特許異議申立
2018-700251
排紙装置及び画像形成システム
- 審判番号
- 2018-700251
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-157948外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年03月26日
- 審決日
- 2018年11月08日
- 公報発行日
- 2019年02月22日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1652.113-YAA(B65H) / P1652.121-YAA(B65H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第134条の2第3項、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6201491号発明「排紙装置及び画像形成システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6201491号の明細書,特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。
特許第6201491号の請求項1乃至6,及び10に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件特許第6201491号についての出願は,平成25年7月30日に特許出願(国内優先権主張平成24年8月17日(以下,「本件優先日」という。))したものであって,平成29年9月8日付けでその特許権の設定登録がなされ,その後,その請求項1乃至6,及び10に係る特許に対し,平成30年3月26日に特許異議申立人富川恵美により特許異議の申立てがなされたものである。そして,その後の手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 5月15日:取消理由通知書(同年5月18日発送)
平成30年 7月17日:訂正請求書,意見書(特許権者提出)
平成30年 8月27日:訂正請求があった旨の通知書(同年8月29日発送)
なお,異議申立がされている請求項10は,請求項1ないし9のいずれか1項を引用しており,請求項10には,異議申立がされない請求項7ないし9のいずれか1項を引用するものも含まれる。
しかしながら,異議申立人が提出した特許異議申立書において,請求項7ないし9のいずれか1項を引用する請求項10に対しての申立ての理由はなんら記載されておらず,この異議の決定では,請求項10に対する申立ての理由は,請求項1ないし6のいずれか1項を引用する請求項10に対するものとして検討することとする。
第2 訂正の目的の適否,新規事項の有無,及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
1 請求の趣旨及び訂正の内容
平成30年7月17日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は,本件特許6201491号(以下「本件特許」という。)の願書に添付した特許請求の範囲を,訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおりに訂正することを求めるものである。
そして,その訂正内容は,以下のとおりである。
訂正事項1
請求項1において
「前記送風手段の送風口が前記排紙口と前記積載手段の上面との間の前記側面に開口していることを特徴とする排紙装置。」とあるのを,
「前記送風手段の送風口が前記排紙口と前記積載手段の上面との間の前記側面に開口していて,」に訂正する。
訂正事項2
請求項1において
「前記送風手段は,前記排紙手段から前記用紙の先端部が排紙される際には,水平方向よりも上向きの角度の送風を行い,前記排紙手段から前記用紙のうちの前記先端部よりも後端部側の部位が排紙される際には,前記上向きの角度よりも下向きの角度の送風を行う,ことを特徴とする排紙装置。」と訂正する。
訂正事項3
請求項4において
「請求項3に記載の排紙装置において,
前記制御手段が,前記偏向手段からの送風が排紙中の前記用紙の先端に届くように前記送風方向を制御することを特徴とする排紙装置。」とあるのを,
独立形式請求項に改め,
「搬送されてきた用紙を排紙する排紙手段と,
前記排紙手段によって排紙される前記用紙を積載する積載手段と,
前記排紙手段と前記積載手段の間から前記用紙の用紙面に対して送風する送風手段と,を備えた排紙装置において,
前記排紙手段の排紙口が用紙排紙方向最上流側の前記積載手段から立ち上がった本体側の側面に形成され,
前記送風手段の送風口が前記排紙口と前記積載手段の上面との間の前記側面に開口していて,
前記送風手段の送風方向を前記用紙面に対して上下方向に偏向させる偏向手段と,
前記偏向手段の上下方向の送風方向を制御する制御手段と,を備え,
前記制御手段が,前記偏向手段からの送風が排紙中の前記用紙の先端に届くように前記送風方向を制御することを特徴とする排紙装置。」に訂正する。
訂正事項4
請求項7において
「請求項1に記載の排紙装置において,
前記積載手段が,前記送風口からの送風を当該積載手段の内部に導き,当該積載手段の前記上面の予め設定された位置に設けられた排気口から排気するエアー流路を備えていることを特徴とする排紙装置。」とあるのを,
独立形式請求項に改め,
「搬送されてきた用紙を排紙する排紙手段と,
前記排紙手段によって排紙される前記用紙を積載する積載手段と,
前記排紙手段と前記積載手段の間から前記用紙の用紙面に対して送風する送風手段と,を備えた排紙装置において,
前記排紙手段の排紙口が用紙排紙方向最上流側の前記積載手段から立ち上がった本体側の側面に形成され,
前記送風手段の送風口が前記排紙口と前記積載手段の上面との間の前記側面に開口していて,
前記積載手段が,前記送風口からの送風を当該積載手段の内部に導き,当該積載手段の前記上面の予め設定された位置に設けられた排気口から排気するエアー流路を備えていることを特徴とする排紙装置。」に訂正する。
訂正事項5
願書に添付した明細書の段落【0006】において,
「前記課題を解決するため,本発明の一態様は,搬送されてきた用紙を排紙する排紙手段と,前記排紙手段によって排紙される前記用紙を積載する積載手段と,前記排紙手段と前記積載手段の間から前記用紙の用紙面に対して送風する送風手段と,を備えた排紙装置において,前記排紙手段の排紙口が用紙排紙方向最上流側の前記積載手段から立ち上がった本体側の側面に形成され,前記送風手段の送風口が前記排紙口と前記積載手段の上面との間の前記側面に開口していることを特徴とする。」と記載されているのを,
「前記課題を解決するため,本発明の一態様は,搬送されてきた用紙を排紙する排紙手段と,前記排紙手段によって排紙される前記用紙を積載する積載手段と,前記排紙手段と前記積載手段の間から前記用紙の用紙面に対して送風する送風手段と,を備えた排紙装置において,前記排紙手段の排紙口が用紙排紙方向最上流側の前記積載手段から立ち上がった本体側の側面に形成され,前記送風手段の送風口が前記排紙口と前記積載手段の上面との間の前記側面に開口していて,前記送風手段は,前記排紙手段から前記用紙の先端部が排紙される際には,水平方向よりも上向きの角度の送風を行い,前記排紙手段から前記用紙のうちの前記先端部よりも後端部側の部位が排紙される際には,前記上向きの角度よりも下向きの角度の送風を行う,ことを特徴とする。」に訂正する。
