特許異議申立
2018-700776
硬化性樹脂組成物、これを用いた、色素含有層の形成方法、イメージセンサチップの製造方法及びイメージセンサチップ
- 審判番号
- 2018-700776
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-245477
- 登録番号
- 特許第6302650号(P6302650)
- 請求日
- 2018年09月27日
- 審決日
- 2019年09月12日
- 公報発行日
- 2019年12月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】富士フイルム株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人航栄特許事務所
- 【権利者代理人】高松 猛
- 【権利者代理人】尾澤 俊之
- 【異議申立人】石井 良夫
- 審判長/審判官
- 審判長 樋口 信宏
- 審判官 宮澤 浩
- 審判官 高松 大
- 分類
- P1651.121-YAA(G02B) / P1651.537-YAA(G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6302650号発明「硬化性樹脂組成物、これを用いた、色素含有層の形成方法、イメージセンサチップの製造方法及びイメージセンサチップ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6302650号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11、14~30〕、〔12、13〕について訂正することを認める。
特許第6302650号の請求項1,2、4~6、9~30に係る特許を維持する。
特許第6302650号の請求項3、7、8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6302650号の請求項1~30に係る特許についての特許出願は、平成25年11月27日(優先権主張 平成24年11月30日)に出願されたものであって、平成30年3月9日に特許権の設定の登録がされたものである。
本件特許について平成30年3月28日に特許掲載公報が発行されたところ、発行の日から6月以内である平成30年9月27日に、特許異議申立人 石井良夫(以下「特許異議申立人」という。)から特許異議の申立て(異議2018-700776号)がされた。
その後、平成30年11月27日付けで取消理由が通知され、平成31年1月25日に特許権者による意見書の提出及び訂正の請求がなされ、同年3月7日付けで特許異議申立人による意見書の提出がなされ、同年3月29日付けで取消理由<決定の予告>が通知され、令和元年5月30日に特許権者による意見書の提出及び訂正の請求(以下、当該訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)がなされ、同年7月8日に特許異議申立人による意見書の提出がなされた。
なお、平成31年1月25日になされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなされる。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、「特許第6302650号の明細書、特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~30について訂正することを求める。」というものである。
2 訂正の内容
(1)請求項1-11、14-30に係る訂正について
ア 訂正の内容
本件訂正のうち、請求項1-11、14-30に係る訂正の内容は、以下のとおりである。なお、訂正された箇所に下線を付した。
(ア)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「20μm以上の膜厚となるように塗布し得る波長600~850nmの範囲内に極大吸収波長を有する色素及び界面活性剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、
固形分濃度が10~90質量%であり、25℃における粘度が1mPa・s以上1000Pa・s以下である、硬化性樹脂組成物であって、
前記界面活性剤がフッ素系界面活性剤であり、前記フッ素界面活性剤中のフッ素含有率は、3質量%~40質量%である、硬化性樹脂組成物。」
と記載されているのを、
「20μm以上の膜厚となるように塗布し得る波長600~850nmの範囲内に極大吸収波長を有する色素及び界面活性剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、
前記色素が、ピロロピロール色素又は銅錯体であり、
固形分濃度が10~90質量%であり、25℃における粘度が1mPa・s以上1000Pa・s以下である、硬化性樹脂組成物であって、
前記界面活性剤がフッ素系界面活性剤であり、前記フッ素界面活性剤中のフッ素含有率は、3質量%~40質量%である、硬化性樹脂組成物。」
に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用して記載された請求項2、9~11、14、17~30についても同様に訂正する。)。
(イ)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(ウ)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に
「20μm以上の膜厚となるように塗布し得る波長600~850nmの範囲内に極大吸収波長を有する色素及び重合性化合物を含有する硬化性樹脂組成物であって、
固形分濃度が40~70質量%であり、25℃における粘度が1mPa・s以上1000Pa・s以下であり、
前記色素が、ピロロピロール色素、銅錯体、シアニン系染料、フタロシアニン系染料、クアテリレン系色素、アミニウム系染料、イミニウム系色素、アゾ系色素、アンスラキノン系色素、スクアリリウム系色素及びポルフィリン系色素からなる群から選択される少なくとも1種であり、
上記重合性化合物が単量体である、硬化性樹脂組成物。」
と記載されているのを、
「20μm以上の膜厚となるように塗布し得る波長600~850nmの範囲内に極大吸収波長を有する色素及び重合性化合物を含有する硬化性樹脂組成物であって、
固形分濃度が40~70質量%であり、25℃における粘度が1mPa・s以上1000Pa・s以下であり、
前記色素が、ピロロピロール色素、シアニン系染料、フタロシアニン系染料、クアテリレン系色素、アミニウム系染料、イミニウム系色素、アゾ系色素、アンスラキノン系色素、スクアリリウム系色素及びポルフィリン系色素からなる群から選択される少なくとも1種であり、
上記重合性化合物が単量体である、硬化性樹脂組成物。」
に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用して記載された請求項5、6、9~11、14~30についても同様に訂正する。)。
(エ)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に
「請求項3~5のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。」
と記載されているのを、
「請求項4又は5に記載の硬化性樹脂組成物。」
に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用して記載された請求項9~11、14~30についても同様に訂正する。)。
(オ)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(カ)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(キ)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項9に
「25℃における粘度が10mPa・s以上500Pa・s以下である、請求項1~4、6~8のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。」
と記載されているのを、
「25℃における粘度が10mPa・s以上500Pa・s以下である、請求項1~2、4、6のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。」
に訂正する(請求項9の記載を直接的又は間接的に引用して記載された請求項10、11、14~30についても同様に訂正する。)。
(ク)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項10に
「25℃における粘度が20mPa・s以上100Pa・s以下である、請求項1~4、6~9のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。」
と記載されているのを、
「25℃における粘度が20mPa・s以上100Pa・s以下である、請求項1~2、4、6、9のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。」
に訂正する(請求項10の記載を直接的又は間接的に引用して記載された請求項11、14~30についても同様に訂正する。)。
(ケ)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項11に
「請求項1~10のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物から形成された膜厚20μm以上の色素含有層を有する赤外線カットフィルタ。」
と記載されているのを、
「請求項1~2、4~6、9~10のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物から形成された膜厚20μm以上の色素含有層を有する赤外線カットフィルタ。」
に訂正する(請求項11の記載を直接的又は間接的に引用して記載された請求項14~30についても同様に訂正する。)。
(コ)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項14に
「支持体上に硬化性樹脂組成物をアプリケーター、スピンコーター、スリットスピンコーター、スリットコーター、スクリーン印刷、又はポッティングにより塗布する、色素含有層の形成方法であって、
前記硬化性樹脂組成物が、請求項1~10のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物である、色素含有層の形成方法。」
と記載されているのを、
「支持体上に硬化性樹脂組成物をアプリケーター、スピンコーター、スリットスピンコーター、スリットコーター、スクリーン印刷、又はポッティングにより塗布する、色素含有層の形成方法であって、
前記硬化性樹脂組成物が、請求項1~2、4~6、9~10のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物である、色素含有層の形成方法。」
に訂正する(請求項14の記載を直接的又は間接的に引用して記載された請求項15~30についても同様に訂正する。)。
(サ)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項20に
「請求項1~10のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物をガラス基板上に塗布し、色素含有層を形成する工程と、
前記色素含有層が形成されたガラス基板を固体撮像素子基板上に接着する工程とを有するイメージセンサチップの製造方法。」
と記載されているのを、
「請求項1~2、4~6、9~10のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物をガラス基板上に塗布し、色素含有層を形成する工程と、
前記色素含有層が形成されたガラス基板を固体撮像素子基板上に接着する工程とを有するイメージセンサチップの製造方法。」
に訂正する(請求項20の記載を直接的又は間接的に引用して記載された請求項21~26についても同様に訂正する。)。
(シ)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項27に
「固体撮像素子基板、請求項1~10のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物からなる色素含有層、及び赤外線反射膜を有するガラス基板を具備し、それらが間に空気層を挟まずに密着しているイメージセンサチップ。」
と記載されているのを、
「固体撮像素子基板、請求項1~2、4~6、9~10のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物からなる色素含有層、及び赤外線反射膜を有するガラス基板を具備し、それらが間に空気層を挟まずに密着しているイメージセンサチップ。」
に訂正する(請求項27の記載を直接的又は間接的に引用して記載された正空孔28~30についても同様に訂正する。)。
(ス)訂正事項14(請求項1~11、14~30に関するもの)
明細書の段落【0006】に
「本発明は、下記の構成であり、これにより本発明の上記目的が達成される。
<1>
20μm以上の膜厚となるように塗布し得る波長600~850nmの範囲内に極大吸収波長を有する色素及び界面活性剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、
固形分濃度が10~90質量%であり、25℃における粘度が1mPa・s以上1000Pa・s以下である、硬化性樹脂組成物であって、
上記界面活性剤がフッ素系界面活性剤であり、上記フッ素界面活性剤中のフッ素含有率は、3質量%~40質量%である、硬化性樹脂組成物。
<2>
上記界面活性剤の含有量が硬化性樹脂組成物の全固形分質量に対して0.01質量%以上1質量%以下である、<1>に記載の硬化性樹脂組成物。
<3>
20μm以上の膜厚となるように塗布し得る波長600~850nmの範囲内に極大吸収波長を有する色素を含有する硬化性樹脂組成物であって、
上記色素がピロロピロール色素又は銅錯体であり、
固形分濃度が10~90質量%であり、25℃における粘度が1mPa・s以上1000Pa・s以下である、硬化性樹脂組成物であって、
上記硬化性樹脂組成物が重合性化合物と溶剤とを含有し、組成物全固形分中の色素の含有量が30質量%以上である、硬化性樹脂組成物。
<4>
20μm以上の膜厚となるように塗布し得る波長600~850nmの範囲内に極大吸収波長を有する色素及び重合性化合物を含有する硬化性樹脂組成物であって、
固形分濃度が40~70質量%であり、25℃における粘度が1mPa・s以上1000Pa・s以下であり、
上記色素が、ピロロピロール色素、銅錯体、シアニン系染料、フタロシアニン系染料、クアテリレン系色素、アミニウム系染料、イミニウム系色素、アゾ系色素、アンスラキノン系色素、スクアリリウム系色素及びポルフィリン系色素からなる群から選択される少なくとも1種であり、
上記重合性化合物が単量体である、硬化性樹脂組成物。
<5>
25℃における粘度が300~700mPa・sである、<4>に記載の硬化性樹脂組成物。
<6>
上記重合性化合物が、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール、プロピレングリコール残基を介している構造を含む化合物のいずれかである、<3>~<5>のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
<7>
上記色素が、ピロロピロール色素、銅錯体、シアニン系染料、フタロシアニン系染料、クアテリレン系色素、アミニウム系染料、イミニウム系色素、アゾ系色素、アンスラキノン系色素、ジイモニウム系色素、スクアリリウム系色素及びポルフィリン系色素からなる群から選択される少なくとも1種である、<1>又は<2>に記載の硬化性樹脂組成物。
<8>
上記色素がピロロピロール色素又は銅錯体である、<4>又は<7>に記載の硬化性樹脂組成物。
<9>
25℃における粘度が10mPa・s以上500Pa・s以下である、<1>~<4>、<6>~<8>のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
<10>
25℃における粘度が20mPa・s以上100Pa・s以下である、<1>~<4>、<6>~<9>のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
<11>
<1>~<10>のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物から形成された膜厚20μm以上の色素含有層を有する赤外線カットフィルタ。」及び
「<14>
支持体上に硬化性樹脂組成物をアプリケーター、スピンコーター、スリットスピンコーター、スリットコーター、スクリーン印刷、又はポッティングにより塗布する、色素含有層の形成方法であって、
上記硬化性樹脂組成物が、請求項1~10のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物である、色素含有層の形成方法。
<15>
支持体上に硬化性樹脂組成物をアプリケーター、スピンコーター、スリットスピンコーター、スリットコーター、スクリーン印刷、又はポッティングにより塗布する、色素含有層の形成方法であって、
上記硬化性樹脂組成物が、<4>に記載の硬化性樹脂組成物である、色素含有層の形成方法。
<16>
25℃における粘度が300~700mPa・sである、<15>に記載の色素含有層の形成方法。
<17>
上記支持体上に上記硬化性樹脂組成物をアプリケーター、スピンコーター、又はスリットコーター、により塗布する、<14>~<16>のいずれか1項に記載の色素含有層の形成方法。
<18>
上記硬化性樹脂組成物の25℃における粘度が10mPa・s以上500Pa・s以下である、<14>、<15>及び<17>のいずれか1項に記載の色素含有層の形成方法。
<19>
上記硬化性樹脂組成物の25℃における粘度が20mPa・s以上100Pa・s以下である、<14>、<15>、<17>及び<18>のいずれか1項に記載の色素含有層の形成方法。
<20>
<1>~<10>のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物をガラス基板上に塗布し、色素含有層を形成する工程と、
上記色素含有層が形成されたガラス基板を固体撮像素子基板上に接着する工程とを有するイメージセンサチップの製造方法。
<21>
上記硬化性樹脂組成物の塗布がアプリケーター塗布であり、上記硬化性樹脂組成物の固形分濃度40~70質量%及び粘度300~700mPa・sで上記アプリケーター塗布を行う、<20>に記載のイメージセンサチップの製造方法。
<22>
上記ガラス基板が赤外線反射膜を更に有し、(1)上記ガラス基板の赤外線反射膜が形成された面を固体撮像素子基板上に接着する、又は、(2)ガラス基板の赤外線反射膜が形成されていない面を固体撮像素子基板上に接着する、<20>又は<21>に記載のイメージセンサチップの製造方法。
<23>
