特許異議申立
2019-701049
電子レンジ加熱食品用容器の製法
- 審判番号
- 2019-701049
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-052726
- 登録番号
- 6538225
- 請求日
- 2019年12月23日
- 審決日
- 2021年03月18日
- 公報発行日
- 2022年06月24日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】アテナ工業株式会社
- 【権利者代理人】後藤 憲秋
- 【権利者代理人】加藤 大輝
- 【異議申立人】豊田 敦子
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 茂夫
- 審判官 久保 克彦
- 審判官 藤井 眞吾
- 分類
- P1651.121-ZAA(B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第126条第5項、特許法第113条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6538225号発明「電子レンジ加熱食品用容器の製法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6538225号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正することを認める。
特許第6538225号の請求項1に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許6538225号の請求項1に係る特許についての出願は、平成29年2月16日(優先権主張平成28年3月14日 日本国)を出願日とする特願2017-27018号の一部を、平成30年3月20日に新たな特許出願(特願2018-52726号)としたものであって、令和元年6月14日にその特許権の設定登録がされ、令和元年7月3日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立て以降の経緯は、次のとおりである。
令和元年12月23日 :特許異議申立人豊田敦子(以下「申立人」という。)により請求項1に係る特許に対する特許異議の申立て
令和2年3月27日付け :取消理由通知
令和2年5月20日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和2年6月26日 :申立人による意見書の提出
令和2年9月18日付け :取消理由通知(決定の予告)
令和2年11月18日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和2年12月15日 :申立人による上申書の提出
なお、特許法第120条の5第7項の規定により、令和2年5月20日に提出された訂正請求書に係る訂正の請求は、取り下げられたものとみなす。
また、令和2年5月20日の訂正の請求に対して、申立人に訂正の請求があった旨の通知を送付して意見書を提出する機会を既に与えており、令和2年11月18日に提出された訂正請求書による訂正の請求については、特許法第120条の5第5項に規定する特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないとされる特別な事情にあたると認められるため、申立人に、再度、意見書を提出する機会は与えなかった。
第2 訂正の適否について
1. 訂正の内容
上記令和2年11月18日提出の訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1) 訂正事項1
本件訂正前の請求項1の「前記容器本体部内に収容された食品から発生する水蒸気を外部に排気する排気部を」という記載を、「前記容器本体部内に収容された食品から発生する水蒸気を外部に排気するとともに異物混入を抑制する排気部を」と訂正する。
(2) 訂正事項2
本件訂正前の請求項1の「当該排気部を被覆又は包皮する部材を備えることなく形成した蓋体部を得るに際して」という記載を、「異物混入防止のための、当該排気部を被覆又は包皮する部材を備えることなく形成した蓋体部を得るに際して」と訂正する。
(3) 訂正事項3
本件訂正前の請求項1の「前記蓋面部にレーザー光線の照射をオンして準備時間(t3)の経過により貫通孔を形成し」という記載を、「前記蓋体部の蓋面部にレーザー光線の照射をオンして準備時間(t3)の経過により貫通孔を形成し」と訂正する。
(4) 訂正事項4
