特許異議申立
2019-701038
合成繊維用処理剤及び合成繊維の製造方法
- 審判番号
- 2019-701038
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-233077
- 登録番号
- 特許第6533002号(P6533002)
- 請求日
- 2019年12月18日
- 審決日
- 2021年06月25日
- 公報発行日
- 2021年09月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】竹本油脂株式会社
- 【権利者代理人】恩田 誠
- 【権利者代理人】恩田 博宣
- 【異議申立人】恒川 朱美
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 茂夫
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 藤原 直欣
- 分類
- P1651.113-YAA(D06M) / P1651.121-YAA(D06M) / P1651.537-YAA(D06M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6533002号発明「合成繊維用処理剤及び合成繊維の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6533002号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
特許第6533002号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6533002号の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成30年12月13日の出願であって、令和元年5月31日にその特許権の設定登録がされ、令和元年6月19日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 元年12月18日 :特許異議申立人恒川朱美(以下「申立人」と
いう。)による請求項1~7に係る特許に対
する特許異議の申立て
令和 2年 2月21日付け:取消理由通知
令和 2年 4月17日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
令和 2年 6月19日 :申立人による意見書の提出
令和 2年 8月28日付け:訂正拒絶理由通知
令和 2年 9月28日 :特許権者による意見書の提出
令和 2年12月22日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和 3年 3月 5日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
令和 3年 4月 9日 :申立人による意見書の提出
令和 3年 5月28日付け:訂正拒絶理由通知
令和 3年 6月16日 :特許権者による手続補正書及び意見書の提出
なお、令和2年4月17日の訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1.訂正請求書の補正について
上記令和3年3月5日提出の訂正請求書は、令和3年6月16日提出の手続補正書により、令和3年5月28日付け訂正拒絶理由通知で指摘した訂正事項2’(特許請求の範囲の請求項6の「~2.0質量%」を「~2質量%」に訂正するもの)及び訂正事項4’(明細書の【0010】の「~2.0質量%」を「~2質量%」に訂正するもの)が削除され、添付の訂正明細書及び特許請求の範囲が補正された。この補正は、訂正事項の削除であり、訂正請求書の要旨を変更するものでないから、この補正を認める。
2.訂正の内容
令和3年6月16日提出の手続補正書により補正された訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1において、
「平滑剤として分子中にエステル結合を3つ以上有するエステル化合物、及び分子中に硫黄元素を有するエステル化合物から選ばれる少なくとも一種のエステル化合物を含み、ストレート給油に用いられる合成繊維用処理剤であって、前記合成繊維用処理剤中における水分量が0.1~5質量%であることを特徴とする合成繊維用処理剤。」
と記載されているのを、
「平滑剤として分子中にエステル結合を3つ以上有するエステル化合物、及び分子中に硫黄元素を有するエステル化合物から選ばれる少なくとも一種のエステル化合物を含み、ストレート給油に用いられる合成繊維用処理剤であって、前記合成繊維用処理剤中における水分量が0.1質量%~(0.8×100)/(100+300+0.8)質量%、0.5質量%~(1.8×100)/(100+200+1.8)質量%、(1.6×100)/(100+100+1.6)質量%~(1.0×100)/(100+10+1.0)質量%、(1.3×100)/(100+10+1.3)質量%、(1.7×100)/(100+10+1.7)質量%~2質量%、(2.6×100)/(100+10+2.6)質量%、又は(4.5×100)/(100+10+4.5)質量%~5質量%であることを特徴とする合成繊維用処理剤。」
