特許異議申立
2019-700780
電子レンジ加熱食品用容器
- 審判番号
- 2019-700780
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-027018
- 登録番号
- 6495356
- 請求日
- 2019年10月01日
- 審決日
- 2020年12月24日
- 公報発行日
- 2022年04月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】アテナ工業株式会社
- 【権利者代理人】後藤 憲秋
- 【権利者代理人】鬼頭 優希
- 【権利者代理人】加藤 大輝
- 【異議申立人】豊田 敦子
- 審判長/審判官
- 審判長 森藤 淳志
- 審判官 久保 克彦
- 審判官 井上 茂夫
- 分類
- P1651.121-ZAA(B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第4項、特許法第29条、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6495356号発明「電子レンジ加熱食品用容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6495356号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。
特許第6495356号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許6495356号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成29年2月16日(優先権主張平成28年3月14日 日本国)に出願され、平成31年3月15日にその特許権の設定登録がされ、平成31年4月3日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立て以降の経緯は、次のとおりである。
令和元年10月1日 :特許異議申立人豊田敦子(以下「申立人」という。)により請求項1及び2に係る特許に対する特許異議の申立て
令和元年12月19日付け :取消理由通知
令和2年2月12日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和2年3月26日 :申立人による意見書の提出
令和2年6月26日付け :取消理由通知(決定の予告)
令和2年8月24日 :特許権者による意見書の提出
令和2年9月14日 :申立人による上申書の提出
第2 訂正の適否について
1. 訂正の内容
上記令和2年2月12日提出の訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1) 訂正事項1
本件訂正前の請求項1の「複数の排気長孔からなる排気長孔群が、当該排気長孔群を被覆又は包皮する部材を備えることなく形成されており」という記載を、「複数の排気長孔からなる排気長孔群が、異物混入防止のための、当該排気長孔群を被覆又は包皮する部材を備えることなく形成されており」と訂正する(請求項1を引用する請求項2も同様に訂正する。)。
(2) 訂正事項2
本件訂正前の明細書の段落【0010】の「複数の排気長孔からなる排気長孔群が、当該排気長孔群を被覆又は包皮する部材を備えることなく形成されており」という記載を、「複数の排気長孔からなる排気長孔群が、異物混入防止のための、当該排気長孔群を被覆又は包皮する部材を備えることなく形成されており」と訂正する。
(3) 訂正事項3
本件訂正前の明細書の段落【0012】の「複数の排気長孔からなる排気長孔群が、当該排気長孔群を被覆又は包皮する部材を備えることなく形成されており」という記載を、「複数の排気長孔からなる排気長孔群が、異物混入防止のための、当該排気長孔群を被覆又は包皮する部材を備えることなく形成されており」と訂正する。
2. 訂正の適否についての判断
(1) 一群の請求項
本件訂正前の請求項1及び2について、請求項2は請求項1を引用する請求項であって、請求項1に連動して訂正されるものである。また、訂正事項2及び3は、明細書の記載を訂正するものであるところ、その内容は、本件特許請求項1及び2について訂正する訂正事項1に対応するものであるから、訂正事項2及び3による明細書の訂正に係る請求項は、請求項1及び2である。
したがって、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項毎に請求されたものであり、また、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4項に規定する一群の請求項の全てについて行われたものである。
