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特許異議申立

2022-700658

熱伝導性シート及びその製造方法、熱伝導性シートの実装方法

審判番号
2022-700658
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-214784
登録番号
6999019
請求日
2022年07月15日
審決日
2023年10月25日
公報発行日
2024年01月26日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】デクセリアルズ株式会社
  • 【権利者代理人】野口 信博
  • 【権利者代理人】穂谷野 聡
  • 【異議申立人】渋谷 都
審判長/審判官
  • 審判長 瀧内 健夫
  • 審判官 中野 浩昌
  • 審判官 恩田 春香
分類
P1651.536-ZB (C08J) / P1651.537-ZB (C08J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条4項1号特許法36条6項2号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6999019号発明「熱伝導性シート及びその製造方法、熱伝導性シートの実装方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6999019号の請求項1~10に係る特許を取り消す。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6999019号の請求項1~10に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和元年12月27日に出願した特願2019-239808号の一部を令和2年12月24日に新たな特許出願としたものであって、令和3年12月23日にその特許権の設定登録がされ、令和4年1月18日に特許掲載公報が発行された。本件特許についての異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和4年7月15日 特許異議申立人 渋谷 都(以下「特許異議 申立人」という。)による特許異議の申立て 令和4年10月12日付け 取消理由通知書 令和4年12月14日 意見書、訂正請求書の提出(特許権者) 令和5年 1月19日 意見書の提出(特許異議申立人) 令和5年 4月 3日付け 訂正拒絶理由通知書(本訂正拒絶理由通知書 に対して、特許権者は指定期間内に意見書を 提出しなかった。) 令和5年 6月 5日付け 取消理由通知書(決定の予告) 令和5年 8月 4日 意見書、訂正請求書の提出(特許権者) 第2 訂正の請求について 1 訂正の内容 特許権者が令和5年8月4日に提出した訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。なお、特許権者が令和4年12月14日に提出した訂正請求書による訂正は、取り下げられたものとみなす。)による訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許第6999019号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕、〔8、9〕、10について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。(下線は、特許権者が付したものと同じ。) (1)一群の請求項1~7について ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「上記高分子マトリックス成分は、シリコーン樹脂(カルボキシル基を含有するものを除く)であり、」と記載されているのを、「上記高分子マトリックス成分は、シリコーン樹脂(カルボキシル基を含有するものを除く)であり、上記繊維状熱伝導性充填剤は、上記シート本体の表面から突出し、上記繊維状熱伝導性充填剤の含有量が4体積%以上14体積%以下であり、上記シート本体の厚みが1~3mmであり、」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~7も同様に訂正する。) イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「上記シート本体を0.8kgf/cm2の荷重で圧縮し、当該荷重を解放した後に、上記シート本体の厚みが圧縮前の90%以上に回復する熱伝導性シート。」と記載されているのを、「上記シート本体を熱抵抗測定器で0.8kgf/cm2の荷重で圧縮し、当該荷重を解放した後直ちに上記シート本体を熱抵抗測定器から剥がして厚みを測定したときの、上記シート本体の厚みが圧縮前の90%以上に復元する熱伝導性シート。」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~7も同様に訂正する。) (2)一群の請求項8、9について ア 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項8に「上記高分子マトリックス成分は、シリコーン樹脂(カルボキシル基を含有するものを除く)であり、」と記載されているのを、「上記高分子マトリックス成分は、シリコーン樹脂(カルボキシル基を含有するものを除く)であり、上記繊維状熱伝導性充填剤は、上記シート本体の表面から突出し、上記繊維状熱伝導性充填剤の含有量が4体積%以上14体積%以下であり、上記シート本体の厚みが1~3mmであり、」に訂正する。 (請求項8の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。) イ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項8に「上記シート本体を0.8kgf/cm2の荷重で圧縮し、当該荷重を解放した後に、上記シート本体の厚みが圧縮前の90%以上に回復する熱伝導性シートの製造方法。」と記載されているのを、「上記シート本体を熱抵抗測定器で0.8kgf/cm2の荷重で圧縮し、当該荷重を解放した後直ちに上記シート本体を熱抵抗測定器から剥がして厚みを測定したときの、上記シート本体の厚みが圧縮前の90%以上に復元する熱伝導性シートの製造方法。」に訂正する。 (請求項8の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。) (3)請求項10について ア 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項10に「上記高分子マトリックス成分は、シリコーン樹脂(カルボキシル基を含有するものを除く)であり、」と記載されているのを、「上記高分子マトリックス成分は、シリコーン樹脂(カルボキシル基を含有するものを除く)であり、上記繊維状熱伝導性充填剤は、上記シート本体の表面から突出し、上記繊維状熱伝導性充填剤の含有量が4体積%以上14体積%以下であり、上記シート本体の厚みが1~3mmであり、」に訂正する。 イ 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項10に「上記シート本体を0.8kgf/cm2の荷重で圧縮し、当該荷重を解放した後に、上記シート本体の厚みが圧縮前の90%以上に回復する熱伝導性シートの実装方法。」