2019-700617
低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法、低分子量ポリテトラフルオロエチレン及び粉末
- 審判番号
- 2019-700617
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-151655外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年08月05日
- 審決日
- 2019年09月30日
- 公報発行日
- 2019年11月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ダイキン工業株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人 安富国際特許事務所
- 【異議申立人】山本 洋三
- 分類
- P1651.121-Y (C08F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第113条、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 8項目
第1 手続の経緯
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特許第6465175号(請求項の数6。以下,「本件特許」という。)は,平成29年8月4日(優先権主張:平成28年8月4日)を出願日とする特許出願(特願2017-151655号)に係るものであって,平成31年1月18日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は,平成31年2月6日である。)。
その後,令和1年8月5日に,本件特許の請求項1~6に係る特許に対して,特許異議申立人である山本洋三(以下,「申立人」という。)により,特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~6に係る発明は,本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下,それぞれ「本件発明1」等という。また,本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。
【請求項1】
ポリテトラフルオロエチレンに,放射線を照射して,380℃における溶融粘度が1×102~7×105Pa・sである低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末を得る工程(1),前記低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末を粉砕する工程(2),及び,工程(2)で粉砕された低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末を熱処理する工程(3)を含み,
工程(1)の前に,更に,前記ポリテトラフルオロエチレンを,その一次融点以上に加熱することにより成形品を得る工程(4)を含み,前記成形品は,比重が1.0g/cm3以上であることを特徴とする低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法。
【請求項2】
前記熱処理を,100~300℃の温度で行う請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記熱処理を,100~200℃の温度で行う請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記熱処理を,10秒以上,3時間以下の時間行う請求項1,2又は3記載の製造方法。
【請求項5】
前記ポリテトラフルオロエチレンは,標準比重が2.130~2.230である請求項1,2,3又は4記載の製造方法。
【請求項6】
前記ポリテトラフルオロエチレンが粉末である請求項1,2,3,4又は5記載の製造方法。
第3 特許異議の申立ての理由の概要
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本件特許の請求項1~6に係る特許は,下記(1)のとおり,特許法113条2号に該当する。証拠方法として,下記(2)の甲第1号証~甲第3号証(以下,単に「甲1」等という。)を提出する。
(1)申立理由1(進歩性)
本件発明1~6は,甲1に記載された発明並びに甲2及び3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1~6に係る特許は,同法113条2号に該当する。
(2)証拠方法
・甲1 特表2001-513579号公報
・甲2 特表2002-531645号公報
・甲3 特開平2-220389号公報
第4 当審の判断
以下に述べるように,特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