(2) 訂正の目的、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア. 訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の「当該排気長孔群を被覆又は包皮する部材」が、「異物混入防止のための」ものである点を付加し、限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、「本発明の食品用容器(電子レンジ加熱食品用容器)における排気長孔の大きさ(開孔面積)を勘案すると、極めて微細であることから昆虫等の異物侵入を有孔に抑制できる。そのため、本発明の食品用容器では、従前の容器に見られた蓋体部の排気を担う孔を被覆したり包皮したりするフィルム等の部材は、省略可能となる。」(段落【0042】)という記載があるから、新規事項を追加するものではない。また、訂正事項1は訂正前の請求項1の「当該排気長孔群を被覆又は包皮する部材」の機能を限定するものであるから、特許請求の範囲を拡張ないし変更するものではない。
イ. 訂正事項2について
訂正事項2は、本件特許明細書の段落【0010】の記載を、上記訂正事項1に係る訂正内容と整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
上記ア.に示したのと同様に、訂正事項2は、新規事項を追加するものではない。また、特許請求の範囲を拡張ないし変更するものではないことは明らかである。
ウ. 訂正事項3について
訂正事項3は、本件特許明細書の段落【0012】の記載を、上記訂正事項1に係る訂正内容と整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
上記ア.に示したのと同様に、訂正事項3は、新規事項を追加するものではない。また、特許請求の範囲を拡張ないし変更するものではないことは明らかである。
3. 訂正の適否についての小括
上記2.に示したとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に規定する事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第4項、並びに、同条第9項において準用する特許法第126条第4項~第6項の規定に適合するから、本件訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。
第3 特許異議の申立てについて
1. 本件発明
上記の通り本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
電子レンジ加熱のための食品を収容する容器本体部と、前記容器本体部の開口部と嵌合する合成樹脂シートからなる蓋体部とを備えた蓋嵌合容器において、
前記蓋体部の蓋面部には、前記容器本体部内に収容された食品から発生する水蒸気を外部に排気する複数の排気長孔からなる排気長孔群が、異物混入防止のための、当該排気長孔群を被覆又は包皮する部材を備えることなく形成されており、
前記排気長孔はレーザー光線照射により幅0.15~1.0mm、長さ1~12mmの範囲内で形成されているとともに、
前記排気長孔群における前記排気長孔の開孔面積の合計は0.3~100mm2であることを特徴とする電子レンジ加熱食品用容器。
【請求項2】
前記蓋面部に凹面部が設けられ、前記凹面部に前記排気長孔が形成されている請求項1に記載の電子レンジ加熱食品用容器。」
2. 令和2年6月26日付けで通知した取消理由の概要
当審が令和2年6月26日付けで、特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は次のとおりである。
【理由1】(進歩性) 本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引 用 文 献 一 覧>
1.特開平3-114418号公報
(本件特許異議申立書(以下「申立書」という。)に添付された甲第1号証)
2.実願平2-106124号(実開平4-62684号)のマイクロフィルム
(申立書35ページ1行に例示された文献。ただし、申立書の記載は、公開実用新案公報であるが、この取消理由通知では、当該公開実用新案公報ではなく、対応するマイクロフィルムを引用する。)
3.特開2004-10156号公報
(申立書に添付された甲第5号証)
4.特開2014-91542号公報
(申立書に添付された甲第2号証)
5.特開平7-237658号公報
(申立書に添付された甲第7号証)
(1) 本件発明1について
・引用文献1~4
・備考
本件発明1は、引用文献1に記載された発明、例えば引用文献2~4に記載された従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。
(2) 本件発明2について
・引用文献1~5
・備考
