特許異議申立
2021-700367
合成繊維用処理剤、合成繊維及び合成繊維の処理方法
- 審判番号
- 2021-700367
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-099299
- 登録番号
- 6781496
- 請求日
- 2021年04月22日
- 審決日
- 2022年06月03日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】竹本油脂株式会社
- 【権利者代理人】山田 泰之
- 【権利者代理人】太田 千香子
- 【異議申立人】山本 菜生子
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 茂夫
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 當間 庸裕
- 分類
- P1651.113-YAA(D06M) / P1651.121-YAA(D06M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6781496号発明「合成繊維用処理剤、合成繊維及び合成繊維の処理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6781496号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
特許第6781496号の請求項1~3、5~8に係る特許を維持する。
特許第6781496号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6781496号の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和2年6月8日の出願であって、令和2年10月20日にその特許権の設定登録がされ、令和2年11月4日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年 4月22日 :特許異議申立人山本菜生子(以下「申立人」という。)による請求項1~8に係る特許に対する特許異議の申立て
令和3年 9月 3日付け:取消理由通知書
令和3年10月26日 :特許権者による意見書の提出
令和4年 3月29日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和4年 4月25日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、この訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1に記載された
「イオンクロマトグラフ法により検出される硫酸イオンが200ppm以下であることを特徴とする合成繊維用処理剤(ただし、アルコール又はカルボン酸から誘導された親油性部分を有するポリオキシアルキレン縮合生成物から成る群から選ばれたノニオン性乳化剤を60~98.9質量%含有する潤滑仕上組成物を除く)。」を、
「イオンクロマトグラフ法により検出される硫酸イオンが200ppm以下であり、前記平滑剤(A)、前記非イオン性界面活性剤(B)及び前記イオン性界面活性剤(C)の合計中に、前記非イオン性界面活性剤(B)として、下記式(1)で示される質量平均分子量2000以下の化合物(B1)を0.1~15質量%の割合で含有することを特徴とする合成繊維用処理剤(ただし、アルコール又はカルボン酸から誘導された親油性部分を有するポリオキシアルキレン縮合生成物から成る群から選ばれたノニオン性乳化剤を60~98.9質量%含有する潤滑仕上組成物を除く)。
【化1】
HO-Xa-Yb-H (1)
(式(1)中において、
X:オキシエチレン基
Y:オキシプロピレン基
X、Yの繰り返しはブロック又はランダムのいずれの方法で繰り返されていてもよい
a、b:aは0~35の整数であり、bは0~25の整数であって、a+bが1以上となる整数)」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、3、5~8も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項4を削除する。
(3)訂正事項3
本件訂正前の請求項5に記載された「請求項1~4」を、「請求項1~3」に訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6~8も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
本件訂正前の請求項6に記載された「請求項1~5」を、「請求項1~3、5」に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項7、8も同様に訂正する)。
(5)訂正事項5
本件訂正前の請求項7に記載された「請求項1~6」を、「請求項1~3、5、6」に訂正する。
(6)訂正事項6
