特許異議申立
2019-700352
コーティング剤
- 審判番号
- 2019-700352
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-259877
- 登録番号
- 特許第6420539号(P6420539)
- 請求日
- 2019年04月26日
- 審決日
- 2020年04月15日
- 公報発行日
- 2020年07月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社ソフト99コーポレーション
- 【権利者代理人】岡本 寛之
- 【異議申立人】神保 良男
- 審判長/審判官
- 審判長 天野 斉
- 審判官 蔵野 雅昭
- 審判官 木村 敏康
- 分類
- P1651.537-YAA(C09D) / P1651.536-YAA(C09D) / P1651.121-YAA(C09D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第126条第4項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6420539号発明「コーティング剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6420539号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。
特許第6420539号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6420539号の請求項1に係る特許についての出願は、平成25年12月17日(優先権主張 平成24年12月20日 日本国)になされたものであって、平成30年10月19日にその特許権の設定登録がなされ、同年11月7日にその特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許についての異議申立ての経緯は、以下のとおりである。
平成31年4月26日 特許異議申立人である神保良男による特許異議の申立て
令和元年7月26日付け 取消理由通知
同年9月26日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年11月25日 意見書の提出(特許異議申立人)
同年12月17日付け 審尋
令和2年2月13日 回答書の提出(特許権者)
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和元年9月26日付けの訂正請求(以下、「本件訂正」という。)の趣旨は、「特許第6420539号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、特許請求の範囲及び明細書の訂正に係る以下の訂正事項1、2を含むものである。
訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に
「成膜したときの水接触角(JIS K 2396(2006)に準拠)が90度以上98度以下の有機ポリシラザンと、
硬化触媒と、
分子中に少なくとも1つの反応性官能基を有する反応性シリコーンオイルと
を含有し、
前記反応性シリコーンオイルが、
分子の両末端にヒドロキシル基を有する両末端型シラノール変性シリコーンオイル、および/または、分子の片末端にアルコキシ基を有する片末端型アルコキシ変性シリコーンオイルであり、
両末端型シラノール変性シリコーンオイルの25℃における動粘度が、60mm2/s以上であり、
有機ポリシラザン100質量部に対して、反応性シリコーンオイルを30質量部以上150質量部以下の割合で含有することを特徴とする、コーティング剤。」
と記載されているのを、
「成膜したときの水接触角(JIS K 2396(2006)に準拠)が90度以上98度以下の有機ポリシラザンと、
硬化触媒と、
分子中に少なくとも1つの反応性官能基を有する反応性シリコーンオイルと
を含有し、
前記水接触角が、下記試験により測定され、
前記反応性シリコーンオイルが、
分子の両末端にヒドロキシル基を有する両末端型シラノール変性シリコーンオイル、および/または、分子の片末端にアルコキシ基を有する片末端型アルコキシ変性シリコーンオイルであり、
両末端型シラノール変性シリコーンオイルの25℃における動粘度が、60mm2/s以上であり、
有機ポリシラザン100質量部に対して、反応性シリコーンオイルを30質量部以上150質量部以下の割合で含有することを特徴とする、コーティング剤。
試験:70mm×150mm、厚さ1.5mmのガラス板に、有機ポリシラザンを、ウレタンスポンジを用いて均一に塗布し、3時間自然乾燥させた。その後、アルカリ性液剤(ソフト99コーポレーション社製「W純シャンプー」)を塗布し30分間放置し、流水で十分に濯いだものを試験片とした。水接触角は、JIS K 2396(自動車用艶出しコーティング剤(2006))に規定されている接触角測定装置を使用して測定した。」
に訂正する。
訂正事項2
本件訂正前の本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明の【0031】に、
「なお、炭化水素基の含有率が上記下限未満である場合には、上記化合物は、無機ポリシラザンと称される。」
と記載されているのを、
「なお、炭化水素基の含有率が40質量%未満である場合には、上記化合物は、無機ポリシラザンと称される。」
に訂正する。
2 訂正の適否
