特許異議申立
2018-700603
粒状スラッジ発生抑制剤
- 審判番号
- 2018-700603
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-185958
- 登録番号
- 特許第6266930号(P6266930)
- 請求日
- 2018年07月23日
- 審決日
- 2018年10月02日
- 公報発行日
- 2018年11月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】スギムラ化学工業株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人上野特許事務所
- 【権利者代理人】山田 和寛
- 【権利者】JFEスチール株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人上野特許事務所
- 【権利者代理人】山田 和寛
- 【異議申立人】鈴木 秀仁
- 審判長/審判官
- 審判長 板谷 一弘
- 審判官 結城 佐織
- 審判官 亀ヶ谷 明久
- 分類
- P1651.113-Y (C23G) / P1651.121-Y (C23G) / P1651.536-Y (C23G) / P1651.537-Y (C23G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6266930号発明「粒状スラッジ発生抑制剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6266930号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6266930号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願(特願2013-185958)は、平成25年 9月 9日に出願したものであって、平成30年 1月 5日にその特許権の設定登録がされ、同年 1月24日付け特許掲載公報が発行されたものである。
その後、同年 7月23日に、本件特許について、特許異議申立人鈴木秀仁(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
酸洗槽の出側にリンガーロールが配設される酸洗浄工程において、下記「化9」~「化14」のいずれかの一般式に該当する化合物から選ばれる1種又は2種以上の腐食防止剤を10~2000mg/Lの濃度で含有する酸洗浄液に添加して使用する粒状スラッジ発生抑制剤であって、
下記「化1」、「化2」、「化6」~「化8」のいずれかの一般式に該当する化合物から選ばれる1種又は2種以上を、1~50000mg/Lの濃度で添加して使用する粒状スラッジ発生抑制剤。
【化1】
(上記「化1」の一般式において、nは3以上の整数を示し、Rは1~3個のアルキレン基であり、XはF、Cl、Br、またはIである。)
【化2】
(上記「化2」の一般式において、nは3以上の整数を示す。)
【化6】
(上記「化6」において、Rは1~3個のアルキレン基であり、nは10以上の整数である。)
【化7】
(上記「化7」において、nは3以上の整数であり、XはF、Cl、Br、又はIである。)
【化8】
(上記「化8」において、nは1以上の整数である。)
【化9】
(上記「化9」の一般式で示される末端にチオール基を有するアリルアミン類重合体において、R1、R2は水素又は炭素数1~10のアルキル基を示し、R1とR2は同一の基であっても異なる基であってもよい。nは1以上の整数を示す。)
【化10】
(上記「化10」の一般式で示される末端にチオール基を有するアリルアミン類重合体において、Rは水素又は水酸基を有しても良い炭素数1~10のアルキル基を示し、nは1以上の整数を示す。)
【化11】
(上記「化11」の一般式で示される末端にチオール基を有するアリルアミン類重合体において、Rは水素又は水酸基を有しても良い炭素数1~10のアルキル基を示し、nは1以上の整数を示す。)
【化12】
(上記「化12」の一般式において、R1、R2は水素又は炭素数1~4のアルキル基を示し、R1とR2は同一の基であっても異なる基であってもよい。nは1~4整数を示し、pは1以上の整数を示す。)
【化13】
(上記「化13」の一般式において、R1、R2は水素又は炭素数1~4のアルキル基を示し、R1とR2は同一の基であっても異なる基であってもよい。nは1~4整数を示し、pは1以上の整数を示す。)
【化14】
(上記「化14」の一般式において、nは1以上の整数を示し、R1とR2はそれぞれ水素、メチル基、又はエチル基であって、R1とR2は同一の基であっても異なる基であってもよい。XはF、Cl、Br、又はIを示す。)」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証~甲第11号証を提出し、以下の理由により、請求項1に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
(1)申立理由1