2 当審の判断
(1) 訂正事項1及び2について
訂正事項1及び2は,互いに関連した訂正事項であるので,併せて検討することとし,訂正の内容に鑑みて,先に訂正事項2を検討する。
訂正事項2は,送風手段に関して,排紙される用紙の部位(用紙の先端部,もしくは,用紙の後端部)と送風の向き(角度)の関係を限定したものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,訂正事項2の訂正の内容に関しては,明細書の段落【0054】に「…そこで,排出される用紙Pの移動動作に合わせて後行紙P2の先端に向けて送風装置400から送風する。その際,第2の可動ルーバ425の水平方向に対する角度制御を行い,風Wが効率よく後行紙P2の先端に届くように送風し,効果的に空気層ALを形成するようにする。この角度制御は,用紙面に対して上下方向の風向きの制御である。(下線は当審によるもの。以下も同じ。)」,段落【0055】に「本実施例1では,図15の排紙開始直後では,2枚目の用紙(後行紙)P2の先端の位置に合わせて第2の可動ルーバ425の角度を水平方向よりも上向きの角度(第1の方向L1)としている。図16に示すように排紙がある程度進んだ状態では,第2の可動ルーバ425の角度を水平に近い角度(第2の角度L2)まで下げている。図17に示すように排紙が最終段階に近くなった状態では,水平方向よりも下向き(第3の角度L3)とし,シフトトレイ202の上面に沿って風が流れるようにしている。このようにして,後行紙P2の排紙状態に応じて第2の可動ルーバ425の上下方向の角度を調整し,適切な空気層ALを形成する。」と記載されているとおりであって,特に段落【0055】の「排紙開始直後」,及び「『排紙がある程度進んだ状態』,『排紙が最終段階に近くなった状態』」が,訂正事項2における「用紙の先端部が排紙される際」,及び「先端部よりも後端部側の部位が排紙される際」に対応すること,同じく段落【0055】の「水平方向よりも上向きの角度」,及び「『水平に近い角度』,『水平方向よりも下向き』」が,訂正事項2における「水平方向よりも上向きの角度」,及び「前記上向きの角度よりも下向きの角度」に対応することは明らかである。
したがって,訂正事項2は,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
よって,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
訂正事項1は,訂正前の請求項1の末尾に付加して限定される(訂正事項2による)発明特定事項を,もともと存在した文章につなげるためのものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして,訂正事項1は,単に,もともと存在した文章を,その後に追加された文章につなげるようにしただけで,実質的な内容をなんら変更するものではないから,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
よって,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(2) 訂正事項3について
訂正事項3は,請求項2及び3を介して訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項4を,訂正前の引用形式から独立形式に書き改めて,引用関係の解消を目的とするものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして,引用形式から独立形式に書き改めたものにすぎないから,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
よって,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3) 訂正事項4について
訂正事項4は,訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項7を,訂正前の引用形式から独立形式に書き改めて,引用関係の解消を目的とするであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして,引用形式から独立形式に書き改めたものにすぎないから,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
よって,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4) 訂正事項5について
訂正事項5は,訂正事項1及び2によって請求項1が訂正されたことに伴い,発明の詳細な説明における請求項1に関連する段落の記載を,訂正事項1及び2に合わせて訂正するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして,訂正事項5は,訂正事項1及び2と実質的に同じ内容であるから,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
よって,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(5) 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件特許についての特許異議の申立て事件では,訂正前の請求項1乃至6,及び10について特許異議の申立ての対象とされているから,本件訂正における訂正前の請求項1及び4に係る訂正事項1乃至3に関して,特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
また,訂正事項4は,特許異議の申立ての対象とされていない訂正前の請求項7に係るものであるところ,特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるから,本件訂正における訂正前の請求項7に係る訂正事項4に関して,特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(6) 一群の請求項等について
訂正前の請求項1~10について,請求項2~10は,それぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって,訂正事項1及び2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって,訂正前の請求項1~10に対応する訂正後の請求項1~10は,特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項である。
(7) 小括
以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第第1号又は3号又は4号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第4項,及び,同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので,訂正後の請求項1~10について訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件特許発明
