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特許異議申立

2019-700266

塗布方法、塗布装置、製造方法及び製造装置

審判番号
2019-700266
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2014-123794
登録番号
特許第6404606号(P6404606)
請求日
2019年04月08日
審決日
2019年11月19日
公報発行日
2020年02月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】平田機工株式会社
  • 【権利者代理人】大塚 康徳
  • 【権利者代理人】高柳 司郎
  • 【権利者代理人】大塚 康弘
  • 【権利者代理人】木村 秀二
  • 【権利者】デクセリアルズ株式会社
  • 【権利者代理人】大塚 康徳
  • 【権利者代理人】高柳 司郎
  • 【権利者代理人】大塚 康弘
  • 【権利者代理人】木村 秀二
  • 【異議申立人】中村 博章
審判長/審判官
  • 審判長 加藤 友也
  • 審判官 大島 祥吾
  • 審判官 植前 充司
分類
P1651.537-YAA(B05D) / P1651.161-YAA(B05D) / P1651.121-YAA(B05D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条の2、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6404606号発明「塗布方法、塗布装置、製造方法及び製造装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6404606号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-6、12-15]、[7-11、16]について訂正することを認める。 特許第6404606号の請求項1-3、5-9、11-16に係る特許を維持する。 特許第6404606号の請求項4及び10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 主な手続の経緯等 特許第6404606号(設定登録時の請求項の数は16。以下、「本件特許」という。)は、平成26年6月16日を出願日とする特許出願である特願2014-123794号に係るものであって、平成30年9月21日に設定登録され、特許掲載公報が同年10月10日に発行された。 特許異議申立人 中村博章(以下、単に「申立人」という。)は、平成31年4月8日に本件特許の請求項1ないし16に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てをした。 当審において、令和1年6月14日付けで取消理由を通知したところ、特許権者から、令和1年8月19日に訂正請求書(以下、当該訂正請求書による訂正請求を「本件訂正請求」という。)及び意見書が提出され、令和1年8月26日付けで申立人に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、申立人からの応答はなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下の訂正事項1ないし14である。ここで、訂正事項1ないし8は、訂正前の請求項1~6、12~15という一群の請求項を訂正するものであり、訂正事項9ないし14は、訂正前の請求項7~11及び16という一群の請求項を訂正するものである。また、下線については訂正箇所に当審が付したものである。 訂正事項1 訂正前の特許請求の範囲の請求項1に 「前記制御工程では、前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御する、」 とあるのを、 「前記制御工程では、 前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御し、 前記制御工程では、 少なくとも前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さで、前記膜厚を制御する、」 に訂正する。 請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2、3、5、6、12~14についても同様の訂正を行う。 訂正事項2 訂正前の特許請求の範囲の請求項2に 「前記制御工程では、前記光硬化性樹脂の吐出液量で前記膜厚を制御する、」 とあるのを、 「前記制御工程では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、前記光硬化性樹脂の吐出液量とで、前記膜厚を制御する、」 に訂正する。 請求項2を直接又は間接的に引用する請求項12~14についても同様の訂正を行う。 訂正事項3 訂正前の特許請求の範囲の請求項3に 「前記制御工程では、前記塗布ヘッド又は前記パネルの移動速度で前記膜厚を制御する、」 とあるのを、 「前記制御工程では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、前記塗布ヘッド又は前記パネルの移動速度とで、前記膜厚を制御する、」 に訂正する。 請求項3を直接又は間接的に引用する請求項12~14についても同様の訂正を行う。 訂正事項4 訂正前の特許請求の範囲の請求項4を削除する。 訂正事項5 訂正前の特許請求の範囲の請求項5に 「前記制御工程では、 前記光硬化性樹脂の吐出液量、 前記塗布ヘッド又は前記パネルの移動速度、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さ、 の少なくともいずれか2つで前記膜厚を制御する、」 とあるのを、 「前記制御工程では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、 前記光硬化性樹脂の吐出液量、及び、前記塗布ヘッド又は前記パネルの移動速度、の少なくともいずれか1つとで、前記膜厚を制御する、」 に訂正する。 請求項5を直接又は間接的に引用する請求項12~14についても同様の訂正を行う。 訂正事項6 訂正前の特許請求の範囲の請求項12に 「請求項1~6のいずれか1項に記載の塗布方法により、前記第一のパネルの一方面に、液状の光硬化性樹脂を塗布する工程と、」 とあるのを、 「請求項1~3、5及び6のいずれか1項に記載の塗布方法により、前記第一のパネルの一方面に、液状の光硬化性樹脂を塗布する工程と、」 に訂正する。 請求項12を直接又は間接的に引用する請求項13~14についても同様の訂正を行う。 訂正事項7 訂正前の特許請求の範囲の請求項15に 「請求項12~14のいずれか1項に記載の製造方法であって、 前記第一のパネルが光透過性を有するカバーパネルであり、 前記第二のパネルが画像表示パネルであり、 前記積層体が画像表示装置であり、 前記保持工程では、表面に光硬化性樹脂が塗布された前記カバーパネルを、前記表面が上向きの姿勢で保持し、 前記積層工程では、前記カバーパネルが貼り合わされる面が下向きの姿勢で前記画像表示パネルをその上側から吸着する吸着ユニットで保持し、かつ、前記画像表示パネルを前記カバーパネル上に重ね、 前記押圧工程では、 前記カバーパネルをその下側からフリーローラで前記画像表示パネル側に当接し、前記フリーローラを移動させることで、前記画像表示装置を厚み方向に押圧する、 ことを特徴とする製造方法。」 とあるのを、独立形式の請求項として、 「第一のパネルと第二のパネルとを備える積層体の製造方法であって、 所定の塗布方法により、前記第一のパネルの一方面に、液状の光硬化性樹脂を塗布する工程と、 光硬化性樹脂が塗布された前記第一のパネルを保持する保持工程と、 前記第二のパネルを前記第一のパネルの前記一方面に重ねる積層工程と、 前記第一のパネルと前記第二のパネルとの積層体に、厚み方向の押圧力を付与する押圧工程と、を備え、 前記所定の塗布方法は、前記第一のパネルの前記一方面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布方法であって、 前記第一のパネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、 前記第一のパネルの前記一方面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、 前記所定の塗布方法は、 光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドが、前記第一のパネルの前記一方面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド又は前記第一のパネルの一方を移動させる移動工程と、 前記移動工程中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記第一のパネルの前記一方面に吐出する塗布工程と、 前記塗布工程中に、前記第一のパネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚をコントロールユニットにて制御する制御工程と、を含み、 前記制御工程では、 前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御し、 前記第一のパネルが光透過性を有するカバーパネルであり、 前記第二のパネルが画像表示パネルであり、 前記積層体が画像表示装置であり、 前記保持工程では、表面に光硬化性樹脂が塗布された前記カバーパネルを、前記表面が上向きの姿勢で保持し、 前記積層工程では、前記カバーパネルが貼り合わされる面が下向きの姿勢で前記画像表示パネルをその上側から吸着する吸着ユニットで保持し、かつ、前記画像表示パネルを前記カバーパネル上に重ね、 前記押圧工程では、 前記カバーパネルをその下側からフリーローラで前記画像表示パネル側に当接し、前記フリーローラを移動させることで、前記画像表示装置を厚み方向に押圧する、 ことを特徴とする製造方法。」 に訂正する。 訂正事項8 訂正前の明細書の段落【0007】の 「本発明によれば、パネルの表面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布方法であって、前記パネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、前記パネルの前記表面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、前記塗布方法は、光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドが、前記パネルの前記表面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド又は前記パネルの一方を移動させる移動工程と、前記移動工程中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記パネルの前記表面に吐出する塗布工程と、前記塗布工程中に、前記パネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚をコントロールユニットにて制御する制御工程と、を含み、前記制御工程では、前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御する、ことを特徴とする塗布方法が提供される。」 を 「本発明によれば、パネルの表面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布方法であって、前記パネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、前記パネルの前記表面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、前記塗布方法は、光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドが、前記パネルの前記表面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド又は前記パネルの一方を移動させる移動工程と、前記移動工程中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記パネルの前記表面に吐出する塗布工程と、前記塗布工程中に、前記パネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚をコントロールユニットにて制御する制御工程と、を含み、前記制御工程では、前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御し、前記制御工程では、少なくとも前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さで、前記膜厚を制御する、ことを特徴とする塗布方法が提供される。」 