本件発明2は、引用文献1に記載された発明、例えば引用文献2~5に記載された従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。
第4 当審の判断
1. 本件発明1について
(1) 引用文献1について
引用文献1には、次の記載がある。
ア. 「(1) マイクロ波透過部材からなり上方に開放部を有する容器本体、該容器本体の開放部を覆い容器本体内部を略密閉状態となし得る小孔付の蓋であって、該小孔が該開放部を覆う位置に存在し、該小孔の面積の総計が該開放部面積の0.005~1%に相当し、かつマイクロ波透過部材からなる蓋とから構成された容器の内部に、吸水することによって復元し、喫食状態となる固形即席食品を収容し、該固形食品の吸水量の100~155重量%の水の存在下に、電子レンジで加熱調理するための即席食品入り容器。」(1ページ左欄4~14行)
イ. 「〔問題点を解決するための手段〕
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究した結果、以下のような知見を得た。
l) 容器内部を略密閉状態となし得る容器に、固形即席食品と水とを収容し、これを電子レンジで加熱することによって、容器内部が強い沸騰状態となって沸騰水面が即席食品の上部にまでおよび、即席食品を極めて短時間に、完全かつ均一に復元することができること。
2) また、上記の作用は、容器に収容する水の量が比較的少量であっても達成されること。従って、容器に収容する水の量を、即席食品を喫食状態に復元するに充分な量とすることによって、水は加熱中に即席食品にほぼ完全に吸収され、加熱後に水を捨てる必要がないこと。
3) また、蓋の構造は、加熱時に容器内圧が極端に高くなって容器が破裂することを防止し、かつ、容器内圧を調圧するための小孔を容器の蓋に設けることが効果的であって、この際、小孔の総面積を、容器本体の上方開放部面積の特定の割合とすること。
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。すなわち、本発明は、マイクロ波透過部材からなり上方に開放部を有する容器本体、該容器本体の開放部を覆い容器本体内部を略密閉状態となし得る小孔付の蓋であって、該小孔が該開放部を覆う位置に存在し、該小孔の面積の総計が該開放部面積の0.005~1%に相当し、かつマイクロ波透過部材からなる蓋とから構成された容器の内部に、吸水することによって復元し、喫食状態となる固形即席食品を収容し、該固形食品の吸水量の100~155重量%の水の存在下に、電子レンジで加熱調理するための即席食品入り容器を提供する。
本発明で使用する容器は、内容物を出し入れするために上方に開放部を有した容器本体と、上記開放部を覆い容器内部を略密閉状態となし得る小孔付の蓋とから構成される。容器本体及び蓋は、マイクロ波を透過し、かつ電子レンジの加熱に耐えうる耐熱性材料でつくる。マイクロ波を透過する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキサイド、ポリエステル、ナイロン、紙及びこれらのラミネート物等が好適に使用される。」(2ページ右上欄13行~右下欄17行)
ウ. 「・・・そして、容器本体と蓋との接合部の構造は、電子レンジによる加熱の際に、内容物の噴きこぼれを防止し、容器内部に蒸気が充満されるように、容器内部を略密閉状態となし得る構造とする必要がある。上記の構造としては、例えば、ネジ込み式の螺合構造、着脱自存な嵌着構造或いは上記接合部を取り囲む位置に熱収縮フィルムを設け、これが電子レンジでの加熱の際に熱収縮して蓋を容器本体に固定する構造等を採用することができる。
さらに、蓋には、容器開放部を覆う位置に、小孔を設ける。この際、小孔の大きさを容器本体の上方開放部面積の0.005~1%、好ましくは、0.2~0.8%とすることが望ましい。
このように蓋に小孔を設けるのは、本発明の容器が調理時に、電子レンジにより強く加熱された場合、発生する水蒸気により容器内部の圧力が異常に上昇するのを回避するためであるが、一方、この小孔が一定の値を越えて大きい場合、発生した蒸気が容器外に揮散して容器内に蒸気が充満した雰囲気を達成できず、食品の加熱に蒸気が十分に作用しないため、特に食品の上部が乾燥状態となって良好に復元されず、加熱復元は不均一で不十分となる。
そこで、蓋に前記のような適切な大きさの小孔を開けることにより、容器内の異常な圧力の上昇を防ぐとともに、容器内の蒸気密度及び雰囲気温度を高く保ち、これにより即席食品を良好かつ短時間で復元調理できるようにしたのである。」(3ページ左上欄5行~右上欄13行)
エ. 「前記の固形即席食品を内部に収容した本発明の即席食品入り容器は、該食品の吸水量の100~155重量%(以下%と略称する。)の水の存在下で電子レンジを用いて加熱調理するために用いるものである。ここで、水の代わりに湯を用いることも、又調味液を用いることもできる。そして、水の量は、即席食品の吸水量の100~155%、好ましくは100~132%とされる。ここでいう水の量には、調味液の量も含まれる。」(3ページ右下欄11~19行)
