審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2020-700857

炭素繊維前駆体用処理剤の水性液及び炭素繊維前駆体

審判番号
2020-700857
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-184527
登録番号
6693633
請求日
2020年11月09日
審決日
2022年06月29日
公報発行日
2022年09月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】竹本油脂株式会社
  • 【権利者代理人】恩田 誠
  • 【権利者代理人】恩田 博宣
  • 【異議申立人】瀬田 宏
審判長/審判官
  • 審判長 藤原 直欣
  • 審判官 佐々木 正章
  • 審判官 藤井 眞吾
分類
P1651.113-YAA(D06M) / P1651.121-YAA(D06M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6693633号発明「炭素繊維前駆体用処理剤の水性液及び炭素繊維前駆体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6693633号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第6693633号の請求項1~5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6693633号の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和元年10月7日の出願であって、令和2年4月20日に特許権の設定登録がされ、令和2年5月13日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和2年11月9日:特許異議申立人瀬田宏(以下「申立人」という。)による特許異議の申立て 令和3年1月19日付け:取消理由通知書 令和3年3月17日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和3年5月13日:申立人による意見書の提出 令和3年9月3日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和3年11月5日:特許権者による意見書、訂正請求書及び上申書の提出 令和3年12月15日:申立人による意見書の提出 令和4年2月9日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和4年4月13日:特許権者による意見書、訂正請求書及び上申書の提出 令和4年6月1日:申立人による意見書の提出 なお、令和3年3月17日提出の訂正請求書及び令和3年11月5日提出の訂正請求書による訂正の請求は、令和4年4月13日に訂正請求書が提出されたことにより、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の請求についての判断 1 訂正の内容 令和4年4月13日提出の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6693633号の明細書、特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める。」というものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。下線は、訂正箇所を示す。 (1)訂正事項1 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に 「アミノ変性シリコーン及び分子量分布(Mw/Mn)が1.05~1.50の非イオン界面活性剤を含有する炭素繊維前駆体用処理剤と、水とを含み、」とあるのを、 「アミノ変性シリコーン及び分子量分布(Mw/Mn)が1.05~1.081,1.087~1.109,1.155,1.161~1.50の非イオン界面活性剤を含有する炭素繊維前駆体用処理剤と、水とを含み、」に訂正する。(請求項1を引用する請求項2~5についても同様に訂正する。) (2)訂正事項2 本件訂正前の明細書の【0007】に 「上記課題を解決するために本発明の一態様である炭素繊維前駆体用処理剤の水性液は、アミノ変性シリコーン及び分子量分布(Mw/Mn)が1.05~1.50の非イオン界面活性剤を含有する炭素繊維前駆体用処理剤と、水とを含むことを特徴とする。」とあるのを、 「上記課題を解決するために本発明の一態様である炭素繊維前駆体用処理剤の水性液は、アミノ変性シリコーン及び分子量分布(Mw/Mn)が1.05~1.081,1.087~1.109,1.155,1.161~1.50の非イオン界面活性剤を含有する炭素繊維前駆体用処理剤と、水とを含むことを特徴とする。」に訂正する。 ここで、訂正前の請求項1~5は、請求項2~5が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を直接引用する関係にあるから、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項〔1~5〕について請求されている。