特許異議申立
2019-700995
積層剥離容器
- 審判番号
- 2019-700995
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-215510
- 登録番号
- 特許第6531371号(P6531371)
- 請求日
- 2019年12月05日
- 審決日
- 2021年05月06日
- 公報発行日
- 2021年09月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】キョーラク株式会社
- 【権利者代理人】SK特許業務法人
- 【権利者代理人】奥野 彰彦
- 【権利者代理人】伊藤 寛之
- 【異議申立人】▲高▼市 悦永
- 【異議申立人】小園 祐子
- 審判長/審判官
- 審判長 石井 孝明
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 藤原 直欣
- 分類
- P1651.113-YAA(B65D) / P1651.121-YAA(B65D) / P1651.537-YAA(B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6531371号発明「積層剥離容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
特許第6531371号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
特許第6531371号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
第1 手続の経緯
特許第6531371号の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成26年10月22日(優先権主張 平成25年11月27日)の出願であって、令和元年5月31日にその特許権の設定登録がされ、令和元年6月19日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 元年12月 5日 :特許異議申立人高市悦永(当審注:「高」は正しくは異字体のいわゆるはしごだか。)(以下「申立人1」という。)による請求項1~4に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 元年12月19日 :特許異議申立人小園祐子(以下「申立人2」という。)による請求項1~4に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 2年 3月24日付け:取消理由通知
令和 2年 5月12日 :特許権者による意見書の提出
令和 2年 6月17日 :申立人1による上申書の提出
令和 2年 7月21日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和 2年 9月10日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
令和 2年 9月30日付け:訂正拒絶理由通知
令和 2年10月16日 :特許権者による意見書の提出
令和 3年 1月26日 :申立人1による意見書の提出
第2 訂正の適否
1.訂正の内容
上記令和2年9月10日提出の訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1において、
「外層と内層とを備え、内容物の減少に伴って前記内層が前記外層から剥離し収縮する積層剥離容器であって、」
と記載されているのを、
「容器本体と、キャップを備える積層剥離容器であって、
前記容器本体は、外層と内層とを備え、前記外層によって外殻が構成され、前記内層によって内袋が構成され、内容物の減少に伴って前記内層が前記外層から剥離して前記内袋が収縮するように構成され、」
に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~4も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項1において、
「外層は、プロピレンと別のモノマーとの間のランダム共重合体からなるプロピレン共重合体層を備え、」
と記載されているのを、
「外層は、プロピレンとエチレンとの間のランダム共重合体からなるプロピレン共重合体層を備え、」
に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~4も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項1において、
「前記内層は、最外層として、EVOH樹脂からなるEVOH層を備える、」
と記載されているのを、
「前記内層は、最外層として、EVOH樹脂からなるEVOH層を備え、
前記外層の最内層は、前記プロピレン共重合体であるか、又は低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、前記ランダム共重合体以外のエチレン-プロピレン共重合体及びその混合物から選択される材料で構成される層であり、
前記外殻には、前記内袋と前記外殻の間の中間空間に外気を導入する外気導入孔が設けられ、
前記容器本体は、前記内容物を収容する収容部と、前記収容部から内容物を吐出する口部を備え、
前記容器本体は、ブロー成形体であり、
前記容器本体の底面には、前記底面から突出する底シール突出部が設けられ、
前記底シール突出部は、前記外層と前記内層に対応する積層構造を有する積層パリソンを用いたブロー成形における前記積層パリソンのシール部であり、
前記内容物は、醤油であり、
前記キャップは、前記口部に装着され、且つ逆止弁を有し、
前記逆止弁は、前記内容物の吐出を許容し、且つ前記内袋内への外気の取り込みを制限するように構成され、
前記外殻に圧縮力を加えることによって前記内容物が吐出されるように構成される、」
に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~4も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項2において、
「前記EVOH樹脂の融点は、前記ランダム共重合体よりも高い、」
と記載されているのを、
「前記EVOH樹脂の融点は、前記ランダム共重合体よりも高く、
前記底シール突出部は、折り曲げられている、」
に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3、4も同様に訂正する)。
(5)訂正事項5
訂正前の特許請求の範囲の請求項3において、
「前記EVOH樹脂の融点は、前記ランダム共重合体の融点よりも15℃以上高い、」
と記載されているのを、
「前記EVOH樹脂の融点は、前記ランダム共重合体の融点よりも15℃以上高く、
前記底シール突出部において、前記内層が前記外層によって挟まれている、」
に訂正する(請求項3の記載を直接的に引用する請求項4も同様に訂正する)。
(6)訂正事項6
訂正前の特許請求の範囲の請求項4において、
「前記内層は、前記EVOH層よりも容器内面側に接着層を介してポリエチレン層を備える、」
と記載されているのを、
「前記内層は、前記EVOH層よりも容器内面側に接着層を介してポリエチレン層を備え、
前記外気導入孔を通じた空気の出入りを調整する弁部材が前記外気導入孔に装着されている、」
に訂正する。
(7)訂正事項7
訂正前の特許請求の範囲の請求項4において、
「、請求項2又は請求項3に記載の積層剥離容器。」
と記載されているのを、
「、請求項3に記載の積層剥離容器。」
に訂正する。
2.一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~4について、請求項2~4は、訂正前の請求項1の記載を直接的又は間接的に引用するものであって、上記訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとにされたものである。
3.訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
上記訂正事項1は、訂正前の請求項1の「外層と内層とを備え、内容物の減少に伴って前記内層が前記外層から剥離し収縮する積層剥離容器」について、「容器本体と、キャップを備える積層剥離容器であって、前記容器本体は、外層と内層とを備え、前記外層によって外殻が構成され、前記内層によって内袋が構成され、内容物の減少に伴って前記内層が前記外層から剥離して前記内袋が収縮するように構成され、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という)に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項1は、本件特許明細書等の【0012】~【0014】の記載に基づくものであるから、上記訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項1は、上記アに示したとおり、訂正前の請求項1を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