オ. 「本発明の食品入り容器をこのような状態で、電子レンジを用いて加熱すると、蓋の小孔により異常な圧力の上昇は防止され、一方、容器は略密閉状態となっているので、容器内部で水の沸騰水面が即席食品の上部にまでおよぶような強い沸騰状態となり、また容器内に蒸気が充分に充満して、即席食品を短時間で、完全かつ均一に復元することができる。つまり、容器内部に蒸気が充満するので、加熱効率が高く、加熱の後半で、即席食品の吸水が進行し、沸騰水面が下がってきても即席食品の上部を乾燥させずに、即席食品を均一に復元することができるのである。」(4ページ左上欄15行~右上欄6行)
カ. 「実施例1
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。第1図は本発明の即席食品入り容器1の断面図を示すものであり、容器本体2とその上方開方部を覆う蓋3とから構成される容器内に乾燥即席食品4が収容されている。
容器本体2及び蓋3は、容器の内部側がポリプロピレンで外側が紙である構造の0.5mmのラミネート材で形成されている。容器本体2の上方開放部の径が120mm、内部底面の径が105mm、高さが64mmの略逆円錐台形のものである。また、容器本体2の底部には、電子レンジテーブル5に対して内容物を上方に保持する(h1=9mm)ために部材6が容器本体2に一体的に形成されている。蓋3は、外径122mm、内径が121mmの円形板7と、その上部周縁から容器本体2の側部に張り出した部分8(この部分の上下方向の距離h2は12mmである)から構成されている。また、蓋3には直径3.2mmの円形の開孔9が、蓋3の中央を中心として放射状に8個設けられている(この場合の開孔率は、容器本体2の上方開放部の面積の0.57%である)。
容器本体2の上部周縁の径と蓋3の円形板7の内径がほぼ等しいことによって、図示の状態に緊合され、容器内部が密閉される。」(5ページ右上欄12行~左下欄16行)
キ. 「実施例2
上方開放部が11cm×14cm、容器内部の深さが4cmの直方体の合成樹脂容器(内容積的616cm3)に、即席食品として10cm×13cm×2.5cmの焼きそば用即席麺の麺塊80g及び焼きそば用ソース170g(即席麺の吸水量の約120重量%)を収容し、容器の上方開放部に、約0.8cm2(開孔率0.52%)の小孔を有する合成樹脂性の蓋で覆い、電子レンジに入れて出力500Wで5分間加熱した。尚、蓋はすべて周辺部に凹を有し、上部凹部が容器上縁に形成された凸部に嵌合されて容器に取り付けられ、上記取り付は部分において容器が密閉される構造である。なお、開孔率とは、蓋に開けられた小孔の面積が容器本体の開放部の面積に対して占める割合をいう。
上記即席食品入り容器を電子レンジで加熱調理した場合、加熱中沸騰水面が継続して麺の上部にまで至り、容器内に蒸気が充満して激しい沸騰状態となるが、蓋は外れない。」(6ページ左上欄7行~右上欄5行)
ク. 第1図「
[図:0001383211000001.jpg]
」
以上の摘記事項ア.~キ.及びク.の図示を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「電子レンジ加熱のための固形即席食品を収容する容器本体(2)と、前記容器本体(2)の上方開口部と嵌合する合成樹脂シートからなる蓋(3)とを備えた蓋(3)嵌合容器において、
前記蓋(3)の円形板(7)には、前記容器本体(2)内に収容された食品から発生する水蒸気を外部に排気する蓋(3)の中央を中心として8個設けられている直径3.2mmの円形の開孔(9)が、形成されており、
開孔率は、容器本体(2)の上方開口部の面積の0.57%である、
電子レンジ加熱のための固形即席食品を収容する容器」
(2) 対比・判断
本件発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「電子レンジ加熱のための固形即席食品」、「容器本体(2)」、「蓋(3)」及び「蓋(3)嵌合容器」は、本件発明1の「電子レンジ加熱のための食品」、「容器本体部」、「蓋体部」及び「蓋嵌合容器」にそれぞれ相当する。
引用発明の「円形板(7)」は、本件発明1の「蓋面部」と、水蒸気を外部に排気する孔が形成されたものである限度で一致する。
引用文献1の上記摘記事項カ.には、「開孔(9)」について、「開孔率は、容器本体2の上方開放部の面積の0.57%である」という記載があり、上記摘記事項ウ.の「蓋には、容器開放部を覆う位置に、小孔を設ける。この際、小孔の大きさを容器本体の上方開放部面積の0.005~1%、好ましくは、0.2~0.8%とすることが望ましい。このように蓋に小孔を設けるのは、本発明の容器が調理時に、電子レンジにより強く加熱された場合、発生する水蒸気により容器内部の圧力が異常に上昇するのを回避するためである」という記載から、引用発明の「開孔(9)」の「開孔率」は本件特許発明1の「排気長孔」の数値範囲内のものであり、さらに、容器本体2内部で水蒸気が発生した際には、「開孔(9)」から水蒸気が逃散し、内圧の上昇を緩和されることは明らかである。よって、引用発明の「開孔(9)」は、本件発明1の「排気長孔」と、食品から発生する水蒸気を外部に排気する孔である限度で一致する。
