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特許異議申立

2018-700473

保護素子

審判番号
2018-700473
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2013-167992外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2018年06月11日
審決日
2018年09月10日
公報発行日
2018年11月30日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-Y (H01H)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6257952号発明「保護素子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6257952号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6257952号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成25年8月13日に特許出願され、平成29年12月15日に特許の設定登録がされ、平成30年1月10日に特許掲載公報が発行され、その後、平成30年6月11日に、その請求項1~4に係る特許に対し特許異議申立人林誠一(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~4の特許に係る発明は、それぞれその特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下、「本件発明1」~「本件発明4」という。)。 「【請求項1】 基板と、 前記基板に固定される電極の対と、 両端が前記電極の対に固定され、かつ、ジュール熱積分値が所定の値以上になると溶断する導電体と、 前記導電体に接触し、かつ、融解すると前記導電体を溶かす低融点合金とを備える保護素子であって、 前記基板に固定され、かつ、前記基板よりも前記低融点合金の濡れ性がよい合金基部をさらに備え、 前記低融点合金が前記合金基部に載るように固定されていることを特徴とする保護素子。 【請求項2】 前記導電体の中央部分で前記低融点合金が前記導電体に接触することを特徴とする請求項1に記載の保護素子。 【請求項3】 基板と、 前記基板に固定される電極の対と、 両端が前記電極の対に固定され、かつ、ジュール熱積分値が所定の値以上になると溶断する導電体と、 前記導電体に接触し、かつ、融解すると前記導電体を溶かす低融点合金とを備える保護素子であって、 前記基板に固定され、かつ、前記基板よりも前記低融点合金の濡れ性がよい合金基部をさらに備え、 前記低融点合金が前記合金基部に固定されており、 前記低融点合金の長手方向が前記導電体の長手方向と交差するよう前記低融点合金が前記導電体に接触していることを特徴とする保護素子。 【請求項4】 前記合金基部が、前記導電体と前記基板との間をくぐるように前記基板に固定されており、 前記低融点合金が前記合金基部に載っていることを特徴とする請求項3に記載の保護素子。」 第3 申立理由の概要 異議申立人は、証拠として下記の甲第1号証を提出し、本件発明1~4は、甲第1号証に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件発明1~4に係る特許を取り消すべきものである旨を主張している。 甲第1号証:特開2011-60761号公報 第4 甲第1号証の記載及び甲1発明 甲第1号証には、図面とともに次の事項が記載されている。 1 「【0028】 図1A~図1Dを参照するに、本実施形態において、保護装置200aは、基板210、第1電極220、第2電極230、第3電極240、第4電極250、発熱素子260、第1補助媒体270、導電部分および少なくとも1つの橋絡素子290(図1A~図1Dにおいては1つの素子のみを概略例示する)を含む。第1電極220、第2電極230、第3電極240および第4電極250は、それぞれ基板210上に配置される。ここで、導電部分は、基板210に支持され、第1電極220と第2電極230との間に電気的に接続される金属素子280を含む。 【0029】 詳細には、本実施形態において、基板210は、中央部分Cと、この中央部分Cを囲む、第1周辺部212、第2周辺部214、第3周辺部216および第4周辺部218とを有する。第1周辺部212は第2周辺部214に対応して配置される。第3周辺部216は第4周辺部218に対応して配置される。第1電極220、第2電極230、第3電極240および第4電極250は、それぞれ、第1周辺部212、第2周辺部214、第3周辺部216および第4周辺部218上に配置される。・・・」 2 「【0030】 更に、第3電極240は、中間支持部242、第2延在部244および本体部246を含み、中間支持部242および第2延在部244は、それぞれ第1表面S1上および第2表面S2上に配置することができ、それぞれ中央部分C上の位置まで延在させることができる。そして、中間支持部242は、例えば本体部246に接続される。