上記訂正事項2は、訂正前の請求項1の「外層」が備える「プロピレン共重合体層」について、訂正前の「プロピレンと別のモノマーとの間のランダム共重合体からなる」点を、「プロピレンとエチレンとの間のランダム共重合体からなる」点に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
イ 本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項2は、本件特許明細書等の【0032】、【0051】及び【0052】の記載に基づくものであるから、上記訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項2は、上記アに示したとおり、訂正前の請求項1を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
(3)訂正事項3について
上記訂正事項3は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「前記外層の最内層は、前記プロピレン共重合体であるか、又は低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、前記ランダム共重合体以外のエチレン-プロピレン共重合体及びその混合物から選択される材料で構成される層であり、」
という記載を追加する訂正(以下「訂正事項3-1」という。)と、
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「前記外殻には、前記内袋と前記外殻の間の中間空間に外気を導入する外気導入孔が設けられ、」
という記載を追加する訂正(以下「訂正事項3-2」という。)と、
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「前記容器本体は、前記内容物を収容する収容部と、前記収容部から内容物を吐出する口部を備え、」
という記載を追加する訂正(以下「訂正事項3-3」という。)と、
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「前記容器本体は、ブロー成形体であり、
前記容器本体の底面には、前記底面から突出する底シール突出部が設けられ、
前記底シール突出部は、前記外層と前記内層に対応する積層構造を有する積層パリソンを用いたブロー成形における前記積層パリソンのシール部であり、」
という記載を追加する訂正(以下「訂正事項3-4」という。)と、
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「前記内容物は、醤油であり、」
という記載を追加する訂正(以下「訂正事項3-5」という。)と、
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「前記キャップは、前記口部に装着され、且つ逆止弁を有し、
前記逆止弁は、前記内容物の吐出を許容し、且つ前記内袋内への外気の取り込みを制限するように構成され、
前記外殻に圧縮力を加えることによって前記内容物が吐出されるように構成され」
という記載を追加する訂正(以下「訂正事項3-6」という。)と、を含むものであり、以下、それぞれについて検討する。
ア 訂正事項3-1について
(ア)訂正の目的について
上記訂正事項3-1は、訂正前の請求項1の「積層剥離容器」について、「前記外層の最内層は、前記プロピレン共重合体であるか、又は低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、前記ランダム共重合体以外のエチレン-プロピレン共重合体及びその混合物から選択される材料で構成される層であり、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
(イ)本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
本件特許明細書等の「外層11は、プロピレンと別のモノマーとの間のランダム共重合体からなるランダム共重合体層を備える。外層11は、・・・例えば、リプロ層の両側をランダム共重合体層で挟んだ構成であってもよい」(【0031】)、及び「プロピレンと共重合されるモノマーとしては、・・・エチレンが特に好ましい。」(【0032】)の記載から、「外層11」の構成として、「リプロ層の両側」を「プロピレンとエチレンとの間のランダム共重合体層で挟んだ」もの、すなわち、「外層の最内層」が「プロピレンとエチレンとの間のランダム共重合体」であるものは記載されている。
また、本件特許明細書等には、「外層11」が「複数層構成であってもよい」(【0031】)ことが記載されており、また、「外層11」を構成し得る材料として、「低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体及びその混合物」(【0030】)が例示されている。
ここで、エチレン-プロピレン共重合体には、「プロピレンとエチレンとの間のランダム共重合体」以外のものも存在することは技術常識である。
そうすると、複数層構成の「外層11」の「最内層」の材料として、上記例示されたものから「プロピレンとエチレンとの間のランダム共重合体」を除いたものを選択して、「最内層」を「低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、前記ランダム共重合体以外のエチレン-プロピレン共重合体及びその混合物から選択される材料で構成される層」としたものは、本件特許明細書等に記載されているのと同然であると理解できる。
したがって、上記訂正事項3-1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項3-1は、上記(ア)に示したとおり、訂正前の請求項1を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
イ 訂正事項3-2について
(ア)訂正の目的について
上記訂正事項3-2は、訂正前の請求項1の「積層剥離容器」について、「前記外殻には、前記内袋と前記外殻の間の中間空間に外気を導入する外気導入孔が設けられ、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
(イ)本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項3-2は、本件特許明細書等の【0020】の記載に基づくものであるから、上記訂正事項3-2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項3-2は、上記(ア)に示したとおり、訂正前の請求項1を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 訂正事項3-3について
(ア)訂正の目的について
上記訂正事項3-3は、訂正前の請求項1の「積層剥離容器」について、「前記容器本体は、前記内容物を収容する収容部と、前記収容部から内容物を吐出する口部を備え、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
(イ)本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項3-3は、本件特許明細書等の【0012】の記載に基づくものであるから、上記訂正事項3-3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項3-3は、上記(ア)に示したとおり、訂正前の請求項1を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
エ 訂正事項3-4について
(ア)訂正の目的について
上記訂正事項3-4は、訂正前の請求項1の「積層剥離容器」について、「前記容器本体は、ブロー成形体であり、前記容器本体の底面には、前記底面から突出する底シール突出部が設けられ、前記底シール突出部は、前記外層と前記内層に対応する積層構造を有する積層パリソンを用いたブロー成形における前記積層パリソンのシール部であり、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
(イ)本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項3-4は、本件特許明細書等の【0025】及び【0039】の記載に基づくものであるから、上記訂正事項3-4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項3-4は、上記(ア)に示したとおり、訂正前の請求項1を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
オ 訂正事項3-5について
(ア)訂正の目的について
上記訂正事項3-5は、訂正前の請求項1の「積層剥離容器」について、「前記内容物は、醤油であり、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