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 上記訂正事項1は、請求項1において、「非イオン界面活性剤」の「分子量分布(Mw/Mn)」の範囲について、「1.05~1.50」から「1.05~1.081,1.087~1.109,1.155,1.161~1.50」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項1は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項1は、明細書の【0057】の【表3】中の「実施例5」、「実施例6」、「実施例8」、「実施例9」及び「実施例11」の「非イオン界面活性剤分子量分布(Mw/Mn)」の欄の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 上記訂正事項2は、訂正事項1が、請求項1において、「非イオン界面活性剤」の「分子量分布(Mw/Mn)」の範囲について、「1.05~1.081,1.087~1.109,1.155,1.161~1.50」のものに限定したことに伴い、本件特許明細書の【0007】の記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項2は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項2は、明細書の【0057】の【表3】中の「実施例5」、「実施例6」、「実施例8」、「実施例9」及び「実施例11」の「非イオン界面活性剤分子量分布(Mw/Mn)」の欄の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。 (7)小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項において準用する同法第126条第4~6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~5に係る発明(以下「本件発明1~5」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 アミノ変性シリコーン及び分子量分布(Mw/Mn)が1.05~1.081,1.087~1.109,1.155,1.161~1.50の非イオン界面活性剤を含有する炭素繊維前駆体用処理剤と、水とを含み、 前記非イオン界面活性剤が、下記の化1で示され、且つ化1中のR1の炭素数の異なる2種以上の非イオン界面活性剤を含むものであることを特徴とする炭素繊維前駆体用処理剤の水性液。 【化1】 [図:0001388333000001.jpg] (化1において R1:炭素数8~18の直鎖の炭化水素基、又は炭素数8~18の分岐鎖の炭化水素基 AO:炭素数2~3のオキシアルキレン基 R2:水素原子、又は炭素数1~4の炭化水素基 n:1~60の整数。) 【請求項2】 前記アミノ変性シリコーンが、25℃の動粘度が50~4000mm2/sのものである請求項1に記載の炭素繊維前駆体用処理剤の水性液。 【請求項3】 前記アミノ変性シリコーン、前記水、及び前記非イオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量部とすると、前記アミノ変性シリコーンと前記非イオン界面活性剤との含有割合の合計が20~50質量部、及び前記水が50~80質量部の割合で含有するものである請求項1又は2に記載の炭素繊維前駆体用処理剤の水性液。 【請求項4】 前記非イオン界面活性剤に対する前記アミノ変性シリコーンの含有量の質量比が、前記アミノ変性シリコーン/前記非イオン界面活性剤=95/5~75/25である請求項1~3のいずれか一項に記載の炭素繊維前駆体用処理剤の水性液。 【請求項5】 請求項1~4のいずれか一項に記載の炭素繊維前駆体用処理剤が付着していることを特徴とする炭素繊維前駆体。」 第4 当審の判断 1 取消理由の概要 本件訂正前の本件特許に対して通知した令和4年2月9日付け取消理由通知(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。 (1)(新規性)本件特許の請求項1~5に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (2)(進歩性)本件特許の請求項1~5に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された甲第1号証に記載された発明、又は甲第2号証に記載された発明及び周知・慣用の事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 <引用文献等> 甲第1号証:特開2016-56497号公報 甲第2号証:国際公開第2018/100788号 甲第3号証:株式会社東ソー分析センター,2020年10月13日付け“分析・試験報告書”,報告No QK2010006 甲第4号証:株式会社日本触媒,“界面活性剤 ソフタノ-ル”カタログ 甲第5号証:株式会社東ソー分析センター,2020年10月14日付け“分析・試験報告書”,報告No QK2010010 甲第6号証:“TSKgel/TOYOPERL総合カタログ2016-2018”[online],p.116~119,インターネット<URL:https://separations.asia.tosohbioscience.com/litjp/productcat> 2 当審の判断 (1-1)本件発明1の甲第1号証を主引用発明とした進歩性について ア 甲第1号証に記載された発明 甲第1号証には、以下の記載がある。 ・「【請求項1】 下記式(1a)で示されるヒドロキシ安息香酸エステル(A)と; 下記式(3e)で示されるアミノ変性シリコーン(H)と; 前記ヒドロキシ安息香酸エステル(A)と相溶し、空気雰囲気下での熱質量分析において300℃における残質量率R1が70質量%以上100質量%以下であり、かつ100℃で液体である有機化合物(X)と; を含む、炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤。 【化1】 [図:0001388333000002.jpg] (式(1a)中、R1aは炭素数8以上20以下の炭化水素基である。) 【化2】 [図:0001388333000003.jpg] (式(3e)中、qeおよびreは1以上の任意の数であり、seは1以上5以下であり、ジメチルシロキサンユニットとメチルアミノアルキルシロキサンユニットはランダムである。)」 ・「【技術分野】 【0001】 本発明は、炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤、炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物、および炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤処理液に関する。」 ・「【0013】 本発明の目的は、炭素繊維束製造工程における単繊維間の融着を効果的に防止すると共に、操業性低下を抑制し、かつ集束性が良好な炭素繊維前駆体アクリル繊維束および機械的物性に優れた炭素繊維束を生産性よく得ることができ、しかも乳化剤の使用量が少なくても容易に乳化できる炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤、炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物、および炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤処理液を提供することにある。」 ・「【0036】 <アミノ変性シリコーン(H)> アミノ変性シリコーン(H)は、前駆体繊維束との馴染みが良く、言い換えれば、アミノ変性シリコーン(H)のアミノ基とアクリル繊維構造のニトリル基との相互作用が強く、油剤の前駆体繊維束との親和性および耐熱性の向上に有効である。 アミノ変性シリコーン(H)は、下記式(3e)で示される。 【0037】 【化7】 [図:0001388333000004.jpg] 【0038】 式(3e)中、qeおよびreは1以上の任意の数であり、seは1以上5以下であり、ジメチルシロキサンユニットとメチルアミノアルキルシロキサンユニットはランダムである。 【0039】 式(3e)中のアミノ変性シリコーンのqeは1以上の任意の数であることが好ましく、10以上300以下であることがより好ましく、50以上200以下であることがさらに好ましい。また、reは1以上の任意の数であることが好ましく、2以上10以下であることがより好ましく、2以上5以下であることがさらに好ましい。式(3e)中のqeおよびreが上記範囲内であれば、十分な耐熱性や炭素繊維束の性能発現性を得ることができる。また、qeが10以上であると、十分な耐熱性が得られ単繊維間の融着を効果的に防止することができる。また、qeが300以下であれば油剤、界面活性剤および水を乳化処理して得られる油剤処理液の調製が容易であり、安定な油剤処理液が得られる。また、reが2以上であると、前駆体繊維束と十分な親和性が得られ、単繊維間の融着を効果的に防止することができる。また、reが10以下であると、油剤組成物そのものが十分な耐熱性を有するため、やはり単繊維間の融着を防止することができる。 式(3e)中のアミノ変性シリコーンのseは1以上5以下であることが好ましく、アミノ変性部がアミノプロピル基、すなわちseが3であることがより好ましい。なお、式(3e)で示されるアミノ変性シリコーンは複数の化合物の混合物である場合もある。従って、qe、re、seはそれぞれ整数でない場合もあり得る。」 ・「【0078】 (界面活性剤) 界面活性剤の含有量は、油剤100質量部に対し、10質量部以上100質量部以下が好ましく、20質量部以上75質量部以下がより好ましい。界面活性剤の含有量が20質量部以上であれば乳化しやすく、乳化物の安定性が良好となる。一方、界面活性剤の含有量が75質量部以下であれば、油剤組成物が付着した前駆体繊維束の集束性が低下するのを抑制できる。加えて、該前駆体繊維束を焼成して得られる炭素繊維束の機械的物性が低下しにくい。 また、界面活性剤の含有量は、油剤組成物の総質量に対して20質量%以上40質量%以下が好ましく、より好ましくは30質量%以上40質量%以下である。 【0079】 界面活性剤としては公知の様々な物質を用いることができるが、炭素繊維前駆体アクリル繊維束用油剤の界面活性剤としては特に非イオン系界面活性剤が好適である。 非イオン系界面活性剤としては、例えば高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪族エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪族エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪族アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物などのポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤;グリセロールの脂肪族エステル、ペンタエリストールの脂肪族エステル、ソルビトールの脂肪族エステル、ソルビタンの脂肪族エステル、ショ糖の脂肪族エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミドなどの多価アルコール型非イオン性界面活性剤等が挙げられる。 これら非イオン系界面活性剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。 【0080】 非イオン系界面活性剤としては、下記式(4e)で示されるプロピレンオキサイド(PO)ユニットとエチレンオキサイド(EO)ユニットからなるブロック共重合型ポリエーテル、および/または、下記式(5e)で示されるEOユニットからなるポリオキシエチレンのアルキルエーテルが特に好ましい。 【0081】 【化11】 [図:0001388333000005.jpg] 【0082】 【化12】 [図:0001388333000006.jpg] 」 ・「【0087】 一方、式(5e)中、R8eは炭素数10以上20以下の炭化水素基である。炭素数が10以上であると、油剤組成物が十分な熱的安定性を有すると共に、適切な親油性を発現しやすくなる。一方、炭素数が20以下であると、油剤組成物の粘度が高くなりすぎず、油剤組成物が液体であるため、十分な操業性を維持できる。