特許異議申立
2018-700177
医療技術機能手段の機能仕様標を照会する方法、医療技術機能手段、医療機器及び制御装置
- 審判番号
- 2018-700177
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-548789
- 登録番号
- 特許第6188576号(P6188576)
- 請求日
- 2018年02月27日
- 審決日
- 2018年12月28日
- 公報発行日
- 2019年04月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】フレゼニウス ムディカル カーレ ドイチェランド ゲーエムベーハー
- 【権利者代理人】蔵田 昌俊
- 【権利者代理人】峰 隆司
- 【権利者代理人】野河 信久
- 【権利者代理人】井上 正
- 【権利者代理人】飯野 茂
- 【権利者代理人】河野 直樹
- 【権利者代理人】鵜飼 健
- 【異議申立人】金山 愼一
- 審判長/審判官
- 審判長 内藤 真徳
- 審判官 高木 彰
- 審判官 瀬戸 康平
- 分類
- P1651.113-YAA(A61B) / P1651.121-YAA(A61B) / P1651.537-YAA(A61B) / P1651.55 -YAA(A61B) / P1651.851-YAA(A61B) / P1651.853-YAA(A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6188576号発明「医療技術機能手段の機能仕様標を照会する方法、医療技術機能手段、医療機器及び制御装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6188576号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-32〕について訂正することを認める。
特許第6188576号の請求項1ないし8、10、12ないし32に係る特許を維持する。
特許第6188576号の請求項9、11に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6188576号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~32に係る特許についての出願は、2012年(平成24年)1月16日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2011年1月18日、独国 2011年1月18日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年1月12日に手続補正がなされ、平成29年8月10日にその特許権の設定登録がされ、平成29年8月30日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、平成30年2月27日に特許異議申立人金山愼一(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、平成30年5月23日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である平成30年8月23日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)、平成30年10月9日に手続補正書(方式)の提出を行い、本件訂正請求に対して、申立人は、平成30年11月21日に意見書(以下、「申立人意見書」という。)を提出した。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項8に「医療技術機能手段(300)の内部、その場所又はその表面」と記載されているのを、「少なくとも1つの体外血液チューブセット、又はトレイ内若しくはオーガナイザ(13)内に配置された少なくとも1つの体外血液チューブセットを有し、又はそのような体外血液チューブセットからなる医療技術機能手段(300)の内部、その場所又はその表面」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項8に「前記血液治療機器(100)と機能的に結合されるように実施され」と記載されているのを、「選択された治療オプションと前記識別された機能とが相互に一致し、且つ/又は適合する場合に、前記血液治療機器(100)と機能的に結合されるように実施され」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項8に「・・・又は実施された、医療技術機能手段(300)。」と記載されているのを、「・・・又は実施され、および 前記機能仕様標(400)が、前記体外血液チューブセットの特定の実施形態を記し又は識別する、医療技術機能手段(300)。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項10に「請求項9に記載の」と記載されているのを、「請求項8に記載の」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項11を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項12に「請求項9~11のいずれか一項に記載の」と記載されているのを、「請求項8または10のいずれか一項に記載の」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項14に「請求項8~13のいずれか一項に記載の」と記載されているのを、「請求項8、10、12、13のいずれか一項に記載の」に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項15に「請求項8~14のいずれか一項に記載の」と記載されているのを、「請求項8、10、12~14のいずれか一項に記載の」に訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項16に「請求項9~15のいずれか一項に記載の」と記載されているのを、「請求項8、10、12~15のいずれか一項に記載の」に訂正する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項17に「請求項8~16のいずれか一項に記載の」と記載されているのを、「請求項8、10、12~16のいずれか一項に記載の」に訂正する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項19に「請求項8~18のいずれか一項に記載の」と記載されているのを、「請求項8、10、12~18のいずれか一項に記載の」に訂正する。
(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項29に「請求項8~20のいずれか一項に記載の」(2箇所)と記載されているのを、「請求項8、10、12~20のいずれか一項に記載の」に訂正する。
(14)訂正事項14
明細書の段落【0050】に「最終的な動作可能な接続を確立することはこの目的には必要ではないが、接続を確立することが排除されるべきでもない。」と記載されているのを、「最終的な動作可能な接続を確立することはこの目的には必要ではない。」に訂正する。
本件訂正請求は、一群の請求項〔1-32〕に対して請求されたものである。また、訂正事項14による明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1-32〕について請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、「医療技術機能手段(300)」について、訂正前の請求項9に記載された事項である「少なくとも1つの体外血液チューブセット、又はトレイ内若しくはオーガナイザ(13)内に配置された少なくとも1つの体外血液チューブセットを有し、又はそのような体外血液チューブセットからなる」との限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、「前記血液治療機器(100)と機能的に結合されるように実施され」について、訂正前の請求項1に記載された事項である「選択された治療オプションと前記識別された機能とが相互に一致し、且つ/又は適合する場合に、」との限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3による訂正は、「前記機能仕様標(400)」について、訂正前の請求項11に記載された事項である「前記体外血液チューブセットの特定の実施形態を記し又は識別する」との限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4による訂正は、請求項9を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項5について
訂正事項1~3の内容を踏まえると、訂正後の請求項8は訂正前の請求項9を減縮したものであるところ、訂正事項5による訂正は、請求項10の引用請求項を請求項9から請求項8に変更するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(6)訂正事項6について
訂正事項6による訂正は、請求項11を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(7)訂正事項7について
訂正事項7による訂正のうち、請求項12の引用請求項を請求項9から請求項8に変更する訂正は、訂正事項5と同様、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
訂正事項7による訂正のうち、請求項12の引用請求項から請求項11を削除する訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(8)訂正事項8について
訂正事項8による訂正は、請求項14の引用請求項から請求項9及び請求項11を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(9)訂正事項9について
訂正事項9による訂正は、請求項15の引用請求項から請求項9及び請求項11を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(10)訂正事項10について
訂正事項10による訂正のうち、請求項16の引用請求項を請求項9から請求項8に変更する訂正は、訂正事項5と同様、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
訂正事項10による訂正のうち、請求項16の引用請求項から請求項11を削除する訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(11)訂正事項11について
