特許無効審判
2022-800065
土木工事用不織布およびその製造方法
- 審判番号
- 2022-800065
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2020-203371
- 登録番号
- 6889970
- 請求日
- 2022年07月08日
- 審決日
- 2024年11月19日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求成立(無効)
- 当事者
- 【請求人】株式会社 田中
- 【請求人代理人】山田 威一郎
- 【請求人代理人】田中 順也
- 【被請求人】前田工繊 株式会社
- 【被請求人代理人】山口 朔生
- 【被請求人代理人】大島 信之
- 【被請求人代理人】山口 真二郎
- 【被請求人代理人】松本 忠大
- 審判長/審判官
- 審判長 神山 茂樹
- 審判官 木原 裕二
- 審判官 岩谷 一臣
- 分類
- P1113.111-ZAA(D04H) / P1113.112-ZAA(D04H) / P1113.121-ZAA(D04H) / P1113.536-ZAA(D04H) / P1113.537-ZAA(D04H)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項特許法29条2項特許法123条1項2号特許法169条2項民事訴訟法64条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第134条の3、特許法第134条の2第9項、特許法第134条の2第1項、特許法第29条第1項第1号、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第6889970号発明「土木工事用不織布およびその製造方法」の特許無効審判事件に対する令和5年11月28日付けの審決が知的財産高等裁判所において取り消されたため(令和6年(行ケ)第10002号、令和6年5月23日判決言渡)、さらに審理の上、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第6889970号の明細書及び特許請求の範囲を、令和4年9月30日付け訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕、〔5~7〕について、訂正することを認める。
特許第6889970号の請求項1~7に係る発明についての特許を無効とする。
審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨
1 請求の趣旨
(1)特許第6889970号の請求項1~7に係る発明についての特許を無効とする。
(2)審判費用は、被請求人の負担とする。
との審決を求める。
2 答弁の趣旨
(1)本件無効審判請求は成り立たない。
(2)審判費用は請求人の負担とする。
との審決を求める。
第2 手続の経緯
1 本件特許の出願から設定登録までの経緯
本件無効審判の請求に係る特許第6889970号に係る発明についての、出願から本件無効審判請求の前までの手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和2年12月 8日 :出願
令和3年 4月28日付け:特許査定
令和3年 5月26日 :設定登録
2 本件無効審判の手続の経緯
株式会社田中(以下「請求人」という。)から、特許権者である前田工繊株式会社を被請求人とする、本件特許の請求項1~7に係る発明の特許についての本件無効審判における手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
令和4年 7月 8日 :審判請求書(以下「請求書」という。)の提出
令和4年 9月30日 :審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)、訂正請求書の提出
令和4年12月 5日 :弁駁書の提出
令和4年12月23日付け:請求人に対する審尋
令和5年 1月16日 :回答書(以下「請求人回答書」という。)の提出(請求人)
令和5年 5月 9日付け:審理事項通知
令和5年 5月25日 :口頭審理陳述要領書の提出(請求人)
令和5年 5月25日 :口頭審理陳述要領書の提出(被請求人)
令和5年 6月16日 :第1回口頭審尋、第1回口頭審理
令和5年 6月29日 :上申書(以下「請求人上申書」という。)の提出(請求人)
令和5年 8月15日付け:審決の予告(なお、期間を指定して通知した上記審決の予告に対して、当該指定期間内に両当事者から応答はなかった。)
令和5年11月28日付け:審決(送達日12月15日。以下「一次審決」という。)
令和6年 1月 5日 :一次審決に対する訴えの提起(令和6年(行ケ)第10002号)
令和6年 5月23日 :判決言渡
令和6年 8月23日付け:審理再開通知
令和6年 9月20日 :上申書(請求人)
一次審決は、令和4年9月30日付け訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認め、請求項1、3~5、7に係る発明についての特許を無効とし、請求項2、6に係る発明に対する審判請求は成り立たないとしたものであり、これに対し、一次審決のうち、請求項2、6に係る部分の取消しを求めた訴えの提起がなされ、判決において当該部分の審決が取り消されたものである。
第3 訂正請求について
1 訂正請求の趣旨
令和4年9月30日提出の訂正請求書による訂正請求(以下「本件訂正」という。)は、特許第6889970号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものである。
なお、被請求人は、当該取消判決の確定を受けたものの、特許法第134条の3の規定に基づく訂正の請求の申立てを行っていない。
2 訂正の内容
(1)本件訂正前後の特許請求の範囲の記載
ア 本件訂正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
ニードルパンチ方式で製造されたたておよびよこの伸び率が150%以上である土木工事用不織布であって、
不織布の繊維原料が白色繊維と、
前記白色繊維と同一繊維を特定色彩の顔料で着色した着色繊維との混合物からなり、
前記白色繊維および着色繊維が化学繊維であり、
前記着色繊維がカーボンブラック製の顔料を含んだ黒色系の色彩を呈し、
不織布本体が白色繊維と着色繊維の混合した鼠色形の色彩を有し、かつ不織布本体の外表面に斑模様を形成していることを特徴とする、
土木工事用不織布。
【請求項2】
前記着色繊維の混合量が重量比で10~90%の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の土木工事用不織布。
【請求項3】
前記白色繊維および着色繊維がポリエステル系繊維であることを特徴とする、請求項1または2に記載の土木工事用不織布。
【請求項4】
前記不織布が防砂シートであることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか一項に記載の土木工事用不織布。
【請求項5】
ニードルパンチ方式で製造するたておよびよこの伸び率が150%以上である土木工事用不織布の製造方法であって、
不織布の繊維原料に白色繊維と、
前記白色繊維と同一繊維を特定色彩の顔料で着色した着色繊維とを使用し、
前記白色繊維および着色繊維が化学繊維であり、
前記着色繊維がカーボンブラック製の顔料を含んだ黒色系の色彩を呈し、
前記白色繊維および着色繊維を混練した後にニードルパンチで交絡させて不織布本体を製造し、
不織布本体が白色繊維と着色繊維の混合した鼠色形の色彩を有し、かつ不織布本体の外表面に斑模様を形成したことを特徴とする、
土木工事用不織布の製造方法。
【請求項6】
前記着色繊維の混合量が重量比で10~90%の範囲であることを特徴とする、請求項5に記載の土木工事用不織布の製造方法。
【請求項7】
前記白色繊維および着色繊維がポリエステル系繊維であることを特徴とする、請求項5または6に記載の土木工事用不織布の製造方法。」
イ 本件訂正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
ニードルパンチ方式で製造されたたておよびよこの伸び率が150%以上である土木工事用不織布であって、
不織布の繊維原料が白色繊維と、
前記白色繊維と同一繊維を特定色彩の顔料で着色した着色繊維との混合物からなり、
前記白色繊維および着色繊維が化学繊維であり、
前記着色繊維がカーボンブラック製の顔料を含んだ黒色系の色彩を呈し、
不織布本体が白色繊維と着色繊維の混合した鼠色系の色彩を有し、かつ不織布本体の外表面に斑模様を形成していることを特徴とする、
土木工事用不織布。
【請求項2】
前記着色繊維の混合量が重量比で10~90%の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の土木工事用不織布。
【請求項3】
前記白色繊維および着色繊維がポリエステル系繊維であることを特徴とする、請求項1または2に記載の土木工事用不織布。
【請求項4】
前記不織布が防砂シートであることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか一項に記載の土木工事用不織布。
【請求項5】
ニードルパンチ方式で製造するたておよびよこの伸び率が150%以上である土木工事用不織布の製造方法であって、
不織布の繊維原料に白色繊維と、
前記白色繊維と同一繊維を特定色彩の顔料で着色した着色繊維とを使用し、
前記白色繊維および着色繊維が化学繊維であり、
前記着色繊維がカーボンブラック製の顔料を含んだ黒色系の色彩を呈し、
前記白色繊維および着色繊維を混練した後にニードルパンチで交絡させて不織布本体を製造し、
不織布本体が白色繊維と着色繊維の混合した鼠色系の色彩を有し、かつ不織布本体の外表面に斑模様を形成したことを特徴とする、
土木工事用不織布の製造方法。
【請求項6】
前記着色繊維の混合量が重量比で10~90%の範囲であることを特徴とする、請求項5に記載の土木工事用不織布の製造方法。
【請求項7】
前記白色繊維および着色繊維がポリエステル系繊維であることを特徴とする、請求項5または6に記載の土木工事用不織布の製造方法。」
(2) 本件訂正の内容
本件訂正は、一群の請求項〔1~4〕に対しての訂正事項1と、一群の請求項〔5~7〕に対しての訂正事項2と、一群の請求項〔1~4〕、〔5~7〕について明細書を訂正する訂正事項3からなる。
ア 訂正事項1
本件訂正前の請求項1に記載された「鼠色形」を「鼠色系」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項2
本件訂正前の請求項5に記載された「鼠色形」を「鼠色系」に訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6、7も同様に訂正する。)。
ウ 訂正事項3
明細書の【0049】に記載された「
[表4]
[図:0001421677000001.jpg]
」を「
[表4]
[図:0001421677000002.jpg]
」に訂正する。
エ 一群の請求項
訂正事項1は、訂正前の請求項1についてされたものであるところ、請求項2~4は請求項1を引用するものであり、また、訂正事項2は、訂正前の請求項5についてされたものであるところ、請求項6、7は請求項5を引用するものであるから、一群の請求項〔1~4〕、〔5~7〕に対して請求されたものである。さらに、訂正事項3に係る本件特許の明細書の訂正に係る請求項は、請求項1~7であり、一群の請求項の全てについて行われたものである。
したがって、本件の訂正請求は、一群の請求項ごとに請求されたものである。
3 訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正前の請求項1には、「鼠色形の色彩」と記載されていたが、「鼠色」は色彩であって形状を意味しないから、請求項1の記載不備があった。