また、親水基とのバランスがよく、十分な乳化安定性が得られる。」 ・「【0089】 式(5e)中、teはEOの平均付加モル数を示し、3以上20以下であり、5以上15以下が好ましく、5以上10以下がより好ましい。teが3以上であると、水と十分馴染みやすく、十分な乳化安定性が得られる。一方、teが20以下であると、粘性が高くなりすぎず、油剤組成物の構成成分として用いた場合、得られる油剤組成物が付着した前駆体繊維束は十分に分繊しやすくなる。 なお、R8eは親油性に関与する要素であり、teは親水性に関与する要素である。従って、teの値は、R8eとの組み合わせにより適宜決定される。」 ・「【0110】 水系乳化液中の油剤組成物の濃度は、2質量%以上40質量%以下が好ましく、10質量%以上30質量%以下がより好ましく、20質量%以上30質量%以下が特に好ましい。油剤組成物の濃度が2質量%以上であれば、必要な量の油剤を水膨潤状態の前駆体繊維束に付与し易くなる。一方、油剤組成物の濃度が40質量%以下であれば、水系乳化液の安定性が優れ、乳化の破壊が起こり難い。」 ・「【0133】 <アミノ変性シリコーン(H)> ・H-1:上記式(3e)の構造で、qe≒80、re≒2、se=3であり、25℃における動粘度が90mm2/s、アミノ当量が2500g/molであるアミノ変性シリコーン(Gelest,Inc.製、商品名:AMS-132)。 ・H-9:上記式(3e)の構造で、qe≒120、re≒1、se=3であり、25℃における粘度が150mm2/s、アミノ当量が6000g/molであるアミノ変性シリコーン。」 ・「【0143】 <非イオン系界面活性剤> ・K-1:上記式(4e)の構造で、xe≒75、ye≒30、ze≒75、R6eおよびR7eが共に水素原子であるPO/EOブロック共重合型ポリエーテル(三洋化成工業株式会社製、商品名:ニューポールPE-68)。 ・K-2:上記式(5e)の構造で、te≒9、R8eがラウリル基であるポリオキシエチレンラウリルエーテル(和光純薬工業株式会社、商品名:ニッコールBL-9EX)。 ・K-3:上記式(5e)の構造で、te≒7、R8eがラウリル基であるポリオキシエチレンラウリルエーテル(日本エマルジョン株式会社、商品名:EMALEX707)。 ・K-4:上記式(5e)の構造で、te≒9、R8eがドデシル基であるポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王株式会社、商品名:エマルゲン109P)。 ・K-5:上記式(4e)の構造で、xe≒10、ye≒20、ze≒10、R6eおよびR7eが共に水素原子であるPO/EOブロック共重合型ポリエーテル(株式会社ADEKA製、商品名:アデカプルロニック L-44)。 ・K-6:上記式(4e)の構造で、xe≒75、ye≒30、ze≒75、R6eおよびR7eが共に水素原子であるPO/EOブロック共重合型ポリエーテル(BASFジャパン株式会社製、商品名:Pluronic PE6800)。 ・K-7:上記式(5e)の構造で、te≒9、R8eがドデシル基であるノナエチレングリコールドデシルエーテル(日光ケミカルズ株式会社、商品名:NIKKOL BL-9EX)。 ・K-10:上記式(5e)の構造で、te≒5、R8eがトリデシル基であるポリオキシエチレントリデシルエーテル(日本乳化剤株式会社、商品名:ニューコール 1305)。」 ・「【0154】 「実施例1」 <油剤組成物および油剤処理液の調製> ヒドロキシ安息香酸エステル(A-1)、アミノ変性シリコーン(H-9)、シクロヘキサンジカルボン酸エステル(C-2)、帯電防止剤(M-2)を混合し、この混合物にさらに非イオン系界面活性剤(K-4)を加えて十分に混合攪拌し、油剤組成物を調製した。 ついで、油剤組成物の濃度が30質量%になるように、油剤組成物を攪拌しながらイオン交換水を加え、ホモミキサーで乳化した。この状態での乳化粒子の平均粒子径をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名:LA-910)を用いて測定したところ、3.0μm程度であった。 その後、さらに高圧ホモジナイザーにより、乳化粒子の平均粒子径が0.2μmになるまで油剤組成物を分散させ、水系乳化液を得た。得られた水系乳化液をイオン交換水でさらに希釈し、油剤組成物の濃度が1.3質量%の油剤処理液を調製した。 油剤組成物中の各成分の種類と配合量(質量部)を表1に示す。 また、乳化時のハンドリング性を評価した。結果を表1に示す。 【0155】 <炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造> 油剤を付着させる前駆体繊維束は、次の方法で調製した。アクリロニトリル系共重合体(組成比:アクリロニトリル/アクリルアミド/メタクリル酸=96.5/2.7/0.8(質量比))を21質量%の割合でジメチルアセトアミドに分散し、加熱溶解して紡糸原液を調製し、濃度67質量%のジメチルアセトアミド水溶液を満たした38℃の凝固浴中に孔径(直径)45μm、孔数60000の紡糸ノズルより吐出し凝固糸とした。凝固糸は、水洗槽中で脱溶媒するとともに3倍に延伸して水膨潤状態の前駆体繊維束とした。 先に得られた油剤処理液を満たした油剤処理槽に水膨潤状態の前駆体繊維束を導き、油剤を付与させた。 その後、油剤が付与された前駆体繊維束を表面温度150℃のローラーにて乾燥緻密化した後に、圧力0.3MPaの水蒸気中で5倍延伸を施し、炭素繊維前駆体アクリル繊維束を得た。得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束のフィラメント数は60000本、単繊維繊度は1.0dTexであった。 製造工程における集束性および操業性を評価し、得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束の油剤組成物の付着量を測定した。これらの結果を表1に示す。」 ・「【0157】 「実施例2~19、参考例20」 油剤組成物を構成する各成分の種類と配合量を表1、2、3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして油剤組成物および油剤処理液を調製し、炭素繊維前駆体アクリル繊維束および炭素繊維束を製造し、各測定および評価を実施した。これらの結果を表1、2、3に示す。」 ・「【0161】 【表3】 [図:0001388333000007.jpg] 」 そして、上記【0161】の【表3】の「実施例14」、「実施例17」、「参考例20」には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 「エステル化合物A-1を40、35又は5質量%、エステル化合物C-2を10、40又は5質量%、アミノ変性シリコーンH-1を20、5又は30質量%、非イオン系界面活性剤K-4を15、10又は30質量%、非イオン系界面活性剤K-10を15、10又は30質量%からなる油剤組成物の濃度が30質量%になるように、油剤組成物を攪拌しながらイオン交換水を加え、油剤組成物を分散させた水系乳化液。」 (なお、上記認定した水系乳化液については、甲1の【0157】において得られた水系乳化液をイオン交換水でさらに希釈しているが、本件発明も同様に希釈して用いるものである(【0052】)。) イ 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明の「アミノ変性シリコーンH-1」は、本件発明1の「アミノ変性シリコーン」に相当する。 (イ)甲1発明の「非イオン系界面活性剤K-4を15、10又は30質量%、非イオン系界面活性剤K-10を15、10又は30質量%」は、甲第1号証の【0082】、【0143】の記載及び甲第3号証によると、Mw/Mnが1.16であるから、甲1発明の当該事項と、本件発明1の「分子量分布(Mw/Mn)が1.05~1.081,1.087~1.109,1.155,1.161~1.50の非イオン界面活性剤」であって、「前記非イオン界面活性剤が下記の化1で示され、且つ化1中のR1の炭素数の異なる2種以上の非イオン界面活性剤を含むもの」「 【化1】 [図:0001388333000008.jpg] (化1において R1:炭素数8~18の直鎖の炭化水素基、又は炭素数8~18の分岐鎖の炭化水素基 AO:炭素数2~3のオキシアルキレン基 R2:水素原子、又は炭素数1~4の炭化水素基 n:1~60の整数。)」とは、「前記非イオン界面活性剤が下記の化1で示され、且つ化1中のR1の炭素数の異なる2種以上の非イオン界面活性剤を含むもの」「【化1】 [図:0001388333000009.jpg] (化1において R1:炭素数8~18の直鎖の炭化水素基、又は炭素数8~18の分岐鎖の炭化水素基 AO:炭素数2~3のオキシアルキレン基 R2:水素原子、又は炭素数1~4の炭化水素基 n:1~60の整数。)」の限りで一致する。 (ウ)甲1発明の「イオン交換水」は、本件発明1の「水」に相当する。 (エ)甲1発明の「水系乳化液」は、本件明細書の【0154】及び【0155】を参照すると、さらにイオン交換水で希釈して、炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造に用いるものであるから、本件発明1の「炭素繊維前駆体用処理剤の水性液」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で相違し、一致する。 <一致点> 「アミノ変性シリコーン及び非イオン界面活性剤を含有する炭素繊維前駆体用処理剤と、水とを含み、 前記非イオン界面活性剤が、下記の化1で示され、且つ化1中のR1の炭素数の異なる2種以上の非イオン界面活性剤を含むものである炭素繊維前駆体用処理剤の水性液。 【化1】 [図:0001388333000010.jpg] (化1において R1:炭素数8~18の直鎖の炭化水素基、又は炭素数8~18の分岐鎖の炭化水素基 AO:炭素数2~3のオキシアルキレン基 R2:水素原子、又は炭素数1~4の炭化水素基 n:1~60の整数。)」 <相違点1> 本件発明1は、「分子量分布(Mw/Mn)が1.05~1.081,1.087~1.109,1.155,1.161~1.50」であるのに対して、甲1発明は、1.16である点。 ウ 判断 <相違点1について> 上記相違点1について検討する。 本件発明1の課題は、「経時安定性及び炭素繊維の強度を向上できる炭素繊維前駆体用処理剤の水性液、及び炭素繊維前駆体を提供する」(【0005】)ことであり、分子量分布(Mw/Mn)が1.05~1.50の非イオン界面活性剤を含有することを構成要件の一つとして、経時安定性及び炭素繊維の強度を向上させるものである。 他方、甲1発明の課題は、「炭素繊維束製造工程における単繊維間の融着を効果的に防止すると共に、操業性低下を抑制し、かつ集束性が良好な炭素繊維前駆体アクリル繊維束および機械的物性に優れた炭素繊維束を生産性よく得ることができ、しかも乳化剤の使用量が少なくても容易に乳化できる炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤、炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物、および炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤処理液を提供すること」(【0013】)であり、本件発明とは課題が異なり、その上、甲第1号証には、分子量分布(Mw/Mn)を制御することの記載ないし示唆もない。 甲1発明の分子量分布(Mw/Mn)は1.16であるが、当該分子量分布は本件訂正により本件発明1から除かれているものである。 したがって、甲1発明に接した当業者が、経時安定性及び炭素繊維の強度の向上のために、分子量分布(Mw/Mn)を制御して、1.05~1.081,1.087~1.109,1.155,1.161~1.50の範囲とする動機付けはない。 