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特許異議申立

2019-700797

熱風融着不織布およびその製造方法

審判番号
2019-700797
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-526432外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年10月03日
審決日
2020年11月17日
公報発行日
2021年02月26日
結論
訂正認容
審判長/審判官
分類
P1651.121-YAA(D04H) / P1651.536-YAA(D04H) / P1651.537-YAA(D04H)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6493768号発明「熱風融着不織布およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】
特許第6493768号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕、〔5-10〕について訂正することを認める。
特許第6493768号の請求項1、3~6、8~10に係る特許を維持する。
特許第6493768号の請求項2、7に係る特許についての申立てを却下する。

理由

目次 ▾ 8項目
【理 由】

第1 手続の経緯

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特許第6493768号の請求項1~10に係る特許についての出願は、2014年7月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年7月17日 中国)を国際出願日とする出願であって、平成31年3月15日に特許権の設定登録がされ、平成31年4月3日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和元年10月3日:特許異議申立人柏木里実(以下「申立人」という。)による特許異議の申立て
令和元年12月4日付け:取消理由通知書
令和2年3月4日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和2年4月23日:申立人による意見書の提出
令和2年6月9日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和2年9月7日:特許権者による意見書の提出

第2 訂正の請求についての判断

1 訂正の内容

令和2年3月4日提出の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6493768号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4、5~10について訂正することを求ます。」というものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。

(訂正事項1)

本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に

「(4)前記第一繊維層と前記第二繊維層とを重ねて、熱風オーブンに送り熱接合することにより、前記熱風融着不織布を形成することを特徴とする熱風融着不織布の製造方法。」とあるのを、

「(4)前記第一繊維層と前記第二繊維層とを重ねて、熱風オーブンに送り熱接合することにより、前記熱風融着不織布を形成し、
前記第一繊維層は二層以上の構造であることを特徴とする、熱風融着不織布の製造方法。」に訂正する。(請求項1を引用する請求項3及び4についても同様に訂正する。)

(訂正事項2)

特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(訂正事項3)

本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5に

「前記第一繊維層と前記第二繊維層とを重ねて、熱風オーブンに送り熱接合することにより形成されることを特徴とする熱風融着不織布。」とあるのを、

「前記第一繊維層と前記第二繊維層とを重ねて、熱風オーブンに送り熱接合することにより形成され、
前記第一繊維層は二層以上の構造であることを特徴とする、熱風融着不織布。」に訂正する。(請求項5を引用する請求項6、8~10についても同様に訂正する。)

(訂正事項4)

特許請求の範囲の請求項7を削除する。

(訂正事項5)

本件訂正前の特許請求の範囲の請求項10に

「請求項5ないし請求項9の何れかに記載の熱風融着不織布。」とあるのを、

「請求項5、6、8及び9の何れかに記載の熱風融着不織布。」に訂正する。

ここで、訂正前の請求項1~4は、請求項2~4が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を直接的に引用する関係にあり、訂正前の請求項5~10は、請求項6~10が、訂正の請求の対象である請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項〔1~4〕、〔5~10〕について請求されている。

2 訂正の適否

(1)訂正事項1について

ア 訂正の目的

上記訂正事項1は、請求項1について、本件訂正前の「第一繊維層」について、「二層以上の構造であること」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当するものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと

上記訂正事項1は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

上記訂正事項1は、本件訂正前の【請求項2】並びに本件特許明細書の【0007】及び【0060】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。

(2)訂正事項2について

ア 訂正の目的

上記訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当するものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと

上記訂正事項2は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

上記訂正事項2は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。

(3)訂正事項3について

ア 訂正の目的

上記訂正事項3は、請求項5について、本件訂正前の「第一繊維層」について、「二層以上の構造であること」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当するものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと

上記訂正事項3は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

上記訂正事項3は、本件訂正前の【請求項7】並びに本件特許明細書の【0017】及び【0060】の記載に基づくものであるから、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。

(4)訂正事項4について

ア 訂正の目的

上記訂正事項4は、請求項7を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当するものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと

上記訂正事項4は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

上記訂正事項4は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。

(5)訂正事項5について

ア 訂正の目的

上記訂正事項5は、本件訂正前の請求項10が、「請求項5ないし請求項9の何れか」を引用するものであったところ、訂正事項4により請求項7が削除されたことに伴い、請求項7を引用するものを削除して記載を整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に該当するものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと

上記訂正事項5は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

上記訂正事項5は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。

(6)小括

以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~4〕、〔5~10〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明

