特許異議申立
2023-700972
乾燥畜肉の製造方法
- 審判番号
- 2023-700972
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-148734
- 登録番号
- 7241485
- 請求日
- 2023年09月15日
- 審決日
- 2024年01月12日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】清水 義憲
- 【権利者代理人】坂西 俊明
- 【異議申立人】大森 桂子
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 猛
- 審判官 土屋 知久
- 審判官 山口 大志
- 分類
- P1651.113-Y (A23B) / P1651.121-Y (A23B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7241485号発明「乾燥畜肉の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7241485号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7241485号の請求項1~6に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成30年8月7日の出願であって、令和5年3月9日にその特許権の設定登録がなされ、同年3月17日に特許掲載公報が発行された。
本件は、その後、同年9月15日に特許異議申立人大森桂子(以下、「申立人」という。)より請求項1~6(全請求項)に係る特許に対してなされた特許異議申立事件である。
第2 本件発明
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~6に係る発明(以下、これらをそれぞれ「本件発明1」~「本件発明6」という。また、これらをまとめて「本件発明」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
重曹溶液(但し、アスコルビン酸又はその塩およびたん白加水分解物由来のメイラード反応肉フレーバを含むものを除く。)で浸漬処理した畜肉を乾燥させる工程を備える、乾燥畜肉の製造方法。
【請求項2】
前記乾燥させる工程は、前記畜肉を凍結乾燥させる工程である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記重曹溶液は、重曹濃度が0.1~10重量%である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
重曹溶液(但し、アスコルビン酸又はその塩およびたん白加水分解物由来のメイラード反応肉フレーバを含むものを除く。)で浸漬処理した畜肉を乾燥させる工程を備える、乾燥畜肉の経時劣化を抑制する方法。
【請求項5】
乾燥畜肉の経時劣化を抑制するための重曹の使用であって、
乾燥前に畜肉を重曹溶液(但し、アスコルビン酸又はその塩およびたん白加水分解物由来のメイラード反応肉フレーバを含むものを除く。)で浸漬処理する工程を備える、使用。
【請求項6】
重曹を有効成分とする、乾燥畜肉の経時劣化抑制剤(但し、アスコルビン酸又はその塩およびたん白加水分解物由来のメイラード反応肉フレーバを含むものを除く。)。」
第3 特許異議申立理由
申立人は、証拠方法として次の甲第1~4号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲4」という。)を提出し、以下の申立理由により、請求項1~6に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
(証拠方法)
甲第1号証:特開2005-318871号公報
甲第2号証:特開2001-148号公報
甲第3号証:特開2007-312771号公報
甲第4号証:特開2015-173619号公報
1 申立理由1(甲1を主たる引例とした場合の新規性・進歩性)
本件発明1~6は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、もしくは、本件発明1~5は、甲1に記載された発明及び周知技術(甲2~甲4)に基いて、また、本件発明6は、甲1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるため、同発明に係る特許は、特許法第29条第1項第3号または同法同条第2項の規定に違反してなされたものであるから、取り消されるべきものである(取消理由に不採用)。