(1) 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「水接触角(JIS K 2396(2006)に準拠)」の測定方法が特定されていなかったため、様々な測定方法をとりうるものであったところ、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0092】、【0093】の記載に基づき、「試験:70mm×150mm、厚さ1.5mmのガラス板に、有機ポリシラザンを、ウレタンスポンジを用いて均一に塗布し、3時間自然乾燥させた。その後、アルカリ性液剤(ソフト99コーポレーション社製「W純シャンプー」)を塗布し30分間放置し、流水で十分に濯いだものを試験片とした。水接触角は、JIS K 2396(自動車用艶出しコーティング剤(2006))に規定されている接触角測定装置を使用して測定した。」というものに限定することを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、上記のとおり、本件特許明細書の【0092】、【0093】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてするものであり、また、上記のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
イ 訂正事項2について
訂正事項2は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0031】に、「有機ポリシラザン」について、「なお、炭化水素基の含有率が上記下限未満である場合には、上記化合物は、無機ポリシラザンと称される。」と定義され、「炭化水素基の含有率」について【0029】に「このような有機ポリシラザンの総量に対する、炭化水素基の含有割合は、例えば、40質量%以上、好ましくは、50質量%以上であり、例えば、100質量%未満、好ましくは、80質量%以下である。」と記載されていたため、「上記下限」が「40質量%」と「50質量%」のいずれであるのか、あるいは、それ以外であるのかが明確ではなかったので、これを明確にすることを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項2による明細書の訂正に係る請求項は、請求項1であるところ、本件訂正は、請求項1についてするものであるから、明細書の訂正に係る全ての請求項についてするものであり、特許法第126条第4項の規定に適合するものである。
また、訂正事項2は、上記のとおり、本件特許明細書の【0029】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてするものであり、また、上記のとおり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
(2) 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項第1、3号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第4~6項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の明細書、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件訂正発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
成膜したときの水接触角(JIS K 2396(2006)に準拠)が90度以上98度以下の有機ポリシラザンと、
硬化触媒と、
分子中に少なくとも1つの反応性官能基を有する反応性シリコーンオイルと
を含有し、
前記水接触角が、下記試験により測定され、
前記反応性シリコーンオイルが、
分子の両末端にヒドロキシル基を有する両末端型シラノール変性シリコーンオイル、および/または、分子の片末端にアルコキシ基を有する片末端型アルコキシ変性シリコーンオイルであり、
両末端型シラノール変性シリコーンオイルの25℃における動粘度が、60mm2/s以上であり、
有機ポリシラザン100質量部に対して、反応性シリコーンオイルを30質量部以上150質量部以下の割合で含有することを特徴とする、コーティング剤。
試験:70mm×150mm、厚さ1.5mmのガラス板に、有機ポリシラザンを、ウレタンスポンジを用いて均一に塗布し、3時間自然乾燥させた。その後、アルカリ性液剤(ソフト99コーポレーション社製「W純シャンプー」)を塗布し30分間放置し、流水で十分に濯いだものを試験片とした。水接触角は、JIS K 2396(自動車用艶出しコーティング剤(2006))に規定されている接触角測定装置を使用して測定した。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
当審が令和元年7月26日付けで通知した取消理由は、以下の取消理由1~3である。また、取消理由3で刊行物として以下の甲1、甲2を引用するものである。
<取消理由>
取消理由1
本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由2
本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由3
本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
<刊行物>
甲1
特開2012-153849号公報(特許異議申立人神保良男が提出した甲第1号証。以下、「甲1」という。)
甲2
