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特許異議申立

2019-700084

ガラス板

審判番号
2019-700084
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-020309外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年02月05日
審決日
2019年04月25日
公報発行日
2019年06月28日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-Y (C03C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6368944号発明「ガラス板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6368944号の請求項1~6に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本件特許第6368944号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、2011(平成23年)10月26日(優先権主張 平成22年10月27日 日本国(JP))を国際出願日(以下、「本件特許の原出願日」という。)とする特願2012-540918号の一部を平成28年2月4日に新たな特許出願としたものであって、平成30年7月20日に特許権の設定登録がされ、同年8月8日に特許掲載公報が発行され、その後、全請求項(請求項1~6)に係る特許に対し、平成31年2月5日付けで特許異議申立人 松村朋子(以下「異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明6」ということがあり、また、これらを、まとめて、「本件特許発明」ということがある。)は、その特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める。 「【請求項1】 少なくともSiO2、MgO、CaO、Na2OおよびAl2O3を含むソーダライムシリカガラスからなるフロートガラス板であって、 酸化物基準の質量百分率表示で SiO2を60~71.1%、 MgOを6.9~15%、 CaOを0.5~4.8%、 Na2Oを13.6~16.9%、 K2Oを0~3%、 Al2O3を0.5~10.3%、および B2O3を0~1%含み、 酸化物基準の質量百分率表示のMgOの含有量と酸化物基準の質量百分率表示のCaOの含有量との比([MgO]/[CaO])が、1より大きく、30以下であり、 下式(1)で求めたQ値が、22以上、400以下である、ガラス板。 Q=([MgO]/[CaO])×([CaO]+[Na2O]-[Al2O3])  ・・・(1)。 ただし、[MgO]は、酸化物基準の質量百分率表示のMgOの含有量であり、[CaO]は、酸化物基準の質量百分率表示のCaOの含有量であり、[Na2O]は、酸化物基準の質量百分率表示のNa2Oの含有量であり、[Al2O3]は、酸化物基準の質量百分率表示のAl2O3の含有量である。 【請求項2】 酸化物基準の質量百分率表示で、Al2O3の含有量の上限値が5.3%である、請求項1に記載のガラス板。 【請求項3】 酸化物基準の質量百分率表示で、Al2O3の含有量の上限値が5.2%である、請求項1または2に記載のガラス板。 【請求項4】 酸化物基準の質量百分率表示で、MgOの含有量の下限値が7.1%である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガラス板。 【請求項5】 前記ガラス板のRedoxが40%以下である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のガラス板。 【請求項6】 カバーガラスに用いられるガラス板である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のガラス板。」 第3 申立理由の概要 申立人は、以下の甲第1号証~甲第6号証を提出して、本件特許発明1~6は、甲第2号証、要すればさらに甲第3号証~甲第5号証を参照すれば、甲第1号証の実施例4や実施例7に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1~6の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨主張している。 [異議申立人が提出した証拠方法] 甲第1号証:特開2000-159538号公報 甲第2号証:国際公開第96/24560号 甲第3号証:山根正之ら編「ガラス工学ハンドブック」初版 1999年 7月5日 株式会社朝倉書店発行,p.286~295 甲第4号証:特開2010-118505号公報 甲第5号証:特公昭43-3632号公報 甲第6号証:公告番号昭43-2225~昭43-3893の正誤表、昭和      43年3月26日発行 なお、甲第1号証~甲第6号証を、以下では、それぞれ、「甲1」~「甲6」という。 第4 甲各号証の記載事項 (当審注:「…」は記載の省略を表す。以下、同じ。) (1) 甲1の記載事項 1ア. 「【0021】 【実施例】…後記表1には、実施例と比較例について、重量%で表される組成、Na2O溶出量(μg/cm2)、脆性値(m-1/2)、作業温度範囲(℃)を示す。 【0022】ガラスは、試薬原料を用いて目標とするガラス組成となるようにガラス500gに相当する量を調合し、白金坩堝を用いて1500℃で1時間溶解後、その温度で1時間ガラスを攪拌し均質化後、1時間清澄し、幅5cmの板状に流し出し、その後徐冷した。 … 【0028】表1のNo1からNo7の試料は、本発明の実施例であり、比較例はフロート法で製造されている代表的なソーダライムガラスである。 【0029】表1から明らかなように、本発明のガラスはNa2O溶出量が1.2μg/cm2以下と、比較例のそれと比較して少ないことから、傷が付いてもその傷の進展が小さく、脆性値が6500m-1/2以下と、比較例のそれと比較して小さいことから傷が付きにくく、作業温度範囲が10℃以上あることからフロート法やロールアウト法で成形しても失透が流出しないことを示す。 【0030】表1 」 1イ. 「【0031】 【発明の効果】本発明によれば、従来の板ガラスと比較して耐水性が良く、傷も付きにくいことから、太陽電池用、特にアモルファス太陽電池用の基板ガラスおよびカバーガラスに適している。また、本発明のガラスは、その作業温度範囲が従来のガラス以上なのでフロート成形は勿論、ロールアウト成形も可能である。なお、耐水性が良いことから、耐候性においても優れ、ガラス透明性が従来の板ガラスと比べ、より長く維持され、この点からも太陽電池用のガラスとして適している。」 1ウ. 「【0009】本発明においては、太陽電池用ガラスのNa2O溶出量を1.2μg/cm2以下、かつ脆性値が6500m-1/2以下とするように、本発明のガラスは、酸化物を基準とした重量%で表した場合に以下のような組成範囲を持つものとされる。 SiO2          63~74、 Al2O3          0~5、 CaO           0~8.5、 MgO         6.5~22、 Na2O         8.5~15、 K2O           0~5.5、 TiO2          0~2、 SO3           0~0.7 【0010】… 以下、本発明のガラスの組成限定の理由について述べる。 … 【0013】上記組成においてCaOも必須成分ではないが、これを含有させることによって、900℃以上の高温でのガラスの粘度を調整させ得る。含有量が8.5重量%超では得られるガラスの脆性値が6500m-1/2以上となる畏れがある。このような観点からより好ましい含有量は4重量%以下、さらに好ましい含有量は2重量%以下である。 【0014】上記組成においてMgOの含有量が6.5重量%未満では、得られるガラスの脆性値が6500m-1/2以上となる畏れがある。好ましくは11重量%以上、さらに好ましくは17重量%以上である。一方、22重量%超では作業温度範囲が小さくなり失透が製品に混入する畏れがある。好ましくは21重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下である。」 (2) 甲2の記載事項 2ア. 「…本発明おける好ましいガラスは、具体的には、本質的に以下のような組成からなり、室温で測定される密度が2.43g/cc以下となるものである。…比較的低温で熔融可能であって、かつ十分な耐水性と耐擦傷性とを得ることができるならば、もっとも好ましい。この観点で好ましい組成の1つは本質的に下記のようなものである。ここで、MgO,CaO,RO,R’2Oの上限値はROとR’2Oとの合量および比によって自動的に決まる値の小数点第2位を4捨5入した値である。 