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特許異議申立

2018-700212

小動物防獣ネット

審判番号
2018-700212
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2014-072808
登録番号
特許第6219216号(P6219216)
請求日
2018年03月09日
審決日
2019年04月25日
公報発行日
2019年07月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ユニチカトレーディング株式会社
  • 【権利者代理人】奥村 茂樹
  • 【異議申立人】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
審判長/審判官
  • 審判長 小野 忠悦
  • 審判官 井上 博之
  • 審判官 西田 秀彦
分類
P1651.121-YAA(A01M) / P1651.851-YAA(A01M) / P1651.853-YAA(A01M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6219216号発明「小動物防獣ネット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6219216号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。 特許第6219216号の請求項1、6ないし10に係る特許を維持する。 特許第6219216号の請求項2ないし5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6219216号の請求項1~10に係る特許についての出願は、平成26年3月31日を出願日とし、平成29年10月6日付けでその特許権の設定登録がされ、平成29年10月25日に特許掲載公報が発行された。その後、平成30年3月9日に特許異議申立人特許業務法人虎ノ門知的財産事務所(以下「申立人」という。)より、請求項1~10に対して特許異議の申立てがされ、同年6月21日付けで取消理由(発送日同年6月27日)が通知され、その指定期間内である同年8月24日に意見書が提出され、同年10月29日に取消理由(決定の予告)(発送日同年11月2日)が通知され、その指定期間内である同年12月27日に意見書の提出及び訂正請求がされ、平成31年2月18日に申立人から意見書が提出されたものである。 第2 訂正請求について 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。) (1)訂正事項1 請求項1に、 「起立して設置された防護柵の下部に付設される小動物防獣ネットにおいて、 前記小動物防獣ネットは、経糸及び緯糸が格子状に配列されると共に、角目を持つネット状編織物で構成されており、 前記経糸及び緯糸は、芯成分が高融点重合体で鞘成分が低融点重合体よりなる芯鞘型複合長繊維が多数本集束されてなるマルチフィラメント糸を素材とするものであり、前記鞘成分の溶融固化によって、前記マルチフィラメント糸を構成する前記芯鞘型複合長繊維相互間が融着して一体化していると共に、経糸及び緯糸の交錯点で融着していることを特徴とする小動物防獣ネット。」 と記載されているのを、 「地盤上に起立して設置された防護柵の下部に沿って垂下させると共に、該地盤に沿って敷設されることにより略L字状に付設される小動物防獣ネットにおいて、 前記小動物はタヌキであり、 前記小動物防獣ネットは、経糸及び緯糸が格子状に配列されると共に、各辺が2.5~3.5cmである角目を持つラッセル編物で構成されており、 前記ラッセル編物の前記経糸及び前記緯糸は、芯成分がポリエチレンテレフタレートである高融点重合体で鞘成分が共重合ポリエステルである低融点重合体よりなる、繊度5~15デシテックスの芯鞘型複合長繊維が多数本集束されてなるマルチフィラメント糸を素材とするものであり、該経糸が鎖編糸及び挿入糸で形成されており、該緯糸が挿入糸のみで形成されており、 前記鞘成分の溶融固化によって、前記マルチフィラメント糸を構成する前記芯鞘型複合長繊維相互間が融着して一体化していると共に、経糸及び緯糸の交錯点で融着していることを特徴とする小動物防獣ネット。」 に訂正する。 請求項1の記載を引用する請求項2~10も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 請求項2~5を削除する。 (3)訂正事項3 請求項7に、 「請求項1記載の小動物防護ネットを、起立して設置された防護柵の下部に沿って垂下させると共に山野側の地盤に沿って敷設されていることを特徴とする小動物防護ネットの付設構造。」 と記載されているのを、 「請求項1記載の小動物防獣ネットを、起立して設置された防護柵の下部に沿って垂下させると共に山野側の地盤に沿って敷設されていることを特徴とする小動物防獣ネットの付設構造。」 に訂正する。 請求項7の記載を引用する請求項8~10も同様に訂正する。 (4)訂正事項4 請求項8に、 「地盤と小動物防護ネットの間に、防草シートが敷設されている請求項7記載の小動物防護ネットの付設構造。」 と記載されているのを、 「地盤と小動物防獣ネットの間に、防草シートが敷設されている請求項7記載の小動物防獣ネットの付設構造。」 に訂正する。 (5)訂正事項5 請求項9に、 「小動物防獣ネットが黒色であって、防護柵から山野側へ30cm以上敷設されている請求項7記載の小動物防護ネットの付設構造。」 と記載されているのを、 「小動物防獣ネットが黒色であって、防護柵から山野側へ30cm以上敷設されている請求項7記載の小動物防獣ネットの付設構造。」 に訂正する。 請求項9の記載を引用する請求項10も同様に訂正する。 (6)訂正事項6 請求項10に、 「地盤とネット状編織物の間に、黒色の防草シートが敷設されている請求項9記載の小動物防護ネットの付設構造。」 と記載されているのを、 「地盤とネット状編織物の間に、黒色の防草シートが敷設されている請求項9記載の小動物防獣ネットの付設構造。」 に訂正する。 (7)訂正事項7 明細書の【0006】に、 「上記課題を解決するため、本発明は、特定の糸を慣用の編織機械で編織してネットを得た後に、熱処理することによって、弾性及び剛性のある小動物防獣ネットを得たものである。すなわち、本発明は、起立して設置された防護柵の下部に付設される小動物防獣ネットにおいて、前記小動物防獣ネットは、経糸及び緯糸が格子状に配列されると共に、角目を持つネット状編織物で構成されており、前記経糸及び緯糸は、芯成分が高融点重合体で鞘成分が低融点重合体よりなる芯鞘型複合長繊維が多数本集束されてなるマルチフィラメント糸を素材とするものであり、前記鞘成分の溶融固化によって、前記マルチフィラメント糸を構成する前記芯鞘型複合長繊維相互間が融着して一体化していると共に、経糸及び緯糸の交錯点で融着していることを特徴とする小動物防獣ネットに関するものである。」 