本件訂正請求により訂正された請求項1乃至10に係る発明(以下,「本件訂正特許発明」,「本件特許発明2」などという。)は,その特許請求の範囲の請求項1乃至10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
搬送されてきた用紙を排紙する排紙手段と,
前記排紙手段によって排紙される前記用紙を積載する積載手段と,
前記排紙手段と前記積載手段の間から前記用紙の用紙面に対して送風する送風手段と,
を備えた排紙装置において,
前記排紙手段の排紙口が用紙排紙方向最上流側の前記積載手段から立ち上がった本体側の側面に形成され,
前記送風手段の送風口が前記排紙口と前記積載手段の上面との間の前記側面に開口していて,
前記送風手段は,前記排紙手段から前記用紙の先端部が排紙される際には,水平方向よりも上向きの角度の送風を行い,前記排紙手段から前記用紙のうちの前記先端部よりも後端部側の部位が排紙される際には,前記上向きの角度よりも下向きの角度の送風を行う,ことを特徴とする排紙装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排紙装置において,
前記送風手段の送風方向を前記用紙面に対して上下方向に偏向させる偏向手段を備えたことを特徴とする排紙装置。
【請求項3】
請求項2に記載の排紙装置において,
前記偏向手段の上下方向の送風方向を制御する制御手段を備えたことを特徴とする排紙装置。
【請求項4】
搬送されてきた用紙を排紙する排紙手段と,
前記排紙手段によって排紙される前記用紙を積載する積載手段と,
前記排紙手段と前記積載手段の間から前記用紙の用紙面に対して送風する送風手段と,を備えた排紙装置において,
前記排紙手段の排紙口が用紙排紙方向最上流側の前記積載手段から立ち上がった本体側の側面に形成され,
前記送風手段の送風口が前記排紙口と前記積載手段の上面との間の前記側面に開口していて,
前記送風手段の送風方向を前記用紙面に対して上下方向に偏向させる偏向手段と,
前記偏向手段の上下方向の送風方向を制御する制御手段と,を備え,
前記制御手段が,前記偏向手段からの送風が排紙中の前記用紙の先端に届くように前記送風方向を制御することを特徴とする排紙装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の排紙装置において,
前記偏向手段は角度調整可能なルーバを備え,
前記制御手段が,前記ルーバの角度を偏向し,前記上下方向の送風方向を制御することを特徴とする排紙装置。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれか1項に記載の排紙装置において,
前記制御手段が紙種情報に応じて前記送風方向を制御することを特徴とする排紙装置。
【請求項7】
搬送されてきた用紙を排紙する排紙手段と,
前記排紙手段によって排紙される前記用紙を積載する積載手段と,
前記排紙手段と前記積載手段の間から前記用紙の用紙面に対して送風する送風手段と,を備えた排紙装置において,
前記排紙手段の排紙口が用紙排紙方向最上流側の前記積載手段から立ち上がった本体側の側面に形成され,
前記送風手段の送風口が前記排紙口と前記積載手段の上面との間の前記側面に開口していて,
前記積載手段が,前記送風口からの送風を当該積載手段の内部に導き,当該積載手段の前記上面の予め設定された位置に設けられた排気口から排気するエアー流路を備えていることを特徴とする排紙装置。
【請求項8】
請求項7に記載の排紙装置において,
前記排気口は前記積載手段の先端側に設けられていることを特徴とする排紙装置。
【請求項9】
請求項8に記載の排紙装置において,
前記送風口からの送風を当該積載手段の内部に導く流入口が,前記積載手段の前記上面の幅方向の両側にそれぞれ設けられ,前記排気口が前記積載手段の中央部に1箇所設けられていることを特徴とする排紙装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の排紙装置を備えたことを特徴とする画像形成システム。」
2 取消理由の概要
当審において通知した取消理由の要旨は,次のとおりである。
理由1 請求項1,及び10に係る特許は,本件優先日前に日本国内において頒布された下記の引用文献1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
理由2 請求項2,3,5,6及び10に係る特許は,本件優先日前に日本国内において頒布された下記の引用文献に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3 刊行物の記載
(1)引用文献1:特開平6-179559号公報(異議申立書における甲第1号証)
ア「【0015】
【実施例】以下,図面を参照しつつ,この発明の実施例について説明する。図3は,この発明の一実施例であるレーザプリンタにおける内部機構の全体構成概略図である。図中符号10で示すものは,装置本体である。装置本体10内には,ほぼ中央にドラム状の感光体11を設ける。」
イ「【0019】そして,画像転写後のシートSを定着器20に搬送し,その定着器20で転写画像を定着する。そして,定着器20を出たシートSは,搬送路21内を搬送し,排紙ローラ対22によって排紙トレイ23上へと記録面を下にしたフェイスダウンで排出する。他方,画像転写後の感光体11は,クリーニング器15で残留トナーを除去する。
【0020】ところで,装置本体10における排紙ロ-ラ対22の下側に送風装置30を設ける。そして,その送風装置30の送風口31を排紙ロ-ラ対22のやや斜め前方に向けて設ける。また,装置本体10内には,図2に示すような送風装置30と電気的に接続した電気制御手段32を設ける。
【0021】そして,手動入力または自動入力で前記電気制御手段32を働かせ,図1(a)に示すように,画像記録後のシ-トSが排紙ロ-ラ対22に到達すると,送風装置30を時間を限って作動させる。すると,図1(b)に示すように,送風口31から空気を斜め上方へ矢示のように吹き出す。そして,その空気によって排紙ロ-ラ対22で送り出されるシ-トSの先端を吹き上げ,その記録面aをオペレ-タが目視可能な状態とする。更に,シ-トSが送り出されると,電気制御手段32が送風装置30の作動を停止する。すると,図1(c)に示すように,シ-トSは,先端の吹き上げが止まるとともに落下して排紙トレイ23上へスタックされる。これをシ-トSが排出される毎に繰り返して行い,または始めのシ-トSだけについて行う。」
ウ 【図1】及び【図3】から,以下の事項が看て取れる。
・装置本体10の側面には,排紙ローラ対22から排出されたシートSを排紙トレイ23に排出する排紙口が設けられていること。
・排紙口が設けられた装置本体10の側面は,シートS排紙方向最上流側の排紙トレイ23から立ち上がった装置本体10の側面であること。
・送風口31は,排紙口と排紙トレイ23の上面との間の装置本体10の側面に開口していること。
上記記載事項ア乃至ウによれば,引用文献1には以下の事項(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「搬送路21内を搬送されたシートSを,排紙ローラ対22によって排紙トレイ23上へと記録面を下にしたフェイスダウンで排出し,
該排紙ロ-ラ対22の下側に送風装置30を設け,