2 申立理由2(甲2を主たる引例とした場合の新規性・進歩性)
本件発明6は、甲2に記載された発明であるか、または、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるため、同発明に係る特許は、特許法第29条第1項第3号または同法同条第2項の規定に違反してなされたものであるから、取り消されるべきものである(取消理由に不採用)。
2 申立理由3(甲3を主たる引例とした場合の新規性・進歩性)
本件発明6は、甲3に記載された発明であるか、または、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるため、同発明に係る特許は、特許法第29条第1項第3号または同法同条第2項の規定に違反してなされたものであるから、取り消されるべきものである(取消理由に不採用)。
第4 申立理由の検討
当審では、以下に示すとおり、上記申立理由はいずれも採用できないと判断する。
1 申立理由1(甲1を主たる引例とした場合の新規性・進歩性)について
(1)甲1に記載された発明
ア 甲1の試験区17の焼豚を用いた実施例8の冷凍乾燥焼豚の製造方法に注目すると、甲1(特に、【0047】、【0051】参照。)には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「食塩9.0質量部、砂糖1.0質量部、グルタミン酸ナトリウム2.0質量部、卵白(商品名:粉末卵白;理研ビタミン社)3.0質量部、炭酸水素ナトリウム2.0質量部、油脂加工澱粉3.0質量部を水40.0質量部に溶解してピックル液を作製し、
このピックル液60質量部を豚肩ロース肉50質量部にインジェクションし、タンブラーを用いて、冷蔵庫(庫内温度約5℃)内で5時間タンブリングし、
次に、折径約13cmのファイブラスケーシングに原料肉を充填し、たこ糸で結束してスモークチャンバー内に移し、まず温度約55℃、湿度約40%で約60分間乾燥し、次いで温度約55℃、湿度約40%で約90分間燻煙し、最後に温度約85℃で約90分間蒸煮した焼豚を冷蔵庫(庫内温度約4℃)内で冷却し、
約12時間保存した焼豚を取りだし、厚さ約5mmにスライスし、約-30℃の冷凍庫に入れ冷凍し、この凍結焼豚を、真空凍結乾燥機(型式:RLE-103;共和真空社)を用いて常法により凍結乾燥し、凍結乾燥焼豚を得る、凍結乾燥焼豚の製造方法。」
イ また、甲1の試験区17の焼豚を用いた実施例8の炭酸水素ナトリウムの使用に注目すると、甲1(特に、【0047】、【0051】参照。)には、次の発明(以下、「甲1使用発明」という。)が記載されている。
「ピックル液60質量部を豚肩ロース肉50質量部にインジェクションし、タンブラーを用いて、冷蔵庫(庫内温度約5℃)内で5時間タンブリングし、
次に、折径約13cmのファイブラスケーシングに原料肉を充填し、たこ糸で結束してスモークチャンバー内に移し、まず温度約55℃、湿度約40%で約60分間乾燥し、次いで温度約55℃、湿度約40%で約90分間燻煙し、最後に温度約85℃で約90分間蒸煮した焼豚を冷蔵庫(庫内温度約4℃)内で冷却し、
約12時間保存した焼豚を取りだし、厚さ約5mmにスライスし、約-30℃の冷凍庫に入れ冷凍し、この凍結焼豚を、真空凍結乾燥機(型式:RLE-103;共和真空社)を用いて常法により凍結乾燥し、凍結乾燥焼豚を得る方法において、
前記ピックル液の作製時に、水40.0質量部に対して、食塩9.0質量部、砂糖1.0質量部、グルタミン酸ナトリウム2.0質量部、卵白(商品名:粉末卵白;理研ビタミン社)3.0質量部、油脂加工澱粉3.0質量部を溶解する際の、炭酸水素ナトリウム2.0質量部の使用。」
ウ また、甲1の試験区17の焼豚を用いた実施例8のピックル液に注目すると、甲1(特に、【0047】、【0051】参照。)には、次の発明(以下、「甲1液発明」という。)が記載されている。
「ピックル液60質量部を豚肩ロース肉50質量部にインジェクションし、タンブラーを用いて、冷蔵庫(庫内温度約5℃)内で5時間タンブリングし、
次に、折径約13cmのファイブラスケーシングに原料肉を充填し、たこ糸で結束してスモークチャンバー内に移し、まず温度約55℃、湿度約40%で約60分間乾燥し、次いで温度約55℃、湿度約40%で約90分間燻煙し、最後に温度約85℃で約90分間蒸煮した焼豚を冷蔵庫(庫内温度約4℃)内で冷却し、
約12時間保存した焼豚を取りだし、厚さ約5mmにスライスし、約-30℃の冷凍庫に入れ冷凍し、この凍結焼豚を、真空凍結乾燥機(型式:RLE-103;共和真空社)を用いて常法により凍結乾燥し、凍結乾燥焼豚を得る方法において、