に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~7も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項6において、
「前記合成繊維用処理剤中の水分量が0.5~2.0質量%である請求項1~5のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。」
と記載されているのを、
「前記合成繊維用処理剤中の水分量が0.5質量%~(1.8×100)/(100+200+1.8)質量%、(1.6×100)/(100+100+1.6)質量%~(1.0×100)/(100+10+1.0)質量%、(1.3×100)/(100+10+1.3)質量%、(1.7×100)/(100+10+1.7)質量%~2.0質量%である請求項1~5のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。」
に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項7も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
訂正前の明細書の【0007】において、
「すなわち本発明の一態様は、平滑剤として分子中にエステル結合を3つ以上有するエステル化合物、及び分子中に硫黄元素を有するエステル化合物から選ばれる少なくとも一種のエステル化合物を含み、ストレート給油に用いられる合成繊維用処理剤であって、前記合成繊維用処理剤中における水分量が0.1~5質量%であることを特徴とする合成繊維用処理剤が提供される。」
と記載されているのを、
「すなわち本発明の一態様は、平滑剤として分子中にエステル結合を3つ以上有するエステル化合物、及び分子中に硫黄元素を有するエステル化合物から選ばれる少なくとも一種のエステル化合物を含み、ストレート給油に用いられる合成繊維用処理剤であって、前記合成繊維用処理剤中における水分量が0.1質量%~(0.8×100)/(100+300+0.8)質量%、0.5質量%~(1.8×100)/(100+200+1.8)質量%、(1.6×100)/(100+100+1.6)質量%~(1.0×100)/(100+10+1.0)質量%、(1.3×100)/(100+10+1.3)質量%、(1.7×100)/(100+10+1.7)質量%~2質量%、(2.6×100)/(100+10+2.6)質量%、又は(4.5×100)/(100+10+4.5)質量%~5質量%であることを特徴とする合成繊維用処理剤が提供される。」
に訂正する。
(4)訂正事項4
訂正前の明細書の【0010】において、
「前記平滑剤、前記非イオン界面活性剤、及び前記イオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量部とすると、希釈剤を0.1~400質量部の割合で含むことが好ましい。
前記合成繊維用処理剤中の水分量が0.5~2.0質量%であることが好ましい。」
と記載されているのを、
「前記平滑剤、前記非イオン界面活性剤、及び前記イオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量部とすると、希釈剤を0.1~400質量部の割合で含むことが好ましい。
前記合成繊維用処理剤中の水分量が0.5質量%~(1.8×100)/(100+200+1.8)質量%、(1.6×100)/(100+100+1.6)質量%~(1.0×100)/(100+10+1.0)質量%、(1.3×100)/(100+10+1.3)質量%、(1.7×100)/(100+10+1.7)質量%~2.0質量%であることが好ましい。」
に訂正する。
3.一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~7について、請求項2~7は、訂正前の請求項1の記載を直接的又は間接的に引用するものであって、上記訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項〔1~7〕について請求されたものである。また、本件訂正請求は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4項に規定する、一群の請求項の全てについて請求されたものである
4.訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「合成繊維用処理剤中における水分量」について、その数値範囲をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「本件特許明細書等」という)に記載した事項の範囲内の訂正であること