1 申立理由1(進歩性)
(1)甲1に記載された発明
甲1の記載(請求項1,3,7~12,18~30,【0001】~【0010】,【0013】,【0014】,【0017】~【0019】,【0021】~【0037】,実施例1(対照ブレンド1,被験ブレンド2,3),表1~3)によれば,特に,実施例1における被験ブレンド2に着目すると,甲1には,以下の発明が記載されていると認められる。
なお,「PTFE」は,「ポリテトラフルオロエチレン」を意味する(【0001】,【0009】)。
「凝固分散級PTFE(Daikinから提供されるPolyflonF-104)からなるPTFE出発材料を66°F以下の温度で取り扱い,タンブラー内で,PTFE出発材料と,n-テトラデセン(Gulf Oil Chemicals Co.製のGulftene14)からなる不飽和湿潤剤とを混合して,80重量%と20重量%の各成分からなる組成物を得,次に,該組成物を蓋のないアルミニウム製の皿に入れて28MRadの電子ビーム線に暴露して照射バッチ(被験バッチ)を得,次に,1/4hpペイント振盪機(Red Devil Paint Conditioner, モデル番号5400-02)を使って,4オンスのガラス製ジャー内で1.6~2.0mmのガラスビーズ(粉砕媒体)と共に振盪して,10gの照射バッチ(被験バッチ)を40gのポリαオレフィン(PAO)炭化水素油(Albemarle Corp.製のDurasyn162)からなる分散媒とブレンドして,50gの被験ブレンド2を得,トルエン中で24時間抽出して遊離のn-テトラデセンをすべて除去した被験ブレンド2のサンプルを,100℃のオーブン内で4時間乾燥させる,ことからなる,サンプル中に残存するn-テトラデセン量を分光分析法で測定するために用いられる,被験ブレンド2のサンプルの製造方法。」(以下,「甲1発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における組成物に含まれる「凝固分散級PTFE(Daikinから提供されるPolyflonF-104)からなるPTFE出発材料」は,本件発明1における「ポリテトラフルオロエチレン」に相当する。
甲1発明において,上記PTFE出発材料を含む組成物を「蓋のないアルミニウム製の皿に入れて28MRadの電子ビーム線に暴露」することは,本件発明1において,ポリテトラフルオロエチレンに「放射線を照射」することに相当する。そして,甲1発明は,上記のようにPTFE出発材料を含む組成物を電子ビーム線に暴露して「照射バッチ(被験バッチ)を得」るものであるが,甲1の記載(【0009】,【0012】)によれば,それにより照射バッチ(被験バッチ)に含まれるPTFEの平均分子量が低減すると解されるから,甲1発明において「照射バッチ(被験バッチ)を得」ることは,本件発明1において「低分子量ポリテトラフルオロエチレン」「を得る」ことに相当する。
甲1発明は,ペイント振盪機により,照射バッチ(被験バッチ)と分散媒とをブレンドして被験ブレンド2を得るものであるが,甲1の記載(【0034】,表3)によれば,それにより,被験ブレンド2に含まれるPTFEの粒径が小さくなると解されるから,甲1発明において,「1/4hpペイント振盪機(Red Devil Paint Conditioner, モデル番号5400-02)を使って,4オンスのガラス製ジャー内で1.6~2.0mmのガラスビーズ(粉砕媒体)と共に振盪して,10gの照射バッチ(被験バッチ)を40gのポリαオレフィン(PAO)炭化水素油(Albemarle Corp.製のDurasyn162)からなる分散媒とブレンドして,50gの被験ブレンド2を得」ることは,本件発明1において,「前記低分子量ポリテトラフルオロエチレン」「を粉砕する」ことに相当する。
そして,甲1発明において,上記のようにして得られた被験ブレンド2に含まれるPTFEが粉末であることは明らかであり,その被験ブレンド2について,「トルエン中で24時間抽出して遊離のn-テトラデセンをすべて除去した被験ブレンド2のサンプル」としたものについても,そのサンプルに含まれるPTFEは粉末と解されるから,そのサンプルを「100℃のオーブン内で4時間乾燥させる」ことは,本件発明1において,「粉砕された低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末を熱処理する」ことに相当する。
また,甲1発明において,上記のようにして製造された被験ブレンド2のサンプルによれば,上記のとおり,平均分子量が低減したPTFEが得られていることは明らかであるから,甲1発明における「サンプル中に残存するn-テトラデセン量を分光分析法で測定するために用いられる,被験ブレンド2のサンプルの製造方法」は,本件発明1における「低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法」に相当する。
以上によれば,本件発明1と甲1発明とは,
