特許異議申立
2023-700179
容器詰め炭酸飲料
- 審判番号
- 2023-700179
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-063213
- 登録番号
- 7120741
- 請求日
- 2023年02月17日
- 審決日
- 2024年02月22日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】キリンホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人平木国際特許事務所
- 【権利者代理人】平木 祐輔
- 【権利者代理人】藤田 節
- 【権利者代理人】内藤 由美
- 【異議申立人】簑 さくら
- 審判長/審判官
- 審判長 加藤 友也
- 審判官 淺野 美奈
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.113-Y (A23L) / P1651.121-Y (A23L) / P1651.536-Y (A23L) / P1651.537-Y (A23L) / P1651.55 -Y (A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第2号、特許法第2条第3項第1号、特許法第2条第3項第3号、特許法第2条第3項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7120741号発明「容器詰め炭酸飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7120741号の請求項1ないし21に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7120741号(以下、この通知において「本件特許」という。)の請求項1ないし21に係る特許についての出願は、平成29年3月28日の出願であって、令和4年8月8日にその特許権の設定登録(請求項の数21)がされ、同年同月17日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対して、令和5年2月17日に特許異議申立人 蓑 さくら(以下、「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年6月23日付けで取消理由が通知され、同年8月28日に特許権者 キリンホールディングス株式会社(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出され、同年10月20日に刊行物等提出書が提出され、同年11月6日付けで特許異議申立人に対し審尋を行ったところ、同年同月24日に特許異議申立人より回答書が提出されたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし21に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明21」という。また、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明21」をまとめて、「本件特許発明」という場合がある。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
ティリロサイドを含有する容器詰め炭酸飲料であって、飲料中ティリロサイドの濃度が0.05~0.5μg/mlである飲料。
【請求項2】
ティリロサイドを含有する容器詰め炭酸飲料であって、飲料中ティリロサイドの濃度が0.1~0.3μg/mlである飲料。
【請求項3】
ティリロサイドがローズヒップ抽出物由来である、請求項1又は2記載の容器詰め炭酸飲料。
【請求項4】
ノンアルコール飲料である、請求項1~3のいずれか1項記載の容器詰め炭酸飲料。
【請求項5】
PETボトル入り飲料である、請求項1~4のいずれか1項記載の容器詰め炭酸飲料。
【請求項6】
ティリロサイドを含有する容器詰め炭酸飲料であって、飲料中ティリロサイドの濃度が0.05~0.5μg/mlである飲料(ただし、ガランガル、カルダモン、エルダーフラワー、マルメロ(quince)、バーチリーフ、ローズヒップ、しょうがおよびレモングラスのすべてを含むハーブエキス0.02%、梨由来果糖(fruit sugar from pears)、かりん果汁、濃厚アセロラ果汁ならびにクエン酸のすべてを含み容量500mlであるPETボトル入り炭酸飲料を除く。また、果糖、クエン酸、カノコソウ根エキス(0.08%)、クエン酸ナトリウム、ローズヒップエキス(0.03%)、ラベンダーエキスおよびイチジクサボテンの香り(fig cactus aroma)のすべてを含み容量250mlである缶入り炭酸飲料を除く。)。
【請求項7】
ティリロサイドを含有する容器詰め炭酸飲料であって、飲料中ティリロサイドの濃度が0.1~0.3μg/mlである飲料(ただし、ガランガル、カルダモン、エルダーフラワー、マルメロ、バーチリーフ、ローズヒップ、しょうがおよびレモングラスのすべてを含むハーブエキス0.02%、梨由来果糖、かりん果汁、濃厚アセロラ果汁ならびにクエン酸のすべてを含み容量500mlであるPETボトル入り炭酸飲料を除く。)。
【請求項8】
ティリロサイドを含有するPETボトル入り炭酸飲料であって、飲料中ティリロサイドの濃度が0.05~0.5μg/mlまたは0.1~0.3μg/mlである飲料(ただし、ガランガル、カルダモン、エルダーフラワー、マルメロ、バーチリーフ、ローズヒップ、しょうがおよびレモングラスのすべてを含むハーブエキス0.02%、梨由来果糖、かりん果汁、濃厚アセロラ果汁ならびにクエン酸のすべてを含み容量500mlであるPETボトル入り炭酸飲料を除く。)。
【請求項9】
ティリロサイドを飲料中濃度として0.05~0.5μg/ml含有させるものである、炭酸飲料の泡もち向上方法。
【請求項10】
ティリロサイドを飲料中濃度として0.1~0.3μg/ml含有させるものである、炭酸飲料の泡もち向上方法。
【請求項11】
ティリロサイドがローズヒップ抽出物由来である、請求項9又は10記載の方法。
【請求項12】
炭酸飲料がノンアルコール飲料である、請求項9~11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
ティリロサイドを含有する容器詰め炭酸飲料の製造方法であって、飲料中ティリロサイドの濃度を0.05~0.5μg/mlに調整する工程を含む方法。
【請求項14】
ティリロサイドを含有する容器詰め炭酸飲料の製造方法であって、飲料中ティリロサイドの濃度を0.1~0.3μg/mlに調整する工程を含む方法。
【請求項15】
ティリロサイドがローズヒップ抽出物由来である、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
容器詰め炭酸飲料がノンアルコール飲料である、請求項13~15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
容器詰め飲料がPETボトル入り飲料である、請求項13~16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
ティリロサイドを含有する容器詰め炭酸飲料(ただし、ガランガル、カルダモン、エルダーフラワー、マルメロ、バーチリーフ、ローズヒップ、しょうがおよびレモングラスのすべてを含むハーブエキス0.02%、梨由来果糖、かりん果汁、濃厚アセロラ果汁ならびにクエン酸のすべてを含み容量500mlであるPETボトル入り炭酸飲料を除く。また、果糖、クエン酸、カノコソウ根エキス(0.08%)、クエン酸ナトリウム、ローズヒップエキス(0.03%)、ラベンダーエキスおよびイチジクサボテンの香り(fig cactus aroma)のすべてを含み容量250mlである缶入り炭酸飲料を除く。)の製造方法であって、飲料中ティリロサイドの濃度を0.05~0.5μg/mlに調整する工程を含む方法。
【請求項19】