令和2年12月22日付け取消理由通知(決定の予告)で引用された引用文献1(国際公開第2016/125577号(甲第1号証))の[0118][表1]に記載された実施例1に着目すると、不揮発分100質量部中において、原料Y-1を1質量部含有している。ここで、引用文献1の「メタノール550部とイオン交換水400部を混合し、45±5℃で調温し、攪拌しながら上記の原料X-1 700部を徐々に投入し、完全に溶解させた。次にこの溶解液を室温で20時間静置し、ボウ硝を沈降させた。ボウ硝の含まれない上澄み液を取り出し、60~80℃で減圧蒸留を行い、メタノールと水の一部を除去し、有機スルホン酸化合物(C)を70重量%含む原料Y-1を得た。」([0103])との記載を参照すると、原料Y-1は、有機スルホン酸化合物(C)70重量%とイオン交換水30重量%を含むものである。そして、引用文献1の「これらの処理剤不揮発分と炭素数13のパラフィンオイルを1:1の重量比で混合して合成繊維用処理剤を調製した。」([0109])の記載から、実施例1に記載された処理剤は、不揮発分100質量部に対してパラフィンオイル100質量部混合されることを踏まえると、引用文献1には、実施例1の合成繊維用処理剤中にイオン交換水が、(30重量%/70重量%)/(100+1×(30重量%/70重量%)+100)×100=約0.21重量%含まれることが記載されている。
同様に、引用文献1には、実施例9、11、12、20の合成繊維用処理剤中にイオン交換水が約0.21重量%、実施例3~5、7の合成繊維用処理剤中にイオン交換水が約0.43重量%、実施例2、17の合成繊維用処理剤中にイオン交換水が約0.64重量%、実施例6、8、16の合成繊維用処理剤中にイオン交換水が約0.74重量%、実施例14、22の合成繊維用処理剤中にイオン交換水が約1.06重量%、実施例10の合成繊維用処理剤中にイオン交換水が約1.48重量%、実施例19の合成繊維用処理剤中にイオン交換水が約2.10重量%、実施例13、21の合成繊維用処理剤中にイオン交換水が約2.20重量%、実施例18の合成繊維用処理剤中にイオン交換水が約3.61重量%含まれることが記載されている。
訂正事項1において、合成繊維用処理剤中における水分量の数値範囲から、(0.8×100)/(100+300+0.8)質量%~0.5質量%を除くことは、引用文献1に記載された約0.21重量%、0.43重量%を除外するものであり、同様に、(1.8×100)/(100+200+1.8)質量%~(1.6×100)/(100+100+1.6)質量%を除くことは、約0.64重量%、約0.74重量%を除外するものであり、(1.0×100)/(100+10+1.0)質量%~(1.3×100)/(100+10+1.3)質量%を除くことは、約1.06重量%を除外するものであり、(1.3×100)/(100+10+1.3)質量%、(1.7×100)/(100+10+1.7)質量%を除くことは、約1.48重量%を除外するものであり、2質量%~(2.6×100)/(100+10+2.6)質量%を除くことは、約2.10重量%、約2.20重量%を除外するものであり、(2.6×100)/(100+10+2.6)質量%~(4.5×100)/(100+10+4.5)質量%を除くことは、約3.61重量%を除外するものである。
そうすると、訂正事項1は、令和2年12月22日付け取消理由通知(決定の予告)で引用された引用文献1に記載された事項のみを除外するものであり、当該事項を除外することによって、本件特許明細書等から導かれる技術的事項に何らかの変更を生じさせるものとはいえないから、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、訂正前の請求項1の発明特定事項をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項6の「合成繊維用処理剤中の水分量」について、その数値範囲をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記(1)イにおける検討と同様に、訂正事項2は、令和2年12月22日付け取消理由通知(決定の予告)で引用された引用文献1に記載された事項のみを除外するものであり、当該事項を除外することによって、本件特許明細書等から導かれる技術的事項に何らかの変更を生じさせるものとはいえないから、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、訂正前の請求項6の発明特定事項をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3、4について
ア 訂正の目的について
訂正事項3、4は、それぞれ訂正事項1、2に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、それぞれ本件特許明細書等の【0007】、【0010】の内容を訂正するものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3、4は、それぞれ訂正事項1、2に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、訂正事項1、2と同様に、訂正事項3、4に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3、4は、それぞれ訂正事項1、2に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであり、いずれの訂正事項も、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