上記ガラス基板が更に反射防止膜を有する、<20>~<22>のいずれか1項に記載のイメージセンサチップの製造方法。
<24>
上記ガラス基板の一方の面上に赤外線反射膜が存在し、他方の面上に反射防止膜が存在する、<23>に記載のイメージセンサチップの製造方法。
<25>
上記赤外線反射膜が誘電体多層膜である、<22>~<24>のいずれか1項に記載のイメージセンサチップの製造方法。
<26>
上記固体撮像素子基板がカラーフィルタ層、高屈折率層及び低屈折率層を有する、<20>~<25>のいずれか1項に記載のイメージセンサチップの製造方法。
<27>
固体撮像素子基板、<1>~<10>のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物からなる色素含有層、及び赤外線反射膜を有するガラス基板を具備し、それらが間に空気層を挟まずに密着しているイメージセンサチップ。
<26>
上記硬化性樹脂組成物からなる色素含有層とは反対側の上記ガラス基板の面上に上記赤外線反射膜を有する<25>に記載のイメージセンサチップ。
<29>
上記赤外線反射膜と上記ガラス基板との間に上記色素含有層を有する<27>に記載のイメージセンサチップ。
<30>
上記固体撮像素子基板、上記色素含有層、及び上記赤外線反射膜を有する上記ガラス基板を具備するイメージセンサチップの最表面に反射防止膜を更に有する、<27>~<29>のいずれか1項に記載のイメージセンサチップ。
本発明は、上記<1>~<30>に係る発明であるが、以下、それ以外の事項(例えば、下記〔1〕~〔20〕)についても記載している。」
と記載されているのを、それぞれ、
「<1>
20μm以上の膜厚となるように塗布し得る波長600~850nmの範囲内に極大吸収波長を有する色素及び界面活性剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、
上記色素が、ピロロピロール色素又は銅錯体であり、
固形分濃度が10~90質量%であり、25℃における粘度が1mPa・s以上1000Pa・s以下である、硬化性樹脂組成物であって、
上記界面活性剤がフッ素系界面活性剤であり、上記フッ素界面活性剤中のフッ素含有率は、3質量%~40質量%である、硬化性樹脂組成物。
<2>
上記界面活性剤の含有量が硬化性樹脂組成物の全固形分質量に対して0.01質量%以上1質量%以下である、<1>に記載の硬化性樹脂組成物。
<4>
20μm以上の膜厚となるように塗布し得る波長600~850nmの範囲内に極大吸収波長を有する色素及び重合性化合物を含有する硬化性樹脂組成物であって、
固形分濃度が40~70質量%であり、25℃における粘度が1mPa・s以上1000Pa・s以下であり、
上記色素が、ピロロピロール色素、シアニン系染料、フタロシアニン系染料、クアテリレン系色素、アミニウム系染料、イミニウム系色素、アゾ系色素、アンスラキノン系色素、スクアリリウム系色素及びポルフィリン系色素からなる群から選択される少なくとも1種であり、
上記重合性化合物が単量体である、硬化性樹脂組成物。
<5>
25℃における粘度が300~700mPa・sである、<4>に記載の硬化性樹脂組成物。
<6>
上記重合性化合物が、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール、プロピレングリコール残基を介している構造を含む化合物のいずれかである、<4>又は<5>に記載の硬化性樹脂組成物。
<9>
25℃における粘度が10mPa・s以上500Pa・s以下である、<1>~<2>、<4>、<6>のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
<10>
25℃における粘度が20mPa・s以上100Pa・s以下である、<1>~<2>、<4>、<6>、<9>のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
<11>
<1>~<2>、<4>~<6>、<9>~<10>のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物から形成された膜厚20μm以上の色素含有層を有する赤外線カットフィルタ。」及び
「<14>
支持体上に硬化性樹脂組成物をアプリケーター、スピンコーター、スリットスピンコーター、スリットコーター、スクリーン印刷、又はポッティングにより塗布する、色素含有層の形成方法であって、
上記硬化性樹脂組成物が、<1>~<2>、<4>~<6>、<9>~<10>のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物である、色素含有層の形成方法。
<15>
支持体上に硬化性樹脂組成物をアプリケーター、スピンコーター、スリットスピンコーター、スリットコーター、スクリーン印刷、又はポッティングにより塗布する、色素含有層の形成方法であって、
上記硬化性樹脂組成物が、<4>に記載の硬化性樹脂組成物である、色素含有層の形成方法。
<16>
25℃における粘度が300~700mPa・sである、<15>に記載の色素含有層の形成方法。
<17>
上記支持体上に上記硬化性樹脂組成物をアプリケーター、スピンコーター、又はスリットコーター、により塗布する、<14>~<16>のいずれか1項に記載の色素含有層の形成方法。
<18>
上記硬化性樹脂組成物の25℃における粘度が10mPa・s以上500Pa・s以下である、<14>、<15>及び<17>のいずれか1項に記載の色素含有層の形成方法。
<19>
上記硬化性樹脂組成物の25℃における粘度が20mPa・s以上100Pa・s以下である、<14>、<15>、<17>及び<18>のいずれか1項に記載の色素含有層の形成方法。
<20>
<1>~<2>、<4>~<6>、<9>~<10>のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物をガラス基板上に塗布し、色素含有層を形成する工程と、
上記色素含有層が形成されたガラス基板を固体撮像素子基板上に接着する工程とを有するイメージセンサチップの製造方法。
<21>
上記硬化性樹脂組成物の塗布がアプリケーター塗布であり、上記硬化性樹脂組成物の固形分濃度40~70質量%及び粘度300~700mPa・sで上記アプリケーター塗布を行う、<20>に記載のイメージセンサチップの製造方法。
<22>
上記ガラス基板が赤外線反射膜を更に有し、(1)上記ガラス基板の赤外線反射膜が形成された面を固体撮像素子基板上に接着する、又は、(2)ガラス基板の赤外線反射膜が形成されていない面を固体撮像素子基板上に接着する、<20>又は<21>に記載のイメージセンサチップの製造方法。
<23>
上記ガラス基板が更に反射防止膜を有する、<20>~<22>のいずれか1項に記載のイメージセンサチップの製造方法。
<24>
上記ガラス基板の一方の面上に赤外線反射膜が存在し、他方の面上に反射防止膜が存在する、<23>に記載のイメージセンサチップの製造方法。
<25>
上記赤外線反射膜が誘電体多層膜である、<22>~<24>のいずれか1項に記載のイメージセンサチップの製造方法。
<26>
上記固体撮像素子基板がカラーフィルタ層、高屈折率層及び低屈折率層を有する、<20>~<25>のいずれか1項に記載のイメージセンサチップの製造方法。
<27>
固体撮像素子基板、<1>~<2>、<4>~<6>、<9>~<10>のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物からなる色素含有層、及び赤外線反射膜を有するガラス基板を具備し、それらが間に空気層を挟まずに密着しているイメージセンサチップ。
<28>
上記硬化性樹脂組成物からなる色素含有層とは反対側の上記ガラス基板の面上に上記赤外線反射膜を有する<27>に記載のイメージセンサチップ。
<29>
上記赤外線反射膜と上記ガラス基板との間に上記色素含有層を有する<27>に記載のイメージセンサチップ。
<30>
上記固体撮像素子基板、上記色素含有層、及び上記赤外線反射膜を有する上記ガラス基板を具備するイメージセンサチップの最表面に反射防止膜を更に有する、<27>~<29>のいずれか1項に記載のイメージセンサチップ。
本発明は、上記<1>~<30>に係る発明であるが、以下、それ以外の事項(例えば、下記〔1〕~〔20〕)についても記載している。」
に訂正する。
イ 訂正の目的の適否
(ア)訂正事項1
訂正事項1による訂正は、本件訂正前の請求項1に記載された発明における「色素」を、「ピロロピロール色素又は銅錯体」に限定するものである。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
また、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用して記載された請求項との関係においても、同様である。
(イ)訂正事項2、5、6
訂正事項2、5、6による訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3、7、8をそれぞれ削除するものである。
したがって、訂正事項2、5、6による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
(ウ)訂正事項3
訂正事項3による訂正は、本件訂正前の請求項4に記載された発明における「色素」の選択肢から「銅錯体」を除くことにより、「色素」の範囲を限定するものである。
したがって、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
(エ)訂正事項4、7~9、11~13
訂正事項4、7~9、11~13による訂正は、訂正事項2、5、6により請求項3、7、8が削除されたことによって生じた、訂正により削除された請求項を引用しているという不明瞭な状態を、解消させることを目的とした訂正である。
したがって、訂正事項4、7~9、11~13による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものである。
(オ)訂正事項14(請求項1~11、14~30に関するもの)
訂正事項14(請求項1~11、14~30に関するもの)による訂正は、[A]明細書の段落【0006】における誤記の訂正(「<28>」と記載すべきであった「<26>」という記載を、「<28>」にする訂正、及び、当該<26>における、「<27>に記載のイメージセンサチップ」と記載すべきであった「<25>に記載のイメージセンサチップ」という記載を、「<27>に記載のイメージセンサチップ」にする訂正)と、[B]訂正事項1~9、11~13による、特許請求の範囲の訂正と整合するように、明細書の段落【0006】の記載を改める訂正の、2つを併せたものである。
したがって、訂正事項14(請求項1~11、14~30に関するもの)による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものといえる。
(カ)小括
以上のとおりであるから、訂正事項1~9、11~14による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし第4号に掲げる事項を目的とするものといえる。
ウ 新規事項の有無
(ア)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲において、請求項8に、「前記色素がピロロピロール色素又は銅錯体である、請求項4又は7に記載の硬化性樹脂組成物。」と記載されており、請求項7に、「請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。」と記載されている。
そうしてみると、訂正事項1による訂正は、本件訂正前の請求項1に記載された発明における「色素」を、請求項1の記載を間接的に引用していた請求項8に記載された事項に基づいて訂正したものといえる。
したがって、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであることは明らかである。
(イ)訂正事項2、5、6
訂正事項2、5、6による訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3、7、8をそれぞれ削除するものであるから、訂正事項2、5、6による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであることは明らかである。
(ウ)訂正事項3
訂正事項3による訂正は、本件訂正前の請求項4に記載された発明における「色素」の選択肢から、「銅錯体」を除くものであるから、訂正事項3による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであることは明らかである。
(エ)訂正事項4、7~9、11~13
訂正事項4、7~9、11~13による訂正は、訂正事項2、5、6により請求項3、7、8が削除されたことによって生じた、訂正により削除された請求項を引用しているという不明瞭な状態を、解消させることを目的とした訂正であるから、訂正事項4、7~9、11~13による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであることは明らかである。
(オ)訂正事項14(請求項1~11、14~30に関するもの)
訂正事項14(請求項1~11、14~30に関するもの)による訂正は、単なる明瞭でない記載の釈明、及び誤記の訂正にすぎないから、訂正事項14(請求項1~11、14~30に関するもの)による訂正が、それぞれ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであること、及び願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。
したがって、訂正事項14(請求項1~11、14~30に関するもの)による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(カ)小括
以上のとおりであるから、訂正事項1~9、11~14による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
エ 特許性の範囲の拡張・変更の存否
(ア)訂正事項1、3
訂正事項1による訂正は、本件訂正前の請求項1に記載された発明における「色素」を、「ピロロピロール色素又は銅錯体」に限定するものである。また、訂正事項3による訂正は、本件訂正前の請求項4に記載された発明における「色素」の範囲を限定するものである。
したがって、訂正事項1、3による訂正は、事実上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
(イ)訂正事項2、5、6
訂正事項2、5、6による訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3、7、8をそれぞれ削除するものであるから、訂正事項2、5、6による訂正が、事実上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
(ウ)訂正事項4、7~9、11~13
訂正事項4、7~9、11~13による訂正は、訂正事項2、5、6により請求項3、7、8が削除されたことによって生じた、訂正により削除された請求項を引用しているという不明瞭な状態を、解消させるものであるから、訂正事項4、7~9、11~13による訂正が、事実上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
(エ)訂正事項14(請求項1~11、14~30に関するもの)
訂正事項14(請求項1~11、14~30に関するもの)による訂正は、単なる明瞭でない記載の釈明、及び誤記の訂正にすぎないから、訂正事項14(請求項1~11、14~30に関するもの)による訂正が、事実上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
(オ)小括
以上のとおりであるから、訂正事項1~9、11~14による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(2)請求項12及び13に係る訂正について
ア 訂正の内容
本件訂正のうち、請求項12及び13に係る訂正の内容は、以下のとおりである。なお、訂正された箇所に下線を付した。
(ア)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項12に
「銅錯体を含有する第1の色素含有層と、ピロロピロール色素を含有する第2の色素含有層とを有する赤外線カットフィルタ。」
と記載されているのを、
「銅錯体を含有する第1の色素含有層と、ピロロピロール色素を含有する第2の色素含有層とを有する赤外線カットフィルタであって、
前記銅錯体において、銅に配位する配位子は、スルホン酸、カルボン酸、リン酸エステル、ホスホン酸、ホスホン酸エステル、ホスフィン酸、又は置換ホスフィン酸を有する化合物である、赤外線カットフィルタ。」
に訂正する(請求項12の記載を引用して記載された請求項13についても同様に訂正する。)。
(イ)訂正事項14(請求項12及び13に関するもの)
明細書の段落【0006】に
「<12>
銅錯体を含有する第1の色素含有層と、ピロロピロール色素を含有する第2の色素含有層とを有する赤外線カットフィルタ。
<13>
上記第1の色素含有層の膜厚が50μm以上であり、上記第2の色素含有層の膜厚が5μm以下である、<12>に記載の赤外線カットフィルタ。」及び
「本発明は、上記<1>~<30>に係る発明であるが、以下、それ以外の事項(例えば、下記〔1〕~〔20〕)についても記載している。」
と記載されているのを、それぞれ
「<12>
銅錯体を含有する第1の色素含有層と、ピロロピロール色素を含有する第2の色素含有層とを有する赤外線カットフィルタであって、
上記銅錯体において、銅に配位する配位子は、スルホン酸、カルボン酸、リン酸エステル、ホスホン酸、ホスホン酸エステル、ホスフィン酸、又は置換ホスフィン酸を有する化合物である、赤外線カットフィルタ。
<13>
上記第1の色素含有層の膜厚が50μm以上であり、上記第2の色素含有層の膜厚が5μm以下である、<12>に記載の赤外線カットフィルタ。」及び
「本発明は、上記<1>~<30>に係る発明であるが、以下、それ以外の事項(例えば、下記〔1〕~〔20〕)についても記載している。」に訂正する。
イ 訂正の目的の適否
(ア)訂正事項10
訂正事項10による訂正は、本件訂正前の請求項12に記載された発明の「銅錯体」における、「銅に配位する配位子」を「スルホン酸、カルボン酸、リン酸エステル、ホスホン酸、ホスホン酸エステル、ホスフィン酸、又は置換ホスフィン酸を有する化合物」に限定するものである。
したがって、訂正事項10による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
(イ)訂正事項14(請求項12及び13に関するもの)
訂正事項14(請求項12及び13に関するもの)による訂正は、訂正事項10による、特許請求の範囲の訂正と整合するように、明細書の段落【0006】の記載を改めるものである。