したがって、甲1発明において、上記相違点1に係る本件発明1の技術的事項とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 エ 小括 したがって、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (1-2)本件発明2~5の甲第1号証を主引用発明とした進歩性について 本件発明2~5は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、さらに限定を付した発明であるから、本件発明2~5と甲1発明とを対比すると、少なくとも上記相違点1の点で相違し、相違点1については、上記(1-1)ウで検討したとおりである。 したがって、本件発明2~5は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (2-1)本件発明1の甲第2号証を主引用発明とした新規性、進歩性について ア 甲第2号証に記載された発明 甲第2号証には、以下の記載がある。 ・「[0001] 本発明は、炭素繊維前駆体用油剤及び炭素繊維前駆体に関し、更に詳しくは炭素繊維前駆体に優れた制電性と集束性を付与すると共に、炭素繊維前駆体の製造機械等に錆が発生するのを抑制することができる炭素繊維前駆体用油剤及びかかる炭素繊維前駆体用油剤が付着した炭素繊維前駆体に関する。」 ・「[0012] 本発明の油剤に供するベース成分としては特に制限はないが、25℃で液状のエポキシ変性シリコーン、25℃で液状のアミノ変性シリコーン及び25℃で液状のアミド変性シリコーンから選ばれる少なくとも一つが好ましい。これらは市販品を使用することができ、25℃で液状のエポキシ変性シリコーンとしては、東レダウコーニング社製の商品名SF-8413(25℃の粘度:17000mm2/s、エポキシ当量:3800g/mol)、東レダウコーニング社製の商品名BY16-876(25℃の粘度:2400mm2/s、エポキシ当量:2800g/mol)、信越化学工業社製の商品名X-22-343(25℃の粘度:25mm2/s、エポキシ当量:620g/mol)等が挙げられる。また25℃で液状のアミノ変性シリコーンとしては、信越化学工業社製の商品名KF-880(25℃の粘度:650mm2/s、アミノ当量:1800g/mol)、信越化学工業社製の商品名KF-8012(25℃の粘度:90mm2/s、アミノ当量:2200g/mol)、信越化学工業社製の商品名KF-8008(25℃の粘度:450mm2/s、アミノ当量:5700g/mol)、信越化学工業社製の商品名KF-8005(25℃の粘度:1200mm2/s、アミノ当量:11000g/mol)、信越化学工業社製の商品名KF-860(25℃の粘度:250mm2/s、アミノ当量:7600g/mol)、信越化学工業社製の商品名KF-393(25℃の粘度:70mm2/s、アミノ当量:350g/mol)、東レダウコーニング社製の商品名FZ-3505(25℃の粘度:90mm2/s、アミノ当量:4000g/mol)、東レダウコーニング社製の商品名BY16-872(25℃の粘度:20000mm2/s、アミノ当量:1800g/mol)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製の商品名TSF4702(25℃の粘度:500mm2/s、アミノ当量:1600g/mol)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製の商品名TSF4706(25℃の粘度:50mm2/s、アミノ当量:1600g/mol)等が挙げられる。更に25℃で液状のアミド変性シリコーンとしては、信越化学工業社製の商品名KF-3935(25℃の粘度:25mm2/s)等が挙げられる。なかでも25℃で液状のアミノ変性シリコーンがより好ましい。これらは、単独で用いることも、また2種以上を併用することもできる。」 ・「[0024] 試験区分1(ベース成分の用意) 下記のベース成分を用意した。 A-1:25℃における動粘度が650mm2/s、アミノ当量が1800g/molであるアミノ変性ポリオルガノシロキサン(信越化学工業社製の商品名KF-880) A-2:25℃における動粘度が90mm2/s、アミノ当量が2200g/molであるアミノ変性ポリオルガノシロキサン(信越化学工業社製の商品名KF-8012) A-3:25℃における動粘度が450mm2/s、アミノ当量が5700g/molであるアミノ変性ポリオルガノシロキサン(信越化学工業社製の商品名KF-8008) A-4:25℃における動粘度が250mm2/s、アミノ当量が7600g/molであるアミノ変性ポリオルガノシロキサン(信越化学工業社製の商品名KF-860) A-5:25℃における動粘度が17000mm2/s、エポキシ当量:3800g/molであるエポキシ変性ポリオルガノシロキサン(東レダウコーニング社製の商品名SF-8413)」 ・「[0035] 試験区分3(非イオン界面活性剤の合成) ポリオキシエチレン(n=7)ドデシルエーテルC-1の合成:ドデカン-1-オール186部(1.0モル)及び水酸化カリウム1部をオートクレーブに仕込み、窒素ガスでパージ後、120℃に加温し、エチレンオキサイド308部(7モル)を圧入して、反応させた。1時間の熟成反応後、触媒を吸着材処理により除去し、反応物を得た。得られた反応物を分析したところ、1分子に1個のドデカン-1-オール基と、合計7個のオキシエチレン単位から構成される化合物であった。これを非イオン界面活性剤C-1とした。 [0036] 非イオン界面活性剤をC-1と同様にして、下記の非イオン界面活性剤を合成又は用意した。 