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特許異議申立

2018-700095

審判番号
2018-700095
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2014-500907外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2018年02月02日
審決日
2019年05月30日
公報発行日
2021年06月25日
結論
請求成立(取消)
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-ZAA(C08L) / P1651.537-ZAA(C08L) / P1651.113-ZAA(C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条、特許法第36条第6項、特許法第120条の5第7項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6172139号発明「樹脂組成物、及びこれを用いたポリイミド樹脂膜、ディスプレイ基板とその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6172139号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、7、8〕、〔2、9、10〕、〔3、11、12〕、〔4、13、14〕、5、〔6、15、16〕及び〔17-19〕について訂正することを認める。 特許第6172139号の請求項1ないし4及び6ないし19に係る特許を取り消す。 特許第6172139号の請求項5に係る特許に対する本件特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯・本件異議申立の趣旨 1.本件特許の設定登録までの経緯 本件特許第6172139号(以下、単に「本件特許」という。)に係る出願(特願2014-500907号、以下「本願」という。)は、平成25年2月15日(優先権主張:平成24年2月23日、特願2012-37369号)の国際出願日に出願人日立化成デュポンマイクロシステムズ株式会社(以下「特許権者」という。)によりされたものとみなされる特許出願であり、平成29年7月14日に特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、平成29年8月2日に特許公報の発行がされたものである。 2.本件異議申立の趣旨 本件特許につき平成30年2月2日付けで特許異議申立人野田澄子(以下「申立人」という。)により「特許第6172139号の特許請求の範囲の全請求項に記載された発明についての特許は取り消されるべきものである。」という趣旨の本件異議申立がされた。 3.以降の手続の経緯 以降の手続の経緯は、以下のとおりである。 平成30年 4月27日付け 取消理由通知 平成30年 7月 6日   意見書・訂正請求書 平成30年 7月13日付け 通知書(申立人あて) 平成30年 8月20日   意見書(申立人) 平成30年10月16日付け 取消理由通知(決定の予告) 平成30年12月17日   意見書・訂正請求書 平成31年 2月12日付け 通知書(申立人あて) 平成31年 3月14日   意見書(申立人) (上記のとおり、平成30年12月17日に新たな訂正請求がされたから、平成30年7月6日付けの訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。) 第2 申立人が主張する取消理由 申立人は、本件特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、下記甲第1号証ないし甲第6号証を提示し、概略、以下の取消理由1ないし3が存するとしているものと認められる。 取消理由1:本件発明1ないし8は、いずれも、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 取消理由2:本件発明1ないし8は、いずれも、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 取消理由3:本件発明5は、その所期の効果を奏さない実施態様を含むものであり、(本件特許に係る明細書の)発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、本件特許に係る請求項5の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないものであって、本件の請求項5に係る発明についての特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願にされたものであるから、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 ・申立人提示の甲号証 甲第1号証:特開2010-202729号公報 甲第2号証:特公平6-51803号公報 甲第3号証:特開2005-68347号公報 甲第4号証:特表2011-514266号公報 甲第5号証:特開2011-225675号公報 甲第6号証:特開2011-46918号公報 (以下、上記甲第1号証ないし甲第6号証につき「甲1」ないし「甲6」と略していう。) 第3 当審が通知した取消理由(決定の予告)の概要 当審が平成30年10月16日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。 「当審は、依然として、 申立人が主張する下記取消理由2並びに当審が通知した下記取消理由aにより、本件発明1ないし8についての特許はいずれも取り消すべきもの、 と判断する。以下、事案に鑑み、取消理由2、取消理由aの順で検討する。 取消理由2:本件発明1ないし8は、いずれも、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 取消理由a:本件発明1ないし8は、その所期の効果を奏さない実施態様を含むものであり、(本件特許に係る明細書の)発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、本件特許に係る請求項1ないし8の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないものであって、本件の請求項1ないし8に係る発明についての特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願にされたものであるから、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 I.取消理由2について ・・(中略)・・ 3.取消理由2に係る検討のまとめ 以上のとおりであるから、本件発明1ないし8は、いずれも甲1に記載された発明に基づき、必要に応じて当業界の周知慣用の技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものではない。 よって、本件の請求項1ないし8に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、いずれも同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。 II.取消理由aについて ・・(中略)・・ 4.取消理由aについてのまとめ 以上のとおり、本件の請求項1及び3ないし8の記載は、いずれも特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、同条同法同項(柱書)に規定する要件を満たしていない。 よって、本件の請求項1及び3ないし8に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 III.当審の判断のまとめ 以上のとおり、本件発明1ないし8は、いずれも特許法第29条第2項の規定により、いずれも特許を受けることができるものではないから、本件の請求項1ないし8に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、いずれも同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 また、本件の請求項1及び3ないし8に係る記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、同法同条同項(柱書)の規定を満たしておらず、本件の請求項1及び3ないし8に係る発明についての特許は、いずれも特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。」 第4 平成30年12月17日付けの訂正請求について 上記平成30年12月17日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の適否につき検討する。 1.訂正内容 本件訂正は、本件特許に係る特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし19について訂正するものであって、具体的な訂正事項は以下のとおりである。(なお、訂正後の記載中の下線は、訂正部位を表す。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「(a)ポリイミド前駆体と、(b)アルコキシシラン化合物と、(c)有機溶剤と、を含有し、(b)アルコキシシラン化合物の含有量が(a)ポリイミド前駆体に対して0.01~2質量%である樹脂組成物であって、 前記樹脂組成物を支持体に塗布、加熱しポリイミド樹脂膜を形成する工程と、前記ポリイミド樹脂膜上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子が形成されたポリイミド樹脂膜を支持体から剥離する工程とを含む、ディスプレイ基板の製造方法に用いられる、樹脂組成物。」 と記載されているのを、 「(a)-般式(1)で表される構造単位を有するポリアミド酸と、(b)3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ-アミノプロピルトリブトキシシラン、γ-アミノエチルトリエトキシシラン、γ-アミノエチルトリメトキシシラン、γ-アミノエチルトリプロポキシシラン、γ-アミノエチルトリブトキシシラン、γ-アミノブチルトリエトキシシラン、γ-アミノブチルトリメトキシシラン、γ-アミノブチルトリプロポキシシラン、及びγ-アミノブチルトリブトキシシランからなる群から選択される1以上のアルコキシシラン化合物と、(c)有機溶剤と、を含有し、前記(b)成分の含有量が前記(a)成分に対して0.2~2質量%である樹脂組成物であって、 前記樹脂組成物をシリコン基板又はガラス基板に塗布、加熱し、1~50μmの膜厚を有するポリイミド樹脂膜を形成する工程と、前記ポリイミド樹脂膜上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子が形成されたポリイミド樹脂膜を支持体から剥離する工程とを含む、ディスプレイ基板の製造方法に用いられる、樹脂組成物。 【化11】 (一般式(1)中、R1は芳香族環を有する2価の有機基を示し、R2は芳香族環を有する4価の有機基を示す。)」 に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項7及び8も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に、 「(a)ポリイミド前駆体が、一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミド酸である、請求項1に記載の樹脂組成物。 【化1】 (一般式(1)中、R1は芳香族環を有する2価の有機基を示し、R2は芳香族環を有する4価の有機基を示す。)」 と記載されているのを、 「(a)一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミド酸と、(b)3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びフェニルトリメトキシシランからなる群から選択されるl以上のアルコキシシラン化合物と、(c)有機溶剤と、を含有し、前記(b)成分の含有量が前記(a)成分に対して0.2~2質量%である樹脂組成物であって、 前記樹脂組成物をシリコン基板又はガラス基板に塗布、加熱し、1~50μmの膜厚を有するポリイミド樹脂膜を形成する工程と、前記ポリイミド樹脂膜上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子が形成されたポリイミド樹脂膜を支持体から剥離する工程とを含む、ディスプレイ基板の製造方法に用いられる、樹脂組成物。 【化1】 (一般式(1)中、R1は芳香族環を有する2価の有機基を示し、R2は芳香族環を有する4価の有機基を示す。)」 に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に、 「(b)アルコキシシラン化合物の含有量が、(a)ポリイミド前駆体に対して0.02~2質量%である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。」 と記載されているのを、 「(a)一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミド酸と、(b)3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ-アミノプロピルトリブトキシシラン、γ-アミノエチルトリエトキシシラン、γ-アミノエチルトリメトキシシラン、γ-アミノエチルトリプロポキシシラン、γ-アミノエチルトリブトキシシラン、γ-アミノブチルトリエトキシシラン、γ-アミノブチルトリメトキシシラン、γ-アミノブチルトリプロポキシシラン、及びγ-アミノブチルトリブトキシシランからなる群から選択される1以上のアルコキシシラン化合物と、(c)有機溶剤と、を含有し、前記(b)成分の含有量が前記(a)成分に対して0.2~2質量%である樹脂組成物であって、 前記樹脂組成物をシリコン基板又はガラス基板に塗布、加熱し、1~50μmの膜厚を有するポリイミド樹脂膜を形成する工程と、前記ポリイミド樹脂膜上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子が形成されたポリイミド樹脂膜を支持体から剥離する工程とを含む、ディスプレイ基板の製造方法に用いられる、樹脂組成物。 【化12】 (一般式(1)中、R1は芳香族環を有する2価の有機基を示し、R2は下記式(7)で表される4価の有機基を示す。) 【化13】 」 に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に、 「(b)アルコキシシラン化合物の含有量が、(a)ポリイミド前駆体に対して0.05~1質量%である、請求項1ないし3のいずれかに記載の樹脂組成物。」 と記載されているのを、 「(a)一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミド酸と、(b)3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ-アミノプロピルトリブトキシシラン、γ-アミノエチルトリエトキシシラン、γ-アミノエチルトリメトキシシラン、γ-アミノエチルトリプロポキシシラン、γ-アミノエチルトリブトキシシラン、γ-アミノブチルトリエトキシシラン、γ-アミノブチルトリメトキシシラン、γ-アミノブチルトリプロポキシシラン、およびγ-アミノブチルトリブトキシシランからなる群から選択される1以上のアルコキシシラン化合物と、(c)有機溶剤と、を含有し、前記(b)成分の含有量が前記(a)成分に対して0.2~1質量%である樹脂組成物であって、 前記樹脂組成物をシリコン基板又はガラス基板に塗布、加熱し、1~50μmの膜厚を有するポリイミド樹脂膜を形成する工程と、前記ポリイミド樹脂膜上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子が形成されたポリイミド樹脂膜を支持体から剥離する工程とを含む、ディスプレイ基板の製造方法に用いられる、樹脂組成物。 