上記のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~10に係る発明(以下「本件発明1~10」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
(1)繊維を梳綿機でカーディングして第一繊維層を形成し、前記第一繊維層の厚さは0.2-2.0mmで、1平方メートル当りのグラム重量は5-40g/m2で、表面上の水滴との接触角(θ)は70度より大きく、
(2)繊維を梳綿機でカーディングして第二繊維層を形成し、前記第二繊維層の1平方メートル当りのグラム重量は5-40g/m2で、表面上の水滴との接触角(θ)は70度より小さく、
(3)前記第一繊維層を穿孔処理して貫通孔を形成し、前記貫通孔の総面積は前記第一繊維層の全表面積に対して10-80%を占め、前記貫通孔は、ストリップ形、円形、楕円形、多角形、或いは不規則な幾何学図形を有する貫通孔であり、前記第一繊維層を前記第二繊維層の上に重ねた場合には、ストリップ形、円形、楕円形、多角形、或いは不規則な幾何学図形を有するエンボスを形成し、
続きを表示(全26行)
(4)前記第一繊維層と前記第二繊維層とを重ねて、熱風オーブンに送り熱接合することにより、前記熱風融着不織布を形成し、
前記第一繊維層は二層以上の構造であることを特徴とする、熱風融着不織布の製造方法。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
前記第一繊維層の繊維は芯鞘型構造、或いは偏心構造の二成分繊維であることを特徴とする、請求項1に記載の熱風融着不織布の製造方法。
【請求項4】
前記第二繊維層は二層以上の構造であることを特徴とする、請求項1に記載の熱風融着不織布の製造方法。
【請求項5】
繊維を梳綿機でカーディングして第一繊維層を形成し、前記第一繊維層の厚さは0.2-2.0mmで、1平方メートル当りのグラム重量は5-40g/m2で、表面上の水滴との接触角(θ)は70度より大きく、
繊維を梳綿機でカーディングして第二繊維層を形成し、前記第二繊維層の1平方メートル当りのグラム重量は5-40g/m2で、表面上の水滴との接触角(θ)は70度より小さく、
前記第一繊維層を穿孔処理して貫通孔を形成し、前記貫通孔の総面積は前記第一繊維層の全表面積に対して10-80%を占め、前記貫通孔は、ストリップ形、円形、楕円形、多角形、或いは不規則な幾何学図形を有する貫通孔であり、前記第一繊維層を前記第二繊維層の上に重ねた場合には、ストリップ形、円形、楕円形、多角形、或いは不規則な幾何学図形を有するエンボスを形成し、
前記第一繊維層と前記第二繊維層とを重ねて、熱風オーブンに送り熱接合することにより形成され、
前記第一繊維層は二層以上の構造であることを特徴とする、熱風融着不織布。
【請求項6】
前記第一繊維層の貫通孔はストリップ形、円形、楕円形、多角形、或いは不規則な幾何学図形を有する貫通孔であり、前記第一繊維層を前記第二繊維層と重ねた場合には、ストリップ形、円形、楕円形、多角形、或いは不規則な幾何学図形を有するエンボスを形成することを特徴とする、請求項5に記載の熱風融着不織布。
【請求項7】(削除)
【請求項8】
前記第一繊維層の繊維は芯鞘型構造、或いは偏心構造の二成分繊維であることを特徴とする、請求項5に記載の熱風融着不織布。
【請求項9】
前記第二繊維層は二層以上の構造であることを特徴とする、請求項5に記載の熱風融着不織布。
【請求項10】
前記第一繊維層の1平方メートル当りのグラム重量は5-40g/m2で、前記第二繊維層の1平方メートル当りのグラム重量は5-40g/m2であることを特徴とする、請求項5、6、8及び9の何れかに記載の熱風融着不織布。」

第4 当審の判断

1 取消理由(決定の予告)の概要

本件訂正前の本件特許に対して通知した令和2年6月9日付け取消理由通知(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。

(進歩性)本件特許の請求項1~10に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証又は甲第2号証記載された発明、及び周知・慣用の事項に基いて、本件特許優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

記

<刊行物>

甲第1号証:特開昭61-125343号公報
甲第2号証:特開2011-135979号公報
甲第3号証:特開昭55-71853号公報
甲第4号証:特開昭57-39268号公報
甲第5号証:特開昭59-125954号公報
甲第6号証:第3版 繊維便覧、丸善株式会社、平成16年12月15日、p.328~331
甲第7号証:不織布の基礎と応用、社団法人 日本繊維機械学会、平成5年8月25日、p.375~383
甲第8号証:特開2005-314825号公報
甲第9号証:特開2005-324010号公報
甲第10号証:特開2009-279098号公報
甲第11号証:特開2009-279097号公報

(以下単に「甲1」等という。)

2 令和2年6月9日付け取消理由(決定の予告)についての判断

甲1を主引用発明とした場合の本件発明1の進歩性について

ア 甲1に記載された発明

甲1には、以下の記載がある(なお「・・・」は省略を意味する。)。

・「2.特許請求の範囲

(1)繊維組成が互に異なり、かつ、使用者の肌に接する表面を形成する第一層と、その裏面を形成する第二層とを含む複合不織布である吸収性物品の表面材において;前記第一層は、繊維組成が疎水性繊維70~100重量%と、親水性繊維0~30重量%とからなり、目付が少なくとも15g/m2であり、最短径が0.5~5mmである多数の開孔を有し、その開孔率が前記第一層の表面積の10~50%であり;前記第二層は、繊維組成が親水性繊維50~100重量%と、疎水性繊維0~60重量%とからなり、目付が5~50g/m2であり、非開孔であることを特徴とする前記表面材。

