特許異議申立
2019-700779
固体電池
- 審判番号
- 2019-700779
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-100981外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年10月01日
- 審決日
- 2020年02月17日
- 公報発行日
- 2020年05月29日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.113-YAA(H01M) / P1651.121-YAA(H01M) / P1651.536-YAA(H01M) / P1651.537-YAA(H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6492959号発明「固体電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6492959号の明細書、及び、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、及び、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2-5〕について訂正することを認める。
特許第6492959号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6492959号の請求項1~5に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成27年5月18日(優先権主張 平成26年5月19日)の出願であって、平成31年3月15日付けでその特許権の設定登録がなされ、同年4月3日に特許掲載公報が発行された。
本件は、その後、その特許について、令和1年10月1日付けで特許異議申立人家田亘久(以下、「申立人」という。)より請求項1~5(全請求項)に対して特許異議の申立てがなされ、令和1年11月25日付けで取消理由が通知され、これに対して、令和2年1月27日付けで特許権者より意見書が提出されるとともに訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされたものである。
なお、本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、軽微なものであって、特許法第120条の5第5項に定める「特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別な事項があるとき」に該当するから、申立人に対し、本件訂正についての意見を求めなかった。
第2 訂正請求について
1 訂正の趣旨、及び、訂正の内容
本件訂正請求は、特許第6492959号の明細書、及び、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書、及び、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2~5について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。
なお、訂正箇所には、当審で下線を付した。
訂正事項1
請求項2について、本件訂正前の「前記積層体の上面における前記第2外部端子と前記固体電池に隣接する別の固体電池の積層体の下面における前記第1外部端子とが直接接続可能なように前記第1外部端子と前記第2外部端子は、それぞれ前記上面および前記下面で延長され」を「前記積層体の上面における前記第2外部端子と前記固体電池に隣接する別の固体電池の積層体の下面における前記第1外部端子とが直接接続可能なように前記第1外部端子と前記第2外部端子は、それぞれ前記下面および前記上面で延長され」と訂正する。
訂正事項2
本件の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)【0011】について、本件訂正前の「本発明にかかる固体電池は、前記積層体の上面における第2外部端子と前記固体電池に隣接する別の固体電池の積層体の下面における第1外部端子とが直接接続可能なように第1外部端子と第2外部端子は、それぞれ前記上面および前記下面で延長され」を「本発明にかかる固体電池は、前記積層体の上面における第2外部端子と前記固体電池に隣接する別の固体電池の積層体の下面における第1外部端子とが直接接続可能なように第1外部端子と第2外部端子は、それぞれ前記下面および前記上面で延長され」と訂正する。
3 当審の判断
1-1 訂正の目的、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び、新規事項追加の有無
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前において、請求項1では、「第2外部端子は前記積層体の上面まで延在し、前記第1外部端子は前記積層体の下面まで延在している」としているにもかかわらず、請求項1を引用する請求項2では、「第1外部端子」は、「上面」で「延長され」、「第2外部端子」は、「下面で延長され」るとしており、これらの記載が矛盾していたものを、本件明細書【0021】及び図1を根拠として、上記矛盾を解消するものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件の願書に添付された明細書、特許請求の範囲、及び、図面(以下、「本件明細書等」という。)に記載した範囲内の訂正である。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正事項1において、特許請求の範囲の訂正に伴い、本件明細書の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載した範囲内の訂正である。
