特許異議申立
2024-700519
液体塗布型制振材用の2成分ポリウレタン系
- 審判番号
- 2024-700519
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-548566
- 登録番号
- 7391101
- 請求日
- 2024年06月03日
- 審決日
- 2024年09月30日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】エイチ.ビー.フラー カンパニー
- 【権利者代理人】村山 靖彦
- 【権利者代理人】実広 信哉
- 【権利者代理人】阿部 達彦
- 【異議申立人】前田 洋志
- 審判長/審判官
- 審判長 淺野 美奈
- 審判官 天野 宏樹
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.113-Y (B05D) / P1651.121-Y (B05D) / P1651.537-Y (B05D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7391101号発明「液体塗布型制振材用の2成分ポリウレタン系」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7391101号の請求項1ないし21に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7391101号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~21に係る特許についての出願は、2019年(令和元年)10月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年10月31日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、令和5年11月24日にその特許権の設定登録(請求項の数21)がされ、同年12月4日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対して、令和6年6月3日に特許異議申立人前田洋志(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~21)がされ、同年7月11日に手続補正書(証拠説明書)が提出されたものである。
第2 本件発明について
本件特許の請求項1~21に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明21」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~21に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
なお、以下において、隅付き括弧は「[ ]」と表記した。
「[請求項1]
基材の表面にコーティングを作り出すための方法であって、
a. 成分A及び成分Bを含む2成分ポリウレタン系を得る工程であって、成分Aはポリオールを含み、成分Bはイソシアネートを含み、成分A若しくは成分Bのいずれか、又は両成分が充填剤を含む、工程と、
b. 成分A及び成分Bを混合して、前記ポリオール、前記イソシアネート、及び前記充填剤を含む混合物を形成する工程と、
c. 前記混合物を基材の表面に塗布してコーティングを形成する工程と、
d. 前記コーティングを硬化させる工程と、を含み、
工程c)及び工程d)は、10℃~40℃の周囲温度において実行され、工程b)の直後の前記混合物の粘度は、RV-7スピンドルを用いて10rpmでBrookfield RV粘度計で測定すると、23℃において10Pas~500Pasである、方法。
[請求項2]
成分A及び成分Bの前記混合物の密度が、23℃において0.7~3g/cm3である、請求項1に記載の方法。
[請求項3]
前記混合物中の前記ポリオールヒドロキシル基に対する前記イソシアネート基の比率が0.55~1.2である、請求項1又は2に記載の方法。
[請求項4]
前記混合物中の前記ポリオールヒドロキシル基に対する前記イソシアネート基の比率が0.6~1.1である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
[請求項5]
前記混合物中の前記ポリオールヒドロキシル基に対する前記イソシアネート基の比率が0.6~1.0である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
[請求項6]
Brookfield RV粘度計で測定すると、成分Aは、23℃において20~1000Pasの粘度を有し、成分Bは、23℃において0.01~10Pasの粘度を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
[請求項7]
前記ポリウレタンコーティングは、押し出しによって塗布されて、薄膜若しくはビードのうちの少なくとも1つを形成する、又は前記ポリウレタンコーティングは、ディスペンサによって、前記ディスペンサに対して垂直である、傾斜している、湾曲している、又は頭上にある表面に塗布される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
[請求項8]
前記ポリウレタンコーティングは消音コーティングであり、DIN EN ISO 6721:1996手順Aに従って、3mmのLASD層厚で0℃~60℃の温度において測定すると、二次(100~150Hz)での最大損失係数が0.1以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
[請求項9]
基材の表面に消音コーティングを作り出すための方法であって、
a. 成分A及び成分Bを含む2成分ポリウレタン系を得る工程であって、成分Aはポリオールを含み、成分BはMDIベースのポリメリックイソシアネートを含み、成分A若しくは成分Bのいずれか、又は両成分が充填剤を含む、工程と、
b. 成分A及び成分Bを混合して、前記ポリオール、前記ポリメリックイソシアネート、及び前記充填剤を含む混合物を形成する工程と、
c. 前記混合物を基材の表面に塗布してコーティングを形成する工程と、
d. 前記コーティングを硬化させて、消音コーティングを作り出す工程と、を含み、
工程c)及び工程d)は、10℃~40℃の周囲温度において実行され、前記消音コーティングの二次(100~150Hz)での最大損失係数は、DIN EN ISO 6721:1996手順Aに従って3mmの消音コーティング厚について0℃~60℃の温度において測定すると、0.1以上である、方法。
[請求項10]
前記基材は家電製品又は家電製品部品の一部であり、成分A及び成分Bの前記混合物の密度は、1.7g/cm3超であり、前記消音コーティングの二次(100~150Hz)での最大損失係数は、DIN EN ISO 6721:1996手順Aに従って3mmのLASD層厚で25℃において測定すると、0.1以上である、又は
前記基材は自動車又は自動車部品の一部であり、成分A及び成分Bの前記混合物の密度は、1.7g/cm3以下であり、前記消音コーティングの二次(100~150Hz)での最大損失係数は、DIN EN ISO 6721:1996手順Aに従って3mmのLASD層厚で15℃において測定すると、0.1以上である、請求項9に記載の方法。
[請求項11]
成分A及び成分Bの前記混合物の密度は、23℃において0.7~1.2g/cm3であり、前記消音コーティングの最大損失係数は、DIN EN ISO 6721-3:1996の手順Aに記載のように、Oberst測定によって3mmの層厚かつ二次測定で測定すると、7℃~40℃の温度において0.1以上である、又は
成分A及び成分Bの前記混合物の密度は、23℃において1.8~2.2g/cm3であり、前記消音コーティングの最大損失係数は、DIN EN ISO 6721-3:1996の手順Aに記載のように、Oberst測定によって3mmの層厚かつ二次測定で測定すると、17℃~45℃の温度において0.1以上である、請求項9又は10に記載の方法。
[請求項12]