本件訂正前の請求項1の「幅0.15~1.0mmの排気長孔を複数穿設して排気長孔群を形成する」という記載を、「幅0.15~1.0mmの排気長孔を複数穿設して排気長孔群からなる排気部を形成する」と訂正する。
(5) 訂正事項5
本件訂正前の明細書の段落【0010】の「すなわち、請求項1の発明は、電子レンジ加熱のための食品を収容する容器本体部と、前記容器本体部の開口部と嵌合する合成樹脂シートからなる蓋体部とを備えた蓋嵌合容器において、前記容器本体部内に収容された食品から発生する水蒸気を外部に排気する排気部を、当該排気部を被覆又は包皮する部材を備えることなく形成した蓋体部を得るに際して、前記蓋面部にレーザー光線の照射をオンして準備時間(t3)の経過により貫通孔を形成しその後の作業時間(t4)の経過により所定の長穴形状にまで拡張した後にレーザー光線の照射をオフにすることによって幅0.15~1.0mmの排気長孔を複数穿設して排気長孔群を形成することを特徴とする電子レンジ加熱食品用容器の製法に係る」
という記載を、「すなわち、請求項1の発明は、電子レンジ加熱のための食品を収容する容器本体部と、前記容器本体部の開口部と嵌合する合成樹脂シートからなる蓋体部とを備えた蓋嵌合容器において、前記容器本体部内に収容された食品から発生する水蒸気を外部に排気するとともに異物混入を抑制する排気部を、異物混入防止のための、当該排気部を被覆又は包皮する部材を備えることなく形成した蓋体部を得るに際して、前記蓋体部の蓋面部にレーザー光線の照射をオンして準備時間(t3)の経過により貫通孔を形成しその後の作業時間(t4)の経過により所定の長穴形状にまで拡張した後にレーザー光線の照射をオフにすることによって幅0.15~1.0mmの排気長孔を複数穿設して排気長孔群からなる排気部を形成することを特徴とする電子レンジ加熱食品用容器の製法に係る」と訂正する。
(6) 訂正事項6
本件訂正前の明細書の段落【0011】の「前記容器本体部内に収容された食品から発生する水蒸気を外部に排気する排気部を、当該排気部を被覆又は包皮する部材を備えることなく形成した蓋体部を得るに際して、前記蓋面部にレーザー光線の照射をオンして準備時間(t3)の経過により貫通孔を形成しその後の作業時間(t4)の経過により所定の長穴形状にまで拡張した後にレーザー光線の照射をオフにすることによって幅0.15~1.0mmの排気長孔を複数穿設して排気長孔群を形成する」という記載を、「前記容器本体部内に収容された食品から発生する水蒸気を外部に排気するとともに異物混入を抑制する排気部を、異物混入防止のための、当該排気部を被覆又は包皮する部材を備えることなく形成した蓋体部を得るに際して、前記蓋体部の蓋面部にレーザー光線の照射をオンして準備時間(t3)の経過により貫通孔を形成しその後の作業時間(t4)の経過により所定の長穴形状にまで拡張した後にレーザー光線の照射をオフにすることによって幅0.15~1.0mmの排気長孔を複数穿設して排気長孔群からなる排気部を形成する」と訂正する。
2. 訂正の適否についての判断
(1) 訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の「水蒸気を外部に排気する排気部」を、「異物混入を抑制する」という技術的意義を奏するものに限定するための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
本件特許明細書の「容器の蓋体部に微細な長孔の排気部を設けた構造が有効であることを見出した。しかも、微細な長孔であることから、破損や異物混入への耐性も良好であることが判明した。」(【0008】)という記載から、新規事項を追加するものではない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことは明らかである。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の「当該排気長孔群を被覆又は包皮する部材」が、「異物混入防止のための」ものである点を付加し、限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
本件特許明細書の「U字状またはV字状の切れ込みによる舌片状の開口部の排気効率は良好である。ところが、水蒸気の排気が良好ということは、それだけ、舌片状の開口部からの異物侵入のおそれも増す。そのために、・・・舌片状の開口部を被覆するためのフィルム部材も別途必要により被せられる。」(【0005】)、及び、「本発明の食品用容器(電子レンジ加熱食品用容器)における排気長孔の大きさを勘案すると、極めて微細であることから昆虫等の異物侵入を有効に抑制できる。そのため、本発明の食品用容器では、従前の容器に見られた蓋体部の排気を担う穴を被覆したり包皮したりするフィルム等の部材は、省略可能となる。」(【0040】)という記載から、新規事項を追加するものではない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことは明らかである。
