特許異議申立
2017-700049
ウェブの切断装置
- 審判番号
- 2017-700049
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-131091外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年01月18日
- 審決日
- 2017年10月11日
- 公報発行日
- 2018年01月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】住友重機械モダン株式会社
- 【権利者代理人】森下 賢樹
- 【異議申立人】田中 喜友
- 分類
- P1651.113-YAA(B65H) / P1651.121-YAA(B65H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5963713号発明「ウェブの切断装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5963713号の明細書、及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、及び特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1乃至8〕について訂正することを認める。
特許第5963713号の請求項1乃至8に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5963713号の請求項1乃至8に係る特許は、平成25年6月21日の出願であって、平成28年7月8日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年1月18日に特許異議申立人 田中 喜友により特許異議の申立てがなされ、同年4月13日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年6月19日に意見書の提出及び訂正請求(以下、「本件訂正請求」という)がなされ、同年7月10日付けで特許法第120条の5第5項に規定された通知書を特許異議申立人に送付したところ、その指定期間内に何ら応答がされなかったものである。
第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の(1)乃至(3)のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「切断部材の回動方向後側に設けられ、前記切断部材によるウェブの切断動作に連続するようにそのウェブの先端部を前記新コアの外周面に対して押圧する押圧部」を、「切断部材の回動方向後側に設けられ、断面形状が前記回動軸を中心とする円弧状である外周面により、前記切断部材によるウェブの切断動作に連続するようにそのウェブの先端部を前記新コアの外周面に対して押圧する押圧部」に訂正する。(下線は、訂正箇所を示す。以下、同じ。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項8の「前記押圧部は、前記切断部材の回動とともにウェブに当接する押圧位置が移動するよう円弧形状を有することを特徴とする」を、「前記押圧部は、前記切断部材の回動とともにウェブに当接する押圧位置が移動することを特徴とする」に訂正する。
(3)訂正事項3
願書に添付した明細書の段落【0008】の記載を、「上記課題を解決するために、本発明のある態様のウェブの切断装置は、ウェブの巻き取りを旧コアから新コアへ切り替える際に、旧コアに架け渡されたウェブを切断するウェブの切断装置であって、回動軸を中心とする円のほぼ接線方向に延びる刃を有する切断部材と、切断部材の刃が新コアとの最近接ポイントを新コアのほぼ接線方向に通過するよう切断部材を回動させることによりウェブを切断する駆動部と、切断工程において新コアとの間にウェブを介在させるようにして対向配置されることによりウェブの片側面に当接し、そのウェブを旧コアの巻き取り方向へガイド可能なガイドロールと、切断部材の回動方向後側に設けられ、断面形状が回動軸を中心とする円弧状である外周面により、切断部材によるウェブの切断動作に連続するようにそのウェブの先端部を新コアの外周面に対して押圧する押圧部と、を備える。切断部材および押圧部は、ガイドロールと同心の回動軸を有する。」に訂正する。
