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特許異議申立

2019-700555

電磁波吸収体

審判番号
2019-700555
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-241731
登録番号
特許第6453295号(P6453295)
請求日
2019年07月16日
審決日
2020年11月24日
公報発行日
2021年04月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】日東電工株式会社
  • 【権利者代理人】西藤 征彦
  • 【権利者代理人】井▲崎▼ 愛佳
  • 【権利者代理人】西藤 優子
  • 【異議申立人】特許業務法人 虎ノ門知的財産事務所
審判長/審判官
  • 審判長 國分 直樹
  • 審判官 須原 宏光
  • 審判官 山田 正文
分類
P1651.121-YAA(H05K) / P1651.113-YAA(H05K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6453295号発明「電磁波吸収体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6453295号の明細書、特許請求の範囲及び図面を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕、10について訂正することを認める。 特許第6453295号の請求項1、5ないし10に係る特許を維持する。 特許第6453295号の請求項2ないし4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6453295号の請求項1ないし9に係る発明についての出願は、平成28年12月14日に出願され、平成30年12月21日にその特許権が設定登録され、平成31年1月16日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立での経緯は、次のとおりである。 令和 1年 7月16日:特許異議申立人特許業務法人虎ノ門知的財産事務所による請求項1-9に係る特許に対する特許異議の申立て 令和 1年 9月30日付け:取消理由通知書 令和 1年12月 6日  :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和 2年 1月31日付け:訂正拒絶理由通知書 令和 2年 3月 6日  :特許権者による意見書の提出 令和 2年 4月 8日  :特許権者による上申書の提出 令和 2年 5月26日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和 2年 7月27日  :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和1年12月6日の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取下げたものとみなす。 そして、令和2年7月27日の訂正請求に対して、特許異議申立人に意見を述べる機会を与えたが、特許異議申立人から意見書の提出はなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和2年7月27日の訂正請求の趣旨は、特許第6453295号の明細書、特許請求の範囲および図面を、訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲および図面のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「誘電体層と、上記誘電体層の一方の面に設けられる抵抗層と、上記誘電体層の他方の面に設けられ上記抵抗層より低いシート抵抗を有する導電層とを有する電磁波吸収体であって、」とあるのを「誘電体層と、上記誘電体層の一方の面に設けられる抵抗層と、上記誘電体層の他方の面に設けられ上記抵抗層より低いシート抵抗を有する導電層とを有する電磁波吸収体であって、上記誘電体層が熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体からなり、上記誘電体層の上記一方の面および上記他方の面のいずれもが、粘着剤を介さずに上記抵抗層または上記導電層に貼り合せられており、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項5~9も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4のいずれか一項に記載の電磁波吸収体」とあるのを「請求項1記載の電磁波吸収体」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~5のいずれか一項に記載の電磁波吸収体」とあるのを「請求項1または5記載の電磁波吸収体」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~6のいずれか一項に記載の電磁波吸収体」とあるのを「請求項1、5、6のいずれか一項に記載の電磁波吸収体」に訂正する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8に「請求項1~6のいずれか一項に記載の電磁波吸収体」とあるのを「請求項1、5、6のいずれか一項に記載の電磁波吸収体」に訂正する。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9に「請求項1~8のいずれか一項に記載の電磁波吸収体」とあるのを「請求項1、5~8のいずれか一項に記載の電磁波吸収体」に訂正する。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項3に「上記誘電体層が、発泡体である請求項1または2記載の電磁波吸収体」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「誘電体層と、上記誘電体層の一方の面に設けられる抵抗層と、上記誘電体層の他方の面に設けられ上記抵抗層より低いシート抵抗を有する導電層とを有する電磁波吸収体であって、上記誘電体層が発泡体であり、上記誘電体層の比誘電率が1~5.19の範囲にあり、上記誘電体層の厚みが100~1000μmの範囲にあり、60~90GHzの周波数帯域において、電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅が5GHz以上であることを特徴とする電磁波吸収体。」として、新たに請求項10とする。 (11)訂正事項11 明細書の段落【0059】、【0060】に記載された「熱可塑アクリル系エラストマー」を「熱可塑性アクリル系エラストマー」に訂正する。 (12)訂正事項12 明細書の段落【0050】-【0060】、【0062】-【0064】に記載された「実施例4」を「参考例1」に、「実施例5」を「実施例4」に、「実施例6」を「実施例5」に、「実施例7」を「参考例2」に、「実施例8」を「参考例3」に、「実施例9」を「実施例6」に、「実施例10」を「実施例7」に訂正する。 (13)訂正事項13 明細書の段落【0015】に記載された「【図4】本発明の他の実施の形態」を「【図4】本発明の参考の形態」に、「【図6】(a)~(f)はそれぞれ実施例1~6の反射吸収量」を「【図6】(a)~(f)はそれぞれ実施例1~5および参考例1の反射吸収量」に、「【図7】(a)~(f)はそれぞれ実施例7~10および比較例1,2の反射吸収量」を「【図7】(a)~(f)はそれぞれ実施例6,7、参考例2,3および比較例1,2の反射吸収量」に訂正する。 (14)訂正事項14 図6の(d)の「実施例4」を「参考例1」に、(e)の「実施例5」を「実施例4」に、(f)の「実施例6」を「実施例5」に訂正するとともに、図7の(a)の「実施例7」を「参考例2」に、(b)の「実施例8」を「参考例3」に、(c)の「実施例9」を「実施例6」に、(d)の「実施例10」を「実施例7」に訂正する。 (15)別の訂正単位とする求め 特許権者は、訂正後の請求項10については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の他の請求項とは別途訂正することを求めている。 また、訂正後の請求項3については、訂正後の請求項10についての訂正が認められ、かつ、訂正後の請求項1~9について訂正が認められない場合には、一群の他の請求項とは別途訂正することを求めている。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)一群の請求項 本件訂正前の請求項1~9について、請求項2~9は訂正する請求項1を引用しているものであるから、請求項1~9は、特許法第120条の5第4項に規定する関係を有する一群の請求項である。 (2)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「誘電体層」について、「熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体からなり」と限定し、さらに「電磁波吸収体」について、「上記誘電体層の上記一方の面および上記他方の面のいずれもが、粘着剤を介さずに上記抵抗層または上記導電層に貼り合せられており」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正前の明細書の段落【0059】及び【0060】の実施例9、10には「誘電体層Bをクラレ社製 熱可塑アクリル系エラストマー」とすること、同【0051】の実施例1には「三井デュポン社製EVA樹脂(エバフレックスEV250、比誘電率2.45)を120℃でプレス成形し、560μm厚シートに成形して誘電体層Bを作製した。」と記載されていることから、訂正事項1のうち「上記誘電体層が熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体からなり」は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」)に記載されている事項である。 また、同【0055】に実施例5として「誘電体層Bを日東電工社製のオレフィン系発泡体SCF100(比誘電率1.07)を厚み822μmにスライス成形したものに変更し、抵抗層Aおよび導電層Cをそれぞれ厚み30μmに形成したアクリル系粘着剤を介して誘電体層Bに貼り合せた以外は、実施例1と同様にして目的とする電磁波吸収体を得た。」と記載されていることから、 同【0051】に「この誘電体層Bの一方の面に、導電層Cとして表面抵抗が20Ω/□になるようにITOがスパッタ形成された38μm厚のPETフィルム(樹脂層D1)を、導電層Cを誘電体層Bに対峙するように貼り合せた。そして、上記誘電体層Bのもう一方の面に、抵抗層Aとして表面抵抗が380Ω/□になるようにITOがスパッタ形成された38μm厚のPETフィルム(樹脂層D2)を抵抗層Aが誘電体層Bに対峙するように貼り合せて、目的とする電磁波吸収体を得た。」と記載された実施例1、及び同【0059】には「誘電体層Bをクラレ社製 熱可塑アクリル系エラストマー(クラリティー2330、比誘電率2.55)を150℃でプレス成形し、厚み561μmのシートに成形したものに変更した以外は、実施例1と同様にして目的とする電磁波吸収体を得た。」と記載された実施例9の電磁波吸収体は、誘電体層の一方の面および他方の面のいずれもが、粘着剤を介さずに抵抗層または導電層に貼り合せられているとえる。 したがって、訂正事項1のうち「上記誘電体層の上記一方の面および上記他方の面のいずれもが、粘着剤を介さずに上記抵抗層または上記導電層に貼り合せられており」は、本件特許明細書等に記載されている事項である。 したがって、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるといえ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 そして、訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (3)訂正事項2ないし4について 訂正事項2ないし4は、請求項2ないし4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (4)訂正事項5について 訂正事項5は、訂正前の請求項5が請求項1~4のいずれか一項の記載を引用するところ、請求項2~4を削除する訂正に伴って削除した請求項を引用しないように訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (5)訂正事項6について 訂正事項6は、訂正前の請求項6が請求項1~5のいずれか一項の記載を引用するところ、請求項2~4を削除する訂正に伴って削除した請求項を引用しないように訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (6)訂正事項7について 訂正事項7は、訂正前の請求項7が請求項1~6のいずれか一項の記載を引用するところ、請求項2~4を削除する訂正に伴って削除した請求項を引用しないように訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (7)訂正事項8について 訂正事項8は、訂正前の請求項8が請求項1~6のいずれか一項の記載を引用するところ、請求項2~4を削除する訂正に伴って削除した請求項を引用しないように訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (8)訂正事項9について 訂正事項9は、訂正前の請求項9が請求項1~8のいずれか一項の記載を引用するところ、請求項2~4を削除する訂正に伴って削除した請求項を引用しないように訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (9)訂正事項10について 訂正事項10は、訂正前の請求項3が請求項1または2のいずれか一項の記載を引用するところ、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めて請求項10とする訂正であって、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (10)訂正事項11について 訂正事項11は、訂正前の明細書の段落【0059】及び【0060】に記載された「熱可塑アクリル系エラストマー」を、「熱可塑性アクリル系エラストマー」と明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 また、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するところもない。 したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。 (11)訂正事項12ないし14について 訂正事項12ないし14は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲と明細書及び図面の記載との整合を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 また、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するところもない。 したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。 3 小活 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。 