3-2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項3~5は請求項2を引用するものであるから、本件訂正前の請求項2~5は一群の請求項である。
そして、本件訂正は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものではなく、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めもないから、本件訂正請求は、訂正後の請求項〔2~5〕を訂正単位とする訂正の請求をするものである。
3-3 明細書の訂正について
明細書の訂正である訂正事項2は、訂正前の請求項2に対応する明細書の記載を訂正するものであり、本件訂正前の請求項3~5は請求項2を引用するものであるから、本件訂正請求に係る明細書の訂正は、一群の請求項の全てについて行うものである。
3-4 独立特許要件について
申立人による特許異議は、本件訂正前の請求項1~5の全てに対して申し立てられているので、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないとの、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。
3-5 訂正請求についてのむすび
以上のとおりであるから、令和2年1月27日に特許権者が行った訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第3項に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに、同条第9項において準用する同法第126条第4項、第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔2~5〕についての訂正を認める。
第3 特許異議申立について
1 本件発明
令和2年1月27日付けで特許権者が行った請求項2~5についての訂正は、上記第2で検討したとおり適法なものであるから、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明(以下、これらを各請求項の番号に応じて、それぞれ「本件発明1」~「本件発明5」という。また、これらをまとめて「本件発明」という。)は、本件訂正請求に係る訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
第1電極層と固体電解質層と第2電極層とを備えた積層体を有する固体電池において、
前記第1電極層と前記第2電極層は互いに逆方向に引き出され、それぞれ前記積層体の側面の第1内部端子及び第2内部端子に接続され、
前記第1内部端子上に形成された第1外部端子と、前記第2内部端子上に形成された第2外部端子と、を有し、
前記第1外部端子は、前記第1内部端子の一部を覆うとともに前記第1内部端子の他の部分を覆わず、
前記第2外部端子は、前記第2内部端子の一部を覆うとともに前記第2内部端子の他の部分を覆わず、
前記第2外部端子は前記積層体の上面まで延在し、前記第1外部端子は前記積層体の下面まで延在していることを特徴とする固体電池。
【請求項2】
前記積層体の上面における前記第2外部端子と前記固体電池に隣接する別の固体電池の積層体の下面における前記第1外部端子とが直接接続可能なように前記第1外部端子と前記第2外部端子は、それぞれ前記下面および前記上面で延長され、
前記積層体の上面における前記第2外部端子の前記側面から延長される長さと前記積層体の下面における前記第1外部端子の前記側面から延長される長さは、それぞれの長さの合計が、前記積層体の側面間距離以上であることを特徴とする請求項1に記載の固体電池。
【請求項3】
前記積層体の上面における前記第2外部端子は、その先端部が前記第2外部端子の厚みよりも薄い部分を備え、
前記積層体の下面における前記第1外部端子は、その先端部が前記第1外部端子の厚みよりも薄い部分を備えることを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の固体電池。
【請求項4】
前記積層体の上面における前記第2外部端子は、その先端部が前記第2外部端子の厚みよりも徐々に薄くなる部分を備え、
前記積層体の下面における前記第1外部端子は、その先端部が前記第1外部端子の厚みよりも徐々に薄くなる部分を備えることを特徴とする請求項1~3のうちいずれか一項に記載の固体電池。
【請求項5】
前記第1内部端子及び前記第2内部端子を結ぶ方向に垂直な方向に対向する前記積層体の第2の側面には、別の固体電池が隣接したときにその端子を収納可能な凹みを有することを特徴とする請求項1~4のうちいずれか1項に記載の固体電池。」
2 令和1年11月25日付けで通知された取消理由の概要
2-1 特許法第36条第4項第1号について
本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明1~5の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されているとはいえないから、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。
なお、本取消理由は、特許異議申立理由では、特許法第36条第6項第1号の要件違反としていたが、当審において、特許法第36条第4項第1号の要件違反として通知した。
2-2 特許法第36条第6項第2号について
請求項2の、「第1外部端子と前記第2外部端子は、それぞれ前記上面および前記下面で延長され」るとの記載は、不明瞭であって、請求項2~5に係る発明は、明確でないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。
3 上記2以外の特許異議申立理由の概要