【化14】 (一般式(1)中、R1は芳香族環を有する2価の有機基を示し、R2は芳香族環を有する4価の有機基を示す。)」 に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に、 「(a)ポリイミド前駆体の重量平均分子量が、15,000~200,000である請求項1ないし5のいずれかに記載の樹脂組成物。」 と記載されているのを、 「(a)一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミド酸と、(b)3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ-アミノプロピルトリブトキシシラン、γ-アミノエチルトリエトキシシラン、γ-アミノエチルトリメトキシシラン、γ-アミノエチルトリプロポキシシラン、γ-アミノエチルトリブトキシシラン、γ-アミノブチルトリエトキシシラン、γ-アミノブチルトリメトキシシラン、γ-アミノブチルトリプロポキシシラン、及びγ-アミノブチルトリブトキシシランからなる群から選択される1以上のアルコキシシラン化合物と、(c)有機溶剤と、を含有し、前記(b)成分の含有量が前記(a)成分に対して0.2~2質量%であり、前記(a)成分の重量平均分子量が15,000~200,000である樹脂組成物であって、 前記樹脂組成物をシリコン基板又はガラス基板に塗布、加熱し、1~50μmの膜厚を有するポリイミド樹脂膜を形成する工程と、前記ポリイミド樹脂膜上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子が形成されたポリイミド樹脂膜を支持体から剥離する工程とを含む、ディスプレイ基板の製造方法に用いられる、樹脂組成物。 【化15】 (一般式(1)中、R1は下記式(3)で表される2価の有機基を示し、R2は芳香族環を有する4価の有機基を示す。) 【化16】 」 に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7に、 「請求項1ないし6のいずれかに記載された樹脂組成物を加熱して得られるポリイミド樹脂膜。」 と記載されているのを、 「請求項1に記載された樹脂組成物を加熱して得られるポリイミド樹脂膜。」 に訂正する(請求項7の記載を直接的に引用する請求項8も同様に訂正する)。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項7に、 「請求項1ないし6のいずれかに記載された樹脂組成物を加熱して得られるポリイミド樹脂膜。」 とあるうち、請求項2を引用するものについて、新たに請求項9とする。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項8に、 「請求項7に記載のポリイミド樹脂膜を含むディスプレイ基板。」 とあるうち、請求項7のうち請求項2を引用するものについて、新たに請求項10とする。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項7に、 「請求項1ないし6のいずれかに記載された樹脂組成物を加熱して得られるポリイミド樹脂膜。」 とあるうち、請求項3を引用するものについて、新たに請求項11とする。 (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項8に、 「請求項7に記載のポリイミド樹脂膜を含むディスプレイ基板。」 とあるうち、請求項7のうち請求項3を引用するものについて、新たに請求項12とする。 (12)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項7に、 「請求項1ないし6のいずれかに記載された樹脂組成物を加熱して得られるポリイミド樹脂膜。」 とあるうち、請求項4を引用するものについて、新たに請求項13とする。 (13)訂正事項13 特許請求の範囲の請求項8に、 「請求項7に記載のポリイミド樹脂膜を含むディスプレイ基板。」 とあるうち、請求項7のうち請求項4を引用するものについて、新たに請求項14とする。 (14)訂正事項14 特許請求の範囲の請求項7に、 「請求項1ないし6のいずれかに記載された樹脂組成物を加熱して得られるポリイミド樹脂膜。」 とあるうち、請求項6を引用するものについて、新たに請求項15とする。 (15)訂正事項15 特許請求の範囲の請求項8に、 「請求項7に記載のポリイミド樹脂膜を含むディスプレイ基板。」 とあるうち、請求項7のうち請求項6を引用するものについて、新たに請求項16とする。 (16)訂正事項16 特許請求の範囲の請求項3に、 「(b)アルコキシシラン化合物の含有量が、(a)ポリイミド前駆体に対して0.02~2質量%である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、 「(a)一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミド酸と、(b)3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ-アミノプロピルトリブトキシシラン、γ-アミノエチルトリエトキシシラン、γ-アミノエチルトリメトキシシラン、γ-アミノエチルトリプロポキシシラン、γ-アミノエチルトリブトキシシラン、γ-アミノブチルトリエトキシシラン、γ-アミノブチルトリメトキシシラン、γ-アミノブチルトリプロポキシシラン、乃びγ-アミノブチルトリブトキシシランからなる群から選択される1以上のアルコキシシラン化合物と、(c)有機溶剤と、を含有し、前記(b)成分の含有量が前記(a)成分に対して0.2~2質量%である樹脂組成物であって、 前記樹脂組成物をシリコン基板又はガラス基板に塗布、加熱し、1~50μmの膜厚を有するポリイミド樹脂膜を形成する工程と、前記ポリイミド樹脂膜上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子が形成されたポリイミド樹脂膜を支持体から剥離する工程とを含む、ディスプレイ基板の製造方法に用いられる、樹脂組成物。 【化17】 (一般式(1)中、R1は下記式(3)で表される2価の有機基を示し、R2は下記式(7)で表される4価の有機基を示す。) 【化18】 」 と記載し、新たに請求項17とする。 (17)訂正事項17 特許請求の範囲の請求項7に、 「請求項1ないし6のいずれかに記載された樹脂組成物を加熱して得られるポリイミド樹脂膜。」 とあるうちの、請求項3のうち請求項2を引用するものについて、新たに請求項18とする。 (18)訂正事項18 特許請求の範囲の請求項8に、 「請求項7に記載のポリイミド樹脂膜を含むディスプレイ基板。」 とあるうち、請求項7において請求項3のうち請求項2を引用するものについて、新たに請求項19とする。 2.検討 なお、以下の検討において、この訂正請求による訂正を「本件訂正」といい、本件訂正前の特許請求の範囲における請求項1ないし8を「旧請求項1」ないし「旧請求項8」、本件訂正後の特許請求の範囲における請求項1ないし19を「新請求項1」ないし「新請求項19」という。 (1)訂正の目的要件について 上記の各訂正事項による訂正の目的につき検討する。 ア.訂正事項1に係る訂正 訂正事項1に係る訂正は、旧請求項1につき、旧請求項2に記載したポリアミド酸に係る事項、明細書【0029】に記載したアルコキシシラン化合物の種別に係る事項、明細書【0038】及び【実施例】に記載した支持体の種別に係る事項及び明細書【0040】に記載したポリイミド樹脂膜の厚さに係る事項を付加するとともに、「(b)アルコキシシラン化合物」の使用量範囲の下限値を引き上げて範囲を縮小することにより、特許請求の範囲を減縮して新請求項1としているものと認められる。 してみると、上記訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとも認められる。 したがって、上記訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定の目的要件に適合するものである。 イ.訂正事項2に係る訂正 訂正事項2に係る訂正は、旧請求項2につき、同項で引用する旧請求項1に記載した事項を書き下して引用形式であったものを独立形式に改めた上で、明細書【0029】に記載したアルコキシシラン化合物の種別のうち好適な4種のものに係る事項、明細書【0038】及び【実施例】に記載した支持体の種別に係る事項及び明細書【0040】に記載したポリイミド樹脂膜の厚さに係る事項を付加するとともに、「(b)アルコキシシラン化合物」の使用量範囲の下限値を引き上げて範囲を縮小することにより、特許請求の範囲を減縮して新請求項2としているものと認められる。 してみると、上記訂正事項2に係る訂正は、引用項形式で記載した請求項を独立項形式に改めること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものとも認められる。 したがって、上記訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に規定の目的要件に適合するものである。 ウ.訂正事項3に係る訂正 訂正事項3に係る訂正は、旧請求項3につき、同項で引用する旧請求項1及び2に記載した事項を書き下して引用形式であったものを独立形式に改めた上で、明細書【0024】に記載した式(1)における「R2」基に係る事項、明細書【0029】に記載したアルコキシシラン化合物の種別に係る事項、明細書【0038】及び【実施例】に記載した支持体の種別に係る事項及び明細書【0040】に記載したポリイミド樹脂膜の厚さに係る事項を付加するとともに、「(b)アルコキシシラン化合物」の使用量範囲の下限値を引き上げて範囲を縮小することにより、特許請求の範囲を減縮して新請求項3としているものと認められる。 してみると、上記訂正事項3に係る訂正は、引用項形式で記載した請求項を独立項形式に改めること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものとも認められる。 したがって、上記訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に規定の目的要件に適合するものである。 エ.訂正事項4に係る訂正 訂正事項4に係る訂正は、旧請求項4につき、同項で引用する旧請求項1ないし3に記載した事項を書き下して引用形式であったものを独立形式に改めた上で、明細書【0029】に記載したアルコキシシラン化合物の種別に係る事項、明細書【0038】及び【実施例】に記載した支持体の種別に係る事項及び明細書【0040】に記載したポリイミド樹脂膜の厚さに係る事項を付加するとともに、「(b)アルコキシシラン化合物」の使用量範囲の下限値を引き上げて範囲を縮小することにより、特許請求の範囲を減縮して新請求項4としているものと認められる。 してみると、上記訂正事項4に係る訂正は、引用項形式で記載した請求項を独立項形式に改めること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものとも認められる。 したがって、上記訂正事項4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に規定の目的要件に適合するものである。 オ.訂正事項5に係る訂正 訂正事項5に係る訂正では、旧請求項5に係る事項を全て削除したのであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとも認められる。 したがって、上記訂正事項5に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定の目的要件に適合するものである。 カ.訂正事項6に係る訂正 訂正事項6に係る訂正は、旧請求項6につき、同項で引用する旧請求項1ないし4に記載した事項を書き下して引用形式であったものを独立形式に改めた上で、明細書【0021】及び【0022】に記載した式(1)における「R1」基に係る事項の一部、明細書【0029】に記載したアルコキシシラン化合物の種別に係る事項、明細書【0038】及び【実施例】に記載した支持体の種別に係る事項及び明細書【0040】に記載したポリイミド樹脂膜の厚さに係る事項を付加するとともに、「(b)アルコキシシラン化合物」の使用量範囲の下限値を引き上げて範囲を縮小することにより、特許請求の範囲を減縮して新請求項6としているものと認められる。 してみると、上記訂正事項6に係る訂正は、引用項形式で記載した請求項を独立項形式に改めること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものとも認められる。 したがって、上記訂正事項6に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に規定の目的要件に適合するものである。 キ.訂正事項7に係る訂正 訂正事項7に係る訂正は、旧請求項7につき、同項で択一的に引用する旧請求項1ないし6を新請求項1のみに限定して新請求項7とするものであり、さらに、上記ア.で説示したとおり、旧請求項1は、訂正事項1に係る訂正によって特許請求の範囲を減縮して新請求項1としたものであるから、訂正事項7に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 したがって、上記訂正事項7に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定の目的要件に適合するものである。 ク.訂正事項8、訂正事項10、訂正事項12及び訂正事項14に係る各訂正 訂正事項8、訂正事項10、訂正事項12及び訂正事項14に係る各訂正につき併せて検討する。 訂正事項8、訂正事項10、訂正事項12及び訂正事項14に係る各訂正は、いずれも、旧請求項7につき、同項で択一的に引用する旧請求項2、3、4及び6をそれぞれ新請求項2、3、4又は6のみに限定して新請求項9、11、13又は15とするものである。 そして、上記イ.ないしエ.及びカ.でそれぞれ説示したとおり、旧請求項2、3、4及び6は、それぞれ訂正事項2ないし4及び6に係る訂正によって特許請求の範囲を減縮して新請求項2ないし4及び6としたものであるから、訂正事項7に係る訂正により訂正された新請求項7並びに新請求項9、11、13及び15は、その技術的範囲を総加しても、旧請求項7に対して、特許請求の範囲が実質的に減縮されているものと認められる。 してみると、訂正事項8、訂正事項10、訂正事項12及び訂正事項14に係る各訂正は、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 したがって、訂正事項8、訂正事項10、訂正事項12及び訂正事項14に係る各訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定の目的要件に適合するものである。 ケ.訂正事項9、訂正事項11、訂正事項13及び訂正事項15に係る各訂正 訂正事項9、訂正事項11、訂正事項13及び訂正事項15に係る各訂正につき併せて検討する。 訂正事項9、訂正事項11、訂正事項13及び訂正事項15に係る各訂正は、いずれも、旧請求項8につき、同項で引用する旧請求項7において更に択一的に引用する旧請求項2、3、4及び6をそれぞれ新請求項2、3、4又は6のみに限定した新請求項9、11、13又は15をそれぞれ引用して新請求項10、12、14又は16とするものである。 そして、上記ク.