そうすると、本件発明1と引用発明は、以下の<一致点>で一致し、<相違点1>で相違する。
<一致点>
「電子レンジ加熱のための食品を収容する容器本体部と、前記容器本体部の開口部と嵌合する合成樹脂シートからなる蓋体部とを備えた蓋嵌合容器において、
前記蓋体部の蓋面部には、前記容器本体部内に収容された食品から発生する水蒸気を外部に排気する孔が形成されている、
電子レンジ加熱食品用容器。」
<相違点1>
本件発明1は、「食品から発生する水蒸気を外部に排気する孔」として、「蓋面部」に、「複数の排気長孔からなる排気長孔群が、異物混入防止のための、排気長孔群を被覆又は包皮する部材を備えることなく形成され」ており、「排気長孔はレーザー光線照射により幅0.15~1.0mm、長さ1~12mmの範囲内で形成されている」とともに、「前記排気長孔群における前記排気長孔の開口面積の合計は0.3~100mm2である」のに対し、
引用発明は、「食品から発生する水蒸気を外部に排気する孔」として、円形板(7)に、直径3.2mmの円形であって、蓋(3)の中央を中心として放射状に8個設けられ、さらに、容器本体(2)の上方開口部の面積に対する開孔率は、0.57%である開孔(9)が形成されている点。
ア. <相違点1>についての検討
引用文献1の上記(1)ウ.に摘記した「・・・蓋には、容器開放部を覆う位置に、小孔を設ける。この際、小孔の大きさを容器本体の上方開放部面積の0.005~1%、好ましくは、0.2~0.8%とすることが望ましい。このように蓋に小孔を設けるのは、本発明の容器が調理時に、電子レンジにより強く加熱された場合、発生する水蒸気により容器内部の圧力が異常に上昇するのを回避するためであるが、一方、この小孔が一定の値を超えて大きい場合、発生した蒸気が容器外に揮散して容器内に蒸気が充満した雰囲気を達成できず、食品の加熱に蒸気が十分に作用しないため、特に食品の上部が乾燥状態となって、良好に復元されず、加熱復元は不均一で不十分となる。」からみて、引用発明の「開孔9」、すなわち「小孔」は、「水蒸気により容器内部の圧力が異常に上昇するのを回避するため」に、「小孔の大きさを容器本体の上方開放部面積の0.005%」以上、「好ましくは、0.2%」以上とする一方、「小孔が一定の値を超えて大きい場合、発生した蒸気が容器外に揮散して容器内に蒸気が充満した雰囲気を達成できず、食品の加熱に蒸気が十分に作用しないため、特に食品の上部が乾燥状態となって、良好に復元されず、加熱復元は不均一で不十分となる」から、小孔の大きさを容器本体の上方開放部面0.8%」以下と、するものである。
イ. また、引用発明は「即席焼きそばや即席マカロニ等の固形即席食品を、電子レンジで調理する」(引用文献1の2ページ左上欄3~4行)ための容器、すなわち食品を収納する容器であるから、当該「小孔」の大きさが大きすぎると、当該「小孔」をとおして、異物が侵入するといった不具合が生じることは当業者にとって自明である。一方、食品を収納する容器に形成する孔の大きさを小さく、例えば1mm以下の大きさとすると、容器内への異物の侵入が防止できることは、例えば、引用文献2の「・・・本考案において、孔の大きさは、2mm以下の大きさとすることができる。しかし、1.5mm以下、殊に、1mm以下の大きさとすると、虫の侵入が防止できるので好ましい。」(5ページ3~6行)という記載や、特開平10-218250号公報(以下「引用文献6」という。)の「【0003】・・・米穀用袋において、通気性が大きすぎる場合には、その通気孔から虫等が侵入し、思いもしない事故を起こすことがあるものである。」)に示されるように、従来周知の事項である。そうすると、異物の侵入が防止できるならば、容器には、「異物混入防止のための、当該排気長孔群を被覆又は包皮する部材」が不要であることは当業者にとって明らかであるから、当該「部材」を備えないようにすることには、当業者にとって格別の困難性は認められない。
ウ. そして、引用発明の「開孔9」の形状は「円形」であるところ、引用文献1には、「開孔9」すなわち「小孔」の形状が「円形」であることが必須である旨の記載や示唆もない。さらに、例えば引用文献3には、「本発明においては、2重包装の中の電子レンジ及び/又は蒸気加熱及び/又は熱湯による加熱に対応する食品の包装材料に、直径1μ~5cmの円形、多角形又は星形の孔及び/又は短径1μ~5cmの楕円形の孔及び/又は一辺の長さが1μ~5cmの正方形、矩形、三角形又は各種変形型の孔を全面もしくは適宜の箇所に設けることによって、これら孔から蒸気を逃がし、暴発を防ぐことができるものである。」(【0005】)
