する(令和2年12月8日提出の上申書:第8~9頁)。 しかしながら、上記(ア-1)で示しているのは、あくまでも甲1の出願日から約2年後には、甲30の摘記(甲30-1)に記載されているように、ローストビーフの本来の色を出すには特定加熱食肉製品の製法が一般的に用いられていたことが理解できるということであり、上記(ア-3)で示しているのは、ローストビーフの本来の色を出すためには加熱食肉製品の製法ではなく、特定加熱食肉製品の製法で行う方が有利であるという技術的な事実であり、このことが乙36や乙37の記載事項と合致していることを指摘しているだけであって、乙72自体が指向している内容とも関係がない。 したがって、上記被請求人の主張は採用できない。 (イ-9)甲1記載の保存条件が、特定加熱食肉製品の法令上定められた保存条件と一致しない点に関して、請求人は甲1の誤記を原因としたことについて 被請求人は、水分活性0.95以上の特定加熱食肉製品は、4℃以下の保存が義務づけられているのに対して、甲1では5℃の保存温度が記載され、実施例でも外気温5℃の温度で保存試険が行なわれていることから、甲1発明のローストビーフは加熱食肉製品である旨主張したのに対し、請求人が「5℃」は「4℃」の誤記であると主張したが、このことは、請求人も特定加熱食肉製品であれば、0~4℃の条件設定で保存試験が行われるはずであることを認めたことを意味しており、甲1の記載が誤記でなければ、甲1記載の保存試験は特定加熱食肉製品の保存試験であるとは理解できない旨、また、請求人が自ら無効の抗弁の主引用例として選んだ甲1に誤記が含まれるのであれば、甲1の信憑性に疑いを抱かずにはいられない旨、したがって、誤記が無ければ甲1記載のローストビーフは加熱食肉製品である可能性が高いという被請求人の主張を理論的には認めるものである旨主張する(令和2年12月8日提出の上申書:第9頁)。 しかしながら、本件無効審判において、被請求人は、甲1の「5℃」は「4℃」の誤記であるという主張を行っていない。 また、甲1において5℃で保存試験が行われ、優れた品質のものが得られることが確認されれば、特定加熱食肉製品に義務付けられている4℃以下という条件で保存された場合にも優れた品質のものが得られることは確実であるから、甲1において5℃で保存試験が行われたことをもって、直ちに甲1発明のローストビーフが加熱食肉製品であるとまではいえない。 さらに、上記(イ-7)において被請求人自身が、特定加熱食肉製品の宅配便利用に見込みがついたのは、輸送温度が0~5℃のチルドゆうパックの制度が1996年に設けられてからである旨主張しているのであるから、5℃で保存試験が行われたことをもって、直ちに甲1発明のローストビーフが加熱食肉製品であるとまではいえないことはなおさらである。 また、上記(ア)の判断は、甲1に記載された保存試験の温度が5℃であることに依拠したものではないから、甲1の「5℃」という記載が誤記であるか否かについての請求人の主張、当該請求人の主張に基づく甲1記載事項に対する信憑性についての被請求人の疑念は、上記(ア)の判断を左右するものでない。 したがって、上記被請求人の主張は採用できない。 (イ-10)甲1のローストビーフが特定加熱食肉製品であれば、甲3を参考にすると炭酸ガスを発生しない脱酸素材の影響によりミオグロビンがメト化し急速に褐変するはずであるとの主張について 被請求人は、侵害訴訟において、甲1のローストビーフが特定加熱食肉製品であれば、甲3を参考にすると炭酸ガスを発生しない脱酸素材の影響によりミオグロビンがメト化し急速に褐変するはずである旨主張している(令和2年12月8日提出の上申書:第9~10頁)。 しかしながら、ミオグロビンが還元型ミオグロビン、オキシミオグロビン、メトミオグロビンに変化する反応は、摘記(乙73-1)に記載されているように、酸素分圧に影響を受けるが、酸素分圧は、包装材料の酸素透過性や包装体内を占める気体及び被包装物の容積、包装体内に存在する気体の種類と割合によって変わるものであるし、酸素分圧に応じたオキシミオグロビンのメト化の速度は摘記(乙73-2)に記載されているように温度によっても異なるところ、甲1に記載された実施例と甲3に記載された実施例とでは、これらの条件が揃っているものではないから、摘記(甲1-8)において、脱酸素材の影響によりミオグロビンがメト化し急速に褐変していないからといって、直ちに甲1発明のローストビーフが加熱食肉製品であるということはできない。 したがって、上記被請求人の主張は採用できない。 (イ-11)甲1発明での添加物の表記に関して 被請求人が加熱食肉製品は発色剤の使用が認められていると主張したのに対し、請求人が甲1発明のローストビーフに発色剤が使用されているのであれば甲1に記載されていなければならない旨主張した点に関し、被請求人は、甲1の出願人及び発明者はローストビーフの生産業者ではなく、包装発明の対象であるローストビーフの添加物の詳細な内容まで包装発明の明細書に記載することは通常ありえない旨、したがって請求人の主張には根拠が乏しい旨主張している(令和2年12月8日提出の上申書:第10~11頁)。 上記(ア)の判断は、甲1発明のローストビーフが添加物を含有するか否かに依拠したものではないから、上記被請求人の主張には意味がない。 (イ-12)甲1発明の保存効果について 請求人は、甲1の流通温度が0~5℃において1週間程度保存することが可能になったとの記載は、甲1発明のローストビーフが特定加熱食肉製品であると認定する根拠である旨主張しているのに対し、被請求人は、仮に、特定加熟食肉製品でスライスされたローストビーフが1週間保存できるとすれば、当時として画期的な効果であり特許を取得する可能性が高いが、甲1は審査において、拒絶理由通知に対する意見書を出すことも無く拒絶査定が確定しており、請求人の主張には根拠が乏しい旨主張している(令和2年12月8日提出の上申書:第11頁)。 しかしながら、甲1がどのような審査経過をたどったかは、甲1発明の認定とは関係のないことであるから、上記被請求人の主張は採用できない。 (ウ)小括 したがって、甲1発明の「ローストビーフ」は、特定加熱食肉製品といえる。 イ 本件発明1と甲1発明との対比 甲1発明の「ローストビーフ」は、上記アにおいて検討したとおり、特定加熱食肉製品といえるから、本件発明1の「特定加熱食肉製品」に相当する。 また、甲1発明の「脱酸素剤」は、本件発明1の「非鉄系脱酸素材」と、「脱酸素材」の限度で一致し、甲1発明の「包装方法」は、本件発明1の「製造方法」に相当する。 さらに、甲1発明の「酸素ガスバリア性材料からなる容器内に配置し、前記容器内を窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス雰囲気に置換した後、該容器を密封」することは、本件発明1の「ガスバリア性を有する包材に密封する工程」及び「スライスされた上記特定加熱食肉製品は、ガスバリア性を有する包材に密封された状態」となることに相当すると解することができる。 以上から、本件発明1と甲1発明とを対比すると、 「特定加熱食肉製品をスライスする工程と、スライスされた特定加熱食肉製品を脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程とを含み、スライスされた特定加熱食肉製品は、ガスバリア性を有する包材に密封された状態となっている、特定加熱食肉製品の製造方法。」の点で一致し、下記の点で相違する。 相違点1:本件発明1では「スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」を含むのに対し、甲1発明では「スライスされたローストビーフをトレイ上に並べる工程」と特定され、「還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」が特定されていない点。 相違点2:脱酸素材について、本件発明1では「非鉄系」脱酸素材を用いているのに対し、甲1発明では脱酸素剤と特定され、「非鉄系」であることが特定されていない点。 相違点3:本件発明1では「当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが50%未満、還元型ミオグロビンが34%以上となる割合となっている」と特定しているのに対し、甲1発明ではミオグロビンの種類の割合は特定されていない点。 ウ 判断 (ア)相違点1について 甲2をみると、摘記(甲2-2)から、肉などのミオグロビンを含む食品を、冷却する前に酸素が減少した低酸素状態とすると、食品の鮮度は維持できるが、食品が紫赤色に変色してしまうという課題があったところ、摘記(甲2-1)に記載されているように、食品を冷却するとともに、酸化を維持する期間を設けた後に、酸素を減少させて低酸素状態とすれば、食品の鮮度が維持できる上に、鮮やかな赤色も維持できるという技術的事項が把握できる。 