成分A若しくは成分B、又は両成分が、ポリウレタン重合触媒を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
[請求項13]
成分Aは、必須成分としてポリオール、充填剤、及びポリウレタン重合触媒を含み、
また、任意成分として
0~3体積%のレオロジー添加剤と、
0~3体積%の接着促進剤と、
0~3体積%の乾燥剤と、
0~2体積%の分散添加剤と、
0~20体積%の難燃剤と、を含み、
成分Bは、必須成分として、
0超かつ最大100体積%のイソシアネートを含み、
また、任意成分として
0~50体積%の充填剤と、
0~6体積%のレオロジー添加剤と、を含み、
前記体積%は、前記成分の総体積に対してである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
[請求項14]
成分Aは、
20~60体積%の充填剤、
0超かつ最大0.5体積%のポリウレタン重合触媒、
100体積%までのポリオールを含み、
前記体積%は、前記成分の総体積に対してである、請求項13に記載の方法。
[請求項15]
成分A対成分Bの混合比は、体積比で1.1:1~8:1の範囲である、請求項13又は14に記載の方法。
[請求項16]
成分A対成分Bの混合比は、体積比で2:1~6:1の範囲である、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
[請求項17]
成分A対成分Bの混合比は、体積比で3:1~5.5:1の範囲である、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
[請求項18]
成分A対成分Bの混合比は、体積比で3:1~5:1の範囲である、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
[請求項19]
前記イソシアネートはMDIベースである、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
[請求項20]
請求項1~8のいずれか一項に記載のコーティング又は請求項9~12のいずれか一項に記載の消音コーティングを含む、洗濯機、乾燥機、食器洗浄機、車両、又はその構成部品。
[請求項21]
請求項1~19のいずれか一項に記載の方法によって得ることができるポリウレタンコーティングでコーティングされた表面を含むデバイス又は構成部品であって、前記コーティングされた表面の振動が、振動時に、コーティングされていない表面の振動と比較して、前記ポリウレタン消音コーティングに起因して低減され、最大損失係数は、0℃~60℃の温度において測定すると、0.1以上である、デバイス又は構成部品。」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠方法として下記2.に示す甲第1号証~甲第8号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲8」のようにいう。)を提出し、概略、以下の特許異議申立理由を主張している。なお、特許異議申立理由の番号は当審が仮に付与した。
1.特許異議申立理由
(1)理由1(甲1に基づく新規性欠如)
本件発明1、12~14、19、20は、本件特許の優先日前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)理由2(甲1に基づく進歩性欠如)
本件発明1~21は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3)理由3(サポート要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、本件発明1~21についての特許は同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
ア 実施例の粘度について(申立書p.83-84)
本件明細書の実施例に記載されている、混合物の上記条件における粘度は70~110Pasである。しかし、上記粘度が70~110Pas以外である場合は、何ら示されていない。このため、本件発明1~8、12~21は、本件明細書(発明の詳細な説明)において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えている。よって、本件発明1~8、12~21はサポート要件を満たさない。
イ 実施例の制振最大値について(申立書p.84-85)
本件明細書の実施例に記載されている、制振最大値(最大損失係数)は0.165~0.28である。しかし、上記制振最大値(最大損失係数)が0.165~0.28以外の場合は何ら示されていない。このため、本件発明8~21は、本件明細書(発明の詳細な説明)において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えている。よって、本件発明8~21はサポート要件を満たさない。
ウ 実施例の制振最大値について
本件明細書の実施例1~3は、ポリオールとしてヒマシ油を使用することが共通する。そして、本件明細書においては、ポリオールとしてヒマシ油を含む成分Aを成分Bと混合した場合のみ、所期する効果が得られており、ポリオールがヒマシ油を含まない場合に同様の効果が得られるかは不明である。このため、ポリオールがヒマシ油を含むことを規定していない本件発明1~21は、本件明細書(発明の詳細な説明)において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えている。よって、本件発明1~21はサポート要件を満たさない。
(4)理由4(明確性要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、本件発明1~8、13~21についての特許は同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
本件明細書には、本件発明1における「工程b)の直後」がいつを指すのか、一切説明されていない。また、本件明細書の実施例には、成分A及び成分Bの混合物の粘度がいつ測定されたか、全く記載されていない。また、本件明細書の[0133]及び[0134]には、LASDの塗布は典型的には成分A及び成分Bを、例えばフラットストリーム押出機の混合要素内で混合すること等が記載されているが、例えば混合要素を有するフラットストリーム押出機によってLASDを基材に塗布する場合、成分A及び成分Bの混合直後の粘度を、いつ測定するか、全く記載されていない。
さらに付言すると、ポリオールとイソシアネートとの反応は、それらが同一の反応系内に置かれて直ちに生じると考えられるから、ポリオールとイソシアネートとを含む混合物の粘度は、工程b)における混合時間が長くなるにつれて、反応に伴って急激に上昇すると考えられるが(必要であれば甲2の図を参照)、それにもかかわらず、本件発明1では、工程b)において混合を行う時間が全く記載されていない。
したがって、本件発明1、及び、これを引用する本件発明2~8、13~21は、「b.」及び「工程b)の直後の前記混合物の粘度」に関して、不明確である。
2.証拠方法
甲1:特表2002-518160号公報
甲2:特開昭57-102917号公報
甲3:欧州特許出願公開第2626854号明細書
甲4:特開平2-51572号公報
甲5:特表2017-522393号公報
甲6:特表2002-513829号公報
甲7:HUNTSMAN,"Adhesives,Coatings and Elastomers Isocyanate Product Line 2010",[online],2010年,Huntsman Corporation,インターネット<URL:https://polyurea-jp.com/wp-content/uploads/2020/05/Isocyanate-Product-Line-2010.pdf>
甲8:特許第6714373号公報
第4 当審の判断
当審は、申立人が申し立てたいずれの特許異議申立理由によっても、本件発明1~21についての特許を取り消すことはできないと判断する。理由は以下のとおりである。
1.理由1(甲1に基づく新規性欠如)及び理由2(甲1に基づく進歩性欠如)について