5.小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
第2のとおり本件訂正請求が認められたことから、本件特許の請求項1~7に係る発明(以下「本件発明1~7」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
平滑剤として分子中にエステル結合を3つ以上有するエステル化合物、及び分子中に硫黄元素を有するエステル化合物から選ばれる少なくとも一種のエステル化合物を含み、ストレート給油に用いられる合成繊維用処理剤であって、前記合成繊維用処理剤中における水分量が0.1質量%~(0.8×100)/(100+300+0.8)質量%、0.5質量%~(1.8×100)/(100+200+1.8)質量%、(1.6×100)/(100+100+1.6)質量%~(1.0×100)/(100+10+1.0)質量%、(1.3×100)/(100+10+1.3)質量%、(1.7×100)/(100+10+1.7)質量%~2質量%、(2.6×100)/(100+10+2.6)質量%、又は(4.5×100)/(100+10+4.5)質量%~5質量%であることを特徴とする合成繊維用処理剤。
【請求項2】
さらに非イオン界面活性剤、及びイオン界面活性剤を含む請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項3】
前記イオン界面活性剤が、2級アルカンスルホン酸化合物を含み、
前記平滑剤、前記非イオン界面活性剤、及び前記イオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量%とすると、前記2級アルカンスルホン酸化合物の含有割合が0.01~10質量%である請求項2に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項4】
前記イオン界面活性剤が、有機リン酸エステル化合物を含み、
前記平滑剤、前記非イオン界面活性剤、及び前記イオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量%とすると、前記有機リン酸エステル化合物の含有割合が0.01~10質量%である請求項2又は3に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項5】
前記平滑剤、前記非イオン界面活性剤、及び前記イオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量部とすると、希釈剤を0.1~400質量部の割合で含む請求項2~4のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項6】
前記合成繊維用処理剤中の水分量が0.5質量%~(1.8×100)/(100+200+1.8)質量%、(1.6×100)/(100+100+1.6)質量%~(1.0×100)/(100+10+1.0)質量%、(1.3×100)/(100+10+1.3)質量%、(1.7×100)/(100+10+1.7)質量%~2.0質量%である請求項1~5のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤を、紡糸工程において、合成繊
維にストレート給油することを特徴とする合成繊維の製造方法。」
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1.取消理由の概要
本件発明1~7に対して、当審が令和2年12月22日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)理由1(特許法第29条第1項第3号:新規性)
請求項1~7に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(2)理由2(特許法第29条第2項:進歩性)
請求項1~7に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
[引用文献等一覧]
1.国際公開第2016/125577号(甲第1号証)
2.メルソラートH95の添付文書(甲第3号証)
3.HOSTAPUR SAS93の添付文書(甲第4号証)
4.特開2017-57345号公報(当審の職権調査で発見した文献)
2.当審の判断
(1)引用文献の記載事項、引用発明
引用文献1には、次の事項が記載されている。
「[0091] また、本発明の合成繊維用処理剤は、更に原液安定剤(例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール)を含有してもよい。処理剤に占める原液安定剤の重量割合は、0.1~30重量%が好ましく、0.5~20重量%がさらに好ましい。」
「[0092] 本発明の合成繊維用処理剤は、不揮発分のみからなる前述の成分で構成されていてもよく、不揮発分と原液安定剤とから構成されてもよく、不揮発分を低粘度鉱物油で希釈したものでもよく、水中に不揮発分を乳化した水系エマルジョンであってもよい。本発明の合成繊維用処理剤が水中に不揮発分を乳化した水系エマルジョンの場合、不揮発分の濃度は5~35重量%が好ましく、6~30重量%がより好ましい。不揮発分を低粘度鉱物油で希釈した処理剤の粘度(30℃)は、繊維材料に均一に付与させる点から、3~120mm2/sが好ましく、5~100mm2/sがさらに好ましい。」