そして摘記(甲2-3)によれば、上記技術的事項は、食品中には【数1】に表されているように、還元状態のミオグロビンとオキシミオグロビンが可逆的平衡状態で存在しているところ、酸化を維持する期間を設けると、その期間中酸素分圧がほぼ一定に維持されているから、紫赤色を呈する還元状態のミオグロビンが酸素によって酸化されて鮮やかな赤色のオキシミオグロビンとなる一方で、オキシミオグロビンがミオグロビンになる還元反応が抑制され、結果として紫赤色を呈するミオグロビンの割合が減って、鮮やかな赤色を呈するオキシミオグロビンの割合が増えることにより、もたらされる技術的事項であると理解できる。 さらに、摘記(甲2-4)には、牛肉を用いた例で1時間酸素の減少をさせず、その後、酸素の減少をさせたところ、鮮やかな赤色を維持できたことが具体的に記載されており、上記技術的事項が具体的に確認されているといえる。 甲1発明は、摘記(甲1-3)から、消費者への有効な視覚的アピールをすることが可能なスライスされたローストビーフの包装方法及び包装体の提供を目的としたものであって、特に摘記(甲1-3)の【0007】及び【0009】の記載からみて、その視覚的アピールには、製造業者によってスライスされたローストビーフが消費者の手に渡るまでの流通段階におけるローストビーフの色調が含まれているものと理解され、摘記(甲1-7)においても具体的に赤みの強さに基づいた色の評価を行っている。 そうすると、甲1発明において、より消費者への有効な視覚的アピールができる、赤みの強いローストビーフを製造することを目的として、甲2に記載された、肉などのミオグロビンを含有する食品の鮮度と鮮やかな赤色を維持するための技術的事項である、食品に対して酸化を維持する期間を設け、その後、酸素を減少させる構成を採用することに困難性はない。 (イ)相違点2について 摘記(甲3-1)及び摘記(甲3-2)から、生肉を脱酸素剤を用いて無酸素状態に置くことで保存すると、赤紫色あるいは赤黒く変色するという課題があったところ、「酸素を吸収すると同時に炭酸ガスを発生させる脱酸素剤」を用いて、炭酸ガスを発生させながら酸素濃度を低下させ、無酸素状態に置くことで保存すると、鮮やかな赤色を保持できるという技術的事項が把握できる。 そして、上記技術的事項は、摘記(甲3-2)から、生肉を脱酸素剤を用いて無酸素状態に置くと、ミオグロビンがメト化して褐変し、さらに脱酸素後にメトミオグロビン還元酵素の働きでメトミオグロビンが還元型ミオグロビンに変化して、赤紫色になっていたところ、酸素を吸収すると同時に炭酸ガスを発生させる脱酸素剤を用いると、「生肉の褐変が生じにくく、脱酸素後においても酸素型ミオグロビンの色調であるあざやかに赤い色調に近い赤みを保持することが出来る」ことによってもたらされる事項であると理解できる。 ここで「生肉の褐変が生じにく」いの「褐変」とはミオグロビンがメト化した時の色調の変化であるから、「生肉の褐変が生じにくく、脱酸素後においても酸素型ミオグロビンの色調であるあざやかに赤い色調に近い赤みを保持することが出来る」とは、「酸素を吸収すると同時に炭酸ガスを発生させる脱酸素剤」を用いると、ミオグロビンのメト化を防ぎ、酸素型ミオグロビンを維持できるということを意味していると理解できる。 そして、摘記(甲3-3)には、「酸素を吸収すると同時に炭酸ガスを発生させる脱酸素剤」としてエージレスG-200を用い、生の牛ひき肉の色を赤色のまま保存できることを確認した具体例が、甲3における唯一の具体例として記載され、これに対し、脱酸素剤としてエージレスS-200を用いた比較例では生の牛ひき肉の色が赤みのない褐色又は褐赤色となったことが記載されている。 また、甲13の記載から、摘記(甲3-3)の実施例1で用いられた炭酸ガス発生型脱酸素剤であるエージレスG-200は非鉄系であり比較例1で用いられた炭酸ガスを発生しない脱酸素剤であるエージレスS-200は鉄系の脱酸素剤であることが理解できる。 甲1発明は、摘記(甲1-3)から、消費者への有効な視覚的アピールをすることが可能なスライスされたローストビーフの包装方法及び包装体の提供を目的としたものであって、特に摘記(甲1-3)の【0007】及び【0009】の記載からみて、その視覚的アピールには、製造業者によってスライスされたローストビーフが消費者の手に渡るまでの流通段階におけるローストビーフの色調が含まれているものと理解され、摘記(甲1-7)においても具体的に赤みの強さに基づいた色の評価を行っている。 しかも、甲1発明は、上記の目的を達成するにあたり、容器内を窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス雰囲気に置換した後に密封するものであるが、摘記(甲1-5)から、窒素ガスに限らず、窒素ガスと二酸化炭素ガスの混合ガスや二酸化炭素ガスも使用できるものであり、窒素ガスと二酸化炭素ガスの混合ガスや二酸化炭素ガスを用いると甲1発明の目的である消費者への有効な視覚的アピールに加え、静菌効果が向上するという好ましい効果もあるというものである。 さらに、ローストビーフであっても、生肉であってもその色調について、酸素型ミオグロビンにより、赤色の色調になることは、当業者にとって技術常識であるといえる(甲5:摘記(甲5-1)~(甲5-3)、甲6:摘記(甲6-1)~(甲6-4))。 そうすると、甲1発明の脱酸素剤として、より消費者への有効な視覚的アピールができる、赤みの強いローストビーフを製造することを目的として、甲3に記載された、ミオグロビンの変化に基づく生肉の鮮やかな赤色を保持するための技術的事項である、「酸素を吸収すると同時に炭酸ガスを発生させる脱酸素剤」として、甲3において唯一具体的に効果が確認されている非鉄系のエージレスG-200やこれと同種の脱酸素剤、すなわち非鉄系脱酸素剤を採用することは、当業者が容易になし得ることである。 (ウ)相違点3について 相違点3に係る本件発明1の構成は、「特定加熱食肉製品をスライスする工程と、スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程と、当該酸素化する工程の後、スライスされた特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程とを含」むという、本件発明1の構成を採用した製造方法で製造した特定加熱食肉製品が必然的に備えるパラメータを規定したものであると理解できる。 このことは、本件特許明細書(段落【0034】、【0044】等)の記載をみても、所定の値を得るために上記本件発明1の構成を採用すること以外に何らかの特別な操作を必要とするという説明はされておらず、製造したものを測定した結果得られた値を、単に本件発明1に定められたパラメータとして表示したものにすぎないことと合致する。 技術常識から考えても、甲1発明において、ローストビーフスライスを得た時点では新鮮なものが使用されているから、還元型ミオグロビンは多くの割合を占めるはずで、甲2に記載された効果を期待して、これを酸素化に供しても十分に残存するといえる。 一方、甲2から理解される技術的事項は、上記(ア)において検討したとおり、ミオグロビンを含む食品を、酸化を維持する期間を設けた後に、酸素を減少させて低酸素状態とすれば、還元型ミオグロビンがオキシミオグロビンとなり、オキシミオグロビンが還元型ミオグロビンになる還元反応が抑制され、オキシミオグロビンの割合が増えて、食品の鮮やかな赤色を維持できるというものであって、これは、本件発明1における「還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」に相当する工程を行うものであるから、甲1発明において甲2に記載された技術的事項を適用して得られたローストビーフにはオキシミオグロビンが十分に存在することが理解できる。 また、甲3から理解される技術的事項は、上記(イ)において検討したとおり、生肉を酸素を吸収すると同時に炭酸ガスを発生させる脱酸素剤(実施例では非鉄系)を用いることにより、ミオグロビンのメト化を防ぎ、オキシミオグロビンを維持できるため、脱酸素後もオキシミオグロビンの鮮やかな赤い色調に近い赤味を保持することができるものであるから、甲1発明において甲3に記載された技術的事項を適用して得られたローストビーフにはオキシミオグロビンが十分に存在することが理解できる。 さらに、甲4には、30~40%がメトミオグロビンとなると、肉の変色が目に見えて悪くなることが記載され、乙4には「MMbが40~50%以上になると明瞭に色調の劣化が認められるようになります。」と記載されているから、特に色調を含む消費者への有効な視覚的アピールをすることを目的としている甲1発明において(摘記(甲1-3))、メトミオグロビンは、50%未満であった蓋然性が高い。 これらのことを考慮すると、上記(ア)(イ)において検討したとおり、相違点1及び2について、甲1発明に、甲2に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項を適用して、消費者への有効な視覚的アピールができる、赤みの強いローストビーフを製造するためにより好ましい構成を採用した場合には、得られたローストビーフは、相違点3に係るパラメータを満足する蓋然性が高い。 