と記載されているのを、 「上記課題を解決するため、本発明は、特定の糸をラッセル編機で編成してネットを得た後に、熱処理することによって、弾性及び剛性のある小動物防獣ネットを得たものである。すなわち、本発明は、地盤上に起立して設置された防護柵の下部に沿って垂下させると共に、該地盤に沿って敷設されることにより略L字状に付設される小動物防獣ネットにおいて、前記小動物はタヌキであり、前記小動物防獣ネットは、経糸及び緯糸が格子状に配列されると共に、各辺が2.5~3.5cmである角目を持つラッセル編物で構成されており、前記ラッセル編物の前記経糸及び前記緯糸は、芯成分がポリエチレンテレフタレートである高融点重合体で鞘成分が共重合ポリエステルである低融点重合体よりなる、繊度5~15デシテックスの芯鞘型複合長繊維が多数本集束されてなるマルチフィラメント糸を素材とするものであり、該経糸が鎖編糸及び挿入糸で形成されており、該緯糸が挿入糸のみで形成されており、前記鞘成分の溶融固化によって、前記マルチフィラメント糸を構成する前記芯鞘型複合長繊維相互間が融着して一体化していると共に、経糸及び緯糸の交錯点で融着していることを特徴とする小動物防獣ネット小動物防獣ネットに関するものである。」 に訂正する。 (8)訂正事項8 明細書の【0008】に、 「小動物用防獣ネットは、経糸及び緯糸が格子状に配列されると共に、角目を持つネット状編織物で構成されている。経糸及び緯糸が格子状に配列され、角目を持つネット状編織物の代表例としては、ラッセル編物や絡み織物を挙げることができる。」 と記載されているのを、 「小動物用防獣ネットは、経糸及び緯糸が格子状に配列されると共に、角目を持つラッセル編物で構成されている。」 に訂正する。 (9)訂正事項9 明細書の【0009】中の第一文に、 「ラッセル編物の場合、鎖編糸及び挿入糸が経糸となり挿入糸が緯糸となる。」 と記載されているのを、 「ラッセル編物は、鎖編糸及び挿入糸が経糸となり挿入糸が緯糸となる。」 に訂正する。 (10)訂正事項10 明細書の【0010】中の後から第二文に、 「角目の大きさは任意であるが、一般的に縦3.5cm以下で横3.5cm以下である。」 と記載されているのを、 「角目の大きさは、2.5~3.5cmである。」 に訂正する。 (11)訂正事項11 明細書の【0011】を削除する。 (12)訂正事項12 明細書の【0012】中の第一文に、 「ネット状編織物を構成している経糸及び緯糸には、芯成分が高融点重合体で鞘成分が低融点重合体よりなる芯鞘型複合長繊維が多数本集束されてなるマルチフィラメント糸を素材とするものが用いられる。」 と記載されているを、 「ラッセル編物を構成している経糸及び緯糸には、芯成分が高融点重合体で鞘成分が低融点重合体よりなる芯鞘型複合長繊維が多数本集束されてなるマルチフィラメント糸を素材とするものが用いられる。」 に訂正する。 明細書中の【0012】中の第四文に、 「各重合体の材料は任意であるが、一般的に、高融点重合体としてレギュラーポリエステルが用いられ、低融点重合体として低融点ポリエステルが用いられる。」 と記載されているのを、 「高融点重合体としてポリエチレンテレフタレートが用いられ、低融点重合体として共重合ポリエステルが用いられる。」 に訂正する。 (13)訂正事項13 明細書中の【0013】中の第三文以降に、 「集束する本数も任意であるが、一般的に1000~6000本である。1000本未満であると、ネット状編織物の剛性が低下する傾向となる。また、6000本以上であると、ネット状編織物の剛性が高くなりすぎて、曲げにくくなる傾向が生じる。」 と記載されているを、 「集束する本数も任意であるが、一般的に1000~6000本である。1000本未満であると、ラッセル編物の剛性が低下する傾向となる。また、6000本以上であると、ラッセル編物の剛性が高くなりすぎて、曲げにくくなる傾向が生じる。」 に訂正する。 (14)訂正事項14 明細書中の【0014】中の第五文及び第六文に、 「したがって、低融点成分か溶融固化したものの内部に、高融点成分よりなる芯成分が長繊維形態を保って内在しており、得られるネット状編織物は、伸度が低く、高引張強度で高剛性で、切創性(切断性)に優れたものとなり、小動物の加える力によって、変形したり破断したり、或いは食いちぎられたりしにくいものである。また、芯鞘型複合長繊維として原着繊維を用いると、黒色のネット状編織物となり、小動物を含む各種動物が近づきにくくなる。」 と記載されているのを、 「したがって、低融点成分か溶融固化したものの内部に、高融点成分よりなる芯成分が長繊維形態を保って内在しており、得られるラッセル編物は、伸度が低く、高引張強度で高剛性で、切創性(切断性)に優れたものとなり、小動物の加える力によって、変形したり破断したり、或いは食いちぎられたりしにくいものである。また、芯鞘型複合長繊維として原着繊維を用いると、黒色のラッセル編物となり、小動物を含む各種動物が近づきにくくなる。」 に訂正する。 (15)訂正事項15 明細書中の【0015】中の第一文に、 「以上のネット状編織物は、起立して設置された防護柵の下部に付設されて、小動物防獣ネットとなる。」 と記載されているのを、 「以上のラッセル編物は、起立して設置された防護柵の下部に付設されて、小動物防獣ネットとなる。」 に訂正する。 (16)訂正事項16 明細書中の【0017】に、 「本発明に係る小動物防獣ネットは、特定のマルチフィラメント糸を用いて、ラッセル編物や絡み織物を製編織して、熱処理するだけで得られるものであるため、特許文献1に記載された小動物防獣ネットに比べて、合理的に得ることができるという効果を奏する。」 と記載されているのを、 「本発明に係る小動物防獣ネットは、特定のマルチフィラメント糸を用いて、ラッセル編物を製編して、熱処理するだけで得られるものであるため、特許文献1に記載された小動物防獣ネットに比べて、合理的に得ることができるという効果を奏する。」 に訂正する。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的の適否について 訂正事項1は、小動物防獣ネットについて、「地盤上に」、「沿って垂下させると共に、該地盤に沿って敷設されることにより略L字状に」、「小動物はタヌキであり」、「各辺が2.5~3.5cmである」、「ラッセル編物」、「(芯成分が)ポリエチレンテレフタレートである」、「(鞘成分が)共重合ポリエステルである」、「繊度5~15デシテックス」、「該経糸が鎖編糸及び挿入糸で形成されており、該緯糸が挿入糸のみで形成されており」という限定をしたものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて 上記アで説示したように、訂正事項1は小動物防獣ネットについて限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて 訂正事項1に関して、「地盤上に」、「沿って垂下させると共に、該地盤に沿って敷設されることにより略L字状に」の訂正については、「【0015】 以上のネット状編織物は、起立して設置された防護柵の下部に付設されて、小動物防獣ネットとなる。