よって、明細書、特許請求の範囲及び図面を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕、10について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1ないし10に係る発明(以下「本件発明1ないし10」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 誘電体層と、上記誘電体層の一方の面に設けられる抵抗層と、上記誘電体層の他方の面に設けられ上記抵抗層より低いシート抵抗を有する導電層とを有する電磁波吸収体であって、上記誘電体層が熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体からなり、上記誘電体層の上記一方の面および上記他方の面のいずれもが、粘着剤を介さずに上記抵抗層または上記導電層に貼り合せられており、上記誘電体層の比誘電率が1~5.19の範囲にあり、上記誘電体層の厚みが100~1000μmの範囲にあり、60~90GHzの周波数帯域において、電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅が5GHz以上であることを特徴とする電磁波吸収体。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 上記抵抗層が、酸化インジウムスズを含有する請求項1記載の電磁波吸収体。 【請求項6】 上記抵抗層のシート抵抗が、320~500Ω/□の範囲に設定された請求項1または5記載の電磁波吸収体。 【請求項7】 上記導電層が、酸化インジウムスズを含有する請求項1、5、6のいずれか一項に記載の電磁波吸収体。 【請求項8】 上記導電層が、アルミニウムおよびその合金の少なくとも一方を含有する請求項1、5、6のいずれか一項に記載の電磁波吸収体。 【請求項9】 さらに粘着層を備え、上記粘着層が上記導電層の外側に設けられた請求項1、5~8のいずれか一項に記載の電磁波吸収体。 【請求項10】 誘電体層と、上記誘電体層の一方の面に設けられる抵抗層と、上記誘電体層の他方の面に設けられ上記抵抗層より低いシート抵抗を有する導電層とを有する電磁波吸収体であって、上記誘電体層が発泡体であり、上記誘電体層の比誘電率が1~5.19の範囲にあり、上記誘電体層の厚みが100~1000μmの範囲にあり、60~90GHzの周波数帯域において、電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅が5GHz以上であることを特徴とする電磁波吸収体。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 訂正前の請求項1、2、4ないし9に係る特許に対して、当審が令和2年5月26日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 1(新規性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 2(進歩性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 ●理由1(新規性)について ・請求項 1、2、4、6 ・刊行物 甲第1-3号証 ・請求項 5 ・刊行物 甲第1、2号証 ・請求項 8 ・刊行物 甲第2、3号証 ・請求項 9 ・刊行物 甲第2号証 ●理由2(進歩性)について ・請求項 7 ・刊行物 甲第1-3号証 刊行物一覧 甲第1号証:特開2005-85966号公報 甲第2号証:特開平8-307088号公報 甲第3号証:特開2000-59066号公報 甲第5号証:プラスチック・機能性高分子材料事典、「プラスチック・機能性高分子材料事典」編集委員会編、産業調査会事典出版センター、初版第1刷、2004年2月20日、pp.81、pp.251 2 当審の判断 (1)刊行物の記載事項・引用発明 ア 甲第1号証には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。以下同様)。 「【請求項1】 少なくとも、以下の(I)層~(IV)層をこの順に有する積層体からなり、JIS K 7105で規定される当該積層体の積層方向の透光率が60%以上である、透明電波吸収体。 (I)表面抵抗率が9~50Ω/□である層、 (II)厚みが0.13~0.26mmのポリカーボネート樹脂、 (III)表面抵抗率が250~450Ω/□である層、 (IV)厚みが0.13~0.26mmのポリカーボネート樹脂。」 「【請求項4】 上記(I)層と(II)層は粘着剤層を介して積層しており、上記(II)層と(III)層は粘着剤層およびポリエチレンテレフタレートフィルムを介して積層しており、上記(III)層と(IV)層は粘着剤層を介して積層している、請求項1~3のいずれかに記載の透明電波吸収体。 【請求項5】 道路に設置される表示板の表示面に貼り付けられ、周波数が76GHzの電波の吸収のために用いられる、請求項1~4のいずれかに記載の透明電波吸収体。」 「【0008】 表面抵抗率はJIS K 7194に規定される単位面積あたりの抵抗であって、Ω/□なる単位で表現される。層の表面抵抗率は前記JISに基いて測定することができる。本発明ではロレスタEP(ダイアインスツルメンツ社製)を用いて、室温で測定する。一般に層(特に薄膜)の表面抵抗率を上げるには、例えば層(薄膜)を形成する際のスパッタリングの時間、雰囲気等を調整して膜厚を薄くすればよく、逆に、膜厚を厚くすれば表面抵抗率を下げることができる。表面抵抗率により規定されるのは(I)層と(III)層である。 【0009】 (I)層の表面抵抗率は9~50Ω/□である。表面抵抗率が9Ω/□未満では透光率が低下し、表面抵抗率が50Ω/□を超えると透過減衰量が小さくなる。(I)層は、例えば銀等の薄膜により構成することができる。 (III)層の表面抵抗率は250~450Ω/□であり、好ましくは330~400Ω/□である。表面抵抗率が250~450Ω/□の範囲外であると、製造される電波吸収体の反射減衰量が15dB以上になり難い。反射減衰量が15dBであることは、入射電波の約97%を吸収することに相当し、一般的な電波吸収体として充分なる効果を奏しているといえる。なお、反射減衰量が20dBであることは、入射電波の約99%を吸収することに相当する。(III)層は、例えば酸化インジウム錫(以下、ITOともいう)等の薄膜により構成することができる。」 「【0011】 (第1態様) この態様では、(II)層および(IV)層はポリカーボネート樹脂(以下PCともいう)からなり、その厚みは0.13~0.26mmである。」 「【0014】 (第2態様) この態様では、(II)層および(IV)層はポリメタクリル酸メチル樹脂(以下PMMAともいう)からなり、その厚みは0.13~0.27mmである。」 「【0016】 上記第1、第2態様以外の材料系として、(II)層および(IV)層にポリエチレンテレフタレート(以下、PETともいう)を適用することもできる。」 「【0028】 [実施例1] PETフィルム15a(複素比誘電率3.12-j0.03、厚さ0.050mm)を基材として用い、その片面にスパッタリングにより、銀の薄膜11(表面抵抗率50Ω/□)を形成した。それとは別のPETフィルム15b(複素比誘電率3.12-j0.03、厚さ0.125mm)の片面にスパッタリングにより、ITOの薄膜13(表面抵抗率450Ω/□)を形成した。シート状のPC12(複素比誘電率2.73-j0.014、厚さ0.13mm)の両面にアクリル系粘着剤16(複素比誘電率2.60-j0.014、厚さ70μm)を塗布して、その片面に上記銀の薄膜11を、もう一方の面に上記ITOの薄膜13の基材としてのPETフィルム15bを、それぞれ貼り合わせて積層体を得た。これとは別に、シート状のPC14(複素比誘電率2.73-j0.014、厚さ0.13mm)の片面に上記と同じ粘着剤を厚さ70μmに塗布した。この粘着剤を塗布した面と、上記積層体を構成するITOの薄膜13とを貼り合わせて、透明電波吸収体を得た。得られた透明電波吸収体を模式的に表現すると、先に説明した図1のようになる。図1の符号15aの層から順に以下のように積層されている(以下の各実施例、比較例の記載における各行頭の数字は図1の符号を示す)。 