「[0100] 以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、ここに記載した実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例における「部」および「%」は、いずれも「重量部」および「重量%」を意味する。
[有機スルホン酸化合物(C)を含む原料X]
(原料X-1)
有機スルホン酸化合物(C)を含む原料X-1として、HOSTAPUR SAS93(ヘキスト社製、有機スルホン酸化合物(C)93重量%)を用いた。原料X-1には、多量のボウ硝が含まれている。原料X-1に含まれる硫酸イオン(SO42-)及び塩素イオン(Cl-)の含有量(重量割合)をイオンクロマトグラフにて測定したところ、有機スルホン酸化合物(C)に対して、硫酸イオンは23950ppmであり、塩素イオンは62ppmであった。
[0101](原料X-2)
有機スルホン酸化合物(C)を含む原料X-2として、メルソラートH95(バイエル社製、有機スルホン酸化合物(C)95重量%)を用いた。原料X-2には、多量の塩化ナトリウムが含まれている。原料X-2に含まれる硫酸イオン(SO42-)及び塩素イオン(Cl-)の含有量(重量割合)をイオンクロマトグラフにて測定したところ、有機スルホン酸化合物(C)に対して、硫酸イオンは820ppmであり、塩素イオンは30170ppmであった。
[0102][有機スルホン酸化合物(C)を含む原料Yの調製]
有機スルホン酸化合物(C)を含む原料Y-1、Y-2は、上記原料X-1、X-2を精製し、無機物を除去することにより得ることができる。無機物の除去方法は公知の方法を用いることができ、実施例に示す精製方法に限定されない。
[0103](原料Y-1の調製)
メタノール550部とイオン交換水400部を混合し、45±5℃で調温し、攪拌しながら上記の原料X-1 700部を徐々に投入し、完全に溶解させた。次にこの溶解液を室温で20時間静置し、ボウ硝を沈降させた。ボウ硝の含まれない上澄み液を取り出し、60~80℃で減圧蒸留を行い、メタノールと水の一部を除去し、有機スルホン酸化合物(C)を70重量%含む原料Y-1を得た。
原料Y-1に含まれる硫酸イオン(SO42-)及び塩素イオン(Cl-)の含有量(重量割合)をイオンクロマトグラフにて測定したところ、有機スルホン酸化合物(C)に対して、硫酸イオンは1085ppmであり、塩素イオンは60ppmであった。
[0104](原料Y-2の調製)
イオン交換水600部を80±5℃に加温し、撹拌しながら上記の原料X-2 400部を徐々に投入し、完全に溶解させた。次にこの溶解液を40℃に冷却後、イオン交換樹脂を用いて塩化ナトリウムを除去し、有機スルホン酸化合物(C)を40重量%含む原料Y-2を得た。
原料Y-2に含まれる硫酸イオン(SO42-)及び塩素イオン(Cl-)の含有量(重量割合)をイオンクロマトグラフにて測定したところ、有機スルホン酸化合物(C)に対して、硫酸イオンは105ppmであり、塩素イオンは2115ppmであった。
[0105](実施例1~25、比較例1~17)
下記表1から表5に記載の成分を混合撹拌して、各実施例・比較例の合成繊維用処理剤の不揮発分を調製した。表1から表5における処理剤成分の各記号の詳細は、次の通りである。なお、表1~5の処理剤の不揮発分組成の数字は、処理剤の不揮発分に占める各成分(原料X、Yは、それらの不揮発分)の重量割合を示す。
A1-1 2-エチルヘキシルパルミテート
A1-2 イソトリデシルステアレート
A1-3 オレイルオレエート
A1-4 オクチルドデシルステアレート
A2-1 1,6-ヘキサンジオールジオレエート
A2-2 ジオレイルアジペート
A2-3 グリセリントリオレエート
A2-4 トリメチルプロパントリラウレート
A2-5 ペンタエリスリトールテトラオレエート
A2-6 ジグリセリンテトラオレエート
A2-7 ソルビタンテトラステアレート
A3-1 ジオレイルチオジプロピオネート
A3-2 ジイソセチルアルコールチオジプロピオネート
A3-3 ヘキサンジオールジオクタデシルチオプロピオネート
A3-4 トリメチロールプロパントリデシルチオプロピオネート
B-1 ジグリセリンジオレエート
B-2 グリセリンモノオレエート
B-3 グリセリンモノステアレート
B-4 ポリグリセリンジオレエート
B-5 ソルビタンモノオレエート
B-6 ソルビタンセスキオレエート
D-1 ステアリルPOEOポリエーテル(PO/EO=50/50、分子量1600、ランダム付加)
D-2 2-エチルヘキシルPOEOポリエーテル(PO/EO=60/40、分子量1700、ブロック付加)
D-3 sec-C12,14アルキルPOEOポリエーテル(PO/EO=30/70、分子量650、ブロック付加)
D-4 イソブチルPOEOポリエーテル(PO/EO=50/50、分子量1800、ランダム付加)