また、本件発明1のオキシミオグロビン、メトミオグロビン及び還元型ミオグロビンの割合は、本件特許明細書の【0009】等によれば、ローストビーフの良好な色調を呈する範囲を意味しているといえるが、甲1発明も、消費者への有効な視覚的アピールができ、赤みの強いローストビーフを製造することを目的とするものであるから、甲1発明に、甲2及び甲3に記載された技術的事項を適用したものにおいて、消費者への有効な視覚的アピールができ、赤みの強いローストビーフを製造することを目的として、肉等の赤みの発色に関連することが知られているオキシミオグロビン、メトミオグロビン及び還元型ミオグロビンの割合を、本件発明1の範囲に重複するものとすることは、当業者であれば容易に想到し得るといえる。 エ 被請求人の主張について (ア)甲1と甲2の技術分野が相違するという主張について 被請求人は、甲1はローストビーフの包装方法に関する発明であるのに対し、甲2は冷蔵庫等に関する発明であり、ローストビーフを製造する当業者は甲2にたどりつかない旨、甲1と甲2の技術分野は明確に異なる旨を主張している(答弁書:第17頁、令和1年11月15日提出の上申書:第10頁~13頁、令和2年7月6日提出の上申書:第9頁~10頁、第14~15頁)。 また、被請求人は、甲1のローストビーフは加熱食肉製品であるのに対し、甲2記載の冷凍条件下で保存される生肉とは物質としての性質が異なるから、科学的に考えて、この両者を「ミオグロビンを含む赤色の食品の赤色を維持した状態で貯蔵する方法」という点で共通の技術分野とすることはできない旨主張している(令和2年12月8日提出の上申書:第12頁第14~21行)。 しかしながら、上記アにおいて検討したとおり、甲1発明のローストビーフは特定加熱食肉製品であると認められる。 そして、上記ウ(ア)において検討したとおり、甲1には、ミオグロビンを含む食品であることが知られているローストビーフの品質の一つとして色調にも着目した発明が記載されており、甲2には肉などのミオグロビンを含む赤色の食品について、ミオグロビンが還元状態で紫赤色、酸化状態で鮮やかな赤色となること、酸素分圧を一定にする期間を設けた後に酸素を減少させると還元状態のミオグロビンと酸化状態のミオグロビンの割合を調節できることに着目した技術について記載されているから(摘記(甲2-2)、(甲2-3))、甲1発明と甲2に記載された技術的事項には技術的な関連性があり、酸化、還元状態等のミオグロビンを含む食品であるローストビーフを製造する当業者が甲2にたどりつかないとまではいえない。 また、仮に甲2に記載された発明自体は冷凍技術が不可分だとしても、食品を酸素の減少をさせない状態で維持する時間を設けることで、還元状態のミオグロビンがオキシミオグロビンとなるという技術的事項は甲2に記載されており(摘記(甲2-3)、(甲2-4))、このことは、摘記(乙73-1)に記載されている、低いpO2(酸素分圧)では還元型ミオグロビンはメトミオグロビンに変化するが、高いpO2(酸素分圧)では還元型ミオグロビンがオキシミオグロビンになるという技術常識とも整合した事項であって、摘記(乙73-2)の記載から、0℃や10℃でも、進行速度は異なっても現象としては同じことが生じることが理解できるから、上記技術的事項は、冷凍条件下限定の事項であるとは認められない。 さらに、本件発明も冷気を用いた場所で酸素化を行うことについて排除されていないのだから、被請求人の主張は採用できない。 (イ)甲1と甲2及び甲3の課題が相違し、組み合わせる動機付けがないとという主張について 被請求人は、甲1ではローストビーフの乾燥度と包装体の減圧による変形度合を外観評価の指標としており、外観評価の指標に色彩は含まれていないこと、また、保存中の外観の赤色を評価する試験ではなく、保存後開封し30分経過した後の色を測定しているに過ぎないこと旨、したがって、甲1発明には「鮮やかな赤色を維持しつつ」という課題は含まれておらず、甲2及び甲3とは課題が異なる旨を主張している(令和2年7月6日提出の上申書:第10~11頁、第22~23頁、令和2年12月8日提出の上申書:第12頁、第17~19頁、第21~23頁)。 しかしながら、摘記(甲1-3)の特に【0007】及び【0009】の記載からみて、甲1発明が解決しようとする従来技術の課題として、スライスされたローストビーフの品質の一つとして、特に色調を消費者にアピールできないことが挙げられており、甲1発明の課題である消費者への有効な視覚的アピールの中には製造業者によってスライスされたローストビーフが消費者の手に渡るまでの流通段階におけるローストビーフの色調が含まれているといえ、これは流通段階における消費者に対するものであるから、当然保存中の色調であるといえる。 また、摘記(甲1-7)にはa値について、「この数値が大きいほどスライスされたローストビーフ2の赤みが強く、変色度合いが小さいことを意味する。」と記載されているから、包装前の赤みからの変色度合いが小さく、保存を経て、開封30分後も赤みが強いものは、当然保存中も赤みが強いものといえる。 さらに、スライスされたローストビーフの包装体について、消費者が新鮮な印象を有する赤みの強いものを欲することは一般的なことである。 これらのことから、甲1発明には「鮮やかな赤色を維持しつつ」という課題は含まれておらず、甲2及び甲3と組み合わせる動機付けがないという被請求人の主張は採用できない。 (ウ)甲1と甲2の作用、機能が相違するという主張について 被請求人は、甲1と甲2の間には作用の共通点は無く、甲2には甲1の課題であるスライス化ローストビーフ包装体の保存に関する機能は一切記載されていない旨主張する(令和2年7月6日提出の上申書:第11頁、第15~16頁)。 しかしながら、甲1発明はローストビーフの色調にも着目した発明であり、甲2に記載された技術的事項はミオグロビンを含む食品における還元型ミオグロビンとオキシミオグロビンの割合を調節してその色調を調節することに関する事項であるから、作用、機能には関連性があり、上記被請求人の主張は採用できない。 (エ)甲1に甲2を適用する示唆がないという主張について 被請求人は、甲1には「鮮やかな赤色を維持しつつ」という課題が含まれておらず、また、甲1の解決手段には甲2記載の技術的事項を示唆する内容がない旨主張している(令和2年7月6日提出の上申書:第11頁)。 しかしながら、甲1発明にローストビーフの色調に関する課題が含まれていたことは上記(イ)で述べたとおりであり、上記ウ(ア)では、甲1発明に対して、さらにローストビーフの色調を向上させるために、甲2記載の技術的事項を適用することについて検討しているのであって、甲1発明の解決手段として甲2記載の技術的事項が示唆されている必要はない。 したがって、上記被請求人の主張は採用できない。 (オ)相違点1は甲2記載事項から直接的には導けないという主張について 被請求人は、甲2の酸化工程は冷凍技術と一体不可分である旨、甲2の効果として食肉が鮮やかな赤色を示すのは冷凍条件と限定されており、それ以外での条件での鮮赤色化は一切記載されていない旨、甲2は冷凍化という特殊条件下で酸素を減少させることにより、鮮赤色化(オキシミオグロビンの維持)の持続という効果を得ているが、本件発明は、非冷凍下でオキシミオグロビンと還元型ミオグロビンの配合バランスによりローストビーフらしい色彩を呈するという効果を奏するものである旨、甲2記載の発明では、消費者が肉色を確認するのは、冷凍品を解凍した後の食肉のオキシミオグロビンによる赤色の色彩であるのに対し、本件特許発明は、包装体中の特定加熱食肉製品ローストビーフの褐変を防止して優れた肉色を維持させることであり、生肉と異なり特定加熱食肉製品の場合は、過剰なオキシミオグロビンの存在はメト化を誘発させる恐れもあるから、本件特許発明の課題は甲2記載の生肉の赤色を維持させる技術を用いて達成することはできない旨主張している(答弁書:第18~19頁、令和1年11月15日提出の上申書:第13頁、令和2年7月6日提出の上申書:第11~14頁、第15~16頁、令和2年12月8日提出の上申書:第12~13頁)。 しかしながら、摘記(甲2-3)の記載は、還元状態のミオグロビンとオキシミオグロビンの割合が酸素分圧によって調節されることを示唆しているにとどまり、冷凍条件によって調節されることを示唆している訳ではない。このことは摘記(乙73-1)の記載とも合致しており、冷凍条件下に限定されることではないことは上記(ア)でも述べたとおりである。 また、摘記(甲2-1)では食品に対して冷気を供給し、食品を冷却することが記載されているにとどまり、冷凍までは要求していない。 さらに、本件発明も冷気を用いた場所で酸素化を行うことについて排除されていないのだから、被請求人の主張は採用できない。 