に訂正する。 訂正事項9 訂正前の特許請求の範囲の請求項7に 「前記膜厚制御では、前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御する、」 とあるのを、 「前記膜厚制御では、 前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御し、 前記膜厚制御では、 少なくとも前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さで、前記膜厚を制御する、」 に訂正する。 請求項7を直接又は間接的に引用する請求項8、9、11及び16についても同様の訂正を行う。 訂正事項10 訂正前の特許請求の範囲の請求項8に 「前記膜厚制御では、前記光硬化性樹脂の吐出液量で前記膜厚を制御する、」 とあるのを、 「前記膜厚制御では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、前記光硬化性樹脂の吐出液量とで、前記膜厚を制御する、」 に訂正する。 訂正事項11 訂正前の特許請求の範囲の請求項9に 「前記膜厚制御では、前記塗布ヘッド又は前記パネルの移動速度で前記膜厚を制御する、」 とあるのを、 「前記膜厚制御では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、前記塗布ヘッド又は前記パネルの移動速度とで、前記膜厚を制御する、」 に訂正する。 訂正事項12 訂正前の特許請求の範囲の請求項10を削除する。 訂正事項13 訂正前の特許請求の範囲の請求項11に 「前記膜厚制御では、前記光硬化性樹脂の吐出液量、前記塗布ヘッド又は前記パネルの移動速度、前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さ、の少なくともいずれか2つで前記膜厚を制御する、」 とあるのを、 「前記膜厚制御では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、 前記光硬化性樹脂の吐出液量、及び、前記塗布ヘッド又は前記パネルの移動速度、の少なくともいずれか1つとで、前記膜厚を制御する、」 に訂正する。 訂正事項14 訂正前の明細書の段落【0008】の 「また、本発明によれば、パネルの表面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布装置であって、光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドと、前記パネルの前記表面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド及び前記パネルの少なくとも一方を移動させる移動機構と、前記塗布ヘッドと前記移動機構とを制御する制御ユニットと、を備え、前記パネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、前記パネルの前記表面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、前記制御ユニットは、前記移動機構により前記塗布ヘッド及び前記パネルの少なくとも一方を移動させる移動制御と、前記移動制御中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記パネルの前記表面に吐出する塗布制御と、前記塗布制御中に、前記パネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚を制御する膜厚制御と、を実行し、前記膜厚制御では、前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御する、ことを特徴とする塗布装置が提供される。」 を 「また、本発明によれば、パネルの表面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布装置であって、光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドと、前記パネルの前記表面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド及び前記パネルの少なくとも一方を移動させる移動機構と、前記塗布ヘッドと前記移動機構とを制御する制御ユニットと、を備え、前記パネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、前記パネルの前記表面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、前記制御ユニットは、前記移動機構により前記塗布ヘッド及び前記パネルの少なくとも一方を移動させる移動制御と、前記移動制御中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記パネルの前記表面に吐出する塗布制御と、前記塗布制御中に、前記パネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚を制御する膜厚制御と、を実行し、前記膜厚制御では、前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御し、前記制御工程では、少なくとも前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さで、前記膜厚を制御する、ことを特徴とする塗布装置が提供される。」 に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 訂正事項1について ア 訂正事項1のうち、「前記コントロールユニットは前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御し、」の部分(以下、「訂正事項1-1」という。)は、「第一の領域」と「第二の領域」とを逆に書き違えたものを正すというものであるので、当該訂正が、誤記の訂正を目的とするといえるかどうか検討する。 イ 本件特許の請求項1に係る発明の解決すべき課題が「パネル表面の段差に起因する液膜表面の段差の発生の低減すること」(明細書の段落【0006】)であって、請求項1において「前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう」との記載があること、及び、請求項1を引用する請求項6において、遮光層上(第一の領域に対応)では膜厚を相対的に薄く、遮光層間(第二の領域に対応)では膜厚を相対的に厚くするように制御することが規定されていて、明細書の段落【0064】にも同様な記載があることから、この出願の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)において、訂正前の請求項1の訂正事項1-1に係わる部分をみれば、本件特許の請求項1に係る発明が、当該発明の解決すべき課題が解決できないことは明らかであって、当該部分は「第一の領域」と「第二の領域」とを逆に書き違えていると解する以外にはないといえる。そうすうると、訂正事項1-1は、誤記の訂正を目的とするものである。 ウ 一方、訂正事項1のうち、「前記制御工程では、少なくとも前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さで、前記膜厚を制御する、」の部分(以下、「訂正事項1-2」という。)は、膜厚の制御内容を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 エ 訂正事項1-1については、明細書の段落【0064】の記載、訂正事項1-2については、明細書の段落【0067】、【0068】並びに設定登録時の請求項4の記載に基づくものであって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当しない。 オ 訂正事項1-1及び訂正事項1-2は、いずれも、第3者の利益を不当に害するものではないから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 カ 以上のことから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び2号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (2) 訂正事項2について ア 訂正事項2は、訂正前の請求項2において膜厚を吐出液量で制御することを規定していたところ、吐出液量とノズルの高さとで制御することに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項2は、明細書の段落【0065】、【0067】及び【0068】の記載に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当しない。 ウ 訂正事項2は、訂正前の膜厚の制御内容をさらに限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (3) 訂正事項3について ア 訂正事項3は、訂正前の請求項3において膜厚を塗布ヘッド又はパネルの移動速度で制御することを規定していたところ、移動速度とノズルの高さとで制御することに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項3は、明細書の段落【0066】、【0067】及び【0068】の記載に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当しない。 ウ 訂正事項3は、訂正前の膜厚の制御内容をさらに限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (4) 訂正事項4について ア 訂正事項4は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (5) 訂正事項5について ア 訂正事項5は、訂正前の請求項5において膜厚を吐出液量、塗布ヘッド又はパネルの移動速度、ノズルの高さのうちの少なくとも2つで制御することを規定していたところ、ノズルの高さで制御することを必須とするものに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項5は、明細書の段落【0065】~【0068】の記載に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当しない。 ウ 訂正事項5は、訂正前の膜厚の制御内容をさらに限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (6) 訂正事項6について ア 訂正事項6は、訂正前の請求項12の引用請求項から、訂正事項4により削除される請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (7) 訂正事項7について ア 訂正事項7は、訂正前の請求項15を、請求項間の引用関係を解消して、その引用先の訂正前の請求項12及び訂正前の請求項12の引用先の訂正前の請求項1の内容を含めて、独立形式請求項へ改めるための訂正と共に、訂正事項1で行っている誤記の訂正も合わせて行うものであって、誤記の訂正と他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 イ そして、当該訂正事項7は、上記で明らかなように、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ よって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号及び第4号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (8) 訂正事項8について ア 訂正事項8は、訂正事項1による請求項1の訂正と、明細書の記載との整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ そして、当該訂正事項8は、上記で明らかなように、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ よって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (9) 訂正事項9について ア 訂正事項9のうち、「前記コントロールユニットは前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御し、」の部分(以下、「訂正事項9-1」という。)