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特許異議申立

2018-700259

発泡性圧縮製剤

審判番号
2018-700259
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2012-226806
登録番号
特許第6209323号(P6209323)
請求日
2018年03月27日
審決日
2018年06月18日
公報発行日
2018年08月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】花王株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人アルガ特許事務所
  • 【異議申立人】株式会社 バスクリン
  • 【異議申立人代理人】森本 晋
審判長/審判官
  • 審判長 關 政立
  • 審判官 田村 聖子
  • 審判官 井上 明子
分類
P1651.121-Y (A61K) / P1651.537-Y (A61K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6209323号発明「発泡性圧縮製剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6209323号の請求項1~5に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6209323号の請求項1~5に係る特許(以下、「本件特許」ということがある。)についての出願は、平成24年10月12日に出願されたものであって、平成29年 9月15日にその特許権の設定登録がなされ、同年10月 4日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、特許異議申立人 株式会社バスクリン(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。 第2 本件特許発明 特許第6209323号の請求項1~5の特許に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、特許第6209323号の請求項1~5の特許に係る発明を、その請求項に付された番号順に、「本件特許発明1」等ということがある。また、これらをまとめて「本件特許発明」ということがある。)。 「【請求項1】 炭酸塩、有機酸、2質量%を超え10質量%以下の25℃で液状の成分、及び水溶性高分子を含有するブリケット製剤であって、 25℃で液状の成分が、香料又はエキス、界面活性剤及び油剤から選ばれる1種又は2種以上であり、 製剤1錠に外接する楕円体を製剤1錠あたりが有する立体形状と仮定し、かつ楕円体の中心Oで互いに直交する3つの楕円面の主軸の長さを2a(mm)、2b(mm)及び2c(mm)(ただし、2aは楕円体の最長差し渡し径であり、a≧b≧cである)としたときに、 下記式(I)、(II)、(III)又は(IV)で求められる楕円体1個あたりの平均表面積Sが317mm2以上900mm2以下であるブリケット製剤(但し、水溶性高分子として、ポリエチレングリコールを0.3~0.5質量%、及びポリビニルピロリドンを0.3~0.4質量%含有するブリケット製剤を除く)。 【請求項2】 有機酸が、フマル酸を含有する請求項1に記載のブリケット製剤。 【請求項3】 炭酸塩として、少なくとも炭酸ジアルカリ金属塩を含有する請求項1又は2に記載のブリケット製剤。 【請求項4】 炭酸塩として、さらに炭酸モノアルカリ金属塩を含有し、かつ 炭酸ジアルカリ金属塩と炭酸モノアルカリ金属塩の含有量が、質量比(炭酸ジアルカリ金属塩:炭酸モノアルカリ金属塩)で25:75~100:0である請求項3に記載のブリケット製剤。 【請求項5】 浴用剤、足浴剤又は芳香剤である請求項1~4のいずれか1項に記載のブリケット製剤。」 第3 申立理由の概要及び提出した証拠 1.申立理由の概要 申立人は、甲第1~7号証を提出し、本件特許は、以下の理由1~2により、取り消されるべきものである旨主張している。 (1)申立理由1(進歩性) 本件特許発明1~5は、甲第1号証に記載の発明と、当業者が適宜設計可能な事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に規定する発明に該当するものであり、同法第113条第2号に該当する。 (2)申立理由2(サポート要件) 本件特許発明1~5は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、同法第113条第4号に該当する。 2.証拠方法 (1)甲第1号証:特開2008-142347号公報 (2)甲第2号証:特開2001-139454号公報 (3)甲第3号証:国際公開第2012/096278号 (4)甲第4号証:特開2003-342164号公報 (5)甲第5号証:三菱化学フーズ株式会社、サーフホープ(R) SE COSME ショ糖脂肪酸エステル/化粧品用、発行時期は不明 申立人は、裏表紙の「2005.6.500RIX」との記載に基づいて、甲第5号証は2005年6月頃に発行されたものであると主張しているが、「2005.6.」の後に記載されている「500RIX」の意味するところが不明であるため、当該記載のみからでは、発行時期は不明である。 もっとも、当該証拠を本件出願前に頒布されたものとして仮に取り扱ったとしても、結論及び合議体の判断に変わりはないため、本決定では、この証拠の記載に基づく申立人の主張についても判断を示すこととした。 (6)甲第6号証:花王株式会社 ケミカル事業ユニット、花王の香粧品・医薬品原料(2011年4月) 甲第6号証は特許権者に属する「ケミカル事業ユニット」が発行した文献であるところ、本件特許の審査過程で通知された拒絶理由通知書において、この文献が「2011年4月」に発行されたものとして審査官に引用された際に、特許権者が、当該審査官が示した発行時期を争わなかったこと、及び、裏表紙に、当該発行時期と矛盾しない「2011/4」なる記載を含む「2011/4 1,000 Tr.1 035-001(R20)」との記載があることから、上述のとおり甲第6号証は「2011年4月」に発行されたものと認定した。 (7)甲第7号証:薬事日報社、医薬部外品原料規格2006 統合版、平成25年11月25日第1刷発行、Iのp.(1)~(2)、IIのp.689の「dl-カンフル」の項、IIIのp.1625の「l-メントール」の項 甲第7号証自体の発行時期は、上述のとおりの平成25年11月25日であるが、甲第7号証のIのp.(1)~(2)に、 「厚生労働省医薬食品局長」が「平成18年3月31日」付けで発した「薬食発第0331030号」の通知が掲載されており、その通知の冒頭に、 「医薬部外品原料規格2006について 医薬部外品原料規格については、平成3年5月14日薬発第535号薬務局長通知「医薬部外品原料規格について」・・・(以下「旧外原規」と総称する。)