本件訂正前の請求項8に記載された「請求項1~6」を、「請求項1~3、5、6」に訂正する。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~8は、請求項2~8が、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正請求は、一群の請求項に対して請求されたものである。
3 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の適否について
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、「非イオン性界面活性剤(B)」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1は、本件訂正前の請求項4の記載に基づくものであるから、本件特許の明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものである。
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3~6について
訂正事項3~6は、訂正事項2によって請求項4が削除されたことに伴い、請求項4を引用しているという不明瞭な状態を解消させる訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項3~6は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1~3、5~8に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~3、5~8に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
脂肪族アルコールと脂肪酸とのエステル(A1)を含む平滑剤(A)、非イオン性界面活性剤(B)及び、ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸アルカリ金属塩(C1)を含むイオン性界面活性剤(C)を含有し、かつ、イオンクロマトグラフ法により検出される硫酸イオンが200ppm以下であり、前記平滑剤(A)、前記非イオン性界面活性剤(B)及び前記イオン性界面活性剤(C)の合計中に、前記非イオン性界面活性剤(B)として、下記式(1)で示される質量平均分子量2000以下の化合物(B1)を0.1~15質量%の割合で含有することを特徴とする合成繊維用処理剤(ただし、アルコール又はカルボン酸から誘導された親油性部分を有するポリオキシアルキレン縮合生成物から成る群から選ばれたノニオン性乳化剤を60~98.9質量%含有する潤滑仕上組成物を除く)。
【化1】
HO-Xa-Yb-H (1)
(式(1)中において、
X:オキシエチレン基
Y:オキシプロピレン基
X、Yの繰り返しはブロック又はランダムのいずれの方法で繰り返されていてもよい
a、b:aは0~35の整数であり、bは0~25の整数であって、a+bが1以上となる整数)
【請求項2】
前記平滑剤(A)、前記非イオン性界面活性剤(B)及び前記イオン性界面活性剤(C)の合計中に、前記ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸アルカリ金属塩(C1)を1質量%超15質量%以下の割合で含有する、請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項3】
前記平滑剤(A)、前記非イオン性界面活性剤(B)及び前記イオン性界面活性剤(C)の合計中に、前記ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸アルカリ金属塩(C1)を3質量%超15質量%以下の割合で含有する請求項2に記載の合成繊維用処理剤。」
「【請求項5】
イオンクロマトグラフ法により合成繊維用処理剤から検出される硫酸イオンが100ppm以下である請求項1~3のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項6】
前記平滑剤(A)、前記非イオン性界面活性剤(B)及び前記イオン性界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記平滑剤(A)を20~94質量%、前記非イオン性界面活性剤(B)を5~60質量%及び前記イオン性界面活性剤(C)を1~20質量%の割合で含有する請求項1~3、5のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項7】
請求項1~3、5、6のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤が付着していることを特徴とする合成繊維。
【請求項8】
請求項1~3、5、6のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤を合成繊維に付着させる工程を経ることを特徴とする合成繊維の処理方法。」