で説示したとおり、訂正事項7に係る訂正により訂正された新請求項7並びに新請求項9、11、13及び15は、その技術的範囲を総加しても、旧請求項7に対して、特許請求の範囲が実質的に減縮されているのであるから、同各項をそれぞれ引用する新請求項7を引用する新請求項8並びに新請求項10、12、14及び16についても、その技術的範囲を総加した場合、旧請求項8に対して、特許請求の範囲が実質的に減縮されているものと認められる。 してみると、訂正事項9、訂正事項11、訂正事項13及び訂正事項15に係る各訂正は、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 したがって、訂正事項9、訂正事項11、訂正事項13及び訂正事項15に係る各訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定の目的要件に適合するものである。 コ.訂正事項16ないし18に係る各訂正 訂正事項16ないし18に係る各訂正につき併せて検討する。 訂正事項16に係る訂正は、旧請求項3につき、同項で引用する旧請求項1及び2に記載した事項を書き下した上で、明細書【0024】に記載した式(1)における「R1」基及び「R2」基に係る事項、明細書【0029】に記載したアルコキシシラン化合物の種別に係る事項、明細書【0038】及び【実施例】に記載した支持体の種別に係る事項及び明細書【0040】に記載したポリイミド樹脂膜の厚さに係る事項を付加するとともに、「(b)アルコキシシラン化合物」の使用量範囲の下限値を引き上げて範囲を縮小することにより、特許請求の範囲を減縮して独立した新請求項17としているものと認められる。 そして、上記ウ.で説示したとおり、訂正事項3に係る訂正により訂正された新請求項3は、旧請求項3に対して特許請求の範囲が実質的に減縮されているとともに、訂正事項16に係る訂正により訂正された新請求項17についても旧請求項3に対して特許請求の範囲が実質的に減縮されているのであり、その技術的範囲を総加した場合、旧請求項3に対して、特許請求の範囲が実質的に減縮されているものと認められる。 また、訂正事項17に係る訂正は、旧請求項3を引用する旧請求項7につき、上記のとおり、旧請求項3につき特許請求の範囲を減縮して独立したものである新請求項17を更に引用して新請求項18としたものであるから、旧請求項7に対して、特許請求の範囲が実質的に減縮されているものと認められる。 さらに、訂正事項18に係る訂正は、旧請求項3を引用する旧請求項7につき更に引用する旧請求項8について、上記のとおり、旧請求項3につき特許請求の範囲を減縮して独立したものである新請求項17を更に引用して新請求項18としたものを引用して新請求項19としたものであるから、旧請求項8に対して、特許請求の範囲が実質的に減縮されているものと認められる。 してみると、訂正事項16ないし18に係る各訂正は、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 したがって、訂正事項16ないし18に係る各訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定の目的要件に適合するものである。 サ.小括 以上のとおり、本件訂正に係る訂正事項1ないし18に係る各訂正は、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に規定の目的要件に適合するものである。 (2)新規事項の追加及び特許請求の範囲の実質的拡張・変更について 上記(1)に示したとおり、訂正事項1ないし18に係る訂正により、新請求項1ないし19は、訂正前の特許請求の範囲及び特許に係る明細書に記載された事項に基づき、特許請求の範囲を旧請求項1ないし8に記載された事項に対して減縮していることが明らかであるから、上記訂正事項1ないし18による訂正は、いずれも新たな技術的事項を導入しないものであり、また、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものではないことが明らかである。 してみると、上記訂正事項1ないし18による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定を満たすものである。 (3)一群の請求項について 本件訂正前の旧請求項1ないし8は、いずれも旧請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件訂正前の請求項1ないし8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (4)独立特許要件について なお、本件の特許異議の申立ては、旧請求項1ないし8に係る全ての発明についての特許につき、申立てがされているから、訂正の適否の検討において独立特許要件につき検討すべき請求項が存するものではない。 (5)「別の訂正単位とする求め」について 特許権者は、本件訂正請求書(第53頁)において、「訂正後の請求項2~6、9~19については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求める。」としている。 しかるに、上記「求め」は、訂正後の請求項2ないし6及び9ないし19のそれぞれにつき、訂正が認められる場合には、各請求項ごとに別途訂正することを求める趣旨であるものと認められるところ、訂正後の請求項2~6、9~19に係る訂正については、上記(1)及び(2)で説示したとおりの理由により不適法なものではなく、認められるべきものであるから、各請求項ごとに別の訂正単位とする求めを認容すべきものであるかに見える。 しかしながら、訂正後の請求項9及び10はそれぞれ請求項2を直接又は間接的に引用して記載しており、同様に、訂正後の請求項11及び12はそれぞれ請求項3を、訂正後の請求項13及び14はそれぞれ請求項4を、訂正後の請求項15及び16はそれぞれ請求項6を、訂正後の請求項18及び19はそれぞれ請求項17を、それぞれ直接又は間接的に引用して記載しているから、それぞれ一群の請求項を構成するものであって、訂正前に一群の請求項を構成するとした請求項1及び同項を直接又は間接的に引用する請求項7及び8と同様に一群の請求項を構成するから、訂正後の請求項〔1、7、8〕、〔2、9、10〕、〔3、11、12〕、〔4、13、14〕、〔6、15、16〕及び〔17-19〕の6つの一群の請求項を訂正単位とすべきものと認められる。 したがって、上記「求め」については、直ちに認容することはできず、訂正後の請求項〔1、7、8〕、〔2、9、10〕、〔3、11、12〕、〔4、13、14〕、〔6、15、16〕及び〔17-19〕の6つの一群の請求項に加えて、請求項5については請求項ごとに訂正単位とすべきものである。 3.訂正に係る検討のまとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第5項並びに第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、7、8〕、〔2、9、10〕、〔3、11、12〕、〔4、13、14〕、5、〔6、15、16〕及び〔17-19〕について訂正を認める。 第5 訂正後の本件特許及び特許異議の申立てに係る審理範囲 1.訂正後の本件特許に係る請求項に記載された事項 訂正後の本件特許に係る請求項1ないし19には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 (a)一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミド酸と、(b)3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ-アミノプロピルトリブトキシシラン、γ-アミノエチルトリエトキシシラン、γ-アミノエチルトリメトキシシラン、γ-アミノエチルトリプロポキシシラン、γ-アミノエチルトリブトキシシラン、γ-アミノブチルトリエトキシシラン、γ-アミノブチルトリメトキシシラン、γ-アミノブチルトリプロポキシシラン、及びγ-アミノブチルトリブトキシシランからなる群から選択される1以上のアルコキシシラン化合物と、(c)有機溶剤と、を含有し、前記(b)成分の含有量が前記(a)成分に対して0.2~2質量%である樹脂組成物であって、 前記樹脂組成物をシリコン基板又はガラス基板に塗布、加熱し、1~50μmの膜厚を有するポリイミド樹脂膜を形成する工程と、前記ポリイミド樹脂膜上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子が形成されたポリイミド樹脂膜を支持体から剥離する工程とを含む、ディスプレイ基板の製造方法に用いられる、樹脂組成物。 【化11】 (一般式(1)中、R1は芳香族環を有する2価の有機基を示し、R2は芳香族環を有する4価の有機基を示す。) 【請求項2】 (a)一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミド酸と、(b)3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びフェニルトリメトキシシランからなる群から選択される1以上のアルコキシシラン化合物と、(c)有機溶剤と、を含有し、前記(b)成分の含有量が前記(a)成分に対して0.2~2質量%である樹脂組成物であって、 前記樹脂組成物をシリコン基板又はガラス基板に塗布、加熱し、1~50μmの膜厚を有するポリイミド樹脂膜を形成する工程と、前記ポリイミド樹脂膜上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子が形成されたポリイミド樹脂膜を支持体から剥離する工程とを含む、ディスプレイ基板の製造方法に用いられる、樹脂組成物。 【化1】 (一般式(1)中、R1は芳香族環を有する2価の有機基を示し、R2は芳香族環を有する4価の有機基を示す。) 【請求項3】 (a)一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミド酸と、(b)3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ-アミノプロピルトリブトキシシラン、γ-アミノエチルトリエトキシシラン、γ-アミノエチルトリメトキシシラン、γ-アミノエチルトリプロポキシシラン、γ-アミノエチルトリブトキシシラン、γ-アミノブチルトリエトキシシラン、γ-アミノブチルトリメトキシシラン、γ-アミノブチルトリプロポキシシラン、及びγ-アミノブチルトリブトキシシランからなる群から選択される1以上のアルコキシシラン化合物と、(c)有機溶剤と、を含有し、前記(b)成分の含有量が前記(a)成分に対して0.2~2質量%である樹脂組成物であって、 前記樹脂組成物をシリコン基板又はガラス基板に塗布、加熱し、1~50μmの膜厚を有するポリイミド樹脂膜を形成する工程と、前記ポリイミド樹脂膜上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子が形成されたポリイミド樹脂膜を支持体から剥離する工程とを含む、ディスプレイ基板の製造方法に用いられる、樹脂組成物。 【化12】 (一般式(1)中、R1は芳香族環を有する2価の有機基を示し、R2は下記式(7)で表される4価の有機基を示す。) 【化13】 【請求項4】 (a)一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミド酸と、(b)3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ-アミノプロピルトリブトキシシラン、γ-アミノエチルトリエトキシシラン、γ-アミノエチルトリメトキシシラン、γ-アミノエチルトリプロポキシシラン、γ-アミノエチルトリブトキシシラン、γ-アミノブチルトリエトキシシラン、γ-アミノブチルトリメトキシシラン、γ-アミノブチルトリプロポキシシラン、及びγ-アミノブチルトリブトキシシランからなる群から選択される1以上のアルコキシシラン化合物と、(c)有機溶剤と、を含有し、前記(b)成分の含有量が前記(a)成分に対して0.2~1質量%である樹脂組成物であって、 前記樹脂組成物をシリコン基板又はガラス基板に塗布、加熱し、1~50μmの膜厚を有するポリイミド樹脂膜を形成する工程と、前記ポリイミド樹脂膜上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子が形成されたポリイミド樹脂膜を支持体から剥離する工程とを含む、ディスプレイ基板の製造方法に用いられる、樹脂組成物。 【化14】 (一般式(1)中、R1は芳香族環を有する2価の有機基を示し、R2は芳香族環を有する4価の有機基を示す。) 【請求項5】(削除) 【請求項6】 (a)一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミド酸と、(b)3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ-アミノプロピルトリブトキシシラン、γ-アミノエチルトリエトキシシラン、γ-アミノエチルトリメトキシシラン、γ-アミノエチルトリプロポキシシラン、γ-アミノエチルトリブトキシシラン、γ-アミノブチルトリエトキシシラン、γ-アミノブチルトリメトキシシラン、γ-アミノブチルトリプロポキシシラン、及びγ-アミノブチルトリブトキシシランからなる群から選択される1以上のアルコキシシラン化合物と、(c)有機溶剤と、を含有し、前記(b)成分の含有量が前記(a)成分に対して0.2~2質量%であり、前記(a)成分の重量平均分子量が15,000~200,000である樹脂組成物であって、 前記樹脂組成物をシリコン基板又はガラス基板に塗布、加熱し、1~50μmの膜厚を有するポリイミド樹脂膜を形成する工程と、前記ポリイミド樹脂膜上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子が形成されたポリイミド樹脂膜を支持体から剥離する工程とを含む、ディスプレイ基板の製造方法に用いられる、樹脂組成物。 【化15】 (一般式(1)中、R1は下記式(3)で表される2価の有機基を示し、R2は芳香族環を有する4価の有機基を示す。) 【化16】 【請求項7】 請求項1に記載された樹脂組成物を加熱して得られるポリイミド樹脂膜。 【請求項8】 請求項7に記載のポリイミド樹脂膜を含むディスプレイ基板。 【請求項9】 請求項2に記載された樹脂組成物を加熱して得られるポリイミド樹脂膜。 【請求項10】 請求項9に記載のポリイミド樹脂膜を含むディスプレイ基板。 【請求項11】 請求項3に記載された樹脂組成物を加熱して得られるポリイミド樹脂膜。 【請求項12】 請求項11に記載のポリイミド樹脂膜を含むディスプレイ基板。 【請求項13】 請求項4に記載された樹脂組成物を加熱して得られるポリイミド樹脂膜。 【請求項14】 請求項13に記載のポリイミド樹脂膜を含むディスプレイ基板。 【請求項15】 請求項6に記載された樹脂組成物を加熱して得られるポリイミド樹脂膜。 【請求項16】 請求項15に記載のポリイミド樹脂膜を含むディスプレイ基板。 【請求項17】 (a)-般式(1)で表される構造単位を有するポリアミド酸と、(b)3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ-アミノプロピルトリブトキシシラン、γ-アミノエチルトリエトキシシラン、γ-アミノエチルトリメトキシシラン、γ-アミノエチルトリプロポキシシラン、γ-アミノエチルトリブトキシシラン、γ-アミノブチルトリエトキシシラン、γ-アミノブチルトリメトキシシラン、γ-アミノブチルトリプロポキシシラン、及びγ-アミノブチルトリブトキシシランからなる群から選択される1以上のアルコキシシラン化合物と、(c)有機溶剤と、を含有し、前記(b)成分の含有量が前記(a)成分に対して0.2~2質量%である樹脂組成物であって、 前記樹脂組成物をシリコン基板又はガラス基板に塗布、加熱し、1~50μmの膜厚を有するポリイミド樹脂膜を形成する工程と、前記ポリイミド樹脂膜上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子が形成されたポリイミド樹脂膜を支持体から剥離する工程とを含む、ディスプレイ基板の製造方法に用いられる、樹脂組成物。 