により定めていたところであるが、今般、見直しを行い、別添のとおり、「医薬部外品原料規格2006(以下「外原規2006」という。)として取りまとめた」ことが記載されており、また、当該通知の最終部分に 「第3 施行時期について 本通知は、平成18年4月1日から施行すること。ただし、平成19年9月30日までの間、従前の例によることができるものとすること。」との記載があることから、最初の「医薬部外品原料規格2006」は、遅くとも平成19年9月30日には発行されていたことが認められる。 しかしながら、甲第7号証自体は平成25年11月25日に発行されたものであって、上記最初に発行された「医薬部外品原料規格2006」が、平成25年11月25日までの間に加除修正等がなされなかったことを示す証拠などは提出されていないから、上述の「薬食発第0331030号」の通知の内容を考慮しても、申立人が示すIIのp.689の「dl-カンフル」の項、IIIのp.1625の「l-メントール」の項の公知日を、平成25年11月25日よりも早いものと認めることはできない。 もっとも、当該内容が本件出願前に仮に公知であったと取り扱ったとしても、結論及び合議体の判断に変わりはないため、本決定では、当該IIのp.689の「dl-カンフル」の項、IIIのp.1625の「l-メントール」の項の記載に基づく申立人の主張についても判断を示すこととした。 (以下、「甲第1号証」ないし「甲第7号証」をそれぞれ「甲1」ないし「甲7」という。) 第4 甲号証の記載事項 甲1~甲7には、それぞれ以下の記載がある。 1.甲1 (1-1)(【0038】の末行~【0041】段落) 「【実施例】 以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されない。特に断らない限り「%」は「重量%」を意味する。 〔実施例1〕 図4に示す方法に従い図1に示す形状の固形入浴剤を製造した。固形入浴剤の寸法は、平面視における最大幅Wが16.5mm、正面視における高さHが9.5mm、上部域の高さh1が4.5mm、中央域の高さh2が3mmであった。粉末原料の組成は以下のとおりであった。 ・炭酸水素ナトリウム                   20% ・炭酸ナトリウム                     20% ・フマル酸                        40% ・ポリエチレングリコール(分子量6000)、香料及び その他の成分 20% 前記の粉末原料を用い、打錠圧51MPaで打錠したところ、10000回の打錠を繰り返してもスティッキングの発生は観察されなかった。」 (1-2)(図1) 「 (1-3)(【0001】段落の最終行~【0004】段落) 「【背景技術】 従来、粉末原料の圧縮成形(粉末圧縮成形)によって製造される錠剤(粉末圧縮錠剤)においては、圧縮方向から見た平面形状は円、四角、ひし形などが一般的である。この平面形状は、圧縮部材である杵(上杵/下杵)及び臼の形状に応じて設定される。また、この平面形状は、圧縮方向の中心に対して対称形状であることが一般的である。更に、圧縮面は一般に平坦面か又は曲面である。 このように粉末原料の圧縮成形によって製造される錠剤は、一般に単純な対称形状である場合が多いが、形状の特徴を持たせることで、その形状に起因する機能を錠剤に付与する場合もある。例えば錠剤の一側面に、外周側面に切欠介入する斜面部を形成することで、錠剤に転がり防止の機能を付与することが提案されている(特許文献1)。また、錠剤の外周側面に傾斜をつけることで、錠剤に転がり防止の機能を付与することが提案されている(特許文献2参照) ところで従来、粉末圧縮成形によって錠剤を製造すると、その製造工程において圧縮成形を繰り返すうちに、図6に示すように、圧縮部材である杵Pの表面に粉末原料(生地)が付着して異物となり、その後の成形において錠剤Tの表面に欠けが生じる現象が起こることが知られている。この現象は一般にスティッキングと呼ばれている。スティッキングは、製造の歩留まりを低下させ、また強度低下など製品の品質を低下させる一因となる。」 (1-4)(【0010】段落の最終行~【0016】段落) 「【発明を実施するための最良の形態】 以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1(a)ないし図1(c)には本発明の粉末圧縮錠剤の一実施形態が示されている。図1(a)は錠剤の平面図、図1(b)は正面図、図1(c)は底面図である。本実施形態の錠剤は、固形入浴剤に係るものである。 錠剤10は、図1(a)及び図1(c)に示すように平面視して正八角形の外形をしている。また図1(b)に示すように、その高さ方向に沿って上部域11、中央域12及び底部域13を備えている。上部域11は錐形部分となっている。具体的には、底面が正八角形である錐体、つまり正八角錐の形状をしている。中央域12は、扁平な柱状部分となっている。具体的には底面が正八角形である柱状体、つまり正八角柱の形状をしている。底部域13は扁平な正八角柱の底面を、いわゆるダイヤモンドカットした多面体形状になっている。カット面は何れも三角形であり、底部域13の中心から外側に向かって放射状に配置されている。 錠剤10は、後に詳述するように、錠剤10の形状に対応する型形状を有する圧縮部材を用いて、粉末原料を圧縮成形して得られたものである。本実施形態では、逆錐形状を有する上杵を用いて成形される。圧縮成形時における圧縮方向は、図1(b)に示すZ方向である。 本発明者の検討によれば、スティッキングの発生は圧縮成形物の密度に依存することが判明した。つまり圧縮成形時に、粉末原料組成に応じてスティッキングが発生しやすい密度範囲が存在すると考えられ、その密度より高くても低くてもスティッキングは発生しにくくなる。しかしながら、高密度の成形体を得るためには高圧条件が求められるため、装置上の制約があり、密度が低い場合には、スティッキングを防止できたとしても、低密度すぎて圧縮成形体とならないことがある。 この観点から、実用上問題ない保形性を有する圧縮成形物を得るときにスティッキングが最も発生しやすい条件は、その圧縮成形物における相対的に低密度の部位が圧縮面に露出している場合ということになる。したがって、相対的に低密度の部位が圧縮成形物の表面に露出していなければ、スティッキングの発生を防止することが可能になる。しかし、圧縮成形物として一般的な形状である図6に示す形状に圧縮成形すると、得られる圧縮成形物の密度はほぼ均一になってしまうので、相対的に低密度の部位が表面に露出し易い。 この観点から、本発明者が圧縮成形の条件を種々検討したところ、錐体部分を有するように圧縮成形物に成形し、その成形時に該錐体部分の高さ方向に沿って粉末原料を圧縮することで、相対的に密度が低い部位が表面に露出することを極力防止し得ることを見出した。