特許異議申立
2019-700774
画像表示装置用の偏光板、画像表示装置及び画像表示装置用の偏光板の製造方法
- 審判番号
- 2019-700774
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-101126外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年09月27日
- 審決日
- 2020年12月25日
- 公報発行日
- 2021年05月28日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.113-YAA(G02B) / P1651.121-YAA(G02B) / P1651.536-YAA(G02B) / P1651.537-YAA(G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条、特許法第29条、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6495374号発明「画像表示装置用の偏光板、画像表示装置及び画像表示装置用の偏光板の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6495374号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-2、5-8〕、〔9-10、13〕について訂正することを認める。
特許第6495374号の請求項1-2、5-10、13に係る特許を維持する。
特許第6495374号の請求項3-4、11-12に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続等の経緯
特許第6495374号の請求項1~請求項13に係る特許(以下、それぞれ「本件特許1」~「本件特許13」といい、総称して「本件特許」という。)についての出願は、平成29年5月22日(先の出願に基づく優先権主張 平成28年5月30日 平成28年12月2日)に特許出願としたものであって、平成31年3月15日に特許権の設定の登録がされたものである。
本件特許について、平成31年4月3日に特許掲載公報が発行されたところ、発行の日から6月以内である令和元年9月27日に、特許異議申立人 阿部 紀子(以下「特許異議申立人」という。)から、特許異議の申立てがされた(異議2019-700774号、以下「本件事件」という。)。
本件事件についての、その後の手続等の概要は以下のとおりである。
令和元年12月27日付け:取消理由通知書
令和2年 3月 6日付け:意見書(特許権者)
令和2年 3月 6日付け:訂正請求書
令和2年 7月 8日付け:意見書(特許異議申立人)
令和2年 8月 7日付け:(特許異議申立人に対する)審尋
令和2年10月 5日付け:回答書(特許異議申立人)
第2 本件訂正請求について
1 請求の趣旨
令和2年3月6日付け訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)の趣旨は、「特許第6495374号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~13について訂正することを求める。」というものである。
2 訂正の内容
本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記偏光子の上面において、前記切欠き部の深部が直線状であり、
前記切欠き部の深部が前記基準線Lに平行であり、」
と記載されているのを、
「前記偏光子の上面において、前記切欠き部の深部が直線状であり、
前記切欠き部の深部が前記基準線Lに平行であり、
前記基準線Lに垂直な方向における前記切欠き部の深さDcが、1mm以上30mm以下であり、
前記基準線Lに垂直な方向における前記偏光子全体の長さDが、100mm以上600mm以下であり、」
に訂正する(請求項1の記載を引用して記載された、請求項2及び5~8も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、
「Wc/Wが0.10以上1.0未満であり、」
と記載されているのを、
「Wc/Wが0.10以上0.45以下であり、」
に訂正する(請求項1の記載を引用して記載された、請求項2及び5~8も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に、
「請求項1~4のいずれか一項に記載の画像表示装置用の偏光板。」
と記載されているのを、
「請求項1又は2に記載の画像表示装置用の偏光板。」
に訂正する(請求項5の記載を引用して記載された、請求項6~8も同様に訂正する。)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に、
「請求項1~5のいずれか一項に記載の画像表示装置用の偏光板。」
と記載されているのを、
「請求項1、2及び5のいずれか一項に記載の画像表示装置用の偏光板。」
に訂正する(請求項6の記載を引用して記載された、請求項8も同様に訂正する。)。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に、
「請求項1~5のいずれか一項に記載の画像表示装置用の偏光板。」
と記載されているのを、
「請求項1、2及び5のいずれか一項に記載の画像表示装置用の偏光板。」
に訂正する(請求項7の記載を引用して記載された、請求項8も同様に訂正する。)。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に、
「請求項1~7のいずれか一項に記載の画像表示装置用の偏光板を含む、」
と記載されているのを、
「請求項1、2、5、6及び7のいずれか一項に記載の画像表示装置用の偏光板を含む、」
に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に、
「前記偏光子フィルムの上面において、前記切欠き部の深部が直線状であり、
前記切欠き部の深部が前記基準線Lに平行であり、」
と記載されているのを、
「前記偏光子フィルムの上面において、前記切欠き部の深部が直線状であり、
前記切欠き部の深部が前記基準線Lに平行であり、
前記基準線Lに垂直な方向における前記切欠き部の深さDcが、1mm以上30mm以下であり、
前記基準線Lに垂直な方向における前記偏光子フィルム全体の長さDが、100mm以上600mm以下であり、」
に訂正する(請求項9の記載を引用して記載された、請求項10及び13も同様に訂正する。)。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項9に、
「Wc/Wを0.10以上1.0未満に調整し、」
と記載されているのを、
「Wc/Wを0.10以上0.45以下に調整し、」
に訂正する(請求項9の記載を引用して記載された、請求項10及び13も同様に訂正する。)。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項11を削除する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項12を削除する。
(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項13に、
「請求項9~12のいずれか一項に記載の画像表示装置用の偏光板の製造方法。」
と記載されているのを、
「請求項9又は10に記載の画像表示装置用の偏光板の製造方法。」
に訂正する。
3 訂正の適否
本件訂正請求による訂正前の一群の請求項は、〔1-8〕、〔9-13〕である。
そこで、以下、本件訂正請求による一群の請求項ごとに、訂正の適否を判断する。
(1)訂正後の請求項1、2、5~8について
ア 訂正事項1による訂正について
訂正事項1による訂正は、「偏光子」の「切欠き部」を「前記基準線Lに垂直な方向における前記切欠き部の深さDcが、1mm以上30mm以下であ」るものに限定するとともに、「偏光子」を「前記基準線Lに垂直な方向における前記偏光子全体の長さDが、100mm以上600mm以下であ」るものに限定する訂正である。また、この点は、請求項1の記載を引用して記載された、請求項2及び5~8についてみても、同じである。
そうしてみると、訂正事項1による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。
さらに、本件特許の明細書の【0027】には、「基準線Lに垂直な方向における切欠き部7Cの長さDcは、例えば、1mm以上30mm以下であってよい。長さDcは、基準線Lに垂直な方向における切欠き部7Cの深さと言い換えてよい。」と記載されている。また、本件特許の明細書の【0027】及び【0104】には、それぞれ、「基準線Lに垂直な方向における偏光子7全体の長さDは、例えば、300mm以上600mm以下であってよい。」、「基準線Lに垂直な方向における偏光子7全体の幅Dは、100mmであった。」と記載されている。