D-5 ラウリルPOEOポリエーテル(PO/EO=25/75、分子量850、ランダム付加)
E-1 C12,13アルキルPOE(3)デカネート
E-2 C12,13アルキルPOEO(PO/EO=25/75)ラウレート
E-3 デシルPOEO(PO/EO=25/75)オクタネート
F-1 POE(25)硬化ヒマシ油エーテルとマレイン酸、ステアリン酸縮合物
F-2 POE(25)硬化ヒマシ油トリイソステアレート
F-3 POE(20)硬化ヒマシ油エーテルトリオレエート
F-4 POE(20)硬化ヒマシ油エーテル
F-5 POE(20)グリセリントリオレエート
H-1 ジグリセリン
H-2 ソルビタン
G-1 イソセチルホスフェート・ステアリルアミン塩
G-2 POE(3)C12,13ホスフェート・POE(10)ラウリルアミノエーテル塩
G-3 POE(3)C12,13ホスフェート・POE(3)オレイルアミノエーテル塩
G-4 イソステアリルホスフェート・ジブチルエタノールアミン塩」
「[0109]これらの処理剤不揮発分と炭素数13のパラフィンオイルを1:1の重量比で混合して合成繊維用処理剤を調製した。次に、470デシテックス、68フィラメントの丸断面ナイロン6,6フィラメントを溶融紡糸し、調製した処理剤をジェットノズル給油法により、得られた糸条に対して1重量%となるように付与した後、巻き取ることなく210℃で延伸倍率5倍にホットローラーを用いて多段熱延伸して巻き取り、エアバッグ用合成繊維フィラメントを得た。このエアバッグ用合成繊維フィラメントについて、下記評価方法にて、製糸時の延伸性、製糸時の延伸ローラー上での発煙量、製糸時の延伸ローラーの汚れ、原糸の処理剤脱落性を評価した。その結果を表1から表5に示す。」
「[0118][表1]
[0119][表2]
」
上記の[0118][表1]に示された実施例6に着目すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「平滑成分(A)として、オクチルドデシルステアレート(A1-4)10重量%、トリメチロールプロパントリラウレート(A2-4)40重量%、ジオレイルチオジプロピオネート(A3-1)10重量%を含み、さらに、ソルビタンモノオレエート(B-5)10重量%、有機スルホン酸化合物(C)を40重量%含む原料(Y-2)1重量%、ラウリルPOEOポリエーテル(PO/EO=25/75、分子量850、ランダム付加)(D-5)20重量%、C12,13
アルキルPOEO(PO/EO=25/75)ラウレート(E-2)5重量%、POE(20)グリセリントリオレエート(F-5)7重量%、イソステアリルホスフェート・ジブチルエタノールアミン塩(G-4)2重量%を不揮発分として含み、不揮発分と炭素数13のパラフィンオイルを1:1の重量比で混合して調製した合成繊維用処理剤。」
また、上記の[0119][表2]に示された実施例11に着目すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
「平滑成分(A)として、イソトリデシルステアレート(A1-2)5重量%、トリメチルプロパントリラウレート(A2-4)30重量%、ジイソセチルアルコールチオジプロピオネート(A3-2)20重量%を含み、さらに、ポリグリセリンジオレエート(B-4)20重量%、有機スルホン酸化合物(C)を70重量%含む原料(Y-1)1重量%、ラウリルPOEOポリエーテル(PO/EO=25/75、分子量850、ランダム付加)(D-5)12重量%、C12,13アルキルPOE(3)デカネート(E-1)5重量%、POE(20)グリセリントリオレエート(F-5)5重量%、イソセチルホスフェート・ステアリルアミン塩(G-1)2重量%を不揮発分として含み、不揮発分と炭素数13のパラフィンオイルを1:1の重量比で混合して調製した合成繊維用処理剤。」
(2)本件発明1について
ア 引用発明1を主引用発明とした検討
(ア)対比
本件発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「トリメチロールプロパントリラウレート(A2-4)」、「ジオレイルチオジプロピオネート(A3-1)」はそれぞれ、本件発明1の「分子中にエステル結合を3つ以上有するエステル化合物」、「分子中に硫黄元素を有するエステル化合物」に相当するから、引用発明1の「平滑成分(A)として、オクチルドデシルステアレート(A1-4)10重量%、トリメチロールプロパントリラウレート(A2-4)40重量%、ジオレイルチオジプロピオネート(A3-1)10重量%を含」むことは、本件発明1の「平滑剤として分子中にエステル結合を3つ以上有するエステル化合物、及び分子中に硫黄元素を有するエステル化合物から選ばれる少なくとも一種のエステル化合物を含」むことに相当する。
また、本件特許明細書等には「ストレート給油」が「合成繊維用処理剤を低粘度鉱物油等の希釈剤で希釈又は希釈せずそのままの状態で付与する」ものであるとの記載があるところ(【0002】)、引用発明1の「合成繊維用処理剤」は、「不揮発分」を「炭素数13のパラフィンオイル」で希釈するものであるから、「ストレート給油に用いられる合成繊維用処理剤」といえる。