付設の具体例は、たとえば図1に示したとおりであり、防護柵1の下部に沿って小動物防獣ネット2を垂下させると共に山野側の地盤に沿って敷設する。」と記載され、図1から看て取れる事項である。 「小動物はタヌキであり」の訂正については、「【0002】山野を通過する高速道路においては、走行中の車両と野生動物との衝突事故が発生している。・・・このうち最も多いのはタヌキで全体の45%を占め・・・タヌキは夜間に行動するが、高速道路と山野の境界に起立して設置した防護柵の下部のすき間などから侵入し、自動車のヘッドライトを見てすくんでしまう性質が災いしていると考えられる。」との記載から、読み取れる事項である。 「各辺が2.5~3.5cmである」、「ラッセル編物」の訂正については、「【請求項5】角目の大きさは縦3.5cm以下で横3.5cm以下である請求項1記載の小動物防獣ネット。」、「【0019】実施例1・・・【0020】マルチフィラメント糸Aを鎖編する糸とし、マルチフィラメントBを挿入糸として、ラッセル編機で図3の編組織となるように製編した。・・・得られたネット状編物は、2.5cmの角目を持つものであった。・・・【0021】実施例2・・・【0022】・・・得られたネット状編物は、3.5cmの角目を持つものであった。このネット状編物を実施例1と同一の方法で防護柵の下部に付設して、小動物防獣ネットとした。」との記載から、読み取れる事項である。 「(芯成分が)ポリエチレンテレフタレートである」、「(鞘成分が)共重合ポリエステルである」、「繊度5~15デシテックス」、「該経糸が鎖編糸及び挿入糸で形成されており、該緯糸が挿入糸のみで形成されており」の訂正については、「【請求項3】ラッセル編物は、経糸が鎖編糸及び挿入糸で形成されており、緯糸が挿入糸で形成されている請求項1記載の小動物防獣ネット。」、「【0012】ネット状編織物を構成している経糸及び緯糸には、芯成分が高融点重合体で鞘成分が低融点重合体よりなる芯鞘型複合長繊維が多数本集束されてなるマルチフィラメント糸を素材とするものが用いられる。・・・各重合体の材料は任意であるが、一般的に、高融点重合体としてレギュラーポリエステルが用いられ、低融点重合体として低融点ポリエステルが用いられる。・・・芯鞘型複合長繊維の繊度は任意であるが、一般的に5~15デシテックス程度である。」、「【0019】実施例1 以下のマルチフィラメント糸A及びマルチフィラメント糸Bを準備した。マルチフィラメント糸A:鞘成分が融点160℃の共重合ポリエステル(低融点重合体)よりなり、芯成分が融点260℃のポリエチレンテレフタレート(高融点重合体、レギュラーポリエステル)よりなる芯鞘型複合長繊維よりなる1670デシテックス/192フィラメント(ユニチカ株式会社製:「メルセット」)のマルチフィラメント糸を9本引き揃えたものを、マルチフィラメント糸Aとした。」との記載から、読み取れる事項である。 以上のとおり、訂正事項1は明細書等に記載されているものと認められる。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、請求項2~5を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3~6について 訂正事項3~6は、「小動物防護ネット」を「小動物防獣ネット」と訂正するものであり、誤記の訂正を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項7~16について 訂正事項7~16は、上記訂正事項1、2の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項7~16は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。 (5)一群の請求項について 訂正前の請求項1~10は、請求項2~10が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前の請求項1~10は、訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって、訂正の請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとにされたものである。 3 小括 したがって、上記訂正請求による訂正事項1~16は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号~第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 訂正後の請求項1、6~10に係る発明 上記訂正請求により訂正された請求項1、6~10に係る発明(以下、「本件発明1」等、あるいはまとめて「本件発明」という。)は、以下のとおりのものである。(下線は訂正箇所を示す。) 「【請求項1】 地盤上に起立して設置された防護柵の下部に沿って垂下させると共に、該地盤に沿って敷設されることにより略L字状に付設される小動物防獣ネットにおいて、 前記小動物はタヌキであり、 前記小動物防獣ネットは、経糸及び緯糸が格子状に配列されると共に、各辺が2.5~3.5cmである角目を持つラッセル編物で構成されており、 前記ラッセル編物の前記経糸及び前記緯糸は、芯成分がポリエチレンテレフタレートである高融点重合体で鞘成分が共重合ポリエステルである低融点重合体よりなる、繊度5~15デシテックスの芯鞘型複合長繊維が多数本集束されてなるマルチフィラメント糸を素材とするものであり、該経糸が鎖編糸及び挿入糸で形成されており、該緯糸が挿入糸のみで形成されており、 前記鞘成分の溶融固化によって、前記マルチフィラメント糸を構成する前記芯鞘型複合長繊維相互間が融着して一体化していると共に、経糸及び緯糸の交錯点で融着していることを特徴とする小動物防獣ネット。 【請求項6】 黒色である請求項1記載の小動物防獣ネット。 【請求項7】 請求項1記載の小動物防獣ネットを、起立して設置された防護柵の下部に沿って垂下させると共に山野側の地盤に沿って敷設されていることを特徴とする小動物防獣ネットの付設構造。 【請求項8】 地盤と小動物防獣ネットの間に、防草シートが敷設されている請求項7記載の小動物防獣ネットの付設構造。 【請求項9】 小動物防獣ネットが黒色であって、防護柵から山野側へ30cm以上敷設されている請求項7記載の小動物防獣ネットの付設構造。 