特許異議申立
2022-701007
化粧シートの製造方法
- 審判番号
- 2022-701007
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-069949
- 登録番号
- 7052901
- 請求日
- 2022年10月12日
- 審決日
- 2023年05月16日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】凸版印刷株式会社
- 【権利者代理人】廣瀬 一
- 【権利者代理人】宮坂 徹
- 【異議申立人】佐藤 惠一
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 茂夫
- 審判官 筑波 茂樹
- 審判官 一ノ瀬 覚
- 分類
- P1651.121-Y (B05D) / P1651.536-Y (B05D) / P1651.537-Y (B05D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法36条4項1号特許法36条6項1号特許法36条6項2号特許法113条2号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7052901号発明「化粧シートの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7052901号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続きの経緯
特許第7052901号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、令和2年3月3日に出願された特願2020-35563号の一部を、令和3年4月16日に新たな特許出願としたものであって、令和4年4月4日にその特許権の設定登録がされ、同年4月12日に特許掲載公報が発行された。その後、令和4年10月12日に、特許異議申立人 佐藤 惠一(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てが行われた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~10に係る特許(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明10」といい、これらをまとめて「本件発明」ともいう。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
紙素材で形成された原反層に、電離放射線硬化型樹脂を12g/m2以上25g/m2以下で塗布し、
前記電離放射線硬化型樹脂の表面に対して該電離放射線硬化型樹脂の高分子鎖を切断可能なエネルギーを有する第一電離放射線を照射して前記電離放射線硬化型樹脂の表面を収縮させ、前記電離放射線硬化型樹脂の表面に凹凸形状を形成し、
収縮させた前記電離放射線硬化型樹脂に前記電離放射線硬化型樹脂を硬化させる第二電離放射線を照射して該電離放射線硬化型樹脂を硬化させることにより、コア部と前記コア部の一方の面から畝状に突出して設けられた畝状部とを有する第一表面保護層を形成する化粧シートの製造方法。
【請求項2】
前記第一電離放射線として、互いに異なる波長を有する複数種類の電離放射線を順に照射する
請求項1に記載の化粧シートの製造方法。
【請求項3】
前記第一電離放射線として、互いに異なる波長を有する2種類の電離放射線を順に照射し、
後に照射する前記第一電離放射線は、先に照射する前記第一電離放射線よりも短波長である
請求項2に記載の化粧シートの製造方法。
【請求項4】
先に照射する前記第一電離放射線は、放電用ガスとしてKrFを含む波長250nmの第一電離放射線であり、
後に放射する前記第一電離放射線は、放電用ガスとしてXeを含む波長172nmの第一電離放射線である
請求項2又は3に記載の化粧シートの製造方法。
【請求項5】
前記第一電離放射線は、カルボニル結合及び炭素-炭素結合の少なくとも一方を切断可能なエネルギーを有する
請求項1から4のいずれか1項に記載の化粧シートの製造方法。
【請求項6】
前記電離放射線硬化型樹脂は、無機ナノ粒子を含んでいない
請求項1から5のいずれか1項に記載の化粧シートの製造方法。
【請求項7】
前記第一電離放射線照射時に、該第一電離放射線照射環境下の酸素を除去する
請求項1から6のいずれか1項に記載の化粧シートの製造方法。
【請求項8】
前記第二電離放射線は、ガリウムランプ及び水銀ランプの双方を用いて照射される
請求項1から7のいずれか1項に記載の化粧シートの製造方法。
【請求項9】
前記畝状部を、前記コア部の一方の面から高さ15μm以下、周期50μm以下の畝状に突出するように形成する
請求項1から8のいずれか1項に記載の化粧シートの製造方法。
【請求項10】
前記電離放射線硬化型樹脂を、厚さ1.0μm以上50μm以下で塗布する
請求項1から8のいずれか1項に記載の化粧シートの製造方法。」
第3 申立理由の概要
申立人は、甲第1号証~甲第13号証(以下「甲1」~「甲13」という。)を提出し、以下の申立理由1~8により、本件発明1~10は、取り消されるべきものである旨主張する。
[証拠方法]
甲1:特開2001-138442号公報
甲2:特開2001-192995号公報
甲3:米国特許出願公開第2020/0030845号明細書
甲4:米国特許出願公開第2014/0371384号明細書
甲5:国際公開第2019/034675号
甲6:株式会社不二製作所のホームページで提供する便利帳の「表面粗さ」の項目、URL:https://www.fujimfg.co.jp/service/benricho/roughness/
甲7:米国特許出願公開第2018/001696号明細書
甲8:特開2009-255490号公報
甲9:特開2019-64121号公報
甲10:特開2016-97510号公報
甲11:菱沼宣是、”エキシマランプと紫外線蛍光ランプ「UV-XEFL」”、光技術情報誌「ライトエッジ」、38号、2012年10月、ウシオ電機株式会社
甲12:菱沼宣是、”第2編 応用編/第1章 処理方法より エキシマUV”、光技術情報誌「ライトエッジ」、18号、2000年3月、ウシオ電機株式会社
甲13:Bauer、他3名、”UV curing and matting of acrylate nanocomposite coatings by 172nm excimer irradiation, Part2”、Progress in Organic Coatings、69巻、2010年、p.287~293
1 申立理由1(明確性要件違反)
(1)本件発明9に規定された「前記コア部の一方の面から高さ15μm以下、周期50μm以下の畝状に突出するように形成する」について(本件発明9)
本件発明に規定する畝状部の凹凸部分に関しては、本件特許の図2のとおりランダムな微細構造を有していることから、その高さや周期の特定が極めて困難であり、故にそれらの「高さ」及び「周期」には、様々な測定方法が考えられ、その測定方法によって異なる値を持つことが容易に理解できる。しかしながら、本件発明の規定はおろか、本件特許明細書にも畝状部の「高さ」及び「周期」の定義やそれらの測定方法について説明がなされていない。より具体的に述べると、本件発明に規定する畝状部の凹凸部分は、ランダムな微細構造を有しているのであるから、当然に測定する位置によって、山と谷の高さの差や山と山の間隔(ないし谷と谷の間隔)が異なるものであるところ、ここでの「高さ」及び「周期」が平均を意味しているのか、最大値などの特定の代表値を意味しているのかどうか明らかでない。また、それらの数値を測定するためには畝状部の断面を特定する必要があるところ、断面の取り方は幾通りもあり、断面の取り方も本件特許明細書から何ら読み取ることはできない。さらに、本件発明の「高さ」及び「周期」についても、例えば、高さに関して、甲6に示される十点平均粗さRzや最大高さRy、隣り合う山と谷の高さの差の最も大きいものなどが考えられ、周期に関して、甲6に示される局部山頂間の平均間隔Sや凹凸の平均間隔Smのほか、谷同士ないし山同士の間隔の最も大きいものなどが考えられ、一義的に明確でない。
したがって、本件発明9は、第三者に不測の不利益を及ぼす程に不明確であるという他なく、明確性要件違反の取消理由が存在する。
(2)本件発明1の第一表面保護層の塗布量に関する「電離放射線硬化型樹脂を12g/m2以上25g/m2以下で塗布し」との規定、本件発明10に規定された「厚さ1.0μm以上50μm以下であり」について(本件発明1~10)
ア 本件発明は、塗布量と厚さで二重の限定がなされている。しかしながら、電離放射線硬化型樹脂の塗布量が12~25g/m2であれば、概ねその密度を1g/mlと仮定すると厚さが12~25μmとなり、本件発明で規定される1.0μm以上50μm以下と整合しない。
イ 電離放射線硬化型樹脂の定義が明らかでなく、溶剤等を含む乾燥前における材料の「塗布量」という解釈もできるし、溶剤等が揮発した乾燥後の材料の「塗布量」という解釈も成り立ち、不明確である。
ウ 本件特許明細書の段落【0070】には、「原反層と基材とが原反層に染み込んだ第一表面保護層により一体化して硬化して形成された」と、塗布された第一表面保護層の材料の一部は原反層に染み込むことが記載されており、かつこれによって原反層の染み込んだ部分が第一表面保護層により一体化することが記載されている。したがって、上記「1.0μm以上50μm以下」の厚さの示す範囲が染み込んだ部分を含むとも含まないとも解されることになり、不明確である。さらに、「原反層に染み込んだ第一表面保護層」との記載からは、原反層に染み込んだ部分も「第一表面保護層」に含まれるものと解され、第一表面保護層の厚さは、当該染み込んだ部分の厚さを含む厚さとして定義されるように考えられるが、この場合、第一表面保護層に原反層の少なくとも一部が取り込まれることにより、第一表面保護層の厚さは大きくなるものと考えられるが、段落【0070】における「原反層が紙であることから電離放射線硬化樹脂の一部が原反層に染み込み、第一表面保護層の厚さは、実施例1の化粧板よりもやや薄くなっていた」との記載は、同段落の上記記載と明らかに矛盾している。このように、本件特許明細書の記載自体も矛盾しており、結局どちらを「前記第一表面保護層の厚さ」と解釈するか決め手がなく、不明確である。
したがって、本件発明1及び本件発明10、並びに本件発明1を引用する本件発明2~9は、第三者に不測の不利益を及ぼす程に不明確であるという他なく、明確性要件違反の取消理由が存在する。
(3)本件発明6に規定された「前記電離放射線硬化型樹脂は、無機ナノ粒子を含まない」について(本件発明6~10)
無機ナノ粒子とは具体的にどのようなサイズの粒子を意味するのか不明であり(例えば、数nmの粒子を指すのか、数十nmの粒子を含むのか、また、数百nmの粒子はどうなのかなど)、この点が技術常識から自明であるとも認められない。その上、本件特許明細書には「無機ナノ粒子」に関する記載もその定義となるような記載も一切存在しないことから「無機ナノ粒子を含まない」という規定により、第一表面保護層の成分として、具体的にどのような粒子が除外されているか理解することができない。
したがって、本件発明6及びこれを引用する本件発明7~10は、いずれも第三者に不測の不利益を及ぼす程に不明確であるという他なく、明確性要件違反の取消理由が存在する。
2 申立理由2(サポート要件違反)
(1)本件発明9における「前記コア部の一方の面から高さ15μm以下、周期50μm以下の畝状に突出するように形成する」について(本件発明1~10)
ア 本件特許明細書の実施例においては、第一表面層の畝状部に関して、具体的にどのような形状(高さ及び周期)であったのか何ら記載がなく、これらの形状に関しては実施例による裏付けが一切存在しない。また、一般記載である段落【0027】においても、そのような形状を採用することによる解決原理(メカニズム等)に関して何ら明確な記載は存在しない。また、本件発明で規定されている範囲と段落【0027】でより好ましいとされている範囲(高さ8μm以下、周期6.5μm以下)が大きく乖離していることも相まって、本件発明に規定する数値範囲全般において、マット感を維持しながら耐指紋性を向上するという所望の効果が得られるとは認識できない。
イ 本件発明に規定する畝状部の高さ及び周期の数値範囲には、いずれも下限が特定されておらず、0μmに近い場合を含む点においても、本件発明の所望の効果が得られないことは明らかといえる。
したがって、本件発明9及び「前記コア部の一方の面から高さ15μm以下、周期50μm以下の畝状に突出するように形成する」という規定すら存在せず、畝状部に対して実質的に何も限定のない本件発明1~8、10は、サポート要件違反の取消理由が存在する。
(2)本件発明1における第一表面保護層の塗布量に関する「電離放射線硬化型樹脂を12g/m2以上25g/m2以下で塗布し」と「紙素材で形成された原反層」について(本件発明1~10)
「紙素材で形成された原反層」、「電離放射線硬化型樹脂を12g/m2以上25g/m2以下で塗布し」との規定は、令和4年2月14日付け手続補正書による補正によって加わったものであり、同日付の意見書において、実施例2、3の態様をもとに効果を強調し、「単に樹脂層(本願発明の第一表面保護層)の凹凸形状のみでなく、原反層の構成によっても化粧シートの耐指紋性の向上に効果に変化が生じることがわかります」「第一表面保護層を構成する樹脂材料の塗布量によっても化粧シートの耐指紋性の向上効果に変化が生じることがわかります」と述べ、特許付与された経緯がある。
ア 然るところ、「電離放射線硬化型樹脂を12g/m2以上25g/m2以下で塗布し」という規定に関し、その数値範囲が溶剤等を含む乾燥前の材料の塗布量なのか、溶剤等が揮発した乾燥後の塗布量を意味するのか不明確であるが、仮に前者であるとすると、塗布される材料が固形分10%、揮発分90%の場合も、固形分90%、揮発分10%の場合も本件発明1に含まれることになるが、これらのいずれの場合においても本件発明の課題を解決できるといえるか、大いに疑問であると言わざるを得ない。特に揮発分が多い場合には、紙素材の原反層への染み込みが大きく、本件発明の課題を解決できるような表面の凹凸形状が得られなくなることが容易に想像できる。
