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特許無効審判

2022-800084

溶解炉

審判番号
2022-800084
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2018-516074
登録番号
6498843
請求日
2022年10月27日
審決日
2024年03月25日
公報発行日
2025年08月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社 ダイキエンジニアリング
  • 【請求人代理人】弁理士法人M&Partners
  • 【請求人代理人】重冨 貴光
  • 【請求人代理人】石津 真二
  • 【被請求人】梶谷 健
  • 【被請求人代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
  • 【被請求人】吉口 一己
  • 【被請求人代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 池渕 立
  • 審判官 佐藤 陽一
  • 審判官 山口 大志
分類
P1123.55 -ZC (F27B) / P1123.121-ZC (F27B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法123条1項2号特許法169条2項民事訴訟法64条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第184条の6、特許法第123条第1項第1号、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第6498843号発明「溶解炉」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 特許第6498843号の請求項1、2及び6に係る発明についての特許を無効とする。 特許第6498843号の請求項3~5に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6498843号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)11月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年10月13日(TH)タイ王国)を国際出願日とする出願(特願2018-516074号。以下、「本願」という。)であって、平成30年 8月21日付けで拒絶理由が通知され、平成31年 1月22日に意見書、手続補正書が提出され、平成31年 3月22日にその発明について特許権の設定登録がなされたものである。 これに対し、株式会社ダイキエンジニアリング(以下、「請求人」という。)によって令和4年10月27日付けで請求項1~6に係る発明の特許について無効審判の請求がなされたものであるところ、本件無効審判における手続の経緯の概略は、以下のとおりである。 令和4年10月27日 :審判請求書、 証拠説明書、甲第1~10号証の提出 同年11月16日 :上申書(請求人)の提出 令和5年 2月13日 :審判事件答弁書、 証拠説明書、乙第1~8号証の提出 同年 4月21日付け:審理事項通知(1回目) 同年 5月 9日 :口頭審理陳述要領書(請求人)、 証拠説明書(2)、甲第11~16号証の 提出 口頭審理陳述要領書(被請求人)、 証拠説明書、乙第9号証の提出 同年 5月26日付け:審理事項通知(2回目) 同年 5月30日 :口頭審理陳述要領書(2)(請求人)の提出 同年 6月 6日 :口頭審理陳述要領書(2)(被請求人)の 提出 同年 6月 9日 :上申書(被請求人)の提出 乙第9号証の差し替え 同年 6月13日 :口頭審理 同年 6月27日 :上申書(2)(請求人)、 証拠説明書(3)、甲第17号証の提出 同年 9月11日付け:審決の予告 令和6年 1月12日 :上申書(3)(請求人)、陳述書、 証拠説明書(4)、甲第18号証の提出 なお、令和 5年 9月11日付けの審決の予告に対し、被請求人からは応答がなかった。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~6に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件発明1」~「本件発明6」という。また、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ本件特許の特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~6の記載は、次のとおりである。 「【請求項1】 材料投入路(17)とともに蓋(16)を備える予熱部(5)と、 前記予熱部(5)の下方の溶解部(6)と、 バーナー(9)を上部に備える傾斜炉床(15)と、 前記溶解部(6)で前記バーナー(9)によって溶解された後に前記傾斜炉床(15)上を流れる溶融材料(1a)を受け入れて溶融材料(1a)の温度を上昇させる加熱部(7)と、 火炎を放射する温度調整バーナー(12)を備え、溶融材料を貯留する温度調整部(3)と、 傾斜又は湾曲した底部を特徴とし、前記加熱部(7)から溶融材料(1a)を前記温度調整部(3)に流し込む接続路(2)と、 前記接続路(2)を形成する隔壁(10)であって、前記加熱部(7)内の溶融材料(1a)の液面及び前記温度調整部(3)内の溶融材料(1b)の液面よりも低く位置する下縁部(13)を有する隔壁(10)と、 溶融材料の出湯口(4)と、を備え、 前記温度調整部(3)は、閉システムであり、 前記温度調整バーナー(12)は、前記温度調整部(3)内の酸素濃度を1%~5%又は1%未満となるよう制御される、溶解炉。 【請求項2】 溶融材料(1a),(1b),(1c)の液面レベルを制御又は検出して酸化物(21a)が前記温度調整部(3)内に流れ出ることを防止するセンサー(8)を更に備え、 前記センサー(8)は、前記出湯口(4)に近接して配置される、請求項1に記載の溶解炉。 【請求項3】 前記温度調整バーナー(12)は、フラットフレームバーナーである、請求項1又は2に記載の溶解炉。 【請求項4】 前記温度調整部(3)は、炉壁の一部又は天井蓋(11)に設置された熱交換器(20)を更に備える、請求項1~3のいずれかに記載の溶解炉。 【請求項5】 前記温度調整部(3)は、扉を有しない閉システムである、請求項1~4のいずれかに記載の溶解炉。 【請求項6】 前記加熱部(7)には、酸化物除去扉(14a)、(14b)が設けられる、請求項1~5のいずれかに記載の溶解炉。」 第3 請求人の主張及び証拠方法 1 請求人の主張の概要 請求人は、「特許第6498843号の特許請求の範囲の請求項1乃至6に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と主張し、審判請求書とともに甲第1号証~甲第10号証を提出し、令和 5年 5月 9日付け口頭審理陳述要領書とともに甲第11号証~甲第16号証を提出し、令和 5年 5月30日付け口頭審理陳述要領書(2)を提出し、令和 5年 6月27日付け上申書(2)とともに甲第17号証を提出し、さらに、令和 6年 1月12日付け上申書(3)とともに陳述書及び甲第18号証を提出している。そして、上記提出した書面の全趣旨及び口頭審理調書によれば、請求人は、以下の無効理由1~2によって、本件特許発明1~6についての特許は、特許法第123条第1項第1号及び第2号に該当し、無効とすべきものであると主張している。 (1)無効理由1(新規事項の追加) 請求項1には、「温度調整部(3)は、閉システム」との発明特定事項があり、本件特許の審査経過において、平成31年 1月22日提出の意見書(甲第1号証)では、この「閉システム」とは、「温度調整部内の燃焼ガスは炉外に排出されるものの、温度調整部内に、予熱部、溶解部、加熱部及び出湯口から燃焼ガスが流れ込まない構造」を言うと明記している。 しかしながら、当初明細書等で開示されている「閉システム」とは、「扉を有しない温度調整部(3)」のみを表わすものであって、請求項1に記載された、扉の有無を問わない「閉システム」は、いわゆる新規事項を追加したものである。 よって、請求項1~6に係る発明についての特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。 (2)無効理由2(甲3発明に基づく進歩性の欠如) (請求項1) 請求項1に係る発明では、温度調整部(3)内の酸素濃度を1%~5%又は1%未満となるよう制御されるのに対し、甲第3-1号証記載の技術では、「炉内O2濃度制御により、非金属介在物の生成を抑制」することは開示されているものの具体的な数値の限定がない点で相違する。しかしながら、燃焼設備における空気比管理において空気比を1.3以下とした場合、燃焼ガス中のO2%は5%以下となることが、工業炉の燃焼管理技術に関する甲第4および第5号証に記載されており、甲第4および第5号証記載の技術を甲第3-1号証に適用して「温度調整部内の酸素濃度を1%~5%又は1%未満となるよう制御」することは、当業者にとって容易である。 (請求項2) 溶融材料の液面レベルを検出するセンサーであって、出湯口に近接して配置される「溶湯レベルセンサー」は、甲第3-1号証に記載されている。甲第6号証には、連通孔の最上面は溶湯のメタルラインより下方に位置すべきものであることが記載され、甲第7号証には、クリーンな金属溶湯のみを溶湯連通部から金属溶湯保持部に流入させることが記載されていることから、甲第3-1号証において、これらのような状態を実現するために適当な位置にセンサーを設けることは、当業者にとって容易である。 (請求項3) 甲第7号証には、バーナーフレームを分散放出して金属溶湯を加熱する保持バーナーが記載され、甲第8号証にアルミ溶解の保持バーナーとしてのフラットフレームバーナを用いることが記載されていることから、これらの技術を甲第3-1号証に適用することは、当業者にとって容易である。 (請求項4) 適当な熱交換器を設け燃焼ガスの予熱等に利用することは、甲第9および甲第10号証に記載されているとおり当該技術分野における周知の技術事項であるから、甲第3-1号証の温度調整部の炉壁の一部又は天井蓋に熱交換器を設置することは、当業者にとって容易である。 (請求項5) 温度調整部を、扉を有しない閉システムとすることは、甲第6号証に記載されている。 (請求項6) 加熱部に酸化物除去扉を設けることは、甲第3-1号証に記載されている。 よって、本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲第3-1号証~甲第10号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 2 証拠方法 ・甲第1号証 特願2018-516074号(本願)における平成31年 1月22日提出の意見書 ・甲第2号証 特願2018-516074号(本願)における平成30年 5月17日提出の国際出願翻訳文提出書にて提出された明細書、請求の範囲及び要約書の翻訳文 ・甲第3-1号証 TERRA PAC MELT(タワー型非鉄金属溶解保持炉) カタログ、株式会社大紀アルミニウム工業所、1997年5月 ・甲第3-2号証 ファクシミリ文書 「TERRA PAC MELT販売価格について」、1997年10月14日 ・甲第4号証 工業炉省エネルギー便覧、社団法人新日本鋳鍛造協会、昭和56年11月20日、p.64~65 ・甲第5号証 工業炉の基礎知識 改訂版、一般社団法人日本工業炉協会、平成24年12月15日、p.28~33 ・甲第6号証 特開平11-223463号公報 ・甲第7号証 特開2008-215628号公報 ・甲第8号証 正英BURNERS CATALOGUE-2007年版- http://www.taemeneng.com/images/pdf/shoei%202007-%20catalogue.pdf ・甲第9号証 特開平8-157978号公報 ・甲第10号証 実願昭57-104401号(実開昭59-9297号)のマイクロフィルム ・甲第11号証 大西清、「製図学への招待 第3版」、理工学社、2000年 5月25日、付-1、付-5~8 ・甲第12-1号証 TPM-200溶解保持炉計画-2の計画図の左半分、1997年10月14日(作成日)、株式会社大紀アルミニウム工業所 ・甲第12-2号証 TPM-200溶解保持炉計画-2の計画図の右半分、1997年10月14日(作成日)、株式会社大紀アルミニウム工業所 ・甲第12-3号証 TPM-200溶解保持炉計画-2の計画図の略中央部、1997年10月14日(作成日)、株式会社大紀アルミニウム工業所 ・甲第13号証 実願昭63-31866号(実開平1-135164号)のマイクロフィルム ・甲第14号証 特許第3267839号公報 ・甲第15号証 平岡常男、パッケージボイラーのO2制御による燃料コストおよびCO2の削減、横河技報、2000年、Vol.44、No.2、p.35~36 ・甲第16号証 「[リジェネ燃焼装置]-テラ・コーポレーション 省エネでも危険は許されない 酸素センサを活用してCOを“完封”」、NIKKEI MECHANICAL、1997年 3月31日、no.503、p.64~67 ・甲第17号証 故萩野谷生郎、外1名、連載講座 2.