C-2:ポリオキシエチレン(n=5)オクチルエーテル C-3:ポリオキシエチレン(n=40)ドコサニルエーテル C-4:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(日本触媒社製の商品名ソフタノール50) C-5:ポリオキシエチレン(n=40)オクタデシルエーテル C-6:ポリオキシエチレン(n=10)ノニルフェニルエーテル rC-1:β-オクタデシルチオプロピオン酸オクタデセンエステル rC-2:ジオクチルオクタデセンアミンオキサイド rC-3:ヘキサデカン酸ポリエチレングリコール(n=8) rC-4:ポリオキシエチレン(n=30)硬化ひまし油エーテル rC-5:トリメリット酸トリイソデシルエステル」 ・「[0042] 実施例4 実施例1と同様にして、ベース成分A-4を190部、カチオン界面活性剤B-3を3部、非イオン界面活性剤C-4を6部、有機多塩基酸塩D-2を1部、以上をビーカーに加えてよく混合し、撹拌を続けながら固形分濃度が50%となるようにイオン交換水を徐々に添加することで実施例4の油剤の50%水性液を調製した。」 ・「[0045] 実施例7 実施例1と同様にして、ベース成分A-3を160部、カチオン界面活性剤B-1を20部、非イオン界面活性剤C-4を10部、有機多塩基酸塩D-2を10部、以上をビーカーに加えてよく混合し、撹拌を続けながら固形分濃度が50%となるようにイオン交換水を徐々に添加することで実施例7の油剤の50%水性液を調製した。」 ・「[0048] 実施例10 実施例1と同様にして、ベース成分A-2を176部、カチオン界面活性剤B-3を8部、非イオン界面活性剤C-1を6部、C-4を10部、以上をビーカーに加えてよく混合し、撹拌を続けながら固形分濃度が50%となるようにイオン交換水を徐々に添加することで実施例10の油剤の50%水性液を調製した。」 ・「[0054] 比較例1 実施例1と同様にして、ベース成分A-1を176部、非イオン界面活性剤C-4を24部、以上をビーカーに加えてよく混合し、撹拌を続けながら固形分濃度が50%となるようにイオン交換水を徐々に添加することで比較例1の油剤の50%水性液を調整した。」 ・「[0060] 比較例7 実施例1と同様にして、ベース成分A-2を140部、非イオン界面活性剤C-4を40部、有機多塩基酸塩rD-1を20部、以上をビーカーに加えてよく混合し、撹拌を続けながら固形分濃度が50%となるようにイオン交換水を徐々に添加することで比較例8の油剤の50%水性液を調製した。」 ・「[0064][表2] [図:0001388333000011.jpg] 」 ・「[0065] 試験区分7 炭素繊維前駆体用油剤の付着 アクリルフィラメント糸(75デニール/40フィラメント)に、試験区分6で調製した各例の油剤の50%水性液を、炭素繊維前駆体用油剤として0.5±0.1%となるようにローラー給油法で付着させた後、乾燥ローラーを用いて115℃で4秒間乾燥して試料糸Aを得た。この試料糸Aを、後述する電気抵抗値及び発生電気の評価に用いた。またアクリルフィラメント糸(16000デニール/12000フィラメント)に、試験区分6で調製した各例の油剤の50%水性液を、炭素繊維前駆体用油剤として0.5±0.1%となるように浸漬法で付着させた後、乾燥ローラーを用いて115℃で4秒間乾燥して試料糸Bを得た。この試料糸Bを、後述する集束性の評価に用いた。」 そして、甲第2号証には、実施例4、実施例7、実施例10、比較例1及び比較例7の油剤の50%水性液に係る以下の発明(以下、それぞれ「甲2-実4発明」、「甲2-比1発明」等といい、まとめて「甲2発明」という。)が記載されている。 <甲2-実4発明> 「ベース成分A-4 95%、カチオン界面活性剤B-3 1.5%、非イオン界面活性剤C-4 3%、有機多塩基酸塩D-2 0.5%の油剤にイオン交換水を添加した50%水性液。」 <甲2-実7発明> 「ベース成分A-3 80%、カチオン界面活性剤B-1 10%、非イオン界面活性剤C-4 5%、有機多塩基酸塩D-2 5%の油剤にイオン交換水を添加した50%水性液。」 <甲2-実10発明> 「ベース成分A-2 88%、カチオン界面活性剤B-3 4%、非イオン界面活性剤C-1 3%、C-4 5%の油剤にイオン交換水を添加した50%水性液。」 <甲2-比1発明> 「ベース成分A-1 88%、非イオン界面活性剤C-4 12%の油剤にイオン交換水を添加した50%水性液。」 <甲2-比7発明> 「ベース成分A-2 70%、非イオン界面活性剤C-4 20%、有機多塩基酸塩rD-1 10%の油剤にイオン交換水を添加した50%水性液。」 イ 対比 本件発明1と甲2発明とを対比する。 (ア)甲2発明の「ベース成分A-1」、「ベース成分A-2」、「ベース成分A-3」、「ベース成分A-4」は、[0024]を参照すると、「アミノ変性ポリオルガノシロキサン」であるから、本件発明1の「アミノ変性シリコーン」に相当する。 (イ)甲2発明の「非イオン系界面活性剤C-4」([0036]から「ソフタノール50」)は、甲第5号証(4,5頁の<分子量計算結果>の欄のMw/Mn参照。)によるとMw/Mnが1.082であり、また、甲第4号証の9頁の「表A ソフタノール各種製品の特性値一覧表の「組成」の欄に「ポリオキシエチレンアルキルエーテル(C12~14第2級アルコール)」と記載されているから、C12~14の炭素数が異なる2種以上のポリオキシエチレンアルキルエーテルを含んでいるといえる。 そうすると、甲2発明の「非イオン系界面活性剤C-4」と、本件発明1の「分子量分布(Mw/Mn)が1.05~1.081,1.087~1.109,1.155,1.161~1.50の非イオン界面活性剤」であって、「前記非イオン界面活性剤が、下記の化1で示され、且つ化1中のR1の炭素数の異なる2種以上の非イオン界面活性剤を含むもの」とは、「前記非イオン界面活性剤が、下記の化1で示され、且つ化1中のR1の炭素数の異なる2種以上の非イオン界面活性剤を含むもの」の限りで一致する。 (ウ)甲2発明の「イオン交換水」は、本件発明1の「水」に相当する。 (エ)甲2発明の「油剤の50%水性液」は、[0001]及び[0065]を参照すると、炭素繊維前駆体に油剤の50%水性液を付着させるものであるから、本件発明1の「炭素繊維前駆体用処理剤の水性液」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲2発明とは、以下の点で一致し、相違する。 <一致点> 「アミノ変性シリコーン及び非イオン界面活性剤を含有する炭素繊維前駆体用処理剤と、水とを含み、 前記非イオン界面活性剤が、下記の化1で示され、且つ化1中のR1の炭素数の異なる2種以上の非イオン界面活性剤を含むものであることを特徴とする炭素繊維前駆体用処理剤の水性液。 【化1】 [図:0001388333000012.jpg] (化1において R1:炭素数8~18の直鎖の炭化水素基、又は炭素数8~18の分岐鎖の炭化水素基 AO:炭素数2~3のオキシアルキレン基 R2:水素原子、又は炭素数1~4の炭化水素基 n:1~60の整数。)」 <相違点2> 本件発明1は、「分子量分布(Mw/Mn)が1.05~1.081,1.087~1.109,1.155,1.161~1.50」であるのに対して、甲2発明は、1.082である点。 ウ 判断 <相違点2について> 上記相違点2について検討する。 本件発明1の課題は、「経時安定性及び炭素繊維の強度を向上できる炭素繊維前駆体用処理剤の水性液、及び炭素繊維前駆体を提供する」(【0005】)ことであり、分子量分布(Mw/Mn)が1.05~1.50の非イオン界面活性剤を含有することを構成要件の一つとして、経時安定性及び炭素繊維の強度を向上させるものである。 他方、甲2発明の課題は、「炭素繊維前駆体を製造する際の工程通過性を向上させ、また炭素繊維前駆体の製造機械等に錆が発生するのを抑制することができる炭素繊維前駆体用油剤及びかかる炭素繊維前駆体用油剤が付着した炭素繊維前駆体を提供する」([0004])ことであり、本件発明1とは課題が異なり、その上、甲第2号証には、分子量分布(Mw/Mn)を制御することの記載ないし示唆もない。 甲2発明の分子量分布(Mw/Mn)は1.082であるが、当該分子量分布は本件訂正により本件発明1から除かれているものである。 したがって、甲2発明に接した当業者が、経時安定性及び炭素繊維の強度の向上のために、分子量分布(Mw/Mn)を制御して、1.05~1.081,1.087~1.109,1.155,1.161~1.50の範囲とする動機付けはない。 したがって、甲2発明において、上記相違点2に係る本件発明1の技術的事項とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 エ 小括 したがって、本件発明1は、甲2発明ではない。 また、本件発明1は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (2-2)本件発明2~5の甲第2号証を主引用発明とした新規性、進歩性について 本件発明2~5は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、さらに限定を付した発明であるから、本件発明2~5と甲2発明とを対比すると、少なくとも上記相違点2の点で相違し、相違点2については、上記(2-1)ウで検討したとおりである。 したがって、本件発明2~5は、本件発明1は、甲2発明ではない。 また、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 2 令和4年2月9日付け取消理由通知に採用しなかった取消理由について <本件発明1、2、5の甲第1号証を主引用発明とした新規性について> 申立人は、本件発明1、2、5は、甲1発明である旨主張する。 しかし、本件発明1、2、5と甲1発明とを対比すると、少なくとも、上記1(1-1)イの<相違点1>の点で相違し、<相違点1>は実質的な相違点であるから、本件発明1、2、5は、甲1発明でない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2020-700857

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決16件(瀬田 宏、竹本油脂株式会社)
  • 2021-700544異議申立 / 2021-10-29 / 維持炭素繊維前駆体用処理剤、炭素繊維前駆体、及び耐炎化繊維の製造方法
    同じ当事者: 瀬田 宏、竹本油脂株式会社
  • 2024-685008異議申立 / 2024-12-23 / 維持
    同じ当事者: 竹本油脂株式会社
  • 2021-700367異議申立 / 2022-06-03 / 訂正認容合成繊維用処理剤、合成繊維及び合成繊維の処理方法
    同じ当事者: 竹本油脂株式会社
  • 2021-700517異議申立 / 2021-09-30 / 維持合成繊維用処理剤の水性液及び合成繊維の製造方法
    同じ当事者: 竹本油脂株式会社
  • 2021-900092異議申立 / 2021-08-31 / 維持カドヤノタイハクゴマアブラ、カドヤノタイハク、カドヤノ、カドヤ、タイハクゴマアブ…
    同じ当事者: 竹本油脂株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)87件(113・D06M、121・D06M)
  • 2026-700198異議申立 / 2026-05-25 / 維持透水性付与剤及びその利用
    共通の審決分類: 113・D06M、121・D06M
  • 2025-701015異議申立 / 2026-03-27 / 訂正認容撥水吸湿性繊維
    共通の審決分類: 113・D06M、121・D06M
  • 2024-700857異議申立 / 2026-01-08 / 訂正認容アクリル繊維用処理剤及びその用途
    共通の審決分類: 113・D06M、121・D06M
  • 2025-700165異議申立 / 2025-07-04 / 訂正認容エアバッグ用基布及びその製造方法
    共通の審決分類: 113・D06M、121・D06M
  • 2023-700380異議申立 / 2024-07-09 / 請求成立(取消)繊維用集束剤組成物及び繊維用集束剤溶液
    共通の審決分類: 113・D06M、121・D06M

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存