15a PET(複素比誘電率3.12-j0.03、厚さ0.050mm、)、 11  銀(表面抵抗率50Ω/□)、 16  アクリル系粘着剤、 12  PC(複素比誘電率2.73-j0.014、厚さ0.13mm) 16  アクリル系粘着剤、 15b PET(複素比誘電率3.12-j0.03、厚さ0.125mm)、 13  ITO(表面抵抗率450Ω/□)、 16  アクリル系粘着剤、 14  PC(複素比誘電率2.73-j0.014、厚さ0.13mm)。」 「【0030】 [実施例3] 符号12および14で表されるシート状のPCの厚さと、銀の薄膜11とITOの薄膜13の表面抵抗率を変更して、実施例1と同様の操作により、以下の構成の透明電波吸収体を得た。 15a PET(複素比誘電率3.12-j0.03、厚さ0.050mm、)、 11  銀(表面抵抗率9Ω/□)、 16  アクリル系粘着剤、 12  PC(複素比誘電率2.73-j0.014、厚さ0.18mm) 16  アクリル系粘着剤、 15b PET(複素比誘電率3.12-j0.03、厚さ0.125mm)、 13  ITO(表面抵抗率330Ω/□)、 16  アクリル系粘着剤、 14  PC(複素比誘電率2.73-j0.014、厚さ0.18mm)。」 「【0039】 (電波吸収特性) 得られた電波吸収体に対し、周波数76GHzの電波を入射角0~20°の範囲から入射させた。そのときの反射減衰量が20dB以上であれば◎と評価し、15dB以上20dB未満であれば○と評価し、15dB未満であれば×と評価した。○と評価されたのは、実施例1(15.2dB)、実施例2(15.3dB)、実施例4(15.7dB)および実施例5(15.4dB)の各電波吸収体であった(カッコ内の数値は反射減衰量、以下同じ)。◎と評価されたのは、実施例3(32.6dB)および実施例6(33.3dB)の各電波吸収体であった。比較例の各電波吸収体は×と評価された。すなわち、各電波吸収体は、比較例1(14.7dB)、比較例2(14.6dB)、比較例3(14.1dB)および比較例4(14.7dB)なる反射減衰量であった。」 ここで、実施例3に着目すると、段落【0009】、【0011】、【0016】、【0028】、【0030】及び【0039】の記載より、甲第1号証には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。 「ポリエチレンテレフタレートフィルム15aの基材と、 銀の薄膜11と、 アクリル系粘着剤16と、 シート状のポリカーボネート樹脂12と、 アクリル系粘着剤16と、 ポリエチレンテレフタレートフィルムフィルム15bと、 酸化インジウム錫の薄膜13と、 アクリル系粘着剤16と、 シート状のポリカーボネート樹脂14とが順に積層され、 シート状のポリカーボネート樹脂12の厚さが0.18mmであり、 周波数76GHzの電波を入射角0~20°の範囲から入射させたときの反射減衰量が20dB以上である透明電波吸収体。」 イ 甲第2号証には、次の事項が記載されている。 「【請求項1】 可視光線を透過する約377Ω/□の抵抗膜と、 可視光線が少なくとも一部透過すると共に、約λ/(4√εr)(λ:動作中心周波数の自由空間における波長、εr:比誘電率)に相当する厚みを有する誘電体と、 可視光線および電波を反射する電波反射膜と、 を順次重畳してなることを特徴とする電波吸収体。」 「【請求項3】 前記誘電体は、可視光線が少なくとも一部透過すると共に、約λ/4(λ:動作中心周波数の自由空間における波長)に相当する厚みを有する少なくとも一つのスペーサからなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電波吸収体。」 「【0003】 【従来の技術】従来の電波吸収体は、フェライト粉末をゴムに練り込んだゴム/フェライトシート、カーボン粉末をゴムに練り込んだゴム/カーボンシート、焼結フェライトタイル、導電性繊維マット、電波反射板から約377Ω/□の抵抗膜をλ/4(λ:動作中心周波数の自由空間における波長)離れた位置に固定するためのスペーサからなるλ/4型等がある。図10は従来のλ/4型電波吸収体を説明するための図である。図10において、抵抗膜101、スペーサ102、電波反射膜103が順次重畳されて電波吸収体を構成している。抵抗膜101は、たとえば、導電性繊維からなり、約377Ω/□の抵抗を有するものである。スペーサ102は、抵抗膜101と電波反射膜103とをλ/4(λ:動作中心周波数の自由空間における波長)だけ離した位置に固定するためのものである。また、従来他の電波吸収体の例として、たとえば、スチロール樹脂の発泡体、ウレタン樹脂の発泡体等がある。電波反射膜103は、たとえば、アルミニウム等電波を反射する金属箔が使用されている。 【0004】従来の抵抗膜101には、導電性繊維を格子状に形成し、その格子間隔を変えて入射する電波に対する吸収特性を向上させたものがある。また、従来のスペーサ102には、ポリスチロール等の発泡プラスチック等から構成されているものがあり、電波吸収体の軽量化を図っている。さらに、抵抗膜101と電波反射膜103との間を空間にして、その距離を任意に変えることによって、各種電波の周波数に対応できるものがある。」 「【0041】前記抵抗膜1は、後述する抵抗膜形成基材(透明膜)の片面に全面または格子状に金属酸化物(InO2 -SnO2 、SnO2 -Sb、SnO2 -F、Cd2SnO4 、ZnO等)薄膜を、たとえば、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングによって被覆される。同じく、抵抗膜1は、抵抗膜形成基材(透明膜)の片面に全面または格子状に、前記金属酸化物およびSnO2 の微粉末、カーボン微粉末等とバインダーよりなる組成物を塗布したものがある。さらに、抵抗膜1には、導電性繊維である炭素繊維、金属繊維、非導性繊維の表面に導電性の金属を蒸着、または無電解メッキ等を施した繊維、カーボンを塗布した繊維等からなる織布、炭化珪素や炭素繊維と合成繊維とからなる織布、導電性高分子(FeCl3 とポリビニルアルコールの溶解液を塗布乾燥後に、ピロール蒸気を反応させて得られるポリピロール膜等)が挙げられる。」 「【0043】・・・スペーサ2の材質は、アクリル樹脂、カーボネイト樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、アミド樹脂、エステル樹脂、これらの樹脂と共重合できる樹脂との共重合体樹脂等、およびガラス類が使用出来る。」 「【0044】電波反射膜3は、一方の面より電波吸収体の内部が透視できるものと、電波吸収体を介して一方から他方、または他方から一方が透視できるものとに分けられる。一方の面より電波吸収体の内部が透視できる電波反射膜3には、銅系、アルミニウム系、鉄系等からなる金属箔、同金属板、同金属ネット、あるいはプラスチック、または板ガラスの表面に、たとえば、真空蒸着、無電解メッキ、スパッタリング、イオンプレーティング法等によって形成したアルミニウム、ニッケル、銀、金、パラジウム等からなる導電性金属膜を被覆したもの、あるいはフィルムまたは、板、金属化繊維織布の表面に無電解メッキ法で被覆したニッケル、銅等がある。」 「【0055】図7は本発明の実施例で、電波反射膜形成基材の背面に離型紙付き粘着剤層を施した電波吸収体を説明するための図である。図7において、電波吸収体は、電波反射膜形成基材13のスペーサ2側に電波反射膜14が形成されていると共に、スペーサ2側と反対側に、粘着剤層19を介して離型紙20が設けられている。上記電波吸収体は、建物の窓、壁、天井、ドア、部屋の間仕切り、あるいは事務所内に配置されているロッカー等の什器の表面に貼付ける場合、離型紙20を剥がし、上記表面に形成されている粘着剤層19によって貼付けられる。したがって、上記離型紙の付いた電波吸収体は、施工が簡単かつ迅速に取り付けられる。」 「【0058】次に、具体的な材料および周波数を使用した場合の実施例を説明する。 