(3) 訂正事項3について
訂正事項3は、本件訂正前の「前記蓋面部」という記載箇所の前に「蓋面部」の記載がなく、この点本件請求項1に係る発明を明確にするための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
本件特許明細書の「蓋体部10の蓋面部11に排気長孔群20を構成する個々の排気長孔21に際し、蓋面部11にレーザー光線が照射され、同蓋面部11に排気長孔21が穿設される。」(【0023】)という記載から、新規事項を追加するものではない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことは明らかである。
(4) 訂正事項4について
訂正事項4は、本件訂正前の「排気部」と「排気長孔群」との関係を明確にするための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
本件特許明細書の「蓋体部10の蓋面部11には、排気長孔21が形成されている。図示のように、排気長孔21は複数個備えられており、これらの排気長孔21が複数個集まって排気長孔群20からなる排気部が形成されている。」(【0014】)という記載から、新規事項を追加するものではない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことは明らかである。
(5) 訂正事項5について
訂正事項5は、本件特許明細書の段落【0010】の記載を、上記訂正事項1~4に係る訂正内容と整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
上記(1)~(4)に示したのと同様に、訂正事項5は、新規事項を追加するものではない。また、特許請求の範囲を拡張ないし変更するものではないことは明らかである。
(6) 訂正事項6について
訂正事項6は、本件特許明細書の段落【0011】の記載を、上記訂正事項1~4に係る訂正内容と整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
上記(1)~(4)に示したのと同様に、訂正事項6は、新規事項を追加するものではない。また、特許請求の範囲を拡張ないし変更するものではないことは明らかである。
3. 訂正の適否についての小括
上記2.に示したとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に規定する事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、本件訂正後の請求項1及び明細書について訂正することを認める。
第3 特許異議の申立てについて
1. 本件発明
上記の通り本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
電子レンジ加熱のための食品を収容する容器本体部と、前記容器本体部の開口部と嵌合する合成樹脂シートからなる蓋体部とを備えた蓋嵌合容器において、
前記容器本体部内に収容された食品から発生する水蒸気を外部に排気するとともに異物混入を抑制する排気部を、異物混入防止のための、当該排気部を被覆又は包皮する部材を備えることなく形成した蓋体部を得るに際して、 前記蓋体部の蓋面部にレーザー光線の照射をオンして準備時間(t3)の経過により貫通孔を形成しその後の作業時間(t4)の経過により所定の長穴形状にまで拡張した後にレーザー光線の照射をオフにすることによって
幅0.15~1.0mmの排気長孔を複数穿設して排気長孔群からなる排気部を形成する
ことを特徴とする電子レンジ加熱食品用容器の製法。」
2. 令和2年9月18日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要
当審が令和2年9月18日付けで、特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は次のとおりである。
【理由1】(進歩性) 本件特許の本件発明1は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引 用 文 献 一 覧>
1.特開平3-114418号公報
2.実願平2-106124号(実開平4-62684号)のマイクロフィルム
3.特開2004-10156号公報
4.特開2014-91542号公報
5.特開2004-283871号公報
(1) 本件発明1について