溶湯のガス吸収と介在物、鋳物、社団法人日本鋳物協会、平成6年6月25日、第66巻、第6号、p.449~457 ・甲第18号証 実用新案登録第3111330号公報 第4 被請求人の主張及び証拠方法 1 被請求人の主張の概要 被請求人は、「本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求めて、審判事件答弁書とともに乙第1号証~乙第8号証を提出し、令和 5年 5月 9日付け口頭審理陳述要領書とともに乙第9号証を提出し、令和 5年 6月 6日付け口頭審理陳述要領書(2)を提出し、さらに令和 5年 6月 9日付け上申書とともに乙第9号証の差し替えを提出している。そして、上記提出した書面の全趣旨及び口頭審理調書によれば、被請求人は、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては本件発明を無効とすることはできないと主張している。 2 証拠方法 ・乙第1号証 米国特許第7060220号明細書 ・乙第2号証 特開2006-71266号公報 ・乙第3号証 特開2001-272171号公報 ・乙第4号証 米国特許出願公開第2015/0042024号明細書 ・乙第5号証 仲町一郎、「新版 ガス燃焼の理論と実際」、一般財団法人省エネルギーセンター、2012年 7月 5日、p.159~163 ・乙第6号証 谷川正、外1名、高性能工業炉開発プロジェクトの現状と高温空気燃焼技術の将来展開、特集:研究開発報告 高性能工業炉開発と高温空気燃焼技術、「工業加熱」1998年7月号から増刷り、1998年7月、p.1~2 ・乙第7号証 ガス工業用バーナ、株式会社クリエイティブテクノソリューション、2012年9月、p.15~16 ・乙第8号証 梶谷健、外5名、酸化物抑制炉(保持室での掃除が要らない溶解保持炉)の開発、JAPAN DIE CASTING CONGRESS、2018年11月 ・乙第9号証 TECHNICAL REPORT No.178a、大阪ガス株式会社エネルギー事業部、2012年9月 第5 当審の判断 1 無効理由1(新規事項の追加)について 新規事項を追加する補正であるかの検討は次の判断手法による。すなわち、補正が、明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるときは、当該補正は、「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができる(平成18年(行ケ)第10563号)。 そこで、上記判断手法に基づいて無効理由1について検討する。本件特許の審査経過において、平成31年1月22日提出の手続補正書による、本件特許の請求項1に「前記温度調整部(3)は、閉システムであり、」との事項を追加する補正が、本件特許に係る出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面(特許法第184条の6の規定により明細書、特許請求の範囲又は図面とみなされた、本願の国際出願日における明細書の翻訳文、請求の範囲の翻訳文又は図面(図面の中の説明を除く。)及び図面の中の説明の翻訳文)の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるか否かについて検討する。 なお、下線は当審が付したものである。以下、同様。 (1)本件特許に係る出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面の記載事項 ア 本件特許に係る出願当初の特許請求の範囲には、以下の記載がある。 「【請求項1】 溶融材料を貯留する温度調整部(3)であって、材料投入路(17)とともに蓋(16)を備える温度調整部(3)と、 前記温度調整部(3)の下方の加熱部(5)と、 前記加熱部(5)の下方の溶解部(6)であって、該溶解部(6)からの溶融材料が前記温度調整部(3)に送られて出湯口(4)から放出される溶解部(6)と、 バーナー(9)を上部に備える傾斜炉床(15)と、 前記温度調整部(3)の接続路(2)であって、傾斜又は湾曲した底部を特徴とし、前記加熱部(5)の下部にかつ前記傾斜炉床(15)によって溶融材料加熱部(7)に接続される前記溶解部(6)から前記溶融材料(1a)を受け取る接続路(2)と、 前記接続路(2)が形成される隔壁(10)であって、前記溶融材料加熱部(7)内の前記溶融材料(1a)及び前記温度調整部(3)内の前記溶融材料(1b)よりも低く位置する下縁部(13)を有する隔壁(10)と、 を備える、溶解炉。 【請求項2】 前記出湯口(4)、又は前記溶解部(6)、又は前記溶融材料加熱部(7)、又は前記溶融材料(1a)、(1b)若しくは(1c)に接触する前記溶解炉のあらゆる部分は、前記溶融材料(1a)、(1b)又は(1c)の液面レベルを制御又は検出するとともに、酸化物(21a)が前記温度調整部(3)内に又は前記出湯口(4)を通って流れ出ることを防止するようにセンサー(8)を更に備え、 前記センサー(8)は、前記出湯口(4)に近接して配置される、請求項1に記載の溶解炉。 【請求項3】 前記温度調整部(3)は、天井蓋(11)及び温度調整バーナー(12)を備え、 前記温度調整バーナー(12)は、フラットフレームバーナーである、請求項1に記載の炉。 【請求項4】 前記温度調整部(3)は、炉壁の一部又は前記天井蓋(11)における熱交換器(20)と、 前記溶融材料加熱部(7)と前記温度調整部(3)との間で前記下縁部(13)を貫通可能な少なくとも1つの穴と、 のうちの少なくとも1つを更に備える、請求項1又は3に記載の溶解炉。 【請求項5】 前記温度調整部(3)は、扉を有しない閉システムであり、前記天井蓋(11)又は側壁(18)又は床(19)は、軽量かつ耐火性である、請求項1に記載の溶解炉。 【請求項6】 前記温度調整部(3)は、前記床(19)又は前記側壁(18)又は前記天井蓋(11)に前記温度調整バーナー(12)を備える、請求項1に記載の溶解炉。 【請求項7】 前記温度調整バーナー(12)は、 ガス又は電気によって加熱される浸漬加熱チューブと、 金属ベースバーナー又はヒーターと、 ファイバーベースバーナー又はヒーターと、 多孔通気バーナー又はヒーターと、 から選択される、請求項1又は6に記載の溶解炉。 【請求項8】 不活性ガスが前記温度調整部(3)内に噴射されて、酸化反応を防止する、請求項1又は7に記載の溶解炉。 【請求項9】 前記温度調整バーナー(12)は、前記酸素濃度を前記可燃性ガス全体の1%~5%に、最も好ましくは前記可燃性ガス全体の1%未満に制御する、請求項1に記載の溶解炉。 【請求項10】 前記溶融材料加熱部(7)には、酸化物除去扉(14a)、(14b)が設けられる、 請求項1に記載の溶解炉。」 イ 本件特許に係る出願当初の明細書(以下、「当初明細書」という。)には、以下の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明の分野は、機械工学及び材料科学に関し、特に、本発明は、非鉄金属溶解炉の構成部品及び構造に関する。 【背景技術】 【0002】 一般に、金属溶解炉には、次に述べる主な3つのタイプがある。(1)直接燃料火炎炉(direct fuel fire furnace)は、金属の予熱、金属の溶解、及び温度制御を行うための別個の部分、ゾーン又はチャンバーを備える。この炉は、金属に直に接する火炎を使用し、多くの金属を溶解するのに適している。(2)間接燃料火炎炉(indirect fuel fire furnace)は、円筒形又は鍋形の形状を有し、昇降炉、傾動炉又は回転坩堝炉に細分化することができる。(3)電気炉(electrical powered furnace)は、電気抵抗を利用するものと電磁誘導を利用するものとを含む2つのタイプに細分化される。 【0003】 本発明は、従来の直接燃料火炎炉内で溶融材料を保持する温度調整部又は保持部内において、除去及び清掃が困難であり、かつ溶融材料の全収率に悪影響を与え得る酸化アルミニウム等の金属酸化物の蓄積に関する問題を解決するのに役立つことができる。従来の溶解炉の1組の例を、図5~図8に示すことができる。溶解部6は、予熱部5及び斜面15の下方に配置されており、溶解炉の片側にはバーナー9が備えられる。非鉄金属又はアルミニウムは、予熱部5の上に配置される開口17を通して溶解炉内に移送されることができ、次に、バーナー9によって加熱されて、非鉄金属又はアルミニウムは溶融して、溶融材料1bとなる。溶融材料1bは、次に、斜面15上を流れて温度調整部3内に入る。温度調整部3の温度は、バーナー12によって維持又は上昇される。溶融材料又はアルミニウム1bは、次に、隔壁10の延長部である下縁部13を通って流れ、炉出口4へ出る。得られる溶融材料金属又はアルミニウム1cは、次に、外部の鋳造又は成形装置による鋳造又は成形プロセスにおいて使用することができる。アルミニウム等の非鉄材料は、蓋16を含む予熱部5に注入されることができ、溶解部6は、片側に取り付けられる扉23を含む。扉23は、点検及び溶解部6の清掃のために開くことができる。温度調整部3は、点検及び温度調整部3の清掃のために開くことができる扉24を含む。 【0004】 従来の溶解炉の上述の構成部品及び構造は、バーナー9によって溶解された溶融アルミニウム又は溶融材料1bが、斜面15に接続された温度調整部3に流れ込み、温度調整部3内で酸化物21aと混合する可能性があり、確かな欠点を有する。溶融アルミニウム又は材料1bは、この場合、天井蓋11に取り付けられるバーナー12によって制御される規定の温度に維持される。溶融アルミニウム又は材料1bは、温度調整部3内において高温下に維持されるので、温度調整部3内の空気との酸化反応を起こす可能性があり、それにより、温度調整部3内で集塊を形成して増大し得る酸化物21aが生成される可能性がある。したがって、従来の溶解炉の使用者は、扉24を開くことによって、温度調整部を常に清掃することが必要である。しかしながら、清掃プロセスは高温下で行われるので、温度調整部からの酸化物21bの完全な除去は、多くの場合に困難かつ複雑な作業となる。さらに、長時間除去されず高温下にあった酸化物21bは、コランダム(Al2O3)又は他の形態の結晶化物質に結晶化する場合があり、これは、溶解炉の内壁又は内面に強固に付着する。上述した酸化物21bは、限定はしないが、溶解炉の内壁から上記酸化物21bの欠片が溶融材料に混入し、これにより、鋳造又は成形された製品にハードスポットを生じさせ、最終製品の強度を低下させることを含む問題の根本的な原因である。さらに、酸化物21bは、温度調整部3の内壁及び天井部の内側で増大し、これにより、温度調整部3内の空間を低減させ、温度調整部3内の絶縁層22を変化又は劣化させ、その後、外部環境への熱漏出を引き起こす可能性がある。したがって、製品の品質を向上するためには、溶解炉は、生産時の酸化物21bの生成又は排出量を最小限にする必要がある。 【0005】 上述した酸化物の蓄積によって生じる問題は、「金属溶解炉」という名称の特許文献1によって予見されている。この発明は、溶解部から温度調整部までを連結する傾斜炉床又は斜面状炉床の間に隔壁を設けることにより、酸化物蓄積の問題を解決することを意図したものである。隔壁は、温度調整部及び傾斜炉床内の溶融材料よりも低い高さにおける接続路を形成し、これにより、金属酸化物が温度調整部に流れ込むことを防止する。しかしながら、上記発明は、温度調整部の半分未満のサイズであるとともに上記温度調整部及び接続路よりも低い床高さを有する溶融金属処理部を含み、これにより、溶解炉の構成部品数が増加するため、システムの複雑性が高まり得る。また、「金属溶解炉」という名称の特許文献2は、溶解部内の更なる加熱板とともに部分隔壁を記載している。また、酸化物の低減は、別の2つの特許出願によって予見されている。1つは、「タワー型アルミニウム溶解保持炉」という名称の特許文献3による、溶解部及び温度調整部の昇温によるものであり、もう1つは、「金属溶解炉」という名称の特許文献4による、投入ポートと、上部通気口と、溶解部内の底部における加熱板とを使用し、バーナーヘッドを温度調整部の側部に配置することによるものである。しかしながら、これらの出願は、いくつかの状況に適さない場合がある複雑な構成部品セットの使用を提案するものである。 【0006】 上記の従来技術は、システムにおける酸化鉄の生成量を低減するために、溶解炉の構成部品若しくは構造を改良すること、又は、ガスの量若しくは化学プロセスを制御する手段を提供することを意図したものである。