該送風装置30の送風口31を排紙ロ-ラ対22のやや斜め前方に向けて設けるとともに,送風口31から空気を斜め上方へ吹き出し,その空気によって排紙ロ-ラ対22で送り出されるシ-トSの先端を吹き上げ,その記録面aをオペレ-タが目視可能な状態として,更に,シ-トSが送り出されると,電気制御手段32が送風装置30の作動を停止するものであって,
装置本体10の側面には,排紙ローラ対22から排出されたシートSを排紙トレイ23に排出する排紙口が設けられ,
該排紙口が設けられた装置本体10の側面は,シートS排紙方向最上流側の排紙トレイ23から立ち上がった装置本体10の側面であり,
また,送風口31は,排紙口と排紙トレイ23の上面との間の装置本体10の前記側面に開口しているレーザプリンタ。」
(2)引用文献2:特開2000-95414号公報(異議申立書における甲第2号証)
ア 「【0033】定着ローラ対35を通過した定着処理済みシート材Sは搬送ローラ対36によって排出ローラ対37へ送られ,該排出ローラ対37によって機外の排出トレイ38上へ排出される。」
イ 「【0053】次に,図1~図3を用いて,上記画像形成装置における排出部周辺の構成と動作について詳しく説明する。図1は画像形成装置における排出部周辺の概略構成を示す模式断面図である。
【0054】図1において,50は送風手段としての排出ファン部であり,51は排出ファン,52は排出ファンダクト,53は排出部カバーである。この排出ファン部50は,排出ローラ対37から排出トレイ38へ排出されるシート材Sに対して風を送るものであり,本発明ではこの排出ファン部50による風量を変更可能に構成している。また排出ファンダクト52の背面はシート材Sを案内する搬送ガイドを兼ねており,ガイド板58aと対になってシート材Sを案内する縦パス58を形成している。」
ウ 「【0058】そして,排出ファン51によって装置外から導入された空気は,図1に示す矢印のように排出ファンダクト52に案内されて,排出ローラ対37によって排出されるシート材Sと排出トレイ38の間から吹き出す。即ち,排出ローラ対37によって排出トレイ38上に排出されるシート材Sを下方から支えるように,該シート材Sの下面に対して風を送る。」
エ 「【0083】図7に示すように,排出ファン51は排出部カバー53に設けられた吸気口53cから外気を取り入れ,シート排出位置と排出トレイ38の間にある空気吹き出し口53a,53bから吐き出す。尚,排出ファン51と空気吹き出し口53a,53bは排出ファンダクト52(図1参照)で連結されている。」
オ 【図1】及び【図9】から,画像形成装置の筐体には,定着処理済みシート材Sを排出する排出ローラ対37に面して排紙口が設けられていること,また排出ローラ対37が設けられた排紙口が,用紙排紙方向最上流側の排出トレイ38から立ち上がった画像形成装置の筐体の側面に形成されていることが看て取れる。
上記記載事項ア乃至オによれば,引用文献2には以下の事項(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「定着処理済みシート材Sを搬送ローラ対36によって排出ローラ対37へ送り,該排出ローラ対37によって機外の排出トレイ38上へ排出する排出部を備えた画像形成装置であって,
排出ファン51,排出ファンダクト52,排出部カバー53からなる送風手段としての排出ファン部50を備え,
該排出ファン部50は,排出ファン51によって装置外から導入された空気は,排出ファンダクト52に案内されて,排出ローラ対37によって排出されるシート材Sと排出トレイ38の間にある空気吹き出し口53a,53bから吹き出し,排出ローラ対37によって排出トレイ38上に排出されるシート材Sを下方から支えるようにシート材Sの下面に対して風を送るものであり,
画像形成装置の筐体には,定着処理済みシート材Sを排出する排出ローラ対37に面して排紙口が設けられていること,また排出ローラ対37が設けられた排紙口が,用紙排紙方向最上流側の排出トレイ38から立ち上がった画像形成装置の筐体の側面に形成されている画像形成装置。」
引用文献3:特開2011-184176号公報(異議申立書における甲第3号証)
ア 「【0030】
図1は本発明に係るシート折り装置100と,このシート折り装置100を後処理装置(原文では「後処理送致」であるが,当審で誤記と認めて上記のとおりとした)として利用するために連結した画像形成装置200を示す。画像形成装置200は種々のものが対応するため,説明は省略するが,図中に示すように用紙を装置本体144外へ排出し,これをシート折り装置100が受け入れる構成となっている。」
イ 「【0044】
<実施例1>
図1のシート折り装置の動作の流れを説明する。
排紙ローラ145が設置されている反対側の排紙トレイ131の側面に,ファン148及び風力調整装置149が設置されており,排紙トレイ131に積載されたスタック紙147によって,図3に示すように,ファン148から発生される風力及び気流が変化しない位置及び角度にファン148を設置するのが好適である。
【0045】
またファン148の風の送り側(前方)には可変調整スリット150が設置されている。風力調整装置149では風力Fの調整が可能であり,可変調整スリット150のスリットは可変式であり,スリットの角度を調整する事によって,風向き(角度)の調整を行う事が可能である。
【0046】
そして,排紙ローラ145からZ折り用紙151が排出され始めると,同時にファン148が作動し,Z折り用紙151の先端を保持する。またファンの風力Fと風向きの角度αの調整値としては,排出される用紙の重心重量Wとした場合に,Fsinα≧Wの関係となるように,風力Fと風向きの角度αを調整すると,Z折りの用紙151先端の保持に好適である。
【0047】
用紙種類及び折り種類(排紙ローラから重心までの距離L,重心重量(W)によって風向きの角度α,風力Fを調整する事によって,Z折りの用紙151先端の保持が幅広い紙種類にも対応できるので好適である。また,風向き角度αを大きい値に調整する程,風力Fの値を小さい値に調整する事ができるので,ファン148の省電力化に好適である。
【0048】
また,Z折り用紙151以外の用紙の座屈が発生しない折り種類では,ファン148を停止させると省電力化に好適であり,また,排紙トレイ131にスタック紙147が一定以上に積載されると,Z折り用紙151の先端がスタック紙147によって保持され,風力Fの必要が無くなるのでファン148を停止させると省電力化に好適である。
【0049】
ファン148の水平方向の風力Fの調整方法としては,積載されたスタック紙147を排紙されるZ折り用紙151がその排紙線速度Vでも飛び越えないようにFcosαに調整する事によって,用紙の順狂いを防止する事ができるので好適である(図5参照)
【0050】
また,図6に示すように,排出されたZ折り用紙152を多段階にスタックできるように,排紙されるZ折り用紙151の順序毎に風力F及び風向きの角度αを調整することによって,スタック紙147の用紙の重なる位置を変えることができるので,スタック紙147のスタック量増加に繋がって好適である。」
ウ 【図1】乃至【図6】から,シート折り装置100の筐体には,Z折り用紙151を排出する排紙ローラ145に面して排紙口が設けられていること,また排紙ローラ145が設けられた排紙口が,用紙排紙方向最上流側の排紙トレイ131から立ち上がったシート折り装置100の筐体の側面に形成されていることが看て取れる。