また、請求項1には、「黒色系の色彩」の記載があり、「系」は「組織だった分類」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)を意味するところ、「鼠色形の色彩」は、鼠色に分類される色彩を意味する「鼠色系の色彩」であったのは明らかである。
したがって、訂正事項1は、誤記の訂正を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内であること
本件特許の願書に最初に添付した明細書の【0049】には、「不織布の色彩」に関して、「薄い鼠色」(実施例1、3~5)、「濃い鼠色」(実施例2)、すなわち、不織布の色彩として、鼠色に分類されるものが記載されていた。
したがって、訂正事項1は、本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の誤記を正すものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項1と同様、訂正事項2は、誤記の訂正を目的とするものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正前の【0049】の実施例6に係る不織布は、白色繊維と黒色繊維の混合比率がそれぞれ10、90と、その9割が黒色繊維であること(【0047】)、及び斑模様の発生状況が「白の斑模様が一部目視により確認可能。」となっていることから、その色彩が「全面白色」というのは不合理であり、「全面黒色」であることは明らかである。
同様に、訂正前の【0049】の実施例7に係る不織布は、白色繊維と黒色繊維の混合比率がそれぞれ90、10と、その1割が黒色繊維であることから(【0047】)、その色彩が「全面黒色」というのは不合理であり、「全面白色」であることは明らかである。
したがって、訂正事項3は、誤記の訂正を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内であること
訂正事項3は、本件特許の明細書における明らかな誤記を正すものであるから、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、本件訂正前の請求項1~7に関する明細書の記載を正すものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)独立特許要件について
全ての請求項に対して特許無効審判が請求されているので、訂正事項1~3に関し、特許法134条の2第9項において読み替えて準用する同法126条7項に規定される要件(独立特許要件)は適用されない。
4 訂正請求についてのむすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4~6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕、〔5~7〕について訂正することを認める。
第4 本件発明
上記第3のとおり本件訂正の請求による請求項1~7の訂正は認められるから、本件特許の請求項1~7に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件発明1」などという。また、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ訂正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項(上記第3の2(1)イ参照)により特定されるとおりのものである。
第5 請求人の主張及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
請求書に添付して甲第1号証~甲第20号証を、弁駁書に添付して甲第21号証~甲23号証を、請求人回答書に添付して甲第24号証、甲第25号証を提出し、また、令和6年9月20日提出の上申書とともに甲第40号証~甲第46号証を提出し、大要、以下の無効理由を主張している(第1回口頭審理調書請求人欄「5」)。
以下、甲第1号証等を「甲1」等と略記する。
(1)無効理由1(サポート要件違反)
本件特許の請求項1~7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、本件特許の特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合しないため、請求項1~7についての特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)無効理由2(明確性要件違反)
本件特許の請求項1~7に係る発明は、次の点で明確でないから、本件特許の特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合しないため、請求項1~7についての特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
ア 「鼠色系」との文言について
請求項1、5の「鼠色系の色彩」の文言は、「鼠色の系統の色彩」を意味する曖昧な語であり、その外延が不明確である。
イ 「鼠色」との文言について
請求項1、5の「鼠色系の色彩を有し」の記載における「鼠色」の色彩と「白色」、「黒色」等の他の色彩との境界が明確ではなく、その外延が特定できない。
ウ 「斑模様」との文言について
請求項1、5の「不織布本体の外表面に斑模様を形成している」の記載における「斑模様」の文言は、その外延が不明確である。
(3)無効理由3(実施可能要件違反)
発明の詳細な説明の記載が、次の点で、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に適合しないため、請求項1~7についての特許は、同法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
ア 請求項1、5に記載された「鼠色」の色彩及び「斑模様」に関して、白色繊維と黒色繊維をどのように混合すると、「鼠色」の色彩を有し、かつ、外表面に「斑模様」を形成することができるのかに関して発明の詳細な説明に具体的な記載がなく、両者を同時に実現する方法が判然としない。
イ 本件特許明細書の【0049】【表4】の実施例6、7において、10%の黒色繊維を混合したにもかかわらず、「全面白色」の色彩になったり、10%の白色繊維を混合したにもかかわらず、「全面黒色」になったりする場合があることになり、どのような製造方法を採用すると、「鼠色」の色彩を呈し、かつ、外表面に「斑模様」を形成することができるのかを理解することができない。
(4)無効理由4(新規性欠如)
本件特許の請求項1、3~5、7に係る発明は、甲8~15に係る合成繊維不織布又は甲8~15に係る合成繊維不織布の製造方法であるから、特許法第29条第1項第1号又は第2号に該当し、特許を受けることができないものであるため、請求項1、3~5、7についての特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(5)無効理由5(進歩性欠如)
本件特許の請求項1~7に係る発明は、甲8~15に係る合成繊維不織布又は甲8~15に係る合成繊維不織布の製造方法に基いて、本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許を受けることができないものであるため、請求項1~7についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 証拠方法
請求人が提出した証拠方法は以下のとおりである。
甲1:“平成9年度決算検査報告”、[online]、平成9年、会計検査院、インターネット
<URL: https://report.jbaudit.go.jp/org/h09/1997-h09-0274-0.htm>
甲2:「港湾防砂シート用不織布 技術資料」、株式会社田中、東洋紡績株式会社、東レ株式会社、ユニチカ株式会社
甲3:製品カタログ「ニードキーパー 港湾用防砂シート」、平成7年3月、株式会社田中
甲4の1:製品カタログ「ハイブリッドマット 高伸度マット」、太陽工業株式会社
甲4の2:「ハイブリッドマット設計価格表」、平成21年4月16日、太陽工業株式会社
甲4の3:“吸出し防止対策 高伸度マット「ハイブリッドマット」”、[online]、太陽工業株式会社、[令和4年2月24日印刷]、インターネット
<URL: https://www.taiyokogyo.co.jp/products_list/index.php/item?label=1&cell003=%E5%9C%9F%E6%9C%A8%E8%B3%87%E6%9D%90&name=%E5%90%B8%E5%87%BA%E3%81%97%E9%98%B2%E6%AD%A2%E5%AF%BE%E7%AD%96%0A%E9%AB%98%E4%BC%B8%E5%BA%A6%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%88%0A%E3%80%8C%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%88%E3%80%8D&id=79>
甲5:請求人代理人 山田威一郎、「写真撮影報告書(本件請求人製品1の引張試験の前後の外観)」、令和4年6月23日
甲6:請求人 技術部 近藤誠二、「敷設現場における防砂シートの伸び具合に関する報告書」、令和4年6月23日
甲7:新村出編、「広辞苑」、第六版第二刷、株式会社岩波書店、2011年(平成23年)1月11日、2171、2646ページ
甲8:請求人代理人 山田威一郎、「写真撮影報告書(本件請求人製品1の外観)」、令和4年6月23日
甲9:本件請求人製品1の製品カタログ「超高伸度港湾用防砂シート ニードキーパー NK-800Z」、令和元年12月、株式會社田中
甲10の1:一般財団法人 日本繊維製品品質技術センター 東京総合試験センター、「試験成績証明書」、平成29年3月13日
甲10の2:一般財団法人 日本繊維製品品質技術センター 東京総合試験センター、「試験成績証明書」、平成29年7月6日
甲10の3:一般財団法人 日本繊維製品品質技術センター 東京総合試験センター、「試験成績証明書」、平成30年5月30日
甲11:請求人代理人 山田威一郎、「写真撮影報告書(那覇空港第2滑走路増設工事の状況)」、令和4年6月23日
甲12:一般財団法人 日本繊維製品品質技術センター 東京試験センター、「試験成績証明書」、2022年(令和4年)1月18日
甲13:「分析報告書」、株式会社カネカテクノリサーチ、2022年(令和4年)4月5日
甲14:パンフレット「那覇空港第2滑走路」、内閣府沖縄総合事務局、国土交通省大阪航空局
甲15:「那覇空港滑走路増設工事における資料」、平成29年3月
甲16:「港湾工事における防砂シートの現場実験報告書」、沖縄県土木建築部港湾課、平成8年3月
甲17:請求人代理人 山田威一郎、「写真撮影報告書(本件請求人製品3の外観)」、令和4年6月23日
甲18:一般財団法人 日本繊維製品品質技術センター 東部事業所、「試験成績証明書」、平成30年4月5日
甲19:一般財団法人 日本繊維製品品質技術センター 東京試験センター、「試験成績証明書」、2022年(令和4年)1月18日
甲20:請求人 技術部 近藤誠二「本件請求人製品に使用されている顔料に関する報告書」、令和4年6月23日
甲21:篠原俊一、外2名、「不織布活用のための基礎知識」、初版1刷、日刊工業新聞社、2012年(平成24年)4月27日
甲22:「暫定設計書」、H21.9.14/09.9.15
甲23:請求人代理人 山田威一郎、「写真撮影報告書(本件請求人製品3の外観)」、令和4年12月5日
甲24:日本工業標準調査会、「ジオテキスタイル試験方法 JIS L 1908:2000」、日本規格協会、平成12年2月20日改正、1~5ページ