は、「第一の領域」と「第二の領域」とを逆に書き違えた誤記を正す、誤記の訂正を目的とするものである。一方、訂正事項9のうち、「前記膜厚制御では、少なくとも前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さで、前記膜厚を制御する、」の部分(以下、「訂正事項1-2」という。)は、膜厚の制御内容を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項9-1は、「第一の領域」と「第二の領域」とを逆に書き違えた誤記を正すものであって、これが、誤記であることは、明細書の段落【0064】の記載や、請求項7において「前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう」との記載があること等から明らかである。また、訂正事項9-2は、明細書の段落【0067】、【0068】や設定登録時の請求項10に基づくものといえる。 したがって、訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当しない。 ウ そして、当該訂正事項9のうち、訂正事項9-1は、上記イのとおり、「第一の領域」と「第二の領域」とを逆に書き違えた誤記であることが明らかであるし、訂正事項9-2は、訂正前には限定されていなかった膜厚の制御内容を限定したものであるから、訂正事項9は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ よって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び2号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (10) 訂正事項10について ア 訂正事項10は、訂正前の請求項8において膜厚を吐出液量で制御することを規定していたところ、吐出液量とノズルの高さとで制御することに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項10は、明細書の段落【0065】、【0067】及び【0068】の記載に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当しない。 ウ 訂正事項10は、訂正前の膜厚の制御内容をさらに限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ よって、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (11) 訂正事項11について ア 訂正事項11は、訂正前の請求項9において膜厚を塗布ヘッド又はパネルの移動速度で制御することを規定していたところ、移動速度とノズルの高さとで制御することに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項11は、明細書の段落【0066】、【0067】及び【0068】の記載に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当しない。 ウ 訂正事項11は、訂正前の膜厚の制御内容をさらに限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ よって、訂正事項11は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (12) 訂正事項12について ア 訂正事項12は、訂正前の請求項10を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ よって、訂正事項12は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (13) 訂正事項13について ア 訂正事項13は、訂正前の請求項11において膜厚を吐出液量、塗布ヘッド又はパネルの移動速度、ノズルの高さのうちの少なくとも2つで制御することを規定していたところ、ノズルの高さで制御することを必須とするものに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項13は、明細書の段落【0065】~【0068】の記載に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当しない。 ウ 訂正事項13は、訂正前の膜厚の制御内容をさらに限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ よって、訂正事項13は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (14) 訂正事項14について ア 訂正事項14は、訂正事項9による請求項7の訂正と、明細書の記載との整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ そして、当該訂正事項14は、上記で明らかなように、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ よって、訂正事項14は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-6、12-15]、[7-11、16]について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし16に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明16」のようにいう。)は、令和1年8月19日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定される以下に記載のとおりのものである。 「【請求項1】 パネルの表面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布方法であって、 前記パネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、 前記パネルの前記表面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、 前記塗布方法は、 光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドが、前記パネルの前記表面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド又は前記パネルの一方を移動させる移動工程と、 前記移動工程中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記パネルの前記表面に吐出する塗布工程と、 前記塗布工程中に、前記パネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚をコントロールユニットにて制御する制御工程と、を含み、 前記制御工程では、 前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御し、 前記制御工程では、 少なくとも前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さで、前記膜厚を制御する、 ことを特徴とする塗布方法。 【請求項2】 請求項1記載の塗布方法であって、 前記制御工程では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、前記光硬化性樹脂の吐出液量とで、前記膜厚を制御する、 ことを特徴とする塗布方法。 【請求項3】 請求項1記載の塗布方法であって、 前記制御工程では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、前記塗布ヘッド又は前記パネルの移動速度とで、前記膜厚を制御する、 ことを特徴とする塗布方法。 【請求項4】(削除) 【請求項5】 請求項1記載の塗布方法であって、 前記制御工程では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、 前記光硬化性樹脂の吐出液量、及び、前記塗布ヘッド又は前記パネルの移動速度、の少なくともいずれか1つとで、前記膜厚を制御する、 ことを特徴とする塗布方法。 【請求項6】 請求項1に記載の塗布方法であって、 前記パネルは方形であり、 前記ノズルは、前記パネルの互いに対向する一対の辺と平行に配置され、 前記移動工程では、 前記一対の辺と直交する方向に、前記塗布ヘッド又は前記パネルの一方を移動させ、 前記塗布工程では、 前記一対の辺に沿って形成された前記遮光層上では、前記光硬化性樹脂の膜厚が相対的に薄くなるように制御し、 前記一対の辺に沿って形成された前記遮光層間では、前記光硬化性樹脂の膜厚が相対的に厚くなるように制御する、 ことを特徴とする塗布方法。 【請求項7】 パネルの表面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布装置であって、 光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドと、 前記パネルの前記表面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド及び前記パネルの少なくとも一方を移動させる移動機構と、 前記塗布ヘッドと前記移動機構とを制御する制御ユニットと、を備え、 前記パネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、 前記パネルの前記表面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、 前記制御ユニットは、 前記移動機構により前記塗布ヘッド及び前記パネルの少なくとも一方を移動させる移動制御と、 前記移動制御中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記パネルの前記表面に吐出する塗布制御と、 前記塗布制御中に、前記パネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚を制御する膜厚制御と、を実行し、 前記膜厚制御では、 前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御し、 前記膜厚制御では、 少なくとも前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さで、前記膜厚を制御する、 ことを特徴とする塗布装置。 【請求項8】 請求項7記載の塗布装置であって、 前記膜厚制御では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、前記光硬化性樹脂の吐出液量とで、前記膜厚を制御する、 ことを特徴とする塗布装置。 【請求項9】 請求項7記載の塗布装置であって、 前記膜厚制御では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、前記塗布ヘッド又は前記パネルの移動速度とで、前記膜厚を制御する、 ことを特徴とする塗布装置。 【請求項10】(削除) 【請求項11】 請求項7記載の塗布装置であって、 前記膜厚制御では、 前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さと、 前記光硬化性樹脂の吐出液量、及び、前記塗布ヘッド又は前記パネルの移動速度、の少なくともいずれか1つとで、前記膜厚を制御する、 ことを特徴とする塗布装置。 【請求項12】 一のパネルと第二のパネルとを備える積層体の製造方法であって、 請求項1~3、5及び6のいずれか1項に記載の塗布方法により、前記第一のパネルの一方面に、液状の光硬化性樹脂を塗布する工程と、 光硬化性樹脂が塗布された前記第一のパネルを保持する保持工程と、 前記第二のパネルを前記第一のパネルの前記一方面に重ねる積層工程と、 前記第一のパネルと前記第二のパネルとの積層体に、厚み方向の押圧力を付与する押圧工程と、を備える、 ことを特徴とする製造方法。 【請求項13】 請求項12に記載の製造方法であって、 前記押圧工程では、 前記第一のパネル及び前記第二のパネルの一方にローラを当接し、前記積層体又は前記ローラの一方を移動させることで、前記積層体を厚み方向に押圧する、 ことを特徴とする製造方法。 