イ 特許権者が意見書で述べるとおり、原反層の素材や樹脂材料の量によって表面構造に差が生じるのであれば、その原因は、段落【0070】に記載の「原反層が紙であることから電離放射線硬化樹脂の一部が原反層に染み込み、第一表面保護層の厚さは、実施例1の化粧板よりもやや薄くなっていた」という点にあると考えられるが、その染み込み具合は、上述した塗布材料の固形分と揮発分との割合や溶剤の種類のみならず、基材の紙素材の種類や坪量、厚みなどによっても大きくことなることが容易に想到できる。したがって、この点が重要なのであれば、実施例で用いられた「坪量30g/m2の紙(天間特殊製紙社製)」と実施例2、3で用いられた(メタ)アクリル系樹脂を所定量用いた場合の関係においてのみ成り立つものであり、本件発明1の構成一般についてまで当て嵌まるものではない。
ウ 実施例1、4では、第一表面保護層を形成する下地となる透明樹脂層を設けているのに対し、実施例2、3では設けない態様となっている。この点、本件発明1では、原反層と第一表面保護層の位置関係に関し「紙素材で形成された原反層に、電離放射線硬化型樹脂を・・・塗布し」と、第一表面保護層と着絵柄層との間に、上記透明樹脂層のような別の層を設けることを何ら禁止していないから、このような透明樹脂層を含む態様を何ら排除されていない。然るところ、仮に段落【0070】の染み込みによる効果が本件発明1の特徴であり、マット感や耐指紋性に影響する表面の凹凸形状に寄与するとしても、それは第一表面保護層を原反層の上に直接形成する場合の話であって、そのような限定のない本件発明1の構成一般において成り立つものではないことは明らかといえる。したがって、本件発明1の構成は、その技術的課題を解決できると認識しうる態様と比較して過度に広範な規定がなされていることは明らかである。
したがって、本件発明1及びこれを引用する本件発明2~10は、サポート要件違反の取消理由が存在する。
(3)本件発明の第一表面保護層に関して艶調整剤の使用が排除されていない点について(本件発明1~10)
本件特許明細書の段落【0002】、【0006】によれば、本件発明の技術思想は、第一表面保護層に艶調整剤を用いないことにより、指紋が付きやすくなるという問題を生じず、マット感と耐指紋性とを両立した化粧シート等を提供することにあると考えられる。
しかしながら、本件発明6においては、無機ナノ粒子を含まないことを明記しながら艶調整剤に関しては一切言及がないこと、本件発明6その他いずれにおいても、艶調整剤について一切言及されていないのであるから、第一表面保護層の電離放射線硬化型樹脂は、艶調整剤を含むことを何ら排除しない趣旨であると考えるほかない。しかしながら、このような構成が上述した本件発明の技術思想に反することは明らかであり、艶調整剤を含有しながら耐指紋性を満足させるための具体的手段については、本件特許明細書の実施例はおろか一般記載からも読み取ることができない。
したがって、本件発明1及びこれを引用する本件発明2~10は、サポート要件違反の取消理由が存在する。
3 申立理由3(実施可能要件違反)
本件発明では「電離放射線硬化型樹脂を12g/m2以上25g/m2以下で塗布し」(本件発明1)、「前記コアの一方の面から高さ15μm以下、周期50μm以下の畝状に突出するように形成する」(本件発明9)と多くのパラメータを含むところ、これらのパラメータをすべて充足する実施例は開示されておらず、具体的にどのような条件を設定すればこれらのパラメータをすべて充足する化粧シートが得られるのか明らかでなく、過度の試行錯誤を要することになる。
特に、電離放射線硬化樹脂の一部が原反層に染み込み、全体的にやや薄くなるという点に特徴があるとすれば、その染み込み具合は、塗布材料の固形分と揮発分との割合や溶剤の種類、基材を構成する紙素材の材質等によっても大きく異なるところ、その具体的条件が記載されておらず、過度の試行錯誤を要することになる。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件発明1及び本件発明9、並びにこれらを引用する本件発明2~8及び本件発明10について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとは認められないから、実施可能要件違反の取消理由が存在する。
4 申立理由4(甲1を主引例とする本件発明1~10の進歩性要件違反)
本件発明1~10は、甲1に記載された発明から当業者が容易に想到し得た発明であるから、本件特許には、進歩性違反の取消理由が存在する。
5 申立理由5(甲2を主引例とする本件発明1~10の進歩性要件違反)
本件発明1~10は、甲2に記載された発明から当業者が容易に想到し得た発明であるから、本件特許には、進歩性違反の取消理由が存在する。
6 申立理由6(甲3を主引例とする本件発明1~10の進歩性要件違反)
本件発明1~10は、甲3に記載された発明から当業者が容易に想到し得た発明であるから、本件特許には、進歩性違反の取消理由が存在する。
7 申立理由7(甲4を主引例とする本件発明1~10の進歩性要件違反)
本件発明1~10は、甲4に記載された発明から当業者が容易に想到し得た発明であるから、本件特許には、進歩性違反の取消理由が存在する。
8 申立理由8(甲5を主引例とする本件発明1~10の進歩性要件違反)
本件発明1~10は、甲5に記載された発明から当業者が容易に想到し得た発明であるから、本件特許には、進歩性違反の取消理由が存在する。
第4 甲号証に記載された発明等
1 甲1
(1)甲1の記載事項
甲1には次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した(以下、同様)。
「【請求項1】基材に化粧が施され、かつ、最上面にマット剤を含有する電離放射線硬化性組成物が架橋硬化した表面保護層が積層されており、前記マット剤が、前記電離放射線硬化性組成物と反応する官能基を表面に有する無機質粒子であることを特徴とする化粧材。」
・「【0002】
【従来の技術】建築物の外装(屋根、壁、軒天等)もしくは内装(壁、床、天井等)、建具、家具、または、建築物に付随して置かれる家庭電器製品の表面材等としては、古くは天然産の石、木、泥等をそのまま素材とするものが多く使用されてきた。近年、天然材の枯渇、一定品質や一定の外観が得にくい等の事情により、プラスチック、金属、もしくはセメント等の工業的に得られる素材を使用したシートや板状のものが増えてきている。」
・「【0004】このような化粧材の一例として、紙やプラスチックフィルムを基材として、これらに模様を施し、表面に塗装を施してある化粧紙もしくは化粧シートが知られている。板状のものを基材とする場合には化粧板と呼ぶことが多いが、ここでは、基材の素材、厚みを問わず、化粧紙、化粧シート、または化粧板と呼ぶものを、すべて含めて、化粧材と称することとする。」
・「【0007】しかしながら、上記のようなマット剤を表面保護層5に含有させるには、マット剤を表面保護層形成用塗料組成物中に添加して混合し、得られた塗料組成物を模様層4上等にコーティングする必要があるが、マット剤を配合した塗料組成物を調製後、使用するまでの間に、あるいは使用している最中に、マット剤が沈降して、所定の艶や耐摩耗性が得られなかったり、耐摩耗性を向上させるためにはマット剤を多量に添加する必要があり、多量の添加により沈降が起きやすくなる欠点が助長され、かつ得られる化粧材が白色味を帯びる傾向があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明においては、マット剤を含有する電離放射線硬化性組成物が架橋硬化した表面保護層を表面に有する化粧材を製造する際に、マット剤を配合した塗料組成物中のマット剤が沈降することによって生じる欠点の解消、および耐摩耗性を向上させるためにマット剤を多量に添加する必要がある欠点の解消を課題とするものである。
【0009】
【課題を解決する手段】アルミナ、シリカ等の無機質粒子のマット剤として、それらの表面に、塗料組成物中の電離放射線硬化性化合物と反応し得る官能基を有するものを使用することにより、架橋硬化していない電離放射線硬化性組成物中においても、マット剤が沈降しにくいことが判明した。また、塗料組成物中の電離放射線硬化性化合物と反応し得る官能基を有していないマット剤を使用するときよりも、高い耐摩耗性が得られるので、同程度の耐摩耗性を発揮させるのであれば、マット剤の配合量を減らせることが判明した。本発明は、これらの判明した事項に基づいてなされたものである。」
・「【0012】基材2としては、通常、化粧材に用いられている素材であれば、いずれも使用可能である。大別すれば、各種の紙類、プラスチックフィルム又はプラスチックシート、金属箔、金属シート、又は金属板、木材などの木質系の板、各種の窯業系素材等の各群である。これら各群に含まれる素材を単独で使用してもよいが、紙同士の複合体や紙とプラチスチックフィルムの複合体等、これら素材の任意の組合わせによる積層体も利用できる。これらの基材は、次記の着色層3等の密着度を上げるために、下地処理が施されていてもよい。基材2の素材の各群について、次に説明する。」
・「【0027】表面保護層5として、熱可塑性のものも使用し得るが、熱硬化性樹脂を使用する熱硬化性樹脂組成物、あるいは紫外線又は電子線照射により硬化する電離放射線硬化性樹脂組成物を用い、塗布後に加熱したり、電離放射線を照射して架橋硬化させることによりさらに物理的、化学的な諸性能を向上させることができる。特に、メラミン化粧板が従来使用されている分野にも進出する場合には、メラミン化粧板並みの表面の耐久性、特に耐摩耗性を要望されことが多いから、電離放射線硬化性樹脂組成物を用い、塗布後に電離放射線、特に電子線を照射して架橋硬化させる方法が脚光をあびている。表面保護層5の厚みは、必要な物理的、化学的性状にもよるが、4~5μm程度あった方がよい。」
・「【0039】
【実施例】(実施例1~3)建材化粧紙用原反である紙(興人(株)製、GF-606)の表面に、アクリル樹脂とニトロセルロースをバインダーとするグラビアインキ(ザ・インクテック(株)製、HAT)で着色層および模様層を、いずれもグラビア印刷により形成して印刷紙を作成した。得られた印刷紙の印刷面に、電子線硬化性の塗料組成物A~C(組成は下記の通りで、それぞれの組成において3番目に記載したマット剤が異なる。)をそれぞれグラビアコーティングにより、塗布量が25g/m2になるようコーティングした後、加速電圧;175KV、照射線量;5Mradの条件で電子線を照射し、塗膜を硬化させて化粧紙を得た。ただし、以下の組成において、「部」とあるのは、質量であらわした部数である。」
(2)甲1の認定事項
ア 段落【0004】及び【0039】の記載から、基材として紙を用いる場合は化粧紙としており、段落【0012】の記載を踏まえると、基材2として各種の紙類が使用される化粧紙が記載されていると認められる。
イ 段落【0027】の「表面保護層5として、・・・紫外線又は電子線照射により硬化する電離放射線硬化性樹脂組成物を用い」との記載から、請求項1に記載された電離放射線硬化性組成物は、電離放射線硬化性樹脂組成物であると認められる。
ウ 段落【0039】から、化粧紙の製造方法が記載されていると認められる。
(2)甲1発明
上記(1)及び(2)を踏まえると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「基材2として各種の紙類が使用され、
基材に化粧が施され、かつ、最上面にマット剤を含有する電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化した表面保護層が積層されており、前記マット剤が、前記電離放射線硬化性樹脂組成物と反応する官能基を表面に有する無機質粒子であり、
表面保護層は、電子線硬化性の塗料組成物を塗布量が25g/m2になるようコーティングした後、
電子線を照射し、塗膜を硬化させる
化粧紙の製造方法。」
2 甲2
(1)甲2の記載事項
甲2には次の事項が記載されている。
・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、住宅等の建築物や車両等の内装に使用される化粧シート及び化粧板に関するものであり、特に建具、壁面、天井等に好適に使用できる化粧シート及び化粧板に関するものである。」
・「【0016】
【発明の実施の形態】本発明の化粧シートは、貼付対象となる木質系基材の表面の木目の意匠感や素材感等が透視可能であるように、薄葉紙等の透明若しくは半透明の原紙を使用し、これに耐光性、耐汚染性、耐摩耗性、耐スクラッチ性等の各種物性を付与するために、透明若しくは半透明で各種物性に優れた樹脂を塗工して表面に樹脂層を形成してなるものであり、更に好ましくは、塗工した樹脂の一部は原紙の全体若しくは表層部の一部に浸透含浸し、原紙の紙間強度を強化すると共に、原紙の透明度を向上し、木質系基材の表面の木目の意匠感や素材感等を活かした意匠性を更に向上する作用をなしているものである。」
・「【0022】樹脂塗工に使用する樹脂は、目的の化粧板に要求される耐光性、耐汚染性、耐摩耗性、耐スクラッチ性等の各種耐性を付与することができる樹脂であれば如何なる樹脂であっても良いが、一般的には、硬度や内部凝集力に優れた熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂(紫外線硬化性樹脂又は電子線硬化性樹脂等)を使用するのが良い。」
・「【0025】樹脂の塗工量は、基本的には目的の化粧板に要求される各種耐性の程度に応じて決定されるが、塗工時に樹脂の一部は原紙中に浸透含浸することから、原紙の表面に均一な樹脂塗膜を各種耐性上十分な膜厚に形成させるためには、原紙の樹脂吸収性も考慮して設計する必要があり、一般的には2~50g/m2の範囲内とすることが好ましい。」
・「【0034】上記減摩剤の他にも、表面の艶状態を調整するために例えばシリカ又はガラスビーズ等の艶調整剤を添加したり、透明性を損なわない範囲で適宜の色調に着色するために染料又は着色顔料を添加したり、パール光沢性、蛍光性又は蓄光性を付与するためにパール顔料、蛍光顔料又は蓄光顔料を添加したり、その他特殊な機能性を付与するために例えばホルムアルデヒドキャッチャー剤等の揮発性有機物質捕捉剤や抗菌剤、消臭剤、吸放湿剤等の機能性物質を添加したりすることもできる。」
(2)甲2の認定事項
段落【0016】には、樹脂を塗工して表面に樹脂層を形成するという、化粧シートの製造方法が記載されていると認められる。また、樹脂層に形成する際に、塗工した樹脂を硬化させることは明らかである。
(3)甲2発明
上記(1)及び(2)を踏まえると、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「薄葉紙等の透明若しくは半透明の原紙を使用し、これに耐光性、耐汚染性、耐摩耗性、耐スクラッチ性等の各種物性を付与するために、透明若しくは半透明で各種物性に優れた樹脂を塗工して表面に樹脂層を形成してなり、