甲25:日本工業標準調査会、「繊維製品の混用率試験方法-第2部:繊維混用率 JIS L 1030-2:2012」、日本規格協会、平成24年3月21日改正、50~55ページ
甲40:請求人代理人 山田威一郎「写真撮影報告書」、令和6年2月16日
甲41:財団法人 日本紡績検査協会「試験成績書」、平成3年12月17日、
甲42の1:被告の土木用不織布「テイジンキーパー」の製品カタログ、平成11年頃
甲42の2:被告の土木用不織布「テイジンキーパー」の製品カタログ
甲43:山水産業株式会社の土木用不織布「SNマット」の製品カタログ、平成11年頃
甲44:日建工学株式会社の土木用不織布「ステラキーパー」の製品カタログ
甲45の1:特開平9-165731号公報
甲45の2:特開平9-24565号公報
甲45の3:特開平11-100821号公報
甲46:特許第6889970号の特許原簿謄本、令和6年3月4日
第6 被請求人の主張及び証拠方法
1 被請求人の主張の概要
請求人が提出した証拠方法は以下のとおりである。
被請求人は、令和4年9月30日の答弁書に添付して、乙第1号証(以下、「乙1」という。)を提出し、請求人の主張する無効理由1~5はいずれも理由がない旨主張している。
2 証拠方法
請求人が提出した証拠方法は以下のとおりである。
乙1:「産業資材専用試験依頼書」、一般財団法人 日本繊維製品品質技術センター
第7 当審の判断
1 提出された文書の記載内容等
(1)甲7
甲7には、以下の事項が記載されている。
ア 「ねずみ【鼠】・・・-・いろ【鼠色】○1(当審注:○付き数字を示す。以下同じ。)鼠の毛のような、青ばんだ淡い黒色。灰色。ねずいろ。」
イ 「まだら【斑】種々の色または濃淡の入りまじっていること。また、そのもの。ぶち。むら。・・・「-模様」」
(2)甲8
甲8には、以下の事項が記載されている。
ア 1ページ
「別紙に掲載の各写真は、本件請求人製品1の外観を撮影した写真である。
各写真の撮影者、撮影日及び撮影場所は以下の通りである。
(1)撮影者: 株式会社田中 従業員 近藤 誠二
(2)撮影日: 令和3年11月27日
(3)撮影場所: 株式会社田中 本社」
イ 別紙
「【斜視図】
[図:0001421677000003.jpg]
【側面図】
[図:0001421677000004.jpg]
【拡大図】
[図:0001421677000005.jpg]
」
(3)甲9
ア 甲9の記載
甲9には、以下の事項が記載されている。
(ア)1ページ
「
[図:0001421677000006.jpg]
」
(イ)2ページ
「
[図:0001421677000007.jpg]
」
(ウ)3ページ
「
[図:0001421677000008.jpg]
」
(エ)4ページ
「
[図:0001421677000009.jpg]
」
イ 甲9の認定事項
上記アから、次の事項が認められる。
(ア)「ニードキーパー NK-800Z」は、表面が全体として灰色を呈している。(上記ア(ア))
(イ)「ニードキーパー NK-800Z」は、土木建設工事に用いられる合成繊維不織布である。(上記ア(イ))
(ウ)「ニードキーパー NK-800Z」は、特殊ポリエステル繊維が用いられている。(上記ア(イ))
(エ)「ニードキーパー NK-800Z」は、伸び率が200%以上である。(上記ア(イ))
(オ)「ニードキーパー NK-800Z」の規格は、厚さが8mm、幅が2m、質量が1350g/m2、タテの引張強さが900N/5cm、ヨコの引張強さが900N/5cm、タテの伸び率が200%、ヨコの伸び率が200%である。(上記ア(イ)、(ウ))
(カ)甲9の2ページでは、「ニードキーパーNK-800Z」を「従来製品」と対比している(上記ア(イ)の「◆ニードキーパーNK-800Zの優れた特長」の「強度・伸度」)こと、3ページでは、「◆施工事例」が記載されている(上記ア(ウ))こと、4ページでは、請求人である「株式会社 田中」の連絡先が記載されている(上記ア(エ))ことから、甲9は、請求人が販売する製品「ニードキーパーNK-800Z」の製品カタログである。
(キ)甲9の4ページには、「SP 19.12」と記載されている。(上記ア(エ))
(4)甲10の1
甲10の1は、公共工事において工事現場ごとに施主からメーカーに対し求められる、工事に使用する材料に関する試験成績証明書である。(請求人上申書2ページ10~16行)
ア 甲10の1の記載
甲10の1には、以下の事項が記載されている。
(ア)1ページ
「
[図:0001421677000010.jpg]
」
(イ)2ページ
「
[図:0001421677000011.jpg]
」
イ 甲10の1の認定事項
上記アから、次の事項が認められる。
(ア)平成29年3月6日に一般財団法人 日本繊維製品品質技術センター、東京総合試験センターに提出された「ニードキーパー NK-800Z」の試料は、厚さが10.3mm、質量が1465g/m2、たての引張強さが1280N/5cm、よこの引張強さが1390g/m2、たての伸び率が231%、よこの伸び率が229%である。(上記ア(ア))
(イ)平成29年3月6日に一般財団法人 日本繊維製品品質技術センター、東京総合試験センターに提出された「ニードキーパー NK-800Z」の試料は、表面は全体として灰色を呈しており、灰色の濃淡が入りまじっている。(上記ア(ア)、(イ))
(5)甲10の2
甲10の2は、甲10の1と同様、公共工事において工事現場ごとに施主からメーカーに対し求められる、工事に使用する材料に関する試験成績証明書である。
ア 甲10の2の記載
甲10の2には、以下の事項が記載されている。
(ア)1ページ
「
[図:0001421677000012.jpg]
」
(イ)2ページ
「
[図:0001421677000013.jpg]
」
イ 甲10の2の認定事項
上記アから、次の事項が認められる。
(ア)平成29年7月3日に一般財団法人 日本繊維製品品質技術センター、東京総合試験センターに提出された「ニードキーパー NK-800Z」の試料は、厚さが10.91mm、質量が1590g/m2、たての引張強さが1300N/5cm、よこの引張強さが1520g/m2、たての伸び率が217%、よこの伸び率が206%である。(上記ア(ア))
(イ)平成29年7月3日に一般財団法人 日本繊維製品品質技術センター、東京総合試験センターに提出された「ニードキーパー NK-800Z」の試料は、表面は全体として灰色を呈しており、灰色の濃淡が入りまじっている。(上記ア(ア)、(イ))
(6)甲10の3
甲10の3は、甲10の1と同様、公共工事において工事現場ごとに施主からメーカーに対し求められる、工事に使用する材料に関する試験成績証明書である。
ア 甲10の3の記載
甲10の3には、以下の事項が記載されている。
(ア)1ページ
「
[図:0001421677000014.jpg]
」
(イ)2ページ
「
[図:0001421677000015.jpg]
」
イ 甲10の3の認定事項
上記アから、次の事項が認められる。
(ア)平成30年5月17日に一般財団法人 日本繊維製品品質技術センター、東京事務所に提出された「ニードキーパー NK-800Z」の試料は、厚さが10.49mm、質量が1460g/m2、たての引張強さが1180N/5cm、よこの引張強さが1120g/m2、たての伸び率が230%、よこの伸び率が231%である。(上記ア(ア))
(イ)平成30年5月17日に一般財団法人 日本繊維製品品質技術センター、東京事務所に提出された「ニードキーパー NK-800Z」の試料は、表面は全体として灰色を呈しており、灰色の濃淡が入りまじっている。(上記ア(ア)、(イ))
(7)甲11
甲11は、令和4年6月23日付け「写真撮影報告書(那覇空港第2滑走路増設工事の状況)」である。
ア 甲11の記載
甲11には、以下の事項が記載されている。
(ア)1ページ
「別紙に掲載の各写真は、那覇空港第2滑走路増設工事において、本件請求人製品1が使用された際の状況を撮影した写真である。
各写真の撮影者、撮影日及び撮影場所は以下の通りである。
別紙1の写真
(1)撮影者: あおみ建設株式会社の従業員
(2)撮影日: 平成27年11月27日(当審注:「平成27年11月13日」の誤記である(第1回口頭審理調書の請求人の陳述4)。)
(3)撮影場所: 那覇空港第2滑走路増設工事 現場事務所
別紙2の写真
(1)撮影者: あおみ建設株式会社の従業員
(2)撮影日: 平成30年8月30日
(3)撮影場所: 那覇空港第2滑走路増設工事 施工現場
別紙3の写真
(1)撮影者: あおみ建設株式会社の従業員
(2)撮影日: 平成29年3月24日
(3)撮影場所: 那覇空港第2滑走路増設工事 施工現場」
(イ)別紙1(現場事務所で撮影された写真)
「【引張試験を行う前の写真】
[図:0001421677000016.jpg]
【引張試験後の写真】
[図:0001421677000017.jpg]
」
(ウ)別紙2(敷設時の写真)
「
[図:0001421677000018.jpg]
」
(エ)別紙3(敷設後の写真)
「
[図:0001421677000019.jpg]
」
イ 甲11の認定事項
上記アから、次の事項が認められる。
(ア)平成27年11月13日に那覇空港第2滑走路増設工事現場事務所で撮影された「ニードキーパー NK-800Z」の試料は、表面は全体として灰色を呈しており、灰色の濃淡が入りまじっている。(上記ア(イ))
(イ)平成27年11月13日に那覇空港第2滑走路増設工事現場事務所で撮影された「ニードキーパー NK-800Z」の試料の試験結果は、上記ア(イ)の【引張試験後の写真】の表示内容と記載されたホワイトボードをみるに、5つのたて用の試料の引張強さの平均が1050N/5cm、5つのよこ用の試料の引張強さの平均が1160N/5cm、5つのたて用の試料の伸び率の平均が216%、5つのよこ用の試料の伸び率の平均が212%である。(上記ア(イ))
(8)甲12
甲12は、甲10の2の試験成績証明書に貼り付けられていた試料に関し、各繊維の混合率を分析した「試験成績証明書」である。
ア 甲12の記載
甲12には、以下の事項が記載されている。
(ア)1ページ
「
[図:0001421677000020.jpg]
」
(イ)2ページ
「
[図:0001421677000021.jpg]
」
イ 甲12の認定事項
上記アから、次の事項が認められる。
2021年(令和3年)12月27日に一般財団法人 日本繊維製品品質技術センター、東京試験センターに提出された「NK-800Z」の試料は、ポリエステル100%であり、JIS L 1030-2の顕微鏡法による試験で計測された白色繊維と黒色繊維の比率が白色:92.5%、黒色:7.5%である。(上記ア(ア))
(9)甲13
甲13は、甲10の3の試験成績証明書に貼り付けられていた試料に使用されている黒色繊維を分析した「分析報告書」である。
ア 甲13の記載
甲13には、以下の事項が記載されている。
(ア)2ページ
「
[図:0001421677000022.jpg]
」
(イ)3ページ
「
[図:0001421677000023.jpg]
」
(ウ)4ページ
「
[図:0001421677000024.jpg]
」
イ 甲13の認定事項
上記アから、次の事項が認められる。
「ニードキーパー NK-800Z」のサンプル(甲10の3)から採取した黒色繊維について、繊維中に分散していた15~35nmの微粒子はカーボンブラックであり、繊維にはカーボンブラックが添加されていると考えられる。(上記ア(ア))
(10)甲14
甲14は、那覇空港第2滑走路増設工事のパンフレットである。
甲14には、以下の事項が記載されている
ア 1ページ
「
[図:0001421677000025.jpg]
」
イ 2ページ
「
[図:0001421677000026.jpg]
」
(11)甲15
甲15は、那覇空港滑走路増設工事における「ニードキーパー NK-800Z」の使用状況をまとめた資料である。
甲15には、以下の事項が記載されている
ア 1ページ
「
[図:0001421677000027.jpg]
」
イ 2ページ
「
[図:0001421677000028.jpg]
」
ウ 3ページ
「