「ポリテトラフルオロエチレンに,放射線を照射して,低分子量ポリテトラフルオロエチレンを得る工程(1),前記低分子量ポリテトラフルオロエチレンを粉砕する工程(2),及び,工程(2)で粉砕された低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末を熱処理する工程(3)を含む,低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法。」
の点で一致し,以下の点で相違する。
・相違点1
本件発明1では,「工程(1)の前に,更に,前記ポリテトラフルオロエチレンを,その一次融点以上に加熱することにより成形品を得る工程(4)を含み,前記成形品は,比重が1.0g/cm3以上である」のに対して,甲1発明では,電子ビーム線に暴露する前に,PTFE出発材料と不飽和湿潤剤とを混合して組成物とするものの,PTFE出発材料を,「一次融点以上に加熱することにより」「比重が1.0g/cm3以上である」「成形品」とするものではない点。
・相違点2
本件発明1では,放射線を照射して得られる低分子量ポリテトラフルオロエチレンが,「380℃における溶融粘度が1×102~7×105Pa・sである」「粉末」であり,その低分子量ポリテトラフルオロエチレン「粉末」を粉砕するのに対して,甲1発明では,電子ビーム線に暴露して得られる照射バッチ(被験バッチ)に含まれるPTFEが,「380℃における溶融粘度が1×102~7×105Pa・sである」「粉末」であるかどうか不明であり,そのPTFE「粉末」を粉砕するのかどうか不明である点。
イ 相違点1の検討
(ア)甲1発明は,PTFE出発材料を66°F以下の温度で取り扱い,PTFE出発材料と湿潤剤とを混合して組成物とし,その組成物を電子ビーム線に暴露するものである。
甲1には,PTFE出発材料について,50μmより大きい初期サイズの凝集物を含むこと(請求項7),「凝固分散級PTFE」としても知られている乳化重合により製造されたPTFEのほか,ペースト型PTFE材料(未使用または使用済)を使用できること(【0009】,【0012】,【0013】)は記載されているものの,電子ビーム線に暴露する前に,PTFE出発材料を,「一次融点以上に加熱することにより」「比重が1.0g/cm3以上である」「成形品」とすることについては,何ら記載されていない。また,甲1発明のように,PTFE出発材料と湿潤剤とを混合して組成物とし,その組成物を電子ビーム線に暴露し,さらに分散媒とブレンドしてPTFE分散液(被験ブレンド)を製造する際に,電子ビーム線に暴露する前に,PTFE出発材料を,「一次融点以上に加熱することにより」「比重が1.0g/cm3以上である」「成形品」とすることが,本件特許の優先日当時の技術常識であるともいえない。
以上によれば,甲1発明において,電子ビーム線に暴露する前に,PTFE出発材料を,「一次融点以上に加熱することにより」「比重が1.0g/cm3以上である」「成形品」とすることが動機付けられるとはいえない。
(イ)甲2には,PTFEの分子量を減少させ,微粉に粉砕して塗料,インクの乾燥潤滑剤として使用可能にするためのPTFEの照射,粉砕方法について記載されており(【0001】),具体的には,PTFEを照射,粉砕するための連続的処理方法であって,PTFEを処理容器に供給し,そこでPTFEに対し放射線照射と粉砕を行い,空気に浮揚させた処理済みPTFE粒子を収集のため容器から取出すことについて記載されている(請求項7,【0017】~【0019】)。甲2には,放射線照射と粉砕を行う処理容器に供給されるPTFEについて,スクラップテープ,チューブ,切れ端,円錐状物などの材料を粒状にしたものが望ましいことが記載されており(【0010】),上記のうち,少なくとも「チューブ」は,本件発明1における「成形品」に相当するといえる。
そして,甲3には,ヒータを構成する電熱線を絶縁被覆するPTFEチューブとして,従来の連続ペースト押出し焼成PTFEチューブを融点以上に再焼成し,冷却速度を調節する処理によって得られる,比重が2.16~2.20に調整されたものが記載されていることから(特許請求の範囲,2頁右上欄3~16行),PTFEチューブとして,本件発明1における「一次融点以上に加熱することにより」「比重が1.0g/cm3以上である」「成形品」に相当するものが,本件特許の優先日前に知られていたとはいえる。
しかしながら,甲1発明は,上記のとおり,PTFE出発材料と湿潤剤とを混合して組成物とし,その組成物を電子ビーム線に暴露し,さらに分散媒とブレンドしてPTFE分散液(被験ブレンド)を製造するものであって,単にPTFEに対し放射線照射と粉砕を行うにすぎない甲2におけるPTFEの処理方法とは,その内容が大きく異なるものであるから,そもそも,このような甲2に記載された事項を甲1発明に適用することが動機付けられるとはいえない。また,甲3には,電熱線をPTFEチューブで絶縁被覆して構成するヒータについて記載されるのみであるから,甲2の場合と同様,甲3に記載された事項を甲1発明に適用することが動機付けられるとはいえない。すなわち,甲1発明において,甲2に記載された事項を適用して,電子ビーム線に暴露する前に,PTFE出発材料を「成形品」とすること,さらには,甲3に記載された事項も考慮して,PTFE出発材料を,「一次融点以上に加熱することにより」「比重が1.0g/cm3以上である」「成形品」とすることが動機付けられるとはいえない。