しかしながら、従来技術では、加熱板、扉又は隔壁等の複雑な構成部品を溶解炉システムに導入することを必要とせずに、溶解炉からの酸化物の排除に関してアルミニウム炉等の通常は産業用の非鉄金属炉の効率を改善する能力を有する発明は、依然として存在していない。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0007】 【特許文献1】米国特許第7,060,220号 【特許文献2】特開2006-071266号 【特許文献3】特開2001-272171号 【特許文献4】米国特許出願公開第2015/0042024号 【発明の概要】 【0008】 本発明に係る溶解炉は、アルミニウム等の非鉄金属を溶解するとともに、後続の鋳造又は射出成形プロセスのためにその溶融材料を貯留するための温度調整部を特徴とする。本発明は、温度調整部内で生成される酸化物の量を低減し、ひいてはアルミニウム又は非鉄金属の品質を向上させるのに役立つ。本発明は、溶融材料の液面に浮かぶ酸化生成物に対する保護を提供する。溶解炉の溶解部における溶融材料は、センサー又は溶融材料検出装置を用いて溶融材料の液面レベルを制御することによって、隔壁の底縁部の下に沈み、接続路を通って温度調整部に流れる。本発明は、温度調整部の天井部の一部において、火炎を保持する温度調整バーナーを更に用いて、溶融したアルミニウムと温度調整部内のガスとの反応を防止するとともに、温度調整部内の酸素濃度を制御して下げ、溶融材料から酸化物が生成される可能性を回避する。」 「【発明を実施するための形態】 【0010】 図1は、本発明に係る溶解炉の1つの実施形態の平面図を示しており、溶解炉は、図2の断面図C、図3の断面図A及び図4の断面図Bに示される種々の構成部品を備える。溶解炉は、材料投入路17及び蓋16を備え、材料は、材料投入路17内に投入されると、加熱部5内に移動される。加熱部5の下方には、溶解部6及び傾斜炉床15がある。傾斜炉床15の上側には、加熱部5の上部に配置されるバーナー9が備えられる。材料は、溶解部6内でバーナー9の火炎の熱によって溶解され、その後、傾斜炉床15上を下方に流れ、溶融材料加熱部7に入る。溶融材料加熱部7は、溶融材料1aの温度を維持及び上昇させるために使用され、酸化物除去扉14a,14bを備える。溶融材料加熱部7は、温度調整部3に溶融材料1aを流し込むための接続路2を更に備える。温度調整部3は、溶融材料1cが出湯口4を通って溶解炉を出る前に溶融材料1bを保持することができる。本発明に係る溶解炉は、特に温度調整部3を備え、温度調整部3は、溶融材料1aを受け入れるための接続路2と、溶融材料1cを放出するための出湯口4とを含む。接続路2は、加熱部5の下部、溶解部6、傾斜炉床15及び溶融材料加熱部7に更に接続する。 【0011】 接続路2により、一般に、溶解部6及び溶融材料加熱部7から温度調整部3内に移動する溶融材料1aの上に浮かぶ酸化生成物21aから溶解炉を保護することができる。接続路2は、隔壁10の下縁部13の下に位置し、温度調整部3に通じる。接続路2の下底部は、溶融材料加熱部7の表面でもあり、下縁部13の位置よりも低く没する傾斜面で特徴付けられる。溶融材料の検出器又はセンサー8は、出湯口4に近接して又は溶解炉の任意の部分に配置される。検出器8は、最上液面レベルを有効に検出し、ひいては、溶融材料1cを出湯口4から汲み出すまたは放出させずに隔壁10の下縁部13を上回る溶融材料1a、1b、1cの高さを維持することができ、したがって、材料加熱部7からの酸化物21aが温度調整部3内の溶融材料1bに混じることがない。 【0012】 温度調整部3には、空気を調整するための熱交換器20、又は、溶融材料加熱部7と温度調整部3との間の下縁部13における少なくとも1つの穴、又は、少なくとも1つの穴及び1つの熱交換器20を有し、これらは、燃焼に用いられるエネルギーの低減に効果を有し得る。さらに、温度調整部3の天井蓋11に温度調整バーナー12が配置され、バーナー12は、天井部において帯状のフラットな火炎(フラットフレーム)を放射することが好ましく、このフラットフレームは、溶融材料の品質低下及び炉壁上での酸化物集塊の形成を引き起こし得る酸化物層である上記溶融材料の最上層を除去することによって、溶融材料1bと反応する。また、バーナー12のフラットフレームは、酸素濃度を温度調整部3内の可燃性ガス全体の1%~5%に、より好ましくは1%未満に制御して、溶融材料1bの厚みを低減することができる。 【0013】 従来の温度調整部3は、定期的に清掃する必要があり、したがって、図6に示すような溶解炉から金属酸化物を除去するための温度調整扉24を必要とするが、これとは異なり、本発明は、温度調整扉24の設置を必要とせず、代わりに、フラットフレーム式の温度調整バーナー12を使用する。温度調整バーナー12は、溶解炉内の酸素の量を制御することができるとともに、検出器又はセンサーを更に備え、各部内の溶融材料を測定して、生成される酸化物の量を低減する。上述したこのような構成は、溶解炉の重量を低減すると同時に、エネルギー消費及び溶解炉の清掃のための人員を削減することができる。 【0014】 上記のプロセスは、本発明の実施形態のうちの1つにすぎず、決して上述した記載に制限されるものではない。本発明の意図と一致するのであれば、例えば、バーナー12を温度調整部3の底面19に配置するか、又は、電気若しくは燃料ガスによって加熱される浸漬ヒーター若しくは加熱チューブを設けるか、又は、天井蓋11に金属ベースヒーター若しくはバーナーを設けるか、又は、ファイバーベースヒーター若しくはバーナー、若しくは空気が表面構造を流通することを可能にする構造を与えることができる多孔材料ベースヒーター若しくはバーナーを設けることによって、構成部品を改良又は変更することができる。 【0015】 温度調整部3内において、浸漬加熱チューブを使用する又は天井蓋11に金属ベースヒーターを使用する例では、溶融材料1bが急激な酸化反応を起こすことを防止又は阻止するために、不活性ガスを噴射して温度調整部3内の酸素濃度を下げることが必要な場合がある。」 ウ 本件特許に係る出願当初の図面(以下、「当初図面」という。)には、以下の記載がある。 「【図1】 [図:0001424883000001.jpg] 【図2】 [図:0001424883000002.jpg] 【図3】 [図:0001424883000003.jpg] 【図4】 [図:0001424883000004.jpg] 【図5】 [図:0001424883000005.jpg] 【図6】 [図:0001424883000006.jpg] 【図7】 [図:0001424883000007.jpg] 【図8】 [図:0001424883000008.jpg] 」 (2)本件発明が解決しようとする課題 ア 図5~図8に示されるような従来の溶解炉では、「溶解炉の」「構成部品及び構造は、バーナー9によって溶解された溶融アルミニウム又は溶融材料1bが、斜面15に接続された温度調整部3に流れ込み、温度調整部3内で酸化物21aと混合する可能性があり、確かな欠点を有」するため、「従来の溶解炉の使用者は、扉24を開くことによって、温度調整部を常に清掃することが必要」(【0004】)との問題を有していた。 イ この問題に対して、【0007】で引用する特許文献1~4が開示する従来技術は、「いくつかの状況に適さない場合がある複雑な構成部品セットの使用を提案するもの」であり(【0005】)、「上記の従来技術は、システムにおける酸化鉄の生成量を低減するために、溶解炉の構成部品若しくは構造を改良すること、又は、ガスの量若しくは化学プロセスを制御する手段を提供することを意図したものであ」って、「加熱板、扉又は隔壁等の複雑な構成部品を溶解炉システムに導入することを必要とせずに、溶解炉からの酸化物の排除に関してアルミニウム炉等の通常は産業用の非鉄金属炉の効率を改善する能力を有する発明は、依然として存在していな」かった(【0006】)。 (当審注:下線を付した「鉄」、「を必要とせずに」及び「の通常は産業用」は、平成30年6月22日提出の手続補正書により、それぞれ、「物」、「をせずに」及び「の産業用」に補正された。) ウ そして、上記問題に対して、「本発明は、従来の直接燃料火炎炉内で溶融材料を保持する温度調整部又は保持部内において、除去及び清掃が困難であり、かつ溶融材料の全収率に悪影響を与え得る酸化アルミニウム等の金属酸化物の蓄積に関する問題を解決するのに役立つことができる」のものであり(【0003】)、また、「温度調整部内で生成される酸化物の量を低減し、ひいてはアルミニウム又は非鉄金属の品質を向上させるのに役立つ」ものでもある(【0008】)。 エ そうすると、本件発明が解決しようとする課題は、「温度調整部内で生成される酸化物の量を低減すること」であると認められる。 (3)「閉システム」の技術的意味について ア 「閉システム」については、本件特許に係る出願当初の請求項5に、「前記温度調整部(3)は、扉を有しない閉システムであり、」との記載があるのみで、当初明細書には、「閉システム」との記載はない。 イ そのため、被請求人は、平成31年1月22日提出の上記手続補正書と同日に提出した意見書(甲第1号証)において、上記「閉システム」について、 「イ.温度調整部が閉システムである。 ここで、「閉システム」とは、温度調整部内の燃焼ガスは炉外に排出されるものの、温度調整部内に、予熱部、溶解部、加熱部及び出湯口から燃焼ガスが流れ込まない構造を言います。これは、本願の図2及び図4を参照すれば自明であり、温度調整部3内は、天井11、側壁18、隔壁10、溶融材料1a,1b,1cなどによって閉じられた空間とされており、隣接する予熱部5、溶解部6、加熱部7及び出湯口4から燃焼ガスが流れ込む開口や空隙がない構造となっています。一方で、温度調整部3内の燃焼ガスは、例えば天井11に設けられた熱交換器20を介して炉外に排出される構造となっています。」(2.本願発明の説明(2)イ.)と述べている。 ウ また、被請求人は、令和5年4月21日付け審理事項通知(1回目)における、合議体からの、 「・「出湯口から」温度調整部内に「燃焼ガスが流れ込まない構造」とは、どのような構造であるのか、 ・出湯口から流れ込む可能性がある燃焼ガスは、どのバーナーの燃焼ガスか。 ・出湯口から燃焼ガス以外(例えば、空気)が流れ込むことは許容しているのか。」との指摘(第5の7[被請求人に対して](2))に対し、 令和5年5月9日提出の口頭審理陳述要領書において、 「ウ.以上のとおり、本件特許発明の「閉システム」とは、温度調整部内の燃焼ガスは炉外に排出されるものの、温度調整部内に、予熱部、溶解部、加熱部及び出湯口から燃焼ガスや外気が流れ込まない構造を言います。 この「閉システム」の説明をもとに、審理事項通知書の14頁における[被請求人に対して](2)について陳述すると、「出湯口から」温度調整部内に「燃焼ガスが流れ込まない構造」は誤りであり、正しくは、「出湯口から」温度調整部内に「外気が流れ込まない構造」であって、どのバーナの燃焼ガスも出湯口から温度調整部内に流れ込む可能性はありません。また、出湯口から温度調整部内に空気が流れ込むことは許容しておらず、「閉システム」は、温度調整部内に外部から燃焼ガスや外気などのガスが流れ込まない構造を意味します。」(第4ページ下から1行目~第5ページ第9行)と述べている。 エ 上記イ、ウの被請求人の主張を踏まえると、「閉システム」の技術的意味は、「温度調整部内に外部から燃焼ガスや外気などのガスが流れ込まない構造」であると認められる。 (4)「閉システム」が当初明細書に記載されているか否かについて ア 当初明細書には、「溶解炉は、材料投入路17及び蓋16を備え、材料は、材料投入路17内に投入されると、加熱部5内に移動され」、「加熱部5の下方には、溶解部6及び傾斜炉床15があ」り、「材料は、溶解部6内でバーナー9の火炎の熱によって溶解され、その後、傾斜炉床15上を下方に流れ、溶融材料加熱部7に入る」。「溶融材料加熱部7は、温度調整部3に溶融材料1aを流し込むための接続路2を更に備え」、「接続路2は、隔壁10の下縁部13の下に位置し、温度調整部3に通じる」ことが記載されている(【0010】、【0011】)。(当審注:下線を付した「加熱部」及び「溶融材料加熱部」は、平成30年6月22日提出の手続補正書により、それぞれ、「予熱部」及び「加熱部」に補正された。) イ また、「溶融材料の」「検出器8は、最上液面レベルを有効に検出し」、「隔壁10の下縁部13を上回る溶融材料1a、1b、1cの高さを維持することができ、したがって、材料加熱部7からの酸化物21aが温度調整部3内の溶融材料1bに混じることがない」ことも記載されている(【0011】)。 ウ すなわち、「溶融材料加熱部7」(加熱部7)と「温度調整部3」とは、「接続路2」で接続されており、「接続路2」は、「隔壁10」(図3、4を参照すると、「溶融材料加熱部7」(加熱部7)と「温度調整部3」との間の隔壁)の「下縁部13の下に位置し」ている。また、「溶融材料の」「最上液面レベル」は、「隔壁10の下縁部13を上回る溶融材料」「の高さを維持することができ」るので、「溶融材料の」「最上液面レベル」は、「隔壁10」の位置において、「接続路2」の上部を上回る位置となる。 