特許異議申立
2018-700101
ウレタン(メタ)アクリレート及び活性エネルギー線硬化型樹脂組成物
- 審判番号
- 2018-700101
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-513577
- 登録番号
- 特許第6178844号(P6178844)
- 請求日
- 2018年02月07日
- 審決日
- 2018年11月01日
- 公報発行日
- 2019年01月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ダイセル・オルネクス株式会社
- 【権利者代理人】後藤 幸久
- 【異議申立人】岡林 茂
- 【異議申立人代理人】特許業務法人太陽国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 岡崎 美穂
- 審判官 大熊 幸治
- 審判官 長谷部 智寿
- 分類
- P1652.113-YAA(C08G) / P1652.121-YAA(C08G) / P1652.851-YAA(C08G) / P1652.856-YAA(C08G) / P1652.857-YAA(C08G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6178844号発明「ウレタン(メタ)アクリレート及び活性エネルギー線硬化型樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6178844号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
特許第6178844号の請求項1、2、4ないし8に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6178844号は、平成29年7月21日付けでその特許権の設定登録がされ、同年8月9日にその特許公報が発行され、その後、請求項1、2、4~8に係る特許に対して、平成30年2月7日に特許異議申立人 岡林茂(以下、「申立人」という。)から、特許異議の申立てがなされたものである。そして、その後の経緯は以下のとおりである。
平成30年 4月19日付け:取消理由の通知
同年 6月22日 :訂正の請求及び意見書の提出(特許権者)
当審は申立人に対し、平成30年8月8日付けで上記訂正の請求及び意見書の提出があった旨を通知したが、申立人からは、これに対する意見書の提出はなかった。
第2 申立人が主張する取消理由
申立人は、本件特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、下記甲第1号証ないし甲第2号証を提示し、概略、以下の取消理由1ないし2があるとしている。
・取消理由1
本件発明1、4~8は甲第1号証に記載された発明であり、本件発明1、2、4~8は甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであって、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
・取消理由2
本件発明1、2、4~8は、甲第1号証及び/又は甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
・申立人提示の甲号証
甲第1号証:特開2011-88995号公報
甲第2号証:特開2003-160623号公報
(以下、それぞれ「刊行物1」ないし「刊行物2」という。)
第3 訂正の可否
1 訂正の内容
平成30年6月22日付け訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。なお、訂正前の請求項1~8は一群の請求項である。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の
「分子中に環状構造を有するウレタン(メタ)アクリレートであって、
前記環状構造の環を構成する炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子の合計重量が、ウレタン(メタ)アクリレート(100重量%)に対して10重量%以上であり、
前記環状構造として、多環脂肪族炭化水素環及び複素環からなる群より選ばれた少なくとも1つを含み、
平均官能基数が3.5~4.5であることを特徴とするウレタン(メタ)アクリレート。」を、
「分子中に環状構造を有するウレタン(メタ)アクリレートであって、
前記環状構造の環を構成する炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子の合計重量が、ウレタン(メタ)アクリレート(100重量%)に対して10重量%以上であり、
前記環状構造として、多環脂肪族炭化水素環、及び炭素原子と酸素原子により形成された複素環からなる群より選ばれた少なくとも1つを含み、