(1)甲1に記載された事項
甲1には以下の事項が記載されている。
(1-1)「[請求項1] 周囲環境で基板に液状材料を塗布する工程を含み、前記基板への塗布後、前記材料が前記周囲環境で実質的に瞬時に硬化することを特徴とする基板の振動を減衰する方法。
・・・
[請求項8] 前記基板が、金属打抜き材、白色車体、カーボングラファイト複合材料、ガラス繊維、ポリカーボネート、ABS、および構造ポリマー材料のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の基板の振動を減衰する方法。
[請求項9] 前記基板が、白色車体であることを特徴とする請求項8に記載の基板の振動を減衰する方法。
・・・
[請求項12] 減衰される振動が、雑音、振動、およびハーシュネスのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項9に記載の基板の振動を減衰する方法。」
(1-2)「[0007]
したがって、本発明の目的は、加熱または他の特殊な工程段階を必要としない基板の振動を減衰する新規かつ改善された方法を提供することである。本発明の他の目的は、容易かつ費用対効果が大きい方法を提供することである。本発明の他の目的は、組み立て工程での時間がほとんど必要なく、有利には、乗り物の塗料またはE-コーティング系を汚さない方法を提供することである。さらに、本発明の目的は、例えば、白色車体の段階までの、かつその段階が含まれる金属スタンピング段階などの組み立て工程のいずれの箇所でも、また、白色車体にプライマーを塗布する前または後で用いることができる方法を提供することである。
[0008]
本発明の他の目的は、有利には、周囲環境で実質的に瞬時に硬化する基板の振動を減衰する組成物を提供することである。さらに、本発明の他の目的は、実質的に揮発性有機物質を放出しない組成物を提供することである。」
(1-3)「[0010]
そのための使用可能な減衰組成物は2成分を含む。第1成分(樹脂成分)は本質的に、所定の引張り強さ、硬度、およびたわみ性を付与するのに十分な量で存在するポリマーおよび/またはポリマーブレンド、任意選択で、所定の引張り強さ、耐候性、たわみ性、特定の基板に対する付着性、および硬度を付与するのに十分な量で存在する連鎖エキステンダーおよび/または連鎖エキステンダーブレンド、任意選択で、塗布後の硬化表面に所定の硬度、たわみ性、および特定の雑音、振動、ハーシュネス遮断特性を付与するのに十分な量で存在する充填材および/または充填材ブレンドからなる。
[0011]
組成物の第2成分(イソシアネート成分)は本質的に、ウレトンイミン変性MDIと、15.8%相当のイソシアネート含有量および約15%未満の2,4’-異性体含有量を有する高分子量ポリエーテルポリオールとを主成分とするイソシアネート準プレポリマーから本質的に構成される。任意選択で、第2成分は、所定のたわみ性を付与するのに十分な量で存在する可塑剤および/または可塑剤ブレンドからもまたなる。」
(1-4)「[0024]
本発明の組成物の第1成分において、アミン基末端高分子量ポリエーテルまたは単にポリエーテルを、ポリマーおよび/またはポリマーブレンドの一部として用いることができることを理解されたい。テキサス州ヒューストンのHuntsman Petrochemical(ハンツマン石油化学)社から市販のポリエーテルアミンのJEFFAMINE(登録商標)商標系列が特に好ましい。この系列には、JEFFAMINE(登録商標)D-2000(分子量2000のアミン基末端ポリオキシプロピレンジオール)、・・・が含まれる。これらのポリエーテルアミンは、ハンツマン社製品のパンフレット、「The JEFFAMINE(登録商標)Polyoxyalkyleneamines」で詳細に説明されている。JEFFAMINESはアミン基末端ポリオキシプロピレンであり、「D」はジアミンを示し、「T」はトリアミンを示し、数字部分は分子量を示す。」
(1-5)「[0026]
本発明の組成物の第1成分での使用に適した他のポリマー材料には、以下のものが含まれる。VORANOL230-660トリオールは、ダウケミカル社(ミシガン州ミッドランド)から市販のポリエーテルポリオールである。VORANOL230-660は、平均分子量250、典型的なヒドロキシル基数660、官能価3、平均ヒドロキシル基含有量20%、最大水含有量0.05%を有する。・・・平均分子量約2000を有するポリプロピレングリコール(PPG)と同様に、エチレングリコールを首尾よく用いることができる。」
(1-6)「[0029]
本発明で、任意の適切な連鎖エキステンダーを使用することができることを理解されたい。好ましい実施形態では、DETDA(ジエチルトルエンジアミン)が用いられる。かかる適切な材料の1つは、商品名ETHACURE(登録商標)100として販売されており、アルベマール社(ルイジアナ州バトンルージュ)から市販のジエチルトルエンジアミン連鎖エキステンダーである。他の適切な物質は、商品名ETHACURE(登録商標)300として販売されており、アルベマール社(ルイジアナ州バトンルージュ)から市販のジ(メチルチオ)トルエンジアミン連鎖エキステンダーである。」
(1-7)「[0049]
付着性を向上させる、かかる適切な材料の1つは、商品名SILQUEST A-187 SILANEとしてOSi Specialties社(コネチカット州ダンベリー)から市販されている。これはエステル臭を有する透明で、薄い液体であり、水中でゆっくりと反応し、沸点290℃(554°F)(760mmHgにおいて)、および密度1.069を有するγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランである。」
(1-8)「[0054]
格段に好ましい芳香族ポリイソシアネートは、メチレンビス(4-フェニルイソシアネート)または「MDI」である。純MDI、MDIの準プレポリマー、および変性純MDI等が有用である。この種の材料は、適切なエラストマーを調製するのに用いることができる。純MDIは固体であり、したがって使用するのに不便であり、MDIを主成分とする液状生成物もまた本発明の使用に適すると開示されている。例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,394,164号に液状MDI生成物が記載されている。さらに一般的には、ウレトンイミン変性純MDIもまた含まれる。この生成物は、触媒存在下で純蒸留MDIを加熱することにより生成する。この種類の商用材料の例としては、ISONATE(登録商標)125M(純MDI)、ISONATE(登録商標)2143L(液状ウレトンイミン-変性メチレンジイソシアネート生成物)、RUBINATE(登録商標)1680(液状ウレトンイミン-変性メチレンジイソシアネート生成物)、RUBINATE(登録商標)1209、RUBNATE(登録商標)9009(芳香族イソシアネート準プレポリマー)、RUBINATE(登録商標)9015(芳香族イソシアネート準プレポリマー)、およびRUBINATE(登録商標)M(「液状」MDI)が挙げられる。ISONATE(登録商標)製品は、ダウケミカル社(ミシガン州ミッドランド)から入手可能であり、RUBINATE(登録商標)製品は、ICI polyurethanes(ニュージャージー州ウェストデップフォード)から入手可能である。好ましくは、本発明のポリ尿素エラストマーを生成するのに用いるイソシアネートは、配合物中の活性水素成分に基づいた理論量に等しい、またはそれを超える量である。」
(1-9)「[0064]
好ましい実施形態では、塗布手段は、本発明の組成物の第1成分および第2成分を収容する従来の2成分吹付け系である。さらに好ましい実施形態では、塗布手段は高圧力の衝突混合吹付け系である。かかる適切な吹付け系の1つは、上記のGUSMER社から市販されている。第1成分および第2成分は、比例配分装置の分離チャンバから送出され、互いに衝突し、衝撃を受けて成分の混合が実施かつ開始される。これによりエラストマーが形成し、次いで、エラストマーをスプレーガンを用いて所望の基板上にコーティングする。」
(1-10)「[0072]
実施例II
