特許異議申立
2017-700447
樹脂組成物
- 審判番号
- 2017-700447
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-087094
- 登録番号
- 特許第6024783号(P6024783)
- 請求日
- 2017年05月02日
- 審決日
- 2018年08月24日
- 公報発行日
- 2018年11月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】味の素株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人酒井国際特許事務所
- 【異議申立人】金山 愼一
- 審判長/審判官
- 審判長 大島 祥吾
- 審判官 橋本 栄和
- 審判官 岡崎 美穂
- 分類
- P1651.113-YAA(C08G) / P1651.121-YAA(C08G) / P1651.4 -YAA(C08G) / P1651.537-YAA(C08G) / P1651.851-YAA(C08G) / P1651.853-YAA(C08G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第39条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6024783号発明「樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6024783号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。
特許第6024783号の請求項1~7、9~12に係る特許を維持する。
特許第6024783号の請求項8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6024783号の請求項1~12に係る特許についての出願は、平成21年11月27日(優先権主張 平成20年11月28日、特願2008-305106号)を国際出願日とする特願2010-540540号の一部を平成27年4月21日に新たな特許出願としたものであって、平成28年10月21日にその特許権の設定登録(設定登録時の請求項数12)がされ、その後、その特許に対し、平成29年5月2日付け(受理日:同年5月8日)で特許異議申立人 金山愼一(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~12)がされ、同年7月6日付けで取消理由が通知され、同年9月11日付け(受理日:同年9月11日)で意見書の提出及び訂正請求がされ、同年10月23日付け(受理日:同年10月24日)で申立人から意見書が提出され、同年12月6日付けで取消理由が通知され、平成30年2月9日付け(受理日:同年2月9日)で意見書の提出及び訂正請求がされ、同年3月1日付け(受理日:同年3月2日)で申立人から意見書が提出され、同年3月23日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年5月24日付け(受理日:同年5月24日)で意見書の提出及び訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、同年6月28日付け(受理日:同年6月29日)で申立人から意見書が提出されたものである。
なお、平成29年9月11日付け及び平成30年2月9日付けの訂正請求書による訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正請求の適否
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、次の訂正事項1~6のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「成分(F)の含有量が10~70質量%である樹脂組成物。」と記載されているのを、「成分(F)の含有量が10~70質量%であり、樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための樹脂組成物。」に訂正する。
また、当該請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2~7、9~12も併せて訂正する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1~8のいずれか1項に」と記載されているのを「請求項1~7のいずれか1項に」に訂正する。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物が支持体上に層形成されている接着フィルム。」と記載されているのを、「支持体と、該支持体上に形成された、請求項1~7及び9のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層と含み、前記樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための接着フィルム。」に訂正する。
(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項11に「請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物がシート状繊維基材中に含浸されているプリプレグ。」と記載されているのを、「請求項1~7及び9のいずれか1項に記載の樹脂組成物がシート状繊維基材に含浸されており、前記樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するためのプリプレグ。」に訂正する。
(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項12に「請求項1~9のいずれか1項に」と記載されているのを「請求項1~7及び9のいずれか1項に」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び一群の請求項
(1) 訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「樹脂組成物」に「樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための」という事項を追加するものであり、樹脂組成物の用途を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1は、願書に添付した明細書の【0001】、【0031】、【0053】、【0057】、【0059】、【0061】、【0066】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3) 訂正事項3、6について
訂正事項3、6は、それぞれ、訂正前の特許請求の範囲の請求項9、12が引用する請求項から、訂正事項2で削除された請求項8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項3、6は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4) 訂正事項4について
訂正事項4は、(a)訂正前の特許請求の範囲の請求項10が引用する請求項から、訂正事項2で削除された請求項8を削除し、(b)訂正前の請求項10の「樹脂組成物が支持体上に層形成されている接着フィルム」を「支持体と、該支持体上に形成された、・・・(略)・・・樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含み、前記樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための接着フィルム」と訂正するものである。