SiO2           74~80  (重量%)、 B2O3          0.5~5   (重量%)、 SiO2+B2O3       76~85  (重量%)、 MgO             1~8.6 (重量%)、 CaO             0~7.6 (重量%)、 RO              2~8.6 (重量%)、 Na2O           10~17  (重量%)、 K2O             0~10  (重量%)、 Li2O            0~10  (重量%)、 R’2O           10~19.2(重量%)、 Al2O3           1~5   (重量%)、 RO/R’2O(重量比)   0.2~0.6。 Na2Oが17重量%を超えると、耐水性が傾向がある。具体的には、ガラスを熱水にさらしたときのナトリウム溶出量が多くなる。また、重量比RO/R’2Oが0.2未満になると、相対的にROのR’2Oに対する比率が減るため、やはり、耐水性が低下する傾向がある。 より良好な耐水性を得るためには、必須ではないが、Na2OをK2Oに置換して、K2Oを0.5重量%以上含有せしめることが非常に効果的である。MgOをCaOに置換して、CaOを0.5重量%以上含有せしめることにも効果が認められる。」(甲2の明細書6頁末行~8頁26行) (3) 甲3の記載事項 3ア. 「1.2.7 マグネシア(MgO,magnesia) マグネシアはソーダ石灰ガラスにおいて,粘性の温度傾斜を緩やかにしたり,失透性を低下させるためCaOと置換して使用される.… マグネシア源には苦灰石,マグネサイト,水酸化マグネシウム,滑石などがある. 苦灰石(dolomite)はCaCO3・MgCO3の複塩であるが,両者の比は産地によって一定ではない.国内では栃木県葛生,岐阜県赤坂に大きな鉱床があり,MgO約18%,CaO約34%含有されている.… ガラス成分としてMgOを単味で導入する必要のある場合には,海水より得られた水酸化マグネシウム,あるいはこれを仮焼したマグネシアが原料として使用される.」(甲3のp.290左欄5~23行) 第5 甲1に記載される発明 ア. 上記第4の1ア.によれば、甲1には、実施例4として、SiO2の含有量が69.7重量%、Al2O3の含有量が2.7重量%、CaOの含有量が0.0重量%、MgOの含有量が12.7重量%、Na2Oの含有量が14.8重量%、K2Oの含有量が0.0重量%、TiO2含有量が0.0重量%、SO3含有量が0.0重量%からなる組成を有する板状のガラスが記載されており、また、実施例7として、SiO2の含有量が63.9重量%、Al2O3の含有量が4.7重量%、CaOの含有量が0.0重量%、MgOの含有量が17.1重量%、Na2Oの含有量が14.1重量%、K2Oの含有量が0.0重量%、TiO2含有量が0.0重量%、SO3含有量が0.1重量%からなる組成を有する板状のガラスが記載されていると認める。 イ. そして、上記第4の1イ.によれば、上記ア.に示した実施例4の板状のガラスや実施例7の板状のガラスは、太陽電池用のカバーガラスに適しており、また、フロート成形可能であるとされている。 ウ. 上記ア.~イ.の検討を踏まえ、実施例4の太陽電池用カバーガラスに注目すると、甲1には、次のような発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されていると認められる。 「SiO2の含有量が69.7重量%、Al2O3の含有量が2.7重量%、CaOの含有量が0.0重量%、MgOの含有量が12.7重量%、Na2Oの含有量が14.8重量%、K2Oの含有量が0.0重量%、TiO2含有量が0.0重量%、SO3含有量が0.0重量%からなる組成を有する太陽電池用カバーガラスであって、フロート成形可能な板状のガラスである太陽電池用カバーガラス。」 エ. また、上記ア.~イ.の検討を踏まえ、実施例7の太陽電池用カバーガラスに注目すると、甲1には、次のような発明(以下、「甲1発明2」という。)も記載されていると認められる。 「SiO2の含有量が63.9重量%、Al2O3の含有量が4.7重量%、CaOの含有量が0.0重量%、MgOの含有量が17.1重量%、Na2Oの含有量が14.1重量%、K2Oの含有量が0.0重量%、TiO2含有量が0.0重量%、SO3含有量が0.1重量%からなる組成を有する太陽電池用カバーガラスであって、フロート成形可能な板状のガラスである太陽電池用カバーガラス。」 第6 当審の判断 上記第3に示した、本件特許発明1~6は、甲2、要すればさらに甲3~甲5を参照すれば、甲1の実施例4や実施例7に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨の申立理由につき、以下に順次検討する。 