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~8に係る特許に対して、当審が令和4年3月29日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
[進歩性]本件特許の請求項1~3、5~8に係る発明は、甲第1号証(特許第5668170号公報。以下「甲1」という。)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 当審の判断
(1)甲1に記載された事項及び発明
ア 甲1に記載された事項
甲1には、以下の記載がある(下線は、強調のため当審が付した。以下同様。)。
「【請求項1】
平滑成分(A)と、下記一般式(1)で示される有機スルホン酸化合物(B)とを含有する合成繊維用処理剤であって、
処理剤の不揮発分に占める前記有機スルホン酸化合物(B)の重量割合が1.25~12重量%であり、
イオンクロマトグラフ法によって処理剤の不揮発分から検出される硫酸イオン(SO42-)の重量割合が200ppm以下であり、塩素イオン(Cl-)の重量割合が200ppm以下である、
合成繊維用処理剤。
【化1】
[図:0001388351000001.jpg]
(式(1)中、a及びbは、0以上の整数であって、a+b=5~17を満たす整数である。Mは水素原子、アルカリ金属、アンモニウム基又は有機アミン基である。)
・・・
【請求項9】
原料合成繊維フィラメント糸条に、請求項1~8のいずれかに記載の処理剤が付与された合成繊維フィラメント糸条。
【請求項10】
原料合成繊維フィラメント糸条に、請求項1~8のいずれかに記載の処理剤を付与する工程を含む、合成繊維フィラメント糸条の製造方法。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維用処理剤及びその利用に関するものである。更に詳しくは、合成繊維を製造する際に用いられる合成繊維用処理剤、該処理剤を用いた合成繊維フィラメント糸条の製造方法及び該合成繊維フィラメント糸条を含む繊維構造物に関するものである。」
「【0008】
本発明者らは、鋭意検討をした結果、1)一般式(1)で示される有機スルホン酸化合物を含む原料に、硫酸ナトリウムや塩化ナトリウムが多量に含まれていること、2)処理剤に含まれる硫酸ナトリウムや塩化ナトリウムが、紡糸時に延伸ロール上に脱落、蓄積することにより、糸切れ断糸の増加を引き起こしていること、また熱延伸を行うロール上では、タールの蓄積を早めロール汚れを引き起こしていること、をまず見出した。そして、3)処理剤の不揮発分から検出される硫酸イオン(SO42-)及び塩素イオン(Cl-)を所定の割合以下とすることにより、毛羽、糸切れ、ロール汚れを劇的に低減できることを見出し、本発明に到達した。」
「【0015】
前記有機リン酸エステル化合物(C)は、下記一般式(2)で示される化合物及び下記一般式(3)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0016】
【化2】
[図:0001388351000002.jpg]
(式(2)中、R1は炭素数6~24の炭化水素基である。A1Oは炭素数2~4のオキシアルキレン基であって、mは0~15の整数である。nは1~2の整数である。M1は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム基又は有機アミン基である。)」
「【0025】
[平滑成分(A)]
平滑成分(A)は、本発明の処理剤の必須成分である。平滑成分(A)としては、1)脂肪族一価アルコールと脂肪酸とがエステル結合した構造を有するエステル化合物(A1)、2)脂肪族多価アルコールと脂肪酸とがエステル結合した構造を有するエステル化合物(A2)、3)脂肪族一価アルコールと脂肪族多価カルボン酸とがエステル結合した構造を有するエステル化合物(A3)、4)分子内に芳香環を有する芳香族エステル化合物(A4)、5)含硫黄エステル化合物(A5)、6)鉱物油(A6)等、合成繊維処理剤として一般的に採用されている公知の平滑成分を挙げることができる。平滑成分(A)は1種又は2種以上を使用できる。」
「【0073】
有機リン酸エステル化合物(C)は、一般式(2)においてn=1で示される有機リン酸エステル化合物(C1)及び一般式(2)においてn=2で示される有機リン酸エステル化合物(C2)を含む混合物や、有機リン酸エステル化合物(C1)、(C2)及び一般式(3)においてY=1、Q=R1O(A1O)mで示される有機リン酸エステル化合物(C3)を含む混合物であることが好ましい。これら混合物には、一般式(3)においてY=1、Q=水素原子で示される有機リン酸エステル化合物(C4)を含有してもよい。」
「【0078】
[ノニオン界面活性剤(D)]
本発明の処理剤は、原糸に油膜強度、集束性を与え、製糸性を向上させる点から、上記の平滑成分(A)、有機スルホン酸化合物(B)に加え、ノニオン界面活性剤(D)をさらに含有することが好ましい。なお、ノニオン界面活性剤(D)は、前記の平滑成分(A)を除くものいう。ノニオン界面活性剤(D)は、1種又は2種以上を使用してもよい。
【0079】