樹脂塗工に使用する樹脂は、熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂(紫外線硬化性樹脂又は電子線硬化性樹脂等)を使用し、
樹脂の塗工量は、一般的には2~50g/m2の範囲内とし、
塗工した樹脂を硬化させる
化粧シートの製造方法。」
3 甲3
(1)甲3の記載事項
甲3には次の事項が記載されている。なお、甲3の記載事項は、申立人が提出した翻訳文を基に当審が作成した翻訳文で示している。
・「[0027]本発明の実施形態は、以下を提供する。
[0028]ケイ素(Si)含有官能基を含むオリゴマー;フッ素(F)含有官能基を含むオリゴマー;およびアクリルオリゴマーを含む樹脂組成物の硬化物。」
・「[0046]硬化物の製造方法
[0047]さらに、本発明の一実施形態は、硬化製品の製造方法を提供し、該方法は以下を含む。
[0048]ケイ素(Si)含有官能基を含むオリゴマー;フッ素(F)含有官能基を含むオリゴマー;及びアクリルオリゴマーを含む樹脂組成物に300nm以下の波長を有する光を照射して樹脂組成物を活性化する第1の光照射ステップ。
「0049」活性化された樹脂組成物に700nm以上の波長を有する光を照射して樹脂組成物を熱硬化させる第2の光照射ステップ;および
[0050]熱硬化した樹脂組成物に400nm以下の波長の光を照射し、樹脂組成物を光学的に硬化させる第3の光照射ステップ。
[0051]本発明は、ケイ素(Si)含有官能基を含むオリゴマー、フッ素(F)含有官能基を含むオリゴマー、およびアクリル系オリゴマーを含む樹脂組成物に、特定の異なる波長域の光を順次3回照射して樹脂組成物を硬化するステップを含み、製造された硬化物の表面にマイクロフォールディング構造を実現し得るようにするものである。
[0052]ここで、第1の光照射ステップは、基材上に塗布された樹脂組成物に光を照射する第1のステップである。第1の光照射ステップでは、照射された光によって発生したエキシマが、塗布された樹脂組成物及び/又は硬化物の表面を収縮させることによりシワを形成し、表面に入射する光の散乱率を高める。本発明は、エキシマを形成する第1の光照射工程を含むことにより、樹脂組成物及び/又は硬化物の表面を収縮させて光の散乱率を増加させることが可能である。したがって、本発明では、艶消し剤を用いることなく、硬化物の光沢度を低下させることができる。このため、第1の光照射ステップは、少量の酸素(O2)を含む窒素(N2)雰囲気下、300nm以下、特に200nm以下、より特に100~200nm、150~190nm又は160~180nmの波長域の高エネルギー光を用いて行ってもよい。・・・
[0053]一例として、第1光照射ステップでは、樹脂組成物にエキシマを形成するように、100±10ppmの酸素(O2)を含む窒素(N2)条件下で、175±2nmの波長を有する光を
1~2秒の超短時間照射してもよい。」
・「[0065]本発明による内装材は、前述した本発明による硬化物を含むことにより、低光沢と耐汚染性及び耐摩耗性とを同時に実現することができる。従って、この内装材は、低光沢性と高耐久性が要求される床材等に有用に使用することができる。
[0066]ここで、内装材は、その基材上に形成された表面処理層として、本発明に係る硬化物を含むことができる。また、必要に応じて、内装材に機能を付加するように、基材と表面処理層である硬化物との間に、印刷層、バランス層、寸法安定層などの機能層をさらに含んでもよい。一例として、内装材は、バランス層、基材層、印刷層、透明層、表面処理層が順次積層された構造であってもよいし、基材層、印刷層、透明層、表面処理層が順次積層されている構造であってもよい。」
・「[0073]また、基材層は、床材の基層であり、その上に形成された透明層や印刷層を支持し、上下から加わる衝撃を吸収する役割を担っていてもよい。このような基材層は、当該技術分野において床材の基材として用いられる限り特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート (PET)やグリコール変性ポリエチレンテレフタレート (PETG)などのポリエステルなどを含むシート又はフィルムであってもよい。さらに、基材層は、約1.0mm~約3.0mmの厚さを有していてもよいが、本発明はこれに限定されるものではない。」
・「[0080]表1に要約された組成を有する樹脂組成物を調製した。調製した各樹脂組成物を、幅と長さが10cm×10cmのポリ塩化ビニル(PVC)基板に塗布した後、図1に示す構造を有する光硬化装置に固定した。次に、下記表2にまとめた硬化条件で段階的に光照射を行い、これにより、基板上の樹脂組成物を硬化させて形成された硬化物試験片を製造した。ここで、硬化物の平均厚さは、18±2μmであった。」
・図3「
[図:0001398282000001.jpg]
」
(2)甲3の認定事項
・段落[0046]~[0050]には、硬化物の製造方法が記載されているが、段落[0065]には、床材等に有用に使用することができる内装材が硬化物を含むことが記載されていることを踏まえると、床材等に有用に使用することができる内装材の製造方法が記載されていると認められる。
(3)甲3発明
上記(1)及び(2)を踏まえると、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「低光沢性と高耐久性が要求される床材等に有用に使用することができる内装材の製造方法であって、
基材層上に形成された表面処理層として、硬化物を含み、
基材層は、当該技術分野において床材の基材として用いられる限り特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)やグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)などのポリエステルなどを含むシート又はフィルムであり、
硬化物は、ケイ素(Si)含有官能基を含むオリゴマー;フッ素(F)含有官能基を含むオリゴマー;およびアクリルオリゴマーを含む樹脂組成物であり、
硬化物の平均厚さは、18±2μmであり、
樹脂組成物に300nm以下の波長を有する光を照射して樹脂組成物を活性化する第1の光照射ステップであって、基材上に塗布された樹脂組成物にエキシマを形成するように175±2nmの波長をする光を照射して、塗布された樹脂組成物及び/又は硬化物の表面を収縮させることによりシワを形成し、表面に入射する光の散乱率を高める第1の光照射ステップ;
活性化された樹脂組成物に700nm以上の波長を有する光を照射して樹脂組成物を熱硬化させる第2の光照射ステップ;および
熱硬化した樹脂組成物に400nm以下の波長の光を照射し、樹脂組成物を光学的に硬化させる第3の光照射ステップを含む
内装材の製造方法。」
4 甲4
(1)甲4の記載事項
甲4には次の事項が記載されている。なお、甲4の記載事項は、申立人が提出した翻訳文を基に当審が作成した翻訳文で示している。
・特許請求の範囲
「1.艶消し表面を製造する方法であって、
(1)放射線硬化コーティング剤を基材に塗布し、
(2)ステップ(1)の放射線硬化コーティングに、200nm以上420nm以下の波長を有するUV光を25~120mJ/cm2の放射線量で照射し、
(3)ステップ(2)で得られたコーティングに、120nm以上230nm以下の波長を有する UV光を照射し、
(4)ステップ(3)で得られたコーティングを光線照射により仕上げ硬化する、方法。
・・・
7.ステップ(1)において、コーティング剤が以下を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
a)1つまたは複数の放射線硬化性バインダー、および
b)1種以上の光重合開始剤。
8.放射線硬化性バインダーa)が、(メタ)アクリル系コポリマー、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アミノ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートおよびホスファゼン(メタ)アクリレートからなる群から選ばれたオリゴマーおよび/またはポリマーからなる、請求項7に記載の方法。」
・「[0001]本発明は、ラジカル重合下で活性化二重結合を含むコーティング系にアクチニック放射線を照射して行われる、艶消しおよび耐傷性コーティングを製造する方法に関するものである。」
・「[0036]コーティング剤はまた、艶消し剤h)を含むことができる。好適な艶消し剤は、例えば二酸化ケイ素であり、これは対応するコーティングに必要な粒子サイズに調整される。あるいは、ポリアミド12をベースとする尿素-メタナール縮合物または混合物も使用することができる。」
・「[0038]本発明による方法に適した基材は、例えば鉱物基材、木材、木質材料、金属、プラスチック、繊維結合材料などである。
[0039]ステップ(2)において、放射線硬化性コーティング剤は、波長200nm~420nm、好ましくは280nm~420nmのUV光で照射される。必要な照射量は、25~120mJ/cm2、好ましくは30~100mJ/cm2の範囲である。このステップ(2)において、コーティング剤の部分的なゲル化が行われる。
[0040]・・・
[0041]ステップ(2)の本発明による方法では、高圧または中圧の水銀蒸気ランプが好ましく用いられ、水銀蒸気はガリウムまたは鉄などの他の元素でドープすることにより修飾することができる。
[0042]・・・
[0043]次にステップ(3)において、ステップ(2)から得られたコーティングは、120nm以上230nm以下、好ましくは150nm以上225nm以下、特に好ましくは172nmの波長を有する紫外線で照射されて、マイクロフォールディングが起こるようにされる。
[0044]ステップ(3)のための好適な放射線源は、120nm~230nm、好ましくは150nm~225nm、特に好ましくは172nmの範囲の紫外線を放射するエキシマUVランプである。・・・」
・「[0046]ステップ(3)から得られるコーティングの仕上げ硬化(ステップ(4))は、例えばUV放射線、電子線放射線、X線放射線又はガンマ放射線のような光線によって行われる。・・・」
・「[0055]前記コーティング剤I~IV(以下、コーティング製剤ともいう)は、繊維強化ミネラルシート(ヨーロッパボード)上にスパイラルブレードにより30μmのコーティング厚さで塗布し、以下のA1)、A2)、B1)、B2)、C1)およびC2)により放射線硬化させる。
A1)電子線照射(170kV)によるコーティング剤の放射線硬化(比較例)。
A2)紫外線照射による放射線硬化(UVエミッター、IST社(ニュルティンゲン、DE)の中圧水銀エミッター)(比較例)。
B1)マイクロフォールディング、すなわちコーティングのマット化を達成するためのエキシマエミッター(172nm)による照射、およびその後の電子ビーム放射(170kV)による仕上げ硬化(比較例)。
B2)マイクロフォールディング、すなわちコーティングのマット化を達成するためのエキシマエミッター(172nm)による照射、およびその後の紫外線照射(UVエミッター、IST社(ニュルティンゲン、DE)の中圧水銀エミッター)による仕上げ硬化(比較例)。
C1)UV照射による部分ゲル化(UVエミッター、IST社(ニュルティンゲン、DE)のガリウムドープ中圧水銀エミッター)、続いてエキシマエミッター(172nm)照射によりマイクロフォールディング、すなわちコーティングの艶消しを形成し、その後、電子ビーム照射(l70kV)による仕上げ硬化。
C2)UV照射による部分ゲル化(UVエミッター、IST社(ニュルティンゲン、DE)のガリウムドープ中圧水銀エミッター)、続いてエキシマエミッター(172nm)照射によりマイクロフォールディング、すなわちコーティングの艶消しを形成し、その後、紫外線照射(UVエミッター、IST社(ニュルティンゲン、DE)の中圧水銀エミッター)による仕上げ硬化。」
・「[0061]コーティング剤Vは、繊維強化ミネラルシート(ヨーロッパボード)上にスパイラルブレードにより24μmの塗布厚で、または繊維強化ミネラルシート(ヨーロッパボード)上に塗布枠により150μm、200μm、300μm、500μmおよび700μmの塗布厚で塗布し、前述の硬化方法B1)またはC1)により硬化させた。」
(2)甲4の認定事項
ア 請求項1の「艶消しの表面を製造する方法」との記載、段落[0001]の「本発明は、・・・艶消しおよび耐傷性コーティングを製造する方法に関する」との記載から、甲4には、艶消し及び耐傷性コーティングの表面を製造する方法が記載されていると認められる。また、甲4のコーティングは、表面層を形成すると認められる。
イ 請求項8には、(メタ)アクリレート系の樹脂が多数列挙されているから、甲4には放射性硬化バインダーとして(メタ)アクリレート系のオリゴマー及び/又はポリマーを含むことが記載されていると認められる。
(3)甲4発明
上記(1)及び(2)を踏まえると、甲4には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
「艶消し及び耐傷性コーティングの表面を製造する方法であって、
(1)放射線硬化コーティング剤を基材に塗布し、
ステップ(1)の放射線硬化性コーティング剤は、放射線硬化バインダーとして(メタ)アクリレート系のオリゴマー及び/又はポリマーを含み、
基材は、例えば鉱物基材、木材、木質材料、金属、プラスチック、繊維結合材料であり、
コーティング剤は24μmの塗布厚で塗布し、
(2)ステップ(1)の放射線硬化コーティングに、200nm以上420nm以下の波長を有するUV光を25~120mJ/cm2の放射線量で照射し、
ステップ(2)では、コーティング剤の部分的なゲル化が行われ、高圧または中圧の水銀蒸気ランプが用いられ、
(3)ステップ(2)で得られたコーティングに、120nm以上230nm以下の波長を有するUV光を照射し、
ステップ(3)において、172nmの波長を有する紫外線で照射されて、マイクロフォールディングが起こるようにされ、放射線源は、172nmの範囲の紫外線を放射するエキシマUVランプであり、
(4)ステップ(3)で得られたコーティングをUV放射線、電子線放射線、X線放射線又はガンマ放射線のような光線照射により仕上げ硬化し、
コーティングは、表面層を形成する、
方法。」
5 甲5
甲5には、次の事項が記載されている。なお、甲5の記載事項は、申立人が提出した翻訳文を基に当審が作成した翻訳文で示している。