そして、ミオグロビンを含有する食品であれば、還元状態のミオグロビンとオキシミオグロビンが酸素分圧によってどのミオグロビン誘導体に変化するかは、同じ機序に従うものと考えられるところ、「生肉と異なり特定加熱食肉製品の場合は、過剰なオキシミオグロビンの存在はメト化を誘発させる恐れもある」との被請求人の主張は、何ら証拠に基づくものでないから、採用できない。 (カ)甲3は「非鉄系脱酸素剤」を選択することを示唆していない、相違点2は甲3の記載内容のみからは導けないという主張について 被請求人は、甲3は「酸素を吸収すると同時に炭酸ガスを発生する脱酸素剤」と特定しており、「非鉄系脱酸素剤」とは特定しておらず、鉄系の脱酸素剤を明らかに含んでいる旨、甲13には脱酸素剤の用途として特定加熱食肉製品は一切記載されていない旨、甲27には非鉄系酸素吸収剤は鉄系酸素吸収剤に比べて反応が遅いと記載されている旨、鉄系脱酸素剤を排除する必要はないから、甲3においてたまたま非鉄系炭酸ガスを発生させる型の脱酸素剤が使用されていたとしても、あえて反応速度が遅い非鉄系脱酸素剤に変える理由はない旨、甲13、甲27は甲3記載の脱酸素剤を用いる際の阻害事由を示している旨、相違点2は甲3の記載事項から導けず、補助引例である甲13及び甲27の解釈が必要であり、複数の段階を経なければ至ることはできず、容易とはいえない旨を主張している(答弁書:第21~23頁、令和2年7月6日提出の上申書:第18~19行、第23~24頁、令和2年12月8日提出の上申書:第13~16頁、第20~21頁)。 しかしながら、上記ウ(イ)において検討したとおり、「脱酸素後においても酸素型ミオグロビンの色調であるあざやかに赤い色調に近い赤みを保持することが出来る」という甲3の効果を奏することが具体的に確認されている「酸素を吸収すると同時に炭酸ガスを発生する脱酸素剤」は「エージレスG-200」のみなのであるから、甲3に接した当業者であれば、「酸素を吸収すると同時に炭酸ガスを発生する脱酸素剤」としてまずは非鉄系脱酸素剤である「エージレスG-200」を用いることが自然である。 そして、上記ウ(イ)のとおり、甲13は甲3に記載された「エージレスG-200」が具体的に何であるかを示す文献にすぎず、甲1と組み合わせているのはあくまでも甲3に記載された技術的事項である。 したがって、上記被請求人の主張は採用できない。 (キ)甲3は肉の変色防止に二酸化炭素を利用する技術であるという主張について 被請求人は、甲3及び乙48から、甲3の発明者は肉の色保持に関し、二酸化炭素の発生時期こそが重要であると考えており、鉄系脱酸素剤に着目することは困難であったから、非鉄系脱酸素剤を特定加熱食肉製品に適用することは容易に想到できるものでなかった旨主張している(令和2年7月6日提出の上申書:第19~20頁)。 しかしながら、上記ウ(イ)において検討したとおり、「脱酸素後においても酸素型ミオグロビンの色調であるあざやかに赤い色調に近い赤みを保持することが出来る」という甲3の効果を奏することが具体的に確認されている「酸素を吸収すると同時に炭酸ガスを発生する脱酸素剤」は「エージレスG-200」のみなのであるから、甲3に接した当業者であれば、「酸素を吸収すると同時に炭酸ガスを発生する脱酸素剤」としてまずは非鉄系脱酸素剤である「エージレスG-200」を用いることが自然である。 したがって、上記被請求人の主張は採用できない。 (ク)本件発明は非鉄系脱酸素剤を用いるものであって、二酸化炭素を必要としないという主張について 被請求人は、乙49を提出し、鉄系脱酸素剤、炭酸ガスを発生するタイプの非鉄系脱酸素剤、炭酸ガスを発生しないタイプの非鉄系脱酸素剤を用いて特定加熱食肉製品スライスの保存における色調の比較実験を行い、非鉄系脱酸素剤であれば炭酸ガスの発生の有無によらず、鮮赤色を維持できる旨、本件発明者らは鉄系脱酸素剤が特定加熱食肉製品スライスの保存における変色に関連していることを初めて見出したから、容易とはいえない旨主張している(令和2年7月6日提出の上申書:第20頁、令和2年8月24日提出の上申書:第3頁)。 しかしながら、本件発明は非鉄系脱酸素剤として炭酸ガスを発生するタイプのものを使用することを排除していないから、上記ウ(イ)において検討したとおりであり、上記被請求人の主張は採用できない。 (ケ)甲5と甲6は本件発明と関連性がないという主張について 被請求人は、甲5には食肉(生肉)に、甲6には食肉、魚肉、加工品に関する技術がそれぞれ示されているが、これらはローストビーフと他の食肉製品が等価ということを示しておらず、したがって、甲1発明と甲2の技術的事項は組合せられない旨主張している(答弁書:第17頁~第21頁)。 また、被請求人は、甲5及び甲6は本件発明とは異なる加熱食肉製品に関する技術であること、相違点2の課題とする脱酸素剤の特定とは全く関係がない旨を主張している(令和2年7月6日提出の上申書:第21~22頁)。 しかしながら、甲5及び甲6は、生肉のみならず、食肉加工品であっても、色の変化はミオグロビンの変化により起こされること、特に食肉本来の鮮やかな赤色はオキシミオグロビンによって呈されること(摘記(甲5-3)、(甲6-2)、(甲6-3))、鮮やかな赤色となる機序は、ローストビーフにも当てはまるという(摘記(甲5-2)、(甲6-4))、技術常識を示す文献として用いたものにすぎない。 そして、上記ウ(ア)(イ)は、このような技術常識もふまえて、甲1発明に甲2記載の技術的事項や甲3記載の技術的事項を適用することができると判断したものであり、上記出願人の主張は採用できない。 (コ)メトミオグロビン還元酵素に関する主張について 被請求人は、相違点2において、ローストビーフには、メトミオグロビン還元酵素が存在しないため、甲3、甲7のように、メトミオグロビン還元酵素の働きを前提とする生肉を用いた技術的事項を組合せることは出来ない旨、甲3は初期に生肉の褐変が生じないことを述べているだけで、炭酸ガスの発生により初期のメト化が防げたとしても、保存中の食肉のメト化は防げない旨主張する(答弁書:第25頁~第27頁及び第29頁、令和1年11月15日提出の上申書:第20頁~第22頁、令和2年7月6日提出の上申書:第23~24頁、、令和2年12月8日提出の上申書:第17頁)。 しかしながら、上記ウ(イ)において検討したように、甲3に記載された技術的事項は、ミオグロビンのメト化を防ぎ、オキシミオグロビンを維持するために「酸素を吸収すると同時に炭酸ガスを発生させる脱酸素剤」を用いるというものであり、そもそもメトミオグロビン還元酵素が還元する対象であるメトミオグロビンを増加させないというものであるから、メトミオグロビン還元酵素の働きとは関係ないと理解するのが相当である。 また、甲3には保存中にミオグロビンがメト化することについては記載されておらず(摘示(甲3-3)の表-1では実施例1の場合少なくとも13日後にも赤色に維持されていることが示されている)、この点についても、甲3に記載された技術的事項がメトミオグロビン還元酵素の働きを前提としたものとはいえない。 甲7についても、直接酵素に関する記載がされているとはいえず、酵素の働きが前提であるとする被請求人の主張は採用できない。 (サ)侵害訴訟における請求人の主張は、甲1と甲3の動機付けを否定するものであるとの主張について 被請求人は、侵害訴訟において、甲1のローストビーフが特定加熱食肉製品であれば、甲3を参考にすると炭酸ガスを発生しない脱酸素材の影響によりミオグロビンがメト化し急速に褐変するはずであるが、甲1の記載は赤味を保持しているから、甲1のローストビーフは加熱食肉製品であると主張したのに対し、請求人が甲1や甲3には誤記等の誤りがある可能性があるから、甲1及び甲3に記載された事項が全て正しいとはいえない上に、甲1及び甲3に記載された実施例は種々の条件が一致しないものであるから、甲1が特定加熱食肉製品であっても、ミオグロビンがメト化し急速に褐変するとはいえないと主張した点について、請求人は甲1及び甲3の証拠としての信憑性に疑義があること、甲3の具体例は甲1と組み合わせることが難しいことを示している旨主張している(令和2年12月8日提出の上申書:第9~10頁)。 しかしながら、甲1の摘記(甲1-8)において、脱酸素材の影響によりミオグロビンがメト化し急速に褐変していないからといって、直ちに甲1発明のローストビーフが加熱食肉製品であるということはできないことは、上記ア(イ-10)のとおりである。 そして、相違点2については上記ウ(イ)において判断したとおりであるから、上記被請求人の主張は採用できない。 (シ)請求人が甲3の記載を誤記であると主張した点について 被請求人は、侵害訴訟において、請求人が特許出願の公開公報には誤記等の不備があることもまれではないから、甲3の「脱酸素材としては例えば鉄粉・・・を主たる有効成分とするCO2発生型の脱酸素材が使用される」との記載から直ちに甲3は鉄系脱酸素材でも構わない旨を明記していると認定できるのかは明らかではないと主張した点について、誤記の存在を前提として甲3を解釈することは許されない旨主張している(令和2年12月8日提出の上申書:第15~16頁)。 しかしながら、甲3の記載が誤記である旨は本件無効審判において主張された事項ではない。 