と記載されているのを、「上記シート本体を熱抵抗測定器で0.8kgf/cm2の荷重で圧縮し、当該荷重を解放した後直ちに上記シート本体を熱抵抗測定器から剥がして厚みを測定したときの、上記シート本体の厚みが圧縮前の90%以上に復元する熱伝導性シートの実装方法。」に訂正する。 2 訂正の適否 (1)一群の請求項1~7について ア 訂正事項2について 事案に鑑み、まず訂正事項2について検討する。 (ア)訂正の目的について 訂正事項2は、以下の2つの訂正事項a、bを合わせたものといえる。 (訂正事項2a) 請求項1に「シート本体を0.8kgf/cm2の荷重で圧縮し、当該荷重を解放した後に」と記載されているのを、「シート本体を熱抵抗測定器で0.8kgf/cm2の荷重で圧縮し、当該荷重を解放した後直ちに上記シート本体を熱抵抗測定器から剥がして厚みを測定したときの」に訂正する。 (訂正事項2b) 請求項1に「上記シート本体の厚みが圧縮前の90%以上に回復する」と記載されているのを、「上記シート本体の厚みが圧縮前の90%以上に復元する」に訂正する。 まず、訂正事項2aについては、「シート本体」を「圧縮」する主体を「熱抵抗測定器」に特定し、「荷重を解放した後」の「シート本体の厚み」を「当該荷重を解放した後直ちに上記シート本体を熱抵抗測定器から剥がして厚みを測定したときの」ものである点で特定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、訂正事項2bについては、訂正前の「回復」という用語を、明細書の段落0126の表1及び段落0127の表2に記載した「0.8kgf/cm2で圧縮した後の復元率[%]」という記載中の「復元」という用語に整合させる訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 以上より、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び同第3号に規定する特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 (イ)新規事項の有無について A 本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)の記載 本件特許明細書等には、熱伝導シートの回復(復元)について、以下の記載がある。(下線は当審で付した。以下同じ。) 「【請求項1】 少なくとも高分子マトリックス成分と熱伝導性充填剤とを含む熱伝導性樹脂組成物が硬化されてなるシート本体を有し、 上記高分子マトリックス成分に対する上記熱伝導性充填剤の体積割合が、1.00~1.70であり、 上記熱伝導性充填剤が、繊維状熱伝導性充填剤を含み、 上記高分子マトリックス成分は、シリコーン樹脂(カルボキシル基を含有するものを除く)であり、 上記シート本体を0.8kgf/cm2の荷重で圧縮し、当該荷重を解放した後に、上記シート本体の厚みが圧縮前の90%以上に回復する熱伝導性シート。」 「【請求項8】 高分子マトリックス成分に熱伝導性充填剤が含有された熱伝導性樹脂組成物を所定の形状に成型して硬化させ、熱伝導性成形体を形成する工程と、 上記熱伝導性成形体をシート状にスライスし、熱伝導性シートを形成する工程とを有し、 上記高分子マトリックス成分に対する上記熱伝導性充填剤の体積割合が、1.00~1.70であり、 上記熱伝導性充填剤が、繊維状熱伝導性充填剤を含み、 上記高分子マトリックス成分は、シリコーン樹脂(カルボキシル基を含有するものを除く)であり、 上記シート本体を0.8kgf/cm2の荷重で圧縮し、当該荷重を解放した後に、上記シート本体の厚みが圧縮前の90%以上に回復する熱伝導性シートの製造方法。」 「【請求項10】 電子部品上に載置し、放熱部材との間に挟持する熱伝導性シートの実装方法において、 上記電子部品へ載置する際に上記熱伝導性シートに荷重を印加させることによりタック性を発現させて電子部品へ貼付し、 上記熱伝導性シートを貼りなおす際には、荷重を解放し、上記電子部品から剥離し、再度、上記電子部品上に貼付する工程を有し、 上記熱伝導性シートは、 少なくとも高分子マトリックス成分と熱伝導性充填剤とを含む熱伝導性樹脂組成物が硬化されてなるシート本体を有し、 上記高分子マトリックス成分に対する上記熱伝導性充填剤の体積割合が、1.00~1.70であり、 上記熱伝導性充填剤が、繊維状熱伝導性充填剤を含み、 上記高分子マトリックス成分は、シリコーン樹脂(カルボキシル基を含有するものを除く)であり、 上記シート本体を0.8kgf/cm2の荷重で圧縮し、当該荷重を解放した後に、上記シート本体の厚みが圧縮前の90%以上に回復する熱伝導性シートの実装方法。」 「【課題を解決するための手段】 【0012】 上述した課題を解決するために、本技術に係る熱伝導性シートは、少なくとも高分子マトリックス成分と熱伝導性充填剤とを含む熱伝導性樹脂組成物が硬化されてなるシート本体を有し、上記高分子マトリックス成分に対する上記熱伝導性充填剤の体積割合が、1.00~1.70であり、上記熱伝導性充填剤が、繊維状熱伝導性充填剤を含み、上記シート本体を0.8kgf/cm2の荷重で圧縮し、当該荷重を解放した後に、上記シート本体の厚みが圧縮前の90%以上に回復するものである。 【0014】 また、本技術に係る熱伝導性シートの製造方法は、高分子マトリックス成分に熱伝導性充填剤が含有された熱伝導性樹脂組成物を所定の形状に成型して硬化させ、熱伝導性成形体を形成する工程と、上記熱伝導性成形体をシート状にスライスし、熱伝導性シートを形成する工程とを有し、上記高分子マトリックス成分に対する上記熱伝導性充填剤の体積割合が、1.00~1.70であり、上記熱伝導性充填剤が、繊維状熱伝導性充填剤を含み、上記シート本体を0.8kgf/cm2の荷重で圧縮し、当該荷重を解放した後に、上記シート本体の厚みが圧縮前の90%以上に回復するものである。 【0016】 また、本技術に係る熱伝導性シートの実装方法は、電子部品上に載置し、放熱部材との間に挟持する熱伝導性シートの実装方法において、上記電子部品へ載置する際に上記熱伝導性シートに荷重を印加させることによりタック性を発現させて電子部品へ貼付し、上記熱伝導性シートを貼りなおす際には、荷重を解放し、上記電子部品から剥離し、再度、上記電子部品上に貼付する工程を有し、上記熱伝導性シートは、少なくとも高分子マトリックス成分と熱伝導性充填剤とを含む熱伝導性樹脂組成物が硬化されてなるシート本体を有し、上記高分子マトリックス成分に対する上記熱伝導性充填剤の体積割合が、1.00~1.70であり、上記熱伝導性充填剤が、繊維状熱伝導性充填剤を含み、上記シート本体を0.8kgf/cm2の荷重で圧縮し、当該荷重を解放した後に、上記シート本体の厚みが圧縮前の90%以上に回復するものである。 【発明の効果】 【0018】 本技術によれば、シート表面上に繊維状の熱伝導性充填剤が突出することにより、タック性が低減又は消失されている。また、実使用時において、シート本体に荷重が印加されると、タック性が発現する。したがって、熱伝導性シートは、実装前においてはタック性が低減又は消失されることで良好な取り扱い性、作業性を有するとともに、実装時にはタック性が発現することで、シート表面に凹凸が有する場合にも、電子部品や放熱部材との密着性が向上され、熱抵抗の低減が図られる。 【0019】 また、本技術に係る熱伝導性シートは、印加荷重が解除されると、シート本体が90%以上の厚さに回復される。このとき、タック性が低減又は消失する。したがって、熱伝導性シートは、再実装に供された場合にも、取り扱い性、密着性が最初と変わらず、リワーク性に優れる。」 