エ 【図1】乃至【図6】から,ファン148は排出される用紙の用紙面に対して送風していることは明らかである。
オ 【図4】乃至【図6】,【0045】の「可変調整スリット150のスリットは可変式であり,スリットの角度を調整する事によって,風向き(角度)の調整を行う事が可能である」との記載から,可変調整スリット150のスリットは,上下方向に風向き(角度)の調整を行うことは自明である。
上記記載事項ア乃至オより,引用文献3には以下の事項(以下,「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「画像形成装置200が装置本体144外へ排出した用紙を後処理装置として利用するシート折り装置100であって,
シート折り装置100の筐体には,Z折り用紙151を排出する排紙ローラ145に面して排紙口が設けられ,該排紙口は,用紙排紙方向最上流側の排紙トレイ131から立ち上がったシート折り装置100の筐体の側面に設けられており,
排紙口及び排紙ローラ145が設置されている反対側の排紙トレイ131の側面に,ファン148及び風力調整装置149が設置され,
ファン148は排出されるZ折り用紙151の用紙面に対して送風するものであって,風の送り側(前方)には可変調整スリット150が設置されて,風力調整装置149では風力Fの調整が可能であり,可変調整スリット150のスリットは可変式であり,スリットの角度を調整する事によって,上下方向に風向き(角度)の調整を行う事が可能である画像形成装置200の後処理装置であるシート折り装置100において,
排紙ローラ145からZ折り用紙151が排出され始めると,同時にファン148が作動し,
用紙種類及び折り種類(排紙ローラから重心までの距離L,重心重量(W)によって風向きの角度α,風力Fを調整し,
排出されたZ折り用紙152を多段階にスタックできるように,排紙されるZ折り用紙151の順序毎に風力F及び風向きの角度αを調整するシート折り装置100。」
(4)引用文献4:特開2009-249071号公報,
引用文献5:特開2010-181632号公報
引用文献4(特に段落【0046】~【0053】,【図10】~【図12】)及び引用文献5(特に段落【0023】~【0029】,【図2】)には,画像形成装置(画像形成システム)において,排紙部に設けた角度調整可能なルーバである偏向手段の送風方向を制御する制御手段を具備し,紙種情報に応じて送風方向を制御するという周知技術が記載されている。
4 判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア 理由1について(特許法第29条第1項第3号)
取消理由の理由1は,請求項1,及び10に対して通知されたものである。
本件訂正特許発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「シートS」は,「搬送路21内を搬送され」たものであるから,本件訂正特許発明1の「搬送されてきた用紙」に相当する。
引用発明1の「排紙口」は,「排紙ローラ対22」から排出されたシートSを排紙トレイ23に排出するものであるから,引用発明1の「排紙口」及び「排紙ローラ対22」は,本件訂正特許発明1の「排紙手段」に相当する。
引用発明1の「排紙トレイ23」は,シートSを排紙ローラ対22によって排紙トレイ23上へと記録面を下にしたフェイスダウンで排出するものであるから,引用発明1の「排紙トレイ23」は,本件訂正特許発明1の「用紙を積載する積載手段」に相当する。
引用発明1の「送風装置30」は,「送風口31」から空気を斜め上方へ吹き出し,その空気によって排紙ロ-ラ対22で送り出されるシ-トSの先端を吹き上げるものであり,送風口31は排紙口と排紙トレイ23の上面との間に開口しているから,引用発明1の「送風装置30」及び「送風口31」は,本件訂正特許発明1の「送風手段」に相当する。
引用発明1の「排紙口」は,シートS排紙方向最上流側の排紙トレイ23から立ち上がった装置本体10の側面に設けられているから,本件訂正特許発明1の「(排紙手段の)排紙口」に相当する。
引用発明1の「送風口31」は,排紙ローラ対22と排紙トレイ23の上面との間の装置本体10の前記側面に開口しており,該前記側面は,「シートS排紙方向最上流側の排紙トレイ23から立ち上がった装置本体10の側面」のことであるから,本件訂正特許発明1の「送風口」に相当する。
引用発明1において,排紙口及び排紙ローラ対22で構成される「排紙手段」,排紙トレイ23で構成される「積載手段」,送風装置30及び送風口31で構成される「送風手段」により,「排紙装置」が構成されていることは明らかであるから,引用発明1は本件訂正特許発明1の「排紙装置」に相当する構成を備えたレーザプリンタであることは自明である。
以上のことより,両者は,
<一致点>
「搬送されてきた用紙を排紙する排紙手段と,
前記排紙手段によって排紙される前記用紙を積載する積載手段と,
前記排紙手段と前記積載手段の間から前記用紙の用紙面に対して送風する送風手段と,
を備えた排紙装置において,
前記排紙手段の排紙口が用紙排紙方向最上流側の前記積載手段から立ち上がった本体側の側面に形成され,
前記送風手段の送風口が前記排紙口と前記積載手段の上面との間の前記側面に開口している排紙装置。」
で一致し,以下の点で相違している。
<相違点>
相違点1
本件訂正特許発明の送風手段は「排紙手段から用紙の先端部が排紙される際には,水平方向よりも上向きの角度の送風を行い,前記排紙手段から前記用紙のうちの前記先端部よりも後端部側の部位が排紙される際には,前記上向きの角度よりも下向きの角度の送風を行う」ものであるのに対して,引用発明1では,「送風口31から空気を斜め上方へ吹き出し」ているものの,排紙手段から排紙される用紙の部位の変化に応じて送風の角度を変えるものではない点。
上記のとおり,本件訂正特許発明1と引用発明1の間には相違点が存在するから,本件訂正特許発明1は引用発明1ではない。
また,本件訂正特許発明10は,本件訂正特許発明1に,さらに発明特定事項を付加して限定したものであるから,本件訂正特許発明1と引用発明1の間に存在する上記相違点1が存在することは明らかであるから,本件訂正特許発明10は引用発明1ではない。
したがって,本件の請求項1及び10に係る発明は特許法第29条第1項第3号に該当せず,請求項1及び10に係る特許は,特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。
イ 理由2について(特許法第29条第2項)
取消理由の理由1は,請求項2,3,5,6及び10に係る特許に対して通知されたものである。
本件訂正特許発明2と引用発明1とを対比する。
本件訂正特許発明2は,本件訂正特許発明1を引用するものであって,本件訂正特許発明1に,送風方向を用紙面に対して上下方向に偏向させる偏向手段を限定したものである。
したがって,本件訂正特許発明2と引用発明1とは,上記「イ 理由2について」で検討した相違点1に加えて,以下の相違点2において相違する。
相違点2
本件訂正特許発明2の送風手段は「送風方向を用紙面に対して上下方向に偏向させる偏向手段」を備えるものであるのに対して,引用発明1では,「偏向手段」を有するものではない点。
上記相違点について検討する。
相違点1について検討する。
