特許拒絶査定不服審判
2019-007442
波長選択スイッチ及び波長選択方法
- 審判番号
- 2019-007442
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-501674外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年06月05日
- 審決日
- 2020年03月18日
- 公報発行日
- 2020年09月25日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (G02F) / P18 .55 -Z (G02F) / P18 .575-Z (G02F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2017-501674「波長選択スイッチ及び波長選択方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月21日国際公開、WO2016/008144、平成29年 9月21日国内公表、特表2017-527842〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)7月18日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
平成29年12月22日付け 拒絶理由通知(平成30年 1月 9日発送)
平成30年 4月 9日 意見書・手続補正書
平成30年 9月18日付け 拒絶理由通知(同年 9月25日発送)
平成30年12月18日 意見書・手続補正書
平成31年 1月31日付け 拒絶査定(平成31年 2月 5日送達)
令和 1年 6月 5日 本件審判請求・手続補正書
第2 令和1年6月5日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和1年6月5日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正事項の整理
本件補正の、請求項1についての補正は、次の事項を含むものである。(下線は補正箇所である。)
(1) 補正事項1
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「前記電気チューニングモジュールが、前記第1のマイクロリングの環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの環状PN接合と逆方向にバイアス電圧を印加するように構成された」
とあるものを、
「前記電気チューニングモジュールが、前記第1のマイクロリングの環状PN接合に第1のバイアス電圧を印加し、前記第2のマイクロリングの環状PN接合に、前記第1のバイアス電圧とは逆方向の第2のバイアス電圧を印加するように構成された」
と補正する補正事項を含むものである。
(2) 補正事項2
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「前記双マイクロリング共振器の動作温度を調整するように構成された熱チューニングモジュールと、」とあるものを、
「前記双マイクロリング共振器の動作温度を調整するように構成され、前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合と平面視で重なるように配置された、閉じた環状の温度調整デバイスを含む、熱チューニングモジュールと、」
と補正する補正事項を含むものである。
(3) 補正事項3
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「前記電気チューニングモジュールが、前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合に逆方向のバイアス電圧を印加するように構成され、」
とあるものを、
「前記電気チューニングモジュールが、前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合に、前記第1及び第2のバイアス電圧をそれぞれ印加するように構成され、」
と補正する補正事項を含むものである。
(4) 補正事項4
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「前記熱チューニングモジュールが、前記電気チューニングモジュールによって前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合に逆方向のバイアス電圧を印加した後に」
とあるものを、
「前記熱チューニングモジュールが、前記電気チューニングモジュールによって前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合に、前記第1及び第2のバイアス電圧をそれぞれ印加した後に」
と補正する補正事項を含むものである。
(5) 補正事項5
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合に逆方向のバイアス電圧を印加するのを停止する」
とあるものを、
「前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合に前記第1及び第2のバイアス電圧を印加するのを停止する」と補正する補正事項を含むものである。
2 新規事項の追加の有無についての検討
(1)
補正事項2のうち、熱チューニングモジュールの一部である温度調整デバイスの形状が「閉じた環状」であることを特定することは、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてなされたものであるか否かについて検討する。
(2)
当初明細書等において、温度調整デバイスについて、その形状が「閉じた環状」であることを特定する記載は、以下のとおり見いだせない。
ア
補正事項2の温度調整デバイスは、当初明細書等では「温度調整デバイス」又は「半導体冷却器」と記載されていると解されるところ、当初明細書等の【0028】-【0030】、【0032】に、「温度調整デバイス」、「半導体冷却器」、及び、これらを備える「熱チューニングモジュール」について説明がされている。
しかしながら、上記【0028】-【0030】、【0032】の記載は熱チューニングモジュールの機能を説明するのみであり、「温度調整デバイス」及び「半導体冷却器」の形状についての記載すらなく、よって、これらが「閉じた環状」であることも、当然に、記載がない。
イ
次に、本願の図1から「温度調整デバイス」及び「半導体冷却器」が「閉じた環状」であることが読み取れるか検討する。
本願の図1には、双マイクロリング共振器110の第1及び第2のマイクロリング111,112が、それぞれ2重の同心円状部分と、2重の同心円状部分のさらに外側に、2重の円弧状部分とを含むものとして、描かれており、熱チューニングモジュール130が、第1のマイクロリング111の2重の同心円状部分のうち、外側の円状部分に接続されていることが見て取れる。
そして、当初明細書等には図1の説明として、【0020】、【0021】に
「【0020】
双マイクロリング共振器110は、直接に接続された第1のマイクロリング111と、第2のマイクロリング112と、を含む。すなわち、第1のマイクロリング111及び第2のマイクロリング112は直列接続によってカスケード接続され、双マイクロリング共振器110を構成する。第1のマイクロリング111及び第2のマイクロリング112は、シリコンに基づくマイクロリング導波路であり、それぞれが1つの環状PN接合を含み、第1のマイクロリング111の環状PN接合の方向は、第2のマイクロリング112の環状PN接合の方向と同じである。具体的には、第1のマイクロリング111及び第2のマイクロリング112のマイクロリングの中心に近い部分はP領域であり、マイクロリングの中心から遠い部分はN領域であり、またはマイクロリングの中心に近い部分はN領域であり、マイクロリングの中心から遠い部分はP領域である。任意選択的に、P領域はさらにP++領域を含んでもよく、N領域はさらに、N++領域を含んでもよい。
【0021】
図2は、図1に示された部分の位置におけるマイクロリング部分の概略的な構造図を示す。図2において、マイクロリングの中心に近い部分はP領域であり、マイクロリングの中心から遠い部分はN領域である。P領域はP++領域を含み、N領域はN++領域を含む。図2は単なる例であり、本発明の保護範囲に対するいかなる限定を構成するものでもないことは理解されるべきである。」と記載されている。
図1,2は以下のとおりである。
以上をふまえて検討すると、図1は「マイクロリング」を説明する図であるから、「マイクロリング」とは異なる「温度調整デバイス」を描いたものとは考えにくく、むしろ、図1の2重の同心円状部分と2重の円弧状部分は、【0020】において説明されている、「マイクロリング」の一部を構成するP領域、N領域、P++領域、N++領域のいずれかに対応するとみるのが自然である。
そして、このことは次の点からも裏付けられる。すなわち、【0021】の「図2は、図1に示された部分の位置における」の「部分」が図1のどの部分を示すのか不明ではあるが、図1には「部分」との記載があり、さらに、図2に示されるP++、P、N、N++の各領域の色の明るさが、図1のマイクロリング111,112の2重の同心円状部分と2重の円弧状部分の色の明るさと一致することからみて、図2はマイクロリング111,112の断面を、左側をマイクロリング111,112の内側にし、右側を外側にして、示すものと考えられる。そうすると、図1のマイクロリング111,112の2重の同心円状部分と2重の円弧状部分は、内側から、P++、P、N、N++の各領域を意味すると理解されることになる。
このように、図1は「マイクロリング」の構成を記載するものであるから、図1において、熱チューニングモジュール130がマイクロリング111の2重の同心円状部分の外側の部分に接続されているように描かれていることは、「温度調整デバイス」又は「半導体冷却器」そのものを明記しているのではなく、せいぜい、その付近に「温度調整デバイス」又は「半導体冷却器」が存在し、熱チューニングモジュールが接続されていることを、模式的に示しているにとどまるものと理解される。
以上によれば、当初明細書等の図1は、温度調整デバイスの形状を示すものではない。
(ウ)
したがって、当初明細書等には、温度調整デバイスが「閉じた環状」であることは、記載されていない。そして、温度調整デバイスの形状が「閉じた環状」であることが技術常識であるともいえないから、この点が当業者にとって自明な事項でもない。
よって、補正事項2は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、「新たな技術的事項を導入しないもの」に該当しないから、当初明細書等の記載した事項の範囲内においてなされたものではない。
(3)
上記(2)の認定及び判断について、請求人は上申書の「(3)上記補正が新規事項の追加に該当しないことについて」において「熱チューニングモジュール130は、双マイクロリング共振器110の動作温度を調整するように構成されており(段落[0028])、マイクロリング111内のマイクロリングの中心に2番目に近い部分に接続されています。 マイクロリング111内のマイクロリングの中心に2番目に近い部分はもう一方のマイクロリング112の対応する部分にも接続されています。これら2つの部分は、双マイクロリング共振器の動作温度を調整するように構成された温度調整デバイスであることは明らかです。」と主張しているが、上記のとおり、熱チューニングモジュール130がマイクロリングの中心に2番目に近い部分に接続されていることが見て取れたところで、この部分が温度調整デバイスを示しているとは読み取れないものであるから、請求人の主張は、その前提が失当である。