本実施形態において、中間支持部242および第2延在部244は、それぞれ2つの平面上に配置され、これら2つの平面はほぼ平行であるが互いに重ならない。中間支持部242は、金属素子280と基板210との間に配置される。第4電極250の第3延在部252は、第2表面S2上に配置され、中央部分C上の位置まで延在する。中間支持部242、第2延在部244および第3延在部252は、それぞれ第1電極220と第2電極230との間に配置される。加えて、中間支持部242の形状は本発明において限定されず、中間支持部を電極との接触がない基板上で独立した部分とすることができ、金属素子の融解時の破断を促進するために良好な熱伝導率を有する材料を含むということに留意すべきである。 【0031】 基板210の材料は、例えば、セラミック(例えばアルミナ)、ガラスエポキシ樹脂、酸化ジルコニウム(ZrO2)、窒化ケイ素(Si3N4)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ボロン(BN)または他の無機材料等を含む。第1電極220、第2電極230、第3電極240および第4電極250の材料は、例えば、銀、銅、金、ニッケル、銀白金合金、ニッケル合金および良好な電気伝導率を有する他の材料とする。」 3 「【0034】 金属素子280は、基板210の第1表面S1の上方に配置され、第1電極220、中間支持部242および第2電極230に接続される。詳細には、金属素子280は、第1電極220および第2電極230の融点よりも低い融点を有する犠牲構造として働く。金属素子280は、第1電極220、第1補助媒体270、中間支持部242および第2電極230の一部を覆う。発熱素子260が熱を発生させて、第1補助媒体270および金属素子280を融解する際に、金属素子280の融解効果が向上する。更に、第1補助媒体270は、融解した金属素子280が各々の電極上に流れて集まることができるように、融解した金属素子280と各々の電極との間のぬれ性を増大させ、融解した金属素子280自体の凝集力を高め、金属素子280を効果的に飛ばす(blow)ようにすることができる。加えて、金属素子280の材料は、錫鉛合金、錫銀鉛合金、錫インジウムビスマス鉛合金、錫アンチモン合金、錫銀銅合金および低融点を有する他の合金を含む。また、他の実施形態では、金属素子280の中にフラックス(例示せず)を埋め込んで、熱によって金属素子280を飛ばしやすくすることができる。本発明を、過電圧保護および過電流保護を同時に達成するために、発熱素子を有する保護装置を用いて説明するが、金属素子280を効果的に飛ばすことの安定性を高めるために、金属素子280の下方に第1補助媒体270を配置することをも、発熱素子を有さない構造に対しても適用して、過電流が生じ金属素子280が熱によって融解されるときに、金属素子280を飛ばすことの安定性を高めることができるということは、当業者であれば理解できるという点に留意されたい。」 4 「【0038】 本実施形態の保護装置200aは橋絡素子290を有するため、発熱素子260が熱を発生させ、金属素子280を融解させると、この融解した金属素子280は、表面張力およびウィッキング現象のために、接触した橋絡素子290に付着し、かつ更に中間支持部242の方へ流れることができ、回路を遮断して過電圧保護および過電流保護を達成する。すなわち、橋絡素子290の吸着のために、融解した金属素子280は、中間支持部242と第1電極220、または、中間支持部242と第2電極230を導通しにくくして、保護装置200aの短絡を防止し、ゆえに保護装置200aの高い信頼性を得ることができる。」 5 「【0042】 更に本実施形態において、保護装置200aは、金属素子280を第一電極220、第2電極230、および延在部242上に固定できるようにするために、第一電極220、第2電極230、および中間支持部242上に配置する中間層320を更に含むが、本発明がこれに制限されることはなく、金属素子280はまた、中間層320を使用しない他の周知のはんだ付け技術によって固定することができる。更に詳述すると、中間層320は金属素子280と中間支持部242の間に配置され、第1のはんだ材料を含む中間層320は金属素子280の融点よりも低い融点を有する。本実施形態において、中間層320の素材は、例えば錫銀合金や錫鉛合金等のはんだ材料を含む。」 6 「【0043】 更に、融解した中間層320が良好なぬれ性を有するため、金属素子280が飛ばされるときに、融解した金属は融解した中間層320上に集合し、融解した金属素子280は、表面張力およびウィッキング現象のために、接触した橋絡素子290に付着し、中間支持部242の方へ更に流れることができ、融解した金属と、第一電極220もしくは第2電極230との短絡現象が生ずるのを防止できる。このようにして、過電圧および過電流を防止するために金属素子280を効率的に飛ばすことを、更に保証することができる。」 7 「【0045】 最初に、図3Aを参照して、基板210を準備し、第1電極220、第2電極230、第3電極240、および第4の電極250を基板210上に形成する。