Stefan Brand, 他2名、"Jungund wirkungsvoll Lackformulierungen mit einem neuen Bindemittel"、FARBE UND LACK 11巻2010年 25-29頁(特許異議申立人神保良男が提出した甲第2号証。以下、「甲2」という。)
1 取消理由1について
取消理由1は、要するに、本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、「成膜したときの水接触角(JIS K 2396(2006)に準拠)が90度以上98度以下の有機ポリシラザン」(以下、「特定の有機ポリシラザン」という。)という発明特定事項を含むものであるから、有機ポリシラザンが「成膜したときの水接触角」の値で特定されているが、有機ポリシラザンを成膜したときの水接触角の値は、その成膜条件に応じて異なるものになると認められ、また、本件出願時の技術常識に照らしても、実施例に記載されたもの以外で、どのような有機ポリシラザンがこのような物性を有するのかが明らかでもないから、本件特許発明1は、明確ではないというもの(以下、「取消理由1-1」という。)、及び、
発明の詳細な説明によると、「有機ポリシラザン」とは、有機ポリシラザンの総量に対する、炭化水素基の含有割合が40質量%以上のものを意味するのか、それとも50質量%以上のものを意味するのか、あるいはそれ以外なのかが明確ではないというもの(以下、「取消理由1-2」という。)である。
これに対し、本件訂正により、有機ポリシラザンを「成膜したときの水接触角」については、「前記水接触角が、下記試験により測定され」及び「試験:70mm×150mm、厚さ1.5mmのガラス板に、有機ポリシラザンを、ウレタンスポンジを用いて均一に塗布し、3時間自然乾燥させた。その後、アルカリ性液剤(ソフト99コーポレーション社製「W純シャンプー」)を塗布し30分間放置し、流水で十分に濯いだものを試験片とした。水接触角は、JIS K 2396(自動車用艶出しコーティング剤(2006))に規定されている接触角測定装置を使用して測定した。」(以下、「水接触角の測定方法」という。)ものに特定された。加えて、特許権者から「水接触角の測定方法」について、反応温度、湿度、および、塗布量を変えつつ水接触角を測定した追加実験の結果が提出され(令和2年2月13日付け回答書の「5 回答の内容 (1)水接触角について」の項の特に【表1】を参照。)、当該「水接触角の測定方法」で測定を行えば、反応温度、湿度、および、塗布量が異なっても、水接触角の測定値が±1度程度の誤差で一致することが示された。また、当該「水接触角の測定方法」で使用するアルカリ性液剤(ソフト99コーポレーション社製「W純シャンプー」)についても、令和2年2月13日付け回答書の「5 回答の内容 (2)W純シャンプーについて」の項、および、同回答書に添付した甲第1号証を参照すると、その組成が明確であるといえる。
以上によれば、有機ポリシラザンの「成膜したときの水接触角」は、その測定方法が「水接触角の測定方法」に特定され、また、当該測定方法は、明瞭なものであり、かつ、反応温度、湿度、および、塗布量などの測定条件によらず±1度程度の誤差で水接触角を測定することができるものである。
したがって、有機ポリシラザンの「成膜したときの水接触角」は、明瞭であると認められるので、取消理由1-1は、理由がない。
また、本件訂正により、発明の詳細な説明が訂正されて、「特定の有機ポリシラザン」とは、有機ポリシラザンの総量に対する炭化水素基の含有割合が40質量%以上のものを意味することが明確になったから、取消理由1-2も、理由がない。
以上によれば、本件訂正発明の「特定の有機ポリシラザン」が明確ではないとはいえず、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであるとはいえないので、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものであるとはいえない。
2 取消理由2について
取消理由2は、要するに、本件特許発明が明確ではないから、発明の詳細な説明は、実施例の態様を除き、本件特許発明の全体について実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないというものであるが、上記1のとおり、本件訂正により、本件訂正発明は明確になった。
したがって、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであるとはいえないので、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものであるとはいえない。
3 取消理由3について
取消理由3は、要するに、本件特許発明のうち、反応性シリコーンオイルとして「分子の片末端にアルコキシ基を有する片末端型アルコキシ変性シリコーンオイル」を選択した場合の態様に係る発明は、甲1及び甲2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものであるというものである。
(1) 刊行物に記載されている事項
ア 甲1の記載事項
「【請求項1】
下記一般式(A)で表される単位からなる主骨格を有するポリシラザンと、変性シリコーンオイル及び/又は硬化性シリコーン樹脂とを含有し、前記変性シリコーンオイルがアミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、ヒドロキシ変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、及びシラザン変性シリコーンのうち少なくとも一種であり、前記硬化性シリコーン樹脂が下記平均組成式(B)で表される硬化性シリコーン樹脂であることを特徴とするコーティング剤:
【化1】
但し、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、又はこれらの基以外でケイ素に直結する基が炭素である基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、或いはアルコキシ基を表し、R1、R2及びR3の少なくとも1つは水素原子である;
【化2】
但し、R4は少なくとも一種の炭素原子数1~8の置換又は非置換炭化水素基を表し、R5は水素原子並びに炭素原子数1~4のアルキル基及びアルケニル基から選ばれる原子又は有機基を表し、aは0<a≦2を満たす正数であり、bは0.01≦b≦3を満たす正数であり、0.01<a+b≦3である。
【請求項2】
下記一般式(A)で表される単位からなる主骨格を有するポリシラザンと、変性シリコーンオイルと、硬化性シリコーン樹脂とを含有し、前記変性シリコーンオイルがアミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、ヒドロキシ変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、及びシラザン変性シリコーンのうち少なくとも一種であり、前記硬化性シリコーン樹脂が下記平均組成式(B)で表される硬化性シリコーン樹脂であることを特徴とするコーティング剤:
【化3】
但し、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、又はこれらの基以外でケイ素に直結する基が炭素である基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、或いはアルコキシ基を表し、R1、R2及びR3の少なくとも1つは水素原子である;
【化4】
但し、R4は少なくとも一種の炭素原子数1~8の置換又は非置換炭化水素基を表し、R5は水素原子並びに炭素原子数1~4のアルキル基及びアルケニル基から選ばれる原子又は有機基を表し、aは0<a≦2を満たす正数であり、bは0.01≦b≦3を満たす正数であり、0.01<a+b≦3である。
【請求項3】
前記ポリシラザン1重量部に対して、前記変性シリコーンオイル及び/又は硬化性シリコーン樹脂の合計含有量が0.1~500重量部である請求の範囲1又は2記載のコーティング剤。
【請求項4】
前記変性シリコーンオイルがシラザン変性シリコーンである請求の範囲1~3何れか記載のコーティング剤。」
「【0012】
本発明のコーティング剤によれば、塗布直後のみならず、自然環境での暴露条件に置いても、塗布面において汚れの付着や光沢の劣化が少なく、高い撥水性を付与することができ、長期間にわたり塗装面の美観を維持することができる。」
「【0015】
本発明のコーティング剤では、第一成分(有効成分)として、特定のポリシラザンを使用する。本発明において使用するポリシラザンは、下記一般式(A)で表される単位からなる主骨格を有する化合物であればよい。好ましくは数平均分子量が100~50000であるもの、より好ましくは数平均分子量が500~10000であるものが選択される。」
「【0018】
したがって、このようなポリシラザンを単独で使用することは勿論のこと、当該ポリシラザンと他のポリマーとの共重合体や、当該ポリシラザンと他の化合物との混合物を利用することもできる。これらのポリシラザンには、鎖状、環状、又は架橋構造を有するもの、或いは分子内にこれらの複数の構造を同時に有するものがあり、これらの何れも前記ポリシラザンとして使用することができる。これらは、単独で用いてもよいし、或いは2種以上の混合物として用いてもよい。前記ポリシラザンの反応性は非常に高い。したがって、空気中の水分の存在により前記ポリシラザン同士が常温で容易に反応し、前記ポリシラザンと後述する特定の変性シリコーンオイル(第二成分)と特定の硬化性シリコーン樹脂(第三成分)とが常温で容易に反応することによって、前記ポリシラザンは綿密な被膜を形成する。この被膜が、良好な艶、撥水性、及び防汚性を付与する。」
「【0021】
本発明のコーティング剤では、第二成分(有効成分)として、特定の変性シリコーンオイルを使用する。本発明において使用するポリシラザンは、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、ヒドロキシ変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、及びシラザン変性シリコーンから選択される。これらは、単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくはアミノ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、ヒドロキシ変性シリコーン及びシラザン変性シリコーンから選択され、更に好ましくはシラザン変性シリコーンが選択される。なお、後述する実施例において、前記変性シリコーンオイルのうち、アミノ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、ヒドロキシ変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン及びシラザン変性シリコーンでその効果が実証された。これらは前記ポリシラザンとの反応性を有するものであるが、シラザン変性シリコーンは最も容易に反応するため高い効果が得られると考えられる。これらと同様に、前記ポリシラザンとの反応性を有するメルカプト変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン及びエポキシ変性シリコーンも本発明において使用できることは明らかである。
