特許異議申立
2019-700152
光源装置及び投影装置
- 審判番号
- 2019-700152
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-250833
- 登録番号
- 特許第6380813号(P6380813)
- 請求日
- 2019年02月27日
- 審決日
- 2019年11月13日
- 公報発行日
- 2020年02月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】カシオ計算機株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人コスモ国際特許事務所
- 【異議申立人】林 誠一
- 審判長/審判官
- 審判長 中塚 直樹
- 審判官 梶田 真也
- 審判官 小林 紀史
- 分類
- P1651.537-YAA(G03B) / P1651.121-YAA(G03B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6380813号発明「光源装置及び投影装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6380813号の明細書及び特許請求の範囲を本訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-14〕について訂正することを認める。
特許第6380813号の請求項1-5、8、9、13、14に係る特許を維持する。
特許第6380813号の請求項6、7、10-12に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6380813号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし14に係る特許についての出願手続の経緯は、以下のとおりである。
平成27年12月24日 :特許出願
平成30年 8月10日 :特許権の設定登録
平成30年 8月29日 :特許掲載公報の発行日
平成31年 2月27日 :特許異議申立書
(特許異議申立人:林 誠一)
令和 元年 5月28日付け:取消理由通知書
令和 元年 7月26日 :意見書及び訂正請求書(特許権者)
令和 元年 9月19日 :意見書(特許異議申立人)
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和元年7月26日に提出された訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)の記載より、本件訂正請求書で特許権者が求めている訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲について、以下のとおり訂正することを求めるものである。(なお、当審で訂正箇所に下線を付した。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記光源光を拡散させる拡散板と、前記拡散板から出射された出射光が入射する導光装置と、を備え、前記拡散板は、前記拡散板の面の第一方向と、前記第一方向と略直交する第二方向に弧状の拡散セルを複数有し、前記第一方向と前記第二方向の拡散角度が異なり、前記導光装置は、複数のレンズセルを有するレンズアレイからなる」とあるのを、「面の第一方向に弧状であると共に前記面の前記第一方向と略直交する前記面の第二方向に弧状である拡散セルを複数有し、前記光源光を拡散させる拡散板と、長辺及び短辺を有する長方形状のレンズセルを複数有し、前記拡散板から出射された出射光が入射するレンズアレイと、を備え、前記拡散板は、前記レンズセルの前記長辺の方向に一致する前記第二方向における前記拡散板の拡散角度を、前記レンズセルの前記短辺の方向に一致する前記第一方向における前記拡散板の拡散角度よりも大きくする」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2-5、8、9、13、14も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に「前記拡散セルは、前記第一方向の曲率半径が大きく、前記第二方向の曲率半径が小さい」とあるのを、「前記拡散セルの前記第一方向の曲率半径は、前記拡散セルの前記第二方向の曲率半径よりも大きい」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項8、9、13、14も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に「前記拡散セルは、前記第一方向及び前記第二方向のいずれか一方又は両方に形成された楕円弧状である」とあるのを、「前記拡散セルは、前記第一方向及び前記第二方向の何れか一方又は両方が楕円弧状に形成されている」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項8、9、13、14も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項8に「前記拡散セルは、頂点位置が各々偏って配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れかに記載の光源装置。」