・特許請求の範囲
「1.連続的なステップi.からiv.を含む平坦な基材上に艶消しコーティングを製造するための方法、
i.コーティングされる基材の表面に、UV放射によって硬化可能な液体コーティング剤Fの未硬化コーティング層を提供すること。
ii.コーティング層に、250~420nmの波長範囲の紫外線を、コーティング層の部分硬化をもたらす照射量で照射すること。
iii.部分硬化したコーティング層に、不活性ガス下で150~250nmの波長範囲の紫外線を照射すること。
iv.部分硬化したコーティング層に、実質的に250~420nmの波長範囲である紫外線放射、または電子放射を、コーティング層の硬化をもたらす放射量照射すること。
・・・」
・第1ページ第3~6行(なお、行数は各ページ左側の数字による。以下、同様。)
「本発明は、紫外線照射により硬化可能な液体組成物を用いて、平坦な基材、特に木材、木質材料、金属、プラスチックなどの無孔質基材にマットコーティングを製造するプロセスに関するものである。」
・第18ページ第14~22行
「さらに、コーティング剤Fは、追加の艶消し効果および/または表面構造の均質化をもたらす1つ以上の艶消し剤を含んでもよい。これらには、例えば、パイロジェンシリカ、合成非晶質シリカ、例えば沈降シリ力などの二酸化ケイ素、および亜鉛石鹸、例えばステアリン酸亜鉛が含まれる。艶消し剤の総量は、コーティング剤Fの硬化性成分の総重量を基準にして、典型的には10重量%を超えず、含まれる場合には、コーティング剤Fの硬化性成分の総重量を基準にして、典型的には0.1~10重量%の範囲、特に0.5~5重量%の範囲であるだろう。」
・第26ページ第38行~第27ページ第17行
「本発明によるプロセスの利点は、特に20μm以下の膜厚の薄いコーティングを製造する際に発揮される。したがって、本発明によるプロセスは、3~20μmの範囲、特に3~18μmの範囲、より特に5~16μmの範囲の層厚を有するコーティングの製造に特に好適である。したがって、これらの場合における塗布量は、フラッシュオフ後、すなわちコーティング製の任意の揮発性成分の除去後、20g/m2、例えば、3~20g/m2、特に3~18g/m2、より特に5~16g/m2の適用がもたらされるように選択される。
本発明によるプロセスに適した基材は、例えば、木材、段ボールや板紙を含む紙、織物、革、不織布、プラスチック表面、ガラス、セラミックス、セメント成型ブロックや繊維セメント板などの鉱物建材、コーティング金属を含む金属などである。プラスチック表面の場合、主に以下の材料で作られる。:ポリカーボネート、ポリエチレン、例えば、PE、HDPE、LDPE、ポリプロビレン、例えば、PP、延伸PP(OPP)、二軸延伸PP(BOPP)、ポリアミド、例えば、ナイロン(R)、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンフラノエート(PEF)」
・第28ページ第5~12行
「ステップii.では、ステップi.で得られたコーティング層に、波長が実質的に250nm~420nmの範囲、好ましくは実質的に300nm~420nmの範囲、特に実質的に350~420nmの範囲である紫外線を照射する。このとき、未硬化コーティング層中の硬化性成分のエチレン性不飽和二重結合の一部が重合し,コーティング層は部分的に硬化するが完全硬化には至らない。この工程はゲル化とも呼ばれる」
・第29ページ第13~18行
「その後、ステップiii.において、ステップii.で得られたコーティングに、120nm~250nm範囲、好ましくは150nm~225nmの範囲、特に好ましくは150~200nmの範囲の波長を有するUVC光を照射する。これにより、塗布層の表面にマイクロフォールディングを実現する。」
・第29ページ第33~35行
「ステップiii.のために好適な放射源は、主にエキシマUVランプであり、120nm~250nm範囲、好ましくは150nm~225nmの範囲、特に好ましくは172nmの紫外線を放射する。」
・第30ページ第5~12行
「ステップiv.では、ステップiii.で得られたレジスト膜に紫外線または電子線を照射する。この際、硬化性成分のエチレン性不飽和二重結合の残りの部分が大きく、あるいは完全に重合するため、コーティング層は硬化または完全硬化する。紫外線を照射することが好ましい。紫外線を照射する場合、紫外線の波長は、実質的に250nm~420nmの範囲、好ましくは実質的に300nm~420nmの範囲、特に実質的に350~420nmの範囲にあることが好ましい。」
(2)甲5発明
上記(1)を踏まえると、甲5には次の発明が記載されている。
「連続的なステップi.からiv.を含む平坦な基材上に艶消しコーティングを製造するための方法であって、基材は、段ボールや板紙を含む紙であり、
i.コーティングされる基材の表面に、UV放射によって硬化可能な液体コーティング剤Fの未硬化コーティング層を提供し、塗布量は、20g/m2の適用がもたらされるように選択されること。
ii.コーティング層に、250~420nmの波長範囲の紫外線を、コーティング層の部分硬化をもたらす照射量で照射すること。
iii.部分硬化したコーティング層に、不活性ガス下で150~250nmの波長範囲の紫外線を照射し、ステップiii.において、コーティング層の表面にマイクロフォールディングを実現すること。
iv.部分硬化したコーティング層に、実質的に250~420nmの波長範囲である紫外線放射、または電子放射を、コーティング層の硬化をもたらす放射量照射すること。
を含む方法。」
6 甲7
甲7には、次の事項が記載されている。なお、甲7の記載事項は、申立人が提出した翻訳文を基に当審が作成した翻訳文で示している。
・「[0013]本発明は、熱硬化性樹脂(合成樹脂)で形成された表面層上に、対応する構造のエンボスエ具によって、例えば1つ以上の対応する構造の圧力板または圧カベルトによって、幅が0.5μmから100μmの範囲である線構造の形態の不規則な微細構造を生成するという概念に基づいており、微細構造はリップル仕上げテクスチャーから派生しており、これはより秩序だった線構造とより非秩序な線構造の領域を不規則的に交替することにより特徴づけられている。この場合、線構造は、例えば、不規則に蛇行した形状のリブ及び/又は溝として形成され、前記線構造は、実質的に輪郭に沿った隣接するリブ及び/又は溝の形態のより秩序ある線構造と、互いに横方向に延びるリブ及び/又は溝の形態のより非秩序ある、すなわち、全く秩序ない線構造から構成されている。
[0014](略)
[0015]かなりの抗指紋効果が、秩序のある又はより秩序のある及び全く秩序のない線構造を有するこれらの不規則で微細な線構造によって達成される。同時に、線状構造の細かさは、比較的低い反射率、従ってマットな表面があることを意味する。この場合、本発明に従って形成された表面層の反射率(光沢の程度)は、構造形状および構造サイズ、特に溝の深さによって変化させることができる。さらに、熱硬化性樹脂(合成樹脂)は、装飾表面に良好な耐摩耗性を与える。
[0016]本発明による構成要素は、例えば、家具要素、ドア要素、壁パネル、天井パネル、床パネル又は外側ファサード要素であり、又はそのような要素又はパネルの製造のためのものである。家具要素は、特に、テーブルトップ、ワークトップ、食器棚の扉、食器棚の側壁、キャビネット棚、引き出しの前部、棚、棚の側壁等とすることができる。
[0017]部品の板状またはプロファイル状の支持体は、例えば木質材料、ラミネート複合材および/または厚紙で形成される。ラミネート複合材は、複数の紙層をフェノール樹脂やメラミン樹脂に浸し、高圧で接合したものである。このようなラミネート複合材からなる支持体は、高圧ラミネート(HPL)とも称される。木質材料で形成された本発明による部品の支持体は、チップボードまたはファイバーボード、特にHDFまたは MDFボードとすることができる。また、本発明による部品の板状またはプロファイル状の支持体は、ハニカムボードまたは硬質発泡体ボードで形成されたコアからなるサンドイッチボードと呼ばれるものであることができる。」
・「[0036]リブ1、1’及び溝2、2’は、非常に細かく、特に非常に狭くなるように形成されている。それぞれのリブ1、1’又は溝2、2’の幅は、0.5μmから100μmの範囲、好ましくは2μmから50μmの範囲にある。リブ1、1’又は溝2、2’の高さ又は深さは、0.5μmから15μmの範囲、好ましくは0.5μmから10μmの範囲、特に好ましくは0.5μmから8μmの範囲にある。表面構造の個々のメアンダー状リブ1、1’の稜線長さ又は個々のメアンダー状溝2、2’の谷間長さは、例えば10μmから500μmの範囲、特に20μmから200μmの範囲にある。」
・図1「
[図:0001398282000002.jpg]
」
7 甲8
甲8には、次の事項が記載されている。
・「【0001】
本発明は、各種基材表面に、耐水性、耐摩耗性、耐傷性、防曇性、防汚性、耐候性に優れる親水性表面を付与した親水性部材、フィン材、アルミニウム製フィン材、熱交換器、エアコンおよび該親水性部材を形成するための親水性組成物に関する。」
・「【0022】
親水性層の表面は、中心線平均粗さRaが0.005~2μmの凹凸構造を有し、この凹凸により親水性や親水性層の耐磨耗性が向上する。このような凹凸構造は、親水性層に適切な粒径のフィラーを適切な量含有させて形成することも可能であるが、親水性層を塗布、乾燥させる際に相分離を生じさせて形成することがより良好な凹凸構造を得ることができ、例えば、スルホン酸カリウム等のイオン性官能基を有する親水性ポリマーを含有させることが好ましい。
本発明の親水性層表面は、中心線平均粗さが0.005~2μmの凹凸構造を有するだけではなく、100μm以上の粗大突起がないことが好ましい。親水性層表面凹凸の平均間隔(Sm)が 0.1~100μmであり、かつ十点平均粗さ(Rz)と中心線平均粗さ(Ra)の比(Rz/Ra)が20以下、更には、表面凹凸の最大高さ(Ry)が10μm以下にあることが好ましい。
好ましくは、表面凹凸の平均間隔(Sm)が0.2~70μmであり、(Rz)と(Ra)の比(Rz/Ra)が15以下、並びに最大高さ(Ry)が0.02~8μmから成る。特に好ましくは、表面凹凸の平均間隔(Sm)が0.5~50μmであり、(Rz)と(Ra)の比(Rz/Ra)が10以下、並びに最大高さ(Ry)が0.05~5μmである。ここで、RaとRzの関係は表面の凹凸の均一性を示すものである。
親水性表面形状が上記範囲にあると、親水性と耐傷性を両立することが可能となる。一般的に表面凹凸の付与には耐傷性の低下を伴うが、本発明の親水ポリマーを用いた場合、耐傷性を保持したまま表面凹凸の付与が可能となる。
【0023】
凹凸構造の形態(ピッチ及び表面粗さなど)は、加水分解性シリル基含有親水性ポリマー(以下、単に親水性ポリマーということがある)の種類及び添加量、架橋剤の種類及び添加量、その他添加剤の種類及び添加量、塗布液の固形分濃度、ウエット膜厚、乾燥条件等で適宜コントロールすることが可能である。」
8 甲9
甲9には、次の事項が記載されている。
・「【0005】
そこで、本発明は、艶が低く、易掃性、耐指紋性及び手触り感に優れた凹凸面を有するメラミン化粧板を製造するための賦形シート、及び、該賦形シートを使用してメラミン化粧板を製造する方法を提供することを目的とする。」
・「【0073】
メラミン化粧板4の凹凸面40を構成する凹凸の中心線平均粗さRa、最大高さRmax及び平均間隔Smは、以下の範囲であることが好ましい。これにより、メラミン化粧板4の凹凸面40が、低い艶を有するとともに、優れた易掃性、耐指紋性及び手触り感を有するものとなる。
【0074】
メラミン化粧板4の凹凸面40を構成する凹凸の中心線平均粗さRaは、好ましくは1.4μm以上2.3μm以下である。中心線平均粗さRaの定義は、JIS B0601-1982に従う。
【0075】
メラミン化粧板4の凹凸面40を構成する凹凸の最大高さRmaxは、好ましくは10μm以上16μm以下、さらに好ましくは11μm以上14μm以下である。最大高さRmaxの定義は、JIS B0601-1982に従う。
【0076】
メラミン化粧板4の凹凸面40を構成する凹凸の平均間隔Smは、好ましくは30μm以上100μm以下、さらに好ましくは50μm以上100μm以下である。平均間隔Smの定義は、JIS B0601-1994に従う。」
9 甲10
甲10には、次の事項が記載されている。
・「【請求項1】
プラスチックフィルムを有する化粧シートであって、該化粧シートの少なくとも一方の最表面は凹凸面であり、該凹凸面は、カットオフ値を2.5mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(Ra2.5)、十点平均粗さ(Rz2.5)、及び局部山頂平均間隔(S2.5)が以下の条件(1)~(3)を満たす化粧シート。
0.10μm≦Ra2.5≦0.70μm (1)
5.7≦Rz2.5/Ra2.5 (2)
S2.5≦70μm (3)」
・「【0008】
本発明は、低光沢性、触感及び色合いを同時に良好にし得る化粧シートを提供することを目的とする。」
・「【0059】
[化粧板]
本発明の化粧シートは、凹凸面が最表面層となるようにして被着材に積層して、化粧板として用いることが好ましい。・・・」
・「【0061】
化粧板は、例えば、壁、天井、床などの建築物の内装材;窓枠、扉、手すりなどの建具;家具;家電製品、OA機器などの筐体;玄関ドアなどの外装材、あるいはこれらの表面材として好ましく用いることができる。」
10 甲11
甲11には、次の事項が記載されている。
・3枚目第1~3行
「5.各種の発光波長
放電用ガスとして、希ガス、希ガスとハロゲンガスの混合ガスを用いると、表1に示すように、いろいろな波長のエキシマ光を発光させることが可能である。」
・表1「
[図:0001398282000003.jpg]
」
11 甲12
甲12には、次の事項が記載されている。
・第1ページ第5~26行
「2.2 エキシマUV
エキシマ光の代表的な特徴は実用的には単一波長と見なせる点である。発光波長のスペクトルは固有の中心波長に対して半値全幅十数nmである。一方,エキシマ光にはコヒーレントな光(位相のそろった光)とインコヒーレントな光がある。コヒーレントなエキシマ光はエキシマレーザであり,半導体製造工程の回路パターン露光用光源で知られている。代表的なレーザに,中心波長が248nmのフッ化クリプトンレーザ,193nmのフッ化アルゴンレーザがある。
