特許異議申立
2018-700831
密閉容器入り具材含有液状調味料
- 審判番号
- 2018-700831
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-015626
- 登録番号
- 特許第6309121号(P6309121)
- 請求日
- 2018年10月11日
- 審決日
- 2019年10月10日
- 公報発行日
- 2020年01月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社Mizkan Holdings
- 【権利者代理人】平木 祐輔
- 【権利者代理人】藤田 節
- 【権利者代理人】深見 伸子
- 【権利者】株式会社Mizkan
- 【権利者代理人】平木 祐輔
- 【権利者代理人】藤田 節
- 【権利者代理人】深見 伸子
- 【異議申立人】番場 大円
- 審判長/審判官
- 審判長 紀本 孝
- 審判官 山崎 勝司
- 審判官 莊司 英史
- 分類
- P1651.121-YAA(A23L) / P1651.536-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L) / P1651.55 -YAA(A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第29条、特許法第113条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6309121号発明「密閉容器入り具材含有液状調味料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6309121号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7、11〕、〔8-9〕、、10について訂正することを認める。
特許第6309121号の請求項1、3~11に係る特許を維持する。
特許第6309121号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6309121号(以下「本件特許」という。)の手続の経緯は、以下のとおりである。
平成29年 1月31日 出願
平成30年 3月23日 設定登録
同年 4月11日 特許掲載公報発行
同年10月11日 特許異議の申立て(請求項1~11に対し)
同年12月 4日 取消理由通知
平成31年 2月 8日 意見書、訂正請求書
同年 3月22日 意見書(申立人)
同年 4月17日 取消理由通知(決定の予告)
令和 元年 6月19日 意見書、訂正請求書
同年 8月 5日 意見書(申立人)
同年 8月27日 上申書(特許権者)
なお、令和元年6月19日の訂正請求書により訂正請求がされたため、特許法120条の5第7項の規定により、平成31年2月8日の訂正請求書による訂正請求は、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正について
1 訂正の内容
令和元年6月19日付け訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許第6309121号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~11について訂正することを求めるものであり、具体的な訂正事項は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1) 訂正事項1
訂正前の請求項1の「野菜具材」を、「乾燥野菜具材」に訂正する。
(2) 訂正事項2
訂正前の請求項1の「60~100℃で20~120分」を、「85~100℃で20~60分」に訂正する。
(3) 訂正事項3
訂正前の請求項2を削除する。
(4) 訂正事項4
訂正前の請求項3の「請求項2」を、「請求項1」に訂正する。
(5) 訂正事項5
訂正前の請求項4の「請求項1~3」を、「請求項1、3」に訂正する。
(6) 訂正事項6
訂正前の請求項5の「請求項1~4」を、「請求項1、3、4」に訂正する。
(7) 訂正事項7
訂正前の請求項6の「請求項1~5」を、「請求項1、3~5」に訂正する。
(8) 訂正事項8
訂正前の請求項7の「請求項1~6」を、「請求項1、3~6」に訂正する。
(9) 訂正事項9
訂正前の請求項11の「請求項1~7」を、「請求項1、3~7」に訂正する。
(10) 訂正事項10
訂正前の請求項8の「野菜具材」を、「乾燥野菜具材」に訂正する。
(11) 訂正事項11
訂正前の請求項8の「60~100℃で20~120分」を、「85~100℃で20~60分」に訂正する。
(12) 訂正事項12
訂正前の請求項10の「野菜具材」を、「乾燥野菜具材」に訂正する。
(13) 訂正事項13
訂正前の請求項10の「60~100℃で20~120分」を、「85~100℃で20~60分」に訂正する。
2 訂正の適否
(1) 訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明では、野菜具材の状態について特定されていないところ、当該野菜具材を「乾燥野菜具材」と限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、請求項1を直接又は間接に引用する請求項3~7、11についても、同様に特許請求の範囲を減縮するものである。
そして、本件明細書に、「本発明に用いる具材は、生具材、塩蔵した具材、乾燥具材等が使用できるが、水分を含み、嵩が高いと密閉容器に充填しづらいため、乾燥具材が好ましい。具材が冷凍具材であると、液状調味料中での原料由来の風味が弱くなる。尚、乾燥具材とその他の具材を併用することでも良い。」(【0012】)と記載されているから、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2) 訂正事項2は、訂正前の請求項1に係る発明では、具材含有液状調味料の加熱処理の時間について、「60~100℃で20~120分」と特定されているところ、「85~100℃で20~60分」とさらにその範囲を狭めるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、請求項1を直接又は間接に引用する請求項3~7、11についても、同様に特許請求の範囲を減縮するものである。
そして、本件明細書に、「高温加熱処理機により蒸気で加熱を開始し、60℃から85℃まで10分間昇温した後、85℃で50分間加熱処理した。」(【0052】)と記載され、60℃から85℃まで10分間昇温した後、85℃で50分間加熱処理の合計60分間加熱処理した実施例1~5(【0061】表1の実施例1~5)、同じく実施例6~9(【0068】表2の実施例6~9)、同じく実施例10~12(【0075】表3の実施例10~12)が記載され、「実施例13~16は、高温加熱処理機により蒸気で加熱を開始し、60℃から下記表4に示す温度まで10分間で昇温した後、一定温度で表4に示す時間、加熱処理を行った(定温加熱処理)。実施例17は、高温加熱処理機により蒸気で加熱を開始し、60℃から90℃まで20分間で昇温した後、加熱を止めた(昇温加熱処理)。」(【0078】)と記載され、60℃から85℃まで10分間昇温した後、85℃で50分間加熱処理の合計60分間加熱処理した実施例15(【0081】表4の実施例15)、60℃から100℃まで10分間昇温した後、100℃で50分間加熱処理の合計60分間加熱処理した実施例16(【0081】表4の実施例16)が記載されているから、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3) 訂正事項3は、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(4) 訂正事項4は、訂正事項3による請求項2の削除に伴い、引用する請求項の番号を訂正するものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、訂正事項4が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(5) 訂正事項5~9は、訂正事項3による請求項2の削除に伴い、引用する請求項の番号を訂正するものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、訂正事項5~9が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(6) 訂正事項10は、訂正前の請求項8に係る発明では、野菜具材の状態について特定されていないところ、当該野菜具材を「乾燥野菜具材」と限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、請求項8を引用する請求項9についても、同様に特許請求の範囲を減縮するものである。
そして、訂正事項10が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは、上記(1)と同様である。
(7) 訂正事項11は、訂正前の請求項8に係る発明では、具材含有液状調味料の加熱処理の時間について、「60~100℃で20~120分」と特定されているところ、「85~100℃で20~60分」とさらにその範囲を狭めるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、請求項8を引用する請求項9についても、同様に特許請求の範囲を減縮するものである。