請求項1に係る発明は、甲第1号証~甲第11号証に記載された発明であるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。
(2)申立理由2
請求項1に係る発明は、甲第1号証~甲第11号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
(3)申立理由3
本件特許の発明の詳細な説明は、請求項1に係る発明を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、請求項1に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反してなされたものである。
(4)申立理由4
請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、請求項1に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してなされたものである。
(5)申立理由5
請求項1に係る発明は、明確でないから、請求項1に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してなされたものである。
[証拠方法]
甲第1号証:特開平5-70980号公報
甲第2号証:特開2001-207281号公報
甲第3号証:特開平5-239673号公報
甲第4号証:特開2003-166089号公報
甲第5号証:特開2011-252220号公報
甲第6号証:特開2005-126801号公報
甲第7号証:特開2007-302986号公報
甲第8号証:柴田隼次、玉腰博美「界面活性剤の存在下での酸化鉄微粒子の凝集と分散」化学工学論文集、化学工学会、1994年、第20巻、第5号、701頁~707頁
甲第9号証:特開2004-42353号公報
甲第10号証:特開2005-89784号公報
甲第11号証:特開2011-122108号公報
以下、それぞれ「甲1」~「甲11」という。
第4 各甲号証の記載
1 甲第1号証について
甲第1号証(特開平5-70980号公報)には、「リンガーロールの液絞り性の診断方法及びその装置」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている(当審注:下線は、当審が付した。以下、同様。)。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、冷延鋼帯等の金属帯板を連続処理する酸洗槽、クリーニング槽、リンス槽等の液処理槽の出側に設置したリンガーロールの液絞り性を診断する方法及びその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の技術を鋼帯の処理を例にとって説明する。鋼帯の熱間圧延以降の工程、すなわち鋼帯の酸洗、冷間圧延、クリーニング、焼鈍、メッキ等の連続処理ラインにおいては、その入側部に酸洗槽、クリーニング槽、リンス槽があり(各ラインによってそれらの組み合わせは異なる)、鋼帯をこれらの槽内の液中に直接浸漬しながら、或いは液スプレイの中を通して処理する。
【0003】このため、槽出側には必ずリンガーロールを設けて、鋼帯表面に付着した処理液を絞りながら鋼帯を下流へ送るのが一般的な方法である。」
2 甲第2号証について
(1)甲第2号証の記載事項
甲第2号証(特開2001-207281号公報)には、「酸洗浄用腐食抑制剤、それを含んだ洗浄液組成物および金属表面の洗浄方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 なお、・・・は省略を表す。以下同様。
「【請求項1】 水または酸に可溶であって、次の式(I)または式(II)で示されるジアリルアルキレンジアミン共重合体またはその付加塩の1種以上から成ることを特徴とする酸洗浄用腐食抑制剤。
【化1】
【化2】
式中R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~4のアルキル基、nは1~4の整数、pは5以上の整数を示す。」
「【請求項3】 酸液1Lに対し、請求項1または2に記載する酸洗浄用腐食抑制剤を0.1~50000mg含有することを特徴とする洗浄液組成物。」
「【0030】本発明に従う洗浄液組成物は、酸液1Lに対して、前記本発明の酸洗浄用腐食抑制剤を0.1~50000mg、好ましくは1~10000mg、さらに好ましくは1~5000mgを含む。含有量が酸液1Lに対して0.1mg未満では腐食効果がなく、また50000mgを超えて加えても腐食効果が増加しない。」
「【0033】また、本発明の洗浄液組成物は、他の腐食抑制剤と併用してもよく、本発明の洗浄液組成物に他の腐食抑制剤を添加しても、酸液に本発明の腐食抑制剤と他の腐食抑制剤とを別々に添加してもよい。
【0034】併用する他の腐食抑制剤の具体例としては、・・・ポリアミン化合物(たとえば商品名PAS、ポリアリルアミン(日東紡績)、商品名ガスカミン328(三菱ガス化学)、商品名ケミスタット6300H、ケミスタット7300(三洋化成)、商品名アニリックス(三井化学)など)が挙げられるが、本具体例に限定されるものではない。」