そうしてみると、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえないから、訂正事項1による訂正は、明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
そして、訂正事項1による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。
イ 訂正事項2による訂正について
訂正事項2による訂正は、「Wc/W」の上限である「1.0未満であ」るものを「0.45以下であ」るものに限定する訂正である。また、この点は、請求項1の記載を引用して記載された、請求項2及び5~8についてみても、同じである。
そうしてみると、訂正事項2による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。
さらに、本件特許の明細書の【0026】には、「比Wc/Wは・・・0.45以下であってもよい。」と記載されている。
そうしてみると、訂正事項2による訂正は、明細書等記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえないから、訂正事項2による訂正は、明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
そして、訂正事項2による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。
ウ 訂正事項3による訂正について
訂正事項3による訂正は、特許請求の範囲の請求項3を削除する訂正である。
そうしてみると、訂正事項3による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。また、訂正事項3による訂正が、明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であること、及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しないことは、明らかである。
エ 訂正事項4による訂正について
訂正事項4による訂正は、特許請求の範囲の請求項4を削除する訂正である。
そうしてみると、訂正事項4による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。また、訂正事項4による訂正が、明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であること、及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しないことは、明らかである。
オ 訂正事項5による訂正について
訂正事5による訂正は、訂正事項3~4による訂正により請求項3~4が削除されたことに伴い、訂正後の請求項5が、削除された請求項3~4を引用する記載となることを回避する訂正である。また、この点は、請求項5の記載を引用して記載された請求項6~8についてみても、同じである。
そうしてみると、訂正事項5による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とする訂正に該当する。また、訂正事項5による訂正が、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであること、及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは、明らかである。
カ 訂正事項6~8による訂正について
訂正事項5による訂正と同様に、訂正事項6~8による訂正も、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とする訂正に該当する。また、訂正事項6~8による訂正が、明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であること、及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しないことは、明らかである。
キ 小活
訂正後の請求項1~2、5~8についてした訂正(訂正事項1~訂正事項8による訂正)は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものである。また、同訂正は、同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
(2)訂正後の請求項9~10、13について
ア 訂正事項9による訂正について
訂正事項9による訂正についての判断は、訂正事項1による訂正についての判断と同様である。また、この点は、請求項9の記載を引用して記載された、請求項10及び13についてみても、同じである。
訂正事項9による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。また、訂正事項9による訂正は、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるとともに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 訂正事項10による訂正について
訂正事項10による訂正についての判断は、訂正事項2による訂正についての判断と同様である。また、この点は、請求項9の記載を引用して記載された、請求項10及び13についてみても、同じである。
訂正事項10による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。また、訂正事項10による訂正は、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるとともに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 訂正事項11による訂正について
訂正事項11による訂正は、特許請求の範囲の請求項11を削除する訂正である。
そうしてみると、訂正事項11による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。また、訂正事項11による訂正が、明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であること、及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しないことは、明らかである。
エ 訂正事項12による訂正について
訂正事項12による訂正は、特許請求の範囲の請求項12を削除する訂正である。
そうしてみると、訂正事項12による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。また、訂正事項12による訂正が、明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であること、及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しないことは、明らかである。
オ 訂正事項13による訂正について
訂正事項13による訂正は、訂正事項11~12による訂正により請求項11~12が削除されたことに伴い、訂正後の請求項13が、削除された請求項11~12を引用する記載となることを回避する訂正である。
そうしてみると、訂正事項13による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とする訂正に該当する。また、訂正事項13による訂正が、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであること、及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは、明らかである。
カ 小活
訂正後の請求項9~10、13についてした訂正(訂正事項9~訂正事項13による訂正)は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであって、同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
4 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、全て、特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものである。また、同訂正は、同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
よって、結論に記載のとおり、特許第6495374号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-2、5-8〕、〔9-10、13〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