「【0024】 また、熱伝導性シートは、高分子マトリックス成分に対する熱伝導性充填剤の体積割合を、1.00~1.70とすることにより、電子部品等への実装時において荷重を印加された後、位置ズレを修正する等の要因で、当該荷重が解除された場合にも、シート本体が90%以上の厚さに回復される。このとき、シート本体内に埋没していた繊維状の熱伝導性充填剤も、再度シート表面上に突出し、タック性が低減又は消失する。したがって、熱伝導性シートは、再実装に供された場合にも、取り扱い性、密着性が最初と変わらず、リワーク性に優れる。 【0025】 高分子マトリックス成分に対する熱伝導性充填剤の体積割合が1.70より多いと、シート厚さの回復率が90%に満たず、炭素繊維のシート表面からの突出長さが短くなり、そのため、タックが残存し、リワーク性に劣る。また、高分子マトリックス成分に対する熱伝導性充填剤の体積割合が1.00に満たないと、熱抵抗の上昇を招く恐れがある。」 「【0028】 また、熱伝導性シートは、熱伝導性充填剤の含有量を50~63体積%とし、且つ熱伝導性充填剤における繊維状熱伝導性充填剤の体積割合を0.22~0.42とすることにより、電子部品等への実装時において荷重を印加された後、位置ズレを修正する等の要因で、当該荷重が解除された場合にも、シート本体が90%以上の厚さに回復される。このとき、シート本体内に埋没していた繊維状の熱伝導性充填剤も、再度シート表面上に突出し、タック性が低減又は消失する。したがって、熱伝導性シートは、再実装に供された場合にも、取り扱い性、密着性が最初と変わらず、リワーク性に優れる。 【0029】 熱伝導性充填剤の含有量が63体積%よりも多いと、シート厚さの回復率が90%に満たず、炭素繊維のシート表面からの突出長さが短くなり、そのため、タックが残存し、リワーク性に劣る。また、熱伝導性充填剤における繊維状熱伝導性充填剤の体積割合が0.22に満たないと、タックが残存し、リワーク性に劣る他、熱抵抗の上昇を招く恐れがある。」 「【0039】 また、本発明の熱伝導性シートは、高分子マトリックス成分に対する熱伝導性充填剤の体積割合を1.00~1.70とすることで、あるいは熱伝導性充填剤の含有量を50~63体積%とすることで、印加荷重を除去した後の回復率を90%以上とすることができ、リワーク性を備えることができる。」 「【0086】 [作業性、リワーク性] また、熱伝導性シート1は、位置ズレを修正したり、一旦組み立てた後に何らかの事情で解体し、再度組み立てる等の要因で一端電子部品等から剥離して、再度貼り直しを行うリワーク作業を行うことができる。このとき、熱伝導性シート1は、電子部品等への載置する際に荷重が印加されることによりタック性を発現させて電子部品へ貼付され、次いで、熱伝導性シートを貼りなおす際には、荷重を解放し、電子部品等から剥離され、再度、電子部品上等に貼付される。 【0087】 ここで、上述したように、本技術が適用された熱伝導性シート1は、高分子マトリックス成分(バインダ樹脂)に対する熱伝導性充填剤の体積割合が1.00~1.70とされている。あるいは、本技術が適用された熱伝導性シート1は、熱伝導性充填剤の含有量を50~63体積%とし、且つ熱伝導性充填剤における繊維状熱伝導性充填剤の体積割合を0.22~0.42とされている。また、繊維状熱伝導性充填剤は、シート本体2の表面から突出し、また、バインダ樹脂の未硬化成分で被覆されている。 【0088】 このような熱伝導性シート1は、電子部品等への実装時において荷重を印加された後、当該荷重が解除された場合にも、シート本体2が90%以上の厚さに回復される。 【0089】 また、高分子マトリックス成分(バインダ樹脂)に対する熱伝導性充填剤の体積割合が1.00~1.70とされた熱伝導性シート1は、適度な柔軟性を有し、熱伝導性成形体をシート状にスライスしたときのスライス面における表面粗さが低く、例えば最大Rz値も熱伝導性充填剤として繊維状熱伝導性充填剤を含み且つ前記体積割合が1.70よりも大きい熱伝導性シートよりも低い。また、荷重を印加された後においてはさらにRz値は下がるが、荷重印加前後におけるRz値の差は、熱伝導性充填剤として繊維状熱伝導性充填剤を含み且つ前記体積割合が0.6よりも大きい熱伝導性シートよりも小さい。 【0090】 また、熱伝導性充填剤の含有量を50~63体積%とし、且つ熱伝導性充填剤における繊維状熱伝導性充填剤の体積割合を0.22~0.42とされた熱伝導性シート1は、適度な柔軟性を有し、熱伝導性成形体をシート状にスライスしたときのスライス面における表面粗さが低く、例えば最大Rz値も熱伝導性充填剤として繊維状熱伝導性充填剤を含み、熱伝導性充填剤の含有量が63体積%よりも大きい熱伝導性シートよりも低い。また、荷重を印加された後においてはさらにRz値は下がるが、荷重印加前後におけるRz値の差は、熱伝導性充填剤として繊維状熱伝導性充填剤を含み、熱伝導性充填剤の含有量が63体積%よりも大きい熱伝導性シートよりも小さい。 【0091】 このような印加荷重の解放後のRz値の低さと、上述した印加荷重の解放後において厚さが90%以上の回復率を備える熱伝導性シート1は、印加荷重の解放後における繊維状熱伝導性充填剤のシート表面からの突出長さが、当初と同様になる。 【0092】 すなわち、熱伝導性シート1は、いったん電子部品等から剥離され、再度、シート表面上に繊維状熱伝導性充填剤が突出することにより、タック性が低減又は消失される。そして、再貼付時において、予めプレスすることにより、あるいは電子部品と放熱部材との間に挟持される等によりシート本体2に荷重が印加されると、シート表面上に突出していた繊維状の熱伝導性充填剤がシート本体2内に埋没するとともに、シート本体2内に担持されているバインダ樹脂の未硬化成分が滲み出し、これにより再度タック性が発現する。 【0093】 したがって、熱伝導性シートは、リワーク作業時においても、実装前においてはタック性が低減又は消失されることで良好な取り扱い性、作業性を有するとともに、実装時にはタック性が発現することで、シート表面に凹凸を有する場合にも、電子部品や放熱部材との密着性が向上され、熱抵抗の低減を図ることができる。 【0094】 なお、このような熱伝導性シート1は、リワーク作業時のみならず、1回目の実装作業前に予めプレス工程を設けた場合にも、同様の効果を奏し、良好な作業性を有する。 【実施例】 【0095】 次いで、本技術の実施例について説明する。本実施例では、繊維状熱伝導性充填剤としての炭素繊維と、アルミナとを含有するシリコーン組成物(熱伝導性樹脂組成物)を調整し、シリコーン硬化物(熱伝導性成形体)を成形、シート状にスライスすることにより熱伝導性シートを得た。得られた熱伝導性シートをプレスし、プレス前後のシート厚み、プレス前後のサンプルをASTM-D5470に準拠した方法により0.8kgf/cm2の荷重を掛けた熱抵抗、プレス前後のデュロメータ硬度規格ASTM-D2240におけるタイプOO硬度、プレス前後の熱伝導性シート表面からの炭素繊維の距離、プレス前後の熱伝導性シートの表面粗さ(Rz値)を評価した。」 「【0126】 【表1】 [図:0001405783000001.jpg] 」 「【0127】 【表2】 [図:0001405783000002.jpg] 」 「【0128】 表1に示すように、実施例1-10に係る熱伝導性シートは、高分子マトリックス成分(バインダ樹脂)に対する熱伝導性充填剤の体積割合が1.00~1.70であるため、あるいは熱伝導性充填剤の含有量を50~63体積%とし、且つ熱伝導性充填剤における繊維状熱伝導性充填剤の体積割合を0.22~0.42であるため、デュロメータ硬度規格ASTM-D2240におけるタイプOOの値が15~40であり、比較例1-5に比して低い。