3-1 特許法第29条第1項第3号及び同条第2項について
(1)本件特許の請求項1、3、4に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
(2)本件特許の請求項1、3、4に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
(刊行物)
国際公開第2013/064779号
(申立人が提出した甲第1号証、以下、「甲1」という。)
4 甲号証の記載
(1)甲1の記載
甲1には、次の記載がある。なお、翻訳は当審による。また、下線は当審で付した。
ア「
」
(第1頁第4~7行)
(当審訳)
「本発明は、電池、特にリチウムイオン電池の分野に関する。特に全固体リチウムイオン電池及び薄膜の当該電池を製造するための新規方法に関する。」
イ「
」(第30頁第17行~第32頁第31行)
(当審訳)
「図22は、本発明による方法の一実施形態を用いた本発明に係る電池の製造における工程を示す図である。各工程で得られた生成物を、図3(a)~3(d)及び図4に概略的に示す。工程1.Aおよび1.Bにおいて、導電性基板20上にカソード膜24とアノード膜21それぞれを堆積させるのに電気泳動が用いられる。図3(a)に示すように、アノード21にとって、この堆積物は、導電性基材の両面に形成することができる。電気泳動により堆積した膜は、工程2.Aと2.Bで乾燥させる。工程3.A及び3.Bでは、機械的及び/又は熱的手段によって圧密されている。この機械的圧密は、固体本体の理論密度の90%以上の密度、またはさらには95%以上をもたらすことができる。乾燥は、機械的な圧密の前または後に行うことができる。
この段階では、非常に良好な初期の緻密さを備えた堆積は、電気泳動技術を用いて得ることができることを覚えておくことが重要である。従って、このような圧密中の堆積物の収縮が小さく、それゆえに、膜が大きな面積と厚さで形成されても、膜にはほとんどまたは全く欠陥は存在しない。初期の膜が緻密で粒子が小さい場合、さらにこの圧密工程は、低温でかつ短い時間で、より容易に行われる。焼結前の緻密化をさらに進めるために、小さい粒子( <30nm)及び/又は平行六面体形状を使用することが有利である。
工程4.Aと4.Bでは、電解質膜22は、アノード21上とカソード24上にそれぞれ堆積される。膜の厚さは1μm程度であってもよい。また、図3(b)及び図12bにも模式的に示すように、この堆積物はまた電極の端部を覆っている。電極の端部のこの分離は、短絡の危険性とリーク電流の危険性を防止する。この電解質の堆積が工程5.A及び5.Bbisで乾燥される。
図12に示すように、電極の一端は工程6.A及び6.Bにて切断される。有利には、帯状物に関連する縁部(edge)は、縁部上に電解質でコーティングされた3つの縁部を残すために切断される。この電解質は誘電体であるため、次の積層工程の後、セルの一方の側だけのアノードの接点と、セルの他方の側だけのカソードの接点が見えており、電池素子の並列アセンブリを作成して、大容量の電池セルを形成する。図3(c)は切断後のこのようなセル部を示す図である。基板20は、カソード膜21が塗布され(この場合両面)、縁部(edge)23上で切断されている。工程7では、積層は、アノード21の切断縁部23’と電解質22で被覆されたカソード24の縁部との連続(sequence)が積層の2つの反対の側に交互に存在するように形成されている。図4は、2つの基板20の積層を示しており、その一方は両面にアノード膜21で被覆され、他方はカソード膜24を有し、共通の界面25を形成するようにお互いに堆積されている電解質膜22’、22''を両面に有している。工程8では、この積層は電解質膜22の二つの面22’、22''の間の良好な結合("weld")を得るために圧密化されてもよい。アノードとカソード膜の溶融温度が電解質膜の溶融温度よりも著しく高い場合、積層前に別々にアノードとカソードと膜の熱圧密化を行って、それから電解質膜を圧密化するために、積層の熱的圧密化を行うことが好ましい。
積層が完了すると、終端部(電気接点)35、36は、カソード電流とアノード電流の集電体がそれぞれ見える(電解絶縁で被覆されていない)レベルで付け加えられる。これらの接触領域は、図4に示すように、電流収集するために、積層の反対側面にあってもよいが、それらは、同じ側面上にまたは隣接する側面にあってもよい。
特定の一実施形態では、図4に示す積層体は、円筒状電池を得るために、心棒に2つの半電極(一方は図3(c)に示されている)を一緒に巻回して作製されている。図4の構成のため、アノード接続は一方の側から突出し、カソード接続は他方の側から突出している。
以下のすべての図では、積層内の唯一つのセルを示しているが、積層されているセルの数がはるかに多いことは明らかである。
図5aから図5c’は、本発明に係る電気泳動堆積における別の工程を示している。
図5aの場合は、本発明の主要な実施形態における工程d)に対応する、金属箔1の形で、基板の調達を示している。
図5a’は基板の調達を示し、この工程で、本発明の主要な実施形態において、工程d)に対応する金属箔1の形で調達され、基板1の表面の部分的な保護が絶縁性ステンシル9を用いて形成される。このステンシルは、剥離可能なポリマー膜から作製され得るし、絶縁性の柔らかいステンシルであってもよい。図5bおよびb’は、プロセスの主要な実施形態における工程e)に対応する、基板1の導電性部分上に電気泳動によって行うカソードのナノ粒子24の堆積を示しており、その後皮膜の圧密化が続く。図5b’では、基板1の一部がステンシル9によって保護され、一方図5bでは、堆積は基板1の両面の表面全体にわたって形成されている。
図5c、図5c’はプロセスの主な実施形態における工程g)に対応するカソード上の電解質のナノ粒子の電気泳動堆積を示している。