そして、訂正事項11が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは、上記(2)と同様である。
(8) 訂正事項12は、訂正前の請求項10に係る発明では、野菜具材の状態について特定されていないところ、当該野菜具材を「乾燥野菜具材」と限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項12が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは、上記(1)と同様である。
(9) 訂正事項13は、訂正前の請求項10に係る発明では、具材含有液状調味料の加熱処理の時間について、「60~100℃で20~120分」と特定されているところ、「85~100℃で20~60分」とさらにその範囲を狭めるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項13が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは、上記(2)と同様である。
(10) そして、訂正事項1~9は、一群の請求項1~7、11に対してなされ、訂正事項10、11は、一群の請求項8、9に対してなされたものである。
(11) したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~7、11〕、〔8、9〕、10について訂正を認める。
第3 本件発明
本件特許の請求項1、3~11に係る発明(以下、各発明を「本件発明1」、「本件発明3」~「本件発明11」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、上記訂正された特許請求の範囲の請求項1、3~11に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
【請求項1】
乾燥野菜具材(冷凍具材を除く)と食酢を含有する密閉容器入り具材含有液状調味料であって、該具材の調味液中で膨潤後の形状が矩形で、該矩形の長辺が10~60mmであり、該具材の含有量が湿重量で調味料全体の20~80質量%であり、該具材含有液状調味料は該密閉容器中で85~100℃で20~60分間撹拌することなく加熱処理されたものであり、pHが2~5である密閉容器入り具材含有液状調味料。
【請求項3】
前記乾燥野菜が、タマネギ、キャベツ、白菜、ニンジン、ネギ、セロリ、パプリカから選ばれる一種以上の乾燥野菜である、請求項1に記載の密閉容器入り具材含有液状調味料。
【請求項4】
γ-アミノ酪酸を調味液中に80~300ppm含有することを特徴とする、請求項1、3のいずれか1項に記載の密閉容器入り具材含有液状調味料。
【請求項5】
水分活性が0.955未満であることを特徴とする、請求項1、3、4のいずれか1項に記載の密閉容器入り具材含有液状調味料。
【請求項6】
食塩若しくは食塩を含有する食品をさらに含有する、請求項1、3~5のいずれか1項に記載の密閉容器入り具材含有液状調味料。
【請求項7】
密閉容器が、広口型容器である、請求項1、3~6のいずれか1項に記載の密閉容器入り具材含有液状調味料。
【請求項8】
以下の工程:
(a)調味液中で膨潤後の形状が矩形であって、該矩形の長辺が10~60mmである乾燥野菜具材(冷凍具材を除く)を、湿重量で調味料全体の20~80質量%含有するように密閉可能な容器に投入した後、食酢を含む調味液を添加し、容器を密閉する工程;
(b)前記具材と調味液を密閉容器中で85~100℃で20~60分間撹拌することなく加熱処理する工程;及び
(c)加熱処理後、常温になるまで放置又は冷却する工程;
を含む、pHが2~5である密閉容器入り具材含有液状調味料の製造方法。
【請求項9】
前記具材含有液状調味料が、γ-アミノ酪酸を調味液中に80~300ppm含有することを特徴とする、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
調味液中で膨潤後の形状が矩形であって、該矩形の長辺が10~60mmである乾燥野菜具材(冷凍具材を除く)を、湿重量で調味料全体の20~80質量%含有するように密閉可能な容器に投入した後、食酢を含む調味液を添加し、容器を密閉する工程と、前記具材と調味液を密閉容器中で85~100℃で20~60分間撹拌することなく加熱処理する工程を行うことを特徴とする、pHが2~5である具材含有液状調味料における具材の風味及び食べ応えを向上させる方法。
【請求項11】
請求項1、3~7のいずれか1項に記載の密閉容器入り具材含有液状調味料を、加熱調理食品の材料の加熱調理時に添加する、または、該材料の加熱調理後にかけて使用することを特徴とする、加熱調理食品の調理方法。
第4 取消理由の概要
請求項1~11に係る特許に対して、特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は次のとおりである。
理由1 本件特許の請求項1~11に係る発明は、発明の詳細な説明において課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えたものであるため、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。
理由2 本件特許の請求項1~11に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
記
<引用文献>
引用文献1:特開平4-262759号公報(特許異議申立人が提出した甲第1号証)
引用文献2:特開2000-60476号公報(同じく甲第4号証)
引用文献3:特開2015-50969号公報(同じく甲第6号証)
引用文献4:特開2007-209295号公報(同じく甲第8号証)
引用文献5:特開平1-181764号公報(同じく甲第9号証)
引用文献6:特開2012-170353号公報(同じく甲第7号証)
第5 取消理由についての判断
1 (理由1)特許法36条6項1号(サポート要件)について
(1) 特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、上記の観点に立って、検討する。
(2) 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。
「【0007】
本発明は、具材のサイズが大きくても、製造工程で具材にダメージを与えることなく具材の食感を良好に保ち、具材をたっぷり含有することにより液状調味料に具材の風味を高めることで、調味料全体の風味が優れた具材含有液状調味料を提供することを課題とする。」
「【0008】
・・・本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、原料として用いる具材及び調味液、具材を調味液に加えた後の処理について種々検討したところ、具材の大きさ及びその含有量を特定の範囲に調整し、密閉容器中で具材と調味液を特定条件で加熱処理することによって、具材にダメージを与えず具材本来の風味と食感が十分に感じられるとともに、緩慢な加熱処理によって具材由来の良好な風味が調味液にも増し、液状調味料全体が極めて良好な風味となることを見出し、本発明を完成するに至った。・・・」(当審注:「・・・」は省略を意味する。以下同様である。)
「【0045】
本発明の液状調味料中の調味液のpHは、食感維持の点から、2~5であるのが好ましく、2.5~4.5がより好ましく、3~4がさらに好ましい。pHが2未満の場合は、保存中に良好な食感を保つことが困難であり、pHが5を超える場合は過度の加熱殺菌が必要となるために良好な食感を保つことが困難となる。」
「【0047】
本発明の容器入り具材含有液状調味料は、具材を密閉可能な上記容器に投入した後、調味液を添加し、容器を密閉する工程と、具材と調味液を充填した密閉容器を加熱処理する工程と、加熱処理後、常温になるまで放置又は冷却する工程を含む方法により製造できる。上記加熱処理は、具材と調味液を充填し密閉した容器を、熱風、熱水、熱水シャワー、又は蒸気等の存在下に置くことにより行う。加熱処理は、昇温加熱処理、又は定温加熱処理により行うことが出来る。昇温加熱処理とは、特定の温度に達するまで温度を上昇させ、達温した時点で、加熱を終了する方法を意味し、定温加熱処理とは、ある一定の温度まで加熱した後、一定の温度で保持する加熱処理方法を意味する。加熱温度は、加熱環境下の温度で、60~100℃が好ましく、65~95℃がより好ましく、70~95℃がさらに好ましい。加熱処理の時間は、昇温加熱処理の場合、60℃から一定温度まで達する時間を意味し、定温加熱処理の場合、60℃から一定温度まで達する時間及び一定温度で保つ時間の合計の時間を意味する。前記加熱時間は、温度により適宜調整すればよいが、20~120分が好ましく、20~100分がより好ましく、30~90分がさらに好ましい。上記加熱時間の内、定温加熱処理の場合、一定温度で保つ時間が5~110分であることが好ましく、5~90分であることがより好ましく、10~80分であることがさらにより好ましい。」
「【0050】
(試験例1) 具材のサイズの検討
(1)試験品の調製(実施例1~5、及び比較例1~2)