本件発明1は、引用発明1、引用文献5に記載された事項及び従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 当審の判断
1. 引用文献1について
引用文献1には、次の記載がある。
(1) 「(1) マイクロ波透過部材からなり上方に開放部を有する容器本体、該容器本体の開放部を覆い容器本体内部を略密閉状態となし得る小孔付の蓋であって、該小孔が該開放部を覆う位置に存在し、該小孔の面積の総計が該開放部面積の0.005~1%に相当し、かつマイクロ波透過部材からなる蓋とから構成された容器の内部に、吸水することによって復元し、喫食状態となる固形即席食品を収容し、該固形食品の吸水量の100~155重量%の水の存在下に、電子レンジで加熱調理するための即席食品入り容器。」(1ページ左欄4~14行)
(2) 「〔問題点を解決するための手段〕
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究した結果、以下のような知見を得た。
1) 容器内部を略密閉状態となし得る容器に、固形即席食品と水とを収容し、これを電子レンジで加熱することによって、容器内部が強い沸騰状態となって沸騰水面が即席食品の上部にまでおよび、即席食品を極めて短時間に、完全かつ均一に復元することができること。
2) また、上記の作用は、容器に収容する水の量が比較的少量であっても達成されること。従って、容器に収容する水の量を、即席食品を喫食状態に復元するに充分な量とすることによって、水は加熱中に即席食品にほぼ完全に吸収され、加熱後に水を捨てる必要がないこと。
3) また、蓋の構造は、加熱時に容器内圧が極端に高くなって容器が破裂することを防止し、かつ、容器内圧を調圧するための小孔を容器の蓋に設けることが効果的であって、この際、小孔の総面積を、容器本体の上方開放部面積の特定の割合とすること。
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。すなわち、本発明は、マイクロ波透過部材からなり上方に開放部を有する容器本体、該容器本体の開放部を覆い容器本体内部を略密閉状態となし得る小孔付の蓋であって、該小孔が該開放部を覆う位置に存在し、該小孔の面積の総計が該開放部面積の0.005~1%に相当し、かつマイクロ波透過部材からなる蓋とから構成された容器の内部に、吸水することによって復元し、喫食状態となる固形即席食品を収容し、該固形食品の吸水量の100~155重量%の水の存在下に、電子レンジで加熱調理するための即席食品入り容器を提供する。
本発明で使用する容器は、内容物を出し入れするために上方に開放部を有した容器本体と、上記開放部を覆い容器内部を略密閉状態となし得る小孔付の蓋とから構成される。容器本体及び蓋は、マイクロ波を透過し、かつ電子レンジの加熱に耐えうる耐熱性材料でつくる。マイクロ波を透過する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキサイド、ポリエステル、ナイロン、紙及びこれらのラミネート物等が好適に使用される。」(2ページ右上欄13行~右下欄17行)
(3) 「・・・そして、容器本体と蓋との接合部の構造は、電子レンジによる加熱の際に、内容物の噴きこぼれを防止し、容器内部に蒸気が充満されるように、容器内部を略密閉状態となし得る構造とする必要がある。上記の構造としては、例えば、ネジ込み式の螺合構造、着脱自存な嵌着構造或いは上記接合部を取り囲む位置に熱収縮フィルムを設け、これが電子レンジでの加熱の際に熱収縮して蓋を容器本体に固定する構造等を採用することができる。
さらに、蓋には、容器開放部を覆う位置に、小孔を設ける。この際、小孔の大きさを容器本体の上方開放部面積の0.005~1%、好ましくは、0.2~0.8%とすることが望ましい。
このように蓋に小孔を設けるのは、本発明の容器が調理時に、電子レンジにより強く加熱された場合、発生する水蒸気により容器内部の圧力が異常に上昇するのを回避するためであるが、一方、この小孔が一定の値を越えて大きい場合、発生した蒸気が容器外に揮散して容器内に蒸気が充満した雰囲気を達成できず、食品の加熱に蒸気が十分に作用しないため、特に食品の上部が乾燥状態となって良好に復元されず、加熱復元は不均一で不十分となる。
そこで、蓋に前記のような適切な大きさの小孔を開けることにより、容器内の異常な圧力の上昇を防ぐとともに、容器内の蒸気密度及び雰囲気温度を高く保ち、これにより即席食品を良好かつ短時間で復元調理できるようにしたのである。」(3ページ左上欄5行~右上欄13行)