基板210は、第1表面S1およびその反対側の第2表面S2を有し、第1電極220、第2電極230、第3電極240、および第4電極250は、第1表面S1から第2表面S2まで延在させる。本実施形態において、中間支持部242および第3電極240の第2延在部244を、それぞれ第1表面S1および第2表面S2に配置し、第3電極240の本体部246を中間支持部242に接続する。第4電極250の第3延在部252は、第2表面S2上に配置する。中間支持部242、第2延在部244、および第3延在部252を、それぞれ第1電極220と第2電極230との間に配置される。」 8 甲第1号証の、【図1A】~【図1D】を参照すると、中間層320は、金属素子280に接触していること、及び中間層320が中間支持部242に載るように固定されていることが、看取される。 上記事項及び認定事項を総合し、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、甲第1号証には、実施形態として次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「基板210と、 前記基板210に配置される第1電極220及び第2電極230と、 第1電極220と第2電極230との間に電気的に接続され、かつ、過電流で熱によって融解する金属素子280と、 前記金属素子280に接触し、かつ、錫銀合金や錫鉛合金等のはんだ材料を含み金属素子280の融点よりも低い融点を有する中間層320とを備える保護装置であって、 前記基板210に配置される中間支持部242をさらに備え、 前記中間層320が前記中間支持部242に載るように固定されていることを特徴とする保護装置。」 第5 判断 1 本件発明1について 本件発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「基板210」は、本件発明1の「基板」に相当する。 以下同様に、「基板210に配置される」ことは、「基板に固定される」ことに、 「第1電極220及び第2電極230」は、「電極の対」に、 「第1電極220と第2電極230との間に電気的に接続され」ることは、「両端が前記電極の対に固定される」ことに、 「金属素子280」は、「導電体」に、 「保護装置」は、「保護素子」に、 「中間支持部242」は、「合金基部」に、それぞれ相当する。 甲1発明の「過電流で熱によって融解する」ことと、本件発明1の「ジュール熱積分値が所定の値以上になると溶断する」こととは、「熱により溶断する」という限りにおいて共通する。 また、本件特許明細書の「本実施形態の場合『低融点合金』とは、上述した導電体54が溶断する温度以下の融点であり」(段落【0024】)との記載によれば、「低融点」とは、導電体54の融点よりも低い融点であることを意味するから、甲1発明の「錫銀合金や錫鉛合金等のはんだ材料を含み金属素子280の融点よりも低い融点を有する中間層320」は、本件発明1の「低融点合金」に相当する。 以上のことから、本件発明1と甲1発明とは次の点で一致する。 「基板と、 前記基板に固定される電極の対と、 両端が前記電極の対に固定され、かつ、熱により溶断する導電体と、 前記導電体に接触する低融点合金とを備える保護素子であって、 前記基板に固定される合金基部をさらに備え、 前記低融点合金が前記合金基部に載るように固定されている保護素子。」 一方で、両者は次の点で相違する。 [相違点1] 「熱により溶断する」ことに関して、本件発明1においては、「ジュール熱積分値が所定の値以上になると溶断する」ことであるのに対して、 甲1発明においては、「過電流で熱によって融解する」ことであるものの、保護装置を流れる電流のジュール積分に関する記載が甲第1号証にはないから、ジュール熱積分値が所定の値以上になると溶断することについては、明らかでない点。 [相違点2] 低融点合金に関して、本件発明1においては、低融点合金は、「融解すると前記導電体を溶かす低融点合金」であるのに対して、 甲1発明においては、中間層320は、融解するものの、金属素子280を溶かすか否か明らかでない点。 [相違点3] 合金基部に関して、本件発明1においては、合金基部は、「基板よりも前記低融点合金の濡れ性がよい」との構成を備えているのに対して、 甲1発明においては、中間支持部242は、かかる構成を備えているか否か明らかでない点。 上記相違点について検討する。 事案に鑑み、上記相違点2について先に検討する。 本件特許明細書には、「特許文献1に開示されたヒュ-ズでは、過負荷電流が流れた場合、第1の低融点合金と第2の低融点合金とが、共晶点で低融点合金となる。この低融点合金がヒューズエレメントに拡散する。低融点合金がヒューズエレメントに拡散するとヒューズエレメントの融点が下がる。融点が下がるのでヒューズエレメントは溶断する。」(段落【0003】)、「しかしながら、特許文献1に開示されたヒュ-ズには、ヒューズエレメントに低融点合金を巻付ける作業に手間がかかるという問題点がある。ヒューズエレメントが細い場合、低融点合金を巻付ける作業が困難なこともある。本発明は、このような問題を解決するものである。本発明の目的は、生産効率が高い保護素子を提供することにある。」(段落【0005】)、「低融点合金60は導電体54に接触する。低融点合金60は融解すると導電体54を溶かす。」