【請求項10】 地盤とネット状編織物の間に、黒色の防草シートが敷設されている請求項9記載の小動物防獣ネットの付設構造。」 2 取消理由の概要 訂正前の請求項1~10に係る特許に対して平成30年10月29日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。 本件発明1~10は、甲1発明、及び甲第2号証~甲第9号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではあるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 甲第1号証:特開2013-247887号公報 甲第2号証:特開2003-310090号公報 甲第3号証:特開2006-340674号公報 甲第4号証:特開2002-65140号公報 甲第5号証:特開2006-296234号公報 甲第6号証:特開2008-187951号公報 甲第7号証:特開平8-103177号公報 甲第8号証:特開2009-133185号公報 甲第9号証:特開2004-332152号公報 3 甲各号証の記載 (1)甲第1号証には、次の記載があり、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。(下線は決定で付与。以下同じ。) ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 所定領域の内部と外部とを仕切る仕切ネットにおいて、 所定の融点を有する合成繊維製の通常融点繊維素材から構成される芯部およびその芯部の外周面を被覆すると共に前記通常融点繊維素材よりも低い融点を有する合成繊維製の低融点繊維素材から構成される鞘部を備えた第1糸と、前記通常融点繊維素材から構成される第2糸と、を合糸することで形成された複数の混合糸により形成され、前記第1糸の鞘部を溶融して前記複数の混合糸を互いに融着させることで網状に成形された網地部を備え、 前記混合糸は、その混合糸全体に対する前記第1糸の含有率が15%以上に設定されていることを特徴とする仕切ネット。」 イ 「【0032】 以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、フェンス100の概略構成について説明する。図1は、本発明の第1実施の形態におけるフェンス100の正面図である。なお、図1では、図面を簡素化して理解を容易とするため、フェンス100の主要な部分を模式的に図示すると共に、フェンス100の一部を省略して図示している。 【0033】 図1に示すように、フェンス100は、学校の校庭や球技場等の敷地の周囲に設けられている。このフェンス100を設置することにより、敷地の内部で使用されたボール等が場外へ飛び出すことを防止できると共に、部外者の敷地内への侵入を抑止することができる。 【0034】 フェンス100は、複数の支柱20と、それら支柱20に架設される複数のワイヤ30と、それら複数のワイヤ30に展張される防球ネット40とを備えている。なお、図1では、図面を簡素化して理解を容易とするため、防球ネット40の網糸および網目を拡大して図示している。 【0035】 複数の支柱20は、一部が地中に埋設されることで地面に立設されており、敷地の周囲に等間隔(例えば、8mおき)に設置されている。 【0036】 複数のワイヤ30は、防球ネット40を展張させるための部材であり、鉛直方向に沿って架設される鉛直ワイヤ31と、所定の高さ位置において水平方向に沿って架設される兼用ワイヤ32と、その兼用ワイヤ32よりも上方で水平方向に沿って架設される上ワイヤ33と、兼用ワイヤ32よりも下方であって地面から所定寸法離れた高さ位置において水平方向に沿って架設される下ワイヤ34とを備えている。 【0037】 なお、本実施の形態では、兼用ワイヤ32の地面からの高さ位置が2m、上ワイヤ33の地面からの高さ位置が12m、下ワイヤの地面からの高さ位置が10cmにそれぞれ設定されているが、これら複数のワイヤ30の架設位置は、使用状況において適宜変更してもよい。 【0038】 防球ネット40は、所定の高さ位置から上方において展張される上方ネット50と、所定の高さ位置から下方において展張される下方ネット60とを備えている。」 ウ 「【0045】 下方ネット60は、網状に形成された網地部61と、その網地部61の上側および下側における側端部分に取着された直線部62とを備えている。 【0046】 網地部61は、下方ネット60の網地を形成する部位であり、所定の融点を有するポリエステル製の通常融点繊維素材から構成される芯部およびその芯部の外周面を被覆すると共に通常融点繊維素材よりも低い融点を有するポリエステル製の低融点繊維素材から構成される鞘部を備えた第1糸と、通常融点繊維素材から構成される第2糸と、を合糸した複数の混合糸63を網糸として使用し、第1糸の鞘部を溶融して複数の混合糸63を互いに融着させることで網状に成形されている。 ・・・ 【0049】 ここで、網地部61に使用される混合糸63は、第1糸の混合糸63全体に対する含有率が15%以上、かつ、60%以下に設定されることが好ましい。」 エ 「【0059】 このとき、網地部61となる部分には、所定間隔を空けつつ両隣に位置する混合糸63の一部分同士を交互に当接させ、全体として亀甲状の網目が形成されるように、複数の混合糸63を蛇行状に配置する。 【0060】 なお、隣接する混合糸63の一部分同士を当接させる際、その当接面積を広くすることで、隣接する混合糸63同士の融着力を強固にすることができる。本実施の形態では、8コース分の間隔を空けつつ両隣に位置する混合糸63に対して交互に1箇所あたり5コース分ずつ当接させている。また、網目の形状は亀甲状に限られるものではなく、格子状等であってもよい。また、使用目的に応じて、網目の大きさや1箇所あたりの隣接する混合糸63同士の当接面積を適宜設定してもよい。 【0061】 直線部62となる部分には、一の混合糸63を網地部61となる部分の上側および下側の側端部分に位置する混合糸63に当接させつつ、一の混合糸63を含む複数の混合糸63を直線状に並設する。 【0062】 混合糸配置工程に続き、網地部成形工程として、混合糸配置工程における混合糸63の配置を保持した状態で、テンターを用いて低融点繊維素材の融点よりも高く、かつ、通常融点繊維素材の融点よりも低い温度(例えば、200℃)で加熱する。これにより、第1糸の鞘部が溶融されると共に、その溶融した第1糸の鞘部を介して複数の混合糸63が互いに融着され、網地部61及び直線部62が成形される。」 オ 「【0095】 上記各実施の形態では、仕切ネットをフェンス100又は生簀200に使用する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の用途、例えば、工事現場の足場等の下方に展張される安全ネットや、野生動物等の敷地内への侵入を防止する防獣ネット等に使用してもよい。 ・・・ 【0097】 上記各実施の形態では、混合糸63全体に対する第1糸の含有率が60%以下に設定される点について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、使用状況に応じ、混合糸63全体に対する第1糸の含有率を60%よりも高く設定してもよい。例えば、混合糸63全体に対する第1糸の含有率を100%、即ち、混合糸63を第1糸のみにより形成してもよい。これにより、混合糸63の剛性を高めることができる。」 カ 上記アの仕切ネットの構成と上記ウの網地部61の構成を比較すれば、網地部61が仕切ネットであることは明らかである。 キ 上記ア~カの記載を踏まえると以下の甲1発明が記載されていると認められる。 甲1発明 「ネット40は、所定の高さ位置から上方において展張される上方ネット50と、所定の高さ位置から下方において展張される下方ネット60とを備えており、 網地部61(仕切ネット)は、下方ネット60の網地を形成する部位であり、所定の融点を有するポリエステル製の通常融点繊維素材から構成される芯部およびその芯部の外周面を被覆すると共に通常融点繊維素材よりも低い融点を有するポリエステル製の低融点繊維素材から構成される鞘部を備えた第1糸と、通常融点繊維素材から構成される第2糸と、を合糸した複数の混合糸63を網糸として使用し、第1糸の鞘部を溶融して複数の混合糸63を互いに融着させることで網状に成形されており、 混合糸63全体に対する第1糸の含有率を100%、即ち、混合糸63を第1糸のみにより形成してもよく、 網地部61(仕切ネット)の網目の形状は亀甲状に限られるものではなく、格子状等であってもよく、 網地部61(仕切ネット)は野生動物等の敷地内への侵入を防止する防獣ネット等に使用してもよい、 網地部61(仕切ネット)」 (2)甲第2号証には、次の記載がある。 ア 「【請求項1】 マトリックス樹脂を構成する熱可塑性樹脂からなる低融点成分と、補強繊維を構成する熱可塑性樹脂からなる高融点成分とを備えた複合繊維で構成した線状体によるネット状物であって、前記線状体は、前記複合繊維を収束した複合繊維束中間線状体を、所定目合いのメッシュ状体に編網した後、緊張下に、前記低融点成分を溶融固化させて、前記補強繊維を前記低融点成分で一体的に結着したことを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂製ネット状物。」 イ 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、鯛、ヒラメ、ハマチなど魚介類の養殖に使用される養殖用ネット、或いは、河川、沼沢、湖、海岸等の護岸、水中構造物の根固め、法面、河床の保護等の各種土木工事に於いて用いられる蛇篭等に好適に使用される繊維強化熱可塑性樹脂製ネット状物およびその製造方法に関するものである。」 ウ 「【0044】すなわち、本実施例の場合には、複合繊維2は、低融点成分2aが鞘部となっていて、高融点成分2bが芯部となる鞘芯型構造になっている。この複合繊維2は、多数本、収束した複合繊維束中間線状体1とされる。複数本の複合繊維2を複合繊維束中間線状体1にする際には、撚りを掛けることによって、離脱してバラバラになることが防止される。 【0045】この撚りは、複合繊維2の直径や、本数によっても異なるが、例えば、(0.5~3)回/cm程度が好ましい。複合繊維束中間線状体1は、連続状態で製作され、編網可能な柔軟性を有した中間体であって、網撚合機の線状物供出ボビンに巻かれて編網され、図3に示すメッシュ状体3に形成される。 【0046】メッシュ状体3の目合いは、例えば、10mm以上とされる。図3には、無結節網とした状態の一部が示されている。このように形成されたメッシュ状体3は、一定の緊張状態で、低融点成分2aの融点以上で、高融点成分2bの融点以下に加熱して、低融点成分2aを溶融した後冷却して、補強繊維(高融点成分2b)を低融点成分2aで一体的に結着した繊維強化熱可塑性樹脂製ネット状物4とされる。 ・・・ 【0049】この場合、メッシュ状体3の一例として無結節網を例示して説明したが、本発明の目的が達せられるならば、例えば、結節網,ラッセル網等いかなる方法によってもメッシュ状体を作成することができる。また、形状についても、例えば円柱状、円錐状等いかなる形状の養殖用ネット、蛇篭の面構成材としても本発明のネット状物4を用いることが可能である。」 (3)甲第3号証には、次の記載がある。 ア 「【請求項1】 脚と結節とを持つ合成繊維製ラッセル編ネットであって、該脚と該結節とは、二本の鎖編糸A,Bと挿入糸Cとで編成されており、そのうちの一本の鎖編糸Aは、所定のコースでループパイルを形成するように編成されると共に、該ループパイルの頂上付近が切断されてカットパイルを形成しており、該鎖編糸Aは高剛性のモノフィラメントで形成されていることを特徴とする動物忌避ネット。」 イ 「【0009】 本発明に係る動物忌避ネットは、合成繊維製ラッセル編ネットよりなる。すなわち、合成繊維糸条を用いてラッセル編組織で編成されてなる網状物である。合成繊維製ラッセル編ネットは、図1に示すように、脚1と結節2とからなる。脚1と結節2で形成される網目3の形状は従来周知のものが用いられ、たとえば、角目、菱目又は亀甲目等が採用される。網目3の大きさは、忌避する動物によって異なり、猪や鹿等の大型又は中型の動物の場合には100mm2程度が好ましく、鼠や兎等の小型の動物の場合には25mm2程度が好ましい。 【0010】 本発明で用いる合成繊維製ラッセル編ネットの脚1は、いずれも、鎖編糸A,Bと挿入糸Cとで編成されている。したがって、結節2も、鎖編糸A,Bと挿入糸Cとで編成されている。鎖編糸Aは、鎖編みされているだけではなく、カットパイル4を形成するためのものである。」 (4)甲第4号証には、次の記載がある。 「【0024】錘付きネット10の用途としては、防風または防砂、園芸作物の栽培、鳥獣防止等のネットとして使用することができる。例えば、網面12の外形線に沿ってコード状の錘12を取り付けたものを、ゴミ回収場のカラス避けに使用するとよい。また、錘付きネット10は、漁網等の水中用のネットに適用することもできる。 【0025】前記実施の形態では、網面12をラッセル織りにしているが、その他の無結節または有結節編網(平織り、絡み織り、トリコット、シングルトリコット等)を採用してもよい。」 (5)甲第5号証には、次の記載がある。 ア 「【請求項1】 単糸又は撚糸を編網してなる網地から構成され、該網地の上部網より下側にある下部網に複数のループを間隙を置いて前記網地の幅方向に表面に形成してなり、1つの前記ループの長さが前記網地の目合いよりも大きく設定され、前記1つのループの長さが5~30cm、高さが1~10cm、直径が0.5~5mmに設定されていることを特徴とする防獣ネット。」 