とあるのを、「前記拡散セルは、頂点位置が各々偏って配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の光源装置。」に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項9、13、14も同様に訂正する)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項9に「前記拡散セルは、少なくとも高さの異なる前記拡散セルを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れかに記載の光源装置。」とあるのを、「複数の前記拡散セルの少なくとも一部は、互いに高さが異なることを特徴とする請求項1乃至請求項5、請求項8の何れかに記載の光源装置。」に訂正する(請求項9の記載を引用する請求項13、14も同様に訂正する)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項13に「請求項1乃至請求項11の何れかに記載の光源装置と、前記光源装置からの出射光が照射されて投影光を生成する表示素子と、を備え、前記レンズセルのアスペクト比は、前記表示素子のアスペクト比と同じであることを特徴とする投影装置。」とあるのを、「請求項1乃至請求項5、請求項8、請求項9の何れかに記載の光源装置と、前記光源装置からの出射光が照射されて投影光を生成する表示素子と、を備え、前記レンズセルのアスペクト比は、前記表示素子のアスペクト比と同じであることを特徴とする投影装置。」に訂正する(請求項13の記載を引用する請求項14も同様に訂正する)。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項14に「前記表示素子で生成された投影光を投影する投影光学系と、前記光源装置や前記表示素子の制御を行う制御手段と、を備えることを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の投影装置。」とあるのを、「前記表示素子で生成された投影光を投影する投影光学系と、前記光源装置と前記表示素子の制御を行う制御手段と、を備えることを特徴とする請求項13に記載の投影装置。」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項6、7、10乃至12を削除する。
(9)訂正事項9
明細書の段落【0008】に「本発明の光源装置は、光源光を出射する固体発光素子と、前記光源光を拡散させる拡散板と、前記拡散板から出射された出射光が入射する導光装置と、を備え、前記拡散板は、前記拡散板の面の第一方向と、前記第一方向と略直交する第二方向に弧状の拡散セルを複数有し、前記第一方向と前記第二方向の拡散角度が異なり、前記導光装置は、複数のレンズセルを有するレンズアレイからなる、ことを特徴とする。」とあるのを、「本発明の光源装置は、光源光を出射する固体発光素子と、面の第一方向に弧状であると共に前記面の前記第一方向と略直交する前記面の第二方向に弧状である拡散セルを複数有し、前記光源光を拡散させる拡散板と、長辺及び短辺を有する長方形状のレンズセルを複数有し、前記拡散板から出射された出射光が入射するレンズアレイと、を備え、前記拡散板は、前記レンズセルの前記長辺の方向に一致する前記第二方向における前記拡散板の拡散角度を、前記レンズセルの前記短辺の方向に一致する前記第一方向における前記拡散板の拡散角度よりも大きくする、ことを特徴とする。」に訂正する。
(10)訂正事項10
明細書の段落【0009】に「本発明の投影装置は、上述の光源装置と、前記光源装置からの出射光が照射されて投影光を生成する表示素子と、を備えることを特徴とする。」とあるのを、「本発明の投影装置は、上述の光源装置と、前記光源装置からの出射光が照射されて投影光を生成する表示素子と、を備え、前記レンズセルのアスペクト比は、前記表示素子のアスペクト比と同じであることを特徴とする。」に訂正する。
本件訂正請求は、一群の請求項〔1-14〕に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1-14〕に対して請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件特許の請求項1の「複数のレンズセルを有する」「レンズアレイ」について「長辺及び短辺を有する長方形状のレンズセルを複数有」する「レンズアレイ」に限定するとともに、本件特許の請求項1の「前記第一方向と前記第二方向の拡散角度が異な」ることについて、「前記レンズセルの前記長辺の方向に一致する前記第二方向における前記拡散板の拡散角度を、前記レンズセルの前記短辺の方向に一致する前記第一方向における前記拡散板の拡散角度よりも大きくする」ことに限定するものであり、本件特許の請求項1に記載されていた事項及び【0056】、【0060】に記載されていた事項に基づくものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件特許の請求項4の「前記第一方向の曲率半径」と「前記第二方向の曲率半径」との大小関係を明瞭にする訂正であり、本件特許の請求項4に記載されていた事項及び【0054】、【0060】に記載されていた事項に基づくものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、本件特許の請求項5の「拡散セル」が「楕円弧状に形成されている」ものであることを明瞭にする訂正を含むものであり、本件特許の請求項5に記載されていた事項及び【0075】に記載されていた事項に基づくものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4、6について