また、請求人は「マイクロリング111内のマイクロリングの中心に2番目に近い部分はもう一方のマイクロリング112の対応する部分にも接続されています。これら2つの部分は、双マイクロリング共振器の動作温度を調整するように構成された温度調整デバイスであることは明らかです」とも主張しているが、上記(2)の認定によれば、マイクロリング111のP領域がマイクロリング112のP領域に接続されていると解すべきであり、請求人の主張は、上記の認定及び判断を左右するものではない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
(4)
よって、補正事項2は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものではない。
(5) 小括
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合しないものであるが、念のため、この規定に適合するとした場合についても、以下、項を改めて検討する。
3 補正の目的
(1)補正事項1,3,4,5
上記補正事項のうち、補正事項1は補正前の請求項1の記載が、バイアス電圧を印加する際に、何を基準に「逆方向」のバイアス電圧を、何に対して印加するのか明瞭でないものを、補正により明瞭な記載としたものであるから、補正事項1の補正は、明瞭でない記載の釈明を目的としている。
また、補正事項3,4,5は上記補正事項1の補正に伴う補正であって、補正事項1と同様に明瞭でない記載の釈明を目的としている。
(2)補正事項2
補正事項2は、熱チューニングモジュールが、「前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合と平面視で重なるように配置された、閉じた環状の温度調整デバイスを含む」に減縮する補正であるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
4 独立特許要件の適否について
本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるから、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。
本願補正発明は、以下のとおりである。
「直列に接続された第1のマイクロリング及び第2のマイクロリングを含む双マイクロリング共振器であって、前記第1のマイクロリング及び前記第2のマイクロリングがシリコンに基づくマイクロリング導波路であり、それぞれが1つの環状PN接合を含み、前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合の方向が、前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合の方向と同じである、双マイクロリング共振器と、
電気チューニングモジュールであって、前記電気チューニングモジュールの第1の電気ポートが、前記第1のマイクロリングのP領域及び前記第2のマイクロリングのN領域に接続され、前記電気チューニングモジュールの第2の電気ポートが、前記第1のマイクロリングのN領域及び前記第2のマイクロリングのP領域に接続され、前記電気チューニングモジュールが、前記第1のマイクロリングの環状PN接合に第1のバイアス電圧を印加し、前記第2のマイクロリングの環状PN接合に、前記第1のバイアス電圧とは逆方向の第2のバイアス電圧を印加するように構成された、電気チューニングモジュールと、
前記双マイクロリング共振器の動作温度を調整するように構成され、前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合と平面視で重なるように配置された、閉じた環状の温度調整デバイスを含む、熱チューニングモジュールと、を含み、
前記第1のマイクロリングの屈折率及び前記第2のマイクロリングの屈折率が逆方向に変化し、前記双マイクロリング共振器が離調状態になるように、前記電気チューニングモジュールが、前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合に、前記第1及び第2のバイアス電圧をそれぞれ印加するように構成され、
前記熱チューニングモジュールが、前記電気チューニングモジュールによって前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合に、前記第1及び第2のバイアス電圧をそれぞれ印加した後に、前記双マイクロリング共振器の共振波長を変更するために、前記双マイクロリング共振器の動作温度を調整するように構成され、
前記双マイクロリング共振器が変化した共振波長において共振状態となるように、前記電気チューニングモジュールがさらに、前記熱チューニングモジュールによって前記双マイクロリング共振器の動作温度を調整した後に、前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合に前記第1及び第2のバイアス電圧を印加するのを停止するように構成された、波長選択スイッチ。」
5 引用文献と引用発明
(1)引用文献
ア
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である米国特許出願公開第2010/0196014号明細書(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。(当審注:下線は、当審で付加した。以下、同様である。)
「FIELD OF THE INVENTION
[0001] The present invention relates to thefield of optical communication systems including hitless tunable opticalfiltering functionality, such as hitless tunable optical add and/or dropfunctionality.」
「当審訳:発明が属する分野
[0001] 本発明は、ヒットレス波長可変光学フィルタ機能性を含む光通信システムの分野、ヒットレス波長可変光アド及び/又はドロップの機能に関するものである。」
「[0045] Comprised within the opticalfilter 250 , a first optical path 230 , in the form of, e.g. an opticalwaveguide such as a planar lightguide circuit (PLC) waveguide, opticallyconnects the input port to the output port.
[0046] According to the present inventionthe optical filter 250 comprises a plurality of resonant cavities(or resonators) 252 , 254 ,255 , such as Bragg gratings or microcavities such as linear cavities,microrings, racetracks, photonic band gap cavities and the like. In a preferredconfiguration, the resonant optical filter250 comprises microring orracetrack resonators. The plurality of resonators comprises a first opticalresonator 252 optically coupled adjacently to the firstoptical path 230 and one or more further resonators 254 ,255 coupled in series to saidfirst resonator 252 . In the drawings,the symbol 255 consisting in three dots vertically alignedrepresents an arbitrary number, including zero, of resonators. Preferably theseries-coupled resonators 252 , 254 ,255 comprised within the opticalfilter 250 are less than or equal to four, morepreferably they are two or three.」
「当審訳:
[0045] 光学フィルタ250は、第1の光路230は、例えば、平面光導波路回路(PLC)導波路のような光導波路の形に含まれるのは、入力ポートを出力ポートに光学的に接続する。
[0046] 本発明に係る光学フィルタ250は、共振空洞(光共振器)252、254、255、例えば、ブラッグ格子または線形共振器、マイクロリング、レーストラック、フォトニックバンドギャップ空胴等のマイクロキャビティを含む。好ましい構成では、共振型の光フィルター250は、マイクロリング共振器又はレーストラック共振器を含む。複数の共振器は、第1の光路230に隣接して光学的に結合された第1の光共振器252と、光共振器252に直列に接続された1または複数の別の共振器254、255を備えている。図面において、縦方向に並ぶ3個のドットからなるシンボル255は、任意の数の、0を含む共振器を示す。好ましくは、光学フィルタ250内に含まれる一連の結合共振器252、254、255または4以下、より好ましくは2又は3である。」
「[0050] In a preferred embodiment theoptical filter 250 is an optical add and/or drop filter (OADF)wherein the two or more resonators 252, 254 ,255 are optically coupled inseries between the first optical path230 and a further #drop# waveguide 256 . A further output optical port 260(#drop port#), optically coupled to the drop waveguide has the functionof dropping, fully or partially, at least an optical channel within the inputoptical signal. In other words, the power transfer function at the dropport 260is typically characterized by high transmission peaks equally spaced infrequency by a quantity equal to the overall FSR of the optical filter. In anembodiment, the OADF 250 has a further input optical port 259(#add port#) which is apt to receive an optical radiation (dashed arrow)to be added to the thru optical signal at the output port 258 . It is noted that in the absence of thefurther drop waveguide, the optical filter250 may act as an all-passfilter. In FIG. 2 the positions of the drop and add port arethose determined by an even number of resonators. In case of an odd number ofresonators, the positions of the two ports may be switched.