(2)甲第2号証に記載された発明
上記請求項1、請求項3に注目すると、甲第2号証には、以下の発明が記載されているといえる。
<甲2発明>
「酸液1Lに対し、次の式(I)または式(II)で示されるジアリルアルキレンジアミン共重合体またはその付加塩の1種以上から成る酸洗浄用腐食抑制剤を0.1~50000mg含有する洗浄液組成物。
【化1】
【化2】
式中R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~4のアルキル基、nは1~4の整数、pは5以上の整数を示す。」
3 甲第3号証について
甲第3号証(特開平5-239673号公報)には、「腐食抑制剤組成物、これを添加した金属酸洗液および金属の酸洗方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 下記(A)と(B)との混合物から成ることを特徴とする腐食抑制剤組成物。
(A)分子内に1級アミン、2級アミン、3級アミンもしくは4級アンモニウム基またはアミド基の1種または2種以上を2個以上有する水または酸に可溶の化合物またはこれらの化合物の混合物。
(B)分子内にエーテル基、水酸基、エステル基またはケトン基のうち少なくとも1種の基を有する水溶性高分子またはこれらの2種以上の混合物。
【請求項2】 前記(A)の化合物が、下記(1)~(10)に示す化合物のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の腐食抑制剤組成物。
・・・
(2)次の一般式で表されるポリビニルカチオン樹脂
【化2】
(3)次の一般式で表されるポリアルキレンポリアミン
【化3】
(式中、nは2以上であり、Rは炭素数1~3のアルキル基である。)
・・・
(6)次の一般式で表される芳香族ポリアミン
【化6】
(式中、nは1以上である。)
・・・
(8)ポリアミド樹脂
(9)尿素樹脂
(10)分子内に2級アミンもしくは3級アミンまたは4級アンモニウム基を少なくとも2個以上有し、一部が架橋しており、カチオン度がpH9のときに2mg当量、平均分子量が約10000、40%水溶液のときの粘度、比重、pHがそれぞれ100~400cp、1.12~1.13、3.0~5.0であるところのカチオン系アミン重合樹脂」
「【請求項6】 無機酸および/または有機酸の少なくとも1種の水溶液から成る金属の酸洗液1lに、下記(A)と(B)とをそれぞれ5mg以上添加したことを特徴とする金属酸洗液。
(A)分子内に1級アミン、2級アミン、3級アミンもしくは4級アンモニウム基またはアミド基の1種または2種以上を2個以上有する水または酸に可溶の化合物またはこれらの化合物の混合物。
(B)分子内にエーテル基、水酸基、エステル基またはケトン基のうち少なくとも1種の基を有する水溶性高分子またはこれらの2種以上の混合物。」
「【0030】(A)分子内に1級アミン、2級アミン、3級アミンもしくは4級アンモニウム基またはアミド基の1種または2種以上を2個以上有する水または酸に可溶の化合物またはこれらの化合物の混合物。」
「【0042】
・・・
(2)次の一般式で表されるポリビニルカチオン樹脂、たとえばポリアクリル酸型カチオン樹脂(商品名ケミスタット7300、三洋化成工業(株)製)、ポリビニルベンジル型カチオン樹脂(商品名ケミスタット6300H、三洋化成工業(株)製)
【0043】
【化2】
」
「【0050】(6)次の一般式で表される芳香族ポリアミン、たとえばガスカミン328(商品名、三菱瓦斯化学(株)製)
【0051】
【化6】
」
4 甲第4号証について
甲第4号証(特開2003-166089号公報)には、「金属の酸洗浄用腐食抑制剤、それを含んだ洗浄組成物およびこれを用いる金属の洗浄方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 次の一般式(I)で示される末端にメルカプト基を有するアリルアミン類重合体、その付加塩または第四級アンモニウム塩の1種以上から成ることを特徴とする酸洗浄用腐食抑制剤。
【化1】
(式中、R1およびR2は、それぞれに独立に水素原子または炭素数1~10のアルキル基、nは2以上の整数を示す。)
【請求項2】 次の一般式(II-a)で示される末端にメルカプト基を有するアリルアミン類重合体、その付加塩または第四級アンモニウム塩の1種以上から成ることを特徴とする酸洗浄用腐食抑制剤。
【化2】
(式中、R3は水素原子または水酸基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基、nは2以上の整数を示す。)
【請求項3】 次の一般式(II-b)で示される末端にメルカプト基を有するアリルアミン類重合体、その付加塩または第四級アンモニウム塩の1種以上から成ることを特徴とする酸洗浄用腐食抑制剤。
【化3】
(式中、R3は水素原子または水酸基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基、nは2以上の整数を示す。)」