訂正事項4、6は、訂正事項8の訂正事項に伴って、引用する請求項を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項5について
訂正事項5における「複数の前記拡散セルの少なくとも一部は、互いに高さが異なること」については、本件特許の請求項9の「高さの異なる前記拡散セル」が「複数の前記拡散セルの少なくとも一部」であることを明瞭にする訂正であり、本件特許の請求項9に記載されていた事項及び【0073】に記載されていた事項に基づくものである。
また、訂正事項5における「請求項1乃至請求項5、請求項8の何れかに記載の光源装置」については、訂正事項8の訂正に伴って、引用する請求項を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
してみると、訂正事項5は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)訂正事項7について
訂正事項7における「前記光源装置と前記表示素子」については、「前記光源装置や前記表示素子」という記載を明瞭にする訂正である。
また、訂正事項7における「請求項13に記載の投影装置」については、訂正事項8の訂正に伴って、引用する請求項を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
してみると、訂正事項7は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)訂正事項8について
訂正事項8は、本件特許の請求項6、7、10-12を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(8)訂正事項9について
訂正事項9は、訂正事項1の訂正に伴って、訂正後の請求項1と明細書の整合を図るために、段落【0008】を訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(9)訂正事項10について
訂正事項10は、訂正事項1、6及び8の訂正に伴って、訂正後の請求項13と明細書の整合を図るために、段落【0009】を訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-14〕について訂正を認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求書において訂正された請求項1-14に係る発明(以下「本件発明1-14」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1-14に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
光源光を出射する固体発光素子と、
面の第一方向に弧状であると共に前記面の前記第一方向と略直交する前記面の第二方向に弧状である拡散セルを複数有し、前記光源光を拡散させる拡散板と、
長辺及び短辺を有する長方形状のレンズセルを複数有し、前記拡散板から出射された出射光が入射するレンズアレイと、
を備え、
前記拡散板は、前記レンズセルの前記長辺の方向に一致する前記第二方向における前記拡散板の拡散角度を、前記レンズセルの前記短辺の方向に一致する前記第一方向における前記拡散板の拡散角度よりも大きくする、
ことを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記拡散セルは、正面視において少なくとも異なる形状を含む非正多角形状であることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記拡散セルは、前記第一方向及び前記第二方向に正円弧状に形成されたレンズ面を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記拡散セルの前記第一方向の曲率半径は、前記拡散セルの前記第二方向の曲率半径よりも大きい、
ことを特徴とする請求項3に記載の光源装置。
【請求項5】
前記拡散セルは、前記第一方向及び前記第二方向の何れか一方又は両方が楕円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光源装置。
【請求項6】(削除)
【請求項7】(削除)
【請求項8】
前記拡散セルは、頂点位置が各々偏って配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の光源装置。
【請求項9】
複数の前記拡散セルの少なくとも一部は、互いに高さが異なることを特徴とする請求項1乃至請求項5、請求項8の何れかに記載の光源装置。
【請求項10】(削除)
【請求項11】(削除)
【請求項12】(削除)
【請求項13】
請求項1乃至請求項5、請求項8、請求項9の何れかに記載の光源装置と、
前記光源装置からの出射光が照射されて投影光を生成する表示素子と、
を備え、