当該(a)の事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、当該(b)の事項のうち、「支持体と、該支持体上に形成された」、「樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含み、」との事項は、願書に添付した明細書の【0046】、【0052】の記載に照らせば、接着フィルムとは、支持体と、該支持体上に形成された樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含むものであると認められるので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、当該(b)の事項のうち、「前記樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための」との事項については、接着フィルムの使用用途を限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項4は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5) 訂正事項5について
訂正事項5は、(a)訂正前の特許請求の範囲の請求項11が引用する請求項から、訂正事項2で削除された請求項8を削除し、(b)訂正前の請求項11の「樹脂組成物がシート状繊維基材中に含浸されているプリプレグ」を「樹脂組成物がシート状繊維基材に含浸されており、前記樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するためのプリプレグ」と訂正するものである。
当該(a)の事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、当該(b)の事項のうち、「シート状繊維基材に含浸されており、」との事項は、願書に添付した明細書の【0063】の記載に照らせば、プリプレグとは、樹脂組成物がシート状繊維基材に含浸されているものであると認められるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。また、当該(b)の事項のうち、「前記樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための」との事項については、プリプレグの使用用途を限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項5は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6) 一群の請求項
本件訂正請求による訂正は、訂正後の請求項1~12についての訂正であるが、訂正前の請求項2~12は訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるので、訂正前の請求項1~12は、一群の請求項である。 したがって、本件訂正請求は、一群の請求項に対して請求されたものである。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第4項、かつ、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。
第3 本件特許に係る請求項に記載された事項
本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項1~12には、以下の事項が記載されている。
(以下、順に「本件発明1」等といい、また、これらを総じて「本件発明」ということもある。)
「【請求項1】
(A)式(1)
【化1】
で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、
(B)式(2)
(式中nは2~10の整数を示す。)
で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、
(C)液状多官能エポキシ樹脂、
(D)エポキシ硬化剤、
(E)熱可塑性樹脂、
(F)無機充填材を含有する樹脂組成物であって、
樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、成分(A)の含有量が3~15質量%、成分(B)の含有量が1~15質量%、成分(C)の含有量が1~20質量%、成分(F)の含有量が10~70質量%であり、樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための樹脂組成物。
【請求項2】
式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂と式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の合計量(不揮発分)に対する、式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の含有割合が、40質量%超かつ75質量%以下である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、成分(A)及び(B)を含む固形状多官能エポキシ樹脂の総含有量が5~30質量%である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
液状多官能エポキシ樹脂と固体状多官能エポキシ樹脂の合計量(不揮発分)を100質量%(不揮発分)とした場合に、液状多官能エポキシ樹脂の含有量が5~60質量%である、請求項3記載の樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、樹脂組成物中に含有される成分(A)、(B)及び(C)を含むエポキシ樹脂の総含有量が10~50質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
樹脂組成物中に存在するエポキシ基と成分(D)のエポキシ硬化剤の反応基の比率が1:0.4~1:2となる範囲で成分(D)のエポキシ硬化剤を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
樹脂組成物の不揮発分を100質量%とした場合、成分(E)の含有量が1~20質量%である、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
回路基板の絶縁層形成用である請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
支持体と、該支持体上に形成された、請求項1~7及び9のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層と含み、
前記樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための接着フィルム。
【請求項11】
請求項1~7及び9のいずれか1項に記載の樹脂組成物がシート状繊維基材に含浸されており、
前記樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するためのプリプレグ。
【請求項12】
請求項1~7及び9のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物により絶縁層が形成されている回路基板。」
第4 当審が通知した取消理由の概要
1 平成30年3月23日に通知した取消理由(決定の予告)の概要
「1) 請求項1~7、9~12に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
2) 請求項10に係る特許は、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3) 請求項10、11に係る特許は、特許法第39条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。」
2 平成29年12月6日付けで通知した取消理由の概要
「本件の請求項1~7、9~12に係る発明についての特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(なお、請求項1~7、9~12に係る発明につき、先に取消理由通知をした理由である進歩性等の判断については、上記のとおり請求項の記載が不備であるため留保します。この通知に対する応答いかんによって、先の取消理由通知における上記理由により、取消理由通知(決定の予告)を行うことがある点に十分に留意してください。 )」
3 平成29年7月6日付けで通知した取消理由の概要
「1) 本件特許の請求項1、3~5、7、9、10、12に係る発明は、本件特許の優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
2) 本件特許の請求項1、3~12に係る発明は、本件特許の優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