・・・

(7)第一層とすべき繊維組成が疎水性繊維70~100重量%と、親水性繊維0~30重量%とからなり、目付が少なくとも15g/m2ある第一繊維ウエブから、最短径が0.5~5mmであり、開孔率が10~50%である開孔を賦与して不織布化し、しかるのち、第二層とすべき繊維組成が親水性繊維50~100重量%と、疎水性繊維0~50重量%とからなり、目付が5~50g/m2である第二繊維ウエブを重ねた状態で非開孔不織布化すると同時にこれと前記第一層とを一体的に複合化することを特徴とする吸収性物品の表面材の製法。」

・「第一層3は好ましくは繊維が交絡することにより不織布化されたものである。かかる不織布は支持体上において不織布の材料である所定の繊維ウエブを高速水流の噴射処理で繊維交絡させることによりえられる。その好ましい方法としては、本出願人の出願にかかる特開昭55-71853号、特開昭57-39268号、特開昭59-125954号に開示されている技術が挙げられる。第二層4も好ましくは前記方法で繊維交絡させることにより非開孔不織布化されたものであるが、これは熱加圧処理で繊維が融着することにより形成されているものであることを妨げない。かように融着することにより形成される場合には、第二層4に含まれる疎水性繊維の一部または全部が温度90~140℃の熱融着性繊維であることが好ましい。」(3頁右下欄1~15行)

・「第一層3の疎水性繊維としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル、ポリウレタンなど、第二層4としては、繊維表面が親水加工されたポリエステルなどの合成繊維、レーヨン、コットンなどが挙げられ、かつ、それらは単独または混合で用いうることができるが、好ましくは、第一層3としてポリエステル繊維、第二層4として表面が親水加工されたポリエステル繊維が主体として用いられる。」(4頁右上欄10~18行)

・「(実施例)

第1表に示すとおりである。

第2表には第1表に示した実施例の性能と、比較例の性能とを示した。

比較例1は本出願人が使い捨ておむつに用いている表面材であって、これは、1.5d×5mmのレーヨン繊維50重量%と、1.4d×44mmのポリエステル繊維50重量%とからなる30g/m2の不織布であり、高速水流の噴射処理で繊維交絡させて形成したものである。

比較例2はA社が使い捨ておむつに用いている表面材であって、これは、25g/m2のポリエチレンフィルムからなり、0.5mmφ、1mm間隔の多数の開孔を有し、その開孔率が20%のものである。

第2表に示した性能は、次のテスト法によった。

(1)透過性

綿状木材パルプからなる吸収体の上面に試料(表面材)を置き、その上からビーカーに入れた人工尿5mlを一挙に注ぎ、試料を完全に透過するのに要した秒数を測定した。

(2)リウエット性

100cm2の綿状木材パルプからなる吸収体の上面に試料を置き、その上からビュレット人工尿をその吸収体の重量の5倍量を注いだ後、その上面にゴム質の人工皮膚シートを重ね、さらにその上面に100cm2、7kgの平板の重りをかけ、3分経過後にその重りを取り除き、人工皮膚シートに付着した人工尿量を測定した。

(3)ドライタッチ性

前記リウェット測定後の試料の上から掌でさわり、その濡れ具合いをテストした。」(5頁左欄4行~右欄末行)

・「第1表

(注)PETはポリエステル繊維を示す。

親PETは表面が親水加工されたポリエステル繊維を示す。」

・「第1図

」

・「

」

そうすると、甲1の実施例8に注目すると、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。

「第一層とすべき繊維組成が0.7d×38mmのポリエステル繊維(PET繊維)である疎水性繊維100重量%からなり、目付が25g/m2である第一繊維ウエブから、開孔率が70%である開孔を賦与して不織布化し、しかるのち、第二層とすべき繊維組成が親水加工した1.5d×51mmのポリエステル繊維(PET繊維)である親水性繊維70重量%と、3d×51mmの低融点PETである疎水性繊維30%とからなり、目付が15g/m2である第二繊維ウエブを重ねた状態で非開孔不織布化し、熱圧着処理して一体的に複合化する吸収性物品の表面材の製法。」

イ 対比

本件発明1と甲1発明とを対比すると、

(ア)甲1発明の「第一層」は、本件発明1の「第一繊維層」に相当し、同様に「第二層」は「第二繊維層」に相当する。

(イ)甲1発明の第一繊維ウエブの「目付が25g/m2である」ことは、本件発明1の第一繊維層の「1平方メートル当りのグラム重量は5-40g/m2で」あることに相当する。

(ウ)甲1発明の第二繊維ウエブの「目付が15g/m2である」ことは、本件発明1の第二繊維層の「1平方メートル当りのグラム重量は5-40g/m2で」あることに相当する。

(エ)甲1発明の「第一繊維ウエブから、開孔率が70%である開孔を賦与して不織布化」することは、開孔を賦与することが孔をあける処理を行うことであり、第1図及び第3図を参照すると、開孔が円形の貫通孔であることは明らかであり、さらに開孔率が第一層の表面積に対してであるから、甲1発明の当該記載と、本件発明1の「(3)前記第一繊維層を穿孔処理して貫通孔を形成し、前記貫通孔の総面積は前記第一繊維層の全表面積に対して10-80%を占め、前記貫通孔は、ストリップ形、円形、楕円形、多角形、或いは不規則な幾何学図形を有する貫通孔であり、前記第一繊維層を前記第二繊維層の上に重ねた場合には、ストリップ形、円形、楕円形、多角形、或いは不規則な幾何学図形を有するエンボスを形成」することとは、「(3)前記第一繊維層を処理して貫通孔を形成し、前記貫通孔の総面積は前記第一繊維層の全表面積に対して10-80%を占め、前記貫通孔は、ストリップ形、円形、楕円形、多角形、或いは不規則な幾何学図形を有する貫通孔であ」ることの限りで一致する。