「【請求項5】 酸液1Lに対し請求項1~4のうちの1つに記載する腐食抑制剤を1~50000mg含有して成ることを特徴とする洗浄液組成物。」
「【0022】特に好ましい併用腐食抑制剤は、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンテトラミンなどのポリアルキレンポリアミンと、2-プロピン-1-オール、1-ヘキシン-3-オール、4-エチル-1-オクチン-3-オール、1-ブチンジオール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオールなどのアセチレンアルコールおよびポリアミン化合物(例えば商品名PAS、ポリアリルアミン(日東紡績社製)、商品名ガスカミン328(三菱ガス化学社製)、商品名ケミスタット6300H、ケミスタット7300(三洋化成社製)である。」
5 甲第5号証について
甲第5号証(特開2011-252220号公報)には、「金属材用酸洗浄液および金属材の酸洗浄方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
塩酸水溶液に、(A)平均分子量が150~1500の低分子ポリアミンと、(B)低分子カルボン酸(またはその塩)とを含んでなる金属材用酸洗浄液。
【請求項2】
前記低分子ポリアミンが、下記式(1)~(11)、尿素(ユリア)樹脂、およびポリアミド樹脂から選択される1種または2種以上である請求項1に記載の金属材用酸洗浄液。
【化25】
[式(1)中、nは1~7の整数である。]
・・・
【化29】
またR’、R”およびR”’は、HまたはCH3であり、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。またXは、F、Cl、BrまたはIである。またnは1~16の整数である。]
【化30】
H2N-(RNH)n-H
[式(6)中、nは3~51の整数である。またRは、炭素数1~3のアルキル基である。]
【化31】
またnは2~26の整数である。]
【化32】
[式(8)中、nは1~8の整数である。またR1は、Hまたはメチル基であり、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。またXは、F、Cl、BrまたはIである。]
・・・
【化34】
[式(10)中、nは1~12の整数である。またXは、F、Cl、BrまたはIである。]
・・・」
「【請求項7】
前記塩酸水溶液1Lに対し、前記(A)成分を5~5000mg含有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の金属材用酸洗浄液。」
6 甲第6号証について
甲第6号証(特開2005-126801号公報)には、「金属腐食防止剤及び金属用酸洗浄液」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
少なくとも、(A)有機含窒素化合物、(B)アルキン化合物、(C)ポリオール系化合物を含有することを特徴とする金属腐食防止剤。
【請求項2】
前記(A)成分が、以下の「化1」~「化6」のいずれかの一般式に該当する化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の金属腐食防止剤。
・・・
【化2】
(上記の「化2」の一般式において、nは2以上の整数を示す。)
・・・
【化4】
(上記の「化4」の一般式において、nは3以上の整数を示し、R1 とR2 とはそれぞれ水素基、メチル基、エチル基のいずれかであって、R1 とR2 は同一の基であっても異なる基であっても良い。)
・・・」
「【請求項7】
前記金属用酸洗浄液において、(A)成分の含有量が0.7~10000mg/Lの範囲内であり、(B)成分の含有量が0.5~10000mg/Lの範囲内であり、(C)成分の含有量が0.5~10000mg/Lの範囲内であることを特徴とする請求項6に記載の金属用酸洗浄液。」
7 甲第7号証について
甲第7号証(特開2007-302986号公報)には、「腐食抑制剤、金属酸洗浄液組成物および金属の酸洗浄方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
イミダゾリウム系4級アンモニウム塩100重量部に対してポリアミン化合物10~100重量部および有機硫黄化合物10~100重量部を含み、金属用酸洗浄液に添加されることを特徴とする腐食抑制剤。」
「【請求項3】
ポリアミン化合物が、一般式(1)で表されるポリアミン化合物および一般式(2)で表されるポリアミンスルホンから選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1または2記載の腐食抑制剤。
・・・
【化2】
〔式中nは前記に同じ。2つのR1は同一または異なって水素原子またはメチル基を示す。Xはハロゲン原子を示す。〕」
8 甲第8号証について
甲第8号証(柴田隼次、玉腰博美「界面活性剤の存在下での酸化鉄微粒子の凝集と分散」化学工学論文集、化学工学会、1994年、第20巻、第5号、701頁~707頁)には、以下の事項が記載されている。