2.訂正の目的の適否、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び新規事項追加の有無の適否
(1)訂正事項1について
ア.訂正の目的の適否
訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載の「押圧部」について、「断面形状が前記回動軸を中心とする円弧状である外周面により」ウェブの先端部を新コアの外周面に対して押圧すると具体的に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ.新規事項追加の有無
当該訂正事項1に関連する記載として、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の段落【0019】に「切断部材の刃を回動軸を中心とする円弧状に構成する場合には、押圧部をその刃よりもやや大きい外接円を有する円弧状に構成するとよい。」と記載され、段落【0023】に「切断部材および押圧部が、共通の回動軸を中心とする円軌道に沿って駆動される円弧状の本体を有してもよい。」と記載され、段落【0044】に「押圧部材56は、刃52の回動方向後側に一体に設けられ、その外周面がウェブWを新コア26bに対して押圧するための押圧面となる。その押圧面は、切断部材40の回動とともにウェブWに当接する押圧位置が移動するよう円弧形状をなしている。」と記載されていることから、押圧部について、断面形状が回動軸を中心とする円弧状である外周面により、ウェブの先端部を新コアの外周面に対して押圧するとすることは、願書に添付した明細書に記載された範囲内のものである。
したがって、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ.特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項1は、「押圧部」について、上記ア.で述べたとおり限定しようとするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い、請求項1の記載と請求項1を引用する請求項8の記載との整合をとるためのものであり、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項1の記載と発明の詳細な説明の段落【0008】の記載との整合をとるためのものであり、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)一群の請求項についての適否
訂正事項1及び2に係る訂正前の請求項1乃至8について、請求項2乃至8はすべて直接的又は間接的に「請求項1」を引用しているものである。
したがって、訂正前の請求項1乃至8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当するものである。
よって、訂正事項1及び2による訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項ごとに」適法に請求されたものである。
また、訂正事項3は、願書に添付した明細書を訂正するものであり、該訂正事項3に係る訂正の請求は、当該明細書の訂正に係る、訂正前の請求項1乃至8の全てについて行われたものである。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
また、訂正後の請求項1乃至8は、一群の請求項である。
(3)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1乃至8〕について訂正を認める。
第3 特許異議の申立て理由について
1.本件特許発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1乃至8に係る発明(以下「本件特許発明1」乃至「本件特許発明8」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1乃至8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
ウェブの巻き取りを旧コアから新コアへ切り替える際に、前記旧コアに架け渡されたウェブを切断するウェブの切断装置であって、
回動軸を中心とする円のほぼ接線方向に延びる刃を有する切断部材と、
前記切断部材の刃が前記新コアとの最近接ポイントを前記新コアのほぼ接線方向に通過するよう前記切断部材を回動させることによりウェブを切断する駆動部と、