(オ)甲1発明の「第一層とすべき繊維組成が0.7d×38mmのPET繊維である疎水性繊維100重量%からなり、目付が25g/m2である第一繊維ウェブから、開孔率が70%である開孔を賦与して不織布化し、しかるのち、第二層とすべき繊維組成が親水加工した1.5d×51mmのPET繊維である親水性繊維70重量%と、3d×51mmの低融点PETである疎水性繊維30%とからなり、目付が15g/m2である第二繊維ウェブを重ねた状態で非開孔不織布化」することは、「第一繊維ウェブから、開孔率が70%である開孔を賦与して不織布化し」た「第一層」と、「第二層」「を重ねた状態で非開孔不織布化」することであるから、本件発明1の「前記第一繊維層を前記第二繊維層の上に重ねた場合には、ストリップ形、円形、楕円形、多角形、或いは不規則な幾何学図形を有するエンボスを形成」することに相当する。

(カ)甲1発明の「第一層とすべき繊維組成が0.7d×38mmのPET繊維である疎水性繊維100重量%からなり、目付が25g/m2である第一繊維ウェブから、開孔率が70%である開孔を賦与して不織布化し、しかるのち、第二層とすべき繊維組成が親水加工した1.5d×51mmのPET繊維である親水性繊維70重量%と、3d×51mmの低融点PETである疎水性繊維30%とからなり、目付が15g/m2である第二繊維ウェブを重ねた状態で非開孔不織布化し、熱圧着処理して一体的に複合化する吸収性物品の表面材」は、「第一層」と、「第二層」「を重ねた状態で非開孔不織布化し、熱圧着処理して一体的に複合化する」ことで不織布が形成され、「吸収性物品の表面材」が第一層と第二層とを熱圧着処理するとで熱融着しているから、甲1発明の当該記載と本件発明1の「(4)前記第一繊維層と前記第二繊維層とを重ねて、熱風オーブンに送り熱接合することにより、前記熱風融着不織布を形成し」た「熱風融着不織布」とは、「(4)前記第一繊維層と前記第二繊維層とを重ねて、熱接合することにより、熱融着不織布を形成した、熱融着不織布」の限りで一致する。

そうすると、以下の点で一致し、相違する。

<一致点>

「(1)第一繊維層を形成し、前記第一繊維層の1平方メートル当りのグラム重量は5-40g/m2で、
(2)第二繊維層を形成し、前記第二繊維層の1平方メートル当りのグラム重量は5-40g/m2で、
(3)前記第一繊維層を処理して貫通孔を形成し、前記貫通孔の総面積は前記第一繊維層の全表面積に対して10-80%を占め、前記貫通孔は、ストリップ形、円形、楕円形、多角形、或いは不規則な幾何学図形を有する貫通孔であり、前記第一繊維層を前記第二繊維層の上に重ねた場合には、ストリップ形、円形、楕円形、多角形、或いは不規則な幾何学図形を有するエンボスを形成し、
(4)前記第一繊維層と前記第二繊維層とを重ねて、熱接合することにより、不織布を形成した、熱融着不織布の製造方法。」

<相違点1>

第一繊維層について、本件発明1は、「梳綿機でカーディングして」「形成」し、「厚さは0.2-2.0mmで、」「表面上の水滴との接触角(θ)は70度より大き」いのに対して、甲1発明は、疎水性繊維からなる第一繊維ウエブを不織布化した点。

<相違点2>

第二繊維層について、本件発明1は、「梳綿機でカーディングして」「形成」し、「表面上の水滴との接触角(θ)は70度より小さ」いのに対して、甲1発明は、親水性繊維を含む第二繊維ウエブを重ねた状態で不織布化する点。

<相違点3>

貫通孔を形成する処理について、本件発明1は、「穿孔処理」であるのに対して、甲1発明は、そのように特定されていない点。

<相違点4>

本件発明1は、「熱風オーブンに送り熱接合することにより、」「熱風融着不織布」を形成するのに対して、甲1発明は、熱圧着処理して、吸収性物品の表面材を形成している点。

<相違点5>

本件発明1は、「前記第一繊維層は二層以上の構造である」のに対して、甲1発明はそのように特定されていない点。

ウ 判断

以下、相違点について検討する。

<相違点1、2及び4について>

本件発明1は、「梳綿機でカーディングして」「形成」した「第一繊維層」と「梳綿機でカーディングして」「形成」した「第二繊維層」を「熱風オーブンに送り熱接合することにより、」熱風融着不織布を形成するものであるから、熱風融着不織布の「第一繊維層」と「第二繊維層」は、それぞれ、カーディングされた繊維が積み重ねられた状態で熱風オーブンで熱接合されるものであって、繊維と繊維が交絡した状態ではない。