訂正事項11による訂正は、請求項17の引用請求項から請求項9及び請求項11を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(12)訂正事項12について
訂正事項12による訂正は、請求項19の引用請求項から請求項9及び請求項11を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(13)訂正事項13について
訂正事項13による訂正は、請求項29の引用請求項から請求項9及び請求項11を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(14)訂正事項14について
訂正前の明細書の段落【0050】に記載された「最終的な動作可能な接続を確立することはこの目的には必要ではないが、接続を確立することが排除されるべきでもない。」は、「最終的な動作可能な接続を確立すること」と「接続を確立すること」とを明確に区別することができず不明瞭な記載であったところ、訂正事項14による訂正は、「接続を確立すること」に関する記載を削除し、当該不明瞭な記載を正すものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-32〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし8、10、12ないし32に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明8」、「本件発明10」、「本件発明12」ないし「本件発明32」という。)は、訂正請求の範囲の請求項1~8、10、12~32に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。なお、請求項9、11は訂正により削除された。
「【請求項1】
医療技術機能手段(300)の内部、その場所又はその表面に配置され、ある特定の治療オプションを実行するために、血液治療を行うための少なくとも1つの医療技術機能又は前記医療技術機能手段(300)の適用又は使用についての適性を記し又は識別する機能仕様標(400)を照会する方法であって、
前記医療技術機能手段(300)が、医療機器(100)又は前記医療機器(100)と信号伝送するように接続された若しくは構成されている機器若しくは手段に接触且つ/又は接続された後に、
前記医療技術機能手段(300)に機能的に結合されるべき血液治療装置としての前記医療機器(100)によって、又は前記医療機器(100)と信号伝送するように接続された、若しくは構成されている機器若しくは手段によって、前記機能仕様標(400)を照会し、且つ/又は検出するステップと、
前記医療機器(100)によって、又は前記医療機器(100)と信号伝送するように接続された、若しくは構成されている機器若しくは手段によって、前記機能仕様標(400)と関連付けられた機能を識別し、且つ/又は分析するステップと、
前記医療機器(100)によって、又は前記医療機器(100)と信号伝送するように接続された、若しくは構成されている機器若しくは手段によって、前記医療機器(100)で選択された前記治療オプションを、前記医療技術機能手段(300)の前記機能仕様標(400)によって識別されている前記機能と比較するステップと、
前記選択された治療オプションと前記識別された機能とが相互に一致し、且つ/又は適合する場合に、前記医療機器(100)によって、又は前記医療機器(100)と信号伝送するように接続された、若しくは構成されている機器若しくは手段によって、前記医療技術機能手段(300)を前記医療機器(100)と機能的に結合するステップと、
前記医療機器(100)によって、又は前記医療機器(100)と信号伝送するように接続された、若しくは構成されている機器若しくは手段によって、企図された治療における前記医療技術機能手段(300)の正しい機能的結合及び/又は適性に関する定義された照会を開始するステップと
を含む方法。
【請求項2】
照会し、且つ/又は検出するステップが前記医療機器(100)の制御装置(1)によって実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記機能仕様標(400)が、特に、バーコード、ドット・マトリックス・コード、RFIDチップ若しくはカラーラベル又はそれらの混合若しくは組み合わせの形の識別マーク若しくはラベルとして設計され、又は実施されており、及び/又は前記の識別マーク若しくはラベルの少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記機能仕様標(400)が、貼付、印刷、塗布、染色、着色、係合、スナップ留め又はクリップ留めなどによって前記医療技術機能手段(300)に、又はその場所に固定され、又は取り付けられるために設けられ、又はそのように意図されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記機能仕様標(400)が、体外血液チューブセット又は前記体外血液チューブセットの定義された、若しくは特定の実施形態若しくは設計若しくは適性を記し、又は識別するために設けられ、又はそのように意図されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記医療機器(100)によって、又は前記医療機器(100)と信号伝送するように接続された、若しくは構成されている機器若しくは手段によって、前記医療機器(100)での治療オプションの選択を受け付けるステップと、
前記医療技術機能手段(300)が前記医療機器(100)又は検出機器(200)と接触されることにより、且つ/又は接続されることにより、前記医療機器(100)によって、又は前記検出機器(200)によって、前記機能仕様標(400)の照会且つ/又は検出を可能にするステップと
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記選択された治療オプションと前記識別された機能とが相互に一致せず、且つ/又は適合しない場合に、前記選択された治療オプションと前記識別された機能とが相互にずれており、且つ/又は異なっている場合に、前記医療機器(100)によって、又は前記医療機器(100)と信号伝送するように接続された、若しくは構成されている機器若しくは手段によって、警告し、且つ/又は報告するステップ
をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの体外血液チューブセット、又はトレイ内若しくはオーガナイザ(13)内に配置された少なくとも1つの体外血液チューブセットを有し、又はそのような体外血液チューブセットからなる医療技術機能手段(300)の内部、その場所又はその表面に配置され、ある特定の治療オプションを実行するために、血液治療を行うための少なくとも1つの医療技術機能又は前記医療技術機能手段(300)の適用又は使用についての適性を記し又は識別する少なくとも1つの機能仕様標(400)を備え、
前記機能仕様標(400)が、前記医療技術機能手段(300)に機能的に結合されるべき血液治療機器(100)によって、又は前記血液治療機器(100)と信号伝送するように接続され、若しくは配置された機器若しくは手段によって照会されるように構成され、
前記血液治療機器(100)によって実施される治療且つ/又は治療オプションの過程において、又は前記血液治療機器(100)によって実施される治療且つ/又は治療オプションと関連付けられて、少なくとも1つの特定の又は定義された機能を実行するために、前記医療技術機能手段(300)が、前記血液治療機器(100)又は前記血液治療機器(100)と信号伝送するように接続された若しくは構成されている機器若しくは手段に接触且つ/又は接続された後に、選択された治療オプションと前記識別された機能とが相互に一致し、且つ/又は適合する場合に、前記血液治療機器(100)と機能的に結合されるように実施され、
前記医療技術機能手段(300)が、体外血液治療で使用されるように設計され、又は実施され、および
前記機能仕様標(400)が、前記体外血液チューブセットの特定の実施形態を記し又は識別する、医療技術機能手段(300)。
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
前記医療技術機能手段(300)が、カセットとして、特に、使い捨てカセットとして、実施される、請求項8に記載の医療技術機能手段(300)。
【請求項11】
(削除)
【請求項12】
前記医療技術機能手段(300)が、特定の抗凝血法のために構成され、
前記機能仕様標(400)が、特定の抗凝血法のための前記体外血液チューブセットの特定のチューブセットの要素を記し又は識別し、特に、治療の間に抗凝血剤が血液に添加され得るように、特定の部位で体外血液回路へ開いている、前記体外血液チューブセットでの特定の分岐ラインを記し又は識別する、請求項8または10のいずれか一項に記載の医療技術機能手段(300)。
【請求項13】
前記抗凝血法が、ヘパリン抗凝血法、且つ/又はクエン酸/カルシウム抗凝血(「CiCa」)法である、請求項12に記載の医療技術機能手段(300)。
【請求項14】
前記機能仕様標(400)が、特に、バーコード、ドット・マトリックス・コード、RFIDチップ若しくはカラーラベル又はそれらの混合若しくは組み合わせの形の識別マーク若しくはラベルとして設計され、又は実施されており、及び/又は前記の識別マーク若しくはラベルの少なくとも1つを含む、請求項8、10、12、13のいずれか一項に記載の医療技術機能手段(300)。
【請求項15】
前記医療技術機能手段(300)が、前記血液治療機器(100)に機能的に結合されるように構成される1つの結合面を有し、
前記機能仕様標(400)が、前記医療技術機能手段(300)の前記結合面側に配置される、請求項8、10、12~14のいずれか一項に記載の医療技術機能手段(300)。
【請求項16】
前記機能仕様標(400)が、トレイ又はオーガナイザの表面に配置され、特に、使用時に前記血液治療機器(100)の正面に配置されるトレイ又はオーガナイザの側面に配置される、請求項8、10、12~15のいずれか一項に記載の医療技術機能手段(300)。
【請求項17】
少なくとも1つのクエン酸添加部位及び/又は少なくとも1つのカルシウム添加部位をさらに備える、請求項8、10、12~16のいずれか一項に記載の医療技術機能手段(300)。
【請求項18】
前記機能仕様標(400)が、カラーマーク又はカラーラベルであり、特に、前記医療技術機能手段(300)が少なくとも1つのクエン酸添加抗凝血法、且つ/又は少なくとも1つのカルシウム添加抗凝血法のために構成されることを識別し又は記す黄色いマーク又は黄色いラベルである、請求項17に記載の医療技術機能手段(300)。