3) 本件特許の請求項1~7、10~12に係る発明は、本件特許の原出願である特願2010-540540号に係る発明と同一と認められ、かつ、特願2010-540540号に係る発明は特許されており協議を行うことができず、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
記
刊行物:特開2007-238769号公報(特許異議申立書に添付された甲第1号証) 」
第5 取消理由に対する当審の判断
1 平成30年3月23日に通知した取消理由(決定の予告)について
(1) 理由1)(特許法第36条第6項第2号)について
ア 理由1)の具体的な内容
理由1)の具体的な内容は、以下のとおりである。
「請求項1には、「樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための」との記載があるが、当該記載における「樹脂組成物」と、請求項1の他の箇所に記載された「樹脂組成物」との関係(同じ樹脂組成物であるのか、異なる樹脂組成物であるのか)が明確でない。
よって、請求項1、及び請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2~7、9~12に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(「樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための絶縁性樹脂組成物。」あるいは「であり、前記樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための樹脂組成物。」等であれば、明確である。)」
イ 判断
本件訂正により、合議体が明確であると示唆した内容に訂正されているので、当該取消理由は解消している。
よって、請求項1、及び請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2~7、9~12に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、同法第113条第4号に該当せず、取り消すべきものではない。
(2) 理由2)(特許法第29条第1項第3号、同法第29条第2項)について
ア 刊行物の記載事項
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である特開2007-238769号公報(以下、「引用文献」という。)には、次の事項(以下、「摘示(ア)」のようにいう。)が記載されている。
(ア) 「【請求項1】
フレキシブルプリント回路板の回路部を保護するためにもちいるカバーレイフィルム用の樹脂組成物であって、
ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂と、ビスフェノール型エポキシ樹脂と、硬化剤と、下記一般式(1)で表される硬化促進剤とを含み、かつ、硬化物の弾性率が3.5GPa~7.0GPaであることを特徴とする樹脂組成物。
【化1】
【請求項2】
さらには、ポリアミドイミド樹脂を含むものである請求項1に記載の樹脂組成物。
・・・(略)・・・
【請求項4】
さらには、無機フィラーを含むものである請求項1ないし3のいずれかに記載の樹脂組成物。
・・・(略)・・・
【請求項8】
前記樹脂組成物が、ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂を15重量部以上100重量部以下と、ビスフェノール型エポキシ樹脂を15重量部以上90重量部以下と、硬化剤を10重量部以上100重量部以下と、硬化促進剤を2重量部以上30重量部以下とを含む請求項1ないし7のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記樹脂組成物が、ポリアミドイミド樹脂を5重量部以上30重量部以下含む請求項2ないし8のいずれかに記載の樹脂組成物。
・・・(略)・・・
【請求項11】
前記樹脂組成物が、無機フィラーを50重量部以上250重量部以下含む請求項4ないし10のいずれかに記載の樹脂組成物。」
(イ) 「【0034】
(実施例1)
樹脂組成物として、ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂(エポキシ当量280、日本化薬製NC-3000)30重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量190、ジャパンエポキシレジン製エピコート828)20重量部、硬化剤にノボラック型フェノール樹脂(2核体量2.5%、フリーフェノール量0%、Mw/Mn=1.43、住友ベークライト製PR-NMD-103)13重量部、硬化促進剤に直鎖状2級アミン含有ノボラック型フェノール樹脂(OH当量135、大日本インキ化学製LA-7751)13重量部およびポリアミドイミド樹脂(分子量10000、Tg=280℃、東洋紡社製)を15重量部、ニトリルゴム(アクリロニトリル量27%、日本ゼオン製)3重量部及びシランカップリング剤0.5重量部をMEK及びブチルセルソルブとの混合溶剤に樹脂固形分が50%となるように溶解した。
この樹脂ワニスに無機フィラーとして水酸化アルミ(平均粒子径1μm、日本軽金属社製B1403)50重量部の割合で添加し、均一に分散するまで撹拌して配合物ワニスを作製した。
この配合物ワニスを厚み25μmのポリイミドフィルムの片面に各樹脂組成物の厚みが乾燥後、20μmとなるようにコンマコーターで塗工、100℃5分+150℃5分で乾燥し、次いで所定の開口部を設けた後に評価パターンに185℃1時間でプレスにより積層し、所定の評価用のフレキシブルプリント回路板を作製した。なお、難燃性評価には全面エッチングにより銅はくを除去した基板に同様に積層して評価用基板を得た。」
(ウ) 「【0037】
(実施例4)
無機フィラーとして、水酸化アルミ(日本軽金属社製B1403)45重量部と平均粒子径が5~10μmのマイカ(コープケミカル社製MK-200)40重量部の混合物にした以外実施例1と同様にしてフレキシブルプリント配線板を得、同様に評価した。」
(エ) 「【0042】
このようにして得られたカバーレイフィルムの打ち抜き性およびフレキシブルプリント回路板を成形性、吸湿半田耐熱性、密着力、電気絶縁性、屈曲性、耐折性、難燃性、反りを評価・測定し、その結果を表1に示す。
【表1】
」
イ 引用文献に記載された発明の認定
引用文献には、摘示(ア)~(エ)、特に摘示(イ)における実施例1の記載から、次の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されていると認める。
「樹脂組成物として、ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂(エポキシ当量280、日本化薬製NC-3000)30重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量190、ジャパンエポキシレジン製エピコート828)20重量部、硬化剤にノボラック型フェノール樹脂(2核体量2.5%、フリーフェノール量0%、Mw/Mn=1.43、住友ベークライト製PR-NMD-103)13重量部、硬化促進剤に直鎖状2級アミン含有ノボラック型フェノール樹脂(OH当量135、大日本インキ化学製LA-7751)13重量部およびポリアミドイミド樹脂(分子量10000、Tg=280℃、東洋紡社製)を15重量部、ニトリルゴム(アクリロニトリル量27%、日本ゼオン製)3重量部及びシランカップリング剤0.5重量部をMEK及びブチルセルソルブとの混合溶剤に樹脂固形分が50%となるように溶解し、この樹脂ワニスに無機フィラーとして水酸化アルミ(平均粒子径1μm、日本軽金属社製B1403)50重量部の割合で添加し、均一に分散するまで撹拌して作製した配合物ワニス。」
また、引用文献には、摘示(ア)~(エ)、特に摘示(ウ)における実施例4の記載から、次の発明(以下、「引用発明B」という。)が記載されていると認める。