引用文献2乃至5において,相違点1に係る本件訂正特許発明2の発明特定事項である「排紙手段から用紙の先端部が排紙される際には,水平方向よりも上向きの角度の送風を行い,前記排紙手段から前記用紙のうちの前記先端部よりも後端部側の部位が排紙される際には,前記上向きの角度よりも下向きの角度の送風を行う」ものについて,記載も示唆もされておらず,該発明特定事項は本願出願前において周知技術であるともいえない。
そして,本件訂正特許発明2は,当該発明特定事項を備えることによって「風Wが効率よく後行紙P2の先端に届くように送風し,効果的に空気層ALを形成するようにする。(段落【0054】)」という,本願明細書に記載された顕著な効果を奏するものである。
したがって,他の相違点について検討するまでもなく,請求項2に係る発明は,引用文献1乃至3に記載された各引用発明,また引用文献4及び5に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず,請求項2に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
また,請求項3,5,6及び10はいずれも,本件訂正特許発明2である請求項2に係る発明を直接的又は間接的に引用しており,本件訂正特許発明2が引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上,本件訂正特許発明2に新たな発明特定事項を付加して限定した請求項3,5,6及び10に係る発明についての特許も,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許異議申立人の主張
特許異議申立人富川恵美は,訂正前の特許請求の範囲に関し,特許異議申立書において, ア 本件特許発明1は甲第1号証又は甲第2号証に記載の発明と同一である,本件特許発明2は甲第3号証に記載の発明と同一である,本件特許発明3は甲第3号証に記載の発明と同一である,本件特許発明4は甲第3号証に記載の発明と同一である,本件特許発明5は甲第3号証に記載の発明と同一である,本件特許発明6は甲第3号証に記載の発明と同一である,本件特許発明10は甲第1号証,甲第2号証又は甲第3号証に記載の発明と同一であると主張している。
イ 本件特許発明1は甲第1号証又は甲第2号証に記載の発明に基づいて,本件特許発明2は甲第3号証に記載の発明に基づいて,本件特許発明3は甲第3号証に記載の発明に基づいて,本件特許発明4は甲第3号証に記載の発明に基づいて,本件特許発明5は甲第3号証に記載の発明に基づいて,本件特許発明6は甲第3号証に記載の発明に基づいて,本件特許発明10は甲第1号証,甲第2号証又は甲第3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたもの,と主張している。
(2)アについて検討する。
ア 本件訂正特許発明1と甲第1号証又は甲第2号証に記載の発明について
本件訂正特許発明1と甲第1号証に記載の発明である引用発明1との間に,上記の相違点1が存在することは,「4 判断」,「(1)取消理由通知に記載した取消理由について」,「ア 理由1について(特許法第29条第1項第3号)」で検討したとおりである。
甲第2号証に記載の発明である引用発明2において,少なくとも上記の相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項について記載も示唆もないことは,「4 判断」,「(1)取消理由通知に記載した取消理由について」,「イ 理由2について(特許法第29条第2項)」,「相違点1について検討する。」で述べたとおりであるから,本件訂正特許発明1と甲第2号証に記載の発明との間にも上記の相違点1が存在することになる。
したがって,本件訂正特許発明1は,甲第1号証又は甲第2号証に記載の発明とは同一ではない。
イ 本件訂正特許発明2及び3と甲第3号証に記載の発明について
本件訂正特許発明2及び3は,本件訂正特許発明1に新たな発明特定事項を付加して限定したものであるから,上記の相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項を備えるものである。
そして,甲第3号証に記載の発明である引用発明3において,少なくとも上記の相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項について記載も示唆もないことは,「4 判断」,「(1)取消理由通知に記載した取消理由について」,「イ 理由2について(特許法第29条第2項)」,「相違点1について検討する。」で述べたとおりであるから,本件訂正特許発明2及び3と甲第3号証に記載の発明との間にも上記の相違点1が存在することになる。
したがって,本件訂正特許発明2及び3は甲第3号証に記載の発明と同一ではない。
ウ 本件訂正特許発明4と甲第3号証に記載の発明について
本件訂正特許発明4と甲第3号証に記載の発明である引用発明3とを対比する。
引用発明3において,画像形成装置200の後処理装置であるシート折り装置100に設けられた「排紙ローラ145」によって,「排紙されるZ折り用紙151」を排出して,「排紙トレイ131」に「排出されたZ折り用紙152」としてスタックしている。
したがって,引用発明3の「排紙されるZ折り用紙151」は,画像形成装置200より後処理装置であるシート折り装置100に搬送されたものであるから,本件訂正特許発明4の「搬送されてきた用紙」に相当し,引用発明3の「排紙口及び排紙ローラ145」は,本件訂正特許発明4の「排紙手段」に相当し,引用発明3の「排紙トレイ131」は,排紙されるZ折り用紙151を,排出されたZ折り用紙152としてスタックするものであるから,本件訂正特許発明4の「(排紙手段によって排紙される用紙を積載する)積載手段」に相当する。
引用発明3の「ファン148」は,「排出されるZ折り用紙151の用紙面に対して送風」するものであるから,本件訂正特許発明4の「(用紙の用紙面に対して送風する)送風手段」に相当する。
引用発明3の「可変調整スリット150」は,「スリットの角度を調整する事によって,上下方向に風向き(角度)の調整を行う事が可能」であるものであるから,本件訂正特許発明4の「(送風手段の送風方向を用紙面に対して上下方向に偏向させる)偏向手段」に相当する。
引用発明3の「シート折り装置100の筐体」は,本件訂正特許発明4の「本体」に相当する。
引用発明3の「排紙口」は、用紙排紙方向最上流側の排紙トレイ131から立ち上がったシート折り装置100の筐体の側面に設けられており、上述したとおり、引用発明3の「排紙トレイ131」及び「シート折り装置100の筐体」は、本件訂正特許発明4の「積載手段」及び「本体」に相当するから、引用発明3の「排紙口」は、本件訂正特許発明4の「排紙口」と同様に「用紙排紙方向最上流側の前記積載手段から立ち上がった本体側の側面に形成」されているといえる。
引用発明3において,排紙ローラ145で構成される「排紙手段」,排紙トレイ131で構成される「積載手段」,ファン148で構成される「送風手段」により,「排紙装置」が構成されていることは明らかであるから,引用発明3は本件訂正特許発明4の「排紙装置」に相当する構成を備えたシート折り装置100であることは自明である。
以上のことより,両者は,
<一致点>
「搬送されてきた用紙を排紙する排紙手段と,
前記排紙手段によって排紙される前記用紙を積載する積載手段と,