一方、甲1発明は、「第一繊維ウェブから、開孔率が70%である開孔を賦与して不織布化し、しかるのち、」「第二繊維ウェブを重ねた状態で非開孔不織布化し、熱圧着処理して一体的に複合化する」ものであって、甲1の明細書3頁右下欄1~15行の記載を参酌すると、「不織布化」は繊維を交絡させることであるから、甲1発明の「第一層」及び「第二層」は、共に繊維を交絡した状態にある。

そうすると、甲5(5頁右下欄11~末行)、甲7(382頁下から3行~383頁4行)に記載されているように、不織布の製造においてカード機からウェブを形成することは周知であるとしても、甲1発明の繊維と繊維が交絡した「第一層」及び「第二層」を、繊維と繊維が交絡していないものとする理由は、甲2~甲11を参照してもない。

したがって、甲1発明において、上記相違点1、2及び4の事項とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

<本件発明1の奏する効果について>

本件発明1は、「梳綿機でカーディングして」「形成」した「第一繊維層」と「梳綿機でカーディングして」「形成」した「第二繊維層」を「熱風オーブンに送り熱接合することにより、」熱融着不織布を形成することで、繊維同士が均一に溶着し、プロセスが簡単で工業生産に適した吸収性の良い不織布が製造できるという、格別な効果を有する。

エ 小括

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~11記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)甲2を主引用発明とした場合の本件発明1の進歩性について

ア 甲2に記載された発明

甲2には、以下の記載がある。

・「【請求項1】

表面側に配置された透液性トップシートと裏面側に配置されたバックシートの間に吸収体が介在されてなる吸収性物品において、

前記トップシートと吸収体の間に親水性の不織布からなる中間シートが配され、

前記トップシートのうち少なくとも排泄口当接部を含む所定領域は、少なくとも表面が撥水性を有するとともに、多数の開孔を有しており、

前記各開孔の面積は1~80mm2であり、前記所定領域に占める開孔の総面積の割合として定まる開孔率が10~80%であり、

前記中間シートは二酸化チタンを2.0%以上含有する、

ことを特徴とする、吸収性物品。

・・・

【請求項5】

前記トップシートの撥水性が、肌当接面から中間シート当接面に厚み方向に向うにしたがって連続的に、または断続的に低くなるように構成された、請求項1~4のいずれかに記載の吸収性物品。

【請求項6】

前記トップシートの中間シート当接面が、中間シートと実質的に全体的に接合されている、請求項1~5のいずれかに記載の吸収性物品。」

・「【発明が解決しようとする課題】

【0004】

しかし、吸収する経血、おりものなどの体液(以降、「体液」と表記)は粘度が高い場合も多く、トップシートの開孔を通過しない、または通過するのに時間がかかるため、トップシート表面に体液が残存し、着用者に不快感を与えることがあった。開孔のサイズを大きくすることで、トップシートの透液性を高め、表面の体液残存を軽減することが可能であるが、開孔が大きすぎれば、吸収体等に保持された体液が開孔から露出しやすく、体液の隠蔽性が劣り使用感が低減する、という問題があった。

本発明の解決すべき課題は、トップシート表面の透液性を向上させるとともに、体液の隠蔽性を高めることである。」

・「【0006】

(作用効果)

トップシートと吸収体との間に中間シートを有する吸収性物品においては、体液はトップシート、中間シートの順に透過して吸収体により吸収される。中間シートは親水性シートであり、トップシートから体液を素早く奪い取り、吸収体側へ素早く移行させる役割を担う。吸収体に吸収された体液は中間シート及びトップシートにより被覆・隠ぺいされ、中間シートに残留する体液はトップシートにより被覆・隠ぺいされるが、中間シートはその機能ゆえに疎な素材が用いられることが多く、隠ぺい作用が低いため、トップシートの隠ぺい作用により体液の隠ぺい性を確保するのが従来の基本的な考え方である。したがって、単にトップシートに対して極端に大きな開孔を密に配置するだけでは、透液性を飛躍的に向上させることはできるが、トップシートによる隠ぺい作用が殆ど消失する結果、吸収体及び中間シートに保持された体液の隠ぺい性は大きく低下してしまう。そこで、本発明では発想を転換し、従来隠ぺい性への寄与が低かった中間シートに着目し、その二酸化チタン含有量を増加することにより、中間シートによる隠ぺい作用を向上させ、もって全体としての隠ぺい性を確保したものである。なお、中間シートに用いられる一般的な不織布の二酸化チタン含有量は多くて0.5%程度である。」

・「【0011】

(作用効果)

吸収性物品のトップシートの開孔及び開孔率を高くすることで体液の透過性を向上させることができるが、一方で体液を保持した中間シートが開孔から露出し、肌に体液が再付着するという問題がある。そこで、トップシートに規定の厚みを持たせることにより、中間シートが直接肌に触れる面積を低減させる。」

・「【0017】

(作用効果)

トップシートと中間シートとの間に隙間が生じないように、接着、熱融着、スパンレース等の方法でトップシートと中間シートとを全体的に一体化させることで、トップシート表面に付着した体液の中間シートへの移行が迅速に行われるようになる。ここで、「実質的に全体的に接合」された状態とは、トップシートと中間シートが端部やエンボス部等においてのみ接合されているのではなく、トップシートの中間シート当接面のほぼ全面が接着剤等で中間シートと一体化した状態をいう。」