タマネギの外皮をとり、すりおろし、又は、1mm角、4mm角、7mm角、短辺が5mmで長辺が各々15mm、40mm、60mmにカットした。続いて、すりおろし、又は各カットタマネギを熱風乾燥し、具材を調製した。
【0051】
液糖23質量%、濃口醤油(食塩分18%)23質量%、醸造酢(酸度15%)20質量%、水あめ8質量%、赤ワイン8質量%を水に混合し、調味液を調製した。
【0052】
上記の各具材を、液状調味料全量に対して調味液中で膨潤後の具材の含有量(湿重量)が表1に示す含有量となるように、広口カップに充填した後、調味液を投入し、アルミ製のシートでシールした。高温加熱処理機により蒸気で加熱を開始し、60℃から85℃まで10分間昇温した後、85℃で50分間加熱処理した。その後、冷水中で室温まで冷却し、試験品の密閉容器入り具材含有液状調味料を得た。」
「【0055】
(官能評価方法)
フライパンを予備加熱し、サラダ油を薄くひいた後、薄切り豚肉約240gを中火で焼き色が付くまで加熱した。続いて、試験品の広口カップ中の具材含有調味料240gを加え、中火で5分加熱しながら肉に十分からめた。
【0056】
調理後、訓練された官能検査員5名にて、下記の評価基準により官能評価を行った。各評価項目(料理全体の風味、具材由来の風味、具材の食べごたえ)毎の評価点の算出方法は、5名の評価を加重平均し、小数点2位以下を四捨五入して点数とした。総合評価とは、各評価項目の評価点を加重平均し、5点評価の中間点である3点を合格点(効果あり)とし、3点よりも高い3.5点以上を良好な効果があるものとし、4点以上がより良好な効果があるものとした。
【0057】
<料理全体の風味>
5:非常に良好
4:良好
3:やや良い
2:やや悪い
1:悪い
【0058】
<タマネギ由来の風味>
5:とてもよく感じられる
4:よく感じられる
3:感じられる
2:あまり感じられない
1:ほとんど感じられない
【0059】
<具材の食べごたえ>
5:非常に良好
4:良好
3:やや良い
2:やや悪い
1:悪い
【0060】
(3)評価結果
各試験品の調味液中で膨潤後の具材サイズ(mm)、膨潤後の具材含有量(質量%)、水分活性、γ-アミノ酪酸(GABA)含有量(ppm)、及び官能評価結果を下記表1に示す。
【0061】
【表1】
」
「【0064】
(試験例2)具材の含有量の検討
(1)試験品の調製(実施例6~9、比較例3~4)
タマネギの外皮をとり、長辺が15mm、短辺が5mmにカットした。次に、カットしたタマネギを熱風乾燥し、具材を調製した。
【0065】
上記具材を、液状調味料全量に対して調味液中で膨潤後の具材の含有量(湿重量)が下記表2に示す含有量となるように広口カップに充填した以外は、試験例1と同様の方法にて、試験品の密閉容器入り具材含有液状調味料を得た。
【0066】
(2)評価方法
(1)で調製した試験品について、試験例1と同様の方法で評価した。
【0067】
(3)評価結果
各試験品の調味液中で膨潤後の具材含有量(質量%)、水分活性、γ-アミノ酪酸(GABA)含有量(ppm)、及び官能評価結果を下記表2に示す。
【0068】
【表2】
」
「【0071】
(試験例3)具材の種類の検討
(1)試験品の調製(実施例10~12、比較例5)
タマネギ、ニンジン、キャベツを長辺が20mm、短辺が5mmにカットした。続いて、各カット具材を熱風乾燥した。上記カットタマネギの一部は乾燥せずに、生のまま使用するか、-20℃で一晩冷凍した後使用した。
【0072】
上記具材を、液状調味料全量に対する調味液中で膨潤後の具材の含有量(湿重量)が、下記表3に示す含有量となるように広口カップに充填した以外は、試験例1と同様の方法にて、試験品の密閉容器入り具材含有液状調味料を得た。
【0073】
(2)評価方法
(1)で調製した試験品について、試験例1と同様の方法で評価した。
【0074】
(3)評価結果
各試験品の具材の種類、調味液中で膨潤後の具材含有量(質量%)、水分活性、γ-アミノ酪酸(GABA)含有量(ppm)、及び官能評価の結果を下記表3に示す。
【0075】
【表3】
」
「【0077】
(試験例4)加熱温度及び時間の検討
(1)試験品の調製(実施例13~17、及び比較例6)
タマネギの外皮をとり、長辺が20mm、短辺が5mmにカットした。カットしたタマネギを熱風乾燥した。
【0078】
上記具材を、調味液中で膨潤後の含有量が液状調味料全体の58質量%となるように広口カップに充填した後、調味液を投入し、アルミ製のシートでシールした。次に、実施例13~16は、高温加熱処理機により蒸気で加熱を開始し、60℃から下記表4に示す温度まで10分間で昇温した後、一定温度で表4に示す時間、加熱処理を行った(定温加熱処理)。実施例17は、高温加熱処理機により蒸気で加熱を開始し、60℃から90℃まで20分間で昇温した後、加熱を止めた(昇温加熱処理)。各加熱処理の後、それぞれ冷水中で室温まで冷却し、試験品の密閉容器入り具材含有液状調味料を得た。
【0079】
(2)評価方法
(1)で調製した試験品をそのまま用いて下記基準にて液状調味料の評価を行った。また、同試験品について、試験例1と同様の方法で調理に用いて料理の評価を行った。
<液状調味料全体の風味>
5:非常に良好
4:良好
3:やや良い
2:やや悪い
1:悪い
<タマネギ由来の風味>
5:とてもよく感じられる
4:よく感じられる
3:感じられる
2:あまり感じられない
1:ほとんど感じられない
<具材の食べごたえ>
5:非常に良好
4:良好
3:やや良い
2:やや悪い
1:悪い
【0080】
(3)評価結果
各試験品の加熱温度、加熱時間、水分活性、γ-アミノ酪酸(GABA)含有量(ppm)、及び官能評価の結果を表4に記載した。
【0081】
【表4】
」
(3) 上記(2)の各記載事項によると、本件発明が解決しようとする課題は、「具材のサイズが大きくても、製造工程で具材にダメージを与えることなく具材の食感を良好に保ち、具材をたっぷり含有することにより液状調味料に具材の風味を高めることで、調味料全体の風味が優れた具材含有液状調味料を提供すること」(以下「本件課題」という。)であるから、本件発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討する。
(4) 本件明細書の発明の詳細な説明には、「高温加熱処理機により蒸気で加熱を開始し、60℃から85℃まで10分間昇温した後、85℃で50分間加熱処理した。」(【0052】)、「実施例13~16は、高温加熱処理機により蒸気で加熱を開始し、60℃から下記表4に示す温度まで10分間で昇温した後、一定温度で表4に示す時間、加熱処理を行った(定温加熱処理)。実施例17は、高温加熱処理機により蒸気で加熱を開始し、60℃から90℃まで20分間で昇温した後、加熱を止めた(昇温加熱処理)。」(【0078】)と記載されている。具体的な実施例の加熱の条件は以下のとおりである。なお、温度は、「加熱温度は、加熱環境下の温度」(【0047】)とされていることから、加熱環境の温度と認められる。
ア 60℃から85℃まで10分間で昇温した後、85℃で50分間加熱処理の合計60分間加熱処理した実施例1~5(【0052】、【0061】表1)
イ 同じく実施例6~9(【0068】表2)
ウ 同じく実施例10~12(【0075】表3)
エ 60℃から65℃まで10分間で昇温した後、65℃で50分間加熱処理の合計60分間加熱処理した実施例13(【0078】、【0081】表4)
オ 60℃から75℃まで10分間で昇温した後、75℃で50分間加熱処理の合計60分間加熱処理した実施例14(【0081】表4)
カ 60℃から85℃まで10分間で昇温した後、85℃で50分間加熱処理の合計60分間加熱処理した実施例15(【0081】表4)
キ 60℃から100℃まで10分間で昇温した後、100℃で50分間加熱処理の合計60分間加熱処理した実施例16(【0081】表4)
ク 高温加熱処理機により蒸気で加熱を開始し、60℃から90℃まで20分間で昇温した後、加熱を止めた実施例17(【0078】、【0081】表4)
また、上記ア~クのいずれも各評価項目で、3点以上(合格)の評価を得ているものである。
(5) そこで、加えられる加熱処理として、本件発明の下限となる条件(85℃で20分)で、上記本件課題を解決できるか否かについて、まず検討する。
60℃から90℃まで20分間で昇温した実施例17は、20分の加熱中の平均温度は75℃であり、85℃を超える時間は4分に満たないから、本件発明の下限となる条件(85℃で20分)よりも緩やかな加熱処理条件といえるにも関わらず、いずれの官能評価も合格点に達しており、本件課題を解決できている。よって、本件発明の下限となる85℃で20分の加熱処理条件であっても、本件課題を解決できると推認できる。
次に、加えられる加熱処理として、本件発明の上限となる条件(100℃で60分)で、上記本件課題を解決できるかについて、検討する。
60℃から100℃まで10分間で昇温した後、100℃で50分間加熱処理した実施例16は、いずれの官能評価も合格点に達しており、本件課題を解決できている。これに対し、本件発明の上限となる100℃で60分の加熱処理条件は、上記実施例16よりは、やや厳しい条件ではあるものの、大きく異なるという程のものではない。そして、当該実施例16の総合評価の値が3.7であって、合格点の3.0から余裕があることも踏まえると、本件発明の上限となる100℃で60分の加熱処理条件であっても、本件課題を解決できると推認できる。