ノニオン界面活性剤(D)としては、ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステル(以下、ポリヒドロキシエステルということがある)、ポリヒドロキシエステルの少なくとも一つの水酸基を脂肪酸で封鎖したエステル、ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪族アルコールエーテル、ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0080】
(ポリヒドロキシエステル、ポリヒドロキシエステルの少なくとも一つの水酸基を脂肪酸で封鎖したエステル)
ポリヒドロキシエステルは、構造上、ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸と多価アルコールとのエステルであり、多価アルコールの水酸基のうち、2個以上の水酸基がエステル化されていることが好ましい。したがって、ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステルは、複数の水酸基を有するエステルである。
【0081】
ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸は、脂肪酸の炭化水素基に酸素原子を介してポリオキシアルキレン基が結合した構造を有し、ポリオキシアルキレン基の脂肪酸の炭化水素基と結合していない片末端が水酸基となっている。
ポリヒドロキシエステルとしては、例えば、炭素数6~22(好ましくは16~20)のヒドロキシ脂肪酸と多価アルコールとのエステル化物のアルキレンオキシド付加物を挙げることができる。
【0082】
炭素数6~22のヒドロキシ脂肪酸としては、例えば、ヒドロキシカプリル酸、ヒドロキシカプリン酸、ヒドロキシラウリン酸、ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸挙げられ、ヒドロキシオクタデカン酸、リシノール酸が好ましい。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ソルビタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられ、グリセリンが好ましい。アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の炭素数2~4のアルキレンオキシドが挙げられる。
・・・
【0086】
ポリヒドロキシエステル及びポリヒドロキシエステルの少なくとも一つの水酸基を脂肪酸で封鎖したエステルとしては、例えば、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物、ヒマシ油エチレンオキシド付加物、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物モノオレエート、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物ジオレエート、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリオレエート、ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリオレエート、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリステアレート、ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリステアレート、これらのなかでも処理剤の相溶性、油膜強度、毛羽減少の点から、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリオレエート、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリステアレートが好ましい。
・・・
【0094】
(ポリオキシアルキレン脂肪族アルコールエーテル)
ポリオキシアルキレン脂肪族アルコールエーテルとは、脂肪族一価アルコールに対し、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加した構造を持つ化合物である。
ポリオキシアルキレン脂肪族アルコールエーテルとしては、例えば、オクチルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族アルコールのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
アルキレンオキシドの付加モル数としては、1~100モルが好ましく、2~70モルがより好ましく、3~50モルがさらに好ましい。また、アルキレンオキシド全体に対するエチレンンオキシドの割合は、20モル%以上が好ましく、30モル%以上がより好ましく、40モル%以上がさらに好ましい。
」
「【0102】
[合成繊維用処理剤]