[図:0001421677000029.jpg]
」
エ 4ページ
「
[図:0001421677000030.jpg]
」
オ 5ページ
「
[図:0001421677000031.jpg]
」
カ 6ページ
「
[図:0001421677000032.jpg]
」
(12)甲16
ア 甲16の記載
甲16には、以下の事項が記載されている。
(ア)表紙
「
[図:0001421677000033.jpg]
」
(イ)まえがき
「
[図:0001421677000034.jpg]
」
(ウ)46ページ
「
[図:0001421677000035.jpg]
」
イ 甲16の認定事項
上記アから、次の事項が認められる。
(ア)甲16の表紙及びまえがきによれば、NK-500S、UN-300及びPX-500が、平成8年3月までに行われた沖縄地区の港湾工事における防砂シートの現場特性、適応性を把握するための現場実験において使用されたものであることが認められる。(上記ア(ア)、(イ))
(イ)甲16の46頁の22-bの写真から、PX-500は、NK-500Sよりも濃い色であり、濃灰色ないし黒色であること、UN-300は白色であることが看取される。(上記ア(ウ))
ウ 甲16の認定事項に基づく技術常識
甲16の認定事項(上記イ(ア)、(イ))によれば、土木工事用の防砂シート(不織布又は織布)として用いられる製品の色の濃さは一様でなく、白色の製品、灰色の斑模様の製品とともに濃灰色ないし黒色の製品も使用されていることは、本件出願日時点における技術常識であったと認められる。
(13)甲19
甲19は、ニードキーパーNK-500Sの試験成績証明書に貼り付けられていた試料に関し、各繊維の混合率を分析した「試験成績証明書」である。
ア 甲19の記載
甲19には、以下の事項が記載されている。
(ア)1ページ
「
[図:0001421677000036.jpg]
」
(イ)2ページ
「
[図:0001421677000037.jpg]
」
イ 甲19の認定事項
上記アから、次の事項が認められる。
甲19の1、2ページをみるに、NK-500Sの色は灰色であって斑模様となっており、令和4年1月18日に実施された試験の結果によれば、NK-500Sの白色繊維と黒色繊維との比率(JIS L 1030-2に定められた顕微鏡法により測定したもの)は、白色が76.1%、黒色が23.9%であることが認められる。(上記ア(ア)、(イ))
(14)甲21
甲21には、以下の事項が記載されている。
ア 31ページ
「
[図:0001421677000038.jpg]
」
イ 38ページ
「
[図:0001421677000039.jpg]
」
ウ 39ページ
「
[図:0001421677000040.jpg]
」
(15)甲22
ア 甲22の記載
甲22には、以下の事項が記載されている。
(ア)1ページ
「
[図:0001421677000041.jpg]
」
(イ)2ページ
「
[図:0001421677000042.jpg]
」
(ウ)3ページ
「
[図:0001421677000043.jpg]
」
(エ)4ページ
「
[図:0001421677000044.jpg]
」
(オ)5ページ
「
[図:0001421677000045.jpg]
」
イ 甲22の認定事項
上記アから、次の事項が認められる。
(ア)発行日について
上記ア(ア)の「発行日」には、「H21.9.14」との印刷文字及び当該印刷文字の隣に、手書きと認められる「/ 09.9.15」が記載されているところ、西暦の四桁は上二桁を省略することが良く行われており、平成21年は西暦2009年であり、平成21年9月14日の翌日が2009年(平成21年)9月15日である。
また、上記ア(ア)の「作成」欄の「企画開発部」の「担当」と認められる欄に印刷文字で「古河」と記載され、当該文字上に古河の押印が一つ、「作成」欄の「発行部署」の「承認」と認められる欄に押印が二つされており(下方の「承認」欄には、4つの部署で合計6つの押印もされている。)、さらに「役員承認」欄に押印が一つされていることから、上記発行日は、「担当」「古河」が作成した日の「H21.9.14」であり、その後の承認者が「09.9.15」を記入したものであることが推定できる。
そうすると、甲22は、担当古河が作成し、本人の押印に加えて、合計10人の押印の元に、平成21年15日までに作成された暫定設計書であると認める。
(イ)暫定設計書における品番「NK-800Z」の製品仕様では、製品の「色相」が「グレー」である。(上記ア(イ)の「1.製品仕様書」の「1.品番・色相・幅・長さ」)
(ウ)暫定設計書における品番「NK-800Z」の製品仕様では、「綿目付」、「総目付」が「1400±50」g/m2である。(上記ア(イ)の「1.製品仕様書」の「2.製品目付」)
(エ)暫定設計書における品番「NK-800Z」の製品仕様では、「使用原綿」の「素材」が「ポリエステル」である。(上記ア(イ)の「1.製品仕様書」の「3.使用原綿」)
(オ)暫定設計書における品番「NK-800Z」の製品仕様では、「使用原綿」の「色相」が「グレー」であり、当該「グレー」の構成が、繊度13dtex×カット長64mmの「綿色」「ホワイト」の綿の「混率」が「95」%で、繊度6.6dtex×カット長64mmの「綿色」「ブラック」の綿の「混率」が「5」%である。(上記ア(イ)の「1.製品仕様書」の「3.使用原綿」)
(カ)暫定設計書における品番「NK-800Z」の製品条件について、パンチ工程のラインで「プレパンチ」が行われる。(上記ア(ウ)の「1.工程」、上記ア(エ)の「3.生産条件(参考値)」の「○1プレパンチ」)
(キ)暫定設計書における品番「NK-800Z」の製品仕様の品質管理基準について、目付が1350g/m2以上、厚みが8mm以上、引張り強度がたて900N/5cm以上、よこ900N/5cm以上、伸度がたて200%以上、よこ200%以上である。(上記ア(オ)の「品質管理基準」)
(16)甲23
甲23は、令和4年12月5日付け「写真撮影報告書(本件請求人製品3(当審注:下記アの記載から「本件請求人製品3」は「本件請求人製品1」の誤記である。)の外観)」である。
甲23には、以下の事項が記載されている。
ア 甲23の記載
(ア)1ページ
「別紙に掲載の各写真は、甲第10号証の1の試験成績証明書の2頁目に「試料」として貼り付けられている本件請求人製品1の切り取り片の平面視の外観を撮影した写真である。
当該写真の撮影者、撮影日及び撮影場所は以下の通りである。
(1)撮影者: 弁護士 山田威一郎
(2)撮影日: 令和4年11月29日
(3)撮影場所: レクシア特許法律事務所 会議室」
(イ)別紙
「
[図:0001421677000046.jpg]
」
イ 甲23の認定事項
上記アから、次の事項が認められる。
甲10の1の試験成績証明書に貼り付けられている試料の表面に垂直な面には、表面に垂直な方向に縦方向の線が表れている。(上記ア(ア)、(イ))
(17)甲45の1~甲45の3
ア 甲45の1
甲45の1には、以下の事項が記載されている。(「・・・」は省略を示す。下線は当審が追加した。また、以下同様である。)
「【請求項1】埋立作業に先立って構築される埋立護岸の裏込め工の法面に敷設され、埋立土砂の漏出を防止する合成樹脂繊維織布からなる埋立用防砂シートにおいて、前記合成樹脂繊維織布は、その表面に海水浸漬部位より上方の陸上部分に透水可能な合成樹脂被膜が形成されたことを特徴とする埋立用防砂シート。」
「【請求項3】前記樹脂被膜は、カーボンブラックが混合された塩化ビニル樹脂被膜であることを特徴とする請求項1記載の埋立用防砂シート。」
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、ポリエステル繊維は一般的な性状として長期間の使用に対して品質劣化を示すことが認められている。したがって、水深が深い水域を広範囲にわたって埋め立てるような場合には、防砂シートの陸上部分は3~4年の期間にわたり、海水飛沫を受けた状態で暴露される。このような長期の暴露状態では、紫外線の影響により白色の織布が黄変し、強度劣化を生じるおそれもある。」
「【0008】そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、長期間の暴露においても、品質を保持できる耐候性を発揮できる埋立用防砂シートを提供することにある。」
「【0014】また、本実施の形態では、塩化ビニル樹脂ペーストにカーボンブラックが混合されている。・・・カーボンブラックを含有することにより、塩化ビニル樹脂ペーストは黒色となり、防砂シートの樹脂被膜21部分も黒色面を構成する。また、副次的な効果として、樹脂内にカーボンブラックを適量添加することにより被膜表面の耐摩耗性を向上することができる。添加量は、塩化ビニル樹脂100重量部に対してカーボンブラック2~5重量部に設定されている。防砂シートを敷設する場所によっては景観に考慮する必要となることもある。このような場合には、黒色樹脂に代えて暗褐色、灰色、銀色等の顔料を用い、周辺景観にマッチした色彩とすることも可能である。」
「【0015】このように、防砂シートの陸上部に暗色の樹脂被膜21を形成することにより、太陽光による紫外線を遮断でき、防砂シートの経年劣化を防止することが期待できる。・・・」
イ 甲45の2
甲45の2には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 軟質熱可塑性樹脂フィラメントからなる網状構造体シートと繊維シートとが一体化されてなる積層シートであって、該積層シートの透水係数が1×102cm/sec 以上であることを特徴とする透水性土木シート。」
「【請求項13】 該繊維シートが、カーボンブラックを含有するものである請求項1記載の透水性土木シート。」
「【0002】
【従来の技術】従来、水中構造物、防波堤、河川堤防等における吸出し、洗掘を防止するシートとして、織布、不織布等が使用されている。」
「【0003】しかし、これらのシートでは、例えば海岸護岸工事に長期間(1~12カ月)敷設した時に波浪により生じるシートと栗石との摩耗によってシートが破損したり、また、台風時が通過したり、波浪の多い冬期には、さらに短期間でシートが破損し、堤防内の土砂がシート破損部から流出する問題があった。」
「【0014】・・・さらに、長期間屋外での使用となるため、たとえばポリエステル繊維製不織布を使用する場合、カーボンブラックを含有させることによって、耐候性を改善することができる。かかるカーボンブラックは1m2当りの重量に対して、好ましくは0.2~0.6%の範囲で含有させるのが良い。かかる含有のさせ方については、含浸、塗布、さらには原着のいずれでもよいが、耐久性などの点からいえば、原着が好ましい。0.2%未満では耐候性の増加が期待できなく、0.6%を越えると、不織布の生産工程での針抵抗が大きくなり生産性を悪化する傾向があり好ましくない。」
ウ 甲45の3
甲45の3には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、強度、親水性(自己水中沈降性)など施工性に優れた土木用不織シート、特に水質汚染などが少ない海岸、湖岸、河岸などの防波堤や岸壁に敷設される埋立土砂の吸い出し防止シートや防砂シートとして有効な土木用不織シートに関するものである。」
「【0029】また、これらの繊維には、カーボンブラックを好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.1~1%、特に好ましくは0.2~0.5%含有されているものが使用される。港湾工事などの敷設に際し、シートが白色であった場合、太陽光によるシートの光の反射により、雪目現象が発生し、作業上の障害、特に作業者に障害が及ぶばかりか、敷設後の美観が損なわれやすい。繊維中のカーボンブラックの含有率が0.01%未満の場合には上記不都合が生じやすいため好ましくない。さらに、カーボンブラックを0.01%以上添加することにより、港湾や河川堤防に敷設した場合においては、白色シートと比較して太陽光の遮光性が向上するため、上記欠点を解決するばかりか防草効果が得られるなど土木用不織シートとしてカーボンブラック添加の効果は絶大なものとなる。」