また、プレス後においてRz値は改善され、かつシート厚さの回復率が90%以上となった。このため、実施例1-10に係る熱伝導性シートでは、プレス前後における炭素繊維のシート表面からの突出長さが60μmと、プレス前後でほぼ変わらず50μm以上であった。なお、実施例1-10に係る熱伝導性シートは、いずれもプレスの前後において、0.3kgf/cm2の荷重を印加した際における熱抵抗は、1.9℃・cm2/W以下であった。 【0129】 これら実施例1-10に係る熱伝導性シートそのものにはタック性はなく、ガラス板上で自由に移動させることができるが、ガラス板に指で押し付けたところタックが発現し、ガラスに密着することが確認できた。したがって、実施例1-10によれば、実装前においてはシート表面のタック性が低減又は消失され、取り扱い性、作業性に優れ、プレスすることによりタック性を発現させ、電子部品等に対する密着性に優れ熱抵抗の低減を図るとともに、リワーク性を備えることができる熱伝導性シートを得ることが分かった。 【0130】 一方、比較例1-5に係る熱伝導性シートは、高分子マトリックス成分(バインダ樹脂)に対する熱伝導性充填剤の体積割合が1.70よりも大きく、あるいは熱伝導性充填剤の含有量が63体積%より多い又は熱伝導性充填剤における繊維状熱伝導性充填剤の体積割合が0.22に満たないため、デュロメータ硬度規格ASTM-D2240におけるタイプOOの値も55以上と高い。また、プレス後においてRz値は比較的改善されたものの、シート厚さの回復率が90%に満たず、炭素繊維のシート表面からの突出長さが10μmと短い。そのため、ガラス板上で熱伝導性シートを自由に移動させることができず、位置合わせが困難であった。また、剥がした後の熱伝導性シートは、タックが残存し、リワーク性に劣るものであった。比較例6-8に係る熱伝導性シートは、繊維状の熱伝導性充填剤が含まれておらず、シート表面にタック性を有することから、比較例1-5と同様、ハンドリング性、リワーク性に劣るものであった。」 B 判断 本件特許明細書等には、上記Aのとおり、シート本体を0.8kgf/cm2の荷重で圧縮し、当該荷重を解放した後に、上記シート本体の厚みが圧縮前の90%以上に回復することは記載されている(請求項1、請求項8、請求項13、段落0012、0014、0016及び0126の表1)ものの、仮に、本件特許明細書等において、「回復」と「復元」が同じ意味で用いられているものであるとしても、「上記シート本体を熱抵抗測定器で0.8kgf/cm2の荷重で圧縮し、当該荷重を解放した後直ちに上記シート本体を熱抵抗測定器から剥がして厚みを測定したときの、上記シート本体の厚みが圧縮前の90%以上に復元する」ことは記載されていない。 また、シート本体を0.8kgf/cm2の荷重で圧縮し、当該荷重を解放した後に、上記シート本体の厚みが圧縮前の90%以上に回復することを測定する際に、上記シート本体を熱抵抗測定器で0.8kgf/cm2の荷重で圧縮し、当該荷重を解放した後直ちに上記シート本体を熱抵抗測定器から剥がして厚みを測定することが、本件特許に係る出願の前に技術常識であるともいえない。 したがって、訂正事項2は、本件特許明細書等の全てのすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものである。 C 特許権者の主張について (A)特許権者は、本件訂正請求書(5頁13行~6頁7行)において、以下のとおり主張する。 「訂正事項2のシート本体を熱抵抗測定器で0.8kgf/cm2の荷重で圧縮し、当該荷重を解放した後直ちにシート本体を熱抵抗測定器から剥がして厚みを測定したときの、シート本体の厚みが圧縮前の90%以上に復元することは、本件特許明細書等の段落0095、0126[表1]、0127[表2]、0128、0129、0130に基づいて導き出される構成である。具体的に、本件特許明細書等の段落0095には、ATSM D5470に準拠した方法により0.8kgf/cm2の荷重を掛けて熱抵抗を測定した旨が記載されることから、熱伝導性シートに荷重を掛けているのは熱抵抗測定器であることが分かり、段落0126[表1]及び段落0127[表2]には、0.8kgf/cm2の荷重で圧縮し、当該荷重を解放した後の熱伝導性シートの厚み及び復元率が記載されている。 そして、ASTM D5470の熱抵抗の測定方法においては、実測時の資料の厚さデータが必要とされ、測定手順として資料の厚さ測定が規定されていること(8. Procedure 8.1 Determination of test specimen thickness.)、熱抵抗の測定荷重と「圧縮した後の厚み及び復元率」の荷重が一致することを考え合わせれば、「0.8kgf/cm2で圧縮した後の厚み及び復元率」とは、熱抵抗測定器で0.8kgf/cm2の荷重で圧縮し、当該荷重を解放した後、シート本体を熱抵抗測定器から剥がして厚みを測定したときの、シート本体の厚み及び復元率を意味することは当業者において明らかであり、また「0.8kgf/cm2で圧縮した後の厚み及び復元率」を他の方法で測定したと解し得るような記載は存在しない。また、「荷重を解放した後」には当然に荷重を解放した直後も含まれており、訂正事項2はリワーク性の指標として復元率90%以上を奏する時間的な範囲を明記したにすぎないものであり、新たな技術的事項を導入するものではない。さらに、当該実施例の考察が記載された本件特許明細書等の段落0128には、プレス後においてRz値は改善され、かつシート厚さの回復率が90%以上となったことが記載されている。さらに、本件特許明細書等の段落0130には、比較例に係る熱伝導性シートに関し、プレス後においてRz値は比較的改善されたものの、シート厚さの回復率が90%に満たず、炭素繊維のシート表面からの突出長さが10μmと短いことが記載されている。すなわち、「回復率」と「復元率」が同義であることが分かる。 よって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。」 (B)上記主張について検討する。 a 特許権者は、上記のとおり「訂正事項2のシート本体を熱抵抗測定器で0.8kgf/cm2の荷重で圧縮し、当該荷重を解放した後直ちにシート本体を熱抵抗測定器から剥がして厚みを測定したときの、シート本体の厚みが圧縮前の90%以上に復元することは、本件特許明細書等の段落0095、0126[表1]、0127[表2]、0128、0129、0130に基づいて導き出される構成である。」と主張するところ、そのうち段落0095には、「得られた熱伝導性シートをプレスし、プレス前後のシート厚み、プレス前後のサンプルをASTM-D5470に準拠した方法により0.8kgf/cm2の荷重を掛けた熱抵抗、プレス前後のデュロメータ硬度規格ASTM-D2240におけるタイプOO硬度、プレス前後の熱伝導性シート表面からの炭素繊維の距離、プレス前後の熱伝導性シートの表面粗さ(Rz値)を評価した。」と記載されているものの、「プレス前後のシート厚み」の測定と「プレス前後のサンプルをASTM-D5470に準拠した方法により0.8kgf/cm2の荷重を掛けた熱抵抗」の測定とが一連の処理で実行されることは、段落0095以外も含めて、本件特許明細書等には記載がない。 b ここで、特許権者が提出した乙第1号証には、ASTM D5470の熱抵抗の測定方法について、以下の事項が記載されている。 