(4) 「前記の固形即席食品を内部に収容した本発明の即席食品入り容器は、該食品の吸水量の100~155重量%(以下%と略称する。)の水の存在下で電子レンジを用いて加熱調理するために用いるものである。ここで、水の代わりに湯を用いることも、又調味液を用いることもできる。そして、水の量は、即席食品の吸水量の100~155%、好ましくは100~132%とされる。ここでいう水の量には、調味液の量も含まれる。」(3ページ右下欄11~19行)
(5) 「本発明の食品入り容器をこのような状態で、電子レンジを用いて加熱すると、蓋の小孔により異常な圧力の上昇は防止され、一方、容器は略密閉状態となっているので、容器内部で水の沸騰水面が即席食品の上部にまでおよぶような強い沸騰状態となり、また容器内に蒸気が充分に充満して、即席食品を短時間で、完全かつ均一に復元することができる。つまり、容器内部に蒸気が充満するので、加熱効率が高く、加熱の後半で、即席食品の吸水が進行し、沸騰水面が下がってきても即席食品の上部を乾燥させずに、即席食品を均一に復元することができるのである。」(4ページ左上欄15行~右上欄6行)
(6) 「実施例1
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。第1図は本発明の即席食品入り容器1の断面図を示すものであり、容器本体2とその上方開方部を覆う蓋3とから構成される容器内に乾燥即席食品4が収容されている。
容器本体2及び蓋3は、容器の内部側がポリプロピレンで外側が紙である構造の0.5mmのラミネート材で形成されている。容器本体2の上方開放部の径が120mm、内部底面の径が105mm、高さが64mmの略逆円錐台形のものである。また、容器本体2の底部には、電子レンジテーブル5に対して内容物を上方に保持する(h1=9mm)ために部材6が容器本体2に一体的に形成されている。蓋3は、外径122mm、内径が121mmの円形板7と、その上部周縁から容器本体2の側部に張り出した部分8(この部分の上下方向の距離h2は12mmである)から構成されている。また、蓋3には直径3.2mmの円形の開孔9が、蓋3の中央を中心として放射状に8個設けられている(この場合の開孔率は、容器本体2の上方開放部の面積の0.57%である)。
容器本体2の上部周縁の径と蓋3の円形板7の内径がほぼ等しいことによって、図示の状態に緊合され、容器内部が密閉される。」(5ページ右上欄12行~左下欄16行)
(7) 「実施例2
上方開放部が11cm×14cm、容器内部の深さが4cmの直方体の合成樹脂容器(内容積約616cm3)に、即席食品として10cm×13cm×2.5cmの焼きそば用即席麺の麺塊80g及び焼きそば用ソース170g(即席麺の吸水量の約120重量%)を収容し、容器の上方開放部に、約0.8cm2(開孔率0.52%)の小孔を有する合成樹脂性の蓋で覆い、電子レンジに入れて出力500Wで5分間加熱した。尚、蓋はすべて周辺部に凹を有し、上部凹部が容器上縁に形成された凸部に嵌合されて容器に取り付けられ、上記取り付け部分において容器が密閉される構造である。なお、開孔率とは、蓋に開けられた小孔の面積が容器本体の開放部の面積に対して占める割合をいう。
上記即席食品入り容器を電子レンジで加熱調理した場合、加熱中沸騰水面が継続して麺の上部にまで至り、容器内に蒸気が充満して激しい沸騰状態となるが、蓋は外れない。」(6ページ左上欄7行~右上欄5行)
(8) 第1図「
[図:0001385111000001.jpg]
」
以上の摘記事項(1)~(7)及び(8)の図示を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「電子レンジ加熱のための食品を収容する容器本体(2)と、前記容器本体(2)の開口部と嵌合する合成樹脂シートからなる蓋(3)とを備えた容器(1)において、
前記蓋(3)の蓋面部に、調理時に電子レンジにより強く加熱された場合、発生する水蒸気により容器内部の圧力が異常に上昇するのを回避するための小孔を形成する、
電子レンジ加熱食品用容器の製法。」
2. 対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「電子レンジ加熱のための食品」、「容器本体(2)」、「蓋(3)」、「容器(1)」は、本件発明1の「電子レンジ加熱のための食品」、「容器本体部」、「蓋体部」、「蓋嵌合容器」にそれぞれ相当する。
引用発明の「蓋(3)の蓋面部に、調理時に電子レンジにより強く加熱された場合、発生する水蒸気により容器内部の圧力が異常に上昇するのを回避するための小孔を形成する」ことは、本件発明1の「容器本体部内に収容された食品から発生する水蒸気を外部に排気するとともに異物混入を抑制する排気部を、異物混入防止のための、当該排気部を被覆又は包皮する部材を備えることなく形成した蓋体部を得るに際して、