エ 甲45-1~甲45-3に基づく技術常識
甲45の1~甲45の3の記載(上記1(17)ア~ウ)によれば、合成樹脂製の埋立用防砂シート、樹脂フィラメントからなる網状構造体と繊維シートとが一体化されてなる積層シートである透水性土木シートや、不織布からなり港湾工事などの敷設に用いられる土木用不織シートにおいて、カーボンブラックを耐候性、耐摩耗性及び遮光性の向上、光の反射による作業者への作業上の障害の防止、景観を損なうことの防止等を目的として、所望の効果が発揮できる量で、合成樹脂や繊維に添加することは、本件出願日の時点における技術常識であったと認められる。
2 無効理由1(サポート要件違反)について
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、この観点に立って、本件特許の特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かについて検討する。
(1)本件発明について
本件発明は、上記第4のとおり訂正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項(上記第3の2(1)イ参照)により特定されるとおりのものである。
(2)本件特許の明細書の記載事項
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は護岸工事等において、埋立土砂の流出を防止するための防砂シート等の土木用資材として使用する高伸度の不織布に関し、特に不織布の伸び具合をより正確に把握できる土木工事用不織布およびその製造方法に関する。」
イ 「【背景技術】
【0002】
土木工事用不織布の製造方法の一つとして、かえしのある複数の針を繊維層にまとめて突き刺すことで繊維(原綿等)同士を交絡するニードルパンチ法が広く知られてる。
従来の土木工事用不織布は白色以外の特別な色彩を付ける必然性がないことから、不織布の原料には白色系の繊維を用い、製造される不織布は外表面だけでなく内部組織も白色となっている。
【0003】
また従来の一般的な不織布は伸び率が織布と比べて大幅に劣ることから、敷設面の凹凸等の不陸に対する追従性が悪い。
そこで、不陸に対する追従性をよくするために、様々な延伸構造の不織布が提案されている(特許文献1~4)。」
ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の土木工事用不織布には、つぎのいくつかの問題点を内包している。
<1>土木工事用不織布は全体が白色であるため、耐候性と耐摩耗性に問題があることに加えて、施工時に光が反射して眩しく敷設作業を阻害し易い。
<2>土木工事用不織布は全体を引き延ばしながら現場に敷設しているが、不織布の実際の伸び量を把握することができない。
そのため、伸び量にバラツキを生じ、不織布を均一の伸び率で引き延ばしながら敷設することが技術的に難しい。
<3>敷設面に大きな起伏があると、起伏に馴染ませるために不織布がさらに引き伸ばされる。
既述したように不織布の敷設時の実際の伸び具合を把握できないにもかかわらず、さらに起伏箇所で不織布が伸ばされるので不織布が伸長限界を超えて破れ易くなる。
不織布が破れると、破損個所の補修に多くの時間と手数がかかる。
【0006】
本発明は以上の点に鑑みて成されたもので、その目的とするところは少なくともつぎのひとつの土木工事用不織布およびその製造方法を提供することにある。
<1>簡易な手法により不織布の伸び具合を把握できること。
<2>不織布の伸び適正に管理しながら敷設できること。
<3>不織布を防砂シートに用いた場合、防砂機能の保証期間を延長できること。」
エ 「【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ニードルパンチ方式で製造された高伸度の土木工事用不織布であって、不織布の繊維原料が着色しない白色繊維と、前記白色繊維と同一繊維を特定色彩の顔料で着色した着色繊維との混合物からなり、不織布本体が白色繊維と着色繊維の混合色を有し、かつ不織布本体の外表面に斑模様を形成している。
さらに本発明は、ニードルパンチ方式で製造する高伸度の土木工事用不織布の製造方法であって、不織布の繊維原料に着色しない白色繊維と、前記白色繊維と同一繊維を特定色彩の顔料で着色した着色繊維とを使用し、前記白色繊維および着色繊維を混練した後にニードルパンチで交絡させて不織布本体を製造し、前記不織布本体が白色繊維と着色繊維の混合色を有し、かつウェブの外表面に斑模様を形成した。
本発明の他の形態において、前記着色繊維の色彩は黒色系である。
本発明の他の形態において、前記着色繊維の顔料はカーボンブラックである。
本発明の他の形態において、前記着色繊維の混合量は重量比で10~90%の範囲である。
本発明の他の形態において、前記白色繊維および着色繊維はポリエステル系繊維である。
本発明の他の形態において、不織布の伸び率は150%以上である。
本発明の他の形態において、不織布は防砂シートである。」
オ 「【発明の効果】
【0008】
本発明は少なくともつぎの一つの効果を奏する。
<1>白色繊維に適量の着色繊維を混入した原料を使用することで、斑模様を有する混合所の不織布を製造することができる。
<2>不織布全体に色彩が付与してあるので、不織布の伸び量に差があるとその差が色彩の濃淡となって表れる。
そのため、不織布の色彩の濃淡によって、不織布の大まかな伸び具合を目視により把握することができる。
<3>不織布の該表面が斑模様を呈することから、特定した複数の斑点間の距離を伸長前と伸長後に実測することで、不織布の伸び率を正確に把握することができる。
<4>不織布の伸びを把握できるので、不織布の伸び適正に管理しながら敷設することができる。
<5>不織布の伸長限界を把握できるので、破損した場合に補修対応を簡単に行える。
<6>着色繊維の顔料にカーボンブラックを用いた場合には、不織布の耐候性および耐摩耗性を高めることができる。
そのため、不織布を防砂シートに用いた場合には、光の反射を抑えて施工性を改善できるだけでなく、紫外線劣化と摩耗劣化を回避して砂防シートの防砂機能を長期間に亘って保証することができる。」
カ 「【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
<1>土木工事用不織布の概要
図1を参照して本発明に係る土木工事用不織布10(以下「不織布10」という)について説明すると、不織布10は、優れた弾力性,伸長性,および強度を併せ持っており、例えば防砂シート等の埋立護岸の吸出し防止工,洗掘対策工、連接ブロック工,石積み工等の吸出し防止工、各種フィルター工、または遮水シート工の保護材等の土木工事における洗掘対策、吸出し防止用資材として使用する。
不織布10の高い弾性力と伸長性を有していて、各種の敷設面の凹凸等に追従させて敷設できる。
【0012】
<2>不織布の物性
不織布10の物性(目付、伸び率、引張強度、引裂強度)はつぎのとおりである。
【0013】
1)目付(質量)
不織布10の目付量は特に制限はないが、土木工事用途で使用する場合は200~2000g/m2であり、実用的には1350g/m2以上が望ましい。
【0014】
2)伸び率
不織布10の伸び率は、たて150×よこ150%以上を有していればよく、たて200×よこ200%以上が望ましい。
不織布10を高伸度にする手段は、公知の各種方法を適用できる。
【0015】
3)引張強度
不織布10の引張強度は、たて900×よこ900N/5cm以上である。
【0016】
4)引裂強度
不織布10の引裂強度は、たて500×よこ500N以上である。
【0017】
<3>繊維原料
不織布10の繊維原料は、白色繊維11と着色繊維12とからなる。
白色繊維11および着色繊維12は同一の繊維素材からなる。
白色繊維11は公知の繊維である。
不織布10を着色繊維12のみで製造すると、不織布全体が単一色となって斑模様が生じない。
本発明では不織布10に斑模様を形成するために、白色繊維11と着色繊維12の組合せを採用した。
【0018】
<3.1>繊維素材
不織布10を構成する繊維原料(白色繊維11および着色繊維12)は、ポリエステル系繊維,ポリアミド系繊維,ポリビニルアルコール系繊維,ポリアクリロニトリル系繊維,ポリスチレン系繊維,ポリ塩化ビニル系繊維,アセテート系繊維,ポリエチレン系繊維,ポリプロピレン系繊維等を適用できる。
実用上は、ポリエステルを主体とし、その他にポリプロピレン、アクリル、ナイロン等の繊維が好適である。
繊維の形態は、短繊維(ステープル)と長繊維(フィラメント)を使用できるが、実用上は短繊維が好適である。
【0019】
<3.2>繊維の物性
白色繊維11および着色繊維12の物性(繊度、繊維強度、伸び率)はつぎのとおりである。
1)繊度(dtex)
白色繊維11および着色繊維12の繊度は3~20dtexであればよい。
【0020】
2)繊維強度(cN/dtex)
白色繊維11および着色繊維12の繊度強度は、1.5cN/dtex以上であればよい。
3)伸び率(%)
不織布10の伸度要因を繊維素材の伸び率に求める場合、白色繊維11および着色繊維12の繊維素材の伸び率は150%以上または200%以上であればよい。
【0021】
<3.3>着色繊維
着色繊維12は特定色の顔料の1種または複数種を含む。
実用的には1種の顔料で十分である。
本例では、顔料として紫外線吸収機能を有するカーボンブラックを採用した形態について説明するが、顔料はカーボンブラック以外の任意の色彩を採用することができる。
顔料にカーボンブラックを用いると、不織布10の耐候性、耐久性および耐摩耗性の向上効果を期待できる。
着色繊維12の着色範囲は、全長に亘って均一に着色してもよい、部分的に着色してもよい。
【0022】
<3.4>着色方法の例示
着色繊維12の着色方法としては、例えば繊維原料に適量のカーボンブラックを投入して混錬することで着色することができる。
着色繊維12の着色方法は混練に限定されず、公知の着色手段が適用可能である。
【0023】
<3.5>着色繊維の混合量(混合比率)
不織布10の全体繊維量に対する着色繊維12の混合量は、適宜選択が可能である。
本発明では着色繊維12の混合量を10~90%の範囲とし、実用上は20~80%の範囲が望ましく、機能的には50%の混合量が最もよい。
【0024】
着色繊維12の混合量が20%より小さいと、不織布10の全体色が薄くなって斑が形成され難くなり、さらに光が反射し易く、さらに耐候性に問題が生じる。
着色繊維12の混合量が50%を超えると、不織布10の全体色が濃くなって肉眼で斑を識別することが難しくなる。
【0025】
着色繊維12の混合量を上記の範囲にすることで、耐候性の確保と、肉眼で認識可能な斑を形成することと、光の反射の抑制といった複数の要素を同時に満足できる。
【0026】
[不織布の製造方法]
本発明の不織布10は例えばニードルパンチ方式で製造できる。
図2を参照して不織布10の製造方法について説明する。
【0027】
<1>繊維原料の供給と紡出
供給ホッパ20内に白色繊維11および着色繊維12を連続して投入する。
供給ホッパ20はその内部に空気流が生じていて、供給ホッパ20に投入した白色繊維11および着色繊維12を開繊および撹拌する。
【0028】
<2>カード機による繊維原料のウェブの形成
カード機21において、ドラムの針で繊維原料の一定量を一定方向に送り出してシート状のウェブ22を形成する。
【0029】
<3>ニードルパンチ加工
所要数のウェブ22を積層した積層シートに対してニードルパンチ23を高速昇降させる。
ニードルパンチ23が具備する複数の針24を積層シートにまとめて突き刺すことで複数層のウェブ22を構成する白色繊維11および着色繊維12が交絡して一枚ものの不織布10を得る。
【0030】
不織布10は不織布全体が白色ではなく、白色繊維11および着色繊維12が混合することで不織布全体が灰色系(グレー)の色彩を帯びると共に、着色繊維12がところどころに密集して斑模様となる。
【0031】