平均官能基数が3.5~4.5であることを特徴とするウレタン(メタ)アクリレート。」に訂正する(請求項1を直接的あるいは間接的に引用する請求項4~8も同様に訂正される。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2の
「ポリオール(X)と、ポリイソシアネート(Y)と、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(Z)との反応物である請求項1に記載のウレタン(メタ)アクリレート。」を、
「分子中に環状構造を有するウレタン(メタ)アクリレートであって、
前記ウレタン(メタ)アクリレートが、イソシアネート基を含有するウレタンイソシアネートプレポリマーとヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(Z)との反応物であり、
前記イソシアネート基を含有するウレタンイソシアネートプレポリマーが、ポリオール(X)とポリイソシアネート(Y)との反応物であり、
以下の[1]~[3]の何れか1つを少なくとも満たし、
[1]前記ポリオール(X)として、分子中に環状構造を有するポリオールを含むこと
[2]前記ポリイソシアネート(Y)として、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート由来のヌレート化合物を含むこと
[3]前記ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(Z)として、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートを含むこと
前記環状構造の環を構成する炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子の合計重量が、ウレタン(メタ)アクリレート(100重量%)に対して10重量%以上であり、
前記環状構造として、多環脂肪族炭化水素環及び複素環からなる群より選ばれた少なくとも1つを含み、
平均官能基数が3.5~4.5であることを特徴とするウレタン(メタ)アクリレート。」に訂正する(請求項2を直接的あるいは間接的に引用する請求項3~8も同様に訂正される。)。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び独立特許要件
(1)訂正事項1
訂正事項1は、本件特許の請求項1に係る「分子中に環状構造を有するウレタン(メタ)アクリレート」の当該環状構造について、「複素環」を「炭素原子と酸素原子により形成された複素環」に限定するものである。
この限定は、【0019】の
「ウレタン(メタ)アクリレート(A)が分子中に有する環状構造は、炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群より選択された少なくとも1種の原子より構成(形成)された環状構造であり、より具体的には、例えば、脂肪族炭化水素環、芳香族炭化水素環、複素環等が挙げられる。…上記複素環としては、例えば、炭素原子と酸素原子により形成された複素環、…が挙げられ、…。」
との記載に基づくものである。
そうすると、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものといえ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、本件特許の請求項1を引用する請求項2に係る「ウレタン(メタ)アクリレート」に関し、単に「ポリオール(X)と、ポリイソシアネート(Y)と、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(Z)との反応物」としていたものを、「イソシアネート基を含有するウレタンイソシアネートプレポリマーとヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(Z)との反応物であり、
前記イソシアネート基を含有するウレタンイソシアネートプレポリマーが、ポリオール(X)とポリイソシアネート(Y)との反応物であり、」とし、更に、(X)、(Y)、(Z)のいずれかの成分を限定し、独立請求項に書き改めたものである。
これらの限定のうち、前者は、【0028】~【0030】の
「(ウレタン(メタ)アクリレート(A)の製造方法)
ウレタン(メタ)アクリレート(A)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、ポリオール(X)…と、ポリイソシアネート(Y)…と、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(Z)…とを反応させて製造することができる。…
上述の成分(X)~(Z)を反応させる方法は、特に限定されないが、例えば、次の方法が挙げられる。
…
[方法2]成分(X)及び成分(Y)を反応させて、イソシアネート基を含有するウレタンイソシアネートプレポリマー(ウレタンプレポリマー)を形成した後、該ウレタンイソシアネートプレポリマーと成分(Z)とを反応させる方法
…
上述の[方法1]~[方法3]の中では、[方法2]が好ましい。」