前記レンズセルのアスペクト比は、前記表示素子のアスペクト比と同じであることを特徴とする投影装置。
【請求項14】
前記表示素子で生成された投影光を投影する投影光学系と、
前記光源装置と前記表示素子の制御を行う制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項13に記載の投影装置。」
第4 取消理由通知書に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件特許の請求項1-14に係る特許に対して、当審が令和元年5月28日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
請求項1-14に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。
2 当審の判断
本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されている、「面の第一方向に弧状であると共に前記面の前記第一方向と略直交する前記面の第二方向に弧状である拡散セルを複数有し、前記光源光を拡散させる拡散板と、長辺及び短辺を有する長方形状のレンズセルを複数有し、前記拡散板から出射された出射光が入射するレンズアレイと、を備え、前記拡散板は、前記レンズセルの前記長辺の方向に一致する前記第二方向における前記拡散板の拡散角度を、前記レンズセルの前記短辺の方向に一致する前記第一方向における前記拡散板の拡散角度よりも大きくする」という構成を備えることにより、マイクロレンズアレイが長方形状のような長辺と短辺を有しているような場合に、マイクロレンズアレイに入射する拡散光をマイクロレンズアレイにおける出射側のレンズセルから適切に出射させるために、拡散光の入射角度(拡散角度)の大きさを長辺方向および短辺方向のそれぞれのレンズセルの幅に合わせて一定以下に抑え、光源光の輝度ムラを低減させるという課題を解決することができるから、本件発明1は、課題を解決する構成が反映されており、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。
また、本件発明1を引用する本件発明2-5、8、9、13、14についても同様である。
3 特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、令和元年9月19日に提出された意見書において、以下のように主張している。
『拡散セルに関して、本件特許明細書の段落【0054】には、「各拡散セル210は、図4(b)及び図4(c)に示すように、凸型の正円弧状のレンズ面211を有する。」と記載されており、また、段落【0056】には、「拡散板200は、各拡散セル210の長軸2L方向(第一方向)及び短軸2S方向(第二方向)がそれぞれマイクロレンズアレイ400のレンズセル410の短辺4S方向及び長辺4L方向と一致するように配置される。」と記載されている。
一方、本件特許発明1では、拡散セルに関して、「面の第一方向に弧状であると共に前記面の前記第一方向と略直交する前記面の第二方向に弧状である拡散セル」であり、「前記拡散板は、前記レンズセルの前記長辺の方向に一致する前記第二方向における前記拡散板の拡散角度を、前記レンズセルの前記短辺の方向に一致する前記第一方向における前記拡散板の拡散角度よりも大きくする」と規定されているだけであり、(i)「凸型」である構成、(ii)面の第一方向が「長軸」である構成、(iii)面の第二方向が「短軸」である構成がいずれも特定されていない。そのため、拡散セルに関して、「凸型の正円弧状」とするとともに「長軸」と「短軸」が特定されている構成以外について、「光源光の輝度ムラを低減させる」という本件特許発明1の課題を解決できるのか、依然として当業者が認識することができない。
したがって、本件出願時の技術常識に照らしても、本件特許発明1-5、8、9、13、14に係る発明の範囲まで、本件発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。』
しかしながら、上記「2 当審の判断」で述べたように、発明の詳細な説明においては、「マイクロレンズアレイが長方形状のような長辺と短辺を有しているような場合に、マイクロレンズアレイに入射する拡散光をマイクロレンズアレイにおける出射側のレンズセルから適切に出射させるために、拡散光の入射角度(拡散角度)の大きさを長辺方向および短辺方向のそれぞれのレンズセルの幅に合わせて一定以下に抑え、光源光の輝度ムラを低減させる」という課題を解決する構成は、「レンズアレイの複数のレンズセルが長方形状であることを前提として、レンズセルの長辺の方向に一致する方向における拡散板の拡散角度を、レンズセルの短辺の方向に一致する方向における拡散板の拡散角度よりも大きくした」構成である。
してみると、上記課題を解決するためには、該構成が満たされれば良いのであるから、レンズセルの長辺の方向に一致する方向に拡散板の長軸を一致させ、レンズセルの短辺の方向に一致する方向に拡散板の短軸を一致させる構成(上記意見書における、(ii)面の第一方向が「長軸」である構成、(iii)面の第二方向が「短軸」である構成に対応する構成)が、上記課題を解決するために必須の構成であるとはいえない。