このような形状の錠剤に成形することで、錠剤内部において密度分布が生じ、相対的に密度が低い部分が圧縮成形物の表面に露出したとしても、その部分を上下圧縮面の中心部分(錐形部分においてはその頂点部分)のみの小さな一点にとどめることが可能になると推定される。つまり、スティッキングの起こる領域を限りなく小さな一点に収束させることができるので、その結果、スティッキングの発生を実質的に防止できる。」 (1-5)(【0026】段落) 「次に、本実施形態の錠剤10の好ましい製造方法を、図4を参照しながら説明する。錠剤10は、打錠装置20を用いて製造される。打錠装置20は、単発打錠機、ロータリー式打錠機、積層打錠機、ロータリー式有核打錠機等であり得る。打錠装置20は、棒状の上杵21及び下杵22並びに筒状の臼23を備えた一組の成形型を有している。上杵21は、錠剤10の上部域11と相補形状をなす逆錐形状の成形面21aを有している。下杵22は、錠剤10の底部域13と相補形状をなす成形面22aを有している。臼23の臼孔は、錠剤10の中央域12と相補形状をなしている。成形型を構成する上杵21、下杵22及び臼23は、金属、セラミックス等の従来からこの種の打錠装置に用いられる通常の素材から構成されている。」 (1-6)(図4) 「 」 2.甲2 (2-1)(【請求項1】) 「【請求項1】(a)炭酸塩20~60質量%、及び(b)有機酸20~60質量%を含有する粉状、顆粒状、フレーク状又はブリケット状の発泡性浴用剤。(但し、結合剤を含有しない。)」 (2-2)(【0027】段落) 「ブリケッティングマシンは、たがいに喰い込み、同速で回転する2個のロール間で粉末原料を圧縮し、成形するものであり、その成形物をブリケットと呼んでいる。ロール直径は、200mm程度の小型のものから1000mm以上のものがあり、ロール外周面には、所望するブリケットの母型(ポケット)が刻まれている。ロールの回転にともない連続的にブリケットが生産されることから、処理能力が大きい。また0.01~5t/cm2程度の成形圧力をかけることができる。」 (2-3)(【0050】段落の表1の実施例部分) 「 」 (2-4)(【0047】~【0048】段落) 「<実施例1の製造方法>実施例1に示す処方の組成物を、結合剤を使用することなく、フロイント産業社製のコンパクティングマシンを用い、圧縮成形法により圧縮成形物を得た。これを破砕整粒機を通して、粒径1~4mm、見かけ比重1.0の顆粒状~フレーク状の発泡性浴用剤を調製した。この発泡性浴用剤は、1回分約50gを約180Lの浴湯に投入する。 <実施例2~3の製造方法>実施例2及び3に示す処方の組成物を、結合剤を使用することなく、大塚鉄工社製のブリケッティングマシンを用い、圧縮成形法により、アーモンド形の発泡性浴用剤(見かけ比重1.6、直径約15~25mm、厚さ約10mm、重量約4g)を調製した。この発泡性浴用剤は、1回分約50gを約180Lの浴湯に投入する。」 (2-5)(【0009】段落) 「【課題を解決するための手段】本発明者等は、乾式圧縮造粒機を使用して発泡性浴用剤を製造することについて鋭意検討した結果、主原料として多用されている炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩や、無水クエン酸等の有機酸及び無水硫酸ナトリウム等の硫酸塩等の原料を特定の比率で配合したときに、温度や湿度に対する保存安定性が良好な発泡性浴用剤を製造できることを見出し、本発明を完成したものである。」 3.甲3 (3-1)([0010]段落) 「本発明の製造方法により得られる発泡性入浴剤組成物は、有機酸、有機酸100質量部に対し0.1質量部以上の非イオン界面活性剤、及び水溶性バインダーを含有する混合物を造粒、圧縮成形、又は造粒後に圧縮成形して得られる造粒物又は圧縮成形物と、炭酸塩を含む入浴剤組成物である。当該入浴剤組成物は、造粒又は圧縮成形により得られる固形物を含有しており、固形物の形態としては、錠剤、ブリケット、粉末等のものが挙げられる。」 (3-2)([0104]~[0106]段落) 「製造例7 30Lナウターミキサー(ホソカワミクロン製:NX-S/自転回転数100r.p.m./フルード数0.84/ジャケット温水温度60℃)に、フマル酸-2:7500g、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット(EO40モル付加物):700gを加え混合した。 次いでポリエチレングリコール:1600gを添加し、15分間混合した。更に、ぶどう糖:200gを添加し、5分間混合した後、混合物を抜出した。 得られた混合物を、ツインドームグラン(ダルトン製:TDG-110型、φ0.7mmスクリーン、回転数36rpm)を用いて押出し造粒を行った。 押出し造粒物はバットに受け、25℃で冷却した後、パワーミル(ダルトン製:P-02S、φ2.5mmスクリーン)で整粒を行い、造粒物を得た。 得られた造粒物をブリケッター(新東工業製:BSS501-010、φ5mm)を用いて圧縮成形を行った。得られたブリケットは、目開き4mmと5.6mmの篩を用いて選別し、目開き5.6mmの篩を通過し、目開き4mmの篩上に残ったブリケットを製造例7のブリケットとして得た。」 (3-3)([0136]~[0138]段落) 「実施例7 2.5Lナウターミキサー(ホソカワミクロン製:LABOMIXER LV-1/回転数設定 目盛り:MAX/ジャケットなし)に、製造例7のブリケット:120g、炭酸ナトリウム:80gを入れ5分間混合し、顆粒状(ブリケット/粉末混合)の発泡性入浴剤組成物を得た。 実施例7の発泡性入浴剤組成物の微細発泡評価は、5であった。 実施例8 2.5Lナウターミキサー(ホソカワミクロン製:LABOMIXER LV-1/回転数設定 目盛り:MAX/ジャケットなし)に、製造例6の造粒物:300gと炭酸ナトリウム:200gを入れ5分間混合し、混合物を得た。 得られた混合物を、ブリケッター(新東工業製:BSS501-010、φ5mm)を用いて圧縮成形を行った。 得られたブリケットは、目開き4mmと5.6mmの篩を用いて選別し、目開き5.6mmの篩を通過し、目開き4mmの篩上に残ったものをブリケット状の発泡性入浴剤組成物として得た。 実施例8の発泡性入浴剤組成物の微細発泡評価は、5であった。」 (3-4)([0102]~[0103]段落) 「製造例6 30Lナウターミキサー(ホソカワミクロン製:NX-S/自転回転数100r.p.m./フルード数0.84/ジャケット温水温度60℃)に、フマル酸-2:7500g、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット(EO40モル付加物):700gを加え混合した。 次いでポリエチレングリコール:1600gを添加し、15分間混合した。