エ そうすると、「隔壁10」の位置において、「接続路2」は、常に溶融材料で満たされることになるから、ここから、温度調整部内に、予熱部、溶解部及び加熱部からの燃焼ガスや外気が流れ込むことはないといえる。 オ また、「温度調整部3は」、「溶融材料1cを放出するための出湯口4とを含む」ものである(【0010】)。ここで、図2を参照すると、「温度調整部3」と「出湯口4」との間の隔壁の下縁部は、溶融材料1b、1cの液面よりも下方に位置することが記載されている。 カ そうすると、「温度調整部3」と「出湯口4」との間の隔壁の下縁部より下の部分は、常に溶融材料で満たされることになるから、ここから、温度調整部内に外気が流れ込むことはないといえる。 キ そして、他に、「温度調整部3」内に燃焼ガスや外気が流れ込む開口や空隙は認められない。 ク 以上のとおりであるから、当初明細書には、「温度調整部内に外部から燃焼ガスや外気などのガスが流れ込まない構造」、すなわち、「閉システム」が記載されていると認められる。 (5)閉システムにおける扉の技術上の意義について ア 上記(2)エで述べたとおり、本件発明が解決しようとする課題は、「温度調整部内で生成される酸化物の量を低減すること」であると認められる。 イ 一方、本件発明は、「前記温度調整部(3)は、閉システムであり、」との発明特定事項を有するものである。 ウ ここで、温度調整部が閉システムであれば、温度調整部外から酸素が温度調整部内に流入することを抑制できるので、温度調整部が閉システムである本件発明は、温度調整部外から酸素が温度調整部内に流入する態様と比較して、温度調整部内の酸素濃度を低減し得るものといえる。 エ そして、温度調整部内の酸素濃度が低減すれば、酸化が抑制され、酸化物の量も低減されるから、温度調整部における酸化物の除去及び清掃は困難なものとはならず、「溶融材料の全収率に悪影響を与え得る酸化アルミニウム等の金属酸化物の蓄積に関する問題」(【0003】)も軽減されるものといえる。また、「温度調整部内で生成される酸化物の量を低減」することは、「アルミニウム又は非鉄金属の品質を向上させるのに役立つ」(【0008】)ものといえる。 オ そうすると、「前記温度調整部(3)は、閉システムであり、」との発明特定事項を有する本件発明は、「温度調整部内で生成される酸化物の量を低減すること」との課題を解決し得るものである。 カ 以上のとおり、温度調整部が扉を有するか否かは、本件発明の課題の解決とは関係がなく、温度調整部の扉は任意付加的な事項である(仮に、温度調整部が扉を有するとしても、温度調整部は閉システムであるから、操業中に扉が開放されることは想定されない。)から、「閉システム」について「扉を有しない」との特定がされていない「前記温度調整部(3)は、閉システムであり、」との事項を本件特許の請求項1に追加する、平成31年1月22日提出の手続補正書による補正は、本件特許に係る出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。 (6)請求人の主張について ア 請求人は、当初明細書の「上記の従来技術は、システムにおける酸化鉄の生成量を低減するために、溶解炉の構成部品若しくは構造を改良すること、又は、ガスの量若しくは化学プロセスを制御する手段を提供することを意図したものである。しかしながら、従来技術では、加熱板、扉又は隔壁等の複雑な構成部品を溶解炉システムに導入することを必要とせずに、溶解炉からの酸化物の排除に関してアルミニウム炉等の通常は産業用の非鉄金属炉の効率を改善する能力を有する発明は、依然として存在していない。」(【0006】)との記載を鑑みれば、「「加熱板、扉又は隔壁等の複雑な構成部品を溶解炉システムに導入すること」なく「溶解炉からの酸化物の排除に関してアルミニウム炉等の通常は産業用の非鉄金属炉の効率を改善する能力を有する」ことができる溶解炉を提供することが、本件特許発明の技術的課題であると解される。」と主張する(審判請求書第9ページ下から4行目~第10ページ第16行)。 しかしながら、本件発明が解決しようとする課題は、上記(2)エで述べたとおり、「温度調整部内で生成される酸化物の量を低減すること」であるから、請求人の上記主張は失当であり採用できない。 イ 請求人は、当初明細書の「従来の温度調整部3は、(略)溶解炉から金属酸化物を除去するための温度調整扉24を必要とするが、これとは異なり、本発明は、温度調整扉24の設置を必要とせず、代わりに、フラットフレーム式の温度調整バーナー12を使用する。(略)上述したこのような構成は、溶解炉の重量を低減すると同時に、エネルギー消費及び溶解炉の清掃のための人員を削減することができる。」(【0013】)との記載を鑑みれば、扉を有する温度調整部(3)は、本件特許発明の解釈においては、「閉システム」には含まれない旨主張する(審判請求書第10ページ第17行~第11ページ第9行)。 しかしながら、上記(3)エで述べたとおり、「閉システム」は、「温度調整部内に外部から燃焼ガスや外気などのガスが流れ込まない構造」を意味するものであって、仮に、温度調整部が扉を有するとしても、操業中に扉を閉じていれば、「閉システム」は維持されて、温度調整部内で生成される酸化物の量を低減することができるから、温度調整部が扉を有する態様も「閉システム」に含まれ得るものである。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 (7)小括 以上のとおり、平成31年1月22日提出の手続補正書でした手続補正は、本件特許に係る出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面(特許法第184条の6の規定により明細書、特許請求の範囲又は図面とみなされた、本願の国際出願日における明細書の翻訳文、請求の範囲の翻訳文又は図面(図面の中の説明を除く。)及び図面の中の説明の翻訳文)に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。 2 甲号証の記載事項 (1)甲第3-1号証 甲第3-1号証の右上部に「甲第3-1号証」と記載される面を「1ページ目」、左上部に「主な仕様」と記載される面を「2ページ目」という。なお、赤矢印は、請求人が証拠提出の際に付与したものである。 ア 甲第3-1号証の1ページ目の記載事項 (ア)「TERRA PAC MELT」 (イ)「タワー型非鉄金属溶解保持炉」 (ウ)「[共同開発:(株)大紀アルミニウム工業所]」(以上、1ページ目の上部) (エ)「 [図:0001424883000009.jpg] 」 (1ページ目の中央部)(当審注:上記写真はタワー型非鉄金属溶解保持炉である「TERRA PAC MELT」の外観写真と認められる。) (オ)「リジェネレーティブバーナの自己完結型排熱回収機能により、タワー内材料の量や形状によらず常にベストの溶解効率を維持します。」 (カ)「1高効率 世界最高水準の溶解燃費(アルミニウム溶解原単位40万kcal/ton以下)。当社比50%減の保持燃費(アルミニウム700℃保温時2万kcal/h・ton)。」 (キ)「2高品質 炉内O2濃度制御により、非金属介在物の生成を抑制し歩留が向上します。強循環伝熱で溶湯温度のムラが無く、温度設定値±5℃をキープします。」 (ク)「3好環境 低い燃焼騒音と排ガス温度により作業環境を一気に改善できます。屋内排気を前提に排ガス中のCO-NOx排出レベルを低減しています。」 (ケ)「4保全性 均一な炉内温度分布により炉壁酸化物の堆積を抑制、オバケ対策も万全です。ワンタッチ点火で面倒な燃焼調整を全自動化、遠隔監視にも対応可能です。」(以上、1ページ目の下部) イ 甲第3-1号証の「2ページ目」の記載事項 (ア)「「TERRA PAC MELT」主な仕様」(2ページ目の左上) (イ)「●「TERRA PAC MELT」は株式会社テラ・コーポレーションの商標です。」 (ウ)「●本カタログの記載内容は1997年5月現在のものです。」(以上、2ページ目の右上) (エ)「 [図:0001424883000010.jpg] 」 (2ページ目の中央部)(当審注:上記図面はタワー型非鉄金属溶解保持炉である「TERRA PAC MELT」(以下、「溶解保持炉」という。)の概略図と認められる。以下、上記概略図において、「左上」、「右上」、「左下」及び「右下」の図をそれぞれ、「図A」、「図B」、「図C」及び「図D」という。) 上記概略図によれば次の事項が記載されているものと認められる。 i 図Aの記載事項 図Aは、溶解保持炉の水平方向の断面図であると認められる。 図Aの上方及び下方には、A及びA’との矢印が付された、左右方向にずれた2本の一点鎖線が記載されている。 図Aには、溶解保持炉は、その右側に「溶解室」、溶解室の左側に「保持室」、保持室の下方に「保持バーナー」、保持室の上方に「汲み出し口」、汲み出し口の左下部に「溶湯レベルセンサー」、「溶湯用熱電対」を有することが記載されている。 ii 図Bの記載事項 図B上部の「A-A’断面」との記載から、図Bが、図Aの「A及びA’との矢印が付された、左右方向にずれた2本の一点鎖線」で切り取った断面であると認められる。 図Bには、溶解保持炉は、「保持室」、保持室の右側の側壁に「保持バーナー」を有することが記載されている。 図Bにおいて、対応する図Aの一点鎖線上の構成と対比すると、「保持室」の左側に「汲み出し口」を有するものと解される。また、前記保持室と前記汲み出し口とは、互いを離隔する炉壁(以下「第2の炉壁」という。)の下方の通路(以下「第2の通路」という。)で繋がっており、前記第2の炉壁下方の炉床は前記保持室から前記汲み出し口に向けて傾斜していることが看取される。 図Bにおいて、保持室内の水平の実線と汲み出し口における最も低い位置にある線(二点鎖線)とは同じ高さである(第1回口頭審理調書)。 iii 図Cの記載事項 図Cには、溶解保持炉は、「保持室」、保持室の右側に「溶解室」を有することが記載されている。また、前記溶解室と前記保持室とは、互いを離隔する炉壁(以下「第1の炉壁」という。)の下方の通路(以下「第1の通路」という。)で繋がっており、前記溶解室の炉床は前記保持室に向けて傾斜していることが看取される。 図Cにおいて、保持室の左側の赤矢印が指し示すものは、「1ページ目」の外観写真との対応から扉であると認められる。また、当該扉と同様の形状を有する、溶解室の右側の赤矢印が指し示すものも扉であると認められる。 iv 図Dの記載事項 図Dには、溶解保持炉は、「材料ストックゾーン」を有することが記載されている。そして、該材料ストックゾーンの上端は「材料投入口」と説明されていることから、材料を投入するための開口部となっており、「材料投入口」は、「投入口開閉ダンパー」により、開閉可能となっていることが看取される(「1ページ目」の外観写真も参照。)。 また、図Dから、材料ストックゾーンは、炉壁上部に「予熱ゾーン測温孔」を有し、「溶解室」は材料ストックゾーンの下方と連通し、溶解室の右上部には、左下方向に向けた「溶解バーナー」を有することが看取される。そして、該溶解バーナーに対向する炉床は、材料ストックゾーンの下方において材料ストックゾーンから溶解室に向けて傾斜し、さらに、溶解バーナーの中心線の延長線上で前記傾斜が緩やかになることが看取される。 v 溶解保持炉の処理対象 上記ア(イ)の「タワー型非鉄金属溶解保持炉」との記載から、溶解保持炉の処理対象、すなわちストックゾーンに投入される材料は「非鉄金属」と認められる。 ウ 上記イ(エ)の概略図における線種(太い実線、細い実線、破線、一点鎖線、二点鎖線)の意味について (ア)太い実線は、概ね、溶解保持炉の輪郭を表している。 (イ)細い実線は、概ね、溶解保持炉の構成要素の輪郭を表している。一方、図Bの保持室内の水平方向の実線、汲み出し口上部の水平方向の実線が何を意味するか不明である。 (ウ)破線は、図Aの汲み出し口を構成する炉壁の内部、図Cの溶解室の上方に記されているが、これら破線が何を意味するか不明である。一方、図Dの溶解室の底部であって、傾斜した炉床の右端にある略正方形の破線は、図Cの溶解室と保持室を繋ぐ第1の通路を意味しているものと解される。 (エ)一点鎖線は、概ね、断面の場所を表している。 すなわち、図AのA-A’における断面は、図Bであり、図Cの保持室における縦方向の一点鎖線における断面も図Bである。 図A、図Cの溶解室における縦方向の一点鎖線における断面は図Dである。 図Cの保持室の底部にある対角線付き長方形の一点鎖線は、図A、Bも参照すると、保持室と汲み出し口を繋ぐ第2の通路を意味しているものと解される。 一方、図Dの材料ストックゾーン、溶解バーナーの一点鎖線は、それぞれの中心線を示しており、断面の位置を表しているとはいえない。 (オ)二点鎖線は、概ね、図A、図Bの保持バーナーの燃焼制御ユニットや、図B、図Dの下部のように、断面には現れない(紙面垂直方向の奥側または手前側の)装置の一部を表している。