本発明の処理剤は、平滑成分(A)と、上記一般式(1)で示される有機スルホン酸化合物(B)とを含有するものである。さらに、イオンクロマトグラフ法によって処理剤の不揮発分から検出される硫酸イオン(SO42-)の重量割合が300ppm以下であり、かつ塩素イオン(Cl-)の重量割合が300ppm以下である。このように、処理剤の不揮発分から検出される硫酸イオン及び塩素イオンを所定の重量割合以下とすることにより、毛羽、糸切れ、ロール汚れを劇的に低減できる。
当該硫酸イオンの重量割合が300ppm超となる場合又は当該塩素イオンの重量割合が300pm超となる場合、硫酸ナトリウムや塩化ナトリウムが紡糸時に延伸ロール上に脱落、蓄積し、糸切れ断糸の増加を引き起こしたり、熱延伸を行うロール上では、タールの蓄積を早めロール汚れを引き起こしたりする。
なお、本発明におけるイオンクロマトグラフ法による硫酸イオン、塩素イオンの分析方法は、実施例に記載されたものによる。また、本発明における不揮発分とは、処理剤を105℃で熱処理して溶媒等を除去し、恒量に達した時の絶乾成分をいう。
【0103】
本願発明の効果をより発揮させる観点から、当該硫酸イオンの重量割合は、250ppm以下が好ましく、200ppm以下がより好ましく、100ppm以下がさらに好ましい。同様に、該塩素イオンの重量割合は、250ppm以下が好ましく、200pm以下がより好ましく、100ppm以下がさらに好ましい。」
「【0107】
本発明の処理剤が有機リン酸エステル化合物(C)を含有する場合、イオンクロマトグラフ法によって処理剤の不揮発分から検出されるリン酸イオン(PO43-)の重量割合は、500ppm以下であることが好ましい。当該リン酸イオンの重量割合が500ppm超の場合、延伸ロール上に脱落し、糸切れ断糸の増加を引き起こすおそれがある。当該リン酸イオンの重量割合は、400ppm以下がより好ましく、300ppm以下がさらに好ましく、200ppm以下が特に好ましい。なお、リン酸イオン(PO43-)を単にリン酸イオンということがある。」
「【0110】
本発明の処理剤がノニオン界面活性剤(D)を含む場合、処理剤の不揮発分に占めるノニオン界面活性剤(D)の重量割合は、20~70重量%が好ましく、25~65重量%がより好ましく、30~65重量%がさらに好ましく、30~60重量%が特に好ましい。
【0111】
(その他成分)
本発明の合成繊維用処理剤は、処理剤のエマルション化、繊維への付着性補助、繊維からの処理剤の水洗、繊維への制電性、潤滑性、集束性の付与等のために、上記の有機スルホン酸化合物(B)、有機リン酸エステル化合物(C)及びノニオン界面活性剤(D)以外の界面活性剤を含有してもよい。このような界面活性剤としては、脂肪酸石鹸等のアニオン界面活性剤;アルキルアミン塩、アルキルイミダゾリニウム塩、第4級アンモニウム塩等のカチオン界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤;ジメチルラウリルアミンオキサイド等が挙げられる。これら界面活性剤は、1種又は2種以上を使用できる。これら界面活性剤を含有する場合の処理剤の不揮発分に占める当該界面活性剤の重量割合は、特に限定はないが、0.01~15重量%が好ましく、0.1~10重量%がより好ましい。なお、ここでいう界面活性剤は、重量平均分子量が1000未満のものをいう。」
「【0113】
また、本発明の合成繊維用処理剤は、更に原液安定剤(例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール)を含有してもよい。処理剤に占める原液安定剤の重量割合は、0.1~30重量%が好ましく、1~20重量%がさらに好ましい。」
「【0116】
[合成繊維フィラメント糸条の製造方法及び繊維構造物]
本発明の合成繊維フィラメント糸条の製造方法は、原料合成繊維フィラメント糸条に、本発明の合成繊維用処理剤を付与する工程を含むものである。発明の製造方法によれば、スカムや糸切れの発生を低減することができ、糸品位に優れた合成繊維フィラメント糸条を得ることができる。なお、本発明における原料合成繊維フィラメント糸条とは、処理剤が付与されていない合成繊維フィラメント糸条をいう。」
「【0125】
[有機スルホン酸化合物(B)を含む原料Yの調製]
有機スルホン酸化合物(B)を含む原料Y-1、Y-2は、上記の有機スルホン酸化合物(B)を含む原料X-1、X-2を精製し、無機物を除去することにより得ることができる。無機物の除去方法は公知の方法を用いることができ、実施例に示す精製方法に限定されない。
【0126】
(原料Y-1の調製)
メタノール550部とイオン交換水400部を混合し、45±5℃で調温し、攪拌しながら上記の原料X-1 700部を徐々に投入し、完全に溶解させた。次にこの溶解液を室温で20時間静置し、ボウ硝を沈降させた。ボウ硝の含まれない上澄み液を取り出し、60~80℃で減圧蒸留を行い、メタノールと水の一部を除去し、有機スルホン酸化合物(B)を70重量%含む原料Y-1を得た。
原料Y-1に含まれる硫酸イオン(SO42-)及び塩素イオン(Cl-)の含有量(重量割合)をイオンクロマトグラフにて測定したところ、有機スルホン酸化合物(B)に対して、硫酸イオンは1085ppmであり、塩素イオンは60ppmであった。」
「【0128】
[有機リン酸エステル化合物(C)を含む原料Z-1~Z-6の調製]