(6) そうすると、上記の各実施例のものから、「該具材含有液状調味料は該密閉容器中で85~100℃で20~60分間撹拌することなく加熱処理されたもの」のすべての範囲において、上記本件課題を解決し得ると認められる。
(7) 以上のとおり、本件発明は、上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。
よって、本件発明に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものとはいえない。
2 (理由2)特許法29条2項(進歩性)について
(1) 引用文献に記載された事項及び発明
ア 引用文献1
(ア) 引用文献1に記載された事項
「【請求項1】 500~2300cpのドレッシング50重量部に対して、5~10mm×5~30mmの大きさを最大とする面を少なくとも一つは有する具材が、20~60重量部の割合で含有されていることを特徴とする具材入り水中油滴型ドレッシング。」
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、具材を含む水中油滴型ドレッシングに関するものであり、更に詳しくは、豪華なイメージを有するサラダ等を手軽につくることができ、且つ加熱殺菌後、或るいは保存中における乳化安定性、及び具材の分散安定性に優れた具材入り水中油滴型ドレッシングに関する。」
「【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、野菜、ドレッシング及び具材をいっしょに味わうことができ、該具材の存在を野菜等の上で充分に感じることができる豪華なイメージを有するサラダ等を手軽につくることができ、且つ加熱殺菌後、或るいは保存中における乳化安定性、及び具材の分散安定性に優れた具材入り水中油滴型ドレッシングの提供を目的とする。」
「【0007】
【課題を解決するための手段】通常、ドレッシングの粘度は30000cp未満の範囲内にあるが、本発明は、特定の大きさの具材を特定量含むドレッシングの加熱殺菌後、或るいは保存中において、該ドレッシングの粘度が、500cp~2300cpの範囲に在るときに、はじめて、上記目的をすべて達成することができるという知見に基づいて完成されたものである。
【0008】その要旨は、500~2300cpのドレッシング50重量部に対して、5~10mm×5~30mmの大きさを最大とする面を少なくとも一つは有する具材が、20~60重量部の割合で含有されていることを特徴とする具材入り水中油滴型ドレッシングである。」
「【0013】上記した具材は、5~10mm×5~30mmの大きさを最大とする面を少なくとも一つは有する大きさになるように処理を施したものを使用する。」
「【0015】又、上記した大きさを有する具材は、具材全体の80重量%以上、好ましくは90重量%以上になるようにする。
【0016】具材を上記した大きさに処理するに当たっては、ダイサー、スライサー、くし刃カッター等を使用すればよい。
【0017】上記した特定の大きさの面を有する具材は、ドレッシング50重量部に対して、20~60重量部、好ましくは30~50重量部の割合で含有される。」
「【0024】
【実施例1】水40重量部に、キサンタンガム0.2重量部、卵黄1重量部、食塩2重量部、生クリーム10重量部、グルタミン酸ナトリウム1重量部、レモン汁2重量部、上白糖1重量部、食酢5重量部、こしょう0.1重量部を加えて均一に混合し、次いでこれに、なたね油20重量部を加えて、ホモミキサーで約1分間撹拌後、ホモジナイザーで150kg/cm2の条件で均質化し粘度1800cp、500nmの吸光度24の水中油滴型ドレッシングを製造した。次に、上記ドレッシング5重量部と、ダイスカット処理したタマネギ0.5重量部、ニンジン0.5重量部、ホール状のコーン1重量部、フレーク状のツナ1重量部(5~10mm×5~30mmの大きさを最大とする面を少なくとも一つは有する具材は、具材全体の84重量%であった)を、透明なパウチ(材質:ナイロン/ポリプロピレン)に充填した後密封し、これに90°C、10分間の殺菌処理を施し、具材を含む水中油滴型ドレッシングAを得た。このようにして得られた具材を含む水中油滴型ドレッシングAの粘度は1600cpであった。」
「【0031】
【発明の効果】本発明の具材を含むドレッシングは、ドレッシングを野菜等にかけた後において、具材の存在を野菜等の上で充分に感じることができ、野菜等の上に程よく残留した野菜と具材を一緒に味わうことができる豪華なイメージを有するサラダ等を手軽につくることができ、且つ加熱殺菌後、或るいは保存後における乳化安定性、及び具材の分散安定性に優れている。」
(イ) 引用文献1に記載された発明
引用文献1には、段落【0024】の【実施例1】に着目すると、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「水40重量部に、キサンタンガム0.2重量部、卵黄1重量部、食塩2重量部、生クリーム10重量部、グルタミン酸ナトリウム1重量部、レモン汁2重量部、上白糖1重量部、食酢5重量部、こしょう0.1重量部を加えて均一に混合し、なたね油20重量部を加えて、ホモミキサーで約1分間撹拌後、ホモジナイザーで150kg/cm2の条件で均質化し粘度1800cp、500nmの吸光度24の水中油滴型ドレッシングを製造し、上記ドレッシング5重量部と、ダイスカット処理したタマネギ0.5重量部、ニンジン0.5重量部、ホール状のコーン1重量部、フレーク状のツナ1重量部(5~10mm×5~30mmの大きさを最大とする面を少なくとも一つは有する具材は、具材全体の84重量%であった)を、透明なパウチ(材質:ナイロン/ポリプロピレン)に充填した後密封し、これに90°C、10分間の殺菌処理を施し、具材を含む水中油滴型ドレッシングA。」
また、以下の方法の発明(以下「引用発明2」という。)も認識することができる。
「水40重量部に、キサンタンガム0.2重量部、卵黄1重量部、食塩2重量部、生クリーム10重量部、グルタミン酸ナトリウム1重量部、レモン汁2重量部、上白糖1重量部、食酢5重量部、こしょう0.1重量部を加えて均一に混合し、なたね油20重量部を加えて、ホモミキサーで約1分間撹拌後、ホモジナイザーで150kg/cm2の条件で均質化し粘度1800cp、500nmの吸光度24の水中油滴型ドレッシングを製造し、上記ドレッシング5重量部と、ダイスカット処理したタマネギ0.5重量部、ニンジン0.5重量部、ホール状のコーン1重量部、フレーク状のツナ1重量部(5~10mm×5~30mmの大きさを最大とする面を少なくとも一つは有する具材は、具材全体の84重量%であった)を、透明なパウチ(材質:ナイロン/ポリプロピレン)に充填した後密封し、これに90°C、10分間の殺菌処理を施し、具材を含む水中油滴型ドレッシングAとする製造方法。」
イ 引用文献2に記載された事項
「【0012】本発明のきのこ含有ソースを容器に封入する場合、任意の容器を選定することができるが、保存性向上のために密閉系容器が好ましい。例えば、ガラス瓶、缶、プラスティックチューブ、ペットボトル、プラスティックフィルム袋、アルミ袋等をあげることができる。殺菌処理は、加熱殺菌処理、加熱加圧殺菌処理、高圧殺菌処理等、任意の方法で行うことができるが、本発明のきのこ含有ソースの水分活性値(Aw)は低く抑えられているので、100℃以下の加熱殺菌が最も好ましく、あるいは殺菌処理を施さなくてよい場合もある。本発明のきのこ含有ソースを密閉容器中に封入する場合は、水分活性領域から考えられる繁殖可能細菌として黄色ブドウ球菌が特にあげられるので、この細菌を対象にした殺菌を行えば、真菌も完全に死滅させることができる。したがって、100℃以下の殺菌であって黄色ブドウ球菌が死滅する殺菌条件を設定するのが好ましく、たとえば、60℃の殺菌であれば、30~60分間の加熱で目的とする殺菌効果を得ることができる。上記条件より過酷な殺菌条件でも目的とするきのこ含有ソースを得ることはできるが、殺菌条件が過酷になるほど特にきのこの風味がより失われてしまうので好ましくない。」(下線は当審で参考のため付与したものである。以下同様である。)
「【0015】
【実施例】以下、具体的な実施例を示して本発明の効果を明らかにする。以下の説明において、部は重量部である。
(実施例1)下記表1に示した組成で、各原料を撹拌機で混合し、ソースを調製した。すなわち、非乾燥きのこ類として、マッシュルームおよびエリンギを沸騰水中で3分間ゆで、冷却後に1辺が5mm程度の大きさにカットしたものを用い、乾燥きのこ類として、粉砕用ミルを用いて粉砕後JIS標準篩32メッシュ(目開き0.5mm)の篩を用いて得た粒度0.5mm以下の乾燥ポルチーニパウダーを用いた。非乾燥きのこ類と乾燥きのこ類との含有量の比は約4.2:1とした。その他の成分の組成は表1に示す通りとし、水分活性値(Aw)は0.86に調整した。得られたソース30gをアルミ製パウチ袋に詰め密封後、これを80 ℃のお湯に10分間入れ、良くもんで殺菌した。このソースを35℃で1週間保存した後、下記の要領で風味評価、食感評価、および総合評価を行なった。評価結果を表1に示す。本実施例では風味、食感、総合評価のいずれも良好であった。また1週間保存した試料を開封し、腐敗の有無を外観、臭いで評価したところ、腐敗は認められなかった。」
ウ 引用文献3に記載された事項
「【請求項1】