切断工程において前記新コアとの間にウェブを介在させるようにして対向配置されることによりウェブの片側面に当接し、そのウェブを前記旧コアの巻き取り方向へガイド可能なガイドロールと、
切断部材の回動方向後側に設けられ、断面形状が前記回動軸を中心とする円弧状である外周面により、前記切断部材によるウェブの切断動作に連続するようにそのウェブの先端部を前記新コアの外周面に対して押圧する押圧部と、を備え、
前記切断部材および前記押圧部は、前記ガイドロールと同心の前記回動軸を有することを特徴とするウェブの切断装置。
【請求項2】
前記切断部材は、前記ガイドロールと同心の円のほぼ接線方向に延びる刃を有し、
前記駆動部は、前記ガイドロールと前記新コアとの隙間を前記切断部材の刃がその延在方向に通過するよう前記切断部材を回動させることによりウェブを切断することを特徴とする請求項1に記載のウェブの切断装置。
【請求項3】
前記ガイドロールが前記切断部材の回動軸を中心に回転自在に支持され、
前記切断工程において前記切断部材の刃先がウェブから離間した状態を維持しつつ前記ガイドロールをウェブに当接させるように前記回動軸を移動させる移動機構を備え、
前記駆動部は、前記ガイドロールがウェブに当接した状態で前記切断部材を切断方向に回動させることを特徴とする請求項2に記載のウェブの切断装置。
【請求項4】
前記切断部材が、前記ガイドロールの同心円に沿って延びる円弧状の本体を有することを特徴とする請求項2または3に記載のウェブの切断装置。
【請求項5】
前記切断部材の刃先がウェブに当接して切り込みを開始するポイントが、前記ガイドロールと前記新コアとの最近接ポイントよりも回動方向手前に位置することを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載のウェブの切断装置。
【請求項6】
前記切断部材の刃は、その刃先が尖るとともに刃元に向けてエッジ面が形成された形状を有することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のウェブの切断装置。
【請求項7】
前記押圧部が前記切断部材と一体に設けられていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のウェブの切断装置。
【請求項8】
前記押圧部は、前記切断部材の回動とともにウェブに当接する押圧位置が移動することを特徴とする請求項7に記載のウェブの切断装置。」
2.取消理由の概要
訂正前の請求項1乃至8に係る特許に対して平成29年4月13日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。
(1)取消理由1(特許法第29条第1項第3号)
請求項1~3,5,及び7に対して、
甲第1号証:特許第3327727号
(2)取消理由2(特許法第29条第2項)
請求項1~8に対して、
甲第1号証:特許第3327727号
甲第2号証:特開平8-225204号公報
甲第3号証:特開昭49-108476号公報
甲第4号証:特開平9-183093号公報
3.各甲号証の記載
(1)甲第1号証
本件特許の出願日前の平成14年9月24日に頒布された特許第3327727号公報には、以下の記載がある。
「【請求項1】 シート体を巻取り位置で紙管に巻き取り、所定の巻き取り量のロールが形成された時点で上記ロールを取外し位置に移動させるとともに、新たな紙管を巻取り位置に移動させるように構成されたシート体巻取り装置が設けられ、上記取外し位置のロールの上流側に張設されたシート体を幅方向に切断し、その切断端を自軸回りに回転する巻取り位置側の紙管の表面に粘着させるシート体切断装置において、
上記張設されたシート体の両側外方に配設された一対の支持体と、これら一対の支持体間に設けられた主軸回りに回転可能なカッタ手段と、このカッタ手段を主軸回りに回転させるカッタ手段用駆動手段とが備えられ、
上記カッタ手段は上記シート体を切断するカッタ刃と、切断されたシート体の端部を紙管表面に押し付ける押付け手段とを具備し、これらカッタ刃と押付け手段とは紙管の表面に対向するように位置設定され、上記カッタ手段用駆動手段は、カッタ刃がシート体を切断しない待機姿勢と、カッタ刃がシート体を切断する切断姿勢との間でカッタ手段を回動させ得るように構成され、
上記カッタ手段の周速度は紙管の表面の周速度よりも速くなるように速度設定されており、