・・・
【0132】
(原料Z-5の調製)
反応容器にオレイルアルコール600部を仕込み、攪拌しながら70±5℃で五酸化二燐110部を反応温度に注意しながら少量ずつ投入した。その後、70±5℃で3時間熟成した。次にイオン交換水15部を投入し、90℃で3時間の加水処理を行い、次いでジブチルエタノールアミン200部を徐々に投入して中和を行い、有機リン酸エステル化合物(C)を含む原料Z-5を調製した。
有機リン酸エステル化合物(C1)、(C2)、(C3)、(C4)及び無機燐酸のP核積分比率は、それぞれ55.18%、35.38%、2.43%、0.00%、7.01%であった。」
「【0135】
[実施例1~11、比較例1~9]
表2、3に記載の成分を混合して、均一になるまで攪拌し、処理剤を調製した。調製した各処理剤を用いて、下記の方法でピンの汚れ蓄積、ピンの汚れ拭き取り性、張力変動を評価した。その結果を表2、3に示す。
なお、表2、3の処理剤の不揮発分組成の数字は、処理剤の不揮発分に占める各成分(原料X、Y、Zは、それらの不揮発分)の重量割合を示す。また、表2、3の処理剤成分の詳細は表1に示す。
【0136】
(硫酸イオン(SO42-)・塩素イオン(Cl-)・リン酸イオン(PO43-)の測定方法)
試料(処理剤の不揮発分又は原料X、Y、Zの不揮発分)5gを正確に量りとり、撹拌しながら超純水95gを少しずつ加え、水溶液を作製し、100mlメスフラスコで定容とする。作製した水溶液2mlを、ODS(シリカゲルにオクタデシル基を化学結合させた)前処理カートリッジに通し、親油性の物質を除去した液を、イオンクロマトグラフ分析に供する。以下のイオンクロマトグラフ条件により検出を行った。濃度既知の標準液に対するピーク面積比にて検出量を測定し、硫酸イオン(SO42-)、リン酸イオン(PO43-)、塩素イオン(Cl-)の量を換算した。・・・。
<イオンクロマトグラフ条件>
装置:Dionex製 ICS-1500 サプレッサ使用
分析カラム:Dionex IonPac AS14 内径4.0mm×長さ50mm
ガードカラム:Dionex IonPac AG14 内径4.0mm×長さ250mm
溶離液:3.5mmolNa2CO3、1.0mmolNaHCO3
流量:1.5ml/min」
「【0141】
【表1】
[図:0001388351000003.jpg]
」
「【0142】
【表2】
[図:0001388351000004.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
上記アから、甲1には、特に実施例4の記載に着目すると、次の発明(以下「甲1発明A」という。)が記載されている。
「トリメチロールプロパントリパーム核脂肪酸(C12-18の直鎖脂肪酸)エステル(A-2)37重量%とグリセリントリオレエート(A-3)20重量%とチオジプロピオン酸ジイソセチル(A-5)2重量%とチオジプロピオン酸ジオレイル(A-6)1重量%からなる平滑成分(A)と、有機スルホン酸化合物(B)を含む不揮発分が1重量%の原料(Y-1)と、有機リン酸エステル化合物(C)を含む不揮発分が1重量%の原料(Z-5)と、硬化ひまし油1モルにエチレンオキシド20モル付加したノニオン界面活性剤(D-1)6重量%と硬化ひまし油1モルにエチレンオキシド20モル付加したエーテル型ノニオン界面活性剤とオレイン酸3モルとのエステル化合物(D-3)13重量%とポリエチレングリコール(分子量600)とオレイン酸2モルとのエステル化合物(D-4)8重量%とポリエチレングリコール(分子量200)とオレイン酸2モルとのエステル化合物(D-5)3重量%とラウリルアルコール1モルにエチレンオキシド7モル付加したエーテル型ノニオン界面活性剤(D-6)3重量%とソルビタンモノオレエート(D-7)3重量%からなるノニオン界面活性剤(D)と、及びジオクチルスルホサクシネートNa塩(E-3)1重量%とオレイン酸K塩(E-4)1重量%からなるその他成分を含有する合成繊維用処理剤であって、
イオンクロマトグラフ法によって処理剤の不揮発分から検出される硫酸イオン(SO42-)の重量割合が12ppmである合成繊維用処理剤。」
また、上記アから、甲1には、特に実施例5の記載に着目すると、次の発明(以下「甲1発明B」という。)が記載されている。
「トリメチロールプロパントリパーム核脂肪酸(C12-18の直鎖脂肪酸)エステル(A-2)35重量%とグリセリントリオレエート(A-3)20重量%とチオジプロピオン酸ジイソセチル(A-5)2重量%とチオジプロピオン酸ジオレイル(A-6)1重量%からなる平滑成分(A)と、有機スルホン酸化合物(B)を含む不揮発分が7重量%の原料(Y-1)と、有機リン酸エステル化合物(C)を含む不揮発分が2重量%の原料(Z-5)と、硬化ひまし油1モルにエチレンオキシド20モル付加したノニオン界面活性剤(D-1)6重量%と硬化ひまし油1モルにエチレンオキシド20モル付加したエーテル型ノニオン界面活性剤とオレイン酸3モルとのエステル化合物(D-3)10重量%とポリエチレングリコール(分子量600)とオレイン酸2モルとのエステル化合物(D-4)6重量%とポリエチレングリコール(分子量200)とオレイン酸2モルとのエステル化合物(D-5)3重量%とラウリルアルコール1モルにエチレンオキシド7モル付加したエーテル型ノニオン界面活性剤(D-6)3重量%とソルビタンモノオレエート(D-7)3重量%からなるノニオン界面活性剤(D)と、及びジオクチルスルホサクシネートNa塩(E-3)1重量%とオレイン酸K塩(E-4)1重量%からなるその他成分を含有する合成繊維用処理剤であって、