〔実施例-1〕〔実施例-1〕の電波吸収体は、動作中心周波数60GHzを目標に、一方の面からスペーサの内部を透視できるもので、下記の構成で作製される。 (1)〔抵抗膜基材〕 ポリエチレンテレフタレート125μm厚を使用する。 (2)〔抵抗膜〕 抵抗膜基材の内面に酸化インジウム錫を蒸着した表面抵抗値377±50Ω/□のものを使用する。 (3)〔スペーサ〕 ポリメチルメタアクリレート750μm厚を使用する。 (4)〔電波反射膜〕 アルミニウム箔20μmを使用する(内面に着色模様を印刷) (2)と(3)、(3)と(4)の貼合せは、アクリル系接着剤を使用して接着する。」 「【0059】〔実施例-2〕〔実施例-2〕の電波吸収体は、動作中心周波数18GHzを目標に、一方の面から抵抗膜、スペーサ、および電波反射膜を介して、他方を、またはその逆方向をそれぞれ透視できるもので、下記の構成で作製する。 (1)〔抵抗膜基材〕 ポリエチレンテレフタレート125μm厚を使用する。 (2)〔抵抗膜〕 抵抗膜基材の内面に酸化インジウム錫を蒸着した表面抵抗値377±50Ω/□のものを使用する。 (3)〔スペーサ〕 ポリカーボネイト2.4mm厚を使用する。 (4)〔電波反射膜基材〕 ポリエチレンテレフタレート125μm厚を使用する。 (5)〔電波反射膜〕 電波反射膜基材の内面に、スルホン酸をドーパントとして含むポリピロール層を形成したもの(導電率230S・cm-1)を使用する。 (2)と(3)、(3)と(5)の貼合せは、アクリル系接着剤を使用して接着する。 【0060】〔実施例-3〕〔実施例-3〕の電波吸収体は、動作中心周波数2.4GHzを目標に一方の面から抵抗膜、スペーサ、および電波反射膜を介して、他方を、またはその逆方向をそれぞれ透視できるもので、下記の構成で作製する。 (1)〔抵抗膜基材〕 塩化ビニル樹脂500μm厚を使用する。 (2)〔抵抗膜〕 酸化インジウム錫/アクリル系樹脂塗布型処理剤(固形分中の酸化インジウム錫70重量%)にて、抵抗膜基材の内面に5.5mm間隔で格子状にスクリーン印刷法で塗布(塗布厚5μm×帯状中500μm)した表面抵抗値377±70Ω/□を使用する。 (3)〔スペーサ〕 塩化ビニル樹脂製中空板、肉厚600μm、中仕切・横方向200mm間隔、板厚30mmを使用する。 (4)〔電波反射膜〕 ポリエステルメッシュ織布に銅とニッケルを無電解メッキ後、カーボン/樹脂にて表面処理した金属化繊維織布(メッシュ密度250、表面抵抗値0.2Ω/□)を使用する。 (5)〔電波反射膜保護層〕 塩化ビニル樹脂150μm厚を使用する。 (1)、(2)と(3)、(3)と(4)、(4)と(5)の貼合せは、酢酸ビニル系接着剤にて接着する。」 「【0062】 〔比較例-1〕 従来公知のλ/4型電波吸収体は、動作中心周波数2.4GHzを目標にするもので、下記の構成で作製する。 (1)〔抵抗膜〕 ポリエステル系繊維の表面を第4級アンモニウム塩基を有する(銅イオン捕捉基)表面処理剤を付着結合させた後、その捕捉基を介して硫化銅を結合させる方法で70KΩ/mの導電性層を形成した導電性繊維を5.5mm間隔で格子状に織った表面抵抗値377±70Ω/□の抵抗織布を使用する。 (2)〔スペーサ〕 40倍発泡の発泡スチロール樹脂30mm厚を使用する。 (3)〔電波反射膜〕 アルミニウム板500μm厚を使用する。 (1)と(2)、(2)と(3)の貼合せは、弾性エポキシ系接着剤を使用し て接着する。」 表1には、実施例1は、周波数60GHzでの電波反射減衰量が24dBであることが記載されている。 ここで、実施例1に着目すると、段落【0058】及び表1の記載より、甲第2号証には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。 「ポリエチレンテレフタレートと、 酸化インジウム錫と、 アクリル系接着剤と、 ポリメチルメタアクリレートと、 アクリル系接着剤と、 アルミニウム箔とが順に積層され、 ポリメチルメタアクリレートの厚さが750μmであり、 周波数60GHzにおいて、電波反射減衰量が24dBである電波吸収体。」 ウ 甲第3号証には、次の事項が記載されている。 「【請求項1】抵抗膜層、スペーサ層および反射体層を順次積層してなる電波吸収体であって、抵抗膜層が溶融成形され、かつ誘電体中に導電性物質を分散させてなることを特徴とする電波吸収体。」 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は電波吸収体、特に100MHz以上の高周波の電波吸収体に関する。」 「【0006】このタイプの電波吸収体の抵抗膜層として、ITO(酸化インジウム/酸化スズ)の蒸着膜を用いるもの(特開平5-114813号公報参照)や導電性糸を格子状に織り込んだ織布を用いるもの(特公平5-40480号公報参照)などが提案されている。」 「【0018】とすることにより、反射係数を零とすることができ、電波吸収性能が発現する。この時の面抵抗を整合インピーダンスと呼ぶ。さらに実際上は、面抵抗値が整合インピーダンスより20%増減した場合でも、反射率が10%以下となることが知られており、実使用上は問題がない。例えば入射角=0すなわち垂直入射の場合では、302Ω/□以上450Ω/□以下であれば反射率は10%以下になる。垂直入射以外の斜入射する電波を吸収させること、および整合インピーダンスからの20%の増減が許されることを勘案すれば、工業製品としての抵抗膜層の面抵抗値は100Ω/□以上450Ω/□以下であることが好ましい。」 「【0025】 スペーサ層には各種の無機質誘電体、有機質誘電体、これらの積層品を用いる。無機質誘電体としては例えば、石膏、珪酸カルシウム、セメント、コンクリートなどが挙げられる。有機質誘電体としては各種熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を用いることができ、好ましくは熱可塑性樹脂を用いる。熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変成ポリフェニレンエーテルを用い、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネートを用いる。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリミクロイキシレンジメチレンテレフタレートを用いることが好ましい。」 「【0027】ここで、λは動作中心電波の波長、εはスペーサ層の誘電率、θは電波の入射角を表す。本発明においては、スペーサ厚みは、上記の値の通常±13%の範囲であれば、実用的な電波吸収性が得られる。反射体層には導電性が通常面抵抗20Ω/□以下の物質を用い、例えば各種鉄、アルミ、銅などの金属の板状体、金属箔、蒸着膜、金属酸化物の蒸着膜、炭素繊維プリプレグなどの炭素系物質の板状体、導電性塗料による塗膜を用いることができる。好ましくは各種金属の板状体、金属箔などが用いられる。」 「【0030】抵抗膜層とスペーサ層と反射層をこの順に積層する方法として、各種接着剤、プレスやラミネータなどの積層装置を用いることができる。」 「【0032】 【実施例】本発明の効果を実施例を用いて説明する。 (実施例1)カーボンブラック(平均粒子径40nm、DBP吸収量190cm3/100g、比表面積250m2 /g)30重量部をポリプロピレン樹脂70重量部に分散させ押出成形した導電性シートを熱プレスで厚み調整し、厚み50μmで面抵抗440Ω/□の膜を得た。この膜と厚み850μmのポリプロピレンと厚み0.2mmのアルミ板をこの順に積層し、シート状の積層体を得た。この積層体の電波吸収性能を周波数0.6GHz付近で導波管により測定したところ、良好な電波吸収性が得られた。」 「【0033】(実施例2)実施例1に使用した導電性シートをペレット状に粉砕したもの80重量部に対して、低密度ポリエチレン20重量部をミキサーにて混練後、熱プレスで厚み調整し、厚み110μmで面抵抗370Ω/□の膜を得た。この膜と厚み700μmのポリエチレンテレフタレートとアルミ板をこの順に積層し、シート状の積層体を得た。この積層体の電波吸収性能を周波数0.6GHz付近で導波管により測定したところ、良好な電波吸収性が得られた。」 