ティリロサイドを含有する容器詰め炭酸飲料(ただし、ガランガル、カルダモン、エルダーフラワー、マルメロ、バーチリーフ、ローズヒップ、しょうがおよびレモングラスのすべてを含むハーブエキス0.02%、梨由来果糖、かりん果汁、濃厚アセロラ果汁ならびにクエン酸のすべてを含み容量500mlであるPETボトル入り炭酸飲料を除く。)の製造方法であって、飲料中ティリロサイドの濃度を0.1~0.3μg/mlに調整する工程を含む方法。
【請求項20】
ティリロサイドを含有するPETボトル入り炭酸飲料(ただし、ガランガル、カルダモン、エルダーフラワー、マルメロ、バーチリーフ、ローズヒップ、しょうがおよびレモングラスのすべてを含むハーブエキス0.02%、梨由来果糖、かりん果汁、濃厚アセロラ果汁ならびにクエン酸のすべてを含み容量500mlであるPET入り炭酸飲料を除く。)の製造方法であって、飲料中ティリロサイドの濃度を0.05~0.5μg/mlまたは0.1~0.3μg/mlに調整する工程を含む方法。
【請求項21】
ティリロサイドを有効成分として含む、炭酸飲料の泡もち向上用組成物。」
第3 特許異議申立人が主張する特許異議申立理由について
特許異議申立人が特許異議申立書において、請求項1ないし21に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の要旨(下記1ないし11)は、次のとおりである。
1 申立理由1-1(甲第1号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1ないし4、6、7、9ないし16、18、19及び21に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 申立理由1-2(甲第1号証ないし甲第14号証をそれぞれ主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1ないし4、6、7、9ないし16、18、19及び21に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証ないし甲第14号証にそれぞれに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 申立理由2-1(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし21に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
4 申立理由2-2(甲第1号証ないし甲第14号証をそれぞれ主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし21に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証ないし甲第14号証にそれぞれに記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
5 申立理由2-3(甲第15号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし21に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第15号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
6 申立理由2-4(甲第16号証ないし甲第19号証をそれぞれを主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし21に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第16号証ないし甲第19号証にそれぞれ記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
7 申立理由2-5(甲第20号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし21に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第20号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
8 申立理由3(新規事項の追加)
令和3年6月16日付けでした手続補正は、本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対して特許されたものであるから、本件特許は、同法第113条第1項に該当し、取り消すべきものである。
なお、申立理由3の具体的理由は、おおむね次のとおりである。
本件特許では、令和3年6月16日付で提出された手続補正書により、明細書段落0038に記載の表1が補正されている。これは、表1における飲料4のローズヒップ抽出物の濃度を「0.1」(wt%)から「1」(wt%)に補正するものであり、誤記の訂正とされている。
しかしながら、飲料4のローズヒップ抽出物の濃度「0.1」(wt%)が明らかな誤記であるという理由はない。本件特許の実施例で用いられているローズヒップ抽出物は「森下仁丹社ローズヒップエキス」と記載されているのみであり(明細書段落0037)、これに含まれるティリロサイドの濃度は何ら記載されていない。また、飲料2及び飲料3におけるローズヒップ抽出物の濃度およびティリロサイドの濃度の記載から、飲料4のローズヒップ抽出物の濃度は「1」(wt%)とすることも考えられるが、その逆として、飲料2及び飲料3におけるローズヒップ抽出物の濃度がそれぞれ「0.025」(wt%)、「0.05」(wt%)とすることも十分に考えられ、後者の飲料2及び飲料3におけるローズヒップ抽出物の濃度を否定する理由は見出されない。さらに言えば、飲料4のローズヒップ抽出物の濃度は「0.1」(wt%)であって、ティリロサイドの濃度が「0.0271」(μg/mL)であるとも考えられ、或いは、飲料2及び飲料3のティリロサイドの濃度がそれぞれ「0.68」(μg/mL)、「1.35」(μg/mL)であるとも考えられる。
このように、上記の手続補正書により行われた表1の補正は誤記の訂正には該当せず、飲料4のローズヒップ抽出物の濃度を「1」(wt%)とすることは、本件特許の出願当初の明細書等に記載した事項の範囲を超える新規事項を追加するものである。
9 申立理由4(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし21に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
10 申立理由5(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし21に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
なお、申立理由4及び5の具体的理由は、おおむね次のとおりである。
(1)本件特許発明1ないし20について
本件特許発明1、2、6ないし10、13、14及び18ないし20は、飲料中のティリロサイドの濃度が0.05~0.5μg/ml又は0.1~0.3μg/mlに特定されるものである。
しかしながら、本件特許の実施例によると、出願当初の本件特許明細書段落0038の表1に示されるように、飲料に添加したローズヒップ抽出物の量(飲料中の濃度)とティリロサイドの濃度とが対応しておらず(特に、飲料2及び3と飲料4との間)、0.05~0.5μg/ml又は0.1~0.3μg/mlというティリロサイドの濃度で発明の効果が得られているのかどうか(言い換えれば、発明の課題が解決できているのかどうか)不明である。
このように、本件特許明細書段落0038の表1には記載不備があり、飲料2ないし4のティリロサイドの濃度は複数のものが考えられて一様に定まらない。また、表1の記載内容を考慮すれば、明細書段落0041及び図1の記載も疑わしいと言わざるを得ず、これらの記載が正しいという理由もない。