本件特許の請求項1~2、5~10及び13に係る発明(以下、請求項の番号とともに「本件特許発明1」などという。また、これらの発明をまとめて「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~2、5~10及び13に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。なお、本件訂正請求により、請求項3~4及び11~12は削除されている。
「 【請求項1】
フィルム状の偏光子を備え、
凹状の切欠き部が、前記偏光子の端部に形成されており、
基準線Lが、前記切欠き部の両端に位置する一対の角部を結ぶ直線と定義されるとき、
前記基準線Lが前記偏光子の吸収軸線Aと直交せず、
前記偏光子の上面において、前記切欠き部の深部が直線状であり、
前記切欠き部の深部が前記基準線Lに平行であり、
前記基準線Lに垂直な方向における前記切欠き部の深さDcが、1mm以上30mm以下であり、
前記基準線Lに垂直な方向における前記偏光子全体の長さDが、100mm以上600mm以下であり、
Wcは、前記基準線Lに平行な方向における前記切欠き部の幅であり、
Wは、前記基準線Lに平行な方向における前記偏光子全体の幅であり、
Wc/Wが0.10以上0.45以下であり、
前記基準線Lが前記吸収軸線Aとなす角度θが、0°以上30°以下である、
画像表示装置用の偏光板。
【請求項2】
前記偏光子が、第一端部と、前記第一端部の反対側に位置する第二端部と、を有し、
前記切欠き部が、前記第一端部に形成されており、
前記切欠き部が、前記第一端部から前記第二端部へ向かって延びており、
前記切欠き部が延びる方向Eが、前記偏光子の吸収軸線Aと平行でない、
請求項1に記載の画像表示装置用の偏光板。
【請求項5】
前記切欠き部の形状が、四角形である、
請求項1又は2に記載の画像表示装置用の偏光板。
【請求項6】
前記偏光子の両表面に保護フィルム又は保護層が密着している、
請求項1、2及び5のいずれか一項に記載の画像表示装置用の偏光板。
【請求項7】
前記偏光子の両表面のうち、一方の表面のみに保護フィルム又は保護層が密着している 、
請求項1、2及び5のいずれか一項に記載の画像表示装置用の偏光板。
【請求項8】
請求項1、2、5、6及び7のいずれか一項に記載の画像表示装置用の偏光板を含む、
画像表示装置。
【請求項9】
偏光子フィルムと、前記偏光子フィルムに重なる少なくとも一つの光学フィルムと、を含む第一積層体を作製する工程と、
前記第一積層体を加工して、前記偏光子フィルムの吸収軸線Aに直交しない第一端部を有する第二積層体を作製する工程と、
凹状の切欠き部を、前記第一端部に形成する工程と、
を備え、
基準線Lが、前記切欠き部の両端に位置する一対の角部を結ぶ直線と定義されるとき、
前記偏光子フィルムの上面において、前記切欠き部の深部が直線状であり、
前記切欠き部の深部が前記基準線Lに平行であり、
前記基準線Lに垂直な方向における前記切欠き部の深さDcが、1mm以上30mm以下であり、
前記基準線Lに垂直な方向における前記偏光子フィルム全体の長さDが、100mm以上600mm以下であり、
Wcは、前記基準線Lに平行な方向における前記切欠き部の幅であり、
Wは、前記基準線Lに平行な方向における前記偏光子フィルム全体の幅であり、
Wc/Wを0.10以上0.45以下に調整し、
前記第二積層体の前記第一端部が前記吸収軸線Aとなす角度を、0°以上30°以下に調整する、
画像表示装置用の偏光板の製造方法。
【請求項10】
前記第二積層体が、前記第一端部の反対側に位置する第二端部を有し、
前記切欠き部を、前記第一端部から前記第二端部へ向けて延ばし、且つ前記切欠き部が延びる方向Eを、前記吸収軸線Aと平行でない方向に調整する、
請求項9に記載の画像表示装置用の偏光板の製造方法。
【請求項13】
前記切欠き部の形状が、四角形である、
請求項9又は10に記載の画像表示装置用の偏光板の製造方法。」
第4 取消しの理由及び証拠
1 当合議体が通知した取消しの理由
(1)理由1・進歩性
本件特許発明1~13は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
(2)理由2・サポート要件
本件特許発明1~3は、発明の詳細な説明に記載したものであるということができないから、本件特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
(3)理由3・明確性要件
本件特許発明1~13は、明確であるということができないから、本件特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
2 取消しの理由において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)理由1・新規性
本件特許発明1~8は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明であるから、特許法29条1項3号の規定に該当し特許を受けることができない。
(2)理由2・実施可能要件
本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということができないから、本件特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
3 甲号証及び参考文献
特許異議申立人は、以下の甲号証を提出した。また、当合議体は、取消理由通知書において、以下の参考文献を示した。なお、甲1は、特許異議申立人の示した理由1・新規性についての文献である。また、当合議体の取消理由通知書において、甲1及び甲2は主引例であり、甲3~甲20及び参考1~参考3は周知技術又は技術常識を示す文献である。
甲1:特開2009-300854号公報
甲2:特開2000-155325号公報
甲3:特開2005-309386号公報
甲4:特開2005-338767号公報
甲5:特開2006-349748号公報
甲6:特開2010-9027号公報
甲7:特開2010-277018号公報
甲8:特開2012-145645号公報
甲9:特開2016-71370号公報
甲10:特許第4342851号公報
甲11:特開2006-267369号公報
甲12:特開2002-169489号公報
甲13:特開2007-121915号公報
甲14:特開平8-54620号公報
甲15:特開2007-25643号公報
甲16:特開2005-301205号公報
甲17:特開2000-122076号公報
甲18:特開昭62-262025号公報
甲19:特開平5-45633号公報
甲20:特開平5-303067号公報
参考1:国際公開第2006/090617号
参考2:特開2009-145776号公報
参考3:特開2009-198932号公報
第5 取消理由通知に記載した取消理由(進歩性)についての当合議体の判断
1 甲1を主引例とする進歩性について
(1)甲1の記載及び甲1-1~甲1-4発明
ア 甲1の記載
先の出願前に頒布された刊行物である特開2009-300854号公報(以下「甲1」という)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチング素子が配列される画素領域と、外部接続用端子が形成される端子形成領域を一部に含む、前記画素領域に隣接する隣接領域と、が設けられる第1基板と、
液晶層を介して前記第一基板に対向して配置される第2基板と、
前記第1基板における、前記画素領域及び前記隣接領域が設けられた面とは反対側の面に、前記画素領域から前記隣接領域に対応する位置に延在すると共に、前記端子形成領域に応じた位置に切り欠き部が設けられた形状の偏光板を配置した
ことを特徴とする液晶ディスプレイパネル。
・・・省略・・・
【請求項3】
前記切り欠き部は、前記偏光板の一辺にコ字状に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイパネル。
・・・省略・・・
【請求項7】
請求項1に記載された液晶ディスプレイパネルを備えた電子機器。」
(イ)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイパネル、電子機器及びディスプレイパネルに関し、特に、基板におけるクラックの発生を低減できる液晶ディスプレイパネル、電子機器及びディスプレイパネルに関する。
・・・省略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、液晶ディスプレイパネルを始めとするディスプレイパネルを薄型化・軽量化するため、第1基板及び第2基板を薄くすることが求められている。ところが、第1基板及び第2基板を薄くすると、強度が低下して基板が割れてしまったり、欠けてしまったりするというような問題が発生する懸念がある。特に、図9において、第1基板610におけるA点は、第2基板620と貼り合わされ、剛性が高くたわみにくい画素領域601と、第1基板610単体で、剛性が低くたわみやすい隣接領域602との境界に位置するため、振動や外力などが加わると応力集中が発生し、欠損が生じやすい。実際には、製造時やハンドリング時に、第1基板610の周縁部において、A点を起点とし、第1偏光板630が貼付される境界に位置するB点にかけて、図中破線で示すようにクラックが発生することがある。