(イ)本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項3-5は、本件特許明細書等の【図10】(g)の記載に基づくものであるから、上記訂正事項3-5は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項3-5は、上記(ア)に示したとおり、訂正前の請求項1を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
カ 訂正事項3-6について
(ア)訂正の目的について
上記訂正事項3-6は、訂正前の請求項1の「積層剥離容器」について、「前記キャップは、前記口部に装着され、且つ逆止弁を有し、前記逆止弁は、前記内容物の吐出を許容し、且つ前記内袋内への外気の取り込みを制限するように構成され、前記外殻に圧縮力を加えることによって前記内容物が吐出されるように構成され」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
(イ)本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項3-6は、本件特許明細書等の【0014】、【0046】及び【0047】の記載に基づくものであるから、上記訂正事項3-6は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項3-6は、上記(ア)に示したとおり、訂正前の請求項1を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的について
上記訂正事項4は、訂正前の請求項2の「積層剥離容器」について、「前記底シール突出部は、折り曲げられている、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
イ 本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項4は、本件特許明細書等の【0026】及び【図6】の記載に基づくものであるから、上記訂正事項4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項4は、上記アに示したとおり、訂正前の請求項1を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的について
上記訂正事項5は、訂正前の請求項3の「積層剥離容器」について、「前記底シール突出部において、前記内層が前記外層によって挟まれている、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
イ 本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項5は、本件特許明細書等の【0026】及び【図6】の記載に基づくものであるから、上記訂正事項5は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項5は、上記アに示したとおり、訂正前の請求項1を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的について
上記訂正事項6は、訂正前の請求項4の「積層剥離容器」について、「前記外気導入孔を通じた空気の出入りを調整する弁部材が前記外気導入孔に装着されている、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
イ 本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項6は、本件特許明細書等の【0020】及び【0023】の記載に基づくものであるから、上記訂正事項6は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項6は、上記アに示したとおり、訂正前の請求項1を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
(7)訂正事項7について
ア 訂正の目的について
上記訂正事項7は、訂正前の請求項4が請求項2又は請求項3を引用していたものを、請求項2の引用を解消し、請求項3のみを引用するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることと、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
イ 本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項7は、上記アに示したとおり、訂正前の請求項4が請求項2又は請求項3を引用していたものを、請求項2の引用を解消し、請求項3のみを引用するものであるから、上記訂正事項7は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項7は、上記アに示したとおり、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとし、訂正前の請求項4を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
4.小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
第3 取消理由の概要
第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下「本件発明1~4」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
容器本体と、キャップを備える積層剥離容器であって、
前記容器本体は、外層と内層とを備え、前記外層によって外殻が構成され、前記内層によって内袋が構成され、内容物の減少に伴って前記内層が前記外層から剥離して前記内袋が収縮するように構成され、
外層は、プロピレンとエチレンとの間のランダム共重合体からなるプロピレン共重合体層を備え、
前記内層は、最外層として、EVOH樹脂からなるEVOH層を備え、
前記外層の最内層は、前記プロピレン共重合体であるか、又は低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、前記ランダム共重合体以外のエチレン-プロピレン共重合体及びその混合物から選択される材料で構成される層であり、
前記外殻には、前記内袋と前記外殻の間の中間空間に外気を導入する外気導入孔が設けられ、
前記容器本体は、前記内容物を収容する収容部と、前記収容部から内容物を吐出する口部を備え、
前記容器本体は、ブロー成形体であり、
前記容器本体の底面には、前記底面から突出する底シール突出部が設けられ、
前記底シール突出部は、前記外層と前記内層に対応する積層構造を有する積層パリソンを用いたブロー成形における前記積層パリソンのシール部であり、
前記内容物は、醤油であり、
前記キャップは、前記口部に装着され、且つ逆止弁を有し、
前記逆止弁は、前記内容物の吐出を許容し、且つ前記内袋内への外気の取り込みを制限するように構成され、
前記外殻に圧縮力を加えることによって前記内容物が吐出されるように構成される、積層剥離容器。
【請求項2】
前記EVOH樹脂の融点は、前記ランダム共重合体よりも高く、
前記底シール突出部は、折り曲げられている、請求項1に記載の積層剥離容器。
【請求項3】
前記EVOH樹脂の融点は、前記ランダム共重合体の融点よりも15℃以上高く、
前記底シール突出部において、前記内層が前記外層によって挟まれている、請求項2に記載の積層剥離容器。
【請求項4】
前記内層は、前記EVOH層よりも容器内面側に接着層を介してポリエチレン層を備え、
前記外気導入孔を通じた空気の出入りを調整する弁部材が前記外気導入孔に装着されている、請求項3に記載の積層剥離容器。」
第4 当審の判断
1.取消理由(決定の予告)の概要
本件発明1~4に対して、当審が令和2年7月21日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
(1)理由1(特許法第36条第6項第1号:サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
ア ランダム共重合体に関して、「特定構成」以外の「ランダム共重合体」についてまで、本件発明の課題を解決できると当業者が理解するような記載は発明の詳細な説明には見当たらず、また、「特定構成」の「ランダム共重合体」だとしても、当該「特定構成」によりなぜ形状復元性等に優れたものになるのかの機序については発明の詳細な説明に記載されていないから、本件発明1~4は、本件発明の課題を解決できないものを含んでいることは明らかであり、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。
イ 外層の層構成に関して、「外層」の「プロピレンと別のモノマーとの間のランダム共重合体からなるプロピレン共重合体層」以外の層構成が特定されていない本件発明1~4は、本件発明の課題を解決できないものを含んでいるから、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。