「一般に、電子レンジ及び/又は蒸気加熱及び/又は熱湯による加熱に対応する食品の包装材料は、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの単層、二層、三層のフィルムからなるもので、・・・」(【0006】)
「本発明における各種の孔は、底部にも蓋部にも設けることができる。
各種の直径1μ~5cmの孔は、基本的にはレーザー光線によって、あけることができ、・・・」(【0007】)
「本発明においては、直径1μ~5cmの円形、多角形又は星形の孔及び/又は短径1μ~5cmの楕円形の孔及び/又は一辺の長さ1μ~5cmの正方形、矩形、三角形又は各種変形型の孔が均一又はごちゃまぜに設けられたり、また直径1cm~5cmの孔であれば蓋に1~5個位設けたり、蓋に1mm~1cmの孔をごちゃまぜに設けることができる。・・・」(【0008】)という記載があり、電子レンジで加熱する包装材料に蒸気を逃がすために形成する「孔」の形状を、「多角形」、「正方形」、「矩形」とすること、そしてそのような「孔」をレーザー光線によって形成することは、従来周知である。
さらに、上記引用文献3に記載された「1~5個位設けたり」(段落【0008】)という記載、及び、引用文献4の【図13】に図示された「平坦面の上面部位に長孔状の蒸気抜き部」から、蒸気を抜くための「孔」を、「群」として配置することも、従来周知の事項である。
エ. そうすると、引用発明における「開孔(9)」の形状や配置の決定は、当業者が適宜行う設計的事項であり、「開孔(9)」を「群」として配置し、その形状を、「長孔」とし、寸法を「幅0.15~1.0mm、長さ1~12mm」としたことは、従来周知の形状や寸法、及び、形成手法を採用したに過ぎず、「前記排気長孔群における前記排気長孔の開口面積」の「合計」を、「0.3~100mm2」としたことは、上記従来周知の数値を採用した際に、自ずから実現されるものであるに過ぎない。
オ. よって、引用発明において、上記<相違点1>に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。
カ. また、本件発明1が奏する作用・効果については、引用発明及び上記周知の事項から当業者が容易に予測し得る程度のものである。
キ. 以上のとおり、引用発明において、上記<相違点1>に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、引用発明及び従来周知の事項に基いて、当業者が容易になし得た事項であるから、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2. 本件発明2について
本件発明2と、引用発明とを対比すると、上記<相違点1>に加えて、次の<相違点2>において相違する。
<相違点2>
本件発明2は、「前記蓋面部に凹面部が設けられ、前記凹面部に前記排気長孔が形成されている」のに対し、引用発明のものは、そのような構成を備えたものであるか、明らかではない点。
(1) <相違点1>については、上記1.(2)に示したとおりである。
(2) <相違点2>について検討する。
例えば、引用文献4の段落【0024】、【図12】には、「蓋6B」に「凹部11」を設け、「凹部11」内において、「透孔22で形成した蒸気抜き部12A」を形成したものが、また、引用文献5の段落【0010】、【図1】には、「蓋体10」に形成した「凹部11」の底面に、「ピンホール状の小孔12が穿設」され、「容器内の加熱状態の空気の排出を確実に行うことができる」ようにしたものが記載されており、包装容器の蓋に凹部を形成し、当該凹部内にさらに小孔を設けることは、従来周知の事項である。
そして、引用発明に上記<相違点2>に係る本件発明2の構成を備えたものとすることは、上記従来周知の事項を単に適用したに過ぎず、当業者が容易に想到し得た事項である。
(3) また、本件発明2が奏する作用・効果については、引用発明及び上記周知の事項から、当業者が容易に予測し得る程度のものである。
(4) 以上のとおり、引用発明において、上記<相違点2>に係る本件発明2の構成を備えたものとすることは、引用発明及び従来周知の事項に基いて、当業者が容易になし得たものであるから、本件発明2は、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
第5 令和2年8月24日に特許権者が提出した意見書について
1. 特許権者の主張
令和2年8月24日に特許権者は意見書を提出して、大要、以下の点主張している。
(1) 本件発明1の出願時の技術的水準からは、本件発明1の「電子レンジ加熱食品用蓋嵌合容器」において、「電子レンジ蒸気孔」による「異物混入抑止」は、優に、解決すべき技術的課題の斬新性が認められるものである。(9ページ11~13行)