【化17】 (一般式(1)中、R1は下記式(3)で表される2価の有機基を示し、R2は下記式(7)で表される4価の有機基を示す。) 【化18】 【請求項18】 請求項17に記載された樹脂組成物を加熱して得られるポリイミド樹脂膜。 【請求項19】 請求項18に記載のポリイミド趣旨膜を含むディスプレイ基板。」 (以下、訂正後の上記請求項1ないし19に係る各発明につき、項番に従い「本件発明1」ないし「本件発明19」という。また、併せて「本件発明」と総称することがある。) 2.本件特許異議の申立てに係る審理範囲 本件特許異議の申立ては、本件の全ての請求項(旧請求項1ないし8)に係る特許に対してされたものであるところ、上記第4で説示したとおり、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正により、訂正後の請求項1ないし19となったものであるから、本件特許異議の申立てに係る審理においては、訂正後の全ての請求項(新請求項1ないし19)につき審理対象とすべきものと認める。 第6 当審の判断 当審は、依然として、 取消理由通知(決定の予告)において示した下記取消理由2により、本件発明1ないし4及び6ないし19についての特許はいずれも取り消すべきもの、であり、 本件の請求項5に係る特許は、上記本件訂正により、その内容が全て削除され申立ての対象を欠くものとなっており、不適法なものとなってその治癒ができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、請求項5に係る特許に対する本件特許異議の申立ては却下すべきもの、 と判断する。以下、詳述する。 取消理由2:本件発明1ないし4及び6ないし19は、いずれも、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 1.甲号証に記載された事項及び記載された発明 以下、上記取消理由2につき検討するにあたり、当該理由は特許法第29条に係るものであるから、上記甲1ないし6に記載された事項を確認・摘示するとともに、甲1に記載された発明の認定を行う。 (なお、摘示における下線は、当審が付したものである。) (1)甲1(特開2010-202729号公報) ア.甲1に記載された事項 甲1には、以下の事項が記載されている。 (a-1) 「【請求項1】 液状の樹脂組成物をキャリア基板上に塗布成膜して固体状の樹脂膜を形成する工程、前記樹脂膜上に回路を形成する工程、前記回路が表面に形成された固体状の樹脂膜を前記キャリア基板から剥離する工程、の各工程を含む、表示デバイス又は受光デバイスであるフレキシブルデバイスの製造法に用いられる、フレキシブルデバイス基板となる前記液状の樹脂組成物であって、一般式(1) 【化1】 (一般式(1)中、Rは各々独立に水素原子又は一価の有機基を示し、R1は 【化2】 から選択される2価の有機基であり(但しR’は各々独立にアルキル基であり、アルキル基の水素原子はハロゲン原子で置換されても良い)、R2は 【化3】 から選択される四価の有機基であり、nは繰り返し数を表す正の整数である)で表される構造を有するポリイミド前駆体と有機溶媒とを含有してなるフレキシブルデバイス基板用ポリイミド前駆体樹脂組成物。 【請求項2】 ポリイミド前駆体の重量平均分子量が、15,000から200,000である請求項1に記載のフレキシブルデバイス基板形成用ポリイミド前駆体樹脂組成物。 【請求項3】 請求項1又は2に記載のフレキシブルデバイス基板形成用ポリイミド前駆体樹脂組成物をキャリア基板上に塗布成膜して固体状のポリイミド樹脂膜を形成する工程、前記樹脂膜上に回路を形成する工程、前記回路が表面に形成された固体状の樹脂膜を前記キャリア基板から剥離する工程の各工程を含む、表示デバイス又は受光デバイスであるフレキシブルデバイスの製造方法。 【請求項4】 ポリイミド樹脂膜の厚さが、1~20μmである請求項3に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。 【請求項5】 ポリイミド樹脂膜のガラス転移温度が、300℃以上である請求項3又は4に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。 【請求項6】 ポリイミド樹脂膜の100℃~200℃の範囲における熱膨張係数が、20ppm/K以下である請求項3から5のいずれかに記載のフレキシブルデバイスの製造方法。 【請求項7】 請求項3から6のいずれかに記載されたフレキシブルデバイスの製造方法により製造された表示デバイス又は受光デバイスであるフレキシブルデバイス。 【請求項8】 フレキシブルデバイスが、電子ペーパー、ディスプレイ又は太陽電池の受光素子である請求項7に記載のフレキシブルデバイス。」 (a-2) 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら、液晶ディスプレイ用基板、有機ELディスプレイ用基板、電子ペーパー用基板等の表示デバイスとしてのフレキシブルデバイス基板、薄膜太陽電池等の受光デバイスとしてのフレキシブルデバイス基板等のフレキシブルデバイス基板用としては、簡易な工程に適用でき、かつ、要求特性を高度に満足するものは知られていない。即ち、前記フレキシブルデバイス基板用としては、さらなる薄膜化の要求がなされ、また、工程上一旦キャリア基板上に薄膜を形成した状態でその上に各種回路を形成し、その後に剥離することができる液状樹脂組成物が要求されるが、このような工程に用いることができ、かつ、高度な要求特性を有する液状樹脂組成物は知られていない。 本発明は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー等の表示デバイス、太陽電池の受光デバイスであるフレキシブルデバイスにおいて、ガラス基板等のキャリア基板上に塗布することで簡単にかつ所望の膜厚の薄膜を形成し、その樹脂薄膜上に回路やディスプレイ層等を形成できるとともに、耐熱性に優れ、熱膨張係数の低いポリイミド膜となって、回路等の形成過程でキャリア基板層からのはがれやキャリア基板層のそりを生じさせず、回路等のはがれなどの欠陥も生じず、そしてその後、キャリア基板から欠陥を生じずに剥離ができる、液状のフレキシブルデバイス基板形成用ポリイミド前駆体樹脂組成物、これを用いたフレキシブルデバイス及びその製造方法を提供するものである。」 (a-3) 「【発明の効果】 【0009】 本発明における液状のフレキシブルデバイス基板形成用ポリイミド前駆体樹脂組成物は、低熱膨張、高耐熱性、高靭性に優れ、表示デバイス又は受光デバイスの基板として適したポリイミド薄膜を形成できる。 また、現在の主流である、ベースフィルムとしてすでにフィルムとして成型されている、厚さの決まったものを用いるのではなく、デバイスの製造に即して塗布成膜する液状の組成物を使用するため、スピンコートやスクリーン印刷などによりガラス基板などのキャリア基板上に塗布できる。この時、塗布膜厚を変化させることにより、樹脂膜(ベースフィルム)の厚さを所望の厚さ、特に薄膜に調整することも可能となり、したがってフレキシブルデバイスのさらなる薄型化も可能となる。これにより、最終製品の小型化、軽量化も可能となる。 また、ガラス基板等のキャリア基板上に薄く塗布することで簡単にかつ所望の膜厚の薄膜として成膜でき、その上に回路やディスプレイ層等を形成できるとともに、耐熱性に優れ、熱膨張係数の低いポリイミド膜となって、回路等の形成過程でキャリア基板層からのはがれやキャリア基板層のそりを生じさせず、回路等のはがれなどの欠陥も生じない上、その後キャリア基板から剥がす際には、ポリイミド膜自体にも、その上に形成された回路等にも欠陥を生じることがなく、きれいに剥がせるものである。従って、これを用いた表示デバイス又は受光デバイスとなるフレキシブルデバイスの製造方法は、キャリア基板上に形成されたベースフィルムに直接回路を形成し、その後剥離することが可能となるため、再転写の製造工程を省略することができる。そして得られるフレキシブルデバイスは、薄くても靱性が高く、耐熱性にも優れるものとなる。」 (a-4) 「【0019】 さらに、本発明のフレキシブルデバイス基板用ポリイミド前駆体樹脂組成物には、被塗布体との接着性向上のため、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等のカップリング剤を添加することができる。上記カップリング剤としては、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ-アミノプロピルトリブトキシシラン、γ-アミノエチルトリエトキシシラン、γ-アミノエチルトリメトキシシラン、γ-アミノエチルトリプロポキシシラン、γ-アミノエチルトリブトキシシラン、γ-アミノブチルトリエトキシシラン、γ-アミノブチルトリメトキシシラン、γ-アミノブチルトリプロポキシシラン、γ-アミノブチルトリブトキシシラン、などが挙げられ、また上記チタンカップリング剤としては、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシチタン、γ-アミノプロピルトリメトキシチタン、γ-アミノプロピルトリプロポキシチタン、γ-アミノプロピルトリブトキシチタン、γ-アミノエチルトリエトキシチタン、γ-アミノエチルトリメトキシチタン、γ-アミノエチルトリプロポキシチタン、γ-アミノエチルトリブトキシチタン、γ-アミノブチルトリエトキシチタン、γ-アミノブチルトリメトキシチタン、γ-アミノブチルトリプロポキシチタン、γ-アミノブチルトリブトキシチタン、などが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。このときの使用量は、ポリイミド前駆体(樹脂分)に対して、0.1質量%以上、3質量%以下が好ましい。 その他、必要に応じて、各種添加剤を配合することも可能である。」 (a-5) 「【0020】 本発明の液状のポリイミド前駆体樹脂組成物の塗布は、キャリア基板(支持体)に均一な厚みを形成できる方法であれば、種類を問わず適用できる。例として、ダイコーティングやスピンコーティング、スクリーン印刷による塗布が可能である。 本発明における液状ポリイミド前駆体樹脂組成物を塗布、乾燥、イミド閉環して得られるポリイミド樹脂膜の厚さは、1~20μmであることが望ましい。これは、厚さが1μmに満たない場合にポリイミドフィルムが十分な耐性を保持できず、フレキシブルデバイスとして使用したとき応力に耐え切れず破壊されるためである。また、20μmを超えて厚くなると、フレキシブルデバイスの薄型化が困難となってしまう。したがって、フレキシブルデバイスとして十分な耐性を保持しながらより薄膜化するには、2~10μmの厚みであることが最も望ましい。 【0021】 本発明のフレキシブルデバイスの製造方法において、ポリイミド前駆体樹脂組成物を塗布するキャリア基板(支持体)は、自立性を持つ硬質なものであって、耐熱性があれば良い。つまり製造工程上必要とされる高温にさらされても変形しない素材を用いていれば良い。具体的には、一般に200℃以上、好ましくは250℃以上のガラス転移温度を持つ素材を用いるのが望ましく、このようなものとしてはガラスが挙げられる。キャリア基板の厚さは、0.3mmから5.0mmが好ましく、0.5mmから3.0mmがより好ましく、0.7mmから1.5mmであるものがさらに好ましい。 ・・(中略)・・ 【0022】 本発明のフレキシブルデバイスの製造方法においては、以上のようにして形成したポリイミド膜の上に、表示デバイス、受光デバイスに必要な回路を形成する工程を含む。・・(中略)・・ 以上のようにして、回路等が表面に形成された固体状のポリイミド樹脂膜を前記キャリア基板から剥離する。剥離方法に特に制限はなく、例えばキャリア基板側からレーザー等を照射することで剥離を行っても良い。本発明により得られるポリイミド樹脂膜は、高い靭性を有するので、キャリア基板(支持体)と単に物理的に剥離することも可能である。 本発明における、フレキシブルデバイスとしては、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパーといった表示デバイス、太陽電池、CMOSなどの受光デバイスを挙げることが出来る。特に、薄型化かつフレキシブル性を付与したいデバイスへの適用に最適である。」 (a-6) 「【実施例】 【0023】 (実施例1) 窒素雰囲気下の200mlフラスコに、p-フェニレンジアミン5.41gとN-メチルピロリドン181.03gを仕込み、15分間、40℃で加熱攪拌しモノマーを溶解させた。その後s-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物14.71gを加え、さらに30分間攪拌し、粘度1100mPa・s(25℃)の液状ポリイミド前駆体樹脂組成物を得た。このポリイミド前駆体の重量平均分子量は70000であった。 得られた液状ポリイミド前駆体樹脂組成物を厚さ625μmの6インチシリコン基板上にスピンコートで塗布した後、130℃のホットプレートで2分間ベークし、厚さ5μmになるように製膜した。次いで、硬化炉を用い200℃で30分間、さらに350℃で60分間加熱硬化してイミド化し、ポリイミド樹脂フィルムからなる樹脂膜を得た。イミド化後の膜厚は3μmであった。この樹脂フィルムをシリコン基板より剥離し、熱特性、機械特性を測定し、その結果を纏めて表1に示した。 【0024】 測定条件は、次の通り。 ガラス転移温度:サーマルメカニカルアナライザー(株式会社リガク製、測定温度範囲25~450℃、試料サイズ5mm×15mm) 熱分解温度:サーマルメカニカルアナライザー(株式会社リガク製、測定温度範囲25~450℃、試料サイズ5mm×15mm) 熱膨張率:サーマルメカニカルアナライザー(株式会社リガク製、測定温度範囲25~450℃、試料サイズ5mm×15mm) 破断点応力:オートグラフ(株式会社島津製作所製、試料サイズ10mm×60mm) 弾性率:オートグラフ(株式会社島津製作所製、試料サイズ10mm×60mm) 伸び:オートグラフ(株式会社島津製作所製、試料サイズ10mm×60mm) 重量平均分子量:ゲルパーミエーションクロマトグラフ(株式会社島津製作所製)」 (a-7) 「【0032】 ディスプレイデバイスの製造例 上記実施例1~5及び比較例1~3で得られた液状ポリイミド前駆体樹脂組成物を用いたフレキシブル液晶ディスプレイの製造例を示す。 図1に示すようにキャリア基板としてガラス基板を用い、ガラス基板上に各液状ポリイミド前駆体樹脂組成物を、スピンコートで塗布した後、130℃のホットプレートで2分間ベークし、厚さ約5μmになるように製膜した。次いで、硬化炉を用い200℃で30分間、さらに350℃で60分間加熱硬化してイミド化し、固体状の樹脂膜であるポリイミド樹脂フィルムを形成した。この膜厚は3μmである。このポリイミド膜上に、既知の方法に従って図2に示すようにTFT電極を形成することができる、さらにその上に既知の方法に従って、図3に示すように液晶表示素子、カバーフィルムの層を形成することができる。その後、図4に示すようにガラス基板から、フレキシブルデバイスを剥離することができる。 このようにして得られる、実施例のフレキシブル液晶ディスプレイは良好な性能を示すが、比較例のものはポリイミド膜物性が劣るため、信頼性に優れるフレキシブル液晶ディスプレイは得られない。 【0033】 【表1】 表1に示したように、本発明の一般式(1)で表される構成単位を有するポリイミド前駆体を用いた樹脂膜は、ガラス転移温度、熱分解温度、熱膨張率などの熱特性、破断点応力、弾性率、伸びなどの機械特性に優れる。これに対し、一般式(1)で表される構成単位を有さない比較例1~3は、熱特性、機械特性に劣る。また、実施例のポリイミド前駆体は、薄膜の樹脂膜にもかかわらず、その上に形成した各種回路(TFT電極、液晶表示素子)にはがれなどの欠陥を生じさせることなくキャリア基板からの剥離性に優れる。」 