更に、ぶどう糖:200gを添加し、5分間混合した後、混合物を抜出した。 得られた混合物を、ツインドームグラン(ダルトン製:TDG-110型、φ0.7mmスクリーン、回転数36rpm)を用いて押出し造粒を行った。 押出し造粒物はバットに受け、25℃で冷却した、パワーミル(ダルトン製:P-02S、φ2.5mmスクリーン)で整粒を行い、製造例6の造粒物を得た。」 (3-5)([0152]~[0153]段落) 「実施例21 2.5Lナウターミキサー(ホソカワミクロン製:LABOMIXER LV-1/回転数設定 目盛り:MAX/ジャケットなし)に、製造例16の造粒物:300gと炭酸ナトリウム:200gを入れ5分間混合し、混合物を得た。 得られた混合物を、ブリケッター(新東工業製:BSS501-010、φ5mm)を用いて圧縮成形を行った。 得られたブリケットは、目開き4mmと5.6mmの篩を用いて選別し、目開き5.6mmの篩を通過し、目開き4mmの篩上に残ったものをブリケット状の発泡性入浴剤組成物として得た。 実施例21の発泡性入浴剤組成物の微細発泡評価は、5であった。」 (3-6)([0123]~[0124]段落) 「製造例16 30Lナウターミキサー(ホソカワミクロン製:NX-S/自転回転数100r.p.m./フルード数0.84/ジャケット温水温度60℃)に、フマル酸-2:7500g、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット(EO40モル付加物):700gを加え10分間混合した。 次いでパルミチン酸イソプロピル:200gを添加した後、20分間混合した。 更にポリエチレングリコール:1500gを添加し、15分間混合した。更にぶどう糖:100gを添加し、5分間混合した後、混合物を抜出した。 得られた混合物を、ツインドームグラン(ダルトン製:TDG-110型、φ0.7mmスクリーン、回転数36rpm)を用いて押出し造粒を行った。 押出し造粒物はバットに受け、25℃で冷却した後、パワーミル(ダルトン製:P-02S、φ2.5mmスクリーン)で整粒を行い、製造例16の造粒物を得た。」 (3-7)([0156]~[0157]段落) 「実施例24 2.5Lナウターミキサー(ホソカワミクロン製:LABOMIXER LV-1/回転数設定 目盛り:MAX/ジャケットなし)に、製造例17の造粒物:300gと炭酸ナトリウム:200gを入れ5分間混合し、混合物を得た。 得られた混合物を、ブリケッター(新東工業製:BSS501-010、φ5mm)を用いて圧縮成形を行った。 得られたブリケットは、目開き4mmと5.6mmの篩を用いて選別し、目開き5.6mmの篩を通過し、目開き4mmの篩上に残ったものをブリケット状の発泡性入浴剤組成物として得た。 実施例24の発泡性入浴剤組成物の微細発泡評価は、6であった。」 (3-8)([0125]~[0126]段落) 「製造例17 30Lナウターミキサー(ホソカワミクロン製:NX-S/自転回転数100r.p.m./フルード数0.84/ジャケット温水温度60℃)に、フマル酸-2:7500g、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット(EO40モル付加物):700g、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム(EO3モル付加物):50gを加え10分間混合した。 次いでパルミチン酸イソプロピル:200gを添加した後、20分間混合した。 更にポリエチレングリコール:1500gを添加し、15分間混合した。更にぶどう糖:50gを添加し、5分間混合した後、混合物を抜出した。 得られた混合物を、ツインドームグラン(ダルトン製:TDG-110型、φ0.7mmスクリーン、回転数36rpm)を用いて押出し造粒を行った。 押出し造粒物はバットに受け、25℃で冷却した後、パワーミル(ダルトン製:P-02S、φ2.5mmスクリーン)で整粒を行い、製造例17の造粒物を得た。」 4.甲4 (4-1)(【請求項1】~【請求項2】) 「【請求項1】炭酸塩、有機酸および香料を必須成分とし、直径3~10mmかつ厚さ2.5~10mmの大きさであることを特徴とした発泡性ブリケット製剤。 【請求項2】浴用剤であることを特徴とした請求項1記載のブリケット製剤。」 (4-2)(【0025】~【0026】段落) 「【実施例】実験1 下記に示す処方の発泡性浴用剤組成物を用い、各種の大きさのブリケット状浴用剤を調製し、見た目と生産性について評価を行った。(浴用剤は、1回分(浴湯200L)として、約50gを投入する。) <組成物処方> 成分名        配合量(重量%) リンゴ酸        30.0 炭酸水素ナトリウム   15.0 炭酸ナトリウム     12.5 硫酸ナトリウム     40.0 デキストリン       2.0 香料(ラベンダー)    0.5 色素           微 量     」 (4-3)(【0027】段落の実施例部分) 「        実施例1  実施例2   実施例3 直径(mm)   3.6   4.8    9.6 厚さ(mm)   3.2   3.8    7.2 見た目評価     ○     ◎      ○ 生産性評価     ○     ◎      ○    」 (4-4)(【0039】~【0041】段落) 「実施例9 浴用剤 万能混合攪拌機を用い下記粉体原料を均一に混合した後、予め均一に混合した液体原料を加え、粉体製剤を得る。更に、この粉体製剤をブリケッティングマシンで成形、粉砕、篩別し、直径4.8mm、厚さ4.2mmのレンズ状のブリケットタイプ浴用剤を得た。本ブリケットタイプの製剤は、生産性に何ら問題がなく、見た目にも優れた浴用剤であった。 得られたブリケットタイプ浴用剤約50gを、200Lの浴湯の中に投入すると、浴湯表面で勢いよく発泡しユズの香りが浴室中に広がることにより、アロマテラピー効果が得られた。 成分名        配合量(重量%) フマル酸        30.0 炭酸水素ナトリウム   20.0 炭酸ナトリウム     15.0 硫酸ナトリウム     20.0 デキストリン      13.9 香料(ユズ)      0.5 ホホバ油        0.1 リボフラビン      微 量 チンピ抽出末      0.5     」 5.甲5 (5-1) 「 」 6.甲6 (6-1)(第9頁) 「 」 (6-2)(第10頁) 「 」 (6-3)(第11頁) 「 」 (6-4)(第12頁) 「 」 (6-5)(第13頁) 「 」 (6-6)(第14頁) 「 」 (6-7)(第15頁) 「 」 (6-8)(第16頁) 「 」 (6-9)(第17頁) 「 」 (6-10)(第18頁) 「 」 7.甲7 (7-1)(IIIのp.1625) 「 「 (7-2)(IIのp.689) 「 」 第5 判断 1.