【請求項19】
少なくとも1つのヘパリン添加部位をさらに備える、請求項8、10、12~18のいずれか一項に記載の医療技術機能手段(300)。
【請求項20】
前記機能仕様標(400)が、カラーマーク又はカラーラベルであり、特に、前記医療技術機能手段(300)が少なくとも1つの又はただ1つのヘパリン添加抗凝血法のために構成されることを識別し又は記す青いマーク又は青いラベルである、請求項19に記載の医療技術機能手段(300)。
【請求項21】
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法を実行するのに適し、そのために設けられ、若しくはそのように意図され、且つ/又はそのように設計され、若しくは実施され、且つ/又はそのように構成された、制御装置(1)。
【請求項22】
少なくとも1つの検出機器(200)及び/若しくは識別手段及び/若しくは比較手段及び/若しくは照会機器及び/若しくは警告手段及び/若しくは報告手段を備え、又は少なくとも1つのそのような手段に機能的に結合されており、且つ/又は少なくとも1つのそのような手段と信号伝送するように構成されている、請求項21に記載の制御装置(1)。
【請求項23】
請求項21又は22に記載の制御装置(1)及び少なくとも1つの検出機器(200)を備え、且つ/又は前記検出機器(200)と信号伝送するように構成されており、若しくは前記検出機器(200)と信号伝送するように接続されており、
前記検出機器(200)が、医療技術機能手段(300)の内部、その場所又はその表面に配置され、ある特定の治療オプションを実行するために、血液治療を行うための少なくとも1つの医療技術機能又は前記医療技術機能手段(300)の適用又は使用についての適性を記し又は識別する少なくとも1つの機能仕様標(400)を検出するように構成され、
前記制御装置(1)が、選択された治療オプションと前記識別された機能とが相互に一致し、且つ/又は適合する場合に、前記医療技術機能手段(300)を前記血液治療機器(100)と機能的に結合するように構成され、
前記血液治療機器(100)は、前記検出機器(200)によって検出されている前記機能仕様標(400)によって前記医療技術機能手段(300)と関連付けられた、且つ/又は前記医療技術機能手段(300)に割り当てられた機能を識別し、又は分析するのに適し、そのために設けられ、若しくはそのように意図され、且つ/又はそのように構成されている少なくとも1つの識別手段をさらに備え、
前記血液治療機器(100)は、前記血液治療機器(100)で選択された治療オプションを、前記機能仕様標(400)によって識別されている前記医療技術機能手段(300)の前記機能と比較するのに適し、そのために設けられ、若しくはそのように意図され、且つ/又はそのように構成されている少なくとも1つの比較手段をさらに備える、血液治療機器(100)。
【請求項24】
前記検出機器(200)は、カラー識別センサである、請求項23に記載の血液治療機器(100)。
【請求項25】
企図される血液治療における、且つ/又は照会の前に、照会と一緒に、若しくは照会の後で選択される治療オプションに関連した前記医療技術機能手段(300)の正しい機能
的結合及び/又は適性に関した定義された照会及び/又は所定の照会を実行し、又はその実行を促すのに適し、そのために設けられ、若しくはそのように意図され、且つ/又はそのように構成されている少なくとも1つの照会機器をさらに備える、請求項23又は24に記載の血液治療機器(100)。
【請求項26】
アフェレシス又は透析用の、さらには特に、血液透析、血液濾過、血液透析濾過用の、緊急透析用の装置として設計され、又は実施された、請求項23~25のいずれか一項に記載の血液治療機器(100)。
【請求項27】
前記機能仕様標(400)若しくは前記医療技術機能手段(300)の機能若しくは前記医療技術機能手段(300)自体と、前記血液治療機器(100)若しくは前記選択された治療オプションとの非適合の場合に警告し、又は報告するために設けられ、又はそのように意図された少なくとも1つの警報若しくは警告のための警告手段及び/又は報告若しくは表示手段をさらに備える、請求項23~26のいずれか一項に記載の血液治療機器(100)。
【請求項28】
前記機能仕様標(400)が、前記血液治療機器(100)のデータベース若しくは記憶媒体に記憶され、又は前記血液治療機器(100)とデータ送信するように構成された機器若しくは手段に記憶され、前記機能仕様標(400)によって指定される1つの若しくは複数の前記医療技術機能手段(300)の対応する機能と一緒に記憶される、請求項23~27のいずれか一項に記載の血液治療機器(100)。
【請求項29】
請求項8、10、12~20のいずれか一項に記載の医療技術機能手段(300)を備える、又は請求項8、10、12~20のいずれか一項に記載の医療技術機能手段(300)に機能的に結合されるように構成される、請求項23~28のいずれか一項に記載の血液治療機器(100)。
【請求項30】
電子的に可読の制御信号を含み、請求項1~7のいずれか一項に記載の本発明による方法の技術ステップの実行を促すようにプログラム可能なコンピュータ・システムと対話するように構成されている、ディスク、CD又はDVD又はEPROM形式の、ディジタル記憶媒体。
【請求項31】
コンピュータ上のコンピュータプログラム製品を実行するときに請求項1~7のいずれか一項に記載の本発明による方法の技術ステップの実行を促す機械可読記憶媒体に記憶されたプログラムコードを含むコンピュータプログラム製品。
【請求項32】
コンピュータ上のコンピュータプログラムを実行するときに請求項1~7のいずれか一項に記載の本発明による方法の技術ステップの実行を促すプログラムコードを含むコンピュータプログラム。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正請求による訂正前の請求項1~32に係る特許に対して、当審が平成30年5月23日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由1
請求項1~32に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)取消理由2
請求項8~14、16~17、19に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項8~14、16~17、19に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(3)取消理由3
請求項1~7、21~32に係る発明は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて、請求項8~14、16~20に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、また、請求項15に係る発明は、甲第1号証及び甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項1~32に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
2 甲号証の記載
(1)甲第1号証(国際公開第2009/081241号)
甲第1号証には、図面とともに次の記載がある(翻訳文は、特許異議申立書に添付されたものを参考に当審で作成したものである。また、下線は、当審で付したものである。以下同様。)。
ア 「 During the treatment session of the machine according to the invention, which proposes a selection of several treatments, the user of the machine chooses the treatment protocol which is most suitable among the protocols referred to above: HD, HDF, UF, HF, TPE... It should be pointed out that, depending on the protocol that has been chosen, different disposable articles are required in different receiving stations.」(第4ページ第1-6行)
(翻訳文)
「 いくつかの治療の選択を提案する本発明による機械での治療セッションの間、機械のユーザは、前述の:すなわち、HD、HDF、UF、HF、TPE...の中から最も好ましい治療プロトコルを選択する。選択された治療プロトコルに応じて、異なる受け入れステーションに異なる使い捨て物品が要求されることが指摘される。」
イ 「 The invention relates to a medical device 1 for providing a plurality of extracorporeal blood or plasma treatments. Blood treatment can be a treatment in a filtration unit having a primary compartment and a secondary compartment, which are separated by a semipermeable membrane, the primary compartment being able to be connected to a primary extracorporeal blood circuit, the secondary chamber being able to be connected to a secondary circuit, the primary circuit and the secondary circuit defining the extracorporeal circuit. For hemoperfusion, as shown in Figure 13, the filter is replaced by a one- compartment adsorption cartridge. The device is apt to receive at least one disposable article that can be connected to the extracorporeal circuit.
Each disposable article is equipped with storage means containing information about the disposable article.