前記用紙の用紙面に対して送風する送風手段と,を備えた排紙装置において,
前記排紙手段の排紙口が用紙排紙方向最上流側の前記積載手段から立ち上がった本体側の側面に形成され,
前記送風手段の送風方向を前記用紙面に対して上下方向に偏向させる偏向手段を備えた排紙装置」
で一致し,以下の点で相違している。
<相違点>
相違点3
本件訂正特許発明4の送風手段は「排紙手段と積載手段の間から記用紙の用紙面に対して送風」するものである,具体的には「送風手段の送風口が排紙口と積載手段の上面との間の用紙排紙方向最上流側の前記積載手段から立ち上がった本体側に開口」しているのに対して,引用発明3では,「排紙口及び排紙ローラ145が設置されている反対側の排紙トレイ131の側面」である点。
相違点4
本件訂正特許発明4は「送風手段の送風方向を用紙面に対して上下方向に偏向させる偏向手段」と「偏向手段の上下方向の送風方向を制御する制御手段」を有し,該制御手段が「偏向手段からの送風が排紙中の用紙の先端に届くように送風方向を制御」するものであるのに対して,引用発明3は,偏向手段及び(偏向手段を制御する)制御手段を有するものではない点。
上記のとおり,本件訂正特許発明4と引用発明3の間には相違点3及び4が存在するから,本件訂正特許発明4は引用発明3と同一ではない。
エ 本件訂正特許発明5,6及び10と甲第3号証に記載の発明について
請求項5,6及び10は,いずれも,本件訂正特許発明1である請求項1,又は本件訂正特許発明4である請求項4を直接的又は間接的に引用しているため,それぞれについて検討する。
(ア)請求項1を引用する場合
本件訂正特許発明5,6及び10は,本件訂正特許発明1に新たな発明特定事項を付加して限定したものであるから,上記の相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項を備えるものである。
そして,甲第3号証に記載の発明である引用発明3において,少なくとも上記の相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項について記載も示唆もないことは,「4 判断」,「(1)取消理由通知に記載した取消理由について」,「イ 理由2について(特許法第29条第2項)」,「相違点1について検討する。」で述べたとおりであるから,本件訂正特許発明5,6及び10と甲第3号証に記載の発明との間にも上記の相違点1が存在することになる。
したがって,本件訂正特許発明5,6及び10は甲第3号証に記載の発明と同一ではない。
(イ)請求項4を引用する場合
本件訂正特許発明5,6及び10は,本件訂正特許発明4に新たな発明特定事項を付加して限定したものであるから,上記の相違点3及び4に係る本件訂正特許発明4の発明特定事項を備えるものである。
そして,「5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について」,「(2)アについて検討する。」,「ウ 本件訂正特許発明4について」で述べたとおり,本件訂正特許発明4は引用発明3と同一ではないから,本件訂正特許発明4に新たな発明特定事項を付加して限定した請求項5,6及び10に係る発明である本件訂正特許発明5,6及び10も,引用発明3と同一ではない。
オ 本件訂正特許発明10と甲第2号証に記載の発明について
請求項10は,いずれも,本件訂正特許発明1である請求項1,又は本件訂正特許発明4である請求項4を直接的又は間接的に引用しているため,それぞれについて検討する。
(ア)請求項1を引用する場合
本件訂正特許発明10は,本件訂正特許発明1に新たな発明特定事項を付加して限定したものであるから,上記の相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項を備えるものである。
そして,甲第2号証に記載の発明である引用発明2において,少なくとも上記の相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項について記載も示唆もないことは,「4 判断」,「(1)取消理由通知に記載した取消理由について」,「イ 理由2について(特許法第29条第2項)」,「相違点1について検討する。」で述べたとおりであるから,本件訂正特許発明10と甲第2号証に記載の発明との間にも上記の相違点1が存在することになる。
したがって,本件訂正特許発明10は甲第2号証に記載の発明と同一ではない。
(イ)請求項4を引用する場合
まず,本件訂正特許発明10と甲第2号証に記載の発明である引用発明2とを対比する。
本件訂正特許発明4と引用発明2とを対比する。
引用発明2において,「排出部」は,定着処理済みシート材Sを搬送ローラ対36によって排出ローラ対37へ送り,該排出ローラ対37によって機外の排出トレイ38上へ排出している。
したがって,搬送ローラ対36によって排出ローラ対37に送られた「定着処理済みシート材S」は,本件訂正特許発明4の「搬送されてきた用紙」に相当し,「排出ローラ対37」は,本件訂正特許発明4の「排紙手段」に相当し,「排出トレイ38」は,本件訂正特許発明4の「積載手段」に相当する。
引用発明2の「排出ファン部50」は,シート材Sの下面に対して風を送るものであって,「シート材Sの下面」は用紙の用紙面に他ならないから,引用発明2の「排出ファン部50」は,本件訂正特許発明4の「送風手段」に相当する。
引用発明2の「空気吹き出し口53a,53b」は,本件訂正特許発明4の「送風口」に相当する。
引用発明2の「(画像形成装置の)筐体」は,本件訂正特許発明4の「本体」に相当する。
引用発明2の「排出部」は,用紙を排紙口から排紙してして積載手段に積載するという点で,本件訂正特許発明4の「排紙装置」に共通する。
以上のことより,両者は,
<一致点>
搬送されてきた用紙を排紙する排紙手段と,
前記排紙手段によって排紙される前記用紙を積載する積載手段と,
前記排紙手段と前記積載手段の間から前記用紙の用紙面に対して送風する送風手段と,を備えた排紙装置において,
前記排紙手段の排紙口が用紙排紙方向最上流側の前記積載手段から立ち上がった本体側の側面に形成され,
前記送風手段の送風口が前記排紙口と前記積載手段の上面との間の前記側面に開口している排紙装置。
で一致し,以下の点で相違している。
<相違点>
相違点5
本件訂正特許発明4は「送風手段の送風方向を用紙面に対して上下方向に偏向させる偏向手段」と「偏向手段の上下方向の送風方向を制御する制御手段」を有し,該制御手段が「偏向手段からの送風が排紙中の用紙の先端に届くように送風方向を制御」するものであるのに対して,引用発明2は,偏向手段及び(偏向手段を制御する)制御手段を有するものではない点。
上記のとおり,本件訂正特許発明4と引用発明2の間には相違点5が存在するから,本件訂正特許発明4は引用発明2と同一ではない。
そして,本件訂正特許発明10は,本件訂正特許発明4に新たな発明特定事項を付加して限定したものであるから,上記の相違点5に係る本件訂正特許発明4の発明特定事項を備えるものであり,本件訂正特許発明4は引用発明2と同一ではないから,本件訂正特許発明4に新たな発明特定事項を付加して限定した請求項10に係る発明である本件訂正特許発明10も,引用発明2と同一ではない。
(3)イについて検討する。
ア 本件訂正特許発明1と甲第1号証又は甲第2号証に記載の発明について