申立理由1(特許法第29条第2項)について (1)甲1発明の認定 上記記載事項(1-1)、(1-2)及び(1-4)より、甲1には、 「炭酸水素ナトリウム20質量%、 炭酸ナトリウム20質量%、 フマル酸40質量%、 ポリエチレングリコール(分子量6000)、香料及びその他の成分20質量% を含有する、図1に記載の形状であって、その寸法が、平面視における最大幅Wが16.5mm、正面視における高さHが9.5mmの固形入浴剤。」(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 なお、「重量%」と「質量%」は、地球上では実質的に同義であるため、単位は、本件特許発明1において用いられている「質量%」として表現した。 (2)本件特許発明1と甲1発明との対比・相違点の認定 本件特許発明1と上記甲1発明とを対比すると、甲1発明における「炭酸水素ナトリウム」及び「炭酸ナトリウム」は「炭酸塩」に該当し、「フマル酸」は「有機酸」に該当し、「ポリエチレングリコール(分子量6000)」は「水溶性高分子」に該当する。 また、甲1の図1に基づいて、外接する楕円体を製剤1錠あたりが有する立体形状と仮定し、平面視における最大幅W16.5mm、正面視における高さH9.5mmをもとに、本件特許発明1における2aと2cを16.5mm、2bを9.5mmとして楕円体の表面積Sを算出すると627mm2(1mm2未満を四捨五入)となることが認められ(楕円体の表面積の計算はカシオ(株)提供の体積・表面積・高精度計算サイト<http://keisan.casio.jp/exec/system/1169425933>を利用して行った)、当該値は、本件特許発明1で規定する表面積Sの範囲内のものである。 なお、本件特許発明1には、「(但し、水溶性高分子として、ポリエチレングリコールを0.3~0.5質量%、及びポリビニルピロリドンを0.3~0.4質量%含有するブリケット製剤を除く。)」旨の規定があるが、甲1発明は、当該除かれる対象に係るものではない。 したがって、本件特許発明1と甲1発明は、以下の点で相違する。 (相違点1)前者は、固形入浴剤の中でもブリケット製剤に特定されているが、後者は、固形入浴剤である点。 (相違点2)前者は、香料又はエキス、界面活性剤及び油剤から選ばれる1種又は2種以上である、25℃で液状の成分を2質量%を超え10質量%以下で含有するが、後者は、ポリエチレングリコール(分子量6000)、香料及びその他の成分を20質量%含有するものであって、香料及びその他の成分の含有量は20質量%未満であると認められる点。 (3)判断 当該相違点について、申立人は、 ・相違点1について、ブリケット製剤は固形入浴剤の成型方法として本件出願前から周知の技術であるから(記載事項(2-1)~(2-4)、記載事項(3-1)~(3-8)、記載事項(4-1)~(4-4))、当業者は固形入浴剤としてブリケット製剤を適宜選択可能であるから、当該相違点1は本件特許発明の進歩性を肯定する根拠とならない旨主張し、また、 ・相違点2についても、香料は25℃で液状であることが通常であるから、20質量%未満含まれる香料その他の1種又は2種以上の成分について、「25℃で液状の成分」を選択し「2質量%を超え10質量%以下」の配合量とすることは当業者が適宜設計可能な事項にすぎず、実際甲4の【0026】段落にも、実施例としてリンゴ酸(有機酸)、炭酸水素ナトリウム(炭酸塩)、炭酸ナトリウム(炭酸塩)、デキストリン(水溶性高分子)、香料(0.5質量%)を含むブリケット状浴用剤が開示されている(記載事項(4-2))から、相違点2も本件特許発明1の進歩性を肯定する根拠とはならない旨、主張する。 しかしながら、甲1~甲4のいずれにも、炭酸塩、有機酸、及び水溶性高分子を含有する、平均表面積Sが317mm2以上900mm2以下のブリケット製剤において、香料又はエキス、界面活性剤及び油剤から選ばれる1種又は2種以上である、25℃で液状の成分を、2質量%を超え10質量%以下の量で配合することについては、記載も示唆もされていないから、甲2~4に記載の事項を参酌しても、当業者が、甲1発明から本件特許発明1を想到することはできないと解される。 甲1発明の「ポリエチレングリコール(分子量6000)、香料及びその他の成分 20%」の記載からでは、「香料」や「その他の成分」の具体的な種類や物理化学的性状が不明であるため、「香料」や「その他の成分」に「25℃で液状の成分」がそもそも含まれているか否かが不明であるし、仮に含まれていたとしても、その量は「20質量%未満」ということしかわからないのであるから、甲1発明における当該記載に基づいて、「25℃で液状の成分を2質量%を超え10質量%配合」させることを当業者が想到することは困難である。 申立人は、甲4【0026】段落の実施例において、リンゴ酸(有機酸)、炭酸水素ナトリウム(炭酸塩)、炭酸ナトリウム(炭酸塩)、デキストリン(水溶性高分子)、香料(0.5質量%)を含むブリケット状浴用剤があることからも、「25℃で液状の成分」を「2質量%を超え10質量%以下」配合することが当業者に適宜設計可能な事項である旨主張するが、当該実施例で配合されている香料の量は「0.5質量%」であって、本件特許発明1の、「2質量%を超え10質量%以下の量」よりも少ない量に過ぎないから、当該甲4の記載に接しても、当業者が、「25℃で液状の成分」を「2質量%を超え10質量%」配合させることを想到することはできなかったと解される。 なお甲4は、本件特許発明の先行技術文献として挙げられている文献であり(本件特許明細書の【0005】段落)、本件特許明細書では、甲4に記載されている「ような大きさのブリケット製剤では、炭酸ガスの泡を良好に発生させつつ液状成分の含有量を増大させるのは、困難な状況であった」(【0006】段落)という問題を解決するために、ブリケット製剤の平均表面積Sの範囲を特定し、液状成分の配合量を十分に高めることができたものが本件特許発明1であることが説明されており(【0008】段落)、実際、甲4に記載の、他のブリケット状入浴剤でも(記載事項(4-4))、香料、エキス、油分の量は、香料(ユズ)0.5質量%、チンピ抽出末0.5質量%、ホホバ油0.1質量%と、合計1.1質量%が含まれている程度であり、香料、エキス、油分の含有量の少ない甲4の実施例の記載から、「25℃で液状の成分」を「2質量%を超え10質量%配合」という高い含量にすることはできなかったことが認められる。 また甲1では、その「背景技術」の欄に以下の記載があり、 「従来、粉末原料の圧縮成形(粉末圧縮成形)によって製造される錠剤(粉末圧縮錠剤)においては、圧縮方向から見た平面形状は円、四角、ひし形などが一般的である。この平面形状は、圧縮部材である杵(上杵/下杵)及び臼の形状に応じて設定される。また、この平面形状は、圧縮方向の中心に対して対称形状であることが一般的である。・・・ このように粉末原料の圧縮成形によって製造される錠剤は、一般に単純な対称形状である場合が多い・・・。 