[0051] When an optical drop filter 250having an even number of resonators is in operation, the opticalchannels input into the input port257 and having opticalfrequencies which match the (aligned) resonances of the resonators 252 ,254 , 255 are output into the drop output port 260coupled to the second optical path256 , and they physically travel across the resonators 252 ,254 , 255 , as indicated by thedown-arrow near the microrings.
[0052] According to the present invention,the optical filter 250 is a tunable optical filter, i.e. it is aptto select an arbitrary optical channel to be filtered. This functionality maybe accomplished with any technique known in the art, such as for exampleexploiting the thermo-optic, the electro-optic, the magneto-optic, theacousto-optic and the elasto-optic effect or by stress or MEMS actuating. Inparticular, at least one resonator comprised within the optical filter 250 isindividually tunable differentially with respect to at least another resonatorof the remaining resonators of the optical filter 250 , i.e. it may be tuned with a certaindegree of freedom from the tuning of the at least another resonator. In thepresent description, the expression #tuning an individual resonator# meansmoving the resonances of the resonator in the frequency spectrum, e.g.actuating the resonator by exploiting a physical effect. Typically, theensemble of resonances of an individual resonator moves substantially rigidly(i.e. maintaining unchanged the resonance distribution and spacing) while theresonator is being tuned.」
「当審訳:[0050] 好ましい実施形態では、光学フィルタ250は、光アド及び/又はドロップフィルタ(OADF)であり、2以上の共振器252、254、255は、第1の導波路230とさらなる「ドロップ」導波路256との間に、直列に光学的に結合される。さらに、出力光ポート260(「ドロップポート」)は、ドロップ導波路に光学的に結合され、完全にまたは部分的に、入力光信号内の少なくとも1つの光チャネルをドロップする機能を有している。換言すれば、ドロップポート260における電力伝達関数は、典型的には、光学フィルタのFSRに等しい量の間隔で、周波数が等間隔の伝送ピークを特徴とする。一実施形態では、OADF250は光放射(破線の矢印)を受信し、出力ポート258でスルー光信号に付加するために、入力光ポート259(「アドポート」)を有している。さらに、ドロップ導波路が無い場合には、光学フィルタ250は、全パスフィルタとして動作してもよいことに留意されたい。図2において、アド/ドロップポートの位置は、偶数個の共振器によって決定されたものである。奇数個の共振器の場合には、2ポートの位置が入れ替えられてもよい。
[0051] 偶数個の共振器を備えた光学ドロップフィルタ250の動作時には、入力ポート257に入力され、共振器252、254、255の(整列した)共鳴と一致する光周波数を有する光チャネルは、マイクロリング付近の下向き矢印によって示されているように、共振器252、254、255を物理的に横切って移動し、第2の光路256に結合されたドロップ出力ポート260に出力される。
[0052] 本発明によれば、光学フィルタ250は、同調可能な光フィルタであり、すなわち、ろ過されるべき任意のチャンネルを選択することが多い。この機能は、当技術分野で公知の任意の技術、例えば熱光学、電気光学、磁気光学、音響光学、弾性光学的効果を利用することなどにより、ストレスやMEMS作動によって達成することができる。具体的には、光学フィルタ250内に含まれている少なくとも1つの共振器は、光フィルタ250の残りの共振子のうちの少なくとも他の共振器に対して異なるように調整可能である、すなわち、それは、少なくとも、他の共振器のチューニングからある程度の自由度をもって調整されてもよい。本明細書では、「個別共振器をチューニング」という表記は、共振器の共振周波数を周波数スペクトル領域において、例えば共振器に対して物理的な作用を与えることにより、動かすことである。典型的には、共振器が同調されている間、個々の共振器の共振のアンサンブルは実質的に剛性的に(すなわち共振の分布及び間隔を変えずに維持する)移動する。」
「[0056] FIG. 3 shows an alternative configuration of theoptical filter 250 . For the sake ofclarity, it is assumed that the actuators are thermo-optic actuators (i.e.micro-heaters), but the present configuration equally applies to other tuningtechniques. A massive tuning heater310 is configured for heatingsubstantially uniformly all the resonators252 , 254 and255 comprised within the opticalfilter 250 . In addition, a trimmingheater 320 is configured for selectively heating one ora plurality of resonators, but in any case it is configured for interacting notuniformly with the totality of the resonators in the optical filter 250 . For example, the heater 320 maybe placed in proximity (on the side or on top) of a single resonator 254 soas to interact with this one single resonator more strongly than with theremaining resonators. In this way a differential temperature is generated whichallows differential tuning of the resonators.