イ 「【技術分野】 【0001】 本発明は防獣ネット及びその施工方法に関し、詳しくは、農作物や造林木の若芽、樹皮などを、野生の動物、特に猪の獣害から効果的に守ることができる防獣ネットに関するものである。」 ウ 「【0009】 防獣ネット1は、単糸を編網してなる網地2から構成され、網地の上部網3より下側にある下部網4に複数のループ5を間隙を置いて網地2の幅方向にその表面側に形成してなり、1つのループ5の長さが網地2の目合いよりも大きく設定され、1つのループ5の長さが5~30cm、高さが1~10cm、直径が1~5mmに設定されている。また、記網地2の上部網3と下部網4とは一体に形成してある。 【0010】 防獣ネット1は、合成繊維単糸を用い、網目形状が角形で、かつ、一辺が2~20cm、特に2~3cmになるように編網し、網地2を作製することが好ましい。網目は菱形でもよい。編網方法としては、特に制限はなく、従来防獣ネットの網地の作製において慣用されている方法の中から、任意の方法を選択して用いることができる。例えば、ラッセル綱、本目網、蛙股網、綟網、無結節網などの編網方法を挙げることができるが、固くてずれないなどの点から蛙股網方法が好適である。 ・・・ 【0013】 防獣ネットの施工方法は、(1)防獣ネット1の上部網3を支柱10で立設して、フェンス部分を構成し、上部網3より下側の下部網4を地面11に敷設し、トラップ部分を構成するものである。この防獣ネット1の上部網3の高さは、通常1~2.5m、好ましくは、1~1.7m程度であり、また、幅は、防獣ネットを設置する場所の地形により、異なるが、一般には5~100m、好ましくは5~50m程度である。また、地面に置かれる下部網4は、フェンス部分の最下部12が地面11についたところから地面に沿って、20~200cm、好ましくは20~150cm、特に好ましくは、20~100cmの長さで地面11に沿って設置されることが好ましい。地面11に置かれる下部網4は、地形に沿って自然体で置かれるだけである。ただし、付加的に杭で下部網4を適宜に固定してもよい。」 (6)甲第6号証には、次の記載がある。 ア 「【0010】 なお、ネットからなる防獣ネットにおいて、下記特許文献1に開示されているように、設置したときに垂直方向上部とすべき部分を粗い網目に形成し、垂直方向下部とすべき部分を細かい網目に形成して、大小さまざまな動物の侵入を防止できるようにしたものがある。防獣ネットの色についての言及はないが、一般的には緑色や黒色、白色である。しかし、この防獣ネットは、図5に示したように、細かい網目部分101から内部の作物102を見ることができるので、上記の如くイノシシに対しては確実な侵入防止を図れない難点がある。」 イ 「【0018】 同様に、下側に位置する密織り部の下側部分に、外方に向けて延びて地面を這う被覆部を設けると、イノシシにとっては、下方に手前がわに向けて延びる被覆部がはっきりと見えるので、立体感のある障害物とすることができ、さらに警戒心を煽ることができるとともに、20cmの隙間もあれば侵入してくるというイノシシの侵入を防止できる。この被覆部はまた、イノシシの足が触れるとイノシシに絡みつくような感じを与えるので、このことによってもイノシシの侵入防止を図ることができる。」 ウ 「【0027】 上記の密織り部21は、使用時において上下方向の下方になる部分で、地面から立ち上がる立ち上がり面部22と、該立ち上がり面部22の下端から外方に向けて延びて地面を這う被覆部23とを有する。」 (7)甲第7号証には、次の記載がある。 ア 「【0031】本発明の防草シートは、歩行道路、自動車道路、特に高速道路などの道路の中央分離帯、路肩、法面、つまりグリーンベルト地帯に敷設することにより、以後の除草作業や清掃作業の心配をすることなく、しかも、太陽やライトの光の反射が少なく、目に優しく、グリーンベルトが明確に認識、確認できるので、自動車運転者に極めて安全と安心感を与えるものである。」 イ 「【0038】比較例1 実施例1で得た黒色の長繊維不織布シートのまま(従来防草シート)で道路分離帯に施工した結果を表1に示した。」 (8)甲第8号証には、次の記載があり、以下の発明(以下「甲8発明」という。)が記載されていると認められる。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、自動車道路における野生動物の侵入や横断を防止し、交通事故を回避するために使用される侵入防止装置に関し、とくに、小動物が自動車道路の用地境界に設置された立入防止柵の下方から道路へ侵入することを防止する侵入防止装置に関するものである。 ・・・ 【0005】 そこで、例えば特許文献2に示されるように、野生動物の交通事故、野生動物による食害等、野生動物の侵入を阻止するため、金網製の防止柵が提案されている。ここでは、エゾジカ等の大型動物が衝突した場合、網体の破損や動物の負傷を軽減するべく、網面を形成している各列線が複数本の撚線または平行状の束線からなる複線で形成されている。また金網製の防護網と、この防護網に対する防護圏の外側で下部の位置に配置されるスカート部材とからなり、防護網を起立状に配し、この防護網の外側で下部の位置にスカート部材を先端下がりの傾斜状に配置することにより、防護網の近くで動物が跳躍するのを困難にし、跳躍による乗り越えの発生を防ぐことにより、防護網で直接的な侵入を防ぐと同時に、スカート部材で跳躍による防護網の飛び越えを防止する有害動物の侵入防止装置が提案されている(特許文献3及び特許文献4参照。)。」 イ 「【0010】 合成樹脂製網状体は、例えば、ポリエステルモノフィラメント線を用い、網面を形成する各列線が複数本の撚り線とすることにより形成される。本発明における網面は、その網目が、菱形であるもの、亀甲形であるもの、これらに類する形のもの、いずれでも良くて制限されない。 ・・・ 【実施例】 【0014】 図1に示すように、本発明に係る小動物の自動車道路への侵入防止装置の一つの実施形態は、自動車道路との境界に設置される既設の立入り防止柵2の下部から地面にかけて弾性網状体1を取り付けるものである。これは弾性網状体1を略直角に屈曲して立位部1aとスカート部1cとを構成し、立位部1aの任意箇所を結束バンド4等で立入防止柵2の胴縁7に固定し、スカート部1aを倒伏させ弾発付勢して地面8に当接させたものである。そして、立位部1aで、立入り防止柵2と地面8との隙間から小動物が道路へ直接的に侵入するのを防ぐと同時に、スカート部1aで、立入り防止柵2近傍から地中にトンネルを掘削して通り抜けるのを困難にして自動車道路への侵入防止を図る。 【0015】 弾性網状体1としては、下記の特性を有するポリエステルモノフィラメントを素材とし、撚り合わせ部分に溶着または接着を伴うことなく織成してなる多角形の網目を有する合成樹脂製網状体を使用した。網目の形状は、ハニカム(六角形)又は準ハニカム形状である。極限粘度=0.6以上 線径=1.5~4.5mm 強度伸度積=750~3000kg/mm2・% 摩耗耐久性=5000回/mm2以上。