ところで従来、粉末圧縮成形によって錠剤を製造すると、その製造工程において圧縮成形を繰り返すうちに、・・・圧縮部材である杵・・・の表面に粉末原料(生地)が付着して異物となり、その後の成形において錠剤・・・の表面に欠けが生じる現象が起こることが知られている。この現象は一般にスティッキングと呼ばれている。スティッキングは、製造の歩留まりを低下させ、また強度低下など製品の品質を低下させる一因となる。」という、粉末圧縮錠剤の従来技術の問題に係る記載があり(記載事項(1-3))、 また、甲1の「発明を実施するための最良の形態」の欄には、 「この観点から、本発明者が圧縮成形の条件を種々検討したところ、錐体部分を有するように圧縮成形物に成形し、その成形時に該錐体部分の高さ方向に沿って粉末原料を圧縮することで、相対的に密度が低い部位が表面に露出することを極力防止し得ることを見出した。このような形状の錠剤に成形することで、錠剤内部において密度分布が生じ、相対的に密度が低い部分が圧縮成形物の表面に露出したとしても、その部分を上下圧縮面の中心部分(錐形部分においてはその頂点部分)のみの小さな一点にとどめることが可能になると推定される。つまり、スティッキングの起こる領域を限りなく小さな一点に収束させることができるので、その結果、スティッキングの発生を実質的に防止できる。」という、上記の従来技術の問題に対する、甲1発明の解決手段が記載されており(記載事項(1-4))、 さらに甲1では、その好ましい製造方法として、 「本実施形態の錠剤10の好ましい製造方法を、図4を参照しながら説明する。錠剤10は、打錠装置20を用いて製造される。打錠装置20は、単発打錠機、ロータリー式打錠機、積層打錠機、ロータリー式有核打錠機等であり得る。打錠装置20は、棒状の上杵21及び下杵22並びに筒状の臼23を備えた一組の成形型を有している。上杵21は、錠剤10の上部域11と相補形状をなす逆錐形状の成形面21aを有している。下杵22は、錠剤10の底部域13と相補形状をなす成形面22aを有している。臼23の臼孔は、錠剤10の中央域12と相補形状をなしている。成形型を構成する上杵21、下杵22及び臼23は、金属、セラミックス等の従来からこの種の打錠装置に用いられる通常の素材から構成されている。」(記載事項(1-5)、図4は記載事項(1-6))との説明がなされているところ、 結局、甲1発明の固形入浴剤は、単発打錠機、ロータリー式打錠機、積層打錠機、ロータリー式有核打錠機等の、図4に示されるような杵や臼の形状を備えた打錠機を用いた打錠方式におけるスティッキング等の問題を回避するために、その打錠方式に適した密度分布となる「錐形」を錠剤形状に採用したものであることが認められる。 他方、ブリケット製剤は、表面に型(ポケット)が彫られたロールが互いに食い込み同速で回転するブリケッティングマシンにより製造されるものであり(本件特許明細書の【0045】段落、記載事項(2-2))、甲1発明の固形入浴剤とは、異なる装置を用いて異なる方式で製剤化されるものであるから、当該、杵、臼の形状を備えた打錠機を用いた打錠方式において「錐形」という形状の最適化を図った甲1発明を、そのような異なる装置を用いて異なる方式で製造されるブリケット製剤とすることは、当業者が通常には行わないことと解される。 したがって、固形入浴剤としてブリケット製剤のものがあること自体は申立人の主張するとおりであるが、上述の杵や臼の形状を備えた打錠機を用いた打錠方式において形状の最適化を図った甲1発明において、それを異なる製造方式であるブリケット製剤とすることは、当業者が通常行わないことといえる。 そして、本件特許明細書の【0061】~【0085】段落には、本件特許発明に係るブリケット製剤の実施例が具体的に示されており、それらはいずれも、高い保存安定性と、液状成分に由来する良好な香り立ちの持続という、甲1や、甲2~4に記載の事項から当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものであることが認められる。 したがって、本件特許発明1は、甲2~4に記載の事項を参酌しても、甲1発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 なお申立人は、甲1は本件特許出願の審査過程における引用文献でもあったところ、特許権者は平成28年11月4日付の意見書において、本件発明1が「通常3t~5t/cm2・・・もの高圧で圧縮成型されるブリケット製剤」であり、「香料等の25℃で液状の成分を2質量%を超え10質量%以下もの量としつつ、高圧で圧縮成型されるブリケット製剤中に封じ込める際に、通常の圧縮製剤よりも高い保存安定性を確保するのは、一層困難となる」という課題に着目した発明であるとし、甲1発明にはかかる課題がないと主張したが、本件特許明細書【0006】~【0007】段落に本件特許発明1の課題として記載されているのは、炭酸塩、有機酸及び香料等の液状成分を配合することによる保存中の炭酸塩と有機酸の反応進行のおそれがあり、製剤の表面積の増大にともなって外気との接触面積も増大し炭酸塩と有機酸の反応を抑止できなくなるおそれがあることにとどまり、高圧での圧縮成型下における液状成分を含むことによる保存安定性確保の困難という特許権者が主張する課題は記載されていない。また、特許権者が主張するような課題が当業者の技術常識というわけでもないから(記載事項(2-5)によると、保存安定性において重要な要素は炭酸塩と有機酸の配合比率である)、発明の詳細な説明に開示も示唆もされていない課題を発明の課題として引用文献との差異と認定し発明の進歩性を肯定することは、先願主義の原則に反するものであって許されるべきものではない旨、主張する。 しかしながら前述のとおり、本件特許発明1は、その課題の設定如何によらず、甲2~4に記載の事項を参酌しても、甲1発明から当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立人の主張は採用できない。 また、本件特許発明は、申立人が指摘する本件特許明細書の【0006】~【0007】段落や【0008】段落から認められるとおり、従来の大きさのブリケット製剤では、炭酸ガスの泡を良好に発生させつつ液状成分の含有量を増大させるのは、困難な状況にあるとの問題があったところ、当該ブリケット製剤において、炭酸ガスの泡を良好に発生させるとともに、保存安定性が高く、香料等の液状成分による作用を十分に発揮することができるように、平均表面積Sを特定範囲とし、25℃で液状の香料等の成分を高含量含む発泡性圧縮製剤を提供したものであるから、ブリケット製剤においてよく採用される高圧条件下においても、同様に、保存安定性が高く、香料等の液状成分による作用を十分に発揮することができることを意見書において説明することが、先願主義の原則に反するなどということはない。 