前記蓋体部の蓋面部にレーザー光線の照射をオンして準備時間(t3)の経過により貫通孔を形成しその後の作業時間(t4)の経過により所定の長穴形状にまで拡張した後にレーザー光線の照射をオフにすることによって幅0.15~1.0mmの排気長孔を複数穿設して排気長孔群からなる排気部を形成する」ことと、「蓋体部の蓋面部には、容器本体部内に収容された食品から発生する水蒸気を外部に排気する孔を形成する」製法である限りで一致する。
そうすると、本件発明1と引用発明は、以下の<一致点>で一致し、<相違点1>及び<相違点2>で相違する。
<一致点>
「電子レンジ加熱のための食品を収容する容器本体部と、前記容器本体部の開口部と嵌合する合成樹脂シートからなる蓋体部とを備えた蓋嵌合容器において、
前記蓋体部の蓋面部には、前記容器本体部内に収容された食品から発生する水蒸気を外部に排気する孔を形成する、電子レンジ加熱食品用容器の製法。」
<相違点1>
本件発明1は、「蓋体部」を得るに際して、「前記蓋体部の蓋面部にレーザー光線の照射をオンして準備時間(t3)の経過により貫通孔を形成しその後の作業時間(t4)の経過により所定の長穴形状にまで拡張した後にレーザー光線の照射をオフにすることによって
幅0.15~1.0mmの排気長孔を複数穿設して排気長孔群からなる排気部を形成する」のに対し、
引用発明は、「蓋」の「蓋面部」の「小孔」が、複数穿設することで「群」からなる「排気部」を形成する「長孔」であるとは特定されていないし、どのように形成するかも特定されていない点。
<相違点2>
本件発明1の蓋体部は、「容器本体部内に収容された食品から発生する水蒸気を外部に排気するとともに異物混入を抑制する排気部を、異物混入防止のための、当該排気部を被覆又は包皮する部材を備えることなく形成した」のに対し、
引用発明の蓋は、「調理時に電子レンジにより強く加熱された場合、発生する水蒸気により容器内部の圧力が異常に上昇することを回避するための小孔を形成する」ものではあるものの、この小孔が異物混入を抑制するものであるか否かや、この小孔を被覆又は包皮する部材を備えるか否かは特定されていない点。
3. 相違点についての判断
(1) <相違点1>について
ア. 引用文献1の「・・・蓋には、容器開放部を覆う位置に、小孔を設ける。この際、小孔の大きさを容器本体の上方開放部面積の0.005~1%、好ましくは、0.2~0.8%とすることが望ましい。
このように蓋に小孔を設けるのは、本発明の容器が調理時に、電子レンジにより強く加熱された場合、発生する水蒸気により容器内部の圧力が異常に上昇するのを回避するためであるが、一方、この小孔が一定の値を超えて大きい場合、発生した蒸気が容器外に揮散して容器内に蒸気が充満した雰囲気を達成できず、食品の加熱に蒸気が十分に作用しないため、特に食品の上部が乾燥状態となって、良好に復元されず、加熱復元は不均一で不十分となる。」(3ページ左上欄15行~右上欄8行)という記載からみて、引用発明の「小孔」は、「水蒸気により容器内部の圧力が異常に上昇するのを回避するため」に、「小孔の大きさを容器本体の上方開放部面積の0.005%」以上、「好ましくは、0.2%」以上とする一方、「小孔が一定の値を超えて大きい場合、発生した蒸気が容器外に揮散して容器内に蒸気が充満した雰囲気を達成できず、食品の加熱に蒸気が十分に作用しないため、特に食品の上部が乾燥状態となって、良好に復元されず、加熱復元は不均一で不十分となる」から、小孔の大きさを容器本体の上方開放部面積の0.8%以下と、するものである。
イ. ここで、引用発明の「小孔」の形状について、引用文献1には「円形」とする実施例が記載されているものの、引用文献1には、「小孔」の形状が「円形」であることが必須である旨の記載や示唆もない。
また、例えば引用文献3には、
「【0005】
・・・本発明においては、2重包装の中の電子レンジ及び/又は蒸気加熱及び/又は熱湯による加熱に対応する食品の包装材料に、直径1μ~5cmの円形、多角形又は星形の孔及び/又は「短径1μ~5cmの楕円形の孔及び/又は一辺の長さが1μ~5cmの正方形、矩形、三角形又は各種変形型の孔」を全面もしくは適宜の箇所に設けることによって、これら孔から蒸気を逃がし、暴発を防ぐことができるものである。
【0006】
一般に、電子レンジ及び/又は蒸気加熱及び/又は熱湯による加熱に対応する食品の包装材料は、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの単層、二層、三層のフィルムからなるもので、・・・底部と蓋部とに成形し、底部に食品ををつめ、蓋部を合わせて周囲を同一樹脂部で熔着して電子レンジ及び/又は蒸気加熱及び/又は熱湯による加熱に対応する食品が包装されている。
【0007】