ここで、実施例1に着目すると、段落【0001】、【0030】及び【0032】の記載より、甲第3号証には次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。 「面抵抗440Ω/□の膜と、 ポリプロピレンと、 アルミ板とを順に積層してプレスしたものであり、 ポリプロピレンの厚さが850μmである電波吸収体。」 (2)特許法第29条第1項について ア 本件発明1について (ア)本件発明1と引用発明1との対比、判断 a 対比 本件発明1と引用発明1を対比する。 (a)引用発明1の「シート状のポリカーボネート樹脂12」、「酸化インジウム錫の薄膜13」、「銀の薄膜11」、「透明電波吸収体」は、それぞれ、本件発明1の「誘電体層」、「抵抗層」、「導電層」、「電磁波吸収体」に相当する。 そうすると、引用発明1の「銀の薄膜11と、」「シート状のポリカーボネート樹脂12と、」「酸化インジウム錫の薄膜13」「とが順に積層され」た「透明電波吸収体」は、本件発明1の「誘電体層と、上記誘電体層の一方の面に設けられる抵抗層と、上記誘電体層の他方の面に設けられ上記抵抗層より低いシート抵抗を有する導電層とを有する電磁波吸収体」に相当するといえる。 但し、誘電体層が、本件発明1は、「熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体」であるのに対して、引用発明1は、「ポリカーボネート樹脂」である。 また、電磁波吸収体が、本件発明1は、「上記誘電体層の上記一方の面および上記他方の面のいずれもが、粘着剤を介さずに上記抵抗層または上記導電層に貼り合せられて」いるのに対して、引用発明1は、「シート状のポリカーボネート樹脂12」が、「アクリル系粘着剤16」を介して「銀の薄膜11」または「ポリエチレンテレフタレートフィルムフィルム15b」に貼り合せられている。 (b)ポリカーボネート樹脂の比誘電率は3.1であるから(甲第5号証、第251頁、表4、「ポリカーボネート(PC)樹脂の一般物性」における「電気的性質 比誘電率(100Hz)(1MHz)」の特性値を参照)、引用発明1の「厚さが0.18mm」である「シート状のポリカーボネート樹脂12」は、本件発明1の「比誘電率が1~5.19の範囲にあり、」「厚みが100~1000μmの範囲にあ」る「誘電体層」に含まれる。 (c)引用発明1の「周波数76GHzの電波を入射角0~20°の範囲から入射させたときの反射減衰量が20dB以上である」ことは、本件発明1の「60~90GHzの周波数帯域において、電磁波吸収量が20dB以上である」ことに含まれる。 但し、本件発明1は、「電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅が5GHz以上である」のに対して、引用発明1は、そのような特定がない。 すると、本件発明1と引用発明1とは、次の一致点及び相違点を有する。 (一致点) 「誘電体層と、上記誘電体層の一方の面に設けられる抵抗層と、上記誘電体層の他方の面に設けられ上記抵抗層より低いシート抵抗を有する導電層とを有する電磁波吸収体であって、上記誘電体層の比誘電率が1~5.19の範囲にあり、上記誘電体層の厚みが100~1000μmの範囲にあり、60~90GHzの周波数帯域において、電磁波吸収量が20dB以上である電磁波吸収体。」 (相違点1) 誘電体層が、本件発明1は、「熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体」であるのに対して、引用発明1は、「ポリカーボネート樹脂」である点。 (相違点2) 電磁波吸収体が、本件発明1は、「上記誘電体層の上記一方の面および上記他方の面のいずれもが、粘着剤を介さずに上記抵抗層または上記導電層に貼り合せられて」いるのに対して、引用発明1は、「シート状のポリカーボネート樹脂12」が、「アクリル系粘着剤16」を介して「銀の薄膜11」または「ポリエチレンテレフタレートフィルムフィルム15b」に貼り合せられている点。 (相違点3) 本件発明1は、「電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅が5GHz以上である」のに対して、引用発明1は、そのような特定がない点。 b 判断 引用発明1は上記相違点1ないし3で本件発明1と相違するから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではない。 (イ)本件発明1と引用発明2との対比、判断 a 対比 本件発明1と引用発明2を対比する。 (a)引用発明2の「ポリメチルメタアクリレート」、「酸化インジウム錫」、「アルミニウム箔」、「電波吸収体」は、それぞれ、本件発明1の「誘電体層」、「抵抗層」、「導電層」、「電磁波吸収体」に相当する。 そうすると、引用発明2の「酸化インジウム錫と、」「ポリメチルメタアクリレートと、」「アルミニウム箔とが順に積層され」た「電波吸収体」は、本件発明1の「誘電体層と、上記誘電体層の一方の面に設けられる抵抗層と、上記誘電体層の他方の面に設けられ上記抵抗層より低いシート抵抗を有する導電層とを有する電磁波吸収体」に相当するといえる。 但し、誘電体層が、本件発明1は、「熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体」であるのに対して、引用発明2は、「ポリメチルメタアクリレート」である。 また、電磁波吸収体が、本件発明1は、「上記誘電体層の上記一方の面および上記他方の面のいずれもが、粘着剤を介さずに上記抵抗層または上記導電層に貼り合せられて」いるのに対して、引用発明2は、「ポリメチルメタアクリレート」が、「アクリル系接着剤」を介して「酸化インジウム錫」または「アルミニウム箔」に貼り合せられている。 (b) ポリメチルメタアクリレートの比誘電率は2.2~3.2程度(https://www.kda1969.com/materials/pla_mate_pmma2.htm 参照)であるから、引用発明2の「厚さが750μm」である「ポリメチルメタアクリレート」は、本件発明1の「比誘電率が1~5.19の範囲にあり、」「厚みが100~1000μmの範囲にあ」る「誘電体層」に含まれる。 (c) 引用発明2の「周波数60GHzにおいて、電波反射減衰量が24dBである」ことは、本件発明1の「60~90GHzの周波数帯域において、電磁波吸収量が20dB以上である」ことに含まれる。 但し、本件発明1は、「電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅が5GHz以上である」のに対して、引用発明2は、そのような特定がない。 すると、本件発明1と引用発明2とは、次の一致点及び相違点を有する。 (一致点) 「誘電体層と、上記誘電体層の一方の面に設けられる抵抗層と、上記誘電体層の他方の面に設けられ上記抵抗層より低いシート抵抗を有する導電層とを有する電磁波吸収体であって、上記誘電体層の比誘電率が1~5.19の範囲にあり、上記誘電体層の厚みが100~1000μmの範囲にあり、60~90GHzの周波数帯域において、電磁波吸収量が20dB以上である電磁波吸収体。」 (相違点4) 誘電体層が、本件発明1は、「熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体」であるのに対して、引用発明2は、「ポリメチルメタアクリレート」である点。 (相違点5) 電磁波吸収体が、本件発明1は、「上記誘電体層の上記一方の面および上記他方の面のいずれもが、粘着剤を介さずに上記抵抗層または上記導電層に貼り合せられて」いるのに対して、引用発明2は、「ポリメチルメタアクリレート」が、「アクリル系接着剤」を介して「酸化インジウム錫」または「アルミニウム箔」に貼り合せられている点。 (相違点6) 本件発明1は、「電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅が5GHz以上である」のに対して、引用発明2は、そのような特定がない点。 