[0057] The optical components described inthe present description, such as the optical waveguides 230 ,256 and the microrings 252 ,254 , 255 ofFIG. 2 and FIG. 3 , may be fabricated by any fabricationprocess known in the field of integrated optics, e.g. a layering process on asubstrate, such as an SOI wafer having a thickness of the buried oxide in therange of 3-10 microns and a thickness of the top silicon in the range of50-1000 nm. The layering process may include the e-beam lithography and etchingsteps. A SiO2 layer could be deposited as a top cladding.」
「当審訳:[0056] 図3は、光フィルタ250の別の構成を示す。明確にするために、アクチュエータは熱光学アクチュエータ(マイクロヒータ)を想定しているが、本発明の構成は、他の調整技術に等しく適用される。同調器310は、光フィルタ250内に含まれる全ての共振器252、254、255を実質的に均一に加熱するように構成されている。さらに、1つまたは複数の共振器を選択的に加熱するように構成されているトリミング用ヒータ320が、任意の場合には、光学フィルタ250の共振器全体と均一に相互作用はしないように構成されている。例えば、ヒーター320は、単一の共振器254の近傍(側上面側)に配置することができ、残りの共振器よりも強力にこの単一の共振器に作用する。このようにして、共振器の差動調整を可能にする温度差が発生される。
[0057] 本明細書において説明された光学構成要素、光導波路230、256、および図2と図3のマイクロリング252、254、255のような集積光学の分野、例えば基板上への層形成方法は、公知の任意の製造プロセス、3-10ミクロンの範囲の埋め込み酸化物の厚さを有するSOIウェーハ厚50-1000nmの範囲のトップシリコンによって製造することができる。レイヤリング法は、電子ビームリソグラフィおよびエッチングのステップを含むことができる。SiO2層を、最上部クラッドとして堆積させることができる。」
「[0093] FIG. 7A shows a possible embodiment of the tuningtechnique in accordance to the present invention. The reference sign 700 A refers to three possible alternativetrajectories (dotted, solid and dashed curves) of the resonance of interest ofone of the two resonators and the reference sign 710 A refers to three possible alternativetrajectories of the resonance of interest of the other of the two resonators.In particular, dotted lines show an exemplary variant of the trajectorypattern. Independently from the symbol used (respectively dotted, solid anddashed), any combination obtained by a choice of one out of the threecurves 700 A and one out of the threecurves 710 A is suitable to theinvention. A choice in accordance with the same symbol (respectively dotted,solid and dashed) gives an exemplary maximum resonance separation (duringmassive tuning) equal to 1.5 times the channel spacing. Curves 720 A and730 A (dot-dashed) show further possible alternative paths of theresonance curves wherein the massive filter tuning step 1030may be considered absent. The main difference with respect to the methoddescribed with reference to FIG. 4 is that now during the step 1020of filter disabling and the step1040 of filter enabling, one of thetwo resonators is tuned so that the respective relevant resonance moves in thefrequency spectrum staying on opposite sides with respect to, respectively, theinitial frequency and the final one. As a consequence, any hit before themaximum resonance separation is reached (e.g. any hit during the enabling andthe disabling steps) can be avoided, as long as the maximum resonance distancedoes not exceed the value of twice the channel frequency spacing. In FIG. 7Athe hits occur solely during massive tuning step, in a total number ofsix in correspondence to the dotted and solid curves, which increases up toeight hits (hitting also channel 1 and 7) choosing both the dashed curves. Moreover, in case the maximum separationdoes exceed the double of the frequency spacing, the present solution allowsavoiding any hit in correspondence to a resonance separation less than twicethe frequency spacing. Due to the point symmetrical configuration of thepatterns shown in FIG. 7A , the overallpower hit of the entire procedure is not affected by the choice of which one ofthe two rings (the one coupled closest to the input-to-thru waveguide or theother) corresponds to curve 700 Aor 710 A. In particular, the resonatorwhose resonance of interest overshoots during disabling of the filter isdifferent from the resonator whose resonance of interest overshoots duringenabling of the filter.」
「当審訳:[0093] 図7Aは、本発明による同調方法の可能な実施形態を示している。参照符号700Aは、2個の共振器のうちの一方の共振の3つの可能な別の軌跡(点線、実線および破線曲線)を意味し、符号710Aは、他方の共振の3つの可能な代替的な軌道を意味する。具体的には、点線は軌跡パターンの例示的な変形例を示している。独立したシンボルとして使用され(それぞれ破線、実線及び破線)、3つの曲線700Aの1つと、3つ曲線710Aの1つから選択によって得られる任意の組み合わせが本発明に適している。同じシンボル(それぞれ破線、実線及び点線)に応じて選択され、チャンネル間隔の1.5倍までの典型的な最大共振分離(マッシブチューニング中)を与える。曲線720A及び730A(一点鎖線)は、共振曲線のさらに可能な代替経路を示す。ここでフィルタチューニング1030は存在しないと考えることができる。図4を参照して説明した方法との主な差は、フィルタ無効化1020とフィルタ有効化1040は、2個の共振器のうちの1つが周波数スペクトルにおいて、それぞれ、初期周波数と最終周波数を基準にして反対側に移動するように調整されることである。その結果、共振の分離が最大となる前のヒット(例えばイネーブル及びディスエーブルのステップの間のいずれのヒット)を回避することができる、最大共振分離距離はチャネル周波数間隔の2倍の値を超えない限り行われる。図7(A)において、ヒットはマッシブチューニングステップの間にのみ生じ、図中の実線および点線に対応してヒットの総数は6であり、破線の曲線を選択するとヒットの総数は8(チャネル1および7もヒットする)まで増加する。また、最大共振分離距離が、周波数間隔の2倍を超えている場合には、本解決法は、周波数間隔の2倍未満の共鳴に対応したヒットを避けることが可能となる。図7(A)に示すパターンの点対称的な構成のために、手順全体における全体的なパワー・ヒットは、2個のリングのいずれか(入力-スルー導波路に最も近い結合またはそれ以外)が曲線700Aまたは710Aに対応するように選択されても影響されない。具体的には、フィルタのディスエーブル時にオーバーシュートした共振器は、フィルタのエネーブルの間にオーバーシュートした共振器とは異なる。」
イ
図3、図7Aは、以下のとおりである。
ウ
図7Aにおいて、「参照符号700Aの実線は、2個の共振器のうちの一方の共振の軌跡を意味し、参照符号710Aの実線は他方の共振の軌跡を意味([0093])」するものであるから、図7Aから下記の点が読み取れる。
「フィルタ無効化1020」において、2個の光共振器252,254は、当初は同じ周波数であり、時間と共に、2個の光共振器のうちの一方の共振周波数は上昇し、他方の共振周波数は下降し、離調状態となる。