インコヒーレントなエキシマ光としては,ウシオ機(株)ヘラウス社等が最近販売を始めたエキシマランプをその代表として挙げることができる。・・・
エキシマランプはエキシマレーザに比べて光のエネルギー密度は低く,せいぜい10~100mW/cm2程度である。しかし,大面積対応可能,低コスト,メンテナンス性に優れる,小型などの多くの利点を持っている。本項では172nmに発光中心波長を持つキセノンエキシマランプ(便宣上以降キセノンエキシマ光172nmを単にエキシマUVと呼ぶ)を使った表面改質について記述する。」
2.2.1 紫外線処理とエキシマUV処理
紫外線処理とエキシマUV処理の基本原理は全く同じものである。どちらも高エネルギーの紫外線で雰囲気ガスのラジカル(大気中の場合は酸素ラジカル)を生成し,同時に紫外線の光子エネルギーで物質表面の(または被処理物表面に付着した物質の)分子間の結合を切断し,親水化処理,あるいは酸化揮発するものである5)6)。
前項の紫外線処理は光源に低圧水銀ランプを使用し,本項のエキシマUV処理は光源にエキシマランプを使用したものである。両者の違いは処理に寄与する紫外線の波長の長さにある。
両処理が全く同じ改質原理に基づくものであり,前項との記述の重複を避けるため,原理に触れることを避け,ここではエキシマUVの特徴を説明し,両者の能刀比較を中心に記述する。」
12 甲13
甲13には、次の事項が記載されている。なお、甲13の記載事項は、申立人が提出した翻訳文を基に当審が作成した翻訳文で示している。
・第288ページ右欄第27行~第289ページ左欄第17行
「3.1 二重UVランプシステムによるUV硬化コーティングの艶消し化
床材及び家具類への適用において、「光沢か非光沢か」の決定は、風合いの問題だけでなく、コーティングの汚れ感度にも影響する。鏡面(図1)のような非常に光沢のあるコーティングは、油性汚濁及び指紋が目立ちやすい傾向にある。このような60ユニット(60度)より大きい光沢レベルは、多色水銀UVランプを用いた典型的な硬化処理によって容易に得ることができる。これに対して、艶消し又は半光沢(図1b、60度における15ユニットより小さい光沢レベル)の木材の透明コーティングは、干渉反射がなく、木目の自然な光学的外観を呈するという利点がある。粗い表面による光の拡散反射に基づく、コーティングの艶消しは、慣用されたニスに(シリカや種々の高分子粒子のような)微粒子添加することよっても、UV硬化アクリレート塗布物に172nmエキシマランプと慣用の中圧水銀ランプによる二重UVランプ構成(図2)で得られるシワのある表面パターンによっても得ることができる。172nmの光子のアクリレ-トへの浸透深さが小さいため、薄い表面のみが架橋され、未硬化のコーティング上に固体化された表皮を形成する。シワ構造(図2の背景)の形成は、硬化表皮の隆起部として説明できる[5]。したがって、UV硬化ステップの間のコーティングの温度と粘度は、表面のシワの大きさと形状に影響を与える[13]。形成されたシワが緩むことを避けるため、これらの柔軟な微細構造は、速やかに典型的な(水銀)UV又は電子ビームを照射することで全体硬化しなければならない。上述した二重ランプ構成は、アクリレート製剤及び硬化条件に応じて、60度の光沢レベルを0.5ユニットまで低下させることができる。」
・第289ページ右欄第22行~第290ページ右欄第7行
「3.2.アクリレートコーティングのUV硬化(172nmエキシマ照射vs水銀アークランプ)
これまでの研究[29]で、UVマット仕上げ、すなわち短波長のVUVを表面に補足照射することで、光沢のあるものに比べて硬度が向上し、耐薬品性が改善されることが示されている。
紫外線の波長(172nmエキシマランプまたは多色水銀ランプ)に対して硬化の度合いの依存性が観察されなかったため、リアルタイム(ATR)FTIR分光法が両者の放射線による硬化プロセスのモニタリングに適用され[30]、これら2種類の紫外線照射の間の重要な差異が発見された。
光重合開始剤を含むアクリレート製剤では、1410cm-1の不飽和C=C結合の振動が、多色水銀と172nmエキシマUV照射の両方で特徴的な減少を示している(図3)。ピーク領域の積分によって、この吸収帯の減衰から算出した速度論的変換プロファイルを図4に示す。異なるUVランプにおいて、光重合中の同等な変換度合いと異なる速度挙動が観察される。しかし、重合速度(R)をより正確に比較するためには、伝播速度定数(kp)と終端速度定数(kt)と同様、モノマー濃度(M)や以下のような種々のバラメータを考慮しなければならない。
[図:0001398282000004.jpg]
光重合開始剤の開始量子収率(ΦPI)、入射紫外線強度(I0)、照射波長におけるモル消衰係数(ελ),光重合開始剤濃度(PI)、試料厚みに対応する光路長(d),温度,不活性化など。
モノマーと光重合開始剤の濃度、試料の厚みは同一であるが、多色水銀と172nmエキシマUV照射では光強度、開始量子収率、モル消衰量に大きな差が認められる。しかし、(Hg)UVランプのより高い光強度は、172nmエキシマランプの高い開始量子収率とモル消衰によって補われることは間違いないだろう。したがって,アクリレート製剤の速度曲線(図4)は、異なるUVランプで得られたものであっても、光重合速度の現実的な比較に用いることができる。したがって、UV照射の波長は、光重合開始剤が存在し、酸素阻害がない場合、ポリマー重合率及びアクリレート変換に大きな影響を与えないことが見いだされた。
図3から明らかなように、(Hg)UVランプと172nmエキシマランプの大きな違いは、1720cm-1のC=Oバンドが短波長のUV照射では減少するのに対し、前者の場合は、不変のIRバンドと見なすことができる点である。つまり、高エネルギーである172nmの光子は、アクリルのC=O結合にも吸収される。筆者らの知る限り、このC=O結合の光化学反応性は初めて言及された[31]。172nm照射によるC=C二重結合の反応性と比較すると、C=O結合の変換は著しく低い。しかしながら、短波長の紫外線によるC=O結合の活性化は、アクリレートの放射線硬化の際に新たな反応経路を確立するものである。」
・図2「
[図:0001398282000005.jpg]
図2.表面及び全体硬化のための短波長VUVランプと多色水銀UVランプの組み合わせ使用によるUV艶消しの概要(背景:表面粗さの顕微鏡画像)」
・図3「
[図:0001398282000006.jpg]
図3.アクリレート製剤(光重合開始剤2wt%)の(a)多色水銀アークランプおよび(b)単色172nmエキシマランプによる紫外線硬化中のリアルタイム(ATR)FTIRスペクトル」
第5 当審の判断
1 申立理由1(明確性要件違反)について
(1)本件発明の技術的意義について
明確性要件を検討するにあたり、まず、本件発明の技術的意義について検討する。
本件特許明細書の段落【0002】~【0006】等を参照すれば、従来、化粧シートのマット感を調整するために艶調整剤を添加していたが、艶調整剤を含む表面保護層を有する化粧シートは指紋が付きやすくなるという問題があったのに対し、本件発明では、コア部の一方の面から畝状に突出して設けられた畝状部を設けて、化粧シート表面のマット感と耐指紋性とを両立したしたものである。
また、段落【0027】には「第一表面保護層13の表面にこのような微細な凹凸形状が形成されることにより、化粧シート1表面のマット感を維持しながら耐指紋性を向上させることが可能となる。」との記載から、微細な凹凸形状、すなわち畝状部は、マット感を維持するためのものであるといえる。
すなわち、本件発明は、畝状部を形成することで、マット感を付与することを可能とし、これによって艶調整剤を添加を不要とし、化粧シート表面のマット感と耐指紋性とを両立したものとして理解できる。
このような理解の上で、本件発明の各構成について、以下検討する。
(2)本件発明9に規定された「前記コア部の一方の面から高さ15μm以下、周期50μm以下の畝状に突出するように形成する」について
「畝」とは、「畑に作物を植えつけるため、間隔をおいて土を筋状に高く盛り上げた所。」(広辞苑第6版)であるから、高さの高い部分と低い部分が交互に連なったものであることが明らかである。
そうすると、畝状部の「高さ」とは、畝の高い部分と低い部分の間の高低差として理解でき、多数の畝を含む場合においても、平均値等で適宜定めることができることも技術常識の範囲内であるから、「畝状部の高さが15μm以下」との記載は明確である。
また、畝状部の「周期」とは、高い部分と低い部分が交互につらなる畝同士の間隔として理解でき、多数の畝を含む場合においても、平均値等で定めることができることも技術常識の範囲内であるから、「畝状部の周期が50μm以下」との記載は明確である。
申立人は、「高さ」及び「周期」の測定方法には、様々な測定方法もしくは定義(甲6)があり、測定方法によって異なる値をとること、また、平均を意味しているのか最大値などの特定の代表値を意味しているのか明らかでないことを主張する。しかしながら、上述のとおり、畝状部の高さや周期を理解することができる。
また、申立人は、「高さ」及び「周期」の数値を特定するための断面の取り方も幾通りもあることを主張する。しかしながら、畝状部は、本件特許の図2等を参照すれば、ランダムな微細構造であるから、断面の取り方によらず、高さ及び周期は、同様の傾向を示すものといえるところ、断面の取り方を特定しないことが、上記「高さ」及び「周期」の意味を不明確にするものとはいえない。
よって、申立人の主張は採用できない
(3)本件発明1の第一表面保護層の塗布量に関する「電離放射線硬化型樹脂を12g/m2以上25g/m2以下で塗布し」との規定、本件発明10に規定された「厚さ1.0μm以上50μm以下であり」について
「電離放射線硬化型樹脂を12g/m2以上25g/m2以下で塗布し」という特定は、通常の意味として、電離放射線硬化型樹脂を12g/m2以上25g/m2以下で塗布したものとして解することができ、明確である。また、「厚さ1.0μm以上50μm以下であり」についても、通常の意味として厚さが1.0μm以上50μm以下であるとして理解することができ、明確である。
申立人は、塗布量と厚さで二重の限定がなされ、仮に電離放射線硬化型樹脂の密度を1g/mlと仮定した場合、両者の数値が整合しないと主張する。しかしながら、申立人の主張するように電離放射線硬化型樹脂の密度を1g/mlと仮定しても、本件発明で特定された塗布量と厚さの数値範囲の両者を同時に満たすものが存在する。そうすると、両者の特定は矛盾するものではないから、完全に整合しない部分があるとしても、これをもって、不明確ということはできない。
また、申立人は、電離放射線硬化型樹脂の定義が不明で、電離放射線硬化型樹脂に溶剤等を含むか否か明らかでないと主張する。しかしながら、本件発明1の「電離放射線硬化型樹脂の塗布量が12g/m2以上25g/m2以下である」との特定について、溶剤に関する特定は何らないのであるから、電離放射線硬化型樹脂を塗布する量が、12g/m2以上25g/m2以下であると解するのが相当である。
さらに、申立人は、第一表面保護層の材料の一部が原反層に染み込むが、第一表面保護層の厚さとして染み込んだ部分を含むか含まないか不明である旨主張する。しかしながら、本件発明1にも本件発明10にも、「第一表面保護層の厚さ」は記載されておらず、申立人の主張は理由がない。なお、本件発明10に「電離放射線硬化型樹脂を、厚さ1.0μm以上50μm以下で塗布する」ことが特定されているが、塗布する厚さが「1.0μm以上50μm以下」であるとして明確である。
よって、申立人の主張は採用できない。
(5)「前記第一表面保護層は、無機ナノ粒子を含まない(メタ)アクリル系樹脂により形成されており」について
「無機ナノ粒子」は、通常の意味として、大きさがナノオーダーのサイズの無機粒子として理解することができ、明確である。
申立人は、無機ナノ粒子とは、具体的にどのサイズの粒子を意味するのか不明である旨、主張する。しかしながら、上記のとおり、ナノオーダーの大きさの粒子として理解でき、上記(1)で指摘した本件発明の技術的意義や本件特許明細書中で無機ナノ粒子を含まないことによる作用機能について特段の記載もないことを踏まえると、上記のとおりの通常の意味として理解すれば足り、その具体的な数値範囲を特定することを要するものともいえない。
よって、申立人の主張は採用できない。
2 申立理由2(サポート要件違反)について
(1)本件特許明細書における解決しようとする課題とその解決手段について
上記1(1)で指摘したとおり、本件特許明細書の段落【0002】~【0006】等を参照すれば、従来、化粧シートのマット感を調整するために艶調整剤を添加していたが、艶調整剤を含む表面保護層を有する化粧シートは指紋が付きやすくなるという問題があったのに対し、本件発明では、コア部の一方の面から畝状に突出して設けられた畝状部を設けることで、艶調整剤を添加せずともマット感を付与することを可能とし、これによって化粧シート表面のマット感と耐指紋性とを両立したものとして理解できる。
すなわち、本件発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
この前提で、本件発明の各構成について検討する。
(2)本件発明9における「前記コア部の一方の面から高さ15μm以下、周期50μm以下の畝状に突出するように形成する」について
本件発明の上記特定は、本件特許明細書の段落【0027】等に記載されている。また、上記(1)で指摘したとおり、本件発明1には、コア部の一方の面から畝状に突出して設けられた畝状部を設けることが特定されており、本件特許明細書に記載された課題を解決したものといえる。
そうすると、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
申立人は、本件特許明細書の実施例において、畝状部が具体的にどのような高さ及び周期であったのか記載がないと主張する。しかしながら、本件発明の数値範囲を満たす具体的な実施例が示されていないことをもって、明細書に記載されたものではないということはできない。
また、申立人は、畝状部の形状による解決原理(メカニズム等)に関しても明確な記載が存在しないと主張する。しかしながら、上記(1)に示したように、艶調整剤を添加せずともマット感を付与し、化粧シート表面のマット感と耐指紋性とを両立させるものとして、畝状部の作用・機能を理解することができる。
よって、申立人の主張は採用できない。
(3)本件発明1における第一表面保護層の塗布量に関する「電離放射線硬化型樹脂を12g/m2以上25g/m2以下で塗布し」と「紙素材で形成された原反層」について