【0006】
このようにクラックが発生すると、第1基板上に形成された配線に断線が生じるなどするため製品不良となる。その結果、歩留まりが低下するためコスト高を招くほか、製品自体の信頼性を低下させることになりかねない。
【0007】
この点に関し、引用文献1には、第1基板に貼付された偏光板を隣接領域に対応する位置まで延長したものが記載されているが、かかる構成を採用することは現実的ではない。なぜなら、前述のとおり、駆動用集積回路や外部接続用基板は熱圧着により接続され、その際の温度はおおよそ180℃前後である。それに対し、偏光板は、一般に、ポリビニールアルコールフィルムをトリアセテートフィルムで挟み積層したものが用いられており、80℃~90℃程度の温度までしか耐えることができない。したがって、偏光板を貼付した状態で熱圧着を行うと、その温度には耐えられず、変形や変色を起こしてしまうのである。熱圧着の後で偏光板を貼付することも考えられるが、複雑な形状の駆動用集積回路や外部接続用基板が接続された状態で偏光板を第1基板に貼付することは技術的に困難であり、貼付に失敗した場合には廃棄コストが高くなってしまう。
【0008】
本発明はかかる観点に鑑みてなされたものであって、その目的は、液晶ディスプレイパネル、電子機器及びディスプレイパネルにおいて、基板におけるクラックの発生を低減し、歩留まりが良く信頼性の高い液晶ディスプレイパネル、電子機器及びディスプレイパネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。【0010】
(1)複数のスイッチング素子が配列される画素領域と、外部接続用端子が形成される端子形成領域を一部に含む、前記画素領域に隣接する隣接領域と、が設けられる第1基板と、液晶層を介して前記第1基板に対向して配置される第2基板と、前記第1基板における、前記画素領域及び前記隣接領域が設けられた面とは反対側の面に、前記画素領域から前記隣接領域に対応する位置に延在すると共に、前記端子形成領域に応じた位置に切り欠き部が設けられた形状の偏光板を配置したことを特徴とする液晶ディスプレイパネル。
・・・省略・・・
【0012】
(3)(1)において、前記切り欠き部は、前記偏光板の一辺にコ字状に設けられていることを特徴とする。
・・・省略・・・
【0016】
(7)(1)を備えた電子機器。
・・・省略・・・
【発明の効果】
【0026】
以上の本出願において開示される発明によれば、偏光板により第1基板が補強されるから、クラックの発生を低減することができるとともに、端子形成領域における偏光板には切り欠きが設けられているから、駆動用集積回路や外部接続用基板を問題なく電気的に接続することができる。」
(ウ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下本発明の好適な第1の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0028】
図1は、本実施形態に係る液晶ディスプレイパネル100の側面図である。なお、図示した部材の寸法の比率は、説明のために誇張して表現したものであり、実際の部材の寸法を正確に反映したものではない。
【0029】
液晶ディスプレイパネル100は、複数のスイッチング素子であるTFTと、外部接続用端子111が形成された第1基板110と、図示しない液晶層を介して第1基板110に対向配置されるカラーフィルターが配置されている第2基板120、第1基板に取り付けられる第1偏光板130、及び、第2基板120に取り付けられる第2偏光板140を有している。液晶ディスプレイパネル100にはさらに、第1偏光板130に図示しない接着層を介してバックライト150が取り付けられるとともに、外部接続用端子111において駆動用集積回路160及び外部接続用基板170が電気的に接続されている。なお、本明細書においては、上述したように、カラーフィルターを第2基板に配置する構成で説明するが、このカラーフィルターは第1基板に配置した構成(カラーフィルター・オン・TFT構成)でも良い。また、本明細書では、第2基板120に第1偏光板130とは別の第2偏光板140が配置される構成について説明するが、この第2偏光板140は、第2基板120と液晶層の間の位置に塗布等により内蔵されていても良い。
【0030】
図中符号101で示す領域は、第1基板110上にTFTが配列され、画像を表示することができる画素領域である。そして、画素領域101に隣接する符号102で示す領域は、隣接領域である。隣接領域102においては、第1基板110と第2基板120とは向かい合っておらず、第1基板110の第2基板120側表面が露出している。かかる隣接領域102の第2基板120側表面には、外部接続用端子111が形成された端子形成領域103が設けられている。そして、第1偏光板130は、第1基板110の画素領域101及び隣接領域102が設けられた面とは反対側の面に取り付けられている。
【0031】
本実施形態においては、第1基板110と第2基板120はガラスであるが、透明な基板であって使用可能なものであれば各種プラスチック等でも構わない。また、第1偏光板130及び第2偏光板140は、好適には接着剤により貼り付けることにより第1基板110及び第2基板120に取り付けられるが、熱接着等適宜の取り付け方法を用いてよい。また、駆動用集積回路160及び外部接続用基板170は、異方性導電粒子を含むペーストあるいはシートを介して外部接続用端子111上に配置されたのち、第1基板110の端子形成領域103を第1基板110の両面から冶具で挟むようにして加圧・加熱され、熱圧着により外部接続用端子111と電気的に接続される。
【0032】
また、本実施形態における液晶ディスプレイパネル100の駆動方式は特に限定されず、IPS(In Plane Switching)方式、VA(Vertical Alignment)方式、TN(Twisted Nematic)方式等の公知のいずれの駆動方式を用いてもよい。図示したものは、バックライト150を有する、いわゆる透過型液晶ディスプレイであるが、反射型液晶ディスプレイであっても構わない。さらに、第1基板にはTFTアレイが形成される、いわゆるアクティブ型の液晶ディスプレイとして示しているが、パッシブ型の液晶ディスプレイであってもよい。
【0033】
図2は、図1のX-X断面における平面矢視図である。同図には、第1偏光板130の平面形状が表れている。第1偏光板130は、画素領域101から隣接領域102に対応する位置に延在し、矩形の第1基板110とほぼ同形大である。そして、端子形成領域103に応じた位置、すなわち、第1基板110における外部接続端子111(図示せず)のちょうど裏側に当たる部分には第1偏光板130が存在しないよう、その一辺にコ字状の切り欠き部131が設けられている。切り欠き部131の角部132には、図示するように所定の大きさの丸みが付けられている。
【0034】
第1偏光板130をこのような形状とすると、隣接領域102においても第1基板110に第1偏光板130が取り付けられているため、第1基板110が補強され、振動や外力が作用したときにもクラックが発生しにくくなる。特に、応力集中によりクラックが発生する際の起点となりやすい、画素領域101と隣接領域102との境界上であって、第1基板110の周縁部である図中C点においても第1偏光板130が延在しているから、クラックの発生を効果的に低減できる。
【0035】
一方、端子形成領域103に応じた位置には第1偏光板130が存在しないため、第1偏光板130を第1基板110に取り付けた後に、駆動用集積回路160及び外部接続用基板170の熱圧着を行っても、第1偏光板130が変形・変色することはない。第1偏光板130と端子形成領域103との間には、熱圧着時に第1偏光板130が変形・変色しない程度の隙間dを設けることが好ましい。隙間dの値は、通常は1~5mm程度でよいが、条件により適宜設定してよい。
【0036】
また、切り欠き部131の角部132には、所定の大きさの丸みをつけることが好ましい。こうすることにより、角部132における応力集中を緩和し、角部132を起点としたクラックの発生を防止することができる。丸みの大きさは、通常は半径1~5mm程度でよいが、条件により適宜設定してよい。
【0037】
なお、ここでは第1偏光板130を第1基板110とほぼ同形大としたが、第1基板110よりやや小さめにしてもかまわない。その場合であっても、できるだけC点に近い位置に第1偏光板130が延在するように構成することが望ましい。
【0038】
このように、本実施形態に係る液晶ディスプレイパネル100によれば、振動や外力が作用したときにもクラックの発生を低減することができ、なおかつ、駆動用集積回路160及び外部接続用基板170の熱圧着を問題なく行うことができる。