食塩9.0質量部、砂糖1.0質量部、グルタミン酸ナトリウム2.0質量部、卵白(商品名:粉末卵白;理研ビタミン社)3.0質量部、炭酸水素ナトリウム2.0質量部、油脂加工澱粉3.0質量部を水40.0質量部に溶解して作製した、ピックル液。」
(2)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「炭酸水素ナトリウム」は、本件発明1の「重曹溶液(但し、アスコルビン酸又はその塩およびたん白加水分解物由来のメイラード反応肉フレーバを含むものを除く。)」に相当するから、本件発明1と甲1発明とは、
「重曹溶液(但し、アスコルビン酸又はその塩およびたん白加水分解物由来のメイラード反応肉フレーバを含むものを除く。)で処理した畜肉を乾燥させる工程を備える、乾燥畜肉の製造方法。」で一致し、次の点で相違する。
(相違点1-1)
「畜肉」の「重曹溶液」での処理が、本件発明1は、「浸漬処理」であるのに対し、甲1発明は、「ピックル液60質量部を豚肩ロース肉50質量部にインジェクションし、タンブラーを用いて、冷蔵庫(庫内温度約5℃)内で5時間タンブリング」する処理であって、「浸漬処理」ではない点。
イ 以下、上記相違点1-1について検討する。
ウ 一般に、「浸漬」とは、「液体にひたすこと」(デジタル大辞林)を意味する。
エ そうすると、甲1発明の「ピックル液60質量部を豚肩ロース肉50質量部にインジェクションし、タンブラーを用いて、冷蔵庫(庫内温度約5℃)内で5時間タンブリング」する処理は、「浸漬処理」とはいえない。
オ よって、上記相違点1-1は、実質的な相違点である。
カ 次に、上記相違点1-1の容易想到性について検討する。
キ 甲1には、次の記載がある。
「【0021】
本発明に従う食肉加工食品用品質改良剤を用いて食肉加工食品を製造するには、自体公知の方法を用いればよい。すなわち、ブロック状の食肉を加工して得られるベーコン、ハムまたは焼豚などの食肉加工食品は、例えば、以下の方法により製造される。まず、食肉加工食品用品質改良剤を、通常の塩漬液(ピックル液)に含まれる他の成分(食塩、糖類、重合リン酸塩、亜硝酸塩、動植物性蛋白質、増粘安定剤、調味料、香辛料など)と共に分散させたピックル液を調製する。前記ピックル液は、食肉用インジェクターによって、原料肉に対して約20~80質量%の量を原料肉に注入される。次に、食肉用タンブラーを用いて、ピックル液成分を十分に肉中に分散、浸透させる方法(インジェクション法)、あるいは、原料肉をピックル液に浸漬し、原料肉中にピックル液を浸透させる方法(湿塩漬法)などにより、ピックル液を原料肉に均一に含浸させることができる。」
ク 上記キの記載によれば、食肉加工食品用品質改良剤を用いて食肉加工食品を製造するにあたり、甲1発明のようなインジェクション法、あるいは、原料肉をピックル液に浸漬し、原料肉中にピックル液を浸透させる湿塩漬法(本件発明1の「浸漬処理」に相当。)を採用することができる。
ケ すなわち、甲1発明において、「ピックル液60質量部を豚肩ロース肉50質量部にインジェクションし、タンブラーを用いて、冷蔵庫(庫内温度約5℃)内で5時間タンブリング」する処理に代えて、「浸漬処理」を採用する動機があるといえる。
コ しかしながら、甲1発明において、「ピックル液60質量部を豚肩ロース肉50質量部にインジェクションし、タンブラーを用いて、冷蔵庫(庫内温度約5℃)内で5時間タンブリング」する処理に代えて、「浸漬処理」を採用する動機があったとしても、「経時劣化(特に、経時的な劣化臭の発生)が抑制された乾燥畜肉を製造することができる」(【0013】)との本件発明1の効果を予測することは困難であり、これは甲2~甲4を参酌したとしても同様である。
サ したがって、甲1発明において、上記相違点1-1に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
シ よって、本件発明1は、甲1発明ではないし、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(3)本件発明2~4について
ア 本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2~4と甲1発明とを対比すると、少なくとも、上記相違点1-1と同様の相違点で相違する。
イ そして、当該相違点は、上記(2)で検討したとおりであるから、同様の理由により、本件発明2~4は、甲1発明ではないし、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(4)本件発明5について
ア 本件発明5と甲1使用発明とを対比すると、両者は、