The device comprises:
- a first receiving station (2) for disposable articles (100), which is able to collect a first disposable article,
- a first reading means (3) associated to the first station (2) for identifying a disposable article (100) that may have been received at the first station (2),
- at least a second station (2') for receiving disposable articles (100), which is able to collect a second similar disposable article (100'),
- at least a second reading means (3') associated to the second station (2') for identifying a disposable article (100') that may have been received at the second station,
- a storage means (11) for storing:
○ information concerning at least one treatment protocol designed to be executed by the device,
○ information concerning a configuration of the disposable articles necessary for each treatment protocol at each receiving station,
- a control unit (10) connected to the storage means (11), comprising:
○ means for receiving information concerning the treatment protocols to be executed,
○ means for receiving information read by at least one of the reading means, and
○ means for checking, as a function of this information, whether the configuration of the disposable article or articles received complies with the stored configuration for the treatment to be executed.」(第9ページ第25行-第11ページ第6行)
(翻訳文)
「 本発明は、複数の体外血液又は血漿治療を提供するための医療装置(1)に関する。血液治療は、一次回路と二次回路とで体外回路を画定するものであって、第1の体外血液回路に接続可能な第1の区画と、二次回路に接続可能な第2の区画とを半透膜によって分離する濾過ユニットにおける処理であってもよい。血液灌流の場合、図13に示すように、フィルタは1区画の吸着カートリッジに置き換えることができる。医療装置は、体外回路に接続することができる少なくとも1つの使い捨て物品を受け入れるのに適している。
各使い捨て物品は、使い捨て物品に関する情報を含む記録手段を備える。
この医療装置は、以下のものを備える:
- 第1の使い捨て物品を収集可能は、使い捨て物品(100)のための第1の受け入れステーション(2)、
- 第1ステーション(2)で受け入れられる使い捨て物品(100)を識別するために、第1のステーション(2)に関連付けられた第1の読取手段(3)、
- 同様の第2の使い捨て物品(100’)を収集可能な、使い捨て物品(100)を受け取るための少なくとも1つの第2のステーション(2’)、
- 第2のステーションで受け入れられる使い捨て物品(100’)を識別するために、第2のステーションに関連付けられた、少なくとも1つの第2の読取手段(3’)、
- 以下の情報を記憶する記憶手段(11)、
・医療装置によって実行されるように設計された少なくとも1つの治療プロトコルに関する情報、
・各受け入れステーションにおける各治療プロトコルに必要な使い捨て物品の設定に関する情報、
- 記憶手段(11)に接続され、以下の手段を有する制御ユニット(10)、
・実行される治療プロトコルに関する情報を受信する手段、
・読取手段の少なくとも1つによって読み取られた情報を受信する手段、
・受信した使い捨て物品の設定が、実行されるべき治療のための格納された設定に一致しているか否かを、情報に応じてチェックする手段。」
ウ 「 For the device according to the invention, the configuration of the disposable articles necessary for each protocol comprises at least one of the following elements for each treatment protocol: the number of necessary articles, the type of each necessary article, the function of each necessary article (e.g. a drug, a medical fluid...), the position of each necessary article in each receiving station.」(第11ページ第24行-第12ページ第2行)
(翻訳文)
「 本発明による装置の場合、各治療プロトコルに必要な使い捨て物品の設定は、各治療プロトコルについて、必要な物品の数量、必要な各物品の種類、必要な各物品の機能(例えば、薬品、医療用液体など)、各受け入れステーション内の必要な各物品の位置などを含む。」
エ 「 The device according to the invention can be designed to receive disposable articles (100, 100', 100'', 100''') belonging to one of the following categories:
- container comprising a medical liquid such as a bag or a syringe,
- empty container designed to receive used liquid,
- dialyzer,
- set containing at least one filter with various accesses (inlets and outlets) and lines connected to the accesses of the filter so as to form at least partially the extracorporeal circuit: this type of so-called set is an article pre-connected to lines, which is installed directly into the machine and enables to spare the time required for connecting lines to the filter,
- blood or plasma filter, absorption cartridge,
- ultrafilter, plasma filter.」
(翻訳文)
「 本発明による装置は、以下のカテゴリの1つに属する使い捨て物品(100,100’,100’’,100’’’)を受け取るように設計してもよい:
-バッグ又はシリンジなどの医療用液体を含む容器、
-使用済液体を受け取るように設計された空の容器、
-透析装置、
-少なくとも部分的に体外回路を形成するように、様々なアクセス(入口及び出口)を有する少なくとも1つのフィルタ及びフィルタのアクセスに接続されたラインを含むセット:いわゆる、このセットは、ラインに予め接続された物品であり、機械に直接取り付けられ、ラインをフィルタに接続するために必要な時間を削減することができるもの、
-血液又は血漿フィルタ、吸収カートリッジ、
-限外濾過装置、血漿フィルタ。」
オ 「 The medical device according to the invention, when using articles, comprises at least one disposable medical article (100) installed in at least one receiving station (2). Figure 7 shows the device during use, in which four disposable articles (bags) are installed and in which a set is installed, and whose lines are connected to the various bags. These connections and the hydraulic circuits are schematically represented in Figures 8 to 13.」(第24ページ第3-8行)
(翻訳文)
「 本発明による医療装置は、物品を使用するとき、少なくとも1つの受け入れステーション(2)に設置された少なくとも1つの使い捨て医療物品(100)を包含する。図7は、4つの使い捨て物品(バッグ)が設置され、セットが設置され、そして、そのラインが様々なバッグに接続された、使用中の医療装置を示す。これらの接続部及び液体回路は、図8~13に概略的に示されている。」
カ 「 The storage means (101) for disposable articles can be fastened in a fixed manner to or into the disposable article (100).」(第24ページ第17-18行)