「樹脂組成物として、ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂(エポキシ当量280、日本化薬製NC-3000)30重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量190、ジャパンエポキシレジン製エピコート828)20重量部、硬化剤にノボラック型フェノール樹脂(2核体量2.5%、フリーフェノール量0%、Mw/Mn=1.43、住友ベークライト製PR-NMD-103)13重量部、硬化促進剤に直鎖状2級アミン含有ノボラック型フェノール樹脂(OH当量135、大日本インキ化学製LA-7751)13重量部およびポリアミドイミド樹脂(分子量10000、Tg=280℃、東洋紡社製)を15重量部、ニトリルゴム(アクリロニトリル量27%、日本ゼオン製)3重量部及びシランカップリング剤0.5重量部をMEK及びブチルセルソルブとの混合溶剤に樹脂固形分が50%となるように溶解し、この樹脂ワニスに無機フィラーとして水酸化アルミ(日本軽金属社製B1403)45重量部、平均粒子径が5~10μmのマイカ(コープケミカル社製MK-200)40重量部の割合で添加し、均一に分散するまで撹拌して作製した配合物ワニス。」
ウ 本件発明10と引用発明A、Bとの対比・判断
(ア) 対比
本件発明10は、請求項1を引用する請求項10に係る発明であり、引用する請求項1の記載を併せて独立項形式で記載すると次のとおりのものである。
「支持体と、該支持体上に形成された、
(A)式(1)
【化1】
で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、
(B)式(2)
(式中nは2~10の整数を示す。)
で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、
(C)液状多官能エポキシ樹脂、
(D)エポキシ硬化剤、
(E)熱可塑性樹脂、
(F)無機充填材を含有する樹脂組成物であって、
樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、成分(A)の含有量が3~15質量%、成分(B)の含有量が1~15質量%、成分(C)の含有量が1~20質量%、成分(F)の含有量が10~70質量%であり、樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための樹脂組成物
を含む樹脂組成物層とを含み、
前記樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための接着フィルム。」
本件発明10と引用発明A、Bとを対比する。
引用発明A、Bにおける「配合物ワニス」は、樹脂の組成物であるから、本件発明10における「樹脂組成物」に相当する。
引用発明A、Bにおける「ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂(エポキシ当量280、日本化薬製NC-3000)」は、ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂である点において、本件発明10における「(A)」、「(B)」の「ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂」と一致する。
引用発明A、Bにおける「ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量190、ジャパンエポキシレジン製エピコート828)」は、本件発明10における「(C)液状多官能エポキシ樹脂」に相当する(必要であれば、例えば、特許異議申立書に添付された甲第2号証「三菱ケミカル製品案内2017年4月,表紙,第1~3頁及び奥付」参照)。
引用発明A、Bにおいて、硬化剤である「ノボラック型フェノール樹脂(2核体量2.5%、フリーフェノール量0%、Mw/Mn=1.43、住友ベークライト製PR-NMD-103)」は、本件発明10における「(D)エポキシ硬化剤」に相当する。
引用発明A、Bにおける「ポリアミドイミド樹脂(分子量10000、Tg=280℃、東洋紡社製)」は、本件発明10における「(E)熱可塑性樹脂」に相当する(必要であれば、例えば、本件特許明細書の【0023】参照)。
引用発明Aにおいて、無機フィラーである「水酸化アルミ(平均粒子径1μm、日本軽金属社製B1403)」は、本件発明10における「(F)無機充填材」に相当する。引用発明Bにおいて、無機フィラーである「水酸化アルミ(日本軽金属社製B1403)」、「平均粒子径が5~10μmのマイカ(コープケミカル社製MK-200)」は、いずれも本件発明10における「(F)無機充填材」に相当する。
引用発明Aにおいて、配合物ワニス中の不揮発分は総計144.5(=30+20+13+13+15+3+0.5+50)重量部、すなわち144.5質量部であるから、ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、無機フィラー(水酸化アルミ)の含有量は、不揮発分100質量%に対して、それぞれ約20.8(=30÷144.5×100)質量%、約13.8(=20÷144.5×100)質量%、約34.6(=50÷144.5×100)質量%である。したがって、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、無機フィラー(水酸化アルミ)については、それぞれ、本件発明10において成分(C)の含有量が「1~20質量%」、成分(F)の含有量が「10~70質量%」であるという数値範囲を満たす。
また、引用発明Bにおいて、配合物ワニス中の不揮発分は総計179.5(=30+20+13+13+15+3+0.5+45+40)重量部、すなわち179.5質量部であるから、ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、無機フィラー(水酸化アルミ及びマイカ)の含有量は、不揮発分100質量%に対して、それぞれ約16.7(=30÷179.5×100)質量%、約11.1(=20÷179.5×100)質量%、約47.4(=(45+40)÷179.5×100)質量%である。したがって、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、無機フィラー(水酸化アルミ及びマイカ)については、それぞれ、本件発明10において成分(C)の含有量が「1~20質量%」、成分(F)の含有量が「10~70質量%」であるという数値範囲を満たす。
そうすると、本件発明10と、引用発明A又は引用発明Bとは、
「ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、
(C)液状多官能エポキシ樹脂、
(D)エポキシ硬化剤、
(E)熱可塑性樹脂、
(F)無機充填材を含有する樹脂組成物であって、
樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、成分(C)の含有量が1~20質量%、成分(F)の含有量が10~70質量%である樹脂組成物。」
の点で一致し、以下の点で一応相違している。
<相違点1A>
本件発明10においては、樹脂組成物が、「(A)式(1)(注:構造式は省略)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂」、「(B)式(2)(注:構造式は省略)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂」を含有し、不揮発分100質量%に対し、成分(A)の含有量が「3~15質量%」、成分(B)の含有量が「1~15質量%」であるのに対して、引用発明A、Bにおいては、配合物ワニスが、「ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂(エポキシ当量280、日本化薬製NC-3000)」を含有し、不揮発分100質量%に対し、その含有量が引用発明Aでは「約20.8質量%」、引用発明Bでは「約16.7質量%」である点。
<相違点2A>
本件発明10は、「支持体と、該支持体上に形成された、」「樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含み、前記樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための接着フィルム」であるのに対して、引用発明A、Bにおいては、配合物ワニスがそのように特定されていない点。
(イ) 判断
事案に鑑み、相違点2Aから先に検討する。
引用文献には、配合物ワニスをポリイミドフィルムの片面に塗工、乾燥し、さらに評価パターンに積層し、フレキシブルプリント回路板を作製して電気絶縁性を評価・測定することも記載されている(摘示(イ)~(エ))。そうすると、当該配合物ワニスは、支持体である評価パターンの上に樹脂組成物の層を形成することになるとともに、ポリイミドフィルムを接着する接着フィルムの形態になるものと認められる。