イ.甲1に記載された発明 上記ア.の記載事項(特に摘示(a-1)の下線部)からみて、甲1には、 「液状の樹脂組成物をキャリア基板上に塗布成膜して固体状の樹脂膜を形成する工程、前記樹脂膜上に回路を形成する工程、前記回路が表面に形成された固体状の樹脂膜を前記キャリア基板から剥離する工程、の各工程を含む、表示デバイスであるフレキシブルデバイスの製造法に用いられる、フレキシブルデバイス基板となる前記液状の樹脂組成物であって、下記一般式(1)で表される構造を有する重量平均分子量が15,000から200,000のポリイミド前駆体と有機溶媒とを含有してなるフレキシブルデバイス基板用ポリイミド前駆体樹脂組成物。 【化1】 (一般式(1)中、Rは各々独立に水素原子又は一価の有機基を示し、R1は 【化2】 から選択される2価の有機基であり(但しR’は各々独立にアルキル基であり、アルキル基の水素原子はハロゲン原子で置換されても良い)、R2は 【化3】 から選択される四価の有機基であり、nは繰り返し数を表す正の整数である。)」 に係る発明(以下「甲1発明1」という。)、 「甲1発明1のフレキシブルデバイス基板形成用ポリイミド前駆体樹脂組成物をキャリア基板上に塗布成膜してなる固体状のポリイミド樹脂膜。」 に係る発明(以下「甲1発明2」という。)及び 「甲1発明1のフレキシブルデバイス基板形成用ポリイミド前駆体樹脂組成物をキャリア基板上に塗布成膜して甲1発明2の固体状のポリイミド樹脂膜を形成する工程、前記樹脂膜上に回路を形成する工程、前記回路が表面に形成された固体状の樹脂膜を前記キャリア基板から剥離する工程の各工程を含む製造方法により製造されたディスプレイである表示デバイス。」 に係る発明(以下「甲1発明3」という。)がそれぞれ記載されているものといえる。 (2)甲2に記載された事項 甲2には、金属酸化物の分散性の改善等を意図して、ポリアミック酸系重合体に対して、フェニルトリアルコキシシラン化合物などを含む多種のシランカップリング剤のいずれかを共存させておくことが記載されている(第5欄第43行~第7欄第5行)。 (3)甲3に記載された事項 甲3には、寸法安定性及び密着性の改善等を意図して、ポリイミド組成物の製造にあたり、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどのシラン化合物を使用することが記載されている(【0019】~【0020】)。 (4)甲4に記載された事項 甲4には、ポリイミド層と銅箔との接着性を改善することを意図して、ポリイミド組成物の製造にあたり、種々のシランカップリング剤、特に好ましくはγ-ウレイドプロピルトリメトキシシランを使用することが記載されている(【0015】、【0017】及び【0018】)。 (5)甲5に記載された事項 甲5には、熱伝導性を有する無機フィラーの分散性及び接着性の改善等を意図して、ポリイミド樹脂に対して、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシランなどを含む多種のシランカップリング剤のいずれかを共存させておくことが記載されている(【0056】~【0058】)。 (6)甲6に記載された事項 甲6には、ポリイミド前駆体などを含む硬化性樹脂組成物に対して、3-ウレイドプロピルトリエトキシシランなどを含むウレイド化合物を添加してなる電子部品の絶縁膜又は表面保護膜の製造用組成物(【請求項1】、【0055】~【0060】)において、さらに、シリコン基板に対する接着性増強剤として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシランなどのシランカップリングを添加使用できること(【0069】)が記載されている。 2.検討 (1)本件発明1について ア.対比 本件発明1と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1における「液状の樹脂組成物をキャリア基板上に塗布成膜して固体状の樹脂膜を形成する工程」では、ポリイミド前駆体を含む液状の樹脂組成物をキャリア基板上に塗布した後、ベークし、更に加熱硬化してイミド化し、固体状の樹脂膜であるポリイミド樹脂フィルムを形成しており(摘示(a-6)及び(a-7)参照)、さらに、「樹脂膜上に回路を形成する工程」及び「回路が表面に形成された固体状の樹脂膜を前記キャリア基板から剥離する工程」では、形成したポリイミド樹脂フィルム上にTFT電極などの半導体素子を含む回路を形成した上で、回路が形成されたフレキシブルデバイスをキャリア基板から剥離している(摘示(a-7)参照)から、甲1発明における「液状の樹脂組成物をキャリア基板上に塗布成膜して固体状の樹脂膜を形成する工程、前記樹脂膜上に回路を形成する工程、前記回路が表面に形成された固体状の樹脂膜を前記キャリア基板から剥離する工程、の各工程を含む、表示デバイスであるフレキシブルデバイスの製造法に用いられる、フレキシブルデバイス基板となる前記液状の樹脂組成物」は、本件発明1における「前記樹脂組成物を・・基板に塗布、加熱し・・ポリイミド樹脂膜を形成する工程と、前記ポリイミド樹脂膜上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子が形成されたポリイミド樹脂膜を支持体から剥離する工程とを含む、ディスプレイ基板の製造方法に用いられる、樹脂組成物。」に相当するとともに、甲1発明1における 「一般式(1) 【化1】 (一般式(1)中、Rは各々独立に水素原子又は一価の有機基を示し、R1は 【化2】 から選択される2価の有機基であり(但しR’は各々独立にアルキル基であり、アルキル基の水素原子はハロゲン原子で置換されても良い)、R2は 【化3】 から選択される四価の有機基であり、nは繰り返し数を表す正の整数である)で表される構造を有するポリイミド前駆体」及び「有機溶媒」は、それぞれ、本件発明1における「(a)一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミド酸」及び「(c)有機溶剤」に相当する。 してみると、本件発明1と甲1発明1とは、 「(a)一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミド酸と、(c)有機溶剤と、を含有する樹脂組成物であって、 前記樹脂組成物を基板に塗布、加熱し、ポリイミド樹脂膜を形成する工程と、前記ポリイミド樹脂膜上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子が形成されたポリイミド樹脂膜を支持体から剥離する工程とを含む、ディスプレイ基板の製造方法に用いられる、樹脂組成物。 【化11】 (一般式(1)中、R1は芳香族環を有する2価の有機基を示し、R2は芳香族環を有する4価の有機基を示す。)」の点で一致しており、以下の点で一応相違するものと認められる。 相違点1:本件発明1では「(b)3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ-アミノプロピルトリブトキシシラン、γ-アミノエチルトリエトキシシラン、γ-アミノエチルトリメトキシシラン、γ-アミノエチルトリプロポキシシラン、γ-アミノエチルトリブトキシシラン、γ-アミノブチルトリエトキシシラン、γ-アミノブチルトリメトキシシラン、γ-アミノブチルトリプロポキシシラン、及びγ-アミノブチルトリブトキシシランからなる群から選択される1以上のアルコキシシラン化合物と、・・を含有し、前記(b)成分の含有量が前記(a)成分に対して0.2~2質量%である」のに対して、甲1発明1では「(b)アルコキシシラン化合物」を含有すること及びその含有量につき特定されていない点 相違点2:「ポリイミド樹脂膜を形成する工程」において、本件発明1では「シリコン基板又はガラス基板」を使用するとともに「1~50μmの膜厚を有するポリイミド樹脂膜」を形成するのに対して、甲1発明1では「キャリア基板」を使用するとともに「固体の樹脂膜」の膜厚につき特定されていない点 イ.検討 (ア)相違点2について 事案に鑑み、まず、相違点2につき検討すると、甲1には、甲1発明1に係る固体の樹脂膜の形成におけるキャリア基板につき、ガラス基板を使用すること(摘示(a-2)、(a-3)、(a-5)【0021】及び(a-7)参照)又はシリコン基板を使用すること(摘示(a-6)参照)がそれぞれ開示されているとともに、当該樹脂膜として、膜厚1~20μmの範囲が好適であり(摘示(a-5)【0020】)、実施例として膜厚3μmの樹脂膜としたことも開示されている(摘示(a-6)及び(a-7)参照)。 してみると、甲1発明1における固体の樹脂膜の形成において、ガラス基板又はシリコン基板を用いること及び形成する固体の樹脂膜の膜厚を1~20μmを含む1~50μmとすることは、いずれも実質的な相違点であるとはいえないか、甲1発明1において、当業者が適宜なし得ることである。 したがって、上記相違点2は、実質的な相違点であるとはいえないか、甲1発明1において当業者が適宜なし得ることである。 (イ)相違点1について 上記相違点1につき検討すると、甲1には、甲1発明1のフレキシブルデバイス基板用ポリイミド前駆体樹脂組成物において、キャリア基板などの被塗布体との接着性向上のために、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤等のカップリング剤を添加することができることが記載され、また、その使用量がポリイミド前駆体(樹脂分)に対して、0.1質量%以上、3質量%以下が好適であることが記載されている(【0019】)ところ、甲1発明1のフレキシブルデバイス基板用ポリイミド前駆体樹脂組成物においても、ガラス基板又はシリコン基板などの被塗布体の表面に塗布成膜しポリイミド樹脂膜として他表面に回路形成を行った後、被塗布体から剥離することによりフレキシブルデバイス基板とするものであって、甲1発明1において、シランカップリング剤の適量の添加使用により被塗布体に対する接着性を改善するとしても、被塗布体からの剥離性につき許容される範囲内で行うことを前提とするものであるから、甲1発明1において、ガラス基板又はシリコンウエハなどの被塗布体に対する接着性向上を意図して、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤などのアルコキシシラン化合物をポリイミド前駆体(樹脂分)に対して、「0.1質量%以上、3質量%以下」なる範囲のうちの0.2~2質量%の範囲で添加使用することは、当業者が適宜なし得ることである。 してみると、上記相違点1は、当業者が適宜なし得ることである。 (ウ)本件発明1の効果について そして、本件発明1の効果につき本件特許に係る明細書(以下「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明の記載(特に【表1】)に基づき検討すると、アルコキシシラン化合物を使用しない場合(比較例1、2、6及び7)には、剥離性については極めて優れるものの剥離強度で表される密着性(【0052】参照)については明らかに劣り、また、アルコキシシラン化合物を多量に使用した場合(比較例5)又は支持体であるウエハの表面をあらかじめアルコキシシラン化合物で処理しておいた場合(比較例3及び4)には、剥離強度で表される密着性については極めて優れるものの剥離性については明らかに劣るのに対して、本件発明1に係る実施例1ないし22の場合には、剥離性につき優れると評価される範囲(A評価又はB評価)内において、剥離強度で表される密着性が改善されているものと看取することはできる。(なお、熱膨張特性及び破断伸び特性に係る効果については、下記ウ.を参照のこと。) しかしながら、上記のとおり、甲1発明1のフレキシブルデバイス基板用ポリイミド前駆体樹脂組成物においては、ガラス基板又はシリコン基板などの被塗布体の表面に塗布成膜しポリイミド樹脂膜として他表面に回路形成を行った後、被塗布体から剥離することによりフレキシブルデバイス基板とするものであって、甲1には、被塗布体から剥離する際の方法として特に制限がなく、レーザ照射による剥離並びに単に物理的剥離でもいずれも可能であることが開示されている(摘示(a-5)【0022】)から、甲1発明1において、シランカップリング剤の適量の添加使用により被塗布体に対する接着性を改善するとしても、剥離方法につき限定がない被塗布体からの剥離性につき許容される範囲内で行うことを前提とするものであるから、本件発明1の上記効果は、甲1発明1において、被塗布体に対する接着性向上を意図してシランカップリング剤の適量の添加使用を行うこと、特にその際、剥離性をも重視するのであれば、上記「0.1質量%以上、3質量%以下」の範囲のうち、少量の範囲である「0.2~2質量%」で使用することにより、「密着性(接着性)」と「剥離性」との両立なる効果を奏するであろうことは、当業者が予期し得る範囲のものということができ、格別顕著な効果であるものということはできない。 ウ.特許権者の主張について (ア)特許権者は、平成30年12月17日付けの意見書において、以下の(ア-1)ないし(ア-3)の各主張を行っている。(下線は、特許権者が付したものを除き、当審が付した。) (ア-1)「(i)本件発明1の概要」として「本件発明1の樹脂組成物は」請求項1所定の「ディスプレイ基板の製造方法において好適に用いることができ」、「半導体素子形成工程ではポリイミド樹脂膜は支持体との十分な密着性を発揮し、ポリイミド樹脂膜剥離工程では、基板裏面側からレーザーを照射する操作を行わずに、ポリイミド樹脂膜を支持体から綺麗に剥離することができます」とし(意見書第4頁第8行~第5頁化学式下第15行)、「(ii)本件発明1の効果:密着性と剥離性」として、本件発明1に係る実施例及び比較例の密着性と剥離性との結果を示して、「実施例2~4、6~22における剥離性は「A」又は「B」であり、レーザー照射により接着面を焼き切る操作を行わずに、かつ、ポリイミド樹脂膜に負担をかけることなく、自然剥離又はピンセットによる剥離が可能になったことが分かり」、「また、実施例2~4、6~22では十分な密着性(中略)が得られているため、支持体の移動や搬送による衝撃や振動に伴う半導体素子形成工程においても、ポリイミド樹脂膜は支持体から容易に脱離することは」ないとして、「本件発明1は、」「半導体素子形成工程において要求される密着性とポリイミド樹脂膜剥離工程で要求される剥離性の両特性とを同時に達成することができ」、「また、高価な装置を用い、危険を伴うレーザー照射操作を行うことなく、所望の目的物(ディスプレイ基板)を得ることができ」る旨主張する(意見書第5頁下から第5行~第7頁第18行)とともに、「(iii)密着性と剥離性の関係」として「密着性と剥離性は要求される場面が異な」り、「2つの特性は完全なトレードオフ関係であるとはやはり言えず、完全に別個とはいえないものの、ある程度の独立性は認められるべき物性であると思料」する旨主張している(意見書第7頁第19行~第9頁第1行)。 (ア-2)「(v)本件発明1の効果:熱膨張特性」として「シランカップリング剤をポリイミド樹脂組成物に添加すると、」「シランカップリング剤に起因して樹脂膜全体が熱膨張しやすくなることが考えられるため」「得られる樹脂膜の熱膨張特性が悪化することが懸念され」ると主張し、シランカップリング剤を多量(3質量%)に使用した比較例5の場合に、他の実施例及び比較例の場合に比して熱膨張特性が大きく低下しているのに対して、シランカップリング剤を0.2~2質量%の範囲で使用した実施例の場合に、シランカップリング剤を使用しなかった比較例の場合の熱膨張特性をほぼ維持できている旨を主張する(意見書第9頁第18行~第10頁第19行)とともに、「(vi)本件発明1の効果:破断伸び特性」として「シランカップリング剤をポリイミド樹脂組成物に添加すると、」「シランカップリング剤がある意味で異物として作用し、そこを起点に破断しやすくなるため」「得られる樹脂膜の破断伸び特性が悪化することが懸念され」ると主張し、シランカップリング剤を多量(3質量%)に使用した比較例5の場合に、他の実施例及び比較例の場合に比して破断伸び特性が大きく低下しているのに対して、シランカップリング剤を0.2~2質量%の範囲で使用した実施例の場合に、シランカップリング剤を使用しなかった比較例の場合の破断伸び特性をほぼ維持できている旨を主張している(意見書第10頁第20行~第11頁第22行)。 (ア-3)「(vii)甲1:概要」として『甲1発明1は、式(1)で表される特定の構造を有するポリイミド前駆体を用いることで、「ガラス基板等のキャリア基板上に塗布することで簡単にかつ所望の膜厚の薄膜を形成し、その樹脂薄膜上に回路やディスプレイ層等を形成できるとともに、耐熱性に優れ、熱膨張係数の低いポリイミド膜となって、回路等の形成過程でキャリア基板層からのはがれやキャリア基板層のそりを生じさせず、回路等のはがれなどの欠陥も生じず、そしてその後、キャリア基板から欠陥を生じずに剥離ができる、液状のフレキシブルデバイス基板形成用ポリイミド前駆体樹脂組成物」を提供するもの』であって、「甲1の実施例1~5及び比較例1~3では、多様な原料からポリイミド前駆体及び樹脂膜を製造し、ガラス転移温度、熱分解温度、熱膨張率、破断点応力、弾性率、伸び、及び重量平均分子量の各種物性を詳細に評価・検討してい」る「一方、樹脂膜の密着性及び剥離性について詳細な記述は」ない「ことからも分かるように、甲1発明1は、樹脂膜の密着性・剥離性以前に、回路・ディスプレイ用途に適した膜特性を達成することを優先課題とし、当該特性を発揮できるポリイミド構造を見出した発明」である旨主張する(意見書第11頁下から第3行~第12頁第15行)とともに、甲1発明1が当該発明であることに基づき、「(viii)本件発明1の進歩性:甲1発明1からの動機付け」として「甲1ではポリイミド樹脂膜の耐熱性と熱膨張特性を重視しており、また、基板との接着手段は特に限定されておらず、例えばシランカップリング剤による基板の前処理も想定可能であることから、甲1において、あえて耐熱性が下がるリスクを冒してまで、ポリイミド樹脂組成物中にシランカップリング剤を積極的に添加する動機は」なく、『仮に、甲1段落0019の教示により樹脂組成物中にシランカップリング剤を添加しようとする場合でも、』『本件特許出願時以前は、シランカップリング剤の添加量を調整して樹脂膜の剥離性をコントロールしようとする発想自体がないから』『後工程で「レーザー照射を行わずに樹脂膜を簡易かつ綺麗に剥離する」ことまでを想定して、』『「0.2~2質量%」の特定量を選択する動機は』ない旨(意見書第12頁第16行~第14頁第8行)を主張し、「(ix)本件発明1の進歩性:効果(密着性と剥離性)」として「甲1には、接着性向上のためにシランカップリング剤を使用可能である旨の記載はあるものの、実際に使用した実施例はなく、添加した場合の接着性及び剥離性について検証はなされて」おらず、『甲1に示されるシランカップリング剤の添加量「0.1質量%以上、3質量%以下」のうち「0.2~2質量%」の特定添加量を選択することで、半導体素子形成工程では支持体との十分な密着性を担保しつつ、ポリイミド樹脂膜剥離工程では、レーザーを用いずに、簡易に、かつ綺麗に樹脂膜を剥離できるという効果は甲1から予期』できない旨(意見書第14頁第9行~第22行)並びに「(x)本件発明1の進歩性:効果(熱膨張特性、破断伸び特性)」として『本件発明1では、添加量を多様に変化させて(b)成分を樹脂組成物中に配合し、当該樹脂組成物から樹脂膜を形成し、得られた樹脂膜の各種物性を評価した結果、(b)成分の添加量を「(a)成分に対して0.2~2質量%」の特定範囲とすることで、同成分に起因する樹脂膜の熱膨張特性及び破断伸び特性の低下が抑えられ、同成分を添加しない場合の性能をほぼ維持できるという知見が得られてい』るのに対して、「甲1発明1は回路・ディスプレイ用途に適した膜特性を見出すことを優先しており、樹脂膜中にアルコキシシラン化合物(当審注:「シランカップリング剤」の誤記と認められる。)を実際に添加した実施例は」ないから、「本件発明1の上記効果は、甲1発明1から全く予期」できない旨(意見書第14頁下から第3行~第15頁第12行)をそれぞれ主張している。 (イ)検討 上記(ア)で示した特許権者の各主張につき、検討する。 (イ-1)上記(ア-1)の主張について 上記(ア-1)の主張につき検討するにあたり、前提として、塗布成膜に使用する塗料の技術分野において、「(塗膜の)密着性」とは、「接着性」又は「付着性」ともいい、塗膜が被塗物表面によくついてはがれにくい性質である(必要ならば下記参考文献1等参照)のに対して、「(塗膜の)剥離性」は、その文意からみて塗膜が被塗物表面に対してはがれやすい性質であるものと解するのが自然であって、完全なトレードオフの関係ではないにしても、独立した物性ではなく、相互に関連し、少なくとも相反する傾向を示す又は負の相関関係を有する物性であることは、当業者において一般的な技術常識であるということができるとともに、本件特許明細書の発明の詳細な説明における実施例(比較例)における「密着性」の評価方法及び「剥離性」の評価方法は、いずれも「付着力試験」の測定方法と略同一の手法(「プルオフ法」及び「ピーリング法」)であって(下記参考文献1参照)、「付着力」に相当する「剥離強度」(定量的手法の場合)又は「剥離性」(定性的手法の場合)に係る測定結果が得られるものであることからみても、本件発明における「密着性」と「剥離性」とは独立した物性ではなく、相互に関連し、少なくとも相反する傾向を示す又は負の相関関係を有する物性であると解するのが自然である。 そして、甲1には、甲1発明1の解決課題として「ガラス基板等のキャリア基板上に塗布することで簡単にかつ所望の膜厚の薄膜を形成し、その樹脂薄膜上に回路やディスプレイ層等を形成できるとともに、耐熱性に優れ、熱膨張係数の低いポリイミド膜となって、回路等の形成過程でキャリア基板層からのはがれやキャリア基板層のそりを生じさせず、回路等のはがれなどの欠陥も生じず、そしてその後、キャリア基板から欠陥を生じずにきれいに剥離ができる、液状のフレキシブルデバイス基板形成用ポリイミド前駆体樹脂組成物」の提供にあることが明示されており(上記摘示(a-2)及び(a-3)参照)、上記「剥離」の方法につき、「剥離方法に特に制限はなく、例えばキャリア基板側からレーザー等を照射することで剥離を行っても良い。本発明により得られるポリイミド樹脂膜は、高い靭性を有するので、キャリア基板(支持体)と単に物理的に剥離することも可能である」ことも開示されている(摘示(a-5)【0022】参照)から、甲1発明1のフレキシブルデバイス基板用ポリイミド前駆体樹脂組成物においても、シリコンウエハなどの被塗布体の表面に塗布成膜しポリイミド樹脂膜として他表面に回路形成を行った後、被塗布体から剥離することによりフレキシブルデバイス基板とするものであって、レーザー照射による剥離のみならず、単なる物理的な剥離による場合を含む剥離性については担保しつつ、剥離工程前の回路等の形成過程などにおけるポリイミド膜のキャリア基板層からのはがれや回路等のはがれなどの不具合を防止する程度の被塗布材に対する十分な密着性(接着性)を有することが要求されることは自明であって、剥離性につき許容できる範囲において密着性(接着性)を改善するために、アルコキシシラン化合物の量を調節しつつ使用することにつき、当業者は容易に想到し得ることと認めるのが相当である。 してみると、上記(ア-1)の主張における「基板裏面からレーザーを照射する操作を行わずに剥離することができる」との点は、甲1発明1に対して、何らの技術的優位性を有する事項ではない。 したがって、特許権者の上記意見書における(ア-1)の主張は、当を得ないものであって、採用することができない。 参考文献1:社団法人色材協会編「塗料用語辞典」1993年1月20日、技報堂出版株式会社発行、第339頁(「付着性」、「付着力試験」の欄)、第349頁(「プルオフ法」の欄) (イ-2)上記(ア-2)の主張について 上記(ア-2)の主張について本件特許明細書の記載に基づき検討すると、ポリイミド樹脂膜に係る「耐熱性(熱膨張率及び1%質量減少温度)」及び「機械特性(破断伸び及び弾性率)」の評価については、「樹脂膜」の規定サイズに切り出したものを試料として測定装置により各物性値を測定している(本件特許明細書【0054】及び【0055】)ところ、「剥離性」につき樹脂膜に負担をかけることなく剥離できる「A評価」又は「B評価」である実施例1ないし22並びに比較例1、2、6及び7については、剥離した後の樹脂膜につき試料としているものと解されるのに対して、「比較例5」(並びに「比較例3」及び「比較例4」)の樹脂膜は、「剥離性」が「D評価」、すなわち「剥離できなかった」のであるから、当該各比較例に係る試料となる「樹脂膜」の調製方法が不明であり、少なくとも他の実施例又は比較例のものとは異なる方法で調製されたものと解するほかはない。 してみると、「耐熱性(熱膨張率及び1%質量減少温度)」及び「機械特性(破断伸び及び弾性率)」なる各物性は、樹脂膜の調製方法によって、特に樹脂膜に負担がかかる強度の物理的剥離又はレーザー照射による剥離などの剥離方法による場合には、有意に変化することが当業者に自明であるから、調製方法が異なる樹脂膜試料を用いた各実験例の各物性の評価結果をもとに対比して、当該各物性に係る効果の大小を論じることは不適当であり、上記(ア-2)の主張は、論拠を欠くものと認められる。 したがって、特許権者の上記意見書における(ア-2)の主張は、当を得ないものであって、採用することができない。 (イ-3)上記(ア-3)の主張について 上記(ア-3)の主張につき検討すると、甲1には、「本発明は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー等の表示デバイス、太陽電池の受光デバイスであるフレキシブルデバイスにおいて、ガラス基板等のキャリア基板上に塗布することで簡単にかつ所望の膜厚の薄膜を形成し、その樹脂薄膜上に回路やディスプレイ層等を形成できるとともに、耐熱性に優れ、熱膨張係数の低いポリイミド膜となって、回路等の形成過程でキャリア基板層からのはがれやキャリア基板層のそりを生じさせず、回路等のはがれなどの欠陥も生じず、そしてその後、キャリア基板から欠陥を生じずに剥離ができる、液状のフレキシブルデバイス基板形成用ポリイミド前駆体樹脂組成物、これを用いたフレキシブルデバイス及びその製造方法を提供する」(上記摘示(a-2)【0004】)ことが記載されているから、その文意からみて、甲1発明1の樹脂組成物は、キャリア基板上に塗布できポリイミド樹脂膜を形成できること、ポリイミド樹脂膜を形成した後の回路等の形成過程においてキャリア基板層又は回路等とのはがれを防止できる程度の十分な接着性(密着性)を有すること及び回路を形成した後のポリイミド樹脂膜がキャリア基板から剥離する際に当該樹脂膜に欠陥が生じない程度の十分な剥離性を有することが、いずれも達成すべき主要事項であることが明らかである。 また、甲1には、シランカップリング剤の使用につき「本発明のフレキシブルデバイス基板用ポリイミド前駆体樹脂組成物には、被塗布体との接着性向上のため、シランカップリング剤・・を添加することができる。上記カップリング剤としては、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、・・などが挙げられ・・る。・・このときの使用量は、ポリイミド前駆体(樹脂分)に対して、0.1質量%以上、3質量%以下が好ましい。」(上記摘示(a-4))と記載されているところ、「被塗布体との接着性」が「向上」されて高すぎる場合、ポリイミド樹脂膜をキャリア基板から剥離する際の剥離性に影響する(剥離しにくくなる)であろうことが当業者に自明であるから、上記「被塗布体との接着性向上のため」とは、「回路等の形成過程における被塗布体であるキャリア基板とポリイミド樹脂膜との接着性(密着性)を向上させるため」ということを意味するものと解するのが自然である。 そして、特許権者は、上記意見書において、「シランカップリング剤をポリイミド樹脂組成物に添加すると、」「シランカップリング剤に起因して樹脂膜全体が熱膨張しやすくなることが考えられるため」に「得られる樹脂膜の熱膨張特性が悪化することが懸念され」る旨(意見書第10頁第7行~第10行)及び「シランカップリング剤をポリイミド樹脂組成物に添加すると、」「シランカップリング剤がある意味で異物として作用し、そこを起点に破断しやすくなるため」に「得られる樹脂膜の破断伸び特性が悪化することが懸念され」る旨(意見書第11頁第9行~第12行)をそれぞれ主張するが、ポリイミド樹脂に対してシランカップリング剤を単に後添加するような場合であるならば格別、シランカップリング剤がキャリア基板又はポリイミド前駆体(ポリアミド酸)に対して化学反応を生起するような成膜時の加熱処理を行う甲1発明1のポリイミド前駆体及び有機溶剤を含む樹脂組成物において、更にシランカップリング剤を添加することにより、加熱処理後の樹脂膜が熱膨張しやすくなること及び加熱処理後の樹脂膜においてシランカップリング剤が異物として作用し破断しやすくなることを想起し得る当業者の技術常識が存するものとは認められず、当該主張は、その技術的根拠を欠くものである。(なお、本件特許明細書における「比較例5」と他の実験例との対比に基づく主張は、上記(イ-2)で説示したとおりの理由により、そもそも採用することができない。) なお、上記のとおり、甲1では、シランカップリング剤の使用につき「本発明のフレキシブルデバイス基板用ポリイミド前駆体樹脂組成物には、被塗布体との接着性向上のため、シランカップリング剤・・を添加することができる。」と明記されているから、たとえポリイミド樹脂膜とキャリア基板との密着性の改善のためにキャリア基板の表面をシランカップリング剤で処理することが当業者の技術常識であったとしても、甲1発明1の樹脂組成物に対するシランカップリング剤の添加使用に代えて、キャリア基板表面のシランカップリング剤による処理に変更すべき動機となる事項が存するものとは認められない。 さらに、上記(イ-1)でも説示したとおり、甲1には、「回路等が表面に形成された固体状のポリイミド樹脂膜を前記キャリア基板から剥離する」工程において、「剥離方法に特に制限はなく、例えばキャリア基板側からレーザー等を照射することで剥離を行っても良い。本発明により得られるポリイミド樹脂膜は、高い靭性を有するので、キャリア基板(支持体)と単に物理的に剥離することも可能である。」(摘示(a-5)【0022】)と記載されているから、「基板裏面からレーザーを照射する操作を行わずに剥離することができる」との点は、甲1発明1に対して、何らの技術的優位性を有する事項ではない。 してみると、上記(ア-3)の主張は、甲1に記載された事項に基づかないものであり、当を得ないものである。 したがって、特許権者の上記意見書における(ア-3)の主張についても、採用することができない。 (ウ)特許権者の主張に係るまとめ 以上のとおりであるから、特許権者の上記意見書における主張は、いずれも採用することができず、上記イ.の検討結果を左右するものではない。 エ.小括 したがって、本件発明1は、甲1発明1、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件発明2について ア.対比 本件発明2と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1における「液状の樹脂組成物をキャリア基板上に塗布成膜して固体状の樹脂膜を形成する工程、前記樹脂膜上に回路を形成する工程、前記回路が表面に形成された固体状の樹脂膜を前記キャリア基板から剥離する工程、の各工程を含む、表示デバイスであるフレキシブルデバイスの製造法に用いられる、フレキシブルデバイス基板となる前記液状の樹脂組成物」は、上記(1)ア.で説示した理由と同一の理由により、本件発明2における「前記樹脂組成物を・・基板に塗布、加熱し・・ポリイミド樹脂膜を形成する工程と、前記ポリイミド樹脂膜上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子が形成されたポリイミド樹脂膜を支持体から剥離する工程とを含む、ディスプレイ基板の製造方法に用いられる、樹脂組成物。」