第1成分を適切な第1容器中に置き、第2成分を適切な第2容器中に置いて、実施例Iで調製した組成物を適切な2成分系吹付け装置内に置いた。白色車体に2成分系液状組成物を吹付ける。塗布後、塗布された液状組成物は、時間間隔約15秒から20秒で車体上で硬化する。硬化後、組成物により、実質的に自動車の白色車体に滑らかな塗装仕上げが得られる。車体表面上に硬化した組成物を有する自動車の白色車体は、可聴周波数内と可聴周波数外のどちらの振動も含まれる、雑音、振動、ハーシュネスの向上した減衰を示す。
[0073]
実施例III
第1成分を適切な第1容器中に置き、第2成分を適切な第2容器中に置いて、実施例Iで調製した組成物を適切な2成分系吹付け装置内に置く。金属打抜き材材に2成分系液状組成物を吹付ける。塗布後、塗布された液状組成物は、時間間隔約15秒から20秒でスタンピング上で硬化する。硬化後、組成物により、実質的に金属打抜き材材に滑らかな塗装仕上げが得られる。金属打抜き材材表面上に硬化した組成物を有する金属打抜き材材は、可聴周波数内と可聴周波数外のどちらの振動も含まれる、雑音、振動、ハーシュネスの向上した減衰を示す。」
(1-11)「[0080]
実施例VII
本発明による組成物を以下の方法で生成する。指定された重量パーセントの以下の化合物を混合し、本発明の組成物の第1成分を形成する。
重量%
JEFFAMINE D-2000 30.0
VORANOL 230-660 25.0
ETHACURE 100 43.2
二酸化チタン 1.0
SILQUEST A-187 0.8
100.0
得られた組成物は、周囲条件下で液状の材料であり、吹付け工程に適した粘度を有する。
[0081]
本発明の組成物の第2成分は、RUBINATE 9009を100重量%含む液状イソシアネート組成物を含み、周囲条件下での吹付け工程に適した粘度を有する。」
(1-12)「[0086]
実施例X
本発明による組成物を以下の方法で生成する。指定された重量パーセントの以下の化合物を混合し、本発明の組成物の第1成分を形成する。
重量%
JEFFAMINE D-5000 62.0
エチレングリコール 10.0
PPG 2000 15.2
硫酸バリウム 12.0
SILQUEST A-187 0.8
100.0
得られた組成物は、周囲条件下で液状の材料であり、吹付け工程に適した粘度を有する。
[0087]
本発明の組成物の第2成分は、RUBINATE Mを100重量%含む液状イソシアネート組成物を含み、周囲条件下での吹付け工程に適した粘度を有する。」
(2)甲1に記載された発明
甲1の請求項1、8及び12(摘記1-1)には、「周囲環境で基板に液状材料を塗布する工程を含み、前記基板への塗布後、前記材料が前記周囲環境で実質的に瞬時に硬化することを特徴とする基板の振動を減衰する方法。」、「前記基板が、金属打抜き材、白色車体、カーボングラファイト複合材料、ガラス繊維、ポリカーボネート、ABS、および構造ポリマー材料のうちの少なくとも1つである」こと及び「減衰される振動が、雑音、振動、およびハーシュネスのうちの少なくとも1つを含む」ことが記載されており、[0010]~[0011](摘記1-3)には、「使用可能な減衰組成物は2成分を含」み、第1成分(樹脂成分)はポリマーおよび/またはポリマーブレンド、任意選択で、連鎖エキステンダーおよび/または連鎖エキステンダーブレンド、任意選択で、塗布後の硬化表面に所定の硬度、たわみ性、および特定の雑音、振動、ハーシュネス遮断特性を付与するのに十分な量で存在する充填材および/または充填材ブレンドを含み、第2成分(イソシアネート成分)はウレトンイミン変性MDIとイソシアネート準プレポリマーから本質的に構成され、任意選択で、可塑剤および/または可塑剤ブレンドを含むことが記載されている。
また、液状材料の塗布工程及び硬化工程について、[0007](摘記1-2)には、「本発明の目的は、加熱または他の特殊な工程段階を必要としない基板の振動を減衰する新規かつ改善された方法を提供することである」ことが記載され、塗布手段については、[0064](摘記1-8)に「好ましい実施形態では、塗布手段は、本発明の組成物の第1成分および第2成分を収容する従来の2成分吹付け系」であり、「好ましい実施形態では、塗布手段は高圧力の衝突混合吹付け系」であり、「第1成分および第2成分は、比例配分装置の分離チャンバから送出され、互いに衝突し、衝撃を受けて成分の混合が実施かつ開始される。これによりエラストマーが形成し、次いで、エラストマーをスプレーガンを用いて所望の基板上にコーティングする」装置が用いられることが記載され、塗布装置を用いた塗布工程及び硬化工程の具体例としては、[0072]~[0073](摘記1-9)の実施例II及びIIIに、「第1成分を適切な第1容器中に置き、第2成分を適切な第2容器中に置いて、実施例Iで調製した組成物を適切な2成分系吹付け装置内に置」き、「白色車体」又は「金属打抜き材」に「2成分系液状組成物を吹付け」たこと、及び「塗布後、塗布された液状組成物は、時間間隔約15秒から20秒で車体上で硬化」し、得られた「表面上に硬化した組成物を有する」白色車体又は金属打抜き材は「可聴周波数内と可聴周波数外のどちらの振動も含まれる、雑音、振動、ハーシュネスの向上した減衰を示す」ものであったことが記載されている。
さらに、上記第1成分及び第2成分からなる組成物の具体例としては、[0080]~[0081](摘記1-11)の実施例VIIには、第1成分が
「JEFFAMINE D-2000 30.0
VORANOL 230-660 25.0
ETHACURE 100 43.2
二酸化チタン 1.0
SILQUEST A-187 0.8
合計 100.0」であり、第2成分が「RUBINATE 9009を100重量%含む液状イソシアネート組成物」である2成分系液状組成物が記載され、[0086]~[0087](摘記1-12)の実施例Xには、第1成分が
「JEFFAMINE D-5000 62.0
エチレングリコール 10.0
PPG 2000 15.2
硫酸バリウム 12.0
SILQUEST A-187 0.8
合計 100.0」であり、第2成分が「RUBINATE Mを100重量%含む液状イソシアネート組成物」である2成分系液状組成物が記載され、いずれの実施例も、第1成分は「周囲条件下で液状の材料であり、吹付け工程に適した粘度を有する」ものであり、第2成分は「周囲条件下での吹付け工程に適した粘度を有する」ものであることが記載されているから、実施例VII及びXは、いずれも上記[0064]及び[0072]~[0073]に記載された塗布装置を用いて基材に塗布し、基材上で硬化させることができ、基材表面上で硬化した組成物は「可聴周波数内と可聴周波数外のどちらの振動も含まれる、雑音、振動、ハーシュネスの向上した減衰を示す」ものとして記載されていると理解することができる。
なお、上記実施例VII又はXで用いられた「JEFFAMINE D-2000」及び「JEFFAMINE D-5000」は「ハンツマン石油化学社から市販の分子量2000(又は5000)のアミン基末端ポリオキシプロピレンジオール」であり([0024](摘記1-4))、「VORANOL 230-660」は「ダウケミカル社(ミシガン州ミッドランド)から市販のポリエーテルポリオール」であり([0026](摘記1-5))、「PPG 2000」は「平均分子量約2000を有するポリプロピレングリコール」であり([0026](摘記1-5))、「ETHACURE 100」は「アルベマール社(ルイジアナ州バトンルージュ)から市販のジエチルトルエンジアミン連鎖エキステンダー」であり([0029](摘記1-6))、「SILQUEST A-187」は「Specialties社(コネチカット州ダンベリー)から市販されているγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン」であり([0049](摘記1-7))、「RUBINATE 9009」及び「RUBINATE M」はいずれも「ICI polyurethanes(ニュージャージー州ウェストデップフォード)から入手可能」な「芳香族イソシアネート準プレポリマー」又は「「液状」MDI」である([0054](摘記1-8))ことも記載されている。