一方、図Bの汲み出し口における最も低い位置にある二点鎖線、図Cの保持室内、溶解室内の水平方向の二点鎖線が何を意味するか不明である。 (カ)図A~図Dには、上記i~ivの意味で用いられる線以外にも、様々な線(寸法表に対応するものを除く。)が用いられているが、これらの線の意味は不明である。 (キ)以上、溶解保持炉の概略図から、特に、図Bの保持室内の水平方向の実線、図Bの汲み出し口における最も低い位置にある二点鎖線、図Cの溶解室及び保持室内の水平方向の二点鎖線が、溶融した非鉄金属の液面を意味するか不明である。 エ 溶解工程について 技術常識を踏まえると、甲第3-1号証に記載される溶解保持炉において、材料ストックゾーンに投入された非鉄金属は、傾斜した炉床上で留まり(ストックされ)、溶解バーナーにより溶解室で溶解され、溶融した非鉄金属は、溶解室の底部から第1の通路を通って保持室に流れ、保持室から第2の通路を通って汲み出し口に至るものと認められる。(なお、溶解室の底部については、下記4(1)ア(エ)の参考図1、2とその説明を参照。) (2)甲第11号証 ア 「付録 JIS B 0001-1985 機械製図 全文」 イ 「 [図:0001424883000011.jpg] 」 ウ 「 [図:0001424883000012.jpg] 」 (2)甲第12-1号証 ア TPM-200溶解保持炉の断面図 「 [図:0001424883000013.jpg] 」(以下、「計画図C」という。) イ 「保持室内の水平の二点鎖線と溶解室内の水平の二点鎖線とが同じ高さである」(第1回口頭審理調書) (3)甲第12-3号証 ア TPM-200溶解保持炉の断面図 「 [図:0001424883000014.jpg] 」(以下、「計画図B」という。) なお、口頭審理の場で提示された甲第12号証の高解像度の写しを参考のために掲載する。 [図:0001424883000015.jpg] イ 「保持室内の水平の線が二点鎖線であること、当該二点鎖線が、汲み出し口における「操業時溶湯レベル」を示す二点鎖線と同じ高さである」(第1回口頭審理調書) (4)甲第13号証 ア 「材料を溶解するための溶解室と溶解した材料を所定温度に保持しておくための保持室との間の仕切壁において、溶湯の液面下にて仕切壁に溶解室から保持室へ溶湯が流入する通孔を穿設し、溶湯の液面より上において保持室から溶解室へ熱風が流入する熱風導入口を開口し、熱風導入口と通孔との間の部分をスラグ流入防止部としたことを特徴とする溶解保持炉。」(実用新案登録請求の範囲) イ 「〔考案の目的〕 本考案はこのような問題点に鑑みてなされたもので、溶融アルミニウム上に浮遊するスラグを溶解室でせき止めておき、保持室へ流入しないようにし、保持室を通じてウエルに流入する溶湯を出来るだけ清浄に保つようにした溶解保持炉を提供するものである。」(第3ページ第4~10行) ウ 「〔実施例〕 以下、本考案の一実施例を示す図面について説明すれば、(1)はアルミニウムなどの溶解保持炉で、材料予熱タワー(2)とタワー(2)の下部と連接している溶解室(3)と、溶解室(3)と底部で連通している保持室(4)と、保持室(4)に底部で連通しているウエル(5)とで構成されている。(6)は溶解室(3)と保持室(4)との連通部を区隔する仕切壁で、溶湯の液面より上の部分に熱風導入口(7)が開口されており、溶湯の液面より下の部分に通孔(8)が穿設されていて保持室(4)と溶解室(3)とが連通されており、熱風口(7)と通孔(8)の間がスラグ流入防止部(21)となっている。」(第4ページ第16~第5ページ第8行) エ 「保持バーナーの火炎によって保持室内の溶湯は一定温度に保持され、同時にこの熱風は熱風導入口を通して溶解室に入り、然る後、材料予熱タワーを抜けるもので、投入された材料の予熱が迅速に行われ、その結果、溶解室での溶解が迅速に行われるという利点もある。」(第8ページ第12~17行) オ 「第1図 [図:0001424883000016.jpg] 」 (5)甲第14号証 ア 「【請求項1】 給排が切替えられる通気孔が複数開口された給排気面と、 該給排気面から突出された突出部と、 該突出部の内側から先端にわたって形成された噴射燃料を開放する燃料開放面と、 を有するバーナタイルを有しており、 該バーナタイルは炉体に固定されており、 前記通気孔の断面の少なくとも一部が前記給排気面において前記突出部の断面と重なっておりこの重なった部分の前記突出部の外周側部に前記通気孔と同芯状にかつ軸方向に延びるガイド溝が形成されている、 工業用炉。」 イ 「【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかし、従来のバーナで燃焼を行うと、排気中のCO(一酸化炭素)、NOX(窒素酸化物)の量が大で、実用化に供することができないか、あるいは大気解放前にCO、NOX低減処理が必要となる場合がある。また、火焔が炉の奥にまで届きにくいという問題もある。本発明の目的は、燃焼中のCO、NOXの生成量を抑制でき、しかも火焔が炉の奥にまで届く工業用炉、および蓄熱燃焼用バーナ、並びに工業用炉の燃焼方法を提供することにある。 ウ 「【図19】 [図:0001424883000017.jpg] 」 (6)甲第15号証 ア 「多くの中・小規模のパッケージボイラーでは,燃焼は主に燃料と空気量を一定比率で調節する制御方法がとられており,不完全燃焼が発生しないよう過剰空気での燃焼を行っている例が多い。これらのパッケージボイラーについてもジルコニア式酸素計による排ガスO2燃焼制御を行うことにより燃料コストの削減が期待できる。」(要約欄) イ 「図2は空気比と熱効率の関係を表したものである(1)。中央のゾーンは適正な空気比での最適燃焼領域を示している。一般的に使用されている液体燃料で,蒸発量が毎時10トン以上30トン未満のボイラーでの基準空気比(2)は1.15~1.30で,排ガス中のO2濃度に換算すると2.74~4.85%に相当する。 燃焼空気が不十分な場合,不完全燃焼となり黒煙が発生し,エネルギー損失となる。燃焼空気が過剰になると燃焼に必要のない空気が加熱され,煙突から放出されて熱損失を起こす。また過剰燃焼により空気中の窒素,また燃料からNOx,SOxの発生が増加し大気汚染,温暖化の原因となる。従ってエネルギー損失,熱損失のない最適燃焼には,排ガス中のO2濃度による燃焼管理・制御が重要となる。」(第35ページ「2.酸素濃度による燃焼管理・制御」) ウ 「 [図:0001424883000018.jpg] 」(第35ページ「2.酸素濃度による燃焼管理・制御」) 3 甲第3-1号証に記載された発明 上記2(1)エの認定を踏まえると、材料ストックゾーンはその下部領域において、非鉄金属が部分的に溶解している領域であって、溶解室と重複する領域(非鉄金属が固体で存在しているので、材料ストックゾーンに該当するとともに、当該非鉄金属が部分的に溶解されているので、溶解室にも該当する。)を有し、溶解室で溶解バーナーにより溶解した非鉄金属は、溶解室の底部においては溶融した状態であると解される。 そうすると、上記2(1)ア~エから、甲第3-1号証には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「甲3発明」という。)。 「上端に材料投入口を有し、炉壁の上部に予熱ゾーン測温孔を有し、前記材料投入口は投入口開閉ダンパーにより、開閉可能となっている材料ストックゾーンと、 前記材料ストックゾーンとその下方で連通する溶解室と、 前記溶解室の側方の扉と、 前記溶解室の上部の溶解バーナーと、 前記溶解室の底部と、 前記溶解バーナーに対向し、上部より下部が緩やかに傾斜した炉床と、 保持バーナーを側壁に備える保持室と、 前記保持室の側方の扉と、 前記溶解室の底部から前記保持室に向けて傾斜している炉床と、 前記溶解室と前記保持室とを互いに離隔する第1の炉壁と、 前記第1の炉壁の下方で前記溶解室と前記保持室とを繋ぐ第1の通路と、 溶湯レベルセンサーを備え、溶融した材料(非鉄金属)を汲み出す汲み出し口 と、 前記保持室と前記汲み出し口とを互いに離隔する第2の炉壁と、 前記第2の炉壁の下方で前記保持室と前記汲み出し口とを繋ぐ第2の通路と、 を備えるタワー型非鉄金属溶解保持炉。」 4 無効理由2(甲3発明に基づく進歩性の欠如)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲3発明とを対比する。 (ア)甲3発明における、「材料投入口」、「投入口開閉ダンパー」、「溶解バーナーに対向し、上部より下部が緩やかに傾斜した炉床」、「溶融した材料(非鉄金属)を汲み出す汲み出し口」及び「タワー型非鉄金属溶解保持炉」は、それぞれ、本件発明1における、「材料投入路(17)」、「蓋(16)」、「バーナー(9)を上部に備える傾斜炉床(15)」、「溶融材料の出湯口(4)」及び「溶解炉」に相当する。 (イ)甲3発明における、「材料ストックゾーン」と、本件発明1における、「予熱部」とは、「材料投入路(17)」(材料投入口)、「蓋(16)」(投入口開閉ダンパー)を備える部位(以下、「部位A」という。)である点で共通する。 (ウ)甲第3-1号証に記載される溶解保持炉において、材料ストックゾーンに投入された非鉄金属は、技術常識によれば、図Dの溶解バーナーの中心線の延長線近傍の傾斜が緩やかになる炉床上に留まり(ストックされ)、その付近の溶解室で溶解されるものと解される。その後、溶融した非鉄金属は、炉床上を流れ、図C、Dの溶解室の底部から、第1の通路を通って、図Cの保持室に流れ込むものである。 そうすると、甲3発明における、「溶解室」は材料(非鉄金属)を溶解する領域であるから、本件発明1における「溶解部(6)」に相当する。 (エ)甲3発明における、「緩やかに傾斜した炉床」に接続する「溶解室の底部」は、「溶解室の上部の溶解バーナー」によって溶解され、「緩やかに傾斜した炉床」を流れる溶融した材料(非鉄金属)を受け入れる部位であり、溶融した材料(非鉄金属)は、「溶解室の底部」でさらに加熱され、その温度が上昇することは明らかであるから、甲3発明における、「溶解室の底部」は、本件発明1における、「溶解部(6)でバーナー(9)によって溶解された後に傾斜炉床(15)上を流れる溶融材料(1a)を受け入れて溶融材料(1a)の温度を上昇させる加熱部(7)」に相当する。 なお、図Cにおける「溶解室の底部」、図Dにおける、「部位A」及び「溶解室の底部」を図示すると以下の参考図1、2のとおりである。また、当審は、固体を溶かすことを「溶解」といい、溶けた状態を「溶融」ということとして、「溶解」と「溶融」を使い分けることとする。 (参考図1) [図:0001424883000019.jpg] (参考図2) [図:0001424883000020.jpg] なお、「部位A」と「溶解室」との境界線(点線)は厳密な位置を表すものではなく、投入された材料が溶解バーナーによって溶け始める概略の位置を表している。 (オ)甲3発明における、「保持室」は、その中で溶融した非鉄金属が汲み出されるまで貯留される領域であることは明らかであるから、本件発明1における、「温度調整部(3)」と、溶融材料を貯留する部位(以下、「部位B」という。)である点で共通する。 (カ)甲3発明における、「保持室」の側壁に備えられた「保持バーナー」と、本件発明1における、「温度調整部」に備えられた「温度調整バーナー(12)」とは、部位Bに備えられた「バーナー(12)」である点で共通する。 (キ)甲3発明における、「溶解室の底部から保持室に向けて傾斜している炉床」は、その傾斜により、溶融した非鉄金属を、「溶解室」の底部から、「第1の通路」を通って保持室に流し込むものであるから、当該炉床を含む第1の通路は、本件発明1における、「傾斜又は湾曲した底部を特徴とし、加熱部(7)から溶融材料(1a)を温度調整部(3)に流し込む接続路(2)」に相当する。 (ク)甲3発明における、「溶解室と保持室とを互いに離隔する第1の炉壁」は、当該第1の炉壁が第1の通路を形成しているといえるから、本件発明1における、「接続路(2)を形成する隔壁(10)」に相当する。 (ケ)以上によれば、本件発明1と甲3発明とは、以下の一致点において一致するとともに、以下の相違点1~相違点5において相違する。 <一致点> 「材料投入路(17)とともに蓋(16)を備える部位(部位A)と、 前記部位Aの下方の溶解部(6)と、 バーナー(9)を上部に備える傾斜炉床(15)と、 前記溶解部(6)で前記バーナー(9)によって溶解された後に前記傾斜炉床(15)上を流れる溶融材料(1a)を受け入れて溶融材料(1a)の温度を上昇させる加熱部(7)と、 バーナー(12)を備え、溶融材料を貯留する部位(部位B)と、 傾斜又は湾曲した底部を特徴とし、前記加熱部(7)から溶融材料(1a)を前記部位Bに流し込む接続路(2)と、 前記接続路(2)を形成する隔壁(10)と、 溶融材料の出湯口(4)と、を備える溶解炉。」である点。 <相違点1> 「材料投入路(17)とともに蓋(16)を備える部位(部位A)」が、本件発明1では、「予熱部」、すなわち材料を予熱する部位であるのに対し、甲3発明では、「材料ストックゾーン」において、材料(非鉄金属)が予熱されることが特定されていない点。 <相違点2> 「バーナー(12)を備え、溶融材料を貯留する部位(部位B)」が、本件発明1では、「温度調整部」であり、「火炎を放射する温度調整バーナー」を備えるのに対し、甲3発明では、保持室において、溶融した材料(非鉄金属)の温度を調整しているか不明であり、保持バーナーが、火炎を放射する温度調整バーナーであるのか不明である点。 <相違点3> 「隔壁(10)」が、本件発明1では、「加熱部(7)内の溶融材料(1a)の液面及び温度調整部(3)内の溶融材料(1b)の液面よりも低く位置する下縁部(13)を有する」のに対し、甲3発明では、溶融した材料(非鉄材料)の液面が不明であるため、「溶解室と保持室とを互いに離隔する第1の炉壁」の下縁部が、溶融した材料(非鉄材料)の液面よりも低く位置するか不明である点。 <相違点4> 「溶融材料を貯留する部位(部位B)」が、本件発明1では、「閉システム」であるのに対し、甲3発明では、「閉システム」であるとの特定がなされていない点。 <相違点5> 「バーナー(12)」が、本件発明1では、「温度調整部内の酸素濃度を1%~5%又は1%未満となるよう制御される」のに対し、甲3発明では、保持バーナーが保持室内の酸素濃度を1%~5%又は1%未満となるよう制御しているのか不明である点。 イ 判断 (ア)相違点1について a 甲3発明において、材料ストックゾーンは、炉壁の上部に予熱ゾーン測温孔を有するものである。予熱ゾーン測温孔は、予熱ゾーンの温度を測定するための孔であると解されるから、ここで測定される温度は、予熱ゾーンの温度であるといえる。 また、上記のとおり、予熱ゾーン測温孔は、材料ストックゾーンに設けられているため、予熱ゾーン測温孔において測定される温度は、材料ストックゾーンの温度でもあるといえる。 そして、予熱ゾーンの温度と材料ストックゾーンの温度とが、同一の孔で測定される温度である以上、これらが同じ領域の温度であることは明らかであるから、材料ストックゾーンは予熱ゾーンでもあるといえる。 そうすると、予熱ゾーンが材料を予熱する領域である以上、材料ストックゾーンにおいて、材料(非鉄金属)は予熱されるものと認められる。 したがって、相違点1は、実質的な相違点であるとはいえない。 b 仮に、材料ストックゾーンが予熱を意図する領域であるとまではいえないとしても、溶解バーナーは、リジェネレーティブバーナであるから、溶解バーナーにより放射された燃焼ガスは、溶解バーナーの蓄熱体に吸引されるまでの間に材料ストックゾーン内の空気を加熱し、加熱された空気は材料ストックゾーン内の材料(非鉄金属)に熱を伝える(熱伝達)と認められる。また、材料ストックゾーン内の材料(非鉄金属)は、溶解バーナーからの熱輻射によっても、加熱され得るものである。 以上から、溶解バーナーの熱は、材料ストックゾーン内の材料(非鉄金属)に伝わり、材料ストックゾーン内の材料(非鉄金属)は、溶解前に予熱されるものと認められる。 したがって、相違点1は、この点からも、実質的な相違点であるとはいえない。 (イ)相違点2について a 甲第13号証には、「溶解保持炉」の実用新案が開示されており、「保持バーナーの火炎によって保持室内の溶湯は一定温度に保持され」((4)のエ)と記載されるように、溶解保持炉において、保持バーナーの火炎によって保持室内の溶湯が一定温度に保持されることは、当該技術分野における技術常識であるから、甲3発明においても、保持室の溶湯の温度は一定温度に保持(調整)されており、保持バーナーは、火炎によって保持室の溶湯の温度を一定温度に保持(調整)するために設置されているものといえる。また、甲3発明の保持バーナーが火炎を放射することは明らかである。 よって、甲3発明の保持室において、溶融した材料(非鉄金属)の温度は調整されており、保持バーナーは、火炎を放射する温度調整バーナーであると認められる。 したがって、相違点2は、実質的な相違点であるとはいえない。 b 仮に、相違点2が実質的な相違点であったとしても、甲第13号証に記載される技術事項に基づき、甲3発明の保持室において、溶融した材料(非鉄金属)の温度を、火炎を放射する保持バーナーによって調整することは、当業者が容易に想到し得ることである。 (ウ)相違点3について a 上記2(1)ウで述べたとおり、甲第3-1号証の概略図における線の意味は、必ずしも明確でないため、甲第3-1号証において、溶融した材料(非鉄材料)の液面がどの位置にあるかは不明である。 b ここで、甲第3-1号証に記載されるタワー型非鉄金属溶解保持炉の共同開発者である(株)大紀アルミニウム工業所(上記2(1)ア(ウ))が、甲第3-1号証の発行年と同年(1997年)に作成した、甲第12号証(TPM-200溶解保持炉計画-2)には、溶解保持炉の平面図及び断面図が記載されている。 甲3発明のタワー型非鉄金属溶解保持炉と甲第12号証の溶解保持炉とは、異なる溶解保持炉ではあるものの、甲第3-1号証の概略図と甲第12号証の計画図は、共に、(株)大紀アルミニウム工業所が関与する図面であるため、甲第3-1号証の概略図の理解のために、甲第12号証の計画図を参照することとする。 c 概略図における図Cと甲第12-1号証の計画図Cは共に、溶解保持炉を保持室と溶解室とを含む平面で切った断面図である。 ここで、図Cには、保持室内、溶解室内に水平方向の二点鎖線が記載されており、これらの二点鎖線は同じ高さである。また、計画図Cにも、保持室内、溶解室内に水平方向の二点鎖線が記載されており、これらの二点鎖線は同じ高さである。そして、それぞれの図における二点鎖線の位置を比較すると、両者は、概ね同じ位置に記載されている。 「図C [図:0001424883000021.jpg] 」 「計画図C [図:0001424883000022.jpg] 」 d 概略図における図Bと甲第12-3号証の計画図Bは共に、溶解保持炉を保持室と汲み出し口とを含む平面で切った断面図である。 ここで、図Bには、保持室内に水平方向の実線、汲み出し口の最も低い位置に二点鎖線が記載されており、この実線と二点鎖線とは同じ高さである(上記2(1)イ(エ)ii)。また、計画図Bには、保持室内、汲み出し口に水平方向の二点鎖線が記載されており、これらの二点鎖線は同じ高さである。さらに、汲み出し口の水平方向の二点鎖線は、「操業時溶湯レベル」を示すものである。そして、図Bにおける保持室内の水平方向の実線、汲み出し口の最も低い位置に二点鎖線と、計画図Bにおける保持室内、汲み出し口の水平方向の二点鎖線の位置を比較すると、これらは、概ね同じ位置に記載されている。 「図B [図:0001424883000023.jpg] 」 「計画図B [図:0001424883000024.jpg] 」 「甲第12号証の高解像度の写し [図:0001424883000025.jpg] 」 e 上記cで述べたとおり、計画図Cにおいて、保持室内、溶解室内の水平方向の二点鎖線は同じ高さである。また、上記dで述べたとおり、計画図Bにおいて、保持室内、汲み出し口の水平方向の二点鎖線は同じ高さである。そして、計画図Cの保持室内の水平方向の二点鎖線と計画図Bの保持室内の二点鎖線とは同じ線種であるから、これらが、同じものを表していると解するのが自然である。そうすると、計画図B、Cにおいて、保持室内、溶解室内、汲み出し口の水平方向の二点鎖線の高さは同じ高さであると認められる。 そして、上記dで述べたとおり、汲み出し口の水平方向の二点鎖線は、「操業時溶湯レベル」を示すものであるから、汲み出し口の水平方向の二点鎖線と同じ高さを示す、保持室内、溶解室内の水平方向の二点鎖線も「操業時溶湯レベル」を示すものといえる。 f 一方、甲第3-1号証の概略図には、汲み出し口における最も低い位置にある二点鎖線が、「操業時溶湯レベル」を示す旨の記載はなく、図Bにおける保持室内の水平方向の線種が実線で記載されているため、上記c、dで挙げた図B、Cにおける、保持室内、溶解室内、汲み出し口の水平方向の線が示すものが、計画図B、Cにおける、保持室内、溶解室内、汲み出し口の水平方向の二点鎖線が示す、「操業時溶湯レベル」であるとは直ちにはいえない。 しかしながら、図Bと計画図B、図Cと計画図Cの類似性、各図における保持室内、溶解室内、汲み出し口の水平方向の線の位置の類似性を踏まえると、上記c、dで挙げた図B、Cにおける、保持室内、溶解室内、汲み出し口の水平方向の線が示すものは、計画図B、Cと同様に、「操業時溶湯レベル」であると解するのが合理的である。 g そうすると、図Cにおいて、「第1の炉壁」の下縁部が、保持室内、溶解室内の水平方向の二点鎖線である「操業時溶湯レベル」よりも低く位置することが看取できる。また、「操業時溶湯レベル」が、溶融した材料(非鉄材料)の液面を意味することは技術常識である。 よって、甲3発明において、「溶解室と保持室とを互いに離隔する第1の炉壁」の下縁部は、溶融した材料(非鉄材料)の液面よりも低く位置すると認められる。 したがって、相違点3は、実質的な相違点であるとはいえない。 h 甲第3-1号証の概略図の理解のために、甲第12号証の計画図を参照することができないとしても、図Bと図Cとの高さを揃えた場合、下図(請求人が提出した口頭審理陳述要領書の第3ページ)に示すように、図Bの保持室内の水平方向の細い実線と、図Cの保持室内の水平方向の二点鎖線とは、同じ高さとなる。そうすると、図Bの保持室内の水平方向の実線は、図Cの保持室内の二点鎖線と同じものを表していると解するのが自然である。 [図:0001424883000026.jpg] ここで、甲第11号証には、機械製図において、細い実線が、水面、油面などの位置を表わす水準面線として用いられること、細い二点鎖線が想像線であって、機能上・工作上の理解を助けるために、図形を補助的に示すためにも用いられることが記載されている。 そうすると、図Bの保持室内の水平方向の実線を水準面線と解し、図Cの保持室内の二点鎖線を操業時の溶湯レベルを表す想像線と解しても、両者は結局溶融した材料(非鉄材料)の液面を意味するから、図Bの保持室内の水平方向の実線が、図Cの保持室内の二点鎖線と同じものを表していると解しても矛盾は生じない。 よって、上記gで述べたのと同様に、相違点3は、実質的な相違点であるとはいえない。 (エ)相違点4について 上記1(3)で検討したとおり、「閉システム」の技術的意味は、「温度調整部内に外部から燃焼ガスや外気などのガスが流れ込まない構造」であるから、甲3発明において、保持室が、「温度調整部内に外部から燃焼ガスや外気などのガスが流れ込まない構造」であるか否かを以下で検討する。 a 甲3発明において、保持室が有する開口部は、(a)第1の炉壁の下方で溶解室と保持室とを繋ぐ第1の通路、(b)第2の炉壁の下方で保持室と汲み出し口とを繋ぐ第2の通路、(c)保持室の側方の扉、の3箇所である。 (a)第1の炉壁の下方で溶解室と保持室とを繋ぐ第1の通路について 上記(ウ)で検討したとおり、上記(ウ)c、dで挙げた図B、Cにおける、保持室内の細い実線、溶解室内の細い実線、汲み出し口の水平方向の最も低い位置の二点鎖線が示すものは、溶融した材料(非鉄材料)の液面であると解される。また、甲3発明において、「溶解室と保持室とを互いに離隔する第1の炉壁」の下縁部は、溶融した材料(非鉄材料)の液面よりも低く位置すると認められる。 ここで、第1の通路は第1の炉壁の下方にあり、第1の炉壁の下縁部は、溶融した材料(非鉄材料)の液面よりも低く位置するから、第1の通路は、溶融した材料(非鉄材料)で満たされることになる。 そうすると、第1の通路から保持室内に、溶解室からの燃焼ガスが流れ込むことはないといえる。 (b)第2の炉壁の下方で保持室と汲み出し口とを繋ぐ第2の通路について 図Bを参照すると、第2の通路は第2の炉壁の下方にあり、第2の炉壁の下縁部は、溶融した材料(非鉄材料)の液面よりも低く位置するから、第2の通路は、溶融した材料(非鉄材料)で満たされることになる。 そうすると、第2の通路から保持室内に、汲み出し口からの外気が流れ込むことはないといえる。 (c)保持室の側方の扉について 保持室の側方の扉は、扉である以上開閉可能であり、扉を閉じた状態であれば、保持室の側方の扉から保持室内に外気が流れ込むことはないといえる。 b 以上のとおり、甲3発明において、保持室は、「温度調整部内に外部から燃焼ガスや外気などのガスが流れ込まない構造」であるといえるから、甲3発明において、保持室は、「閉システム」であるといえる。 したがって、相違点4は、実質的な相違点であるとはいえない。 (オ)相違点5について a 甲第3-1号証には、保持室内の酸素濃度を保持バーナーで制御することが何ら記載されていないから、相違点5は実質的な相違点である。 b 甲第15号証には、中小規模のパッケージボイラーにおける燃焼の制御方法について記載されており、上記制御方法に関して、「燃焼空気が不十分な場合,不完全燃焼となり黒煙が発生し,エネルギー損失となる。