尚、本実施例では、STKネット(商品名:粕谷製網株式会社製)を用いた。図2にその平面図を示す。STKネットは、撚り合わせ部分(バネ様構造)1bが1m2当たり200箇所以上あり、極めて弾発性能に優れた網状体である。」 ウ 上記ア、イの記載を踏まえると以下の甲8発明が記載されていると認められる。 甲8発明 「小動物が自動車道路の用地境界に設置された立入り防止柵の下方から道路へ侵入することを防止する侵入防止装置であって、 自動車道路との境界に設置される既設の立入り防止柵2の下部から地面にかけて弾性網状体1を取り付け、弾性網状体1を略直角に屈曲して立位部1aとスカート部1cとを構成し、立位部1aの任意箇所を結束バンド4等で立入り防止柵2の胴縁7に固定し、スカート部1aを倒伏させ弾発付勢して地面8に当接させ、 立位部1aで、立入り防止柵2と地面8との隙間から小動物が道路へ直接的に侵入するのを防ぐと同時に、スカート部1aで、立入り防止柵2近傍から地中にトンネルを掘削して通り抜けるのを困難にして自動車道路への侵入防止を図る、 侵入防止装置」 (9)甲第9号証には、次の記載がある。 ア 「【請求項1】 着色顔料を含有するポリエステルを芯成分、酸化チタンを含有し、芯成分より低融点で融点が130~200℃であり、芯成分とは異色である共重合ポリエステルを鞘成分とする芯鞘型複合繊維であって、切断強度が3.5cN/dtex以上、切断伸度が30%以下であることを特徴とする原着熱接着性長繊維。」 イ 「【0008】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、上記の問題点を解決し、自然環境下で使用する産業資材や家庭用資材に用いる場合において好適な色彩を呈することができ、かつ高強度で寸法安定性に優れる原着熱接着性長繊維を提供することを技術的な課題とするものである。」 ウ 「【0024】 そして、次に、鞘成分には光沢を抑制するために、酸化チタンを含有させて白色にする。これにより、前記したように、溶融熱接着後にフィラメント中の各単糸の芯部が集合し、その芯部の周りを鞘成分が覆うモノフィラメント形状となるため、溶融熱接着前と比べて芯部の色が濃く見えたり、光沢が強く見えるという現象を防ぐことができ、落ち着きのある高品位な色彩を有した成形品を得ることができる。」 エ 「【0035】 実施例1 ・・・ 次いで、油剤を付与して非加熱の第1ローラに引き取り、連続して温度90℃の第2ローラで1.02倍の引き揃えを行い、その後、温度140℃の第3ローラで5.2倍の延伸を行い、温度120℃の第4ローラで3%の弛緩処理を行って、1%のリラックスを掛けて速度3000m/分のワインダーに巻き取り、555dtex/48フィラメントの同心丸断面形状で黒原着色の熱接着性長繊維を得た。」 4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由(第29条第2項)について (1)本件発明1について ア 対比 (ア)甲1発明の「網地部61(仕切ネット)」は、「野生動物等の敷地内への侵入を防止する防獣ネット等に使用してもよい」ので、本件発明1の「小動物防獣ネット」に相当する。 (イ)甲1発明の「網地部61(仕切ネット)」は「第1糸と」「第2糸と、を合糸した複数の混合糸63を網糸として使用し」「網目の形状は」「格子状等であってもよ」いので、甲1発明は、本件発明1の「経糸及び緯糸が格子状に配列されると共に、各辺が2.5~3.5cmである角目を持つラッセル編物で構成されており」と、「経糸及び緯糸が格子状に配列されると共に、角目を持つネット状編織物で構成されて」いる点で共通する。 (ウ)甲1発明の「網地部61(仕切ネット)」は「所定の融点を有するポリエステル製の通常融点繊維素材から構成される芯部およびその芯部の外周面を被覆すると共に通常融点繊維素材よりも低い融点を有するポリエステル製の低融点繊維素材から構成される鞘部を備えた第1糸と、通常融点繊維素材から構成される第2糸と、を合糸した複数の混合糸63を網糸として使用し、第1糸の鞘部を溶融して複数の混合糸63を互いに融着させることで網状に成形されて」いること、及び「混合糸63全体に対する第1糸の含有率を100%、即ち、混合糸63を第1糸のみにより形成してもよ」いことから、甲1発明は、本件発明1の「ラッセル編物の前記経糸及び前記緯糸は、芯成分がポリエチレンテレフタレートである高融点重合体で鞘成分が共重合ポリエステルである低融点重合体よりなる、繊度5~15デシテックスの芯鞘型複合長繊維が多数本集束されてなるマルチフィラメント糸を素材とするものであり、該経糸が鎖編糸及び挿入糸で形成されており、該緯糸が挿入糸のみで形成されており、前記鞘成分の溶融固化によって、前記マルチフィラメント糸を構成する前記芯鞘型複合長繊維相互間が融着して一体化していると共に、経糸及び緯糸の交錯点で融着していること」と、「経糸及び緯糸は、芯成分がポリエステル製の高融点重合体で鞘成分がポリエステル製の低融点重合体よりなる芯鞘型複合長繊維が多数本集束されてなるマルチフィラメント糸を素材とするものであり、前記鞘成分の溶融固化によって、前記マルチフィラメント糸を構成する前記芯鞘型複合長繊維相互間が融着して一体化していると共に、経糸及び緯糸の交錯点で融着している」点で共通する。 (エ)上記(ア)~(ウ)から、本件発明1と甲1発明は、以下の点で一致し、相違点1~3で相違する。 (一致点) 「小動物防獣ネットにおいて、 前記小動物防獣ネットは、経糸及び緯糸が格子状に配列されると共に、角目を持つネット状編織物で構成されており、 前記経糸及び緯糸は、芯成分がポリエステル製の高融点重合体で鞘成分がポリエステル製の低融点重合体よりなる芯鞘型複合長繊維が多数本集束されてなるマルチフィラメント糸を素材とするものであり、前記鞘成分の溶融固化によって、前記マルチフィラメント糸を構成する前記芯鞘型複合長繊維相互間が融着して一体化していると共に、経糸及び緯糸の交錯点で融着している、 小動物防獣ネット。」 (相違点1) 小動物防獣ネットについて、本件発明1が「地盤上に起立して設置された防護柵の下部に沿って垂下させると共に、該地盤に沿って敷設されることにより略L字状に付設される」のに対し、甲1発明は「所定の高さ位置から上方において展張される上方ネット50と、所定の高さ位置から下方において展張される下方ネット60とを備え」る「ネット40」の「下方ネット60の網地を形成する」点。 (相違点2) 本件発明1が「小動物はタヌキ」であるのに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 (相違点3) 小動物防獣ネットについて、本件発明1が「各辺が2.5~3.5cmである角目を持つラッセル編物で構成されており、前記ラッセル編物の前記経糸及び前記緯糸は、芯成分がポリエチレンテレフタレートである高融点重合体で鞘成分が共重合ポリエステルである低融点重合体よりなる、繊度5~15デシテックスの芯鞘型複合長繊維が多数本集束されてなるマルチフィラメント糸を素材とするものであり、該経糸が鎖編糸及び挿入糸で形成されており、該緯糸が挿入糸のみで形成されて」いるのに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。 