・「【0031】

トップシート3の素材は、肌感触を良好にするためには不織布が好ましいが、プラスチックシートでもよい。開孔Hの形状は、図示の楕円形のほか、丸型、三角形、四角形、菱形、六角形等、適宜の形状を採用することができる。これらはトップシート3の一部または全体にわたり、規則的または不規則に多数配置することができる。

【0032】

不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。繊維長は4~60mmとすることが好ましい。トップシート6は大きな開孔を多数有するため、これより短繊維長の繊維を使用した場合、充分な強度を確保できなくなる。

【0033】

トップシート3の開孔は、中間シート6当接面から肌当接面に向うに従って大きくなるような形状とすることが好ましい。具体的には、図5に示すように、断面が表面側に盛り上がった山型になるような構成とすることが好ましい。山型の他に、中間シート当接面が平らな半円型、台形、三角形等の形態としてもよい。開孔Hをこのような形態とするために、孔のないトップシート用不織布、またはプラスチックシートに肌当接面側からパンチングによって開孔を形成する、もしくは、不織布形成用メッシュに所望の形状の金型を配して開孔を有する不織布を形成するといった方法を適宜採用することができる。

トップシート3の厚みは50~500μm、好適には100~300mmとすることが好ましい。また、目付けは、25~60g/m2、好適には30~40g/m2とすることが好ましい。」

・「【0037】

<中間シートの形態>

中間シート6としては、親水性の不織布を使用する。不織布の素材としては、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることにより素材自体に親水性を有するものを用いるか、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維を親水性化剤によって表面処理し親水性を付与した繊維を用いることができる。

【0038】

中間シート6の厚さは50~500μm、より好ましくは100~400μmとすることが好ましい。また、中間シートの目付けは15~50g/m2、より好ましくは20~45g/m2とすることが好ましい。また、繊度は、3.0~7.0dtexが好ましい。このような、比較的繊維密度が粗な不織布とすることで、液透過性がよく、また、クッション性に優れたシートとすることができる。」

・「【0040】

中間シート6の親水性について、トップシート当接面より吸収体当接面において親水性が高い構造とすると、体液の動きをトップシート3表面から吸収体5へと方向づけることができるため、好ましい。このような構造は、親水性繊維の不織布において、トップシート当接面に撥水剤を塗布する、または疎水性繊維の不織布において、吸収体当接面に親水性化剤をより多く塗布する、等の方法により形成することができる。また、親水性繊維の不織布層と疎水性繊維の不織層とを別に形成した後、これらを積層し、スパンレース法等で一体化した二層構造の不織布としてもよい。

【0041】

中間シート6を構成する不織布に使用する繊維の平均長は、4~70mm、より好ましくは40~60mmとすることが望ましい。このような短繊維長の繊維から形成されることで、中間シート6の表面は比較的毛羽立った状態となりやすい。図6に示すように、中間シート6の毛羽立った繊維Fが後述のトップシートの開孔内で突出するように配置することにより、トップシート3表面から中間シート6までの距離を減少させ、よりトップシート3から中間シート6への体液の移行を迅速にする。しかし、繊維Fが、トップシート3の開孔を通過して表面に突出すると親水性の繊維が肌に直接接触し、ベタつき感を生じるため、繊維Fがトップシート3表面より肌側まで突出しないように構成することが好ましい。」

・「【0043】

中間シート6は、トップシート3と全体的に一体化されていることが好ましい。具体的には接着、熱融着、超音波シール、スパンレース等を用いた一体化が施され得るが、操作の簡便性より、接着が適しているといえる。接着剤は、ホットメルト接着剤等、一度乾燥させた後は、湿潤状態にしても粘着性(タック)を奏さず、かつ、皮膚への刺激の少ないものを使用することが好ましい。接着剤の塗布量は、トップシートの透液性、中間シートの保水性に大きな影響を与えない量とし、具体的には1~30g/m2することが好ましい。」

甲2の上記記載を総合すると、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。

「多数の楕円形、丸型、三角形、四角形、菱形、六角形等、適宜の形状の開孔Hを孔のないトップシート用不織布、またはプラスチックシートに肌当接面側からパンチングによって形成し、開孔率は10~80%であり、厚みは50~500μm、目付けは、30~40g/m2であるトップシート3と、目付けが15~50g/m2である中間シートと、を熱融着で一体化する吸収性物品の製造方法。」

イ 対比

本件発明1と甲2発明とを対比すると、

(ア)甲2発明の「トップシート3」は、本件発明1の「第一繊維層」に相当し、同様に「中間シート」は「第二繊維層」に相当する。

(イ)甲2発明の「トップシート3」が「目付けは、30~40g/m2である」ことは、本件発明1の「前記第一繊維層の」「1平方メートル当りのグラム重量は5-40g/m2で」あることに相当する。