【0022】
前記変性シリコーンとしては市販されているものを使用することができる。具体的には、アミノ変性シリコーンとしてモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製TSF4701、旭化成ワッカーシリコーン社製WT1250等;エポキシ変性シリコーンとして東レ・ダウコーニング社製BY16-839、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製YF3965等;カルビノール変性シリコーンとして旭化成ワッカーシリコーン社製IM15、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製XF42-B0970等;メルカプト変性シリコーンとして信越化学工業社製KF-2001等;カルボキシ変性シリコーンとして信越化学工業社製X-22-162C、東レ・ダウコーニング社製BY16-880等;ヒドロキシ変性シリコーンとして東レ・ダウコーニング社製BY16-873、旭化成ワッカーシリコーン社製CT601M等;アルコキシ変性シリコーンとして信越化学工業社製X-24-9011等;メチルハイドロジェンシリコーンとして旭化成ワッカーシリコーン社製H-Siloxane等;シラザン変性シリコーンとしてKPN-3504等を使用することができる。」
「【0028】
前記変性シリコーンオイル及び/又は硬化性シリコーン樹脂の合計含有量は、ムラなく施工するため、前記ポリシラザン1重量部に対して、好ましくは0.1~500重量部程度、より好ましくは0.3~400重量部程度、更に好ましくは0.3~100重量部程度、更に好ましくは1~80重量部程度、特に好ましくは1~50重量部程度が選択される。0.1重量部未満の場合には、撥水性が不良となる傾向があり、500重量部を超える場合には、艶と耐久性が不良となる傾向があるため好ましくない。」
「【0030】
本発明のコーティング剤には、本発明の目的ないし効果を阻害しない範囲で、必要に応じ、希釈溶媒として有機溶剤、反応促進剤として各種触媒、拭き上げ性改善剤として各種微粉末等を配合することができる。また、必要に応じ、安定化剤、凍結防止剤、防請剤、防腐剤、紫外線吸収剤、色素等を配合することもできる。」
「【0034】
」
「【0044】
」
イ 甲2の記載事項 (原文はドイツ語であるので、当審の訳で示す)
「塗料配合用に適切なポリシラザン
塗料配合物に適した市販のポリシラザン(図1)の中では、アルコキシシリル変性(ポリシラザン1)、ビニル基含有(ポリシラザン2)、および未変性ポリシラザン(ポリシラザン3)が特に重要である。
アルコキシシリル変性誘導体は、室温で硬化する塗料系の配合にもオープン乾燥系にも適している。室温での硬化は、これらの系において最初に系中に含まれるアルコキシシリル基の湿気誘導縮合工程を介して行われる。この系は、薄層クリアコートを配合するのに特に有用であることが証明されている。適切な充填剤が使用される場合、防食および高温システムもまた実施され得る(下記参照)。」(25頁右欄10行~26頁左欄18行)
「クリアコートと清掃が簡単なアプリケーションが実現可能
非常に興味深いクリアコートは、アルコキシシリル変性ポリシラザン(ポリシラザン1)に基づく配合物を用いて実現することができる。一定の弾性を達成するために、少量のアクリレートバインダーの添加が推奨される。この系は低粘度(<10mPas、20℃)で配合することができ、それにより約5μmの乾燥フィルム厚を達成することができる。異なるセルロースアセテートタイプとの組み合わせは、フィルムの履歴を最適化するためのオプションである。この目的のために、低ヒドロキシル価を有する系が推奨される。水に対してこれらのベースシステムの接触角は95°に達し、このレベルが長期間にわたって維持される。適切な添加剤を添加することによって、105°を超える接触角のさらなる増大を達成することができる。したがって、ポリシラザンは、接触角を最適に調整できるだけでなく、それに対応して優れたバリヤー効果を有する高い架橋密度を有するので、洗浄が容易な用途に関しては最適なバインダーである[1]。広範囲の研究により、ポリシラザンバインダーは高い耐候安定性も有することが示されているので、屋内用途に加えて、洗練された外部コーティングも実施することができる。」(26頁中欄1行~28頁左欄21行)
(2) 甲1に記載された発明
甲1には、 【請求項1】、【請求項3】の記載に基づき、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「下記一般式(A)で表される単位からなる主骨格を有するポリシラザンと、変性シリコーンオイル及び/又は硬化性シリコーン樹脂とを含有し、前記変性シリコーンオイルがアミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、ヒドロキシ変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、及びシラザン変性シリコーンのうち少なくとも一種であり、前記硬化性シリコーン樹脂が下記平均組成式(B)で表される硬化性シリコーン樹脂であり、
前記ポリシラザン1重量部に対して、前記変性シリコーンオイル及び/又は硬化性シリコーン樹脂の合計含有量が0.1~500重量部である、
コーティング剤:
【化1】
但し、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、又はこれらの基以外でケイ素に直結する基が炭素である基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、或いはアルコキシ基を表し、R1、R2及びR3の少なくとも1つは水素原子である;