上記カッタ手段用駆動手段と、上記主軸との間にカッタ手段用駆動手段の駆動速度を増速する増速機構が設けられていることを特徴とするシート体切断装置。」
「【0034】上記第1駆動手段6は、下端部が支持柱Pに取り付けられた流体圧によって作動する左右一対のシリンダ61と、これらシリンダ61の上部から突出したシリンダロッド62とから構成され、このシリンダロッド62の上端部が枠板31に連結軸35を介して接続されている。そして、シリンダロッド62を上下動させることによって枠板31は基端軸32回りに正逆回動し、それによって上方に跳ね上がった待機姿勢と紙管1に近接した近接姿勢との間で切り換えが行い得るようになっている。上記シリンダ61の底部は、支持柱P側部に設けられたブラケット63の支持軸64回りに回動自在に軸支されており、これによってシリンダロッド62の出没時にシリンダ61が傾動ができるようになっている。」
「【0039】また、上記増速機構42は、枠板31の先端側外側面に付設された片歯車44と、この片歯車44に噛合する中間歯車45と、この中間歯車45に噛合する下部歯車46とから構成されている。そして上記片歯車44は枠板31に設けられた上部軸42a回りに回動自在に軸支され、上記中間歯車45は同中間軸42b回りに回転自在に軸支され、上記下部歯車46は枠板31を貫通して設けられた下部軸(主軸)42c回りに共回り可能に軸支されている。この中間軸42bには軸心回りに回転自在に補助ローラ42dが設けられている。」
「【0044】上記カッタ手段43は、一対の枠板31の各内側面に設けられた左右一対の支持腕43aと、これら支持腕43aの先端に固定された幅方向に延びる長尺直方体状のホルダ43bと、このホルダ43bに固定されたカッタ刃47および刷毛部材(押付け手段)48とから構成されている。
【0045】上記各支持腕43aは、補助ローラ42dの下部に位置し、かつそれぞれ上記左右一対の下部歯車46の下部軸42cに固定され、下部軸42cと軸心回りに共回りするようになっている。また、上記ホルダ43bは、図3に示すように、一対の支持腕43aの端部に差し渡された状態で固定され、このホルダ43bの先端面にゴム製の緩衝板43cを介してホルダ43bの全長に亘り長尺のカッタ刃47および刷毛部材48がネジ止めで固定されている。なお緩衝板43cを設けずにカッタ刃47をホルダ43bに直接取り付けてもよい。
【0046】上記カッタ刃47の刃先にはジグザグ状の鋸刃47aが形成され、これによって切断されたシート体Sは、切断部が図5に示すように鋸刃状になる。また、上記刷毛部材48の幅方向に延びる端面には、カッタ刃47の延びる方向に直交するように2列に刷毛48aが植設されている。
【0047】そして、上記下部軸42cの軸心を中心とした刷毛48aの毛先が巻取り位置Xにある紙管1の表面をなぜるように支持腕43a、刷毛部材48および刷毛48aの寸法設定が行われている。また、上記カッタ刃47は、カッタ手段43の下部軸42c回りの時計方向に回動によって、上側の支持ローラ107と紙管1との間に張設されたシート体Sを切断し得るように寸法設定されている。」
「【0052】そして、本発明においては、増速機構42の増速作用によってカッタ刃47の周速度は紙管1によるシート体Sの表面の周速度よりも速く速度設定されているため、支持腕43aの下部軸42c回りの回動によって支持腕43aの先端に設けられている刷毛48aによって紙管1に粘着している部分よりも先端側のシート体Sが紙管1の表面に向かって押圧され、これによって(ハ)に示すようにシート体Sの先端部は全面が面接触で紙管1の表面に粘着し、シート体Sに皺がよることが確実に防止される。」
「【0055】以上の実施例においては、シート体Sの切断端を紙管1の表面に押し付けるために、カッタ手段43の刷毛部材48に刷毛48aが植設されているが、刷毛48aの代わりにゴム製や軟質の合成樹脂製、あるいは発泡性合成樹脂製の筒状体を刷毛部材48の長手方向全長に亘って取り付けるようにしてもよい。そうすれば、材料の柔軟性によって弾性変形しながら筒状体がシート体Sを紙管1の表面に押し付けるため、シート体Sの紙管1表面への粘着が確実に行われる。」
「【0059】また、紙管1の径が変更された場合には、支持腕43aの長さを変更することによって対応することができるが、支持腕43aの長さを変えずに支持腕43aを中間軸42bに軸支させるようにしてもよい。このように中間軸42bに支持腕43aを軸支させることにより、カッタ手段43の回転軌跡が変更されるため、この軌跡に近接するような径を有する紙管に対応することが可能になる。」