(翻訳文)
「 使い捨て物品のための記録手段(101)は、使い捨て物品(100)に又は内部に、ある固定方法で固定することができる。」
キ 「 The invention further relates to a method for installing disposable articles device according to the invention, comprising the following steps:
- selecting an extracorporeal treatment among the plurality of possible stored treatments,
- installing the medical article or articles (100...) in the receiving station or stations (2...),
- reading the storage means (101...) for each disposable article installed in the receiving station or stations (2...) by way of each reading means (3...) associated thereto,
- comparing the configuration of the articles installed in the receiving stations with the required stored configuration of disposable articles for the selected treatment,
- if the configuration of the installed articles is not identical to the required stored configuration, sending an alarm or warning signal,
- as a function of the sending of an alarm or warning message, add, remove or change at least one disposable medical article.」(第29ページ第1-16行)
(翻訳文)
「 本発明は、さらに、本発明の装置に使い捨て物品を設置する方法に関するものであって、以下のステップを含む:
-格納され利用可能な複数の治療の中から体外治療を選択するステップ、
-1又は複数の受け入れステーション(2...)に、1又は複数の医療物品(100...)を設置するステップ、
-1又は複数の受け入れステーション(2...)に取り付けられた使い捨て物品のそれぞれの記録手段(101...)を、受け入れステーションに関連付けられた各読取手段(3...)によって読み取るステップ、
-受け入れステーションに設置された物品の設定と、選択された治療のために記憶された使い捨て物品の必要な設定とを比較するステップ、
-設置された物品の設定が記憶された必要な設定と同一でない場合、警報又は注意信号を送信するステップ、
-警報又は注意メッセージの送信に応じて、少なくとも1つの使い捨て医療物品を追加、除去、又は変更するステップ。」
また、次のことが認められる。
ク 上記オ及び図7の記載から、フィルタ及びフィルタのアクセスに接続されたラインを含むセットは、その機能を実行するために、ラインが医療装置のポンプに係合するように設置される、すなわち、医療装置に機能的に結合されるといえる。また、該セットは、医療装置に機能的に結合される前に医療装置に接近させられる、すなわち、医療装置に接触且つ/又は接続された後に医療装置と機能的に結合されることは明らかである。
ケ 上記イの記載から、医療装置は、体外血液治療を提供するものであるから、血液治療装置であるといえる。
コ 上記イの記載から、使い捨て物品は、体外血液治療を提供するための医療装置の体外回路に接続することができるのであるから、体外血液治療で使用されるように設計され、又は実施されていることは明らかである。
上記ア~コから、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1a発明」及び「甲1b発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲1a発明]
「 少なくとも部分的に体外回路を形成するように、様々なアクセス(入口及び出口)を有する少なくとも1つのフィルタ及びフィルタのアクセスに接続されたラインを含むセットからなる使い捨て物品に又は内部に固定され、選択された治療プロトコルに必要な使い捨て物品の機能を記録した記録手段を備え、
前記記録手段が、前記使い捨て物品に機能的に結合されるべき血液治療装置によって読み取られるように構成され、
前記血液治療装置によって実施される治療プロトコルに必要な機能を実行するために、前記使い捨て物品が、前記血液治療装置に接触且つ/又は接続された後に、前記血液治療装置と機能的に結合されるように実施され、
前記使い捨て物品が、体外血液治療で使用されるように設計され、又は実施され、および
前記記録手段が、前記セットの治療プロトコルに必要な使い捨て物品の機能を記憶する、使い捨て物品。」
[甲1b発明]
「 使い捨て物品に又は内部に固定され、選択された治療プロトコルに必要な使い捨て物品の機能を記録した記録手段を読み取る方法であって、
前記使い捨て物品が、医療装置に接触且つ/又は接続された後に、
前記使い捨て物品に機能的に結合されるべき血液治療装置としての前記医療装置によって、前記記録手段を読み取るステップと、
前記医療装置によって、前記記録手段と関連付けられた機能を識別するステップと、
前記医療装置によって、前記医療装置で選択された治療プロトコルのために記憶された使い捨て物品の機能を、前記使い捨て物品の前記記録手段によって識別されている前記機能と比較するステップと、
前記医療装置によって、前記使い捨て物品を前記医療装置と機能的に結合するステップと
を含む方法。」
(2)甲第2号証(特表2010-532235号公報)
甲第2号証には、図面とともに次の記載がある。
ア 「【0020】
本開示は、隔膜ポンプまたは蠕動ポンプ等のポンプを採用する、医療流体送達システムに関する。特に、本開示は、血液透析、血液濾過、血液透析濾過、任意の種類の持続的腎代償療法(「CRRT」)、うっ血性心不全治療、CAPD、APD(潮流モダリティを含む)、およびCFPDを含むが、それらに限定されない、カセットを基材とする透析療法のためのシステム、方法、および装置を提供する。・・・、自動接続デバイスは、以下のように機能する。
【0021】
カセットを透析機械装置内に装填後、ユーザは、デバイスの上部にチュービングを静置し、特殊フィンガの上部のチュービングからのキャップをデバイスの上部に載設することによって、1つ以上の透析バッグからのチュービングを取り付ける。次いで、自動接続機械装置を作動させる。一連のペンチまたはオクルダーは、チュービングを把持し、次いで、シャトルが、シャトルとともにチュービングを前方に移動させる。・・・
【0022】
・・・シャトルは、前方に平行移動し、コネクタを押動させる一方、チュービングは、オクルダーによって定位置に保持され、カセットポート内に含有される穿刺針内にチュービングを延出させる。穿刺針は、好ましくは、滅菌環境および滅菌接続を維持しやすくするために、ポートの外縁から若干陥凹される。針が透析チュービングの膜シールを穿刺すると、接続が行なわれ、固定されたままとなるであろう。・・・」
イ 「【0026】
自動接続デバイス20は、好ましくは、デバイスを保護するための筐体18内に封入される。また、筐体は、好ましくは、送風機19bと、HEPAまたは他のフィルタ19cとに接続されるダクト19aを含む。フィルタは、使用時、筐体を若干陽圧下に保ち、したがって、埃、菌等がデバイスの大気中に進入するのを防止可能な送風機に、清浄な空気を提供する。自動接続デバイスの本実施形態は、以下のように機能する。ユーザは、透析流体の1つ以上の容器と、自動接続デバイスを介して接続するための特殊キャップを含む容器のためのチュービングを備え付ける。チュービングは、容器に接続し、次いで、チュービングは、使い捨てカセットを介して、透析機械装置に接続される。特殊キャップは、回転フィンガの近位側内に配置され、チュービングは、自動接続デバイス上のチャネル内に敷設される。次いで、自動接続デバイスは、透析流体の1つ以上の容器を透析機械装置に接続するためのその自動シーケンスを開始する。」
ウ 「【0033】
・・・後述の実施形態では、RFID筐体は、シャトル上への設置の容易性のために、チュービング上に配置するように構成される。他の実施形態では、RFID筐体は、流体のバッグまたは容器上に配置または接着されてもよく、単一RFIDリーダ内蔵フレームまたはシャトルによって読み取られる。次いで、自動接続システムは、ユーザに、チュービングをシャトル上の特定のチャネルに接続するよう指示する。したがって、コントローラは、各コネクタの場所および各容器の利用方法を識別する。」
エ 「【0041】
・・・RFIDタグは、そのタグがシャトル内に配置される各バッグまたは容器の確実な識別を可能にする。本技術によって、自動接続コントローラ、あるいは透析または他のシステムのためのコントローラは、行なわれた配置が正しいまたは誤っているかを判断し、誤った配置が行なわれると、オペレータまたは他の人物に通知または警告するであろう。」
オ 「【0071】
図24-25は、異なる実施形態における、自動接続デバイスの自動識別特徴の操作方法を示す工程図である。図24に描写される一実施形態では、シャトル上の各チャネルまたは位置内にRFIDリーダが存在する。また、透析液流体等の各流体の容器からのチュービング上にRFIDタグが存在する。ユーザは、一意の識別子を伴うRFIDタグを患者に投与される流体を含有する流体容器からのチュービング上に配置160する。次いで、チュービングおよびRFIDタグが、シャトル上の別個のチャネルまたは位置内に配置161される。次いで、各位置におけるリーダは、1つ以上の容器からのチュービング上のRFIDタグを読み取る162。容器に対応するRFIDタグが適切な場所にあると、コンピュータが認識する場合、操作は継続163する。1つ以上の容器が適切な位置にない場合、続行する前に、ユーザに警告またはアラームが発せられる164。」