したがって、訂正事項14(請求項12及び13に関するもの)による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものといえる。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、訂正事項10及び14による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし第4号に掲げる事項を目的とするものといえる。
ウ 新規事項の有無
(ア)訂正事項10
本件特許の願書に添付した明細書の段落【0028】には、「上記色素が銅錯体の場合、銅に配位する配位子Lとしては、銅イオンと配位結合可能であれば特に限定されないが、例えば、スルホン酸、カルボン酸、リン酸、リン酸エステル、ホスホン酸、ホスホン酸エステル、ホスフィン酸、置換ホスフィン酸、カルボニル(エステル、ケトン)、アミン、アミド、スルホンアミド、ウレタン、ウレア、アルコール、チオールなどを有する化合物が挙げられる。」と記載されている。
そうしてみると、訂正事項10による訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項10による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(イ)訂正事項14(請求項12及び13に関するもの)
訂正事項14(請求項12及び13に関するもの)による訂正は、単なる明瞭でない記載の釈明にすぎないから、訂正事項14(請求項12及び13に関するもの)による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。
したがって、訂正事項14(請求項12及び13に関するもの)による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、訂正事項10及び14による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
エ 特許性の範囲の拡張・変更の存否
(ア)訂正事項10
訂正事項10による訂正は、本件訂正前の請求項12に記載された発明の「銅錯体」における、「銅に配位する配位子」を「スルホン酸、カルボン酸、リン酸エステル、ホスホン酸、ホスホン酸エステル、ホスフィン酸、又は置換ホスフィン酸を有する化合物」に限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(イ)訂正事項14(請求項12及び13に関するもの)
訂正事項14(請求項12及び13に関するもの)による訂正は、単なる明瞭でない記載の釈明にすぎないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、訂正事項10及び14による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(3)本件訂正請求について
本件訂正請求は、一群の請求項である〔1-11、14-30〕、〔12、13〕に対してされたものである。また、本件訂正請求は、訂正事項14による明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てである、請求項1-30について行われたものである。
3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11、14~30〕、〔12、13〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
前記第2のとおり、本件訂正請求は認められることとなったので、本件特許の請求項1、2、4~6、9~30に係る発明(以下、それぞれ請求項に付された番号に従い、「本件特許発明1」等という。)は、本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1、2、4~6、9~30に記載された事項により特定される以下のものである。なお、請求項3、7、8は、本件訂正により削除された。
「【請求項1】
20μm以上の膜厚となるように塗布し得る波長600~850nmの範囲内に極大吸収波長を有する色素及び界面活性剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、
前記色素が、ピロロピロール色素又は銅錯体であって、
固形分濃度が10~90質量%であり、25℃における粘度が1mPa・s以上1000Pa・s以下である、硬化性樹脂組成物であって、
前記界面活性剤がフッ素系界面活性剤であり、前記フッ素界面活性剤中のフッ素含有率は、3質量%~40質量%である、硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記界面活性剤の含有量が硬化性樹脂組成物の全固形分質量に対して0.01質量%以上1質量%以下である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
20μm以上の膜厚となるように塗布し得る波長600~850nmの範囲内に極大吸収波長を有する色素及び重合性化合物を含有する硬化性樹脂組成物であって、
固形分濃度が40~70質量%であり、25℃における粘度が1mPa・s以上1000Pa・s以下であり、
前記色素が、ピロロピロール色素、シアニン系染料、フタロシアニン系染料、クアテリレン系色素、アミニウム系染料、イミニウム系色素、アゾ系色素、アンスラキノン系色素、スクアリリウム系色素及びポルフィリン系色素からなる群から選択される少なくとも1種であり、
上記重合性化合物が単量体である、硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
25℃における粘度が300~700mPa・sである、請求項4に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記重合性化合物が、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール、プロピレングリコール残基を介している構造を含む化合物のいずれかである、請求項4又は5に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
25℃における粘度が10mPa・s以上500Pa・s以下である、請求項1~2、4、6のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
25℃における粘度が20mPa・s以上100Pa・s以下である、請求項1~2、4、6、9のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~2、4~6、9~10のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物から形成された膜厚20μm以上の色素含有層を有する赤外線カットフィルタ。
【請求項12】
銅錯体を含有する第1の色素含有層と、ピロロピロール色素を含有する第2の色素含有層とを有する赤外線カットフィルタであって、
前記銅錯体において、銅に配位する配位子は、スルホン酸、カルボン酸、リン酸エステル、ホスホン酸、ホスホン酸エステル、ホスフィン酸、又は置換ホスフィン酸を有する化合物である、赤外線カットフィルタ。
【請求項13】
前記第1の色素含有層の膜厚が50μm以上であり、前記第2の色素含有層の膜厚が5μm以下である、請求項12に記載の赤外線カットフィルタ。
【請求項14】
支持体上に硬化性樹脂組成物をアプリケーター、スピンコーター、スリットスピンコーター、スリットコーター、スクリーン印刷、又はポッティングにより塗布する、色素含有層の形成方法であって、
前記硬化性樹脂組成物が、請求項1~2、4~6、9~10のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物である、色素含有層の形成方法。
【請求項15】
支持体上に硬化性樹脂組成物をアプリケーター、スピンコーター、スリットスピンコーター、スリットコーター、スクリーン印刷、又はポッティングにより塗布する、色素含有層の形成方法であって、
前記硬化性樹脂組成物が、請求項4に記載の硬化性樹脂組成物である、色素含有層の形成方法。
【請求項16】
25℃における粘度が300~700mPa・sである、請求項15に記載の色素含有層の形成方法。
【請求項17】
前記支持体上に前記硬化性樹脂組成物をアプリケーター、スピンコーター、又はスリットコーター、により塗布する、請求項14~16のいずれか1項に記載の色素含有層の形成方法。
【請求項18】
前記硬化性樹脂組成物の25℃における粘度が10mPa・s以上500Pa・s以下である、請求項14、15及び17のいずれか1項に記載の色素含有層の形成方法。
【請求項19】
前記硬化性樹脂組成物の25℃における粘度が20mPa・s以上100Pa・s以下である、請求項14、15、17及び18のいずれか1項に記載の色素含有層の形成方法。
【請求項20】
請求項1~2、4~6、9~10のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物をガラス基板上に塗布し、色素含有層を形成する工程と、
前記色素含有層が形成されたガラス基板を固体撮像素子基板上に接着する工程とを有するイメージセンサチップの製造方法。
【請求項21】
前記硬化性樹脂組成物の塗布がアプリケーター塗布であり、前記硬化性樹脂組成物の固形分濃度40~70質量%及び粘度300~700mPa・sで前記アプリケーター塗布を行う、請求項20に記載のイメージセンサチップの製造方法。
【請求項22】
前記ガラス基板が赤外線反射膜を更に有し、(1)前記ガラス基板の赤外線反射膜が形成された面を固体撮像素子基板上に接着する、又は、(2)ガラス基板の赤外線反射膜が形成されていない面を固体撮像素子基板上に接着する、請求項20又は21に記載のイメージセンサチップの製造方法。
【請求項23】
前記ガラス基板が更に反射防止膜を有する、請求項20~22のいずれか1項に記載のイメージセンサチップの製造方法。
【請求項24】
前記ガラス基板の一方の面上に赤外線反射膜が存在し、他方の面上に反射防止膜が存在する、請求項23に記載のイメージセンサチップの製造方法。
【請求項25】
前記赤外線反射膜が誘電体多層膜である、請求項22~24のいずれか1項に記載のイメージセンサチップの製造方法。
【請求項26】
前記固体撮像素子基板がカラーフィルタ層、高屈折率層及び低屈折率層を有する、請求項20~25のいずれか1項に記載のイメージセンサチップの製造方法。
【請求項27】
固体撮像素子基板、請求項1~2、4~6、9~10のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物からなる色素含有層、及び赤外線反射膜を有するガラス基板を具備し、それらが間に空気層を挟まずに密着しているイメージセンサチップ。
【請求項28】
前記硬化性樹脂組成物からなる色素含有層とは反対側の前記ガラス基板の面上に前記赤外線反射膜を有する請求項27に記載のイメージセンサチップ。
【請求項29】
前記赤外線反射膜と前記ガラス基板との間に前記色素含有層を有する請求項27に記載のイメージセンサチップ。
【請求項30】
前記固体撮像素子基板、前記色素含有層、及び前記赤外線反射膜を有する前記ガラス基板を具備するイメージセンサチップの最表面に反射防止膜を更に有する、請求項27~29のいずれか1項に記載のイメージセンサチップ。」
第4 取消理由通知<決定の予告>に記載した取消理由
1 取消理由の概要
平成31年3月29日付けで通知された取消理由<決定の予告>の概要は、以下のとおりである。
(1)本件特許発明1、2、9~11、14、16~30は、本件特許の優先権主張の日前に、日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明、甲第3号証及び甲第4号証の記載事項並びに周知技術に基づいて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)本件特許発明3~6、9~11、14~30は、本件特許の優先権主張の日前に、日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第2号証に記載された発明、甲第1号証~甲第4号証の記載事項及び周知技術に基づいて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
なお、特許異議申立人が提出した証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:特開2012-103340号公報
甲第2号証:国際公開第99/26952号
甲第3号証:特開2005-92195号公報
甲第4号証:国際公開第2011/071052号
甲第5号証:特開2011-68731号公報
2 各甲号証の記載及び各甲号証に記載された発明
(1)甲第1号証
ア 甲第1号証の記載事項
取消理由に引用され、本件特許の優先権主張の日前の平成24年5月31日に、日本国内又は外国において頒布された刊行物であり、特許異議申立人が提出した甲第1号証(特開2012-103340号公報)には、以下の記載事項がある。なお、下線は、合議体が、甲第1号証に記載された発明の認定等に活用した箇所を示す。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線カットフィルターに関する。詳しくは、本発明は、十分な視野角とハンダリフロー耐熱性を合わせ持ち、特にCCD、CMOS等の固体撮像素子用視感度補正フィルターとして好適に用いることができる近赤外線カットフィルターに関する。
(中略)
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、視野角が広く、さらに、近赤外線カット能に優れ、更にハンダリフロー工程での使用に適した耐熱性を有する、特にCCD、CMOS等の固体撮像装置に好適に用いることができる近赤外線カットフィルターを得ることを目的とする。さらに、前記近赤外線カットフィルターを具備する固体撮像素子および固体撮像装置を提供することを目的とする。
(中略)
【0015】
本発明の近赤外線カットフィルターは、前記樹脂層のガラス基板が積層された面の反対側の面に、可視光用反射防止層が形成されていることが好ましい。
本発明の近赤外線カットフィルターは、固体撮像用素子および固体撮像装置等に使用することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の近赤外線カットフィルターは、視野角が広く、近赤外線カット能に優れ、更にハンダリフロー工程を有する製造法に適用するのに十分な耐熱性を有する。」
(イ)「【0019】
〔近赤外線カットフィルター〕
本発明の近赤外線カットフィルターは、ガラス基板の少なくとも片面に樹脂層を有する積層板を含み、その光線透過率が上記(A)~(D)を満たすことを特徴とする。
(中略)
【0026】
《積層板》
上記積層板は、ガラス基板の少なくとも片面に樹脂層を有する。前記樹脂層は、近赤外線吸収剤を含有することが好ましく、前記積層板は、下記式(i)、下記式(ii)、下記式(iii)を満たすことが好ましい。
(i)吸収極大波長(以下、λmaxともいう)を600~800(nm)の間に有する。
(ii)1/700≦(樹脂層の厚み/ガラス基板の厚み)≦2/5
(iii)30≦(ガラス基板の厚み:μm)≦1000
ガラス基板の少なくとも片面に、下記特定の近赤外線吸収剤を含む樹脂層を有することにより、上記(i)を満たす積層板を得ることができる。
(中略)
【0033】
<耐熱性を有する樹脂>
前記耐熱性を有する樹脂としては、ポリイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテル系樹脂(ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルニトリル系樹脂)、ポリカーボネート、ポリアリレート、および環状オレフィン系樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂は1種単独でも、2種以上を混合して用いても良い。
(中略)
【0036】
上記樹脂層の厚みは、上記(ii)を満たせば特に制限されないが、好ましくは1~100μm、さらに好ましくは2~50μm、特に好ましくは、3~30μmであることが望ましい。
(中略)
【0051】
<近赤外線吸収剤>
本発明の近赤外線カットフィルターに用いることができる近赤外線吸収剤は、(iv)大気中で熱重量分析にて測定した5%重量減少温度が、好ましくは250℃以上であり、更に好ましくは260℃以上、特に好ましくは270℃以上である。重量減少温度が前記条件を満たすことで、高温条件下でも分解することなく、ハンダリフロー工程での使用に十分な熱性が確保され、安定した品質の近赤外線カットフィルターを提供することができる。
【0052】
また本発明に用いられる近赤外線吸収剤は、波長600~800nmに吸収極大があることが好ましく、さらに好ましくは640~770(nm)、特に好ましくは660~720(nm)の範囲に吸収極大を有することが望ましい。
【0053】
このような近赤外線吸収剤を用いることで、上記(A)~(D)および(i)を満たす積層板、近赤外線カットフィルターを得ることができる。
このような近赤外線吸収剤としては、例えば、シアニン系染料、フタロシアニン系染料、アミニウム系染料、イミニウム系色素、アゾ系色素、アンスラキノン系色素、ジイモニウム系色素、スクアリリウム系色素およびポルフィリン系色素が挙げられる。
【0054】
このような近赤外線吸収剤を含有してなる樹脂層は、上記の耐熱性を有するためハンダリフロー工程への適用が可能となる。
【0055】
前記近赤外線吸収剤の市販品としては、具体的には、たとえば、Lumogen IR765、Lumogen IR788(BASF製);ABS643、ABS654、ABS667、ABS670T、IRA693N、IRA735(Exciton製);SDA3598、SDA6075、SDA8030、SDA8303、SDA8470、SDA3039、SDA3040、SDA3922、SDA7257(H.W.SANDS製);TAP-15、IR-706(山田化学工業製);を挙げることができる。
これらの近赤外線吸収剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(中略)
【0058】
<樹脂層の光学特性>
本発明の樹脂層は、(i)吸収極大波長(以下「λmax」ともいう)を600~800(nm)の間に有し、好ましくは640~770(nm)、より好ましくは660~720(nm)に有する。前記λmaxを上記波長範囲に有することで、近赤外光に感度を有するCMOSに入射される光の波長範囲が限定されるため、CMOS等により撮像された画像の色が、実際に目視で観察される色合いにより近いものとなる。
【0059】
〈その他の成分〉
前記樹脂層には、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに、酸化防止剤、紫外線吸収剤および界面活性剤等のその他の成分を添加することができる。
【0060】
酸化防止剤としては、例えば2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,2'-ジオキシ-3,3'-ジ-t-ブチル-5,5'-ジメチルジフェニルメタンおよびテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが挙げられる。