したがって、当該申立人の主張は採用することができず、本件特許発明1は、甲2~4に記載の事項を参酌しても、甲1発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 本件特許発明1をさらに限定した発明である本件特許発明2~5についても同様であるから、本件特許発明2~5は、甲2~甲4に記載の事項を参酌しても、甲1発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)小括 よって、本件特許発明1~5が特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるとする、申立理由1は、理由がない。 5.申立理由2(特許法第36条第6項第1号)について (1)「ブリケット製剤」について 申立人は、本件特許の審査過程で本件特許権者は、審査官からの平成28年8月30日付けのサポート要件違反の拒絶理由の通知に対して、平成28年11月4日付け意見書において、本件特許発明1~5の課題はブリケット製剤が高圧で圧縮成形されることに伴う保存安定性の点にあるとし、「ブリケット製剤」との限定を加えることによりサポート要件を満たす旨、主張したが、「ブリケット製剤」といってもその成型圧は極めて広範であって(甲2記載事項(2-2))、「ブリケット製剤」であることから直ちに上記課題が生じるとはいえず、本件特許発明が解決しようとする課題は明細書の【0006】~【0007】段落に記載のとおりのものと解すべきであるから、上記特許権者の主張する課題に基づいてサポート要件違反を解消したとすることは適切ではなく、本件特許発明1~5には、サポート要件違反がある旨、主張する。 この点、本件特許発明が解決しようとする課題は、申立人が主張するとおりの、本件特許明細書の【0006】~【0007】段落に記載のものと認めることができる。 すなわち、【0006】段落に記載の、「浴用剤に炭酸塩と有機酸を配合して炭酸ガスを発生させる場合、香料や界面活性剤、油剤等の液状成分を配合すると、その量が増すにつれて保存中に炭酸塩と有機酸との反応が進行してしまうおそれが高まる傾向にある。また、製剤の表面積が大きすぎると、外気との接触面積が増して、上述の炭酸塩と有機酸との反応の進行を抑止できなくなるおそれがある。したがって、上記特許文献1のような大きさのブリケット製剤では、炭酸ガスの泡を良好に発生させつつ液状成分の含有量を増大させるのは、困難な状況にある。」との問題が従来のブリケット製剤にはあったところ、【0007】段落に記載の「炭酸ガスの泡を良好に発生させるとともに、保存安定性が高く、香料等の液状成分による作用を十分に発揮することができる発泡性圧縮製剤を提供すること」を課題とするものである。 (なお、【0006】段落で「特許文献1」とされている文献は、【0005】段落に記載の特開2003-342164号公報であり、申立人が甲4として提出しているものである。) そして、本件特許明細書には、その解決手段として、従来のブリケット製剤とは異なり、炭酸塩及び有機酸のほか、特定量の液状の成分を含有し、かつ特定の平均表面積を有するものであれば、保存中における炭酸塩と有機酸との反応の進行を有効に抑止して保存安定性を高め、液状の成分の含有量を十分に高めることができることを見出したことが記載され(【0008】段落)、具体的には、当該平均表面積の具体的な算出方法と許容される表面積Sの範囲を317mm2以上900mm2以下と定めると共に(【0009】~【0012】段落、【0014】段落、【図1】)、ブリケット製剤の製造方法や、ブリケット製剤における表面積Sの算出に必要な数値の測定方法が説明され(【0045】段落)、当該所定数値範囲の表面積Sとすることにより、25℃で液状の成分を2質量%を超え10質量%以下という高含量で含有しても良好に炭酸ガスを発生させながら高い保存安定性を保持できることを見出し(【0023】段落)、また、実施例において、上記所定範囲の表面積Sを有し、上記所定量の25℃で液状の成分を含有するブリケット製剤を具体的に製造して、それらすべてが、高い保存安定性と、液状成分に由来する良好な香り立ちの持続が確認できたことが記載されている(【0061】~【0085】段落)。 すなわち、本件特許明細書には、上記の課題を解決するための手段が十分に記載されていることが認められるから、本件特許発明1~5は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、本件特許発明1~5が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものである旨の、申立人の主張は採用できない (2)「25℃で液状の成分」について 「25℃で液状の成分」について、 (ア)本件特許発明1では、 「炭酸塩、有機酸、2質量%を超え10質量%以下の25℃で液状の成分、及び水溶性高分子を含有するブリケット製剤であって、25℃で液状の成分が、香料又はエキス、界面活性剤及び油剤から選ばれる1種又は2種以上であ」ることが記載されており、 また、 (イ)本件特許明細書の発明の詳細な説明には、 「そこで本発明者は、種々検討したところ、炭酸塩及び有機酸のほか、特定量の液状の成分を含有し、かつ特定の平均表面積を有するものであれば、保存中における炭酸塩と有機酸との反応の進行を有効に抑止して保存安定性を高め、液状の成分の含有量を十分に高めることができる発泡性圧縮製剤が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。」(【0008】段落)や、 「【0023】 本発明の発泡性圧縮製剤は、2質量%を超え10質量%以下の25℃で液状の成分を含有する。本発明の発泡性圧縮製剤は、後述するように特定の平均表面積を有していることから、25℃で液状の成分をこのような量で含有していても、良好に炭酸ガスを発生させながら高い保存安定性を保持することができ、液状の成分による作用を十分に発揮させることが可能である。なお、25℃で液状の成分とは、炭酸塩と有機酸との反応に影響を及ぼす成分を意味し、かかる25℃で液状の成分としては、例えば、香料又はエキス、界面活性剤、油剤が挙げられる。 【0024】 25℃で液状の香料又はエキスとは、香料又はエキス自体が25℃で液状ものであってもよく、溶剤を用いて25℃で液状のものとなるようにしたものであってもよい。・・・かかる香料又はエキスとしては、合成香料として・・・等に記載の香料が使用でき、天然香料として・・・等の動植物抽出物の抽出エキスが使用できる。香料としては、具体的には、・・・として含有させても良く、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。エキスとしては、具体的には、エキス、等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。