また、次のことが認められる。
カ 上記アの記載によれば、シャトルが前方に平行移動し、カセットポート内に含有される穿刺針内にチュービングを延出させると、針が透析チュービングの膜シールを穿刺して接続が行なわれるのであるから、チュービングは自動接続デバイスのシャトルによってカセットに機能的に結合されるといえる。
上記ア~カから、甲第2号証には次の事項(以下、「甲2事項」という。)が記載されていると認められる。
[甲2事項]
「透析流体の容器からのチュービングが自動接続デバイスのシャトル上のチャネルのうち正しいチャネルに配置されていると判断した場合に、自動接続デバイスによって、前記透析流体の容器からのチュービングを血液治療装置内に装填されたカセットと機能的に結合すること。」
(3)甲第3号証(特開2008-104682号公報)
甲第3号証には、図面とともに次の記載がある。
「【0002】
一般に、血液透析治療などの血液浄化治療は、複数台の血液浄化装置が設置された病院の治療室にて行われ、複数の患者(例えば10~50人)がほぼ同時に順次治療することとなる。然るに、治療時間においては複数の患者がほぼ同時に血液浄化治療を開始するため、その準備段階では、一人の医療従事者が複数人の患者のための準備を行わなければならず、誤設定の可能性があることから、器材の接続作業や患者に応じた薬剤や器材(ダイアライザ等)の設定や準備に誤りがないよう、複数の医療従事者によって設定確認が複数回行われていた。」
上記記載から、甲第3号証には次の事項(以下、「甲3事項」という。)が記載されていると認められる。
[甲3事項]
「血液浄化装置における器材の接続作業に誤りがないよう確認を行うこと。」
(4)甲第4号証(特開平11-319075号公報)
甲第4号証には、図面とともに次の記載がある。
「【0016】
【発明の実施の形態】図1はコネクター10を、図1の右の側面図の直線A-Aにおける断面図(左)で示す。コネクター10は連結チューブ30の端に配置され、連結チューブ30はその他方の端(図示せず)が、所要の溶液成分を収容した溶液バッグに連結される。コネクター10は識別手段20としてバーコード22を有し、バーコード22のバーはコネクター10の周りに円周方向に延びている。このことは、コネクターを連結器に取付ける際に、コネクター10がよじられているかどうかに関わらず、検出装置によるバーコードの検出が依然として可能であることを保証する。
【0017】バーコード22は、例えばこれと関連した、溶液バッグの中に入れられている溶液の種類及び量に関する情報を含む。本発明によれば、識別手段20のタイプが検出され、或いはバーコード22が読み取られるので、適当な溶液を選択した後、透析機械を操作する者は、コネクターを透析機械の任意の連結器に取付けることができる。この溶液バッグを識別するこの方法は、誤って準備された透析液の供給につながることがある溶液を取り違える可能性を排除する。図1によるコネクター10のバーコード22の配置は又、コネクター10が装置の連結器に適確に、かつ完全に取付けられているかどうかを検出することを可能にする。これがそうでない場合には、検出装置は、ずれのために、コネクター10が適確に連結されたときに検出されるバーパターンに完全に対応しないバーパターンを検出する。これは、操作中に起る誤った連結又は如何なるはずれの、安全で信頼性のある検出を可能にする。」
上記記載から、甲第4号証には次の事項(以下、「甲4a事項」及び「甲4b事項」という。)が記載されていると認められる。
[甲4a事項]
「透析機械における連結器にコネクターが適確にかつ完全に取付けられているかどうかを検出装置によって検出すること。」
[甲4b事項]
「識別手段を、透析機械の連結器に取付けられるコネクターに設けること。」
(5)甲第5号証(国際公開第2008/152810号)
甲第5号証には、図面とともに次の記載がある。
「[0024] コントローラ50は、さらに、血液側接続確認モード設定手段80、血液側接続確認手段81、導入側接続確認モード設定手段82および導入側接続確認手段83を有している。この緩徐式血液ろ過透析装置における回路の接続不良の確認が行われるとき、血液側接続確認モード設定手段80は、返血液バルブ19の開閉を制御すると共に、第1ポンプ4およびエアポンプ70の回転を制御して、前記血液回路8~10、エアライン30,31および第1血液処理器1内において陰圧を発生させる手段である。一方、血液側接続確認手段81は、第1圧力センサ41からの信号を受けて前記陰圧が所定時間内に第1の所定圧力値に達した時点で前記血液回路と第1血液処理器1とが接続されていることを確認する手段であり、例えば、アラームや表示ランプ等から構成される。後述する図2~図7に示すステップS1~S6において、回路の接続不良が確認された場合、アラームの鳴動や表示ランプの点灯により、接続不良を操作者に知らせる。
[0025] また、導入側接続確認モード設定手段82は、血液合流バルブ21および洗浄液排出バルブ22の開閉を制御すると共に、第2ポンプ6および第3ポンプ5の回転を制御して、補液導入回路12、透析液導入回路11および第1血液処理器1内において陽圧を発生させる手段である。一方、導入側接続確認手段83は、第1圧力センサ41からの信号を受けて前記陽圧が所定時間内に第2の所定圧力値に達した時点で透析液導入回路11と第1血液処理器1とが接続されていることを確認する手段であり、例えば、アラームや表示ランプ等から構成される。血液側接続確認手段81と同様に、後述する図2~図7に示すステップS1~S6において、回路の接続不良が確認された場合、アラームの鳴動や表示ランプの点灯により、接続不良を操作者に知らせる。」
上記記載から、甲第5号証には次の事項(以下、「甲5事項」という。)が記載されていると認められる。
[甲5事項]
「緩徐式血液ろ過透析装置における回路の接続不良をコントローラによって確認すること。」
3 当審の判断
(1)取消理由1(特許法第36条第6項第2号)について
請求項1及び8に記載された「機能的に結合」について、明細書の段落【0026】には、「「機能的に結合すること」又は「機能的に結合された」という用語は、・・・要素間の動作可能な接続の生成又は確立をいう。」との記載がある。
また、請求項1及び8に記載された「接触且つ/又は接続」について、訂正事項14による訂正前の明細書の段落【0050】には、「「接触させること」及び/又は「接続すること」とは、機能手段と治療装置とを相互に空間的に配置し、又は近づけることをいう。・・・「(機能的に)」結合することという用語とは対照的に、機能手段と治療装置とを接触させること、又は接続することは、ここでは、例えば、2つの要素を寄せ集めるという形で、或いは2つの要素を機械的に接続するという形で単に近づけることとして理解されるべきである。最終的な動作可能な接続を確立することはこの目的には必要ではないが、接続を確立することが排除されるべきでもない。」との記載があり、「接触且つ/又は接続」には、「最終的な動作可能な接続を確立すること」は含まれないが、「接続を確立すること」は含まれると解されたところ、「最終的な動作可能な接続を確立すること」と「接続を確立すること」とを明確に区別することができず、結果として、「機能的に結合」と「接触且つ/又は接続」との区別も明確でなかった。
しかしながら、訂正事項14による訂正により、明細書の段落【0050】から「接続を確立することが排除されるべきでもない。」との記載が削除されたことで、「接触且つ/又は接続」は、「最終的な動作可能な接続を確立すること」を含まないことが明確になり、「機能的に結合」との区別も明確になった。
よって、本件発明1、8は明確である。
また、本件発明1を引用して記載されている本件発明2~7、21~32、及び本件発明8を引用して記載されている本件発明10、12~20、29も、同様の理由により明確である。
(2)取消理由2(特許法第29条第1項第3号)について
ア 本件発明8について
本件発明8と甲1a発明とを対比する。
(ア)甲1a発明の「少なくとも部分的に体外回路を形成するように、様々なアクセス(入口及び出口)を有する少なくとも1つのフィルタ及びフィルタのアクセスに接続されたラインを含むセットからなる使い捨て物品」は、本件発明8の「少なくとも1つの体外血液チューブセット、又はトレイ内若しくはオーガナイザ(13)内に配置された少なくとも1つの体外血液チューブセットを有し、又はそのような体外血液チューブセットからなる医療技術機能手段(300)」に相当する。
(イ)甲1a発明の「に又は内部に固定され」は、本件発明8の「の内部、その場所又はその表面に配置され」に相当する。
(ウ)甲1a発明の「選択された治療プロトコルに必要な使い捨て物品の機能を記録した記録手段」は、本件発明8の「ある特定の治療オプションを実行するために、血液治療を行うための少なくとも1つの医療技術機能又は前記医療技術機能手段(300)の適用又は使用についての適性を記し又は識別する少なくとも1つの機能仕様標(400)」に相当する。
(エ)甲1a発明の「血液治療装置」は、本件発明8の「血液治療機器(100)」に相当する。
(オ)甲1a発明の「血液治療装置によって読み取られる」は、本件発明8の「血液治療機器(100)によって、又は前記血液治療機器(100)と信号伝送するように接続され、若しくは配置された機器若しくは手段によって照会される」に相当する。
(カ)甲1a発明の「前記血液治療装置によって実施される治療プロトコルに必要な機能を実行するために」は、本件発明8の「前記血液治療機器(100)によって実施される治療且つ/又は治療オプションの過程において、又は前記血液治療機器(100)によって実施される治療且つ/又は治療オプションと関連付けられて、少なくとも1つの特定の又は定義された機能を実行するために」に相当する。
(キ)甲1a発明の「前記セットの治療プロトコルに必要な使い捨て物品の機能を記憶する」は、本件発明8の「前記体外血液チューブセットの特定の実施形態を記し又は識別する」に相当する。
上記(ア)~(キ)より、本件発明8と甲1a発明とは次の点で一致する。
(一致点)