(ウ)甲2発明の「多数の楕円形、丸型、三角形、四角形、菱形、六角形等、適宜の形状の開孔Hを孔のないトップシート用不織布、またはプラスチックシートに肌当接面側からパンチングによって形成し、開孔率は10~80%であ」ることは、開孔率がトップシート3の全表面積に対してであるから、本件発明1の「前記第一繊維層を穿孔処理して貫通孔を形成し、前記貫通孔の総面積は前記第一繊維層の全表面積に対して10-80%を占め、前記貫通孔は、ストリップ形、円形、楕円形、多角形、或いは不規則な幾何学図形を有する貫通孔であ」ることに相当する。

(エ)甲2発明の「トップシート3」と「中間シートと」を重ねたものは、トップシート3が「多数の楕円形、丸型、三角形、四角形、菱形、六角形等、適宜の形状の開孔Hを」を有するものであって、中間シートが無孔のものであるから、本件発明1の「前記第一繊維層を前記第二繊維層の上に重ねた場合には、ストリップ形、円形、楕円形、多角形、或いは不規則な幾何学図形を有するエンボスを形成し」たものに相当する。

(オ)甲2発明の「トップシート3」と「中間シートと、を熱融着で一体化する急性物品」は、トップシート3と中間シートとを重ねて熱融着することであるから、甲2発明の当該記載と本件発明1の「(4)前記第一繊維層と前記第二繊維層とを重ねて、熱風オーブンに送り熱接合することにより、前記熱風融着不織布を形成し」た「熱風融着不織布」とは、「(4)前記第一繊維層と前記第二繊維層とを重ねて、熱接合することにより、熱融着不織布を形成した、熱融着不織布」の限りで一致する。

そうすると、以下の点で一致し、相違する。

<一致点>

「(1)第一繊維層を形成し、前記第一繊維層の1平方メートル当りのグラム重量は5-40g/m2で、
(2)第二繊維層を形成し、
(3)前記第一繊維層を穿孔処理して貫通孔を形成し、前記貫通孔の総面積は前記第一繊維層の全表面積に対して10-80%を占め、前記貫通孔は、ストリップ形、円形、楕円形、多角形、或いは不規則な幾何学図形を有する貫通孔であり、前記第一繊維層を前記第二繊維層の上に重ねた場合には、ストリップ形、円形、楕円形、多角形、或いは不規則な幾何学図形を有するエンボスを形成し、
(4)前記第一繊維層と前記第二繊維層とを重ねて、熱接合することにより、熱融着不織布を形成した、熱風融着不織布の製造方法。」

<相違点6>

第一繊維層について、本件発明1は、「梳綿機でカーディングして」「形成」し、「厚さは0.2-2.0mmで、」「表面上の水滴との接触角(θ)は70度より大き」いのに対して、甲2発明は、トップシート3が、厚み50~500μmの不織布であるものの、梳綿機を用いること及び接触角が不明である点。

<相違点7>

第二繊維層について、本件発明1は、「梳綿機でカーディングして」「形成」し、「1平方メートル当りのグラム重量は5-40g/m2で、表面上の水滴との接触角(θ)は70度より小さ」いのに対して、甲2発明は、中間シートが目付け15~50g/m2であるものの、梳綿機を用いること及び接触角が不明である点。

<相違点8>

本件発明1は、「熱風オーブンに送り熱接合することにより、」「熱風融着不織布」を形成するのに対して、甲2発明は、熱融着の具体的手法が不明である点。

<相違点9>

本件発明1は、「前記第一繊維層は二層以上の構造である」のに対して、甲2発明は、トップシート3がそのように特定されていない点。

ウ 判断

以下、相違点について検討する。

<相違点6、7及び8について>

甲2発明は、「トップシート3」と「中間シートと、を熱融着で一体化する」ものであって、甲2の【0032】には、トップシート3を種々の方法で加工することが記載されており、中間シートについては、【0037】に「親水性の不織布を使用する。」と記載されており、【0040】に「また、親水性繊維の不織布層と疎水性繊維の不織層とを別に形成した後、これらを積層し、スパンレース法等で一体化した二層構造の不織布としてもよい。」と記載されているから、トップシート3及び中間シートは、繊維を交絡させた不織布であると解される。

一方、本件発明1は、上記(1)ウで述べたように、繊維と繊維とが交絡した状態ではない。

そうすると、不織布の製造においてカード機からウェブを形成することは周知であるとしても、甲2発明の繊維を交絡させた「トップシート3」及び「中間シート」を、繊維と繊維が交絡していないものとする理由は、甲1及び甲3~甲11を参照してもない。

したがって、甲2発明において、上記相違点6、7及び8の事項とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

<本件発明1の奏する効果について>

本件発明1は、「梳綿機でカーディングして」「形成」した「第一繊維層」と「梳綿機でカーディングして」「形成」した「第二繊維層」を「熱風オーブンに送り熱接合することにより、」熱融着不織布を形成することで、繊維同士が均一に溶着し、プロセスが簡単で工業生産に適した吸収性の良い不織布が製造できるという、格別な効果を有する。

エ 小括

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明及び甲1及び甲3~11記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)本件発明3及び4の進歩性について

本件発明3及び4は、本件発明1の技術的事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)及び(2)で検討したのと同じ理由により、甲1発明又は甲2発明、及び甲1~11記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)本件発明5の進歩性について