水中に水性の増粘剤及び具材を含み、具材を除く液部のアミノ態窒素含有量が0.1質量%以下である、調味料に混合するための具材入り液状混合物。
【請求項2】
具材の含有量が30質量%以上70質量%以下である、請求項1に記載の具材入り液状混合物。
【請求項3】
具材の粒径が1.18mm以上5.6mm未満である、請求項1又は2に記載の具材入り液状混合物。
【請求項4】
アミノ酸系調味料を含まない、請求項1から3のいずれかに記載の具材入り液状混合物。
【請求項5】
液部の糖度が50質量%以下である、及び/又は
液部の油分含量が0.5質量%以下である、請求項1から4のいずれかに記載の具材入り液状混合物。
【請求項6】
水性の増粘剤がキサンタンガムである、請求項1から5のいずれかに記載の具材入り液状混合物。
【請求項7】
25℃における粘度が2000mPa・s以上8000mPa・s以下である、請求項1から6のいずれかに記載の具材入り液状混合物。
【請求項8】
具材の一部又は全てが乾燥された具材である、請求項1から7のいずれかに記載の具材入り液状混合物。
【請求項9】
具材がピクルス、タマネギ、白ネギ、及びショウガからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1から8のいずれかに記載の具材入り液状混合物。
【請求項10】
2種以上の具材を含む請求項1から9のいずれかに記載の具材入り液状混合物。
【請求項11】
具材を除く液部の塩分含量が3.0質量%以上6.0質量%以下であり、pHが3.4以上4.2以下である、請求項1から10のいずれかに記載の具材入り液状混合物。」
「【0007】
・・・
[具材]
本発明の具材入り液状混合物に用いられる具材としては、調味材等の具材として用いられる具材であれば何れであっても使用することができる。具体的には、野菜、果実、肉類、及びスパイスを挙げることができる。具材は、好ましくは1.18mm以上5.6mm未満、更に好ましくは2.0mm以上4.0mm未満の粒径のもの、あるいはこのような粒径に細断又は粉砕したものを使用することができる。なお、1.18mm以上5.6mm未満の粒径とは、前記と同様にして、所定の粘度となるように必要により希釈した具材入り液状混合物をJIS標準ふるいでふるい分けした場合に、目開き(基準寸法)5.6mmのふるいをPASSし、かつ目開き(基準寸法)1.18mmのふるいにONする具材が、具材全体の90質量%以上存在することを意味する。同様に、2.0mm以上4.0mm未満の粒径とは、目開き4.0mmのふるいをPASSし、かつ目開き2.0mmのふるいにONする具材が、具材全体の90質量%以上存在することを意味する。通常、具材はより均一な粒径のものとすることが好ましい。
具材として使用可能な野菜としては、例えば、ダイコン、タマネギ、ニンジン、ショウガ、ニンニク、ピクルス、白ネギ、シソ、セロリ、パセリ、ミツバ、ニラ、白ゴマ、及び黒ゴマを挙げることができる。果実としては、ユズ、リンゴ、及びオリーブを挙げることができる。肉類としては、ベーコン、鶏肉ミンチ、豚肉ミンチ、及び牛肉ミンチを挙げることができる。スパイスとしては、粒マスタード及びバジルを挙げることができる。これらの具材中でも、野菜である具材を使用することが好ましく、特に、ピクルス、オニオン、白ネギ、及びショウガを使用することが好ましい。また、新鮮味のある食味を有し、不均一な特有の食味を達成するために、具材は2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
本発明で用いる具材としては、生の食材を使用できることはもちろんのこと、冷凍品を解凍したものや乾燥品等を使用することもできる。なお、本発明の具材入り液状混合物においては、具材の一部又は全てが乾燥された具材であることが好ましい。乾燥された具材を用いることにより、具材が、水性の増粘剤を含む水溶液を吸収し、具材のシャキシャキとした食感を向上できる。」
「【0010】
・・・
[具材入り液状混合物の調製方法]
本発明の具材入り液状混合物の調製に当たっては、前記の具材、水性の増粘剤、水等の媒体、必要によりアミノ酸系調味料、砂糖、油脂、塩、酸味料等の各種材料等をカッターミキサー付斜軸ニーダー等の混練機に投入して混合することにより調製すればよい。上記の材料は、実質的に均一になるまで混合することが望ましい。かくして混合されて調製された具材入り液状混合物は、必要に応じて、20℃以上100℃以下に加熱し、所定の容器に充填して、容器入りの具材入り液状混合物として提供される。上記のとおり、必要に応じて加熱をすることにより常温での保存性が付与される。」
「【0013】
<実施例1>
以下の原料をニーダーで混合し、85℃まで加熱した後、樹脂製ボトルに充填して容器入りの具材入り液状混合物を製造した。
(具材)
乾燥オニオン(カットサイズ7mm) 7
ピクルス(カットサイズ5mm) 6
(液部)
食塩 5
ソルビトール 2
砂糖 23
食酢 11
キサンタンガム 0.2
水 残量
具材と液部の合計 100
※数値は質量部/100質量部を示す。」
エ 引用文献4に記載された事項
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状調味液に粒状乾燥野菜を混和して野菜粒子含有液状調味料を製造する方法において、該粒状乾燥野菜を予め水で膨潤させることなく、そのまま混和することを特徴とする野菜粒子含有液状調味料の製造方法。
【請求項2】
粒状乾燥野菜が野菜粒子含有液状調味料に対して0.5~10重量%(W/W)の範囲となるように混和する請求項1記載の野菜粒子含有液状調味料の製造方法。
【請求項3】
粒状乾燥野菜が、粒状の乾燥玉ねぎ、乾燥ニンニク、乾燥大根、乾燥ねぎから選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載の野菜粒子含有液状調味料の製造方法。
【請求項4】
液状調味液に粒状乾燥野菜を混和して野菜粒子含有液状調味料を製造する方法において、液状調味液に、粒径0.1mm~10.0mmの粒状乾燥野菜を加えて、加熱温度10℃~80℃の範囲、加熱時間が1分~120分間の範囲で加熱をしながら若しくは加熱をしないで1分~120分間攪拌混合して、粒状乾燥野菜を液状調味液全体に均一に分散させ、次に、加熱温度50℃~120℃の範囲、加熱時間が10秒~30分の範囲で加熱殺菌させ、次いで、野菜粒子を液状調味液全体に均一に分散させた状態で包装容器に充填することを特徴とする野菜粒子含有液状調味料の製造方法。」
「【0005】
本発明は、粒状乾燥野菜(例えば、粒状乾燥玉ねぎ、粒状乾燥ニンニク、粒状乾燥大根、粒状乾燥ねぎ)を原料として使用しているにもかかわらず、玉ねぎ、ニンニク、大根、ねぎなどの野菜粒子そのものの具材感、食感、及び風味が良好な野菜粒子含有液状調味料の製造方法を提供することを課題とする。」
「【0013】
次に、本発明の野菜粒子含有液状調味料の製造方法は、まず、上記の醤油、甘味糖類、酒類、食酢類、エキス類、アミノ酸系調味料類、旨み調味料、香辛料類などの食品原材料を含有した液状調味液を調製し、この液状調味液の調整と同時、若しくは液状調味液の調整後に粒状乾燥野菜を含有させ、これが液状調味液全体に均一に分散する程度に攪拌を行う。この攪拌工程は、10℃~80℃程度の温度下で行い、加熱を要する場合は、好ましくは1分から120分の短時間に、さらに好ましくは1分から30分の短時間に加熱を終了する。このとき80℃以上で30分間以上に加熱した場合は、風味が損われたり、具材の軟化や固形がくずれる現象が起こるので好ましくない。
次いで野菜粒子含有液状調味料の殺菌などの理由から、好ましくは10秒から30分の短時間に50℃~120℃程度の加熱殺菌、さらに好ましくは10秒から2分の短時間に85℃~105℃程度の加熱殺菌を行う。」
オ 引用文献5に記載された事項
「2.特許請求の範囲
固形具材のひとつとして乾燥フレーク状タマネギを使用していることを特徴とする液状調味料」
「本発明の目的は、前記したサウザンアイランドドレッシングで代表されるような、フレーク状のタマネギを固形具材に含んでおり、その場合に製品を長期間保存していても、そのタマネギのシャキシャキした食感が失われ難い新規な液状調味料を提供することである。
ここで液状調味料とは、それを収容した容器を傾けるとその内容物が流動するような調味料をいう。」(1ページ右欄)
「このタマネギの使用割合は、任意であるが一般的には食感との調和上、全重量中2~10%ぐらいの範囲が好適である。より好ましくは3~7%である。乾燥フレーク状タマネギは、乾燥したタマネギでフレーク状になったものを云う。生のタマネギをそのままあるいは軽くブランチングしてから乾燥すれば乾燥タマネギとなるが、このいずれかの段階でフレーク状に裁断すれば乾燥フレーク状タマネギとなる。フレーク状の大きさ・形状は問わないが、一般的に2~6mm大が使い易い。また乾燥の程度は、タマネギの保存のし易さから水分5%程度以下とされる。
乾燥フレーク状タマネギを使用した場合に、そのタマネギが液状調味料中にあって、その調味料を長期に保存しても軟化し難い理由については定かでない。おそらく、タマネギの乾燥工程においてタマネギの細胞壁が何らかの変性、特に水との親和性を乏しくするような変性を起し、その結果として調味液中において組織が比較的安定となっているのではないかと推察される。」(2ページ右上欄~左下欄)
「〔実施例〕
実施例1
下記の原料を水中油型に乳化混合してなる液状調味料。
配 合
コーンサラダ油 37.0(%)