上記(1)の引用文献1の[0104]の記載から、原料Y-2には、有機スルホン酸化合物(C)40重量%とイオン交換水60重量%を含むものであるといえる。そして、引用発明1の「合成繊維用処理剤」は「不揮発分と炭素数13のパラフィンオイルを1:1の重量比で混合して調製した」ものであること、及び上記(1)の引用文献1の「合成繊維用処理剤は、更に原液安定剤(例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール)を含有してもよい。」([0091])の記載から、実施例6に示される引用発明1の合成繊維用処理剤中には、イオン交換水が、(60重量%/40重量%)/(100+1×(60重量%/40重量%)+100)×100=約0.74重量%含まれるといえる。
そうすると、本件発明1と引用発明1とは、次の点で一致し、相違する。
[一致点]
「平滑剤として分子中にエステル結合を3つ以上有するエステル化合物、及び分子中に硫黄元素を有するエステル化合物から選ばれる少なくとも一種のエステル化合物を含み、ストレート給油に用いられる合成繊維用処理剤であることを特徴とする合成繊維用処理剤。」
[相違点1]
本件発明1は、「合成繊維用処理剤中における水分量が0.1質量%~(0.8×100)/(100+300+0.8)質量%、0.5質量%~(1.8×100)/(100+200+1.8)質量%、(1.6×100)/(100+100+1.6)質量%~(1.0×100)/(100+10+1.0)質量%、(1.3×100)/(100+10+1.3)質量%、(1.7×100)/(100+10+1.7)質量%~2質量%、(2.6×100)/(100+10+2.6)質量%、又は(4.5×100)/(100+10+4.5)質量%~5質量%である」のに対して、引用発明1は、合成繊維用処理剤中における水分量が約0.74重量%である点。
(イ)判断
相違点1について検討する。
上記(1)の引用文献1の[0102]、[0104]の記載から、引用発明1における水分量は、イオン交換水に由来するものであり、当該イオン交換水は、原料X-2を溶解させ、イオン交換樹脂を用いて無機物を除去して、Y-2を得るために投入される。
そうすると、本件発明1の課題である糸揺れの低減を図るために、引用発明1において、イオン交換樹脂により無機物を除去するために、原料X-2を溶解させるイオン交換水の量を変えて、相違点1に係る本件発明1の構成とする動機付けはない。
また、相違点1に係る本件発明1の構成は、引用文献1~4及び特開2015-28232号公報(甲第2号証)に記載されておらず、本件出願前において周知技術であるともいえない。
したがって、引用発明1において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、本件発明1は、引用発明1ではなく、また、当業者が引用発明1に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 引用発明2を主引用発明とした検討
(ア)対比
引用発明2の「トリメチロールプロパントリラウレート(A2-4)」、「ジイソセチルアルコールチオジプロピオネート(A3-2)」はそれぞれ、本件発明1の「分子中にエステル結合を3つ以上有するエステル化合物」、「分子中に硫黄元素を有するエステル化合物」に相当するから、引用発明1の「平滑成分(A)として、イソトリデシルステアレート(A1-2)5重量%、トリメチルプロパントリラウレート(A2-4)30重量%、ジイソセチルアルコールチオジプロピオネート(A3-2)20重量%を含」むことは、本件発明1の「平滑剤として分子中にエステル結合を3つ以上有するエステル化合物、及び分子中に硫黄元素を有するエステル化合物から選ばれる少なくとも一種のエステル化合物を含」むことに相当する。
また、本件明細書には「ストレート給油」が「合成繊維用処理剤を低粘度鉱物油等の希釈剤で希釈又は希釈せずそのままの状態で付与する」ものであるとの記載があるところ(段落0002)、引用発明2の「合成繊維用処理剤」は、「不揮発分」を「炭素数13のパラフィンオイル」で希釈するものであるから、「ストレート給油に用いられる合成繊維用処理剤」といえる。
上記(1)の引用文献1の[0103]の記載から、原料Y-1には、有機スルホン酸化合物(C)70重量%とイオン交換水30重量%を含むものであるといえる。そして、引用発明2の「合成繊維用処理剤」は「不揮発分と炭素数13のパラフィンオイルを1:1の重量比で混合して調製した」ものであること、及び上記(1)の引用文献1の「合成繊維用処理剤は、更に原液安定剤(例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール)を含有してもよい。」([0091])の記載から、実施例11に示される引用発明2の合成繊維用処理剤中には、イオン交換水が、(30重量%/70重量%)/(100+1×(30重量%/70重量%)+100)×100=約0.21重量%含まれるといえる。
そうすると、本件発明1と引用発明2とは、次の点で一致し、相違する。
[一致点]
「平滑剤として分子中にエステル結合を3つ以上有するエステル化合物、及び分子中に硫黄元素を有するエステル化合物から選ばれる少なくとも一種のエステル化合物を含み、ストレート給油に用いられる合成繊維用処理剤であることを特徴とする合成繊維用処理剤。」