(2) 本件発明1は、(I)蒸気抜きと(II)異物混入防止の2つの課題を「蓋の蒸気抜き」である「排気長孔(群)」という1つの構成によって同時に解決できるようにしたものである。
他方、引用発明は、固形食品と水を短時間で良好な食感に復元することを目的とし、蓋体に特定の大きさの「蒸気孔」を設けることにより、電子レンジ容器内の異常な圧力の上昇を防止するとともに、容器内の蒸気密度及び雰囲気温度を高く保つ(内部を強い沸騰状態で加熱する)という「高圧調整」を行うものである。
両者は、「電子レンジ加熱食品用蓋嵌合容器」であるという共通点を有するものであるが(そして、この点においてのみ共通する)、両発明の解決すべき課題は、本件発明1が「蒸気抜き」と併せて「異物混入防止」の課題をも同時に解決するものであるに対し、引用発明は容器内の蒸気密度及び雰囲気温度を高く保ちかつ容器内も異常圧力の上昇を防ぐという「高圧調整」の制御を課題とする相違点を有し、当然に、その主たる構成要素である「蒸気孔」の技術的意義を異にするのである。(23ページ5~21行)
(3) 本件発明1の課題を実現するための主要な構成である「排気長孔(群)」は、「蒸気排気機能」と「異物混入防止機能」とを兼ね備えたものであり、その両立のための以下のア.~カ.の特別な構成を備えたものなのである。
ア. 電子レンジ蒸気孔であること・・・
イ. 長孔であること・・・
ウ. 被覆部材がないこと
エ. 長孔の大きさは、幅0.15~1.0mm、長さ1~12mmの範囲内・・・
オ. 長孔群の面積は、0.3~100mm2であること・・・
カ. レーザー光線照射孔であること・・・
(23ページ22行~27ページ最下行)
(4) この種「電子レンジ加熱食品用容器」で最も一般的な嵌合容器で最も一般的な嵌合容器の蓋部に設けられた「蒸気孔」の構成のみによって、・・・良好な電子レンジ排気とともに、虫等の異物侵入防止を効率良く図るというのは、近時における新規な課題といえるのである。(50ページ最下行~51ページ3行)
2. 検討
(1) まず、電子レンジで加熱する容器においても、水蒸気を排出する孔から塵埃や虫などの異物が混入するおそれがあることは、実願平2-71089号(実開平4-29977号)のマイクロフィルムの「近年、オーブン、ガスレンジおよび電子レンジ等の加熱調理機器が家庭内に普及するに至り、これに対応したインスタント食品が数々販売されるようになった。・・・・容器の蓋に孔があいていると容器内部に常に、ホコリ、虫等の異物が混入するおそれがあり、又、外気の出入を許すため、食品衛生・保存の見地からも好ましくない。」(明細書3ページ13行~5ページ5行)という記載、及び、特開平2014-227185号公報の「【0002】・・・・このような食品包装用容器には、蓋をしたまま電子レンジなどで加熱できるように、蓋の天板部に孔や切込みなどからなる通気部を設け、蒸気等が抜けるようにしたものがある。」、「【0006】食品包装用容器を複数段に棚積みして陳列した場合、蓋の天板部は荷重を受けるため変形しやすくなる。従来の如く、天板部に孔や切込みなどの通気部を設けた蓋は、天板部の変形により通気部が変形して隙間が大きくなり、塵埃などが容器内に侵入するおそれがあった。」という記載に示されるように、本件特許に係る優先日前に周知の課題であり、特許権者が主張するような「近時における新規な課題」とまではいえない
(2) そして、本件発明1の電子レンジ加熱食品用容器の排気細孔が、昆虫等の異物混入を抑制する効果を奏するのは、主に工場等で容器内に食品を収容して店舗で販売されるまでの段階であって、この段階で虫等の混入を防止する効果を奏することは、上記引用文献2及び6の周知技術においても同様であり、引用文献2の「孔の大きさは・・・・殊に、1mm以下の大きさとすると、虫の侵入が防止できるので好ましい。」との示唆も踏まえれば、引用発明の小孔が、電子レンジ加熱時に水蒸気を排出できるともに、虫等の異物混入の抑制に効果があることは、当業者であれば予測できるものである。そうすると、特許権者の主張する上記1.(3)に示したア.~カ.の構成を全て備えることで得られる作用効果は格別なものであるとはいえない。
(3) よって、上記相違点1に係る本件発明1の構成は、上述のように引用発明及び従来周知の事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものであり、特許権者の上記主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、本件発明1及び2は、引用発明及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第113条第2号に該当することを理由として、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2019-700780