ウ 外層と内層の剥離に関して、本件発明1~4は「外層」と「内層」が剥離できないものを含むものであって、本件発明の課題を解決するための前提を欠くものであるから、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。
(2)理由2(特許法第29条第2項:進歩性)
請求項1~4に係る発明は、引用文献1に記載された発明又は引用文献2に記載された発明、及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
[引用文献等一覧]
1.特開平6-239332号公報(申立人1が提出した甲第3号証)
2.特開2002-187294号公報(申立人1が提出した甲第6号証)
3.葛良忠彦、講座「プラスチック包装容器」(第I講)プラスチック包装容器の分類と使用材料、色材協会誌、80巻1号p32-39、2007年(申立人1が提出した甲第7号証、申立人2が提出した甲第2-2号証)
4.特開2013-53183号公報(申立人1が提出した甲第10号証)
5.特許第2691494号公報(申立人1が提出した甲第11号証)
6.特開2012-148810号公報(申立人1が提出した甲第12号証)
7.旭化成アミダス株式会社、「プラスチック・データブック」、1999年12月1日、p.364、365、502、503(申立人2が提出した甲第3号証)
8.特開平6-345069号公報(申立人1が提出した甲第17号証)
9.葛良忠彦、講座「プラスチック包装容器」(第II講)プラスチック包装容器の構成と製造方法、色材協会誌、80巻2号、2007年、p.80~89(申立人1が提出した甲第18号証)
10.特公平4-73695号公報(申立人1が提出した甲第19号証)
11.特表2008-518076号公報(申立人1が提出した甲第20号証)
12.特開2004-196357号公報(申立人2が提出した甲第1-1号証)
2.令和2年7月21日付け取消理由(決定の予告)についての判断
(1)理由1(特許法第36条第6項第1号:サポート要件)について
ア 本件発明の課題について
本件特許の発明の詳細な説明には、「外殻の形状復元性・透明性・耐熱性に優れた積層剥離容器を提供する」(【0006】)ことが、発明が解決しようとする課題として記載されている。
イ 「ランダム共重合体」及び「外層の層構成」について
(ア)上記アに示した課題について、「ランダム共重合体」及び「外層の層構成」に関して、本件特許明細書等には、「プロピレンと別のモノマーとの間のランダム共重合体からなるプロピレン共重合体層で外殻を構成したところ、外殻の形状復元性・透明性・耐熱性を向上させることができることを発見し、本発明の完成に到った。」(【0008】)ことが記載されている。
(イ)この点、発明の詳細な説明の記載を確認すると、「外層11を特定構成のランダム共重合体で構成することによって、外殻12の形状復元性・透明性・耐熱性を向上させることができる。」(【0031】、下線は強調のため当審が付した。)と記載されており、当該記載からすれば、「ランダム共重合体」が「特定構成」であること、及び「外層」を「特定構成のランダム共重合体で構成する」ことにより、上記課題を解決可能であると解するのが相当である。
(ウ)そこで、「ランダム共重合体」の「特定構成」について発明の詳細な説明の記載を確認すると、「ランダム共重合体は、プロピレン以外のモノマーの含有量が、50mol%よりも小さいものであり、5~35mol%が好ましい。・・・プロピレンと共重合されるモノマーとしては、ポリプロピレンのホモポリマーに比べた場合のランダム共重合体の耐衝撃性を向上させるものであればよく、エチレンが特に好ましい。」(【0032】)とあり、「ランダム共重合体」の「特定構成」として「プロピレンとエチレンのランダム共重合体」が記載されている。
(エ)本件発明1において、「外層は、プロピレンとエチレンとの間のランダム共重合体からなるプロピレン共重合体層を備え」と特定されていることから、「ランダム共重合体」は「特定構成」である「プロピレンとエチレンのランダム共重合体」であること、及び「外層」が「特定構成」である「プロピレンとエチレンのランダム共重合体を備え」ている、すなわち、「特定構成」である「プロピレンとエチレンのランダム共重合体」で構成されていることが特定されている。そうすると、本件発明1が、上記アに示した課題を解決することが理解できる。
同様に、本件発明2~4についても、上記アに示した課題を解決することが理解できる。
ウ 「外層と内層の剥離」について
(ア)本件特許明細書等の発明の詳細な説明には、「内容物の減少に伴って前記内層が前記外層から剥離し収縮する積層剥離容器」(【0007】)であることが記載されており、また、「外層11」を構成する材料として、「低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体及びその混合物」(【0030】)が挙げられ、【0034】には、「内層13」の「容器外面側」に「EVOH層13a」が設けられていることが記載されている。
(イ)そうすると、「前記内層は、最外層として、EVOH樹脂からなるEVOH層を備え」、「外層の最内層」が、「前記プロピレン共重合体であるか、又は低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、前記ランダム共重合体以外のエチレン-プロピレン共重合体及びその混合物から選択される材料で構成される層」である本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。
(ウ)そうすると、本件発明1~4の容器は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものとはいえない。
エ 取消理由1(サポート要件)についてのまとめ
したがって、本件発明1~4は、発明の詳細な説明に記載したものである。
(2)理由2(特許法第29条第2項:進歩性)について
ア 引用文献の記載事項
(ア)引用文献1(申立人1が提出した甲第3号証)
引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0011】
【課題を解決するための手段】本発明に係る容器は、熱可塑性樹脂の管状パリソンのブロー成形によって形成された多層壁より成り、且つ内外層間が易剥離とされ、その易剥離された層間に頭部の層間通気孔から内容物の使用分について外部からの通気が行われ、容器の外観は外層の弾力性に依存して常に保持、復元され、外層容器内では内層容器が内容物の使用分に伴って容器中心線に添って収縮することにより、容器内容物質を使用の当初から終了まで一貫して外部環境から保護することを要旨とする。」
「【0014】本発明の容器壁は内外層に区分され、成形時及び充填時には密着しており内容物使用時には分離するものであって、その内層は、主として機能性膜、即ち優れた耐湿性、耐水性、ガス遮断性、耐薬品性、耐有機溶剤性、風味保存性等をもつ単層もしくは多層膜にて構成され、容器内容物質の減少に追随して撓む層厚を持ち、その機能性は容器内容物の諸要求性能に応じた樹脂機能の組合わせをもって採用される。又、外層は容器形態を保持し、製造、充填、輸送、消費等の各段階に対応するに必要な強度と、内層並びに容器内容物質に対する間接的な保護機能を有する層厚とし、印刷等の商品性向上のための多層化はその強度並びに機能の範囲以内において設計される。」
「【0021】
【実施例】次に、本発明に係る容器の実施例を図面に基づいて詳しく説明する。第1図及び第2図は本発明の多層成形容器の1実施例を示す中央縦断側面図、第3図及び第5図は本発明の多層成形容器の1実施例を示す頭部の部分拡大正面図、第4図及び第6図はそれぞれの頭部拡大横断面図である。第7図及び第8図は本発明の注出口部分に設けた嵌装蓋部の1実施例を示す部分拡大断面図である。第1図において、符号11は共押出による管状パリソンのブロー成形によって形成された多層壁容器であり、符号5は注出口である。その符号1で示す外層は、耐湿性、耐水性の高いポリプロピレンより成り、その符号2で示す内層は同じく耐湿性、耐水性、そして耐油性の高い低密度ポリエチレンにガス遮断性の高いエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂を挟合接着することにより多層化された機能性膜より成る。この内外層の間には接着層は介在せず、少ない外力で剥離する易剥離性を有する。
【0022】第1図並びに第2図において、符号6及び7は口部フランジであり、その内層延部の平面部には符号3aの固定リングの平面部が凹部には符号3bの固定リング下方突部が接着されている。該固定リング上方の符号3cの凸部は符号15の弁体と連結する符号16の弁体支持部の凹部と嵌合され弁体支持部を捩ることにより固定リングが回動することになる。回動することにより符号8の通気孔が現出する、と同時に容器頭部の内層は容器肩部にかけて明確に外層との剥離を開始することになる。