[相違点2]
本件発明1は、「合成繊維用処理剤中における水分量が0.1質量%~(0.8×100)/(100+300+0.8)質量%、0.5質量%~(1.8×100)/(100+200+1.8)質量%、(1.6×100)/(100+100+1.6)質量%~(1.0×100)/(100+10+1.0)質量%、(1.3×100)/(100+10+1.3)質量%、(1.7×100)/(100+10+1.7)質量%~2質量%、(2.6×100)/(100+10+2.6)質量%、又は(4.5×100)/(100+10+4.5)質量%~5質量%である」のに対して、引用発明2は、合成繊維用処理剤中における水分量が約0.21重量%である点。
(イ)判断
相違点2について検討するに、上記ア(イ)における判断と同様に、引用発明2において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、本件発明1は、引用発明2ではなく、また、当業者が引用発明2に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明2~7について
本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(2)で検討したのと同じ理由により、引用発明1又は引用発明2ではなく、また、当業者が引用発明1又は引用発明2に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1.特許異議申立理由の概要
本件訂正前の請求項1~7に係る発明についての特許は、次のとおり特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、その発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
本件訂正前の請求項1~7に係る合成繊維用処理剤を、ポリエステル(ポリエチレンテレフタール)以外の合成繊維の製造に用いることは、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるから、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではない。
2.当審の判断
本件発明の課題は、「ストレート給油で合成繊維用処理剤を付与する紡糸工程において発生する糸揺れを低減することができる合成繊維用処理剤及び合成繊維の製造方法を提供する」(【0005】)ことである。
そして、「紡糸工程においてストレート給油する合成繊維用処理剤において、平滑剤として所定のエステル化合物を含み、所定の割合の水分を有することが正しく好適である」(【0006】)と記載されているように、「平滑剤として所定のエステル化合物を含み、所定の割合の水分を有する」ことで、課題を解決しようとするものである。
また、「合成繊維」に関して、「本実施形態の合成繊維の製造方法は、第1実施形態の処理剤を紡糸工程において合成繊維にストレート給油により付着させる工程を含む製造方法である。製造する合成繊維の具体例としては、特に制限はなく、例えば(1)ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリ乳酸エステル等のポリエステル系繊維、(2)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、(3)ポリアクリル、モダアクリル等のポリアクリル系繊維、(4)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維等が挙げられる。」(【0022】)と記載されている。
本件発明1は、「平滑剤として分子中にエステル結合を3つ以上有するエステル化合物、及び分子中に硫黄元素を有するエステル化合物から選ばれる少なくとも一種のエステル化合物を含み」、「前記合成繊維用処理剤中における水分量」を「0.1質量%~(0.8×100)/(100+300+0.8)質量%、0.5質量%~(1.8×100)/(100+200+1.8)質量%、(1.6×100)/(100+100+1.6)質量%~(1.0×100)/(100+10+1.0)質量%、(1.3×100)/(100+10+1.3)質量%、(1.7×100)/(100+10+1.7)質量%~2質量%、(2.6×100)/(100+10+2.6)質量%、又は(4.5×100)/(100+10+4.5)質量%~5質量%」とすることで、本件特許明細書等の【0022】に例示されたような合成繊維の製造方法において、糸揺れを低減することができるといえる。
したがって、訂正後の本件発明1~7が、当該発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではないから、本件発明1~7は、発明の詳細な説明に記載したものである。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び申立人の主張する特許異議申立理由によっては、本件発明1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2019-701038