しかしながら、引用文献には、配合物ワニスが、本件発明10における「樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含み、前記樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための」のものであることは記載されておらず、上記のように引用文献の配合物ワニスが接着フィルムの形態になるとしても、当該接着フィルムと本件発明10における接着フィルムとは、用途において相違するものである。
そして、引用文献をみてもこの用途についての記載はなく、引用発明A,Bを、本件発明10の特定の用途のための接着フィルムに使用することは、当業者であったとしても容易になし得たことではない。
以上のことから、本件発明10と引用発明A、Bにおいて、相違点2Aは実質的な相違点であり、本件発明10は、引用文献に記載された発明ではないから、相違点1Aについて検討するまでもなく、請求項10に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。
また、本件発明10は、引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、請求項10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでもなく、同法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。
よって、取消理由2は、解消している。
(3) 理由3(特許法第39条第2項)について
ア 本件発明10、11
本件発明10は、請求項1を引用する請求項2をさらに引用する請求項10に係る発明であり、請求項2が引用する請求項1の記載とともに、引用する請求項2の記載を併せて独立項形式で記載すると次のとおりのものである。
「支持体と、該支持体上に形成された、
(A)式(1)
【化1】
で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、
(B)式(2)
(式中nは2~10の整数を示す。)
で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、
(C)液状多官能エポキシ樹脂、
(D)エポキシ硬化剤、
(E)熱可塑性樹脂、
(F)無機充填材を含有する樹脂組成物であって、
樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、成分(A)の含有量が3~15質量%、成分(B)の含有量が1~15質量%、成分(C)の含有量が1~20質量%、成分(F)の含有量が10~70質量%であり、
式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂と式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の合計量(不揮発分)に対する、式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の含有割合が、40質量%超かつ75質量%以下であり、
樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための樹脂組成物
を含む樹脂組成物層とを含み、
前記樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための接着フィルム。」
同様に、本件発明11は、請求項1を引用する請求項2をさらに引用する請求項11に係る発明であり、請求項2が引用する請求項1の記載とともに、引用する請求項2の記載を併せて独立項形式で記載すると次のとおりのものである。
「(A)式(1)
【化1】
で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、
(B)式(2)
(式中nは2~10の整数を示す。)
で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、
(C)液状多官能エポキシ樹脂、
(D)エポキシ硬化剤、
(E)熱可塑性樹脂、
(F)無機充填材を含有する樹脂組成物であって、
樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、成分(A)の含有量が3~15質量%、成分(B)の含有量が1~15質量%、成分(C)の含有量が1~20質量%、成分(F)の含有量が10~70質量%であり、
式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂と式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の合計量(不揮発分)に対する、式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の含有割合が、40質量%超かつ75質量%以下であり、
樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための樹脂組成物
がシート状繊維基材に含浸されており、
前記樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するためのプリプレグ。」
イ 特願2010-540540(特許第5733679号)の請求項8、9に係る発明
特願2010-540540(特許第5733679号:特許異議申立書に添付された甲第8号証)に係る発明の請求項8、9に係る発明(以下、「同日発明8」等という。)は、請求項1を引用する請求項8、9に係る発明であり、引用する請求項1の記載を併せて独立項形式で記載すると次のとおりのものである。
同日発明8: 「(A)式(1)
【化1】
で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、(B)式(2)
(式中nは2~10の整数を示す。)
で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、(C)液状多官能エポキシ樹脂、(D)エポキシ硬化剤、(E)熱可塑性樹脂、(F)無機充填材を含有する樹脂組成物であって、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、成分(A)の含有量が3~15質量%、成分(B)の含有量が1~15質量%、成分(C)の含有量が1~20質量%であり、式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂と式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の合計量(不揮発分)に対し、式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の含有割合が、40質量%超かつ75質量%以下であり、
成分(D)が、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤およびシアネート樹脂から選択される1種以上であり、
樹脂組成物の不揮発分を100質量%とした場合、成分(F)の含有量が10~70質量%である樹脂組成物が支持体上に層形成されている接着フィルム。」
同日発明9 「(A)式(1)
【化1】
で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、(B)式(2)
(式中nは2~10の整数を示す。)
で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、(C)液状多官能エポキシ樹脂、(D)エポキシ硬化剤、(E)熱可塑性樹脂、(F)無機充填材を含有する樹脂組成物であって、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、成分(A)の含有量が3~15質量%、成分(B)の含有量が1~15質量%、成分(C)の含有量が1~20質量%であり、式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂と式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の合計量(不揮発分)に対し、式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の含有割合が、40質量%超かつ75質量%以下であり、