「8. Procedure 8.1 Determination of test specimen thickness. 8.1.1 Machines with in situ thickness measurement apparatus. 8.1.1.1 Close the test stack and apply the clamping pressure required for the specimen to be tested. 8.1.1.2 Turn on the heating and cooling units and let stabilize at the specified set point to give an average sample temperature of 50℃ (average of T2 and T3), unless otherwise specified. 8.1.1.3 Zero the thickness measuring device (micrometer, LVDT, laser detector, encoder, and so forth). 8.1.2 Machines without an in situ thickness measuring apparatus. 8.1.2.1 At room temperature, measure the specimen thickness in accordance with Test Method C of Test Methods D374. 8.2 Load the specimen on the lower test stack. ・・・ 8.3 Close the test stack and apply clamping pressure. ・・・ 8.4 Record the temperatures of the meter bars and the voltage and current applied to electrical heaters at equilibrium. ・・・ 8.5 Calculate the mean specimen temperature and the thermal impedance. ・・・ 8.6 Determine the thermal impedance of at least 3 specimen thickness. (当審訳)8.手順 8.1 試験片の厚さの決定。 8.1.1 現場での厚さ測定装置を備えた機械 8.1.1.1 テストスタックを閉じ、テストする試験片に必要なクランプ圧力を加える。 8.1.1.2 特に指定がない限り、加熱ユニットと冷却ユニットをオンにし、サンプルの平均温度が 50℃ (T2 と T3 の平均) になるように指定された設定温度で安定させる。 8.1.1.3 厚さ測定装置のゼロ調整。 8.1.2 現場での厚さ測定装置を備えていない機械。 8.1.2.1 室温で、試験方法 D374 の試験方法 C に従って試験片の厚さを測定する。 8.2 試験片を下部のテストスタックに装着する。 ・・・ 8.3 テストスタックを閉じて、クランプ圧力を加える。 ・・・ 8.4 メーターバーの温度と、平衡状態で電気ヒーターに印加される電圧と電流を記録する。 ・・・ 8.5 平均試料温度と熱インピーダンスを計算する。 ・・・ 8.6 少なくとも 3つの試験片の厚さの熱抵抗を決定する。 ・・・」 上記乙第1号証の記載は、熱抵抗測定の手順についての記載であり、上記8.1.2の現場での厚さ測定装置を備えていない機械において、上記8.1.2.1に室温で、試験片の厚さを決定することは記載されているものの、試験片の厚さの決定を熱抵抗測定後に行うことは記載されていない。 c なお、本件特許明細書等の段落0095には、「得られた熱伝導性シートをプレスし、」「プレス前後のサンプルをASTM-D5470に準拠した方法により0.8kgf/cm2の荷重を掛けた熱抵抗」「を評価した。」と記載されている一方、段落0126の表1には、「プレス前熱抵抗[℃・cm2/W]0.3kgf/cm2」及び「プレス後熱抵抗[℃・cm2/W]0.3kgf/cm2」の項目があり、これによれば「0.8kgf/cm2で圧縮した後の復元率」を示した表1において、「プレス前熱抵抗」及び「プレス後熱抵抗」を測定した際の荷重は0.3kgf/cm2であって、0.8kgf/cm2ではない。仮に、表1の「0.3kgf/cm2」が「0.8kgf/cm2」の誤記であり、熱抵抗を測定する際の荷重である「0.8kgf/cm2」と、表1の「0.8kgf/cm2で圧縮した後の復元率」の項目における圧縮荷重の「0.8kgf/cm2」が一致しているとしても、本件特許明細書等には、熱抵抗の測定後直ちに熱伝導性シートの厚みを測定して回復率(復元率)を算出することについては何ら記載されていないのであるから、このことをもって、「上記シート本体を熱抵抗測定器で0.8kgf/cm2の荷重で圧縮し、当該荷重を解放した後直ちに上記シート本体を熱抵抗測定器から剥がして厚みを測定した」ことが実質的に開示されているとすることはできない。 d したがって、訂正事項2に係る「上記シート本体を熱抵抗測定器で0.8kgf/cm2の荷重で圧縮し、当該荷重を解放した後直ちに上記シート本体を熱抵抗測定器から剥がして厚みを測定したときの、上記シート本体の厚みが圧縮前の90%以上に復元する熱伝導性シート。」のうち、「上記シート本体を熱抵抗測定器で0.8kgf/cm2の荷重で圧縮し、当該荷重を解放した後直ちに上記シート本体を熱抵抗測定器から剥がして厚みを測定した」ことは、本件特許明細書等の全てのすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるから、特許権者の上記(A)の主張は採用できない。 D 訂正事項2についてのまとめ 以上のとおり、訂正事項2に係る訂正は、本件特許明細書等の全てのすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。 イ 一群の請求項について 本件訂正前の請求項2~7は、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、請求項1に対する訂正に連動して訂正されるから、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項であるところ、訂正事項1及び2に係る訂正は、一群の請求項1~7に関する訂正である。 そして、訂正事項2により訂正される請求項1を含む本件訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しないから、訂正事項1について検討するまでもなく、一群の請求項1~7についての訂正は認められない。 (2)一群の請求項8、9について ア 訂正事項4について 事案に鑑み、まず訂正事項4について検討する。 (ア)訂正の目的について 訂正事項4は、訂正事項2と同じ内容の訂正であるから、訂正事項4に係る訂正は、上記(1)ア(ア)で検討したのと同じ理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び同第3号に規定する特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 (イ)新規事項の有無について 訂正事項4は、訂正事項2と同じ内容の訂正であるから、訂正事項4に係る訂正は、上記(1)ア(イ)A~Dで検討したのと同じ理由により、本件特許明細書等の全てのすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。 