以上の点から、本件特許の発明の詳細な説明は、いわゆる当業者が発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとは言えず、また、上記の本件特許発明1、2、6ないし10、13、14、及び18ないし20は、発明の詳細な説明に記載したものとも言えない。
本件特許発明1、2、9、10、13及び14を引用する本件特許発明3ないし5、11、12、及び15ないし17についても、上述した本件特許発明1等と同様の理由がある。
(2) 本件特許発明21について
本件特許発明21においては、組成物中のティリロサイドの濃度が規定されていない。
そのため、ティリロサイドのあらゆる濃度範囲において本件特許の発明の効果が奏されるのかどうかは明らかではなく、そのようにティリロサイドの濃度を特定していない組成物を炭酸飲料の泡もち向上用組成物として用いることについては、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤をする必要があり、本件特許の出願日当時の技術水準を考慮しても当業者がどのように実施するかを理解できるとはいえない。この点から、本件特許の発明の詳細な説明は、いわゆる当業者が発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
また、本件特許の発明の詳細な説明においては、所定の濃度範囲でのティリロサイドについて発明の効果が確認されているのみであり、当該範囲を逸脱するものであっても、発明の課題を解決することができるのか明らかではない。加えて、本件特許の出願日当時の技術水準に照らしても、本件特許発明21の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。これらの点から、本件特許発明21は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。
よって、本件特許発明21は、実施可能要件及びサポート要件を満たしていない。
(3) ローズヒップ抽出物以外の成分について
本件特許の実施例では、ローズヒップ抽出物以外に、着色料、香料、酸味料、甘味料、グルコン酸カルシウム、カフェイン抽出物といった別の成分が使用されている(本件特許明細書段落0038、表1)。
これらの別の成分のみを配合した飲料1でも、泡が立つ(起泡する)とともに、ある程度の時間はその泡が消失しない“泡もち”の現象が見られる。
これについて本件特許発明では、ローズヒップ抽出物を添加すれば、その量に応じて泡もち時間が長くなるとのことである。しかしながら、その泡もち時間や起泡の程度に関しては、上記の別成分(いわゆるベース成分)の構成によって変動し、ローズヒップ抽出物の作用効果が異なる可能性があるところ、そのことについては何ら検証がなされていない。
このように、ローズヒップ抽出物以外の成分について何ら特定されていない本件特許発明は、その発明の効果が得られる程度に当業者が実施することができるものとはいえない。この点から、本件特許の発明の詳細な説明は、いわゆる当業者が発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
また、本件特許の実施例で示したローズヒップ抽出物以外の成分が全く特定されない状況において、本当に発明の課題を解決することができるのかどうかも明らかではない。そのため、本件特許発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。
よって、本件特許発明1ないし21は、実施可能要件及びサポート要件を満たしていない。
11 申立理由6(明確性要件)
本件特許の請求項6ないし8及び18ないし20に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
なお、申立理由6の具体的理由は、おおむね次のとおりである。
本件特許発明6ないし8及び18ないし20においては「濃縮アセロラ果汁」とあるが、具体的にどのような果汁なのかが不明確である。
また、本件特許発明20には「PET入り炭酸飲料」と記載されているが、これも飲料の特定事項として不明確である。
よって、本件特許発明6ないし8及び18ないし20は、明確性要件を満たしていない。
なお、令和4年3月7日付の意見書での主張内容から見て、特許権者は、少なくとも本件特許発明6ないし8及び18ないし20に関しては、令和3年11月9日(発送日)付の拒絶理由通知書で引用された引用文献7及び8に記載の飲料と同一であることを自認していることが理解できる。この点から考えて、甲第1ないし24及び30号証に記載の飲料も同様に発明の対象から除くべきであるとするのが合理的である。そして、その場合には、除外すべき対象があまりにも多く、且つ複雑になることから、残余部分の発明の外延は不明確なものとなる。また、除外すべき対象があまりにも多いことを考慮すれば、その発明それ自体は新規性を満たさないと言わざるを得ない。そもそも、除外部分を多数連ねるような「除くクレーム」は、発明を特定する事項として全く妥当ではない。
12 証拠方法
・甲第1号証:「Relaxation Carbonated Beverage」<URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/2765111/from_search/TxLnAlKM1u/?page=1>
・ 甲第2号証:「Citrus Charge Sparkling Black Ice Tea」<URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/1730947/>
・甲第3号証:「Original Rosehip & 7 Vitamins Organic Energy Drink」<URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/3504685/>
・甲第4号証:「Citrus Orange Relaxation Blend Beverage」<URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/1378183/>
・甲第5号証:「Purp Premium Relaxation Beverage」<URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/1235623/>
・甲第6号証:「Zen Beverage」<URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/1303649/>
・甲第7号証:「Berry Flavoured Soft Drink」<URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/3253113/>
・甲第8号証:「Drink'n' Dream Relaxation Drink」<URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/2167681/>
・甲第9号証:「Relaxation Drink」<URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/1665758/>
・甲第10号証:「Gracie Berry Bonanza Semi Sparkling Alcohol Free Cocktail」<URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/3468639/>
・甲第11号証:「Relaxation Drink」<URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/950218/>
・甲第12号証:「Innovations Club - Relaxation Drink」<URL:https://clients.mintel.com/innovative-product/innovations-club-relaxation-drink-1?fromSearch=%3Ffreetext%3Drose%2520hip%2520carbonated&resultPosition=3>