【請求項14】 請求項12又は13に記載の製造方法であって、 前記積層体に紫外線を照射して前記光硬化性樹脂を硬化させる工程を更に備える、 ことを特徴とする製造方法。 【請求項15】 第一のパネルと第二のパネルとを備える積層体の製造方法であって、 所定の塗布方法により、前記第一のパネルの一方面に、液状の光硬化性樹脂を塗布する工程と、 光硬化性樹脂が塗布された前記第一のパネルを保持する保持工程と、 前記第二のパネルを前記第一のパネルの前記一方面に重ねる積層工程と、 前記第一のパネルと前記第二のパネルとの積層体に、厚み方向の押圧力を付与する押圧工程と、を備え、 前記所定の塗布方法は、前記第一のパネルの前記一方面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布方法であって、 前記第一のパネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、 前記第一のパネルの前記一方面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、 前記所定の塗布方法は、 光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドが、前記第一のパネルの前記一方面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド又は前記第一のパネルの一方を移動させる移動工程と、 前記移動工程中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記第一のパネルの前記一方面に吐出する塗布工程と、 前記塗布工程中に、前記第一のパネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚をコントロールユニットにて制御する制御工程と、を含み、 前記制御工程では、 前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御し、 前記第一のパネルが光透過性を有するカバーパネルであり、 前記第二のパネルが画像表示パネルであり、 前記積層体が画像表示装置であり、 前記保持工程では、表面に光硬化性樹脂が塗布された前記カバーパネルを、前記表面が上向きの姿勢で保持し、 前記積層工程では、前記カバーパネルが貼り合わされる面が下向きの姿勢で前記画像表示パネルをその上側から吸着する吸着ユニットで保持し、かつ、前記画像表示パネルを前記カバーパネル上に重ね、 前記押圧工程では、 前記カバーパネルをその下側からフリーローラで前記画像表示パネル側に当接し、前記フリーローラを移動させることで、前記画像表示装置を厚み方向に押圧する、 ことを特徴とする製造方法。 【請求項16】 第一のパネルと第二のパネルとを備える積層体の製造装置であって、 請求項7に記載の塗布装置と、 前記塗布装置により、一方面に光硬化性樹脂が塗布された前記第一のパネルを保持する保持ユニットと、 前記第二のパネルを前記第一のパネルの前記一方面に重ねる積層ユニットと、 前記第一のパネルと前記第二のパネルとの積層体を厚み方向に押圧する押圧ユニットと、を備える、 ことを特徴とする製造装置。」 第4 特許異議申立書に記載した申立理由の概要 平成31年4月8日に申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した理由の概要は次のとおりである。 1 申立理由1(特許法第36条第6項第1号:サポート要件) 本件特許の請求項1ないし16に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができないものであり、その発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 2 申立理由2(特許法第29条の2:拡大先願) 本件特許の請求項1~16に係る発明は、その出願前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた特許出願の願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(甲第1号証)に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、同法113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 3 申立理由3(特許法第29条第2項:進歩性) 本件特許の請求項1ないし16に係る発明は、下記の本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第2号証に記載された発明、甲第3号証~甲第6号証に記載の技術事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 4 証拠方法 甲第1号証:特開2014-134789号公報 甲第2号証:特開2014-81642号公報 甲第3号証:国際公開第2009/054168号 甲第4号証:特開2010-175919号公報 甲第5号証:特開平11-156271号公報 甲第6号証:特開2009-40617号公報 以後、甲第1号証から甲第6号証については、それぞれ「甲1」から「甲6」という。 第5 取消理由の概要 令和1年6月14日付けで通知した取消理由は、 「【理由1】(サポート要件)本件特許の請求項1ないし16についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 【理由2】(拡大先願)本件特許の請求項1~3、5~9、11~14及び16に係る発明は、その出願前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 【理由3】(進歩性)本件特許の請求項1~3、5~9、11~14及び16に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 ・・・ 理由2(拡大先願) (1)先願 先願:特願2013-258803号(特開2014-134789号、甲1) 先願の出願日:平成25年12月16日 先願の優先日:平成24年12月14日 先願の公開日:平成26年 7月24日 先願に係る発明の発明者:小川康一、渡辺明彦、今野彰、遠藤貴、谷正之 先願の出願人:デクセリアルズ株式会社 ・・・ 理由3(進歩性) (1)刊行物 甲2~甲6」 なお、当審からの取消理由の理由1、2、3は、申立理由2、3について、請求項4、10、15に対して採用していない点を除き、特許異議申立書に記載の申立理由と同趣旨である。 第6 取消理由についての当審の判断 1 取消理由1(サポート要件)について 取消理由1は、本件発明1及び7は、「パネル表面の段差に起因する液膜表面の段差の発生を低減すること」(段落【0006】)を発明が解決しようとする課題としており、発明の詳細な説明の記載においては、請求項1及び7の記載と全く同じ記載は存在するものの(段落【0007】【0008】)、この部分は、請求項1及び7の記載と同様の記載があるにとどまるものであり、技術的な説明ではないから実質的な記載とはいえないし、発明の詳細な説明においての具体的な記載においては、遮光層が形成された領域の光硬化性樹脂の膜厚を遮光層が形成されていない領域の光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように光硬化樹脂の塗布量を調整して、遮光層が形成された領域と遮光層が形成されていない領域との段差における光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるようにしたものが記載されているものの(段落【0059】~【0068】)、「前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御する」ものは記載されていないし、そのようなものが、上記発明が解決しようとする課題を解決できないことは当業者において明らかであるというものであったが、取消理由の原因となった誤記が、本件訂正請求により正されたので、当該取消理由1は理由がない。 2 取消理由2(拡大先願)について (1) 先願の願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)の記載 職権で確認したところ、特許出願後補正がされずに公開された先願の公報である甲1には、以下の記載がある。 ア 「【課題を解決するための手段】 【0013】 上述した課題を解決するために、本発明に係る画像表示装置の製造方法は、画像表示部材と、周縁部に遮光層が形成されることにより該周縁部と主面部との間に段差部が形成された光透過性カバー部材とが、液状の光学樹脂組成物から形成された光透過性樹脂層を介し、上記光透過性カバー部材の上記遮光層形成面が上記画像表示部材側に配置されるように積層された画像表示装置の製造方法において、樹脂用ディスペンサーを上記光透過性カバー部材の上記遮光層形成面の表面の一端側から他端側に掛けて移動させ、液状の上記光学樹脂組成物を上記光透過性カバー部材の上記遮光層形成面の表面に塗布し、上記光透過性カバー部材の上記遮光層形成面の表面と、画像表示部材とを貼り合わせ、上記画像表示部材と上記光透過性カバー部材との間に挟持されている上記光学樹脂組成物を硬化させ、上記樹脂用ディスペンサーは、上記光透過性カバー部材の上記遮光層形成面の主面部上と上記遮光層上とで、光学的樹脂組成物の塗布量を変えるものである。」 イ 「【発明の効果】 【0016】 本発明によれば、樹脂用ディスペンサーは、光透過性カバー部材の上記遮光層形成面の主面部上と上記遮光層上とで、光学樹脂組成物の塗布量を変える。これにより、樹脂用ディスペンサー10は、遮光層3上と主面部4上とで同じ高さで塗布することができ、光透過性カバー部材6の長手方向に亘って平坦な塗布面を形成することができる。例えば、高い凸部が形成される場合は、遮光層上での移動速度を主面部上よりも速めることで、遮光層上での光学樹脂組成物の塗布量が主面部上よりも減少し、その結果、平坦に塗布することができる。」 ウ 「【0019】 本発明を適用して製造される画像表示装置1は、図1に示すように、画像表示部材2と、周縁部に遮光層3が形成されることにより該遮光層3と主面部4との間に段差部5が形成された光透過性カバー部材6とが、液状の光学樹脂組成物7から形成された光透過性樹脂層8を介して積層されている。」 エ 「【0041】 [第1の実施の形態] 次いで、上述した画像表示装置1の製造方法について説明する。第1の実施の形態に係る画像表示装置の製造方法は、図2に示すように、樹脂用ディスペンサー10を光透過性カバー部材6の遮光層形成面である表面6aの長手方向の一端側から他端側に掛けて移動させ、液状の光硬化性樹脂組成物7を光透過性カバー部材6の表面6aに塗布する際に、光透過性カバー部材6の表面6aの主面部4上と遮光層3上とで、移動速度を変化させるものである。 【0042】 [塗布工程] 光硬化性樹脂組成物7を光透過性カバー部材6の表面6aに塗布する樹脂用ディスペンサー10は、図3に示すように、光硬化性樹脂組成物7を貯留する貯留部11と、貯留部11の光硬化性樹脂組成物7を光透過性カバー部材6の表面6aに吐出する吐出口12とを有する。 【0043】 樹脂用ディスペンサー10は、吐出口12が光透過性カバー部材6の主面部4の幅よりも広い幅を有し、幅方向の両側に形成された各遮光層3,3と主面部4とを跨ぐ幅を有する。これにより、樹脂用ディスペンサー10は、図4に示すように、光透過性カバー部材6の幅方向の両側に形成された各遮光層3,3と主面部4とに跨って光硬化性樹脂組成物7を塗布するようになっている。 【0044】 また、樹脂用ディスペンサー10は、吐出口12が光硬化性樹脂組成物7の吐出方向Xに向かって同じ幅で形成されている。これにより、樹脂用ディスペンサー10は、吐出口12の全幅に亘って均一に光硬化性樹脂組成物7を吐出することができる。 【0045】 そして、樹脂用ディスペンサー10は、図2に示すように、吐出口12の幅方向を光透過性カバー部材6の幅方向と平行にし、光透過性カバー部材6の表面6aを長手方向の一端側から他端側に掛けて移動しながら、図示しないポンプによって液状の光硬化性樹脂組成物7を押し出し、遮光層3,3と主面部4とに跨って塗布していく。 【0046】 この塗布の際、樹脂用ディスペンサー10は、移動方向の中央部に形成された主面部4上と、移動方向の両端に形成された遮光層3上とで、移動速度を変化させる。これにより、樹脂用ディスペンサー10は、光透過性カバー部材6の長手方向に亘って、遮光層3上と主面部4上とで同じ高さで塗布することができ、遮光層3,3と主面部4とに亘って平坦な塗布面を形成することができる。」 