また、相違点2については上記ウ(イ)のとおりであるから、上記出願人の主張は採用できない。 (ス)甲1、甲2、甲3の記載から相違点3を導くことができない、甲1発明に甲2記載の技術的事項及び甲3記載の技術的事項を組み合わせると相違点3が満たされる蓋然性が高いという判断は具体的な根拠がなく反論の対象にならないという主張について 被請求人は、甲1は流通温度が0~5℃の発明であるのに対して、甲2の発明は冷凍化条件下の発明であって、甲1と甲2を組み合わせることはできず、甲1の包装中の色彩は本件発明より基準のa値が半分程度と見劣りするものであり、冷凍条件下に保存するものでもないから、本件発明のパラメータを導くことは不可能である旨、本件発明は包装体の中のミオグロビンの組成を測定することを特徴とするが、甲3には主観的な色彩観測がなされているだけで、データの客観性がない旨、本件発明においては酸化型ミオグロビンによる還元型ミオグロビンへの脱酸素化や還元型ミオグロビンの安定化を重視し、一定の還元型ミオグロビンが存在するミオグロビン組成を規定しているのであって、甲1発明に甲3発明を適用してできるものではない旨、甲1のa値の基準が低い基準であるから、甲1のメトミオグロビン値が50%以下であるという推論は成り立たない旨、甲1発明に甲2記載の技術的事項及び甲3記載の技術的事項を組み合わせると相違点3が満たされる蓋然性が高いという判断は具体的な根拠がなく反論の対象にならない旨主張する(令和2年7月6日提出の上申書:第25~27頁、令和2年12月8日提出の上申書:第23~24頁)。 しかしながら、上記ウ(ウ)において検討したように、相違点3は、甲1発明に甲2記載の技術的事項及び甲3記載の技術的事項を適用することにより、自ずと達成されるものと理解されるから、甲1に記載されたa値が低いこと、甲1は冷凍条件下に保存するものでないこと、甲3に客観的なデータが記載されていないことといった、各証拠それぞれの記載事項は関係がない。 また、甲1発明に甲2記載の技術的事項及び甲3記載の技術的事項を適用すると相違点3が満たされる蓋然性が高いという判断の根拠は、上記ウ(ウ)のとおりである。 したがって、上記被請求人の主張は採用できない。 (セ)甲1の構成を変える動機付けがない、架空の改善要望に対して組合せができないという主張について 被請求人は、甲1の方法で好適なローストビーフが得られていたのだから、既に課題が解決されており、その構成を変える動機付けがない旨主張する(答弁書:第27頁)。 しかしながら、甲1には、消費者の手に渡るまで視覚的アピールをすることは課題であることが認識されている(摘記(甲1-3))。 そして、当業者がより優れた効果を奏するものを求めるのは通常のことであり、視覚的アピールをより向上させるために、ミオグロビンの変化に基づいて赤い色調の肉を得られる甲2及び甲3の技術的事項を用いることは、当業者にとって容易になし得ることにすぎず、被請求人のこの主張も採用できない。 (ソ)脱酸素剤の単独使用及び炭酸ガスの併用に関する主張について 被請求人は、甲1には、脱酸素剤を単独使用することは記載されておらず、窒素ガス、炭酸ガスが併用されることが記載されており、脱酸素材の単独使用を動機付けする記載はない旨主張する(答弁書:第30頁~第32頁、令和1年11月15日提出の上申書:第27頁~第29頁)。 しかしながら、本件発明1では、脱酸素剤とガスを併用することについて排除しているわけではなく、被請求人の主張のとおり、甲1には脱酸素剤の単独使用が記載されていなかったとしても、本件発明1との関係で新たな相違点とはならないから、上記主張は採用できない。 また、被請求人は、甲3に記載された方法では16.5%~20.5%の比較的高い炭酸ガスが存在する一方で、甲1に記載された方法において、窒素ガスを用いていることは、炭酸ガスだと色彩が悪くなると理解でき、当業者がこのようなガスを用いることは好まない旨の主張もしているが、甲1の記載(摘記(甲1-5))から、甲1発明の目的である消費者への有効な視覚的アピールを達成するには、窒素ガスも炭酸ガスも同様に用いられ、しかも窒素ガスと炭酸ガスの混合ガスや炭酸ガスを用いた場合には静菌効果も向上すると解するのが自然であり、炭酸ガスだと色彩が悪くなると理解するべき理由はないから、この主張も採用できない。 オ 小括 上記のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明に甲2及び甲3に記載された技術的事項を組合せて当業者が容易に発明をすることができたものである。 2 無効理由2について 本件発明2は、本件発明1を引用し、非鉄系脱酸素材とともに鉄系脱酸素材を37.5%以下(非鉄系脱酸素材と鉄系脱酸素材の合計量を100%とし、鉄系脱酸素材0%の場合を除く)の割合で使用することを特定したものである。 甲13に記載されたとおり、脱酸素剤は大きく分けて鉄系、非鉄系の2種類のタイプのものが知られているが、鉄系のものも非鉄系のものも酸素を吸収するという機能の点では同様に使用できることは周知であるから、甲1発明の脱酸素剤として、甲3に記載された技術的事項に基づいて酸素を吸収すると同時に炭酸ガスを発生させる非鉄系脱酸素剤に加え、酸素を吸収すると同時に炭酸ガスを発生させる非鉄系脱酸素剤の効果を損なわない程度に適宜の割合で非鉄系脱酸素材と鉄系脱酸素材を併用することも当業者が容易に発明をすることができたものである。 そして、本件特許明細書【0056】の表1をみると、鉄系比率が0.0%の場合と鉄系比率が37.5%の場合では、その色調に差はないから、甲1発明の脱酸素剤として、非鉄系脱酸素材とともに鉄系脱酸素材を37.5%以下(非鉄系脱酸素材と鉄系脱酸素材の合計量を100%とし、鉄系脱酸素材0%の場合を除く)の割合で使用することにより、格別の効果を奏するものとはいえない。 被請求人は、甲13には特定加熱食肉製品ローストビーフに好適な脱酸素剤は記載されていない旨、甲13及び甲3には非鉄系脱酸素剤及び鉄系脱酸素剤を組み合わせて使用することは記載されておらず、容易ではない旨主張している(令和2年7月6日提出の上申書:第29頁) しかしながら、甲13は酸素を吸収する脱酸素剤には大きく分けて鉄系のものと非鉄系のものが知られているという技術常識を示した文献として示したものにすぎない。 そして、非鉄系脱酸素剤及び鉄系脱酸素剤を組み合わせて使用することについては上記検討のとおりであるから、被請求人の主張は採用できない。 3 無効理由3について (1)本件発明3について 本件発明3は、本件発明1を引用して、包材内の酸素濃度が検出限界以下となった後、当該包材内を真空引きする工程を有することを更に特定したものである。 ア 対比 甲1発明と本件発明3とを対比すると、上記1(2)イの相違点1~3に加えて、少なくとも以下の相違点がある。 相違点4:本件発明3では、包材内の酸素濃度が検出限界以下となった後、当該包材内を真空引きする工程を含むのに対し、甲1発明では、真空引きする工程が特定されていない点。 イ 判断 甲1には、従来技術として真空引きする方法が記載されている(摘記(甲1-2))。また、甲8には、真空包装と脱酸素剤、炭酸ガス発生型脱酸素剤等の併用が(摘記(甲8-3))、甲10には、腐敗を防止する目的で、包装体内を真空状態で包装する真空包装したり、包装体内を所望のガスにて密封するガス置換包装する方法(摘記(甲10-1)~(甲10-4))が記載されている。 ここから、真空包装をすることやその際に真空引きをすること自体は周知であったといえる。 しかしながら、本件発明3は、包材内の酸素濃度が検出限界以下となった後に真空引きするという工程を含んでいるのであって、単に包材内の真空引きをするという方法ではないから、甲1発明に周知の技術であった真空引きの技術を適用したとしても、それが酸素濃度が検出限界以下になった後かどうかが特定されず、相違点4の構成とはならない。 上記のとおりであるから、本件発明3は、甲1発明に甲2及び甲3に記載された技術的事項を組合せたとしても当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (2)本件発明4について 本件発明4は、本件発明3を引用して、包材内から非鉄系脱酸素材を取り除いた後に真空引きをすることを特定したものである。 そして、上記(1)で示したとおり、本件発明3は、甲1発明に甲2及び甲3に記載された技術的事項を組合せたとしても当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、本件発明4についても、甲1発明に甲2及び甲3に記載された技術的事項を組合せたとしても当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 4 無効理由4について (1)本件発明5と甲1発明との対比 上記1(2)イにおいて検討したのと同様に、甲1発明の「ローストビーフ」は本件発明5の「特定加熱食肉製品」に相当し、甲1発明の「脱酸素剤」は、本件発明5の「非鉄系脱酸素材」と、「脱酸素材」の限度で一致し、甲1発明の「包装方法」は、本件発明5の「製造方法」に相当する。 