甲1及び甲2には、それぞれ、甲1発明及び甲2発明の製造方法により製造された物に係る発明が記載されている。

そして、本件発明5は、本件発明1の製造方法により製造された物の発明である。

そうすると、本件発明5と甲1発明又は甲2発明により製造された物に係る発明とを比較すると、上記<相違点1>~<相違点9>で相違し、その余の点で一致する。

そして、<相違点1>~<相違点9>については、上記(1)ウ及び(2)ウで検討したとおりであり、物の発明である本件発明5も、甲1発明又は甲2発明により製造された物に係る発明及び甲1~11記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)本件発明6及び8~10の進歩性について

本件発明6及び8~10は、本件発明5の技術的事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(4)で検討したのと同じ理由により、甲1発明又は甲2発明により製造された物に係る発明、及び甲1~11記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 令和2年6月9日付け取消理由(決定の予告)に採用しなかった取消理由

(1)異議申立の取消理由中、令和2年3月4日付け取消理由(決定の予告)に採用しなかった取消理由は、以下のとおりである。

ア(実施可能要件)本件特許は、明細書の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

本件発明1及び5の「第一繊維層」が「表面上の水滴との接触角(θ)は70度より大きく、」「第二繊維層」が「表面上の水滴との接触角(θ)は70度より小さ」いところ、本件明細書には、その第一繊維層及び第二繊維層の作り方について記載がなく、当業者が実施できる程度に記載されていない。

イ(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

本件発明1及び5の「第一繊維層」が「表面上の水滴との接触角(θ)は70度より大きく、」「第二繊維層」が「表面上の水滴との接触角(θ)は70度より小さ」いところ、当該数値の臨海的意義が記載されておらず、顕著な効果も示されていない。また、実施例において、各接触角の具体的な数値も示されていないから、全ての数値範囲で本件発明の効果を奏するとはいえない。

(2)当審の判断

ア(実施可能要件)について

繊維層の接触角は、繊維層の表面を構成する成分や形状等によって、影響を受けるところ、撥水剤や界面活性剤を添加する等の方法で、調整できることが周知である。

したがって、「第一繊維層」が「表面上の水滴との接触角(θ)は70度より大きく、」「第二繊維層」が「表面上の水滴との接触角(θ)は70度より小さ」いものは、上記周知の手法を用いることで当業者が実施できるものであるから、本件特許明細書の詳細な説明の記載が、当業者が本件発明を実施できる程度に記載されていないとはいえない。

イ(サポート要件)について

(ア)本件発明の課題は、「本発明の目的は、従来技術の不足を克服し、一種類の不織布を提供することである。」(【0003】)

(イ)そして、本件特許明細書の【0021】に、「本発明の熱風融着不織布には、水との接触角(θ)が70度より大きい一つの第一繊維層と、水との接触角(θ)が70度より小さい一つの第二繊維層とが上下に設置され、前記第一繊維層には前記第一繊維層を貫通する穿孔構造が設置される。前記穿孔構造の面積は第一繊維層の総面積に対して10-80%を占め、前記穿孔構造はストリップ形、円形、楕円形、多角形、或いは不規則な幾何学図形を有する分離配列の通孔であり、またはストリップ形、円形、楕円形、多角形、或いは不規則な幾何学図形を有するエンボスである。いったん体液が前記第一繊維層に達すると、前記第一繊維層の表面準位がより低いことによって、体液は第一繊維層の穿孔構造を沿って、前記第二繊維層に流れ、誘導作用を発揮するほかに、浸透面積もいっそう大きくなり、吸収製品の有効面積を増加し、液体の高速吸収も促進する。前記第二繊維層の表面準位がより高いことによって、いったん体液は前記第二繊維層に達すると、迅速に前記層に吸収及び浸透される。同時に、体液を吸収してから、第一繊維層と水との接触角(θ)は70度より大きいことによって、毛細管現象によって吸収された体液が不織布の表面に戻ることを阻止でき、乾燥、快適の効果を達成する。」と記載されていることから、第一層は、「第一繊維層と水との接触角(θ)は70度より大きいことによって、毛細管現象によって吸収された体液が不織布の表面に戻ることを阻止」するものであるから、当該接触角がいわゆる疎水性であることを表していると理解される。そして、当該第一層に対して、第二層は、「いったん体液は前記第二繊維層に達すると、迅速に前記層に吸収及び浸透される。」ものであるから、当該接触角はいわゆる親水性であることを意味していると理解される。

(ウ)そうすると、本件発明1及び5の「第一繊維層」が「表面上の水滴との接触角(θ)は70度より大きく、」「第二繊維層」が「表面上の水滴との接触角(θ)は70度より小さ」いことは、第一繊維層が、いわゆる疎水性で、第二繊維層が、いわゆる親水性であることを意味し、他の発明特定事項と合わせて、本件発明1及び5が本件発明の課題を解決すると理解できる。

(エ)したがって、本件発明1及び5は、本件特許明細書に記載した範囲のものである。

第5 むすび

以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び申立人の主張する特許異議申立理由によっては、本件発明1、3~6及び8~10に係る特許を取り消すことはできない。

また、請求項2及び7に係る特許は、本件訂正により、削除されたため、本件特許の請求項2及び7に対して、申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。

よって、結論のとおり決定する。

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2019-700797

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