「 少なくとも1つの体外血液チューブセット、又はトレイ内若しくはオーガナイザ(13)内に配置された少なくとも1つの体外血液チューブセットを有し、又はそのような体外血液チューブセットからなる医療技術機能手段(300)の内部、その場所又はその表面に配置され、ある特定の治療オプションを実行するために、血液治療を行うための少なくとも1つの医療技術機能又は前記医療技術機能手段(300)の適用又は使用についての適性を記し又は識別する少なくとも1つの機能仕様標(400)を備え、
前記機能仕様標(400)が、前記医療技術機能手段(300)に機能的に結合されるべき血液治療機器(100)によって、又は前記血液治療機器(100)と信号伝送するように接続され、若しくは配置された機器若しくは手段によって照会されるように構成され、
前記血液治療機器(100)によって実施される治療且つ/又は治療オプションの過程において、又は前記血液治療機器(100)によって実施される治療且つ/又は治療オプションと関連付けられて、少なくとも1つの特定の又は定義された機能を実行するために、前記医療技術機能手段(300)が、前記血液治療機器(100)又は前記血液治療機器(100)と信号伝送するように接続された若しくは構成されている機器若しくは手段に接触且つ/又は接続された後に、前記血液治療機器(100)と機能的に結合されるように実施され、
前記医療技術機能手段(300)が、体外血液治療で使用されるように設計され、又は実施され、および
前記機能仕様標(400)が、前記体外血液チューブセットの特定の実施形態を記し又は識別する、医療技術機能手段(300)。」
また、本件発明8は、「前記医療技術機能手段(300)が、前記血液治療機器(100)又は前記血液治療機器(100)と信号伝送するように接続された若しくは構成されている機器若しくは手段に接触且つ/又は接続された後に、選択された治療オプションと前記識別された機能とが相互に一致し、且つ/又は適合する場合に、前記血液治療機器(100)と機能的に結合される」という事項を有していることから、医療技術機能手段が血液治療機器と機能的に結合される前に、血液治療機器又は前記血液治療機器と信号伝送するように接続された若しくは構成されている機器若しくは手段により機能仕様標が照会可能なように、機能仕様標が医療技術機能手段に配置されているものと認められる。
一方、甲1a発明は、機能仕様標が、少なくとも1つの体外血液チューブセット、又はトレイ内若しくはオーガナイザ(13)内に配置された少なくとも1つの体外血液チューブセットを有し、又はそのような体外血液チューブセットからなる医療技術機能手段に対して、具体的にどのように配置されるかが明らかでなく、機能的な結合の前に機能仕様標が照会可能かどうかも明らかでない。
そうすると、本件発明8と甲1a発明とは、次の点で相違する。
(相違点1)
本件発明8は、医療技術機能手段が血液治療機器と機能的に結合される前に、血液治療機器又は前記血液治療機器と信号伝送するように接続された若しくは構成されている機器若しくは手段により機能仕様標が照会可能なように、機能仕様標が医療技術機能手段に配置されているのに対し、甲1a発明は、そのように機能仕様標が医療技術機能手段に配置されているかどうか明らかでない点。
よって、本件発明8は、甲1a発明と上記相違点1で相違するから、甲1a発明であるとはいえない。
イ 本件発明10、12~14、16~17、19について
本件発明10、12~14、16~17、19は、本件発明8の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付すものであるから、甲1a発明と少なくとも上記相違点1で相違する。
よって、本件発明10、12~14、16~17、19は、本件発明8と同様、甲1a発明であるとはいえない。
(3)取消理由3(特許法第29条第2項)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1b発明とを対比する。
a 甲1b発明の「使い捨て物品」は、本件発明1の「医療技術機能手段(300)」に相当する。
b 甲1b発明の「に又は内部に固定され」は、本件発明1の「の内部、その場所又はその表面に配置され」に相当する。
c 甲1b発明の「選択された治療プロトコルに必要な使い捨て物品の機能を記録した記録手段」は、本件発明1の「ある特定の治療オプションを実行するために、血液治療を行うための少なくとも1つの医療技術機能又は前記医療技術機能手段(300)の適用又は使用についての適性を記し又は識別する少なくとも1つの機能仕様標(400)」に相当する。
d 甲1b発明の「を読み取る方法」は、本件発明1の「を照会する方法」に相当する。
e 甲1b発明の「医療装置」は、本件発明1の「医療機器(100)又は前記医療機器(100)と信号伝送するように接続された若しくは構成されている機器若しくは手段」に相当する。
f 甲1b発明の「前記医療装置によって、」は、本件発明1の「前記医療機器(100)によって、又は前記医療機器(100)と信号伝送するように接続された、若しくは構成されている機器若しくは手段によって、」に相当する。
g 甲1b発明の「を読み取る」は、本件発明1の「を照会し、且つ/又は検出する」に相当する。
h 甲1b発明の「を識別する」は、本件発明1の「を識別し、且つ/又は分析する」に相当する。
i 甲1b発明の「前記医療装置で選択された治療プロトコルのために記憶された使い捨て物品の機能を、前記使い捨て物品の前記記録手段によって識別されている前記機能と比較する」は、本件発明1の「前記医療機器(100)で選択された前記治療オプションを、前記医療技術機能手段(300)の前記機能仕様標(400)によって識別されている前記機能と比較する」に相当する。
上記a~iより、本件発明1と甲1b発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
(一致点)
「 医療技術機能手段(300)の内部、その場所又はその表面に配置され、ある特定の治療オプションを実行するために、血液治療を行うための少なくとも1つの医療技術機能又は前記医療技術機能手段(300)の適用又は使用についての適性を記し又は識別する機能仕様標(400)を照会する方法であって、
前記医療技術機能手段(300)が、医療機器(100)又は前記医療機器(100)と信号伝送するように接続された若しくは構成されている機器若しくは手段に接触且つ/又は接続された後に、
前記医療技術機能手段(300)に機能的に結合されるべき血液治療装置としての前記医療機器(100)によって、又は前記医療機器(100)と信号伝送するように接続された、若しくは構成されている機器若しくは手段によって、前記機能仕様標(400)を照会し、且つ/又は検出するステップと、
前記医療機器(100)によって、又は前記医療機器(100)と信号伝送するように接続された、若しくは構成されている機器若しくは手段によって、前記機能仕様標(400)と関連付けられた機能を識別し、且つ/又は分析するステップと、
前記医療機器(100)によって、又は前記医療機器(100)と信号伝送するように接続された、若しくは構成されている機器若しくは手段によって、前記医療機器(100)で選択された前記治療オプションを、前記医療技術機能手段(300)の前記機能仕様標(400)によって識別されている前記機能と比較するステップと、
前記医療機器(100)によって、又は前記医療機器(100)と信号伝送するように接続された、若しくは構成されている機器若しくは手段によって、前記医療技術機能手段(300)を前記医療機器(100)と機能的に結合するステップと
を含む方法。」
(相違点2)
「前記医療技術機能手段(300)を前記医療機器(100)と機能的に結合するステップ」について、本件発明1は、「前記選択された治療オプションと前記識別された機能とが相互に一致し、且つ/又は適合する場合に、」との限定が付されているのに対し、甲1b発明は、そのような限定が付されていない点。
(相違点3)
本件発明1は、「前記医療機器(100)によって、又は前記医療機器(100)と信号伝送するように接続された、若しくは構成されている機器若しくは手段によって、企図された治療における前記医療技術機能手段(300)の正しい機能的結合及び/又は適性に関する定義された照会を開始するステップ」を含むのに対し、甲1b発明は、そのようなステップを含まない点。
(イ)判断
a 相違点2について検討すると、甲第2号証には、透析流体の容器からのチュービングが自動接続デバイスのシャトル上のチャネルのうち正しいチャネルに配置されていると判断した場合に、自動接続デバイスによって、透析流体の容器からのチュービングを血液治療装置内に装填されたカセットと機能的に結合することが記載されているものの、治療オプションを選択することは記載されておらず、また、透析流体の容器及びチュービングが選択された治療オプションに一致又は適合する場合に機能的な結合を行うことは記載されていないところ、甲1b発明に甲2事項を適用したとしても、甲2事項の自動接続デバイスによって、甲1b発明の選択された治療プロトコルのために記憶された使い捨て物品の機能と使い捨て物品の記録手段によって識別されている機能とが一致又は適合するかどうかを判断することはできないから、相違点2に係る構成には到達し得ない。
したがって、甲1b発明及び甲2事項に基づき相違点2に係る構成を容易想到とすることはできない。
b 次に相違点3について検討する。
甲1b発明及び甲2事項に加え、例えば甲3、4a、5事項のように「血液治療装置と医療技術機能手段との接続を確認すること」が周知技術であること、並びに甲4a事項及び甲5事項も考慮して、甲1b発明、甲2、4a、5事項及び上記周知技術から相違点3に係る構成を想到し得たとしても、甲1b発明に甲2事項を適用して、自動接続デバイスによって使い捨て物品を医療装置と機能的に結合することを想到した上で、さらに、上記周知技術、甲4a事項及び甲5事項を適用して、自動接続デバイスによって行われた機能的な結合が正しいかどうかの照会を行う構成とすることを想到し、相違点3に係る構成に至ることとなる。このように、甲1b発明に基づいて、2つの段階を経て相違点3に係る構成に至ることは、格別な努力を要するものといえ、当業者にとって容易であったということはできない。
したがって、甲1b発明、甲2、4a、5事項及び上記周知技術に基づき相違点3に係る構成を容易想到とすることはできない。