b 判断 引用発明2は上記相違点4ないし6で本件発明1と相違するから、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明ではない。 (ウ)本件発明1と引用発明3との対比、判断 a 対比 本件発明1と引用発明3を対比する。 (a)引用発明3の「ポリプロピレン」、「面抵抗440Ω/□の膜」、「アルミ板」、「電波吸収体」は、それぞれ、本件発明1の「誘電体層」、「抵抗層」、「導電層」、「電磁波吸収体」に相当する。 そうすると、引用発明3の「面抵抗440Ω/□の膜と、ポリプロピレンと、アルミ板とを順に積層してプレスした」「電波吸収体」は、本件発明1の「誘電体層と、上記誘電体層の一方の面に設けられる抵抗層と、上記誘電体層の他方の面に設けられ上記抵抗層より低いシート抵抗を有する導電層とを有する電磁波吸収体であって、」「上記誘電体層の上記一方の面および上記他方の面のいずれもが、粘着剤を介さずに上記抵抗層または上記導電層に貼り合せられて」いることに相当するといえる。 但し、誘電体層が、本件発明1は、「熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体」であるのに対して、引用発明3は、「ポリプロピレン」である。 (b)ポリプロピレンの比誘電率は2.0~2.3程度(http://www.yei-jp.com/technology/hiyudenritu/hiyudenritu.html 参照)であるので、引用発明3の「厚さが850μmである」「ポリプロピレン」は、本件発明1の「比誘電率が1~5.19の範囲にあり、」「厚みが100~1000μmの範囲にあ」る「誘電体層」に含まれる。 (c)引用発明3の「電波吸収体」は、本件発明1の「電磁波吸収体」と電磁波を吸収することで共通する。 但し、本件発明1は、「60~90GHzの周波数帯域において、電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅が5GHz以上である」のに対して、引用発明3は、そのような特定がない点。 すると、本件発明1と引用発明3とは、次の一致点及び相違点を有する。 (一致点) 「誘電体層と、上記誘電体層の一方の面に設けられる抵抗層と、上記誘電体層の他方の面に設けられ上記抵抗層より低いシート抵抗を有する導電層とを有する電磁波吸収体であって、上記誘電体層の上記一方の面および上記他方の面のいずれもが、粘着剤を介さずに上記抵抗層または上記導電層に貼り合せられており、上記誘電体層の比誘電率が1~5.19の範囲にあり、上記誘電体層の厚みが100~1000μmの範囲である電磁波吸収体。」 (相違点7) 誘電体層が、本件発明1は、「熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体」であるのに対して、引用発明3は、「ポリプロピレン」である点。 (相違点8) 本件発明1は、「60~90GHzの周波数帯域において、電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅が5GHz以上である」のに対して、引用発明3は、そのような特定がない点。 b 判断 引用発明3は上記相違点7及び8で本件発明1と相違するから、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明ではない。 (エ)まとめ 本件発明1は、甲第1号証、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、したがって、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。 イ 本件発明5、6、8及び9について 本件発明5、6、8及び9は、本件発明1をさらに限定したものであるから、上記アと同様の理由により甲第1号証、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、したがって、本件発明5、6、8及び9に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。 (3)特許法第29条第2項について 本件発明7について ア 引用発明1に基づく進歩性について 本件発明7は、本件発明1、5又は6をさらに限定した発明である。 したがって、上記「(2)ア (ア) a」で検討したように、本件発明7と引用発明1を対比すると、すくなくとも上記相違点1ないし3を有している。 まず、上記相違点1について検討する。 甲第1号証には、誘電体として、ポリカーボネート樹脂(段落【0011】)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(段落【0014】)、ポリエチレンテレフタレート(段落【0016】)を用いることが記載されている 甲第2号証には、誘電体層として、アクリル樹脂、カーボネイト樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、アミド樹脂、エステル樹脂が例示されている(段落【0043】)。 甲第3号証には、スペーサ層として、各種の無機質誘電体、有機質誘電体、これらの積層品を用いることが記載され(段落【0025】)、具体的には、ポリプロピレン(段落【0032】)、ポリエチレンテレフタレート(段落【0033】)が記載されている。 しかしながら、甲第1号証ないし甲第3号証には、誘電体層として、熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体を用いることは記載されていない。また、甲第1号証ないし甲第3号証には、誘電体層として、熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体を用いることの示唆もない。 そうすると、引用発明1の誘電体層である「ポリカーボネート樹脂」を、熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体とする理由はなく、上記相違点1に係る構成は、引用発明1、甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明7は、引用発明1、甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術に基いて当業者が容易に発明できたものでない。 イ 引用発明2に基づく進歩性について 本件発明7は、本件発明1、5又は6をさらに限定した発明である。 したがって、上記「(2)ア (イ) a」で検討したように、本件発明7と引用発明2を対比すると、すくなくとも上記相違点4ないし6を有している。 そして、甲第1号証ないし甲第3号証の記載事項は上記「ア」のとおりであるから、引用発明2の誘電体層である「ポリメチルメタアクリレート」を、熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体とする理由はなく、上記相違点4に係る構成は、引用発明2、甲第1号証及び甲第3号証に記載された技術に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明7は、引用発明2、甲第1号証及び甲第3号証に記載された技術に基いて当業者が容易に発明できたものでない。 ウ 引用発明3に基づく進歩性について 本件発明7は、本件発明1、5又は6をさらに限定した発明である。 したがって、上記「(2)ア (ウ) a」で検討したように、本件発明7と引用発明3を対比すると、すくなくとも上記相違点7及び8を有している。 そして、甲第1号証ないし甲第3号証の記載事項は上記「ア」のとおりであるから、引用発明3の誘電体層である「ポリプロピレン」を、熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体とする理由はなく、上記相違点7に係る構成は、引用発明3、甲第1号証及び甲第2号証に記載された技術に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明7は、引用発明3、甲第1号証及び甲第2号証に記載された技術に基いて当業者が容易に発明できたものでない。 