「材料の塗布量が12g/m2以上25g/m2以下である」ことは、段落【0005】及び【0089】の【表1】における実施例2、3に記載されており、「紙素材で形成された原反層」であることは、段落【0005】及び【0012】に記載されている。
そうすると、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
申立人は、本件特許は、令和4年2月14日付けの意見書において、紙素材で形成された原反層を用い、材料の塗布量が12g/m2以上25g/m2以下であることを強調し、「単に樹脂層の凹凸形状のみでなく、原反層の構成によっても化粧シートの耐指紋性の向上に効果に変化が生じることがわかります」「第一表面保護層を構成する樹脂材料の塗布量によっても化粧シートの耐指紋性の向上効果に変化が生じることがわかります」と述べ、特許付与された経緯があるが、塗布される材料の揮発分の量や、原反層の紙素材の種類や坪量等によって異なる染み込み具合によること、第一表面保護層が直接原反層の上に形成されている場合に限られることから、本件発明1の構成は、その技術的課題を解決できると認識しうる態様と比較して過度に広範な規定がなされていると主張する。
しかしながら、特許法第36条第6項第1号は、特許請求の範囲に記載された発明が明細書に記載されたものであるか否かを判断する際に、特許査定に至る経緯を考慮する旨の規定はないから、申立人の主張には理由がない。
よって、申立人の主張は、採用できない。
(4)本件発明の第一表面保護層に関して艶調整剤の使用が排除されていないことについて
上記(1)で説示したように、本件発明の解決しようとする課題は、艶調整剤を含むと指紋が付きやすくなるというものである。当該課題は、例えば、艶調整剤を含むと化粧シートとして機能しなくなるなどの致命的な欠陥があるとするものではないから、艶調整剤の使用を完全に否定するものではない。また、本件発明では畝状部を設けることでマット感が付与されるから、仮に艶調整剤を使用するとしてもその使用量が削減できることは明らかであり、艶調整剤が削減できる分、耐指紋性が向上するといえるから、艶調整剤を含むからといって課題を解決しないともいえない。そうすると、特許請求の範囲の記載は、発明の課題を解決するための手段が反映されていないとはいえない。
申立人は、本件発明の技術思想は、第一表面保護層に艶調整剤を用いないことにより、指紋が付きやすくなるという問題を生じず、マット感と耐指紋性とを両立した化粧シート等を提供することにあるとしているが、上記のとおり、艶調整剤を全く用いないことを特定する必要があるとはいえないから、申立人の主張は採用できない。
3 申立理由3(実施可能要件違反)について
本件発明で規定される、塗布量は通常用いられる指標であって、規定された数値範囲内のものを実施可能であることは明らかであり、畝状部の高さ及び周期についても、畝状部が形成される機序(段落【0022】~【0033】)や形成方法(段落【0040】~【0044】)が記載されており、規定された数値範囲のものを実施できないとする理由はない。
申立人は、本件発明は、電離放射線硬化型樹脂の塗布量、畝状部の高さ及び周期と、多くのパラメータを含むところ、これらすべてを充足する実施例は開示されておらず、具体的にどのような条件を設定すれば、これらのパラメータをすべて充足する化粧シートが得られるのか明らかでないこと、電離放射線硬化型樹脂が基材へ染み込むことで全体的に薄くなることに特徴があるとすれば、原反層への染み込み具体を左右する、塗布材料の固形分と揮発分の割合や原反層を構成する紙基材の材質等の具体的条件が記載されていないから、過度な試行錯誤を要する旨を主張する。
しかしながら、上述のとおり、塗布量は通常の指標であるし、畝状部の高さ及び周期については、どのような理由で実施可能でないのかについての申立人の具体的な主張はなく、本件発明を実施できないとする理由はない。また、本件特許明細書には、本件発明の特徴が、電離放射線硬化型樹脂が原反層へ染み込むことで全体的に薄くなることである旨の記載も見いだせず、その染み込み具合を左右する条件等を特定する必要があるものともいえない。
よって、申立人の意見は採用できない。
4 申立理由4(甲1を主引例とする本件発明1~10の進歩性違反)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア) 後者の「各種の紙類が使用され」る「基材2」は、その機能及び構造からみて、前者の「紙素材で形成された原反層」に相当し、同様に「表面保護層5」は「第一表面保護層」に、「化粧紙の製造方法」は「化粧シートの製造方法」に、それぞれ相当する。
(イ) 後者の「電離放射線硬化性樹脂組成物」ないし「電子線硬化性の塗料組成物」は、前者の「電子放射線硬化型樹脂」に相当する。
そうすると、後者の「表面保護層は、電子線硬化性の塗料組成物を塗布量が25g/m2になるようコーティング」する構成は、前者の「電子放射線硬化型樹脂を12g/m2以上25g/m2以下で塗布し」の構成に相当する。
また、後者の「電子線を照射し、塗膜を硬化させる」構成は、前者の「前記電離放射線硬化型樹脂の表面に対して該電離放射線硬化型樹脂の高分子鎖を切断可能なエネルギーを有する第一電離放射線を照射して前記電離放射線硬化型樹脂の表面を収縮させ、前記電離放射線硬化型樹脂の表面に凹凸形状を形成し、収縮させた前記電離放射線硬化型樹脂に前記電離放射線硬化型樹脂を硬化させる第二電離放射線を照射して該電離放射線硬化型樹脂を硬化させることにより、コア部と前記コア部の一方の面から畝状に突出して設けられた畝状部とを有する第一表面保護層を形成する」構成と、「前記電離放射線硬化型樹脂を硬化させる第二電離放射線を照射して該電離放射線硬化型樹脂を硬化させることにより、第一表面保護層を形成する」構成で共通する。
(ウ) 以上を踏まえると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「紙素材で形成された原反層に、電離放射線硬化型樹脂を12g/m2以上25g/m2以下で塗布し、
前記電離放射線硬化型樹脂を硬化させる第二電離放射線を照射して該電離放射線硬化型樹脂を硬化させることにより、第一表面保護層を形成する化粧シートの製造方法。」
[相違点]
(相違点1)本件発明1は、「前記電離放射線硬化型樹脂の表面に対して該電離放射線硬化型樹脂の高分子鎖を切断可能なエネルギーを有する第一電離放射線を照射して前記電離放射線硬化型樹脂の表面を収縮させ、前記電離放射線硬化型樹脂の表面に凹凸形状を形成し、収縮させた前記電離放射線硬化型樹脂に前記電離放射線硬化型樹脂を硬化させる第二電離放射線を照射して該電離放射線硬化型樹脂を硬化させることにより、コア部と前記コア部の一方の面から畝状に突出して設けられた畝状部とを有する第一表面保護層を形成する」のに対し、甲1発明は、電子線を照射し、塗膜を硬化させるものである点。
イ 判断
相違点1について検討する。
電離放射線硬化型樹脂の表面に、畝状部を有する第一表面保護層を形成することに関することとして、甲号証には以下の技術的事項が記載されている。
すなわち、
甲3には、低光沢性と高耐久性が要求される床材等に有用に使用することができる内装材の製造方法であって、第1~第3の光照射ステップを有し、第1の光照射ステップは、175±2nmの波長をする光を照射して、塗布された樹脂組成物及び/又は硬化物の表面を収縮させることによりシワを形成し、表面に入射する光の散乱率を高め、第2及び第3の光照射ステップで樹脂組成物をそれぞれ熱硬化及び光学的に硬化させることが(甲3発明参照)、
甲4には、艶消し及び耐傷性コーティングの表面を製造する方法であって、ステップ(3)では、172nmの波長を有する紫外線で照射されて、マイクロフォールディングが起こるようにされ、ステップ(4)では、ステップ(3)で得られたコーティングを光線照射により仕上げ硬化することが(甲4発明参照)、
甲5には、平坦な基材上に艶消しコーティングを製造するための方法であって、ステップiii.では、部分硬化したコーティング層に、不活性ガス下で150~250nmの波長範囲の紫外線を照射して、コーティング層の表面にマイクロフォールディングを実現し、ステップiv.では、紫外線放射、または電子放射を、コーティング層の硬化をもたらす放射量照射することが(甲5発明参照)、
甲13には、UV硬化アクリレート塗布物に172nmエキシマランプと慣用の中圧水銀ランプによる二重UVランプ構成で、床材及び家具に適用されるシワのある艶消し表面を得ることが(第288ページ右欄第27行~第289ページ左欄第17行参照)、
それぞれ記載されている。
しかしながら、甲1の段落【0007】~【0009】には、解決しようとする課題及び解決する手段として、塗料組成物中でマット剤が沈降することによる不具合を解消するため、マット剤の表面に電離放射線硬化性化合物と反応し得る官能基を有するものを使用することが記載されている。つまり、甲1発明は、マット剤の不具合を解決するために、マット剤に改良を施すことで課題を解決した発明である。そうすると、甲1発明は、マット剤によって艶消し表面を得るものであるから、マット剤によらず、艶消し表面をマイクロフォールディングやシワによって得る甲3、甲4、甲5、甲13に記載された技術的事項を適用することの動機付けは見いだせない。
なお、甲4の段落[0036]及び甲5の第18ページ第14~22行には、マイクロフォールディング又は微細な折れ曲がりを形成するコーティング剤に艶消し剤を含めても良いことが記載されているが、これらはマイクロフォールディングを形成することを前提に艶消し剤を含めても良いとするものであって、甲1発明のようにマット剤によって艶消し表面を得るものにおいて、マイクロフォールディングを適用することを教示するものではない。
そうすると、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たもののということはできない。
したがって、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(2)本件発明2~10について
本件発明2~10は、本件発明1の構成をすべて含み、さらに限定を付したものであるから、本件発明1が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2~10についても容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)小括
本件発明1~10は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 申立理由5(甲2を主引例とする本件発明1~10の進歩性違反)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(ア) 後者の「薄葉紙等の透明若しくは半透明の原紙」は、その機能及び構造からみて、前者の「紙素材で形成された原反層」に相当し、同様に「化粧シートの製造方法」は「化粧シートの製造方法」に相当する。
(イ) 後者の「透明若しくは半透明で各種物性に優れた樹脂を塗工して表面に樹脂層を形成してなり、樹脂塗工に使用する樹脂は、熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂(紫外線硬化性樹脂又は電子線硬化性樹脂等)を使用し、樹脂の塗工量は、一般的には2~50g/m2の範囲内と」することは、前者の「電離放射線硬化型樹脂を12g/m2以上25g/m2以下で塗布」することと、「樹脂を塗布」する点で共通する。
(ウ) 後者の「樹脂層」は、「耐光性、耐汚染性、耐摩耗性、耐スクラッチ性等の各種物性を付与するため」のものであり、かつ、「表面」に形成されるものであるから、前者の「第一表面保護層」に相当する。
そして、「塗工した樹脂を硬化させる」構成は、前者の「前記電離放射線硬化型樹脂の表面に対して該電離放射線硬化型樹脂の高分子鎖を切断可能なエネルギーを有する第一電離放射線を照射して前記電離放射線硬化型樹脂の表面を収縮させ、前記電離放射線硬化型樹脂の表面に凹凸形状を形成し、収縮させた前記電離放射線硬化型樹脂に前記電離放射線硬化型樹脂を硬化させる第二電離放射線を照射して該電離放射線硬化型樹脂を硬化させることにより、コア部と前記コア部の一方の面から畝状に突出して設けられた畝状部とを有する第一表面保護層を形成する」構成と、「樹脂を硬化させることにより第一表面保護層を形成する」点で共通する。
(エ) 以上を踏まえると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「紙素材で形成された原反層に、樹脂を塗布し、
該樹脂を硬化させることにより、第一表面保護層を形成する化粧シートの製造方法。」
[相違点]
(相違点2-1)第一表面保護層について、本件発明1は、樹脂が「電離放射線硬化型樹脂」であり、「前記電離放射線硬化型樹脂の表面に対して該電離放射線硬化型樹脂の高分子鎖を切断可能なエネルギーを有する第一電離放射線を照射して前記電離放射線硬化型樹脂の表面を収縮させ、前記電離放射線硬化型樹脂の表面に凹凸形状を形成し、収縮させた前記電離放射線硬化型樹脂に前記電離放射線硬化型樹脂を硬化させる第二電離放射線を照射して該電離放射線硬化型樹脂を硬化させることにより、コア部と前記コア部の一方の面から畝状に突出して設けられた畝状部とを有する第一表面保護層を形成する」のに対し、甲2発明は、樹脂が「熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂(紫外線硬化性樹脂又は電子線硬化性樹脂等)」と選択的であり、電離放射線硬化性樹脂の場合の硬化方法については特定されていない点。
(相違点2-2)樹脂の塗布量について、本件発明1は「12g/m2以上25g/m2以下」であるのに対し、甲2発明では「一般的には2~50g/m2」であるものの、12g/m2以上25g/m2以下とは特定されていない点。
イ 判断
相違点2-1について、検討する。
電離放射線硬化型樹脂の表面に、畝状部を有する第一表面保護層を形成することに関することとして、甲号証には以下の技術的事項が記載されている。
すなわち、
甲3には、低光沢性と高耐久性が要求される床材等に有用に使用することができる内装材の製造方法であって、第1~第3の光照射ステップを有し、第1の光照射ステップは、175±2nmの波長をする光を照射して、塗布された樹脂組成物及び/又は硬化物の表面を収縮させることによりシワを形成し、表面に入射する光の散乱率を高め、第2及び第3の光照射ステップで樹脂組成物をそれぞれ熱硬化及び光学的に硬化させることが(甲3発明参照)、