オ 「【0049】 移動速度は、光硬化性樹脂組成物7の粘度や段差部5の高さ等に応じて、遮光層3,3と主面部4とに亘って平坦に塗布できる最適な速度を設定することができる。高い凸部が形成される場合は、より遮光層3上での移動速度を主面部4上よりも速めることで、遮光層3上での光硬化性樹脂組成物7の塗布量が主面部4上よりも減少し、その結果、平坦に塗布することができる。」 カ 「【0056】 また、上述した光硬化性樹脂組成物7の塗布工程では、樹脂用ディスペンサー10の移動速度を調整することにより平坦化したが、樹脂用ディスペンサー10を一定の速度で移動するとともに、ポンプを調整することで遮光層3上での吐出量を主面部4上での吐出量よりも減少させ、平坦化させてもよい。しかし、ポンプ調整による吐出量の制御は、移動速度の制御よりも複雑であり、塗布工程の簡便さや歩留まりの点で、樹脂用ディスペンサー10の移動速度を制御する工法の方が優れる。 【0057】 また、上述したように樹脂用ディスペンサー10を固定された光透過性カバー部材6に対して移動させる他にも、樹脂用ディスペンサー10を固定し、光透過性カバー部材6を上述のような速度制御によって移動させてもよい。」 キ 「【0064】 [貼り合わせ工程] 次に、図9に示すように、画像表示部材2に、光透過性カバー部材6をその仮硬化樹脂層13側から貼り合わせる。貼り合わせは、公知の圧着装置を用いて、10℃~80℃で加圧することにより行うことができる。 【0065】 [本硬化工程] 次に、図10に示すように、画像表示部材2と光透過性カバー部材6との間に挟持されている仮硬化樹脂層13に対し紫外線を照射して本硬化させる。さらに必要に応じて,光透過性カバー部材6の遮光層と画像表示部材2との間の樹脂層に紫外線を照射することにより、該樹脂層を本硬化させる。これにより、画像表示部材2と光透過性カバー部材6とを光透過性硬化樹脂層8を介して積層して画像表示装置1を得る。」 ク 「 」 (2) 先願明細書等に記載された発明 上記ク(図2、3)の記載から、樹脂用ディスペンサー10の吐出口12が、樹脂用ディスペンサー10の相対移動方向の長さに対して当該方向に直交する幅方向の長さが十分長いことが看取できるから、この吐出口12はスリット状であるといえる。 また、上記カ(段落【0056】)に、樹脂用ディスペンサー10の移動速度や光硬化性樹脂組成物7の吐出量の制御を行うことが明記されていることから、先願明細書等に記載された発明が、これらを制御するための制御ユニットを備えていることは、当該明細書等の記載から明らかな事項といえる。 さらに、上記エ(段落【0041】)及びカ(段落【0057】)等に、樹脂用ディスペンサー10又は光透過性カバー部材6を移動させることが明記されていることから、この甲1に記載された発明が、これらの移動を実現するための移動機構を備えていることは、当該明細書等の記載から明らかな事項といえる。 加えて、上記キ(段落【0064】、【0065】)等に、画像表示部材2と光透過性カバー部材6とを光学樹脂組成物7を用いて積層し貼り合わせることが明記されていることから、先願明細書等に記載された発明は、画像表示部材2と光透過性カバー部材6とを積層するための積層ユニット、及び積層した状態で貼り合わせる際等にこの光透過性カバー部材6を支持するための保持ユニットを備えているといえる。 そうすると、先願明細書等には、上記アないしクの記載から、次の発明(以下、「甲1先願発明A」という。)が記載されていると認める。 <甲1先願発明A> 「光透過性カバー部材6の表面に、液状で光透過性を有する光学樹脂組成物7を塗布する塗布方法であって、 光透過性カバー部材6は、光透過性を有し、その表面周縁に遮光層3を備え、 光透過性カバー部材6の表面の周縁部には、遮光層3が形成された領域と遮光層が形成されていない主面部4との境界部に段差部5が形成されており、 前記塗布方法は、光学樹脂組成物7を吐出可能なスリット状の吐出口12を備えた樹脂用ディスペンサー10が、光透過性カバー部材6の表面上を相対的に移動するように、樹脂用ディスペンサー10又は光透過性カバー部材6の一方を移動させる移動工程と、 前記移動工程中に、吐出口12から光学樹脂組成物7を光透過性カバー部材6の表面に吐出する塗布工程と、 前記塗布工程中に、光透過性カバー部材6上の光学樹脂組成物7の膜厚を制御ユニットにて制御する制御工程と、を含み、 前記制御工程では、遮光層3が形成された領域、主面部4及び段差部5における光学樹脂組成物7の表面全体が平坦となるよう、制御ユニットは遮光層3が形成された領域の光学樹脂組成物7の膜厚を主面部4の光学樹脂組成物7の膜厚よりも薄くなるように制御する、塗布方法。」 また、甲1先願発明Aの塗布方法をおこなう塗布装置として、次の発明(以下、「甲1先願発明B」という。)が記載されていると認める。 <甲1先願発明B> 「光透過性カバー部材6の表面に、液状で光透過性を有する光学樹脂組成物7を塗布する塗布装置であって、 光学樹脂組成物7を吐出可能なスリット状の吐出口12を備えた樹脂用ディスペンサー10と、 光透過性カバー部材6の表面上を相対的に移動するように、樹脂用デイスペンサー10又は光透過性カバー部材6を移動させる移動機構と、 樹脂用ディスペンサー10と前記移動機構とを制御する制御ユニットと、を備え、 光透過性カバー部材6は光透過性を有し、その表面周縁に遮光層3を備え、 光透過性カバー部材6の表面の周縁部には、遮光層3が形成された領域と遮光層3が形成されていない主面部4との境界部に段差部5が形成されており、 前記制御ユニットは、前記移動機構により樹脂用ディスペンサー10及び光透過性カバー部材6の少なくとも一方を移動させる移動制御と、 前記移動制御中に、吐出口12から光学樹脂組成物7を光透過性カバ一部材6の表面に吐出する塗布制御と、 前記塗布制御中に、光透過性カバー部材6上の光学樹脂組成物7の膜厚を制御する膜厚制御と、を実行し、 前記膜厚制御では、遮光層3が形成された領域、主面部4及び段差部5における光学樹脂組成物7の表面全体が平坦となるよう、遮光層3が形成された領域の光学樹脂組成物7の膜厚を主面部4の光学樹脂組成物7の膜厚よりも薄くなるように制御する、塗布装置。」 (3) 本件発明1と甲1先願発明Aとの対比・判断 本件発明1と甲1先願発明Aとを対比する。 甲1先願発明Aの「遮光層3」を有する「光透過性カバー部材6」は、本件発明1における「パネル」に相当する。 また、甲1先願発明Aの「光学樹脂組成物7」、「光透過性カバー部材6」、「遮光層3」、「主面部4」、「段差部5」は、それぞれ、本件発明1における「光硬化性樹脂」、「本体」、「遮光層」、「第二の領域」、「段差」に相当する。 加えて、甲1先願発明Aの「吐出口12」、「樹脂ディスペンサー10」は、それぞれ、本件発明1における「ノズル」、「塗布ヘッド」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1先願発明Aとの一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。 ・ 一致点 「パネルの表面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布方法であって、 前記パネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、 前記パネルの前記表面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、 前記塗布方法は、 光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドが、前記パネルの前記表面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド又は前記パネルの一方を移動させる移動工程と、 前記移動工程中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記パネルの前記表面に吐出する塗布工程と、 前記塗布工程中に、前記パネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚をコントロールユニットにて制御する制御工程と、を含み、 前記制御工程では、 前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御する塗布方法。」 ・ 相違点 <相違点1> 制御工程に関し、本件発明1は「少なくとも前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さで、前記膜厚を制御する」と特定するのに対し、甲1先願発明Aは、この点を特定しない点。 以下、相違点1について検討する。 先願明細書等には、膜厚制御についての具体的な方法として、樹脂ディスペンサー又は光透過性カバー部材の移動速度を調整することにより行うこと、樹脂ディスペンサーは一定の速度で移動するとともに、ポンプを調整することで行うこと(段落【0056】)は記載されているが、ノズルの高さで膜厚を制御することについての記載ないし示唆はない。 そして、当業者において、甲1先願発明Aの膜厚制御を行う場合に、ノズルの高さで膜厚制御をすることが自明な事項ということもできないし、ノズル高さで膜厚制御することが、課題解決のための具体的手段における微差であるともいえない。 そうすると、本件発明1と甲1先願発明Aとは同一ということはできない。 (4) 本件発明2ないし3、5ないし6、12ないし14について 本件発明2ないし3、5ないし6、12ないし14は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、それぞれの請求項に記載の事項で本件発明1を更に限定する発明であるから、これらの発明と甲1先願発明Aとを対比すると、少なくとも上記(3)における相違点1で相違するから、本件発明2ないし3、5ないし6、12ないし14は、甲1先願発明Aと同一ということはできない。 (5) 本件発明7と甲1先願発明Bとの対比・判断 本件発明7と甲1先願発明Bとを対比すると、上記(3)と同様であって、本件発明1と甲1先願発明Bとの一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。 ・ 一致点 「パネルの表面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布装置であって、 光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドと、 前記パネルの前記表面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド及び前記パネルの少なくとも一方を移動させる移動機構と、 前記塗布ヘッドと前記移動機構とを制御する制御ユニットと、を備え、 前記パネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、 前記パネルの前記表面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、 前記制御ユニットは、 前記移動機構により前記塗布ヘッド及び前記パネルの少なくとも一方を移動させる移動制御と、 前記移動制御中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記パネルの前記表面に吐出する塗布制御と、 前記塗布制御中に、前記パネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚を制御する膜厚制御と、を実行し、 前記膜厚制御では、 前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御する塗布装置。」 ・相違点 <相違点2> 膜厚制御に関し、本件発明7は「少なくとも前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さで、前記膜厚を制御する」と特定するのに対し、甲1先願発明Bは、この点を特定しない点。 以下、相違点2について検討すると、上記(3)における相違点1と同様であり、本件発明7と甲1先願発明Bとは同一ということはできない。 (6) 本件発明8ないし9、11及び16について 本件発明8ないし9、11及び16は、本件発明7を直接又は間接的に引用し、それぞれの請求項に記載の事項で本件発明7を更に限定する発明であるから、これらの発明と甲1先願発明Bとを対比すると、少なくとも上記(5)における相違点2で相違するから、本件発明8ないし9、11及び16は、甲1先願発明Bと同一ということはできない。 (7) まとめ 以上のとおり、本件特許の請求項1~3、5~9、11~14、16に係る発明は、先願明細書等に記載された発明と同一ではないから、当審からの取消理由2は、理由がない。 