溶剤としては、具体的には、・・・等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。 【0025】 25℃で液状の界面活性剤は、・・・作用を発揮することができる。かかる界面活性剤としては、具体的には、・・・が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。 【0026】 25℃で液状の油剤は、・・・効果をもたらすことができる。かかる油剤としては、具体的には、・・・等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。 【0027】 25℃で液状の成分として、これら香料又はエキス、界面活性剤及び油剤から選ばれる1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。・・・」(【0023】~【0027】段落)との説明があった上で、 (ウ)調製例として、 「[調製例4] シトラス系香料82部、イソステアリン酸イソステアリル6部、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット6部、パルミチン酸イソプロピル3部及びポリオキシエチレン(6)ステアリルエーテル3部を混合し、液状成分A(25℃で液状)を得た。 [調製例5] シトラス系香料25部、イソステアリン酸イソステアリル25部、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット25部、パルミチン酸イソプロピル12.5部及びポリオキシエチレン(6)ステアリルエーテル12.5部を混合し、液状成分A-2(25℃で液状)を得た。 [調製例6] オタネニンジンの抽出エキス42部、L-メントール28部、DL-カンファー12部、イソステアリン酸イソステアリル6部、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット6部、パルミチン酸イソプロピル3部及びポリオキシエチレン(6)ステアリルエーテル3部を混合し、液状成分B(25℃で液状)を得た。 [調製例7] フローラル系香料82部、イソステアリン酸イソステアリル6部、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット6部、パルミチン酸イソプロピル3部及びポリオキシエチレン(6)ステアリルエーテル3部を混合し、液状成分C(25℃で液状)を得た。」(【0065】~【0068】段落)が具体的に挙げられている(下線部は、合議体が付与)。 これらの記載に基づくと、本件特許発明1のブリケット製剤には、「香料又はエキス、界面活性剤及び油剤から選ばれる1種又は2種以上」を混合し、その混合したものが「25℃で液状」の上記「液状成分A」、「液状成分A-2」、「液状成分B」、「液状成分C」のような混合物を、2質量%を超え10質量%以下の量で含有する態様も含まれると、解される。 申立人は、本件特許明細書の【0025】段落に挙げられた界面活性剤には、「25℃で液状」ではないものが含まれており(甲5記載事項(5-1)、甲6記載事項(6-1)~(6-10))、また、[調製例4]~[調製例7](本件特許明細書【0065】~【0068】段落)に含まれている「ポリオキシエチレン(6)ステアリルエーテル」、「L-メントール」、「DL-カンファー」は「25℃で液状」ではなく固形状であるから(甲6記載事項(6-5)~(6-6)の上から6番目の製品名「エマルゲン306P」でHLBが9.4の製品の性状部分、甲7記載事項(7-1)~(7-2))、本件特許発明1~5における「25℃で液状の成分が、香料又はエキス、界面活性剤及び油剤から選ばれる1種又は2種以上であり」なる記載と、本件特許明細書の発明の詳細な説明における開示には齟齬があり、サポート要件違反である旨、主張する。 確かに「成分」といったときには個々の成分自体を意味することもあり、また、【0025】段落には、「25℃で液状の界面活性剤は、・・・作用を発揮することができる。かかる界面活性剤としては、具体的には、・・・が挙げられる。」との記載がある。 他方で、 ・界面活性剤ではないが、「香料又はエキス」について、「25℃で液状の香料又はエキスとは、・・・溶剤を用いて25℃で液状のものとなるようにしたものであってもよい。」なる記載があって(【0024】段落)、成分自体が25℃で液状ではなくても、溶剤に溶かすことによって25℃で液状としたものも「25℃で液状」に含めることが明記されており、また、 ・本件特許明細書において、ブリケット製剤に配合する「液状成分」として実際に調製したことが記載されている調製例は、そのすべてが、香料又はエキス、界面活性剤及び油剤の混合物であって、それらの混合物各々に対して「25℃で液状」と、ことさらにその性状が説明されていること(【0065】~【0068】段落)、そして、 ・本件特許発明のブリケット製剤について、「25℃で液状の成分」とは、「炭酸塩」、「有機酸」、「水溶性高分子」と並ぶ成分として、「25℃で液状」という物理化学的性状で特定される総括的な概念のものとして配合されることが記載されており(特許請求の範囲、【0008】段落等)、その総括的な概念の液状成分を特定量含有させることにより、所望の効果を奏する旨が繰り返し記載されていることを考慮すると(【0008】段落、【0023】段落、実施例等)、 本件特許発明1に記載の「25℃で液状の成分」の中には、「香料又はエキス、界面活性剤及び油剤から選ばれる1種又は2種以上」の混合物が25℃で液状であるものも含まれると解される。 そして、本件特許明細書には、そのような「25℃で液状の成分」を配合したブリケット製剤の実施例が具体的に記載され、それらが所望の効果を奏する旨が記載されているものであるから(【0061】~【0085】段落等)、本件特許発明1は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものである。 「25℃で液状の成分」を含有することが同様に記載されている本件特許発明2~5についても同様である。 したがって、本件特許発明1~5は、発明の詳細な説明に記載されたものであると認められるから、本件特許発明1~5が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものである旨の、申立人の主張は採用できない。 (3)小括 よって、本件特許発明1~5が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであるとする申立理由2には理由がない。 第6 むすび 以上、申立人が主張する申立理由によっては、請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2018-700259

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