【0039】
図3は、本発明の好適な第2の実施形態における、図2に対応する平面図である。
【0040】
本実施形態に係る液晶ディスプレイパネル200においても、第1の実施形態同様、第1偏光板230は画素領域201から隣接領域202へと延在している。そして、端子形成領域203に応じた位置には第1偏光板230が存在しないよう、島状の切り欠き部231が設けられている。切り欠き部231の角部232にも、図示するように所定の大きさの丸みが付けられている。
【0041】
第1偏光板230をこのような形状としても、クラックの発生を低減することができる。特に、本実施形態においては、図中C点におけるクラックの発生だけでなく、図2中におけるD点に相当する位置におけるクラックの発生をも効果的に低減できる。
【0042】
図4は、本発明の好適な第3の実施形態における、図2に対応する平面図である。
【0043】
本実施形態に係る液晶ディスプレイパネル300においては、矩形の画素領域301の2辺に2つの隣接領域302a,302bが隣接している。そして、隣接領域302aには端子形成領域303aが、隣接領域302bには端子形成領域303b,303cがそれぞれ設けられ、端子形成領域303aには駆動用集積回路と外部接続用基板が、端子形成領域303b,303cにはそれぞれ駆動用集積回路が電気的に接続される。第1偏光板330は、画素領域301から2つの隣接領域302a,302bへと延在しており、3つの端子形成領域303a,303b,303cに応じた位置にそれぞれ切り欠き部331a,331b,331cを有している。
【0044】
このように、隣接領域302a,302bが複数存在していてもよく、端子形成領域303a,303b,303c、切り欠き部331a,331b,331cを複数設けてもよい。また、1の切り欠き部に複数の端子形成領域を設けることもできる。切り欠き部331a,331b,331cをコ字状でなく島状としてもよいことは言うまでもない。」
(エ)図1
(オ)図2
(カ)図3
(キ)図4
イ 甲1-1発明~甲1-4発明
(ア)甲1-1発明及び甲1-2発明(甲1の第3の実施形態)
上記アの【0043】~【0044】の記載からみて、甲1には第3の実施形態における偏光板として、次の発明(以下「甲1-1発明」という。)が記載されている。
「 矩形の画素領域301の2辺に2つの隣接領域302a,302bが隣接し、隣接領域302aには端子形成領域303aが、隣接領域302bには端子形成領域303b,303cがそれぞれ設けられ、端子形成領域303aには駆動用集積回路と外部接続用基板が、端子形成領域303b,303cにはそれぞれ駆動用集積回路が電気的に接続された、液晶ディスプレイパネルにおける第1偏光板330であって、
第1偏光板330は、画素領域301から2つの隣接領域302a,302bへと延在しており、3つの端子形成領域303a,303b,303cに応じた位置にそれぞれ切り欠き部331a,331b,331cを有し、切り欠き部331a,331b,331cはコ字状である、第1偏光板330。」
また、上記甲1の第3の実施形態には、「甲1-1発明の偏光板の製造方法」(以下「甲1-2発明」という。)が記載されている。
(イ)甲1-3発明及び甲1-4発明(甲1の第1の実施形態)
上記アの【0029】~【0034】の記載からみて、甲1には第1の実施形態における偏光板として、次の発明(以下「甲1-3発明」という。)が記載されている。
「液晶ディスプレイパネル100は、複数のスイッチング素子であるTFTと、外部接続用端子111が形成された第1基板110と、液晶層を介して第1基板110に対向配置されるカラーフィルターが配置されている第2基板120、第1基板に取り付けられる第1偏光板130、及び、第2基板120に取り付けられる第2偏光板140を有し、
第1偏光板130は、画素領域101から隣接領域102に対応する位置に延在し、矩形の第1基板110とほぼ同形大であり、端子形成領域103に応じた位置、すなわち、第1基板110における外部接続端子111のちょうど裏側に当たる部分には第1偏光板130が存在しないよう、その一辺にコ字状の切り欠き部131が設けられている、第1偏光板130。」
また、上記甲1の第1の実施形態には、「甲1-3発明の偏光板の製造方法」(以下「甲1-4発明」という。)が記載されている。
(2)本件特許発明1
ア 甲1-1発明を引用発明とする場合
(ア)対比及び判断
a 対比
本件特許発明1と甲1-1発明を対比すると、以下のとおりとなる。
(a)偏光子
甲1-1発明は、偏光板の発明であるところ、技術常識から、偏光板はフィルム状の偏光子を具備するものである(当合議体注:このことは、甲1の【0007】に「偏光板は、一般に、ポリビニルアルコールフィルムをトリアセテートフィルムで挟み積層したものが用いられ」との記載や、また、フィルム状の偏光子は慣用手段であることから、明らかである。)。
そうしてみると、甲1-1発明は、本件特許発明1の「フィルム状の偏光子を備え」るとの要件を満たす。
(b)切欠き部
甲1-1発明は、「矩形の画素領域301の2辺に2つの隣接領域302a,302bが隣接し、隣接領域302aには端子形成領域303aが、隣接領域302bには端子形成領域303b,303cがそれぞれ設けられ、端子形成領域303aには駆動用集積回路と外部接続用基板が、端子形成領域303b,303cにはそれぞれ駆動用集積回路が電気的に接続され、第1偏光板330は、画素領域301から2つの隣接領域302a,302bへと延在しており、3つの端子形成領域303a,303b,303cに応じた位置にそれぞれ切り欠き部331a,331b,331cを有し、切り欠き部331a,331b,331cはコ字状である」。
上記構成からみて、甲1-1発明の「切り欠き部」は、本件特許発明1の「切欠き部」に相当する。また、甲1-1発明の「切り欠き部」は、本件特許発明1において、「凹状の」とされる、「切欠き部」の「偏光子の端部に形成されており」との要件を満たす。
(c)切欠き部の深部
甲1-1発明の上記(b)の構成からみて、甲1-1発明の「切り欠き部」は、基準線が、切り欠き部の両端に位置する角部を結ぶ直線と定義されるとき、偏光板の上面において、切り欠き部の深部が直線状であり、切り欠き部の深部が基準線に平行であるといえる(当合議体注:このことは、甲1の図4からも確認できる。)。
そうしてみると、甲1-1発明の「切り欠き部」は、本件特許発明1の「切欠き部」の「基準線Lが、前記切欠き部の両端に位置する一対の角部を結び直線と定義されるとき、前記偏光子の上面において、前記切欠き部の深部が直線状であり」との要件を満たす。
(d)画像表示用の偏光板
上記(a)~(c)を総合すると、甲1-1発明の「第1の偏光板」は、その文言どおり、本件特許発明1の「偏光板」に相当する。また、甲1-1発明の「液晶ディスプレイパネル」における「第1の偏光板」は、本件特許発明1の「画像表示装置用の偏光板」に相当する。
(イ)一致点及び相違点
a 一致点
本件特許発明1と甲1-1発明は、次の構成で一致する。
「 フィルム状の偏光子を備え、
凹状の切欠き部が、前記偏光子の端部に形成されており、
基準線Lが、前記切欠き部の両端に位置する一対の角部を結ぶ直線と定義されるとき、
前記偏光子の上面において、前記切欠き部の深部が直線状であり、
前記切欠き部の深部が前記基準線Lに平行である、
画像表示装置用の偏光板。」
b 相違点
本件特許発明1と甲1-1発明は、次の点で、相違するか又は一応相違する。
(相違点1)
本件特許発明1は、「前記基準線Lが、前記偏光子の吸収軸線Aと直交せず」、「前記基準線Lが前記吸収軸線Aとなす角度θが、0°以上30°以下である」のに対して、甲1-1発明は、そのような特定がなされていない点。
(相違点2)
本件特許発明1は、「前記基準線Lに垂直な方向における前記切欠き部の深さDcが、1mm以上30mm以下であ」るのに対して、甲1-1発明の基準線に垂直な方向における「切り欠き部」の深さは、明らかでない点。
(相違点3)
本件特許発明1は、「前記基準線Lに垂直な方向における前記偏光子全体の長さDが、100mm以上600mm以下であ」るのに対して、甲1-1発明の基準線に垂直な方向における「偏光板」の長さは、明らかでない点。
(相違点4)
本件特許発明1は、「Wcは、前記基準線Lに平行な方向における前記切欠き部の幅であり、Wは、前記基準線Lに平行な方向における前記偏光子全体の幅であり、Wc/Wが0.10以上0.45以下であ」るのに対して、甲1-1発明は、そのような特定がなされていない点。
(ウ)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点2~4について検討する。