そうすると、甲1には、実施例VII及び実施例X等に基づいて、以下の発明が記載されている。
「自動車の白色車体上又は金属打抜き材料から選ばれる基板の表面上に、雑音、振動、ハーシュネスの向上した減衰を示す特性を付与する硬化した組成物を形成する方法であって、
JEFFAMINE D-2000(アミン末端ポリオキシプロピレンジオール) 30.0重量%
VORANOL 230-660(ポリエーテルポリオール) 25.0重量%
ETHACURE 100(ジエチルトルエンジアミンエクステンダー) 43.2重量%
二酸化チタン 1.0重量% 及び
SILQUEST A-187(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン) 0.8重量%
を含有する第1成分と、
RUBINATE 9009(芳香族イソシアネート準プレポリマー) 100重量%
を含有する第2成分とを準備し、
第1成分を適切な第1容器中に収容し、第2成分を適切な第2容器中に収容し、これらを衝突混合吹付け装置内に置く工程、
第1成分および第2成分を、比例配分装置の分離チャンバから送出し、互いに衝突させることにより、衝撃を受けて成分の混合が実施され、2成分系液状組成物を形成する工程、
白色車体又は金属打抜き材に2成分系液状組成物をスプレーガンを用いて吹き付ける工程、及び、
塗布された液状組成物が時間間隔15秒から20秒で車体上又は金属打抜き材上で硬化する工程、
を含む、方法。」(以下、「甲1実施例VII発明」という。)
「自動車の白色車体上又は金属打抜き材料から選ばれる基板の表面上に、雑音、振動、ハーシュネスの向上した減衰を示す特性を付与する硬化した組成物を形成する方法であって、
JEFFAMINE D-5000(アミン末端ポリオキシプロピレンジオール) 62.0重量%
エチレングリコール 10.0重量%
PPG 2000(ポリプロピレングリコール) 15.2重量%
硫酸バリウム 12.0重量% 及び
SILQUEST A-187(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン) 0.8重量%
を含有する第1成分と、
RUBINATE M(液状MDI) 100重量%
を含有する第2成分とを準備し、
第1成分を適切な第1容器中に収容し、第2成分を適切な第2容器中に収容し、これらを衝突混合吹付け装置内に置く工程、
第1成分および第2成分を、比例配分装置の分離チャンバから送出し、互いに衝突させることにより、衝撃を受けて成分の混合が実施され、2成分系液状組成物を形成する工程、
白色車体又は金属打抜き材に2成分系液状組成物をスプレーガンを用いて吹き付ける工程、及び、
塗布された液状組成物が時間間隔15秒から20秒で車体上又は金属打抜き材上で硬化する工程、
を含む、方法。」(以下、「甲1実施例X発明」という。)
以下、甲1実施例VII発明と甲1実施例X発明をまとめて「甲1発明」という。
(3)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1実施例VII発明とを対比すると、甲1実施例VII発明における「自動車の白色車体上又は金属打抜き材料から選ばれる基板」、「の表面上に」、及び「硬化した組成物を形成する方法であって、」は、それぞれ本件発明1における「基材」、「の表面に」及び「コーティングを作り出すための方法であって、」に相当し、甲1実施例VII発明における「第1成分」は、「VORANOL 230-660(ポリエーテルポリオール) 25.0重量%」及び「二酸化チタン 1.0重量%」を含有するから、本件発明1における「成分Aはポリオールを含み、」及び「成分A若しくは成分Bのいずれか、又は両成分が充填剤を含む、」を満たすものであり、甲1実施例VII発明における「第2成分」は、「RUBINATE 9009(芳香族イソシアネート準プレポリマー) 100重量%」を含有するから、本件発明1における「成分Bはイソシアネートを含み、」を満たすものであり、甲1実施例VII発明における「第1成分と、・・・第2成分とを準備し、第1成分を適切な第1容器中に収容し、第2成分を適切な第2容器中に収容し、これらを衝突混合吹付け装置内に置く工程、」及び「2第1成分および第2成分を、比例配分装置の分離チャンバから送出し、互いに衝突させることにより、衝撃を受けて成分の混合が実施され、2成分系液状組成物を形成する工程」は、それぞれ本件発明1における「成分A及び成分Bを含む2成分ポリウレタン系を得る工程」及び「成分A及び成分Bを混合して、前記ポリオール、前記イソシアネート、及び前記充填剤を含む混合物を形成する工程」に相当し、甲1実施例VII発明における「白色車体又は金属打抜き材に2成分系液状組成物をスプレーガンを用いて吹き付ける工程」及び「塗布された液状組成物が時間間隔15秒から20秒で車体上又は金属打抜き材上で硬化する工程」は、それぞれ本件発明1における「前記混合物を基材の表面に塗布してコーティングを形成する工程」及び「前記コーティングを硬化させる工程」に相当するとともに、「工程c)及び工程d)は、10℃~40℃の周囲温度において実行され」を満たしている。
そうすると、両者は、
「基材の表面にコーティングを作り出すための方法であって、
a. 成分A及び成分Bを含む2成分ポリウレタン系を得る工程であって、成分Aはポリオールを含み、成分Bはイソシアネートを含み、成分A若しくは成分Bのいずれか、又は両成分が充填剤を含む、工程と、
b. 成分A及び成分Bを混合して、前記ポリオール、前記イソシアネート、及び前記充填剤を含む混合物を形成する工程と、
c. 前記混合物を基材の表面に塗布してコーティングを形成する工程と、
d. 前記コーティングを硬化させる工程と、を含み、
工程c)及び工程d)は、10℃~40℃の周囲温度において実行される、方法。」
の点で一致し、
相違点甲1-1:本件発明1は「工程b)の直後の前記混合物の粘度は、RV-7スピンドルを用いて10rpmでBrookfield RV粘度計で測定すると、23℃において10Pas~500Pasである」と特定するのに対し、甲1実施例VII発明においてはそのように特定されていない点
で相違する。
また、本件発明1と甲1実施例X発明とを対比したときの一致点及び相違点は、本件発明1と甲1実施例VII発明とを対比したときの一致点及び相違点と同様である。
そこで、相違点甲1-1について検討する。
イ 相違点甲1-1について
(ア)新規性について
甲1には、第1成分及び第2成分を混合した直後、その混合物を基材の表面に塗布する際の粘度について何ら記載されていない。また、第1成分及び第2成分の具体的な成分組成に基づいて、それらを混合した直後、混合物を基材の表面に塗布する際の粘度を合理的に特定することはできず、甲1発明の実施に際して上記混合物の粘度が相違点甲1-1に係る10Pas~500Pasの範囲であることが必要不可欠であるともいえない。
よって、相違点甲1-1は実質的な相違点である。
(イ)進歩性について
また、甲2~甲8を参照しても、甲1発明における上記混合物の粘度を相違点甲1-1に係る10Pas~500Pasの範囲に調整する動機は見いだせないから、相違点甲1-1は甲1及び他の証拠の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(ウ)申立人の主張について
a.新規性について
申立人は特許異議申立書第41~43及び48頁において、甲8の[0018]、[0023]及び実施例3等を引用し、「甲8には、10Pasを超える粘度のポリウレタン系接着剤を吹き付けの一種であるカーテンスプレー法によって塗布することが記載されている」から、「甲1において第1成分と第2成分とを衝突混合させた直後の粘度は、10Pasを超える場合を包含し得る」と主張している。
しかし、甲1には、甲1発明で使用された「衝突混合吹付け装置」の詳細は記載されていないから、それが甲8に記載された「カーテンスプレー法」によって吹付け塗布する装置であったと断定することはできない。また、甲8の実施例1及び2においては、甲8の実施例3と同じ装置によって溶融粘度がそれぞれ7又は6Pasのウレタン系反応型ホットメルト接着剤を塗布したことが記載されているから、仮に甲8の記載を参酌しても、甲1発明において成分A及び成分Bを混合した直後、基材の表面に塗布する際の混合物の粘度が10Pas以上であったことの裏付けにはならない。