【0061】
紫外線吸収剤としては、例えば2,4-ジヒドロキシベンゾフェノンおよび2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノンが挙げられる。
後述する溶液キャスティング法により樹脂層を製造する場合には、界面活性剤や消泡剤を添加することで樹脂層の製造を容易にすることができる。
【0062】
上記界面活性剤としては、市販品もしくはラジカル重合により得られる下記のような共重合体(S)を使用することができ、これらは単独で、もしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0063】
共重合体(S)は、フッ素化アルキル基含有単量体(M1)、ポリオキシエチレン鎖含有単量体(M2)およびシリコーン鎖を有するエチレン性不飽和単量体(M3)を共重合することにより得られ、必要によりさらに上記(M1)~(M3)以外の単量体を用いてもよい。
前記フッ素化アルキル基含有単量体(M1)としては、下記式(M-1-1)および(M-1-2)で表わされる単量体などが挙げられる。
【0064】
【化3】
(中略)
【0076】
上述の共重合体(S)以外の界面活性剤としては、例えばフッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤を挙げることができ、これらはそれぞれ併用して使用することもできる。
【0077】
フッ素系界面活性剤としては、末端、主鎖および側鎖の少なくともいずれかの部位にフロロアルキル基および/またはフロロアルキレン基を有する化合物が好ましい。
フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えばBM-1000、BM-1100(以上、BM CHEMIE社製);メガファックF142D、同F172、同F173、同F183、同F178、同F191、同F471、同F476(以上、大日本インキ化学工業(株)製);フロラードFC-170C、同-171、同-430、同-431(以上、住友スリーエム(株)製);サーフロンS-112、同-113、同-131、同-141、同-145、同-382、サーフロンSC-101、同-102、同-103、同-104、同-105、同-106(以上、旭硝子(株)製);エフトップEF301、同303、同352(以上、新秋田化成(株)製);フタージェントFT-100、同-110、同-140A、同-150、同-250、同-251、同-300、同-310、同-400S、フタージェントFTX-218、同-251(以上、(株)ネオス製);を挙げることができる。
(中略)
【0080】
≪樹脂層の製造方法≫
近赤外線吸収剤を含有した樹脂層は、例えば、前記樹脂、近赤外線吸収剤および必要により前記その他の成分を溶融混練りして得られたペレットを溶融成形する方法、樹脂、近赤外線吸収剤、溶剤および必要により前記その他の成分を含む液状樹脂組成物から溶剤を除去して得られたペレットを溶融成形する方法、または、上述の液状樹脂組成物をキャスティング(キャスト成形)する方法により製造することができる。
【0081】
(A)溶融成形
溶融成形方法としては、例えば、射出成形、溶融押出成形およびブロー成形を挙げることができる。
【0082】
(B)キャスティング
キャスト成形方法としては、上記液状樹脂組成物を適切な基材の上にキャスティングして溶剤を除去すればよいが、例えば、スチールベルト、スチールドラムあるいはポリエステルフィルム等の基材の上に、上述の液状樹脂組成物を塗布して溶剤を乾燥させることで塗膜を形成し、その後該基材から塗膜を剥離することにより、樹脂層を単独で得ることができる。
あるいは、前記ガラス基板に上述の液状組成物をコーティングして溶剤を乾燥させることで、ガラス基板上に、直接、樹脂層を形成することができる。
(中略)
【0106】
≪誘電体多層膜≫
本発明に用いられる誘電体多層膜は、近赤外線を反射および/または吸収する能力を有する膜である。本発明において、誘電体多層膜は前記積層板の片面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。片面に設ける場合には、製造コストや製造容易性に優れ、両面に設ける場合には、高い強度を有し、ソリの生じにくい近赤外線カットフィルターを得ることができる。」
(ウ)「【0128】
<合成例2> 《ポリエーテル系樹脂(P-1)の合成》
攪拌機、温度計、ディーンスターク管、窒素導入管および冷却管を取り付けた1Lの三口フラスコに、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン157.68g(450mmol)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン16.81g(50mmol)、2,6-ジフルオロベンゾニトリル69.55g(500mmol)および炭酸カリウム76.02g(550mmol)をはかりとった。窒素置換後、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)897mL、トルエン448mLを加えて攪拌した。オイルバスで反応液を130℃で加熱還流させた。反応によって生成する水はディーンスターク管にトラップした。3時間後、水の生成がほとんど認められなくなったところで、トルエンをディーンスターク管から系外に除去した。反応温度を徐々に150℃まで上げ、2時間攪拌を続けた後、反応液を放冷し、テトラヒドロフラン(THF)2.3Lを加えて希釈した。反応液に不溶の無機塩をろ過し、ろ液をメタノール3Lに注いで生成物を沈殿させた。沈殿した生成物をろ過、乾燥後、THF3.2Lに溶解し、これをメタノール2Lに注いで再沈殿させた。
沈殿した白色粉末をろ過、乾燥し、ポリエーテル系樹脂(P-1)を69g得た。GPCで測定したポリスチレン換算の数平均分子量は53,000、重量平均分子量は105,000であった。
(中略)
【0130】
(その他の成分の合成)
<合成例4> 《界面活性剤(共重合体(S-1))の合成》
攪拌装置、コンデンサーおよび温度計を備えたガラスフラスコに前記式M-1-1で表わされるフッ素化アルキル基含有単量体28.4質量部、単量体M2としてNK-エステルM-90G(新中村化学社製)20.7質量部、下記式M-3-4で表わされるシリコーン鎖を有するエチレン性不飽和単量体18.1質量部、テトラメチレングリコールの両末端がメタクリレート化された化合物3.4質量部、メチルメタクリレート5.9質量部、2-エチルヘキシルアクリレート23.5質量部およびイソプロピルアルコール(以下、IPAと略す)414質量部を仕込み、窒素ガス気流中、還流下で、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.7質量部、連鎖移動剤としてラウリルメルカプタン4質量部を添加した後、75℃にて8時間還流して共重合を行い、共重合体(S-1)を得た。得られた共重合体(S-1)の分子量は、数平均分子量が2,800であり、重量平均分子量が5,300であった。また、分子量分布(Mw/Mn)は1.9であった。
【0131】
【化9】
(中略)
【0133】
<合成例6> 《界面活性剤(共重合体(S-3))の合成》
攪拌装置、コンデンサーおよび温度計を備えたガラスフラスコに前記式M-1-1で表わされるフッ素化アルキル基含有単量体28.4質量部、単量体M2としてNK-エステルM-90G(新中村化学社製)20.7質量部、前記式M-3-4で表わされるシリコーン鎖を有するエチレン性不飽和単量体18.1質量部、テトラメチレングリコールの両末端がメタクリレート化された化合物3.4質量部、メチルメタクリレート5.9質量部、2-エチルヘキシルアクリレート23.5質量部およびIPA414質量部を仕込み、窒素ガス気流中、還流下で、重合開始剤としてAIBN0.7質量部を添加した後、73℃にて10時間還流して共重合を行い、共重合体(S-3)を得た。得られた共重合体(S-3)の分子量は、数平均分子量が5,600であり、重量平均分子量が21,000であった。また、分子量分布(Mw/Mn)は3.8であった。
【0134】
(硬化性組成物の調製)
<調製例1> 《硬化性組成物溶液(G-1)の調製》
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物(商品名:KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製))20重量部、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン30重量部、メタクリル酸20重量部、メタクリル酸グリシジル30重量部、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3重量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルベンゾフェノン(商品名:IRGACURE184、チバ・スペシャリティ・ケミカル(株)製)5重量部およびサンエイドSI-110主剤(三新化学工業(株)製)1重量部を混合し、固形分濃度が50wt%になるようにジエチレングリコールエチルメチルエーテルに溶解した後、孔径0.2μmのミリポアフィルタでろ過し、硬化性組成物溶液(G-1)を調製した。
【0135】
<調製例2> 《硬化性組成物溶液(G-2)の調製》
イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート(商品名:アロニックスM-315、東亜合成化学(株)製)30重量部、1,9-ノナンジオールジアクリレート20重量部、メタクリル酸20重量部、メタクリル酸グリシジル30重量部、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5重量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルベンゾフェノン(商品名:IRGACURE184、チバ・スペシャリティ・ケミカル(株)製)5重量部およびサンエイドSI-110主剤(三新化学工業(株)製)1重量部を混合し、固形分濃度が50wt%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解した後、孔径0.2μmのミリポアフィルタでろ過し、硬化性組成物溶液(G-2)を調製した。
(中略)
【0144】
<調製例11> 樹脂溶液(D-6)の調製
合成例2で得られたポリエーテル系樹脂(P-1)に近赤外線吸収剤Lumogen IR765(BASF社製)を樹脂/近赤外線吸収剤の比が100重量部/0.10重量部となるように添加し、固形分濃度が10wt%となるようにジクロロメタンに溶解した後、合成例6で得られた界面活性剤(共重合体(S-3))の1%DMAc希釈溶液を樹脂/界面活性剤の比が100重量部/0.15重量部となるように添加した。
これらを混合した後、孔径5μmのミリポアフィルタでろ過して樹脂溶液(D-6)を得た。
(中略)
【0172】
<積層板作製例12> 積層板K-12の作製
50μmの厚みを有するガラス基板に調製例2で得られた硬化性組成物溶液(G-2)をスリットコートで塗布した後、ホットプレート上80℃で2分間加熱し、溶剤を揮発除去し、硬化層を形成した。この際、硬化層の膜厚が1.0μm程度となるようにスリットコーターの塗布条件を調整した。次に、ガラス基板の硬化層上に、スリットコーターを用いて調製例11で得られた樹脂溶液(D-6)を長波長側半値が646nmとなるような条件で塗布し、ホットプレート上80℃で5分間加熱し、溶剤を揮発除去した。次いで、ガラス面側からコンベア式露光機を用いて露光(露光量1J/cm2、照度200mW)し、その後オーブン中230℃で20分間焼成して積層板(K-12)を得た。
(中略)
【0182】
<近赤外線カットフィルター作成例>
積層板K-1~18、及び積層板R-1~2のガラス基板上に、蒸着温度200℃で近赤外線を反射する多層蒸着膜(誘電体多層膜)〔シリカ(SiO2:膜厚20~250nm)層とチタニア(TiO2:膜厚70~130nm)層とが交互に積層されてなるもの,積層数44〕を形成し、対応する近赤外線カットフィルターK'-1~18、及びR'-1~2を得た。多層蒸着膜の総厚はいずれも約5.5μmであった。
【0183】
<実施例K'-1~18、比較例R’-1~2>
得られた近赤外線カットフィルターK'-1~18、及びR'-1~2について光学特性評価、リフローテスト、密着性評価および外観評価を行った。結果について、下記表1にまとめる。なお、表中Xaは800nm以下の波長領域において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が70%となる最も長い波長、Xbは波長580nm以上の波長領域において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が30%となる最も短い波長、Yaは垂直方向から測定した場合の波長560~800nmの範囲において透過率が50%となる波長の値、Ybは垂直方向に対して30°の角度から測定した場合の波長560~800nmの範囲において透過率が50%となる波長の値、Zaは半田リフロー試験後における垂直方向から測定した場合の波長560~800nmの範囲において透過率が50%となる波長の値である。
【0184】
【表1】
」
イ 甲第1号証に記載された発明
(ア)甲1発明
上記アの記載事項(ウ)には、段落【0144】に、調製例11として、樹脂溶液(D-6)の調製を行ったこと、段落【0172】に、「ガラス基板の硬化層上に、スリットコーターを用いて調製例11で得られた樹脂溶液(D-6)を・・・塗布し、・・・溶剤を揮発除去し・・・露光・・・し、その後・・・焼成して積層板(K-12)を得た」こと、段落【0182】に、「積層板K-1~18・・・のガラス基板上に、・・・多層蒸着膜・・・を形成し、対応する近赤外線カットフィルターK'-1~18・・・を得た」こと、段落【0183】に、得られた近赤外線カットフィルターK'-1~18についての光学特性評価、リフローテスト、密着性評価および外観評価を行い、結果について、表1にまとめたこと、段落【0184】の【表1】には、実施例「K’-12」(樹脂溶液(D-6)を塗布し、溶剤を揮発除去し、露光し、その後焼成して得た積層板(K-12)のガラス基板上に、多層蒸着膜を形成して得た近赤外線カットフィルターにあたる。)の樹脂層膜厚が「30.5μm」、吸収極大波長が「769nm」であったことが記載されている。
これらの記載に基づけば、甲第1号証には、樹脂溶液(D-6)として、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「攪拌装置、コンデンサーおよび温度計を備えたガラスフラスコに以下の式M-1-1で表わされるフッ素化アルキル基含有単量体28.4質量部、単量体M2としてNK-エステルM-90G(新中村化学社製)20.7質量部、以下の式M-3-4で表わされるシリコーン鎖を有するエチレン性不飽和単量体18.1質量部、テトラメチレングリコールの両末端がメタクリレート化された化合物3.4質量部、メチルメタクリレート5.9質量部、2-エチルヘキシルアクリレート23.5質量部およびイソプロピルアルコール(IPA)414質量部を仕込み、窒素ガス気流中、還流下で、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.7質量部を添加した後、73℃にて10時間還流して共重合を行い、共重合体(S-3)を得ることにより界面活性剤(共重合体(S-3))を合成し、
ポリエーテル系樹脂(P-1)に近赤外線吸収剤Lumogen IR765(BASF社製)を樹脂/近赤外線吸収剤の比が100重量部/0.10重量部となるように添加し、固形分濃度が10wt%となるようにジクロロメタンに溶解した後、界面活性剤(共重合体(S-3))の1%N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)希釈溶液を樹脂/界面活性剤の比が100重量部/0.15重量部となるように添加し、
これらを混合した後、孔径5μmのミリポアフィルタでろ過して得た、樹脂溶液(D-6)であって、
樹脂溶液(D-6)を、ガラス基板の硬化層上にスリットコーターを用いて塗布し、溶剤を揮発除去し、露光し、その後焼成して得た積層板(K-12)のガラス基板上に、多層蒸着膜を形成して樹脂層膜厚が30.5μmである近赤外線カットフィルター(K’-12)とした場合の吸収極大波長が769nmである、樹脂溶液(D-6)。
」
(イ)甲1’発明
上記アの記載事項(イ)には、段落【0080】に、樹脂層の製造方法に用いる液状樹脂組成物として、「樹脂、近赤外線吸収剤、溶剤および必要により前記その他の成分を含む液状樹脂組成物」が記載されている。また、段落【0053】に近赤外線吸収剤として、「シアニン系染料、フタロシアニン系染料、アミニウム系染料、イミニウム系色素、アゾ系色素、アンスラキノン系色素、ジイモニウム系色素、スクアリリウム系色素およびポルフィリン系色素」が挙げられること、段落【0059】に、その他の成分として、「酸化防止剤、紫外線吸収剤および界面活性剤」が挙げられること、が記載されている。これらの記載に基づけば、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1’発明」という。)が記載されていると認められる。
「樹脂、
シアニン系染料、フタロシアニン系染料、アミニウム系染料、イミニウム系色素、アゾ系色素、アンスラキノン系色素、ジイモニウム系色素、スクアリリウム系色素およびポルフィリン系色素から選択される近赤外線吸収剤、
溶剤および、
酸化防止剤、紫外線吸収剤および界面活性剤から選択されるその他の成分
を含む液状樹脂組成物。」
(2)甲第2号証
ア 甲第2号証の記載事項
取消理由に引用され、本件特許の優先日前の平成11年6月3日に、日本国内又は外国において頒布された刊行物であり、特許異議申立人が提出した甲第2号証(国際公開第99/26952号)には、以下の記載がある。なお、公報に付されていた下線を削除し、合議体が、甲第2号証に記載された発明の認定等に活用した箇所に、新たに下線を付した。
(ア)「 技 術 分 野
本発明は、銅イオンが有する近赤外線吸収機能を効率的に発現させることができる新規な燐酸エステル化合物およびその製造方法、近赤外線領域の光を高い効率的かつ均等に吸収することができる新規な燐酸エステル銅化合物およびその製造方法、この燐酸エステル銅化合物よりなる近赤外線吸収性の物質、近赤外線吸収性の組成物、当該組成物から得られる近赤外線吸収フィルム、近赤外線吸収板、近赤外線吸収部材および光学フィルター並びにその応用例に関する。」(第1頁第5~11行)
(イ)「 発 明 の 開 示
本発明は、このような事情に基づいてなされたものである。
本発明の第1の目的は、銅イオンが有する近赤外線吸収機能を効果的に発現させることができ、銅イオンを種々の媒体中に容易に分散または溶解させることができる新規な燐酸エステル化合物を提供することにある。
(中略)
本発明の第31の目的は、近赤外線領域の光を高い効率で、かつ、均等にカッ卜することができる光学フィルターをCCDのための視感度補正フィル夕一として備えてなる画像入力装置を提供することにある。」(第2頁第14行~第5頁第13行)