イ 一群の請求項について 本件訂正前の請求項9は、請求項8を引用するものであって、請求項8に対する訂正に連動して訂正されるから、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項であるところ、訂正事項3及び4に係る訂正は、一群の請求項8、9に関する訂正である。 そして、訂正事項4により訂正される請求項8を含む本件訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しないから、訂正事項3について検討するまでもなく、一群の請求項8、9についての訂正は認められない。 (3)請求項10について ア 訂正事項6について 事案に鑑み、まず訂正事項6について検討する。 (ア)訂正の目的について 訂正事項6は、訂正事項2と同じ内容の訂正であるから、訂正事項6に係る訂正は、上記(1)ア(ア)で検討したのと同じ理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び同第3号に規定する特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 (イ)新規事項の有無について 訂正事項6は、訂正事項2と同じ内容の訂正であるから、訂正事項6に係る訂正は、上記(1)ア(イ)A~Dで検討したのと同じ理由により、本件特許明細書等の全てのすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。 イ 請求項10についてのまとめ 訂正事項6により訂正される請求項10についての本件訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しないから、訂正事項5について検討するまでもなく、訂正は認められない。 3 小括 以上のとおり、本件訂正は、一群の請求項1~7に係る訂正、一群の請求項8、9に係る訂正、及び、請求項10に係る訂正が、いずれも特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しないから、訂正後の請求項〔1-7〕、〔8、9〕、10についての訂正を認めることができない。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められないので、本件特許の請求項1~10に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明10」といい、まとめて「本件発明」という。)は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 少なくとも高分子マトリックス成分と熱伝導性充填剤とを含む熱伝導性樹脂組成物が硬化されてなるシート本体を有し、 上記高分子マトリックス成分に対する上記熱伝導性充填剤の体積割合が、1.00~1.70であり、 上記熱伝導性充填剤が、繊維状熱伝導性充填剤を含み、 上記高分子マトリックス成分は、シリコーン樹脂(カルボキシル基を含有するものを除く)であり、 上記シート本体を0.8kgf/cm2の荷重で圧縮し、当該荷重を解放した後に、上記シート本体の厚みが圧縮前の90%以上に回復する熱伝導性シート。 【請求項2】 上記繊維状熱伝導性充填剤が、上記シート本体の表面から突出するとともに、 上記シート本体のタック性が低減又は消失されている請求項1に記載の熱伝導性シート。 【請求項3】 上記繊維状熱伝導性充填剤が上記シート本体の表面から突出するとともに、 上記シート全面に上記高分子マトリックス成分の未硬化成分で被覆された樹脂被覆層が形成されている請求項1に記載の熱伝導性シート。 【請求項4】 上記熱伝導性充填剤は、上記シート本体の表面からの突出長さが50μmよりも長い請求項1に記載の熱伝導性シート。 【請求項5】 上記熱伝導性充填剤は、上記シート本体の厚み方向に配向されている請求項1に記載の熱伝導性シート。 【請求項6】 デュロメータ硬度規格ASTM-D2240におけるタイプOOの値が15~40である請求項1~5のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。 【請求項7】 0.3kgf/cm2の荷重を印加した際における熱抵抗が1.9℃・cm2/W以下である請求項1~6のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。 【請求項8】 高分子マトリックス成分に熱伝導性充填剤が含有された熱伝導性樹脂組成物を所定の形状に成型して硬化させ、熱伝導性成形体を形成する工程と、 上記熱伝導性成形体をシート状にスライスし、熱伝導性シートを形成する工程とを有し、 上記高分子マトリックス成分に対する上記熱伝導性充填剤の体積割合が、1.00~1.70であり、 上記熱伝導性充填剤が、繊維状熱伝導性充填剤を含み、 上記高分子マトリックス成分は、シリコーン樹脂(カルボキシル基を含有するものを除く)であり、 上記シート本体を0.8kgf/cm2の荷重で圧縮し、当該荷重を解放した後に、上記シート本体の厚みが圧縮前の90%以上に回復する熱伝導性シートの製造方法。 【請求項9】 上記熱伝導性シートをプレスすることにより、上記高分子マトリックス成分の未硬化成分を滲み出させる請求項8に記載の熱伝導性シートの製造方法。 【請求項10】 電子部品上に載置し、放熱部材との間に挟持する熱伝導性シートの実装方法において、 上記電子部品へ載置する際に上記熱伝導性シートに荷重を印加させることによりタック性を発現させて電子部品へ貼付し、 上記熱伝導性シートを貼りなおす際には、荷重を解放し、上記電子部品から剥離し、再度、上記電子部品上に貼付する工程を有し、 上記熱伝導性シートは、 少なくとも高分子マトリックス成分と熱伝導性充填剤とを含む熱伝導性樹脂組成物が硬化されてなるシート本体を有し、 上記高分子マトリックス成分に対する上記熱伝導性充填剤の体積割合が、1.00~1.70であり、 上記熱伝導性充填剤が、繊維状熱伝導性充填剤を含み、 上記高分子マトリックス成分は、シリコーン樹脂(カルボキシル基を含有するものを除く)であり、 上記シート本体を0.8kgf/cm2の荷重で圧縮し、当該荷重を解放した後に、上記シート本体の厚みが圧縮前の90%以上に回復する熱伝導性シートの実装方法。」 第4 取消理由(決定の予告)の概要 訂正前の請求項1~10に係る特許に対して、当審において令和5年6月5日に特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。 理由1(新規性)本件発明1、2、5、8は、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2、5、8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 理由2(進歩性)本件発明1~10は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 理由3(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 理由4(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 理由5(実施可能要件)本件特許は、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 第5 当審の判断 事案に鑑み、まず、理由4及び理由5の順に検討する。 