・甲第13号証:「Lightly Sparkling and Slightly Flavoured Waters Range」<URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/506235/from_search/1jfwyIzicB/?page=1>
・甲第14号証:「Citrus Flavoured Soft Drink」<URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/3253111/from_search/YtdnE7dXZE/?page=1>
・甲第15号証:「Tropical Guava Flavored Relaxation Drink」<URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/1774120/>
・甲第16号証:「Advance Fresh Oolong Blend Tea」<URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/4614639/from_search/glPWUw60eJ/?page=1>
・甲第17号証:「Smart Diet」<URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/1157115/from_search/9xfYYASlJE/?page=1>
・甲第18号証:「Rosehip Works Drink」<URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/1376722/from_search/BSduHSWWBM/?page=1>
・甲第19号証:「Sparkling Tea」<URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/1612419/from_search/kBf1QTrSqk/?page=1>
・甲第20号証:「Rosehip Sparkling Drink」<URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/1790743/from_search/A206oVDc8L/?page=1>
・甲第21号証:Nagatomoら,「Daily intake of rosehip extract decreases abdominal visceral fat in preobese subjects: a randomized, double-blind, placebo-controlled clinical trial」(Diabetes, Metabolic Syndrome and Obesity: Targets and Therapy)8,147~156(2015)
・甲第22号証:「商品名:からだ巡茶 Advance(アドバンス) 安全性評価シート」<URL:https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc03/anzen_hyouka?hyoukaSyousaiFile=B19%255CB19_anzen_hyouka.pdf>
・甲第23号証:特開2013-213015号公報
また、特許異議申立人は、令和5年11月24日提出の回答書に添付して、次の甲第24号証及び項第25号証を提出している。
・甲第24号証:Tsuyoshi Goto et.al, "Tiliroside, a glycosidic flavonoid, ameliorates obesity-induced metabolic disorders via activation of adiponectin signaling followed by enhancement of fatty acid oxidation in liver and skeletal muscle in obese-diabetic mice", Journal of Nutritional Biochemistry, 23(2012), 768-776, ELSEVIER
・甲第25号証:Lokadi Pierre Luhata et.al, "TILIROSIDE: Biosynthesis, Bioactivity and Structure Activity Relationship(SAR) ? A Review", The Journal of Phytopharmacology, 2017; 6(6): 343-348
なお、証拠の表記については、おおむね特許異議申立書及び回答書における記載にしたがった。
第4 令和5年6月23日付けで特許権者に通知した取消理由について
令和5年6月23日付けで特許権者に通知した取消理由は、次の1及び2のとおりである。
1 取消理由1(甲第1号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1ないし4、6、7、13ないし16、18及び19に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 取消理由2(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし8及び13ないし20に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
第5 当審の判断
1 令和5年6月23日付けで特許権者に通知した取消理由について
下記のとおり、令和5年6月23日付けで特許権者に通知した取消理由は、何れもその理由がないものと判断する。
(1) 甲第1号証の記載事項等
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、Mintel記録番号(ID#):2765111、Relaxation Carbonated Beverage について、次の記載がある。
「
[図:0001407820000001.jpg]
[図:0001407820000002.jpg]
」
イ 甲第1号証に記載された発明
上記アの記載から、甲第1号証には、次の発明が記載されているものと認める。
「水、果糖、二酸化炭素、クエン酸、カノコソウ根エキス、クエン酸ナトリウム、ローズヒップエキス(0.03%)、ラベンダーエキス、fig cactus aromaからなる缶入り炭酸飲料。」(以下、「甲1発明」という。)
「甲1発明の製造方法。」(以下、「甲1製法発明」という。)
(2) 対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「缶入り炭酸飲料」は、本件特許発明1の「容器詰め炭酸飲料」に相当する。
したがって、両者は、
「容器詰め炭酸飲料。」
で一致し、次の点で相違する。
(相違点1-1)
飲料に関して、本件特許発明1は「ティリロサイド」を「含有する」と特定された上に、「飲料中のティリロサイドの濃度が0.05~0.5μg/mlである」と特定されているのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。
上記相違点1-1について検討する。
甲1発明の飲料は「ローズヒップエキス(0.03%)」を含有するものであるところ、ローズヒップエキスはティリロサイドを含有するものといえる(甲第21号証、甲第24号証及び甲第25号証)から、甲1発明の飲料は「ティリロサイド」を含有するものといえる。
しかしながら、甲1発明の飲料におけるローズヒップエキスは、その具体的な原料が明らかではない。そして、ローズヒップエキスであれば、その種類によらず同程度のティリロサイドを含むものであるという証拠もない。
してみると、甲1発明の飲料には「ローズヒップエキス(0.03%)を含有する」ということはできても、ティリロサイドの含有量を推認することまではできない。