c よって、本件発明1は、甲1b発明、甲2、4a、5事項及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明2~7、21~32について
本件発明2~7、21~32は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付すものであるから、甲1b発明と少なくとも上記相違点2及び相違点3で相違する。
よって、本件発明2~7、21~32は、本件発明1と同様、甲1b発明、甲2、4a、5事項及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 本件発明8について
本件発明8と甲1a発明との一致点及び相違点は、上記(2)アのとおりである。
本件発明8は、上記相違点1に係る構成を備えることにより、「警告、特に、機能手段を治療装置に機能的に結合する前のしかるべき時に提供され、若しくは発せられる警告、又は治療を開始する前に提供され、若しくは発せられる警告はなおいっそう、ある実施形態では、有利には、機能手段の企図されていない使用を回避し、よって有利には患者の安全を高めることに寄与し得る。」(本願明細書の段落【0099】)との効果を奏するものである。
そして、甲第1号証には、上記相違点1に係る構成及び上記効果について記載も示唆もされていないから、甲第1号証に基づき上記相違点1に係る構成を容易想到とすることはできない。
よって、本件発明8は、甲1a発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
エ 本件発明10、12~14、16~20について
本件発明10、12~14、16~20は、本件発明8の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付すものであるから、甲1a発明と少なくとも上記相違点1で相違する。
よって、本件発明10、12~14、16~20は、本件発明8と同様、甲1a発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
オ 本件発明15について
本件発明10、12~14、16~20は、本件発明8の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付すものであるから、甲1a発明と少なくとも上記相違点1で相違する。
そして、甲第1号証から上記相違点1に係る構成を容易想到とすることができないことは、上記ウのとおりである。
また、甲4b事項は、識別手段を、連結器に取付けられるコネクターに設けることを開示するにすぎないから、甲4b事項に基づき相違点1に係る構成を容易想到とすることはできない。
よって、本件発明15は、甲1a発明及び甲4b事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)申立人の意見について
ア 申立人は、訂正事項14による訂正について、「しかしながら、「接続すること」に「接続を確立すること」が含まれないとすると、「接続すること」に「接続しないこと」が含まれることになるから、この主張は、技術的に明らかに矛盾している。」(申立人意見書第1ページ第16~18行)と主張する。
しかしながら、訂正事項14による訂正は、「接触すること」及び/又は「接続すること」が、「最終的な動作可能な接続を確立すること」との区別が不明確であった「接続を確立すること」を含まないことを明確にするものであって、「接触すること」及び/又は「接続すること」が、「接続しないこと」を含むことを意味するものではない。
よって、申立人の主張は採用することができない。
イ 申立人は、訂正事項14による訂正について、「また、上記段落【0050】の記載は、「接触かつ/又は接続」の目的に、「最終的な動作可能な接続を確立すること」が必要でない旨の記載であって、「最終的な動作可能な接続を確立すること」を排除する旨の記載ではないから、「接触かつ/又は接続」に、「最終的な動作可能な接続を確立すること」が含まれてもよいといえる。」(申立人意見書第1ページ第19~23行)と主張する。
しかしながら、段落【0050】には「「(機能的に)」結合することという用語とは対照的に、機能手段と治療装置とを接触させること、又は接続することは、ここでは、例えば、2つの要素を寄せ集めるという形で、或いは2つの要素を機械的に接続するという形で単に近づけることとして理解されるべきである。」との記載の後に、「最終的な動作可能な接続を確立することはこの目的には必要ではない。」と記載されていることを考慮すれば、「接触かつ/又は接続」は、2つの要素を単に近づけることを意味し、最終的な動作可能な接続を確立することは排除していると解するのが相当である。
よって、申立人の主張は採用することができない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立理由A(特許法第17条の2第3項)について
申立人は、平成29年1月12日になされた手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件特許の国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合にあっては、当該翻訳文)又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下、翻訳文等という。)に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反する旨主張する。
具体的には、特許異議申立書(第14~17ページ)において、本件補正後の請求項1に記載された「前記選択された治療オプションと前記識別された機能とが相互に一致し、且つ/又は適合する場合に、前記医療機器(100)によって、又は前記医療機器(100)と信号伝送するように接続された、若しくは構成されている機器若しくは手段によって、前記医療技術機能手段(300)を前記医療機器(100)と機能的に結合するステップ」について、翻訳文等の段落【0235】の記載「血液チューブセットの異なる要素が、ユーザによって、機械正面1200で個々の受け要素(例えばクランプ、ローラポンプなど)へ「挿入」される。」を考慮すれば、該ステップの主体はユーザであるから、該ステップの主体を「前記医療機器(100)」又は「前記医療機器(100)と信号伝送するように接続された、若しくは構成されている機器若しくは手段」とすることは、翻訳文等に記載した事項の範囲内にない旨主張する。
しかしながら、翻訳文等の段落【0235】の上記記載は、受け要素が血液チューブセットの異なる要素を受けると解することもできる、すなわち、医療機器(100)の「受け要素」を主体として解することもできるから、該ステップの主体を「前記医療機器(100)」又は「前記医療機器(100)と信号伝送するように接続された、若しくは構成されている機器若しくは手段」とすることが、翻訳文等に記載した事項の範囲内にないとはいえない。
したがって、本件補正は、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるとはいえないから、翻訳文等に記載した事項の範囲内においてしたものでないとはいえない。
よって、申立人の主張は採用することができない。
2 申立理由D(特許法第36条第6項第1号)について
(1)申立人は、特許異議申立書(第48ページ)において、本件訂正請求による訂正前の請求項8には、医療技術機能手段(300)を医療機器(100)と機能的に結合する前に、治療オプションと医療技術機能手段(300)の一致/不一致を判定するようなことは、何ら特定されておらず、治療オプションと不一致と判定された医療技術機能手段を取り除くという課題(以下、「課題A」という。)を解決する手段が反映されているとはいえない旨主張する。
しかしながら、本件訂正請求による訂正後の請求項8には、「選択された治療オプションと前記識別された機能とが相互に一致し、且つ/又は適合する場合に、前記血液治療機器(100)と機能的に結合されるように実施され、」との発明特定事項が記載されており、課題Aを解決するための手段が反映されているといえるから、申立人の主張は採用することができない。
したがって、本件発明8は、発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえない。
また、本件発明8を引用して記載されている本件発明10、12~20、29も、同様の理由により発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえない。
(2)なお、訂正前の請求項8には、申立人の主張するとおり課題Aを解決するための手段が反映されているとはいえないものの、訂正前の請求項8に係る発明が解決しようとする課題が課題Aであると解すべき理由はない。
そして、訂正前の請求項8には、「ある特定の治療オプションを実行するために、血液治療を行うための少なくとも1つの医療技術機能又は前記医療技術機能手段(300)の適用又は使用についての適性を記し又は識別する少なくとも1つの機能仕様標(400)を備え」との発明特定事項が記載されており、該発明特定事項により、少なくとも明細書の段落【0003】の記載から把握される「医療技術治療装置を使用した治療を行うに際して、実際にその治療に該当する医療技術機能手段が使用され、該当しないか、又は十分に適合しない機能手段は使用されないということで安全性が高められ得る方法を提供すること」との課題を解決することができると認められるから、訂正前の請求項8には、課題を解決するための手段が反映されていないとはいえない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1~8、10、12~32に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に本件発明1~8、10、12~32に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項9、11に係る特許は、訂正により削除された。これにより、請求項9、11に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、これを却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2018-700177