図5aから図5c’に記載の方法により得られる生成物は、基板が帯状物の形態で調達され、カソード及び電解質で被覆された基板は、帯状物から切り出されるというケースに対応している。カソード膜と電解質膜が基板の縁部も覆っていることを除いて、図6aから図6c’は、図5aから図5c’と同一の生成物を示している。この生成物は、カソードと電解質膜が堆積された基板1プレートを事前に切り出すことから出発して得られる。
電解質膜が基板の一方の端部も覆っていることを除いて、図7aから図7c’は、図5aから図5c’と同一の生成物を示している。この実施形態では、カソードナノ粒子の電気泳動堆積は、後ほど切り出す帯状物の上に行われ、電解質が切り出し後に堆積される。」
ウ「
」(第33頁第11行~第35頁14行)
(当審訳)
「図10は、本発明による方法の後に得られた電池を示している。この電池は、電解質22/アノード21/基板1/アノード21/電解質22および電解質22/カソード24/基板1/カソード24/電解質22の積層で構成され、電解質膜で組み立てられている。この図に示す電池において、各積層の縁部の一部又は全ては、アノードまたはカソード、電解質材料で被覆されている。これにより、端部のコーティングされていない区域に接する集電体を押圧して接触させることができる。
図11は、図7aから図7c’に示す実施形態を用いて積層が構成されていることを除いて、図10と同様の一実施形態に従って製造された電池を示している。
図8から図11に示される実施形態では、電池は三次元の複数膜の構成部品である。このタイプの構成部品は、多くの場合、「ピックアンドプレース」型の技術を用いて集積回路上に表面実装できるように設計されている。この全固体薄膜電池は、米国電子工業会によって定義された寸法の基準を使用して作製することができる。
図8から図11の電池で得られた単位体積当たりの高いエネルギー密度及び電力は、基板がないことと並列に接続された積層体電池の大量の存在によるものである。
前記構成部品がパッケージ内において集積されていないが、性能が経時的に劣化しないように空気中の湿気と酸化から複数膜の積層体を守り、寿命を延ばすため、この三次元の構成部品の構造は、特に効率的である。図25はまた、保護要素80,81,82,83を含む複数膜の構造体を有する図11に記載の全固体薄膜電池の一実施形態を示す。
図25に示すように、保護膜80は、大気の要素からセルを保護するために、電池の上端および下端に電解質膜によって保護を行う。
この保護は、通常、薄膜80の形で、電池の上面と下面に配置されている。保護膜の厚さ及び性質は、得られる透過率の値によって決定される。保護膜に必要な透過率の値は、特にその下に位置する電解質膜22の保護的性質に依存する。一般に、空気への曝露において0.1mg/m2/日未満の透過性が、電池の寿命を保証するために必要である。この保護膜を作製するために使用することができる樹脂は限定されることはなく、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)を含む。これらの樹脂は、例えば、ヒューミシール社製Humiseal(登録商標)UV40タイプの樹脂のように、UV下で重合させることができる。
保護膜80は、電池の上面と下面とに堆積される。電極の端部は、この膜80によっては保護されていない。それらは、長期的に性能が低下させる、潜在的な大気の構成要素との接触を保ったままである。これらの端部は金属要素81,82,83を含有するコーティングで被覆されていて、それにより電池の側面に位置するこれらの端部は、電気的接続を維持しながら保護されており、電池の最適な保護を保証するように、好ましくはポリマー膜80を覆うようにコーティングは端部84を越えて突出する。
いくつかの実施形態では(図示せず)、これらの終端(金属要素を含むコーティング)は、単一の金属膜83、例えば錫の形態で製造することができる。
好ましい一実施形態では、それらは図25に示す多層膜81,82,83で構成されてもよい。異なる層81,82,83は、非限定的であるが、導電性ポリマー膜(例えば、銀を含有する樹脂)、ニッケル膜及びスズ膜である。
異なる膜の各々は、大気ガスによる劣化に対する保護を提供するという役割に加えて、実行するための特殊な機能を有する。スズ膜83は、バッテリインタフェースの溶接性を保証する。ニッケル膜82は、溶接工程の間にポリマー膜81を保護する。銅の補助膜(図示せず)もまたいくつかの実施形態では導電性ポリマー膜の下に堆積されている。
導電性ポリマー膜81が変形可能であるので、変形が前記回路上へ行われた場合には、電子回路上に溶接される電池の任意の変形を吸収することができる。この比較的柔軟な導電性膜は、このように機械的に力を掛けられたインタフェースでの破壊を防ぐことができる。さらに、電池の製造に優先的に使用されるリチウムが挿入される材料は、寸法的に安定であると考えられているが、それらは、それらの挿入率(Li7Ti5O12と比較して、例えばLi4Ti5O12は1%)に依存する特定の変形率を有する。それゆえ電極材料を挿入し除去する工程中に変形を吸収しながら、膜81は、電気的接点の信頼性を高めることができる。
このように作られ、いくつかの膜で構成される終端は、電極の縁部を保護する。」
エ「
Figure4
」
オ「
Figure10
Figure11 」
カ「
Figure25 」
(2)甲1に記載された発明
ア 上記(1)のイには、「図5aから図5c’に記載の方法により得られる生成物は、基板が帯状物の形態で調達され、カソード及び電解質で被覆された基板は、帯状物から切り出されるというケースに対応している」、「電解質膜が基板の一方の端部も覆っていることを除いて、図7aから図7c’は、図5aから図5c’と同一の生成物を示している」と記載されているから、上記(1)のエの図7aから図7c’に記載の方法により得られる生成物は、基板がカソード及び電解質膜で被覆されるとともに、電解質膜が基板の一方の端部も覆っているものである。