「重曹の使用であって、
乾燥前に畜肉を重曹溶液(但し、アスコルビン酸又はその塩およびたん白加水分解物由来のメイラード反応肉フレーバを含むものを除く。)で処理する工程を備える、使用。」で一致し、次の点で相違する。
(相違点5-1-1)
「重曹の使用」が、本件発明5は、「乾燥畜肉の経時劣化を抑制するための」ものであるのに対し、甲1使用発明は、「炭酸水素ナトリウム」がいかなる作用を及ぼすためのものかが不明である点。
(相違点5-1-2)
「畜肉」の「重曹溶液」での処理が、本件発明5は、「浸漬処理」であるのに対し、甲1使用発明は、「ピックル液60質量部を豚肩ロース肉50質量部にインジェクションし、タンブラーを用いて、冷蔵庫(庫内温度約5℃)内で5時間タンブリング」する処理であって、「浸漬処理」ではない点。
イ 事案に鑑み、まず、上記相違点5-1-2について検討する。
ウ 上記相違点5-1-2は、上記相違点1-1と同様の相違点であり、当該相違点については、上記(2)で検討したとおりである。
エ そうすると、上記相違点5-1-1について検討するまでもなく、本件発明5は、甲1使用発明ではないし、甲1使用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(5)本件発明6について
ア 本件発明6と甲1液発明とを対比すると、両者は、
「重曹を有効成分とする、乾燥畜肉の添加剤(但し、アスコルビン酸又はその塩およびたん白加水分解物由来のメイラード反応肉フレーバを含むものを除く。)。」で一致し、次の相違点で相違する。
(相違点1-6)
添加剤について、本件発明6は、「経時劣化抑制剤」であるのに対し、甲1液発明は、経時劣化を抑制するものであるか否かが不明である点。
イ 以下、上記相違点1-6について検討する。
ウ 甲1液発明の「ピックル液」は、甲1の【0045】~【0053】の記載によれば、肩ロース肉に対する処理において、加熱歩留まりが高く、また、弾力性の官能評価においても良好な評価が得られているし、凍結乾燥焼豚を湯戻しした際の、柔らかさの官能評価においても良好な結果が得られている。
エ しかしながら、甲1液発明の「ピックル液」が、経時劣化を抑制するものであるか否かは不明である。
オ よって、上記相違点1-6は、実質的な相違点である。
カ 次に、上記相違点1-6の容易想到性について検討する。
キ 上記エのとおり、甲1液発明の「ピックル液」が、経時劣化を抑制するものであるか否かは不明である。
また、甲1液発明において、そのピックル液に対し、経時劣化を抑制するように成分を調製する動機がないし、どのように調製すれば経時劣化を抑制できるのかも不明であり、これは甲2~甲4を参酌しても変わらない。
ク したがって、甲1液発明において、上記相違点1-6に係る本件発明6の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
ケ よって、本件発明6は、甲1液発明ではないし、甲1液発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
2 申立理由2(甲2を主たる引例とした新規性・進歩性)
(1)甲2に記載された発明
ア 甲2の実施例1の畜肉用品質改良剤0.5部を添加したピックル液(40部)に注目すると、甲2(特に、【0032】、【0035】参照。)には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。
「鶏ムネ肉素材に添加してタンブリングするピックル液(40部)であって、
濃口醤油3.0部、食塩1.4部、砂糖1.2部、L-グルタミン酸ナトリウム0.2部、粉末大豆蛋白質1.0部、冷水32.7部で処方したピックル液39.5部に、
炭酸水素ナトリウム45部、L-酒石酸水素カリウム25部及び食物繊維としての水溶性大豆繊維30部を混合して得た畜肉用品質改良剤0.5部を添加して得られた、ピックル液(40部)。」
(2)本件発明6について
ア 本件発明6と甲2発明とを対比すると、両者は、
「重曹を有効成分とする、畜肉の添加剤(但し、アスコルビン酸又はその塩およびたん白加水分解物由来のメイラード反応肉フレーバを含むものを除く。)。」で一致し、次の相違点で相違する。
(相違点2-6)
本件発明6は、「乾燥畜肉」製造のためのものであるのに対し、甲2発明は、「鶏ムネ肉素材」に対するものであって、乾燥畜肉製造のためのものではない点。
(相違点2-7)
本件発明6は、「経時劣化抑制」のためのものであるのに対し、甲2発明は、経時劣化抑制のためのものであるか否かが不明である点。
イ 事案に鑑み、まず、上記相違点2-6について検討する。