完成した不織布10はロール状に巻き取って回収する。
図3にニードルパンチ方式で製造した不織布10の平面図を示す。
【0032】
[不織布の特性]
既述した不織布10の特性について説明する。
【0033】
<1>不織布の伸び量の目視確認
本発明では不織布10の全体に色彩が付与してあるので、不織布10の伸び量に差があると、その差は色彩の濃淡となって表れる。
具体的には、伸び量の多い部位の色彩は、伸び量の少ない他の部位と比べて薄くなる。
このように、不織布10の色彩の濃淡によって、不織布10の大まかな伸び具合を目視により把握することができる。
【0034】
このようにして得た不織布10の伸びの情報は、施工時において活用できる。
不織布10を敷設面の不陸に沿わせて敷設する際に、不織布10が伸びた部分の色が薄く見えるため、敷設後において不陸部分が分りやすくなる。
そのため、作業者が不織布10の上を歩くときのつまずき等の歩行障害を回避できる。
【0035】
色彩変化に基づく不織布10の伸び情報は、進行中の不織布10の敷設作業に反映させて、不織布10の張力調整に活用することができる。
【0036】
<2>不織布の伸び率の計測
本発明の不織布10は、以下の簡単な作業で以て実際の伸び率を把握することができる。
【0037】
図4を参照して説明すると、同図(A)は伸長前の不織布10の表面を示し、同図(B)は同部位の伸長後の不織布10の表面を示している。
【0038】
不織布10は斑模様を呈することから、不織布10の表面にはスポット的に多数の斑点が形成されている。
そこで、例えば2つの斑点ア、イを選択し、伸長前の斑点ア、イの距離L1と、伸長後の斑点ア、イの距離L2を実測することで、不織布10の伸び率(L1:L2)を正確に把握することができる。
【0039】
計測点の数は2つに限定されず、2つ以上であればよい。
4つ以上の斑点を見つけて、不織布10の縦横方向へ向けた伸び率を計測することも可能である。
【0040】
複数の斑点の変位を実測した不織布10の伸び情報は、進行中の不織布10の敷設作業に反映させて、不織布10の張力調整に活用できることの他に、伸び率の限界に近い場合は、別途の補修用不織布を敷設する等の対策工に活用することができる。
【0041】
さらに、複数の斑点の変位を実測した不織布10の伸び情報は、以下のことに活用できる。
敷設面に不陸部があった場合、不織布10を伸長させて敷設面に対して不織布10を隙間なく敷設することが理想であるが、不織布10の斑点の間隔を確認することで、不陸部に対する不織布10の伸長具合をリアルタイムで確認することができる。
【0042】
<3>耐候性および耐摩耗性に基づく防砂機能
着色繊維12がカーボンブラックを含むことで不織布10は、白色繊維単体のみで製造した従来の不織布と比較して、耐候性と耐摩耗性に優れる。
【0043】
実際の現場では2,3か月程度、不織布が日光に晒される場合がある。
白色繊維単体のみで製造した従来の不織布は、紫外線に対する特別な対策が取られていなので、2,3カ月の間でも屋外に晒されると紫外線劣化が進行する。
白色繊維単体のみで製造した従来の不織布の耐候性を高める手段として、酸化チタンを混錬することが知られている。
しかしながら、酸化チタンの混錬量に比例して光が反射し易くなって、施工時の眩しさの問題が残るだけでなく、耐摩耗性についても顕著な問題となりやすい。
【0044】
本発明に係る不織布10は、光の反射を抑えて施工性を改善できるだけでなく、砂防シートとして使用した場合に、紫外線劣化と摩耗劣化を回避して砂防シートの防砂機能を長期間に亘って保証することができる。
【0045】
<4>浸水位置の把握
本発明に係る不織布10は色彩がグレーとなるため、不織布10を海洋工事の防砂シート(吸出防止材)として用いた場合に、水分を含んだ箇所と含まない箇所を色の変化で把握できる。
水を含んだ箇所の色は、水を含まないドライの部位と比べて濃いグレー色となって表れる。
したがって、不織布10の色彩の濃淡によって、土砂が吸出され易い部位を把握して、その対策に活用することができる。」
キ「【実施例】
【0046】
<1>不織布の共通物性
以下の物性を満たす着色繊維である黒色繊維および白色繊維の混合比率を変えて、不織布をニードルパンチ1回製法により製作した。全て目付量は1,450g/m2である。
[表1]
[図:0001421677000047.jpg]
【0047】
<2>繊維の混合比率
白色繊維と黒色繊維の混合比率は以下のとおりである。
[表2]
[図:0001421677000048.jpg]
【0048】
<3>繊維の混合比率
白色繊維と黒色繊維の混合比率は以下のとおりである。
[表3]
[図:0001421677000049.jpg]
【0049】
<4>不織布の色彩
実施例1,2および比較例1,2における不織布の色彩と斑模様の発生状況は以下のとおりである。
[表4]
[図:0001421677000050.jpg]
【0050】
<5>光の反射性
実施例1,2および比較例1,2の不織布について光の反射性能について体感試験を行った。その結果は以下のとおりである。
[表5]
[図:0001421677000051.jpg]
【0051】
<6>耐候性
黒色繊維の顔料にカーボンブラックを使用した不織布は、白色繊維単体のみで製造した従来の不織布と比較して、耐候性に優れる。
実際の現場では2,3か月程度、不織布が日光に晒される場合がある。
白色繊維単体のみで製造した従来の不織布は、紫外線に対する特別な対策が取られていなので、2,3カ月の間でも屋外に晒されると紫外線劣化が進行する。
白色繊維単体のみで製造した従来の不織布の耐候性を高める手段として、酸化チタンを混錬することが知られている。
しかしながら、酸化チタンの混錬量に比例して光が反射し易くなって、施工時の眩しさの問題が残るだけでなく、次記する耐摩耗性についても顕著な問題となりやすい。
<7>耐摩耗性
カーボンブラックを添加することで、不織布10の耐候性を改善できるだけでなく、耐摩耗性が向上する。
先の「<6>耐候性」で説明したように不織布10の耐候性および耐摩耗性のを向上させた不織布となることで、現場設置後の劣化を抑えることが可能となる。
【0052】
<8>評価
以上のように、本発明に係る不織布10は、光の反射を抑えて施工性を改善できるだけでなく、砂防シートとして使用した場合は、紫外線劣化と摩耗劣化を回避して砂防シートの防砂機能を長期間に亘って保証することができる。」
(3)本件発明の課題
本件発明は、「その目的とするところは少なくともつぎのひとつの土木工事用不織布およびその製造方法を提供することにある」とし、その目的については、「<1>簡易な手法により不織布の伸び具合を把握できること。<2>不織布の伸び適正に管理しながら敷設できること。<3>不織布を防砂シートに用いた場合、防砂機能の保証期間を延長できること」とされ、上記<1>、<2>又は<3>に係る課題(以下「本件課題<1>」ないし「本件課題<3>」という。)の少なくとも一つを課題とし、それを解決することで足りるものと認められる(【0006】)。
(4)本件課題を解決するための手段
不織布の伸びに関する本件課題<1>及び本件課題<2>について、本件特許明細書を参照すると、【課題を解決するための手段】の欄には「不織布本体が白色繊維と着色繊維の混合色を有し、かつ不織布本体の外表面に斑模様を形成している。」(【0007】)とされ、【発明の効果】の欄には、「<2>不織布全体に色彩が付与してあるので、不織布の伸び量に差があるとその差が色彩の濃淡となって表れる。そのため、不織布の色彩の濃淡によって、不織布の大まかな伸び具合を目視により把握することができる。<3>不織布の該表面が斑模様を呈することから、特定した複数の斑点間の距離を伸長前と伸長後に実測することで、不織布の伸び率を正確に把握することができる。<4>不織布の伸びを把握できるので、不織布の伸び適正に管理しながら敷設することができる。<5>不織布の伸長限界を把握できるので、破損した場合に補修対応を簡単に行える。」(【0008】)と記載されている。
また、本件特許明細書には、「<1>不織布の伸び量の目視確認
本発明では不織布10の全体に色彩が付与してあるので、不織布10の伸び量に差があると、その差は色彩の濃淡となって表れる。
具体的には、伸び量の多い部位の色彩は、伸び量の少ない他の部位と比べて薄くなる。
このように、不織布10の色彩の濃淡によって、不織布10の大まかな伸び具合を目視により把握することができる。
このようにして得た不織布10の伸びの情報は、施工時において活用できる。
不織布10を敷設面の不陸に沿わせて敷設する際に、不織布10が伸びた部分の色が薄く見えるため、敷設後において不陸部分が分りやすくなる。
そのため、作業者が不織布10の上を歩くときのつまずき等の歩行障害を回避できる。」(【0033】、【0034】)
そうすると、本件課題<1>又は本件課題<2>を解決するための手段は、「不織布本体が白色繊維と着色繊維の混合色を有し、かつ不織布本体の外表面に斑模様を形成している」ことであり、またそのことで足りるものである。
(5)判断
上述(3)、(4)を前提に、以下のとおり判断する。
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1が発明の詳細な説明に記載された発明であるか否かについて
本件特許の明細書の【0007】、【0014】、【0017】、【0021】、【0033】、【0034】、【0049】の記載から、本件発明1が発明の詳細な説明に記載された発明であることは明らかである。
(イ)本件発明1が発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かについて
本件発明1は、「不織布本体が白色繊維と着色繊維の混合した鼠色系の色彩を有し、かつ不織布本体の外表面に斑模様を形成している」ものであるから、本件特許の明細書に記載の発明における課題を解決するための手段が特定されている。そうすると、本件発明1は、本件特許の明細書の記載又はその示唆により当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
(ウ)小括
よって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載したものである。
イ 本件発明5について
(ア)本件発明5が発明の詳細な説明に記載された発明であるか否かについて
本件特許の明細書の【0007】、【0014】、【0017】、【0021】、【0026】~【0031】、【0033】、【0034】、【0049】の記載から、本件発明5が発明の詳細な説明に記載された発明であることは明らかである。
(イ)本件発明5が発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かについて
本件発明5の製造方法により製造される「土木工事用不織布」は、「不織布本体が白色繊維と着色繊維の混合した鼠色系の色彩を有し、かつ不織布本体の外表面に斑模様を形成している」ものであるから、本件特許の明細書に記載の発明における課題を解決するための手段が特定されている。そうすると、本件発明5は、本件特許の明細書の記載又はその示唆により当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
(ウ)小括
よって、本件発明5は、発明の詳細な説明に記載したものである。
ウ 本件発明2~4、6、7について
本件発明1の発明特定事項を含む本件発明2~4、及び本件発明5の発明特定事項を含む本件発明6、7についても、上記ア、イと同様に、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できる範囲のものである。
(6)無効理由1のまとめ
よって、本件発明1~7は発明の詳細な説明に記載したものであるから、請求項1~7についての特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合しており、同法第36条第6項に規定する要件を満たしている。
3 無効理由2(明確性違反)について