図1及び図4から、切断姿勢時に、新たな紙管との間にシート体を介在させるようにして対向配置されることによりシート体の片側面に当接し、そのシート体を取外し位置のロールの巻き取り方向へガイド可能な補助ローラが看取できる。
図4から、新たな紙管に対向配置された主軸を中心とする円のほぼ接線方向に延びるカッタ刃を有するカッタ手段が看取できる。
図4から、カッタ手段の回動方向後側に設けられ、上記カッタ手段によるシート体の切断動作に連続するようにそのシート体の端部を新たな紙管の外周面に対して押し付ける押付け手段が看取できる。
以上の記載によれば、甲第1号証には以下の発明が記載されていると認められる。(以下「引用発明1」という。)
「シート体を巻取り位置で紙管に巻き取り、所定の巻き取り量のロールが形成された時点で上記ロールを取外し位置に移動させるとともに、新たな紙管を巻取り位置に移動させるように構成されたシート体巻取り装置が設けられ、上記取外し位置のロールの上流側に張設されたシート体を幅方向に切断し、その切断端を自軸回りに回転する巻取り位置側の紙管の表面に粘着させるシート体切断装置において、
上記張設されたシート体の両側外方に配設された一対の支持体と、これら一対の支持体間に設けられた主軸回りに回転可能なカッタ手段と、このカッタ手段を主軸回りに回転させるカッタ手段用駆動手段とが備えられ、
上記カッタ手段は新たな紙管に対向配置された主軸を中心とする円のほぼ接線方向に延び上記シート体を切断するカッタ刃と、切断されたシート体の端部を紙管表面に押し付ける押付け手段とを具備し、これらカッタ刃と押付け手段とは紙管の表面に対向するように位置設定され、上記カッタ手段用駆動手段は、カッタ刃がシート体を切断しない待機姿勢と、カッタ刃がシート体を切断する切断姿勢との間でカッタ手段を回動させ得るように構成され、
上記カッタ手段の周速度は紙管の表面の周速度よりも速くなるように速度設定されており、
上記カッタ手段用駆動手段と、上記主軸との間にカッタ手段用駆動手段の駆動速度を増速する増速機構が設けられ、
切断姿勢時に、新たな紙管との間にシート体を介在させるようにして対向配置されることによりシート体の片側面に当接し、そのシート体を上記取外し位置のロールの巻き取り方向へガイド可能な補助ローラが備えられ、
上記押付け手段は、カッタ手段の回動方向後側に設けられ、上記カッタ手段によるシート体の切断動作に連続するようにそのシート体の端部を新たな紙管の外周面に対して押し付けるものである、
シート体切断装置。」
(2)甲第2号証
本件特許の出願日前の平成8年9月3日に頒布された特開平8-225204号公報には、以下の記載がある。
「【請求項5】 少なくとも1個の支持ロール(2)を備え、該ロールに巻取りロール(1)を適合させて回転させるワインダにおける紙又はボール紙ウェブ(4)を裁断する装置において、
ウェブ(4)の全幅にわたって延びる、硬質で側方に湾曲した裁断ブレード(6)と、
ブレード(6)を支持ロール(2)の表面近くで接線方向に移動させ、支持ロール(2)とロール(1)との間のニップにブレード(6)を導入する手段(5、7)とを有し、
この手段によりニップにおける支持ロール(2)とロール(1)との回転運動により、少なくともブレードのニップ入り口側に対応するニップ他方側へブレード(6)の裁断端縁(9)がニップを通過するまでブレード(6)を引き込むことを特徴とする裁断装置。」
「【0014】裁断ブレード6は側方に湾曲した薄いブレードである。ブレード6の側方の曲率を支持ロール2の外周の曲率とほぼ等しく形成し、そしてブレード6を支持ロール2の表面にできるだけ近接して配置する。支持ロール2と裁断ブレード6との間のギャップは、ウェブのみがそのギャップを通過できる程度に狭くすると良い。さらにブレードは支持ロールの曲率半径にできるだけ近い値に合せるべきである。このことはロール1と支持ロール2との間のニップに入り込むブレードがロール1に損傷を与えないようにとの配慮に基づく。実際上薄くかつ正確に形成したブレード6は問題なくニップに入り込み、ロールに損傷を生じさせる打撃を与えることはない。ブレード6は支持ロールの半径に相当する円の曲率半径より僅かに大きい曲率半径をもつ円のセグメント形状を備えるのが良く、従って実際のブレード形状は、支持ロールを密接に包囲する仮想円筒体の一部と見なすことができる。」
以上の記載によれば、甲第2号証には以下の発明が記載されていると認められる。(以下「引用発明2」という。)