この点について、特許異議申立人は回答書において、甲第21号証に記載のローズヒップエキスの情報から計算して、甲1発明の飲料中のティリロサイドの濃度は0.3μg/ml程度となるが、この濃度は「0.05~0.5μg/ml」の範囲内に十分に入る量である(およそ中間値といえる)こと(回答書第4頁)、飲料の原料(飲食品素材)として、濃度の低下を起こしている(きわめて収率の低い)ローズヒップエキス原料を使用することは、当業者の視点から見ればとても考えられない(回答書第4頁)旨主張する。
しかしながら、特許異議申立人の当該主張を勘案したとしても、甲1発明におけるローズヒップエキスが具体的に何であるのか不明であるし、また、「ローズヒップエキス」を0.03%含むものであれば必ずティリロサイドの濃度が0.05~0.5μg/mlとなるという証拠が提出されているものでもないことからすると、甲1発明の飲料におけるティリロサイドの含有量は推認することができず、不明であるといわざるを得ない。
よって、本件特許発明1は、甲1発明ではない。
また、甲第1号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲1発明において、ティリロサイドの濃度に着目し調整する動機付けがあるともいえないから、甲1発明において、相違点1-1に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことともいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5は、本件特許発明1の全ての発明特定事項を有するものである。
そして、本件特許発明1は、甲1発明ではなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2ないし4は、甲1発明ではなく、本件特許発明2ないし5は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件特許発明6ないし8について
本件特許発明6ないし8は何れも独立形式で記載された請求項6ないし8に係る発明であるところ、本件特許発明6ないし8それぞれと甲1発明とを対比すると、いずれも、甲1発明には、飲料に関して、「ティリロサイドを含有する」ものであって、「ティリロサイドの濃度」に関しての特定がない点で相違(濃度は本件特許発明6ないし8で異なる)する。
しかしながら、上記の相違点は、実質的には相違点1-1と同旨であり、上記アと同様に判断される。
したがって、本件特許発明6及び7は、甲1発明ではなく、本件特許発明6ないし8は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
エ 本件特許発明13について
本件特許発明13と甲1製法発明とを対比すると、上記アと同様の相当関係が成立する。
よって、両者は、
「容器詰め炭酸飲料の製造方法。」
で一致し、次の点で相違する。
(相違点1-2)
飲料の製造方法に関して、本件特許発明1は「ティリロサイド」を含有するものであって、「飲料中のティリロサイドの濃度を0.05~0.5μg/mlに調整する工程を含む」と特定するのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。
上記相違点1-2について検討する。
「ティリロサイドの濃度を調整する工程」には、原料由来のティリロサイドによる製造方法も含むものと考えると、結局のところ、上記相違点1-1と同旨であるといえ、上記アと同様に判断される。
したがって、本件特許発明13は、甲1製法発明ではなく、甲1製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
オ 本件特許発明14ないし17について
本件特許発明14ないし17は、本件特許発明13の全ての発明特定事項を有するものである。
そして、本件特許発明13は、甲1製法発明ではなく、甲1製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明14ないし16は、甲1製法発明ではなく、本件特許発明14ないし17は、甲1製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
カ 本件特許発明18ないし20について
本件特許発明18ないし20は何れも独立形式で記載された請求項18ないし20に係る発明であるところ、本件特許発明18ないし20それぞれと甲1製法発明とを対比すると、いずれも、甲1製法発明には、飲料の製造方法に関して、「ティリロサイドを含有する」ものであって、「ティリロサイドの濃度を調整する工程」に関しての特定がない点で相違(濃度は本件特許発明18ないし20で異なる)する。
しかしながら、上記の相違点は、実質的には相違点1-2と同旨であり、上記エと同様に判断される。
したがって、本件特許発明18及び19は、甲1製法発明ではなく、本件特許発明18ないし20は、甲1製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3) 取消理由についてのまとめ
上記(2)のとおりであるから、取消理由1及び2の理由では、本件特許発明1ないし8及び13ないし20に係る特許を取り消すことができない。
2 令和5年6月23日付けで特許権者に通知した取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
(1) 申立理由1-1及び申立理由2-1(甲第1号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)のうち、本件特許発明9ないし12及び21に係る部分について
ア 本件特許発明9ないし12について
甲第1号証において、「炭酸飲料の泡もち向上方法」に対応する発明を認定することができない。
よって、本件特許発明9ないし12は、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 本件特許発明21について
甲第1号証において、「炭酸飲料の泡もち向上用組成物」に対応する発明を認定することができない。
よって、本件特許発明21は、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 申立理由1-1及び申立理由2-1のうち、本件特許発明9ないし12及び21に係る部分についてのまとめ
上記ア及びイのとおりであるから、申立理由1-1及び申立理由2-1の理由では、本件特許発明9ないし12及び21に係る特許を取り消すことができない。
(2) 申立理由1-2及び申立理由2-2(甲第1号証ないし甲第14号証をそれぞれ主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第1号証ないし甲第14号証に記載された発明
甲第1号証ないし甲第14号証には、それぞれの記載から見て、次の(ア)ないし(ス)のとおりの発明が記載されているものと認める。
(ア) 甲第1号証に記載された発明
上記1(1)イのとおりである。
(イ) 甲第2号証に記載された発明
「ローズヒップエキス、二酸化炭素を含むPETボトル入り飲料である、Charge Sparkling Black Ice Tea。」(以下、「甲2発明」という。また、甲2発明を製造する方法を「甲2製法発明」という。)
(ウ) 甲第3号証に記載された発明
「炭酸水、ローズヒップエキスを含むアルミ缶入り飲料である、Original Rosehip & 7 Vitamins Organic Energy Drink。」(以下、「甲3発明」という。また、甲3発明を製造する方法を「甲3製法発明」という。)
(エ) 甲第4号証に記載された発明
「炭酸水、ローズヒップエキスを含む飲料である、Citrus Orange Relaxation Blend Beverage。」(以下、「甲4発明」という。また、甲4発明を製造する方法を「甲4製法発明」という。)
(オ) 甲第5号証に記載された発明
「炭酸水、ローズヒップエキスを含むアルミ缶入り飲料である、Purp Premium Relaxation Beverage。」(以下、「甲5発明」という。また、甲5発明を製造する方法を「甲5製法発明」という。)