との記載に、後者は、【0051】、【0055】、【0058】の
「ポリオール(X)としては、…分子中に環状構造を有するポリオール…が挙げられる。」
「ポリイソシアネート(Y)としては…1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート由来のヌレート化合物…が挙げられる。」
「ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(Z)としては…シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート…が挙げられる。」
との記載に基づくものである。
そうすると、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものといえ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(3)独立特許要件
上記第1に示したとおり、本件異議申立ては旧請求項1、2、4~8につきされたものであるから、本件訂正により訂正された新請求項のうち、異議申立がされていない新請求項は、新請求項3である。
そして、上記(2)で示したとおり、新請求項3に係る訂正事項2による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、その発明特定事項の全部が削除されていない新請求項3に係る発明は、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであることを要する(特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項)ので以下検討する。
ア 刊行物1の記載事項
(ア)「【請求項1】
下記(A)成分および下記(B)成分の合計100質量部に対して、該(A)成分を95~65質量部、該(B)成分を5~35質量部、(C)成分としてラジカル重合開始剤を0.1~10質量部、(D)成分として紫外線吸収剤を1~12質量部および(E)成分として有機溶剤を10~1000質量部含有することを特徴とする硬化型コーティング剤組成物。
(A)成分:
下記一般式(1)で表される水酸基含有ジ(メタ)アクリレート化合物と分子内に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物との付加反応で得られるウレタンアダクト化合物(a1)および
下記一般式(2)で表されるトリ(メタ)アクリレート化合物(a2)
から構成されるイソシアヌル環含有(メタ)アクリレート混合物。
【化1】
(一般式(1)において、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して炭素数2~10の2価の有機基を表し、R4およびR5はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、n1、n2およびn3はそれぞれ独立して1~3の数を表し、n1+n2+n3=3~9である。)
【化2】
(一般式(2)において、R6、R7およびR8はそれぞれ独立して炭素数2~10の2価の有機基を表し、R9、R10およびR11はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、n4、n5およびn6は、それぞれ独立して1~3の数を表し、n4+n5+n6=3~9である。)
(B)成分:
下記一般式(3)で表される珪素化合物(b1)と下記一般式(4)で表される珪素化合物(b2)とを、該化合物(b1)1モルに対して該化合物(b2)を0.3~1.8モルの割合で加水分解共重縮合させて得られる有機珪素化合物。
【化3】
(一般式(3)において、R12は炭素数1~6のアルキル基、炭素数7~10のアラルキル基または炭素数6~10のアリール基を有する有機基であり、R13は炭素数1~6の2価の飽和炭化水素基であり、R14は水素原子またはメチル基であり、Xは加水分解性基であり、Xは同一であっても異なっていても良く、nは0または1である。)
SiY4 ・・・(4)
(一般式(4)において、Yはシロキサン結合生成基であり、Yは同一であっても異なっていてもよい。)
…
【請求項7】
前記(C)成分が光ラジカル重合開始剤であり、
光照射により硬化する光硬化型コーティング剤組成物である請求項1~6のいずれかに記載の硬化型コーティング剤組成物。」
(イ)「【0007】
本発明は、これらの問題点に鑑み、屋外で使用される基材、特に樹脂製基材のコーティング剤として優れた耐摩耗性および耐候性を発揮する硬化型コーティング剤組成物を提供することを目的とする。」
(ウ)「【0084】
○製造例1〔(A)成分の製造(IPDI-M313)〕