「少なくとも1個の支持ロール(2)を備え、該ロールに巻取りロール(1)を適合させて回転させるワインダにおける紙又はボール紙ウェブ(4)を裁断する装置において、
ウェブ(4)の全幅にわたって延びる、硬質で側方に湾曲した薄い裁断ブレード(6)で、ブレード(6)の側方の曲率を支持ロール(2)の外周の曲率とほぼ等しく形成し、
ブレード(6)を支持ロール(2)の表面近くで接線方向に移動させ、支持ロール(2)とロール(1)との間のニップにブレード(6)を導入する手段(5、7)とを有し、
この手段によりニップにおける支持ロール(2)とロール(1)との回転運動により、少なくともブレードのニップ入り口側に対応するニップ他方側へブレード(6)の裁断端縁(9)がニップを通過するまでブレード(6)を引き込む裁断装置。」
(3)甲第3号証
本件特許の出願日前の昭和49年10月15日に頒布された特開昭49-108476号公報には、以下の記載がある。
「2 特許請求の範囲
連続供給される巻取り製品の多重式巻取り機で高速走行する帯状体を巻取り交換および横切断する装置であつて、前記巻取り製品が、作動位置に位置している新たに巻付けられるべき空管を介して、取出し位置に位置する満管に供給されかつ前記空管と満管との間で切断される形式のものにおいて、前記巻取り製品5の横切断の目的で、旋回レバー8に支承されていて帯状製品速度と同期的にあるいは該帯状製品速度に比して高速で駆動されるナイフ軸9を備えており、該ナイフ軸9が、1部分からまたは複数の互いに並んで列を成した歯状セグメントから成る歯状のナイフ10を有しており、該ナイフの歯が、前記ナイフ軸の全幅にわたつて配置されていて該ナイフ軸の周面から突出していることを特徴とする多重式巻取り機で高速走行する帯状体を巻取り交換および横切断する装置。」(1頁左欄5行~右欄2行)
「接触ローラ7の軸線を中心として旋回可能な液力作動式の旋回レバー8には、回転可能なナイフ軸9が支承されており、該ナイフ軸9はその軸線に対して平行に配置された歯状のナイフ10を有している。該ナイフ10は第2図で示すように互いに列を成して並んだ歯状セグメントから成つており、これらの歯状セグメントはナイフ軸9の切欠き内に固定されている。」(3頁左上欄13行~右上欄1行)
以上の記載によれば、甲第3号証には以下の発明が記載されていると認められる。(以下「引用発明3」という。)
「連続供給される巻取り製品の多重式巻取り機で高速走行する帯状体を巻取り交換および横切断する装置であつて、前記巻取り製品が、作動位置に位置している新たに巻付けられるべき空管を介して、取出し位置に位置する満管に供給されかつ前記空管と満管との間で切断される形式のものにおいて、前記巻取り製品5の横切断の目的で、旋回レバー8に支承されていて帯状製品速度と同期的にあるいは該帯状製品速度に比して高速で駆動されるナイフ軸9を備えており、該ナイフ軸9が、1部分からまたは複数の互いに並んで列を成した歯状セグメントから成る歯状のナイフ10を有しており、該ナイフの歯が、前記ナイフ軸の全幅にわたつて配置されていて該ナイフ軸の周面から突出している多重式巻取り機で高速走行する帯状体を巻取り交換および横切断する装置。」
(4)甲第4号証
本件特許の出願日前の平成9年7月15日に頒布された特開平9-183093号公報には、以下の記載がある。
「【請求項1】 巻取コアに巻付いているウエブをロータリーカッタにより切断するウエブの切断装置において、
ロータリーカッタが、固定軸と、固定軸まわりで回転できるカッタドラムとを有し、
カッタドラム内の固定軸まわりに、空気吸引室と、空気吸引室に対するウエブ入側と出側の両側の空気吐出室とを設け、
カッタドラムの外面にナイフを固定し、カッタドラムの回転方向におけるナイフの前方側の外面に第1通気孔の群を開口し、カッタドラムの回転方向における第1通気孔の群の前方側の外面に第2通気孔の群を開口し、
切断前段階では、カッタドラムの第2通気孔をウエブ入側と出側の少なくとも一方の空気吐出室に連通するとともに、ウエブをカッタドラムの第2通気孔まわりに浮上状態で通過可能とし、
切断時には、カッタドラムのナイフ寄りに位置する第1通気孔をウエブ入側の空気吐出室に、他の第1通気孔を空気吸引室に連通し、ウエブをカッタドラムの空気吸引室に連通している第1通気孔まわりに密着させた状態で該ウエブをナイフにより切断し、切断されて巻取コア側にあるウエブの先端部をカッタドラムの空気吐出室に連通している第1通気孔からの吐出空気により巻取コア側に加圧可能とし、