【化2】
但し、R4は少なくとも一種の炭素原子数1~8の置換又は非置換炭化水素基を表し、R5は水素原子並びに炭素原子数1~4のアルキル基及びアルケニル基から選ばれる原子又は有機基を表し、aは0<a≦2を満たす正数であり、bは0.01≦b≦3を満たす正数であり、0.01<a+b≦3である。」
(3) 対比
本件訂正発明(反応性シリコーンオイルとして「分子の片末端にアルコキシ基を有する片末端型アルコキシ変性シリコーンオイル」を選択した場合の態様に係る発明)と甲1発明を対比する。
本件訂正発明の「有機ポリシラザン」について、本件特許の明細書の【0014】~【0031】には、以下の説明が記載されている。
「本発明において、有機ポリシラザンは、下記一般式(1)で示される繰り返し単位からなる。すなわち、有機ポリシラザンは、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を、主骨格として有している。
【化1】
(式中、R1~R3は、互いに同一または相異なって、水素原子、または、置換または非置換の1価の炭化水素基を示し、かつ、R1~R3の少なくともいずれか1つが、置換または非置換の1価の炭化水素基を示す。また、nは、2以上の整数を示す。)
R1~R3において、非置換の1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられる。・・・
このような有機ポリシラザンの総量に対する、炭化水素基の含有割合は、例えば、40質量%以上、好ましくは、50質量%以上であり、例えば、100質量%未満、好ましくは、80質量%以下である。 ・・・
なお、炭化水素基の含有率が40質量%未満である場合には、上記化合物は、無機ポリシラザンと称される。」
また、甲1発明の「下記一般式(A)で表される単位からなる主骨格を有するポリシラザン
【化1】
但し、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、又はこれらの基以外でケイ素に直結する基が炭素である基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、或いはアルコキシ基を表し、R1、R2及びR3の少なくとも1つは水素原子である」は、その選択肢(具体的な化合物)として、例えばR1、R2及びR3が水素及び2つのメチル基である化合物を含むところ、この化合物は、その炭化水素基の含有率が41%(=(12*2+1*6)/(28+14+12*2+1*7)*100)であるから、本件訂正発明の「有機ポリシラザン」に該当する。また、この化合物よりも少ない数の炭素を含む化合物の炭化水素基の含有率は41%より少ないはずであり、この化合物よりも多くの炭素を含む化合物の炭化水素基の含有率は41%より多いはずである。
そうすると、甲1発明の「下記一般式(A)で表される単位からなる主骨格を有するポリシラザン」(一般式(A)とその説明の記載を省略する)は、本件訂正発明の「有機ポリシラザン」に該当する化合物を多数包含しているから、本件訂正発明の「ポリシラザン」に対応する。
甲1発明は、「変性シリコーンオイル及び/又は硬化性シリコーン樹脂とを含有」するものであり、かつ、「変性シリコーンオイル」の選択肢として、「アルコキシ変性シリコーン」を含むものであり、さらに、甲1発明の「アルコキシ変性シリコーン」の具体例として、甲1には、「信越化学工業社製X-24-9011」(【0022】)が唯一の例示として記載されているところ、「信越化学工業社製X-24-9011」は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明において、本件訂正発明の「分子の片末端にアルコキシ基を有する片末端型アルコキシ変性シリコーンオイル」の市販品として例示されている2つの商品のうちの1つであり、かつ、唯一実施例(実施例2等) において使用しているものである。
そうすると、甲1発明の「アルコキシ変性シリコーン」は、その選択肢(具体的な化合物)として、本件訂正発明の「分子の片末端にアルコキシ基を有する片末端型アルコキシ変性シリコーンオイル」を包含しているから、甲1発明の「アルコキシ変性シリコーン」は、本件訂正発明の「分子の片末端にアルコキシ基を有する片末端型アルコキシ変性シリコーンオイル」に対応する。
また、甲1発明の「変性シリコーンオイル」は、本件訂正発明の「分子中に少なくとも1つの反応性官能基を有する反応性シリコーンオイル」に対応する。
甲1発明は、「必要に応じ、反応促進剤として各種触媒等を配合することができる」(【0030】)ものであるから、本件訂正発明の「硬化触媒を含有」を充足すると認められる。
そうすると、本件訂正発明と甲1発明の一致点、相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「ポリシラザンと、
硬化触媒と、
分子中に少なくとも1つの反応性官能基を有する反応性シリコーンオイルを含有し、
前記反応性シリコーンオイルが、分子の片末端にアルコキシ基を有する片末端型アルコキシ変性シリコーンオイルである、
コーティング剤。」
<相違点1>
「ポリシラザン」について、本件訂正発明は、「成膜したときの水接触角(JIS K 2396(2006)に準拠)」を、「試験:70mm×150mm、厚さ1.5mmのガラス板に、有機ポリシラザンを、ウレタンスポンジを用いて均一に塗布し、3時間自然乾燥させた。その後、アルカリ性液剤(ソフト99コーポレーション社製「W純シャンプー」)を塗布し30分間放置し、流水で十分に濯いだものを試験片とした。水接触角は、JIS K 2396(自動車用艶出しコーティング剤(2006))に規定されている接触角測定装置を使用して測定した。」ときに、「90度以上98度以下」である「有機」ポリシラザンに特定されているのに対し、甲1発明は、そのような特定を有していない点