甲1-1発明の「偏光板」は、「切り欠き部」を、「液晶ディスプレイパネル」における「端子形成領域」「に応じた位置に」「有」するものである。また、偏光板(偏光子も同様)全体の長さ及び幅は、液晶ディスプレイパネルの大きさに対応して設定するのが一般的である。そこで、甲1-1発明の「偏光板」の具体化を試みる当業者が、「基準線に垂直な方向における端子形成領域の深さが1mm以上30mm以下であり、基準線に垂直な方向における液晶ディスプレイパネルのサイズが100mm以上600mm以下であり、基準線に平行な方向における端子形成領域の幅に対する基準線に平行な方向における液晶ディスプレイパネルの幅の比が0.10以上0.45以下である」との構成(以下「構成A」という。)を満たす画像表示装置を想定し、その結果、相違点2~4に係る構成を具備する偏光板に到る蓋然性が高いといえるか、又は容易に想到し得るといえるかについて検討する。
液晶ディスプレイパネルの大きさは、スマートフォンに用いられる5.5型(横幅110.5mm×縦幅62.2mm)から大型テレビに用いられる80型(横幅1767.8mm×縦幅995.7mm)まで多種多様なものがある。また、端子形成領域の大きさについても同様に多種多様なものがある。
例えば、特開2007-121915号公報(以下「甲13」という。)の【0031】には、「液晶表示パネルは、ともにX方向の長さが331mmの有効表示部10Aと・・・フレキシブル基板16の第2接続部TA2のX方向における長さL1は39mmである」との記載と、液晶表示パネルの縦横比を考慮すると、甲13に記載された液晶表示パネルは構成Aを満たす蓋然性が高い。しかしながら、特開2002-169489号公報(以下「甲12」という。)の【0034】には、「90mm×70mmの大きさ寸法の3つの上部液晶表示パネル、中部液晶表示パネル、下部液晶表示パネル」と記載されていて、液晶表示パネルのサイズが100mmよりも小さいので、甲12に記載された液晶表示パネルは、構成Aの要件を満たさない。また、特開2005-301205号公報(以下「甲16」という。)の【0047】には、「液晶表示パネルのサイズを12インチとするとガラス基板2の幅寸法W4は183mm、信号線駆動回路ガラス基板4を搭載した額縁部4aの幅寸法W2を4mm、FPCケーブル5の幅寸法W3を5.2mm」と記載されていて、W3/W4=5.2/183=0.028となり、FPCケーブル5の幅に対する液晶表示パネルのガラス基板2の幅の比が0.1よりも小さいので、甲16に記載された液晶表示パネルは、構成Aの要件を満たさない。これらの甲号証においても、構成Aとの要件を満たすものも満たさないものもあり、多種多様な液晶ディスプレイパネルがあるといえる。また、他の甲号証及び参考文献にも、構成Aを開示するものはない。
そうしてみると、当業者が、構成Aを備えた画像表示装置を前提として、甲1-1発明の「偏光板」を具体化する蓋然性が高いとまではいえない。また、甲1-1発明に接した当業者が、構成Aを備えた画像表示装置に応じた偏光板、すなわち、相違点2~4に係る構成を満たす偏光板に到ることが容易であるといえるだけの十分な根拠を見出すことはできない。
さらにすすんで検討する。
異議申立人が提出した証拠には、上記のとおり、構成Aを満たす蓋然性が高い画像表示装置が開示されているものも存在する。しかしながら、本件特許発明1は、相違点2~4に係る構成に加えて、相違点1に係る構成も具備することによって、切欠き部におけるクラックの発生を抑制するという発明である。したがって、偏光板の切欠き部におけるクラックの発生について何ら問題意識のない、甲1-1発明に接した当業者が、相違点2~4に係る構成を全て備えた切り欠き部を選択し、さらに、当該切り欠き部の形成位置が、相違点1に係る構成を満たすように選択することも容易になし得ることであると判断することは、これを正当化するだけの根拠(例えば、あるサイズのパネルを設計すれば、すべからく、相違点1~4を満たす偏光板に到ることになるという証拠、又はそのような偏光板を採用する積極的な動機付け等)がなければ、いわゆる、後知恵に基づいた判断であって適切とはいえない。
したがって、甲1-1発明において、上記相違点2~4に係る本件特許発明1の構成を満たす蓋然性が高いとはいうことはできない。また、甲1-1発明において、上記相違点2~4に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者といえども、容易に想到し得たということはできない。
(エ)小活
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1-1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
イ 甲1-3発明を引用発明とする場合
甲1-3発明を引用発明とした場合であっても、上記アで示したのと同様の理由により、本件特許発明1は、甲1-3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
(3)本件特許発明2及び5~8
本件特許発明2及び5~8は、本件特許発明1の構成をすべて具備するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1-1発明又は甲1-3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
(4)本件特許発明9
ア 甲1-2発明を引用発明とする場合
本件特許発明9と甲1-2発明を対比すると、少なくとも上記(2)ア(イ)bで示した相違点と同様の相違点を有する。そうしてみると、上記(2)ア(ウ)で示したのと同様の理由により、本件特許発明9は、甲1-2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
イ 甲1-4発明を引用発明とする場合
本件特許発明9と甲1-4発明を対比すると、少なくとも上記(2)ア(イ)bで示した相違点と同様の相違点を有する。そうしてみると、上記(2)ア(ウ)で示したのと同様の理由により、本件特許発明9は、甲1-4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
(5)本件特許発明10及び13
本件特許発明10及び13は、本件特許発明9の構成をすべて具備するものであるから、本件特許発明9と同様に、甲1-2発明又は甲1-4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
(6)甲1を主引例とする進歩性についてのまとめ
上記(1)~(5)から、本件特許発明1、2、5~10及び13は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
2 甲2を主引例とする進歩性について
(1)甲2の記載及び甲2-1~甲2-2発明
ア 甲2の記載
先の出願前に頒布された刊行物である特開2000-155325号公報(以下「甲2」という)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 透明なガラスまたはポリマーフイルムからなり、透明な導電膜が製膜された第1の基板および第2の基板を、所定間隔をおいてシール材で張り合わせた空隙内に液晶を注入し、かつ前記第1の基板および前記第2の基板の表面に偏光板を配置して構成される液晶表示装置において、
前記第1の基板または前記第2の基板に設けた前記液晶を注入する注入口と、前記偏光板のこの注入口に対応する位置に設けた切り欠きもしくは穴とを具備することを特徴とする液晶表示装置。」
(イ)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶表示装置とその製造方法に関し、特に製造を容易にした液晶表示装置とその製造方法に関する。
・・・省略・・・
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を達成するため、請求項1に記載の発明は、透明なガラスまたはポリマーフイルムからなり、透明な導電膜が製膜された第1の基板および第2の基板を、所定間隔をおいてシール材で張り合わせた空隙内に液晶を注入し、かつ前記第1の基板および前記第2の基板の表面に偏光板を配置して構成される液晶表示装置において、前記第1の基板または前記第2の基板に設けた前記液晶を注入する注入口と、前記偏光板のこの注入口に対応する位置に設けた切り欠きもしくは穴とを具備することを特徴とする。
・・・省略・・・
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明にこのような液晶表示装置を添付図面を参照にして詳細に説明する。図1は、本発明の液晶表示装置の一実施の形態の構成を示す組み立て図である。この実施の形態では、上パネル3の平面上に(もちろん下パネル4でもよい)注入口8を設け、さらに、注入口8を設けたパネル上の偏光板1に切り欠き7を設ける。このように、偏光板1に切り欠きを設けたり穴あけをすることで封止材9の堆積によって偏光板1へ干渉が発生することが防げ、平面上に注入口を設けているので毛細管現象により液晶がパネル周辺に回り込むこともなくなるので、複雑な洗浄工程を簡略化または省略化することができる。」
(ウ)図1
イ 甲2-1発明~甲2-2発明
上記アの図1から切り欠き7がコの字状であり、偏光板1の端部に形成されていることが見て取れることからみて、甲2には、偏光板として、次の発明(以下「甲2-1発明」という。)が記載されている。