切断終了時には、カッタドラムの第1通気孔をウエブ出側の空気吐出室に連通し、切断されたウエブの尾端部を第1通気孔からの吐出空気によりカッタドラムから剥離可能とすることを特徴とするウエブの切断装置。
…
【請求項3】 前記カッタドラムの回転方向におけるナイフの後方側の外面にウエブ押えを設け、
切断時に、ナイフの後方側のウエブをウエブ押えにより巻取コアに押付け可能とする請求項1又は2記載のウエブの切断装置。」
「【0034】また、ロータリーカッタ31は、カッタドラム42の回転方向におけるナイフ55の後方側傍の外面にスポンジ等からなるウエブ押え56を、ナイフ55に沿うスパイラル状に取付けられている。ウエブ押え56は、切断時に、ナイフ55の後方側のウエブ1を巻取コア2に押付け可能とする。」
図1より、外面が円弧状のウエブ押え56が看取できる。
以上の記載によれば、甲第4号証には以下の発明が記載されていると認められる。(以下「引用発明4」という。)
「巻取コアに巻付いているウエブをロータリーカッタにより切断するウエブの切断装置において、
ロータリーカッタが、固定軸と、固定軸まわりで回転できるカッタドラムとを有し、
カッタドラム内の固定軸まわりに、空気吸引室と、空気吸引室に対するウエブ入側と出側の両側の空気吐出室とを設け、
カッタドラムの外面にナイフを固定し、カッタドラムの回転方向におけるナイフの前方側の外面に第1通気孔の群を開口し、カッタドラムの回転方向における第1通気孔の群の前方側の外面に第2通気孔の群を開口し、
切断前段階では、カッタドラムの第2通気孔をウエブ入側と出側の少なくとも一方の空気吐出室に連通するとともに、ウエブをカッタドラムの第2通気孔まわりに浮上状態で通過可能とし、
切断時には、カッタドラムのナイフ寄りに位置する第1通気孔をウエブ入側の空気吐出室に、他の第1通気孔を空気吸引室に連通し、ウエブをカッタドラムの空気吸引室に連通している第1通気孔まわりに密着させた状態で該ウエブをナイフにより切断し、切断されて巻取コア側にあるウエブの先端部をカッタドラムの空気吐出室に連通している第1通気孔からの吐出空気により巻取コア側に加圧可能とし、
切断終了時には、カッタドラムの第1通気孔をウエブ出側の空気吐出室に連通し、切断されたウエブの尾端部を第1通気孔からの吐出空気によりカッタドラムから剥離可能とし、
前記カッタドラムの回転方向におけるナイフの後方側の外面に外面が円弧状のウエブ押えを設け、
切断時に、ナイフの後方側のウエブをウエブ押えにより巻取コアに押付け可能とするウエブの切断装置。」
4.判断
(1)取消理由1について
ア.対比
本件特許発明1と引用発明1とを対比すると、
後者の「シート体」、「取り外し位置のロール」、「新たな紙管」、「シート体切断装置」、「主軸」、「カッタ刃」、「カッタ手段」、「カッタ刃がシート体を切断しない待機姿勢と、カッタ刃がシート体を切断する切断姿勢との間でカッタ手段を回動させ得るように構成されたカッタ手段用駆動手段」、「シート体を取り外し位置のロールの巻き取り方向へガイド可能な補助ローラ」、及び「押付け手段」は、それぞれ、前者の「ウェブ」、「旧コア」、「新コア」、「切断装置」、「回動軸」、「刃」、「切断部材」、「切断部材を回動させることによりウェブを切断する駆動部」、「ガイドロール」、及び「押圧部」に相当する。
後者の「シート体切断装置」は、「取外し位置のロールの上流側に張設されたシート体を幅方向に切断し、その切断端を自軸回りに回転する巻取り位置側の紙管の表面に粘着させる」ものであるから、「ウェブの巻き取りを旧コアから新コアへ切り替える際に、前記旧コアに架け渡されたウェブを切断するウェブの切断装置」といえる。
後者の「カッタ刃」は、「主軸を中心とする円のほぼ接線方向に延びシート体を切断する」ものであるから、後者の「カッタ手段」は、「回動軸を中心とする円のほぼ接線方向に延びる刃を有する切断部材」といえる。
後者の「カッタ手段」は、「主軸回りに回転可能」で、「主軸を中心とする円のほぼ接線方向に延び上記シート体を切断するカッタ刃」を具備し、「主軸」は「新たな紙管(新コア)に対向配置されて」いるものであるから、「切断部材の刃が新コアとの最近接ポイントを新コアのほぼ接線方向に通過する」といえる。
後者の「補助ローラ」は、「切断姿勢時に、新たな紙管との間にシート体を介在させるようにして対向配置されることによりシート体の片側面に当接し、そのシート体を上記取り外し位置のロールの巻き取り方向へガイド可能な」ものであるから、後者の「補助ローラ」は、「切断工程において新コアとの間にウェブを介在させるようにして対向配置されることによりウェブの片側面に当接し、そのウェブを旧コアの巻き取り方向へガイド可能なガイドロール」といえる。