1. 本件特許発明と甲1発明1との対比・検討 (1-1) 本件特許発明1と甲1発明1との対比・検討 ア. まず、本件特許発明1と上記第5のウ.に示した甲1発明1とを対比するに、甲1発明1における「フロート成形可能な板状のガラス」は、本件特許発明1における「フロートガラス板」に相当し、また、甲1発明1における「SiO2の含有量が69.7重量%、Al2O3の含有量が2.7重量%、CaOの含有量が0.0重量%、MgOの含有量が12.7重量%、Na2Oの含有量が14.8重量%、K2Oの含有量が0.0重量%、TiO2含有量が0.0重量%、SO3含有量が0.0重量%から実質的になる組成を有する」ことは、本件特許発明1における「少なくともSiO2、MgO、Na2OおよびAl2O3を含むガラスからなる」「酸化物基準の質量百分率表示でSiO2を60~71.1%、MgOを6.9~15%、Na2Oを13.6~16.9%、K2Oを0~3%、Al2O3を0.5~10.3%、およびB2O3を0~1%含」むことに相当する。 してみると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違していると認められる。 <一致点> 「少なくともSiO2、MgO、Na2OおよびAl2O3を含むガラスからなるフロートガラス板であって、 酸化物基準の質量百分率表示で SiO2を60~71.1%、 MgOを6.9~15%、 Na2Oを13.6~16.9%、 K2Oを0~3%、 Al2O3を0.5~10.3%、および B2O3を0~1%含」む「ガラス板」の点。 <相違点> 相違点1: フロートガラス板が、本件特許発明1は「少なくともSiO2、MgO、CaO、Na2OおよびAl2O3を含むソーダライムシリカガラスからなるフロートガラス板であって、酸化物基準の質量百分率表示でCaOを0.5~4.8%含み、」「酸化物基準の質量百分率表示のMgOの含有量と酸化物基準の質量百分率表示のCaOの含有量との比([MgO]/[CaO])が、1より大きく、30以下であり、 下式(1)で求めたQ値が、22以上、400以下である、ガラス板。 Q=([MgO]/[CaO])×([CaO]+[Na2O]-[Al2O3]) ・・・(1)。 ただし、[MgO]は、酸化物基準の質量百分率表示のMgOの含有量であり、[CaO]は、酸化物基準の質量百分率表示のCaOの含有量であり、[Na2O]は、酸化物基準の質量百分率表示のNa2Oの含有量であり、[Al2O3]は、酸化物基準の質量百分率表示のAl2O3の含有量である。」との特定事項を備えているのに対し、 甲1発明1は、少なくともSiO2、MgO、Na2OおよびAl2O3を含むものの、CaOは含まないことから、ソーダライムシリカガラスからなるものではなく、CaOの含有量(質量%)が0.5~4.8の範囲内ではない上、前記の特定事項を備えてはいない点。 イ. そこで、上記相違点1について検討するに、異議申立人は特許異議申立書において、甲1発明1がいわゆる耐擦傷性と共に「耐水性」に優れたガラスの提供を解決すべき課題としているところ(【0005】)、甲2には、MgOをCaOに置換してCaOを0.5%以上含有せしめること(8頁23~26行)により耐水性がさらに向上することが教示されており、甲1記載の発明においても、CaOは、その上限を8.5%(【請求項1】)、好ましくは4%、さらには2%として(【0013】)、添加が許容されているし、また、ガラス組成物を取り扱う当業者にとって、CaOがガラスの最も重要な成分の一つであること、MgOとCaOとを置換してガラスの特性を調整することは、ともに技術常識であった(甲3)し、「太陽電池用ガラス」の分野においても、CaOは「MgOと同様」の成分として扱われていた(甲4)し、太陽電池用ガラスとして供する場合の汎用の処理である化学強化(甲1【0018】、甲4【0040】)においても、MgOとCaOとをROとしてその合計含有率を規定した上で、ROにおけるMgOの比率(MgOとCaOとの比でもある)が検討されていた(甲5によれば、CaOに対してMgOは相対的に多いことが望ましい)し、加えて、例えば甲4には、MgOの含有率が12%を超えると失透が生じやすく成形が困難になることが指摘されていた(【0022】)し、また、CaOを完全に排除しながらMgOを含ませるためには、MgOの原料として、安価で大量に入手しやすい鉱物資源(苦灰石:CaCO3・MgCO3の複塩、甲3)以外の特別な原料のみを使用する必要が生じるために製造コストが増すことから、甲1発明1において、