「 液晶表示装置の上パネル3の平面上に注入口8を設け、さらに、注入口8を設けたパネル3上の偏光板1に切り欠き7を設け、
切り欠き7はコの字状である、前記偏光板1の端部に形成されている、偏光板1。」
また、上記甲2には、「甲2-1発明の偏光板の製造方法」(以下「甲2-2発明」という。)が記載されている。
(2)本件特許発明1
ア 対比及び判断
(ア)対比
本件特許発明1と甲2-1発明を対比すると、以下のとおりとなる。
a 偏光子
甲2-1発明は、偏光板の発明であるところ、技術常識から、偏光板はフィルム状の偏光子を具備するものでである。
そうしてみると、甲2-1発明は、本件特許発明1の「フィルム状の偏光子を備え」るとの要件を満たす。
b 切欠き部
甲2-1発明は、「液晶表示装置の上パネル3の平面上に注入口8を設け、さらに、注入口8を設けたパネル3上の偏光板1に切り欠きを設け、切り欠き7はコの字状である、前記偏光板1の端部に形成されている」。
上記構成からみて、甲2-1発明の「切り欠き7」は、本件特許発明1の「凹状の切欠き部」に相当する。また、甲2-1発明の「切り欠き7」は、本件特許発明1の「凹状の切欠き部」の「偏光子の端部に形成されており」との要件を満たす。
c 切欠き部の深部
甲2-1発明の上記bの構成からみて、甲2-1発明の「切り欠き7」は、基準線が、切り欠き7の両端に位置する角部を結ぶ直線と定義されるとき、偏光板1の上面において、切り欠き7の深部が直線状であり、切り欠き7の深部が基準線に平行であるといえる(当合議体注:このことは、甲2の図1からも確認できる。)。
そうしてみると、甲2-1発明の「切り欠き7」は、本件特許発明1の「切欠き部」の「基準線Lが、前記切欠き部の両端に位置する一対の角部を結び直線と定義されるとき、前記偏光子の上面において、前記切欠き部の深部が直線状であり」との要件を満たす。
d 画像表示用の偏光板
上記a~cを総合すると、甲2-1発明の「偏光板1」は、その文言どおり、本件特許発明1の「偏光板」に相当する。また、甲2-1発明の「液晶表示装置」における「偏光板1」は、本件特許発明の「画像表示装置用の偏光板」に相当する。
(イ)一致点及び相違点
a 一致点
本件特許発明1と甲2-1発明は、次の構成で一致する。
「 フィルム状の偏光子を備え、
凹状の切欠き部が、前記偏光子の端部に形成されており、
基準線Lが、前記切欠き部の両端に位置する一対の角部を結ぶ直線と定義されるとき、
前記偏光子の上面において、前記切欠き部の深部が直線状であり、
前記切欠き部の深部が前記基準線Lに平行である、
画像表示装置用の偏光板。」
b 相違点
本件特許発明1と甲2-1発明は、次の点で、相違するか又は一応相違する。
(相違点5)
本件特許発明1は、「前記基準線Lが、前記偏光子の吸収軸線Aと直交せず」、「前記基準線Lが前記吸収軸線Aとなす角度θが、0°以上30°以下である」のに対して、甲2-1発明は、そのような特定がなされていない点。
(相違点6)
本件特許発明1は、「前記基準線Lに垂直な方向における前記切り欠き部の深さDcが、1mm以上30mm以下であるのに対して、甲2-1発明の基準線に垂直な方向における「切り欠き7」の深さは、明らかでない点。
(相違点7)
本件特許発明1は、「前記基準線Lに垂直な方向における前記偏光子全体の長さDが、100mm以上600mm以下であ」るのに対して、甲2-1発明の基準線に垂直な方向における「偏光板1」の長さは、明らかでない点。
(相違点8)
本件特許発明1は、「Wcは、前記基準線Lに平行な方向における前記切欠き部の幅であり、Wは、前記基準線Lに平行な方向における前記偏光子全体の幅であり、Wc/Wが0.10以上0.45以下であ」るのに対して、甲2-1発明は、そのような特定がなされていない点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点6~8について検討する。
甲2-1発明の「切り欠き7」は、「液晶表示装置の上パネル3の平面上に注入口8を設け、さらに、注入口8を設けたパネル3上の偏光板1に」「設け」たものである。また、偏光板1(偏光子も同様)全体の長さ及び幅は、液晶表示装置の上パネル3の大きさに対応して設定するのが一般的である。そこで、甲2-1発明の「偏光板1」の具体化を試みる当業者が、「基準線に垂直な方向における注入口の深さが1mm以上30mm以下であり、基準線に垂直な方向における液晶表示装置の上パネル3のサイズが100mm以上600mm以下であり、基準線に平行な方向における注入口の幅に対する基準線に平行な方向における液晶表示装置の上パネル3の幅の比が0.10以上0.45以下である」との構成(以下「構成B」という。)を満たす画像表示装置を想定し、その結果、相違点6~8に係る構成を具備する偏光板に到る蓋然性が高いといえるか、又は容易に想到し得るといえるかについて検討する。
液晶ディスプレイパネルの大きさは、スマートフォンに用いられる5.5型(横幅110.5mm×縦幅62.2mm)から大型テレビに用いられる80型(横幅1767.8mm×縦幅995.7mm)まで多種多様なものがある。また、注入口の配置や大きさについても同様に多種多様なものがある。
例えば、特開2000-122076号公報(以下「甲17」という。)の【0014】には、「液晶表示装置のサイズは約210mm(長片側)×約170mm(短片側)で表示部は対角で10.4インチサイズであり・・・液晶注入口2の幅は30mmである。」と記載されていて、甲17の液晶表示装置は構成Bを満たす蓋然性が高い。しかしながら、特開昭62-262025号公報(以下「甲18」という。)の第2頁右下欄第2行~第5行には、「基板に穿設される液晶注入孔の大きさはセル外側開口部は10~700mm2・・・の開口面積を有する」と記載され、仮に外側開口部が円形であるとすると、液晶注入孔の大きさは、直径が3.6mm~15mm(2×√(10/π)~2×√(700/π))となる。また、特開平5-45633号公報(以下「甲19」という。)の【0020】には、「液晶表示素子の一実施例を示す・・・基板20に液晶注入用の1mmφの穴を開け、ギャップ剤24を散布して両基板20、21を貼り合わせて硬化させる。その後、液晶25を注入し、封止剤26にて注入口23を塞ぐ。」と記載され、特開平5-303067号公報(以下「甲20」という。)の【0028】には、「シート基板に、液晶物質を溶解させた重合性モノマーを注入するための直径3mmほどの穴をあけておき」と記載されている。ここで、基準線に垂直な方向における液晶ディスプレイパネルのサイズが100mmである場合、基準線に平行な方向における液晶ディスプレイパネルの幅は一般的なディスプレイパネルの縦横比から、56mm(当合議体注:縦横比を16:9として100×9/16=56と計算した。仮に、4:3なら100×3/4=75となりもっと大きな値となる。)程度である。この液晶ディスプレイパネルの幅を甲18~20に適用すると、基準線に平行な方向における注入口の幅に対する基準線に平行な方向における液晶ディスプレイパネルの幅の比に関して、甲18は、3.6/56~15/56より0.064~0.27、甲19は、1/56=0.018、甲20は、3/56=0.054となり、甲18に記載された液晶表示装置は0.10~0.45の範囲内にあるのも範囲外となるのもあり、甲19に記載された液晶表示素子及び甲20に記載された液晶ディスプレイは、0.10~0.45の範囲外となる。これらの甲号証においても、構成Bとの要件を満たすものも満たさないものもあり、多種多様な液晶ディスプレイパネルがあるといえる。また、他の甲号証及び参考文献にも、構成Bを開示するものはない。
そうしてみると、当業者が、構成Bを備えた液晶表示装置を前提として、甲2-1発明の「偏光板」を具体化する蓋然性が高いとまではいえない。また、甲2-1発明に接した当業者が、構成Aを備えた液晶表示装置に応じた偏光板、すなわち、相違点6~8に係る構成を満たす偏光板に到ることが容易であるといえるだけの十分な根拠を見出すことはできない。
したがって、甲2-1発明において、上記相違点6~8に係る本件特許発明1の構成を満たす蓋然性が高いとはいうことはできない。また、甲2-1発明において、上記相違点6~8に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者といえども、容易に想到し得たということはできない。
ウ 小活
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲2-1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
(3)本件特許発明2及び5~8
本件特許発明2及び5~8は、本件特許発明1の構成をすべて具備するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲2-1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
(4)本件特許発明9