(ウ)「 本発明の燐酸エステル化合物は、下記式(1)で表されるものである。
上記の燐酸エステル化合物の製造方法は、下記式(2)または下記式(3)で表されるアルコールと、五酸化燐とを反応させることを特徴とする。
本発明の燐酸エステル銅化合物は、上記式(1)で表される燐酸エステル化合物と銅イオン供給化合物とを反応させることにより得られるものである。
また、本発明の燐酸エステル銅化合物は、下記式(4)または下記式(5)で表されるものである。
なお、本明細書において、アルキル基は、直鎖状のものであっても、分岐状のものであってもよい。
また、アルキレン基、アルキレンオキシ基に使用されている「アルキレン」なる用語は、直鎖状アル力ンまたは分岐状アル力ンに由来するアルキレンであって、直鎖状アルカンの両末端に結合手があり、通常、ポリメチレンと称されるものも含むものとする。従って、ブチレンには、テトラメチレンも含まれている。
本発明の燐酸エステル銅化合物の製造方法は、上記式(1)で表される燐酸エステル化合物と銅イオン供給化合物とを反応させることを特徴とする。
本発明の燐酸エステル銅化合物の製造方法においては、上記式(1)で表される燐酸エステル化合物と銅イオン供給化合物とを有機溶剤中で反応させ、その後、前記燐酸エステル化合物と銅イオン供給化合物との反応によって生成される酸成分および前記有機溶剤を除去することが好ましい。
本発明の近赤外線吸収性の粉状物質、ペースト状物質および液状物質は、上記燐酸エステル銅化合物よりなることを特徴とする。
本発明の近赤外線吸収性の組成物は、下記(A)成分および/または下記(B)成分を含有してなることを特徴とする。
(A)成分:上記燐酸エステル化合物と銅イオンとよりなる成分
(B)成分:上記燐酸エステル銅化合物よりなる成分
また、本発明の組成物は、固体のものに限られず、液状のものであっても、ペース卜状のものであってもよい。
また、本発明の組成物は、単量体を含有してなるものであってもよい。
また、本発明の組成物は、樹脂を含有してなるものであってもよい。
本発明の塗布剤は、上記の組成物(本発明の組成物)よりなることを特徴とする。
本発明の接着剤は、上記の組成物(本発明の組成物)よりなることを特徴とする。
本発明の粘着剤は、上記の組成物(本発明の組成物)よりなることを特徴とする。
本発明の近赤外線吸収フィルムは、上記の組成物(本発明の組成物)よりなることを特徴とする。
また、本発明の近赤外線吸収フィルムは、上記の塗布剤(本発明の塗布剤)をフィルム基材の表面に塗布して得られることを特徴とする。
また、本発明の近赤外線吸収フィルムは、上記の接着剤(本発明の接着剤)により形成される中間層を有することを特徴とする。
また、本発明の近赤外線吸収フィルムは、上記の粘着剤(本発明の粘着剤)により形成される層を有することを特徴とする。
本発明の近赤外線吸収板は、上記の組成物(本発明の組成物)よりなることを特徴とする。
また、本発明の近赤外線吸収板は、上記の塗布剤(本発明の塗布剤)を基板の表面に塗布して得られることを特徴とする。
また、本発明の近赤外線吸収板は、上記の接着剤(本発明の接着剤)により形成される中間層を有することを特徴とする。
また、本発明の近赤外線吸収板は、上記の粘着剤(本発明の粘着剤)により形成される中間層を有することを特徴とする。
本発明の近赤外線吸収部材は、上記の粉状物質(本発明の粉状物質)がセル内に収容されてなることを特徴とする。
本発明の近赤外線吸収部材は、上記の液状の組成物(本発明の液状の組成物) がセル内に収容されてなることを特徴とする。
本発明の光学フィルタ一は、上記の組成物(本発明の組成物)から得られることを特徴とする。」(第5頁最下行~第9頁第10行)
(エ)「 本発明の燐酸エステル化合物は、 適宜の銅イオン供給化合物によって銅イオンが供給されると、燐酸基と銅イオンとが配位結合またはイオン結合する。そして、構造中にオキシカルボニル基(―COO―)を有するため、銅イオンが有する近赤外線吸収機能が効率的に発現する。また、オキシカルボニル基はある程度の極性を有するものであるため、当該燐酸エステル化合物は、溶媒や樹脂などの媒体に対する溶解性または分散性が良好である。
<燐酸エステル銅化合物>
本発明の燐酸エステル銅化合物は、上記式(1)で表される燐酸エステル化合物(以下、「特定の燐酸エステル化合物」ともいう。)と銅イオン供給化合物とを反応させて得られるものであり、例えば上記式(4)または式(5)で表される構造を有するものである。
ここで、特定の燐酸エステル化合物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて銅イオン供給化合物との反応に供することができる。従って、式(5)において、銅イオンMに結合された2つの燐酸残基は、互いに同一のものであっても異なるものであってもよい。」(第22頁第10~24行)
(オ)「<組成物>
本発明の組成物には、
(1)上記特定の燐酸エステル化合物と銅イオンとよりなる(Α)成分が含有されてなる組成物、および
(2)上記燐酸エステル銅化合物よりなる(Β)成分が含有されてなる組成物が包含され、さらに、
(3)(A)成分と(B)成分とが含有されてなる組成物が包含される。
また、本発明の組成物の性状は特に限定されるものではなく、固体状、液状、ペースト状、その他の性状であってもよい。また、(A)成分および(B)成分以外の構成成分も特に限定されるものではない。」(第26頁第23行~第27頁第4行)
(カ)「<液状の組成物>
本発明においては、(A)成分および/または(B)成分を適宜の溶媒中に分散または溶解させることにより、液状の組成物を構成することができる。
この液状組成物は、透明なもの、半透明なものまたは不透明なものであってもよく、いかなる状態であっても、近赤外線領域の光を高い効率でかつ均等に吸収することができる。」(第27頁第13~18行)
(キ)「<単量体組成物>
本発明の組成物には、 単量体が含有されていてもよい。
このような単量体組成物を構成する単量体としては、アクリル系単量体が好ましく、その具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-へキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メ夕)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類、グリシジル(メタ)アクリレー卜、2-ヒドロシキエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロシキプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレン(メタ)アクリレー卜、フェノキシ(メタ)アクリレート等の変性(メタ)アクリレート類、エチレングリコ一ルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレー卜、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコ一ルジ(メタ) アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオ一ルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス〔4-(メタ)アクリロキシエトキシフェニル〕プロパン、2-ヒドロキシ-1-(メタ)アクリロキシ-3-(メタ)アクリロキシプロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリットトリ(メタ)アクリレート、ぺンタエリトリットテトラ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類などが挙げられる。
また、(メタ)アクリル酸エステル以外の単量体としては、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸等の不飽和カルボン酸、N,N-ジメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド類、スチレン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、ジブロムスチレン、メトキシスチレン、ビニル安息香酸、ヒドロキシメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物などが挙げられる。
これらの単量体は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。」(第28頁第2行~第29頁第4行)
(ク)「<樹脂組成物>
本発明の組成物には、樹脂が含有されていてもよい。以下の本発明の樹脂組成物について説明する。
本発明の樹脂組成物には、
(1)上記の特定の燐酸エステル化合物と銅イオンとよりなる(A)成分が樹脂中に含有されてなる樹脂組成物〔以下、「樹脂組成物(A)」という。〕、および
(2)上記の燐酸エステル銅化合物が樹脂中に含有されてなる樹脂組成物〔以下、「樹脂組成物(B)」という。〕が包含され、さらに、
(3)特定の燐酸エステル化合物と、銅イオンと、燐酸エステル銅化合物とが樹脂中に含有されてなる樹脂組成物が包含される。
〔樹脂組成物(A)〕
樹脂組成物(A)を構成する銅イオンは、適宜の銅イオン供給化合物を、特定の燐酸エステル化合物とともに樹脂に添加することによって、あるいは樹脂を得るための単量体に添加して重合処理することによって、樹脂中に含有させることができる。
上記の銅イオン供給化合物の具体例としては、酢酸銅、塩化銅、ぎ酸銅、ステアリン酸銅、安息香酸銅、エチルアセト酢酸銅、ピロリン酸銅、ナフテン酸銅、クエン酸銅、硫酸銅、硝酸銅、炭酸銅等の銅塩の無水物まはた水和物が挙げられ、また、上記の銅塩の他に水酸化銅を用いることもできるが、これらの銅イオン供給化合物のみに限定されるものではない。
銅イオンの含有割合は、樹脂100質量部あたり、0.01~40質量部であることが好ましく、更に好ましくは0.05~30質量部、特に好ましくは0.1~20質量部とされる。
この割合が0.01質量部未満である場合には、近赤外線を高い効率で吸収する樹脂組成物を得ることが困難となる。一方、この割合が40質量部を超える場合には、銅イオンを樹脂中に分散させることが困難となり、可視光線透過性に優れた樹脂組成物が得られないことがある。
樹脂組成物(A)には、銅イオン以外の金属イオン(以下、「他の金属イオン」という。)が含有されていてもよい。かかる他の金属イオンの具体例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、鉄、マンガン、マグネシウム、二ッケル等の金属によるイオンが挙げられ、これらの他の金属イオンは、銅イオンと同様にして樹脂中に含有させることができる。
このような他の金属イオンの使用割合は、金属イオン全体の50質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。この割合が50質量%を超える場合には、近赤外線の吸収効率の高い樹脂組成物を得ることが困難となる。
〔樹脂組成物(B)〕
樹脂組成物(B)は、上記の燐酸エステル銅化合物が樹脂中に含有されてなる樹脂組成物である。
樹脂としては、アクリル系樹脂を好適に用いることができ、このようなアクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステル系単量体から得られる重合体を好ましく用いることができる。
かかる(メタ)アクリル酸エステル系単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレー卜、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-へキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロシキエチル (メタ)アクリレート、2-ヒドロシキプロピル(メタ)アクリレー卜、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソボル二ル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレン(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート等の変性(メタ)アクリレート類、エチレングリコ一ルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコ一ルジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコ一ルジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオ一ルジ(メタ)アタリレ一卜、1,6-へキサンジオ一ルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス〔4-(メタ)アクリロキシエトキシフエニル〕プロパン、2-ヒドロキシ-1-(メタ)アクリロキシ-3-(メタ)アクリロキシプロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペン夕エリトリットトリ(メタ)アクリレート、ペン夕エリ卜リットテトラ(メタ)アクリレー卜等の多官能(メタ)アクリレート類などが挙げられる。
これらの単量体は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、アクリル系樹脂は、上記の(メタ)アクリル酸エステル系単量体と、これと共重合可能な共重合性単量体との共重合体であってもよい。
かかる共重合性単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸等の不飽和カルボン酸、N,N-ジメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド類、スチレン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、ジブロムスチレン、メトキシスチレン、ビニル安息香酸、ヒドロキシメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物などが挙げられる。
アクリル系樹脂以外の樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、さらにはスチレン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、ジブロムスチレン、メトキシスチレン、ビニル安息香酸、ヒドロキシメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物などの重合体が挙げられる。
以上において、単量体として単官能性のもののみを用いる場合には、熱可塑性の樹脂が得られ、これにより、溶融による成形加工が可能な樹脂組成物を調製することができる。
また、単量体の一部または全部として多官能性のものを用いる場合には、熱硬化性の樹脂が得られる。
本発明においては、得られる樹脂組成物の使用目的、用途、加工方法等に応じて、熱可塑性の樹脂または熱硬化性の樹脂を選択して用いることができる。
本発明の樹脂組成物(A)は、特定の燐酸エステル化合物と銅イオンとを樹脂 中に含有させることにより調製され、樹脂組成物は、燐酸エステル銅化合物を樹脂中に含有させることにより調製される。
ここに、樹脂組成物(A)における特定の燐酸エステル化合物の含有割合としては、樹脂100質量部に対して0.01~80質量部であることが好ましく、更に好ましくは0.1~70質量部、特に好ましくは0.5~50質量部である。
この割合が0.01質量部未満である場合には、樹脂中に銅イオンを分散させることが困難となり、近赤外線の吸収効率の高い樹脂組成物を得ることが困難となる。一方、この割合が80質量部を超える場合には、得られる樹脂組成物が軟らかくなり過ぎて実用性が損なわれる。
また、樹脂組成物(B)における燐酸エステル銅化合物の含有割合としては、樹脂100質量部に対して0.15~70質量部であることが好ましく、更に好ましくは0.25~50質量部、特に好ましくは0.5~40質量部である。
本発明の樹脂組成物の調製方法は、特に限定されるものではないが、好ましい方法として、下記の方法を挙げることができる。
(1)樹脂を得るための単量体中に、特定の燐酸エステル化合物と銅イオン供給化合物とが含有されてなる単量体組成物を調製し、この単量体組成物をラジカル重合処理して樹脂組成物(A)を得る方法。
(2)樹脂を得るための単量体中に燐酸エステル銅化合物が含有されてなる単量体組成を調製し、この単量体組成物をラジカル重合処理して樹脂組成物(B)を得る方法。
(3)熱可塑性の樹脂中に、特定の燐酸エステル化合物と銅イオン供給化合物とを添加して樹脂組成物(A)を得る方法。
(4)熱可塑性の樹脂中に燐酸エステル銅化合物を添加して樹脂組成物(B)を得る方法。」(第29頁5行~第33頁第3行)
(ケ)「<塗布剤>
本発明の塗布剤は、上記の組成物(本発明の液状の組成物またはペースト状の組成物)からなる近赤外線吸収性をを有する加工材料である。
本発明の塗布剤は、上記の燐酸エステル銅化合物を塗料や表面被覆剤などの一般の塗布剤に溶解または分散させることにより調製することができる。
本発明の塗布剤は、有機溶媒およびバインダ一樹脂を含有してなる油性のものであってもよく、例えばアクリル系のポリマーエマルジョンよりなる水性のものであってもよい。また、本発明の塗布剤には、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの添加剤が含有されていてもよい。
本発明の塗布剤の用途は、基材の表面を被覆することを目的とするものであれば特に制限されるものではなく、本発明の塗布剤によれば、近赤外線吸収性を有する塗膜を形成することができる。
ここに、油性の塗布剤を構成するバインダー樹脂としては、脂肪族エステル系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、芳香族エステル樹脂、ポリ力一ボネ一ト樹脂、脂肪族ポリオレフィン樹脂、芳香族ポリオレフィン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニル系変性樹脂、あるいはそれらの共重合樹脂を用いることができる。また、油性の塗布剤を構成する有機溶媒としては、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エステル溶媒系、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、あるいはそれらの混合溶媒を用いることができる。油性の塗布剤における燐酸エステル銅化合物の含有割合は、塗膜の厚み、目的とする近赤外線のカット率、目的とする可視光線の透過率などを考慮して適宜設定されるが、バインダー樹脂100質量部に対して通常0.1~100質量部である。また、バインダー樹脂の含有割合は、塗布剤全体に対して、通常1~50重量%である。
一方、水性の塗布剤の調製方法としては、燐酸エステル銅化合物を微粉化処理して数マイクロメーター以下の微粒子を調製し、当該微粒子を未着色のポリマ一エマルジョン中に分散させる方法を挙げることができる。」(第34頁第26行~第35頁第24行)