「フィルタチューニング1030」において、2個の光共振器は、共に離調状態を保ったまま、周波数が上昇する。
「フィルタ有効化1040」において、光共振器252,254は当初の離調状態から、2個の光共振器のうちの一方の共振周波数は下降し、他方の共振周波数は上昇し、離調状態は解消され同じ周波数となる。
(2)
上記(1)において図3に記載の例は図2に記載の例の別の構成であるから、図3において、共振器252,254,255、及び、第1の光路は図2に記載の例を参照し、図3に記載の例をまとめると、引用文献1には以下の発明が記載されている。
(引用発明)
「第1の光路230と、光共振器252、254と、第2の光路256とを備えた光学フィルタ250であって、
光共振器252、254は、例えば、マイクロリングであり、([0046])
第1の光共振器252は第1の光路230に隣接して光学的に結合され、共振器254は光共振器252に直列に接続され、([0046])
光学フィルタ250は、同調可能な光フィルタであり、すなわち、ろ過されるべき任意のチャンネルを選択し、([0052])
同調器310は、光フィルタ250内に含まれる全ての共振器252、254を実質的に均一に加熱し、([0056])
さらに、1つの共振器を選択的に加熱するように構成されているトリミング用ヒータ320が、光学フィルタ250の共振器全体と均一に相互作用はしないように、単一の共振器254の近傍(側上面側)に配置され、([0056])
「フィルタ無効化1020」と「フィルタ有効化1040」は、2個の共振器のうちの1つが周波数スペクトルにおいて、それぞれ、初期周波数と最終周波数を基準にして反対側に移動するように調整されることを含み、([0093])
「フィルタ無効化1020」において、2個の光共振器252,254は、当初は同じ周波数であり、時間と共に、2個の共振器のうちの一方の共振周波数は上昇し、他方の共振周波数は下降し、離調状態となり、
「フィルタチューニング1030」において、2個の光共振器は、共に離調状態を保ったまま、周波数が上昇し、
「フィルタ有効化1040」において、光共振器252,254は当初の離調状態から、2個の光共振器のうちの一方の共振周波数は下降し、他方の共振周波数は上昇し、離調状態は解消され同じ周波数となる(上記(1)ウ)
光学フィルタ。
」(以下「引用発明」という。)
6 対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
(1)
ア
本願補正発明の「直列に接続された第1のマイクロリング及び第2のマイクロリングを含む双マイクロリング共振器であって、前記第1のマイクロリング及び前記第2のマイクロリングがシリコンに基づくマイクロリング導波路であり、それぞれが1つの環状PN接合を含み、前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合の方向が、前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合の方向と同じである、双マイクロリング共振器と、」との特定事項について検討する。
イ
引用発明における光共振器252、254は、マイクロリングであるから、本願補正発明の「第1のマイクロリング及び第2のマイクロリング」に相当する。
また、引用発明において「共振器254は光共振器252に直列に接続され」ており、「光共振器252、光共振器254」は本願補正発明における双マイクロリング共振器である。
ウ
しかしながら、第1のマイクロリング及び前記第2のマイクロリングが「シリコンに基づく」マイクロリング導波路であることは、引用発明には特定されていない。
また、第1のマイクロリング及び前記第2のマイクロリングの「それぞれが1つの環状PN接合を含み、前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合の方向が、前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合の方向と同じである」ことは引用発明には特定されていない。
(2)
本願補正発明の「電気チューニングモジュールであって、前記電気チューニングモジュールの第1の電気ポートが、前記第1のマイクロリングのP領域及び前記第2のマイクロリングのN領域に接続され、前記電気チューニングモジュールの第2の電気ポートが、前記第1のマイクロリングのN領域及び前記第2のマイクロリングのP領域に接続され、前記電気チューニングモジュールが、前記第1のマイクロリングの環状PN接合に第1のバイアス電圧を印加し、前記第2のマイクロリングの環状PN接合に、前記第1のバイアス電圧とは逆方向の第2のバイアス電圧を印加するように構成された、電気チューニングモジュールと、」との特定事項について検討すると、引用発明はこのような構成を備えていない。
(3)
ア
本願補正発明の「前記双マイクロリング共振器の動作温度を調整するように構成され、前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合と平面視で重なるように配置された、閉じた環状の温度調整デバイスを含む、熱チューニングモジュールと、」との特定事項について検討する。
イ
引用発明の「同調器310」は、本願補正発明の熱チューニングモジュールと、「前記双マイクロリング共振器の動作温度を調整するように構成され」る点で一致する。
ウ
しかしながら、引用発明には「同調器310」が「前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合と平面視で重なるように配置された、閉じた環状」であることは特定されていない。
(4)
ア
本願補正発明の「前記第1のマイクロリングの屈折率及び前記第2のマイクロリングの屈折率が逆方向に変化し、前記双マイクロリング共振器が離調状態になるように、前記電気チューニングモジュールが、前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合に、前記第1及び第2のバイアス電圧をそれぞれ印加するように構成され、」との特定事項について検討する。
イ
引用発明における「フィルタ無効化1020」において、光共振器252、254の共振周波数は、同一の周波数から逆方向に変化し、離調状態となっている。
ウ
しかしながら、引用発明には共振周波数を変化させ離調状態とするにあたり、「前記電気チューニングモジュールが、前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合に、前記第1及び第2のバイアス電圧をそれぞれ印加」することで、第1のマイクロリング及び第2のマイクロリングの「屈折率」を変化させることは特定されていない
(5)
ア
本願補正発明の「前記熱チューニングモジュールが、前記電気チューニングモジュールによって前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合に、前記第1及び第2のバイアス電圧をそれぞれ印加した後に、前記双マイクロリング共振器の共振波長を変更するために、前記双マイクロリング共振器の動作温度を調整するように構成され」との特定事項について検討する。
イ
引用発明の「フィルタチューニング1030」は「フィルタ無効化1020」の後のステップである。
そして、「フィルタチューニング1030」において、光共振器252、254は離調状態を保ったまま、共に共振周波数が上昇しているから、「光フィルタ250内に含まれる全ての共振器252、254を実質的に均一に加熱」する「同調器310」により動作温度を調整しているものである。
そうすると、引用発明は「同調器310が、フィルタ無効化1020において光共振器252、254を離調状態とした後に、光共振器252、254の共振波長を変更するために、光共振器252、254の動作温度を調整する」構成を備えている。
ウ
しかしながら、上記(4)と同様に、引用発明には「フィルタ無効化1020において光共振器252、254を離調状態とする」ことが「電気チューニングモジュールによって前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合に、前記第1及び第2のバイアス電圧をそれぞれ印加」することによって行うことは特定されていない。
(6)
ア
本願補正発明の「前記双マイクロリング共振器が変化した共振波長において共振状態となるように、前記電気チューニングモジュールがさらに、前記熱チューニングモジュールによって前記双マイクロリング共振器の動作温度を調整した後に、前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合に前記第1及び第2のバイアス電圧を印加するのを停止するように構成された」との特定事項について検討する。
イ
引用発明の「フィルタ有効化1040」は「フィルタチューニング1030」の後のステップであり、引用発明の「フィルタ有効化1040」において光共振器252、254は、離調状態から、いずれも同じ周波数で共振状態となるように共振周波数が変化している。
したがって、引用発明は「光共振器252、254が変化した共振波長において共振状態となるように構成」することを含む。
ウ
しかしながら、引用発明は「光共振器252、254が変化した共振波長において共振状態となるように構成」することが「前記電気チューニングモジュールが、前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合に前記第1及び第2のバイアス電圧を印加するのを停止する」ことで得られることは特定されていない。
(7)
以上をまとめると、本願補正発明と引用発明は、以下の(一致点)で一致し、(相違点1)ないし(相違点3)で相違する。
(一致点)
「直列に接続された第1のマイクロリング及び第2のマイクロリングを含む双マイクロリング共振器と、
前記双マイクロリング共振器の動作温度を調整するように構成された熱チューニングモジュールと、を含み、
前記第1のマイクロリング及び前記第2のマイクロリングの共振周波数を逆方向に変化し、前記双マイクロリング共振器が離調状態になるように構成され、
前記熱チューニングモジュールが、第1のマイクロリング及び第2のマイクロリングの共振周波数を逆方向に変化した後に、双マイクロリング共振器の共振波長を変更するために、双マイクロリング共振器の動作温度を調整するように構成され、
熱チューニングモジュールによって双マイクロリング共振器の動作温度を調整した後に、双マイクロリング共振器が変化した共振波長において共振状態となるように構成された、
波長選択スイッチ。
(相違点1)
本願補正発明は、双マイクロリング共振器を構成する第1のマイクロリング及び第2のマイクロリングが「シリコンに基づく」マイクロリング導波路であることが特定されているのに対し、引用発明はこのような特定がされていない点。
(相違点2)