また、拡散セルの形状としては凹形状でも、拡散板の拡散角度を規定できることは明らかであって、拡散セルの形状が凸形状である構成(上記意見書における(i)「凸型」である構成に対応する構成)が、上記課題を解決するために必須の構成であるとはいえない。
よって、特許異議申立人による上記主張は採用できない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立人が提出した証拠とその主張の概要
(1)証拠
甲第1号証:特開2012-113223号公報
甲第2号証:特開2014-38314号公報
甲第3号証:特開2014-139656号公報
甲第4号証:特開2014-191206号公報
(2)主張の概要
請求項1、3-5、8-14に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
請求項2に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
請求項6、7に係る発明は、甲1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、請求項1-14に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきである。
2 甲各号証の記載
(1)甲第1号証(特開2012-113223号公報)について
甲第1号証には、次の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同様。)
「【0001】
本発明は、レーザダイオード(LD)などの固体発光素子を用いた照明装置、ならびにそれを備えた投影型表示装置および直視型表示装置に関する。」
「【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、照明光の輝度を向上させることが可能な照明装置、ならびにそのような照明装置を用いた投影型表示装置および直視型表示装置を提供することにある。」
「【0015】
<第1の実施の形態>
[プロジェクタ1の全体構成]
図1(A),(B)は、本発明の第1の実施の形態に係るプロジェクタ(プロジェクタ1)の概略構成を表すものである。なお、このプロジェクタ1が、本発明の「投射型表示装置」の一具体例に相当する。図1(A)はプロジェクタ1を上から(y軸方向から)見たときの構成例を表し、図1(B)はプロジェクタ1を横から(x軸方向から)見たときの構成例を表す。また、図2(A),(B)は、図1のプロジェクタ1内の光路の一例を表すものである。図2(A)は、プロジェクタ1を上から(y軸方向から)見たときの光路の一例を表し、図2(B)はプロジェクタ1を横から(x軸方向から)見たときの光路の一例を表す。
・・・<略>・・・
【0017】
プロジェクタ1は、例えば、照明光学系1Aと、入力された映像信号に基づいて照明光学系1Aからの光を変調することにより画像光を生成する空間変調素子60と、この空間変調素子60で生成された画像光を反射型のスクリーン2に投射する投影光学系70とを備えている。ここで、照明光学系1Aが、本発明の「照明装置」の一具体例に相当する。
・・・<略>・・・
【0019】
照明光学系1Aは、例えば、図1(A),(B)に示したように、光源10A,10B,10Cと、カップリングレンズ(指向角変換素子)20A,20B,20Cと、光路合成素子30と、インテグレータ40と、コンデンサレンズ50とを有している。光路合成素子30は、光源10A,10B,10Cからの光を合成するものであり、例えば、2つのダイクロイックミラー30A,30Bからなる。インテグレータ40は、照明範囲60Aにおける光の照度分布を均一化するものであり、例えば、一対のフライアイレンズ40A,40Bからなる。光源10Aの光軸上には、カップリングレンズ20Aと、光路合成素子30と、インテグレータ40と、コンデンサレンズ50とが、光源10A側からこの順に配列されている。光源10Bの光軸は、光源10Aの光軸とダイクロイックミラー30Aにおいて直交しており、光源10Bの光軸上には、カップリングレンズ20Bおよびダイクロイックミラー30Aが、光源10B側からこの順に配列されている。光源10Cの光軸は、光源10Aの光軸とダイクロイックミラー30Bにおいて直交しており、光源10Cの光軸上には、カップリングレンズ20Cおよびダイクロイックミラー30Bが、光源10C側からこの順に配列されている。ここで、これらのうち、カップリングレンズ(指向角変換素子)20A,20B,20Cおよびインテグレータ40が、本発明の「光学部材(後述する固体発光素子側から入射した光が通過して出射する光学部材)」の一具体例に相当する。
・・・<略>・・・
【0021】
(光源10A,10B,10C:チップ11Aが上面発光型の素子の場合)
光源10A,10B,10Cは、それぞれ、例えば、図3(A),(B)~図5(A),(B)に示したように、固体発光素子11と、固体発光素子11を支持するパッケージ12(固体発光素子11を実装するための基材)とを有している。換言すると、ここでは、各光源10A,10B,10Cは、固体発光素子11を基材上に支持するパッケージとなっている。固体発光素子11は、単一もしくは複数の点状、または単一もしくは複数の非点状の発光スポットからなる光射出領域から光を発するようになっている。固体発光素子11は、例えば、図3(A),(B)に示したように、所定の波長帯の光を発する単一のチップ11Aからなっていてもよいし、例えば、図4(A),(B)および図5(A),(B)に示したように、同一の波長帯もしくは互いに異なる波長帯の光を発する複数のチップ11Aからなっていてもよい。固体発光素子11が複数のチップ11Aからなる場合には、それらのチップ11Aは、例えば、図4(A),(B)に示したように、横方向に一列に配置されていたり、例えば、図5(A),(B)に示したように、横方向および縦方向に格子状に配置されていたりする。固体発光素子11に含まれるチップ11の数は、光源10A,10B,10Cごとに異なっていてもよいし、全ての光源10A,10B,10Cで互いに等しくなっていてもよい。」