に相当するとともに、甲1発明1における 「一般式(1) 【化1】 (一般式(1)中、Rは各々独立に水素原子又は一価の有機基を示し、R1は 【化2】 から選択される2価の有機基であり(但しR’は各々独立にアルキル基であり、アルキル基の水素原子はハロゲン原子で置換されても良い)、R2は 【化3】 から選択される四価の有機基であり、nは繰り返し数を表す正の整数である)で表される構造を有するポリイミド前駆体」及び「有機溶媒」は、それぞれ、本件発明2における 「(a)一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミド酸」及び「(c)有機溶剤」に相当する。 してみると、本件発明2と甲1発明1とは、 「(a)一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミド酸と、(c)有機溶剤と、を含有する樹脂組成物であって、 前記樹脂組成物を基板に塗布、加熱し、ポリイミド樹脂膜を形成する工程と、前記ポリイミド樹脂膜上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子が形成されたポリイミド樹脂膜を支持体から剥離する工程とを含む、ディスプレイ基板の製造方法に用いられる、樹脂組成物。 【化11】 (一般式(1)中、R1は芳香族環を有する2価の有機基を示し、R2は芳香族環を有する4価の有機基を示す。)」の点で一致しており、以下の点で一応相違するものと認められる。 相違点3:本件発明2では「(b)3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランからなる群から選択される1以上のアルコキシシラン化合物と、・・を含有し、前記(b)成分の含有量が前記(a)成分に対して0.2~2質量%である」のに対して、甲1発明1では「(b)アルコキシシラン化合物」を含有すること及びその含有量につき特定されていない点 相違点2a:「ポリイミド樹脂膜を形成する工程」において、本件発明2では「シリコン基板又はガラス基板」を使用するとともに「1~50μmの膜厚を有するポリイミド樹脂膜」を形成するのに対して、甲1発明1では「キャリア基板」を使用するとともに「固体の樹脂膜」の膜厚につき特定されていない点 イ.検討 (ア)相違点2aについて 事案に鑑み、まず、相違点2aにつき検討すると、相違点2aに係る事項は、上記(1)ア.で示した相違点2に係る事項と同一であるから、上記(1)イ.(ア)で説示した理由と同一の理由により、上記相違点2aは、実質的な相違点であるとはいえないか、甲1発明1において当業者が適宜なし得ることである。 (イ)相違点3について 上記相違点3につき検討すると、甲1には、甲1発明1のフレキシブルデバイス基板用ポリイミド前駆体樹脂組成物において、キャリア基板などの被塗布体との接着性向上のために、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤等のカップリング剤を添加することができることが記載され、また、その使用量がポリイミド前駆体(樹脂分)に対して、0.1質量%以上、3質量%以下が好適であることが記載されている(摘示(a-4)【0019】)ところ、甲1発明1のフレキシブルデバイス基板用ポリイミド前駆体樹脂組成物においても、ガラス基板又はシリコン基板などの被塗布体の表面に塗布成膜しポリイミド樹脂膜として他表面に回路形成を行った後、被塗布体から剥離することによりフレキシブルデバイス基板とするものであって、甲1発明1において、シランカップリング剤の適量の添加使用により被塗布体に対する接着性を改善するとしても、被塗布体からの剥離性につき許容される範囲内で行うことを前提とするものであるから、甲1発明1において、ガラス基板又はシリコンウエハなどの被塗布体に対する接着性向上を意図して、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤などのアルコキシシラン化合物をポリイミド前駆体(樹脂分)に対して、「0.1質量%以上、3質量%以下」なる範囲のうちの0.2~2質量%の範囲で添加使用することは、当業者が適宜なし得ることである。 また、本件発明2で使用されるアルコキシシラン化合物のうち、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン及び3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランは、いずれもγ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどと同様に汎用のシランカップリング剤であり(必要ならば下記参考文献2、甲2ないし甲6等参照。)、その点につき、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌しても、本件発明2に係るいずれかのアルコキシシラン化合物を使用した場合に、他のアルコキシシラン化合物を使用した場合に比して特異な効果を奏するものとは認識することができず、本件発明2において、上記特定のアルコキシシラン化合物を使用することにより、特有の効果を奏しているものとも認められない。 してみると、上記相違点3は、当業者が適宜なし得ることである。 ウ.本件発明2の効果について 本件発明2の効果につき検討すると、上記のとおり、本件発明2において、上記特定のアルコキシシラン化合物を使用することにより、特有の効果を奏しているものとも認められず、その余については、上記(1)イ.(ウ)で示した本件発明1に係る効果と同様であるから、本件発明2の効果についても、甲1発明1のものに比して、当業者が予期し得ない程度の格別顕著なものということはできない。 エ.小括 したがって、本件発明2は、甲1発明1、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 参考文献2:「便覧 ゴム・プラスチック配合薬品」2003年12月2日、株式会社ポリマーダイジェスト発行、第393~399頁 (3)本件発明3について ア.対比 本件発明3と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1における「液状の樹脂組成物をキャリア基板上に塗布成膜して固体状の樹脂膜を形成する工程、前記樹脂膜上に回路を形成する工程、前記回路が表面に形成された固体状の樹脂膜を前記キャリア基板から剥離する工程、の各工程を含む、表示デバイスであるフレキシブルデバイスの製造法に用いられる、フレキシブルデバイス基板となる前記液状の樹脂組成物」は、上記(1)ア.で説示した理由と同一の理由により、本件発明3における「前記樹脂組成物を・・基板に塗布、加熱し・・ポリイミド樹脂膜を形成する工程と、前記ポリイミド樹脂膜上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子が形成されたポリイミド樹脂膜を支持体から剥離する工程とを含む、ディスプレイ基板の製造方法に用いられる、樹脂組成物。」に相当するとともに、甲1発明1における 「一般式(1) 【化1】 (一般式(1)中、Rは各々独立に水素原子又は一価の有機基を示し、R1は 【化2】 から選択される2価の有機基であり(但しR’は各々独立にアルキル基であり、アルキル基の水素原子はハロゲン原子で置換されても良い)、R2は 【化3】 から選択される四価の有機基であり、nは繰り返し数を表す正の整数である)で表される構造を有するポリイミド前駆体」のうち「R2」が3,3’,4,4’-ビフェニレン基である場合及び「有機溶媒」は、それぞれ、本件発明3における「(a)一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミド酸」及び「(c)有機溶剤」に相当する。 してみると、本件発明3と甲1発明1とは、 「(a)一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミド酸と、(c)有機溶剤と、を含有する樹脂組成物であって、 前記樹脂組成物を基板に塗布、加熱し、ポリイミド樹脂膜を形成する工程と、前記ポリイミド樹脂膜上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子が形成されたポリイミド樹脂膜を支持体から剥離する工程とを含む、ディスプレイ基板の製造方法に用いられる、樹脂組成物。 【化11】 (一般式(1)中、R1は芳香族環を有する2価の有機基を示し、R2は下記式(7)で表される4価の有機基を示す。)」の点で一致しており、以下の点で一応相違するものと認められる。 相違点1a:本件発明3では「(b)3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ-アミノプロピルトリブトキシシラン、γ-アミノエチルトリエトキシシラン、γ-アミノエチルトリメトキシシラン、γ-アミノエチルトリプロポキシシラン、γ-アミノエチルトリブトキシシラン、γ-アミノブチルトリエトキシシラン、γ-アミノブチルトリメトキシシラン、γ-アミノブチルトリプロポキシシラン、及びγ-アミノブチルトリブトキシシランからなる群から選択される1以上のアルコキシシラン化合物と、・・を含有し、前記(b)成分の含有量が前記(a)成分に対して0.2~2質量%である」のに対して、甲1発明1では「(b)アルコキシシラン化合物」を含有すること及びその含有量につき特定されていない点 相違点2b:「ポリイミド樹脂膜を形成する工程」において、本件発明3では「シリコン基板又はガラス基板」を使用するとともに「1~50μmの膜厚を有するポリイミド樹脂膜」を形成するのに対して、甲1発明1では「キャリア基板」を使用するとともに「固体の樹脂膜」の膜厚につき特定されていない点 イ.検討 (ア)相違点2bについて 事案に鑑み、まず、相違点2bにつき検討すると、相違点2bに係る事項は、上記(1)ア.で示した相違点2に係る事項と同一であるから、上記(1)イ.(ア)で説示した理由と同一の理由により、上記相違点2bは、実質的な相違点であるとはいえないか、甲1発明1において当業者が適宜なし得ることである。 (イ)相違点1aについて 上記相違点1aにつき検討すると、相違点1aに係る事項は、上記(1)ア.で示した相違点1に係る事項と同一であるから、上記(1)イ.(イ)で説示した理由と同一の理由により、上記相違点1aは、甲1発明1において当業者が適宜なし得ることである。 ウ.本件発明3の効果について 本件発明3の効果につき本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載(特に【表1】)に基づき検討しても、上記(1)イ.(ウ)で検討した本件発明1のものに比して特異な効果を奏するものとはいえないから、本件発明3の効果についても、上記(1)イ.(ウ)で説示した理由と同一の理由により、甲1発明1のものに比して、当業者が予期し得ない程度の格別顕著なものということはできない。 エ.小括 したがって、本件発明3は、甲1発明1、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)本件発明4について ア.対比 本件発明4と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1における「液状の樹脂組成物をキャリア基板上に塗布成膜して固体状の樹脂膜を形成する工程、前記樹脂膜上に回路を形成する工程、前記回路が表面に形成された固体状の樹脂膜を前記キャリア基板から剥離する工程、の各工程を含む、表示デバイスであるフレキシブルデバイスの製造法に用いられる、フレキシブルデバイス基板となる前記液状の樹脂組成物」は、上記(1)ア.で説示した理由と同一の理由により、本件発明4における「前記樹脂組成物を・・基板に塗布、加熱し・・ポリイミド樹脂膜を形成する工程と、前記ポリイミド樹脂膜上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子が形成されたポリイミド樹脂膜を支持体から剥離する工程とを含む、ディスプレイ基板の製造方法に用いられる、樹脂組成物。」に相当するとともに、甲1発明1における 「一般式(1) 【化1】 (一般式(1)中、Rは各々独立に水素原子又は一価の有機基を示し、R1は 【化2】 から選択される2価の有機基であり(但しR’は各々独立にアルキル基であり、アルキル基の水素原子はハロゲン原子で置換されても良い)、R2は 【化3】 から選択される四価の有機基であり、nは繰り返し数を表す正の整数である)で表される構造を有するポリイミド前駆体」及び「有機溶媒」は、それぞれ、本件発明4における「(a)一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミド酸」及び「(c)有機溶剤」に相当する。 してみると、本件発明4と甲1発明1とは、 「(a)一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミド酸と、(c)有機溶剤と、を含有する樹脂組成物であって、 前記樹脂組成物を基板に塗布、加熱し、ポリイミド樹脂膜を形成する工程と、前記ポリイミド樹脂膜上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子が形成されたポリイミド樹脂膜を支持体から剥離する工程とを含む、ディスプレイ基板の製造方法に用いられる、樹脂組成物。 【化11】 (一般式(1)中、R1は芳香族環を有する2価の有機基を示し、R2は芳香族環を有する4価の有機基を示す。)」の点で一致しており、以下の点で一応相違するものと認められる。 相違点1b:本件発明4では「(b)3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ-アミノプロピルトリブトキシシラン、γ-アミノエチルトリエトキシシラン、γ-アミノエチルトリメトキシシラン、γ-アミノエチルトリプロポキシシラン、γ-アミノエチルトリブトキシシラン、γ-アミノブチルトリエトキシシラン、γ-アミノブチルトリメトキシシラン、γ-アミノブチルトリプロポキシシラン、及びγ-アミノブチルトリブトキシシランからなる群から選択される1以上のアルコキシシラン化合物と、・・を含有し、前記(b)成分の含有量が前記(a)成分に対して0.2~1質量%である」のに対して、甲1発明1では「(b)アルコキシシラン化合物」を含有すること及びその含有量につき特定されていない点 相違点2c:「ポリイミド樹脂膜を形成する工程」において、本件発明4では「シリコン基板又はガラス基板」を使用するとともに「1~50μmの膜厚を有するポリイミド樹脂膜」を形成するのに対して、甲1発明1では「キャリア基板」を使用するとともに「固体の樹脂膜」の膜厚につき特定されていない点 イ.検討 (ア)相違点2cについて 事案に鑑み、まず、相違点2cにつき検討すると、相違点2cに係る事項は、上記(1)ア.で示した相違点2に係る事項と同一であるから、上記(1)イ.(ア)で説示した理由と同一の理由により、上記相違点2cは、実質的な相違点であるとはいえないか、甲1発明1において当業者が適宜なし得ることである。 (イ)相違点1bについて 上記相違点1bにつき検討すると、相違点1bに係る事項は、上記(1)ア.で示した相違点1に係る事項と同一であるから、上記(1)イ.(イ)で説示した理由と同一の理由により、上記相違点1bは、甲1発明1において当業者が適宜なし得ることである。 ウ.本件発明4の効果について 本件発明4の効果につき本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載(特に【表1】)に基づき検討しても、上記(1)イ.(ウ)で検討した本件発明1のものに比して特異な効果を奏するものとはいえないから、本件発明4の効果についても、上記(1)イ.(ウ)で説示した理由と同一の理由により、甲1発明1のものに比して、当業者が予期し得ない程度の格別顕著なものということはできない。 エ.小括 したがって、本件発明4は、甲1発明1、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5)本件発明6について ア.