(カ) 甲第6号証に記載された発明
「炭酸水、ローズヒップエキスを含むアルミ缶入り飲料である、Zen Beverage。」(以下、「甲6発明」という。また、甲6発明を製造する方法を「甲6製法発明」という。)
(キ) 甲第7号証に記載された発明
「炭酸、ローズヒップエキスを含むアルミ缶入り飲料である、Berry Flavoured Soft Drink。」(以下、「甲7発明」という。また、甲7発明を製造する方法を「甲7製法発明」という。)
(ク) 甲第8号証に記載された発明
「炭酸水、ローズヒップエキスを含むアルミ缶入り飲料である、Drink'n'Dream Relaxation Drink。」(以下、「甲8発明」という。また、甲8発明を製造する方法を「甲8製法発明」という。)
(ケ) 甲第9号証に記載された発明
「炭酸水、ローズヒップエキスを含むPETボトル入り飲料である、Relaxation Drink。」(以下、「甲9発明」という。また、甲9発明を製造する方法を「甲9製法発明」という。)
(コ) 甲第10号証に記載された発明
「炭酸水、ローズヒップエキスを含むガラスボトル入り飲料である、Gracie Berry Bonanza Semi Sparkling Alcohol Free Cocktail。」(以下、「甲10発明」という。また、甲10発明を製造する方法を「甲10製法発明」という。)
(サ) 甲第11号証及び甲第12号証に記載された発明
(合議体注:甲第11号証と甲第12号証は同じ飲料に関する証拠である。)
「ローズヒップを含むアルミ缶入り炭酸飲料である、Relaxation Drink。」(以下、「甲11発明」という。また、甲11発明を製造する方法を「甲11製法発明」という。)
(シ) 甲第13号証に記載された発明
「ローズヒップを含むPETボトル入り炭酸飲料である、Lightly Sparkling and Slightly Flavoured Waters Range。」(以下、「甲13発明」という。また、甲13発明を製造する方法を「甲13製法発明」という。)
(ス) 甲第14号証に記載された発明
「ローズヒップを含むアルミ缶入り炭酸飲料である、Citrus Flavoured Soft Drink。」(以下、「甲14発明」という。また、甲14発明を製造する方法を「甲14製法発明。」という。)
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1ないし8について
甲第1号証を主たる証拠とする新規性・進歩性については、上記1(2)のとおりである。
本件特許発明1と甲2発明ないし甲11発明、甲13発明及び甲14発明それぞれとを対比すると、甲2発明ないし甲11発明、甲13発明及び甲第14発明は、少なくとも、「ティリロサイド」を含む飲料であって、「飲料中ティリロサイドの濃度が0.05~0.5μg/ml」であるか不明である点で相違する。
この点について、全ての証拠の記載を見ても、甲2発明ないし甲11発明、甲13発明及び甲14発明は、ローズヒップあるいはローズヒップエキスを含有するものの、そのローズヒップあるいはローズヒップエキスがいかなる成分組成のものであるのか明らかではないから、「飲料中ティリロサイドの濃度が0.05~0.5μg/ml」との事項を導出することができない。
したがって、本件特許発明1は、甲2発明ないし甲11発明、甲13発明及び甲14発明のいずれでもない。
また、全ての証拠の記載を見ても、甲2発明ないし甲11発明、甲13発明及び甲14発明それぞれにおいて、「ティリロサイド」に着目し、その含有量を調整する動機があるとはいえないから、本件特許発明1は、甲2発明ないし甲11発明、甲13発明及び甲14発明それぞれに基いて、上記相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、本件特許発明1は、甲2発明ないし甲11発明、甲13発明及び甲14発明それぞれに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
本件特許発明1の発明特定事項の全てを有するものである、本件特許発明2ないし8についても同様に判断される。
(イ) 本件特許発明9ないし12について
甲第1号証を主たる証拠とする新規性・進歩性については、上記(1)アのとおりである。
また、甲第2号証ないし甲第14号証において、「炭酸飲料の泡もち向上方法」に対応する発明を認定することができない。
よって、本件特許発明9ないし12は、甲第2号証ないし甲第14号証それぞれに記載された発明ではなく、甲第2号証ないし甲第14号証それぞれに記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 本件特許発明13ないし20について
甲第1号証を主たる証拠とする新規性・進歩性については、上記1(2)のとおりである。
本件特許発明13と甲2製法発明ないし甲11製法発明、甲13製法発明及び甲14製法発明それぞれとを対比すると、甲2製法発明ないし甲11製法発明、甲13製法発明及び甲第14製法発明は、少なくとも、「ティリロサイド」を含む飲料の製造方法であって、「飲料中ティリロサイドの濃度が0.05~0.5μg/ml」であるか不明である点で相違する。
ここで、上記相違点は、上記(ア)で論じた相違点と同旨であり、同様に判断されるから、本件特許発明13は、甲2製法発明ないし甲11製法発明、甲13製法発明及び甲14製法発明のいずれでもなく、甲2製法発明ないし甲11製法発明、甲13製法発明及び甲14製法発明それぞれに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
本件特許発明13の発明特定事項の全てを有するものである、本件特許発明14ないし20についても同様に判断される。
(エ) 本件特許発明21について
甲第1号証を主たる証拠とする新規性・進歩性については、上記(1)イのとおりである。
また、甲第2号証ないし甲第14号証において、「炭酸飲料の泡もち向上用組成物」に対応する発明を認定することができない。
よって、本件特許発明21は、甲第2号証ないし甲第14号証それぞれに記載された発明ではなく、甲第2号証ないし甲第14号証それぞれに記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 申立理由1-2及び申立理由2-2についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由1-2及び申立理由2-2の理由では、本件特許発明1ないし21に係る特許を取り消すことはできない。
(3) 申立理由2-3ないし2-5(甲第15号証ないし甲第20号証をそれぞれ主たる証拠とする進歩性)について
ア 甲第15号証ないし甲第20号証に記載された発明
甲第15証ないし甲第20号証には、それぞれの記載から見て、次の(ア)ないし(カ)のとおりの発明が記載されているものと認める。
(ア) 甲第15号証に記載された発明
「ローズヒップエキスを含むアルミ缶入り飲料である、Tropical Guava Flavored Relaxation Drink。」(以下、「甲15発明」という。また、甲15発明を製造する方法を「甲15製法発明」という。)
(イ) 甲第16号証に記載された発明
「ローズヒップエキスを含むPETボトル入り茶飲料である、Advance Fresh Oolong Blend Tea。」(以下、「甲16発明」という。また、甲16発明を製造する方法を「甲16製法発明」という。)
(ウ) 甲第17号証の記載された発明
「ローズヒップエキスを含むPETボトル入り茶飲料である、Diet Tea Drink。」(以下、「甲17発明」という。また、甲17発明を製造する方法を「甲17製法発明」という。)
(エ) 甲第18号証に記載された発明
「ローズヒップエキスを含むPETボトル入り飲料である、Rosehip Works Drink。」(以下、「甲18発明」という。また、甲18発明を製造する方法を「甲18製法発明」という。)
(オ) 甲第19号証に記載された発明