さらに、甲1発明の「酸素ガスバリア性材料からなる容器内に配置し、・・・該容器を密封」することは、本件発明5の「ガスバリア性を有する包材に密封する工程」及び「スライスされた上記特定加熱食肉製品は、ガスバリア性を有する包材に密封された状態」となることに相当する。 以上から、本件発明5と甲1発明とを対比すると、 「特定加熱食肉製品をスライスする工程と、スライスされた特定加熱食肉製品を脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程とを含み、スライスされた特定加熱食肉製品は、ガスバリア性を有する包材に密封された状態となっている、特定加熱食肉製品がローストビーフであることを特徴とする特定加熱食肉製品の製造方法。」の点で一致し、下記の点で相違する。 相違点5:本件発明5では「スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」を含むのに対し、甲1発明では「スライスされたローストビーフをトレイ上に並べる工程」と特定され、「還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」が特定されていない点。 相違点6:本件発明5では「炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく」包材に密封するのに対し、甲1発明は容器内を「窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス雰囲気に置換した後」、該容器を密封する点。 相違点7:脱酸素材について、本件発明5では「非鉄系」脱酸素材を用いているのに対し、甲1発明では脱酸素剤と特定され、「非鉄系」であることが特定されていない点。 相違点8:本件発明5では「当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが50%未満、還元型ミオグロビンが34%以上となる割合となっている」と特定しているのに対し、甲1発明ではミオグロビンの種類の割合は特定されていない点。 (2)判断 相違点5、7、8については、上記1(2)ウ(ア)~(ウ)において検討した相違点1~3のとおりである。 相違点6について検討する。 摘記(甲1-1)から、甲1発明において窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス雰囲気に置換することは必須の技術的事項であることが理解され、その技術的な意義について、摘記(甲1-4)及び摘記(甲1-5)から、脱酸素剤を用いて容器内の残存酸素濃度を下げるだけでは十分ではなく、脱酸素剤の封入と窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス置換を併用することが容器内の残存酸素濃度を十分に低減するために必要であることが理解できる。 そして、摘記(甲1-6)~(甲1-8)から、脱酸素剤と窒素置換を併用した実施例1では密封直後の残存酸素濃度も開封直前の残存酸素濃度も低く、色も含めた品質の優れた保存状態のローストビーフが得られているのに対し、脱酸素剤のみを用い、窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス置換を併用しなかった比較例2では密封直後の残存酸素濃度が高く、色は実施例1と同程度に優れているが、それ以外の要素について品質の劣る保存状態のローストビーフが得られており、甲1発明において窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス雰囲気に置換することを必須の技術的事項とすることの意義が、具体的に確認されていることがわかる。 そうすると、甲1発明において、窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス雰囲気に置換することは、技術的意義のある必要不可欠の技術的事項であるから、「炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく」包材に密封するものとすることは動機付けられず、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。 上記のとおりであるから、本件発明5は、甲1発明に甲2及び甲3に記載された技術的事項を組合せたとしても当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 5 ローストビーフが「僅かの時間でも空気中の酸素と触れる場合」が本件発明1の「スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」に該当する場合について 上記1~4では、本件発明1の「スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」とは、還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化するために、意図的にある程度以上の必要十分な時間をとる工程であると解して、無効理由1~4についての検討を行った。 しかしながら、請求人の提出した甲第19号証、被請求人の提出した口頭審理陳述要領書の第6頁~第11頁及び令和1年11月15日提出の上申書の第3頁~第4頁の記載、乙45の摘記(乙45-1)、乙46の摘記(乙46-1)及び(乙46-2)、乙47の摘記(乙47-1)、乙65の摘記(乙65-1)、さらに、口頭審理調書をみると、被請求人は、無酸素状態の場所でローストビーフをスライスするなど空気に触れさせない特別な方法を採用していない場合、すなわち、ローストビーフを製造ライン上のスライサーでスライスしてから、包装機によって密封包装するまでの2分半程度(還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化するための意図を伴わずに)空気に触れた場合等の「僅かの時間でも空気中の酸素と触れる場合」が、本件発明1の「スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」に該当する旨主張していることがうかがわれる。 そこで、以下、「僅かの時間でも空気中の酸素と触れる場合」が本件発明1の「スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」に該当する場合における無効理由1~4について、検討する。 (1)無効理由1について ア 本件発明1と甲1発明との対比 甲1には、上記1(1)に記載されたとおりの甲1発明が記載されている。また、甲1発明の「ローストビーフ」については、上記1(2)アで検討したとおり、特定加熱食肉製品であるといえる。 本件発明1と甲1発明を対比すると、上記1(2)イで述べたのと同じ点で一致し、上記1(2)イで述べたのと同じ点で相違している。 以下、相違点を再掲する。 相違点1:本件発明1では「スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」を含むのに対し、甲1発明では「スライスされたローストビーフをトレイ上に並べる工程」と特定され、「還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」が特定されていない点。 相違点2:脱酸素材について、本件発明1では「非鉄系」脱酸素材を用いているのに対し、甲1発明では脱酸素剤と特定され、「非鉄系」であることが特定されていない点。 相違点3:本件発明1では「当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下、全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが50%未満、還元型ミオグロビンが34%以上となる割合となっている」と特定しているのに対し、甲1発明ではミオグロビンの種類の割合は特定されていない点。 イ 判断 (ア)相違点1について 甲1発明においては、スライスされたローストビーフをトレイ上に並べているが、スライスする際にもトレイ上に並べる際にも、空気に触れさせない特別な方法や何らかの特別な設備を使用することは記載されていないから、スライスされたローストビーフは空気に触れる状態であったと解される。また、甲1発明においては、容器内をガス置換していることから、ガス置換前の容器内には空気が入っていたものと解される。 そうすると、ローストビーフをスライスし、トレイ上に並べる間に、スライスされたローストビーフは僅かな時間であっても空気中の酸素と触れることが明らかであるから、ローストビーフ中の還元型ミオグロビンは、酸素化されているといえる。 