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、その技術的範囲に属するか否かの判断が困難となることにより第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断すべきものである。
以下、この観点に立って、発明が明確であるか否かについて検討する。
(1)「鼠色系」、「鼠色」の文言について
請求項1、5における「鼠色系」の用語について、一般に、「鼠色」は、「鼠の毛のような、青ばんだ淡い黒色。灰色。ねずいろ。」(甲7(上記1(1)ア))を意味し、「系」は、「組織だった分類。また、その部門。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)を意味する。
すなわち、「鼠色」は、鼠の毛のような、青ばんだ淡い黒色、灰色、ねずいろを意味し、「鼠色系」は、そのような「鼠色」に分類される色彩を意味する。
そうすると、請求項1、5における「不織布本体が白色繊維と」「カーボンブラック製の顔料を含んだ黒色系の色彩を呈する」「着色繊維の混合した鼠色系の色彩を有し」の記載は、不織布本体が、白色繊維とカーボンブラック製の顔料を含んだ黒色系の色彩を呈する着色繊維が混合することで、鼠の毛のような、青ばんだ淡い黒色、灰色、ねずいろに分類される色彩を有する意味であることは明らかである。
(2)「斑模様」の文言について
請求項1、5における「斑模様」の用語について、一般に、「斑」は、「種々の色または濃淡の入りまじっていること。また、そのもの。ぶち。むら」(甲7(上記1(1)イ))を意味し、「模様」は、「織物・染物・彫刻などの装飾に施す種々のかたち。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)を意味する。
すなわち、「斑模様」は、「織物・染物・彫刻などの装飾」に施される、種々の色または濃淡の入りまじっているもの、ぶち、むらのかたちを意味する。
そうすると、請求項1、5の「不織布本体の外表面に斑模様を形成している」の記載は、不織布本体に、種々の色または濃淡の入りまじっているもの、ぶち、むらのかたちが形成されている意味であること明らかである。
(3)無効理由2のまとめ
よって、本件発明1、5は、第三者の利益が不当に害されるほど不明確ということはできず、請求項1、5の記載を引用する本件発明2~4、6、7も同様に明確であるから、請求項1~7についての特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合しており、同法第36条第6項に規定する要件を満たしている。
4 無効理由3(実施可能要件違反)について
物の発明について実施可能要件を充足するためには、当業者が,明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があることを要し、また、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法の使用をすることができる程度の記載があることを要するものである。
以下、この観点に立って、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するか否かについて検討する。
(1)本件発明1~4について
発明の詳細な説明には、本件発明が解決しようとする課題(上記2(2)ウ)、当該課題を解決するための手段(上記2(2)エ)、本件発明の効果(上記2(2)オ)、本件発明を実施するための形態(上記2(2)カ)、実施例(上記2(2)キ)が記載されており、当業者は、これら記載に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明に係る土木工事用不織布を製造し、使用することが可能である。
(2)本件発明5~7について
発明の詳細な説明には、本件発明が解決しようとする課題(上記2(2)ウ)、当該課題を解決するための手段(上記2(2)エ)、本件発明の効果(上記2(2)オ)、本件発明を実施するための形態(上記2(2)カ)、実施例(上記2(2)キ)が記載されており、当業者は、これら記載に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明に係る土木工事用不織布の製造方法の使用をすることが可能である。
(3)請求人の主張について
請求人が主張する点(上記第5の1(3)ア、イ)について検討する。
発明の詳細な説明の【0023】、【0030】、【0047】、【0049】の記載から、白色繊維および着色繊維である黒色繊維が混合することで不織布全体が鼠色系の色彩を帯びるとともに、着色繊維である黒色繊維がところどころに密集して斑模様となることが理解できる。
なお、発明の詳細な説明の【0049】【表4】の実施例6、7の矛盾は、本件訂正により解消されている。
したがって、請求人の主張は採用できない。
(4)無効理由3のまとめ
よって、発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件発明1~7の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、請求項1~7についての特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合しており、同法第36条第4項に規定する要件を満たしている。
5 無効理由4(新規性欠如)、無効理由5(進歩性欠如)について
(1)引用発明について
ア 合成繊維不織布「ニードキーパー NK-800Z」の構成
請求人株式会社田中の製品である合成繊維不織布「ニードキーパー NK-800Z」を、以下「800Z製品」という。
(ア)甲10の1~10の3、甲11
本件特許出願前の平成27年11月13日(甲11に記載された「27日」は「13日」の誤記である。第1回口頭審理調書の請求人の陳述4。)に撮影された甲11那覇空港工事写真の別紙1の認定事項、同那覇空港工事すなわち公共工事の材料に係る不織布のサンプルが添付され口頭審理において原本確認を行った平成29年3月13日付け試験成績証明書の甲10の1、平成29年7月6日付け試験成績証明書の甲10の2、平成30年5月30日付け試験成績証明書の甲10の3(上記1(7)イ、(4)イ、(5)イ、(6)イ)を総合すると、800Z製品は、次の事項を有していることが理解できる。
「空港滑走路工事に用いられる合成繊維不織布であって、
合成繊維不織布のたての伸び率は、231、217、230、216%であり、
合成繊維不織布のよこの伸び率は、229、206、231、212%であり、
合成繊維不織布の表面は、全体として灰色を呈し、かつ灰色の濃淡が入り混じっている、
空港滑走路工事に用いられる合成繊維不織布。」
(イ)甲12
上記(ア)において参照した甲10の2の試験成績証明書に貼り付けられていた試料を分析した試験成績証明書である甲12の認定事項(上記1(8)イ)から、800Z製品は、次の事項を有していることが理解できる。
「ポリエステル100%であり、白色繊維と黒色繊維の比率が白色:92.5%、黒色:7.5%である、合成繊維不織布。」
(ウ)甲13
上記(ア)において参照した甲10の3の試験成績証明書に貼り付けられていた試料を分析した分析報告書である甲13の認定事項(上記1(9)イ)から、800Z製品は、次の事項を有していることが理解できる。
「合成繊維不織布から採取した黒色繊維について、繊維中に分散していた15~35nmの微粒子はカーボンブラックであり、繊維にはカーボンブラックが添加されている、合成繊維不織布。」
(エ)甲23
上記(ア)において参照した甲10の1の試験成績証明書に貼り付けられていた試料を撮影した甲23の別紙の写真の認定事項(上記1(14)イ)から、800Z製品は、次の事項を有していることが理解できる。
「合成繊維不織布の片の表面に垂直な面には、表面に垂直な方向に縦方向の線が表れる、合成繊維不織布。」
(オ)甲9
甲9の2ページの「◆ニードキーパーNK-800Zの用途」(上記1(3)ア(イ))には、800Z製品の用途が、「護岸、漁港等の護岸土砂吸出し防止」、「埋立護岸の土砂吸出し防止」であることが記載されている。
(カ)800Z製品に関する発明
上記(ア)~(エ)を総合して、800Z製品に関する発明(以下「引用発明1」という。)は次のとおりのものと認定する。
「空港滑走路工事に用いられる合成繊維不織布であって、
合成繊維不織布のたての伸び率は、231、217、230、216%であり、
合成繊維不織布のよこの伸び率は、229、206、231、212%であり、
合成繊維不織布の表面は、全体として灰色を呈し、かつ灰色の濃淡が入り混じっており、
ポリエステル100%であり、白色繊維と黒色繊維の比率が白色:92.5%、黒色:7.5%であり、
合成繊維不織布から採取した黒色繊維について、繊維中に分散していた15~35nmの微粒子はカーボンブラックであり、繊維にはカーボンブラックが添加されており、
合成繊維不織布の片の表面に垂直な面には、表面に垂直な方向に縦方向の線が表れる、空港滑走路工事に用いられる合成繊維不織布。」
(キ)800Z製品の製造方法に関する発明
800Z製品の構造等からみて、次の製造方法(以下「引用発明2」という。)により製造されたものと認定する。
「空港滑走路増設工事に用いられる合成繊維不織布の製造方法であって、
合成繊維不織布のたての伸び率は、231、217、230、216%であり、
合成繊維不織布のよこの伸び率は、229、206、231、212%であり、
合成繊維不織布の表面は、全体として灰色を呈し、かつ灰色の濃淡が入り混じっており、
ポリエステル100%であり、白色繊維と黒色繊維の比率が白色:92.5%、黒色:7.5%であり、
合成繊維不織布から採取した黒色繊維について、繊維中に分散していた15~35nmの微粒子はカーボンブラックであり、繊維にはカーボンブラックが添加されており、
合成繊維不織布の片の表面に垂直な面には、表面に垂直な方向に縦方向の線が表れる、空港滑走路増設工事に用いられる合成繊維不織布の製造方法。」
イ 引用発明1、2が本件特許出願前に公然知られた又は公然実施をされたものか否かについて
上記ア(ア)に示したとおり、引用発明1及び引用発明2に係る上記ア(カ)、(キ)の認定は、いずれも本件特許出願前である平成29年3月13日付け試験成績証明書(甲10の1)、平成29年7月6日付け試験成績証明書(甲10の2)、平成30年5月30日付け試験成績証明書(甲10の3)、平成27年11月13日に撮影された那覇空港の工事写真(甲11の別紙1)に基づくものである。
また、800Z製品は、本件特許出願前の平成27年11月13日、平成30年8月30日、平成29年3月24日に那覇空港第2滑走路増設工事で用いられていること(甲11)、また、甲10の1~10の3の試験成績証明書は、公共工事において工事現場ごとに施主からメーカーに対し求められるものであり(請求人上申書2ページ10~16行)、秘密にされるべきものではないことから、引用発明1は、本件特許出願前に公然知られた又は公然実施をされた発明といえる。
ウ 800Zの品質の連続性について
(ア)甲9の作成日について
令和4年7月8日付け証拠説明書(1)によると甲9の作成年月日は令和元年12月とされている。
このことは、甲9には「SP 19.12」と記載されており(上記1(3)イ(キ))、西暦の四桁は上二桁を省略することがよく行われており、当該記載が2019年(令和元年)12月を意味することと矛盾しない。
また、甲9の1ページの左下の写真(上記1(3)ア(ア))と、平成29年3月付けの「那覇空港滑走路増設工事における資料」である甲15の6ページの右上の「敷設完了状況写真」の写真(上記1(11)カ)とが同じ写真に基づくものであることが看取できる。ここで、甲14の1ページの「これまでの経緯」(上記1(10)ア)によると、那覇空港第2滑走路増設工事は平成25年に開始されていることから、当該写真は平成25年以降に撮影されたものであり、当該写真を用いた甲9が令和元年12月に作成されたことと矛盾しない。