本願補正発明は、第1のマイクロリング及び前記第2のマイクロリングの「それぞれが1つの環状PN接合を含み、前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合の方向が、前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合の方向と同じ」であり「前記第1のマイクロリングの環状PN接合に第1のバイアス電圧を印加し、前記第2のマイクロリングの環状PN接合に、前記第1のバイアス電圧とは逆方向の第2のバイアス電圧を印加するように構成され」ており、双マイクロリング共振器を離調状態とする際に「前記電気チューニングモジュールが、前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合に、前記第1及び第2のバイアス電圧をそれぞれ印加」し、第1のマイクロリング及び第2のマイクロリングの「屈折率を変化させ」ることで行われており、熱チューニングモジュールによってマイクロリング共振器の動作温度を調整した後に双マイクロリング共振器が共振波長において共振状態となるように構成することが「前記電気チューニングモジュールが前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合に前記第1及び第2のバイアス電圧を印加するのを停止する」ことを含むのに対して、引用発明はこのような構成を備えていない点。
(相違点3)
本願補正発明において、熱チューニングモジュールは「前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合と平面視で重なるように配置された、閉じた環状」であるのに対して、引用発明にはこのような特定がされていない点。
7 判断
(1)相違点1
引用発明における光共振器252、254はマイクロリング共振器である([0046])ところ、マイクロリング共振器は通常、シリコンに基づいて構成されているため、相違点1は実質的ではない。
仮に、そうでないとしても、マイクロリング共振器をシリコンに基づいて構成することは周知技術であり(必要であれば、下記の周知例1[0023]、周知例2【0033】を参照のこと。)、引用発明において光共振器252,254をシリコンに基づいて構成することは、当業者にとって容易に想到し得ることである。
(2)相違点2
ア
引用発明は「同調器310は、光フィルタ250内に含まれる全ての共振器252、254を実質的に均一に加熱し、([0056])さらに、1つの共振器を選択的に加熱するように構成されているトリミング用ヒータ320が、光学フィルタ250の共振器全体と均一に相互作用はしないように、単一の共振器254の近傍(側上面側)に配置され、([0056])」るものであり、光共振器252、254の共振周波数の変化は「同調器310」及び「トリミング用ヒータ320」で行っているところ、引用文献1の[0052]には「光学フィルタ250は、同調可能な光フィルタであり、すなわち、ろ過されるべき任意のチャンネルを選択することが多い。この機能は、当技術分野で公知の任意の技術、例えば熱光学、電気光学、磁気光学、音響光学、弾性光学的効果を利用することなどにより、ストレスやMEMS作動によって達成することができる。」、[0056]には「明確にするために、アクチュエータは熱光学アクチュエータ(マイクロヒータ)を想定しているが、本発明の構成は、他の調整技術に等しく適用される。」と記載されているから、光共振器252、254の共振周波数を変化させる手段として「電気光学」技術を採用してもよいことが記載されている。
イ
そして、PN接合を有するマイクロリング共振器において、2つのマイクロリング共振器に、同じ方向のPN接合を有し、PN接合に逆方向のバイアス電圧を印加することで、2つのマイクロリング共振器の共振周波数を、互いに逆方向に変化させることは、周知例1及び2に開示されているように、周知技術であり、この周知技術は上記アで説示した「電気光学」技術という意味で共通するものである。
(ア)
周知例1:米国特許出願公開第2011/0058765号明細書
a
周知例1には以下の記載がされている。
「[0023] FIG. 1A shows the structure of a dual-ring modulatorin accordance with one or more embodiment of the claimed invention. The shadedregions 102 , 104 ,106 , and 108 represent silicon optical waveguides, whichmay sit on top of a thin silicon slab on a silicon-on-insulator (SOI) wafer.For example, the silicon slab may be 30 to 50 nm thick.」
「当審訳:図1Aは、本発明の1つ以上の実施形態による、二重リング変調器の構成を示す図である。影付き領域102、104、106、108は、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウェハ上の薄いシリコン・スラブの上に位置するシリコン光導波路である。例えば、シリコンスラブは厚さ30~50nmであってもよい。」
[0024] The dual-ring modulator includes afirst ring waveguide 102 and a second ring waveguide 104disposed near linear optical waveguides106 and 108 . Inside the first ring waveguide 102 isa region of the thin silicon slab that is highly doped to be p-type 110 . Similarly, the second ringwaveguide 112 has a region of the thin silicon slab that ishighly doped to be p-type 112 is located inside the second ringwaveguide 104 . A first n-type dopedregion 114 of the silicon slab is located between thefirst 102 and second104 ring waveguides. Asecond 116 and third118 highly doped n-type region ofthe silicon slab are located outside the first102 and second 104ring waveguides, respectively. Also, a third 120and fourth 122 highly doped n-type regions of the siliconslab may be located outside the first106 and second 108 linearwaveguides, respectively. A cross-section126 of the area of the ringwaveguide structure in accordance with one or more embodiments of the claimedinvention is shown in FIG. 1B .
「当審訳:二重リング変調器は直線光導波路106、108の近くに配置された第1のリング導波路102および第2導波路104を含む。第1のリング導波路102は、内部にp型に高濃度にドープされた薄いシリコン・スラブの領域110を有している。同様に、第2のリング導波管104の内部に位置するp型に高濃度にドープされた薄いシリコン・スラブの領域112を有している。シリコンスラブの第1のn型不純物領域114は、第102および第2の104のリング導波路との間に配置されている。シリコンスラブの第2及び第3の高濃度にドープされたn型領域116、118は、それぞれリング導波路102および104の外側に配置される。また、第3および第4の高濃度にドープされたn型領域は、それぞれ第1および第2の線形導波路106および108の外側に配置してもよい。本発明の1つ以上の実施形態による、リング導波路構造の領域の断面126は、図1Bに示されている。」
[0026] In addition, while FIGS. 1A-1Bshow various shapes of the doped regions, the invention is not limitedto shape of the doped regions as shown in the corresponding figures; rather,the shape of the doped regions may be any shape sufficient to ensure that theinside and outside of the microring waveguides are doped with different types.In one or more embodiments of the invention most or all of the area outside andsurrounding the microring waveguide is doped.
「当審訳:また、図1A~1Bは、種々の形状のドープされた領域を示し、対応する図に示されるように、本発明は、ドープされた領域の形状に限定されるものではなく、むしろ、ドープされた領域の形状は、マイクロ導波管の内側と外側とは異なる型でドープされていることを確実にするために十分な任意の形状であってもよい。本発明の1つ以上の実施形態では、マイクロリング導波路の外側と取り囲む領域の大部分がドープされている。」
[0027] Further, in one or more embodimentsof the invention, the n-type regions 114, 116 ,118 , 120 , and 122outside the microring waveguides102 and 104may be interconnected or continuous. For example, the n-type region 116may be connected to one or both of the n-type regions 120and 122 . Similarly, the n-typeregion 118 may be connected to one or both of the n-typeregions 120 and122 . Also, in one or more embodiments of the invention, the n-typeregion 114 may be connected to one or both of the n-typeregions 120 and122 . In such cases, the linear waveguides 106 ,108 may overlap with one or moreof the doped regions. Further, the linear waveguides 106 ,108 may overlap with one or moreof the doped regions even in embodiments in which the n-type regions 114 ,116 , 118 , 120 , and122 are not interconnected orcontinuous.