攪拌装置および空気の吹き込み管を備えた2Lセパラブルフラスコに、イソシアヌル酸のエチレンオキサイド3モル付加物のジおよびトリアクリレート〔東亞合成(株)製アロニックスM-313。以下、「M-313」という。〕1430g(ジアクリレート1モル含有)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(以下、「BHT」という)0.77g、ジブチルスズジラウレート(以下、「DBTL」という)0.46gを仕込み、液温を70~75℃で攪拌しながら、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」という)111g(0.5モル)を滴下した。
滴下終了後、85℃で2時間攪拌し、反応生成物のIR(赤外吸収)分析でイソシアネート基が消失していることを確認して反応を終了し、イソシアヌル環含有アクリレート混合物を得た。以下、この反応生成物を「IPDI-M313」と呼ぶ。
【0085】
IPDI-M313は、前記一般式(1)の化合物とイソホロンジイソシアネートの反応生成物であるウレタンアダクト化合物(a1)と、一般式(2)で表されるトリ(メタ)アクリレート化合物(a2)を、(a1):(a2)=3:7の質量比で含有する混合物である。
当該化合物は、一般式(1)において、R1、R2およびR3が全てエチレン基で、R4およびR5が全て水素原子で、n1、n2およびn3が1で、n1+n2+n3が3である化合物に該当し、一般式(2)において、R6、R7およびR8が全てエチレン基で、R9、R10およびR11が全て水素原子、n4、n5およびn6が1で、n4+n5+n6が3である化合物に該当する。」
(エ)「【0094】
<光硬化型コーティング剤組成物の調製>
表1および表2に示す成分を常法に従い攪拌・混合し、光硬化型コーティング剤組成物(組成物#E1~E5および組成物#C1~C9)を得た。
なお、表1および表2の数値は、質量部数を表す。また、表中の略称は、以下の化合物を表す。
【0095】
○略称
〔(C)成分〕
「Irg-819」:チバ・ジャパン(株)製光ラジカル重合開始剤、商品名イルガキュア819;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド。
「Irg-184」:チバ・ジャパン(株)製光ラジカル重合開始剤、商品名イルガキュア184;1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン。
…
【0101】
【表1】
…
【0105】
表1および表2に示す組成物を、10cm四方のポリカーボネート樹脂板の表面に、乾燥後の塗膜厚さが約10μmとなるようにバーコータで塗布し、100℃の熱風乾燥機で10分間乾燥した後、すぐに(塗膜表面温度90℃で)紫外線照射を行って硬化膜を作製した。
紫外線照射は、フュージョン・UV・システムズ・ジャパン(株)製の無電極ランプ(Hバルブ)を使用し、ランプ高さは集光ミラーの焦点距離(10cm)とし、コンベア速度10m/分で10パス照射した。1パス当りの照射エネルギーは、EIT社製のUV POWER PUCKのUV-A領域で、500mJ/cm2であった(合計5000mJ/cm2)。また、ピーク照度はUV-A領域で1600mW/cm2であった。
得られた硬化膜について、耐摩耗性、密着性および耐候性を、以下に示す方法で評価した。それらの評価結果を表3に示す。
…
【0109】
【表3】
【0110】
表3に示す通り、#E1~#E5に示す本発明の組成物を用いて表面に硬化膜を形成した試料#01~#05は、耐摩耗性および耐候性を両立し、樹脂板への密着性にも優れたものであった。この結果から、(A)成分と(B)成分との合計を100部としたとき、(A)成分を73~90部、(B)成分を10~27部、(C)成分を1~8部、(D)成分を3~12部、程度含む組成物を用いることで、試料#01~#05と同等の特性を有する硬化膜が得られることが推測された。」
イ 刊行物2の記載事項
(ア)「【請求項1】(メタ)アクリロイル基を2個以上有する分子量450以下の化合物(A)、エチレン性不飽和基を1個有する分子量250以下の化合物(B)、並びにジイソシアネート、ジオール及び(メタ)アクリロイル基を1個以上有する一価のアルコールから製造されたポリウレタン(メタ)アクリレートであって、ジイソシアネートとジオールのモル比が3:2~21:20である化合物(C)を含有してなる光学部材用活性エネルギー線硬化型組成物。」
(イ)「【0038】○実施例で使用する略称
MANDA:ヒドロキシピバリン酸とネオペンチルグリコールのエステル化物のジアクリレート(分子量:312)、日本化薬(株)製KAYARAD MANDA
M313:イソシアヌール酸のエチレンオキサイド3モル付加物のジ又はトリアクリレート(ジ体:トリ体=3:7)(分子量:ジ体369、トリ体423)、東亞合成(株)製アロニックスM-313
M305:ペンタエリスリトールトリ又はテトラアクリレート(トリ体:テトラ体=6:4)(分子量:トリ体298、テトラ体352)、東亞合成(株)製アロニックスM-305
M309:トリメチロールプロパントリアクリレート(分子量:296)、東亞合成(株)製アロニックスM-309
THFA:テトラヒドロフルフリルアクリレート(分子量:156)、大阪有機化学工業(株)製ビスコート#150
HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート(分子量:116)、東亞合成(株)製
HPA:2-ヒドロキシプロピルアクリレート(分子量:130)、大阪有機化学工業(株)製HPA
BR106:メタクリル酸エステルを主原料とするポリマー、三菱レイヨン(株)製ダイヤナールBRレジン#106
Dc1173:2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製ダロキュアー1173、光重合開始剤に相当
【0039】○製造例1(ポリウレタンアクリレートC-1の製造)
撹拌機、温度計、滴下漏斗、冷却管及びガス導入管を取り付けたセパラブルフラスコに、イソホロンジイソシアネート74.7g(0.34mol)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール0.24g及び(A)成分であるMANDA140g及びジブチルチンジラウレート0.40gを仕込み、ガス導入管より空気を吹き込みながら撹拌し、これにトリプロピレングリコール55.3g(0.29mol)を20分かけて滴下した。滴下終了後、70℃で3時間反応させた後、M313を130g(水酸基0.11当量)一括投入した。これを80℃で2時間反応させ、IRにてイソシアネート由来のピークが消失したことを確認した後、抜き出した。生成物の(C)成分であるポリウレタンアクリレートC-1及び未反応の(A)成分であるMANDAを含む混合物は、粘度が25℃で124Pa・sであった。これを生成物1という。」
(ウ)「【0045】○実施例1
製造例1で得られた生成物1の75部、HPAの25部及び光重合開始剤のDc1173の5部を常法に従い攪拌混合し、活性エネルギー線硬化型組成物を製造した。得られた組成物を使用し、下記の評価方法に従い粘度、密着性、鉛筆硬度及び透明性を評価した。それらの結果を表2に示す。
…
【0047】・密着性
ポリメチルメタクリレート基材(エンジニアリングテストサービス社)に組成物をバーコーターにて30μmに塗工し、乾燥機中70℃で10分間加熱した後、紫外線を照射して組成物を硬化させた。紫外線の照射条件は、160W/cm集光型高圧水銀灯(一灯)、水銀灯高さ10cm、コンベアスピード10m/分であり、パス回数はタックフリーとなってからさらに2パスとした。得られた硬化膜について、JIS K-5400の試験法に従って、セロハンテープ剥離にて、100升中の残存した升目により、密着性を次の3段階で評価した。
○:100、△:99~81、×:80以下
…
【0051】○実施例2~同4
表1に示す成分及び割合で使用する以外は実施例1と同様の方法で活性エネルギー線硬化型組成物を製造した。得られた組成物を使用し、実施例1と同様の評価方法で評価した。尚、実施例2の場合のみ、塗工後の基材を上面がガラス製のセルに入れて窒素ガスで置換した後、紫外線を照射して硬化させた。それらの結果を表2に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
」
ウ 各刊行物に記載された発明
(ア)刊行物1
刊行物1実施例(上記2(1)ウ)の製造例1に記載された「IPDI-M313」に関し、原料である「イソシアヌル酸のエチレンオキサイド3モル付加物のジアクリレート」は、同請求項1(上記2(1)ア)一般式(1)で示されるような2個の(メタ)アクリル基と1個の水酸基を有し、かつ、イソシアヌレート環を有する化合物である。製造例1では、この化合物と、シクロヘキサン環を有する2価のイソシアネート化合物である「イソホロンジイソシアネート」を「イソシアネート基が消失」(上記2(1)ウ)するまで反応させるのであるから、生成する化合物は特許異議申立書(以下「申立書」という。)24頁の「ウレタンアダクト1-1」で示される構造となるものと解され、これには「イソシアヌル酸のエチレンオキサイド3モル付加物のジアクリレート」の水酸基と「イソホロンジイソシアネート」のイソシアネート基との反応に由来するウレタン結合が存在する。
そうすると、「IPDI-M313」は、「分子中に環状構造を有するウレタン(メタ)アクリレート」である。
また、「イソシアヌル酸のエチレンオキサイド3モル付加物のジアクリレート」は、複素環であるイソシアヌレート環を有している。
そして、2個の(メタ)アクリル基と1個の水酸基を有する「イソシアヌル酸のエチレンオキサイド3モル付加物のジアクリレート」と、2個のイソシアネート基を有する「イソホロンジイソシアネート」の反応生成物である「IPDI-M313」は、官能基となる(メタ)アクリル基が4個存在することとなる。
更に、「イソシアヌル酸のエチレンオキサイド3モル付加物のジアクリレート」と「イソホロンジイソシアネート」の反応生成物である「IPDI-M313」は、申立書24頁下から4行-25頁4行に記載されるように、環状構造の環を構成する炭素原子及び窒素原子の合計重量が、「IPDI-M313」(100重量%)に対して23.8重量%であると認められる。
以上の点から、刊行物1には、以下の引用発明1aが記載されていると認められる。