燃焼空気が過剰になると燃焼に必要のない空気が加熱され,煙突から放出されて熱損失を起こ」し、「また過剰燃焼により空気中の窒素,また燃料からNOx,SOxの発生が増加し大気汚染,温暖化の原因となる」から、「ボイラーの最適燃焼領域における空気比は、1.15~1.30であり、これを排ガス中のO2濃度に換算すると2.74~4.85%である」ことが記載されている(なお、上記「ボイラー」が「ボイラーの加熱に用いる燃焼バーナー」を意味することは技術常識である。)。 燃焼バーナーにおいて、不完全燃焼、熱損失、大気汚染及び温暖化を抑制することは、通常の技術課題であると認められるから、甲3発明において、甲第15号証の記載事項に基づき、保持室内の酸素濃度を1%~5%となるように保持バーナーを制御することは、当業者が容易に想到し得ることである。 そして、本件発明1の保持室内の酸素濃度を低減すると、溶融材料の最上層の酸化物の厚みを低減することができるという効果は、酸素濃度を低減したことによる自明の効果に過ぎず、顕著な効果とはいえない。 ウ 被請求人の主張について (ア)被請求人は、相違点1に関し、「上述したように、リジェネレイティブバーナは、排出した燃焼ガスを吸引して燃焼ガスが有する熱エネルギーを内蔵する蓄熱体により回収している。よって、甲3技術では、以下の図に示すように、溶解バーナーから溶解室に排出された燃焼ガスは、矢印に示されているように、溶解室の材料を加熱した後、溶解バーナーに吸引され、溶解室に戻ることなく排気される。そのため、甲3技術では、材料ストックゾーンが燃焼ガスの煙道としての役割を果たしていない。このことは、材料ストックゾーンが備える蓋に排気口が形成されていないことか明らかである。 このように、甲3技術では、溶解バーナーから溶解室に排出された燃焼ガスは、材料ストックゾーンを通過して排気されるのではなく、溶解バーナーに吸引されて排気される。よって、溶解バーナーから排出された燃焼ガスは、材料ストックゾーンに投入された材料の予熱に利用されることなく排気されることから、甲3技術の材料ストックゾーンは材料を予熱するものではなく、本件特許発明1の予熱部とは相違するものである。」と主張する(審判事件答弁書第22~23ページのd.)。 被請求人が述べるとおり、甲3発明のタワー型非鉄金属溶解保持炉は、材料ストックゾーンを煙道として用い、煙道の上部(蓋)から燃焼ガスを排出する形態の溶解保持炉ではない。 しかしながら、上記イ(ア)で述べたとおり、材料ストックゾーンにおいて、材料(非鉄金属)は予熱されるものと認められる。 したがって、被請求人の上記主張は採用できない。 (イ)被請求人は、相違点3に関し、図Bを参照した上で、「請求人が保持室内の水平方向の実線が細い実線であることの根拠を全く示していない以上、保持室内の水平方向の実線が細い実線であるとは言い切れず、保持室内の水平方向の実線が保持室の構成要素の輪郭を表している外形線である可能性も否定できない。」と主張する(口頭審理陳述要領書(2)第5~6ページの(4)i))。 図Bは、図Aの「A及びA’との矢印が付された、左右方向にずれた2本の一点鎖線」で切り取った断面であるから、図Bは、図A及び図Cにおいて、保持室の側方の扉側からみた断面図である。そして、図Aの「A及びA’との矢印が付された、左右方向にずれた2本の一点鎖線」上に、保持室の構成要素が存在しないため、保持室内の水平方向の実線が保持室の構成要素の輪郭を表している外形線であるとはいえない。 仮に、保持室の構成要素の輪郭が図Bに投影されるとすると、図Cにおいて、A-A’断面よりも右側にあるのは、第1の炉壁であるから、第1の炉壁が図Bに投影される可能性がある。ここで、第1の炉壁の下縁部は、第1の通路であるから、図Bに投影される形状は長方形となると考えられる(図Cにおいて、第2の通路を表す対角線のある長方形と同様の形状。)。しかしながら、図Bに示されるのは水平方向の実線であるから、図Bの保持室内の水平方向の実線は、保持室の構成要素の輪郭が投影されたものであるとはいえない。 したがって、被請求人の上記主張は採用できない。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明並びに甲第11号証~甲第13号証、甲第15号証に記載された技術事項及び本件特許の優先日当時の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件発明2について ア 対比 本件発明2と甲3発明とを対比すると、以下の相違点6において相違する。 <相違点6> 本件発明2は、「出湯口(4)に近接して配置される」「センサー(8)」が、「溶融材料(1a)、(1b)、(1c)の液面レベルを制御又は検出して酸化物(21)が温度調整部内(3)に流れ出ることを防止する」のに対し、甲3発明の「汲み出し口」に備えられた「溶湯レベルセンサー」が、「酸化物が(溶解室から)保持室内に流れ出ることを防止する」ために設けられているのか不明である点。 イ 判断 (ア)相違点6について a 甲第3-1号証には、溶湯レベルセンサーの使用目的が何ら記載されていないから、相違点6は実質的な相違点である。 b 甲第13号証には、溶解室(3)と保持室(4)との連通部を区隔する仕切壁(6)の溶湯の液面より上の部分に熱風導入口(7)を開口し、溶湯の液面より下の部分に通孔(8)を穿設し、該通孔(8)により保持室(4)と溶解室(3)とが連通され、熱風導入口(7)と通孔(8)の間がスラグ流入防止部(21)となること、該スラグ流入防止部(21)で、溶融アルミニウム上に浮遊するスラグを溶解室(3)でせき止めておき、保持室(4)へ流入しないようにし、保持室を通じてウエル(5)に流入する溶湯を出来るだけ清浄に保つようにすることが記載されている。なお、上記スラグの主成分が酸化物であることは技術常識である。 c 甲第13号証において、溶融アルミニウム上に浮遊するスラグを溶解室でせき止めておくためには、溶湯の液面を、仕切壁(6)の熱風導入口(7)と通孔(8)の間に維持する必要があると解される。 d 一方、甲3発明においても、操業時に、溶融した材料(非鉄材料)の液面が第1の炉壁の下縁部を下回ると、溶解時に生成した酸化物が、第1の通路を通って溶解室から保持室内に流入するおそれがあるから、溶融した材料(非鉄材料)の液面は、第1の炉壁の下縁部よりも高く維持する(閉システムを維持する)ために、当該液面を検知する必要があると認められる。 e そうすると、「酸化物が(溶解室から)保持室内に流れ出ることを防止する」ために、溶融した材料(非鉄材料)の液面を制御するに当たり、当該液面を検知するために「汲み出し口」に備えられた「溶湯レベルセンサー」を用いることは、当業者が容易に想到し得ることである。 ウ 被請求人の主張について 被請求人は、本件発明1が甲3発明等に基いて容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2も甲3発明等に対して進歩性を有する旨の主張をするにとどまり、具体的な主張をしておらず、当該主張はその根拠が不明であるから採用できない。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件発明2は、甲第3号証に記載された発明並びに甲第11号証~甲第13号証、甲第15号証に記載された技術事項及び本件特許の優先日当時の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)本件発明3について ア 対比 本件発明3と甲3発明とを対比すると、以下の相違点7において相違する。 <相違点7> 「バーナー(12)」が、本件発明3では、「フラットフレームバーナー」であるのに対し、甲3発明では、「フラットフレームバーナー」であるのか不明である点。 イ 判断 (ア)相違点7について a 甲第3-1号証には、保持バーナーがフラットフレームバーナーであるか否かについて何ら記載されていないから、相違点7は実質的な相違点である。 b 甲第3-1号証に、「リジェネレーティブバーナの自己完結型排熱回収機能により、タワー内材料の量や形状によらず常にベストの溶解効率を維持します。」と記載されるように、甲3発明は、溶解バーナーと保持バーナーが、「リジェネレーティブバーナ」であることを前提とするものであるから、これらを「フラットフレームバーナー」に変更する動機があるとはいえない。 c ここで、フラットフレームバーナーの火炎はバーナーの軸線に対して垂直な方向に薄く広がるので、仮に、甲3発明の保持バーナーを「フラットフレームバーナー」に変更すると、保持バーナーは第1の炉壁に近接して設置されているため、火炎が第1の炉壁に直接当たるおそれがある。そうすると、第1の炉壁が損耗する可能性があるから、甲3発明の保持バーナーを「フラットフレームバーナー」に変更することには、阻害要因があると認められる。 d よって、甲3発明の保持バーナーをフラットフレームバーナーに変更することは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。 ウ 請求人の主張について (ア)請求人は、「甲3発明で保持バーナーとして使用されているリジェネレーティブバーナは、高い省エネルギー率やCO及びNOxの低減を可能にするものであるが、丸1構造が複雑であり、丸2高性能であるがゆえに価格が高く、丸3蓄熱体やO2センサなどの定期的或いは非定期的な交換のために高額なランニングコストも必要であった。また、丸4長炎を放射するバーナーであったため、火炎が当たる部分が局所的に加熱される、丸5溶融非鉄金属の溶湯面に火炎が当たることによって波立つようになる等、溶湯品質に関わる問題が生じる場合も有った。このため、係る問題を解消することが、甲3発明において、フラットフレームバーナを適用する動機となり得る。」と主張する(口頭審理陳述要領書第7~8ページの(4)、上申書(2)第4~6ページの(2)に主張の補足がある。)。(当審注:丸数字は表示できないので、「丸1」等と表記した。以下同じ。) しかしながら、甲第3-1号証のタワー型非鉄金属溶解保持炉は、上記の問題を認識しつつも、リジェネレーティブバーナを選択し、「自己完結型排熱回収機能により、タワー内材料の量や形状によらず常にベストの溶解効率を維持」することを指向するものであるから(上記2(1)ア(オ))、甲3発明において、たとえ上記丸1~丸5の問題があったとしても、当該問題を解消してフラットフレームバーナーに変更する動機となり得るとはいえない。 (イ)請求人は、相違点2に係る主張において、「このシングル型リジェネレーティブバーナは長炎を放射できるものであるから、保持バーナーは、火炎を放射する温度調整バーナーに相当する。」と述べている(口頭審理陳述要領書第5ページの3(イ))。 甲3発明の保持バーナーをフラットフレームバーナーに変更すると、保持バーナーは、長炎を放射できるものではなくなるため、甲3発明の保持バーナーをフラットフレームバーナーに変更することができる旨の主張は、請求人自らの上記主張と矛盾するものである。 (ウ)請求人は、審決の予告の第49ページの(3)イ(ア)b(上記イ(ア)b)の合議体の判断、審決の予告の第50ページのウ(ア)(上記ウ(ア))の合議体の判断に対し、「甲第3-1号証における「リジェネレーティブバーナの自己完結型排熱回収機能により、タワー内材料の量や形状によらず常にベストの溶解効率を維持します。」との記載は、あくまで、溶解室の溶解バーナーについて述べられているのである。つまり、甲3発明は、溶解バーナーについては「リジェネレーティブバーナ」であることを前提とするものであるが、保持バーナーについてはリジェネレーティブバーナであるという前提はない。」と主張する(上申書(3)第3~8ページの(1)「(3)本件発明3について」)。 しかしながら、甲3発明のタワー型非鉄金属溶解保持炉は、甲第3-1号証の、「3好環境 低い燃焼騒音と排ガス温度により作業環境を一気に改善できます。屋内排気を前提に排ガス中のCO-NOx排出レベルを低減しています。」(上記2(1)ア(ク))との記載からすれば、保持バーナーからの排ガスは、溶解バーナーからの排ガスと同様に、屋内排気を前提とするものといえる。そして、屋内排気を前提とした排ガスの処理は、リジェネレーティブバーナに内蔵された蓄熱体を通過する際に行われていると解される(要すれば、令和 6年 1月10日提出の陳述書第2ページ下から2行目~第3ページ第5行を参照。)。そうすると、甲3発明は、保持バーナーについても、リジェネレーティブバーナであることを前提とするものであるといえるから、甲3発明の保持バーナーをフラットフレームバーナーに変更する動機があるとはいえない。 (エ)請求人は、上申書(3)の第1の1(1)イにおいて、審決の予告の第49ページの(3)イ(ア)c(上記イ(ア)c)の合議体の判断に対し、上申書(3)の第1の1(1)ウにおいて、審決の予告の第50ページのウ(イ)(上記(イ))の合議体の判断に対し反論しているが、上記(ウ)で述べたとおりであるから、当該反論について検討するまでもなく、甲3発明の保持バーナーをフラットフレームバーナ-に変更することは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。 したがって、請求人の上記主張は採用できない。 