(段落【0007】)、及び「本実施形態の場合『低融点合金』とは、上述した導電体54が溶断する温度以下の融点であり、かつ、融解した状態であれば上述した導電体54を溶かす合金のことである。このような低融点合金は周知である。」(段落【0024】)と記載されている。 この記載からみて、本件発明1は、低融点合金がヒューズエレメントに拡散することで、ヒューズエレメントの融点を下げ、溶断されることを前提とした発明であり、本件発明1における「低融点合金」が「融解すると前記導電体を溶かす」とは、融解した低融点合金60が、低融点合金60よりも高い融点を有する導電体54を溶かすことであると認められる。 一方、甲第1号証には、「更に本実施形態において、保護装置200aは、金属素子280を第一電極220、第2電極230、および延在部242上に固定できるようにするために、第一電極220、第2電極230、および中間支持部242上に配置する中間層320を更に含むが、本発明がこれに制限されることはなく、金属素子280はまた、中間層320を使用しない他の周知のはんだ付け技術によって固定することができる。」(前記「第4 5」を参照。)、及び「更に、融解した中間層320が良好なぬれ性を有するため、金属素子280が飛ばされるときに、融解した金属は融解した中間層320上に集合し、融解した金属素子280は、表面張力およびウィッキング現象のために、接触した橋絡素子290に付着し、中間支持部242の方へ更に流れることができ、融解した金属と、第一電極220もしくは第2電極230との短絡現象が生ずるのを防止できる。」(前記「第4 6」を参照。)と記載されている。 この記載から、中間層320は、金属素子280を第一電極220、第2電極230、及び中間支持部(延在部)242上に固定するために使用されているものの、必ず必要というものでもなく、また、中間層320は、金属素子280及び中間層320が、それぞれ融解した際に、融解した金属素子280を、融解した中間層320上に集合させるという作用を奏することは理解できるものの、融解した中間層320が、金属素子280の融解に寄与しているとは認められない。 また、甲第1号証には他に、中間層320を、融解すると金属素子280を溶かすものとすること、すなわち「融解すると前記導電体を溶かす低融点合金」について、記載も示唆もされていない。 そうすると、甲1発明の中間層320(本件発明1の「低融点合金」に相当。)は、融解したとしても、中間層320よりも高い融点を有し、融解していない金属素子280(本件発明1の「導電体」に相当。)を、溶かすものとは認められないから、「融解すると前記導電体を溶かす低融点合金」とはいえない。 なお、異議申立人は、甲1発明において、中間層320を構成する錫銀合金や錫鉛合金等のはんだ材料は、溶融することにより、金属素子280を構成する錫鉛合金、錫銀鉛合金、錫インジウムビスマス鉛合金、錫アンチモン合金、錫銀銅合金を溶かすことは周知であるから、上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、甲第1号証に記載された事項を参照することにより当業者が容易に想到し得たことである旨を主張している(特許異議申立書の11ページ16行~12ページ2行を参照。)。 しかし、上記周知であるとした事項について、その根拠となる文献等を異議申立人が提示しているものではなく、かつ、甲1発明においては、中間層320を設けた目的は、金属素子280を第一電極220、第2電極230、及び中間支持部242上に固定するため、及び融解した中間層320の上に、融解した状態の金属素子280を集合させるためであり、中間層320よりも高い融点を有する金属素子280を溶かすためとは認められないから、異議申立人の上記主張は採用できない。 以上のことから、甲1発明において、上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、甲第1号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 したがって、相違点1及び3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲第1号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 2 本件発明2~4について 本件発明2は、本件発明1を更に減縮したものであり、本件発明3は、本件発明1と同じ構成を備えるとともに更に減縮したものであり、本件発明4は、本件発明3を更に減縮したものであるから、本件発明2~4は、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、甲第1号証に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 3 小括 以上のことから、異議申立人が主張する申立理由は、理由がない。 第6 むすび したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2018-700473

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