3 取消理由3(進歩性)について (1) 甲2の記載 甲2には、以下の記載がある。 ア 「【請求項1】 画像表示部材と、周縁部に遮光層が形成された光透過性カバー部材とが、液状の光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性硬化樹脂層を介し、光透過性カバー部材の遮光層形成面が画像表示部材側に配置されるように積層された画像表示装置の製造方法において、 以下の工程(A)~(D): <工程(A)> 液状の光硬化性樹脂組成物を、光透過性カバー部材の遮光層形成側表面又は画像表示部材の表面に、遮光層と光透過性カバー部材の遮光層形成側表面とで形成される段差がキャンセルされるように、遮光層の厚さより厚く塗布する工程; <工程(B)> 塗布された光硬化性樹脂組成物に対し紫外線を照射して仮硬化させることにより仮硬化樹脂層を形成する工程; <工程(C)> 画像表示部材に、遮光層と仮硬化樹脂層とが内側になるように光透過性カバー部材を貼り合わせる工程; <工程(D)> 画像表示部材と光透過性カバー部材との間に挟持されている仮硬化樹脂層に対し紫外線を照射して本硬化させることにより、画像表示部材と光透過性カバー部材とを光透過性硬化樹脂層を介して積層して画像表示装置を得る工程 を有する製造方法。」 イ 「【0007】 本発明の目的は、以上の従来の技術の問題点を解決することであり、画像表示部材とその表面側に配される光透過性カバー部材とを光硬化性樹脂組成物の硬化樹脂層を介して積層して画像表示装置を製造する際に、熱重合プロセスを利用することなく、遮光層と画像表示部材との間の光硬化性樹脂組成物を、そこから排除されることなく十分に光硬化させ且つ遮光層と光透過性カバー部材表面との間の段差をキャンセルできるようにすると共に、光重合プロセスだけで画像表示装置を製造できるようにすることである。」 ウ 「【0017】 <工程(A)(塗布工程)> まず、図1Aに示すように、片面の周縁部に形成された遮光層1を有する光透過性カバー部材2を用意し、図1Bに示すように、光透過性カバー部材2の表面2aに、液状の光硬化性樹脂組成物3を、遮光層1と光透過性カバー部材2の遮光層形成側表面2aとで形成される段差4がキャンセルされるように、遮光層1の厚さより厚く塗布する。具体的には、遮光層1の表面も含め、光透過性カバー部材2の遮光層形成側表面2aの全面に光硬化性樹脂組成物3を平坦になるように塗布し、段差が生じないようにする。従って、光硬化性樹脂組成物3を、遮光層1の厚さの好ましくは1.2~50倍、より好ましくは2~30倍の厚さで塗布する。」 エ 「【0041】 <工程(C)(貼り合わせ工程)> 次に、図1Eに示すように、画像表示部材6に、光透過性カバー部材2をその仮硬化樹脂層5側から貼り合わせる。貼り合わせは、公知の圧着装置を用いて、10℃~80℃で加圧することにより行うことができる。 【0042】 <工程(D)(本硬化工程)> 次に、図1Fに示すように、画像表示部材6と光透過性カバー部材2との間に挟持されている仮硬化樹脂層5に対し紫外線を照射して本硬化させる。さらに必要に応じて、光透過性カバー部材2の遮光層と画像表示部材6との間の樹脂層に紫外線を照射することにより、該樹脂層を本硬化させる。これにより、画像表示部材6と光透過性カバー部材2とを光透過性硬化樹脂層7を介して積層して画像表示装置10(図1G)を得る。」 オ 「【0044】 また、本工程において本硬化させるのは、仮硬化樹脂層5を十分に硬化させて、画像表示部材6と光透過性カバー部材2とを接着し積層するためである。このような本硬化のレベルは、光透過性硬化樹脂層7の硬化率(ゲル分率)が好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上となるようなレベルである。」 カ 「【0056】 実施例1 (工程(A)(塗布工程)) まず、45(w)×80(l)×0.4(t)mmのサイズのガラス板を用意し、このガラス板の周縁部全域に、乾燥厚で40μmとなるように4mm幅の遮光層を、熱硬化タイプの黒色インク(MRXインキ、帝国インキ製造社)を用いて、スクリーン印刷法により塗布し、乾燥させることにより、遮光層付きガラス板を用意した。 ・・・ 【0058】 次に、この光硬化性樹脂組成物を、樹脂用ディスペンサーを用いて遮光層付きガラス板の遮光層形成面の全面に吐出し、平均200μmの光硬化性樹脂組成物膜を形成した。この光硬化性樹脂組成物膜は、図1(B)のように遮光層のほぼ全域に跨るように形成されており、40μm厚mの遮光層よりも160μmほど厚く形成されていた。」 キ 「【0063】 (工程(C)(貼り合わせ工程)) 次に、40(W)×70(L)mmのサイズの液晶表示素子の偏光板が積層された面に、工程(B)で得たガラス板をその仮硬化樹脂層側が偏光板側となるように載置し、ガラス板側からゴムローラで加圧して、ガラス板を貼り付けた。貼り付けられた状態でガラス板側から液晶表示素子を目視観察した場合、遮光層の周囲に気泡は確認されなかった。 【0064】 (工程(D)(本硬化工程)) 次に、この液晶表示素子に対し、ガラス板側から、紫外線照射装置(LC-8、浜松ホトニクス製)を使って紫外線(50mW/cm2)を60秒照射することにより仮硬化樹脂層を完全に硬化させ、光透過性硬化樹脂層を形成した。光透過性硬化樹脂層の硬化率は97%であった。これにより、液晶表示素子に、光透過性カバー部材としてのガラス板が光透過性硬化樹脂層を介して積層された液晶表示装置が得られた。」 ク 「 」 (2) 甲2に記載された発明 甲2には、上記(1)アないしクの記載から、特許請求の範囲の請求項1における<工程A)>に関わる塗布方法として、次の塗布方法の発明(以下、「甲2発明A」という。)及び塗布装置の発明(以下、「甲2発明B」という。)が記載されていると認める。 <甲2発明A> 「画像表示部材と、周縁部に遮光層が形成された光透過性カバー部材とが、液状の光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性硬化樹脂層を介し、光透過性カバー部材の遮光層形成面が画像表示部材側に配置されるように積層された画像表示装置を製造するための塗布方法であって、 液状の光硬化性樹脂組成物を、光透過性カバー部材の遮光層形成側表面又は画像表示部材の表面に、遮光層と光透過性カバー部材の遮光層形成側表面とで形成される段差がキャンセルされるように、遮光層の厚さより厚く塗布する工程を有する、 塗布方法。」 <甲2発明B> 「液状の光硬化性樹脂組成物を、光透過性カバー部材の遮光層形成側表面又は画像表示部材の表面に、遮光層と光透過性カバー部材の遮光層形成側表面とで形成される段差がキャンセルされるように、遮光層の厚さより厚く塗布するため、樹脂用ディスペンサーを用いて遮光層付きガラス板の遮光層形成面の全面に吐出する塗布装置。」 (3) 甲3ないし甲6に記載の事項 ア 甲3の記載事項 甲3には、以下の記載がある。 「本実施形態の表示装置100は、図1(a)に示すように、液晶表示パネル10と、液晶表示パネル10の表示面側に配置されたカバー基板30と、液晶表示パネル10及びカバー基板30間に設けられた接着剤層21と、液晶表示パネル10の後方側に配置されたバックライトユニット(図示せず)と、このような構成部材を保持する筐体(図示せず)とを備える液晶表示装置である。すなわち、表示装置100は、液晶表示パネル10とカバー基板30とが接着剤層21により貼り合わされた、すなわち固着(固定)された構造を有する。」(段落【0037】) 「また、カバー基板30は、少なくとも表示領域に対応する領域が透明である。より具体的には、カバー基板30は、図1に示すように、表示領域に対応して形成された透光部分である窓部32と、窓部の周囲に設けられた遮光部分である黒縁部31とを有する。これにより、表示装置100のデザイン性をより向上することができるとともに、液晶表示パネル10の隠されるべき部分をカバー基板30により効果的に視認されなくすることができる。」(段落【0044】) 「接着剤層21の材料である接着剤は、紫外線の照射により硬化が開始される紫外線硬化型接着剤でもある。」(段落【0048】) 「カチオン重合型樹脂のような樹脂は、通常、空気に比べて高い光透過率を有する。」(段落【0049】) 「次に、窓部32及び黒縁部31を有するカバー基板30を準備する。なお、カバー基板30の材質としてはある程度の強度を有し、かつ透明であり得るものであれば特に限定されないが、ガラス、樹脂等が好適である。黒縁部31の形成方法としては特に限定されないが、カバー基板30の接着剤層21側の主面上に黒色インクを印刷する方法が好適である。」(段落【0055】) 「次に、図4(a)に示すように、スリットコーター等のノズル40を用いて、厚さ50~200μm程度の接着剤20aを液晶表示パネル10の偏光板13aに塗布する。なお、接着剤20aは、カバー基板30に塗布してもよい」(段落【0056】) イ 甲4の記載事項 甲4には、以下の記載がある。 「本発明のスピンレスコート装置は、図示しない装置ベースの上に、ガラス基板1を載置する石常盤からなる基板ステージ2と、フォトレジスト等の塗布液5を吐出する少なくとも1台以上のスリットノズル3と、このスリットノズル3を基板ステージ上に支持するとともに基板ステージに沿って移動させる門型のガントリ4と、スリットノズル3に接続して塗布液充填槽50から塗布液を供給する送液ポンプ6を有する塗料供給装置60を基本として構成され、ガラス基板の面内の任意の位置で、複数の狙い膜厚に対応する塗布膜厚への膜厚変更制御機構を備えている。」(段落【0018】) 「図3、図4、図5に示す塗布動作プログラムを参照して、上記のように構成された本発明のスピンレスコート装置の動作を説明する。図3、図4、図5は、それぞれ、『ガラス基板に対する相対的なノズルの走行速度を変える』、『送液ポンプの送液量を変える』、および『上記2つを組み合わせて実施する』の3つの手法を実施した場合に得られる膜厚の変化量を表す。」(段落【0026】) ウ 甲5の記載事項 甲5には、以下の記載がある。 「スロット型の塗布ヘッド部(A)に、被塗布物(3)の表面の高さの変動にあわせて塗布ヘッド部高さを追従させるためのヘッド高さ追従機構(B)を具備することで、そりや厚み変動による被塗布物(3)の表面の高さに変動がある場合でも、被塗布物(3)と塗布ヘッド部(A)のスロット部(As)との隙間を常に一定に保持することができ、結果として被塗布物(3)に均一かつ平滑な塗膜を形成することができる。」(段落【0014】) エ 甲6の記載事項 甲6には、以下の記載がある。 「本発明における板ガラスの貼合方法は、調整テーブル2に設けた複数組の吸着体3でベースガラスGを吸着固定し、固定台1の外側方の待機位置において貼合対象Fを可動テーブル4に吸着固定する工程と、可動テーブル4を待機位置から貼合位置へ変位操作して、貼合対象FをベースガラスGに対して上下隙間Eを介して正対させる工程と、固定台1に設けたずれ検知装置20で貼合対象FとベースガラスGの位置ずれを光学的に検知し、ずれ検知装置20からの出力信号に応じて調整テーブル2の位置を位置調整装置6で調整操作して、貼合対象FとベースガラスGを位置決めする工程と、接着ローラー5を待機位置から押圧位置へ移動させてベースガラスGの接着始端を貼合対象Fに押し付け、接着ローラー5を接着始端から接着終端へ向かって移動させて、ベースガラスGを貼合対象Fに押圧接着する工程とからなり、接着ローラー5を接着始端から接着終端へ向かって移動する過程で、接着ローラー5の接着移動に先行して各吸着体3を吸着位置から退避位置へ退避させながら、ベースガラスGを貼合対象Fに押圧接着する」(段落【0009】) 「図1および図2において貼合装置は、横長の直方体状に組まれた枠体からなる固定台1と、固定台1で位置調整可能に支持される調整テーブル2と、調整テーブル2上に設けられる3組の吸着体3と、貼合対象Fを吸着固定する可動テーブル4と、吸着体3で支持されたベースガラスGを貼合対象Fに押し付け操作する接着ローラー5などで構成してある。貼合対象Fの片面には、予め接着材層8が形成してあり、その外面が剥離紙で覆ってある。」(段落【0018】) 「位置決めが終了したのち、図8に示すように接着ローラー5をベースガラスGの下方の待機位置から押圧位置へ上昇移動させて、ベースガラスGの接着始端を貼合対象Fに押し付け、その状態のままで接着ローラー5を接着始端から接着終端へ向かって移動させて、ベースガラスGを貼合対象Fに押圧接着する。このとき、図10に示すように接着ローラー5の押圧接着動作に先行して各吸着体3を吸着位置から退避位置へ退避させながら、ベースガラスGを貼合対象に押圧接着する。」(段落【0030】) (4) 本件発明1について 本件発明1と甲2発明Aとを対比する。 