「水処理、塗料工業、無機化学工業などの分野では、懸濁液中での微粒子の凝集や分散性が重要である。たとえば、水処理の分野では粒子を凝集させて沈殿ろ過しやすくする必要がある。これとは反対に、塗料工業では粒子が凝集せずに安定な分散状態を保つことが望ましい。
懸濁液中に界面活性剤を添加すると、界面活性剤が粒子表面に吸着して粒子の表面状態、すなわち粒子表面の疎水性・親水性の程度や粒子表面の荷電状態が変化する。このような表面状態を変化させる操作によって懸濁液を凝集させたり、分散させたりすることが可能である。
界面活性剤存在下での微粒子の凝集・分散については数多くの研究がみられるが、酸化鉄(α-Fe2O3)に関してはドデシルスルホン酸ソーダ、アミン、アクリルオリゴマーなどによる凝集・分散の研究がある。」(第701頁左欄第2行~第16行)
9 甲第9号証について
甲第9号証(特開2004-42353号公報)には、「インクジェット記録用シート」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
「【0011】
本発明は、上記に鑑みて成されたものであり、特に高湿度環境下において、形成画像の経時ニジミの発生がなく、かつプリンタ内での走行性に優れ、ローラ跡故障のない高画質の画像を形成し得るインクジェット記録用シートを提供することを目的とする。」
「【0031】
-一般式(I)で表されるカチオンポリマー-
本発明に係る色材受容層は、前記無機微粒子と共に、下記一般式(I)で表され、かつ数平均分子量10万以下の水溶性のカチオンポリマーを含有する。このカチオンポリマーは、前記無機微粒子を分散する際の凝集防止剤(分散剤)として用いられ、無機微粒子を分散した状態で無機微粒子と共に含有される。これにより、分散性の良好な無機微粒子分散液を調製し得ると共に、アニオン性のインクに作用して高湿度下でのインクのニジミを効果的に防止することができる。このカチオンポリマーは、媒染剤としての機能をも有する。」
「【0037】
以下、前記一般式(I)で表されるカチオンポリマーの具体例(例示化合物K-1~K-21)を示す。
・・・
【0039】
【化5】
」
10 甲第10号証について
甲第10号証(特開2005-89784号公報)には、「金属粉末の製造方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
「【0008】
本発明は、従来に比べてより一層、粒径が小さく微細で、なおかつ粒度分布がシャープであるため、インクジェットインクの顔料用などとして好適に使用できる金属粉末を製造するための、新規な製造方法を提供することにある。」
「【0010】
すなわち、前記のように液のpHを調整してTiイオンなどの酸化反応を開始すると、その直後の反応系中には、粒径が十数nm以下という極めて微細な金属粉末が多数、析出する。
ところが、このように粒径の小さい金属粉末は表面活性が高いので、表面エネルギーを安定化させるべく凝集しやすい性質を有しており、その表面にさらに金属が析出して成長する過程の、とくに初期の段階で凝集が発生しやすい。」
「【0014】
そこで分散剤についてさらに検討した結果、1分子中にポリエチレンイミン部分とポリエチレンオキサイド部分とを有する共重合体(以下「PEI-PO共重合体」と略記する)が、これまでよりも平均粒径が小さく、かつ粒度分布がシャープな金属粉末を製造するために極めて有効に機能することを見出した。」
「【0023】
(PEI-PO共重合体)
分散剤として用いるPEI-PO共重合体としては、前述したように、1分子中にポリエチレンイミン部分とポリエチレンオキサイド部分とを含む、種々の分子構造を有する共重合体がいずれも使用可能である。
例えばポリエチレンイミン部分とポリエチレンオキサイド部分とが直鎖状に繋がった直鎖状のブロック共重合体などを使用することもできる。」
「【0025】
その具体例としては、例えば(株)日本触媒製のエポミン(登録商標)PAOシリーズのうちPAO2006W、PAO306、PAO318、PAO718などを挙げることができる。
これらPEI-PO共重合体における、ポリエチレンイミンの主鎖の分子量は500~2000程度である。またポリエチレンオキサイドの側鎖の数は、1つのポリエチレンイミンの主鎖に対して3~20程度である。そしてPEI-PO共重合体の全体の分子量は3000~15000程度である。」
11 甲第11号証について
甲第11号証(特開2011-122108号公報)には、「ポリフェニレンサルファイド樹脂微粒子分散液、およびその製造方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
「【0052】
機械的分散によって生成するPPS樹脂微粒子の凝集抑制、および分散媒への分散性を向上させるために、高分子界面活性剤の添加を行う。高分子界面活性剤の添加時期は、機械的分散の前後いずれでもかまわないが、機械的分散中の微粒子の凝集防止のため、分散前添加、または分散前添加と分散中添加を併用した添加方法が好ましい。」
第5 当審の判断
1 申立理由1 特許法第29条第1項第3号(新規性)