<相違点2>
「有機ポリシラザン」と、「反応性シリコーンオイル」の重量の割合について、本件訂正発明は、「有機ポリシラザン100質量部に対して、反応性シリコーンオイルを30質量部以上150質量部以下の割合」という範囲に特定するものであるのに対し、甲1発明は、「前記ポリシラザン1重量部に対して、前記変性シリコーンオイル及び/又は硬化性シリコーン樹脂の合計含有量が0.1~500重量部である」という範囲に特定している点
(4) 検討
事案に鑑み、まず、本件訂正発明の効果について検討する。
本件訂正発明は、「作業効率よく各種産業製品の金属面、塗装面または樹脂面などに塗布することができ、また、速乾性に優れ、塗布直後、洗浄後、さらには、長期にわたる耐久後においても、これらの各面に良好な艶および光沢、撥水性、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性を与え、かつ、これらの各面の表面の防汚性を維持することができる」(【0012】)という効果を奏するものであり、具体的には、実施例等(【0091】~【0210】)において、「撥水性(初期評価)」(【0175】)、「艶出し性(初期評価)」(【0179】)、「耐溶剤性(初期評価)」(【0183】)、「耐酸性(初期評価)」(【0187】)、「耐アルカリ性(初期評価)」(【0191】)、「撥水性の持続性(耐久評価)」(【0195】)、「艶出し性の持続性(耐久評価)」(【0199】)、「防汚性の持続性(耐久評価)」(【0203】)が評価されている。
そして、本件訂正発明について具体的な評価がされた効果のうち、「艶出し性(初期評価)」および「艶出し性の持続性(耐久評価)」のうち6ヶ月後のものについてみると、本件訂正発明は、その少なくとも一つの評価が「◎」であるのに対し、本件訂正発明に該当しないもの(相違点1、2に係る構成を備えていない態様である参考比較例や比較例)は、両者とも「○」あるいはそれ以下の評価である。
また、甲1発明において、相違点1、2に係る構成を備えることにより、上記効果が得られることについて、甲1、2には記載も示唆もないし、上記効果が得られることが、当業界の技術常識に基づいて自明であるとも認められない。
そうすると、本件訂正発明は、甲1、2に記載された事項から当業者が予測することができない顕著な効果を奏するものであると認められる。
したがって、甲1発明において相違点1、2に係る構成を備えるものとすることの容易想到性について検討するまでもなく、本件訂正発明は、甲1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(5) 小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとは認められないので、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものであるとはいえない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人が申し立てた取消理由は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、本件特許の出願優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物(甲1、甲2に加え、下記の甲3)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである、というものであり、具体的には、取消理由通知に記載した取消理由3(上記第4を参照)に加え、本件特許発明のうち、反応性シリコーンオイルとして「分子の両末端にヒドロキシル基を有する両末端型シラノール変性シリコーンオイルであって、その25℃における動粘度が、60mm2/s以上」であるものを選択した場合の態様に係る発明についても、甲1~3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものであるというものである。
<刊行物>
甲3
特開2008-75021号公報(特許異議申立人神保良男が提出した甲第3号証。以下、「甲3」という。)
1 甲3に記載されている事項
「【0025】・・・なお、両末端型反応性シリコーンオイルは、R4がヒドロキシル基であるときには、両末端型ヒドロキシル変性シリコーンオイル(両末端型シラノール変性シリコーンオイル)と・・・指称する場合がある。また、その他のR4で示される反応性官能基についても、上記と同様に指称する場合がある。
【0026】
また、両末端型反応性シリコーンオイルの25℃における動粘度は、例えば、0.65~5000mm2/s、好ましくは、2~1000mm2/s、さらに好ましくは、10~500mm2/sである。また、両末端型反応性シリコーンオイルは、市販品として入手可能であり、例えば、両末端型ヒドロキシル変性シリコーンオイル(両末端型シラノール変性シリコーンオイル)として、具体的には・・・KF-9701(以上、信越化学社製)などが・・・用いられる。」
2 甲1に記載された発明および対比
甲1に記載された発明は、上記「第4 3(2)」のとおりである。
上記「第4 3(3)」を参照しつつ、本件訂正発明(反応性シリコーンオイルとして「分子の両末端にヒドロキシル基を有する両末端型シラノール変性シリコーンオイルであって、その25℃における動粘度が、60mm2/s以上」であるものを選択した場合の態様に係る発明)と甲1発明を対比する。