甲4には、艶消し及び耐傷性コーティングの表面を製造する方法であって、ステップ(3)では、172nmの波長を有する紫外線で照射されて、マイクロフォールディングが起こるようにされ、ステップ(4)では、ステップ(3)で得られたコーティングを光線照射により仕上げ硬化することが(甲4発明参照)、
甲5には、平坦な基材上に艶消しコーティングを製造するための方法であって、ステップiii.では、部分硬化したコーティング層に、不活性ガス下で150~250nmの波長範囲の紫外線を照射して、コーティング層の表面にマイクロフォールディングを実現し、ステップiv.では、紫外線放射、または電子放射を、コーティング層の硬化をもたらす放射量照射することが(甲5発明参照)、
甲13には、UV硬化アクリレート塗布物に172nmエキシマランプと慣用の中圧水銀ランプによる二重UVランプ構成で、床材及び家具に適用されるシワのある艶消し表面を得ることが(第288ページ右欄第27行~第289ページ左欄第17行参照)、
それぞれ記載されている。
しかしながら、甲2発明は、薄葉紙等の透明若しくは半透明の原紙を使用する化粧シートの発明であるところ、甲3、甲4、甲5、甲13のいずれも、紙素材を用いた化粧シートに関するものではない。
すなわち、甲3には、基材として、床材の基材として用いられる限り特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)やグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)などのポリエステルなどを含むシート又はフィルムであってもよいことが記載される(甲3発明参照)が、紙素材については記載がなく、紙素材を用いた化粧シートではない。
甲4には、基材は、例えば鉱物基材、木材、木質材料、金属、プラスチック、繊維結合材料であることが記載される(甲4発明参照)が、紙素材については言及がなく、そもそも化粧シートに関する記載もない。
甲5には、基材として段ボールや板紙等を含む紙とすることが記載されている(甲5発明、第26ページ第38行~第27ページ第17行参照)が、当該紙として、薄葉紙等の透明若しくは半透明の原紙とすることを示唆する記載はなく、そもそも化粧シートに関する記載もない。
甲13には、床材及び家具に適用されることが記載される(第288ページ右欄第27行~第289ページ左欄第17行参照)が、基材として紙を用いることは記載されていない。
そうすると、甲2発明に、甲3、甲4、甲5、甲13に記載された技術事項を適用する動機付けが見いだせないから、甲2発明において、相違点2-1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、相違点2-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(2)本件発明2~10について
本件発明2~10は、本件発明1の構成をすべて含み、さらに限定を付したものであるから、本件発明1が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2~10についても容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)小括
本件発明1~10は、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
6 申立理由6(甲3を主引例とする本件発明1~10の進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。
(ア) 後者の「シート又はフィルムであ」る「基材層」は、その機能及び構造からみて、前者の「原反層」に相当し、後者の「樹脂組成物」は、第3の光照射ステップで400nm以下の波長を有する光、すなわち紫外線、で硬化させるものであるから、前者の「電離放射線硬化型樹脂」に相当する。
(イ) 上記(ア)の相当関係を踏まえると、後者の「基材上に塗布された樹脂組成物」の構成は、前者の「電離放射線硬化型樹脂を12g/m2以上25g/m2以下で塗布し」の構成と、「電離放射線硬化型樹脂を塗布し」の構成で共通する。
(ウ) 後者の「シワ」は、前者の「凹凸形状」ないし「畝状部」に相当する。また、後者の第1の光照射ステップにおける「300nm以下の波長を有する光」ないし「175±2nmの波長をする光」は、前者の「第一電離放射線」に相当する。
そうすると、後者の第1の光照射ステップにおける「樹脂組成物及び/又は硬化物の表面を収縮させることによりシワを形成」することは、前者の「前記電離放射線硬化型樹脂の表面を収縮させ、前記電離放射線硬化型樹脂の表面に凹凸形状を形成」することに相当する。
(エ) 後者の「樹脂組成物に300nm以下の波長を有する光を照射して樹脂組成物を活性化する第1の光照射ステップであって、基板上に塗布された樹脂組成物にエキシマを形成するように175±2nmの波長をする光を照射して、塗布された樹脂組成物及び/又は硬化物の表面を収縮させることによりシワを形成し、表面に入射する光の散乱率を高める第1の光照射ステップ」の構成は、前者の「前記電離放射線硬化型樹脂の表面に対して該電離放射線硬化型樹脂の高分子鎖を切断可能なエネルギーを有する第一電離放射線を照射して前記電離放射線硬化型樹脂の表面を収縮させ、前記電離放射線硬化型樹脂の表面に凹凸形状を形成」することと、「前記電離放射線硬化型樹脂の表面に対して第一電離放射線を照射して前記電離放射線硬化型樹脂の表面を収縮させ、前記電離放射線硬化型樹脂の表面に凹凸形状を形成」する点で共通する。
(オ) 後者の第3の光照射ステップにおける「400nm以下の波長の光」は、前者の「第二電離放射線」に相当し、後者の「樹脂組成物を光学的に硬化させる」構成は、前者の「該電離放射線硬化型樹脂を硬化させる」構成に相当する。また、後者の「表面処理層」は、前者の「第一表面保護層」と「表面層」の点で共通する。
そうすると、後者の「熱硬化した樹脂組成物に400nm以下の波長の光を照射し、樹脂組成物を光学的に硬化させる第3の光照射ステップ」は、前者の「収縮させた前記電離放射線硬化型樹脂に前記電離放射線硬化型樹脂を硬化させる第二電離放射線を照射して該電離放射線硬化型樹脂を硬化させることにより、コア部と前記コア部の一方の面から畝状に突出して設けられた畝状部とを有する第一表面保護層を形成する」ことと、「収縮させた前記電離放射線硬化型樹脂を硬化させる第二電離放射線を照射して該電離放射線硬化型樹脂を硬化させることにより、畝状に突出して設けられた畝状部を有する第一表面層を形成する」点で共通する。
(カ) 後者の基材が「シート又はフィルムであ」る「内装材」は、前者の「化粧シート」に相当し、後者の「内装材の製造方法」は前者の「化粧シートの製造方法」に相当する。
(ク) 以上を踏まえると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「原反層に、電離放射線硬化型樹脂を塗布し、
前記電離放射線硬化型樹脂の表面に対して第一電離放射線を照射して前記電離放射線硬化型樹脂の表面を収縮させ、前記電離放射線硬化型樹脂の表面に凹凸形状を形成し、
収縮させた前記電離放射線硬化型樹脂に前記電離放射線硬化型樹脂を硬化させる第二電離放射線を照射して該電離放射線硬化型樹脂を硬化させることにより、畝状に突出して設けられた畝状部を有する第一表面層を形成する化粧シートの製造方法。」
[相違点]
(相違点3-1)原反層について、本件発明1は「紙素材で形成された」ものであるのに対し、甲3発明は、当該技術分野において床材の基材として用いられる限り特に限定されないものであり、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、またはグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)などのポリエステルなどを含むシートまたはフィルムである点。
(相違点3-2)電離放射線硬化型樹脂の塗布量について、本件発明1は「材料の塗布量が12g/m2以上25g/m2以下であ」るのに対し、甲3発明では、塗布量が不明である点。
(相違点3-3)第一電離放射線について、本件発明1は「該電離放射線硬化型樹脂の高分子鎖を切断可能なエネルギーを有する」のに対し、甲3発明では、電離放射線硬化型樹脂の高分子鎖を切断可能なエネルギーを有するか不明である点。
(相違点3-4)第一表面層について、本件発明1は、「第一表面保護層」であるのに対し、甲3発明の「表面処理層」は、表面保護の機能を有するか不明である点。
(相違点3-5)本件発明1は、第一表面保護層が「コア部及びコア部の一方の面から」突出した畝状部を有するのに対し、甲3発明の表面処理層は、コア部を有するか明らかでなく、形成されるシワについてコア部の一方の面から突出しているか不明である点。
イ 判断
相違点3-1について検討する。
甲3発明は、床材等に使用できる内装材に関する発明であり、その基材は、当該技術分野において床材の基材として用いられる限り特に限定されないとしているので、床材の基材として用いられる基材について、以下、検討する。
甲1には、段落【0002】に、表面材が用いられる物品として列挙される例のひとつとして床が、段落【0013】~【0016】に、基材として列挙される例のひとつとして紙類が記載されているものの、物品と基材の組み合わせが特定されているわけではない。すなわち、床材の基材が紙類であるとする記載はないから、床材の基材として紙素材を用いることは特定されていない。
甲2には、段落【0001】には、建具、壁面、天井等が挙げられているものの、床材に関する記載はない。
甲7には、段落【0016】及び【0017】に、構成要素として列挙される例のひとつとして床パネルが、支持体として列挙される例のひとつとして厚紙が、それぞれ記載されているものの、構成要素及び支持体の組み合わせが特定されているわけではない。すなわち、床パネルの基材が厚紙であるとする記載はないから、床材の基材として紙素材を用いることは記載されていない。
甲9には、段落【0005】に、メラミン化粧板の記載があるが、床材に関する記載はない。
甲10には、段落【0061】に、化粧シートが被着材に積層した化粧板として列挙される例のひとつに床が含まれているが、プラスチックフィルムに設けられた化粧シートであり(請求項1参照)、紙素材を用いるものではない。
甲13には、第288ページ右欄第28行で床材に言及しているものの、床材の基材として紙素材を用いることの記載はない。
甲4、甲5、甲8、甲11、甲12には、内装材に関する記載も床材に関する記載もない。
そうすると、甲3発明における「当該技術分野において床材の基材として用いられる限り特に限定されない」とする基材を、紙素材とすることが容易であったということはできないから、甲3発明において、相違点3-1に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点3-2~相違点3-5について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。
(2)本件発明2~10について
本件発明2~10は、本件発明1の構成をすべて含み、さらに限定を付したものであるから、本件発明1が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2~10についても容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)小括
本件発明1~10は、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
7 申立理由7(甲4を主引例とする本件発明1~10の進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲4発明とを対比する。
(ア) 後者の「基材」は、前者の「原反層」と、「基材となる部分」である点で共通する。また、後者の「(メタ)アクリレート系のオリゴマー及び/又はポリマーを含」む「放射線硬化性コーティング剤」は、前者の「電離放射線硬化型樹脂」に相当する。
(イ) 後者の「コーティング剤は、24μmの塗布厚で塗布され」る構成は、前者の「電離放射線硬化型樹脂を12g/m2以上25g/m2以下で塗布」する構成と、「電離放射線硬化型樹脂を塗布」する点で共通する。
(ウ) 後者のステップ(2)及びステップ(3)における「UV光」は、前者の「第一電離放射線」に相当する。
そして、後者の「(2)ステップ(1)の放射線硬化コーティングに、200nm以上420nm以下の波長を有するUV光を25~120mJ/cm2の放射線量で照射し、ステップ(2)では、高圧または中圧の水銀蒸気ランプが用いられ、コーティング剤の部分的なゲル化が行われ、 (3)ステップ(2)で得られたコーティングに、120nm以上230nm以下の波長を有するUV光を照射し、ステップ(3)のための放射線源は、172nmの範囲の紫外線を放射するエキシマUVランプであり、172nmの波長を有する紫外線で照射されて、マイクロフォールディングが起こるようにされ」る構成は、前者の「前記電離放射線硬化型樹脂の表面に対して該電離放射線硬化型樹脂の高分子鎖を切断可能なエネルギーを有する第一電離放射線を照射して前記電離放射線硬化型樹脂の表面を収縮させ、前記電離放射線硬化型樹脂の表面に凹凸形状を形成」する構成と、「前記電離放射線硬化型樹脂の表面に対して第一電離放射線を照射して前記電離放射線硬化型樹脂の表面を形成」する構成で共通する。
(エ) 後者のステップ(4)における「UV放射線、電子線放射線、X線放射線又はガンマ放射線」は、前者の「第二電離放射線」に相当し、後者の「光線照射により仕上げ硬化」する構成は、前者の「該電離放射線硬化型樹脂を硬化させる」構成に相当する。
また、後者の「表面層」は「耐傷性コーティングの表面」であることを踏まえると、保護の機能も有するといえるから、前者の「第一表面保護層」に相当する。
そうすると、後者の「(4)ステップ(3)で得られたコーティングをUV放射線、電子線放射線、X線放射線又はガンマ放射線のような光線照射により仕上げ硬化し、コーティングは表面層を形成する」構成は、前者の「収縮させた前記電離放射線硬化型樹脂に前記電離放射線硬化型樹脂を硬化させる第二電離放射線を照射して該電離放射線硬化型樹脂を硬化させることにより、コア部と前記コア部の一方の面から畝状に突出して設けられた畝状部とを有する第一表面保護層を形成する」構成と、「前記電離放射線硬化型樹脂に前記電離放射線硬化型樹脂を硬化させる第二電離放射線を照射して該電離放射線硬化型樹脂を硬化させることにより、第一表面保護層を形成する」構成で共通する。