申立理由2 特許法第29条第2項(進歩性)について
ア 本件発明1と甲2発明との対比・判断について
(ア)甲2発明の【化1】、【化2】は、その構造式より、それぞれ、本件発明1の化12、化13に相当し、甲2発明の【化1】、【化2】は、酸洗浄液腐食抑制剤であるから、本件発明1の「酸洗浄液」に「含有する」「腐食防止剤」に相当する。
(イ)そうすると、本件発明1と甲2発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
<一致点>
「化12、化13から選ばれる1種又は2種の腐食防止剤を含有する酸洗浄液。」
<相違点1>本件発明1では、「酸洗槽の出側にリンガーロールが配設される酸洗浄工程において」との特定事項を有するのに対し、甲2発明では、当該事項がない点。
<相違点2>本件発明1では、「腐食防止剤」の「酸洗浄液」中の濃度が、「10~2000mg/L」であるのに対し、甲2発明では、「0.1~50000mg/L」である点。
<相違点3>本件発明1では、「酸洗槽の出側にリンガーロールが配設される酸洗浄工程において、」「化12、化13から選ばれる1種又は2種の腐食防止剤を含有する酸洗浄液」「に添加して使用する」「粒状スラッジ発生抑制剤」として、「化1」、「化2」、「化6」~「化8」のいずれかから選ばれる1種又は2種以上を使用し、また、「粒状スラッジ発生抑制剤」の「酸洗浄液」への添加濃度は、「1~50000mg/L」であるが、甲2発明では、「粒状スラッジ発生抑制剤」についての事項が何らない点。
(ウ)事案に鑑み、<相違点3>から検討する。
甲1~甲11、いずれの証拠にも、本件発明1の「「化9」~「化14」のいずれかの一般式に該当する化合物から選ばれる1種又は2種以上の腐食防止剤を10~2000mg/Lの濃度で含有する酸洗浄液」に、「「化1」、「化2」、「化6」~「化8」のいずれかの一般式に該当する化合物から選ばれる1種又は2種以上を、1~50000mg/Lの濃度で添加して使用する粒状スラッジ発生抑制剤」について記載も示唆もされていない。
甲2~甲7には、酸洗浄液に含有させる腐食防止剤として、本件発明1で特定される化合物のうちいくつかがそれぞれ例示されてはいるものの、本件発明1の「 「化9」~「化14」のいずれかの一般式に該当する化合物から選ばれる」化合物と、「「化1」、「化2」、「化6」~「化8」のいずれかの一般式に該当する化合物から選ばれる」 化合物とを、それぞれ役割が異なるものとして併用することは、記載も示唆もない。
例えば、甲2の【0034】には、「併用する他の腐食抑制剤の具体例」として、本件発明1の化8に相当する、「商品名ガスカミン328」が例示されてはいるものの、多数のその他の「腐食抑制剤」と同列に、「腐食抑制剤」として例示されているにすぎず、その他の「腐食抑制剤」と区別して記載されているものではないし、「粒状スラッジ発生を抑制する」ことは記載も示唆もないことから、「商品名ガスカミン328」を特に積極的に選択する動機付けがあるとはいえない。
また、甲1~甲11、いずれの証拠にも、「「化1」、「化2」、「化6」~「化8」のいずれかの一般式に該当する化合物から選ばれる」化合物が、粒状スラッジの発生を抑制すること、及び「「化9」~「化14」のいずれかの一般式に該当する化合物から選ばれる」化合物の粒状スラッジを発生させる機能を抑制できることについて、記載も示唆もされていない。
(エ)よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明ではないし、甲2発明及び甲1~甲11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 本件発明1と、甲4、甲5、甲6、甲7それぞれに記載された発明との対比・判断
(ア)上記ア(ウ)で検討したように、上記<相違点3>に係る事項は、甲1~甲11、いずれの証拠にも記載も示唆もされていないところ、本件発明1と甲4~甲7それぞれに記載された発明とは、少なくとも、<相違点3>で相違しているから、上記ア(ウ)と同様の理由により、甲4~甲7それぞれに記載された発明において、相違点3に係る発明特定事項を備えるものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
(イ)よって、本件発明1は、甲4~甲7それぞれに記載された発明ではないし、甲4~甲7に記載された発明及び甲1~甲11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
2 申立理由3 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について
ア 本件発明1の「化6」について
(ア)物の発明について実施可能要件を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があることを要する。
(イ)本件発明1の「化6」について、この観点から検討する。
本件発明1の「化6」についての記載は以下のとおりである。
「NH2-(RNH)n-H
(上記「化6」において、Rは1~3個のアルキレン基であり、nは10以上の整数である。)」