本発明における各種の孔は、底部にも蓋部にも設けることができる。各種の直径1μ~5cmの孔は、基本的にはレーザー光線によって、あけることができ、・・・
【0008】
本発明においては、直径1μ~5cmの円形、多角形又は星形の孔及び/又は短径1μ~5cmの楕円形の孔及び/又は一辺の長さ1μ~5cmの正方形、矩形、三角形又は各種変形型の孔が均一又はごちゃまぜに設けられたり、また直径1cm~5cmの孔であれば蓋に1~5個位設けたり、蓋に1mm~1cmの孔をごちゃまぜに設けることができる。・・・」という記載があり、電子レンジで加熱する包装材料に蒸気を逃がすために形成する「孔」の形状を、「楕円形」や「矩形」とすることは、周知の事項である。
また、上記引用文献3に記載された「短径1μ~5cmの楕円形の孔及び/又は一辺の長さが1μ~5cmの正方形、矩形、三角形又は各種変形型の孔」を「1~5個位設けたり」(段落【0008】)という記載、及び、引用文献4の【図13】に図示された「平坦面の上面部位に長孔状の蒸気抜き部を複数並べた配置」から、蒸気を抜くための「孔」を、長孔とし、「群」として配置することも、周知の事項である。
引用文献4、【図13】
「
[図:0001385111000002.jpg]
」
そうすると、引用発明における「小孔」の形状や配置の決定は、孔から蒸気を逃がし暴発を防ぐ上で、当業者が適宜行う設計的事項であり、その形状を「長孔」とし、「長孔」の「群」、すなわち「長孔群」からなる「排気部」とすることは、蒸気を抜くための「孔」として、周知の形状を採用したに過ぎない。
ウ. さらに「長孔」の幅を0.15~1mmとすることも、上記引用文献3の、「短径1μm~5cmの楕円形の孔」、「一辺の長さが1μ~5cm」の矩形の孔との記載からみて、蒸気を逃し、暴発を防ぐために、当業者が適宜採用する数値範囲にすぎない。
その際、引用発明は「即席焼きそばや即席マカロニ等の固形即席食品を、電子レンジで調理する」(引用文献1の2ページ左上欄3~4行)ための容器、すなわち食品を収納する容器であるから、当該「小孔」が大きすぎると、当該「小孔」をとおして、虫が侵入するといった不具合が生じることは当業者にとって自明である。そして食品を収納する容器に形成する孔の大きさを1mm以下の大きさとすると、容器内への異物の混入が抑制できることは、例えば、引用文献2(5ページ3~6行)に示されたように、従来周知の事項である。
エ. また、引用文献5には、プラスチック構造体に、微細孔の形成によって、フィルター機能を発揮せしめる(段落【0055】)ために、当該プラスチック構造体に対して、「長径と短径とを有するような形状を有している場合、その径としては、短径が200μm以下」(段落【0020】)の微小孔部を、パルス状のレーザーにて形成することが記載されている。 ここで、レーザー照射によりプラスチックを溶融させて貫通させた後、次のライン8の形成に移るために、レーザー照射をオフにすることは明らかであり、また、引用文献5のレーザー加工は、レーザー照射によりプラスチックを溶融させて加工する以上、貫通するまでに、所定の時間、レーザー照射しさらに、目標とする形状に加工が完了するまでにも、所定の時間、レーザー照射を行う加工であることも明らかである。
引用発明の容器の蓋も、引用文献5のプラスチック構造体も、ともに合成樹脂のシートを加工することで共通するから、引用発明に引用文献5記載の上記レーザー加工についての事項を採用して、上記<相違点1>で特定される長孔群を形成することに格別の困難性は認められない。
オ. 以上のとおりであるから、引用発明において、上記<相違点1>に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。
(2) <相違点2>について
引用文献1には、引用発明の蓋が、小孔を被覆又は包皮する部材を備えることの記載はないし、示唆する記載もない。そして、上記(1)ウ.に示したように、食品を収納する容器に形成する孔の大きさを1mm以下の大きさとすると、容器内への異物の混入が抑制できることは、従来周知の事項であることを踏まえると、「小孔」を備えた引用発明は、「異物混入防止のため」の「排気部を被覆又は包皮する部材」を備えずとも、容器内への異物の混入が抑制できる作用を奏するもの、すなわち「小孔」は「水蒸気を外部に排気するとともに異物混入を抑制するもの」であるといえる。
よって、上記<相違点2>は、実質的なものではない。
4. 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、引用発明、引用文献5に記載された事項及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。
第5 令和2年11月18日に特許権者が提出した意見書について