よって、甲1発明における「スライスされたローストビーフをトレイ上に並べる工程」では、「還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」も同時に行われていると認められる。 この認定は、被請求人が、「酸素化する工程」について、口頭審理陳述要領書及び令和1年11月15日提出の上申書において、酸素化する工程とは、還元型ミオグロビンが酸素と結合してオキシミオグロビンとなることを意味し、空気に触れさせない特別な方法を採用していない限りは、酸素化する工程が存在することになることを主張していること、また、別件である本件の侵害訴訟においても、無酸素状態でローストビーフをスライスするなどしていない限り酸素化する工程が存在することになるという旨の主張をしていること(被請求人の口頭審理陳述要領書:第6頁~第11頁、令和1年11月15日提出の上申書:第3頁~第4頁)、さらに、請求人が提出した甲19(甲19は、被請求人らの特許権侵害差止等請求事件の準備書面)では、ローストビーフをスライスしたときに、空気に触れさせない特別な方法を採用していない限りは、酸素化する工程が存在する旨の記載がされていること、摘記(乙45-1)(乙45は、請求人の特許権侵害差止等請求事件の準備書面)によれば、請求人は、ローストビーフを製造ライン上のスライサーでスライスしてから、包装機によって密封包装するまでの2分半程度空気に触れることは、本件発明の「酸素化する工程」に該当しない旨主張しているのに対し、摘記(乙46-1)、(乙46-2)、摘記(乙47-1)(乙46及び乙47は、被請求人の特許権侵害差止等請求事件の準備書面)によれば、請求人も「無酸素状態の場所でローストビーフをスライスするなど空気に触れさせない特別な方法を採用していない限りは,『酸素化する工程』が存在することになる。」との被請求人の解釈、主張が正しいのであれば、「酸素化する工程に該当する」と述べていたこと、被請求人は、本件発明の「酸素化する工程」に該当する旨主張していることから、両当事者の主張では、「酸素化する工程」とは、本件発明においては、少しの時間であっても空気に触れる時間があれば当該工程が酸素化する工程に該当すると認識でき、甲1発明は、短い期間であっても空気に触れる期間があるので、還元型ミオグロビンが酸素と結合してオキシミオグロビンになる変化が生じているといえることとも整合する。 したがって、相違点1は、実質的な相違点ではない。 (イ)相違点2について 相違点2については、上記1(2)ウ(イ)で検討したとおりであるから、甲1発明の脱酸素剤として、より消費者への有効な視覚的アピールができる、赤みの強いローストビーフを製造することを目的として、甲3に記載された、ミオグロビンの変化に基づく生肉の鮮やかな赤色を保持するための技術的事項である、「酸素を吸収すると同時に炭酸ガスを発生させる脱酸素剤」として、甲3において唯一具体的に効果が確認されている非鉄系のエージレスG-200やこれと同種の脱酸素剤、すなわち非鉄系脱酸素剤を採用することは、当業者が容易になし得ることである。 (ウ)相違点3について 相違点3に係る本件発明1の構成は、上記1(2)ウ(ウ)において検討したとおり、「特定加熱食肉製品をスライスする工程と、スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程と、当該酸素化する工程の後、スライスされた特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程とを含」むという、本件発明1の構成を採用した製造方法で製造した特定加熱食肉製品が必然的に備えるパラメータを規定したものであると理解できる。 このことは、本件特許明細書(段落【0034】、【0044】等)の記載をみても、所定の値を得るために上記本件発明1の構成を採用すること以外に何らかの特別な操作を必要とするという説明はされておらず、製造したものを測定した結果得られたものを、単に本件発明1に定められたパラメータとして記載したものにすぎないことと合致する。 技術常識から考えても、甲1発明において、ローストビーフスライスを得た時点では新鮮なものが使用されているから、還元型ミオグロビンは多くの割合を占めるはずであり、また摘記(甲1-2)及び(甲1-7)等の記載によれば、甲1発明は、ローストビーフの酸化が激しくならない状況で消費者に提供するものであるから、消費者に提供されるローストビーフスライスには、還元型ミオグロビンが、十分に存在するといえる。 そして、甲3から理解される技術的事項は、上記1(2)ウ(イ)において検討したとおり、生肉を酸素を吸収すると同時に炭酸ガスを発生させる脱酸素剤(実施例では非鉄系)を用いることにより、ミオグロビンのメト化を防ぎ、オキシミオグロビンを維持できるため、脱酸素後もオキシミオグロビンの鮮やかな赤い色調に近い赤味を保持することができるものであるから、甲1発明において甲3に記載された技術的事項を適用して得られたローストビーフにはオキシミオグロビンが十分に存在することが理解できる。 さらに、甲4には、30~40%がメトミオグロビンとなると、肉の変色が目に見えて悪くなることが記載され、乙4には「MMbが40~50%以上になると明瞭に色調の劣化が認められるようになります。」と記載されているから、特に色調を含む消費者への有効な視覚的アピールをすることを目的としている甲1発明において(摘記(甲1-3))、メトミオグロビンは、50%未満であった蓋然性が高い。 これらのことを考慮すると、上記(ア)において検討したとおり、相違点1は、実質的な相違点ではなく、上記(イ)において検討したとおり、相違点2について、甲1発明に、甲3に記載された技術的事項を適用して、消費者への有効な視覚的アピールができる、赤みの強いローストビーフを製造するためにより好ましい構成を採用した場合、得られたローストビーフは、相違点3に係るパラメータを満足する蓋然性が高い。 また、本件発明1のオキシミオグロビン、メトミオグロビン及び還元型ミオグロビンの割合は、本件特許明細書の【0009】等によれば、ローストビーフの良好な色調を呈する範囲を意味しているといえるが、甲1発明も、消費者への有効な視覚的アピールができ、赤みの強いローストビーフを製造することを目的とするものであるから、甲1発明に、甲3に記載された技術的事項を適用したものにおいて、消費者への有効な視覚的アピールができ、赤みの強いローストビーフを製造することを目的として、肉等の赤みの発色に関連することが知られているオキシミオグロビン、メトミオグロビン及び還元型ミオグロビンの割合を、本件発明1の範囲に重複するものとすることは、当業者であれば容易に想到し得るといえる。 ウ 被請求人の主張について (ア)甲1と甲2の技術分野、課題、作用、機能が相違するという主張、甲1に甲2を適用する示唆がないという主張、相違点1は甲2記載事項から直接的には導けないという主張について 被請求人は、上記1(2)エ(ア)~(オ)に記載したとおり、甲1と甲2は技術分野、課題、作用、機能が相違し、また、甲1には甲2を適用する示唆がなく、さらに、相違点1は甲2記載事項から直接的に導けないことを主張し、したがって、甲1発明と甲2に記載された技術的事項を組み合わせることはできないから、相違点1は当業者が容易になし得ることとはいえない旨主張している。 しかしながら、上記イ(ア)において検討したとおり、相違点1は実質的な相違点ではなく、甲2の記載事項や甲1と甲2を組み合わせられるか否かは、上記判断に何ら影響を与えるものではない。 (イ)甲1と甲3の課題が相違し、組み合わせる動機付けがないという主張について 被請求人は、甲1ではローストビーフの乾燥度と包装体の減圧による変形度合を外観評価の指標としており、外観評価の指標に色彩は含まれていない旨、また、保存中の外観の赤色を評価する試験ではなく、保存後開封し30分経過した後の色を測定しているに過ぎない旨、したがって、甲1発明には「鮮やかな赤色を維持しつつ」という課題は含まれておらず、甲3とは課題が異なる旨を主張している(令和2年12月8日提出の上申書:第12頁、第17~19頁、第21~23頁)。 しかしながら、上記1(2)エ(イ)において検討したとおりである。 (ウ)甲3は「非鉄系脱酸素剤」を選択することを示唆していない、相違点2は甲3の記載内容のみからは導けないという主張について 上記1(2)エ(カ)において検討したとおりである。 (エ)甲3は肉の変色防止に二酸化炭素を利用する技術であるという主張について 上記1(2)エ(キ)において検討したとおりである。 (オ)本件発明は非鉄系脱酸素剤を用いるものであって、二酸化炭素を必要としないという主張について 上記1(2)エ(ク)において検討したとおりである。 (カ)甲5と甲6は本件発明と関連性がないという主張について 被請求人は、上記1(2)エ(ケ)に記載したとおり、甲5及び甲6はローストビーフと他の食肉製品が等価ということを示しておらず、したがって、甲1発明と甲2の技術的事項は組合せられない旨(答弁書:第17頁~第21頁)、甲5及び甲6は本件発明とは異なる加熱食肉製品に関する技術であること、相違点2の課題とする脱酸素剤の特定とは全く関係がない旨(令和2年7月6日提出の上申書:第21~22頁)を主張している。 