イ 判断 まず、相違点3について検討する。 相違点3の「該経糸が鎖編糸及び挿入糸で形成されており、該緯糸が挿入糸のみで形成されて」いる点について、甲第2号証~甲第9号証には記載されておらず、ラッセル編物において、このような構成を取ることが周知技術であるという証拠もない。 申立人は、平成31年2月18日付け意見書(以下「意見書」という。)において、「ラッセル網において構成糸をどのようにするかは当業者が適宜選択可能な設計事項である。したがって、経糸を鎖編糸及び挿入糸で形成し、緯糸を挿入糸のみで形成することは、当業者が容易になし得ることである。なお、本件特許権者は、平成30年12月27日付で提出された特許異議意見書において、緯糸を挿入糸のみで形成することにより緯方向の剛性・弾性を調節でき、この構成はラッセル編物の緯糸を垂直にして敷設する場合に有効であると主張している。しかしながら、訂正後の特許請求項1には、ラッセル編物の緯糸を垂直にして敷設することは記載されていない。したがって、訂正後の特許請求項1では、必ずしも上記本件特許権者の主張による効果を得ることができるとは言えない。」(5頁9行~19行)旨主張している。しかしながら、上記したように、「該経糸が鎖編糸及び挿入糸で形成されており、該緯糸が挿入糸のみで形成されて」いることが、周知技術であることを示す証拠はなく、また、設計事項であることを示す証拠もない。 したがって、甲1発明において、相違点3に係る「該経糸が鎖編糸及び挿入糸で形成されており、該緯糸が挿入糸のみで形成されて」いるような構成とすることは、当業者が容易に想到しうる程度のこととはいえない。 ウ 小活 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、甲第2号証~甲第9号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 (2)本件発明6~10について 本件発明6~10は、本件発明1に従属し、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1と同様の理由(上記(1)参照)により、甲1発明において、相違点3に係る本件発明6~10の構成にすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。 5 請求項2~5に対する特許異議の申立てについて 上記第2のとおり、請求項2~5を削除する本件訂正が認められたので、請求項2~5に対する本件特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなった。 したがって、請求項2~5に対する本件特許異議の申立ては、不適法な特許異議の申立てであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきである。 第4 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、証拠によっては、本件請求項1、6~10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1、6~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項2~5に対する本件特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2018-700212

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同じ当事者の審決49件(ユニチカトレーディング株式会社、特許業務法人虎ノ門知的財産事務所)
  • 2020-700787異議申立 / 2021-08-13 / 訂正認容ダブル丸編地
    同じ当事者: ユニチカトレーディング株式会社、特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
  • 2018-701030異議申立 / 2019-03-19 / 維持ナイロン混繊交絡糸、織編物、ナイロン混繊交絡糸の製造方法、及び積層生地
    同じ当事者: ユニチカトレーディング株式会社、特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
  • 2018-700480異議申立 / 2019-02-19 / 訂正認容混繊交絡糸、その製造方法、及び混繊交絡糸を用いた織編物
    同じ当事者: ユニチカトレーディング株式会社、特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
  • 2018-700455異議申立 / 2018-12-17 / 維持混繊交絡糸、その製造方法、及び混繊交絡糸を用いた織編物
    同じ当事者: ユニチカトレーディング株式会社、特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
  • 2024-700686異議申立 / 2024-12-05 / 維持耐塩素堅牢性布帛及びその製造方法
    同じ当事者: ユニチカトレーディング株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)65件(121・A01M、851・A01M、853・A01M)
  • 2021-701050異議申立 / 2022-06-09 / 訂正認容植物の育成方法
    共通の審決分類: 121・A01M、851・A01M、853・A01M
  • 2019-700054異議申立 / 2019-06-26 / 訂正認容薬剤放散器
    共通の審決分類: 121・A01M、851・A01M、853・A01M
  • 2021-700011異議申立 / 2022-01-04 / 訂正認容害虫、ダニ防除方法、及び害虫、ダニ防除用エアゾール
    共通の審決分類: 121・A01M、851・A01M
  • 2024-701113異議申立 / 2026-02-05 / 訂正認容薬剤揮散装置、及び、薬剤揮散方法
    共通の審決分類: 121・A01M
  • 2025-700521異議申立 / 2025-12-22 / 訂正認容匍匐害虫の防除方法および匍匐害虫防除用エアゾール装置
    共通の審決分類: 121・A01M

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