【0023】第3図並びに第4図、第5図並びに第6図において、符号7aは内外層共有の突部、さらに符号7bは前記突部に連続するフランジ下方の、同じく内外層共有の突部である。この連続する突部は、口部フランジの内層延部に接合された固定リングの回動に伴い、頭部内層が全面にわたり外層と剥離しつつ回動し、この時点で各共有突部は固有突部に転じ外層の突部は内層の外表面と囲驍せられた、符号8で示す通気孔及び通気管を生成することになる。一方移動した内層の突端の両側にも空間が生じ補助通気孔となる。内層延部の突部は、その接合する固定リングの回動とともに外層フランジ上に該突部の突端と接し突部の縦方向経分の内外層を上下に分離する。さらに内層は回動の進行とともに首部から胴部上端にかけて、頭部の捩りによる斜め上方への引力を受け内外層は明確に剥離し、生じた内外層の凹凸間には現出した通気孔から通気され容器外形には何ら影響を与えずに易剥離が開始される。この易剥離を契機として以後内容物質の使用のつど易剥離が繰り返され容器底部の第1図の符号10a,10bに示す繋合部に達して終了する。
【0024】第7図及び第8図は嵌装蓋部を装着した一実施例であり、第7図は通気孔の閉鎖状態を示し、第8図は固定リングの45°回動による通気孔の開通状態を示す。符号1は外層であり符号2は内層を示す。符号3a及び3b並びに3cは一体成形された固定リングであり第7図においては通気孔となる内外層の突部を埋める状態を示し、第8図においては固定リングの回動により固定リングの平面部が外層の突部上にあり前記のリング突部並びに内層厚の縦経分の符号8の空間が生成したことを示す。符号21は容器の嵌装蓋部固定体、符号22は移動空間、符号23は前記21の固定体の外周に嵌合され周上を上下左右移動可能な嵌装蓋部移動体、符号25は吸気遮断弁であり符号29はその支持部、符号27は容器本体の通気孔と連通する通気孔、符号28は隔壁である。符号24は蓋部脱落防止溝である。又、図示しないが間欠雄螺子間に上下に連通した突部を設け、通気孔の開設を妨げずに該雄螺子と蓋部の固定が可能である。
【0025】更に、図示しないが容器の頭部において、上下端部を整列させた間欠雄螺子を形成し、該雄螺子間に口部から頭部下端に連通する雄螺子より低径の突部を設けることにより雌螺子を持つ蓋部を嵌合することができる。又、容器内容物によっては開封開栓時に通気孔の開閉が実行されることにより簡便性が向上する。開封開栓時に通気孔を開閉するため符号3a又は3bの外側方並びに嵌合蓋部内側方にそれぞれ設けた突部が当接することにより、蓋部の着脱又は開閉栓時に固定リングが連動して回動することになる。層間通気孔が開封開栓及び/又は閉封閉栓動作と同時に開閉可能とすることにより、容器口部周辺に対する手指その他による直接的な接触が避けられ簡便性と共に衛生性が格段に向上することになる。
【0026】符号2の内層は、容器口部においては固定リングの符号3a並びに3bの底面に接着又は接合せられ、容器底部においては第1図の符号10a及び10bに示すように、型締時におけるパリソンの溶断によって生ずるウエルド部の両端が内外層共に鋭く食込み合うことにより繋合せられる。口部と底部でこれらの固定が行われることにより、符号2の内層は符号1の外層容器内で充填物の使用に伴って容器の中心線に添って縦条に自然収縮し容器内容器として機能することになる。従来の吸気に伴う外気は剥離された内外層間に明確に分離貯溜されることになり容器内容物質は充填時から使用終了まで外気の影響を最小限に保持して使用されることになる。
【0027】又、図示しないが他の実施例として、例えばチューブ状容器にあっては、その通気孔形成のための内外層構成を、本実施例の方法の他に、内層及び外層を別途に同形状にブロー成形した後内層延部の柔軟性を利用して挿入合体するか、外層の胴部を円筒状に成形及び/又は内層の胴部を円筒状に成形し各々の端部を射出成形金型内に挿入し、射出成形して頭部を融着形成し合体せしむる方法をとることができる。上記のいずれの方法においても頭部の内層の回動が可能であり、通気孔の開閉又は閉開の手順を容器収容物質の性状と要求されるスクイーズ性能に応じて採ることができる。
【0028】更に又、紙パック状の容器においては、容器の内層とキャップ内層の融着による口部形成をする場合、内層キャップとそれに嵌合する外層キャップの外層接合部間に容器内にて間隙を設け、該間隙間に内外層間通気孔を開口する。内層キャップ内を注出部と層間通気部に分割し、キャップの側面に通気孔を開孔し、同じく外層キャップ側面の開孔部とが内層の回動により連通して層間通気が行われる。また、吸気防止弁体を容器口部内に嵌装又は接着することにより外気の流入は遮断されることになる。
【0029】上述の如く、容器の種類によって、その内外層の形成法は異なるものの本発明の意図する目的においては共通している。即ち、本発明の容器においては、第1図に示す如く、符号2の内層に充填された内容物質を取り出す際に、容器頭部の内層の回動によって第1図並びに第5図に示す如く符号8の層間通気孔が開通することになり、この通気機能の生成によって、内容物質の取出し体積相当分の外気が充填物質に触れることなく内外層間に補填されることになる。符号8の通気孔は、容器の生産、内容物の充填、輸送、販売等における各時点においては閉鎖されることにより、生産作業性と内容物に対する保護機能性は従来同様の利便さを保つことになる。本発明の多層容器の符号8の通気孔は、消費者が充填物を消費する段階で、従来と同様に蓋部を手指にて捩じることにより自動的あるいは連動的に容易に生成する。この通気孔からの通気によって符号2の内層は充填物の減少に追随して収縮する反面、符号1の外層は当初の形状を常に維持、復元することになる。又、固定リングと蓋部の形状による当接あるいは接合状態により開栓及び/又は閉栓時に捩じり方向によって通気孔の開閉を自由に選択することが可能であり充填物の粘度に応じて使い分けられ得るものである。更に、容器の充填物の粘度状況が使用後に吸気を伴う場合にはおいては、口部の注出口に符号15に示す吸気遮断弁を設けることにより充填物は外気接触から保護されることになる。更に又、口部フランジの内層延部に接合された固定リング並びに容器底部のピンチオフによる内外層の繋合によって、内層は上下に固定されるとともに容器内面における外層との易剥離性によって容器中心線に添って縦条に収縮可能となるものである。」
「【図1】
」
「【図7】
」
「【図8】
」
引用文献1の上記記載事項から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「容器本体11と、蓋部を備える多層容器であって、
容器本体11は、外層1と内層2とを備え、外層1によって外層容器が構成され、内層2によって内装容器が構成され、内容物の使用分に伴って内外層間が易剥離とされ、内装容器が収縮し、
外層1は、ポリプロピレンより成り、
内層2は、低密度ポリエチレンにエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂を挟合接着することにより多層化された機能性膜より成り、
固定リング3aの回動により固定リング3a平面部が外層1の突部上にありリング凸部並びに内層厚の縦経分の通気孔8が開通し、外気が内外層間に補填され、
内層2に内容物質が充填され、容器内容物質が口部から注出され、
容器本体11は、共押出による管状パリソンのブロー成形によって形成され、
蓋部は注出口部分5に設けられ、弁体25を有し、
使用後に、弁体25により充填物は外気接触から保護され、
スクイーズ性能を有する、多層容器。」
(イ)引用文献2(申立人1が提出した甲第6号証)
引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液体を収納する容器、該容器の製造方法、および該製造方法に用いられる金型に関し、特に多層のブロー成形によって形成され、外部へ液体を供給するために、液体の供給先である被供給部と連結される液体供給部を有する液体収納容器、該容器の製造方法、および該製造方法に用いられる金型に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、液体収納容器として、多層のブロー成形によって形成された容器が多方面にわたって使用されている。ブロー成形は、熱可塑性樹脂をチューブ状のパリソンとして押し出し、パリソンをその側方から金型で挟み、袋状となったパリソン内に空気を吹き込んでパリソンを膨らませ、金型の内壁に密着させて製品を得る方法である。
【0003】ブロー成形によって容器を形成する場合、パリソンの軸方向端部には、ピンチオフ部と呼ばれる、熱可塑性樹脂同士の溶着部が形成される。溶着部のシール強度が弱いと、外部からの衝撃等により溶着部で割れが生じてしまうので、特に、インクや薬品等を収納する場合は、安全性の面からも、溶着部の衝撃強度、シール性に優れていることが重要になってくる。」
「【0027】内袋(内壁)12は可撓性を有し、かつ、筐体(外壁)11と剥離可能である。したがって、内袋12の内側であるインク収納部に収納されたインクの導出に伴い、筐体11が変形することなく内袋12のみが変形することが可能である。・・・」
「【0055】(第2の実施形態)図6は、本発明の第2の実施形態による液体収納容器の概略斜視図である。また、図7は、図6に示す液体収容容器のピンチオフ部を横断する方向で切断したピンチオフ部についての要部断面図である。