(イ)甲9に記載された800Z製品の規格について
甲9には、800Z製品の規格について、厚さが8mm、幅が2m、質量が1350g/m2、タテの引張強さが900N/5cm、ヨコの引張強さが900N/5cm、タテの伸び率が200%、ヨコの伸び率が200%としている(上記1(3)イ(オ))。
(ウ)800Z製品の品質の連続性について
甲9に記載された800Z製品の上記規格は、平成21年9月15日までに作成された暫定設計書(甲22)に製品仕様の品質管理基準に、目付が1350g/m2以上、厚みが8mm以上、引張り強度がたて900N/5cm以上、よこ900N/5cm以上、伸度がたて200%以上、よこ200%以上と記載されている(上記1(13)ア(オ))ことと一致している。
また、甲10の1~10の3の試験成績証明書における試験結果(上記1(4)ア(ア)、(5)ア(ア)、(6)ア(ア))、甲11における引張試験(上記1(7)ア(イ))は、すべて当該規格で定められた数値を上回っている。
さらに、800Zについては、公共工事において工事現場ごとに施主からメーカーに対して、試験成績証明書(甲10の1~10の3)の作成が求められる(請求人上申書2ページ10~16行)など、品質に関する証明が求められている。
そうすると、800Z製品は、少なくとも平成21年9月から一定の品質が保たれており、甲10の1~10の3、甲11において試験された試料が異なっているとしても、いずれも800Z製品として管理された範囲内のものといえる。
エ 小括
以上のとおりであるから、引用発明1及び引用発明2は、本件特許出願前に公然知られた又は公然実施をされた発明である。
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「空港滑走路工事に用いられる」「合成繊維不織布」は、本件発明1の「土木工事用不織布」、「不織布」又は「不織布本体」に相当する。
引用発明1において「合成繊維不織布のたての伸び率は、231、217、230、216%であり、合成繊維不織布のよこの伸び率は、229、206、231、212%であ」ることは、本件発明1の「土木工事用不織布」が「たておよびよこの伸び率が150%以上である」ことに相当する。
引用発明1において「ポリエステル100%であり、白色繊維と黒色繊維の比率が白色:92.5%、黒色:7.5%であり、合成繊維不織布から採取した黒色繊維について、繊維中に分散していた15~35nmの微粒子はカーボンブラックであり、繊維にはカーボンブラックが添加されて」いることは、本件発明1において、「不織布の繊維原料が白色繊維と、前記白色繊維と同一繊維を特定色彩の顔料で着色した着色繊維との混合物からなり、前記白色繊維および着色繊維が化学繊維であり、前記着色繊維がカーボンブラック製の顔料を含んだ黒色系の色彩を呈」することに相当する。
甲7に記載されているように、一般に、「鼠色」は、「鼠の毛のような、青ばんだ淡い黒色。灰色。ねずいろ。」(上記1(1)ア)を意味するから、引用発明1において「ポリエステル100%であり、白色繊維と黒色繊維の比率が白色:92.5%、黒色:7.5%であり」、「合成繊維不織布の表面は、全体として灰色を呈」することは、本件発明1において「不織布本体が白色繊維と着色繊維の混合した鼠色系の色彩を有」することに相当する。
甲7に記載されているように、一般に、「斑」は、「種々の色または濃淡の入りまじっていること。また、そのもの。ぶち。むら」(上記1(1)イ)を意味し、「模様」は、「織物・染物・彫刻などの装飾に施す種々のかたち。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)を意味することから、引用発明1において、「合成繊維不織布の表面」は「灰色の濃淡が入り混じって」いることは、本件発明1において、「不織布本体の外表面に斑模様を形成している」ことに相当する。
そうすると、本件発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点1]
「たておよびよこの伸び率が150%以上である土木工事用不織布であって、
不織布の繊維原料が白色繊維と、
前記白色繊維と同一繊維を特定色彩の顔料で着色した着色繊維との混合物からなり、
前記白色繊維および着色繊維が化学繊維であり、
前記着色繊維がカーボンブラック製の顔料を含んだ黒色系の色彩を呈し、
不織布本体が白色繊維と着色繊維の混合した鼠色系の色彩を有し、かつ不織布本体の外表面に斑模様を形成している、
土木工事用不織布。」
[相違点1]
本件発明1は、ニードルパンチ方式で製造されたものであるのに対して、引用発明1は「合成繊維不織布の片の表面に垂直な面には、表面に垂直な方向に縦方向の線が表れる」ものの、そのような方式で製造されたものであるか不明な点。
イ 新規性についての判断
ニードルパンチ法は、厚物として土木資材に用いられるウェブの機械的結合方法であって、ニードルをウェブ中に貫通させるものであって(甲21の38ページ6~13行(上記1(12)イ))、ニードルパンチにより結合された不織布は、表面に垂直な方向に穿孔され、ニードルパンチの跡が残ることは技術常識である。
「空港滑走路増設工事に用いられる合成繊維不織布」である引用発明1は、土木資材であること、また、「合成繊維不織布の片の表面に垂直な面には、表面に垂直な方向に縦方向の線が表れ」ていることから、引用発明1はニードルパンチ方式で製造されたものである蓋然性が高い。
したがって、本件発明1は、引用発明1である。
ウ 進歩性についての判断
厚物として土木資材に用いられるウェブの機械的結合方法としてニードルパンチ法は周知であり(甲21の38ページ6~9行(上記1(12)イ))、引用発明1における結合方法として当該周知のニードルパンチ法を用いて、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。
したがって、本件発明1は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明できたものある。
(3)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と引用発明1とを対比すると、一致点1において一致し、相違点1に加え、次の相違点2において相違する。
[相違点2]
黒色繊維の混合比率について、本件発明2は、「前記着色繊維の混合量が重量比で10~90%の範囲である」のに対して、引用発明1は、「白色繊維と黒色繊維の比率が白色:92.5%、黒色:7.5%であ」る点。
イ 判断
上記1(17)エのとおり、合成樹脂製の埋立用防砂シート、樹脂フィラメントからなる網状構造体と繊維シートとが一体化されてなる積層シートである透水性土木シートや、不織布からなり港湾工事などの敷設に用いられる土木用不織シートにおいて、カーボンブラックを耐候性、耐摩耗性及び遮光性の向上、光の反射による作業者への作業上の障害の防止、景観を損なうことの防止等を目的として、所望の効果が発揮できる量で合成樹脂や繊維に添加することは、本件出願日の時点における技術常識であったと認められる。
その上で、上記1(12)ウのとおり、このようなシートは、白色から灰色、濃灰色、黒色など様々なものが見られるところであり、例えば、NK-500Sの白色繊維と黒色繊維との比率(JIS L 1030-2に定められた顕微鏡法により測定したもの)は白色が76.1%、黒色が23.9%である(上記1(13)イ)。してみれば、このような土木工事用不織布において、黒色繊維の混合比率が多様なものであることは当業者が認識していた事項であり、引用発明1において、カーボンブラックの配合量を変更することは、耐候性、耐摩耗性、遮光性、光の反射等を考慮して、当業者が適宜行うべき設計的事項である。
そして、本件明細書【0045】~【0052】(前記2(2)カ、キ)では、実施例1~7と比較例1、2とを比較しているが、当該比較例は白色繊維のみ又は黒色繊維のみであり、白色繊維と黒色繊維の混合比率を、10~90%の範囲とすることによる効果は明らかでない。そうすると、本件発明2において、黒色繊維の混合比率を10~90%の範囲としたことによる臨界的意義ないし格別な効果について、本件明細書の記載を参酌しても、特に見出すことはできないし、技術常識からみても、そのようなものを把握することはできない。
以上のとおりであるから、本件発明2は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明できたものある。
(4)本件発明3について
引用発明1において、「合成繊維不織布」が「ポリエステル100%」であることは、本件発明3において、「前記白色繊維および着色繊維がポリエステル系繊維である」ことに相当する。
そうすると、本件発明3と引用発明1との相違点は相違点1、2のみであり、その判断は上記(2)イ、ウ及び(3)イのとおりである。
したがって、本件発明3は、引用発明1であるか、又は引用発明1に基いて当業者が容易に発明できたものある。
(5)本件発明4について
引用発明1の「用途」は、「護岸、漁港等の護岸土砂吸出し防止」、「埋立護岸の土砂吸出し防止」である(上記5(1)ア(オ))。
そうすると、本件発明3と引用発明1との相違点は相違点1、2のみであり、その判断は上記(2)イ、ウ及び(3)イのとおりである。
仮に、引用発明1が防砂シートでないとしても、合成繊維不織布を防砂シートに用いることは例示するまでもなく周知であり、800Z製品を防砂シートとすることに格別な困難性はない。
したがって、本件発明4は、引用発明1であるか、又は引用発明1に基いて当業者が容易に発明できたものある。
(6)本件発明5について
ア 対比
本件発明5と引用発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点2]
「たておよびよこの伸び率が150%以上である土木工事用不織布の製造方法であって、
不織布の繊維原料に白色繊維と、
前記白色繊維と同一繊維を特定色彩の顔料で着色した着色繊維とを使用し、
前記白色繊維および着色繊維が化学繊維であり、
前記着色繊維がカーボンブラック製の顔料を含んだ黒色系の色彩を呈し、
不織布本体が白色繊維と着色繊維の混合した鼠色系の色彩を有し、かつ不織布本体の外表面に斑模様を形成した、
土木工事用不織布の製造方法。」
[相違点3]
本件発明5は、ニードルパンチ方式で製造するものであり、前記白色繊維および着色繊維を混練した後にニードルパンチで交絡させて不織布本体を製造するのに対して、引用発明2はそのようなものであるか不明である点。
イ 判断
相違点3についての判断は、相違点1についての判断と同様である。
したがって、本件発明5は、引用発明2であるか、又は引用発明2に基いて当業者が容易に発明できたものある。
(7)本件発明6について
ア 対比
本件発明6と引用発明2とを対比すると、一致点2において一致し、相違点3に加え、次の相違点4において相違する。
[相違点4]
黒色繊維の混合比率について、本件発明6は、「前記着色繊維の混合量が重量比で10~90%の範囲である」のに対して、引用発明2は、「白色繊維と黒色繊維の比率が白色:92.5%、黒色:7.5%であ」る点。
イ 判断
相違点4に対する判断は、上記(3)イのとおりである。
したがって、本件発明6は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明できたものである。
(8)本件発明7について
本件発明7についての判断は、本件発明3についての判断と同様である。
したがって、本件発明7は、引用発明2であるか、又は引用発明2に基いて当業者が容易に発明できたものある。
第8 むすび
以上のとおり、本件発明1、3~5、7についての特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、本件発明1~7についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第64条の規定により、被請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-800065