また,甲1には,上記(ア)のとおり,PTFE出発材料について,「凝固分散級PTFE」としても知られている乳化重合により製造されたPTFEのほか,ペースト型PTFE材料(未使用または使用済)を使用できることは記載されているものの,これらとは異なり,甲2におけるチューブのような「成形品」を使用できることについては,何ら記載されていないから,この点からも,甲1発明において,電子ビーム線に暴露する前に,PTFE出発材料を,「一次融点以上に加熱することにより」「比重が1.0g/cm3以上である」「成形品」とすることが動機付けられるとはいえない。
(ウ)そして,本件明細書の記載(【0002】~【0009】,【0021】,【0024】,【0029】,【0037】,【0039】,【0040】,【0045】,【0046】,【0049】,【0106】~【0141】,実施例1~11,比較例1~13,表1~4)によれば,本件発明1は,「ポリテトラフルオロエチレンに,放射線を照射して,380℃における溶融粘度が1×102~7×105Pa・sである低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末を得る工程(1),前記低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末を粉砕する工程(2)」を含むとともに,「工程(1)の前に,更に,前記ポリテトラフルオロエチレンを,その一次融点以上に加熱することにより成形品を得る工程(4)を含み,前記成形品は,比重が1.0g/cm3以上である」,低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法において,さらに,「工程(2)で粉砕された低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末を熱処理する工程(3)」を備えたものとすることによって,放射線照射により生成してしまった炭素数が8以上14以下のパーフルオロカルボン酸及びその塩の大半を容易に低分子量ポリテトラフルオロエチレンから除去することができるという効果を奏するものである。
これに対して,甲1発明は,「トルエン中で24時間抽出して遊離のn-テトラデセンをすべて除去した被験ブレンド2のサンプルを,100℃のオーブン内で4時間乾燥させる」ものであるが,この乾燥は,サンプル中に残存するn-テトラデセン量を分光分析法で測定するために行われる,サンプルに対する前処理にすぎない(甲1【0037】)。甲1~3のいずれにも,従来の条件で放射線を照射すると,上記パーフルオロカルボン酸又はその塩が生成すること,また,その後の熱処理により,上記パーフルオロカルボン酸及びその塩を除去できることについて,何ら記載されておらず,また,これらのことが本件特許の優先日当時の技術常識であるともいえないから,本件発明1の上記効果は,当業者が予測することができない格別顕著なものといえる。
(エ)そうすると,甲1発明において,電子ビーム線に暴露する前に,組成物に含まれるPTFE出発材料を,「一次融点以上に加熱することにより」「比重が1.0g/cm3以上である」「成形品」とすることが,当業者が容易に想到することができたということはできない。
ウ 小括
したがって,相違点2について検討するまでもなく,本件発明1は,甲1に記載された発明並びに甲2及び3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明2~6について
本件発明2~6は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが,上記(2)で述べたとおり,本件発明1が,甲1に記載された発明並びに甲2及び3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明2~6についても同様に,甲1に記載された発明並びに甲2及び3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)まとめ
以上のとおり,本件発明1~6は,いずれも,甲1に記載された発明並びに甲2及び3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって,申立理由1(進歩性)によっては,本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおり,特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
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