【0056】本実施形態の液体収納容器50は、前述の第1の実施形態と同様、筐体と筐体に対して分離可能な内袋とを有しているが、内袋には例えばシャンプーやリンスなどの液体を収容するものであり、注出口52を端部に有するポンプ部材51が、口部53に設けられている。このポンプ部材51に接続され,内部の液体を取り出すための筒部55が液体収納容器50の内部に延在しており、その開口端部55aは、液体収納容器50の底面56の近傍に位置している。この底面56には、前述の第1の実施形態と同様、ピンチオフ部58が設けられ,その近傍の内壁の肉厚領域(図7に示す内袋59の凸部60)の外面と、筐体の内面との間に空隙部57が形成されている。なお、本実施形態では、外気連通口54は液体収納容器50の口部53に任意の加工手段で穿孔されている。
【0057】このピンチオフ部58の近傍の構造について,更に図7を用いて詳細に説明する。
【0058】本実施形態でも,前述の第1の実施形態と同様、空隙部57は、筐体62の凸部61と、内袋59の凸部60との間に形成されている。本実施形態では、前述の第1の実施形態とは異なり、内袋59の構成が、接着性樹脂を添加したポリプロピレンなどの内層59aと、EVOHなどのバリア層59bとの積層になっている。もちろん、内容物の種類によっては、これに変えて内袋を単層にしてもよい。
【0059】また、本実施形態の筐体62はポリプロピレンで形成されているが,その底面56については、液体収納容器50の外周部が載置面56bを形成しているのに対して、その内側の領域56aは相対的に内袋59側に突出している。そして、載置面56bとその内側の領域56aとで形成される凹部内に、ピンチオフ部58が、外部に対して突出するように設けられ,それに対応する筐体62の外壁外面が突起56cを形成している。このような容器であっても、上述の空隙部57を設けることで,外部から衝撃が加わった際にピンチオフ部58を保護することが出来る。
【0060】このような液体収納容器は、シャンプーやリンスなどのほか、マヨネーズやケチャップなどの粘性食品、シェービングクリームなどの発泡状の粘性化粧品、液体洗剤、ゼリー状の洗顔化粧品等を収容する容器としても好適に利用できる。また、それらの内容物に応じて、本実施形態に示されるようなポンプを用いてもよいし、単なる開口としてもよい。」
「【図6】
」
「【図7】
」
引用文献2の図6を参照すると、液体収納容器50とポンプ部材51により容器をなしていることが理解できる。
引用文献2の【0002】、【0003】、図7を参照すると、突出部56cは、筐体62と内袋59に対応する積層構造を有する多層のパリソンを用いたブロー成形におけるパリソンの溶着部であることが理解できる。
引用文献2の上記記載事項及び認定事項から、引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「液体収納容器50とポンプ部材51により容器をなし、
液体収納容器50は、筐体62と内袋59を有し、内袋62に収納された内容物の導出に伴い、筐体11が変形することなく内袋12のみが変形し、
筐体62はポリプロプレンで形成されて、
内袋59の構成が、ポリプロピレンなどの内層59aと、EVOHなどのバリア層59bとの積層になっており、
液体収納容器50の口部53に外気連通口54が穿孔されており、
液体収納容器50は、口部53を備え、
液体収納容器50、多層のブロー成形によって形成され、
筐体62の底面が突起56cを形成しており、
突出部56cは、筐体62と内袋59に対応する積層構造を有する多層のパリソンを用いたブロー成形におけるパリソンの溶着部であり、
ポンプ部材51は、口部53に設けられている、容器。」
(ウ)引用文献3(申立人1が提出した甲第7号証、申立人2が提出した甲第2-2号証)
引用文献3には、次の事項が記載されている。
「PPはブロー成形材料としても使用されている。
ブロー成形用のPPの種類としては,用途に応じてPPホモポリマー,ランダム共重合体,ブロック共重合体いずれも使用されている。・・・エチレンを1~6wt%ランダム共重合させたコポリマーは,ホモポリマーに比べて透明性,光沢,低温耐衝撃強度が改良される。・・・
PPブロー成形品の用途としては,洗剤,トイレタリー製品,化粧品などの非食品用ボトル,医療用輸液ボトル,あるいは食品用としてエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)との多層ボトルなどがある。」(35ページ左欄9~20行)
(エ)引用文献4(申立人1が提出した甲第10号証)
引用文献4には、次の事項が記載されている。
「【0003】
プロピレン系重合体には、単独重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体があるが、・・・透明性や耐衝撃性の点ではエチレン、ブテン-1等とプロピレンとのランダム共重合体が、・・・好適であり、状況に応じて適宜選択的に用いられている。」
「【0061】
このようにして得られた成形品は、透明性、耐衝撃性、低べたつき性を求められる多くの用途に適用可能である。
具体的には、食品容器(プリン容器、ゼリー容器、ヨーグルト容器、その他のデザート容器、惣菜容器、茶碗蒸し容器、インスタントラーメン容器、米飯容器、レトルト容器、弁当容器等)、飲料容器(飲料ボトル、チルドコーヒー容器、ワンハンドカップ容器、その他の飲料容器等)、キャップ(ペットボトルキャップ、1ピースキャップ、2ピースキャップ、インスタントコーヒーのキャップ、調味料キャップ、化粧品容器キャップ等)、医薬品容器(輸液バッグ、血液バッグ、プレフィルドシリンジ、キット製剤、目薬容器、薬液容器、薬剤容器、液体の長期保存容器、プレススルーパッケージ、ストリップパッケージ、分包、プラスチックバイアル等)、その他各種容器(インク容器、化粧品容器、シャンプー容器、洗剤容器等)、医療用器具(ディスポーザブルシリンジおよびその部品、カテーテル・チューブ、真空採血管、手術用不織布、血液用フィルター、血液回路などのディスポーザブル器具、人工肺、人工肛門などの人工臓器類の部品、ダイアライザー、試験管、検査キット、縫合糸、湿布基材、歯科用材料の部品、整形外科用材料の部品、コンタクトレンズのケース等)、日用品(衣装ケース、バケツ、洗面器、バス・トイレタリー用品、筆記用具、文房具、コンテナ、玩具、調理器具、その他各種ケース等)、自動車部品(インパネ、バンパー、トリム、内装部品、灯体等)、電気・電子部品(各種電気機器の部材・筐体、半導体搬送容器、光学部品、各種情報メディアケース、太陽電池封止材等)、建材、産業資材品、理化学機器、延伸フィルム、未延伸フィルム、シート、繊維などが挙げられる。」
(オ)引用文献5(申立人1が提出した甲第11号証)
引用文献5には、次の事項が記載されている。
「【0009】PP系樹脂の好ましい例は、PPホモポリマーであり、さらにプロピレンとエチレンとの共重合体であって、エチレンの含有量が1~30重量%、好ましくは1~15重量%の樹脂であり、さらに好ましくはエチレン含有量が1~7重量%であるプロピレンとエチレンとのランダム共重合体を例示することができる。本発明のポイントである耐寒性改善は、特に、最外層に使用される樹脂を適宜選ぶことで達成される。即ち、最外層の樹脂の構成として、ポリプロピレン(PP)系樹脂に、直鎖状超低密度ポリエチレン(VLDPE)樹脂を所定の範囲で適量添加することで達成される。その好ましい添加量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、5~40重量部である。その添加量が40重量部を越えると、ボトルの光沢、透明性が損なわれる。また、5重量部以下では、その耐寒性改善の効果が充分発揮できない。」
(カ)引用文献6(申立人1が提出した甲第12号証)
引用文献6には、次の事項が記載されている。
「【0012】
混合樹脂組成物中の主成分であるプロピレン系重合体は、ポリプロピレン、プロピレン-α・オレフィン共重合体を挙げることができ、さらに詳しくはプロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体を挙げることができるが、この中でもプロピレン-エチレンランダム共重合体が透明性の点で好ましく、エチレン成分が2~15mol%のMFRが1.0g/10min以上、特に外層に使用する場合は光沢性の点でエチレン成分が4mol%以上、MFRが3.0g/10min以上のプロピレン-エチレンランダム共重合体(r-PP)が好ましい。」
イ 本件発明1について
(ア)引用文献1に基づく取消理由について
a 対比
本件発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「容器本体11」は本件発明1の「容器本体」に相当し、以下同様に、「蓋部」は「キャップ」に、「多層容器」は「積層剥離容器」に、「外層1」は「外層」に、「内層2」は「内層」に、「外層容器」は「外殻」に、「内層容器」は「内袋」に、それぞれ相当する。