b.進歩性について
申立人は特許異議申立書第49~50頁において、本件明細書[0110]及び甲2の実施例1を引用し、「甲2には、基材の傾斜面・垂直面に塗布し、塗布してから硬化するまでタレが生じず、コテ塗り、吹付け、刷毛塗り等の塗布性を満足させるためには、A、B成分を混合直後から5分以内のA、B成分混合物の粘度が約70Pas以下であることが示されている」から、「甲2の実施例1のA成分、B成分の混合直後の粘度が・・・10Pas~500Pasに該当する蓋然性は高い」こと、及び「甲2に記載されている発明をもとにして、甲1に記載された・・・第1成分と第2成分との混合物の粘度を設定すれば」23℃において10Pas~500Pasに該当する蓋然性は高いと主張している。
しかし、甲2に記載された発明は、「傾斜面、垂直面、複雑構造面等に、ポリウレタン樹脂塗膜を形成させる際、塗膜の厚さに関係なく泡化を簡単に、有利に防止できる方法」を提供することを課題とし、その解決手段として「低粘度域で、2成分を攪拌混合し、混合後(3~7分後)に急激な粘性変化即ち増粘を伴ってチクソトロピックな性質になり、著しく塗布性(コテ滑り性)と気泡防止効果に卓効を示す改質剤と組合せ効果を見い出し」た(甲2の2頁右下欄14行~3頁左上欄2行)というものであり、これに対する甲1発明は、衝突混合吹付け装置を用いて2成分系液状組成物をスプレーガンを用いて基材に吹き付け、15秒から20秒で基材上で基材上で硬化させる工程を有しており、傾斜面、垂直面、複雑構造面への適用も前提としていないものであるから、甲1発明に対し、技術的な前提の異なる甲2の技術的事項を適用することは、当業者が動機付けられることではない。
また、申立人は特許異議申立書第50~51頁において、甲6の実施例は、2成分の混合直後の粘度が10Pas~500Pasに該当する蓋然性が高いから、「甲6に記載されている発明をもとにして、甲1に記載された基板の振動を減衰する方法において使用される、第1成分と第2成分との混合物を調製すれば、・・・10Pas~500Pasに該当する蓋然性は高い」とも主張している。
しかし、甲6の[0026]及び[0027]には、「本発明の充填ポリオールの粘度は、25℃で約100000cpsであり、・・・最も好ましくは25℃で約20000cps未満である」こと、及び「イソシアネート類は室温で液体であり、25℃において約2000センチポイズ未満、・・・より好ましくは25℃において約500センチポイズ未満の粘度を有する」と記載されているから、混合前のポリオール成分及びイソシアネート成分の粘度は好ましくはそれぞれ20Pas未満及び0.5Pas未満である。また、甲6の[0039]~[0048]には充填ポリオール組成物の具体例及び粘度並びにイソシアネートの商品名が記載されているが、充填ポリオール組成物とイソシアネートとを混合した後の混合物の粘度は記載されておらず、混合直後の粘度がどのような値に調整されたのかを他の記載から特定することもできないから、甲6における2成分の混合直後の粘度が「23℃において10Pas~500Pasに該当する蓋然性は高い」とはいえない。さらに、甲6の[0001]~[0005]等の記載からみて、甲6に記載された発明が解決しようとする課題は「約100000センチポイズ未満の粘度を有し、RIM法で使用して充填ポリウレタン類を製造することができる充填ポリオール類を都合良く提供する」ことにあり、甲6の[0049]には、「充填ポリウレタン類はRIMにより製造するのが好ましい。本発明の充填ポリウレタン類を製造するための他の方法としては、逆ロールコーティング及びドクターブレーディングが挙げられる」と記載されているから、甲6における粘度の調整は甲1発明で採用される衝突混合吹付け装置による基材表面への塗装に最適化されたものとはいえない。よって、仮に甲6を参照しても、当業者が甲1発明において相違点甲1-1に係る10Pas~500Pasという特定の粘度範囲を採用することを動機付けられることはない。
以上のとおり、申立人の主張はいずれも採用することができない。
(エ)相違点甲1-1についてのまとめ
以上まとめると、上記相違点甲1-1は実質的な相違点であり、かつ、甲1発明及びいずれの証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到することができたものではない。
ウ 本件発明1についてのまとめ
以上のことから、本件発明1は甲1発明ではなく、かつ、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明2~8及び12~21について
本件発明2~8及び12~19は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。
そうすると、本件発明1と同様の理由により、本件発明12~14及び19は、いずれも甲1発明ではなく、かつ、本件発明2~8及び12~19は、いずれも甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明20及び21は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1についての検討を踏まえると、甲1発明と異なる製造方法で製造されたものであるから、物としての構成もまた甲1記載の発明と相違するものであり、かつ、甲1記載の発明から当業者が容易に想到し得たものともいえない。
そうすると、本件発明1と同様の理由により、本件発明20は甲1に記載された発明ではなく、かつ、本件発明20及び21は、いずれも甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件発明9について
ア 本件発明9と甲1実施例X発明との対比
本件発明9と甲1実施例X発明とを対比すると、甲1実施例X発明における「自動車の白色車体上又は金属打抜き材料から選ばれる基板」、「の表面上に」、「雑音、振動、ハーシュネスの向上した減衰を示す特性を付与する」及び「硬化した組成物を形成する方法であって、」は、それぞれ本件発明9における「基材」、「の表面に」、「消音」及び「コーティングを作り出すための方法であって、」に相当し、甲1実施例X発明における「第1成分」は、「エチレングリコール 10.0重量%」、「PPG 2000(ポリプロピレングリコール) 15.2重量%」及び「硫酸バリウム 12.0重量%」を含有するから、本件発明9における「成分Aはポリオールを含み、」及び「成分A若しくは成分Bのいずれか、又は両成分が充填剤を含む、」を満たすものであり、甲1実施例X発明における「第2成分」は、「RUBINATE M(液状MDI) 100重量%」を含有するから、甲7を参酌すると、本件発明9における「成分BはMDIベースのポリメリックイソシアネートを含み、」を満たすものであり、甲1実施例X発明における「第1成分と、・・・第2成分とを準備し、第1成分を適切な第1容器中に収容し、第2成分を適切な第2容器中に収容し、これらを衝突混合吹付け装置内に置く工程」及び「第1成分および第2成分を、比例配分装置の分離チャンバから送出し、互いに衝突させることにより、衝撃を受けて成分の混合が実施され、2成分系液状組成物を形成する工程」は、それぞれ本件発明9における「成分A及び成分Bを含む2成分ポリウレタン系を得る工程」及び「成分A及び成分Bを混合して、前記ポリオール、前記ポリメリックイソシアネート、及び前記充填剤を含む混合物を形成する工程」に相当し、甲1実施例X発明における「白色車体又は金属打抜き材に2成分系液状組成物をスプレーガンを用いて吹き付ける工程」及び「塗布された液状組成物が時間間隔15秒から20秒で車体上又は金属打抜き材上で硬化する工程」は、それぞれ本件発明9における「前記混合物を基材の表面に塗布してコーティングを形成する工程」及び「前記コーティングを硬化させて、消音コーティングを作り出す工程」に相当するとともに、「工程c)及び工程d)は、10℃~40℃の周囲温度において実行され」を満たしている。
そうすると、両者は、
「基材の表面に消音コーティングを作り出すための方法であって、
a. 成分A及び成分Bを含む2成分ポリウレタン系を得る工程であって、成分Aはポリオールを含み、成分BはMDIベースのポリメリックイソシアネートを含み、成分A若しくは成分Bのいずれか、又は両成分が充填剤を含む、工程と、