「PETボトル入り炭酸茶飲料である、Sparkling Tea。」(以下、「甲19発明」という。また、甲19発明を製造する方法を「甲19製法発明」という。)
(カ) 甲第20号証に記載された発明
「ローズヒップエキスを含むガラスボトル入り炭酸飲料である、Rosehip Sparkling Drink。」(以下、「甲20発明」という。また、甲20発明を製造する方法を「甲20製法発明」という。)
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1ないし8について
本件特許発明1と甲15発明ないし甲20発明それぞれとを対比すると、甲15発明ないし甲20発明は、少なくとも、「ティリロサイド」を含む飲料であって、「飲料中ティリロサイドの濃度が0.05~0.5μg/ml」であるか不明である点で相違する。
この点について、全ての証拠の記載を見ても、甲15発明ないし甲20発明それぞれにおいて、「ティリロサイド」に着目し、その含有量を調整する動機があるとはいえないから、本件特許発明1は、甲15発明ないし甲20発明それぞれに基いて、上記相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、本件特許発明1は、甲15発明ないし甲20発明それぞれに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
本件特許発明1の発明特定事項の全てを有するものである、本件特許発明2ないし8についても同様に判断される。
(イ) 本件特許発明9ないし12について
甲第15号証ないし甲第20号証において、「炭酸飲料の泡もち向上方法」に対応する発明を認定することができない。
よって、本件特許発明9ないし12は、甲第15号証ないし甲第20号証それぞれに記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ) 本件特許発明13ないし20について
本件特許発明13と甲15製法発明ないし甲20製法発明それぞれとを対比すると、甲15製法発明ないし甲20製法発明は、少なくとも、「ティリロサイド」を含む飲料の製造方法であって、「飲料中ティリロサイドの濃度が0.05~0.5μg/ml」であるか不明である点で相違する。
ここで、上記相違点は、上記(ア)で論じた相違点と同旨であり、同様に判断されるから、本件特許発明13は、甲15製法発明ないし甲20製法発明それぞれに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件特許発明13の発明特定事項の全てを有するものである、本件特許発明14ないし20についても同様に判断される。
(エ) 本件特許発明21について
甲第15号証ないし甲第20号証において、「炭酸飲料の泡もち向上用組成物」に対応する発明を認定することができない。
よって、本件特許発明21は、甲第15号証ないし甲第20号証それぞれに記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 申立理由2-3ないし申立理由2-5についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由2-3ないし申立理由2-5の理由では、本件特許発明1ないし21に係る特許を取り消すことができない。
(4) 申立理由3(新規事項の追加)について
ア 新規事項の追加についての判断
本件特許の願書に最初に添付した明細書には次の記載がある。
「【実施例】
【0037】
ローズヒップ抽出物を異なる濃度で含有する以下の組成の4種の飲料(飲料1~4)に炭酸を0.25MPaとなるように圧入した炭酸飲料を製造し、PET容器に充填した。ローズヒップ抽出物としては森下仁丹社ローズヒップエキスを使用し、ティリロサイド濃度は製造後の炭酸飲料を高速液体クロマトグラフィーにて分析して決定した。
【0038】
【表1】
[図:0001407820000003.jpg]
」
そして、令和3年6月16日に提出された手続補正書により、【0038】の【表1】は、次のように補正された。
「【0038】
【表1】
[図:0001407820000004.jpg]
」
そこで検討するに、本件特許の願書に最初に添付した明細書における【表1】の「飲料4」における「ローズヒップ抽出物(ティリロサイド濃度)」の項には、「0.1(0.271)」と記載されている。
しかしながら、【表1】のローズヒップ抽出物の濃度とティリロサイド濃度について飲料1ないし飲料4の値をみると、ローズヒップ抽出物の濃度は順に「0、0.25、0.5、0.1」であるのに対し、ティリロサイド濃度は順に「0、0.068、0.135、0.271」と記載されている。
つまり、飲料1から飲料4に向かって、ティリロサイド濃度が順に増加しており、飲料1ないし3をみると、リーズヒップ抽出物の濃度とティリロサイド濃度との間に相関関係があることも見てとれる。
これらの記載に接した当業者であれば、飲料4におけるローズヒップ抽出物の濃度が「0.1」であることは誤記であり、飲料4のティリロサイド濃度の値をみるに、飲料4におけるローズヒップ抽出物の濃度は「1」であろうことは十分理解できるものといえる。
そして、特許請求の範囲、明細書及び図面全体の記載、さらには、当該技術分野における技術常識を加味したとしても、当該補正により、本件特許発明1ないし21において、新たな技術的事項が追加されたものともいえない。
したがって、令和3年6月16日付で提出された手続補正書により補正された【0038】の【表1】の補正は、新規事項の追加とはいえない。
イ 申立理由3についてのまとめ
上記アのとおりであるから、申立理由3の理由では、本件特許発明1ないし21に係る特許を取り消すことができない。
(5) 申立理由4(実施可能要件)について
ア 実施可能要件の判断基準
本件特許発明1ないし8及び21は、上記第2のとおり、「物」の発明であるところ、物の発明における実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、例えば、明細書等にその物を生産することができる具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産することができるのであれば、実施可能要件を満たすと言うことができる。
また、本件特許発明13ないし20は、上記第2のとおり、「物を生産する方法」の発明であるところ、物を生産する方法の発明における実施とは、そのものを生産する方法の使用をする行為のほか、その方法により生産した物の使用等ををする行為をいうから(特許法第2条第3項第3号)、例えば、明細書等にその物を生産する方法を使用することができることの具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産する方法を使用することができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。
さらに、本件特許発明9ないし12は、上記第2のとおり、「方法」の発明であるところ、方法の発明における実施とは、その方法の使用をする行為をいうから(特許法第2条第3項第2号)、方法の発明について、例えば、明細書等にその方法を使用することができることの具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその方法を使用することができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。
イ 実施可能要件についての判断