「【0037】
カップリングレンズ20Aは、例えば、図2(A),(B)に示したように、光源10Aから発せられた光を略平行光化するものであり、光源10Aから発せられた光の指向角(θH,θV)を、平行光の指向角と等しくなるように、またはそれに近づくように変換するものである。カップリングレンズ20Aは、光源10Aから発せられた光のうち指向角内の光が入射する位置に配置されている。カップリングレンズ20Bは、例えば、図2(A),(B)に示したように、光源10Bから発せられた光を略平行光化するものであり、光源10Bから発せられた光の指向角(θH,θV)を、平行光の指向角と等しくなるように、またはそれに近づくように変換するものである。カップリングレンズ20Bは、光源10Bから発せられた光のうち指向角内の光が入射する位置に配置されている。カップリングレンズ20Cは、例えば、図2(A),(B)に示したように、光源10Cから発せられた光を略平行光化するものであり、光源10Cから発せられた光の指向角(θH,θV)を、平行光の指向角と等しくなるように、またはそれに近づくように変換するものである。カップリングレンズ20Cは、光源10Cから発せられた光のうち指向角内の光が入射する位置に配置されている。つまり、カップリングレンズ20A,20B,20Cは、光源10A,10B,10Cごとに(パッケージごとに)1つずつ配置されている。なお、カップリングレンズ20A,20B,20Cは、それぞれ、単一のレンズによって構成されていてもよいし、複数のレンズによって構成されていてもよい。
・・・<略>・・・
【0039】
フライアイレンズ40A、40Bはそれぞれ、例えば図13(A),(B)に示したように、所定の配列状態(ここでは、縦×横=4×3のマトリクス状)に配置された複数のレンズ(セル)によって構成されたものである。フライアイレンズ40Bに含まれる複数のセル42は、フライアイレンズ40Aのセル41ごとに1つずつ対向して配置されている。フライアイレンズ40Aは、フライアイレンズ40Bの焦点位置(または略焦点位置)に配置されており、フライアイレンズ40Bは、フライアイレンズ40Aの焦点位置(または略焦点位置)に配置されている。従って、インテグレータ40は、フライアイレンズ40Aで分割形成された光束がフライアイレンズ40Bの像側のレンズ面近傍に焦点を結び、ここに2次光源面(光源像)を形成するようになっている。この2次光源面は投影光学系70の入射瞳と共役な面の位置に位置している。ただし、この2次光源面は、必ずしも厳密に投影光学系70の入射瞳と共役な面の位置に位置している必要はなく、設計上の許容範囲内に位置していればよい。なお、フライアイレンズ40A、40Bは、一体に形成されたものであってもよい。
【0040】
ここで、一般に光源10A,10B,10Cから射出された光束は、その進行方向に垂直な面において不均一な強度分布をもっている。そのため、これら光束をそのまま照明範囲60A(被照射面)に導くと、照明範囲60Aでの照度分布が不均一になる。これに対して、上記のように光源10A,10B,10Cから射出された光束を、インテグレータ40によって複数の光束に分割してそれぞれを照明範囲60Aに重畳的に導くようにすれば、照明範囲60A上の照度分布を均一にすることができる。」
「【0094】
例えば、上記実施の形態等では、照明光学系1A,3A,4A,5Aが、平行光をフライアイレンズ40Aに入射させる無限光学系を含んで構成されていたが、収束光(または発散光)をフライアイレンズ40Aに入射させる有限光学系を含んで構成されていてもよい。この場合には、上記実施の形態等において、カップリングレンズ20A~20Dの代わりに、光源10A~10Dから発せられた光を収束するか、または発散する機能を有する指向角変換素子を配置すればよい。ただし、この場合には、フライアイレンズ40Aの各セル41によってフライアイレンズ40Bに形成される各光源像Sのサイズがフライアイレンズ40Bの1つのセル42のサイズを超えない大きさとなるように、上記の指向角変換素子と、フライアイレンズ40A,40Bとからなる光学系の光学倍率が設定されていることが好ましい。具体的には、上記の指向角変換素子と、フライアイレンズ40A,40Bとからなる光学系の光学倍率が以下の関係式を満たすことが好ましい。なお、この場合においても、フライアイレンズ40A,40Bの各セル41,42が1以外の縦横比(アスペクト比)を有している場合には、照明光学系1A,3A,4A,5Aが、アナモフィック光学系となっていることが好ましい。
h=P×m≦hFEL2
m:上記の指向角変換素子と、フライアイレンズ40A,40Bとからなる光学系の光学倍率」
甲第1号証には以下の図が示されている。
【図1】
【図13】
【図13】より、フライアイレンズ40A、40Bが、長辺及び短辺を有する長方形状の複数のレンズ(セル)によって構成されていることが見て取れる。