1 理由4について 上記第2の2(1)ア(イ)Aで示したように、本件特許明細書等には、「回復率」の具体的な測定方法は記載されていない。上記段落0024の「電子部品等への実装時において荷重を印加された後、位置ズレを修正する等の要因で、当該荷重が解除された場合にも、シート本体が90%以上の厚さに回復される。」の記載から、本件特許の「回復率」は、荷重を印加し、その後、荷重を解除した後のシート本体の厚さの回復についての割合であると考えられるが、荷重をかける時間、回復率を測定する荷重を解除した後の時間、測定点の数等の測定条件によって、当然数値が異なることとなることは技術常識である。 例えば、同じ熱伝導性シートに同じ荷重をかけ、荷重が解除された場合に90%以上の厚さに回復されるものであっても、荷重をかける時間が長いため塑性変形を起こして90%まで復元しないことも考えられる。一方、加重が解除された場合に90%以上の厚さに回復しないものであっても、荷重をかける時間が短ければそもそも90%以下に圧縮されないことも考えられるから、単に荷重が解除された後の「回復率」を特定するだけでは、同じ熱伝導性シートであっても、請求項1の記載に該当する場合と該当しない場合があり得る。そうすると、「回復率」を特定する上で、「荷重をかける時間」は、必須のパラメータ(条件)であるといえる。 また、「回復率」は、経過時間によって変化する値であるから、「荷重を解除してからシート本体の厚さを測定するまでの時間」も、「回復率」を特定する上で必須のパラメータ(条件)であるといえる。 そして、これらの測定条件が不明な「回復率」に関する請求項1の記載は、明確であるとはいえない。 そうすると、本件特許の請求項1、8、10並びに、請求項1、8を直接または間接的に引用する請求項2~7及び9に記載された発明は明確であるとはいえないから、請求項1~10に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものである。 2 理由5について 上記のとおり、本件特許明細書等の発明の詳細な説明には、「回復率」について、その測定条件が記載されていないから、本件特許明細書等の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1、8及び10に記載され、「圧縮前の90%以上に回復する」構成を備えた熱伝導性シートを作製できる程度に記載されているとはいえない。 そうすると、本件特許明細書等の発明の詳細な説明は、当業が請求項1、8及び10に係る発明及び請求項1、8を直接または間接的に引用する請求項2~7及び9に記載された発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものである。 3 特許権者の意見書による主張について 特許権者が令和5年8月4日に提出した意見書の5(5)、(6)における主張は、上記第2で新規事項の追加とされる訂正事項2、4、6を含むものに対する主張であるが、一応検討する。 (1)特許権者の主張概要 ア 「(5)理由4について ・・・ (エ)・・・ 仮に「荷重をかける時間」や「回復率を測定する荷重を解除した後の時間」といった測定条件によって回復率90%以上の条件を満たさなくなったとしたならば、それは上記測定条件によってシート本体が塑性変形を起こしたためであり、もはや本件特許におけるシート本体の「回復率」とはいえないものです。確かに、シート本体に対して、塑性変形をきたすような条件を付加した場合には、回復率の値が異なることとなり得ることは理解できます。しかし、上述しましたように、本件特許の「回復率」は、リワーク作業に資する熱伝導性シートの特性を測る指標として規定されたものであり、塑性変形をきたしたものはリワーク作業後の再実装に使用できないことから、回復率90%以上の条件を満たさなくなるような上記測定条件は想定しておらず、本件特許の対象外となるものです。 すなわち、本件特許の「回復率」とは、取消理由通知で指摘されたような測定条件によって値が異なるようなパラメータではなく、リワーク性を測る指標としてみれば、上記測定条件が規定されずとも、本件特許発明が不明確であるとはいえないと思料します。」 イ 「(オ)次いで、熱抵抗測定器を用いて本件特許の「回復率」を測定した実験を行いましたので、その結果について説明します。本実験は、本件特許明細書段落[0126] [0127]に記載の実施例2及び比較例2について行ったもので、測定手順は以下の通りです。 ○1熱伝導シートをΦ20mmに金属ボンチで抜いた後、厚み(初期厚み)を測定する。(当審注:「○」中に「1」の記号を「○1」で示す。以下同様。) ○2熱抵抗測定器に熱伝導シートをセットして、測定器本体で荷重を2.51kg(0.8kgf/cm2)に設定。 ○3測定器本体の加圧ボタンを押すことで熱抵抗測定器の銅ロッドが降下。 ○4指定の圧力になった時点を起算点としてから200秒待機、200秒経ったところでデータ収集(熱伝導率・熱抵抗)を開始して50秒後に測定終了、銅ロッドがあがる。 ○5測定終了後ただちに銅ロッドから熱伝導シートを剥がし、 熱伝導シートの厚みを測定する。厚みの測定方法は、熱伝導シートを125μmPETに挟んでマイクロメータ(厚み計)にて下3桁まで測定する(・・・)。 ・・・リワーク作業においては、荷重の解放後ただちにシート本体の剥離や再貼付を行うことから、荷重の解放後ただちにタック性が低減又は消失することが求められます。このことから、復元率の測定条件として、敢えて荷重解放後に時間を置く積極的な理由は無く、むしろ荷重解放の直後とすることはリワーク作業において当然に求められるものです。 また、本発明に係る熱伝導性シートのようなシート状物の圧縮回復率ないし厚さを求めるに際し、荷重解放直後の値を取ることは一般的に行われているものです。例えば特開2019-210569には、不織布の発明について請求項で「10分間、1.96N/cm2荷重後の解放直後の厚み回復率」が規定されており、段落0044には「本発明の不織布において、荷重解放直後の厚み回復率が低い場合は、圧縮荷重に対してへたりやすいことを意味する。」との記載があります。また、特開2011-219958には、ガラス長繊維クロス樹脂含浸シートについて、段落0073「温度30℃、相対湿度80%の条件下に120時間放置後、50kgf/cm2荷重を1時間加え、荷重解放直後のへこみ量をデブスゲージで測定し、その後、温度23℃、相対湿度50%の条件下に24時間放置後、再びへこみ量をデブスゲージで測定した。」と記載があります。このことからも、本件特許に係る熱伝導性シートの回復率を測定するに際し、荷重解放直後の値を取ることは、当業者において当然に行い得るものです。」 ウ 「(カ)なお、特許第5114255号では、伝熱シートにおいて、圧縮率と復元率との相関が規定されていますが( [0026]、図2)、「荷重をかける時間」、「回復率を測定する荷重を解除した後の時間」、「測定点の数」等の測定条件等の測定条件は規定されておりません。 また、特許5316254号でも、圧縮復元率の測定について記載されておりますが、同様に上記測定条件は規定されておりません( [0073])。 熱伝導性シートの分野において、「回復率」は発明の目的に応じて上記測定条件の要否が判断されており、一律に上記測定条件が求められるものではありません。そして、リワーク作業性の指標として規定する本件特許の「回復率」は、上記測定条件が明記されていなくとも、当業者においてその特性を十分に把握することができるものと思料します。」 