本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「本発明者等は、容器詰め炭酸飲料において、コップ等に注いだ後の泡立ちが安定化されると共に、飲用時の爽快感が持続し、かつ異味・異臭を感じることのない新規な容器詰め炭酸飲料を提供することを目的として種々検討を行った結果、驚くべきことに、ローズヒップ等の植物成分に含まれるティリロサイドが炭酸飲料の泡保持効果を有することを見出し、本発明を完成させた」(【0009】)ことが記載され、「本発明の容器詰め炭酸飲料は、ティリロサイドを0.01~10μg/ml、好ましくは0.05~0.5μg/ml、更に好ましくは0.1~0.3μg/mlの範囲の濃度で含有する。上記の範囲において、好適な泡もち向上効果を得ることができる。泡もち効果の向上は、例えばコップ等に注いだ後の泡もち時間によって確認することができ、ティリロサイドを上記濃度範囲で含有する炭酸飲料は、含有しない同組成の炭酸飲料と比較して、泡もち時間を10秒以上、15秒以上、20秒以上延長することができる」(【0022】)こと、「本発明の炭酸飲料は、泡もち効果が改善され、炭酸飲料の特徴である爽快感が長期間持続するものである。また、ティリロサイドの添加によって炭酸飲料の色・香り・味はほとんど変化しないため、本発明は広範囲の炭酸飲料に好適に適用可能である」(【0036】)こと、「本発明は、別の実施形態として、炭酸飲料中にティリロサイドを添加することを特徴とする、炭酸飲料の泡もち向上方法を提供する」(【0031】)こと、ティリロサイドの原料、抽出法(【0015】ないし【0021】)、容器詰め炭酸飲料に添加される他の原料・成分(【0023】ないし【0030】)、容器詰め炭酸飲料の製造方法(【0030】ないし【0035】)の記載があり、さらに、具体的な実施例の記載もある。
これらの記載によれば、本件特許発明1ないし21に関し、明細書の発明の詳細な説明には過度の試行錯誤を要することなく当業者が実施できる程度に記載されているものといえる。
よって、本件特許発明1ないし21に関する明細書の発明の詳細な説明に記載は、特許法第36条第4項第1号の規定に適合する。
ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、上記第3 9(第3 9及び10の理由については、まとめて第3 10の後に(1)ないし(3)として記載している。)の(1)ないし(3)の主張をするが、いずれも、本件特許発明を実施することができないとする具体的な証拠を挙げるものでもないから、何れの主張も採用することができない。
エ 申立理由4についてのまとめ
上記イ及びウのとおりであるから、申立理由4の理由では、本件特許発明1ないし21に係る特許を取り消すことができない。
(6) 申立理由5(サポート要件)について
ア サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ 特許請求の範囲の記載
上記第2のとおりである。
ウ サポート要件についての判断
本件特許発明の課題(以下、「発明の課題」という。)は、「容器詰め炭酸飲料において、コップ等に注いだ後の泡立ちが安定化されると共に、飲用時の爽快感が持続し、かつ異味・異臭を感じることのない新規な容器詰め炭酸飲料、その製造方法及びそれに用いる組成物を提供すること」(【0009】)である。
そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「ローズヒップ等の植物成分に含まれるティリロサイドが炭酸飲料の泡保持効果を有することを見出し、本発明を完成させた」(【0009】)こと、「本発明の容器詰め炭酸飲料は、ティリロサイドを0.01~10μg/ml、好ましくは0.05~0.5μg/ml、更に好ましくは0.1~0.3μg/mlの範囲の濃度で含有する。上記の範囲において、好適な泡もち向上効果を得ることができる。泡もち効果の向上は、例えばコップ等に注いだ後の泡もち時間によって確認することができ、ティリロサイドを上記濃度範囲で含有する炭酸飲料は、含有しない同組成の炭酸飲料と比較して、泡もち時間を10秒以上、15秒以上、20秒以上延長することができる」(【0022】)こと、「本発明の炭酸飲料は、泡もち効果が改善され、炭酸飲料の特徴である爽快感が長期間持続するものである。また、ティリロサイドの添加によって炭酸飲料の色・香り・味はほとんど変化しないため、本発明は広範囲の炭酸飲料に好適に適用可能である」(【0036】)ことが記載され、これらのことを裏付ける具体的な実施例の記載もある。
してみると、当業者であれば、炭酸飲料において、「ティリロサイド」を「0.01~10μg/ml」の濃度で含有するとの事項を満たすことにより、発明の課題を解決できるものと認識できる。
そして、本件特許発明1ないし20はいずれも、上記の発明の課題を解決できると認識できる特定事項を全て有し、さらに限定するものであるから、当然、発明の課題を解決できると認識できる。
また、当業者であれば、「ティリロサイド」が炭酸飲料の泡もち向上用組成物としての有効成分であるものと理解できるから、炭酸飲料の泡もち向上用組成物に「ティリロサイド」を含有することにより、発明の課題を解決できるものと認識できる。
そして、本件特許発明21は、上記の発明の課題を解決できると認識できる特定事項を全て有するものであるから、当然、発明の課題を解決できると認識できる。
よって、本件特許発明1ないし21はいずれも、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合する。
エ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、上記第3 10の主張をするが、次のとおり判断できるから、その主張は何れも採用できない。
・(1)の点について
特許異議申立人が取りあげる、本件特許の出願当初の明細書の【0038】の【表1】の点は明らかな誤記であり(上記(4)も参照のこと)、その記載内容は当業者であれば矛盾なく理解できるものである(令和3年6月16日付で提出された手続補正書により補正されている。)。
・(2)の点について
「ティリロサイド」が炭酸飲料の泡もち向上作用を有することは、上記ウの検討のとおりであるし、また、「ティリロサイド」が特定の割合になると炭酸飲料の泡もち向上効果を呈さなくなるとする具体的な証拠を挙げるものでもない。
・(3)の点について
他の条件が同一の場合に、「ティリロサイド」の添加により、炭酸飲料の泡もち向上効果が奏されることは、実施例の記載(【表1】)からも明らかである。
また、他の成分との関係で、「ティリロサイド」を添加しても、炭酸飲料の泡もち向上効果が奏されなくなるとする具体的な証拠を挙げるものでもない。
オ 申立理由5についてのまとめ
上記ウ及びエのとおりであるから、申立理由5の理由では、本件特許発明1ないし21に係る特許を取り消すことができない。
(7) 申立理由6(明確性要件)について
ア 明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
イ 特許請求の範囲の記載
上記第2のとおりである。
ウ 明確性要件についての判断
本件特許発明6ないし8及び18ないし20に係る発明特定事項は、特許請求の範囲の請求項6ないし8及び18ないし20として記載されているとおりであり、その記載はいずれも、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として見た際に、何ら不明確ではない。
エ 特許異議申立人の主張について
この点について、特許異議申立人は、上記第3 11のとおり、「濃縮アセロラ果汁」、「PET入り炭酸飲料」との記載が不明確である旨主張するが、「濃縮アセロラ果汁」はその文言のとおり、「アセロラ果汁」を濃縮したものと解されるし、「PET入り炭酸飲料」は、技術常識(あるいは一般常識)を踏まえるならば、「PETボトルに入った炭酸飲料」と解されることは明らかである。
また、特許異議申立人はさらに、審査段階における令和4年3月7日の意見書の主張内容を勘案した上での主張も行うが、上記ウの判断には何ら影響するものではない。
オ 申立理由6についてのまとめ
上記ウ及びエのとおりであるから、申立理由6の理由では、本件特許発明6ないし8及び18ないし20に係る特許を取り消すことができない。
第6 結語
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし21に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし21に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700179