エ 被請求人の主張について 被請求人は、「上述した温度調整部内で溶融材料の液面に浮かぶ酸化生成物(酸化皮膜)を効果的に保護するためには、温度調整部において、温度調整バーナーの炎が溶融材料に局所的に直撃することを防止する必要がある。温度調整バーナーの炎が溶融材料に局所的に直撃すると、溶融材料の液面に浮かぶ酸化生成物(酸化皮膜)が破壊されてしまい、酸化生成物(酸化皮膜)による溶融材料の保護効果が機能しなくなるためである。本件特許発明3では、温度調整部の温度調整バーナーをフラットフレームバーナーにすることで、温度調整バーナーの炎が溶融材料に局所的に直撃することを防止して、溶融材料の液面に生成された酸化生成物(酸化皮膜)が破壊されないように維持している。 このように、本件特許発明3では、溶融材料の液面に生成された酸化生成物(酸化皮膜)が破壊されずに維持されることで、温度調整部内における酸化物の生成量が大幅に低減して酸化物がほとんど生成されなくなる。そのため、長期間にわたって温度調整部を清掃する必要がなくなるとの効果を有する。」と主張する(審判事件答弁書第27ページ第2~16行)。 しかしながら、上記の効果は、温度調整バーナーをフラットフレームバーナーとし、温度調整部の天井部に設置した際の効果である。一方、本件発明3は、温度調整バーナーの設置位置を特定しているわけではないから、上記の効果が奏されるとは必ずしもいえない。 したがって、被請求人の上記主張は採用できないが、このことは上記イの判断に影響を与えるものではない。 オ 小括 以上のとおりであるから、本件発明3は、甲第3号証に記載された発明並びに甲第11号証~甲第13号証、甲第15号証に記載された技術事項及び本件特許の優先日当時の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)本件発明4について ア 対比 本件発明4と甲3発明とを対比すると、以下の相違点8において相違する。 <相違点8> 「溶融材料を貯留する部位(部位B)」が、本件発明4では、「炉壁の一部又は天井蓋(11)に設置された熱交換器(20)を更に備える」のに対し、甲3発明では、「保持室」に「熱交換器」を更に備えているか不明である点。 イ 判断 (ア)相違点8について a 甲第3-1号証には、保持室に熱交換器を更に備えているか否かについて何ら記載されていないから、相違点8は実質的な相違点である。 b 甲3発明は、溶解バーナーと保持バーナーが、「リジェネレーティブバーナ」であることを前提とするものである。そして、リジェネレーティブバーナは、排ガスを吸引し蓄熱体で熱交換を行って空気を予熱する機能を有するものである。そうすると、甲3発明のタワー型非鉄金属溶解保持炉は、元々熱交換器を有するものであるから、この熱交換器に追加して、「炉壁の一部又は天井蓋(11)に設置された熱交換器(20)を更に備える」ことが、動機付けられるとはいえない。 c よって、甲3発明において、保持室の炉壁の一部又は天井蓋(11)に設置された熱交換器(20)を更に備えることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。 ウ 請求人の主張について (ア)請求人は、「リジェネレーティブバーナは、自己完結型排熱回収機能を有するものであり、例えば、甲第14号証の14頁の図19に示すように、炉内温度が800℃となるように運転した場合であっても、その排ガス温度は120℃前後まで低下する(すなわち、排熱が回収されている。)。しかしながら、例えば、甲3発明のタワー型非鉄金属溶解保持炉を屋内(室内)に設置し、120℃前後で排出される燃焼排ガスの排熱をさらに回収して室温程度にまで下げたい場合には、熱交換器を追加して設ける動機となり得る。」と主張する(口頭審理陳述要領書第8ページの(5))。 しかしながら、甲第3-1号証には、「3好環境 低い燃焼騒音と排ガス温度により作業環境を一気に改善できます。屋内排気を前提に排ガス中のCO-NOx排出レベルを低減しています。」との記載があり(上記2(1)ア(ク))、甲3発明においては、操業時の排ガスは、屋内排気が可能な程度に下がっていると認められるから、甲第14号証の記載を参照しても、この排ガスの温度さらに下げるために、熱交換器を追加して設ける動機があるとはいえない。 (イ)請求人は、「「甲3発明のタワー型非鉄金属溶解保持炉は、元々熱交換器を有するもの」であり、リジェネレーティブバーナが「熱交換器を一体的に備えた温度調整バーナー」であると認定している以上、甲3発明は、それ単独で本件発明4の発明特定事項のうち「炉壁の一部又は天井蓋(11)に設置された熱交換器(20)を更に備える」の要件を満たしている。」と主張する(上申書(3)第8~9ページの(2)「(4)本件発明4について」)。 しかしながら、リジェネレーティブバーナにおける熱交換器は、バーナーの構成要素に過ぎないから、甲3発明の保持バーナーが熱交換器を一体的に備えたものであったとしても、保持室の側壁に保持バーナーを備える態様が、「炉壁の一部に設置された熱交換器を更に備える」態様であるとはいえない。 また、「更に」とは、「加えて」、「その上に」との意味を有する修飾語である(小学館 デジタル大辞泉)。一方、リジェネレーティブバーナにおける熱交換器は、燃焼部分と一体不可分な構成要素である。そうすると、甲3発明において、保持室の側壁に保持バーナーを備えることが、保持室の側壁に熱交換器のみを追加的に備えることであるといえない。 したがって、請求人の上記主張は採用できない。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件発明4は、甲第3号証に記載された発明並びに甲第11号証~甲第15号証に記載された技術事項及び本件特許の優先日当時の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5)本件発明5について ア 対比 本件発明5と甲3発明とを対比すると、以下の相違点9において相違する。 <相違点9> 「閉システム」である「溶融材料を貯留する部位(部位B)」が、本件発明5では、「扉を有しない」のに対し、甲3発明では、「扉」を有する点。 イ 判断 (ア)相違点9について a 請求人も認めているように、甲3発明の保持室の側方の扉は、保持室内の溶融非鉄金属中を浮遊する酸化非鉄金属の除去や溶融非鉄金属のフラックス処理の際に使用されるものである(口頭審理陳述要領書第8ページの(6))。 そうすると、上記の使用目的を無視して、甲3発明の保持室の側方の扉を有しないようにすることが動機付けられるとはいえない。 また、甲3発明の保持室の側方の扉を有しないようにすることよって、扉の使用目的である、保持室内の溶融非鉄金属中を浮遊する酸化非鉄金属の除去や溶融非鉄金属のフラックス処理を行えなくなるから、扉を有しないようにすることには、阻害要因があると認められる。 b よって、甲3発明において保持室の側方の扉を有しないようにすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。 ウ 請求人の主張について (ア)請求人は、「丸1扉のシール性不良に起因する保持室内への外気(主としてO2)の流入を完全に防止して溶融非鉄金属の酸化をより一層抑えたい場合(甲第6号証の段落【0039】と同趣旨)や、丸2部品点数を減らして炉の構造を簡素化にしたい場合などには、その(使用)目的を無視して扉を有しないようにする動機となり得る。」と主張する(口頭審理陳述要領書第8ページの(6))。 しかしながら、扉のシール性不良が生じたならば、扉のシール性不良を解消して保持室内への外気の流入を防止しようとするのが通常考える措置であり、扉の使用目的を無視してわざわざ保持室から扉をなくして扉のシール性不良を解消しようとするとはいえない。また、部品点数を減らして保持室の扉を有しないようにすると、保持室内の清掃作業を行うためには保持室の天井蓋を取り外すなど、大掛かりで手間のかかる作業が必要になるため、部品点数を減らして炉の構造を簡素化にしたいことを理由に、保持室内の清掃作業を効率的に行うことを可能にする扉をなくすことが動機付けられるとはいえない。 (イ)請求人は、「合議体は、審決の予告の第20ページ「(5)閉システムにおける扉の技術上の意義について」において、「力 以上のとおり、温度調整部が扉を有するか否かは、本件発明の課題の解決とは関係がなく、温度調整部の扉は任意付加的な事項である」と断定している。また、被請求人も「温度調整部における扉の有無は、本件特許発明の技術的課題を解決することに何ら関係がなく、温度調整部が扉を有さないことは、温度調整部内で生成される酸化物の量を低減し、温度調整部における酸化物の除去及び清掃を容易にするという本件特許発明の技術的課題を解決することで達成される効果の一つである」と主張している(令和5年2月13日付け審判事件答弁書の第15ページ下から6行目以下)。 従って、「温度調整部が扉を有さないこと」は、単なる設計的事項に過ぎないか、或いは本件発明の効果(結果)を単に発明特定事項として記載したに過ぎず、進歩性を基礎づけるために不可欠の発明特定事項(構成要件)とは成り得ないものと思料する。」と主張する(上申書(3)第9~11ページの(3)「(5)本件発明5について」)。 しかしながら、上記イ(ア)aで述べたとおり、甲3発明の保持室の側方の扉は、保持室内の溶融非鉄金属中を浮遊する酸化非鉄金属の除去や溶融非鉄金属のフラックス処理の際に使用されるものであるから、上記の使用目的を無視して、甲3発明の保持室の側方の扉を有しないようにすることが動機付けられるとはいえないし、甲3発明の保持室の側方の扉を有しないようにすることよって、扉の使用目的である、保持室内の溶融非鉄金属中を浮遊する酸化非鉄金属の除去や溶融非鉄金属のフラックス処理を行えなくなるから、扉を有しないようにすることには、阻害要因があると認められる。 よって、甲3発明の保持室の側方の扉を有さないことが、単なる設計的事項に過ぎないとはいえない。 また、上記被請求人の主張は、無効理由1の新規事項の追加に係るものであるから、甲3発明の保持室の側方の扉を有さないこととは無関係である。 したがって、請求人の上記主張は採用できない。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件発明5は、甲第3号証に記載された発明並びに甲第11号証~甲第15号証に記載された技術事項及び本件特許の優先日当時の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (6)本件発明6について ア 対比 本件発明6と甲3発明とを対比すると、以下の相違点10において相違する。 <相違点10> 本件発明6は、「加熱部(7)には、酸化物除去扉(14a)、(14b)が設けられる」のに対し、甲3発明は、溶解室が備える扉が、溶解室内の酸化物を除去するための扉であるのか不明である点。 イ 判断 (ア)相違点10について 溶解バーナーによって溶解室内に不要な酸化物が生成し、これを除去する必要があることは技術常識であるから、溶解室が備える扉は、溶解室内の酸化物を除去するための扉であると解するのが自然である。 したがって、相違点10は、実質的な相違点であるとはいえない。 ウ 被請求人の主張について 被請求人は、本件発明1が甲3発明等に基いて容易に発明をすることができたものではないから、本件発明6も甲3発明等に対して進歩性を有する旨の主張をするにとどまり、具体的な主張をしておらず、当該主張はその根拠が不明であるから採用できない。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件発明6は、甲第3号証に記載された発明並びに甲第11号証~甲第15号証に記載された技術事項及び本件特許の優先日当時の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (7)小括 よって、本件発明1、2及び6は、甲第3号証に記載された発明並びに甲第11号証~甲第15号証に記載された技術事項及び本件特許の優先日当時の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1、2及び6についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 第6 むすび 以上のとおりであるから、無効理由2(進歩性欠如)は理由があり、本件発明1、2及び6についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し無効とするべきものである。 本件発明3~5についての特許は、請求人の主張及び証拠方法によっては、無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第64条の規定により、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-800084

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