本件特許発明9と甲2-2発明を対比すると、上記(2)ア(イ)bで示した相違点と同様の相違点を有する。そうしてみると、上記(2)イで示したのと同様の理由により、本件特許発明9は、甲2-2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
(5)本件特許発明10及び13
本件特許発明10及び13は、本件特許発明9の構成をすべて具備するものであるから、本件特許発明9と同様に、甲2-2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
(6)甲2を主引例とする新規性・進歩性についてのまとめ
上記(1)~(5)から、本件特許発明1、2、5~10及び13は、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
第6 取消理由通知に記載した取消理由(サポート要件、明確性要件)についての当合議体の判断
1 サポート要件について
本件特許の明細書の【0004】、【0005】及び【0021】には、それぞれ、「偏光子は温度変化に伴って膨張又は収縮する。本発明者らによる研究の結果、温度変化に伴う偏光子の収縮に起因して、切欠き部においてクラック(crack)が形成されることが判明した。特に熱衝撃(急激な温度変化)により、クラックが形成され易い。」、「本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、偏光子の切欠き部において、温度変化に起因するクラックを抑制することができる画像表示装置用の偏光板、当該偏光板を含む画像表示装置、及び画像表示装置用の偏光板の製造方法を提供することを目的とする。」及び「図11及び図12に示される従来の偏光板1Cのように、基準線Lが吸収軸線Aと直交する場合(角度θが90°である場合)・・・切欠き部7Cの深部(奥部)が、基準線Lに略平行な方向に収縮すると、切欠き部7Cの深部においてクラック7cr(当合議体注:クラック7crの方向は基準線Lに直交する方向である。)が形成され易い。」と記載されている。上記【0004】及び【0005】の記載からは、どの方向のクラックを抑制することを主に課題としているのかが明らかでないが、上記【0021】の記載を参酌すると、本件特許発明が解決しようとする課題は、基準線Lに略垂直な方向のクラックを抑制することであって、それ以上でも以下でもない。(当合議体注:技術的にみて、基準線Lに略垂直な方向に加えて、平行な方向のクラックも抑制することが好ましいとはいえるものの、後者が必須の課題であるとまではいえない。)
そこで、本件特許発明1~13が、基準線Lに略垂直な方向のクラックを抑制するという課題を解決できることが当業者に理解できるかについて検討する。本件特許の明細書の【0102】~【0108】には、実施例21~23について、切欠き部の深度が直線状であって角度θが45°である場合にクラックが抑制されていることが記載されているものの、角度θが0°~30°である場合については記載されていない。しかしながら、本件特許の明細書の【0023】の記載に接した当業者であれば、切欠き部の深部が直線状であって角度θが0°~30°の場合も、基準線Lに略垂直な方向のクラックを抑制するという課題を解決できると理解することができる。
そうしてみると、本件特許発明が、発明の詳細な説明に記載したものではないということはできない。
2 明確性要件について
本件特許の明細書の【0016】及び【0019】には、それぞれ、「偏光板が備える偏光子の上面図」、「積層方向(Z方向)から見た偏光子7の切欠き部7Cの形状」と記載されていて、本件特許の図3も参酌すると、本件特許発明1及び9における「上面」とは、積層方向(Z軸方向)から見た偏光子の上面(表面)を意味することは明らかである。
したがって、本件特許発明1及び9は不明確であるということはできない。
本件特許発明1を直接又は間接に引用する本件特許発明2及び5~8並びに本件特許発明9を直接又は間接に引用する本件特許発明10及び13も同様である。
第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての当合議体の判断
1 新規性について
上記第5で述べたように、本件特許発明1、2及び5~8は、甲1-1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできないものである以上、本件特許発明1、2及び5~8は、甲1に記載された発明であるということはできない。
2 実施可能要件について
上記「第6」「1」で示したように、本件特許の明細書の【0102】~【0108】における実施例21~23についての切欠き部の深度が直線状であって角度θが45°である場合にクラックが抑制されていることの記載、本件特許の明細書の【0023】の記載に接した当業者であれば、切欠き部の深部が直線状であって角度θが0°~30°である偏光板であれば、基準線Lに略垂直な方向のクラックを抑制するという本件特許発明1~2及び5~8の機能、特性が奏されると理解することができる。また、本件特許の明細書の【0028】~【0031】の偏光板の製造方法の記載に接した当業者であれば、本件特許発明1~2及び5~8の画像表示装置用の偏光板及びそれを具備する画像表示装置を製造することができる。さらに、当業者ならば、本件特許発明9~10及び13の製造方法により、画像表示装置用の偏光板を生産することができる。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていないということはできない。
第8 異議申立人の主張について
1 特許異議申立人の令和2年7月8日提出の意見書
(1)進歩性について
特許異議申立人は、「本件特許発明1或いは本件特許発明9と甲1発明、甲2発明との対比において、Dcの値は相違点とはなりません。」、「仮にそうではないとしても、切欠き部の深さDcをどの程度の大きさとするかは、・・・設計事項にすぎない」、「基準線Lに垂直な方向における偏光子フィルム全体の長さDを100mm以上600mm以下と規定することは・・・製造時に当業者が適宜決定し得る事項にすぎない」、「訂正事項(B)(W/Wcの値の上限値を「0,45以下」とする限定)について・・・本件特許発明1、9と甲1発明、甲2発明との対比において、訂正事項(B)は相違点とはならないものです。・・・Wc/Wの値を0.10以上0.45以下と設定することは、実施に際し当業者が適宜決定し得る事項にすぎない」と主張している。
しかしながら、上記主張について、いずれも上記第5で示したとおりであるから、特許異議申立人の上記主張を認めることはできない。
(2)サポート要件について
特許異議申立人は、「本件特許発明1、2、5~10及び13について、本件特許の明細書及び図面には、本件特許発明の課題である、温度変化に起因するクラック(基準線Lに垂直な方向のみならず、平行な方向のクラックを含む)を抑制することを解決する手段が実質的に記載されているものとはいえず、本件特許発明1、2、5~10及び13に当該課題を解決するための手段が実質的に反映されているとはいえないものです。」、「具体的な実施例が十分に記載されていないことから、本件特許発明1、2、5~10及び13の範囲に拡張ないし一般化することはできないものであることから、本件特許発明1、2、5~10及び13は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえないものです。」と主張している。
しかしながら、上記主張について、いずれも上記第6「1」で示したとおりであるから、特許異議申立人の上記主張を認めることはできない。
2 特許異議申立人の令和2年10月5日提出の回答書
特許異議申立人は、「甲第1、2号証における、切欠き部深部の深さDc、基準線Lに垂直な方向における偏光子全体の長さD、切欠き部の幅Wc/準線線Lに平行な方向における偏光子全体の幅Wの値が、本件特許発明1、9で規定されるDc、D、Wc/Wの値の範囲内となる蓋然性は高いと思料されますし、仮にそうでないとしても、甲第1、2号証におけるDc、D、Wc/Wの値を、本件特許発明1、9で規定するDc、D、Wc/Wの値の範囲内とすることは当業者が容易に想到し得るものであると思料いたします。」と主張している。
しかしながら、上記主張について、上記第5で示したとおりであるから、特許異議申立人の上記主張を認めることはできない。
第9 まとめ
本件特許1~2、5~10及び13は、取消理由通知書に記載した取消しの理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件特許1~2、5~10及び13を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正請求により、請求項3~4及び11~12は削除されたから、本件特許3~4及び11~12についての特許異議の申立ての対象は存在しないこととなった。したがって、本件特許3~4及び11~12についての特許異議の申立ては、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2019-700774