(コ)「<近赤外線吸収フィルム>
本発明の近赤外線吸収フィル厶は、上記の燐酸エステル銅化合物あるいは上記の組成物(本発明の組成物)から得られるものであり、下記に示すフィルムが包含される。
(1)上記の粉末またはペースト状物質(本発明の燐酸エステル銅化合物)をフィルム基材に塗布してなるフィルム
(2)上記の組成物(本発明の組成物)からなるフィルム(キャストフィルム)
(3)上記の単量体組成物(本発明の組成物)をフィルム基材の表面に塗布し、この塗布層を乾燥、重合処理することよって得られるフィルム
(4)上記の塗布剤をフィルム基材の表面に塗布して得られるフィルム
(5)上記の接着剤(本発明の接着剤)から形成される中間層を有する複合膜からなるフィルム
(6)上記の粘着剤(本発明の粘着剤)から形成される層を有する複合膜からなるフィルム
上記(1)~(6)のフィルムを構成するフィルム基材としては、ポリエチレンテレフタレ一卜(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂等よりなるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記(1)~(6)のフィルムにおいて、フィルム基材の表面に、粉末またはペースト状物質(本発明の燐酸エステル銅化合物)、単量体組成物、接着剤、粘着剤あるいは塗布剤を塗布する方法としては、バーコーター、ブレードコーター、スピンコーター、リバースコーター、ダイコーターなどを利用する塗布方法、スプレーによる塗布方法などが挙げられる。」(第36頁第20行~第37頁第14行)
(サ)「<近赤外線吸収板>
本発明の近赤外線吸収板は、上記の組成物(本発明の組成物)から得られるものであり、下記に示す板状体が包含される。
(1)上記の組成物(本発明の組成物)からなる板状体
(2)上記の粉末またはペ一スト状物質(本発明の燐酸エステル銅化合物)を基板の表面に塗布することよって得られる板状体
(3)上記の単量体組成物(本発明の組成物)を基板の表面に塗布し、この塗布層を乾燥、重合処理することよって得られる板状体
(4)上記の塗布剤を基板の表面に塗布して得られる板状体
(5)上記の接着剤(本発明の接着剤から形成される中間層を有する複合板
(6)上記の粘着剤(本発明の粘着剤)から形成される層を有する複合板
(7)樹脂板と樹脂フィルム(本発明の近赤外線吸収フィルム)とが中間層を介して接合された板状体
(8)ガラス板と樹脂フィルム(本発明の近赤外線吸収フィルム)とが中間層を介して接合された板状体
上記(3)および(4)の近赤外線吸収板を構成する基板としては、樹脂板およびガラス板を用いることができる。」(第37頁第22行~第38頁第10行)
(シ)「<光学フィルター>
本発明の光学フィルタ一は、上記の組成物(本発明の組成物)から得られるものである。
ここに、本発明の組成物から得られるフィルタ一には、本発明の組成物からなる光学フィルター、およびフィルター基体と本発明の組成物からなる近赤外線吸収層とを有してなる光学フィルターが包含される。
本発明のフィルターによれば、近赤外線領域の光を効率的にカッ卜することができ、しかも、当該領域の光を均等にカッ卜することができ、視感度補正補正フィルター、ノイズカッ卜フィルター、熱線吸収フィルター、プラズマディスプレイ用前面板として好適に用いることができる。」(第38頁第25行~第39頁第6行)
(ス)「<実施例1>
(1)アセチルオキシアルキル(炭素数3)アルコールの調製:
酢酸120gおよび無水酢酸ナトリウム8.2gの混合物を85℃に加熱して保持し、この混合物にプロピレンオキサイド118gを3.5時間かけて滴下した。その後、85℃の温度で7時間保持することにより、酢酸および無水酢酸ナトリウムとプロピレンオキサイドとを反応させた。得られた反応生成液を冷却した後、析出した酢酸ナトリウムを濾別し、得られた濾液を減圧蒸留して、5mmHg、68~70℃における留分195gを得た。この留分をガスクロマ卜グラフィ一により分析したところ、下記式(46)で表される2-(アセチルオキシ)プロピルアルコールと、下記式(47)で表される1-(アセチルオキシメチル)エチルアルコールとの混合物(重量組成比34:66)であった。
(2)燐酸アセチルオキシアルキル(炭素数3)エステルの調製:
このようにして得られたアセチルオキシアルキル(炭素数3)アルコールの混合物140gをジメトキシエタン250mlに溶解し、得られた溶液に五酸化燐52.2gを1時間かけて添加した。次いで、この溶液を60℃で5時間攪拌することにより、アセチルオキシアルキル(炭素数3)アルコールと五酸化燐とを反応させた。その後、得られた反応生成液中のジメトキシエタンを減圧留去することにより、反応生成物173gを得た。この反応生成物は、無色の粘ちょうな液体であった。
上記反応の結果、式(6)で表されるモノ〔1-(アセチルオキシメチル)エチル〕ホスフェート、式(7)で表されるビス〔1-(アセチルオキシメチル)エチル〕ホスフェート、式(8)で表されるモノ〔2-(アセチルオキシ)プロピル〕ホスフエート、式(9)で表されるビス〔2-(アセチルオキシ)プロピル〕ホスフェートおよび式(10)で表される〔1-(アセチルオキシメチル)エチル〕〔2-(アセチルオキシ)プロピル〕ホスフェートの混合物が得られた。この燐酸エステル化合物の混合物の赤外吸収曲線を図1に示す。
(中略)
(3)燐酸アセチルオキシアルキル(炭素数3)エステル銅化合物の調製:
得られた燐酸エステル化合物の混合物10gと、酢酸銅一水和物6.15gとをトルエン80mlに懸濁させ、ディーン-シュタルク(Dean-Stark)の水分離器を用いて還流しながら、燐酸エステル化合物と酢酸銅一水和物とを反応させた。水および酢酸の生成が停止した後、得られた反応生成液中のトルエンの1/2量を留去し、室温に冷却した。次いで、反応生成液にヘキサン40mlを添加し、析出した結晶を濾過して乾燥することにより、淡青色の粉末状の燐酸エステル銅化合物9.9gを得た。以下、この燐酸エステル銅化合物(混合物)を「エステル銅(a)」 という。」(第43頁第5行~第45頁第11行)
(セ)「<実施例8>
エステル銅(a)を含有する樹脂製板状体の調製:
メチルメタクリレート95gに、実施例1で調製したエステル銅(a)5gを添加して混合し、更にα-メチルスチレン0.2gおよび重合開始剤としてt-ブチルパーオキシネオデカネート1.0gを添加した後、当該単量体組成物をガラスモールドに注入し、40℃で5時間、60℃で3時間、90℃で1時間と順次異なる温度で加熱して単量体組成物の注型重合を行うことにより、樹脂組成物よりなる厚みが3mmの板状体を製造した。」(第53頁第6~13行)
(ソ)「<実施例28>
市販のアクリル系コート剤「LR-2515」(三菱レーヨン社製,固形成分が約50質量%)100gに、実施例1で得られたエステル銅(a)5gを混合して溶解させた。このエステル銅(a)が含有されてなるコート剤をガラス基板の表面に塗布し、コート剤中の溶媒を蒸発させることにより、当該ガラス基板の表面に厚みが0.5mmのコート膜を形成し、以て近赤外線吸収板を作製した。この近赤外線吸収板の分光透過率曲線を測定した。結果を図15に示す。この図から明らかなように、この近赤外線吸収板は、近赤外線を高い効率で吸収するものであることが理解される。」(第60頁第10~18行)
なお、図15は、次のとおりのものである。
(タ)「<実施例29>
メチルメタクリレート95g中に、実施例1で得られたエステル銅(a)を溶解させることにより、液状の組成物を調製した。この液状の組成物を内壁面の間隔が3mmのガラス製のセル内に収容することにより、近赤外線吸収部材を作製した。この近赤外線吸収部材の分光透過率曲線を測定した。結果を図16に示す。この図から明らかなように、この近赤外線吸収部材は、近赤外線を高い効率で吸収するものであることが理解される。」(第60頁第19~25行)
なお、図16は、次のとおりのものである。
(チ)「<実施例30>
市販のエステル系コー卜剤「プラスコートRY-103」(互応化学工業社製, 固形成分が約30質量%)150gに、実施例1で得られたエステル銅(a)5gを混合して溶解させた。このエステル銅(a)が含有されてなるコート剤をガラス基板の表面に塗布し、コート剤中の溶媒を蒸発させることにより、当該ガラス板の表面に厚みが0.3mmのコート膜を形成し、以て近赤外線吸収板を作製した。この近赤外線吸収板の分光透過率曲線を測定した。結果を図17に示す。この図から明らかなように、この近赤外線吸収板は、近赤外線を高い効率で吸収するものであることが理解される。」(第60頁第26行~第61頁第6行)
なお、図17は、次のとおりのものである。
イ 甲第2号証に記載された発明
上記アの記載事項(ス)、(セ)に基づけば、甲第2号証には、実施例8として、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「酢酸120gおよび無水酢酸ナトリウム8.2gの混合物を85℃に加熱して保持し、この混合物にプロピレンオキサイド118gを3.5時間かけて滴下し、その後85℃の温度で7時間保持することにより、酢酸および無水酢酸ナトリウムとプロピレンオキサイドとを反応させ、得られた反応生成液を冷却した後、析出した酢酸ナトリウムを濾別し、得られた濾液を減圧蒸留して、5mmHg、68~70℃における留分195gを得て、
このようにして得られたアセチルオキシアルキル(炭素数3)アルコールの混合物140gをジメトキシエタン250mlに溶解し、得られた溶液に五酸化燐52.2gを1時間かけて添加し、次いで、この溶液を60℃で5時間攪拌することにより、アセチルオキシアルキル(炭素数3)アルコールと五酸化燐とを反応させ、その後、得られた反応生成液中のジメトキシエタンを減圧留去することにより、反応生成物173gを得て、
得られた燐酸エステル化合物の混合物10gと、酢酸銅一水和物6.15gとをトルエン80mlに懸濁させ、ディーン-シュタルク(Dean-Stark)の水分離器を用いて還流しながら、燐酸エステル化合物と酢酸銅一水和物とを反応させ、水および酢酸の生成が停止した後、得られた反応生成液中のトルエンの1/2量を留去し、室温に冷却し、次いで、反応生成液にヘキサン40mlを添加し、析出した結晶を濾過して乾燥することにより、淡青色の粉末状の燐酸エステル銅化合物(以下、「エステル銅(a)」 という。)9.9gを得て、
メチルメタクリレート95gに、エステル銅(a)5gを添加して混合し、更にα-メチルスチレン0.2gおよび重合開始剤としてt-ブチルパ一オキシネオデカネート1.0gを添加して得た、単量体組成物。」
(3)甲第4号証
ア 甲第4号証の記載事項
本件特許の優先権主張の日前の2011年(平成23年)6月16日に、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された引用文献であり、特許異議申立人が提出した甲第4号証(国際公開第2011/071052号)には、以下の記載事項がある。なお、下線は、合議体が、甲第4号証に記載された発明の認定等に活用した箇所を示す。
(ア)「技術分野
[0001] 本発明は、近赤外線遮断効果を有するフィルム状または薄板状の光学部材、近赤外線カットフィルタ、撮像装置用レンズおよび固体撮像素子に関し、また、それらを用いた撮像・表示装置に関する。
(中略)
発明が解決しようとする課題
[0012] 本発明は、製造コストが安く、十分な小型化、薄型化を図ることができ、また、反射型フィルタのような入射角度の問題がなく、さらに、近赤外線遮断特性にも十分に優れるフィルム状または薄板状の光学部材、および近赤外線カットフィルタを提供することを目的とする。
(中略)
課題を解決するための手段
[0016] 本発明の一態様によれば、フィルム状または薄板状の光学部材であって、少なくともCuおよびPを含む酸化物の結晶子からなり、数平均凝集粒子径が20nm以上200nm以下である近赤外線吸収粒子を含有する、光学部材が提供される。
[0017] 前記酸化物は、下式(1)で表わされる化合物(例えば、LiCuPO4、Mg1/2CuPO4等)であるのが好ましい。
A1/nCuPO4 …(1)
(式(1)中、Aは、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)およびNH4からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、添字のnは、Aがアルカリ金属またはNH4の場合は1であり、Aがアルカリ土類金属の場合は2である。)
前記酸化物は、下式(1)で表わされる化合物(例えば、LiCuPO4、Mg1/2CuPO4等)であるのが好ましい。
A1/nCuPO4 …(1)
(式(1)中、Aは、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)およびNH4からなる群より選ばれる1種であり、添字のnは、Aがアルカリ金属またはNH4の場合は1であり、Aがアルカリ土類金属の場合は2である。)
(中略)
発明の効果
[0039]
本発明によれば、良好な赤外線遮断機能を有し、かつ撮像装置、表示装置の十分な小型化、薄型化、低コスト化を図ることができる、光学部材、近赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、およびレンズ、並びに、これらを用いた撮像装置、表示装置を得ることができる。」
(イ)「発明を実施するための形態
[0041] 以下、本発明の実施形態のそれぞれについて詳細に説明する。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態は、近赤外線吸収粒子(以下、nIR吸収粒子ともいう)を含有するフィルム状または薄板状の光学部材に関する。
[0042] 本実施形態に用いられるnIR吸収粒子は、少なくともCuおよびPを含む酸化物の結晶子からなり、数平均凝集粒子径が20nm以上200nm以下のものであり、好ましくは、前述した式(1)で表わされる化合物の結晶子からなり、数平均凝集粒子径が20nm以上200nm以下のものである。結晶子を吸収物質として使用することにより、結晶構造に起因する近赤外線吸収特性を維持できる。また、結晶子は微粒子であるため、光学部材中に高濃度で吸収物質を含有させることが可能となり、単位長あたりの吸収能を高めることができる。
(中略)
[0079] 光学部材には、A1/nCuPO4化合物の結晶子からなるnIR吸収粒子以外の近赤外線ないし赤外線吸収材を含有させることができる。この場合、光学部材は、上記nIR吸収粒子および/または上記少なくともCuおよびPを含む酸化物の結晶子のない近赤外線ないし赤外線吸収材を含む層の多層構造とすることができる。
[0080] 上記したnIR吸収粒子以外の近赤外線ないし赤外線吸収材としては、例えばITO(Indium Tin Oxides)、ATO(Antimony-doped Tin Oxides)、ホウ化ランタン等の無機微粒子、有機系色素等が挙げられる。そのなかでも、ITO粒子は、可視波長領域の光の透過率が高く、かつ1200nmを超える赤外波長領域も含めた広範囲の光吸収性を有するため、赤外波長領域の光の遮蔽性を必要とする場合に特に好ましい。ITO粒子は、光学部材中に、0.5質量%以上30質量%以下含有させることが好ましく、1質量%以上30質量%以下含有させることがより好ましい。含有量が0.5質量%以上であれば、赤外波長領域の光の遮蔽性に対し一定の効果が得られる。ITO粒子の含有量が30質量%以下であれば、可視波長領域の光に吸収を示さず、透明性を保持できる。
[0081] ITO粒子の数平均凝集粒子径は、散乱を抑制し、透明性を維持する点から、5nm以上200nm以下であることが好ましく、5nm以上100nm以下であることがより好ましく、5nm以上70nm以下であることがより一層好ましい。
[0082] 有機系色素としては、例えば、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ジチオール金属錯体系化合物、ジイモニウム系化合物、ポリメチン系化合物、フタリド化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、インドフェノール系化合物等が使用できる。」
(ウ)「[0238][nIR吸収粒子の製造]
52質量%リン酸水素二カリウム(純正化学製)水溶液500gを撹拌しながら、この中に5質量%硫酸銅・五水和物(純正化学製)水溶液500gを加え、5時間以上室温にて撹拌し、水色溶液(PO43-/Cu2+(モル比)=15)を得た。
[0239] 得られた水色溶液から生成物を吸引濾過によって分離し、水およびアセトンで洗浄し、水色の生成物を得た。生成物をるつぼに移し、100℃で4時間真空乾燥した後、ワンダーブレンダー(大阪ケミカル社製、以下同じ)を用いて、30秒間の乾式粉砕を2回行った。
[0240] 粉末状態の生成物をるつぼに移し、大気中で、600℃で8時間焼成し、黄緑色の焼成物を得た。焼成物について、ワンダーブレンダーを用いて、30秒間の乾式粉砕を2回行った。得られた黄緑色の焼成物は15.4gであり、硫酸銅・五水和物のモル数を基準とした場合の収率は78%であった。
[0241] 焼成物についてX線回折を測定した。X線回折の結果から、KCuPO4の結晶構造を確認でき、焼成物は、実質的にKCuPO4の結晶子からなる粒子であることが同定された。
[0242] 上記焼成物を水に分散させ、固形分濃度10質量%の分散液とし、超音波ホモジナイザで処理した後、湿式微粒子化装置(スギノマシン社製、スターバーストミニ)を用いて湿式粉砕を行った。分散液がオリフィス径を通過する回数を湿式粉砕処理回数とする。本例においては、湿式粉砕処理回数を20回とした。
[0243] 湿式粉砕後の分散液から解砕物を遠心分離し、るつぼに移して150℃で乾燥し、黄緑色の解砕物を得た。解砕物について、ワンダーブレンダーを用いて、30秒間の乾式粉砕を2回行った。
[0244] 解砕物についてX線回折を測定した。X線回折の結果から、KCuPO4の結晶構造を確認でき、解砕物は、実質的にKCuPO4の結晶子からなるnIR吸収粒子であることが同定された。結晶子の大きさは27nmであった。また、nIR吸収粒子の粒子径測定用分散液を調製し、数平均凝集粒子径を測定したところ、89nmであった。さらに、nIR吸収粒子の拡散反射スペクトル(反射率)を測定し、反射率の変化量Dを求めたところ、-0.46%/nmであった。
(中略)
[0252][近赤外線カットフィルタの製造]
(実施例5)
上記した製造方法により得られたnIR吸収粒子と、メタクリル樹脂(ADELL社製、商品名 HV153;屈折率1.63)とを、固形分がnIR吸収粒子37質量%およびメタクリル樹脂63質量%となるような割合で混合した後、この混合液に直径0.5mmのジルコニアビーズを加え、ボールミルを用いて粉砕し、分散液を得た。得られた分散液を、厚さ1.3mmのガラス板(ソーダガラス)上にスピンコータ(ミカサ社製 スピンコータMS-A200)を用いて塗布し、120℃で1分間加熱乾燥して、厚さ100μmの光学フィルタを作製した。かかる光学フィルタは、本発明の第2の実施態様の近赤外線カットフィルタに該当する。ベースラインを厚さ1.3mmのガラス板として、この光学フィルタの透過率を測定した。結果を表2および図20(透過スペクトル)に示す。
[0253] (実施例6)