上記事項から、甲第1号証に記載されている発明を、本件発明1に即して整理すれば次のとおりである(以下、「甲1発明」という。)
「光を発する固体発光素子11を有している光源10A,10B,10Cと(【0021】)、
カップリングレンズ20A~20Dの代わりに配置される、発散する機能を有する指向角変換素子と(【0094】)、
長辺及び短辺を有する長方形状の複数のレンズ(セル)によって構成されているフライアイレンズ40A、40Bからなるインテグレータ40と(【0019】、【0039】、【図13】)、
を有している照明光学系1A(【0017】)。」
(2)甲第2号証(特開2014-38314号公報)について
甲第2号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0021】
図1に示す光学素子10は、透明基材12上に、複数のレンズ11がアレイ状に並んで形成されている。以下、透明基材12上に並んで形成された複数のレンズ11を、レンズアレイと呼ぶ場合がある。図1(a)に示すように、レンズアレイを構成する各々のレンズ11の基材面での外周形状は多角形であるのが好ましい。すなわち、各レンズ11が独立して配置されるのではなく、互いに接して境界が多角形となるように配置、形成されているのが好ましい。なお、レンズが接するとは、より具体的には、一方のレンズのレンズ面の一部と他方のレンズのレンズ面の一部とが接合することをいう。」
「【0030】
本実施形態の光学素子10は、各レンズ11の断面形状を放物面形状としている。このようにすることで、レンズ11からの出射光の光量分布を均一にできる。」
「【0064】
また、図9は、投影部31のより具体的な構成例を模式的に示す模式図である。図9に示すように、投影部31は、第1の波長の光を出射する光源311と、第2の波長の光を出射する光源312と、第3の波長の光を出射する光源313とを有していてもよい。また、これら各光源から出射される光束を合波するダイクロイックプリズム314,315と、入射される光束を平行光にして出射するコリメータレンズ316と、コリメータレンズ316から出射される光束を、投影面を走査するために所定方向に順次偏向させて出射する投影ミラー317と、第1の実施形態の光学素子10とを有していてもよい。
【0065】
このような光学系を備えることにより、観察点41から見て部分反射素子33の前方に、像が見えるような投影装置を得られる。図8において、符号42は、この像が見られる遠方像面を示している。」
【図1】
【図9】
上記事項から、甲第2号証には、「投影装置において、レンズ11からの出射光の光量分布を均一にするために、投影部31が、複数のレンズ11がその断面形状を放物面形状としてアレイ状に並んで形成されている光学素子10を有している」という技術的事項が記載されていると認められる。
(3)甲第3号証、甲第4号証について
甲第3号証(特開2014-139656号公報)の【0160】-【0168】、【図6】には、観測者である運転者が、左右斜め方向から表示画像を見た場合にも、表示を認識できるようにするために、被走査面素子の微細凸レンズをマイクロレンズアレイ上に形成された画像もしくは拡大虚像の短手方向よりも長手方向の方が曲率が大きいアナモフィックなレンズとして、画素表示用ビームを拡散させる拡散角を「2次元画像の横方向を縦方向よりも広く」するという技術的事項が記載されている。
甲第4号証(特開2014-191206号公報)の【0067】-【068】、【図9】には、光学素子100からの放射光が、xz平面(平面α)に沿って発散する光線の角度分布と、yz平面(平面β)に沿って発散する光線の角度分布が異なる場合に、一方の角度分布を他方の角度分布に合わせるように各平面に沿って進行する光線の発散角度を設定した光発散性素子74を角度分布変換素子61として用いるという技術的事項が記載されている。
3 当審の判断
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、次のことがいえる。
甲1発明の、「光源10A,10B,10C」が「有している」「光を発する固体発光素子11」は、本件発明1の「光源光を出射する固体発光素子」に相当する。
甲1発明の、「インテグレータ40」を構成する「長辺及び短辺を有する長方形状の複数のレンズ(セル)によって構成されているフライアイレンズ40A、40B」は、本件発明1の「長辺及び短辺を有する長方形状のレンズセルを複数有し、前記拡散板から出射された出射光が入射するレンズアレイ」と、「長辺及び短辺を有する長方形状のレンズセルを複数有」する「レンズアレイ」で共通する。
甲1発明の「照明光学系1A」は、本件発明1の「光源装置」に相当する。
してみると、本件発明1と甲1発明との間における一致点及び相違点は下記の通りである。
[一致点]
「光源光を出射する固体発光素子と、
長辺及び短辺を有する長方形状のレンズセルを複数有するレンズアレイと、
を備えた光源装置。」
[相違点]