当該物質は、ポリエチレンイミン又はポリアジリジンとして、当業者に周知の化合物であるから、当業者が実施できないとはいえない。
(ウ)申立人は、本件特許明細書の【0091】の「(F):上記一般式「化6」であらわされる化合物であり、Rは1個のアルキレン基であり、数平均分子量が約10000である。」との記載を挙げ、「CH2NH」が直鎖状にそれほど多数結合した化合物を容易には想到できない」と主張している(異議申立書第37頁第11行~第38頁第19行)。
(エ)しかしながら、本件発明1の「化6」では、「nは10以上」と特定されており、上限こそ特定されていないが、上記(イ)のとおり、ポリエチレンイミンは周知の化合物であるし、例えば、甲3の請求項2には、【化3】として記載されており、「nは2以上」とも記載されており、上限は記載されていないし、甲5の請求項2にも、【化30】として記載されており、「nは3~51」とも記載されているから、「n」が「10以上」とのみ特定されている本件発明1の「化6」は、出願時に周知の化合物であったといえる。
また、たとえ、数平均分子量が多大なものが実施できないとしても、請求項1で特定される「化6」のうち、nが10~数十程度のものが実施できるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。
イ 本件発明1に特定される各化合物の末端基について
(ア)本件発明1において、「化1」、「化2」、「化7」、「化9」~「化14」の化合物について、その末端が特定されていない。
(イ)しかしながら、本件特許明細書には以下の記載がある。
「【0059】
上記「化1~化8」に示す一般式に該当する化合物は、その末端が明示されている場合を除き、各一般式の括弧で示した単位が粒状スラッジの発生抑制の観点から重要であると考えられる。よって、その末端が明示されていない場合は、粒状スラッジの発生抑制機能が認められる限り、末端の基は限定されない。通常、重合体の形成反応等により、適宜末端の基は決定される。但し、本願発明者に知見によれば、当該末端の基はSO2基やチオール基等のS原子を含む電子吸引性基でない。」
(ウ)また、甲2~甲7には、本件発明1で特定される化合物が、それぞれ例示されているが、本件特許請求項1及び明細書と同様に、末端が特定されていないものである。
(エ)上記(イ)(ウ)より、技術常識を鑑みれば、末端記が特定されていなくとも、【0059】の記載のとおり、「通常、重合体の形成反応等により、適宜末端の基は決定される」のであって、当業者が実施できないとまではいえない。
3 申立理由4 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)
ア 本願の発明が解決しようとする課題
発明の詳細な説明の記載(【0024】)によれば、本願の発明が解決しようとする課題(以下単に「課題」という。)は、「優れた粒状スラッジ発生抑制剤、酸洗浄用添加剤セット及び酸洗方法を提供すること」である。
イ 課題を解決する手段
発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「【0015】
本願発明者は上記粒状スラッジの発生に基づく不具合を抑制するため鋭意研究を重ねた結果、以下の知見を得て、本願が開示する発明を完成するに至った。
【0016】
(1)腐食防止剤には、粒状スラッジを発生させるものと粒状スラッジを発生しにくいものがあった。
【0017】
(2)次に、粒状スラッジを発生させる腐食防止剤に含まれる成分と粒状スラッジを発生しにくい腐食防止剤に含まれる成分の構造に着目して比較検討した。その結果、以下の推測を得るに至った。
粒状スラッジを発生させる腐食防止剤に含まれていた成分には、以下の(2-1)や(2-2)の特徴があった。
【0018】
(2-1)SO2基やチオール基等のS原子を含む電子吸引性基を含むか、又は、ポリエチレングリコール等のポリオール重合体(分子量100~10000)の様な、指向性を持たずに集積可能と考えられる構造を含むと考えられる骨格を有していた。
【0019】
(2-2)ヘキサメチレンテトラミン等の低分子量アミン(分子量200以下)、又は、三重結合を有する分子量が小さいアセチレンアルコール(分子量200以下)。
【0020】
金属材料から剥離または溶出する金属粒子、その酸化物粒子及びその水酸化物系粒子等が核となり、上記成分がバインダーとなって粒状スラッジが発生すると推測された(図3)。よって、以下、粒状スラッジを発生させる成分を「バインダー成分」と呼ぶ。
【0021】
一方、粒状スラッジを発生しにくい腐食防止剤に含まれる成分は、その骨格に比較的大きな分岐鎖を持つ場合が多く、かつ、上記(2-1)及び(2-2)の特徴を持たなかった。よって、金属材料から剥離または溶出する金属粒子、その酸化物粒子及びその水酸化物系粒子等と粒を形成するような結合・凝集・会合等が起こりにくく、粒状スラッジが発生しにくいと推測された(図4)。
【0022】
(3)上記粒状スラッジが発生しにくい成分を使用すれば、一定量のバインダー成分を含んでいても粒状スラッジが発生しにくいことを見出した。即ち、上記粒状スラッジが発生しにくい成分は、バインダー成分の機能を抑制できることを見出した。