エ 「(キ)上述した通り、本件特許の「回復率」は、上記測定条件が明記されていなくとも、当業者においてその特性を十分に把握することができるものと思料しますが、あえて取消理由通知書にて指摘された測定条件を規定するとすれば、以下の通りです。 [荷重をかける時間]:シート本体が塑性変形をきたさない合理的な時間 熱伝導性シートのリワーク作業は、熱伝導性シートが放熱部材と熱源との間に挟持されることにより荷重が印加された後、貼り直しのために荷重を解放し、熱伝導性シートを放熱部材又は熱源から剥がし、再貼付する作業となります。この一連の工程において熱伝導性シートに係る負荷(荷重・時間)は、一般に塑性変形をきたすほどではなく、短時間で、且つ印加される荷重も重い荷重とはなりません。また、上述の熱抵抗、熱伝導率の測定手順において荷重をかけている時間は、リワークの作業時間と比べれば長いものであります。当業者であれば、熱伝導シートの使用方法と測定手順を考慮し、塑生変形させずに荷重をかける時間を、作業上、合理的な範囲で設定することに困難はないと思料します。 [回復率を測定する荷重を解除した後の時間]:印加荷重が解除された直後 リワーク作業性に鑑みれば、荷重を解除した後、直ちにタックが低減又は消失してシート本体の剥離及び再貼付作業が可能となることが求められます。したがって、印加荷重が解除された直後の回復率となります。なお、印加荷重が解除された直後において90%以上の回復率を備えていれば、荷重解除後の経過時間に関わらず回復率は90%以上となり、値が変わるとしても特許請求の範囲で規定した条件は満たすものとなります。 [測定点の数]:1点 熱伝導性シートが熱源と放熱部材との間に介在されて用いることに鑑みれば(本件特許の図4参照)、1点で十分です。」 オ 「(6)理由5について ・・・ (イ)上述したように、「復元率(回復率)」について取消理由通知に記載の測定条件が明記されていなくとも、当業者であればリワーク作業性に鑑みて、シート厚み(1~3(mm)、及び印加荷重(0.8kgf/cm2)に基づいて、実施することができるものと思料します。」 (2)判断 ア 上記(1)ア及びエについて (ア)上記1で説示したとおり、熱伝導性シートが荷重により塑性変形するかは荷重をかける時間に依存するから、熱伝導性シートが請求項1に該当するかを判断する上で「荷重をかける時間」は必要なパラメータである。 また、塑性変形しないまでも、荷重をかける時間が長ければ、熱伝導性シートはより圧縮されるから、荷重を解除した後に回復率が90%に達するまでの時間は荷重をかける時間に応じて異なるものといえ、この点からも「荷重をかける時間」は必要なパラメータであるといえる。 (イ)特許権者が「本件特許の「回復率」は、リワーク作業に資する熱伝導性シートの特性を測る指標として規定されたもの」であると述べているように、本件特許の「回復率」は、荷重を解放し、十分な時間が経過した後の「回復率」ではなく、復元中の「回復率」といえる。そして、復元中の「回復率」は、荷重を解放した後の経過時間に応じて変化するから、90%以上という値が荷重を解放した後のどのタイミングで達成したものであるかを特定する必要があるから、そのタイミング、すなわち「回復率を測定する荷重を解除した後の時間」は必要なパラメータであるといえる。 (ウ)したがって、「リワーク性を測る指標としてみれば、上記測定条件が規定されずとも、本件特許発明が不明確であるとはいえない」との、特許権者の主張は採用できない。 イ 上記(1)イについて (ア)特許権者は、「回復率」の測定手順について、 「○2熱抵抗測定器に熱伝導シートをセットして、測定器本体で荷重を2.51kg(0.8kgf/cm2)に設定。 ○3測定器本体の加圧ボタンを押すことで熱抵抗測定器の銅ロッドが降下。○4指定の圧力になった時点を起算点としてから200秒待機、200秒経ったところでデータ収集(熱伝導率・熱抵抗)を開始して50秒後に測定終了、銅ロッドがあがる。 ○5測定終了後ただちに銅ロッドから熱伝導シートを剥がし、 熱伝導シートの厚みを測定する。」 と説明している。 しかしながら、上記第2の2(1)ア(イ)C(B)cで説示したとおり、本件特許明細書等(特に、段落0126の表1)には、プレス後の熱抵抗測定を0.3kgf/cm2の荷重をかけた状態で行われることが記載されているから、上記「○4」の手順は、本件特許明細書等に基づくものとはいえない。 また、仮に、上記「0.3kgf/cm2」が「0.8kgf/cm2」の誤記であったとしても、本件特許明細書等の記載から、表1における各実施例に対応した「0.8kgf/cm2で圧縮した後の厚み[mm]」の欄に記載した値が、上記「○5」の「測定終了後ただちに銅ロッドから熱伝導シートを剥がし、 熱伝導シートの厚みを測定」した値であることを特定することはできない。 (イ)また、特許権者は、「本発明に係る熱伝導性シートのようなシート状物の圧縮回復率ないし厚さを求めるに際し、荷重解放直後の値を取ることは一般的に行われているもの」と主張し、2つの特許文献、すなわち特開2019-210569号公報及び特開2011-219958号公報を挙げているが、これらの文献では、「荷重をかける時間」や「回復率を測定する荷重を解除した後の時間」が特定されており、これらが特定されていない本件発明とは状況が異なるから、これらの文献の事項から、「本件特許に係る熱伝導性シートの回復率を測定するに際し、荷重解放直後の値を取ることは、当業者において当然に行い得るもの」ということはできない。 ウ 上記(1)ウについて 特許権者は、熱伝導性シートの技術分野の特許第5114255号公報及び特許5316254号公報を挙げ、これらの文献には、「荷重をかける時間」、「回復率を測定する荷重を解除した後の時間」、「測定点の数」等の測定条件等の測定条件は規定されていない旨主張するが、これらの文献は、熱伝導性シートのリワーク作業性を課題とするものではなく、また、荷重をかけたときのシートの厚さが特定されているから、前記測定条件を規定する必要のないものといえる。 したがって、「リワーク作業性の指標として規定する本件特許の「回復率」は、上記測定条件が明記されていなくとも、当業者においてその特性を十分に把握することができる」との主張を採用することはできない。 エ 上記(1)オについて 上記(1)ア~エの主張は採用できないから、「上述したように、「復元率(回復率)」について取消理由通知に記載の測定条件が明記されていなくとも、当業者であればリワーク作業性に鑑みて、シート厚み(1~3(mm)、及び印加荷重(0.8kgf/cm2)に基づいて、実施することができる」との主張に理由はなく、採用することはできない。 オ 小括 よって、特許権者の上記意見書における主張を採用することはできない。 第6 むすび 以上のとおり、本件特許は、特許請求の範囲の請求項1~10の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定に該当する。 また、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、本件発明1~10を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定に該当する。 したがって、本件特許6999109号の請求項1~10に係る特許は、上記第4の理由1~3について検討するまでもなく、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700658

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