後者の「押付け手段」は、「カッタ手段の回動方向後側に設けられ、前記カッタ手段によるシート体の切断動作に連続するようにそのシート体の先端部を新たな紙管の外周面に対して押圧する」ものであるから、後者の「押し付け手段」は、「切断部材によるウェブの切断動作に連続するようにそのウェブの先端部を新コアの外周面に対して押圧する押圧部」といえる。
したがって、両者は、
「ウェブの巻き取りを旧コアから新コアへ切り替える際に、前記旧コアに架け渡されたウェブを切断するウェブの切断装置であって、
回動軸を中心とする円のほぼ接線方向に延びる刃を有する切断部材と、
前記切断部材の刃が前記新コアとの最近接ポイントを前記新コアのほぼ接線方向に通過するよう前記切断部材を回動させることによりウェブを切断する駆動部と、
切断工程において前記新コアとの間にウェブを介在させるようにして対向配置されることによりウェブの片側面に当接し、そのウェブを前記旧コアの巻き取り方向へガイド可能なガイドロールと、
切断部材の回動方向後側に設けられ、前記切断部材によるウェブの切断動作に連続するようにそのウェブの先端部を前記新コアの外周面に対して押圧する押圧部と、を備える、
ウェブの切断装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
本件特許発明1が、「断面形状が前記回動軸を中心とする円弧状である外周面により、押圧する押圧部」であるのに対し、引用発明1は、そのようなものでない点。
[相違点2]
本件特許発明1が、「切断部材および押圧部は、ガイドロールと同心の回動軸を有する」ものであるのに対し、引用発明1は、そのようなものでない点。
イ.相違点についての判断
引用発明1は、上記相違点1及び相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を具備していない。
したがって、本件特許発明1が、引用発明1であるとすることはできない。
また、本件特許発明2、3、5、及び7は、本件特許発明1の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、本件特許発明2、3、5、及び7は、引用発明1であるとはいえない。
(2)取消理由2について
上記相違点1について以下検討する。
引用発明4の「ロータリーカッタ」、「外面が円弧状のウエブ押え」は、それぞれ、本件特許発明1の「切断部材」、「『断面形状が円弧状である外周面』を備える『押圧部』」に相当する。
しかし、引用発明4の「ウエブ押え」は、「外面が円弧状」であるものの、「断面形状が回動軸を中心とする円弧状である外周面」とはいえない。
また、引用発明4の「押圧部」は、「ロータリーカッタ」の構成要素であって、「ロータリーカッタ」の「回動方向後側に設けられ」とはいえない。
また、異議申立人が提出したその他の刊行物にも、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項は記載も示唆もされていないし、設計的事項とする理由もない。
そして、本件特許発明1は、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項により、本件特許明細書に記載の「ウェブの先端部を所定範囲にわたって新コアに連続的に貼り付けることができ、その貼り付け強度も確保される。その結果、その後の新コアへの巻き取りがより安定に行えるようになる。」(【0022】参照。)という効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明1は、引用発明1及び引用発明4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
本件特許発明2乃至8は、本件特許発明1の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、本件特許発明2乃至8は、引用発明1乃至引用発明4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由によっては、本件特許発明1乃至8を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1乃至8を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700049