リンゴ酢(酸度6%) 6.5
卵黄液 2.0
キサンタンガム 0.2
レモン果汁 2.0
食塩 1.0
砂とう 3.0
乾燥フレーク状タマネギ* 4.4 *寸法2~4mm角
清 水 残 量
合 計 100.0(%)
なお、この液状調味料は、まず乾燥フレーク状タマネギを同量のリンゴ酢・4倍量の清水・1/6倍量の食塩と共に混合しておき、この混合物(タマネギは水戻しされている)を、他の全原料を混合乳化したものに加えて混合し、次いで63℃に加熱殺菌して製造した。
実施例2
下記の原料を混合して液状調味料を製造した。
配 合
モルト酢(酸度7%) 10.0(%)
グアーガム 0.3
食塩 1.7
異性化糖 6.0
トマトケチャップ 4.0
乾燥フレーク状タマネギ 4.0
清 水 残 量
合 計 100.0(%)
なお、この液状調味料は、全体をよく混合してから67℃に加熱殺菌して製造した。」(2ページ右下欄~3ページ左上欄)
カ 引用文献6に記載された事項
「【請求項1】
乾燥野菜及び増粘剤を含んでなる調味料であって、
乾燥野菜の分量が、吸水前状態の全重量対比で6%~19%であり、
かつ調整後の具材部が全重量対比で60%~98%であることを特徴とする調味料。
【請求項2】
前記乾燥野菜の粒径が吸水前状態で2~10mm径であることを特徴とする、請求項1に記載の調味料。
【請求項3】
前記乾燥野菜の粒径が吸水前状態で4~6mm径であることを特徴とする、請求項1に記載の調味料。
【請求項4】
前記乾燥野菜が、タマネギ、ニンニク、ショウガ、大根、ニンジン、ラッキョウ、エシャロットから選択された1又は複数の野菜を乾燥させたものであることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の調味料。
【請求項5】
前記増粘剤の配合量が、全重量対比で0.5~1.0%であることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の調味料。
【請求項6】
Bx(ブリックス)が35.0~80.0°であることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれかに記載の調味料。
【請求項7】
乾燥野菜を配合した調味料の製造方法であって、糖分を含む水性原料の一部又は全部を予め撹拌混合しBx(ブリックス)を35.0~80.0°とした混和物を生成し、その後当該混和物に乾燥野菜を混合させることを特徴とする、乾燥野菜を配合した調味料の製造方法。
【請求項8】
乾燥野菜及び加工澱粉を配合した調味料の製造方法であって、糖分を含む水性原料の一部又は全部を予め撹拌混合しBx(ブリックス)を35.0~80.0°とした混和物を生成し、その後当該混和物に乾燥野菜及び加工澱粉を混合させることを特徴とする、乾燥野菜及び加工澱粉を配合した調味料の製造方法。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、調味対象の食品の上に戴置可能な物性を備えた調味料であって、野菜のシャキシャキとした食感を得ることが可能な調味料を提供することを第一の課題とする。
【0008】
なお、その手法として相対的に多量の乾燥野菜を用いるが、その混合にあたっては均一に拡散させることが通常難しく液上部に浮かんでしまうことが課題として挙げられる他、乾燥野菜が水分を吸収し膨潤することによるハンドリングの困難化が挙げられる。そこで前記調味料の製造方法として、乾燥野菜を均一に拡散させることを容易とすることを第二の課題とする。」
(2) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明1とを対比するに、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明1の「食酢」、「透明なパウチ(材質:ナイロン/ポリプロピレン)」、「水中油滴型ドレッシングA」、「具材」及び「タマネギ」・「ニンジン」・「コーン」は、それぞれ本件発明1の「食酢」、「容器」、「液状調味料」、「具材」及び「野菜」に相当する。
そして、引用発明1の「透明なパウチ(材質:ナイロン/ポリプロピレン)に充填した後密封し」たものは、本件発明1の「密閉容器」に相当し、引用発明1の食酢を混合して製造した水中油滴型ドレッシングと具材とをパウチに充填した後密封した「水中油滴型ドレッシングA」は、本件発明1の「乾燥野菜具材(冷凍具材を除く)と食酢を含有する密閉容器入り具材含有液状調味料」と、「野菜具材と食酢を含有する密閉容器入り具材含有液状調味料」との限りで一致する。
引用発明1の「水40重量部に、キサンタンガム0.2重量部、卵黄1重量部、食塩2重量部、生クリーム10重量部、グルタミン酸ナトリウム1重量部、レモン汁2重量部、上白糖1重量部、食酢5重量部、こしょう0.1重量部を加えて均一に混合し、なたね油20重量部を加えて、ホモミキサーで約1分間撹拌後、ホモジナイザーで150kg/cm2の条件で均質化し粘度1800cp、500nmの吸光度24の水中油滴型ドレッシング」は、具材を入れる前の態様において、具材の調味液といいえるものであるから、本件発明1の「調味液」に相当する。
引用発明1の「上記ドレッシング5重量部と、ダイスカット処理したタマネギ0.5重量部、ニンジン0.5重量部、ホール状のコーン1重量部、フレーク状のツナ1重量部(5~10mm×5~30mmの大きさを最大とする面を少なくとも一つは有する具材は、具材全体の84重量%であった)」と、本件発明1の「該具材の調味液中で膨潤後の形状が矩形で、該矩形の長辺が10~60mmであり、該具材の含有量が湿重量で調味料全体の20~80質量%であ」ることとは、本件発明1の「該具材」が「乾燥野菜具材(冷凍具材を除く)」であることを踏まえると、両者は「該具材が調味液中で膨潤後、所定の形状で、所定の含有量であ」るとの限りで一致する。
引用発明1の「透明なパウチ(材質:ナイロン/ポリプロピレン)に充填した後密封し、これに90°C、10分間の殺菌処理を施」すことと、本件発明1の「該密閉容器中で85~100℃で20~60分間撹拌することなく加熱処理」することとは、「該密閉容器中で85~100℃で所定の時間加熱処理」することの限りで一致する。
そうすると、本件発明1と引用発明1とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。
(一致点)
「野菜具材と食酢を含有する密閉容器入り具材含有液状調味料であって、該具材が調味液中で膨潤後、所定の形状で、所定の含有量であり、該具材含有液状調味料は該密閉容器中で85~100℃で所定の時間加熱処理された、密閉容器入り具材含有液状調味料。」
(相違点1)
野菜具材について、本件発明1は、「乾燥野菜具材(冷凍具材を除く)」と特定されているのに対して、引用発明1は、「野菜具材」といい得るものの、その態様が乾燥野菜であるのか、また冷凍具材を除いているかは不明である点。
(相違点2)
具材が調味液中で膨潤後、所定の形状で、所定の含有量であることについて、本件発明1は、「該具材の調味液中で膨潤後の形状が矩形で、該矩形の長辺が10~60mmであり、該具材の含有量が湿重量で調味料全体の20~80質量%であ」るのに対して、引用発明1は、「上記ドレッシング5重量部と、ダイスカット処理したタマネギ0.5重量部、ニンジン0.5重量部、ホール状のコーン1重量部、フレーク状のツナ1重量部(5~10mm×5~30mmの大きさを最大とする面を少なくとも一つは有する具材は、具材全体の84重量%であった)」である点。
(相違点3)
具材含有液状調味料は密閉容器中で85~100℃で所定の時間加熱処理されたことについて、本件発明1は、「該密閉容器中で85~100℃で20~60分間撹拌することなく加熱処理されたものであ」るのに対して、引用発明1は、「透明なパウチ(材質:ナイロン/ポリプロピレン)に充填した後密封し、これに90°C、10分間の殺菌処理を施し」たものである点。
(相違点4)
密閉容器入り具材含有液状調味料について、本件発明1は、「pHが2~5である」の対して、引用発明1は、「食酢」を含むものであるが、そのpHについては不明である点。
イ 判断
事案に鑑みて、相違点3について、まず検討する。
(ア) 相違点3について
引用発明1は、「透明なパウチ(材質:ナイロン/ポリプロピレン)に充填した後密封し、これに90°C、10分間の殺菌処理を施」すものであり、殺菌処理として、90℃で、10分間行えば、殺菌の目的を果たすものであるから、殺菌温度を、90℃とほぼ同程度の85℃~100℃とした場合であっても、殺菌時間として10分程度行うことにより、所期の目的を果たし得るものといえる。
そうすると、引用発明1において、殺菌温度を、85℃~100℃とした場合に、殺菌時間として、引用発明1の10分の2倍となる20分まで、殺菌時間を延長するとは通常行うとはいえないし、また、加熱自体が食材に好ましくない影響を与えることを考慮すると、引用発明1で殺菌時間を10分間から2倍の20分にすることが、当業者が適宜なし得る設計事項ということもできない。
また、引用文献2によれば、60℃の殺菌であれば、30~60分間加熱するものの、80℃では10分間の加熱殺菌をしており、85℃~100℃で20分以上加熱することを示唆するところはない。引用文献4には、50℃~120℃で、10秒~30分の範囲で加熱殺菌する旨記載されているものの、85℃以上で20分以上加熱することの記載はなく、むしろ【0013】には、80℃以上で30分以上加熱すると好ましくない旨記載されているから、やはり、85℃~100℃で20分以上加熱することを示唆するものではない。引用文献3には、20℃以上100℃以下で加熱することが記載されているが、加熱時間について開示はなく、引用文献5には、63℃、67℃で加熱殺菌することが記載されているが、加熱時間について開示はなく、引用文献6には、加熱殺菌条件についての開示はない。