甲2発明Aの「周縁部に遮光層が形成された光透過性カバー部材」は、本件発明1における「パネル」に相当する。 また、甲2発明Aの「光硬化性樹脂組成物」、「光透過性カバー部材」は、それぞれ、本件発明1における「光硬化性樹脂」、「本体」に相当し、当該「光硬化性樹脂組成物」は、硬化されて光透過性硬化樹脂層を形成するものであるから、液状で光透過性を有するといえる。 甲2発明Aの「光透過性カバー部材」には、「遮光層」によって、「パネルの前記表面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差」が形成されているといえる。 加えて、甲2発明Aの「樹脂ディスペンサー」は、本件発明1における「ノズルを備えた塗布ヘッド」に相当する。また、甲2発明Aでは、「樹脂ディスペンサー」(塗布ヘッド)を利用して、「遮光層付きガラス板の遮光層形成面の全面に吐出し、平均200μmの光硬化性樹脂組成物膜を形成した。この光硬化性樹脂組成物膜は、図1(B)のように遮光層のほぼ全域に跨るように形成されており、40μm厚mの遮光層よりも160μmほど厚く形成されていた。」(段落【0058】)のように塗布されるのであるから、当該甲2発明Aの「樹脂ディスペンサー」も、本件発明1と同様に「光硬化性樹脂を吐出可能なノズルを備えた塗布ヘッドが、前記パネルの前記表面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド又は前記パネルの一方を移動させる移動工程と、前記移動工程中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記パネルの前記表面に吐出する塗布工程と、前記塗布工程中に、前記パネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚をコントロールユニットにて制御する制御工程」を有するといえる。 また、甲2発明Aは、「遮光層と光透過性カバー部材の遮光層形成側表面とで形成される段差がキャンセルされるように」「塗布する」のであるから、本件発明1と同様に「前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう」「制御する」ものといえる。 そうすると、本件発明1と甲2発明Aとの一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。 ・ 一致点 「パネルの表面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布方法であって、 前記パネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、 前記パネルの前記表面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、 前記塗布方法は、 光硬化性樹脂を吐出可能なノズルを備えた塗布ヘッドが、前記パネルの前記表面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド又は前記パネルの一方を移動させる移動工程と、 前記移動工程中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記パネルの前記表面に吐出する塗布工程と、 前記塗布工程中に、前記パネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚をコントロールユニットにて制御する制御工程と、を含み、 前記制御工程では、 前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは制御する、 塗布方法。」 ・相違点 <相違点A> 塗布ヘッドのノズルに関し、本件発明1は「スリット状の」と特定するのに対し、甲2発明Aは、この点を特定しない点。 <相違点B> 光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう塗布する制御工程に関し、本件発明1は、「前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように」と特定するのに対して、甲2発明Aは、遮光層の厚さより厚く塗布するとの特定である点。 <相違点C> 制御工程に関し、本件発明1は「少なくとも前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さで、前記膜厚を制御する」と特定するのに対し、甲2発明Aは、この点を特定しない点。 事案に鑑み、相違点Cから検討する。 甲2には、塗布工程における膜厚制御については、具体的な記載は存在しない。 そして、申立人の提示する甲3ないし甲6においても、塗布工程における膜厚制御を、パネルの表面からのノズル高さで行うものは提示されていない。 また、甲2発明Aの「液状の光硬化性樹脂組成物を、光透過性カバー部材の遮光層形成側表面又は画像表示部材の表面に、遮光層と光透過性カバー部材の遮光層形成側表面とで形成される段差がキャンセルされるように、遮光層の厚さより厚く塗布する」ことの具体的な方法として、当業者において、塗布工程における膜厚制御を、パネルの表面からのノズル高さで行うことが自明であったということはできない。 そうすると、相違点Cは、当業者においても想到容易でない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5) 本件発明2ないし3、5ないし6、12ないし14について 本件発明2ないし3、5ないし6、12ないし14は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、それぞれの請求項に記載の事項で本件発明1を更に限定する発明であるから、これらの発明と甲2発明Aとを対比すると、少なくとも上記(4)における相違点Cで相違し、当該相違点Cは、上記(4)のとおり想到容易でないから、本件発明2ないし3、5ないし6、12ないし14は、甲2発明Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (6) 本件発明7について 本件発明7と甲2発明Bとを対比する。 上記(4)における本件発明1と甲2発明Aとの対比と同様であって、甲2発明Bの装置も、光硬化性樹脂を吐出可能なノズルを備えた塗布ヘッドと、パネルの前記表面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド及び前記パネルの少なくとも一方を移動させる移動機構と、前記塗布ヘッドと前記移動機構とを制御する制御ユニットとを備えているといえる。 また、甲2発明Bにおいても、「光透過性カバー部材」には、「遮光層」によって、「パネルの前記表面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差」が形成されているといえる。 さらに、上記(4)での検討と同様に、甲2発明Bは、制御ユニットを有することは明らかであり、該制御ユニットは、移動機構により前記塗布ヘッド及び前記パネルの少なくとも一方を移動させる移動制御と、移動制御中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記パネルの前記表面に吐出する塗布制御と、塗布制御中に、前記パネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚を制御する膜厚制御とを実行するものであって、表面の周縁部の前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、制御するものといえる。 そうすると、本件発明7と甲2発明Bとの一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。 ・ 一致点 「パネルの表面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布装置であって、 光硬化性樹脂を吐出可能なノズルを備えた塗布ヘッドと、 前記パネルの前記表面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド及び前記パネルの少なくとも一方を移動させる移動機構と、 前記塗布ヘッドと前記移動機構とを制御する制御ユニットと、を備え、 前記パネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、 前記パネルの前記表面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、 前記制御ユニットは、 前記移動機構により前記塗布ヘッド及び前記パネルの少なくとも一方を移動させる移動制御と、 前記移動制御中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記パネルの前記表面に吐出する塗布制御と、 前記塗布制御中に、前記パネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚を制御する膜厚制御と、を実行し、 前記膜厚制御では、 前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、制御する、 塗布装置。」 ・相違点 <相違点D> 塗布ヘッドのノズルに関し、本件発明7は「スリット状の」と特定するのに対し、甲2発明Bは、この点を特定しない点。 <相違点E> 制御ユニットが行う光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう塗布する制御に関し、本件発明7は、「前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように」と特定するのに対して、甲2発明Bは、遮光層の厚さより厚く塗布するとの特定である点。 <相違点F> 塗布制御における膜厚制御に関し、本件発明1は「少なくとも前記パネルの前記表面からの前記ノズルの高さで、前記膜厚を制御する」と特定するのに対し、甲2発明Bは、この点を特定しない点。 事案に鑑み、相違点Fから検討する。 甲2には、塗布制御における膜厚制御については、具体的な記載は存在しない。 そして、申立人の提示する甲3ないし甲6においても、塗布制御における膜厚制御を、パネルの表面からのノズル高さで行うものは提示されていない。 また、甲2発明Bの「液状の光硬化性樹脂組成物を、光透過性カバー部材の遮光層形成側表面又は画像表示部材の表面に、遮光層と光透過性カバー部材の遮光層形成側表面とで形成される段差がキャンセルされるように、遮光層の厚さより厚く塗布する」ことの具体的な方法として、当業者において、塗布制御における膜厚の制御をパネルの表面からのノズル高さで行うことが自明であったということはできない。 そうすると、相違点Fは、当業者においても想到容易でない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明7は、甲2発明Bに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (7) 本件発明8ないし9、11及び16について 本件発明8ないし9、11及び16は、本件発明7を直接又は間接的に引用し、それぞれの請求項に記載の事項で本件発明7を更に限定する発明であるから、これらの発明と甲2発明Bとを対比すると、少なくとも上記(6)における相違点Fで相違し、その判断は上記(6)のとおりであるから、本件発明8ないし9、11及び16は、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (8) まとめ 以上のとおり、本件特許の請求項1ないし3、5ないし9、11ないし14、16に係る発明は、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、当審からの取消理由3は、理由がない。 第7 取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載の申立理由について 当審からの取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載の申立理由は、訂正前の請求項4、10、15に対する申立理由2(拡大先願)と訂正前の請求項4、10、15に対する申立理由3(進歩性)であり、本件訂正請求によって、訂正前の請求項4及び10は削除されているので、本件発明15に対する申立理由2及び3について判断を示す。 1 本件発明15に対する申立理由2について (1) 先願明細書等に記載の発明 上記第6 2(1)の記載から、次の発明(以下、「甲1先願発明C」という。)が記載されていると認める。 <甲1先願発明C> 「画像表示部材2と光透過性カバー部材6を備える画像表示装置の製造方法であって、 光透過性カバー部材6は、光透過性を有し、その表面周縁に遮光層3を備え、 光透過性カバー部材6の表面の周縁部には、遮光層3が形成された領域と遮光層が形成されていない主面部4との境界部に段差部5が形成されており、 光透過性カバー部材6の表面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する工程と、 画像表示部材に、光透過性カバー部材を仮硬化樹脂層側から圧着装置を用いて貼り合わせる工程とを有し、 前記塗布方法は、光学樹脂組成物7を吐出可能なスリット状の吐出口12を備えた樹脂用ディスペンサー10が、光透過性カバー部材6の表面上を相対的に移動するように、樹脂用ディスペンサー10又は光透過性カバー部材6の一方を移動させる移動工程と、 前記移動工程中に、吐出口12から光学樹脂組成物7を光透過性カバー部材6の表面に吐出する塗布工程と、 前記塗布工程中に、光透過性カバー部材6上の光学樹脂組成物7の膜厚を制御ユニットにて制御する制御工程と、を含み、 前記制御工程では、遮光層3が形成された領域、主面部4及び段差部5における光学樹脂組成物7の表面全体が平坦となるよう、制御ユニットは遮光層3が形成された領域の光学樹脂組成物7の膜厚を主面部4の光学樹脂組成物7の膜厚よりも薄くなるように制御する塗布方法である、 画像表示装置の製造方法。」 (2) 本件発明15と甲1先願発明Cとの対比・判断 本件発明15と甲1先願発明Cとを対比すると、上記第6 2(3)に記載に加えて、次のことがいえる。 甲1先願発明Cの「画像表示装置2」、「光透過性カバ-部材6」、「画像表示装置」は、それぞれ、本件発明15の「第二のパネル」、「第一のパネル」、「積層体」にも相当する。 甲1先願発明Cにおける「画像表示部材に、光透過性カバー部材を仮硬化樹脂層側から圧着装置を用いて貼り合わせる工程」において、光学樹脂組成物が塗布された光透過性カバー部材6を保持する工程が存在すること、及び、厚み方向に押圧力を付与する押圧工程が存在することは当業者において明らかである。 そうすると、本件発明15と甲1先願発明Cとの一致点と相違点はそれぞれ次のとおりである。 ・ 一致点 「第一のパネルと第二のパネルとを備える積層体の製造方法であって、 所定の塗布方法により、前記第一のパネルの一方面に、液状の光硬化性樹脂を塗布する工程と、 光硬化性樹脂が塗布された前記第一のパネルを保持する保持工程と、 前記第二のパネルを前記第一のパネルの前記一方面に重ねる積層工程と、 前記第一のパネルと前記第二のパネルとの積層体に、厚み方向の押圧力を付与する押圧工程と、を備え、 前記所定の塗布方法は、前記第一のパネルの前記一方面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布方法であって、 前記第一のパネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、 前記第一のパネルの前記一方面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、 前記所定の塗布方法は、 光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドが、前記第一のパネルの前記一方面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド又は前記第一のパネルの一方を移動させる移動工程と、 前記移動工程中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記第一のパネルの前記一方面に吐出する塗布工程と、 前記塗布工程中に、前記第一のパネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚をコントロールユニットにて制御する制御工程と、を含み、 前記制御工程では、 前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう、前記コントロールユニットは前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように制御し、 前記第一のパネルが光透過性を有するカバーパネルであり、 前記第二のパネルが画像表示パネルである、 前記積層体が画像表示装置である、 積層体の製造方法。」 ・ 相違点 <相違点3> 本件発明15は、パネルの保持工程、積層工程及び押圧工程に関し、「前記保持工程では、表面に光硬化性樹脂が塗布された前記カバーパネルを、前記表面が上向きの姿勢で保持し、前記積層工程では、前記カバーパネルが貼り合わされる面が下向きの姿勢で前記画像表示パネルをその上側から吸着する吸着ユニットで保持し、かつ、前記画像表示パネルを前記カバーパネル上に重ね、前記押圧工程では、前記カバーパネルをその下側からフリーローラで前記画像表示パネル側に当接し、前記フリーローラを移動させることで、前記画像表示装置を厚み方向に押圧する」と特定するのに対し、甲1先願発明Cは、この点について特定しない点。 以下、相違点3について検討する。 先願明細書等には、画像表示装置の製造におけるパネルの保持工程、積層工程及び押圧工程についての記載は存在しない。そして、画像表示装置であれば、相違点3において特定されている保持工程、積層工程及び押圧工程を有するとの技術常識も存在しないし、相違点3において特定されている保持工程、積層工程及び押圧工程を行うことが、課題解決のための具体的手段における微差であるともいえない。 そうすると、本件発明15と甲1先願発明Cとは同一ということはできない。 (3) まとめ よって、本件発明15に対する特許異議申立書に記載の申立理由2は、理由がない。 2 本件発明15に対する申立理由3について (1) 甲2に記載の発明 上記第6 3(1)の記載から、次の発明(以下、「甲2発明C」という。)が記載されていると認める。 <甲2発明C> 「画像表示部材と光透過性カバー部材を備える画像表示装置の製造方法であって、 光透過性カバー部材は、光透過性を有し、その表面周縁に遮光層を備え、 光透過性カバー部材の表面の周縁部には、遮光層が形成された領域と遮光層が形成されていない主面部との境界部に段差部が形成されており、 光透過性カバー部材の表面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する工程と、 画像表示部材に、塗工後仮硬化された光硬化性樹脂側が画像表示部材側となるように載置し、光透過性カバー部材の塗布されていない面側からゴムローラで加圧する貼り合わせる工程と、 前記塗布する方法は、液状の光硬化性樹脂組成物を、光透過性カバー部材の遮光層形成側表面又は画像表示部材の表面に、遮光層と光透過性カバー部材の遮光層形成側表面とで形成される段差がキャンセルされるように、遮光層の厚さより厚く塗布する工程を有する、 塗布方法である、 画像表示装置の製造方法。」 (2) 本件発明15と甲2発明Cとの対比・判断 本件発明15と甲2発明Cとを対比すると、上記第6 3(4)の記載に加えて、次のことがいえる。 甲2発明Cの「画像表示装置」、「光透過性カバ-部材」、「画像表示装置」は、それぞれ、本件発明15の「第二のパネル」、「第一のパネル」、「積層体」にも相当する。 甲2発明Cにおける「画像表示部材に、光透過性カバー部材を光透過性カバー部材側からゴムローラで加圧して貼り合わせる工程」において、光硬化性樹脂組成物が塗布された光透過性カバー部材を保持する工程が存在すること、及び、厚み方向に押圧力を付与する押圧工程が存在することは当業者において明らかである。 そうすると、本件発明15と甲2発明Cとの一致点と相違点はそれぞれ次のとおりである。 ・ 一致点 「第一のパネルと第二のパネルとを備える積層体の製造方法であって、 所定の塗布方法により、前記第一のパネルの一方面に、液状の光硬化性樹脂を塗布する工程と、 光硬化性樹脂が塗布された前記第一のパネルを保持する保持工程と、 前記第二のパネルを前記第一のパネルの前記一方面に重ねる積層工程と、 前記第一のパネルと前記第二のパネルとの積層体に、厚み方向の押圧力を付与する押圧工程と、を備え、 前記所定の塗布方法は、前記第一のパネルの前記一方面に、液状で光透過性を有する光硬化性樹脂を塗布する塗布方法であって、 前記第一のパネルは、光透過性を有する本体と、前記本体の表面周縁に形成された遮光層と、を備え、 前記第一のパネルの前記一方面の周縁部には、前記遮光層が形成された第一の領域と前記遮光層が形成されていない第二の領域との境界部に段差が形成されており、 前記所定の塗布方法は、 光硬化性樹脂を吐出可能なスリット状のノズルを備えた塗布ヘッドが、前記第一のパネルの前記一方面上を相対的に移動するように、前記塗布ヘッド又は前記第一のパネルの一方を移動させる移動工程と、 前記移動工程中に、前記ノズルから前記光硬化性樹脂を前記第一のパネルの前記一方面に吐出する塗布工程と、 前記塗布工程中に、前記第一のパネル上の前記光硬化性樹脂の膜厚をコントロールユニットにて制御する制御工程と、を含み、 前記制御工程では、 前記第一の領域、前記第二の領域及び前記段差における前記光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるように制御し、 前記第一のパネルが光透過性を有するカバーパネルであり、 前記第二のパネルが画像表示パネルである、 前記積層体が画像表示装置である、 積層体の製造方法。」 ・ 相違点 <相違点A> 塗布ヘッドのノズルに関し、本件発明1は「スリット状の」と特定するのに対し、甲2発明Cは、この点を特定しない点。 <相違点B> 光硬化性樹脂の表面全体が平坦となるよう塗布する制御工程に関し、本件発明1は、「前記第一の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚を前記第二の領域の前記光硬化性樹脂の膜厚よりも薄くなるように」と特定するのに対して、甲2発明Cは、遮光層の厚さより厚く塗布するとの特定である点。 <相違点G> パネルの保持工程、積層工程及び押圧工程に関し、本件発明15は、「前記保持工程では、表面に光硬化性樹脂が塗布された前記カバーパネルを、前記表面が上向きの姿勢で保持し、前記積層工程では、前記カバーパネルが貼り合わされる面が下向きの姿勢で前記画像表示パネルをその上側から吸着する吸着ユニットで保持し、かつ、前記画像表示パネルを前記カバーパネル上に重ね、前記押圧工程では、前記カバーパネルをその下側からフリーローラで前記画像表示パネル側に当接し、前記フリーローラを移動させることで、前記画像表示装置を厚み方向に押圧する」と特定するのに対し、甲2発明Cは、貼り合わせ工程及び押圧工程として、画像表示部材に、塗工後仮硬化された光硬化性樹脂側が画像表示部材側となるように載置し、光透過性カバー部材の塗布されていない面側からゴムローラで加圧している点。 事案に鑑み、まず、相違点Gについて検討する。 甲2の保持、積層、押圧工程における、ガラス板(カバーパネル)と液晶表示素子(画像表示パネル)との配置関係は、吸着ユニットを利用していないことから、逆であって、押圧するローラの配置も異なるものである。そして、申立人の提示する何れの証拠にも、相違点Gに係る保持、積層、押圧工程に相当するものは、記載されていない。 してみれば、甲2発明Cの保持、積層、押圧工程を、相違点Gの工程とすることは、当業者においても想到容易でない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明15は、甲2発明Cに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3) まとめ よって、本件発明15に対する特許異議申立書に記載の申立理由3は、理由がない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、当審において通知した取消理由及び申立人が主張する申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし3、5ないし9、11ないし16に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし3、5ないし9、11ないし16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 本件特許の請求項4及び10に係る特許は、上記のとおり、本件訂正請求により削除された。これにより、請求項4及び10に係る特許に対する申立人による特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2019-700266

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