成分(D)が、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤およびシアネート樹脂から選択される1種以上であり、
樹脂組成物の不揮発分を100質量%とした場合、成分(F)の含有量が10~70質量%である樹脂組成物がシート状繊維基材中に含浸されているプリプレグ。」
ウ 本件発明10と同日発明8との対比・判断
(ア) 対比
本件発明10と同日発明8とを対比する。
同日発明8の接着フィルムにおいては、「樹脂組成物が支持体上に層形成されている」から、本件発明10の接着フィルムのように、「支持体と、該支持体上に形成された、」「樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含む、」といえる。
そうすると、本件発明10と同日発明8とは、
「支持体と、該支持体上に形成された、
(A)式(1)
【化1】
で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、
(B)式(2)
(式中nは2~10の整数を示す。)
で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、
(C)液状多官能エポキシ樹脂、
(D)エポキシ硬化剤、
(E)熱可塑性樹脂、
(F)無機充填材を含有する樹脂組成物であって、
樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、成分(A)の含有量が3~15質量%、成分(B)の含有量が1~15質量%、成分(C)の含有量が1~20質量%、成分(F)の含有量が10~70質量%であり、
式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂と式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の合計量(不揮発分)に対する、式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の含有割合が、40質量%超かつ75質量%以下である樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含む、接着フィルム。」
の点で一致し、以下の点で一応相違している。
<相違点1B>
本件発明10においては、成分(D)のエポキシ硬化剤が、どのような硬化剤であるか特定されていないのに対して、同日発明8においては、成分(D)のエポキシ硬化剤が、「フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤およびシアネート樹脂から選択される1種以上」であると特定されている点。
<相違点2B>
本件発明10においては、樹脂組成物が「樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための」と特定され、接着フィルムが「前記樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための」と特定されているのに対して、同日発明8においては、樹脂組成物および接着フィルムがそのように特定されていない点。
(イ) 検討
事案に鑑み、相違点2Bから先に検討する。
同日発明8においては、接着フィルムとして特定の用途使用されるものであることの特定はないから、同日発明8における接着フィルムと本件発明10における接着フィルムとは、本件発明10が特定の用途に使用される接着フィルムである点で相違するものであり、相違点2Bは両発明における実質的な相違点である。
以上のことから、本件発明10は、同日発明8と同一ではないから、相違点1Bについて検討するまでもなく、請求項10に係る特許は、特許法第39条第2項の規定に違反してされたものではない。
エ 本件発明11と同日発明9について
(ア) 対比
上記ウと同様に本件発明11と同日発明9を対比すると、同日発明9のプリプレグにおいては、「樹脂組成物がシート状繊維基材中に含浸されている」から、本件発明11のプリプレグのように、「樹脂組成物がシート状繊維基材に含浸されている」といえる。
そうすると、本件発明11と同日発明9とは、
「(A)式(1)
【化1】
で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、
(B)式(2)
(式中nは2~10の整数を示す。)
で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、
(C)液状多官能エポキシ樹脂、
(D)エポキシ硬化剤、
(E)熱可塑性樹脂、
(F)無機充填材を含有する樹脂組成物であって、
樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、成分(A)の含有量が3~15質量%、成分(B)の含有量が1~15質量%、成分(C)の含有量が1~20質量%、成分(F)の含有量が10~70質量%であり、
式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂と式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の合計量(不揮発分)に対する、式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の含有割合が、40質量%超かつ75質量%以下である樹脂組成物がシート状繊維基材に含浸されているプリプレグ。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点3B>
本件発明11においては、成分(D)のエポキシ硬化剤が、どのような硬化剤であるか特定されていないのに対して、同日発明9においては、成分(D)のエポキシ硬化剤が、「フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤およびシアネート樹脂から選択される1種以上」であると特定されている点。
<相違点4B>
本件発明11においては、樹脂組成物が「樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための」と特定され、また、プレプレグが「前記樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための」と特定されているのに対して、同日発明9においては、樹脂組成物がそのように特定されていない点。
(イ) 判断
事案に鑑み、相違点4Bから先に検討すると、相違点2Bと同様に、本件発明11は同日発明9と特定の用途に使用されるプレプレグである点で相違するものであり、相違点4Bは両発明における実質的な相違点である。
以上のことから、本件発明11は、同日発明9と同一ではないから、相違点3Bについて検討するまでもなく、請求項11に係る特許は、特許法第39条第2項の規定に違反してされたものではない。
(4) 小括
上記のとおり、平成30年3月23日に通知した取消理由(決定の予告)の各理由1ないし3は、理由がない。
2 平成29年12月6日付けで通知した取消理由について
(1) 取消理由(特許法第36条第6項第2号)について
取消理由の具体的な内容は、以下のとおりである。
ア 請求項1には、「樹脂組成物の硬化物により形成される絶縁層表面を粗化処理した粗化面に導体層が形成されるものである樹脂組成物」との記載があるが、導体層が形成されるのは、樹脂組成物ではなく、樹脂組成物の硬化物(具体的には、樹脂組成物の硬化物により形成される絶縁層表面を粗化処理した粗化面)であると解される。そうすると、導体層が形成されるものであると特定される上記樹脂組成物の意味するところが明確でない。
(請求項1の上記記載は、「樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための絶縁性樹脂組成物」といった、樹脂組成物の用途を特定しているものとは認められない。)
イ 請求項10には、「請求項1~7及び9のいずれか1項に記載の樹脂組成物が支持体上に層形成されている接着フィルム」との記載があるが、請求項1には、「樹脂組成物の硬化物により形成される絶縁層表面を粗化処理した粗化面に導体層が形成されるものである樹脂組成物」と記載されており、そのように樹脂組成物の硬化物の粗化面に導体層が形成されるものであるとされる樹脂組成物を支持体上に層形成しても、それはいわゆる接着フィルムでないと解される。そうすると、請求項10の上記記載の意味するところが明確でない。