したがって、引用文献2~6を参酌しても、引用発明1において、相違点3における本件発明1の加熱処理の条件「85~100℃で20~60分間」を採用することは、当業者が容易に想到し得たこととすることはできない。
(イ) したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1、引用文献2~6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
よって、本件発明1に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものとすることはできない。
(3) 本件発明3~7、11について
本件発明3~7、11は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、上記相違点3に係る本件発明1の構成をそれぞれ有するものであるから、本件発明1と同様に、引用発明1、引用文献2~6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
よって、本件発明3~7、11に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものとすることはできない。
(4) 本件発明8について
ア 対比
本件発明8と引用発明2とを対比するに、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明2の「食酢」、「透明なパウチ(材質:ナイロン/ポリプロピレン)」、「水中油滴型ドレッシングA」、「具材」及び「タマネギ」・「ニンジン」・「コーン」は、それぞれ本件発明8の「食酢」、「容器」、「液状調味料」、「具材」及び「野菜」に相当する。
そして、引用発明2の「透明なパウチ(材質:ナイロン/ポリプロピレン)に充填した後密封し」たものは、本件発明8の「密閉容器」及び「密閉可能な容器」に相当し、引用発明8の食酢を混合して製造した水中油滴型ドレッシングと具材とをパウチに充填した後密封した「水中油滴型ドレッシングA」は、本件発明8の「乾燥野菜具材(冷凍具材を除く)」を含んだ「密閉容器入り具材含有具材含有液状調味料」と、「野菜具材を含んだ密閉容器入り具材含有液状調味料」との限りで一致する。
引用発明2の「水40重量部に、キサンタンガム0.2重量部、卵黄1重量部、食塩2重量部、生クリーム10重量部、グルタミン酸ナトリウム1重量部、レモン汁2重量部、上白糖1重量部、食酢5重量部、こしょう0.1重量部を加えて均一に混合し、なたね油20重量部を加えて、ホモミキサーで約1分間撹拌後、ホモジナイザーで150kg/cm2の条件で均質化し粘度1800cp、500nmの吸光度24の水中油滴型ドレッシング」は、具材を入れる前の態様において、具材の調味液といいえるものであるから、本件発明8の「食酢を含む調味液」に相当する。
引用発明2の「上記ドレッシング5重量部と、ダイスカット処理したタマネギ0.5重量部、ニンジン0.5重量部、ホール状のコーン1重量部、フレーク状のツナ1重量部(5~10mm×5~30mmの大きさを最大とする面を少なくとも一つは有する具材は、具材全体の84重量%であった)」は、水中油滴型ドレッシング(調味液)中で膨潤することは明らかであるから、本件発明8の「(a)調味液中で膨潤後の形状が矩形であって、該矩形の長辺が10~60mmである乾燥野菜具材(冷凍具材を除く)を、湿重量で調味料全体の20~80質量%含有する」ことと、「調味液中で膨潤後、所定の形状で、湿重量で所定の含有量含有する」限りで一致する。
そして、引用発明2の「水中油滴型ドレッシング」が食酢を含んでいることから、引用発明2の「水中油滴型ドレッシング」と「具材」とを「透明なパウチ(材質:ナイロン/ポリプロピレン)に充填した後密封」する態様は、本件発明8の「密閉可能な容器に投入した後、食酢を含む調味液を添加し、容器を密閉する工程; 」に相当する。
引用発明2の「90°C、10分間の殺菌処理を施」すことと、本件発明8の「85~100℃で20~60分間撹拌することなく加熱処理する工程」とは、「85~100℃で所定の時間加熱処理する工程」との限りで一致する。
引用発明2の充填密封されたパウチが常温流通、常温保管され得るものである技術常識を踏まえると、引用発明8が殺菌処理の後、常温になるまで放置又は冷却する工程を備えることは明らかであるから、引用発明2の「90°C、10分間の殺菌処理を施し、具材を含む水中油滴型ドレッシングA」は、本件発明8の「加熱処理後、常温になるまで放置又は冷却する工程」を含むことは明らかである。
そうすると、本件発明8と引用発明2とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。
(一致点)
「以下の工程:
(a)調味液中で膨潤後、野菜具材が所定の形状で、湿重量で調味料全体の所定の含有量含有するように密閉可能な容器に投入した後、食酢を含む調味液を添加し、容器を密閉する工程;
(b)前記具材と調味液を密閉容器中で85~100℃で所定の時間加熱処理する工程;及び
(c)加熱処理後、常温になるまで放置又は冷却する工程;
を含む、密閉容器入り具材含有液状調味料の製造方法。」
(相違点5)
野菜具材について、本件発明8は、「乾燥野菜具材(冷凍具材を除く)」であると特定されているのに対して、引用発明2は、「野菜具材」といい得るものの、その態様が乾燥野菜であるのか、また冷凍具材を除いているかは不明である点。
(相違点6)
調味液中で膨潤後、所定の形状で、湿重量で所定の含有量含有する野菜具材を、密閉可能な容器に投入した後、容器を密閉する工程について、本件発明8は、「調味液中で膨潤後の形状が矩形であって、該矩形の長辺が10~60mmである乾燥野菜具材(冷凍具材を除く)を、湿重量で調味料全体の20~80質量%含有するように密閉可能な容器に投入した後、食酢を含む調味液を添加し、容器を密閉する」とされているのに対して、引用発明2は、「ドレッシング5重量部と、ダイスカット処理したタマネギ0.5重量部、ニンジン0.5重量部、ホール状のコーン1重量部、フレーク状のツナ1重量部(5~10mm×5~30mmの大きさを最大とする面を少なくとも一つは有する具材は、具材全体の84重量%であった)を、透明なパウチ(材質:ナイロン/ポリプロピレン)に充填した後密封し」である点。
(相違点7)
具材と調味液を密閉容器中で85~100℃で所定の時間加熱処理する工程について、本件発明8は、「密閉容器中で85~100℃で20~60分間撹拌することなく加熱処理されたものであ」るのに対して、引用発明2は、「透明なパウチ(材質:ナイロン/ポリプロピレン)に充填した後密封し、これに90°C、10分間の殺菌処理を施し」たものである点。
(相違点8)
密閉容器入り具材含有液状調味料について、本件発明8は、「pHが2~5である」とされているの対して、引用発明2は、「食酢」を含むものであるが、そのpHについては不明である点。
イ 判断
事案に鑑みて、相違点7について、まず検討する。
(ア) 相違点7について
上記(2)イ(ア)の「相違点3について」の判断と同様であり、引用発明2において、上記相違点7に係る本件発明8の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たとすることはできない。
(イ) したがって、引用発明2において、上記相違点7に係る本件発明8の構成を採用することについて、当業者が容易に想到し得たものとすることができないので、本件発明8は、引用発明2、引用文献2~6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
よって、本件発明8に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものとすることはできない。
(5) 本件発明9について
本件発明9は、本件発明8を引用するものであり、上記相違点7に係る本件発明8の構成を有するものであるから、本件発明8と同様に、引用発明2、引用文献2~6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
よって、本件発明9に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものとすることはできない。
(6) 本件発明10について
ア 本件発明10と引用発明2とを対比すると、上記相違点5~8に加え、以下の相違点9で、両者は相違する。
相違点9:本件発明10は、「具材の風味及び食べ応えを向上させる方法」であるのに対し、引用発明2は、その点は不明である点。
しかしながら、本件発明10は、上記相違点7において引用発明2と相違するものであるから、相違点9について検討するまでもなく、本件発明8と同様に、引用発明2、引用文献2~6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