甲2の教示に従って耐水性をより向上させるべく、CaOの含有率が0.5%以上(甲2)で一定量以下(具体的には4%以下、さらには2%以下:甲1)となるようにMgOの一部をCaOに置換することは、当業者であれば容易に想到できたと解するのが相当であるし、この置換を実施しても甲1が指定する組成を満たしているので当該置換を当業者が躊躇する理由は存在しないし、そして、甲1発明1において、CaOが0.5%、2%又は4%となるようにMgOの一部をCaOに置換して得られるガラスは、本件特許発明1と一致することになるので、本件特許発明1は、甲2、必要であればさらに甲3~甲5を参照することによって、甲1発明から容易に想到できたものである旨主張している。 しかしながら、甲2における、「より良好な耐水性を得るためには、…MgOをCaOに置換して、CaOを0.5重量%含有せしめることにも効果が認められる。」という記載事項は、上記第4の(2)に示したとおり、ガラスが、「SiO2の含有量が74~80重量%、B2O3の含有量が0.5~5重量%、SiO2+B2O3の含有量が76~85重量%、MgOの含有量が1~8.6重量%…RO/R’2O(重量比)0.2~0.6」といった条件を満足していることが前提となっていると認められる。これに対し、上記第5のウ.に示したとおりである、甲1発明1の太陽電池用カバーガラスは、当該条件を満足してはいないから、甲2に記載される、「より良好な耐水性を得るためには、MgOをCaOに置換して、CaOを0.5重量%含有せしめる」との技術事項を適用する前提を欠くものといえる。 また、上記第4の(1)1ウ.(【0013】~【0014】)に示したとおり、甲1記載の発明においては、CaOを含有させる技術的意義とMgOを含有させる技術的意義とは、互いに、異なるから、甲2~甲6の記載を参照しても、甲1発明1において、MgOをCaOに置換する動機付けは生じ得ない。また、上記第4の(3)に示したとおり、甲3によれば、「ガラス成分としてMgOを単味で導入する必要のある場合には,海水より得られた水酸化マグネシウム,あるいはこれを仮焼したマグネシアが原料として使用される.」とされていることからして、ガラス成分としてMgOを単味で導入することに現実性がないわけではない。 してみると、異議申立人の前記主張は採用できない。 また、甲1~甲6の記載を参照してみても、他に、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を甲1発明1に備えさせることが、本件特許の原出願日前に、当業者が容易になし得たこととし得る合理的な論拠は見出し得ない。 よって、本件特許発明1は、本件特許の原出願日前に、甲1発明1、及び、甲1~甲6の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (1-2) 本件特許発明2~6と甲1発明1との対比・検討 本件特許発明2~6は、上記第2に示したとおり、請求項1の記載を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えたものであるから、上記(1-1)ア.での検討と同様にして、甲1発明1とは、少なくとも上記相違点1の点で相違していると認められる。 そして、上記(1-1)イ.での検討と同様にして、本件特許発明2~6も、本件特許の原出願日前に、甲1発明1、及び、甲1~甲6の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 2. 本件特許発明と甲1発明2との対比・検討 (2-1) 本件特許発明1と甲1発明2との対比・検討 ア. まず、本件特許発明1と上記第5のエ.に示した甲1発明2とを対比するに、甲1発明2における「フロート成形可能な板状のガラス」は、本件特許発明1における「フロートガラス板」に相当し、また、甲1発明2における「SiO2の含有量が63.9重量%、Al2O3の含有量が4.7重量%、CaOの含有量が0.0重量%、MgOの含有量が17.1重量%、Na2Oの含有量が14.1重量%、K2Oの含有量が0.0重量%、TiO2含有量が0.0重量%、SO3含有量が0.1重量%から実質的になる組成を有する」ことは、本件特許発明1における「少なくともSiO2、MgO、Na2OおよびAl2O3を含むガラスからなる」「酸化物基準の質量百分率表示でSiO2を60~71.1%、Na2Oを13.6~16.9%、K2Oを0~3%、Al2O3を0.5~10.3%、およびB2O3を0~1%含」むことに相当する。 してみると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違していると認められる。 <一致点> 「少なくともSiO2、MgO、Na2OおよびAl2O3を含むガラスからなるフロートガラス板であって、 酸化物基準の質量百分率表示で SiO2を60~71.1%、 Na2Oを13.6~16.9%、 K2Oを0~3%、 Al2O3を0.5~10.3%、および B2O3を0~1%含」む「ガラス板」の点。 <相違点> 相違点2: フロートガラス板が、本件特許発明1は「少なくともSiO2、MgO、CaO、Na2OおよびAl2O3を含むソーダライムシリカガラスからなるフロートガラス板であって、酸化物基準の質量百分率表示でMgOを6.9~15%、CaOを0.5~4.8%含み、」「酸化物基準の質量百分率表示のMgOの含有量と酸化物基準の質量百分率表示のCaOの含有量との比([MgO]/[CaO])が、1より大きく、30以下であり、 下式(1)で求めたQ値が、22以上、400以下である、ガラス板。 Q=([MgO]/[CaO])×([CaO]+[Na2O]-[Al2O3]) ・・・(1)。 ただし、[MgO]は、酸化物基準の質量百分率表示のMgOの含有量であり、[CaO]は、酸化物基準の質量百分率表示のCaOの含有量であり、[Na2O]は、酸化物基準の質量百分率表示のNa2Oの含有量であり、[Al2O3]は、酸化物基準の質量百分率表示のAl2O3の含有量である。」との特定事項を備えているのに対し、 甲1発明2は、少なくともSiO2、MgO、Na2OおよびAl2O3を含むものの、CaOは含まないことから、ソーダライムシリカガラスからなるものではなく、CaOの含有量(質量%)が0.5~4.8の範囲内ではないし、さらに、MgOの含有量(質量%)が17.1であることから、6.9~15の範囲内ではない上、前記の特定事項を備えてはいない点。 イ. そこで、上記相違点2について検討するに、この相違点は、上記相違点1と同様の相違点であるから、上記1.(1-1)イ.での検討と同様にして、甲1~甲6の記載を参照してみても、上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を、甲1発明2に備えさせることを、本件特許の原出願日前に、当業者が容易になし得たこととし得る合理的な論拠は見出し得ない。 よって、本件特許発明1は、本件特許の原出願日前に、甲1発明2、及び、甲1~甲6の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2-2) 本件特許発明2~6と甲1発明2との対比・検討 本件特許発明2~6は、上記第2に示したとおり、請求項1の記載を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えたものであるから、上記(2-1)ア.での検討と同様にして、甲1発明2とは、少なくとも上記相違点2の点で相違していると認められる。 そして、上記(2-1)イ.での検討と同様にして、本件特許発明2~6も、本件特許の原出願日前に、甲1発明2、及び、甲1~甲6の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第7 むすび したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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    同じ当事者: AGC株式会社
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  • 2025-700668異議申立 / 2026-01-27 / 訂正認容光学ガラス及び光学素子
    共通の審決分類: 121・C03C
  • 2024-701221異議申立 / 2026-01-19 / 訂正認容ガラス板
    共通の審決分類: 121・C03C
  • 2024-700008異議申立 / 2025-04-30 / 維持合わせガラス用中間膜、合わせガラス用中間膜の製造方法及び合わせガラス
    共通の審決分類: 121・C03C
  • 2023-701171異議申立 / 2024-09-25 / 訂正認容石英ガラスクロスの製造方法
    共通の審決分類: 121・C03C
  • 2023-701007異議申立 / 2024-06-25 / 訂正認容光学ガラスの製造方法
    共通の審決分類: 121・C03C

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