b. 成分A及び成分Bを混合して、前記ポリオール、前記ポリメリックイソシアネート、及び前記充填剤を含む混合物を形成する工程と、
c. 前記混合物を基材の表面に塗布してコーティングを形成する工程と、
d. 前記コーティングを硬化させて、消音コーティングを作り出す工程と、を含み、
工程c)及び工程d)は、10℃~40℃の周囲温度において実行される、方法。」
の点で一致し、
相違点甲1-2:本件発明9は「前記消音コーティングの二次(100~150Hz)での最大損失係数は、DIN EN ISO 6721:1996手順Aに従って3mmの消音コーティング厚について0℃~60℃の温度において測定すると、0.1以上である、」と特定するのに対し、甲1実施例X発明においてはそのように特定されていない点
で相違する。
そこで、相違点甲1-2について検討する。
イ 相違点甲1-2について
(ア)進歩性について
甲1の[0010](摘記1-3)には、第1成分に「塗布後の硬化表面に所定の硬度、たわみ性、および特定の雑音、振動、ハーシュネス遮断特性を付与するのに十分な量で存在する充填材および/または充填材ブレンド」を含むことが記載されているが、甲1実施例X発明に含まれる充填剤は第1成分の12.0重量%の割合で存在する硫酸バリウムだけであり、相違点甲1-2に係る損失係数も測定されていない。
また、本件明細書の[0087]に、「硫酸バリウムは、充填剤、好ましくは成分A中に30~70重量%の充填剤である」と記載されていることを参酌すると、硫酸バリウムの含有量が第1成分の12.0重量%にすぎない甲1実施例X発明が、相違点甲1-2に係る0.1以上の最大損失係数を示すコーティングを形成するとはいい難く、相違点甲1-2は実質的な相違点である。
そして、甲1実施例X発明の衝突混合吹付け装置を用いる2成分系液状組成物のスプレーガンによる塗装を前提とする製造方法において、相違点甲1-2に係る0.1以上の最大損失係数を示すコーティングを形成することを動機付ける記載はいずれの証拠にも見いだせない。よって、相違点甲1-2は甲1及び他の証拠の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(イ)申立人の主張について
申立人は特許異議申立書第63頁において、甲5を引用し、「甲5の表1(適応技術試験の結果)には、防音材A6~A10の振動減衰について、tanδ最大値が0.12~0.19であることが記載されている」から「甲5の記載をもとに、甲1において、構成[14]を設定することは、要求されるLASD材料の特性に応じて当業者が適宜なし得たことである。」と主張している。
しかし、甲5の[0063]~[0086]における防音材の実施例についての記載を参照すると、甲5の防音材A6~A10は、いずれもフィラーとアクリル系バインダーとを高速ミキサ中で均質化させることにより製造されるものであるから、甲5に記載された技術的事項は、樹脂の成分組成及び基材への適用方法の点で甲1実施例X発明とは技術分野が異なり、甲1実施例X発明に直接適用することはできない。また、甲5及び他の証拠の記載を参照しても、衝突混合吹付け装置を用いて2成分系液状ポリウレタン組成物を衝突混合させ、スプレーガンで基材に適用することを前提とする甲1実施例X発明において、相違点甲1-2に係る0.1以上の最大損失係数を達成する具体的な解決手段は示されていないから、甲1及び他の証拠に基づいて相違点甲1-2に係る発明特定事項に当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、申立人の主張を採用することはできない。
(ウ)相違点甲1-2についてのまとめ
以上まとめると、上記相違点甲1-2は、甲1実施例X発明及びいずれの証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到することができたものではない。
ウ 本件発明9についてのまとめ
以上のことから、本件発明9は甲1実施例X発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)本件発明10~21について
本件発明10~19は、いずれも請求項9を直接又は間接的に引用し、本件発明9の発明特定事項を全て備えるものである。
そうすると、本件発明9と同様の理由により、本件発明10~19は、いずれも甲1実施例X発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明20及び21は、いずれも請求項9を直接又は間接的に引用し、本件発明9についての検討を踏まえると、甲1実施例X発明と異なる製造方法で製造されたものであるから、物としての構成もまた甲1記載の発明と相違するものであり、かつ、甲1記載の発明から当業者が容易に想到し得たものともいえない。
そうすると、本件発明9と同様の理由により、本件発明20及び21は、いずれも甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(7)理由1(甲1に基づく新規性欠如)及び理由2(甲1に基づく進歩性欠如)についてのまとめ
以上まとめると、本件発明1、12~14、19及び20は、いずれも甲1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明1~21は、いずれも甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、理由1(甲1に基づく新規性欠如)及び理由2(甲1に基づく進歩性欠如)により本件発明1~21についての特許を取り消すことはできない。
2.理由3(サポート要件違反)について
(1)サポート要件の判断手法
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)本件発明の課題について
本件明細書の[0012]等の記載からみて、本件発明1~8の課題は「スプレー塗布型制振材の欠点を有さない液体塗布型制振材(LASD)を用いて、基材の表面にコーティングを作り出すための方法を提供すること」にあり、本件発明9~11の課題は「スプレー塗布型制振材の欠点を有さない液体塗布型制振材(LASD)を用いて、基材の表面に消音コーティングを作り出すための方法を提供すること」にあり、本件発明12~19の課題は「スプレー塗布型制振材の欠点を有さない液体塗布型制振材(LASD)を用いて、基材の表面にコーティング又は消音コーティングを作り出すための方法を提供すること」にあり、本件発明20、21の課題は「スプレー塗布型制振材の欠点を有さない液体塗布型制振材(LASD)を用いて得ることができるコーティングでコーティングされた表面を含むデバイス又は構成部品を提供すること」にあるものと認められる。
(3)本件明細書及び図面の記載事項
本件明細書の[0040]には、本件発明がフラットストリーム押出機による塗布に好適な液体塗布型制振材(LASD)を用いる点で、噴霧によって塗布されるポリウレタンベースのコーティングとは異なるものであり、より高粘度の2成分ポリウレタン系を使用することが上記課題の解決に役立つことを見出した旨が記載されている。[0042]~[0105]には、ポリウレタンコーティングを作り出すための2成分ポリウレタン系について、ポリオールを含む成分A及びイソシアネートを含む成分Bのそれぞれにおいて用いられる反応性成分の具体例、入手先、充填剤等の添加剤の具体例、それらの配合割合及び粘度の好ましい範囲が記載され、[0106]~[0119]には、成分A及び成分Bの混合比率、混合物の粘度及び密度の好ましい範囲が具体的に記載され、[0120]~[0124]には、成分Aと成分Bの混合比を調整することによって液体塗布型制振材の消音特性を調整できることが記載され、図1に基づいてNCO/OH比の好ましい範囲が記載されている。また、[0125]~[0132]にはコーティングを適用できる対象物について記載され、[0133]~[0142]には被塗布物表面にコーティングするための塗布プロセスについて、用い得る装置、温度設定、塗布厚み、表面重量等が具体的に記載され、[0143]~[0153]には、用途毎の好ましい制振特性の範囲及びその製造方法について記載されている。さらに、[0154]~[0210]及び図1~図3には、高密度LASD及び低密度LASDのそれぞれに対応する2成分ポリウレタン系の実施例が記載され、フラットストリーム押出機で塗布することができ、0℃~60℃を含む用途に応じた温度範囲において0.1超の損失係数を有するコーティングを形成することができたことが記載されている。