また、上記(1)のエの図7cから、基板1がカソード24及び電解質膜22で被覆されるとともに、電解質膜22が基板1の一方の端部も覆っている生成物が看取できる。
イ 上記アで検討したように、上記(1)のエの図7cには、基板1がカソード24及び電解質膜22で被覆されるとともに、電解質膜22が基板1の一方の端部も覆っている生成物が示されているところ、図7c記載の生成物が積層された電池を示す上記(1)のオの図11から、基板1がカソード24及び電解質膜22で被覆されるとともに、電解質膜22が基板1の一方の端部も覆っている生成物と、基板1がアノード21及び電解質膜22で被覆されるとともに、電解質膜22が基板1の他方の端部も覆っている生成物とが積層されている全固体リチウムイオン電池が看取できる。
ウ 上記(1)のウには、図11記載の電池の一実施形態である図25の全固体電池において、「保護膜80は、大気の要素からセルを保護するために、電池の上端および下端に電解質膜によって保護を行う」ことが記載されている。
エ 上記(1)のウには、さらに、「電極の端部は、」「金属要素81,82,83を含有するコーティングで被覆されていて、それにより電池の側面に位置するこれらの端部は、電気的接続を維持しながら保護されており、電池の最適な保護を保証するように、好ましくはポリマー膜80を覆うようにコーティングは端部84を越えて突出する」ことが記載されており、この記載における「電極の端部」とは、カソード24及びアノード21の端部であり、また、「これらの端部」とは、金属要素81,82,83の端部であると解される。
また、上記(1)のカの図25から、金属要素81,82,83を含有するコーティングは端部84を越えて電池の上面及び下面に突出していることが看取できる。
さらに、上記(1)のカの図25から、金属要素81,82,83は、積層構造となっており、金属要素81が最も内側にあって、金属要素82がその外側、金属要素83が最も外側に位置していることが看取できる。
オ 上記ア~エの検討より、図25に示された全固体リチウムイオン電池に注目すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「基板1がカソード24及び電解質膜22で被覆されるとともに、電解質膜22が基板1の一方の端部も覆っている生成物と、基板1がアノード21及び電解質膜22で被覆されるとともに、電解質膜22が基板1の他方の端部も覆っている生成物とが積層されており、
保護膜80は、大気の要素からセルを保護するために、電池の上端および下端に電解質膜によって保護を行い、
カソード24及びアノード21の端部は、金属要素81,82,83を含有するコーティングで被覆されていて、それにより電池の側面に位置する金属要素81,82,83の端部は、電気的接続を維持しながら保護されており、電池の最適な保護を保証するように、好ましくはポリマー膜80を覆うようにコーティングは端部84を越えて電池の上面及び下面に突出し、
金属要素81,82,83は、積層構造となっており、金属要素81が最も内側にあって、金属要素82がその外側、金属要素83が最も外側に位置している、全固体リチウムイオン電池。」
カ なお、申立人は、特許異議申立書において、甲1における、「図25はまた、保護要素80,81,82,83を含む複数膜の構造体を有する図11に記載の全固体薄膜電池の一実施形態を示す」との記載、図11の説明で引用される図10(図11は、図7(a)から図7(f)に示す実施形態を用いて積層が構成されていることを除いて、図10と同様の一実施形態に従って製造された電池を示している)の記載から、図11において、電気接点35及び電気接点36は、金属要素80、81、82よりも積層体に近く、また、金属要素80、81、82は、電気接点35及び電気接点36よりも積層体に遠いことは明らかであると主張している(特許異議申立書第12頁第15~32行)。
キ しかしながら、図11記載の電池にも、図25記載の電池にも、電気接点35及び電気接点36、または、金属要素80、81、82のいずれかについて記載されているのみであって、甲1には、電気接点35及び電気接点36と金属要素80、81、82との位置関係について、何ら記載されていない。
ク また、甲1には、「図25はまた、保護要素80,81,82,83を含む複数膜の構造体を有する図11に記載の全固体薄膜電池の一実施形態を示す」と記載されており、図11に記載された電気接点35及び電気接点36、及び、図25に記載された金属要素80、81、82は、いずれも電池側面から上面及び下面に延在している形状が類似していることから、図25に記載された金属要素80、81、82は、図11に記載された電気接点35及び電気接点36の一実施形態であると解するのが相当である。
ケ よって、申立人の上記カの主張には理由がない。
5 当審の判断
5-1 特許法第36条第4項第1号について(上記2の2-1)
(1)請求項1に記載された事項について
ア 本件発明1は、「第1内部端子上に形成された第1外部端子と、前記第2内部端子上に形成された第2外部端子と、を有し、前記第1外部端子は、前記第1内部端子の一部を覆うとともに前記第1内部端子の他の部分を覆わず、前記第2外部端子は、前記第2内部端子の一部を覆うとともに前記第2内部端子の他の部分を覆わず、前記第2外部端子は前記積層体の上面まで延在し、前記第1外部端子は前記積層体の下面まで延在している」との発明特定事項を含むものである。
イ ここで、本件明細書【0009】には、次のとおり記載されている。
「積層体側面に引き出された端子が、その側面の一部を露出させるとともに、前記固体電池の上面または下面に延長されているため、複数の固体電池をかみ合わせて連結させることができ、それにより多彩な電池収納部に対応可能であるとともに、電池収納部に搭載しても脱落を防止することができる。」
ウ また、本件明細書【0051】には、次のとおり記載されている。
「<第5実施形態>
(組電池)
また第5実施形態として、図7に固体電池を3つ直列に並べた3直列の組電池を示す。