「分子中に環状構造を有するウレタン(メタ)アクリレートであって、
前記環状構造の環を構成する炭素原子及び窒素原子の合計重量が、ウレタン(メタ)アクリレート(100重量%)に対して23.8重量%であり、
前記環状構造として、複素環を含み、
平均官能基数が4であることを特徴とするウレタン(メタ)アクリレート。」
(イ)刊行物2
刊行物2の「ジイソシアネート、ジオール及び(メタ)アクリロイル基を1個以上有する一価のアルコールから製造されたポリウレタン(メタ)アクリレートであって、ジイソシアネートとジオールのモル比が3:2~21:20である化合物(C)」(上記2(2)ア)に関し、係る化合物の製造例1(上記2(2)イ)では、「ジイソシアネート」として「イソホロンジイソシアネート」、「ジオール」として「トリプロピレングリコール」、「(メタ)アクリロイル基を1個以上有する一価のアルコール」として「イソシアヌール酸のエチレンオキサイド3モル付加物のジ又はトリアクリレート(ジ体:トリ体=3:7)」すなわちアクリロイル基を2個有する一価のアルコールが用いられており、上記「化合物(C)」に相当する「生成物1」は申立書24頁の「ウレタンアダクト1-1」で示される構造となるものと解され、これには「イソシアヌール酸のエチレンオキサイド3モル付加物のジアクリレート」の水酸基と「イソホロンジイソシアネート」のイソシアネート基との反応に由来するウレタン結合が存在する。
そうすると、「生成物1」は、「分子中に環状構造を有するウレタン(メタ)アクリレート」である。
そして、その余の点については、上記(1)アと同様であり、環状構造の環を構成する炭素原子及び窒素原子の合計重量は、申立書28頁13-24行に記載されるように、ウレタン(メタ)アクリレート(100重量%)に対して19.1重量%と認められる。
そうすると、刊行物2には、以下の引用発明2aが記載されていると認められる。
「分子中に環状構造を有するウレタン(メタ)アクリレートであって、
前記環状構造の環を構成する炭素原子及び窒素原子の合計重量が、ウレタン(メタ)アクリレート(100重量%)に対して19.1重量%であり、
前記環状構造として、複素環を含み、
平均官能基数が4であることを特徴とするウレタン(メタ)アクリレート。」
エ 新請求項3に係る発明と各引用発明との対比・判断
新請求項3は新請求項2を引用するものであるから、新請求項3に係る「分子中に環状構造を有するウレタン(メタ)アクリレート」は、
「イソシアネート基を含有するウレタンイソシアネートプレポリマーとヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(Z)との反応物であり、
前記イソシアネート基を含有するウレタンイソシアネートプレポリマーが、ポリオール(X)とポリイソシアネート(Y)との反応物であり、」、及び、
「 以下の[1]~[3]の何れか1つを少なくとも満たし、
[1]前記ポリオール(X)として、分子中に環状構造を有するポリオールを含むこと
[2]前記ポリイソシアネート(Y)として、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート由来のヌレート化合物を含むこと
[3]前記ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(Z)として、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートを含むこと」との両規定を含むものである。
これに対し、各引用発明は、これらの規定を満たすものではない。このため、新請求項3に係る発明は、刊行物1ないし2に記載された発明とはいえない。
また、刊行物1ないし2の如何なる記載を参照しても、各引用発明がこれらの規定を採用しうるものと解することはできず、各刊行物の記載から当業者が容易になし得たものとはいえない。
そして、他の新請求項3に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
オ 独立特許要件についてのまとめ
以上のとおりであるから、新請求項3に係る発明は、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものと認められる。
(4)訂正に係る検討のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正を認める。
第4 本件訂正後の請求項1、2、4~8に係る発明
上記第3で示したとおり、本件訂正は適法であるから、本件訂正により訂正された訂正請求項1、2、4~8に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1、2、4~8に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。
【請求項1】
分子中に環状構造を有するウレタン(メタ)アクリレートであって、
前記環状構造の環を構成する炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子の合計重量が、ウレタン(メタ)アクリレート(100重量%)に対して10重量%以上であり、