(4)サポート要件についての判断
本件明細書の一般記載並びにその記載を裏付ける実施例及び図面の記載に基づいて、当業者は本件明細書に記載された材料一般を用いて、噴霧によらない塗布方法を用いることが可能な23℃において10Pas~500Pasの混合物粘度を示す2成分ポリウレタン系を調製することができ、それにより、「スプレー塗布型制振材の欠点を有さない液体塗布型制振材(LASD)を用いて、基材の表面にコーティングを作り出すための方法を提供する」という課題を解決し得ると認識することができる。また、同様に、当業者は本件明細書に記載された材料一般を用いて、充填剤等の添加量、NCO/OH比の調整等によりコーティングの最大損失係数を0.1以上に調整することができ、それにより、「スプレー塗布型制振材の欠点を有さない液体塗布型制振材(LASD)を用いて、基材の表面に消音コーティングを作り出すための方法を提供する」という課題を解決し得ると認識することができる。そうすると、当業者は、
「基材の表面にコーティングを作り出すための方法であって、
a. 成分A及び成分Bを含む2成分ポリウレタン系を得る工程であって、成分Aはポリオールを含み、成分Bはイソシアネートを含み、成分A若しくは成分Bのいずれか、又は両成分が充填剤を含む、工程と、
b. 成分A及び成分Bを混合して、前記ポリオール、前記イソシアネート、及び前記充填剤を含む混合物を形成する工程と、
c. 前記混合物を基材の表面に塗布してコーティングを形成する工程と、
d. 前記コーティングを硬化させる工程と、を含み、
工程c)及び工程d)は、10℃~40℃の周囲温度において実行され、工程b)の直後の前記混合物の粘度は、RV-7スピンドルを用いて10rpmでBrookfield RV粘度計で測定すると、23℃において10Pas~500Pasである、方法。」及び
「基材の表面に消音コーティングを作り出すための方法であって、
a. 成分A及び成分Bを含む2成分ポリウレタン系を得る工程であって、成分Aはポリオールを含み、成分BはMDIベースのポリメリックイソシアネートを含み、成分A若しくは成分Bのいずれか、又は両成分が充填剤を含む、工程と、
b. 成分A及び成分Bを混合して、前記ポリオール、前記ポリメリックイソシアネート、及び前記充填剤を含む混合物を形成する工程と、
c. 前記混合物を基材の表面に塗布してコーティングを形成する工程と、
d. 前記コーティングを硬化させて、消音コーティングを作り出す工程と、を含み、
工程c)及び工程d)は、10℃~40℃の周囲温度において実行され、前記消音コーティングの二次(100~150Hz)での最大損失係数は、DIN EN ISO 6721:1996手順Aに従って3mmの消音コーティング厚について0℃~60℃の温度において測定すると、0.1以上である、方法。」
の範囲で本件発明の課題が解決されるものと理解することができる。
そして、本件発明1及び9は上記範囲に包含されるから、本件発明1及び9は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により、または出願時の技術常識に照らして、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
請求項1又は9を直接又は間接的に引用する本件発明2~8及び10~21も、本件発明1又は9と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により、または出願時の技術常識に照らして、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
(5)申立人の主張について
申立人は、上記第3(3)ア~ウに記載したように、実施例には、混合物の上記条件における粘度が70~110Pasであり、制振最大値(最大損失係数)が0.165~0.28であり、ポリオールとしてヒマシ油を含む成分Aを含む例は記載されているが、それら以外の場合は示されていないから、本件発明は「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えている旨を主張している。
しかし、上記(3)及び(4)に記載したとおり、本件明細書には実施例以外に、用いられる材料や配合割合、コーティングの形成条件等について具体的な記載があり、当業者であれば、実施例の記載と合わせて、好ましいものとして記載された材料及び数値範囲内であれば実施例と同様の作用効果が得られ、本件発明の課題を解決し得るものと認識することができる。また、本件発明の範囲内であるが、実施例に示された実施の形態の範囲外となる場合には上記課題を解決することができないことを示す、具体的な証拠は提出されていない。
よって、申立人の主張を採用することはできない。
(6)理由3(サポート要件違反)についてのまとめ
以上のことから、本件発明1~21は、いずれも発明の詳細な説明に記載したものであるといえるから、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、それらの発明についての特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。
よって、理由3(サポート要件違反)により本件発明1~21についての特許を取り消すことはできない。
3.理由4(明確性要件違反)について
(1)明確性要件の判断手法
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
(2)「工程b) の直後」及び「工程b)の直後の前記混合物の粘度」について
申立人は、上記第3(4)に記載したように主張するが、本件明細書の[0012]には、「従来の液体塗布型制振材(LASD)、特にスプレー塗布型制振材の欠点を有さないLASDが必要とされている」と記載され、[0040]には「噴霧によって塗布されるポリウレタンベースのコーティング・・・は、その粘度がこの塗布モードには低すぎるために、典型的にはフラットストリーム押出機で良好に塗布することができない」こと、及び「本発明者らは、より高粘度の2成分ポリウレタン系を使用することが、被スプレー塗布物の問題を回避するのに役立つことを見出した」ことが記載されているから、当業者は、本件発明が、塗布型制振材を所定の塗布モード(フラットストリーム押出機)で塗布するときの粘度に着目してなされた発明であることを理解することができる。そうすると、当業者は、本件発明1における「工程b)の直後の前記混合物の粘度」が、実質的に2成分ポリウレタン系の混合物を基材の表面に塗布するときの粘度に対応するものであることを理解することができるから、特許請求の範囲の記載が第三者に不測の不利益をもたらすほど不明確であるとはいえない。請求項1を直接又は間接的に引用して記載されている本件発明2~8及び13~21についても同様である。
(3)理由4(明確性要件違反)についてのまとめ
以上のことから、本件発明1~8及び13~21は、いずれも特許請求の範囲の記載が第三者に不測の不利益をもたらすほど不明確であるとはいえないから、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に適合するものであり、それらの発明についての特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。
よって、理由4(明確性要件違反)により本件発明1~8及び13~21についての特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおり、本件発明1~21についての特許は、上記のいずれの特許異議申立理由によっても取り消すことはできない。
また、他に、これらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700519