まず、ケース51及びケース内部端子52にて箱を作製し、さらにケース内部端子52から引出し銅板53にて、図7のような組電池用ケース50を作製した。そのケース内に上記3直列の組電池を搭載することで組電池を作製した。固体電池10が上面および下面の端子により、かみ合ってケースからの固体電池の脱落を防止することを可能にした。」
エ さらに、図7には、次のとおり記載されている。
「【図7】
」
オ 上記イ~エの記載について検討するに、上記エの図7にも示されているとおり、本件発明1の「固体電池」は、その第1外部端子と別の「固体電池」の第2外部端子とをかみ合わせることができ、それにより、少なくとも、そのかみ合った方向には「固体電池」がズレることなく固定されることとなるから、当該かみ合いがない場合と比較すると、「電池収納部に搭載しても脱落を防止することができる」といえる。
カ そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明には、請求項1及びそれを引用する請求項2~5に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されているといえるから、本件明細書の発明の詳細な説明は、請求項1~5に係る発明について、経済産業省令で定めるところにより記載されたものといえる。
(2)請求項2に記載された事項について
ア 本件発明2は、「積層体の上面における前記第2外部端子と前記固体電池に隣接する別の固体電池の積層体の下面における前記第1外部端子とが直接接続可能なように前記第1外部端子と前記第2外部端子は、それぞれ前記下面および前記上面で延長され、前記積層体の上面における前記第2外部端子の前記側面から延長される長さと前記積層体の下面における前記第1外部端子の前記側面から延長される長さは、それぞれの長さの合計が、前記積層体の側面間距離以上である」との発明特定事項を含むものである。
イ ここで、本件明細書には、次のとおり記載されている。
「【0011】
本発明にかかる固体電池は、前記積層体の上面における第2外部端子と前記固体電池に隣接する別の固体電池の積層体の下面における第1外部端子とが直接接続可能なように第1外部端子と第2外部端子は、それぞれ前記下面および前記上面で延長され、前記積層体の上面における第2外部端子の前記側面から延長される長さと前記積層体の下面における第1外部端子の前記側面から延長される長さは、それぞれの長さの合計が、前記積層体の側面間距離以上であることが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、電池収納部に搭載してもより脱落を防止することができる。」
ウ 上記イの記載について検討するに、本件発明2は、「積層体の上面における前記第2外部端子の前記側面から延長される長さと前記積層体の下面における前記第1外部端子の前記側面から延長される長さは、それぞれの長さの合計が、前記積層体の側面間距離以上である」との発明特定事項を含むことにより、より確実に、「固体電池」の第1外部端子と別の「固体電池」の第2外部端子とをかみ合わせることができ、それにより、少なくとも、そのかみ合った方向には「固体電池」がズレることなく固定されることとなるから、「電池収納部に搭載してもより脱落を防止することができる」といえる。
エ そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明には、請求項2及びそれを引用する請求項3~5に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されているといえるから、本件明細書の発明の詳細な説明は、請求項2~5に係る発明について、経済産業省令で定めるところにより記載されたものといえる。
(3)請求項3に記載された事項について
ア 本件発明3は、「積層体の上面における前記第2外部端子は、その先端部が前記第2外部端子の厚みよりも薄い部分を備え、前記積層体の下面における前記第1外部端子は、その先端部が前記第1外部端子の厚みよりも薄い部分を備える」との発明特定事項を含むものである。
イ ここで、本件明細書には、次のとおり記載されている。
「【0013】
また、本発明にかかる固体電池は、前記積層体の上面における第2外部端子は、その先端部が前記第2外部端子の厚みよりも薄い部分を備え、前記積層体の下面における第1外部端子は、その先端部が前記第1外部端子の厚みよりも薄い部分を備えることが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、電池収納部に搭載しても、固体電池間のかみ合わせがさらに良くなり、より脱落を防止することができる。」
ウ 上記イの記載について検討するに、本件発明3は、「積層体の上面における前記第2外部端子は、その先端部が前記第2外部端子の厚みよりも薄い部分を備え、前記積層体の下面における前記第1外部端子は、その先端部が前記第1外部端子の厚みよりも薄い部分を備える」との発明特定事項を含むことにより、「固体電池」の第1外部端子と別の「固体電池」の第2外部端子とを、厚みの厚い部分と薄い部分の2箇所でかみ合わせることができ、それにより、少なくとも、そのかみ合った方向には「固体電池」がズレることなく固定されることとなるから、「より脱落を防止することができる」といえる。
エ そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明には、請求項3及びそれを引用する請求項4、5に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されているいえるから、本件明細書の発明の詳細な説明は、請求項3~5に係る発明について、経済産業省令で定めるところにより記載されたものといえる。
(4)請求項4に記載された事項について