前記環状構造として、多環脂肪族炭化水素環、及び炭素原子と酸素原子により形成された複素環からなる群より選ばれた少なくとも1つを含み、
平均官能基数が3.5~4.5であることを特徴とするウレタン(メタ)アクリレート。
【請求項2】
分子中に環状構造を有するウレタン(メタ)アクリレートであって、
前記ウレタン(メタ)アクリレートが、イソシアネート基を含有するウレタンイソシアネートプレポリマーとヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(Z)との反応物であり、
前記イソシアネート基を含有するウレタンイソシアネートプレポリマーが、ポリオール(X)とポリイソシアネート(Y)との反応物であり、
以下の[1]~[3]の何れか1つを少なくとも満たし、
[1]前記ポリオール(X)として、分子中に環状構造を有するポリオールを含むこと
[2]前記ポリイソシアネート(Y)として、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート由来のヌレート化合物を含むこと
[3]前記ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート(Z)として、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートを含むこと
前記環状構造の環を構成する炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子の合計重量が、ウレタン(メタ)アクリレート(100重量%)に対して10重量%以上であり、
前記環状構造として、多環脂肪族炭化水素環及び複素環からなる群より選ばれた少なくとも1つを含み、
平均官能基数が3.5~4.5であることを特徴とするウレタン(メタ)アクリレート。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のウレタン(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
防汚染用コーティング剤である請求項4に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物層。
【請求項7】
基材と、該基材の表面を被覆する請求項6に記載の硬化物層とを有する被覆物。
【請求項8】
請求項7に記載の被覆物の製造方法であって、
基材に、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布し、硬化させて硬化物層を形成する工程を含む被覆物の製造方法。
第5 本件発明1、2、4~8に係る異議申立て、及び、取消理由通知で示した取消理由についての当審の判断
1 本件発明1と各引用発明との対比・判断
本件発明1に係る「分子中に環状構造を有するウレタン(メタ)アクリレート」は、
「前記環状構造として、多環脂肪族炭化水素環、及び炭素原子と酸素原子により形成された複素環からなる群より選ばれた少なくとも1つを含み」との規定を含むものである。
これに対し、各引用発明は、これらの規定を満たすものではない。このため、本件発明1は、刊行物1ないし2に記載された発明とはいえない。
また、刊行物1ないし2の如何なる記載を参照しても、各引用発明がこれらの規定を採用しうるものと解することはできず、本件発明1は、各刊行物の記載から当業者が容易になし得たものとはいえない。
したがって、本件発明1に対しては、上記第2で示した、申立人が主張する取消理由1ないし2が成立するものとは認められない。
2 本件発明2、4~8について
取消理由通知で示した取消理由は、申立人が主張する異議申立てと同旨の理由に加え、本件発明2についても刊行物1に記載された発明であるとするものである。
本件発明2は上記第3の2(3)エで示した新請求項3に係る発明と同一の規定を含むものであることに鑑みると、上記第3の2(3)エで示したように、本件発明2は刊行物1ないし2に記載された発明とはいえず、本件発明2は各刊行物の記載から当業者が容易になし得たものとはいえない。
また、本件発明4~8は、本件発明1又は2を直接的又は間接的に引用し、さらに限定を加えたものである。そして、上述のとおり、本件発明1及び2は刊行物1ないし2に記載された発明とはいえず、各刊行物の記載から当業者が容易になし得たものとはいえないことに鑑みると、本件発明2、4~8についても、各刊行物の記載から当業者が容易に想到したものとはいえない。
3 まとめ
よって、申立人が主張する異議申立ての理由、及び、取消理由通知で示した取消理由には理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、異議申立ての理由及び当審からの取消理由によっては、請求項1、2、4~8に係る発明の特許を取り消すことはできない。また、他に当該特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2018-700101