よって、本件発明10に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものとすることはできない。
第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立書の申立理由の概要
取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立書の申立理由(以下「申立理由1」等という。)の概要は次のとおりである。
(1)申立理由1(明確性要件違反)
本件明細書には、「矩形」の定義に係る記載が存在しないため、形状が「矩形」に該当するか否か判断できないため、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であり、特許請求の範囲の記載は特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていないから、本件発明に係る特許は、特許法113条4号に該当し、取り消すべきものである。
(2)申立理由2(補正要件違反)
本願の審査過程での平成30年2月15日の手続補正は、具材の形状が「矩形」であるとの事項を導入するものであって、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないため、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、本件発明に係る特許は、特許法113条1号に該当し、取り消すべきものである。
(3)申立理由3(実施可能要件違反)
調味液について、具材の形状が「矩形」でかつその長辺が10~60mmという要件を充足する具材を峻別し、その割合について、湿重量で調味料全体の20~80質量%という要件を充足するか否かを判断することは不可能であって、第三者において過度の試行錯誤を要することなく本件発明を実施できないため、発明の詳細な説明の記載は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていないから、本件発明に係る特許は、特許法113条4号に該当し、取り消すべきものである。
(4)申立理由4(サポート要件違反)
以下のア~エの各点で、本件発明は、明細書に記載されたものであるとすることはできず、特許請求の範囲の記載は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていないから、本件発明に係る特許は、特許法113条4号に該当し、取り消すべきものである。
ア 形状が「矩形」でかつその長辺が10~60mmという要件を充足する具材を峻別し、湿重量で調味料全体の20~80質量%という要件を充足するか否かを判断することは不可能であり、実施例が本件発明の実施品であるか否か判別することは不可能である。
イ 熱処理工程以外において撹拌を行うことを排除するものではないから、「製造工程で具材にダメージを与えることなく具材の食感を良好に保ち」という課題を解決し得ない態様を含んでいることが明らかである。
ウ 平成29年12月6日の意見書において、特許権者は、製造方法の第1の特徴として、工程(a)において、容器に具材のほうを調味液より先に入れることと主張しているが、この点を本件発明は備えていない。
エ 実施例は、具材としてタマネギ、ニンジン及びキャベツを用いた構成しか存在せず、他の種類の野菜についてまで、その作用効果を拡張ないし一般化できない。
2 申立理由1~申立理由4のアについて
申立理由1~申立理由4のアは、具材の形状が「矩形」であることに関するものであるから、以下まとめて検討する。
(1) 本願の当初明細書等には、以下の事項が記載されている。
「【実施例】
【0049】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
(試験例1) 具材のサイズの検討
(1)試験品の調製(実施例1~5、及び比較例1~2)
タマネギの外皮をとり、すりおろし、又は、1mm角、4mm角、7mm角、短辺が5mmで長辺が各々15mm、40mm、60mmにカットした。続いて、すりおろし、又は各カットタマネギを熱風乾燥し、具材を調製した。」
「【0064】
(試験例2)具材の含有量の検討
(1)試験品の調製(実施例6~9、比較例3~4)
タマネギの外皮をとり、長辺が15mm、短辺が5mmにカットした。次に、カットしたタマネギを熱風乾燥し、具材を調製した。」
「【0069】
表2に示されるように、特定サイズ(長辺15mm)の野菜具材を、20~80質量%の範囲で含有する実施例6~9の液状調味料は、料理全体の風味が良好で、タマネギ由来の風味が良く、具材の食べごたえがあり、それらの総合評価としても優れていた。」
「【0071】
(試験例3)具材の種類の検討
(1)試験品の調製(実施例10~12、比較例5)
タマネギ、ニンジン、キャベツを長辺が20mm、短辺が5mmにカットした。続いて、各カット具材を熱風乾燥した。上記カットタマネギの一部は乾燥せずに、生のまま使用するか、-20℃で一晩冷凍した後使用した。」
「【0077】
(試験例4)加熱温度及び時間の検討
(1)試験品の調製(実施例13~17、及び比較例6)
タマネギの外皮をとり、長辺が20mm、短辺が5mmにカットした。カットしたタマネギを熱風乾燥した。」
「【0082】
表4に示されるように、特定サイズ(長辺20mm)の野菜具材を、特定量(58質量%)使用し、65℃~100℃の温度範囲で、50分定温加熱処理を行った実施例13~16の液状調味料は、調味液全体及び料理全体の風味が良好で、タマネギ由来の風味が良く、具材の食べごたえがあり、それらの総合評価としても極めて優れていた。また、昇温加熱処理を行った実施例17の液状調味料もまた、調味液全体及び料理全体の風味、タマネギ由来の風味、具材の食べごたえ、それらの総合評価ともに満足のいくものとなった。」
(2) 上記(1)の記載事項を総合するに、当初明細書等には、1mm角、4mm角、7mm角の概略立方体形状を有する具材や、短辺が5mmで長辺が各々15mm、40mm、60mmの面を備えた具材が記載されていると認められる。
そして、本願の平成30年2月15日の手続補正で特許請求の範囲について特定された「矩形」との用語は、当初明細書等に直接記載されていないが、「矩形」という用語が、一般に「直角四辺形。長方形。さしがた。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)を意味することを踏まえると、上記当初明細書等に記載された、1mm角、4mm角、7mm角の概略立方体形状を有する具材や、短辺が5mmで長辺が各々15mm、40mm、60mmの面を備えた具材から、矩形の面を有する具材が認識できる。よって、「該具材の調味液中で膨潤後の形状が矩形で、該矩形の長辺が10~60mmであり」と、「矩形」との用語を用いた上記補正が、新たな技術的事項を導入するものであるとはいえない。
そして、本件発明1の「該具材の調味液中で膨潤後の形状が矩形で、該矩形の長辺が10~60mmであ」るとは、長辺が10~60mmの長方形の面を備えた具材であると理解できるから、「矩形」との用語が、第三者に不測の不利益を及ぼす程に不明確であるともいえない。
さらに、上記のとおり、本件発明1は明確であるので、 調味液について、形状が「矩形」でかつその長辺が10~60mmという要件を充足する具材を峻別することができ、湿重量で調味料全体の20~80質量%という要件を充足するか否かを判断することができる。よって、当業者は、本件発明を実施することができる。
加えて、本件特許明細書の各実施例について、本件発明の実施例であることを判断できるので、本件発明は、明細書に記載されたものである。
以上のとおり、申立理由1~申立理由4のアには、理由がない。
3 申立理由4のイ、ウについて
発明の詳細な説明の記載によれば、本件発明は、撹拌の有無や具材を先に入れることで課題を解決する発明であると把握することはできない。
よって、これらが特定されていないからといって、発明の詳細な説明に記載されたものではないとすることはできない。
以上のとおり、申立理由4のイ、ウには、理由がない。
4 申立理由4のエについて
具材としてタマネギ、ニンジン及びキャベツを用いたものについて、発明の詳細な説明において、実施例10~12で総合評価が、3点以上となり、合格の評価が得られていて、代表的な根菜や葉菜の素材について合格の評価がなされていることからすると、他の乾燥野菜についても、同様に本件課題を解決できるといえる。一方、タマネギ、ニンジン及びキャベツ以外の野菜具材について、本件課題を解決できることを疑わせる証拠はない。
以上のとおり、申立理由4のエには、理由がない。
5 したがって、特許法36条6項1号、2号、4項1号、及び17条の2第3項に規定する要件を満たしていないとすることはできず、本件発明に係る特許は、特許法113条1号又は第4号に該当しない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1、3~11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、3~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項2に係る特許についての特許異議の申立ては、その対象となる請求項が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2018-700831