上記nIR吸収粒子と、ポリエステル樹脂(東洋紡績社製、商品名 バイロン103;屈折率1.60乃至1.61)の30質量%シクロヘキサノン溶液とを、固形分がnIR吸収粒子44質量%およびポリエステル樹脂56質量%となるような割合で混合し、自転・公転式ミキサーで撹拌し、分散液を得た。得られた分散液を、厚さ3.5mmのガラス板(旭硝子社製フロート板ガラス、品種クリアFL3.5)上にフィルムアプリケーター(安田精機製作所製 No.548-YKG)を用いて塗布し、150℃で15分間加熱して、厚さ50μmの近赤外線吸収層(III)(吸収層(III)と表記)を形成した。
[0254] また、ITO粒子(富士チタン社製;結晶子の大きさ38nm)を分散剤とともにエタノールに混合し、固形分濃度20重量%の分散液を得た。
[0255] このITO粒子含有分散液を、近赤外線吸収層(III)上にスピンコータ(スピンコータMS-A200)を用いて塗布し、150℃15分間加熱して、厚さ4μmの近赤外線吸収層(吸収層(IV)と表記)を形成し、光学フィルタを作製した。かかる光学フィルタは、本発明の第2の実施態様の近赤外線カットフィルタに該当する。ベースラインを厚さ3.5mmのガラス板として、この吸収層(III)と吸収層(IV)とからなる2層構成の吸収膜の透過率を測定した。結果を表2および図21(透過スペクトル)に示す。」
(中略)
[0274]
[表2]
」
イ 甲第4号証に記載された発明
上記アの記載事項(ウ)に基づけば、甲第4号証には、実施例6として、次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
「KCuPO4の結晶子からなるnIR吸収粒子と、ポリエステル樹脂(東洋紡績社製、商品名 バイロン103;屈折率1.60乃至1.61)の30質量%シクロヘキサノン溶液とを、固形分がnIR吸収粒子44質量%およびポリエステル樹脂56質量%となるような割合で混合し、自転・公転式ミキサーで撹拌し、分散液を得て、分散液を、厚さ3.5mmのガラス板(旭硝子社製フロート板ガラス、品種クリアFL3.5)上にフィルムアプリケーターを用いて塗布し、150℃で15分間加熱して、厚さ50μmの近赤外線吸収層(III)を形成し、
ITO粒子(富士チタン社製;結晶子の大きさ38nm)を分散剤とともにエタノールに混合し、固形分濃度20重量%の分散液を得て、ITO粒子含有分散液を、近赤外線吸収層(III)上にスピンコータを用いて塗布し、150℃15分間加熱して、厚さ4μmの近赤外線吸収層(IV)を形成して作製した、近赤外線カットフィルタ。」
(4)甲第5号証
本件特許の優先権主張の日前の平成23年4月7日に、日本国内又は外国において頒布された刊行物であり、特許異議申立人が提出した甲第5号証(特開2011-68731号公報)には、以下の記載事項がある。なお、下線は、合議体が、技術的事項の認定に活用した箇所を示す。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、不可視性の高い近赤外吸収性の硬化性組成物、インク組成物、インクジェット用インクおよびレジスト液に関する。また本発明は、該インクジェット用インクおよびレジスト液を用いた近赤外線吸収フィルタの製造方法に関する。
(中略)
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、不可視性が高い近赤外吸収性の硬化性組成物、インク組成物、インクジェット用インクおよびレジスト液を提供することを課題とする。また本発明は、該インクジェット用インクおよびレジスト液を用いた近赤外線吸収フィルタの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は、下記の手段によって解決された。
<1>下記一般式(1)で表される近赤外吸収性色素を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【化1】
(式中、R1a及びR1bは互いに同じであっても異なっていてもよく、各々独立にアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。R2及びR3は各々独立に水素原子または置換基を表し、少なくとも一方は電子吸引性基であり、R2及びR3は結合して環を形成してもよい。R4は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、置換ホウ素または金属原子を表し、R1a、R1b及び/又はR3と共有結合もしくは配位結合していてもよい。)
(中略)
【発明の効果】
【0008】
本発明の硬化性組成物は、近赤外線吸収能を有し、可視部での吸収がきわめて低く、当該硬化性組成物を用いて作製された硬化膜は、近赤外での吸収性と不可視性の両方の特性を併せ持つという優れた作用効果を奏する。
また、本発明の硬化性インク組成物を含むインクジェット用インクの塗膜を形成し、その後、当該塗膜を硬化させて製造された画像は耐光性に優れ、不可視性が高いため見た目に目立たず、かつ近赤外線で読み取ることができ、水や溶剤などによる滲みにも耐性を有する。
さらに、基板上に形成された隔壁により区画された凹部に、硬化性インク組成物を含むインクジェット用インクの液滴を付与して硬化させて製造された、近赤外線吸収フィルタは、耐光性に優れ、可視部での吸収がほとんどなく、近赤外領域の光をカットすることができる。そのため、この近赤外線吸収フィルタは、固体撮像素子として使用することができる。
また、硬化性組成物を含むレジスト液を基板上に塗布して層を形成する工程と、前記基板上に形成した硬化性組成物の層に対し、マスクを介して露光した後、現像してパターン像を形成する工程を有する近赤外線吸収フィルタの製造方法により、1画素ごとに近赤外線吸収フィルタを形成することができる。」
イ 「【0011】
<近赤外線吸収色素>
まず本発明で用いられる近赤外吸収性色素について説明する。
本発明の硬化性組成物は、下記一般式(1)で表される近赤外吸収性色素を含有する。
【化5】
(中略)
【0050】
次に、前記一般式(1)~(4)で表される近赤外吸収性色素(以下、「近赤外吸収性色素」という。)の合成法について説明する。
近赤外吸収性色素は、該当するジケトピロロピロール化合物に、活性メチレン化合物を縮合させ、場合によっては、さらに、ホウ素や金属を反応させることで合成することができる。ジケトピロロピロール化合物は、「ハイパフォーマンス・ピグメンツ(High Performance Pigments)」,Wiley-VCH,2002年,160~163ページに記載の方法で合成できる。より具体的には、米国特許第5,969,154号明細書や特開平9-323993号公報に記載の方法で合成できる。また、ジケトピロロピロール化合物と活性メチレン化合物との縮合反応やその後のホウ素化については、非特許文献Angewante Chemie International Edition of English,第46巻,第3750~3753ページ(2007年)や、本発明の実施例に記載の方法で製造することができる。ホウ素化試薬はJ.Med.Chem.第3巻356~360頁(1976年)を参考にして合成することができる。また、例えばブロモカテコールボランは東京化成工業社より購入して使用することができる。
【0051】
近赤外吸収性色素は、特に限定されないが、好ましくは700~1200nm、より好ましくは700~1000nmに吸収極大を有する。これらの近赤外吸収性色素は、波長700nm以上1000nm以下の赤外線を選択的に吸収することが好ましい。これらの近赤外吸収性色素は、モル吸光係数εは特に限定されないが、好ましくは50,000~500,000であり、より好ましくは100,000~300,000である。」
3 当審の判断
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と、甲1発明とを対比する。
(ア)硬化性樹脂組成物
甲1発明の「樹脂溶液(D-6)」は、「樹脂溶液(D-6)を、ガラス基板の硬化層上にスリットコーターを用いて塗布し、溶剤を揮発除去し、露光し、その後焼成」することにより、「樹脂層」が形成されるものであるから、「硬化性」であるといえる。
したがって、甲1発明の「樹脂溶液(D-6)」は、技術的にみて、本件特許発明1の「硬化性樹脂組成物」に相当するといえる。
(イ)色素
甲1発明の「近赤外線吸収剤Lumogen IR765(BASF社製)」は、技術的にみて、本件特許発明1の「色素」に相当する。
また、甲1発明の「樹脂溶液(D-6)」は、「樹脂溶液(D-6)を、ガラス基板の硬化層上にスリットコーターを用いて塗布し、溶剤を揮発除去し、露光し、その後焼成して得た積層板(K-12)のガラス基板上に、多層蒸着膜を形成して近赤外線カットフィルター(K’-12)」とした場合の「樹脂層膜厚が30.5μm」である。そうしてみると、甲1発明の「樹脂溶液(D-6)」は、本件特許発明1の「硬化性樹脂組成物」における「20μm以上の膜厚となるように塗布し得る」という要件を満たすものである。
さらに、甲1発明の「樹脂溶液(D-6)」は、「樹脂溶液(D-6)を、ガラス基板の硬化層上にスリットコーターを用いて塗布し、溶剤を揮発除去し、露光し、その後焼成して得た積層板(K-12)のガラス基板上に、多層蒸着膜を形成して近赤外線カットフィルター(K’-12)」とした場合の「吸収極大波長が769nm」である。そうしてみると、甲1発明の「近赤外線吸収剤Lumogen IR765(BASF社製)」は、技術的にみて、本件特許発明1の「色素」における「波長600~850nmの範囲内に極大吸収波長を有する」という要件を満たすものである。
したがって、甲1発明の「樹脂溶液(D-6)」は、本件特許発明1の「20μm以上の膜厚となるように塗布し得る波長600~850nmの範囲内に極大吸収波長を有する色素を含有する」という要件を満たしている。
(ウ)界面活性剤
甲1発明の「界面活性剤(共重合体(S-3))」は、「式M-1-1で表わされるフッ素化アルキル基含有単量体」を含む単量体を共重合を行って得られたものである。そうしてみると、甲1発明の「界面活性剤(共重合体(S-3))」は、本件特許発明1の「界面活性剤」及び「フッ素系界面活性剤」に相当する。
また、甲1発明の「界面活性剤(共重合体(S-3)」は、全単量体100部に対し、「式M-1-1で表わされるフッ素化アルキル基含有単量体」を28.4質量部を用いたものであって、「式M-1-1で表わされるフッ素化アルキル基含有単量体」におけるフッ素含有率は、0.6程度(単量体中のフッ素原子の重量:17×3/単量体の分子量:約518)である。そうしてみると、甲1発明の「界面活性剤(共重合体(S-3)」におけるフッ素含有率は、17%程度(28.4×0.6)である。
したがって、甲1発明の「界面活性剤(共重合体(S-3)」は、本件特許発明1の「フッ素系界面活性剤」における「フッ素界面活性剤中のフッ素含有率は、3質量%~40質量%である」という要件を満たすものである。
(エ)一致点及び相違点
以上より、本件特許発明1と甲1発明とは、
「20μm以上の膜厚となるように塗布し得る波長600~850nmの範囲内に極大吸収波長を有する色素及び界面活性剤を含有する硬化性樹脂組成物であって、
前記界面活性剤がフッ素系界面活性剤であり、前記フッ素界面活性剤中のフッ素含有率は、3質量%~40質量%である、硬化性樹脂組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1-1]色素が、本件特許発明1は「ピロロピロール色素又は銅錯体」であるのに対して、甲1発明は、「近赤外線吸収剤Lumogen IR765(BASF社製)」である点。
[相違点1-2]本件特許発明1の「硬化性樹脂組成物」は、「固形分濃度が10~90質量%であり、25℃における粘度が1mPa・s以上1000Pa・s以下である」のに対して、甲1発明の「樹脂溶液(D-6)」は、固形分濃度が約8.6質量%((100+0.10+0.15)/(1010+150))であって、25℃における粘度が明らかとされていない点。
イ 判断
事案に鑑みて、[相違点1-1]について検討する。
甲第1号証の記載事項(ア)における「本発明は、視野角が広く、さらに、近赤外線カット能に優れ、更にハンダリフロー工程での使用に適した耐熱性を有する、特にCCD、CMOS等の固体撮像装置に好適に用いることができる近赤外線カットフィルターを得ることを目的とする。」(段落【0009】)という記載に基づけば、甲1発明は、「視野角が広く、さらに、近赤外線カット能に優れ、更にハンダリフロー工程での使用に適した耐熱性を有する」近赤外線カットフィルターを得ることを課題としているといえる。そして、甲第1号証の記載事項(イ)には、「本発明の近赤外線カットフィルターに用いることができる近赤外線吸収剤は、(iv)大気中で熱重量分析にて測定した5%重量減少温度が、好ましくは250℃以上であり、更に好ましくは260℃以上、特に好ましくは270℃以上である。重量減少温度が前記条件を満たすことで、高温条件下でも分解することなく、ハンダリフロー工程での使用に十分な熱性が確保され、安定した品質の近赤外線カットフィルターを提供することができる。」(段落【0051】)、「このような近赤外線吸収剤としては、例えば、シアニン系染料、フタロシアニン系染料、アミニウム系染料、イミニウム系色素、アゾ系色素、アンスラキノン系色素、ジイモニウム系色素、スクアリリウム系色素およびポルフィリン系色素が挙げられる。」(段落【0053】)と記載されている。上記記載に基づけば、甲第1号証には、甲第1号証における課題を解決するために、近赤外線カットフィルターに用いることができる近赤外線吸収剤について、大気中で熱重量分析にて測定した5%重量減少温度が250℃以上の近赤外線吸収剤を用いることが記載されている。そして、甲第1号証には、このような条件を満たす近赤外線吸収剤として様々な色素等が挙げられているものの、「ピロロピロール色素又は銅錯体」を用いることについては、記載も示唆もなされていない。
一方、甲第2号証には、例えば記載事項(コ)に、「本発明の近赤外線吸収フィル厶は、上記の燐酸エステル銅化合物あるいは上記の組成物(本発明の組成物)から得られるもの」と記載されている。甲第2号証の記載事項(エ)には、「本発明の燐酸エステル化合物は、 適宜の銅イオン供給化合物によって銅イオンが供給されると、燐酸基と銅イオンとが配位結合またはイオン結合する。」と記載されていることから、甲第2号証には、近赤外線吸収フィルムに用いられる色素として、銅錯体である「燐酸エステル銅化合物」を用いることが示されているといえる。しかし、甲2号証には、上記燐酸エステル銅化合物の5%重量減少温度について何ら記載されておらず、上記燐酸エステル銅化合物がハンダリフロー工程での使用に適した耐熱性を有することを示唆する記載もなく、燐酸エステル銅化合物がハンダリフロー工程での使用に適した耐熱性を有することが、当業者にとって自明であるともいえない。また、甲第4号証には、記載事項(ア)に、「少なくともCuおよびPを含む酸化物の結晶子からなり、数平均凝集粒子径が20nm以上200nm以下である近赤外線吸収粒子を含有する、光学部材」が記載されており、記載事項(イ)には、近赤外線吸収粒子(nIR吸収粒子)以外の近赤外線ないし赤外線吸収材として、「ITO(Indium Tin Oxides)、ATO(Antimony-doped Tin Oxides)、ホウ化ランタン等の無機微粒子、有機系色素等」を含有させること、「有機系色素としては、例えば、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ジチオール金属錯体系化合物、ジイモニウム系化合物、ポリメチン系化合物、フタリド化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、インドフェノール系化合物等が使用できる」ことも記載されている。しかし、甲4号証には、「ピロロピロール色素又は銅錯体」を用いることについては、記載も示唆もなされていない。さらに、甲第5号証には、記載事項イに、「近赤外吸収性色素は、該当するジケトピロロピロール化合物に、活性メチレン化合物を縮合させ、場合によっては、さらに、ホウ素や金属を反応させることで合成すること」が記載されている。しかし、甲第5号証には、上記近赤外吸収性色素の5%重量減少温度について何ら記載されておらず、上記近赤外吸収性色素がハンダリフロー工程での使用に適した耐熱性を有することを示唆する記載もなく、近赤外吸収性色素がハンダリフロー工程での使用に適した耐熱性を有することが、当業者にとって自明であるともいえない。
以上より、甲1発明における近赤外線吸収剤は、高温条件下でも分解することなく、ハンダリフロー工程での使用に十分な熱性を確保するために、大気中で熱重量分析にて測定した5%重量減少温度が、250℃以上であることが必要とされるところ、ピロロピロール色素及び銅錯体が上記条件を満たす近赤外線吸収剤であることは知られていない。そうすると、仮に、「ピロロピロール色素又は銅錯体」が周知の近赤外線吸収剤であったとしても、甲1発明における近赤外線吸収剤として、「ピロロピロール色素又は銅錯体」を採用しようとする動機付けはない。
したがって、当業者であっても、甲1発明における近赤外線吸収剤「Lumogen IR765」の代わりに、「ピロロピロール色素又は銅錯体」を採用しようと考えたとはいえないから、本件特許発明1の[相違点1-1]に係る構成とすることが、容易になし得たということはできない。
ウ 特許異議申立人の意見
令和元年7月8日に提出された意見書において、特許異議申立人は、本件特許発明1に対し、「甲1発明の「近赤外線吸収剤」として甲2発明の「銅錯体」を適用することは、格別の技術的困難性を伴うものではなく、適宜に採用し得る設定的事項である。」と主張している。
しかしながら、前記イにおいて検討したとおり、甲1発明における近赤外線吸収剤は、高温条件下でも分解することなく、ハンダリフロー工程での使用に十分な熱性を確保するために、大気中で熱重量分析にて測定した5%重量減少温度が、250℃以上であることが必要とされるものであるから、甲第2号証の開示により、「銅錯体」が本件特許の優先権主張の日前に当業者に知られていたとしても、甲1発明における近赤外線吸収剤として、「ピロロピロール色素又は銅錯体」を採用しようとする動機付けがない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は、採用することができない。
エ 以上のとおりであるから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、甲1発明に基づいて、容易に発明をすることができたものということはできない。
(2)本件特許発明4について
ア 対比
本件特許発明4と、甲2発明とを対比する。
(ア)硬化性樹脂組成物
甲2発明の「単量体組成物」は、「メチルメタクリレート」及び「重合開始剤としてt-ブチルパ一オキシネオデカネ一ト」を含むものであるから、技術的にみて、硬化性の組成物であるといえる。そうすると、甲2発明の「単量体組成物」は、本件特許発明4の「硬化性樹脂組成物」に相当する。
(イ)色素
甲2発明の「エステル銅(a)」は、「淡青色の粉末状」である。そうすると、甲2発明の「エステル銅(a)」は、技術的にみて、本件特許発明4の「色素」に相当する。
そして、甲第2号証の図16には、「エステル銅(a)」とメチルメタクリレートからなる液状の組成物(実施例29)が800~850nm辺りに極大吸収を有することが示されている。