本件発明1は、「面の第一方向に弧状であると共に前記面の前記第一方向と略直交する前記面の第二方向に弧状である拡散セルを複数有し、前記光源光を拡散させる拡散板」を備え、「レンズアレイ」に対して「前記拡散板から出射された出射光が入射」し、「前記拡散板は、前記レンズセルの前記長辺の方向に一致する前記第二方向における前記拡散板の拡散角度を、前記レンズセルの前記短辺の方向に一致する前記第一方向における前記拡散板の拡散角度よりも大きくする」という構成を有しているのに対して、甲1発明は、「拡散板」を備えるものではなく、さらに、「レンズセル」の「長辺の方向」及び「短辺の方向」と、「拡散板の拡散角度」との大小関係を規定するものではない点。
(2)判断
上記相違点について検討する。
甲第1号証および甲第2号証には、「面の第一方向に弧状であると共に前記面の前記第一方向と略直交する前記面の第二方向に弧状である拡散セルを複数有し、前記光源光を拡散させる拡散板」と、「長辺及び短辺を有する長方形状のレンズセルを複数有し、前記拡散板から出射された出射光が入射するレンズアレイ」の両手段を備えた点について、その記載や示唆がなされていない。また、甲第3号証及び甲第4号証おいても、この点について、その記載や示唆がなされていない。
そして、本件発明1は、これらの両手段を備えることを前提として、さらに、「前記拡散板は、前記レンズセルの前記長辺の方向に一致する前記第二方向における前記拡散板の拡散角度を、前記レンズセルの前記短辺の方向に一致する前記第一方向における前記拡散板の拡散角度よりも大きくする」構成を有することにより、「マイクロレンズアレイが長方形状のような長辺と短辺を有しているような場合に、マイクロレンズアレイに入射する拡散光をマイクロレンズアレイにおける出射側のレンズセルから適切に出射させるために、拡散光の入射角度(拡散角度)の大きさを長辺方向および短辺方向のそれぞれのレンズセルの幅に合わせて一定以下に抑え、光源光の輝度ムラを低減させる」という顕著な効果を奏するものである。
(3)特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、特許異議申立書および令和元年9月19日に提出された意見書において、『甲1発明には、変形例として、光源から発せられた光を発散する機能を有する指向角変換素子が記載されている(甲第1号証の段落【0094】)。この甲1発明における「指向角変換素子」は、本件特許発明1における構成B「光源光を拡散させる拡散板」に相当する。』と主張されているが、以下に述べるとおり、該主張は採用することができない。
甲第1号証の段落【0094】には具体的に、「例えば、上記実施の形態等では、照明光学系1A,3A,4A,5Aが、平行光をフライアイレンズ40Aに入射させる無限光学系を含んで構成されていたが、収束光(または発散光)をフライアイレンズ40Aに入射させる有限光学系を含んで構成されていてもよい。この場合には、上記実施の形態等において、カップリングレンズ20A~20Dの代わりに、光源10A~10Dから発せられた光を収束するか、または発散する機能を有する指向角変換素子を配置すればよい。」と記載されている。
このように、「カップリングレンズ20A~20Dの代わりに、光源10A~10Dから発せられた光を収束するか、または発散する機能を有する指向角変換素子を配置」することは、平行光に代えて、収束光または発散光を用いることを意味する。それゆえ、該段落【0094】からは、一点に収束する光や一点から発散する光を用いることは示唆されるが、拡散光を用いることは示唆されない。
また、拡散板(光学用ディヒューザー)は、一般的に、光を均一に拡散するために、磨りガラス、レンズアレイからなるレンズ拡散板などが用いられる部材であり、光を発散する機能を有する指向角変換素子(単レンズ)は、光を均一に拡散するために用いられる拡散板(光学用ディヒューザー)とは異種の部材である。
してみると、甲1発明における「光源から発せられた光を発散する機能を有する指向角変換素子」は、本件特許発明1における構成B「光源光を拡散させる拡散板」に相当するとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲第2-4号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件発明2-5、8、9、13、14は、上記相違点に係る構成を含むものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明及び甲第2-4号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件発明1-5、8、9、13、14は、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしているため、この要件を満たしていないという理由によっては、本件発明1-5、8、9、13、14に係る特許は取り消されるべきものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由に照らしても、本件発明1-5、8、9、13、14に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1-5、8、9、13、14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項6、7、10-12は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項6、7、10-12に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2019-700152