ウ 請求項11には、「請求項1~7及び9のいずれか1項に記載の樹脂組成物がシート状繊維基材中に含浸されているプリプレグ」との記載があるが、請求項1には、「樹脂組成物の硬化物により形成される絶縁層表面を粗化処理した粗化面に導体層が形成されるものである樹脂組成物」と記載されており、そのように樹脂組成物の硬化物の粗化面に導体層が形成されるものであるとされる樹脂組成物は、シート状繊維基材中に含浸させることができないと解される。そうすると、請求項11の上記記載の意味するところが明確でない。
(2) 当審の判断
本件訂正により、請求項1、10及び11の記載が、「樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための」「樹脂組成物」、「接着フィルム」又は「接着フィルム」と訂正されたことにより、訂正前の「・・・導体層が形成されるものである樹脂組成物」との記載に関連した意味が不明な点がなくなり、上記の具体的な理由アないしウは解消したので、これらに基づく取消理由は、理由がない。
3 平成29年7月6日付けで通知した取消理由について
(1) 理由1)(特許法第29条第1項第3号)、理由2)(同法第29条第2項)について
本件発明10については、上記1(2)で既に検討されているので、本件発明1、3~7、9~12について当該理由1)又は理由2)を検討する。
ア 引用文献の記載事項
上記1(2)アに記載した事項が記載されている。
イ 引用発明
引用文献には、上記1(2)イで認定した発明、すなわち引用発明A、Bが記載されている。
ウ 本件発明1と引用発明A、Bとの対比・判断
(ア) 対比
上記1(2)ウ(ア)でしたのと同様に、本件発明1と引用発明A、Bを対比すると、両者は、
「ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、
(C)液状多官能エポキシ樹脂、
(D)エポキシ硬化剤、
(E)熱可塑性樹脂、
(F)無機充填材を含有する樹脂組成物であって、
樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、成分(C)の含有量が1~20質量%、成分(F)の含有量が10~70質量%である樹脂組成物。」
の点で一致し、以下の点で一応相違している。
<相違点1C>
本件発明1においては、樹脂組成物が、「(A)式(1)(注:構造式は省略)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂」、「(B)式(2)(注:構造式は省略)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂」を含有し、不揮発分100質量%に対し、成分(A)の含有量が「3~15質量%」、成分(B)の含有量が「1~15質量%」であるのに対して、引用発明A、Bにおいては、配合物ワニスが、「ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂(エポキシ当量280、日本化薬製NC-3000)」を含有し、不揮発分100質量%に対し、その含有量が引用発明Aでは「約20.8質量%」、引用発明Bでは「約16.7質量%」である点。
<相違点2C>
本件発明1では、「支持体と、該支持体上に形成された、」「樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための樹脂組成物」であるのに対して、引用発明A、Bにおいては、配合物ワニスがそのように特定されていない点。
(イ) 判断
事案に鑑み、相違点2Cから先に検討する。
引用文献には、配合物ワニスをポリイミドフィルムの片面に塗工、乾燥し、さらに評価パターンに積層し、フレキシブルプリント回路板を作製して電気絶縁性を評価・測定することも記載されている(1(2)アの摘示(イ)~(エ))。
しかしながら、引用文献には、配合物ワニスが、本件発明1における「樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための」樹脂組成物であることは記載されていない。この点は、本件発明1と引用発明A、Bとの実質的な相違点であり、かつ、このような用途において使用することは引用文献をみても記載がないから、引用発明A,Bを、本件発明1の特定の用途のための樹脂組成物とすることは、当業者であったとしても容易になし得たことではない。
以上のことから、本件発明1と引用発明A、Bにおいて、相違点2Cは実質的な相違点であり、本件発明1は、引用文献に記載された発明ではないから、相違点1Cについて検討するまでもなく、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。
また、本件発明1は、引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでもない。
エ 本件発明3~7、9、11、12について
本件発明3~7、9、11、12は、直接又は間接的に請求項1を引用するものであり、上記ウで本件発明1で検討したのと同様の判断となる。
したがって、本件発明3~5、7、9、12は、引用文献に記載された発明ではなく、請求項3~5、7、9、12に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。
また、本件発明3~7、9、11、12は、引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、請求項3~7、9、11、12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでもない。
(2) 理由3)(特許法第39条第2項)について
本件発明10、11については、上記1(3)で既に検討したので、本件発明1~7、12について検討する。
ア 本件発明1、2について
まず、本件発明2と、原出願である特願2010-540540号の特許請求の範囲の請求項1~10に係る発明(以下、それぞれ「同日発明1」から「同日発明10」という。)の同日発明1を対比すると、
「(A)式(1)
【化1】
で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、
(B)式(2)
(式中nは2~10の整数を示す。)
で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、
(C)液状多官能エポキシ樹脂、
(D)エポキシ硬化剤、
(E)熱可塑性樹脂、
(F)無機充填材を含有する樹脂組成物であって、
樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、成分(A)の含有量が3~15質量%、成分(B)の含有量が1~15質量%、成分(C)の含有量が1~20質量%、成分(F)の含有量が10~70質量%であり、
式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂と式(2)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の合計量(不揮発分)に対する、式(1)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の含有割合が、40質量%超かつ75質量%以下である樹脂組成物。」
の点で一致し、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点1D>
本件発明2においては、成分(D)のエポキシ硬化剤が、どのような硬化剤であるか特定されていないのに対して、同日発明1においては、成分(D)のエポキシ硬化剤が、「フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤およびシアネート樹脂から選択される1種以上」であると特定されている点。
<相違点2D>
本件発明2においては、樹脂組成物が、「樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための」ものであることが特定されているのに対し、同日発明1では、そのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点2Dから先に検討する。