そうしてみると、甲2発明の「エステル銅(a)」は、本件特許発明4の「色素」における「波長600~850nmの範囲内に極大吸収波長を有する」という要件を満たすものである。
したがって、甲2発明の「単量体組成物」は、本件特許発明4の「波長600~850nmの範囲内に極大吸収波長を有する色素」を含有するという要件を満たしている。
(ウ)重合性化合物
甲2発明の「メチルメタクリレート」は、技術的にみて、本件特許発明4の「重合性化合物」に相当する。
また、甲2発明の「メチルメタクリレート」は、本件特許発明4の「重合性化合物が単量体である」とする要件を満たしている。
(エ)以上より、本件特許発明4と甲2発明とは、
「波長600~850nmの範囲内に極大吸収波長を有する色素及び重合性化合物を含有する硬化性樹脂組成物であって、
上記重合性化合物が単量体である、硬化性樹脂組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点4-1]硬化性樹脂組成物が、本件特許発明4は、「20μm以上の膜厚となるように塗布し得る」とされるのに対し、甲2発明は、「20μm以上の膜厚となるように塗布し得る」かどうかが明らかでない点。
[相違点4-2]本件特許発明4は、「固形分濃度が40~70質量%であり、25℃における粘度が1mPa・s以上1000Pa・s以下」であるのに対し、甲2発明は、固形分濃度及び粘度が明らかとされていない点。
[相違点4-3]色素が、本件特許発明4は、「ピロロピロール色素、シアニン系染料、フタロシアニン系染料、クアテリレン系色素、アミニウム系染料、イミニウム系色素、アゾ系色素、アンスラキノン系色素、スクアリリウム系色素及びポルフィリン系色素からなる群から選択される少なくとも1種」であるのに対し、甲2発明は、「エステル銅(a)」である点。
イ 判断
事案に鑑みて、[相違点4-3]について検討する。
甲第2号証の記載事項(ア)に基づけば、甲2発明は、「銅イオンが有する近赤外線吸収機能を効率的に発現させることができる新規な燐酸エステル化合物」よりなる「近赤外線吸収性の組成物」を前提とする発明である。そして、甲第2号証の記載事項(イ)の「本発明の第1の目的は、銅イオンが有する近赤外線吸収機能を効果的に発現させることができ、銅イオンを種々の媒体中に容易に分散または溶解させることができる新規な燐酸エステル化合物を提供することにある」との記載に基づけば、甲2発明は、銅イオンを種々の媒体中に容易に分散または溶解させることができる新規な燐酸エステル化合物を提供することを、目的としている。
そうすると、近赤外線吸収フィルムを形成するための硬化性樹脂組成物において、ピロロピロール色素、シアニン系染料、フタロシアニン系染料、クアテリレン系色素、アミニウム系染料、イミニウム系色素、アゾ系色素、アンスラキノン系色素、スクアリリウム系色素及びポルフィリン系色素等の色素を用いることが、仮に周知技術であったとしても、甲2発明の「エステル銅(a)」を、銅イオンを有さない他の色素に代えるとすると、甲2発明の前提条件を変更し、甲第2号証が掲げる目的を達しないものとなる。
したがって、甲2発明の「エステル銅(a)」を、銅イオンを有さない他の色素に代える動機付けは見いだせず、当業者であったとしても、甲2発明の「エステル銅(a)」を、変更し、本件特許発明4の上記[相違点4-3]に係る構成とすることが、容易になし得るということはできない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明4は、当業者であっても、甲2発明に基づいて、容易に発明をすることができたものということはできない。
(3)本件特許発明2、9~11、14~30について
本件特許発明1の記載を引用する本件特許発明2、9~11、14~30は、何れも、本件特許発明1と同じ、色素が、「ピロロピロール色素又は銅錯体」であるという構成を有している。そうすると、本件特許発明1の記載を引用する本件特許発明2、9~11、14~30は、本件特許発明1と同じ理由により、当業者であっても、甲1発明に基づいて、容易に発明をすることができたものということはできない。
また、本件特許発明4を引用する本件特許発明5~11、14~30は、何れも、本件特許発明4と同じ、色素が、「ピロロピロール色素、シアニン系染料、フタロシアニン系染料、クアテリレン系色素、アミニウム系染料、イミニウム系色素、アゾ系色素、アンスラキノン系色素、スクアリリウム系色素及びポルフィリン系色素からなる群から選択される少なくとも1種」であるという構成を有している。そうすると、本件特許発明4の記載を引用する本件特許発明5~11、14~30は、本件特許発明4と同じ理由により、当業者であっても、甲2発明に基づいて、容易に発明をすることができたものということができない。
(4)むすび
以上のとおり、本件特許発明1、2、4~6、9~11、14~30は、当業者であっても、甲1発明又は甲2発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明1、2、4~6、9~11、14~30は、特許法第29条第2項の規定を満たしている。
第5 取消理由通知<決定の予告>において採用しなかった記載した取消理由
1 取消理由の概要
平成30年11月27日付けで通知された取消理由のうち、平成31年3月29日付けで通知された取消理由<決定の予告>において採用しなかった取消理由の概要は、以下のとおりである。
本件特許発明12及び本件特許発明13は、本件特許の優先権主張の日前に、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された引用文献である甲第4号証に記載された発明、及び、本件特許の優先権主張の日前に、日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第5号証の記載事項に基づいて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
2 各甲号証の記載及び各甲号証に記載された発明
各甲号証の記載事項及び各甲号証に記載された発明は、前記第4の2に記載したとおりである。
3 当審の判断
(1)本件特許発明12について
ア 対比
本件特許発明12と、甲4発明とを対比する。
(ア)赤外線カットフィルタ
甲4発明の「近赤外線カットフィルタ」は、「ガラス板」上に形成した「近赤外線吸収層(III)」上に、さらに「近赤外線吸収層」を形成して作製したものである。
そうすると、甲4発明の「近赤外線カットフィルタ」は、本件特許発明12の「赤外線カットフィルタ」に相当する。
(イ)第1の色素含有層
甲4発明の「近赤外線カットフィルタ」における「近赤外線吸収層(III)」は、「KCuPO4の結晶子からなるnIR吸収粒子」を含む分散液を、ガラス板上にフィルムアプリケーターを用いて塗布し、150℃で15分間加熱して形成したものである。そして、甲4発明の「KCuPO4の結晶子からなるnIR吸収粒子」は、技術的にみて、「色素」であるといえる。
そうすると、甲4発明の「近赤外線カットフィルタ」における「近赤外線吸収層(III)」は、本件特許発明12の「赤外線カットフィルタ」における「第1の色素含有層」に相当する。
(ウ)第2の色素含有層
甲4発明の「近赤外線カットフィルタ」における「近赤外線吸収層(IV)」は、「ITO粒子」含有分散液を、近赤外線吸収層(III)上にスピンコータを用いて塗布し、150℃15分間加熱して形成したものである。そして、甲4発明の「ITO粒子」は、技術的にみて、「色素」であるといえる。
そうすると、甲4発明の「近赤外線カットフィルタ」における「近赤外線吸収層(IV)」は、本件特許発明の「赤外線カットフィルタ」における「第2の色素含有層」に相当する。
(エ)以上より、本件特許発明12と甲4発明とは、
「第1の色素含有層と、第2の色素含有層とを有する赤外線カットフィルタ。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点12]第1の色素含有層及び第2の色素含有層が含有する色素が、本件特許発明12では「銅錯体」及び「ピロロピロール色素」であるのに対し、甲4発明では「KCuPO4の結晶子」及び「ITO粒子」である点。
イ 判断
甲第4号証の記載事項(イ)には、「光学部材には、A1/nCuPO4化合物の結晶子からなるnIR吸収粒子以外の近赤外線ないし赤外線吸収材を含有させることができる」(段落[0079])こと、「nIR吸収粒子以外の近赤外線ないし赤外線吸収材としては、例えばITO(Indium Tin Oxides)、ATO(Antimony-doped Tin Oxides)、ホウ化ランタン等の無機微粒子、有機系色素等が挙げられる」(段落[0080])こと、「有機系色素としては、例えば、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ジチオール金属錯体系化合物、ジイモニウム系化合物、ポリメチン系化合物、フタリド化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、インドフェノール系化合物等が使用できる」(段落[0082])ことが記載されている。しかしながら、甲第4号証には、近赤外線ないし赤外線吸収材として、本件特許発明12において特定される配位子を有する銅錯体又はピロロピロール色素を採用することについて、記載も示唆もない。
また、甲第5号証の記載事項イには、「ジケトピロロピロール化合物に、活性メチレン化合物を縮合させ」て合成した近赤外吸収性色素が記載されている。さらに、甲第2号証には、前記第4の3(1)イに記載したとおり、近赤外線吸収フィルムに用いられる色素として、銅錯体である「燐酸エステル銅化合物」を用いることが示されている。しかしながら、甲第2号証及び甲第5号証には、銅錯体及びピロロピロール色素がハンダリフロー工程での使用に適した耐熱性を有することを示唆する記載がなく、銅錯体及びピロロピロール色素がハンダリフロー工程での使用に適した耐熱性を有することが、当業者にとって自明であるともいえない。
そして、本件特許の段落【0053】には「リフロー工程に耐え得る耐熱性の観点から、ピロロピロール色素及び銅錯体を組み合わせて使用することが好ましい。また2種以上の色素を使用する場合には、それらの色素は同一の層に含有させても、異なる層に含有させてもよい。」と記載され、段落【0132】には「また、色素含有層は多層から構成されていてもよい。例えば、第1の色素含有層には銅錯体を含有させ(銅錯体含有層)、第2の色素含有層には銅錯体と異なる色素(好ましくはピロロピロール色素)を含有させる。・・・異なる2種類の色素を併用することで、所望の波長の光を遮光することができ、また第2の色素含有層を銅錯体含有層で覆うことで、第2の色素含有層の色素の耐熱性が不十分であって、リフロー工程に耐えることができる。」と記載され、段落【0145】には「例えば、銅錯体を含有する第1の色素含有層と、ピロロピロール色素を含有する第2の色素含有層とを有する赤外線カットフィルタは、リフロー工程における耐熱性の観点から好ましい。」と記載されている。上記記載に基づけば、本件特許発明12は、第1の色素含有層及び第2の色素含有層が含有する色素を「銅錯体」及び「ピロロピロール色素」とすることにより、リフロー工程における耐熱性に優れるという効果を奏するといえる。
以上のとおり、甲第4号証には、近赤外線ないし赤外線吸収材として、本件特許発明12において特定される配位子を有する銅錯体又はピロロピロール色素を採用することについて、記載も示唆もなく、近赤外線ないし赤外線吸収材を「銅錯体」及び「ピロロピロール色素」としたことの効果も、当業者が予測できたものということはできない。したがって、当業者であっても、甲4発明の「KCuPO4の結晶子」及び「ITO粒子」を、「銅錯体」及び「ピロロピロール色素」に代えることが容易になし得るとはいえない。
ウ 特許異議申立人の意見
平成31年3月7日に提出された意見書において、特許異議申立人は、本件特許発明12に対し、「甲2発明における燐酸エステル銅化合物は、銅錯体であって色素に相当するものであるから、該燐酸エステル銅化合物を甲4発明の銅錯体として適用することに何らの技術的困難性はない。」と主張している。また、令和元年7月8日に提出された意見書においても同様の主張を行っている。
しかしながら、前記イにおいて検討したとおり、本件特許発明12は、第1の色素含有層及び第2の色素含有層が含有する色素を「銅錯体」及び「ピロロピロール色素」とすることにより、リフロー工程における耐熱性に優れるという効果を奏するものである。そして、そのような効果を奏することは、甲第2号証には記載も示唆もされておらず、当業者にとって自明であるということもできない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は、採用することができない。
エ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明12は、当業者であっても、甲4発明に基づいて、容易に発明をすることができたものということはできない。
(2)本件特許発明13について
本件特許発明13は、本件特許発明12と同じ、第1の色素含有層及び第2の色素含有層が含有する色素が、「銅錯体」及び「ピロロピロール色素」であるという構成を有している。そうすると、本件特許発明13は、本件特許発明12と同じ理由により、当業者であっても、甲4発明に基づいて、容易に発明をすることができたものということはできない。
(3)むすび
以上のとおり、本件特許発明12及び13は、当業者であっても、甲4発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明12及び13は、特許法第29条第2項の規定を満たしている。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由
1 異議申立理由の概要
特許異議申立人が主張する異議申立理由のうち、平成30年11月27日付けで通知した取消理由及び平成31年3月29日付けで通知した取消理由<決定の予告>において採用しなかった異議申立理由の概要は、以下のとおりである。
(1)非採用異議申立理由1
本件特許発明4、6、15、17は、本件特許の優先権主張の日前に、日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証の記載事項に基づいて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)非採用異議申立理由2
本件特許発明3の記載及び本件特許発明3の記載を引用する本件特許発明6、9~11、14、17の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、取り消すべきものである。
2 各甲号証の記載及び各甲号証に記載された発明
各甲号証の記載事項及び各甲号証に記載された発明は、前記第4の2に記載したとおりである。
3 当審の判断
(1)非採用異議申立理由1
ア 甲1’発明の認定について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、甲第1発明には以下の発明が記載されていると主張している。
「1~100μmの膜厚となるように塗布し得る波長600~800nmの範囲内に極大吸収波長を有する近赤外線吸収剤及び(メタ)アクリル酸エステルを含有する組成物であって、
固形分濃度が60質量%であり、当該組成物を塗布し溶剤を乾燥させて樹脂層を形成し、
前記近赤外線吸収剤が、シアニン系染料、フタロシアニン系染料、アミニウム系染料、イミニウム系色素、アゾ系色素、アンスラキノン系色素、ジイモニウム系色素、スクアリリウム系色素およびポルフィリン系色素から選択される少なくとも1種である、組成物。」
しかしながら、甲第1号証には、「組成物」が「1~100μmの膜厚となるように塗布」し得ること、「(メタ)アクリル酸エステルを含有する」こと、「固形分濃度が60質量%」であることが記載されていない。
甲第1号証の段落【0036】には、形成される樹脂層の厚みについて、「好ましくは1~100μm、さらに好ましくは2~50μm、特に好ましくは、3~30μmであることが望ましい。」との記載があるが、上記厚みを「塗布」により形成するものとしていない。段落【0080】には、ペレットを溶融形成する方法も挙げられている。また、甲第1号証の段落【0084】~【0099】には、樹脂層とは別に設けられる「硬化層」に「(メタ)アクリロイル基含有化合物」に由来する構造単位を有することが記載されているに過ぎず、近赤外線吸収剤と共に(メタ)アクリル酸エステルを含有する樹脂組成物について何ら記載がない。さらに、甲第1号証の段落【0080】には、液状樹脂組成物が記載されるものの、固形分濃度については何ら記載がない。
したがって、甲第1号証には、特許異議申立人が主張するような上記発明が記載されていたとはいえない。
甲第1号証の段落【0053】に列記された近赤外線吸収剤を含む組成物に関する発明として、甲第1号証には、前記第4の2(1)イ(イ)に記載した「甲1’発明」が記載されている。
イ 対比
本件特許発明4と甲1’発明とを対比すると、少なくとも、以下の点で相違する。
[相違点]本件特許発明4は、「重合性化合物」を含有するのに対し、甲1’発明は、重合性化合物を含有しない。
ウ 判断
上記[相違点]について検討すると、甲第1号証には、樹脂層の製造方法に用いる液状組成物について、「重合性化合物」を含むことや、樹脂層の製造において樹脂層を重合して製造することに関して、何ら記載も示唆もない。そうすると、当業者であっても、甲1’発明において、重合性化合物を添加することが容易になし得るということはできない。
エ 特許異議申立人の意見
令和元年7月8日に提出された意見書において、特許異議申立人は、本件特許発明4に対し、「色素が、「シアニン系染料、・・・からなる群から選択される少なくとも1種」である点については、・・・甲1’発明および甲3記載の公知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものであることに変わりはない。」と主張している。
しかしながら、前記イに記載したとおり、本件特許発明4と甲1’発明とは、上記[相違点]において相違している。そして、前記ウに記載したとおり、当業者であっても、甲1’発明に重合性化合物を加え、上記[相違点]に係る本件特許発明4の構成とすることが容易になし得るということはできない。
したがって、特許異議申立人の意見は採用できない。
(2)非採用異議申立理由2
本件特許発明3は、本件訂正請求によって削除された。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許発明1、2、4~6、9~30に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に、本件特許発明1、2、4~6、9~30に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項3、7、8に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項3、7、8に対して特許異議申立人がした特許異議申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2018-700776