「当審訳:さらに、本発明の1つ以上の実施形態において、マイクロリング導波路102、104の外側のn型領域114、116、118、120、および122は、相互接続又は連続していてもよい。例えば、n型領域116は、n型領域120および122の両方に接続されてもよい。同様に、n型領域118は、n型領域120および122の両方に接続されてもよい。また、本発明の1つ以上の実施形態において、n型領域114は、n型領域120および122の両方に接続されてもよい。このような場合において、直線導波路106、108は、1つまたは複数のドーピング領域と重なり合っていてもよい。また、直線導波路106、108は、n型領域114、116、118、120、および122は、相互接続された又は連続していない実施形態においても、1つまたは複数のドーピング領域と重なり合っていてもよい。」
[0030] Under steady state, if the appliedvoltage VA is positive, D1 is forward biased and D2 is reverse biased. The mainpath of electrical current goes though D1 and the lower resistor RS. As such,free carriers (electron-hole pairs) may accumulate inside the microringwaveguide corresponding to D1, and blue-shift, or shift to a lower wavelengththe resonant wavelength of that microring due to the free-carrier dispersioneffect. The amount of electron-hole pairs inside D1 depends on the forwardcurrent through D1 as
N1=i1・τ/q
「当審訳:定常状態では、印加電圧VAが正である場合、D1は順方向バイアスされ、D2が逆バイアスされている。電流の主な経路は、D1と抵抗RSを通じて進行する。このように、自由キャリア(電子正孔対)は、D1に対応するマイクロ導波路の内部に滞留して、自由キャリア分散効果によって、マイクロリングの共振波長をブルーシフト又はより低い波長にシフトすることができる。D1内部の電子・正孔対の量は、次のようにD1を介して順方向電流に依存する。」
N1=i1・τ/q
[0033] Given the symmetry of the circuit, when the applied voltage VA switches from positive to negative, the circuit switches to an opposite state in which the carriers are depleted in the reverse-biased diode D1 and accumulated in the forward-biased diode D2. In other words, the carriers may switch from the first ring waveguide 102 to the second ring waveguide 104 shown in FIG. 1A . The switching process may be very fast because all that is needed is for the carriers originally accumulated in diode D1 to move to diode D2 through the low-resistance (RC) path between them. When a new steady state is established, the amount of carriers in diode D2 is the same as that originally in diode D1. As the carriers move from D1 to D2, the resonant wavelengths of the first and second coupled microrings may shift in opposite directions, causing an ON/OFF optical modulation in a specific wavelength range. In contrast, a single-ring waveguide modulator, where the same carrier movement only causes the resonance of the single ring to shift, may result in a much smaller optical bandwidth with the same power consumption. An example of the carrier movement is demonstrated further with regard to FIGS. 3A-3C . Because the modulation operation may be accomplished by carriers simply swinging back and forth between the first and second microring waveguides, as opposed to a single microring waveguide where the carriers are injected externally, the modulation speed may be very fast. The speed of the carries is discussed with regard to FIGS. 3A-3C .
「当審訳:回路の対称性を考えると、印加電圧VAが正から負に切り換わったとき、回路は、逆方向バイアスされたダイオードD1のキャリアは減少し、順方向バイアスされたダイオードD2に蓄積される逆の状態に切り替える。換言すれば、キャリアは、図1Aのように、第1のリング導波路102を、第2のリング導波路104とすることができる。この切り替え処理は、ダイオードD1に蓄積されたキャリアが低抵抗(RC)部を介してダイオードD2に移動するために非常に速くすることができる。新しい定常状態において、ダイオードD2におけるキャリアの量はダイオードD1に元々あった量と同じである。キャリアがD1からD2に移動すると、第1及び第2のマイクロリングの共振波長は逆方向にシフトし、特定の波長域においてON/OFF変調を引き起こす。対照的に、同じキャリアの移動はがただ一つのマイクロリングのみの共鳴をシフトさせる場合、単一のリング導波路変調器は、同じ消費電力でより小さな光学帯域幅をもたらすことができる。キャリア移動の例は、図3A-図3Cに関連してさらに説明される。変調動作は、第1および第2のマイクロリング導波路との間を前後に揺動するキャリアにより達成できるため、キャリアは、外部から注入される場合、単一のマイクロリング導波路とは対照的に、変調速度を非常に速くすることができる。キャリアの速度は、図3A-図3Cに関連して説明する。」
b
図1Aおよび図1Bは以下のとおりである。
(イ)
周知例2:特開2008-268276号公報
a
周知例2には以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信、光情報処理及び光インターコネクション等に用いられる電気信号を光波信号に変換する光変調器、光源装置及び前記光変調器の駆動方法に関するものである。」
「【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細を説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の光変調器を含む光源装置の構成の概略を示す模式図である。また、図2は、図1におけるA1-A2線における模式的な断面図である。
【0030】
N型シリコン層4とその上部に形成されたシリコン酸化膜2からなるSOI(Silicon on insulator)基板上部の同一平面上に直線光導波路22と、第1のリング型光導波路26及び第2のリング型光導波路28とが形成されている。直線光導波路22と、第1のリング型光導波路26及び第2のリング型光導波路28とは互いに近接するように配置されている。このように互いに近接して配置された直線光導波路22と第1のリング型光導波路26は第1の光共振器35を構成し、また、直線光導波路22と第2のリング型光導波路26は第2の光共振器36を構成している。これら2つの縦列接続された第1の光共振器35と第2の光共振器36とによって共振部37を構成している。
【0031】
第1の光共振器35と第2の光共振器36とは、互いに共振波長が異なるものとなるようにするため、導波路の全長が互いに異なる。また、第1の光共振器35と第2の光共振器36とは、互いに共振波長が異なるものとなるようにするため、電圧が印加されていない状態において屈折率が互いに異なるものを用いてもよい。なお、第1の光共振器35と第2の光共振器36との共振波長の周期は、波長多重伝送のチャンネル間隔に一致させるようにしてもよい。そして、これら第1の光共振器35と第2の光共振器36とは、縦列接続された構成となっている。
【0032】
第1のリング型光導波路26及び第2のリング型光導波路28の円周内部には、電圧印加のための陽極電極9がそれぞれ形成されている。各陽極電極9には陽極パッド電極20、21が接続された状態で配置されている。一方、第1のリング型光導波路26及び第2のリング型光導波路28の円周外部には陰極電極(グランド電極)11が形成されている。また、第1のリング型光導波路26及び第2のリング型光導波路28の上部には、ヒータ8が配置されている。ヒータ8は、第1のリング型光導波路26及び第2のリング型光導波路28を加熱することで互いの共振波長が異なるようにするためのものである。」
「【0049】
図4は、電圧印加に伴う2つのリング型共振器のパワー透過スペクトルの変化を示したグラフである。
【0050】