引用発明1において「多層容器」が、「内容物の減少に伴って前記内層が前記外層から剥離して前記内袋が収縮するように構成され」、「スクイーズ性能を有する」ことは、本件発明1において「積層剥離容器」が、「内容物の減少に伴って前記内層が前記外層から剥離して前記内袋が収縮するように構成され」、「前記外殻に圧縮力を加えることによって前記内容物が吐出されるように構成される」ことに相当する。
引用文献1の図1を参照すると、引用発明1において、「容器本体11」は「内層2に内容物質が充填され、容器内容物質が口部から注出され」るように構成されることは、本件発明1において、「前記容器本体は、前記内容物を収容する収容部と、前記収容部から内容物を吐出する口部を備え」ることに相当する。
引用発明1において、「容器本体11は、共押出による管状パリソンのブロー成形によって形成され」ることは、本件発明1において、「前記容器本体は、ブロー成形体であ」ることに相当する。
以上のことから、本件発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「容器本体と、キャップを備える積層剥離容器であって、
前記容器本体は、外層と内層とを備え、前記外層によって外殻が構成され、前記内層によって内袋が構成され、内容物の減少に伴って前記内層が前記外層から剥離して前記内袋が収縮するように構成され、
前記容器本体は、前記内容物を収容する収容部と、前記収容部から内容物を吐出する口部を備え、
前記容器本体は、ブロー成形体であり、
前記外殻に圧縮力を加えることによって前記内容物が吐出されるように構成される、積層剥離容器。」
<相違点1-1>
本件発明1は、「外層は、プロピレンとエチレンとの間のランダム共重合体からなるプロピレン共重合体層を備え」、「前記外層の最内層は、前記プロピレン共重合体であるか、又は低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、前記ランダム共重合体以外のエチレン-プロピレン共重合体及びその混合物から選択される材料で構成される層であ」るのに対して、引用発明1は、「外層1は、ポリプロピレンより成」る点。
<相違点1-2>
本件発明1は、「前記内層は、最外層として、EVOH樹脂からなるEVOH層を備え」るのに対して、引用発明1は、「内層2は、低密度ポリエチレンにエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂を挟合接着することにより多層化された機能性膜より成」る点。
<相違点1-3>
本件発明1は、「前記外殻には、前記内袋と前記外殻の間の中間空間に外気を導入する外気導入孔が設けられ」るのに対して、引用発明1は、「固定リング3aの回動により固定リング3a平面部が外層1の突部上にありリング凸部並びに内層厚の縦経分の通気孔8が開通し、外気が内外層間に補填され」る点。
<相違点1-4>
本件発明1は、「前記容器本体の底面には、前記底面から突出する底シール突出部が設けられ、前記底シール突出部は、前記外層と前記内層に対応する積層構造を有する積層パリソンを用いたブロー成形における前記積層パリソンのシール部であ」るのに対して、引用発明1は、容器本体11の底部がそのようになっていない点。
<相違点1-5>
本件発明1は、「前記内容物は、醤油であ」るのに対して、引用発明1は、内容物が不明である点。
<相違点1-6>
本件発明1は、「前記キャップは、前記口部に装着され、且つ逆止弁を有し、前記逆止弁は、前記内容物の吐出を許容し、且つ前記内袋内への外気の取り込みを制限するように構成され」るのに対して、引用発明1は、「蓋部は注出口部分5に設けられ、弁体25を有し、使用後に、弁体25により充填物は外気接触から保護され」る点。
b 判断
相違点1-1について検討する。
引用文献3、引用文献4、引用文献5、引用文献6に示されるように、プロピレンとエチレンとの間のランダム共重合体からなるプロピレン共重合体からなるポリプロピレンは、透明性を期待できる包装材料として周知の事項(以下「周知事項1」という。)である。
しかし、周知事項1は、相違点1-1に係る本件発明1の「外層は、プロピレンとエチレンとの間のランダム共重合体からなるプロピレン共重合体層を備え」、「前記外層の最内層は、前記プロピレン共重合体であるか、又は低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、前記ランダム共重合体以外のエチレン-プロピレン共重合体及びその混合物から選択される材料で構成される層であ」るという構成とは異なるものであるから、当業者といえども、引用発明1及び周知事項1から、相違点1-1に係る本件発明1の構成を容易に想到することはできない。
よって、本件発明1は、他の相違点について判断するまでもなく、当業者であっても、引用発明1及び周知事項1に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。
(イ)引用文献2に基づく取消理由について
a 対比
本件発明1と引用発明2とを対比する。
引用発明2の「液体収納容器50」は本件発明1の「容器本体」に相当し、以下同様に、「容器」は「積層剥離容器」に、「筐体62」は「外殻」に、「内袋62」は「内袋」に、「EVOHなどのバリア層59b」は「EVOH樹脂からなるEVOH層」に、「外気連通口54」は「外気導入孔」に、それぞれ相当する。
「キャップ」は一般的に「瓶のふた。」[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]を意味し、また、「ふた(蓋)」は一般的に「容器や箱などの口・穴を覆いふさぐもの。」[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]を意味するところ、引用文献2の図6を参照すると、引用発明2の「ポンプ部材51」は、瓶状の部材である「液体収納容器50」の「口部53」を覆いふさぐものであるから、本件発明1の「キャップ」に相当する。
引用文献2の図7を参照すると、「筐体62」と「内袋59」とは、「筐体62」が外側の層、「内袋59」が内側の層となっていることから、引用発明2において「液体収納容器50は、筐体62と内袋59を有」することは、本件発明1において「前記容器本体は、外層と内層とを備え、前記外層によって外殻が構成され、前記内層によって内袋が構成され」ることに相当する。
引用発明2の「内袋62に収納された内容物の導出に伴い、筐体11が変形することなく内袋12のみが変形」することは、本件発明1の「前記内層によって内袋が構成され、内容物の減少に伴って前記内層が前記外層から剥離して前記内袋が収縮するように構成され」ることに相当する。
引用文献2の図7を参照すると、「バリア層59b」が「内袋59」の最外層になっていることから、引用発明2の「内袋59の構成が、ポリプロピレンなどの内層59aと、EVOHなどのバリア層59bとの積層になって」いることは、本件発明1の「前記内層は、最外層として、EVOH樹脂からなるEVOH層を備え」ることに相当する。
引用文献2の図6を参照すると、「液体収納容器50」は、「口部53」と内容物を収容する部分からなるから、引用発明2の「液体収納容器50は、口部53を備え」ることは、本件発明1の「前記容器本体は、前記内容物を収容する収容部と、前記収容部から内容物を吐出する口部を備え」ることに相当する。
引用文献2の図7を参照すると、引用発明2の「筐体62の底面が突起56cを形成して」いることは、本件発明1の「前記容器本体の底面には、前記底面から突出する底シール突出部が設けられ」ることに相当する。
引用発明2の「突出部56cは、筐体62と内袋59に対応する積層構造を有する多層のパリソンを用いたブロー成形におけるパリソンの溶着部であ」ることは、本件発明1の「前記底シール突出部は、前記外層と前記内層に対応する積層構造を有する積層パリソンを用いたブロー成形における前記積層パリソンのシール部であ」ることに相当する。
以上のことから、本件発明1と引用発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「容器本体と、キャップを備える積層剥離容器であって、
前記容器本体は、外層と内層とを備え、前記外層によって外殻が構成され、前記内層によって内袋が構成され、内容物の減少に伴って前記内層が前記外層から剥離して前記内袋が収縮するように構成され、
前記内層は、最外層として、EVOH樹脂からなるEVOH層を備え、
前記外殻には、前記内袋と前記外殻の間の中間空間に外気を導入する外気導入孔が設けられ、
前記容器本体は、前記内容物を収容する収容部と、前記収容部から内容物を吐出する口部を備え、
前記容器本体は、ブロー成形体であり、
前記容器本体の底面には、前記底面から突出する底シール突出部が設けられ、
前記底シール突出部は、前記外層と前記内層に対応する積層構造を有する積層パリソンを用いたブロー成形における前記積層パリソンのシール部である、積層剥離容器。」
<相違点2-1>
「外層」に関して、本件発明1は、「プロピレンとエチレンとの間のランダム共重合体からなるプロピレン共重合体層を備え」、「最内層は、前記プロピレン共重合体であるか、又は低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、前記ランダム共重合体以外のエチレン-プロピレン共重合体及びその混合物から選択される材料で構成される層であ」るのに対して、引用発明2は、「ポリプロプレンで形成され」ている点。