イオンクロマトグラフ法によって処理剤の不揮発分から検出される硫酸イオン(SO42-)の重量割合が80ppmである合成繊維用処理剤。」
(2)甲1発明Aに基づく理由
ア 本件発明1について
(ア)対比
甲1発明Aの「トリメチロールプロパントリパーム核脂肪酸(C12-18の直鎖脂肪酸)エステル(A-2)」、「グリセリントリオレエート(A-3)」、「チオジプロピオン酸ジイソセチル(A-5)」及び「チオジプロピオン酸ジオレイル(A-6)」は、本件発明1の「脂肪族アルコールと脂肪酸とのエステル(A1)」に相当し、以下同様に、「平滑成分(A)」は「平滑剤(A)」に、「ノニオン界面活性剤(D)」は「非イオン性界面活性剤(B)」に、「硫酸イオン(SO42-)の重量割合が12ppm以下」は「硫酸イオンが200ppm以下」に、「合成繊維用処理剤」は「合成繊維用処理剤」に相当する。
甲1発明Aの「ジオクチルスルホサクシネートNa塩(E-3)」及び「オレイン酸K塩(E-4)」はいずれもアニオン界面活性剤であるから、甲1発明Aの「ジオクチルスルホサクシネートNa塩(E-3)1重量%とオレイン酸K塩(E-4)1重量%からなるその他成分」と本件発明1の「ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸アルカリ金属塩(C1)を含むイオン性界面活性剤(C)」とは、「イオン性界面活性剤(C)」の限りで一致する。
甲1発明Aにおける「ノニオン界面活性剤(D)」の合成繊維用処理剤の不揮発分に占める重量割合は合計36重量%であるから、甲1発明Aにおける「硬化ひまし油1モルにエチレンオキシド20モル付加したノニオン界面活性剤(D-1)6重量%と硬化ひまし油1モルにエチレンオキシド20モル付加したエーテル型ノニオン界面活性剤とオレイン酸3モルとのエステル化合物(D-3)13重量%とポリエチレングリコール(分子量600)とオレイン酸2モルとのエステル化合物(D-4)8重量%とポリエチレングリコール(分子量200)とオレイン酸2モルとのエステル化合物(D-5)3重量%とラウリルアルコール1モルにエチレンオキシド7モル付加したエーテル型ノニオン界面活性剤(D-6)3重量%とソルビタンモノオレエート(D-7)3重量%からなるノニオン界面活性剤(D)」を「含有する」ことは、本件発明1の「ただし、アルコール又はカルボン酸から誘導された親油性部分を有するポリオキシアルキレン縮合生成物から成る群から選ばれたノニオン性乳化剤を60~98.9質量%含有する潤滑仕上組成物を除く」ことに該当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明Aは、次の点で一致し、相違する。
[一致点]
「脂肪族アルコールと脂肪酸とのエステル(A1)を含む平滑剤(A)、非イオン性界面活性剤(B)及び、イオン性界面活性剤(C)を含有し、かつ、イオンクロマトグラフ法により検出される硫酸イオンが200ppm以下である合成繊維用処理剤(ただし、アルコール又はカルボン酸から誘導された親油性部分を有するポリオキシアルキレン縮合生成物から成る群から選ばれたノニオン性乳化剤を60~98.9質量%含有する潤滑仕上組成物を除く)。」
[相違点A-1]
「イオン性界面活性剤(C)」に関して、本件発明1では「ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸アルカリ金属塩(C1)を含むイオン性界面活性剤(C)」であるのに対して、甲1発明Aでは「ジオクチルスルホサクシネートNa塩(E-3)1重量%とオレイン酸K塩(E-4)1重量%からなるその他成分」である点。
[相違点A-2]
本件発明1は、「前記平滑剤(A)、前記非イオン性界面活性剤(B)及び前記イオン性界面活性剤(C)の合計中に、前記非イオン性界面活性剤(B)として」、「HO-Xa-Yb-H(1)(式(1)中において、X:オキシエチレン基 Y:オキシプロピレン基 X、Yの繰り返しはブロック又はランダムのいずれの方法で繰り返されていてもよい a、b:aは0~35の整数であり、bは0~25の整数であって、a+bが1以上となる整数)」で「示される質量平均分子量2000以下の化合物(B1)を0.1~15質量%の割合で含有する」のに対して、甲1発明Aは、「ノニオン界面活性剤(D)」がそのような化合物を含んでいない点。
(イ)判断
事案に鑑み、相違点A-2について検討する。
甲1の【0113】には、「また、本発明の合成繊維用処理剤は、更に原液安定剤(例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール)を含有してもよい。処理剤に占める原液安定剤の重量割合は、0.1~30重量%が好ましく、1~20重量%がさらに好ましい。」と記載されており、「エチレングリコール」、「プロピレングリコール」は、本件発明1の「質量平均分子量200以下の化合物(B1)」である。