本件訂正特許発明1と甲第1号証との間に上記相違点1が存在することは,「5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について」,「(2)アについて検討する。」で検討したとおりである。
また,甲第2号証に記載の発明において,上記相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項が記載も示唆もないことは,「4 判断」,「(1)取消理由通知に記載した取消理由について」,「ア 理由2について(特許法第29条第2項)」で検討したとおりである。
そして,上記相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項は,本願出願前において周知技術であるともいえないから,請求項1に係る発明は,甲第1号証又は甲第2号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件訂正特許発明2及び3と甲第3号証に記載の発明について
本件訂正特許発明2及び3は,本件訂正特許発明1に新たな発明特定事項を付加して限定したものであるから,上記の相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項を備えるものである。
そして,甲第3号証に記載の発明である引用発明3において,少なくとも上記の相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項について記載も示唆もないことは,「4 判断」,「(1)取消理由通知に記載した取消理由について」,「イ 理由2について(特許法第29条第2項)」,「相違点1について検討する。」で述べたとおりであるから,本件訂正特許発明2及び3と甲第3号証に記載の発明との間にも上記の相違点1が存在することになる。
そして,上記相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項は,本願出願前において周知技術であるともいえないから,請求項2及び3に係る発明は,甲第3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件訂正特許発明4と甲第3号証に記載の発明について
本件訂正特許発明1と甲第1号証との間に上記相違点3及び4が存在することは,「5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について」,「(2)アについて検討する。」,「ウ 本件訂正特許発明4と甲第3号証に記載の発明について」で検討したとおりである。
そして,上記相違点3及び4に係る本件訂正特許発明4の発明特定事項は,本願出願前において周知技術であるともいえないから,請求項4に係る発明は,甲第3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件訂正特許発明5,6及び10と甲第3号証に記載の発明について
請求項5,6及び10は,いずれも,本件訂正特許発明1である請求項1,又は本件訂正特許発明4である請求項4を直接的又は間接的に引用しているため,それぞれについて検討する。
(ア)請求項1を引用する場合
本件訂正特許発明5,6及び10は,本件訂正特許発明1に新たな発明特定事項を付加して限定したものであるから,上記の相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項を備えるものである。
そして,甲第3号証に記載の発明である引用発明3において,少なくとも上記の相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項について記載も示唆もないことは,「4 判断」,「(1)取消理由通知に記載した取消理由について」,「イ 理由2について(特許法第29条第2項)」,「相違点1について検討する。」で述べたとおりであるから,本件訂正特許発明5,6及び10と甲第3号証に記載の発明との間にも上記の相違点1が存在することになる。
そして,上記相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項は,本願出願前において周知技術であるともいえないから,請求項5,6及び10に係る発明は,甲第3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)請求項4を引用する場合
本件訂正特許発明5,6及び10は,本件訂正特許発明4に新たな発明特定事項を付加して限定したものであるから,上記の相違点3及び4に係る本件訂正特許発明4の発明特定事項を備えるものである。
そして,上記相違点3及び4に係る本件訂正特許発明4の発明特定事項は,本願出願前において周知技術であるともいえないから,請求項5,6及び10に係る発明は,甲第3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 本件訂正特許発明10と甲第2号証に記載の発明について
請求項10は,いずれも,本件訂正特許発明1である請求項1,又は本件訂正特許発明4である請求項4を直接的又は間接的に引用しているため,それぞれについて検討する。
(ア)請求項1を引用する場合
本件訂正特許発明10は,本件訂正特許発明1に新たな発明特定事項を付加して限定したものであるから,上記の相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項を備えるものである。
そして,甲第2号証に記載の発明である引用発明2において,少なくとも上記の相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項について記載も示唆もないことは,「4 判断」,「(1)取消理由通知に記載した取消理由について」,「イ 理由2について(特許法第29条第2項)」,「相違点1について検討する。」で述べたとおりであるから,本件訂正特許発明10と甲第2号証に記載の発明との間にも上記の相違点1が存在することになる。
そして,上記相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項は,本願出願前において周知技術であるともいえないから,請求項10に係る発明は,甲第2号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)請求項4を引用する場合
本件訂正特許発明10は,本件訂正特許発明4に新たな発明特定事項を付加して限定したものであるから,上記の相違点5に係る本件訂正特許発明4の発明特定事項を備えるものである。
そして,上記相違点5に係る本件訂正特許発明4の発明特定事項は,本願出願前において周知技術であるともいえないから,請求項10に係る発明は,甲第3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第4 むすび
以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,本件請求項1乃至6,及び10に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件請求項1乃至6,及び10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
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2018-700251