【0023】
金属材料の酸洗浄時において、酸洗槽内には腐食抑制剤を入れる必要がある。上記粒状スラッジが発生しにくい成分は様々な腐食抑制剤の使用を可能にしつつ、粒状スラッジの発生を抑制できることを見出した。」
「【0071】
本願が開示する粒状スラッジ発生抑制剤は、通常、金属材料を酸洗浄するための酸洗浄液に添加して使用される。そして、酸洗浄の条件に応じて粒状スラッジ発生抑制剤の使用量は適宜決定される。よって、上記「化1」~「化8」の一般式に該当する化合物の酸洗浄液への添加濃度は特に限定されない。本願発明者の知見によれば、バインダー成分を含まず上記「化1」~「化8」の一般式に該当する化合物のみを酸洗浄液に添加する場合は、これらの化合物の濃度の合計が0.1~50000(mg/L)となることが好ましく、0.1~8000(mg/L)となることが好ましく、0.1~1800(mg/L)となることが更に好ましく、0.1~800(mg/L)となることが特に好ましい。上記「化1」~「化8」の一般式に該当する化合物と、バインダー成分を併用する場合は、上記「化1」~「化8」の一般式に該当する化合物の濃度の合計が1~50,000(mg/L)であることが好ましく、10~5000(mg/L)であることがより好ましい。
【0072】
また、バインダー成分の酸洗浄液への添加は2000(mg/L)以下とすることが好ましく、700(mg/L)以下とすることがより好ましく、300(mg/L)以下とすることが更に好ましい。酸洗浄液がバインダー成分を含有しないことも好ましい。本願が開示する粒状スラッジ発生抑制剤は、このような条件を参考にして、バインダー成分を含有しても良い。」
上記記載によれば、腐食防止剤には、粒状スラッジを発生させるものと、発生しにくいものがあり、粒状スラッジを発生させるものは、上記【0016】、【0017】に記載される(2-1)、(2-2)の特徴を有する化合物であり、粒状スラッジを発生しにくいものは、上記【0021】に記載される、その骨格に比較的大きな分岐鎖を持つ場合が多く、かつ、(2-1)、(2-2)の特徴を持たない化合物である。
そして、粒状スラッジを発生しにくい成分を使用すれば、一定量のバインダー成分を含んでいても、粒状スラッジは発生しにくく、課題を解決し得ることを理解することができる。
ウ 本件発明1が、課題を解決し得るかについて
本件発明1の「化9」~「化14」で特定される腐食防止剤は、-SH基又はSO2基を有しており、上記【0018】の(2-1)の特徴を有しているから、上記【0020】の「バインダー成分」である。
そして、本件発明1の「化1」、「化2」、「化6」~「化8」は、甲2~甲7にそれぞれ例示されるように、それぞれ公知の腐食防止剤であって、上記【0021】に記載されるものであり、【0023】の「粒状スラッジを発生しにくい成分」であるといえる。
したがって、上記イに照らし、本件発明1は、課題を解決し得ると理解することができる。
エ 申立人は、特許異議申立書第40第1行~第41頁第9行において、概略以下のように主張している。
本件発明1は、化合物の組み合わせ数がかなりのものになるところ、実際に実施例として記載されているのは、粒状スラッジ発生抑制剤として「化1」、「化7」、腐食抑制剤として「化9」、「化12」のわずか4例のみである。また、粒状スラッジ発生抑制剤、腐食抑制剤ともに、2種以上ずつ用いた実施例もないから、当該実施例の記載から、本件発明1の範囲にまで、拡張一般化できない。
オ しかしながら、上記イのとおり、発明の詳細な説明には、腐食抑制剤、粒状スラッジ発生抑制剤それぞれについての特徴が定性的に記載されており、本件発明1に特定される化合物は、それぞれの特徴に合致するものであるから、それぞれを、1種又は2種以上、本件発明1で特定される濃度の範囲で用いることによって、課題を解決し得ると理解することができる。
そして、発明の詳細な説明には、このような理解を妨げる内容の記載はない。
以上から、上記申立人の主張は採用できない。
4 申立理由5 特許法第36条第6項第2号(明確性)
ア 「化1」、「化2」、「化6」~「化8」について
これら化合物は、それら自体明確であるし、上記「3 申立理由4 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)」の項(特に、ウ)で検討したように、共通の特徴、性質を有するものである。
よって、本件発明1は、明確である。
イ 本件発明1の記載と発明の詳細な説明の記載との齟齬について
申立人は、特許異議申立書第41頁第22行~第42頁最終行において、本件発明1の記載と発明の詳細な説明の記載とに齟齬が生じている箇所があるから、本件発明1は明確でないと主張しているが、本件発明1自体は、明確であり、発明の詳細な説明の一部に、本件発明1と齟齬が生じている記載があるとしても、その齟齬をもって直ちに、本件発明1の把握ができないほどに、明確でないとはいえない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2018-700603