ウ 甲2の「ピックル液(40部)」は、鶏ムネ肉素材を処理するものであるが、乾燥畜肉を製造するためのものではない。
エ よって、上記相違点2-6は、実質的な相違点である。
オ 次に、上記相違点2-6の容易想到性について検討する。
カ 甲2発明は、鶏ムネ肉素材を処理するものであり、また、「畜肉加工食品の食感」を「改善する」(【0005】)、すなわち、「軟らかく、ジューシー感のある畜肉加工食品」を「製造可能とする」(【0001】)ものであるから、甲2発明の「鶏ムネ肉素材」を乾燥畜肉にする動機がないし、これは甲1、甲3、甲4を参酌しても変わらない。
キ したがって、甲2発明において、上記相違点2-6に係る本件発明6の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
ク よって、上記相違点2-7について検討するまでもなく、本件発明6は、甲2発明ではないし、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
3 申立理由3(甲3を主たる引例とした新規性・進歩性)
(1)甲3に記載された発明
ア 甲3の実施例4の処理剤に注目すると、甲3(特に、【0032】、【0033】参照。)には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されている。
「鶏肉を浸漬する処理液であって、
塩化カリウム16部、グルタミン酸ナトリウム1部、炭酸ナトリウム18部、炭酸水素ナトリウム4部、DL-アラニン15部、ソルビトール14部、還元澱粉加水分解物32部からなる処理液。」
(2)本件発明6について
ア 本件発明6と甲3発明とを対比すると、両者は、
「重曹を有効成分とする、畜肉の添加剤(但し、アスコルビン酸又はその塩およびたん白加水分解物由来のメイラード反応肉フレーバを含むものを除く。)。」で一致し、次の相違点で相違する。
(相違点3-6)
本件発明6は、「乾燥畜肉の経時劣化抑制剤」であるのに対し、甲3発明は、「鶏肉を浸漬する処理液」であって、乾燥畜肉製造のためのものではなく、経時劣化を抑制するものか否かが不明である点。
イ 以下、上記相違点3-6について検討する。
ウ 甲3の【0035】の記載によれば、甲3発明の「処理液」で鶏肉を浸漬することにより、歩留まりや食感官能検査において、良好な結果が示されているが、甲3発明の「処理液」が、経時劣化を抑制するものであるか否かは不明である。
エ また、甲3の「処理液」は、鶏肉を浸漬するものであるが、乾燥畜肉を製造するためのものではない。
オ よって、上記相違点3-6は、実質的な相違点である。
カ 次に、上記相違点3-6の容易想到性について検討する。
キ 上記ウのとおり、甲3発明の「処理液」が、経時劣化を抑制するものであるか否かは不明である。
また、甲3発明において、その「処理液」に対し、経時劣化を抑制するように成分を調整する動機がないし、また、どのように調製すれば経時劣化を抑制できるのかも不明であり、これは甲1、甲3、甲4を参酌しても変わらない。
ク したがって、甲3発明において、上記相違点3-6に係る本件発明6の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
ケ よって、本件発明6は、甲3発明ではないし、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
4 申立人の主張について
(1)請求項6について
ア 申立人は、特許異議申立書(第17頁第10~17行)において、本件発明6と甲1液発明とは、対象(乾燥畜肉)及び有効成分(重曹)が同じであるから、甲1液発明も、乾燥畜肉の経時劣化が抑制されることは明らかであると主張している。
イ しかしながら、甲1液発明は、「食塩9.0質量部、砂糖1.0質量部、グルタミン酸ナトリウム2.0質量部、卵白(商品名:粉末卵白;理研ビタミン社)3.0質量部、炭酸水素ナトリウム2.0質量部、油脂加工澱粉3.0質量部を水40.0質量部に溶解して作製した」ものであって、本件明細書の実施例1~3と比較して成分が同一であるとはいえないから、乾燥畜肉の経時劣化を抑制するとはまではいえない。
ウ よって、申立人の主張は採用できない。
エ なお、特許異議申立書(第17頁第18~第18頁第5行)の、甲2発明、甲3発明に対する主張も、同様に採用できない。
第5 むすび
以上のとおり、本件の請求項1~6に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことはできず、また、他に本件の請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700972