しかしながら、甲1の【0142】【表2】に記載されているように、甲1発明Aの合成繊維用処理剤は、「毛羽、糸切れ、ロール汚れを劇的に低減」(甲1の【0102】)するために「SO42-の割合」、「Cl-の割合」を調整し、また、「延伸ロール上に脱落し、糸切れ断糸の増加を引き起こ」(甲1の【0107】)さないよう、「PO43-の割合」を調整したものであるから、そのように成分比が調整された引用発明Aの合成繊維用処理剤に、原液安定剤としてエチレングリコール又はプロピレングリコールを選択して、0.1~15質量%の割合で加えて、成分を変更することは、当業者が適宜なし得たこととはいえない。
よって、相違点A-1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明Aに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2、3、5~8について
本件発明2、3、5~8は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加え、本件発明1を限定するものであるから、上記アで検討したのと同じ理由により、甲1発明Aに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)甲1発明Bに基づく理由
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明Bは、次の点で一致し、相違する。
[一致点]
「脂肪族アルコールと脂肪酸とのエステル(A1)を含む平滑剤(A)、非イオン性界面活性剤(B)及び、イオン性界面活性剤(C)を含有し、かつ、イオンクロマトグラフ法により検出される硫酸イオンが200ppm以下である合成繊維用処理剤(ただし、アルコール又はカルボン酸から誘導された親油性部分を有するポリオキシアルキレン縮合生成物から成る群から選ばれたノニオン性乳化剤を60~98.9質量%含有する潤滑仕上組成物を除く)。」
[相違点B-1]
「イオン性界面活性剤(C)」に関して、本件発明1では「ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸アルカリ金属塩(C1)を含むイオン性界面活性剤(C)」であるのに対して、甲1発明Bでは「ジオクチルスルホサクシネートNa塩(E-3)1重量%とオレイン酸K塩(E-4)1重量%からなるその他成分」である点。
[相違点B-2]
本件発明1は、「前記平滑剤(A)、前記非イオン性界面活性剤(B)及び前記イオン性界面活性剤(C)の合計中に、前記非イオン性界面活性剤(B)として」、「HO-Xa-Yb-H(1)(式(1)中において、X:オキシエチレン基 Y:オキシプロピレン基 X、Yの繰り返しはブロック又はランダムのいずれの方法で繰り返されていてもよい a、b:aは0~35の整数であり、bは0~25の整数であって、a+bが1以上となる整数)」で「示される質量平均分子量2000以下の化合物(B1)を0.1~15質量%の割合で含有する」のに対して、甲1発明Bは、「ノニオン界面活性剤(D)」がそのような化合物を含んでいない点。
(イ)判断
事案に鑑み、相違点B-2について検討すると、上記(2)ア(イ)に記載した理由と同様の理由により、本件発明1は、甲1発明Bに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2、3、5~8について
本件発明2、3、5~8は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加え、本件発明1を限定するものであるから、上記アで検討したのと同じ理由により、甲1発明Bに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
第5 取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、本件特許の請求項1~8に係る発明は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する旨を述べている。
しかしながら、本件発明1~3、5~8は、上記第4の2(2)、(3)で述べたとおり、甲1に記載された発明と相違するから、本件発明1~3、5~8は、甲1に記載された発明ではない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1~3、5~8に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1~3、5~8に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
また、本件特許の請求項4は、本件訂正により削除されたため、請求項4に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2021-700367