対比 本件発明6と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1における「液状の樹脂組成物をキャリア基板上に塗布成膜して固体状の樹脂膜を形成する工程、前記樹脂膜上に回路を形成する工程、前記回路が表面に形成された固体状の樹脂膜を前記キャリア基板から剥離する工程、の各工程を含む、表示デバイスであるフレキシブルデバイスの製造法に用いられる、フレキシブルデバイス基板となる前記液状の樹脂組成物」は、上記(1)ア.で説示した理由と同一の理由により、本件発明6における「前記樹脂組成物を・・基板に塗布、加熱し・・ポリイミド樹脂膜を形成する工程と、前記ポリイミド樹脂膜上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子が形成されたポリイミド樹脂膜を支持体から剥離する工程とを含む、ディスプレイ基板の製造方法に用いられる、樹脂組成物。」に相当するとともに、甲1発明1における 「一般式(1) 【化1】 (一般式(1)中、Rは各々独立に水素原子又は一価の有機基を示し、R1は 【化2】 から選択される2価の有機基であり(但しR’は各々独立にアルキル基であり、アルキル基の水素原子はハロゲン原子で置換されても良い)、R2は 【化3】 から選択される四価の有機基であり、nは繰り返し数を表す正の整数である)で表される構造を有するポリイミド前駆体」のうち「R1」がフェニレン基である場合及び「有機溶媒」は、それぞれ、本件発明6における「(a)一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミド酸」及び「(c)有機溶剤」に相当する。 してみると、本件発明6と甲1発明1とは、 「(a)一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミド酸と、(c)有機溶剤と、を含有する樹脂組成物であって、 前記樹脂組成物を基板に塗布、加熱し、ポリイミド樹脂膜を形成する工程と、前記ポリイミド樹脂膜上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子が形成されたポリイミド樹脂膜を支持体から剥離する工程とを含む、ディスプレイ基板の製造方法に用いられる、樹脂組成物。 【化11】 (一般式(1)中、R1は下記式(3)で表される2価の有機基を示し、R2は芳香族環を有する4価の有機基を示す。)」の点で一致しており、以下の点で一応相違するものと認められる。 相違点1c:本件発明6では「(b)3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ-アミノプロピルトリブトキシシラン、γ-アミノエチルトリエトキシシラン、γ-アミノエチルトリメトキシシラン、γ-アミノエチルトリプロポキシシラン、γ-アミノエチルトリブトキシシラン、γ-アミノブチルトリエトキシシラン、γ-アミノブチルトリメトキシシラン、γ-アミノブチルトリプロポキシシラン、及びγ-アミノブチルトリブトキシシランからなる群から選択される1以上のアルコキシシラン化合物と、・・を含有し、前記(b)成分の含有量が前記(a)成分に対して0.2~2質量%である」のに対して、甲1発明1では「(b)アルコキシシラン化合物」を含有すること及びその含有量につき特定されていない点 相違点2d:「ポリイミド樹脂膜を形成する工程」において、本件発明6では「シリコン基板又はガラス基板」を使用するとともに「1~50μmの膜厚を有するポリイミド樹脂膜」を形成するのに対して、甲1発明1では「キャリア基板」を使用するとともに「固体の樹脂膜」の膜厚につき特定されていない点 イ.検討 (ア)相違点2dについて 事案に鑑み、まず、相違点2dにつき検討すると、相違点2dに係る事項は、上記(1)ア.で示した相違点2に係る事項と同一であるから、上記(1)イ.(ア)で説示した理由と同一の理由により、上記相違点2dは、実質的な相違点であるとはいえないか、甲1発明1において当業者が適宜なし得ることである。 (イ)相違点1cについて 上記相違点1cにつき検討すると、相違点1cに係る事項は、上記(1)ア.で示した相違点1に係る事項と同一であるから、上記(1)イ.(イ)で説示した理由と同一の理由により、上記相違点1cは、甲1発明1において当業者が適宜なし得ることである。 ウ.本件発明6の効果について 本件発明6の効果につき本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載(特に【表1】)に基づき検討しても、上記(1)イ.(ウ)で検討した本件発明1のものに比して特異な効果を奏するものとはいえないから、本件発明6の効果についても、上記(1)イ.(ウ)で説示した理由と同一の理由により、甲1発明1のものに比して、当業者が予期し得ない程度の格別顕著なものということはできない。 エ.小括 したがって、本件発明6は、甲1発明1、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (6)本件発明17について 事案に鑑み、本件発明17につき先に検討する。 ア.対比 本件発明17と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1における「液状の樹脂組成物をキャリア基板上に塗布成膜して固体状の樹脂膜を形成する工程、前記樹脂膜上に回路を形成する工程、前記回路が表面に形成された固体状の樹脂膜を前記キャリア基板から剥離する工程、の各工程を含む、表示デバイスであるフレキシブルデバイスの製造法に用いられる、フレキシブルデバイス基板となる前記液状の樹脂組成物」は、上記(1)ア.で説示した理由と同一の理由により、本件発明17における「前記樹脂組成物を・・基板に塗布、加熱し・・ポリイミド樹脂膜を形成する工程と、前記ポリイミド樹脂膜上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子が形成されたポリイミド樹脂膜を支持体から剥離する工程とを含む、ディスプレイ基板の製造方法に用いられる、樹脂組成物。」に相当するとともに、甲1発明1における 「一般式(1) 【化1】 (一般式(1)中、Rは各々独立に水素原子又は一価の有機基を示し、R1は 【化2】 から選択される2価の有機基であり(但しR’は各々独立にアルキル基であり、アルキル基の水素原子はハロゲン原子で置換されても良い)、R2は 【化3】 から選択される四価の有機基であり、nは繰り返し数を表す正の整数である)で表される構造を有するポリイミド前駆体」のうち「R1」がフェニレン基かつ「R2」が3,3’,4,4’-ビフェニレン基である場合及び「有機溶媒」は、それぞれ、本件発明17における「(a)一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミド酸」及び「(c)有機溶剤」に相当する。 してみると、本件発明17と甲1発明1とは、 「(a)一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミド酸と、(c)有機溶剤と、を含有する樹脂組成物であって、 前記樹脂組成物を基板に塗布、加熱し、ポリイミド樹脂膜を形成する工程と、前記ポリイミド樹脂膜上に半導体素子を形成する工程と、前記半導体素子が形成されたポリイミド樹脂膜を支持体から剥離する工程とを含む、ディスプレイ基板の製造方法に用いられる、樹脂組成物。 【化11】 (一般式(1)中、R1は下記式(3)で表される2価の有機基を示し、R2は下記式(7)で表される4価の有機基を示す。)」の点で一致しており、以下の点で一応相違するものと認められる。 相違点1d:本件発明17では「(b)3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ-アミノプロピルトリブトキシシラン、γ-アミノエチルトリエトキシシラン、γ-アミノエチルトリメトキシシラン、γ-アミノエチルトリプロポキシシラン、γ-アミノエチルトリブトキシシラン、γ-アミノブチルトリエトキシシラン、γ-アミノブチルトリメトキシシラン、γ-アミノブチルトリプロポキシシラン、及びγ-アミノブチルトリブトキシシランからなる群から選択される1以上のアルコキシシラン化合物と、・・を含有し、前記(b)成分の含有量が前記(a)成分に対して0.2~2質量%である」のに対して、甲1発明1では「(b)アルコキシシラン化合物」を含有すること及びその含有量につき特定されていない点 相違点2e:「ポリイミド樹脂膜を形成する工程」において、本件発明17では「シリコン基板又はガラス基板」を使用するとともに「1~50μmの膜厚を有するポリイミド樹脂膜」を形成するのに対して、甲1発明1では「キャリア基板」を使用するとともに「固体の樹脂膜」の膜厚につき特定されていない点 イ.検討 (ア)相違点2eについて 事案に鑑み、まず、相違点2eにつき検討すると、相違点2eに係る事項は、上記(1)ア.で示した相違点2に係る事項と同一であるから、上記(1)イ.(ア)で説示した理由と同一の理由により、上記相違点2eは、実質的な相違点であるとはいえないか、甲1発明1において当業者が適宜なし得ることである。 (イ)相違点1dについて 上記相違点1dにつき検討すると、相違点1dに係る事項は、上記(1)ア.で示した相違点1に係る事項と同一であるから、上記(1)イ.(イ)で説示した理由と同一の理由により、上記相違点1dは、甲1発明1において当業者が適宜なし得ることである。 ウ.本件発明17の効果について 本件発明17の効果につき本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載(特に【表1】)に基づき検討しても、上記(1)イ.(ウ)で検討した本件発明1のものに比して特異な効果を奏するものとはいえないから、本件発明17の効果についても、上記(1)イ.(ウ)で説示した理由と同一の理由により、甲1発明1のものに比して、当業者が予期し得ない程度の格別顕著なものということはできない。 エ.小括 したがって、本件発明17は、甲1発明1、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (7)本件発明7、9、11、13、15及び18について 本件発明1を引用する本件発明7、本件発明2を引用する本件発明9、本件発明3を引用する本件発明11、本件発明4を引用する本件発明13、本件発明6を引用する本件発明15及び本件発明17を引用する本件発明18につき併せて検討する。 ア.対比 本件発明7、9、11、13、15又は18と甲1発明2とをそれぞれ対比すると、甲1発明2における「フレキシブルデバイス基板形成用ポリイミド前駆体樹脂組成物をキャリア基板上に塗布成膜してなる固体状のポリイミド樹脂膜」は、ポリイミド前駆体樹脂組成物をキャリア基板上に塗布した後、加熱することにより閉環してポリイミド樹脂とし、ポリイミド樹脂膜としていることが明らかである(甲1【0023】参照)から、本件発明7、9、11、13、15又は18における「樹脂組成物を加熱して得られるポリイミド樹脂膜」に相当する。 してみると、本件発明7、9、11、13、15及び18と甲1発明2とは、下記の点でのみ相違し、その余で一致しているものと認められる。 相違点4:「樹脂組成物」につき、本件発明7では「請求項1に記載された樹脂組成物」、本件発明9では「請求項2に記載された樹脂組成物」、本件発明11では「請求項3に記載された樹脂組成物」、本件発明13では「請求項4に記載された樹脂組成物」、本件発明15では「請求項6に記載された樹脂組成物」及び本件発明18では「請求項17に記載された樹脂組成物」であるのに対して、甲1発明2では「甲1発明1のフレキシブルデバイス基板形成用ポリイミド前駆体樹脂組成物」である点 イ.検討 上記相違点4につき検討すると、「請求項1に記載された樹脂組成物」、「請求項2に記載された樹脂組成物」、「請求項3に記載された樹脂組成物」、「請求項4に記載された樹脂組成物」、「請求項6に記載された樹脂組成物」及び「請求項17に記載された樹脂組成物」、すなわち、本件発明1、2、3、4、6及び17は、上記(1)ないし(6)でそれぞれ説示した理由により、「甲1発明1のフレキシブルデバイス基板形成用ポリイミド前駆体樹脂組成物」、すなわち、甲1発明1なる甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同様に、上記相違点4についても、上記甲1発明2において、当業者が適宜なし得ることである。 ウ.小括 したがって、本件発明7、9、11、13、15又は18は、いずれも、甲1発明2、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (8)本件発明8、10、12、14、16及び19について 本件発明7を引用する本件発明8、本件発明9を引用する本件発明10、本件発明11を引用する本件発明12、本件発明13を引用する本件発明14、本件発明15を引用する本件発明16及び本件発明18を引用する本件発明19につき併せて検討する。 ア.対比 本件発明8、10、12、14、16又は19と甲1発明3とをそれぞれ対比すると、甲1発明3における「固体状のポリイミド樹脂膜を形成する工程・・を含む製造方法により製造されたディスプレイである表示デバイス」は、当該表示デバイスの基板部が固体状のポリイミド樹脂膜で構成されていることが明らかであるから、本件発明8、10、12、14、16又は19における「ポリイミド樹脂膜を含むディスプレイ基板」に相当する。 してみると、本件発明8、10、12、14、16又は19と甲1発明3とは、下記の点でのみ相違し、その余で一致しているものと認められる。 相違点5:本件発明8では「請求項7に記載のポリイミド樹脂膜」、本件発明10では「請求項9に記載のポリイミド樹脂膜」、本件発明12では「請求項11に記載のポリイミド樹脂膜」、本件発明14では「請求項13に記載のポリイミド樹脂膜」、本件発明16では「請求項15に記載のポリイミド樹脂膜」及び本件発明19では「請求項18に記載のポリイミド樹脂膜」であるのに対して、甲1発明3では「甲1発明2の固体状のポリイミド樹脂膜」である点 イ.検討 上記相違点5につき検討すると、「請求項7に記載のポリイミド樹脂膜」、「請求項9に記載のポリイミド樹脂膜」、「請求項11に記載のポリイミド樹脂膜」、「請求項13に記載のポリイミド樹脂膜」、「請求項15に記載のポリイミド樹脂膜」及び「請求項18に記載のポリイミド樹脂膜」、すなわち、本件発明7、9、11、13、15又は18は、いずれも、上記(7)でそれぞれ説示した理由により、「甲1発明2の固体状のポリイミド樹脂膜」、すなわち、甲1発明2なる甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同様に、上記相違点5についても、上記甲1発明3において、当業者が適宜なし得ることである。 ウ.小括 したがって、本件発明8、10、12、14、16又は19は、いずれも、甲1発明3、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 3.当審の判断のまとめ 以上のとおり、本件発明1ないし4及び6ないし19は、いずれも甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものではない。 よって、本件の請求項1ないし4及び6ないし19に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、いずれも同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正については適法であるからこれを認め、本件の請求項1ないし4及び6ないし19に係る発明についての特許を取り消すべきものであり、本件の請求項5に対する特許異議の申立ては、不適法なものであるから、申立てを却下すべきものである。 よって、上記結論のとおり決定する。

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2018-700095

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