ア 本件発明4は、「積層体の上面における前記第2外部端子は、その先端部が前記第2外部端子の厚みよりも徐々に薄くなる部分を備え、前記積層体の下面における前記第1外部端子は、その先端部が前記第1外部端子の厚みよりも徐々に薄くなる部分を備える」との発明特定事項を含むものである。
イ ここで、本件明細書には、次のとおり記載されている。
「【0015】
その他、本発明にかかる固体電池は、前記積層体の上面における第2外部端子は、その先端部が前記第2外部端子の厚みよりも徐々に薄くなる部分を備え、前記積層体の下面における第1外部端子は、その先端部が前記第1外部端子の厚みよりも徐々に薄くなる部分を備えることが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、電池収納部に搭載しても、固体電池間のかみ合わせがさらに良くなり、より脱落を防止することができる。」
ウ 上記イの記載について検討するに、本件発明4は、「積層体の上面における前記第2外部端子は、その先端部が前記第2外部端子の厚みよりも徐々に薄くなる部分を備え、前記積層体の下面における前記第1外部端子は、その先端部が前記第1外部端子の厚みよりも徐々に薄くなる部分を備える」との発明特定事項を備えることにより、「固体電池」の第1外部端子と別の「固体電池」の第2外部端子とをかみ合わせる際に、より大きな面積でかみ合わせることができ、それにより、少なくとも、そのかみ合った方向には「固体電池」がズレることなく固定されることとなるから、「固体電池間のかみ合わせがさらに良くなり、より脱落を防止することができる」といえる。
エ そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明には、請求項4及びそれを引用する請求項5に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されているとはいえるから、本件明細書の発明の詳細な説明は、請求項4、5に係る発明について、経済産業省令で定めるところにより記載されたものといえる。
(5)請求項5に記載された事項について
ア 本件発明5は、「第1内部端子及び前記第2内部端子を結ぶ方向に垂直な方向に対向する前記積層体の第2の側面には、別の固体電池が隣接したときにその端子を収納可能な凹みを有する」との発明特定事項を含むものである。
イ ここで、本件明細書には、次のとおり記載されている。
「【0017】
また本発明にかかる固体電池は、前記第1内部端子及び前記第2内部端子を結ぶ方向に垂直な方向に対向する前記積層体の第2の側面には、別の固体電池が隣接したときにその端子を収納可能な凹みを有することが好ましい。
かかる構成によれば、電池収納部にたとえば2直列2並列状態で搭載しても、固体電池間のかみ合わせがよいため、脱落を防止することができる。」
「【0054】
<第6実施形態>
(組電池)
また第6実施形態として、図8に固体電池を2つ直列、且つ2つ並列に並べた2直列2並列の組電池を示す。
上述した組電池用ケース50と同様の作成方法にて、図8に示す2直列2並列用の箱を作製した。そのケース内に上記す2直列2並列の組電池を搭載することで組電池を作製した。固体電池10が上面および下面の端子により、かみ合っていることに加え、直列に接続した固体電池10の端子が、さらに隣接する直列の固体電池10の端子以外の側面と、側面に形成した端子収納可能な凹みによりかみ合い、多数の固体電池を搭載した組電池においてもケースから脱落を防止可能にした。」
ウ また、図8には、次のとおり記載されている。
「【図8】
」
エ 上記イ、ウの記載について検討するに、本件発明5は、「第1内部端子及び前記第2内部端子を結ぶ方向に垂直な方向に対向する前記積層体の第2の側面には、別の固体電池が隣接したときにその端子を収納可能な凹みを有する」との発明特定事項を含むことにより、上記ウの図8において、点線で示された箇所の如く、「固体電池」の第1外部端子または前記第2外部端子が、別の「固体電池」の凹部とかみ合わせることができ、それにより、少なくとも、そのかみ合った方向には「固体電池」がズレることなく固定されることとなるから、当該かみ合いがない場合と比較すると、「脱落を防止することができる」といえる。
オ そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明には、請求項5に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されているとはいえるから、本件明細書の発明の詳細な説明は、請求項5に係る発明について、経済産業省令で定めるところにより記載されたものといえる。
5-2 特許法第36条第6項第2号について(上記2の2-2)
ア 本件訂正前の請求項2には、「第1外部端子と前記第2外部端子は、それぞれ前記上面および前記下面で延長され」ることが記載されており、当該記載が請求項1の記載と整合していなかったところ、本件訂正により、請求項2の当該記載が、「第1外部端子と前記第2外部端子は、それぞれ前記下面および前記上面で延長され」ると訂正されたため、本取消理由は解消された。
イ よって、請求項2及びこれを引用する請求項3~5に係る発明は、明確である。
5-3 特許法第29条第1項第3号及び同条第2項について(上記3の3-1)
(1)本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「アノード21」または「カソード24」の一方、「電解質膜22」、「アノード21」または「カソード24」の他方、「全固体リチウムイオン電池」は、本件発明1の「第1電極層」、「固体電解質層」、「第2電極層」、「固体電池」にそれぞれ相当する。
また、甲1発明の「金属要素81」は、本件発明1の「第1内部端子」及び「第2内部端子」に相当する。
さらに、甲1発明の「金属要素83」は、本件発明1の「第1外部端子」及び「第2外部端子」に相当する。