図4(a)は、陽極パッド電極20、21と陰極電極9との間に一定電圧を印加した状態における、第1の光共振器35のパワー透過率スペクトル40と、第2の光共振器36のパワー透過率スペクトル41と、これら2つの共振器35、36による合成されたパワー透過率42を示している。図4(b)は、図4(a)の状態から陽極パッド電極20、21に印加する電圧を同期させて互いに逆向きに変化させた場合のパワー透過率の変化を示している。また、図4(c)も陽極パッド電極20、21に印加する電圧を同期させて互いに逆向きに変化させた場合のパワー透過率の変化を示しているが、図4(b)の状態からさらに印加電圧を高めた状態を示している。
【0051】
電圧印加に伴い、第1の光共振器35のパワー透過率スペクトルは高波長側へと順次シフトし(符号40→符号44→符号47)、第2の光共振器36のパワー透過率スペクトルは、低波長側へと順次シフトしている(符号41→符号43→符号46)。そして、これらの合成されたパワー透過率スペクトルは、高波長側及び低波長側のいずれにもシフトすることなく、凹形状から凸形状に変化することになる(符号42→符号45→符号48)。」
b
図1,2および図4は以下のとおりである。
ウ
(ア)
引用発明において、「トリミング用ヒータ320」は「1つの共振器を選択的に加熱するように構成されているが、光学フィルタ250の共振器全体と均一に相互作用はしないように、単一の共振器254の近傍(側上面側)に配置」し、「共振器の差動調整」([0056])を行っているから、「2つのマイクロリング共振器の共振周波数を、互いに逆方向に変化させること」は「トリミング用ヒータ320」で行われている。
そして、上記イのとおり「PN接合を有するマイクロリング共振器において、2つのマイクロリング共振器に、同じ方向のPN接合を有し、PN接合に逆方向のバイアス電圧を印加することで、2つのマイクロリング共振器の共振周波数を、互いに逆方向に変化させること」が周知技術であるから、引用発明において、「電気光学」による共振周波数の変更手段を採用する際に、「トリミング用ヒータ320」に「電気光学」による共振周波数の変更手段を採用することは、当業者にとって容易に想到し得ることである。
(イ)
その際、得られるPN接合の形状は、光共振器の形状と一致するはずであるから、当然に環状となるし、屈折率も「電気光学」技術を用いる以上、当然に変化するものである。
(ウ)
また、引用発明に上記周知技術を採用したならば、周知技術のとおり、2つのマイクロリング共振器のPN接合の方向は、同じ方向であるし、印加するバイアス電圧は、互いに逆方向となるものである。そうすると、引用発明の「フィルタ無効化1020」において、光共振器252,254のPN接合に互いに逆方向のバイアス電圧を印加することで、離調状態とすることは、当業者にとって容易に想到し得ることである。
エ
(ア)相違点2に係る「前記電気チューニングモジュールが前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合に前記第1及び第2のバイアス電圧を印加するのを停止する」構成が、引用発明の「フィルタ有効化1040」においても同様の構成となるのか、検討する。
(イ)上記ウ(ウ)のとおり、引用発明の「フィルタ無効化1020」において、光共振器252,254のPN接合に対して逆方向のバイアス電圧を印加することにより「光共振器252、254を離調状態」としたならば、「フィルタ有効化1040」では離調状態を解消するために、「フィルタ無効化1020」において「光共振器252、254を離調状態」としたことの逆のこと、すなわち、印加したバイアス電圧を停止することを行うことは、当然に行われることである。
オ
上記アないしエのとおりであるから、引用発明において上記周知技術を採用し、相違点2に係る構成を得ることは、当業者にとって容易に想到し得ることである。
(3)相違点3
引用発明は、光共振器252,254の共振周波数の変更を、同調器310を用いて光共振器252,254の温度を変更することで行っており([0056])、光共振器252,254の共振周波数が変化することは、光共振器の中でもリング状の光導波路部分の温度が変化することに基づいているのは明らかである。
そうすると、光共振器252,254を効率よく加熱又は冷却するために、リング状の光導波路に倣って重なるように同調器を配置し、必要の無い部分については同調器を省略することは、当業者にとって容易に想到し得ることである。
そして、この場合、省略されずに残る同調器の形状は、リング状の光導波路と同じ形状であるから、閉じた環状である。
そうすると、引用発明において相違点3に係る構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得ることである。
8 請求人の主張について
(1)
請求人は、審判請求書の「〔4〕本願発明が特許されるべき理由(2)進歩性 」において、「本願発明の解決手段とは対照的に、引用文献1は、個々の共振器それぞれに熱的に結合されうる(例えば、マイクロリングの上方またはSiO2上部クラッディングの上に配置されるなどの)マイクロヒーターを開示しているのみです。引用文献1によって提供されるマイクロヒーターは、本願発明の温度調整デバイスに対応するものではありません。」、また、令和1年12月4日に提出した上申書の「3.進歩性欠如の拒絶理由について」において「引用文献1に開示されたマイクロヒーターは、本願請求項1に記載の温度調整デバイスと同じものではなく、上述の技術的効果を奏しません。」と主張している。
ここで、上記「マイクロヒーター」は引用文献1の図2及び[0055]に示されるマイクロヒータ251、253を示していると認められる。
しかしながら、上記第2の5及び6で示したとおり、本願補正発明における「温度調整デバイス」は引用発明における「同調器310」と対比されるべきである。
(2)
本件の審判請求書の「〔4〕本願発明が特許されるべき理由(2)進歩性 」において、「引用文献1は、互いに直列に接続された複数の共振器を含む光学フィルター250のみを開示しており、この光学フィルター250は、熱-光学または電気-光学を使用して、フィルターされる任意の光学チャンネルを選択するものです。引用文献1は、双マイクロリング共振器で電気チューニング及び熱チューニングを協働して実施することにより、ヒットレス波長選択を実行する方法について開示も、いかなるヒントの提示もしていません。」とも主張しているが、これは上記7(2)で検討したとおり、引用文献1の記載事項及び周知技術により当業者にとって容易に想到し得るものである。
(3)
したがって、請求人の主張は採用できない。
9 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明と周知技術とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年12月18日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「直列に接続された第1のマイクロリング及び第2のマイクロリングを含む双マイクロリング共振器であって、前記第1のマイクロリング及び前記第2のマイクロリングがシリコンに基づくマイクロリング導波路であり、それぞれが1つの環状PN接合を含み、前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合の方向が、前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合の方向と同じである、双マイクロリング共振器と、
電気チューニングモジュールであって、前記電気チューニングモジュールの第1の電気ポートが、前記第1のマイクロリングのP領域及び前記第2のマイクロリングのN領域に接続され、前記電気チューニングモジュールの第2の電気ポートが、前記第1のマイクロリングのN領域及び前記第2のマイクロリングのP領域に接続され、前記電気チューニングモジュールが、前記第1のマイクロリングの環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの環状PN接合に逆方向にバイアス電圧を印加するように構成された、電気チューニングモジュールと、
前記双マイクロリング共振器の動作温度を調整するように構成された熱チューニングモジュールと、を含み、
前記第1のマイクロリングの屈折率及び前記第2のマイクロリングの屈折率が逆方向に変化し、前記双マイクロリング共振器が離調状態になるように、前記電気チューニングモジュールが、前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合に逆方向のバイアス電圧を印加するように構成され、
前記熱チューニングモジュールが、前記電気チューニングモジュールによって前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合に逆方向のバイアス電圧を印加した後に、前記双マイクロリング共振器の共振波長を変更するために、前記双マイクロリング共振器の動作温度を調整するように構成され、
前記双マイクロリング共振器が変化した共振波長において共振状態となるように、前記電気チューニングモジュールがさらに、前記熱チューニングモジュールによって前記双マイクロリング共振器の動作温度を調整した後に、前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合に逆方向のバイアス電圧を印加するのを停止するように構成された、波長選択スイッチ。」
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
3 引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、前記第2の5に記載したとおりである。
4 対比・判断
(1)本願発明は、前記第2の5ないし7で検討した本願補正発明から、「熱チューニングモジュール」の構造について、「前記第1のマイクロリングの前記環状PN接合及び前記第2のマイクロリングの前記環状PN接合と平面視で重なるように配置された、閉じた環状の温度調整デバイスを含む」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに減縮する補正事項を含む本願補正発明が、上記第2の5ないし7に示したとおり、引用発明と周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明と周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-007442