1. 特許権者の主張
令和2年11月18日に特許権者は意見書を提出して、大要、以下の点主張している。
(1) 特許権者は・・・「電子レンジ蒸気孔」の構成によって、当該蒸気孔の「蒸気排気機能」を妨げることなく「異物混入抑制機能」を両立して実現するという「課題」については、解決すべき技術的課題の斬新性が認められるものであることを主張する。(4ページ7~13行)
(2) 「このように、本件発明1にあっては、
(α)<<製品>>である「電子レンジ加熱食品用容器」についての、「良好な水蒸気排気」(を確保する)と同時に「封止性能改善、異物混入抑制」を実現し、併せて
(β)<<方法>>である「レーザー加工による製法」についての「穿孔作業時間が短縮でき作業効率が向上」するという効果、さらに
(γ)<<製品の製法>>である「電子レンジ加熱食品用容器」のレーザー加工による製法」として、「排気長孔からなる排気部を形成した蓋体部」を有する「電子レンジ加熱食品用容器の製法」に特化した、予測できない顕著な効果を有するものである。」と主張している。(58ページ10~19行)
2. 検討
(1) まず、電子レンジで加熱する容器においても、水蒸気を排出する孔から塵埃や虫などの異物が混入するおそれがあることは、実願平2-71089号(実開平4-29977号)のマイクロフィルムの「近年、オーブン、ガスレンジおよび電子レンジ等の加熱調理機器が家庭内に普及するに至り、これに対応したインスタント食品が数々販売されるようになった。・・・容器の蓋に孔があいていると容器内部に常に、ホコリ、虫等の異物が混入するおそれがあり、又、外気の出入を許すため食品衛生・保存の見地からも好ましくない。」(明細書3ページ13行~5ページ5行)という記載、及び、特開平2014-227185号公報の「【0002】・・・・このような食品包装用容器には、蓋をしたまま電子レンジなどで加熱できるように、蓋の天板部に孔や切込みなどからなる通気部を設け、蒸気等が抜けるようにしたものがある。」、「【0006】食品包装用容器を複数段に棚積みして陳列した場合、蓋の天板部は荷重を受けるため変形しやすくなる。従来の如く、天板部に孔や切込みなどの通気部を設けた蓋は、天板部の変形により通気部が変形して隙間が大きくなり、塵埃などが容器内に侵入するおそれがあった。」という記載に示されるように、本件特許に係る優先日前に周知の課題であり、特許権者が上記1.(1)で主張する「解決すべき技術的課題」が「斬新性」を有するとまではいえない。
(2) そして、本件発明1の電子レンジ加熱食品用容器の排気細孔が、昆虫等の異物混入を抑制する効果を奏するのは、主に工場等で容器内に食品を収容して店舗で販売されるまでの段階であって、この段階で虫等の混入を防止する効果を奏することは、上記引用文献2の周知技術においても同様であり、引用文献2の「孔の大きさは・・・殊に、1mm以下の大きさとすると、虫の侵入が防止できるので好ましい。」との示唆も踏まえれば、引用発明の小孔が、電子レンジ加熱時に水蒸気を排出できるともに、虫等の異物混入の抑制に効果があることは、当業者であれば予測できるものである。
(3) また、引用文献5の「【発明の効果】本発明の微小孔部を有するプラスチック構造体の製造方法によれば、プラスチックに、微小径の孔部を容易に形成することができる。さらに、マスクが不要であり、しかも、優れた生産性で微小な貫通孔及び/又は陥没孔を形成することができる」(【0066】)という記載から、上記1.に示した「(β)<<方法>>である「レーザー加工による製法」についての「穿孔作業時間が短縮でき作業効率が向上」するという作用・効果は当業者が予測し得た以上のものであるとはいえない。
(4) 以上のとおりであるから、特許権者の主張する上記1.に示した作用効果は格別なものであるとはいえない。
(5) よって、上記相違点1に係る本件発明1の構成は、上述のように引用発明、引用文献5に記載された事項、及び、周知の事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものであり、特許権者の上記主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、本件発明1は、引用発明、引用文献5に記載された事項及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、本件発明1に係る特許は、特許法第113条第2項に該当することを理由として、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する
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2019-701049