同日発明1には、本件発明2でした特定はなく、この特定は使用用途を限定したものであって、実質的な相違点である。
したがって、相違点1Dについて検討するまでもなく、本件発明2は、同日発明1と同一ではない。
また、本件発明1は本件発明2の態様を含み、やはり相違点2Dについては実質的な相違点となるから、本件発明1は、同日発明1と同一ではない。
イ 本件発明3~7、12について
請求項1又は2を引用する本件発明3~7、12についても、上記と同様であって、本件発明3~7、12は、同日発明2~6、10と同一ではない。
ウ 申立人の主張について
(ア) 申立人の主張の内容
申立人は、平成30年6月28日提出の意見書において、同日発明7の発明特定事項を同日発明1に含むように解釈し、これを引用する同日発明8、9において、さらに、同日発明7の粗面化処理された絶縁層が、【0003】等の記載から導体層が形成されることから、本件発明10、11に追加された特定事項は、同日発明8、9も記載されているに等しいことになり、同一である旨の主張をしている(主張1)。
また、原出願である特願2010-540540号(甲8号証)の特許明細書は、本件特許明細書と同一であり、同日発明1~10の各発明は、明細書の【0001】、【0066】等に記載されている用途に用いられるものであり、それ以外の用途に用いられることは記載されていないから、本件発明1~7,9~12はその用途を限定したとしても同日発明1~10と依然として同一であり、特許法第39条第2項に違反している旨の主張をしている(主張2)。
(イ) 判断
まず、主張1について、請求項1を引用し、請求項7を引用した同日発明8、9は、当該請求項7に特定する条件について、本件発明10、11には特定がなく、一方、同日発明8、9では導体層に係る特定もないので、申立人の主張1は採用できない。
また、主張2について、【0001】には、
「【0001】
本発明は、多層プリント配線板等の回路基板の絶縁層形成に好適な樹脂組成物、及び該樹脂組成物より得られる接着フィルム、プリプレグ等の絶縁樹脂シート、並びに該樹脂組成物の硬化物により絶縁層が形成された回路基板に関する。」
と記載があるが、当該「多層プリント配線板等の回路基板の絶縁層形成に好適な」樹脂組成物との記載は、特定の用途が好適な一例としてあげられているにすぎないものである。また、【0066】の記載があったとしても、特定の用途以外の使用も含み得る同日発明1~10と、特定の用途のみでの使用を限定した本件発明1~7、9~12とが同一ということにはならない。
したがって、申立人の主張2も採用できない。
よって、取消理由3)はその理由がない。
(3) 小括
以上のとおり、平成29年7月6日付けで通知した取消理由では、本件発明1~7、9~12に係る特許を取り消すことはできない。
第6 取消理由で採用しなかった特許異議の申立理由
1 特許異議の申立の理由の概要(特許異議申立書の申立ての理由II)
本件発明1~12は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1、3~7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの特許は同法第113条第2号の規定に該当するので取り消されるべきである。
<証拠方法>
甲第1号証:特開2007-238769号公報
甲第2号証:三菱ケミカル製品案内2017年4月、表紙、第1~3頁及び奥付
甲第3号証:特開2007-211143号公報
甲第4号証:特開2006-16574号公報
甲第5号証:特開平11-21429号公報
甲第6号証:特開解2001-181375号公報
甲第7号証:特開平8-157621号公報
(以下、各甲号証を「甲1」等と略していう。なお、甲第1号証は、第4 1、3の取消理由で用いた引用文献に相当する。)
2 本件発明1について
(1) 対比
本件発明1と引用文献に記載された発明(引用発明A、B)との対比は、第5 3(1)ウ(ア)に記載したとおりであり、両者の一致点、相違点は再掲すると以下のとおりである。
本件発明1と引用発明A、Bは、
「ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、
(C)液状多官能エポキシ樹脂、
(D)エポキシ硬化剤、
(E)熱可塑性樹脂、
(F)無機充填材を含有する樹脂組成物であって、
樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、成分(C)の含有量が1~20質量%、成分(F)の含有量が10~70質量%である樹脂組成物。」
の点で一致し、以下の点で一応相違している。
<相違点1C>
本件発明1においては、樹脂組成物が、「(A)式(1)(注:構造式は省略)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂」、「(B)式(2)(注:構造式は省略)で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂」を含有し、不揮発分100質量%に対し、成分(A)の含有量が「3~15質量%」、成分(B)の含有量が「1~15質量%」であるのに対して、引用発明A、Bにおいては、配合物ワニスが、「ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂(エポキシ当量280、日本化薬製NC-3000)」を含有し、不揮発分100質量%に対し、その含有量が引用発明Aでは「約20.8質量%」、引用発明Bでは「約16.7質量%」である点。
<相違点2C>
本件発明1では、「支持体と、該支持体上に形成された、」「樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための樹脂組成物」であるのに対して、引用発明A、Bにおいては、配合物ワニスがそのように特定されていない点。
(2) 判断
事案に鑑み、相違点2Cから先に検討する。
引用文献には、配合物ワニスをポリイミドフィルムの片面に塗工、乾燥し、さらに評価パターンに積層し、フレキシブルプリント回路板を作製して電気絶縁性を評価・測定することも記載されているものの(第5 1(2)ア摘示(イ)~(エ))、引用発明A、Bは、フレキシブルプリント回線板のカバーレイフィルム、つまり保護フィルムに用いるためのものである(第5 1(2)ア摘示(ア))。
そして、引用文献(甲1)には、配合物ワニスが、本件発明1における「樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層の表面を粗化処理し、粗化処理した粗化面に導体層を形成する回路基板の製造方法において使用するための」樹脂組成物であることは記載されていない。また、甲3~甲7の記載をみても、カバーレイフィルムに用いる引用発明A、Bの組成物を、相違点2Cに係る用途へ使用することの動機付けはないから、引用発明A,Bを、本件発明1の特定の用途のための樹脂組成物とすることは、当業者であったとしても容易になし得たことではない。
以上のことから、相違点1Cについて検討するまでもなく、本件発明1は、引用文献(甲1)に記載された発明及び甲3~7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでもない。
2 本件発明2~7、9~12について
本件発明2~7、9~12は、直接又は間接的に請求項1を引用するものであり、上記1で対比したのと同じ相違点が存在し、それらについては同様の判断となる。
したがって、本件発明2~7、9~12は、引用文献(甲1)に記載された発明及び甲3~7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでもない。
3 小括
よって、上記特許異議の申立理由では、本件発明1~7、9~12に係る特許を取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立の理由によっては、請求項1~7、9~12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~7、9~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項8に係る特許は、本件訂正の請求による訂正により削除されたため、請求項8に対する特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2017-700447