(オ) 後者の「艶消し」が付与された製造物と前者の「化粧シート」は、何らかの視覚的効果を有する物品として共通する。そうすると、後者の「艶消し」「の表面を製造する方法」は、前者の「化粧シートの製造方法」と、「視覚的効果を有する物品の製造方法」の点で共通する。
(カ) 以上を踏まえると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
[一致点]
「基材となる部分に、電離放射線硬化型樹脂を塗布し、
前記電離放射線硬化型樹脂の表面に対して第一電離放射線を照射して前記電離放射線硬化型樹脂の表面を形成し、
前記電離放射線硬化型樹脂に前記電離放射線硬化型樹脂を硬化させる第二電離放射線を照射して該電離放射線硬化型樹脂を硬化させることにより、第一表面保護層を形成する視覚的効果を有する物品の製造方法。」
[相違点]
(相違点4-1)本件発明1は、基材となる部分が「紙素材で形成された原反層」であり、製造されるのが「化粧シート」であるのに対し、甲4発明の基材となる部分は、「例えば鉱物基材、木材、木質材料、金属、プラスチック、繊維結合材料であ」る「基材」であり、また、製造されるのがどのような物品であるか特定がない点。
(相違点4-2)電離放射線硬化型樹脂の塗布量について、本件発明1は「12g/m2以上25g/m2以下」であるのに対し、甲4発明ではコーティング剤が24μmの塗布厚で塗布される点。
(相違点4-3)第一電離放射線について、本件発明1は「該電離放射線硬化型樹脂の高分子鎖を切断可能なエネルギーを有する」ものであるのに対し、甲4発明は、電離放射線硬化型樹脂の高分子鎖を切断可能なエネルギーを有するか不明である点。
(相違点4-4)本件発明1は、照射により「前記電離放射線硬化型樹脂の表面を収縮させ」前記電離放射線硬化型樹脂の表面に「凹凸形状」を形成するものであり、「コア部と前記コア部の一方の面から畝状に突出して設けられた畝状部とを有する」のに対し、甲4発明は、マイクロフォールディングが起こるようにされるものであるが、形成の機序や構造については不明である点。
イ 判断
相違点4-1について、検討する。
甲4発明は、艶消し及び耐傷性コーティングの表面を製造するものであって、放射線硬化性コーティング剤に特定波長の紫外線を照射して、マイクロフォールディングが起こるようにされるものであるが、甲4発明の基材は、例えば鉱物基材、木材、木質材料、金属、プラスチック、繊維結合材料であり、板状であるかシート状であるかも特定できないところ、甲4には、これを紙基材で形成された原反層を用いた化粧シートに適用することを示唆する記載はない。
さらに、その他の甲号証にも、甲4発明を紙基材で形成された原反層を用いた化粧シートに適用することを示唆する記載はない。
すなわち、甲1、甲2には、紙素材で形成された原反層を用いた化粧シートが記載されており、マット剤(甲1発明参照)あるいは艶調整剤(甲2の段落【0034】参照)によって、艶消しとするものであるが、放射線硬化性コーティング剤に特定波長の紫外線を照射して、マイクロフォールディングが起こるようにされる甲4発明を紙素材で形成された原反層を用いた化粧シートに適用することを示唆する記載はない。
甲3は、床材等に使用できる内装材について記載されている(甲3発明参照)が、紙基材を用いることについて記載はない。
甲5は、基材は、段ボールや板紙を含む紙とすることが記載されている(甲5発明参照)が、化粧シートに関する記載はない。
甲7には、段落[0016]に、家具要素、壁パネル、天井パネル、床パネル等が記載されているが、段落[0017]に記載されるように、支持体は、例えば木質材料、ラミネート複合材および/または厚紙で形成されるものであって、パネル状であるのかシート状であるのか特定できないところ、「化粧シート」であるとはいえない。
甲9には、段落【0005】にメラミン化粧板であることの記載があるが、化粧板であって「化粧シート」であるとはいえない。
甲10には、プラスチックフィルムに設けられた化粧シートが記載されているが(請求項1参照)、紙素材を用いるものではない。
甲13には、第288ページ右欄第28行で床材及び家具類に言及しているものの、基材として紙を用いることは記載されていない。
甲4、甲5、甲8、甲11、甲12には、化粧シートに関する記載はない。
そうすると、甲4発明を、紙基材で形成された原反層を用いた化粧シートに適用することが容易であったということはできないから、甲4発明において、相違点4-1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点4-2~相違点4-4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。
(2)本件発明2~10について
本件発明2~10は、本件発明1の構成をすべて含み、さらに限定を付したものであるから、本件発明1が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2~10についても容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)小括
本件発明1~10は、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
8 申立理由8(甲5を主引例とする本件発明1~10の進歩性について)
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲5発明とを対比する。
(ア) 後者の「基材」は、前者の「原反層」と、「基材となる部分」の点で共通する。そして、後者の「基材は、段ボールや板紙を含む紙」である構成は、前者の「紙素材で形成された原反層」の構成と、「紙素材で形成された基材となる部分」の点で共通する。
(イ) 後者の「UV放射によって硬化可能な液体コーティング剤F」は、前者の「電離放射線硬化型樹脂」に相当する。そして、後者の「UV放射によって硬化可能な液体コーティング剤Fの未硬化コーティング層を提供し、塗布量は、20g/m2の適用がもたらされるように選択される」構成は、前者の「電離放射線硬化型樹脂を12g/m2以上25g/m2以下で塗布」する構成に相当する。
(ウ) 後者のステップii.、ステップiii.において照射される「紫外線」は、本件発明1の「第一電離放射線」に相当する。
そして、後者の「ii.コーティング層に、250~420nmの波長範囲の紫外線を、コーティング層の部分硬化をもたらす照射量で照射すること。iii.部分硬化したコーティング層に、不活性ガス下で150~250nmの波長範囲の紫外線を照射し、ステップiii.において、コーティング層の表面にマイクロフォールディングを実現すること。」の構成は、前者の「前記電離放射線硬化型樹脂の表面に対して該電離放射線硬化型樹脂の高分子鎖を切断可能なエネルギーを有する第一電離放射線を照射して前記電離放射線硬化型樹脂の表面を収縮させ、前記電離放射線硬化型樹脂の表面に凹凸形状を形成」する構成と、「前記電離放射線硬化型樹脂の表面に対して第一電離放射線を照射して前記電離放射線硬化型樹脂の表面を形成」する点で共通する。
(エ) 後者の工程iv.における「紫外線放射、または電子放射」によって照射される放射線は、本件発明1の「第二電離放射線」に相当する。
後者の「コーティング層」は、「平坦な基材上に艶消しコーティングを製造する」ことを踏まえると表面の層であるから、前者の「第一表面保護層」と、「第一表面層」の点で共通する。
そして、後者の「iv.部分硬化したコーティング層に、実質的に250~420nmの波長範囲である紫外線放射、または電子放射を、コーティング層の硬化をもたらす放射量照射すること。」の構成は、前者の「収縮させた前記電離放射線硬化型樹脂に前記電離放射線硬化型樹脂を硬化させる第二電離放射線を照射して該電離放射線硬化型樹脂を硬化させることにより、コア部と前記コア部の一方の面から畝状に突出して設けられた畝状部とを有する第一表面保護層を形成する」構成と、「前記電離放射線硬化型樹脂に前記電離放射線硬化型樹脂を硬化させる第二電離放射線を照射して該電離放射線硬化型樹脂を硬化させることにより、第一表面層を形成する」構成で共通する。
(オ) 後者の「平坦な基材上に艶消しコーティングを製造」することによる製造物と、前者の「化粧シート」は、何らかの視覚的効果を有する物品として共通する。そうすると、後者の「平坦な基材上に艶消しコーティングを製造」は、前者の「化粧シートの製造方法」と、「視覚的効果を有する物品の製造方法」の点で共通する。
(カ) 以上を踏まえると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
[一致点]
紙素材で形成された基材となる部分に、電離放射線硬化型樹脂を12g/m2以上25g/m2以下で塗布し、
前記電離放射線硬化型樹脂の表面に対して第一電離放射線を照射して前記電離放射線硬化型樹脂の表面を形成し、
前記電離放射線硬化型樹脂に前記電離放射線硬化型樹脂を硬化させる第二電離放射線を照射して該電離放射線硬化型樹脂を硬化させることにより第一表面層を形成する視覚的効果を有する物品の製造方法。」
[相違点]
(相違点5-1)本件発明1は、基材となる部分が「紙素材で形成された原反層」であり、製造されるのが「化粧シート」であるのに対し、甲5発明の基材となる部分は、段ボールや板紙を含む紙であり、また製造されるのがどのような物品であるか特定がない点。
(相違点5-2)第一電離放射線について、本件発明1は「該電離放射線硬化型樹脂の高分子鎖を切断可能なエネルギーを有する」ものであるのに対し、甲5発明は、電離放射線硬化型樹脂の高分子鎖を切断可能なエネルギーを有するか不明である点。
(相違点5-3)本件発明1は、照射により「前記電離放射線硬化型樹脂の表面を収縮させ」前記電離放射線硬化型樹脂の表面に「凹凸形状」を形成するものであり、「コア部と前記コア部の一方の面から畝状に突出して設けられた畝状部とを有する」のに対し、甲4発明は「マイクロフォールディングが起こるようにされ」るものであるが、形成の機序や構造については不明である点。
(相違点5-4)第一表面層について、本件発明1は、「第一表面保護層」であるのに対し、甲5発明の「コーティング層」は、表面保護の機能を有するか不明である点。
イ 判断
相違点5-1について検討する。
甲5発明は、平坦な基材上に艶消しコーティングを製造するものであって、コーティング層の表面に特定波長の紫外線を照射して、マイクロフォールディングを実現するものであり、甲5発明の基材は、段ボールや板紙を含む紙であるが、シート状であるか否か不明であるところ、甲5には、これを紙基材で形成された原反層を用いた化粧シートに適用することを示唆する記載はない。
さらに、その他の甲号証にも、甲5発明を紙基材で形成された原反層を用いた化粧シートに適用することを示唆する記載はない。
すなわち、甲1、甲2には、紙素材で形成された原反層を用いた化粧シートが記載されており、マット剤(甲1発明参照)あるいは艶調整剤(甲2の段落【0034】参照)によって、艶消しとするものであるが、コーティング層の表面に特定波長の紫外線を照射して、マイクロフォールディングが起こるようにされる甲5発明を紙素材で形成された原反層を用いた化粧シートに適用することを示唆する記載はない。
甲3には、床材等に使用できる内装材について記載されている(甲3発明参照)が、紙基材を用いることについて記載はない。
甲7には、段落[0016]に、家具要素、壁パネル、天井パネル、床パネル等が記載されているが、段落[0017]に記載されるように、支持体は、例えば木質材料、ラミネート複合材および/または厚紙で形成されるものであって、パネル状であるのかシート状であるのか特定できないところ、「化粧シート」であるとはいえない。
甲9には、段落【0005】にメラミン化粧板であることの記載があるが、化粧板であって「化粧シート」であるとはいえない。
甲10には、プラスチックフィルムに設けられた化粧シートが記載されているが(請求項1参照)、紙素材を用いるものではない。
甲13には、第288ページ右欄第28行で床材及び家具類に言及しているものの、基材として紙を用いることは記載されていない。
甲4、甲8、甲11、甲12には、化粧シートに関する記載はない。
そうすると、甲5発明を、紙基材で形成された原反層を用いた化粧シートに適用することが容易であったということはできないから、甲5発明において、相違点5-1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、相違点5-2~相違点5-4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲5発明に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。
(2)本件発明2~10について
本件発明2~10は、本件発明1の構成をすべて含み、さらに限定を付したものであるから、本件発明1が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2~10についても容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)小括
本件発明1~10は、甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 まとめ
以上のとおり、本件特許の請求項1~10の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであり、また、特許を受けようとする発明が明確であるから、特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定に適合する。また、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、特許法第36条第4項第1号の規定に適合する。
また、本件特許の請求項1~10に係る発明は、甲1、甲2、甲3、甲4、甲5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定に違反するものではない。
また、他に請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そうすると、本件特許の請求項1~10に係る特許は、特許法第113条第2号又は第4号の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-701007