甲1発明の「下記一般式(A)で表される単位からなる主骨格を有するポリシラザン」は、本件訂正発明の「ポリシラザン」に対応する。
また、甲1発明は、「必要に応じ、反応促進剤として各種触媒等を配合することができる」(【0030】)ものであるから、本件訂正発明の「硬化触媒を含有」を充足すると認められる。
甲1発明は、「変性シリコーンオイル及び/又は硬化性シリコーン樹脂とを含有」するものであり、かつ、「変性シリコーンオイル」の選択肢として、「ヒドロキシ変性シリコーン」を含むものであり、さらに、甲1発明の「ヒドロキシ変性シリコーン」の具体例として、甲1には、「東レ・ダウコーニング社製BY16-873、旭化成ワッカーシリコーン社製CT601M等」(【0022】)が例示として記載されているところ、「旭化成ワッカーシリコーン社製CT601M」は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明において、本件訂正発明の「両末端型シラノール変性シリコーンオイル」の市販品として例示されている商品のうちの1つであり、かつ、実施例(実施例4) において使用しているものである。
そうすると、甲1発明の「ヒドロキシ変性シリコーン」は、本件訂正発明の「分子の両末端にヒドロキシル基を有する両末端型シラノール変性シリコーンオイル」に対応する。
また、甲1発明の「変性シリコーンオイル」は、本件訂正発明の「分子中に少なくとも1つの反応性官能基を有する反応性シリコーンオイル」に対応する。
そうすると、本件訂正発明と甲1発明の一致点、相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「ポリシラザンと、
硬化触媒と、
分子中に少なくとも1つの反応性官能基を有する反応性シリコーンオイルを含有し、
前記反応性シリコーンオイルが、分子の両末端にヒドロキシル基を有する両末端型シラノール変性シリコーンオイルである、
コーティング剤。」
<相違点3>
「ポリシラザン」について、本件訂正発明は、「成膜したときの水接触角(JIS K 2396(2006)に準拠)」を、「試験:70mm×150mm、厚さ1.5mmのガラス板に、有機ポリシラザンを、ウレタンスポンジを用いて均一に塗布し、3時間自然乾燥させた。その後、アルカリ性液剤(ソフト99コーポレーション社製「W純シャンプー」)を塗布し30分間放置し、流水で十分に濯いだものを試験片とした。水接触角は、JIS K 2396(自動車用艶出しコーティング剤(2006))に規定されている接触角測定装置を使用して測定した。」ときに、「90度以上98度以下」である「有機」ポリシラザンに特定されているのに対し、甲1発明は、そのような特定を有していない点
<相違点4>
「有機ポリシラザン」と、「反応性シリコーンオイル」の重量の割合について、本件訂正発明は、「有機ポリシラザン100質量部に対して、反応性シリコーンオイルを30質量部以上150質量部以下の割合」という範囲に特定するものであるのに対し、甲1発明は、「前記ポリシラザン1重量部に対して、前記変性シリコーンオイル及び/又は硬化性シリコーン樹脂の合計含有量が0.1~500重量部である」という範囲に特定している点
3 検討
事案に鑑み、まず、本件訂正発明の効果について検討する。
上記「第4 3(4)」に記載したとおり、本件訂正発明は、「作業効率よく各種産業製品の金属面、塗装面または樹脂面などに塗布することができ、また、速乾性に優れ、塗布直後、洗浄後、さらには、長期にわたる耐久後においても、これらの各面に良好な艶および光沢、撥水性、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性を与え、かつ、これらの各面の表面の防汚性を維持することができる」(【0012】)という効果を奏するものであり、具体的には、実施例等(【0091】~【0210】)において、「撥水性(初期評価)」(【0175】)、「艶出し性(初期評価)」(【0179】)、「耐溶剤性(初期評価)」(【0183】)、「耐酸性(初期評価)」(【0187】)、「耐アルカリ性(初期評価)」(【0191】)、「撥水性の持続性(耐久評価)」(【0195】)、「艶出し性の持続性(耐久評価)」(【0199】)、「防汚性の持続性(耐久評価)」(【0203】)が評価されている。
そして、本件訂正発明について具体的な評価がされた効果のうち、「艶出し性(初期評価)」および「艶出し性の持続性(耐久評価)」のうち6ヶ月後のものについて検討すると、本件訂正発明は、その少なくとも一つの評価が「◎」であるのに対し、本件訂正発明に該当しないもの(相違点3、4に係る構成を備えていない態様)は、両者とも「○」あるいはそれ以下の評価である。
また、甲1発明において、相違点3、4に係る構成を備えることにより、上記効果が得られることについて、甲1~3には記載も示唆もないし、上記効果が得られることが、当業界の技術常識に基づいて自明であるとも認められない。
そうすると、本件訂正発明は、甲1~3に記載された事項から当業者が予測することができない顕著な効果を奏するものであると認められる。
したがって、甲1発明において相違点3、4に係る構成を備えるものとすることの容易想到性について検討するまでもなく、本件訂正発明は、甲1~3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとは認められないので、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2019-700352