<相違点2-2>
本件発明1は「前記内容物は、醤油であ」るのに対して、引用発明2は内容物が不明である点。
<相違点2-3>
本件発明1は、「前記キャップは、前記口部に装着され、且つ逆止弁を有し、前記逆止弁は、前記内容物の吐出を許容し、且つ前記内袋内への外気の取り込みを制限するように構成され、前記外殻に圧縮力を加えることによって前記内容物が吐出されるように構成される」のに対して、引用発明2は、「ポンプ部材51は、口部53に設けられている」点。
b 判断
相違点2-1について検討する。
周知事項1は、相違点2-1に係る本件発明1の「外層は、プロピレンとエチレンとの間のランダム共重合体からなるプロピレン共重合体層を備え」、「前記外層の最内層は、前記プロピレン共重合体であるか、又は低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、前記ランダム共重合体以外のエチレン-プロピレン共重合体及びその混合物から選択される材料で構成される層であ」るという構成とは異なるものであるから、当業者といえども、引用発明2及び周知事項1から、相違点2-1に係る本件発明1の構成を容易に想到することはできない。
よって、本件発明2は、他の相違点について判断するまでもなく、当業者であっても、引用発明2及び周知事項1に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。
ウ 本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1の技術的事項をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、上記イで検討したのと同じ理由により、当業者が引用発明1又は引用発明2、及び周知事項1に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 理由2(進歩性)についてのまとめ
請求項1~4に係る発明は、引用発明1又は引用発明2、及び周知事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)付言
特許権者は、令和2年9月10日提出の訂正請求書において、「明細書段落31には、外層11が単層であっても複数層構成であってもよい点の開示がある。外層11が単層である場合、外層11の最内層は、必然的に、プロピレン共重合体層となる。」(4ページ18~20行)と主張している。
しかしながら、「層」は「かさなりをなすものの一つ。」[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]を意味するから、「最内層」とは、かさなりをなすものの一つであって、最も内側にあるものを意味する。
そうすると、本件発明1の「外層の最内層」における「外層」は、かさなりをなすもの、すなわち複数層構成であって、単層とは認められない。
3.令和2年7月21日付け取消理由(決定の予告)に採用しなかった異議申立理由
(1)異議申立の理由中、令和2年7月21日付け取消理由(決定の予告)に採用しなかったものは、概略以下のとおりである。
ア 新規性
本件発明1~4は、申立人1が提出した甲第1号証(引用文献13)、甲第2号証(引用文献14)、甲第4号証(引用文献15)又は甲第5号証(引用文献16)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、その特許は、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
イ 進歩性
本件発明1~4は、申立人1が提出した甲第1号証(引用文献13)、甲第2号証(引用文献14)、甲第4号証(引用文献15)又は甲第5号証(引用文献16)に記載された発明、及び周知の技術事項に基いて、あるいは、申立人2が提出した甲第1-1号証(引用文献12)又は甲第1-2号証(引用文献23)に記載された発明、及び甲第1-1号証(引用文献12)、甲第2-1号証(引用文献24)、甲第2-2号証(引用文献3)及び甲第3号証(引用文献7)に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、その特許は、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
ウ 明確性
本件発明1~4についての特許は、次のとおり特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、その発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
請求項1における「外層」の最内層がEVOHと接着性の良好な接着層などを備えてよいのか否かが明確でなく、請求項1における「プロピレン共重合体層」が「プロピレンと別のモノマーとの間のランダム共重合体」と他の材料とを混合したランダム共重合体により構成する層を含むのか否かが明確ではなく、請求項1における「プロピレンと別のモノマーとの間のランダム共重合体」が「別のモノマー」がどのようなモノマーであるか不明であるから、請求項1~4に係る発明は、明確でない。
[引用文献等一覧]
13.特開平10-211961号公報(申立人1が提出した甲第1号証)
14.特開平11-79245号公報(申立人1が提出した甲第2号証)
15.特開2011-230817号公報(申立人1が提出した甲第4号証)
16.特開2005-41514号公報(申立人1が提出した甲第5号証)
17.特開平6-190992号公報(申立人1が提出した甲第8号証)
18.特開2013-194061号公報(申立人1が提出した甲第9号証)
19.特開2013-199098号公報(申立人1が提出した甲第13号証)
20.特開2014-137885号公報(申立人1が提出した甲第14号証)
21.石谷孝佑監修、「機能性食品包装材料」、普及版、株式会社 シーエムシー出版、2005年4月25日、p.200~210(申立人1が提出した甲第15号証)
22.実用プラスチック辞典 編集委員会編集、「実用プラスチック事典」、初版第2刷、株式会社産業調査会 事典出版センター、1993年9月20日、p.156~159(申立人1が提出した甲第16号証)
23.特開2000-16459号公報(申立人2が提出した甲第1-2号証)
24.特開平9-110028号公報(申立人2が提出した甲第2-1号証)
(2)当審の判断
ア 新規性、進歩性について
本件発明1の「外層は、プロピレンとエチレンとの間のランダム共重合体からなるプロピレン共重合体層を備え」、「前記外層の最内層は、前記プロピレン共重合体であるか、又は低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、前記ランダム共重合体以外のエチレン-プロピレン共重合体及びその混合物から選択される材料で構成される層であ」る事項については、引用文献1~24には記載されておらず、また、周知技術であるともいえない。
したがって、本件発明1~4は、引用文献13、引用文献14、引用文献15又は引用文献16に記載された発明ではない。
また、本件発明1~4は、引用文献12、引用文献13、引用文献14、引用文献15、引用文献16又は引用文献23に記載された発明、引用文献1~24に記載された事項、及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 明確性について
(ア)「外層」について
本件訂正後の請求項1においては、「外層の最内層」について、「前記プロピレン共重合体であるか、又は低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、前記ランダム共重合体以外のエチレン-プロピレン共重合体及びその混合物から選択される材料で構成される層」であることが特定された。これにより、EVOHと接着性の良好な接着層などを備えるものではないことが明確となった。
(イ)「プロピレン共重合体層」について
本件訂正後の請求項1においては、「プロピレン共重合体層」について、「プロピレンとエチレンとの間のランダム共重合体からなるプロピレン共重合体層」の記載から、「プロピレン共重合体層」の組成が「プロピレンとエチレンとの間のランダム共重合体」であることが理解できるため、その意味は明確である。
(ウ)「別のモノマー」について
訂正前の請求項1における「別のモノマー」が、本件訂正により「エチレン」であることが特定され、明確となった。
(エ)よって、本件発明1~4は、明確である。
第5 むすび
以上のとおり、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び申立人1及び申立人2の主張する特許異議申立理由によっては、本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
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2019-700995