エ まとめ 本件発明7は、甲第1号証、甲第2号証又は甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでなく、本件発明7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。 第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許異議申立人の主張 特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関し、請求項1、7に係る発明は甲第1号証に記載された発明に基いて、請求項2、5、6に係る発明は甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された技術に基いて、請求項3、4、9に係る発明は甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術に基いて、請求項8に係る発明は甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証、甲第3号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨を主張している。 2 当審の判断 (1)請求項1に係る発明について 上記「第4 2 (2)ア (ア)a」で説示したとおり、本件発明1と引用発明1を対比すると、上記相違点1ないし3で相違する。 まず、相違点1について検討する。 引用発明1の誘電体層は、「ポリカーボネート樹脂」である。そして、甲第1号証には、誘電体層として、ポリメタクリル酸メチル樹脂(段落【0014】)、ポリエチレンテレフタレート(段落【0016】)を用いることが記載されているが、熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体を用いることは記載されておらず、熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体を用いることの示唆もない。 そうすると、引用発明1の誘電体層である「ポリカーボネート樹脂」を、熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体とする理由はなく、上記相違点1に係る構成は、引用発明1に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。 ここで、誘電体層に関して、甲第2号証ないし甲第4号証には次の事項が記載されている。 甲第2号証及び甲第3号証の記載事項は上記「第4 2 (3)ア」のとおりであり、誘電体層として、熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体を用いることは記載されていない。 そして、甲第4号証には「二次曲げ加工性を考慮すると、ガラスよりも熱可塑性合成樹脂で誘電体層1を形成することが望ましく、更に、屋外で使用する際の耐熱性や透視性を考慮すると、融点や光線透過率が高いアクリル系樹脂(メチルメタクリレート等)、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー等)、ポリエステル系樹脂(ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等)などで誘電体層1を形成することが望ましい。これらの中で、ポリカーボネート樹脂は機械的強度に優れ、全光線透過率が85%以上(厚さ3mm)、ヘーズが1.0%以下と透明性に優れているので、屋外で使用する透視性ないし透明な電波吸収体の誘電体層1としては特に好ましく用いられる。」(段落【0029】)と記載されているが、誘電体層として、熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体を用いることは記載されていない。 そして、甲第2号証ないし甲第4号証には、誘電体層として、熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体を用いることの示唆もない。 そうすると、甲第2号証ないし甲第4号証の記載を参酌しても、引用発明1の誘電体層である「ポリカーボネート樹脂」を、熱可塑性アクリル系エラストマ-またはエチレン酢酸ビニル共重合体とする理由はなく、上記相違点1に係る構成は、引用発明1、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術に基いて当業者が容易になし得たものとはいえない。 したがって、上記相違点2及び3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものでなく、さらに、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術に基いて当業者が容易に発明できたものでもない。 よって、特許異議申立人の主張を採用することができない。 (2)請求項5ないし9に係る発明について、 本件発明5ないし9は、本件発明1をさらに限定した発明である。 上記のとおり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術 に基いて当業者が容易に発明できたものでないのであるから、本件発明5ないし9についても同様に、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術に基いて当業者が容易に発明できたものでない。 よって、特許異議申立人の主張を採用することができない。 (3)請求項10に係る発明について 令和2年7月27日の訂正請求により、請求項1を引用する訂正前の請求項3は独立形式請求項となり、本件発明10に訂正された。 本件発明1と引用発明1の対比(上記「第4  2 (2)ア (ア)a」)を踏まえると、本件発明10と引用発明1は、上記相違点3に加えて次の相違点を有する。 (相違点9) 誘電体層が、本件発明10は「発泡体」であるに対して、引用発明1は「ポリカーボネート樹脂」である点。 上記相違点9について検討する。 甲第2号証には、比較例として、誘電体層に、40倍発泡の発泡スチロール樹脂30mm厚を使用することが記載されている(段落【0062】)。 しかしながら、該発泡スチロール樹脂は厚みが30mmであり、甲第2号証の表1によると、電磁波を吸収する周波数帯域が2.4GHzであるので、たとえ、引用発明1に該発泡スチロール樹脂を適用したとしても、本件発明10の「誘電体層が発泡体であり、」「誘電体層の厚みが100~1000μmの範囲にあり、60~90GHzの周波数帯域において、電磁波吸収量が20dB以上である周波数帯域の帯域幅が5GHz以上である」「電磁波吸収体」を得ることはできない。 したがって、本件発明10は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。 よって、特許異議申立人の主張を採用することができない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した異議申立理由によっては、請求項1、5ないし10に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に請求項1、5ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項2ないし4は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人特許業務法人虎ノ門知的財産事務所による特許異議の申立てについて、請求項2ないし4に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2019-700555

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