イ 甲1発明の「全固体リチウムイオン電池」は、「基板1がカソード24及び電解質膜22で被覆されるとともに、電解質膜22が基板1の一方の端部も覆っている生成物と、基板1がアノード21及び電解質膜22で被覆されるとともに、電解質膜22が基板1の他方の端部も覆っている生成物とが積層されて」いるから、本件発明1の「第1電極層と固体電解質層と第2電極層とを備えた積層体を有する」事項を含むものである。
ウ 甲1発明の「基板1がカソード24及び電解質膜22で被覆されるとともに、電解質膜22が基板1の一方の端部も覆っている生成物と、基板1がアノード21及び電解質膜22で被覆されるとともに、電解質膜22が基板1の他方の端部も覆っている生成物とが積層されており、」「カソード24及びアノード21の端部は、金属要素81,82,83を含有するコーティングで被覆されていて、それにより電池の側面に位置するこれらの端部は、電気的接続を維持しながら保護されて」いる事項は、本件発明1の「第1電極層と前記第2電極層は互いに逆方向に引き出され、それぞれ前記積層体の側面の第1内部端子及び第2内部端子に接続され」る事項に相当する。
エ 甲1発明の「カソード24及びアノード21の端部は、金属要素81,82,83を含有するコーティングで被覆されてい」るから、甲1発明の「金属要素81,82,83は、積層構造となっており、金属要素81が最も内側にあって、金属要素82がその外側、金属要素83が最も外側に位置している」事項は、本件発明1の「第1内部端子上に形成された第1外部端子と、前記第2内部端子上に形成された第2外部端子と、を有」する事項に相当する。
オ 甲1発明の「金属要素81,82,83を含有する」「コーティングは端部84を越えて電池の上面及び下面に突出」している事項は、本件発明1の「第2外部端子は前記積層体の上面まで延在し、前記第1外部端子は前記積層体の下面まで延在している」事項に相当する。
カ 上記ア~オより、本件発明1と甲1発明とは、
「第1電極層と固体電解質層と第2電極層とを備えた積層体を有する固体電池において、
前記第1電極層と前記第2電極層は互いに逆方向に引き出され、それぞれ前記積層体の側面の第1内部端子及び第2内部端子に接続され、
前記第1内部端子上に形成された第1外部端子と、前記第2内部端子上に形成された第2外部端子と、を有し、
前記第2外部端子は前記積層体の上面まで延在し、前記第1外部端子は前記積層体の下面まで延在していることを特徴とする固体電池。」で一致し、次の相違点で相違する。
(相違点)
本件発明1は、「第1外部端子は、前記第1内部端子の一部を覆うとともに前記第1内部端子の他の部分を覆わず、前記第2外部端子は、前記第2内部端子の一部を覆うとともに前記第2内部端子の他の部分を覆わ」ないのに対し、甲1発明は、そのような構成を有するか不明である点。
キ まず、上記相違点が実質的な相違点であるか否かを検討する。
ク 甲1の図25に示された「全固体リチウムイオン電池」は、図25に示された断面においては、金属要素83は金属要素81の全てを覆っているが、当該断面は「全固体リチウムイオン電池」の一断面にすぎない。
ケ しかしながら、甲1(上記4の(1)のウ参照。)には、「異なる層81,82,83は、非限定的であるが、導電性ポリマー膜(例えば、銀を含有する樹脂)、ニッケル膜及びスズ膜である。異なる膜の各々は、大気ガスによる劣化に対する保護を提供するという役割に加えて、実行するための特殊な機能を有する。スズ膜83は、バッテリインタフェースの溶接性を保証する。ニッケル膜82は、溶接工程の間にポリマー膜81を保護する」と記載されており、「スズ膜83は、バッテリインタフェースの溶接性を保証する」との記載から、金属要素81,82,83の最外郭は、溶接性を保証するために、スズ膜83(甲1発明の「金属要素83」)がニッケル膜82(甲1発明の「金属要素82」)及びポリマー膜81(甲1発明の「金属要素81」)の全てを覆っている可能性が高い。
コ また、上記クでも述べたように、甲1の図25に示された断面において、金属要素83は金属要素81の全てを覆っており、他の断面も同様の形状となっている可能性が高い。
サ そうすると、甲1発明の金属要素83は、金属要素81の全てを覆っていると解するのが相当である。
シ したがって、上記相違点は実質的な相違点である。
ス 次に、上記相違点に係る発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たことであるか否かを検討する。
セ 上記ケで検討したとおり、甲1発明において、「スズ膜83は、バッテリインタフェースの溶接性を保証する」ものであるから、「金属要素81」が「金属要素83」で覆われない箇所を設けることは考えづらいし、そもそもそのようなことをする動機付けもない。
ソ したがって、甲1発明において、上記相違点に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
セ よって、本件発明1は、甲1発明ではないし、甲1発明に基づいて当業者が容易になし得たものともいえない。
(2)本件発明3、4について
請求項3、4は請求項1を引用しており、本件発明3、4は本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明3、4と甲1発明とは、少なくとも、上記(1)のカで示した相違点で相違するものである。
そうすると、上記(1)で検討した理由と同様の理由で、本件発明3、4は、甲1発明ではないし、甲1発明に基づいて当業者が容易になし得たものともいえない。
6 むすび
以上のとおり、本件の請求項1~5係る特許は、令和1年11月25日付けで通知された取消理由に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことはできず、また、他に本件の請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2019-700779