しかしながら、前半の主張については、上記イ(ア)において検討したとおり、相違点1は実質的な相違点ではなく、甲1と甲2を組み合わせられるか否かは、上記判断に何ら影響を与えるものではない。 後半の主張については、上記1(2)エ(ケ)において検討したとおりである。 (キ)メトミオグロビン還元酵素に関する主張について 上記の1(2)エ(コ)において検討したとおりである。 (ク)侵害訴訟における請求人の主張は、甲1と甲3の動機付けを否定するものであるとの主張について 上記の1(2)エ(サ)において検討したとおりである。 (ケ)請求人が甲3の記載を誤記であると主張した点について 上記の1(2)エ(シ)において検討したとおりである。 (コ)甲1、甲2、甲3の記載から相違点3を導くことができない、甲1発明に甲2記載の技術的事項及び甲3記載の技術的事項を組み合わせると相違点3が満たされる蓋然性が高いという判断は具体的な根拠がなく反論の対象にならないという主張について 被請求人は、甲1は流通温度が0~5℃の発明であるのに対して、甲2の発明は冷凍化条件下の発明であって、甲1と甲2を組み合わせることはできず、甲1の包装中の色彩は本件発明より基準のa値が半分程度と見劣りするものであり、冷凍条件下に保存するものでもないから、本件発明のパラメータを導くことは不可能である旨、本件発明は包装体の中のミオグロビンの組成を測定することを特徴とするが、甲3には主観的な色彩観測がなされているだけで、データの客観性がない旨、本件発明においては酸化型ミオグロビンによる還元型ミオグロビンへの脱酸素化や還元型ミオグロビンの安定化を重視し、一定の還元型ミオグロビンが存在するミオグロビン組成を規定しているのであって、甲1発明に甲3発明を適用してできるものではない旨、甲1のa値の基準が低い基準であるから、甲1のメトミオグロビン値が50%以下であるという推論は成り立たない旨、甲1発明に甲2記載の技術的事項及び甲3記載の技術的事項を組み合わせると相違点3が満たされる蓋然性が高いという判断は具体的な根拠がなく反論の対象にならない旨主張する(令和2年7月6日提出の上申書:第25~27頁、令和2年12月8日提出の上申書:第23~24頁)。 しかしながら、上記イ(ウ)において検討したとおり、相違点3の判断において、甲1発明に甲2に記載された技術的事項を組み合わせる必要はないから、甲1と甲2を組み合わせられるか否かは、上記判断に何ら影響を与えるものではない。 また、上記イ(ウ)において検討したように、相違点3は、甲1発明に甲3記載の技術的事項を適用することにより、自ずと達成されるものと理解できるから、甲1に記載されたa値が低いこと、甲1は冷凍条件下に保存するものでないこと、甲3に客観的なデータが記載されていないことといった、各証拠それぞれの記載事項により、上記判断が影響されるものでもない。 また、甲1発明に甲3記載の技術的事項を適用すると相違点3が満たされる蓋然性が高いという判断の根拠は、上記イ(ウ)のとおりである。 したがって、上記被請求人の主張は採用できない。 (サ)甲1の構成を変える動機付けがない、架空の改善要望に対して組合せができないという主張について 上記1(2)エ(セ)において検討したとおりである。 (シ)脱酸素剤の単独使用及び炭酸ガスの併用に関する主張について 上記の1(2)エ(ソ)において検討したとおりである。 エ 小括 上記のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明及び甲3に記載された技術的事項を組合せて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)無効理由2について 本件発明2は、本件発明1を引用し、非鉄系脱酸素材とともに鉄系脱酸素材を37.5%以下(非鉄系脱酸素材と鉄系脱酸素材の合計量を100%とし、鉄系脱酸素材0%の場合を除く)の割合で使用することを特定したものである。 しかしながら、この点は、上記2において検討したとおりである。 (3)無効理由3について ア 本件発明3について 本件発明3は、本件発明1を引用して、包材内の酸素濃度が検出限界以下となった後、当該包材内を真空引きする工程を有することを更に特定したものである。 (ア)対比 甲1発明と本件発明3とを対比すると、上記5(1)アの相違点1~3に加えて、少なくとも以下の相違点がある。 相違点4:本件発明3では、包材内の酸素濃度が検出限界以下となった後、当該包材内を真空引きする工程を含むのに対し、甲1発明では、真空引きする工程が特定されていない点。 (イ)判断 相違点1~3については、上記5(1)イ(ア)~(ウ)において検討したとおりである。 相違点4については、上記3(1)イにおいて検討したとおりである。 したがって、本件発明3は、甲1発明及び甲3に記載された技術的事項を組合せたとしても当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 イ 本件発明4について 本件発明4は、本件発明3を引用して、包材内から非鉄系脱酸素材を取り除いた後に真空引きをすることを特定したものである。 そして、上記アで示したとおり、本件発明3は、甲1発明及び甲3に記載された技術的事項を組合せたとしても当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、本件発明4についても、甲1発明及び甲3に記載された技術的事項を組合せたとしても当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (4)無効理由4について ア 本件発明5と甲1発明との対比 本件発明5と甲1発明とを対比すると、上記4(1)で述べたのと同じ点で一致し、上記4(1)で述べたのと同じ点で相違している。 以下、相違点を再掲する。 相違点5:本件発明5では「スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」を含むのに対し、甲1発明では「スライスされたローストビーフをトレイ上に並べる工程」と特定され、「還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」が特定されていない点。 相違点6:本件発明5では「炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく」包材に密封するのに対し、甲1発明は容器内を「窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス雰囲気に置換した後」、該容器を密封する点。 相違点7:脱酸素材について、本件発明5では「非鉄系」脱酸素材を用いているのに対し、甲1発明では脱酸素剤と特定され、「非鉄系」であることが特定されていない点。 相違点8:本件発明5では「当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが50%未満、還元型ミオグロビンが34%以上となる割合となっている」と特定しているのに対し、甲1発明ではミオグロビンの種類の割合は特定されていない点。 イ 判断 相違点5、7、8については、上記5(1)イ(ア)~(ウ)において検討した相違点1~3のとおりである。 相違点6については、上記4(2)において検討した相違点6のとおりである。 したがって、本件発明5は、甲1発明に甲3に記載された技術的事項を適用したとしても当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 第8 むすび 以上のとおりであるから、本件発明1、2についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効理由1、2により無効とするべきものであり、本件特許3、4、5についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるとはいえず、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものであるとはいえず、無効理由3、4によっては、無効とするべきではない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第64条の規定により、その5分の3を請求人の負担とし、その5分の2を被請求人の負担とすべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

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2019-800030

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